平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(全文)


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平成28年2月
和歌山県議会定例会会議録
第6号
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議事日程 第6号
 平成28年3月8日(火曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、     議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第       73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号     から議案第172号まで(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、     議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第     73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号     から議案第172号まで(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(42人)
 1番 堀 龍雄
 2番 中西峰雄
 3番 森 礼子
 4番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 浅井修一郎
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 秋月史成
 10番 川畑哲哉
 11番 泉 正徳
 12番 濱口太史
 13番 花田健吉
 14番 尾﨑太郎
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 鈴木太雄
 18番 岩田弘彦
 19番 藤山将材
 20番 服部 一
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 中本浩精
 24番 中 拓哉
 25番 山本茂博
 26番 岸本 健
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 40番 松坂英樹
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      和歌哲也
 総務部長       市川靖之
 企画部長       高瀬一郎
 環境生活部長     栗山隆博
 福祉保健部長     幸前裕之
 商工観光労働部長   藤本陽司
 農林水産部長     鎌塚拓夫
 県土整備部長     野尻邦彦
 会計管理者      岩橋良晃
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員    竹田純久
 警察本部長      直江利克
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       江川和明
 次長         上坊 晃
 議事課長       糸川 徹
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼議事班長
            尾﨑善亮
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 議事課副主査     中尾祐一
 総務課長       西原龍也
 政策調査課長     中口 匠
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  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号から議案第172号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、質問を行います。
 まずは、知事並びに県当局の皆様にお礼を申し上げたいと思います。
 このたび、みなべ・田辺の梅システムの世界農業遺産認定に際しましては、本当によく頑張ってくれました。おかげさまで、私も、昨年12月15日、知事に同行し、イタリア・ローマにおいて国連食糧農業機関から認定書を受け取ることができました。
 農業生産にとっては大変厳しい条件の中で先人たちが知恵と汗でつくり上げてきた梅産業が世界農業遺産に認定されましたことは、梅農家だけではなく、関係する各方面に大きな勇気と期待を与えてくれました。今後とも、関係者一丸となって梅産業の振興に邁進してまいります。
 この間、超党派で応援をしていただいた県議会の皆様にも、この際、心から御礼を申し上げる次第でございます。改めて御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
 それでは、質問に入ります。
 今回、私は、さきに知事が打ち出した農地転用規制に絞って質問し、答弁を求めるものであります。
 問題点を整理するため、まず、知事の記者会見の発言を要約します。
 昨年8月11日、知事は、記者発表を行い、「都市機能の維持と優良農地の確保のためには、優良農地の転用を原則認めない。都市外縁地や郊外部での開発をやめて、既成市街地の再開発により都市機能を集約し、町なか居住を誘導することが重要である」と言っておられます。
 すなわち、コンパクトなまちづくりの一層の実現に向けて都市計画の見直しを進め、その実現に取り組む市町に対して町なかの再開発等に積極的に支援をする、都市計画にあっては、コンパクトなまちづくりや住宅、公共施設の高台移転に向けた計画の見直しを進める、優良農地の確保に当たっては、市街化調整区域内の優良農地の転用抑制とともに、和歌山市以外の市町にあっても農地法の転用許可基準を厳しくし、農地を第1種農地、第2種農地、第3種農地に分類し、従来、1種農地であっても道路沿線の農地は転用の対象としてきたものを今後は厳しく規制し、原則、農地の転用はできないとされている第1種農地への範囲を拡大すると発表をいたしました。その後、県の担当者による市や町への説明会が行われました。
 県民の生活に直結するこんな重大な方針決定を県議会に諮ることもなく、知事の独断専行で行われたことについての知事と県議会とのあり方については、まさに浅井議員の指摘するとおりであり、私も、強く警鐘を鳴らすものであります。
 今回、私は、重複を避けて、このことに対する現場の反応について触れてみたいと思います。
 市町村を通して説明を受けた農業委員会などの率直な反応は、私の知る限り、今回の農地転用の規制には大きな怒りを感じ、人があってこそ農業の持続や発展があり、農家の個人的な住宅や経済的な事情による農地の転用を認めるべきであり、県の方針には納得がいかないということであります。
 なるほど、知事は優秀な頭脳をお持ちであり、東大、経産省、和歌山県知事という輝かしい経歴をお持ちでありますが、私のように地方で生まれ、地方で育ち、農業の酸っぱいも甘いも、農業の苦労も喜びも知っている者から見れば、失礼ながら、知事は、農業の何たるかも知らず、農家の心を知らない優秀な官僚としか思えません。
 拡散している市街地をコンパクトなまちに再構築し、能率のいいまちをつくろう、そのためには、市街地拡散の対象になっている市街地周辺の農地の転用を規制すれば人は既成市街地に戻ってくると考えた上での結論であったんだろうと思います。政策を実現するために、まず規制をかける、そして権限によって人々が望まない方向に誘導しようとする、私に言わせれば、典型的な官僚の発想だと思います。
