平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 12番濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 改めまして、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 新年を健やかな気持ちで迎えた元旦のこと、本県津波予測システムから午後2時8分に「和歌山県沖で大きな津波の観測がありました」と、避難を呼びかける緊急速報エリアメールが配信されてきました。すると、私にも、あちらこちらから問い合わせの電話が入りました。本当に津波は発生しているのか、誤報ではないのか、あるいは、システムのエラーであるとかサイバーテロのしわざではないかという内容もありました。
 私も、元旦という一般的に世間がくつろいでいるタイミング、地震による揺れもなかったことからサイバーテロの可能性も高いのではと考えていたやさき、午後3時1分ごろに配信されてきた2度目のメールが「津波がさらに大きくなっています」という内容だったので再び驚き、県や関係者に確認を急ぎました。
 県を初め、市町村、県警、消防などには県民からの問い合わせの電話が相次いだほか、初売りで混雑する大型商業施設などでは、お客さんの携帯電話が一斉に鳴り、一時騒然となったとのことです。
 県防災企画課によると、誤報の原因はDONET観測情報をもとにメール配信判定を行う本システムにおいて、海面変動を判断するための基準となることしの潮汐データがシステムに入力されていなかったため、通常の潮汐変動を津波と判断したことが判明し、午後3時15分以降3回にわたって、さきのメールが誤報であったことや、配信自動化を停止して手動にしたことなどを知らせるメールを相次いで配信するという対応を行いました。
 既に、この件につきましては、今議会一般質問初日に自民党県議団・新島会長の代表質問でも取り上げられ、いわゆる誤報メール配信にまつわる一連の経緯や、原因究明の結果が人的ミスであったこと、再発防止にあらゆる対策を講じた上でシステムが再開されたことなどの説明がありました。同様に、マスコミ等による報道もなされました。そして、知事みずから、県政報告や出席された会合などでの発言の折に、また今議会冒頭においても騒動に対する謝罪を行っておられましたので、今さらこの場で県の責任を追及するつもりはありません。
 しかし、今後発生の確率が高いと懸念される南海トラフあるいは3連動地震に備えて、県内にいる人々に津波避難をいち早く知らせることができる本県津波予測システムの信頼を回復しておかなければならないと考えます。今回の騒動によって得た教訓を踏まえ、特に運用面でどのような改善策を講じられたのかをお尋ねしたいと思います。既に公表されている対応もありますが、改めて、県民への説明として、より詳細な答弁をお願いしたいと思います。
 1点目は、もしも今回のように配信された緊急速報メールについて信憑性が低いと考えられたときに、実際の津波発生状況を確認する手段はあるのでしょうか。また、津波の心配がないと判断されたとすれば、県内にいる多くの方々に対し、直ちに訂正メールを配信するなど避難の必要がないことを伝え、周知させることは可能なのでしょうか。このことが担保されていないと、せっかくの緊急速報メールがオオカミ少年扱いされてしまうのではと懸念しますが、いかがでしょうか。危機管理監にお尋ねをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
 危機管理監和歌哲也君。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 今回の誤報メールにより、新年早々、大変多くの方々に御迷惑をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。
 津波予測システムの運用再開に当たっては、サイバーテロの可能性を含め、システムの検証を徹底的に行いました。このような誤配信を二度と起こさないよう、システム全体の監視体制及び配信時の対応の強化を図ったところです。
 具体的には、サイバーテロに対しては、DONET観測情報の取得は専用回線を用いることや、ファイアウオール等によって外部からの攻撃を防ぐ等の対策を既に講じており、引き続きセキュリティー向上に努めてまいります。
