平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号から議案第172号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、質問を行います。
 まずは、知事並びに県当局の皆様にお礼を申し上げたいと思います。
 このたび、みなべ・田辺の梅システムの世界農業遺産認定に際しましては、本当によく頑張ってくれました。おかげさまで、私も、昨年12月15日、知事に同行し、イタリア・ローマにおいて国連食糧農業機関から認定書を受け取ることができました。
 農業生産にとっては大変厳しい条件の中で先人たちが知恵と汗でつくり上げてきた梅産業が世界農業遺産に認定されましたことは、梅農家だけではなく、関係する各方面に大きな勇気と期待を与えてくれました。今後とも、関係者一丸となって梅産業の振興に邁進してまいります。
 この間、超党派で応援をしていただいた県議会の皆様にも、この際、心から御礼を申し上げる次第でございます。改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
 それでは、質問に入ります。
 今回、私は、さきに知事が打ち出した農地転用規制に絞って質問し、答弁を求めるものであります。
 問題点を整理するため、まず、知事の記者会見の発言を要約します。
 昨年8月11日、知事は、記者発表を行い、「都市機能の維持と優良農地の確保のためには、優良農地の転用を原則認めない。都市外縁地や郊外部での開発をやめて、既成市街地の再開発により都市機能を集約し、町なか居住を誘導することが重要である」と言っておられます。
 すなわち、コンパクトなまちづくりの一層の実現に向けて都市計画の見直しを進め、その実現に取り組む市町に対して町なかの再開発等に積極的に支援をする、都市計画にあっては、コンパクトなまちづくりや住宅、公共施設の高台移転に向けた計画の見直しを進める、優良農地の確保に当たっては、市街化調整区域内の優良農地の転用抑制とともに、和歌山市以外の市町にあっても農地法の転用許可基準を厳しくし、農地を第1種農地、第2種農地、第3種農地に分類し、従来、1種農地であっても道路沿線の農地は転用の対象としてきたものを今後は厳しく規制し、原則、農地の転用はできないとされている第1種農地への範囲を拡大すると発表をいたしました。その後、県の担当者による市や町への説明会が行われました。
 県民の生活に直結するこんな重大な方針決定を県議会に諮ることもなく、知事の独断専行で行われたことについての知事と県議会とのあり方については、まさに浅井議員の指摘するとおりであり、私も、強く警鐘を鳴らすものであります。
 今回、私は、重複を避けて、このことに対する現場の反応について触れてみたいと思います。
 市町村を通して説明を受けた農業委員会などの率直な反応は、私の知る限り、今回の農地転用の規制には大きな怒りを感じ、人があってこそ農業の持続や発展があり、農家の個人的な住宅や経済的な事情による農地の転用を認めるべきであり、県の方針には納得がいかないということであります。
 なるほど、知事は優秀な頭脳をお持ちであり、東大、経産省、和歌山県知事という輝かしい経歴をお持ちでありますが、私のように地方で生まれ、地方で育ち、農業の酸っぱいも甘いも、農業の苦労も喜びも知っている者から見れば、失礼ながら、知事は、農業の何たるかも知らず、農家の心を知らない優秀な官僚としか思えません。
 拡散している市街地をコンパクトなまちに再構築し、能率のいいまちをつくろう、そのためには、市街地拡散の対象になっている市街地周辺の農地の転用を規制すれば人は既成市街地に戻ってくると考えた上での結論であったんだろうと思います。政策を実現するために、まず規制をかける、そして権限によって人々が望まない方向に誘導しようとする、私に言わせれば、典型的な官僚の発想だと思います。
 話がやや横道にそれますが、イソップの童話に「北風と太陽」という話がございます。
 北風と太陽が、どちらが強いかと言い争っていました。旅人の着物を脱がせたほうが勝ちということになりました。まず、北風が思い切り寒風を吹きつけました。旅人は、「これは寒くてたまらん」と言ってさらに上着を重ね、襟元をより一層強くかき合わせてしまいました。北風が諦め、次は太陽の出番です。太陽は、旅人に暖かい日差しを浴びせました。旅人は、「これは暖かい」と言って着物を1枚ずつ脱ぎ始め、とうとう着物を全部脱いでしまいました。