 話がやや横道にそれますが、イソップの童話に「北風と太陽」という話がございます。
 北風と太陽が、どちらが強いかと言い争っていました。旅人の着物を脱がせたほうが勝ちということになりました。まず、北風が思い切り寒風を吹きつけました。旅人は、「これは寒くてたまらん」と言ってさらに上着を重ね、襟元をより一層強くかき合わせてしまいました。北風が諦め、次は太陽の出番です。太陽は、旅人に暖かい日差しを浴びせました。旅人は、「これは暖かい」と言って着物を1枚ずつ脱ぎ始め、とうとう着物を全部脱いでしまいました。
 この童話の教えるところは、人に何かをしてもらうには、北風のように無理やりではうまくいかない、太陽のように相手の気持ちになって考えれば、無理をしなくても人はちゃんと動いてくれるという教訓であります。
 およそ県政というものは、県民の幸せを第一義に置いて行われるべきものであり、どうすれば県民が健康で豊かな生活を送ることができるかといった点をまず基本とすべきであります。そこでは、日々生活している県民が主役であり、机の上の議論が全て正しく通るというものではない、やはり血の通った政治が最も大切であるということを、まず最初に申し上げておきたい。
 話を戻します。
 議論を進めるために、これまで質問をしてきた岸本議員、浅井議員、井出議員、新島議員、松坂議員の質問に対する知事の答弁を整理してみたいと思います。
 知事の答弁は、大きく分けて5つの柱から成り立っていると思います。
 1つは、既成市街地の側から見た指摘であります。無秩序な市街地の拡大は、既成市街地の空洞化を招き、既成市街地の地価の下落を招き、市民の資産価値が減少する、また、公共交通や都市施設の維持管理費が高騰し、市の財政を圧迫するという見方であります。
 2つ目は、農業振興の側から見たものであります。農業振興にとってまとまりのある農地の確保は大切で、虫食い状態の農地開発は避けるべきである。優良農地の確保のため、他用途への転用は厳しく規制し、さらに農地の貸し借りを通して集団化を進めていく。
 3つ目は、地震・津波対策の必要性からであります。地震・津波対策の上から、周辺農地への宅地の拡大については、その必要性は認めるが、無秩序な開発は、後に企業誘致などに際して悪い影響を与える。場合によっては、農地の転用も規制の対象とする。
 4つ目は、この転用規制を県下全域に広げることについてであります。1つの市町村のみを対象に規制を厳しくすると、人は隣の市町村に逃げてしまう。公平性の観点から、一律に厳格な運用を図る。
 結論として、土地利用の目的に合わせた線引きが必要、これからの土地利用を明確にし、そのために規制を厳しくし、その後、必要に応じて規制を緩和していけばいいとの趣旨であったかと思います。
 こうした知事の考え方や県議会での質疑応答も踏まえ、私は、今回、次の4点について質問し、知事の答弁を求めるものであります。
 第1点は、知事の県づくりに対する姿勢であります。
 日本創成会議の提唱を待つまでもなく、今後、我が国は、急激な人口減少とともに、東京一極集中がますます進むと言われております。1億2000万人を超える現在の我が国の人口が2050年には1億人を切ると言われ、現に本県の人口は、既に100万人を割り込んでおります。
 県勢を見るとき、人口の大きさが1つのバロメーターであります。私は、これからの県政運営に当たっては、できる限り人口の県内定着に取り組むべきであると思います。極端なことを言えば、県外の都道府県を対象に、1人でも2人でもいいから積極的に県内移住に取り組むべきではないかと思っております。私は、知事は、それとは真逆のことに手をつけようとしているのではないかとさえ思えてきます。
 高速道路や府県間道路の整備などは、何のために進めているのか。県民の利便性の向上を図るとともに、近隣の大都市圏や関西国際空港の波及効果を積極的に導入し、県勢の発展に活用しようとしているのではないでしょうか。
 今回の知事の方針のように、県内の事情だけに目を奪われて土地利用を厳しく規制すれば、新しく家を建てたり事業所をつくったりしようとする人たちは、府県境を越えて、大阪へ、奈良へ、三重へと逆の流れをつくり出し、人口の流出が加速するのではないでしょうか。私は、このことを大変心配しているところであります。平野部が少なく傾斜地の多い本県にあって、県内の農地の宅地への転用を禁止するということは、人はこれ以上住まなくてもいいと言っているのに等しい。
 我が国の人口減少は、既に始まっています。特に、地方の人口対策は切実な課題であります。少なくなっていく人口の奪い合いが既に始まっていると言っても、言い過ぎではありません。今、一段と大所高所の立場に立った県づくりに当たってほしいと切望するものでありますが、知事の御所見を伺います。
 第2点目、現在、県政にとって最も重要で、かつ緊急を要する課題は、地震・津波対策でしょう。いつ起こってもおかしくない南海トラフ地震、それに伴って甚大な被害が予想される津波被害、この対策は、一刻の猶予もありません。もちろん、県挙げてこの対策に当たっていることは承知をしています。その努力には敬意を払っているところであります。
 我々の居住地は、太古の昔から川沿いの地域や海岸近くにつくられてきました。水の便や食料の確保、あるいは海の幸を求めての当然の結果だと思います。長い歴史の中では、こうした地域も幾度となく地震や津波に襲われて、またそこに家を建て、集落をつくっていく、その繰り返しであったと思いますが、私たちは、その経験や、近くは東北の大地震から、地震・津波対策には高台移転が最も有効な対策であることを学びました。県も、万が一の場合に備えて、事前に地域の復興計画を策定するよう準備を進めていると報道されています。恐らく、その計画の中には、この高台移転も大きく取り上げられていることと思います。山が海に迫る地形、果樹を中心に、耕して山に登る農業形態、こうした本県の地形にあって、避難すべき高台をどこに求めるのでしょうか。
 まず、農地との競合が生じます。農振法が施行された昭和40年代と現在では、我々を取り巻く自然環境や社会情勢は大きく異なっております。また、県や市町が幾ら努力しても、全ての県民の安全を守り切ることはできません。当然、個々人の知恵と努力に依存する部分が大きくなってくると思います。この際、余り個人個人の行動を厳しく規制をしたり、過度に縛ったりすることはしないほうが懸命だと考えますが、知事の考え方は。
 第3点は、資産としての農地の捉え方であります。
 多分、知事は、農業の経験もなく、農地を耕したことも所有したこともないんだろうと思います。一度でも農業に従事し、先祖代々農地を受け継いできた人間にとっては、農地は単に農産物を生産するためだけの土地ではないということであります。
 農地は、長い歴史の中で、もちろん農業生産を通して家計を支えてきたことは当然でありますが、時には思わぬ災害や事故から家族を守るための財産としての役割を果たし、子供の進学や結婚のための資金をつくり出す財産としての役割を果たしてきました。農業のおやじさんたちは、家を継ぎ、農業を継いでくれる後継者のためには喜んで農地を転用し、家を建てたことでしょう。
 ことしは暖冬の影響で、野菜が豊作貧乏で出荷ができず、田畑で処分する姿が報道されていますが、農業は、自然相手の産業です。いいときも悪いときもあります。本県の農業も、その繰り返しであったかと思います。それでも農家の方々は、その時々の採算を度外視して営々と農業を続けてまいりました。なぜか。先祖が耕し、残してくれた希少な農地は、すなわち、自分たちの生活を支えてくれる貴重な財産であったからであります。農地は、農家にとっても、生産と生活の両方を支える貴重な財産であると断言できます。