 次に、監視体制の対応強化については、緊急速報メールは、沿岸部でおおむね3メートル以上の大津波になると想定される、沖合で50センチメートル以上の海面の変化をDONET観測網で観測した場合に配信いたしますが、10センチメートル以上の海面変化を観測したときに津波予測システムから複数の担当職員に自動で通知する機能を新たに追加し、津波でないと判断された場合は事前にメール配信機能を停止する対策を講じたところです。
 津波発生状況の確認につきましては、津波の原因となる地震発生の有無等を和歌山県震度情報ネットワークシステムによる県内地震計及びDONETの強震計や水圧計の観測情報で確認するとともに、和歌山地方気象台への地震・津波情報の確認等によって行います。
 また、緊急速報メールが発せられ、それが万一誤報の場合は、確認後、速やかに県内全域に訂正の緊急速報メールを配信するとともに、県総合防災情報システムにより市町村等への訂正連絡を行った上で、市町村防災行政無線等による住民への周知をお願いし、さらに報道機関及び防災わかやまメール配信サービス等を通じた県民への周知等を行います。
 本システムの適切な運用管理を行っていくことにより、津波予測システムの信頼回復に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 次に、自然災害が発生したとき、あるいは予測されるときの県や市町村職員の皆さんが防災体制の配備につくための参集基準などについてお尋ねします。
 これまでは、気象庁から発令される警報や情報の内容に応じて、職員の防災体制等措置要領に基づき、警戒及び配備体制等の発令基準や担当課室などが段階的に定められており、各事象の発生を覚知した職員は自主的に参集することになっていたそうです。
 つまり、これまでは、地震や津波が発生した場合においても、本県津波予測システムからの緊急速報メール配信は参集の判断基準になっておらず、今回の誤配信による対応では危機管理局職員のみが参集したとのことでした。
 しかし、さきの津波予測システムの運用再開時の県の説明によりますと、今後は、緊急速報メールの配信によっても配備体制2号を発令することとし、防災体制対応を強化したとのことですが、このことにつきまして、配備体制2号とはほかの配備体制とどう違うのかなど、より具体的な説明を求めます。
 また、各市町村でも同様に、災害発生時あるいは予測時の対応はマニュアル化されていると思われますが、県の防災体制と各市町村の防災体制を比べたときに、担当部署の組織構成の違いはあっても、発令の基準や情報を共有するなど、県と市町村との整合性や連携は図られているのでしょうか。地域性や位置、役所の規模などの違いもあることから全ての体制を一元化することは難しいと思いますが、県全体で正確な情報を共有し、各地域において迅速な津波避難対応を図るために、また、災害発生後の状況や情報などを相互に把握するための連携された防災体制、同様にルールづくりは必要だと考えますが、現状や改善策に対する危機管理監の御所見をお聞かせください。
○議長(前芝雅嗣君) 危機管理監。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 和歌山県地域防災計画において、災害の発生状況、または気象情報等の程度に応じて防災体制の基準を定めております。
 今般、基準を見直し、新たに津波予測システムを通じて緊急速報メールを配信した場合は自動的に災害対策本部の設置に次いで警戒レベルの高い配備体制2号が発令され、知事部局において、危機管理局を初め、県土整備部等49課室及び7振興局が自主的に参集することといたしました。
 また、市町村の防災体制につきましては、県と同様にそれぞれの地域防災計画において定められており、災害対策基本法第42条第5項において、市町村は「地域防災計画を作成し、又は修正したときは、速やかにこれを都道府県知事に報告」しなければならないとされており、計画の修正等があった場合、県において必要かつ適切な助言を行っているところであり、県と市町村の防災体制の整合性は確保されております。
 災害時における防災体制や被害情報等につきましては、県総合防災情報システムによりリアルタイムでの報告や情報収集及び共有を行い、市町村等との緊密な連携を行っております。さらに、今回のことを踏まえ、市町村等との専用防災電話の増設等、緊急時の連絡体制を強化したところです。
 今後とも、県と市町村の防災体制及び情報共有の確保について万全を期してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 3点目は、今回の騒動を教訓として生かすために津波避難行動の啓発の取り組みについてどのような展開を検討されているのかをお尋ねいたします。