 この童話の教えるところは、人に何かをしてもらうには、北風のように無理やりではうまくいかない、太陽のように相手の気持ちになって考えれば、無理をしなくても人はちゃんと動いてくれるという教訓であります。
 およそ県政というものは、県民の幸せを第一義に置いて行われるべきものであり、どうすれば県民が健康で豊かな生活を送ることができるかといった点をまず基本とすべきであります。そこでは、日々生活している県民が主役であり、机の上の議論が全て正しく通るというものではない、やはり血の通った政治が最も大切であるということを、まず最初に申し上げておきたい。
 話を戻します。
 議論を進めるために、これまで質問をしてきた岸本議員、浅井議員、井出議員、新島議員、松坂議員の質問に対する知事の答弁を整理してみたいと思います。
 知事の答弁は、大きく分けて5つの柱から成り立っていると思います。
 1つは、既成市街地の側から見た指摘であります。無秩序な市街地の拡大は、既成市街地の空洞化を招き、既成市街地の地価の下落を招き、市民の資産価値が減少する、また、公共交通や都市施設の維持管理費が高騰し、市の財政を圧迫するという見方であります。
 2つ目は、農業振興の側から見たものであります。農業振興にとってまとまりのある農地の確保は大切で、虫食い状態の農地開発は避けるべきである。優良農地の確保のため、他用途への転用は厳しく規制し、さらに農地の貸し借りを通して集団化を進めていく。
 3つ目は、地震・津波対策の必要性からであります。地震・津波対策の上から、周辺農地への宅地の拡大については、その必要性は認めるが、無秩序な開発は、後に企業誘致などに際して悪い影響を与える。場合によっては、農地の転用も規制の対象とする。
 4つ目は、この転用規制を県下全域に広げることについてであります。1つの市町村のみを対象に規制を厳しくすると、人は隣の市町村に逃げてしまう。公平性の観点から、一律に厳格な運用を図る。
 結論として、土地利用の目的に合わせた線引きが必要、これからの土地利用を明確にし、そのために規制を厳しくし、その後、必要に応じて規制を緩和していけばいいとの趣旨であったかと思います。
 こうした知事の考え方や県議会での質疑応答も踏まえ、私は、今回、次の4点について質問し、知事の答弁を求めるものであります。
 第1点は、知事の県づくりに対する姿勢であります。
 日本創成会議の提唱を待つまでもなく、今後、我が国は、急激な人口減少とともに、東京一極集中がますます進むと言われております。1億2000万人を超える現在の我が国の人口が2050年には1億人を切ると言われ、現に本県の人口は、既に100万人を割り込んでおります。
 県勢を見るとき、人口の大きさが1つのバロメーターであります。私は、これからの県政運営に当たっては、できる限り人口の県内定着に取り組むべきであると思います。極端なことを言えば、県外の都道府県を対象に、1人でも2人でもいいから積極的に県内移住に取り組むべきではないかと思っております。私は、知事は、それとは真逆のことに手をつけようとしているのではないかとさえ思えてきます。
 高速道路や府県間道路の整備などは、何のために進めているのか。県民の利便性の向上を図るとともに、近隣の大都市圏や関西国際空港の波及効果を積極的に導入し、県勢の発展に活用しようとしているのではないでしょうか。
 今回の知事の方針のように、県内の事情だけに目を奪われて土地利用を厳しく規制すれば、新しく家を建てたり事業所をつくったりしようとする人たちは、府県境を越えて、大阪へ、奈良へ、三重へと逆の流れをつくり出し、人口の流出が加速するのではないでしょうか。私は、このことを大変心配しているところであります。平野部が少なく傾斜地の多い本県にあって、県内の農地の宅地への転用を禁止するということは、人はこれ以上住まなくてもいいと言っているのに等しい。
 我が国の人口減少は、既に始まっています。特に、地方の人口対策は切実な課題であります。少なくなっていく人口の奪い合いが既に始まっていると言っても、言い過ぎではありません。今、一段と大所高所の立場に立った県づくりに当たってほしいと切望するものでありますが、知事の御所見を伺います。