 今、本県の農家の実態を見ますと、3万3799戸の農家のうち、主業農家、すなわち農業からの収入を家計の主にしている農家は7997戸、率にして23.7%、さらに絞って、このうち65歳以下の農業に従事している農家は7162戸、全体の21.2%となり、ほとんどの農家が、農業以外の仕事で働き、そこからの収入も合わせて家計を賄う、いわゆる兼業農家であります。
 私は、農地も、農家と同じようにさまざまな用途を兼ね備えているのではないか、すなわち、農地も兼業化しているのではないかと考えております。もちろん、農業生産のための土地としての役割は最も大きいということは当然でありますが、時には住宅用地として、また工業用地として、あるいは公共事業のための用地として、狭い土地空間にあって、農地もまた多様な用途を持って存在しているのではないかと思っております。
 我が国の農業は、多くの兼業農家によって支えられております。同じように、我が国の農業は、多くの兼業農地によって支えられているということも言い過ぎではないと思っております。この実態を無視して、農地の他用途への転用を厳しく規制するということは、農地は農業生産用地としてのみ役割を果たしていればいい、農地の持っているさまざまな役割を無視してもいい、その結果、農地の資産価格は幾ら下がってもいいという発想であります。このような発想は、およそ農家の肌感覚からははるかに遠い発想であって、いかにも机の上だけで、建物の中だけで考えつきそうな発想であると指摘をしておきます。
 知事は、岸本議員の質問に対し、「都市が拡大し、既成市街地が空洞化すれば、その不動産の価値が下がり、県民の資産価値が減少するということになり、爪に灯をともして買った家や不動産の価値が下がり、せっかくためた貯金が減ってしまったようなもので、大変なことである」と答弁をしております。市民の資産が減少するのは大問題、農家の資産がどれだけ減少してもいいとする知事の姿勢には、到底同意できるものではありません。
 農家の農地に対する執着と言ってもいいほどの愛着を軽視してはいけない。農地の資産価値を下げ、農家の農業に対する生産意欲をそいではならない。農業の衰退を加速し、過疎化を促進するだけであります。農業は、地域の経済を支える重要な産業であります。私は、常々、農業振興なくして地域の発展はないと言っております。農地を資産として捉える農家の素朴な思いを知事はどう考えているのか、お聞かせを願いたい。
 第4点は、既成市街地の空洞化についてであります。
 最初に、和歌山市を中心とするこの問題に日高郡選出の私が口を挟むことは出過ぎたことであり、申しわけないことでありますが、事は日高郡にも、さらに全県下に及ぶ問題をはらんでおりますので、この際、御容赦をいただきたいとお断りをし、質問を続けます。
 もともと、まちは、人が集まって生活することから始まりました。人が集まれば集まるほど、大きくなればなるほど、まちはさまざまな顔を持ってきます。それがだんだんと発展し、やがてオフィスや金融機関、百貨店などのいわゆる高度な都市機能を求めるようになり、それにつれて必要なインフラも整備されてきました。その結果、地価は高くなり、人々は郊外に住居を求めざるを得なくなり、広域に及ぶ道路や鉄道の整備、あるいは大型ショッピングセンターの立地など、これに拍車をかけ、ますますまちは郊外へと広がっていきました。既成市街地の空洞化の始まりです。知事が記者会見で指摘した既成市街地での課題も、明らかになってきました。
 こうした実態に対し、行政の対応は大きく2つに分かれます。
 1つの方法は、かつての市街地をもう一度都市としての魅力を高めることで人々がここに集まってくる、住みたくなるまちをつくり直す道であります。いわゆるコンパクトシティーとしての都市の開発がこれに当たります。
 もう一方は、外に出ていく人の流れを食いとめる動きです。市街地周辺の規制を厳しくし、壁を高くすれば人は外には出ていかないだろうとする発想。
 どちらを選ぶか、行政の先見性やリーダーシップが試されます。私であれば、前者の再開発の道を選びます。もともと、人々が生活する上では、まちのほうが便利であることはよくわかっています。できれば便利な地域で暮らしたい、みんなそう思っています。郊外に流れている人の流れを市街地のほうに引き戻す、人々が行ってみたくなるようなまち、商売が成り立つまち、住んでみたくなるまち、そのようなまちづくりが求められています。
 言うはやすく、行うはかたしであります。しかし、誰かがいつかここに手をつけないと流れの好循環が始まりません。誰が、何から始めればいいのか。
 青森市は、駅周辺の最も人が集まりやすい場所に公共施設を集め、人々が暮らしやすい環境を整備し、これまで住んでいた周辺地域での住宅地を買い上げるといった思い切った施策を打ったと聞き及んでおります。富山市のコンパクトシティーは、路面電車の再開発から始まったと聞きます。
 では、私たちは、何から手をつけたらいいのか、何から始めたらいいのか。批判ばかりしていても無責任になります。具体的な提案を行い、問題提起をしてみたいと思います。
 私の提案は、学生がにぎわいをつくる和歌山市のまちづくりであります。
 和歌山市には、和歌山大学、県立医科大学、信愛女子短期大学といった立派な大学が3つもあります。しかしながら、私の実感では、和歌山市が学生の元気な声であふれているまちとは到底思われません。これらの3つの大学の学生の数は、5000人から6000人といったところでしょうか。他の市町が聞けば、よだれが垂れるような数であります。この学生さんたちは、どこで住んでいるのでしょうか。この若者たちは、どこで食事し、買い物をし、遊んでいるのでしょうか。
 例えば、松山市で夕食を食べにまちに出かけますと、そこには学生のにぎやかな声であふれている光景を目にすることができます。学生ですから、1人当たりの消費額はそう多くはないかもしれません。しかし、若者の存在や若やいだ話し声そのものに元気を感じます。学生がそのまちに溶け込み、まちを元気にしている。このような風景は、何も特定の都市に限ったことではありません。全国的に見られる現象であります。
 和歌山大学の場合、学生さんは、ひょっとすると大阪に住んで和歌山に通っているのかもしれません。あるいは、大学のある紀の川の北部地域に住むことによってぶらくり丁や駅周辺からは遠ざかっているのかもしれません。
 そこで、提案です。既成市街地の真ん中にまとまった土地もたくさん見受けられます。また、空き家のある県営住宅や市営住宅もあるのではないでしょうか。できれば、学生向けの安くて快適な住宅を建設してはどうでしょうか。空き家があれば、公的住宅を学生用に安く提供してはどうでしょうか。若い方々が住むというだけでまちに活気が出、にぎわいも戻ってきます。
 また、和歌山市には、JR和歌山周辺とぶらくり丁かいわい、そして和歌山市駅周辺の3つの拠点があり、この3カ所を生かしたまちづくりをどう進めるか、長年指摘されてきた都市計画の重要なテーマであります。ぶらくり丁を初めとする市街地の空洞化が大問題になっている今日でも、これに対する抜本的な対策がとられているようには思えません。
 私は、まちは生き物だと思っております。生き物である以上、常に人々が求める新しいまちへと生まれ変わっていくためのエネルギーを補給し続けることが大切であります。県や市が強力なリーダーシップを発揮し、官民挙げてこの問題に正面から立ち向かってはどうですか。知事は、コンパクトシティーの計画を策定した市町は積極的に応援すると言っているのですから、まず手始めにこの問題から手をつけてはいかがでしょうか。