 平成27年12月、国連総会において、世界津波の日が、本県の偉人である濱口梧陵さんの功績、その逸話にちなんだ11月5日に制定されました。この制定により、濱口梧陵さんの稲むらに火を放っての人命救助行動と、今後の津波から村を守るだけでなく、職を失った住民を雇用し、被災した村からの離散を防ぐため私財をなげうって防波堤を建設するなど、防災強化のみならず、被災地復興への多大な尽力と理念を世界中に発信するとともに、各国の人々の津波に対する危機意識向上と、津波による犠牲者を出さないための努力の重要性を広めることに期待が高まりました。
 ところが、元旦に起きた本県による津波避難誤報メール騒動は、県民だけでなく、多くの帰省者、他地域からの観光客を不安に陥れてしまいました。
 また、今回の世界津波の日制定に並々ならぬ尽力をされた二階総務会長も騒動の直後は大変御立腹でありましたが、その真意は、本県の防災意識の高さ、津波避難への先進的な取り組みやすぐれたシステムの導入を機会あるごとに誇りとして語ってきたがゆえに、原因が人的ミスだったということに、怒りというよりも、とてもがっかりされたのだろうと推察いたします。
 ところで、今回の誤報メール騒動について、怒りをあらわにする人が多い中、何事もなかったので安心したという感想も聞かれました。そのような人たちの中には、迫りくる危険を知らされたにもかかわらず避難行動をとることにためらってしまったとか、避難行動を起こしたとしても貴重品や避難グッズなどが不備のため何も持ち出せなかったなどと、反省の機会と捉えた非常に前向きとも言える感想も耳にいたしました。
 つまり、津波発生の際に配信される緊急速報メールについて信頼回復が果たされたとしても、県民の皆様に速やかに避難行動を起こすという習慣を身につけていただかなければ、助かる命も助からないと考えます。このような現況を踏まえ、今回の出来事を今後の教訓とし、改めて危機感を県民の皆様に持っていただくこと、個人個人が具体的にどのような行動をとるべきかを日ごろから考えてもらうためには、これまで以上に啓発への取り組みが重要だと考えます。
 そこで、県民の避難意識のさらなる向上を図るために今後どのような取り組みや展開を考えているのか、危機管理監にお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 危機管理監。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 南海トラフ地震による津波から県民の命を守り犠牲者ゼロを目指して、平成26年10月に「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」を策定し、避難経路の詳細な設定や津波避難施設及び堤防整備等を行うソフト・ハード両面の対策を計画的に実施しております。
 プログラムが真に効果を発揮するためには、県民一人一人が日ごろから津波からの早期避難に心がけていただくことが非常に重要であり、県では、避難カードの普及促進や「出張!減災教室」を初めとする各種啓発事業に取り組んできたところです。
 議員御指摘のとおり、県民の津波からの避難意識の向上を促す取り組みの継続及び充実は、大変重要であります。県は、毎年11月5日の津波防災の日にちなんで、群馬大学の片田敏孝教授などを招いて津波防災講演会を開催するとともに、市町村と連携して住民の避難訓練を継続的に実施しております。東日本大震災以降、訓練参加者数は増加しており、今年度は13万人以上の県民の参加を得て実施いたしました。
 また、稲むらの火の故事にちなむ11月5日が、昨年末、世界津波の日に制定されました。濱口梧陵翁の精神を全世界へ発信し、県民みずからが梧陵翁の功績は世界に誇れることであると自覚することが津波防災意識を高め、津波による犠牲者の軽減につながるものと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 今回の教訓を生かして、誤報メールの再発防止、情報発信の仕組みや運用の改善策、職員の皆さんの配備体制の強化など、説明を聞いて安心いたしました。
 しかし、大規模な地震や津波から県民の命を守るためには、起こり得るさまざまな状況を想定し、防災対策の精度を高めることに終わりはないと感じます。3月11日が近づくにつれ、マスメディアでは東日本大震災の特集が組まれ、テレビ等では、東北での大地震、大津波の映像を目にする機会がふえました。それを見るたびに、やはり背筋が凍る感覚がよみがえってまいります。