 第2点目、現在、県政にとって最も重要で、かつ緊急を要する課題は、地震・津波対策でしょう。いつ起こってもおかしくない南海トラフ地震、それに伴って甚大な被害が予想される津波被害、この対策は、一刻の猶予もありません。もちろん、県挙げてこの対策に当たっていることは承知をしています。その努力には敬意を払っているところであります。
 我々の居住地は、太古の昔から川沿いの地域や海岸近くにつくられてきました。水の便や食料の確保、あるいは海の幸を求めての当然の結果だと思います。長い歴史の中では、こうした地域も幾度となく地震や津波に襲われて、またそこに家を建て、集落をつくっていく、その繰り返しであったと思いますが、私たちは、その経験や、近くは東北の大地震から、地震・津波対策には高台移転が最も有効な対策であることを学びました。県も、万が一の場合に備えて、事前に地域の復興計画を策定するよう準備を進めていると報道されています。恐らく、その計画の中には、この高台移転も大きく取り上げられていることと思います。山が海に迫る地形、果樹を中心に、耕して山に登る農業形態、こうした本県の地形にあって、避難すべき高台をどこに求めるのでしょうか。
 まず、農地との競合が生じます。農振法が施行された昭和40年代と現在では、我々を取り巻く自然環境や社会情勢は大きく異なっております。また、県や市町が幾ら努力しても、全ての県民の安全を守り切ることはできません。当然、個々人の知恵と努力に依存する部分が大きくなってくると思います。この際、余り個人個人の行動を厳しく規制をしたり、過度に縛ったりすることはしないほうが懸命だと考えますが、知事の考え方は。
 第3点は、資産としての農地の捉え方であります。
 多分、知事は、農業の経験もなく、農地を耕したことも所有したこともないんだろうと思います。一度でも農業に従事し、先祖代々農地を受け継いできた人間にとっては、農地は単に農産物を生産するためだけの土地ではないということであります。
 農地は、長い歴史の中で、もちろん農業生産を通して家計を支えてきたことは当然でありますが、時には思わぬ災害や事故から家族を守るための財産としての役割を果たし、子供の進学や結婚のための資金をつくり出す財産としての役割を果たしてきました。農業のおやじさんたちは、家を継ぎ、農業を継いでくれる後継者のためには喜んで農地を転用し、家を建てたことでしょう。
 ことしは暖冬の影響で、野菜が豊作貧乏で出荷ができず、田畑で処分する姿が報道されていますが、農業は、自然相手の産業です。いいときも悪いときもあります。本県の農業も、その繰り返しであったかと思います。それでも農家の方々は、その時々の採算を度外視して営々と農業を続けてまいりました。なぜか。先祖が耕し、残してくれた希少な農地は、すなわち、自分たちの生活を支えてくれる貴重な財産であったからであります。農地は、農家にとっても、生産と生活の両方を支える貴重な財産であると断言できます。
 今、本県の農家の実態を見ますと、3万3799戸の農家のうち、主業農家、すなわち農業からの収入を家計の主にしている農家は7997戸、率にして23.7%、さらに絞って、このうち65歳以下の農業に従事している農家は7162戸、全体の21.2%となり、ほとんどの農家が、農業以外の仕事で働き、そこからの収入も合わせて家計を賄う、いわゆる兼業農家であります。
 私は、農地も、農家と同じようにさまざまな用途を兼ね備えているのではないか、すなわち、農地も兼業化しているのではないかと考えております。もちろん、農業生産のための土地としての役割は最も大きいということは当然でありますが、時には住宅用地として、また工業用地として、あるいは公共事業のための用地として、狭い土地空間にあって、農地もまた多様な用途を持って存在しているのではないかと思っております。
 我が国の農業は、多くの兼業農家によって支えられております。同じように、我が国の農業は、多くの兼業農地によって支えられているということも言い過ぎではないと思っております。この実態を無視して、農地の他用途への転用を厳しく規制するということは、農地は農業生産用地としてのみ役割を果たしていればいい、農地の持っているさまざまな役割を無視してもいい、その結果、農地の資産価格は幾ら下がってもいいという発想であります。このような発想は、およそ農家の肌感覚からははるかに遠い発想であって、いかにも机の上だけで、建物の中だけで考えつきそうな発想であると指摘をしておきます。