 「北風と太陽」の童話をもう一度繰り返します。人は、北風のように無理強いしては動きません。太陽のように暖かく誘導してこそ動くものであります。知事には、冷たい北風ではなく暖かい太陽になってほしい、このことを心から願うものであります。
 農地転用の規制強化を撤廃し、農地転用に係る許可基準はこれまでどおり市町村の農業委員会の判断を尊重すること、市街地の空洞化対策は、規制ではなく、市街地の魅力を高めることから始めるべきである。重ねて私の考え方を申し上げ、以上の4点について知事の御所見を伺うものであります。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、先祖は農業でございますけれども、近々は工業の家に育ちましたので、農業の経験はありません。官僚をやっておりましたが、ただ、農業の方々が何で困っとるか、何を考えているか、想像することはできますし、それをやっていきたいと思ってきました。農業をしたことのない私ですが、農業振興のために熱心に仕事をしてまいりました。これは、この想像力からでございます。
 坂本議員の御指摘は、その想像力、私が持ってる想像力から、これは、この政策を続けると困る人も出てくるなあと、もうずっと思っておったことでございますので、余計に心が痛みます。坂本議員が挙げられた御指摘は、私たちが政策としてやろうとしている大筋の理由も、大筋、正しく把握してくれていますし、挙げられた指摘は、それだけとるとまことに正しいということであろうというふうに思っております。
 第2に申し上げなければならないことは、優良農地は原則転用禁止というのは、少し気持ちが先走り過ぎた表現であったというふうに思っております。御指摘のとおり、これは、多くの方々にインパクトを与える目的で、あるいはインパクトを与える大変な政策変更なので、力んでしまったかなあというふうに思っております。
 議員の御指摘の、農地の住宅への転用を規制すれば新規の住宅建設は県外へ流出し、人口の流出を加速するという御指摘は、まことにもっともな指摘であります。
 しかし、実は、あえて厳格化と申しますが、厳格化以前でも全てが転用できたわけではありませんで、また逆に、厳格化により一切の転用ができなくなったわけでもありません。第2種農地や第3種農地は引き続き転用が可能で、また、農振農用地や第1種農地は、従前から転用を厳しく制限をしてまいりました。しかし、市町が農業振興地域整備計画の見直しをした上で用途地域を指定すれば、厳格化後も第3種農地として柔軟に転用が可能であるということを御説明しようとしてるわけでございます。
 とはいえ、全く効かない政策を私たちが提案をしてるわけではありませんし、方向性、可能性としては、坂本議員が御指摘のように、大阪などに転出する理由になるということは事実であろうかと思います。しかし、かつては、和歌山は大阪の南部に比べて栄えておりまして地価も高かったわけで、それをもっと高くする政策をしたら流出助長になろうかと思いますが、今ではどうかというと、残念ながら、かなり事情が変わってきております。それに今申し上げましたことを加味いたしますと、影響は限定的だろうと判断をいたしました。だから、これはとってはいけない政策だとは判断しなかったわけでございます。
 確かに、農家の方々や地域にはいろいろな事情があり、転用をしたいという気持ちも理解できます。しかし、転用を抑制しないとまちの衰退をさらに助長をする、あるいは、優良農地を将来の農業、農家の方のために保全しておくことが困難になるというようなこともあると思います。このままではいかんと考えましたので、私は、この政策が魅力のある住みよいまちをつくるとともに、優良農地を確保しつつ農業振興にも取り組む手段にもなるというふうに思い、これによって実は人口減少を防ぎ、これからの和歌山県をつくっていく上でプラスになるんじゃないか、そういうふうに思った次第でございます。
 次に、議員御指摘のとおり、地震・津波対策の問題でございます。
 これは、本県の喫緊課題の1つであります。このため、津波から住民の命を救い、死者をゼロとするため、「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」を実行し、堤防等の整備や道路の強靱化、わかやま防災力パワーアップ等に取り組んでいるところであります。その中で、南海トラフ巨大地震を想定し、高台移転や複合避難ビル等の整備など、地域改造も含めた検討が必要であります。市町がその点を懸命に考えてくれてると思いますし、県も真剣に考えないといけないと思います。
 高台移転では、市町が津波浸水区域などの地域の実情に応じて安心して居住できる場所を定め、移転を促していくことが大事だと思います。その地域がどんな優良農地であっても、市町の判断でそれが可能になるというふうにすべきであると思いまして、これが市町がゾーニングすることを進めている理由でございます。
 3つ目に、資産としての農地の捉え方でございます。
 議員御指摘のとおり、農地は農家の財産でありまして、現在、農業が厳しい状況にあって、それを転用、売却し、生活の資金にしたいと思っている農家の方もおられ、農地転用を厳格化することで利益が侵害されると感じる人もあることは承知しており、そういう人たちの資産としての期待を損なっているということをどうでもよろしいということでは決してございません。ただ、これまでも、自分の資産だからどうしてもよいというわけではないのは、農家の方も、それからまちの方も、みんなわかっておられることではないかと思います。
 議員が総括してくださった、ほかの面から私たちがこれは進めるべきだと言っておる話、これもどうでもいい話でもないと思います。目をつぶり続けようと言うのも間違いだと思います。全体としては、その中でどうバランスをとるかという問題ではないかと思います。
 市町には、地域的には用途地域を指定するなどの工夫で農地転用が容易にできるということは御説明申し上げておりますが、どうもそれだけで済むものではない、そういうことはあんまりやりたくないという市町さんも多いということも理解できてまいりました。それができたとしても、やっぱり個々の農家の問題が残るということも承知しております。
 しかしながら、全部の農地転用ができないということではありません。法律的にいえば、我々が政策的にできるのは、一般に農転を慎重にお願いしますというアナウンスをいたしまして、農転の際の法運用のあり方を農業委員会に通知したのですけれども、もともとだめだと思われていたものは多分だめだし、もともといいものはよろしいわけです。これまでも、農業委員会の方々はよくやってくださったと感謝をしておりますし、個々の農家の事情は、農業委員の方々が一番よくわかってくださってると思うので、個々のケースについて、農地転用について御相談いただいたらいいんじゃないかと思います。
 その上で、県が行うべき統一的な運用基準の考え方も、ひょっとしたら修正をしていかなきゃいけないということもあるかもしれないと、そんなふうに思いますし、そのようにしていきたいと思います。
 その次に市街地の問題でございますが、全国的に既成市街地の空洞化が問題視され、各都市では、商店街でのイベント等を通じて人を町なかに呼び戻し、にぎわいを取り戻そうと努力をしてまいりました。(「ちょっと、知事、早うやってくれる。あとのやつ、やれんようになる。時間ないやん。もう少し早く」と呼ぶ者あり)
○議長(前芝雅嗣君) 答弁を短目に、速くやってください。
○知事(仁坂吉伸君) はい、それではちょっと早目にしゃべります。