 濱口梧陵さんは、津波をいち早く察知し、機転をきかせて稲むらを燃やすことで村人に避難を促しました。そして、その情報に従って避難したので多くの命が助かったわけです。この話を現在に置きかえますと、梧陵さんの役割を担うのが本県の津波予測システムであり、稲むらの火が緊急速報メールということになると思います。となりますと、県民の皆さんには、緊急速報メールが届いたら直ちに避難行動を起こしていただかなければ命が助かるストーリーは成立しません。何が何でも県民の皆さんに逃げていただけるよう、これからも一丸となって頑張りましょう。
 では、次の質問に移ります。
 昨年10月、農林水産委員会の県外調査で、秋田県における木材利用振興の先進事例である木造施設を視察する機会を得ました。秋田県といえば秋田杉が有名ですが、公共施設や民間施設の木造・木質化に向けた県や市町村挙げての取り組みの成果は存在する多くの木造建築物が物語っており、本県もその積極性は大いに参考にすべきであります。
 そして、特に感じたことは、デザイン性を重視している建築物が多いという点で、訪れたのはいずれもグッドデザイン賞を受賞している建築物です。
 国際教養大学図書館は、本棚と読書スペースが対になって半円形の空間に段々の状態で設置されています。高い空間を実現している天井は、立派な柱が中心を支え、まるで傘を開いたようです。足を踏み入れた途端にため息が出たこの図書館の特徴を言葉ではうまく表現しがたいので、お配りの資料をごらんください。マスコミやネットでも多く取り上げられるこの図書館は、CMやドラマなどの撮影場所にもよく使われるそうです。
 また、リニューアルに伴い、秋田杉をふんだんに使用して木質化された秋田空港ターミナルビルの2階フロアを視察しました。出発ロビー壁面やレストラン、カフェのテーブルには網代編み、ラウンジの壁は薄くスライスした杉をクリアなガラスで挟み込んだもの、保安検査場の壁面は角材をランダムに配置しはめ込んだもの、柱は無垢板の重厚感を生かすためにれんが張りするなど、それらの部分を引き立たせる照明も工夫され、至るところに見せるこだわりが感じられ、おしゃれ感満載の内装木質化の事例でした。
 このほかにも、秋田駅の木造バスターミナルなども視察してまいりました。
 さて、和歌山県に話を移しますと、本県の森林にも紀州材という質のよい資源が豊富に育っており、その資源の利用を促進することは、我が県の経済発展に大変有意義なことであります。住宅分野も重要ですが、大量に資源利用を図るためには、公共施設や大型商業施設などの設計段階で木造・木質化を具体的なものとして取り入れていただかなければなりません。
 それを実現に導く手段として、木材や木造建築に関して豊富な知識や経験を持ち、紀州材利用を提案、推奨してくれる人材、すなわち紀州材の応援団を設計や建築に携わる人たちの中にふやしていく取り組みは必要ではないかと、平成27年2月議会での一般質問で取り上げさせていただきました。
 それに対し、当局より、「人口の減少に伴い住宅着工戸数の減少が予想される中で、福祉施設や商業施設などでの紀州材利用を積極的に推進していく必要があり(中略)まず新年度において、県内の建築士を対象に、木材を使用した耐火性能や構造等に関する法令上の制約、紀州材の特性や流通の仕組みなどについての講習会の開催等に取り組んでまいりたいと考えております」との答弁をいただきました。
 そして、今年度、全6回の講座によるきのくにわかやま木造塾が開催されました。私も、1日だけではありましたが、非住宅木造建築物の構造設計についての講座に参加させていただきました。
 この日の講師を務められたのは、全国各地で数々の体育館、記念館などの公共建築物を手がけられている、設計業界で大変有名な山田憲明先生で、これまでに手がけてきた建築物の紹介と技術や工法などについて詳しく解説をされました。もちろん、私には専門的な内容を十分理解することは困難でしたが、大変興味深く聞かせていただきました。木材の無垢の姿を生かすためのこだわりや空間をつくり出す技術など、素人の私でさえ、その高度さに驚かされました。顔見知りの受講者からお聞きした感想は、「県がこのような事業を開催してくれたことはとてもありがたく、大変参考になる」とのことでした。今後の紀州材の汎用機会の広まりに、大いに期待を抱きました。
 そこで、できることなら、この木造塾は今後も継続していただきたいと思いますが、当部局ではどのように考えていらっしゃいますか。また、今回は主に設計者を対象に実施された講座でありましたが、ターゲットを広げる意向はないのでしょうか。紀州材利用促進に向けた講座についての今後の展開についてお答えください。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) きのくにわかやま木造塾につきましては、公共施設や商業施設など、住宅以外の建築物の木造化を推進し、紀州材の需要拡大につなげていくことを目的に、本年度、初めて県内の建築士の方々を対象に開催したところでございます。