 知事は、岸本議員の質問に対し、「都市が拡大し、既成市街地が空洞化すれば、その不動産の価値が下がり、県民の資産価値が減少するということになり、爪に灯をともして買った家や不動産の価値が下がり、せっかくためた貯金が減ってしまったようなもので、大変なことである」と答弁をしております。市民の資産が減少するのは大問題、農家の資産がどれだけ減少してもいいとする知事の姿勢には、到底同意できるものではありません。
 農家の農地に対する執着と言ってもいいほどの愛着を軽視してはいけない。農地の資産価値を下げ、農家の農業に対する生産意欲をそいではならない。農業の衰退を加速し、過疎化を促進するだけであります。農業は、地域の経済を支える重要な産業であります。私は、常々、農業振興なくして地域の発展はないと言っております。農地を資産として捉える農家の素朴な思いを知事はどう考えているのか、お聞かせを願いたい。
 第4点は、既成市街地の空洞化についてであります。
 最初に、和歌山市を中心とするこの問題に日高郡選出の私が口を挟むことは出過ぎたことであり、申しわけないことでありますが、事は日高郡にも、さらに全県下に及ぶ問題をはらんでおりますので、この際、御容赦をいただきたいとお断りをし、質問を続けます。
 もともと、まちは、人が集まって生活することから始まりました。人が集まれば集まるほど、大きくなればなるほど、まちはさまざまな顔を持ってきます。それがだんだんと発展し、やがてオフィスや金融機関、百貨店などのいわゆる高度な都市機能を求めるようになり、それにつれて必要なインフラも整備されてきました。その結果、地価は高くなり、人々は郊外に住居を求めざるを得なくなり、広域に及ぶ道路や鉄道の整備、あるいは大型ショッピングセンターの立地など、これに拍車をかけ、ますますまちは郊外へと広がっていきました。既成市街地の空洞化の始まりです。知事が記者会見で指摘した既成市街地での課題も、明らかになってきました。
 こうした実態に対し、行政の対応は大きく2つに分かれます。
 1つの方法は、かつての市街地をもう一度都市としての魅力を高めることで人々がここに集まってくる、住みたくなるまちをつくり直す道であります。いわゆるコンパクトシティーとしての都市の開発がこれに当たります。
 もう一方は、外に出ていく人の流れを食いとめる動きです。市街地周辺の規制を厳しくし、壁を高くすれば人は外には出ていかないだろうとする発想。
 どちらを選ぶか、行政の先見性やリーダーシップが試されます。私であれば、前者の再開発の道を選びます。もともと、人々が生活する上では、まちのほうが便利であることはよくわかっています。できれば便利な地域で暮らしたい、みんなそう思っています。郊外に流れている人の流れを市街地のほうに引き戻す、人々が行ってみたくなるようなまち、商売が成り立つまち、住んでみたくなるまち、そのようなまちづくりが求められています。
 言うはやすく、行うはかたしであります。しかし、誰かがいつかここに手をつけないと流れの好循環が始まりません。誰が、何から始めればいいのか。
 青森市は、駅周辺の最も人が集まりやすい場所に公共施設を集め、人々が暮らしやすい環境を整備し、これまで住んでいた周辺地域での住宅地を買い上げるといった思い切った施策を打ったと聞き及んでおります。富山市のコンパクトシティーは、路面電車の再開発から始まったと聞きます。
 では、私たちは、何から手をつけたらいいのか、何から始めたらいいのか。批判ばかりしていても無責任になります。具体的な提案を行い、問題提起をしてみたいと思います。
 私の提案は、学生がにぎわいをつくる和歌山市のまちづくりであります。
 和歌山市には、和歌山大学、県立医科大学、信愛女子短期大学といった立派な大学が3つもあります。しかしながら、私の実感では、和歌山市が学生の元気な声であふれているまちとは到底思われません。これらの3つの大学の学生の数は、5000人から6000人といったところでしょうか。他の市町が聞けば、よだれが垂れるような数であります。この学生さんたちは、どこで住んでいるのでしょうか。この若者たちは、どこで食事し、買い物をし、遊んでいるのでしょうか。
 例えば、松山市で夕食を食べにまちに出かけますと、そこには学生のにぎやかな声であふれている光景を目にすることができます。学生ですから、1人当たりの消費額はそう多くはないかもしれません。しかし、若者の存在や若やいだ話し声そのものに元気を感じます。学生がそのまちに溶け込み、まちを元気にしている。このような風景は、何も特定の都市に限ったことではありません。全国的に見られる現象であります。