 しかしながら、こうした部分的な対症療法だけでは必ずしも抜本的な解決が図れなかったことから、国は、都市計画法の中で、郊外への大規模集客施設の立地を原則不可とするなど、いわゆるまちづくり3法を改正して、すなわちゾーニングを結びつけてまちづくりをしてくださいという方向でございます。
 そういう際には、議員御指摘のように、例えば、住宅だけじゃなくて、いろんな機能も町なかにどんどん持っていくというようなまちづくりの政策が必要でありまして、先ほど申し上げましたように、誘導政策ばっかりして単に郊外開発を抑制するだけでは効果がないということは明らかであるというふうに思います。
 学生の問題もそのとおりでありまして、したがって、そういうことも勘案して、県立医大の薬学部については和歌山市の中心市街地に持ってきたらどうだと──いろんな議論がありますが──このように思っておりますし、ほかの大学についても誘致していきたいと思います。また、市役所が行う再開発も応援していきたいと思います。
 ただし、こういう政策がうまくいくためには郊外のほうの開発も自由になされるというんならば、民間企業、住民の需要は、再開発に向かないわけでございます。
 とはいえ、だから何をしてもいいというもんではございませんので、要は、いろんなことを考えてバランスをとった政策をしていかないかん、そんなふうに思っております。
 先ほど挙げられた、実は、青森、富山、ございます。それもそのとおりでございますが、一方では、市街化調整区域をかなり厳しく扱って、それでエネルギーをためるようにしてるということも、また事実なんでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 再質問を許します。
 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 ただいま知事から答弁をいただきました。他の5名の議員に対する答弁と変わりませんね。上手な言葉で言ってるだけでありますね、今、考えますと。
 知事の県づくりに対する基本姿勢について伺います。
 70万人の人口確保、そのための5つの基本戦略、うまくいってくれればと願うばかりであります。しかしながら、そのための具体的な施策として、市町の市街地の再開発を促進し、人を呼び込むとする考え方には、大きな疑問を感じます。知事は、コンパクトなまちづくりだけが頭にあって、市街地の再開発を進めることだけに目を奪われている。現下の県政にとっては、もっと切実な、かつ重要な地震・津波対策という県民の命に直結する大問題があります。
 先ほども申し上げましたが、本県の市街地のほとんどが、大きな川沿いの地域か、あるいは海岸線に沿った地域に集中してます。そして、こうした地域がいかに地震・津波の被害に遭いやすいか、一度被害を受けたときの災害の大きさはいかばかりか。我々は、5年前、東北地方で嫌というほどの経験をしたではありませんか。巨大な堤防も、津波の威力の前では無力でした。この教訓をもとに、ほとんどの自治体では抜本策として住民の高台移転に取り組んでいます。
 県は、本気で既成市街地の再開発を進め、そこに人を住ませようとしているのですか。私には全く理解できません。県が、わざわざ県民に対して、危険な場所に住めと言っているようなものであります。胸を張って県民に説明できますか。県民の命に責任を持てますか。木を見て森を見ないような議論は、やめるべきであります。
 一方で、知事は、盛んに優良農地の確保ということを強調してますが、私に言わせれば、優良な農地は、優秀な農家があってこそ維持され、受け継がれていくものであります。優秀な農家は、簡単には優良な農地を荒らすことはありません。手放すこともありません。それが、営々と農地を守り、農業を続けてきた農業の知恵であり、誇りであります。農家魂というものであります。
 まちを守るために農地転用の規制ばかりに目が行き、農家の心を忘れる、木を見て森を見ないような議論はやめるべきであります。地方のことは地方に任せてくれ、地方の自主性を尊重しよう、できるだけ地方に権限を移して地方の実情に合った行政をやっていこう、この認識は、国・地方問わず、現在の主流であります。地方分権推進の一環として農地法の規制権限も改正され、和歌山県にあっても、既に23年より2ヘクタール以下の農地転用の規制権限は町村あるいは町村農業委員会に移譲されています。今回、知事がやろうとしていることは、地方の自主性とか自立性とかを尊重しようといった、この大きな流れに逆流するものではないでしょうか。
 南海トラフ地震がいつ起こってもおかしくない今日、県民の命を真っ先に考えなければならない現状の県政にあって、知事は、いたずらに県民の生活を束縛することなく、地方のことは地方を最もよく知っている市町村長さんの判断に任せるという立場をとるべきではないのかということを再度訴え、知事の見解を問うものであります。
 そしてまた、既成市街地の空洞化対策については行政としてどういう施策を打つのか、本当に人が集まる方策なのかということをもっともっと深く掘り下げ、慎重な議論をしてほしい。お決まりの公共施設をつくればそれで事足れりとする安易な発想は、我々はこれまで何度も見てきました。そして、大方の施設は計画どおりにはいかず、維持管理費がかさみ、大きな財政負担になっていることは、また多くの事例で見てきたところであります。
 和歌山市が議論の主な対象となりますので、これ以上、私は発言を控えますが、既成の市街地の空洞化をとめるため、周辺地域の住宅建設を厳しく規制する、すなわち、人の自然な流れに対し高い壁をつくって強引に壁の中に押しとどめようとする施策、もっと大きな損失、すなわち県外への流出という手痛いしっぺ返しを受けることになると思います。
 最後に、先日、全県下に配布されました「県民の友」で、知事は「まちづくりと農地」というタイトルでこのことに触れ、かねてからの既成市街地の空洞化は旧市街地の土地の資産価値が下がることになると書かれています。多くの県民は、「まちの土地資産を守るためには、我々の資産はどうなってもいいのか。知事は、まちのことばかり考え、周辺地域のことはどうでもいいということか」と受けとめたと思いますよ。知事はどう思いますか。
○議長(前芝雅嗣君) 再質問に対する答弁を求めます。
 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 坂本議員の御指摘、重く受けとめまして、今後ともよく考えていってみたいと思います。
 坂本議員も実はよくわかっておられると思いますが、私たちがやろうとしてることにも一片の真理があると思います。ただ、坂本議員が御指摘になった点についても多大の真理がありまして、それをこういう県議会の場で議論をしたりしながら解をつくっていきたいと思いますので、また御相談をさしていただきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 再々質問を許します。
 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事ね、私の身の回りで起こった具体的な例をちょっと紹介します、時間ないんで。
 知事の所見を承りました。みなべ町は、比較的、農業後継者も多く、子供のための分家が、年間、相当な数で新築されています。これまでは、農地の転用許可はおおむね半年ぐらいでおりたんですけども、農家もそのつもりで工事やお金の工面などを準備してきました。
 それが、最近ではどうでしょう。農業委員会の話によると、最近、9カ月から10カ月かかっても許可がおりないということで、私の知り合いの農家では、子供の家を建てるにはことしは年回りがいいということで、自分の農地を宅地への転用を申請していましたが、なかなか県の段階で許可がくれないということで待ち切れず、他のまちに家を建てました。私の知る限り、このケース、3件もあります。