 この木造塾は、建築物の耐火性能や構造設計等に関する講習会と紀州材の特性や加工流通に関する現地研修会をそれぞれ3回、計6回実施するプログラムとなっており、全てを受講することを条件に、木造建築に意欲ある受講生22名で11月30日に開講いたしました。本年2月15日には最終回を開催し、全6回を受講いただいた16名の方に修了証書を授与しました。
 この16名の方には、木造建築の防火設計や構造設計等に関する知識と紀州材の特性や流通に対する理解を有した建築士として、住宅建築はもちろん、非住宅の建築物に対して、紀州材を活用した木造化、木質化を積極的に提案してくださる紀州材の応援団となって活躍されることを期待するとともに、これからも紀州材や木造建築に関する情報の発信に努めて連携を深めてまいります。
 今後も紀州材を積極的に活用していただける建築士をふやしていくことが重要であると考えており、引き続き、きのくにわかやま木造塾の開催に取り組んでまいります。
 また、一方で発注者となる側への働きかけも重要と考えており、平成28年度には、県土整備部と連携し、県内市町村の営繕担当者を対象とした木造建築に関する研修会を開催したいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいまの答弁をお聞きして、1つ提案なんですけども、木造塾の講師は、いずれも業界屈指の実力者だと聞いております。せっかく和歌山県との御縁ができたことですので、今後、各市町村が公共施設の建設を木造や木質化でやろうと選択されたときの派遣アドバイザーにもなっていただくよう、講師の皆さんにお願いしてはどうでしょうか。そうすれば、市町村や設計をなさる方も大変心強いのではないかと思います。これは、要望とさせていただきます。
 次の質問に移ります。
 森林におけるさまざまな産物のうち、建築用材以外のものを特用林産物と分類するそうです。例えば、キノコ類、山菜、タケノコなどの食べられるもの、コウヤマキ、サカキ、ナンテンといった葉物や枝物など、実に多くの種類があります。また、ウバメガシからつくられる紀州備長炭などの加工品も特用林産物に分類されます。
 特用林産物を生かすことは建築用材としての活用と同様に意義のあることであり、紀州で育った森林資源のすぐれた性質とイメージを大いにアピールできるという相乗効果も期待でき、林業振興にも大きく寄与するものであると考えます。
 そこで、これも特用林産物に含まれるのではないかということで、熊野の森林で育った樹木の香りを商品化した取り組みを御紹介させていただきます。
 まずは、論より証拠で、議場の皆さんのお手元に「熊野の香り」を配付させていただきました。昨年の世界遺産登録10周年を記念して作製されたものです。手にとって、真ん中のシールを指でこすってから香ってみてください。これは、熊野杉の枝葉から抽出されたアロマオイルの香りをマイクロチップに閉じ込めて表面に加工したもので、名刺、はがき、携帯電話やスマートフォンなどに張り、手軽に香りを何度も楽しんでもらえるロゴシールです。
 さて、香りを商品化しようとなったきっかけについて紹介しますと、新宮市においてリラクゼーションを提供するお店の女性経営者と、お客である熊野川町森林組合に勤務する、森に携わる仕事がしたいと大阪からIターンでやってきた林業女子の出会いから始まりました。女性経営者の、いつか熊野の香りをつくりたいという考えと、林業女子の、森林業界の低迷を憂い、振興策を模索していた思いが結びつき、これまでは使い道のなかった枝打ちされた後の枝葉を原料にしてアロマオイルをつくってみようというアイデアにたどり着きました。
 早速、彼女らは森に行き、シバハラという種類の熊野杉の枝葉を持ち帰り、水蒸気蒸留という方法でアロマオイルを抽出することに成功しました。すると、想像以上の爽やかな木の香りに手応えを感じたそうです。
 それから、さまざまな種類の樹木からも抽出を行い、同じ種類でも育った場所や環境により香りが違うことや、クロモジというクスノキ科の落葉低木からも香りの強いオイルが抽出できることがわかるなど、研究と発見の日々が続きました。そうしてでき上がったアロマオイルを「熊野の香り」と名づけ、体と心の癒やしアイテムとして売り出すこととなりました。
 新宮市を訪れる観光客から、新宮には、お土産品にする食料品はいろいろあるが、加工品が余り見当たらないという指摘をよく受けますが、熊野の森林をほうふつとさせる香りのお土産というのもなかなか斬新ではないでしょうか。