 和歌山大学の場合、学生さんは、ひょっとすると大阪に住んで和歌山に通っているのかもしれません。あるいは、大学のある紀の川の北部地域に住むことによってぶらくり丁や駅周辺からは遠ざかっているのかもしれません。
 そこで、提案です。既成市街地の真ん中にまとまった土地もたくさん見受けられます。また、空き家のある県営住宅や市営住宅もあるのではないでしょうか。できれば、学生向けの安くて快適な住宅を建設してはどうでしょうか。空き家があれば、公的住宅を学生用に安く提供してはどうでしょうか。若い方々が住むというだけでまちに活気が出、にぎわいも戻ってきます。
 また、和歌山市には、JR和歌山周辺とぶらくり丁かいわい、そして和歌山市駅周辺の3つの拠点があり、この3カ所を生かしたまちづくりをどう進めるか、長年指摘されてきた都市計画の重要なテーマであります。ぶらくり丁を初めとする市街地の空洞化が大問題になっている今日でも、これに対する抜本的な対策がとられているようには思えません。
 私は、まちは生き物だと思っております。生き物である以上、常に人々が求める新しいまちへと生まれ変わっていくためのエネルギーを補給し続けることが大切であります。県や市が強力なリーダーシップを発揮し、官民挙げてこの問題に正面から立ち向かってはどうですか。知事は、コンパクトシティーの計画を策定した市町は積極的に応援すると言っているのですから、まず手始めにこの問題から手をつけてはいかがでしょうか。
 「北風と太陽」の童話をもう一度繰り返します。人は、北風のように無理強いしては動きません。太陽のように暖かく誘導してこそ動くものであります。知事には、冷たい北風ではなく暖かい太陽になってほしい、このことを心から願うものであります。
 農地転用の規制強化を撤廃し、農地転用に係る許可基準はこれまでどおり市町村の農業委員会の判断を尊重すること、市街地の空洞化対策は、規制ではなく、市街地の魅力を高めることから始めるべきである。重ねて私の考え方を申し上げ、以上の4点について知事の御所見を伺うものであります。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、先祖は農業でございますけれども、近々は工業の家に育ちましたので、農業の経験はありません。官僚をやっておりましたが、ただ、農業の方々が何で困っとるか、何を考えているか、想像することはできますし、それをやっていきたいと思ってきました。農業をしたことのない私ですが、農業振興のために熱心に仕事をしてまいりました。これは、この想像力からでございます。
 坂本議員の御指摘は、その想像力、私が持ってる想像力から、これは、この政策を続けると困る人も出てくるなあと、もうずっと思っておったことでございますので、余計に心が痛みます。坂本議員が挙げられた御指摘は、私たちが政策としてやろうとしている大筋の理由も、大筋、正しく把握してくれていますし、挙げられた指摘は、それだけとるとまことに正しいということであろうというふうに思っております。
 第2に申し上げなければならないことは、優良農地は原則転用禁止というのは、少し気持ちが先走り過ぎた表現であったというふうに思っております。御指摘のとおり、これは、多くの方々にインパクトを与える目的で、あるいはインパクトを与える大変な政策変更なので、力んでしまったかなあというふうに思っております。
 議員の御指摘の、農地の住宅への転用を規制すれば新規の住宅建設は県外へ流出し、人口の流出を加速するという御指摘は、まことにもっともな指摘であります。
 しかし、実は、あえて厳格化と申しますが、厳格化以前でも全てが転用できたわけではありませんで、また逆に、厳格化により一切の転用ができなくなったわけでもありません。第2種農地や第3種農地は引き続き転用が可能で、また、農振農用地や第1種農地は、従前から転用を厳しく制限をしてまいりました。しかし、市町が農業振興地域整備計画の見直しをした上で用途地域を指定すれば、厳格化後も第3種農地として柔軟に転用が可能であるということを御説明しようとしてるわけでございます。
 とはいえ、全く効かない政策を私たちが提案をしてるわけではありませんし、方向性、可能性としては、坂本議員が御指摘のように、大阪などに転出する理由になるということは事実であろうかと思います。しかし、かつては、和歌山は大阪の南部に比べて栄えておりまして地価も高かったわけで、それをもっと高くする政策をしたら流出助長になろうかと思いますが、今ではどうかというと、残念ながら、かなり事情が変わってきております。それに今申し上げましたことを加味いたしますと、影響は限定的だろうと判断をいたしました。だから、これはとってはいけない政策だとは判断しなかったわけでございます。