 聞くところによりますと、知事がなかなか書類に判を押さないので、裁決が先へ先へと引き延ばされているように聞きます。まさか一県の知事がそんなこそくなことをするはずがないと思いますが、今回の農地転用の厳格化ということをあわせ考えますと、やっぱりそうなのかなあと思ってしまいます。
 県民のおやじでなければならない知事も、もっと市町村長を信頼し、農業委員会を信頼し、何よりも県民を信頼して、温かい広い心で県政をとり行ってくれますよう心からお願いを申し上げ、挨拶とします。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 12番濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 改めまして、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 新年を健やかな気持ちで迎えた元旦のこと、本県津波予測システムから午後2時8分に「和歌山県沖で大きな津波の観測がありました」と、避難を呼びかける緊急速報エリアメールが配信されてきました。すると、私にも、あちらこちらから問い合わせの電話が入りました。本当に津波は発生しているのか、誤報ではないのか、あるいは、システムのエラーであるとかサイバーテロのしわざではないかという内容もありました。
 私も、元旦という一般的に世間がくつろいでいるタイミング、地震による揺れもなかったことからサイバーテロの可能性も高いのではと考えていたやさき、午後3時1分ごろに配信されてきた2度目のメールが「津波がさらに大きくなっています」という内容だったので再び驚き、県や関係者に確認を急ぎました。
 県を初め、市町村、県警、消防などには県民からの問い合わせの電話が相次いだほか、初売りで混雑する大型商業施設などでは、お客さんの携帯電話が一斉に鳴り、一時騒然となったとのことです。
 県防災企画課によると、誤報の原因はDONET観測情報をもとにメール配信判定を行う本システムにおいて、海面変動を判断するための基準となることしの潮汐データがシステムに入力されていなかったため、通常の潮汐変動を津波と判断したことが判明し、午後3時15分以降3回にわたって、さきのメールが誤報であったことや、配信自動化を停止して手動にしたことなどを知らせるメールを相次いで配信するという対応を行いました。
 既に、この件につきましては、今議会一般質問初日に自民党県議団・新島会長の代表質問でも取り上げられ、いわゆる誤報メール配信にまつわる一連の経緯や、原因究明の結果が人的ミスであったこと、再発防止にあらゆる対策を講じた上でシステムが再開されたことなどの説明がありました。同様に、マスコミ等による報道もなされました。そして、知事みずから、県政報告や出席された会合などでの発言の折に、また今議会冒頭においても騒動に対する謝罪を行っておられましたので、今さらこの場で県の責任を追及するつもりはありません。
 しかし、今後発生の確率が高いと懸念される南海トラフあるいは3連動地震に備えて、県内にいる人々に津波避難をいち早く知らせることができる本県津波予測システムの信頼を回復しておかなければならないと考えます。今回の騒動によって得た教訓を踏まえ、特に運用面でどのような改善策を講じられたのかをお尋ねしたいと思います。既に公表されている対応もありますが、改めて、県民への説明として、より詳細な答弁をお願いしたいと思います。
 1点目は、もしも今回のように配信された緊急速報メールについて信憑性が低いと考えられたときに、実際の津波発生状況を確認する手段はあるのでしょうか。また、津波の心配がないと判断されたとすれば、県内にいる多くの方々に対し、直ちに訂正メールを配信するなど避難の必要がないことを伝え、周知させることは可能なのでしょうか。このことが担保されていないと、せっかくの緊急速報メールがオオカミ少年扱いされてしまうのではと懸念しますが、いかがでしょうか。危機管理監にお尋ねをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
 危機管理監和歌哲也君。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 今回の誤報メールにより、新年早々、大変多くの方々に御迷惑をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。
 津波予測システムの運用再開に当たっては、サイバーテロの可能性を含め、システムの検証を徹底的に行いました。このような誤配信を二度と起こさないよう、システム全体の監視体制及び配信時の対応の強化を図ったところです。
 具体的には、サイバーテロに対しては、DONET観測情報の取得は専用回線を用いることや、ファイアウオール等によって外部からの攻撃を防ぐ等の対策を既に講じており、引き続きセキュリティー向上に努めてまいります。
 次に、監視体制の対応強化については、緊急速報メールは、沿岸部でおおむね3メートル以上の大津波になると想定される、沖合で50センチメートル以上の海面の変化をDONET観測網で観測した場合に配信いたしますが、10センチメートル以上の海面変化を観測したときに津波予測システムから複数の担当職員に自動で通知する機能を新たに追加し、津波でないと判断された場合は事前にメール配信機能を停止する対策を講じたところです。
 津波発生状況の確認につきましては、津波の原因となる地震発生の有無等を和歌山県震度情報ネットワークシステムによる県内地震計及びDONETの強震計や水圧計の観測情報で確認するとともに、和歌山地方気象台への地震・津波情報の確認等によって行います。
 また、緊急速報メールが発せられ、それが万一誤報の場合は、確認後、速やかに県内全域に訂正の緊急速報メールを配信するとともに、県総合防災情報システムにより市町村等への訂正連絡を行った上で、市町村防災行政無線等による住民への周知をお願いし、さらに報道機関及び防災わかやまメール配信サービス等を通じた県民への周知等を行います。
 本システムの適切な運用管理を行っていくことにより、津波予測システムの信頼回復に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 次に、自然災害が発生したとき、あるいは予測されるときの県や市町村職員の皆さんが防災体制の配備につくための参集基準などについてお尋ねします。
 これまでは、気象庁から発令される警報や情報の内容に応じて、職員の防災体制等措置要領に基づき、警戒及び配備体制等の発令基準や担当課室などが段階的に定められており、各事象の発生を覚知した職員は自主的に参集することになっていたそうです。
 つまり、これまでは、地震や津波が発生した場合においても、本県津波予測システムからの緊急速報メール配信は参集の判断基準になっておらず、今回の誤配信による対応では危機管理局職員のみが参集したとのことでした。
 しかし、さきの津波予測システムの運用再開時の県の説明によりますと、今後は、緊急速報メールの配信によっても配備体制2号を発令することとし、防災体制対応を強化したとのことですが、このことにつきまして、配備体制2号とはほかの配備体制とどう違うのかなど、より具体的な説明を求めます。
 また、各市町村でも同様に、災害発生時あるいは予測時の対応はマニュアル化されていると思われますが、県の防災体制と各市町村の防災体制を比べたときに、担当部署の組織構成の違いはあっても、発令の基準や情報を共有するなど、県と市町村との整合性や連携は図られているのでしょうか。地域性や位置、役所の規模などの違いもあることから全ての体制を一元化することは難しいと思いますが、県全体で正確な情報を共有し、各地域において迅速な津波避難対応を図るために、また、災害発生後の状況や情報などを相互に把握するための連携された防災体制、同様にルールづくりは必要だと考えますが、現状や改善策に対する危機管理監の御所見をお聞かせください。