 成分につきましては、認知症の研究に長年取り組まれている近畿大学理工学部の宮澤三雄教授が行った成分分析の結果によりますと、熊野産の杉、ヒノキから得た成分は、アルツハイマー型認知症治療薬と同等の作用があり、集中力や記憶力アップにも高い効力があると言われています。また、熊野産のクロモジからは、d─カルボンという、美肌作用があり、肌荒れやしみ防止に効果がある成分が他の産地のものよりも非常に多く含まれていることが発見されました。
 人の五感の中で脳に直接作用しているのはにおいや香りを感じる嗅覚だけで、人は、においや香りとともに、その場で体験したことを無意識に記憶すると言います。観光PRイベントでも、噴霧装置を使って木の香りでおもてなしの演出をすると、訪れた人たちに懐かしさや安らぎを与え、熊野を訪れてみたいという気にさせるなど、木の国和歌山県を印象づけるために一役買っています。
 香りを通じて熊野を世界に発信し、和歌山県に足を運んでもらえるきっかけをつくりたいと、2020年東京オリンピックを視野に入れ、会場や選手村ロビーにおいて香りを施し、各部屋には香り分子を含んだアメニティーグッズを置くなど、選手がリラックスして競技に臨めるためのサポートアイテムとしての採用を目指しております。
 また、平成28年度新政策にグリーン・ツーリズムという言葉が掲げられていますが、自分自身で原料の枝葉の収穫から蒸留作業を行うアロマオイル製造体験というのもおもしろいのではないかと思います。女性はもちろん、疲労感が抜けない人たちに神秘的な熊野の森で日常の喧騒をひととき忘れてもらい、森林浴効果などのゆったりとした自然の力で疲れた体と心を癒やす体験は、リピーター獲得にもつながるのではないでしょうか。
 さて、以上、いろいろと申し上げましたが、これら特用林産物の資源利用の促進を図るために県としての支援制度はないのかと調べてみますと、既に「山の恵み」活用事業という制度がありました。特用林産物等山村資源を活用した産業振興と担い手の育成、確保を図るとともに、山村小規模集落を含めた複数の集落での広域的な取り組みを促進し、地域活力の向上を目指すものでありますが、この制度実施による効果とこれまでの利用状況や事例など、農林水産部長にお尋ねをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 「山の恵み」活用事業につきましては、平成21年度から実施し、特用林産物の生産、加工、流通、販売施設の整備などの支援を行い、生産量の維持・拡大、雇用の場の確保など、山村地域の振興に寄与していると考えてございます。
 例えば、紀州備長炭の炭窯の新設により、これまで16名の新規参入があり、またシイタケ生産施設の整備では、龍神地域において15名の地域雇用が創出されるとともに、本年度には高品質なシイタケが評価され、プレミア和歌山審査員特別賞を受賞するという成果があったところでございます。
 事業の利用状況ですが、平成27年度を含む直近3カ年で11市町、59件の実績があり、その内容は、紀州備長炭の炭窯、シイタケ生産施設、センリョウ栽培施設、サカキの集出荷施設、サンショウの加工施設、地域産品の販売施設などの整備でございます。
 特用林産物は、山村地域では貴重な収入源として大変重要と考えており、議員御紹介のアロマなどの樹木由来の精油につきましても、特用林産物に分類されます。採択条件はありますが、生産加工施設等も支援の対象となりますので、大いに活用していただきたいと考えてございます。
 今後とも、市町村や試験研究機関などと連携を図りながら、新たな資源開拓への取り組みも含め、地域資源のさらなる活用を進め、山村地域の活性化に取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、和歌山県土砂災害啓発センターについてでございます。
 この土砂災害啓発センターの設置に至った経緯は、皆さん既に御承知のとおり、平成23年9月に当地域を襲った紀伊半島大水害による大規模土砂災害を受けて今後の防災対策を強化すべく、調査研究に取り組むための拠点が必要であるとの観点から始まったものであります。
 二階総務会長を初め県選出国会議員と我々砂防事業推進議員連盟、また知事を筆頭に県当局並びに市町村が一体となって努力した結果、平成26年4月に国土交通省大規模土砂災害対策技術センターを当地域に誘致することに成功、また、このセンターを核として、国・県・町のほかに大学など研究機関から成る大規模土砂災害対策研究機構が設立され、県内各地で土砂災害の専門家による調査や研究が進められると同時に、本格的な研究拠点づくりへの準備が進められてきたというわけです。