 確かに、農家の方々や地域にはいろいろな事情があり、転用をしたいという気持ちも理解できます。しかし、転用を抑制しないとまちの衰退をさらに助長をする、あるいは、優良農地を将来の農業、農家の方のために保全しておくことが困難になるというようなこともあると思います。このままではいかんと考えましたので、私は、この政策が魅力のある住みよいまちをつくるとともに、優良農地を確保しつつ農業振興にも取り組む手段にもなるというふうに思い、これによって実は人口減少を防ぎ、これからの和歌山県をつくっていく上でプラスになるんじゃないか、そういうふうに思った次第でございます。
 次に、議員御指摘のとおり、地震・津波対策の問題でございます。
 これは、本県の喫緊課題の1つであります。このため、津波から住民の命を救い、死者をゼロとするため、「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」を実行し、堤防等の整備や道路の強靱化、わかやま防災力パワーアップ等に取り組んでいるところであります。その中で、南海トラフ巨大地震を想定し、高台移転や複合避難ビル等の整備など、地域改造も含めた検討が必要であります。市町がその点を懸命に考えてくれてると思いますし、県も真剣に考えないといけないと思います。
 高台移転では、市町が津波浸水区域などの地域の実情に応じて安心して居住できる場所を定め、移転を促していくことが大事だと思います。その地域がどんな優良農地であっても、市町の判断でそれが可能になるというふうにすべきであると思いまして、これが市町がゾーニングすることを進めている理由でございます。
 3つ目に、資産としての農地の捉え方でございます。
 議員御指摘のとおり、農地は農家の財産でありまして、現在、農業が厳しい状況にあって、それを転用、売却し、生活の資金にしたいと思っている農家の方もおられ、農地転用を厳格化することで利益が侵害されると感じる人もあることは承知しており、そういう人たちの資産としての期待を損なっているということをどうでもよろしいということでは決してございません。ただ、これまでも、自分の資産だからどうしてもよいというわけではないのは、農家の方も、それからまちの方も、みんなわかっておられることではないかと思います。
 議員が総括してくださった、ほかの面から私たちがこれは進めるべきだと言っておる話、これもどうでもいい話でもないと思います。目をつぶり続けようと言うのも間違いだと思います。全体としては、その中でどうバランスをとるかという問題ではないかと思います。
 市町には、地域的には用途地域を指定するなどの工夫で農地転用が容易にできるということは御説明申し上げておりますが、どうもそれだけで済むものではない、そういうことはあんまりやりたくないという市町さんも多いということも理解できてまいりました。それができたとしても、やっぱり個々の農家の問題が残るということも承知しております。
 しかしながら、全部の農地転用ができないということではありません。法律的にいえば、我々が政策的にできるのは、一般に農転を慎重にお願いしますというアナウンスをいたしまして、農転の際の法運用のあり方を農業委員会に通知したのですけれども、もともとだめだと思われていたものは多分だめだし、もともといいものはよろしいわけです。これまでも、農業委員会の方々はよくやってくださったと感謝をしておりますし、個々の農家の事情は、農業委員の方々が一番よくわかってくださってると思うので、個々のケースについて、農地転用について御相談いただいたらいいんじゃないかと思います。
 その上で、県が行うべき統一的な運用基準の考え方も、ひょっとしたら修正をしていかなきゃいけないということもあるかもしれないと、そんなふうに思いますし、そのようにしていきたいと思います。
 その次に市街地の問題でございますが、全国的に既成市街地の空洞化が問題視され、各都市では、商店街でのイベント等を通じて人を町なかに呼び戻し、にぎわいを取り戻そうと努力をしてまいりました。(「ちょっと、知事、早うやってくれる。あとのやつ、やれんようになる。時間ないやん。もう少し早く」と呼ぶ者あり)