○議長(前芝雅嗣君) 危機管理監。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 和歌山県地域防災計画において、災害の発生状況、または気象情報等の程度に応じて防災体制の基準を定めております。
 今般、基準を見直し、新たに津波予測システムを通じて緊急速報メールを配信した場合は自動的に災害対策本部の設置に次いで警戒レベルの高い配備体制2号が発令され、知事部局において、危機管理局を初め、県土整備部等49課室及び7振興局が自主的に参集することといたしました。
 また、市町村の防災体制につきましては、県と同様にそれぞれの地域防災計画において定められており、災害対策基本法第42条第5項において、市町村は「地域防災計画を作成し、又は修正したときは、速やかにこれを都道府県知事に報告」しなければならないとされており、計画の修正等があった場合、県において必要かつ適切な助言を行っているところであり、県と市町村の防災体制の整合性は確保されております。
 災害時における防災体制や被害情報等につきましては、県総合防災情報システムによりリアルタイムでの報告や情報収集及び共有を行い、市町村等との緊密な連携を行っております。さらに、今回のことを踏まえ、市町村等との専用防災電話の増設等、緊急時の連絡体制を強化したところです。
 今後とも、県と市町村の防災体制及び情報共有の確保について万全を期してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 3点目は、今回の騒動を教訓として生かすために津波避難行動の啓発の取り組みについてどのような展開を検討されているのかをお尋ねいたします。
 平成27年12月、国連総会において、世界津波の日が、本県の偉人である濱口梧陵さんの功績、その逸話にちなんだ11月5日に制定されました。この制定により、濱口梧陵さんの稲むらに火を放っての人命救助行動と、今後の津波から村を守るだけでなく、職を失った住民を雇用し、被災した村からの離散を防ぐため私財をなげうって防波堤を建設するなど、防災強化のみならず、被災地復興への多大な尽力と理念を世界中に発信するとともに、各国の人々の津波に対する危機意識向上と、津波による犠牲者を出さないための努力の重要性を広めることに期待が高まりました。
 ところが、元旦に起きた本県による津波避難誤報メール騒動は、県民だけでなく、多くの帰省者、他地域からの観光客を不安に陥れてしまいました。
 また、今回の世界津波の日制定に並々ならぬ尽力をされた二階総務会長も騒動の直後は大変御立腹でありましたが、その真意は、本県の防災意識の高さ、津波避難への先進的な取り組みやすぐれたシステムの導入を機会あるごとに誇りとして語ってきたがゆえに、原因が人的ミスだったということに、怒りというよりも、とてもがっかりされたのだろうと推察いたします。
 ところで、今回の誤報メール騒動について、怒りをあらわにする人が多い中、何事もなかったので安心したという感想も聞かれました。そのような人たちの中には、迫りくる危険を知らされたにもかかわらず避難行動をとることにためらってしまったとか、避難行動を起こしたとしても貴重品や避難グッズなどが不備のため何も持ち出せなかったなどと、反省の機会と捉えた非常に前向きとも言える感想も耳にいたしました。
 つまり、津波発生の際に配信される緊急速報メールについて信頼回復が果たされたとしても、県民の皆様に速やかに避難行動を起こすという習慣を身につけていただかなければ、助かる命も助からないと考えます。このような現況を踏まえ、今回の出来事を今後の教訓とし、改めて危機感を県民の皆様に持っていただくこと、個人個人が具体的にどのような行動をとるべきかを日ごろから考えてもらうためには、これまで以上に啓発への取り組みが重要だと考えます。
 そこで、県民の避難意識のさらなる向上を図るために今後どのような取り組みや展開を考えているのか、危機管理監にお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 危機管理監。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 南海トラフ地震による津波から県民の命を守り犠牲者ゼロを目指して、平成26年10月に「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」を策定し、避難経路の詳細な設定や津波避難施設及び堤防整備等を行うソフト・ハード両面の対策を計画的に実施しております。
 プログラムが真に効果を発揮するためには、県民一人一人が日ごろから津波からの早期避難に心がけていただくことが非常に重要であり、県では、避難カードの普及促進や「出張!減災教室」を初めとする各種啓発事業に取り組んできたところです。
 議員御指摘のとおり、県民の津波からの避難意識の向上を促す取り組みの継続及び充実は、大変重要であります。県は、毎年11月5日の津波防災の日にちなんで、群馬大学の片田敏孝教授などを招いて津波防災講演会を開催するとともに、市町村と連携して住民の避難訓練を継続的に実施しております。東日本大震災以降、訓練参加者数は増加しており、今年度は13万人以上の県民の参加を得て実施いたしました。
 また、稲むらの火の故事にちなむ11月5日が、昨年末、世界津波の日に制定されました。濱口梧陵翁の精神を全世界へ発信し、県民みずからが梧陵翁の功績は世界に誇れることであると自覚することが津波防災意識を高め、津波による犠牲者の軽減につながるものと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 今回の教訓を生かして、誤報メールの再発防止、情報発信の仕組みや運用の改善策、職員の皆さんの配備体制の強化など、説明を聞いて安心いたしました。
 しかし、大規模な地震や津波から県民の命を守るためには、起こり得るさまざまな状況を想定し、防災対策の精度を高めることに終わりはないと感じます。3月11日が近づくにつれ、マスメディアでは東日本大震災の特集が組まれ、テレビ等では、東北での大地震、大津波の映像を目にする機会がふえました。それを見るたびに、やはり背筋が凍る感覚がよみがえってまいります。
 濱口梧陵さんは、津波をいち早く察知し、機転をきかせて稲むらを燃やすことで村人に避難を促しました。そして、その情報に従って避難したので多くの命が助かったわけです。この話を現在に置きかえますと、梧陵さんの役割を担うのが本県の津波予測システムであり、稲むらの火が緊急速報メールということになると思います。となりますと、県民の皆さんには、緊急速報メールが届いたら直ちに避難行動を起こしていただかなければ命が助かるストーリーは成立しません。何が何でも県民の皆さんに逃げていただけるよう、これからも一丸となって頑張りましょう。
 では、次の質問に移ります。
 昨年10月、農林水産委員会の県外調査で、秋田県における木材利用振興の先進事例である木造施設を視察する機会を得ました。秋田県といえば秋田杉が有名ですが、公共施設や民間施設の木造・木質化に向けた県や市町村挙げての取り組みの成果は存在する多くの木造建築物が物語っており、本県もその積極性は大いに参考にすべきであります。
 そして、特に感じたことは、デザイン性を重視している建築物が多いという点で、訪れたのはいずれもグッドデザイン賞を受賞している建築物です。