 また、この件に関しましては、自民党県議団砂防事業推進議員連盟の前会長を務められた大沢広太郎元県議が知事に対し、平成27年2月議会において、この災害啓発センターがどのような形で情報発信などに取り組み、地域住民の安心・安全を確保するために寄与するかなどについてただされました。
 あれからちょうど1年が経過しました。建設場所は那智勝浦町の那智山に向かう途中の大門坂駐車場南側隣接地で、平成27年5月の起工式を経て建設に着手された木造2階建ての当センターは、外観を見る限りでは既に完成されており、本年4月に予定どおりオープンを迎える運びとなったことは何事にもかえがたい喜びです。
 この間、大変急を要するこの事業の実現に向けて、国に対し我々も幾度となく要望活動を行ってきたわけですが、実際は大変困難な道のりでありました。しかしながら、仁坂知事の施設は県で建設するという英断と、土地の協力をいただいた寺本那智勝浦町長を初め担当職員の方々の努力が実を結んだものと、それぞれの御尽力に深い敬意と心を込めての感謝を申し上げる次第です。
 また、このセンターの設置が地域にもたらす効果ははかり知れず、地質の特徴を調査研究していただくことでより正確な防災対策を講じるための精度を高めたり、全国各地に土砂災害に備えることの重要性を発信するだけでなく、例えば本格的な土砂災害の研究施設ということで全国から研究や視察研修のために訪れていただける機会がふえること、それによって宿泊が見込めるなど、地元地域への経済効果を地元の一人としても大いに期待を膨らませるものであります。
 つきましては、1年前のやりとりと重複する部分もあろうかと思いますが、オープンを間近に控えた時期でもありますので、この施設がもたらす意義や効果など、改めて知事に御所見をお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県土砂災害啓発センターは、国の大規模土砂災害対策技術センターを誘致するということのために考えた制度でございます。現在、国の機関を地方移転しましょうというような話がありますが、スケールは小さいんですけども、まさにその1つのいい例であったんじゃないか、そんなふうに思っております。
 国の大規模土砂災害対策技術センターということで、土砂災害に関する調査研究の実施をここでやっていただく、国からも研究職の人に来ていただいて、それから和歌山県からも若手を中心にして技術を磨くような人をそこへ派遣して一緒に研究をする、さらに、その研究成果などに関する発信と啓発の拠点は県でやって、これが和歌山県土砂災害啓発センターであり、それから、建物は県で啓発センターの名目で建てると、こういうことでございました。
 この4月中のオープンを予定しておりまして、濱口議員を初め県議会議員の皆様、地元市町村、県選出国会議員の方々など、多くの方々に御尽力いただきまして、本当に感謝しております。
 県としては、実は、国土交通省と、それから和歌山県の施設としてつくっていこうと初めは思ったんですが、そういたしますと、三重大学、和歌山大学、京都大学、北海道大学などの大学が続々と参加したいというふうに申し入れてまいりまして、そこで、実は設計もかなり手直しをして大きなものにしていったという経緯もございます。こういう研究機関から成る大規模土砂災害対策研究機構というのをみんなでつくって、それで国の技術センターが核となって調査研究を進めるということになっております。
 那智勝浦町は、紀伊半島大水害において甚大な被害を受けた地であります。その地に日本を代表する土砂災害の研究者が集結し、最先端の調査研究を行うとともに、過去の災害の経験や教訓、さらには、土砂災害の恐ろしさや発生メカニズムなどを県内外に、研究をして広く発信していくということにこの施設の意義があると思います。
 昨今頻発する大規模災害において、今後同じような悲劇を繰り返さないためにこの施設を広く活用していきたいと考えておりまして、これは、和歌山県だけではなくて、もちろん那智勝浦町だけではなくて、全国にも役立つような、そういう組織になるようにしてまいりたいと、そんなふうに思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 答弁をいただきました。オープンがとても楽しみであります。
 以上をもちまして、質問を終わらせていただきます。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時48分休憩

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