○議長(前芝雅嗣君) 答弁を短目に、速くやってください。
○知事(仁坂吉伸君) はい、それではちょっと早目にしゃべります。
 しかしながら、こうした部分的な対症療法だけでは必ずしも抜本的な解決が図れなかったことから、国は、都市計画法の中で、郊外への大規模集客施設の立地を原則不可とするなど、いわゆるまちづくり3法を改正して、すなわちゾーニングを結びつけてまちづくりをしてくださいという方向でございます。
 そういう際には、議員御指摘のように、例えば、住宅だけじゃなくて、いろんな機能も町なかにどんどん持っていくというようなまちづくりの政策が必要でありまして、先ほど申し上げましたように、誘導政策ばっかりして単に郊外開発を抑制するだけでは効果がないということは明らかであるというふうに思います。
 学生の問題もそのとおりでありまして、したがって、そういうことも勘案して、県立医大の薬学部については和歌山市の中心市街地に持ってきたらどうだと──いろんな議論がありますが──このように思っておりますし、ほかの大学についても誘致していきたいと思います。また、市役所が行う再開発も応援していきたいと思います。
 ただし、こういう政策がうまくいくためには郊外のほうの開発も自由になされるというんならば、民間企業、住民の需要は、再開発に向かないわけでございます。
 とはいえ、だから何をしてもいいというもんではございませんので、要は、いろんなことを考えてバランスをとった政策をしていかないかん、そんなふうに思っております。
 先ほど挙げられた、実は、青森、富山、ございます。それもそのとおりでございますが、一方では、市街化調整区域をかなり厳しく扱って、それでエネルギーをためるようにしてるということも、また事実なんでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 再質問を許します。
 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 ただいま知事から答弁をいただきました。他の5名の議員に対する答弁と変わりませんね。上手な言葉で言ってるだけでありますね、今、考えますと。
 知事の県づくりに対する基本姿勢について伺います。
 70万人の人口確保、そのための5つの基本戦略、うまくいってくれればと願うばかりであります。しかしながら、そのための具体的な施策として、市町の市街地の再開発を促進し、人を呼び込むとする考え方には、大きな疑問を感じます。知事は、コンパクトなまちづくりだけが頭にあって、市街地の再開発を進めることだけに目を奪われている。現下の県政にとっては、もっと切実な、かつ重要な地震・津波対策という県民の命に直結する大問題があります。
 先ほども申し上げましたが、本県の市街地のほとんどが、大きな川沿いの地域か、あるいは海岸線に沿った地域に集中してます。そして、こうした地域がいかに地震・津波の被害に遭いやすいか、一度被害を受けたときの災害の大きさはいかばかりか。我々は、5年前、東北地方で嫌というほどの経験をしたではありませんか。巨大な堤防も、津波の威力の前では無力でした。この教訓をもとに、ほとんどの自治体では抜本策として住民の高台移転に取り組んでいます。
 県は、本気で既成市街地の再開発を進め、そこに人を住ませようとしているのですか。私には全く理解できません。県が、わざわざ県民に対して、危険な場所に住めと言っているようなものであります。胸を張って県民に説明できますか。県民の命に責任を持てますか。木を見て森を見ないような議論は、やめるべきであります。
 一方で、知事は、盛んに優良農地の確保ということを強調してますが、私に言わせれば、優良な農地は、優秀な農家があってこそ維持され、受け継がれていくものであります。優秀な農家は、簡単には優良な農地を荒らすことはありません。手放すこともありません。それが、営々と農地を守り、農業を続けてきた農業の知恵であり、誇りであります。農家魂というものであります。
 まちを守るために農地転用の規制ばかりに目が行き、農家の心を忘れる、木を見て森を見ないような議論はやめるべきであります。地方のことは地方に任せてくれ、地方の自主性を尊重しよう、できるだけ地方に権限を移して地方の実情に合った行政をやっていこう、この認識は、国・地方問わず、現在の主流であります。地方分権推進の一環として農地法の規制権限も改正され、和歌山県にあっても、既に23年より2ヘクタール以下の農地転用の規制権限は町村あるいは町村農業委員会に移譲されています。今回、知事がやろうとしていることは、地方の自主性とか自立性とかを尊重しようといった、この大きな流れに逆流するものではないでしょうか。
 南海トラフ地震がいつ起こってもおかしくない今日、県民の命を真っ先に考えなければならない現状の県政にあって、知事は、いたずらに県民の生活を束縛することなく、地方のことは地方を最もよく知っている市町村長さんの判断に任せるという立場をとるべきではないのかということを再度訴え、知事の見解を問うものであります。
 そしてまた、既成市街地の空洞化対策については行政としてどういう施策を打つのか、本当に人が集まる方策なのかということをもっともっと深く掘り下げ、慎重な議論をしてほしい。お決まりの公共施設をつくればそれで事足れりとする安易な発想は、我々はこれまで何度も見てきました。そして、大方の施設は計画どおりにはいかず、維持管理費がかさみ、大きな財政負担になっていることは、また多くの事例で見てきたところであります。
 和歌山市が議論の主な対象となりますので、これ以上、私は発言を控えますが、既成の市街地の空洞化をとめるため、周辺地域の住宅建設を厳しく規制する、すなわち、人の自然な流れに対し高い壁をつくって強引に壁の中に押しとどめようとする施策、もっと大きな損失、すなわち県外への流出という手痛いしっぺ返しを受けることになると思います。
 最後に、先日、全県下に配布されました「県民の友」で、知事は「まちづくりと農地」というタイトルでこのことに触れ、かねてからの既成市街地の空洞化は旧市街地の土地の資産価値が下がることになると書かれています。多くの県民は、「まちの土地資産を守るためには、我々の資産はどうなってもいいのか。知事は、まちのことばかり考え、周辺地域のことはどうでもいいということか」と受けとめたと思いますよ。知事はどう思いますか。
○議長(前芝雅嗣君) 再質問に対する答弁を求めます。
 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 坂本議員の御指摘、重く受けとめまして、今後ともよく考えていってみたいと思います。
 坂本議員も実はよくわかっておられると思いますが、私たちがやろうとしてることにも一片の真理があると思います。ただ、坂本議員が御指摘になった点についても多大の真理がありまして、それをこういう県議会の場で議論をしたりしながら解をつくっていきたいと思いますので、また御相談をさしていただきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 再々質問を許します。
 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事ね、私の身の回りで起こった具体的な例をちょっと紹介します、時間ないんで。
 知事の所見を承りました。みなべ町は、比較的、農業後継者も多く、子供のための分家が、年間、相当な数で新築されています。これまでは、農地の転用許可はおおむね半年ぐらいでおりたんですけども、農家もそのつもりで工事やお金の工面などを準備してきました。
 それが、最近ではどうでしょう。農業委員会の話によると、最近、9カ月から10カ月かかっても許可がおりないということで、私の知り合いの農家では、子供の家を建てるにはことしは年回りがいいということで、自分の農地を宅地への転用を申請していましたが、なかなか県の段階で許可がくれないということで待ち切れず、他のまちに家を建てました。私の知る限り、このケース、3件もあります。
 聞くところによりますと、知事がなかなか書類に判を押さないので、裁決が先へ先へと引き延ばされているように聞きます。まさか一県の知事がそんなこそくなことをするはずがないと思いますが、今回の農地転用の厳格化ということをあわせ考えますと、やっぱりそうなのかなあと思ってしまいます。
 県民のおやじでなければならない知事も、もっと市町村長を信頼し、農業委員会を信頼し、何よりも県民を信頼して、温かい広い心で県政をとり行ってくれますよう心からお願いを申し上げ、挨拶とします。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。

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