 国際教養大学図書館は、本棚と読書スペースが対になって半円形の空間に段々の状態で設置されています。高い空間を実現している天井は、立派な柱が中心を支え、まるで傘を開いたようです。足を踏み入れた途端にため息が出たこの図書館の特徴を言葉ではうまく表現しがたいので、お配りの資料をごらんください。マスコミやネットでも多く取り上げられるこの図書館は、CMやドラマなどの撮影場所にもよく使われるそうです。
 また、リニューアルに伴い、秋田杉をふんだんに使用して木質化された秋田空港ターミナルビルの2階フロアを視察しました。出発ロビー壁面やレストラン、カフェのテーブルには網代編み、ラウンジの壁は薄くスライスした杉をクリアなガラスで挟み込んだもの、保安検査場の壁面は角材をランダムに配置しはめ込んだもの、柱は無垢板の重厚感を生かすためにれんが張りするなど、それらの部分を引き立たせる照明も工夫され、至るところに見せるこだわりが感じられ、おしゃれ感満載の内装木質化の事例でした。
 このほかにも、秋田駅の木造バスターミナルなども視察してまいりました。
 さて、和歌山県に話を移しますと、本県の森林にも紀州材という質のよい資源が豊富に育っており、その資源の利用を促進することは、我が県の経済発展に大変有意義なことであります。住宅分野も重要ですが、大量に資源利用を図るためには、公共施設や大型商業施設などの設計段階で木造・木質化を具体的なものとして取り入れていただかなければなりません。
 それを実現に導く手段として、木材や木造建築に関して豊富な知識や経験を持ち、紀州材利用を提案、推奨してくれる人材、すなわち紀州材の応援団を設計や建築に携わる人たちの中にふやしていく取り組みは必要ではないかと、平成27年2月議会での一般質問で取り上げさせていただきました。
 それに対し、当局より、「人口の減少に伴い住宅着工戸数の減少が予想される中で、福祉施設や商業施設などでの紀州材利用を積極的に推進していく必要があり(中略)まず新年度において、県内の建築士を対象に、木材を使用した耐火性能や構造等に関する法令上の制約、紀州材の特性や流通の仕組みなどについての講習会の開催等に取り組んでまいりたいと考えております」との答弁をいただきました。
 そして、今年度、全6回の講座によるきのくにわかやま木造塾が開催されました。私も、1日だけではありましたが、非住宅木造建築物の構造設計についての講座に参加させていただきました。
 この日の講師を務められたのは、全国各地で数々の体育館、記念館などの公共建築物を手がけられている、設計業界で大変有名な山田憲明先生で、これまでに手がけてきた建築物の紹介と技術や工法などについて詳しく解説をされました。もちろん、私には専門的な内容を十分理解することは困難でしたが、大変興味深く聞かせていただきました。木材の無垢の姿を生かすためのこだわりや空間をつくり出す技術など、素人の私でさえ、その高度さに驚かされました。顔見知りの受講者からお聞きした感想は、「県がこのような事業を開催してくれたことはとてもありがたく、大変参考になる」とのことでした。今後の紀州材の汎用機会の広まりに、大いに期待を抱きました。
 そこで、できることなら、この木造塾は今後も継続していただきたいと思いますが、当部局ではどのように考えていらっしゃいますか。また、今回は主に設計者を対象に実施された講座でありましたが、ターゲットを広げる意向はないのでしょうか。紀州材利用促進に向けた講座についての今後の展開についてお答えください。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) きのくにわかやま木造塾につきましては、公共施設や商業施設など、住宅以外の建築物の木造化を推進し、紀州材の需要拡大につなげていくことを目的に、本年度、初めて県内の建築士の方々を対象に開催したところでございます。
 この木造塾は、建築物の耐火性能や構造設計等に関する講習会と紀州材の特性や加工流通に関する現地研修会をそれぞれ3回、計6回実施するプログラムとなっており、全てを受講することを条件に、木造建築に意欲ある受講生22名で11月30日に開講いたしました。本年2月15日には最終回を開催し、全6回を受講いただいた16名の方に修了証書を授与しました。
 この16名の方には、木造建築の防火設計や構造設計等に関する知識と紀州材の特性や流通に対する理解を有した建築士として、住宅建築はもちろん、非住宅の建築物に対して、紀州材を活用した木造化、木質化を積極的に提案してくださる紀州材の応援団となって活躍されることを期待するとともに、これからも紀州材や木造建築に関する情報の発信に努めて連携を深めてまいります。
 今後も紀州材を積極的に活用していただける建築士をふやしていくことが重要であると考えており、引き続き、きのくにわかやま木造塾の開催に取り組んでまいります。
 また、一方で発注者となる側への働きかけも重要と考えており、平成28年度には、県土整備部と連携し、県内市町村の営繕担当者を対象とした木造建築に関する研修会を開催したいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいまの答弁をお聞きして、1つ提案なんですけども、木造塾の講師は、いずれも業界屈指の実力者だと聞いております。せっかく和歌山県との御縁ができたことですので、今後、各市町村が公共施設の建設を木造や木質化でやろうと選択されたときの派遣アドバイザーにもなっていただくよう、講師の皆さんにお願いしてはどうでしょうか。そうすれば、市町村や設計をなさる方も大変心強いのではないかと思います。これは、要望とさせていただきます。
 次の質問に移ります。
 森林におけるさまざまな産物のうち、建築用材以外のものを特用林産物と分類するそうです。例えば、キノコ類、山菜、タケノコなどの食べられるもの、コウヤマキ、サカキ、ナンテンといった葉物や枝物など、実に多くの種類があります。また、ウバメガシからつくられる紀州備長炭などの加工品も特用林産物に分類されます。
 特用林産物を生かすことは建築用材としての活用と同様に意義のあることであり、紀州で育った森林資源のすぐれた性質とイメージを大いにアピールできるという相乗効果も期待でき、林業振興にも大きく寄与するものであると考えます。
 そこで、これも特用林産物に含まれるのではないかということで、熊野の森林で育った樹木の香りを商品化した取り組みを御紹介させていただきます。
 まずは、論より証拠で、議場の皆さんのお手元に「熊野の香り」を配付させていただきました。昨年の世界遺産登録10周年を記念して作製されたものです。手にとって、真ん中のシールを指でこすってから香ってみてください。これは、熊野杉の枝葉から抽出されたアロマオイルの香りをマイクロチップに閉じ込めて表面に加工したもので、名刺、はがき、携帯電話やスマートフォンなどに張り、手軽に香りを何度も楽しんでもらえるロゴシールです。
 さて、香りを商品化しようとなったきっかけについて紹介しますと、新宮市においてリラクゼーションを提供するお店の女性経営者と、お客である熊野川町森林組合に勤務する、森に携わる仕事がしたいと大阪からIターンでやってきた林業女子の出会いから始まりました。女性経営者の、いつか熊野の香りをつくりたいという考えと、林業女子の、森林業界の低迷を憂い、振興策を模索していた思いが結びつき、これまでは使い道のなかった枝打ちされた後の枝葉を原料にしてアロマオイルをつくってみようというアイデアにたどり着きました。
 早速、彼女らは森に行き、シバハラという種類の熊野杉の枝葉を持ち帰り、水蒸気蒸留という方法でアロマオイルを抽出することに成功しました。すると、想像以上の爽やかな木の香りに手応えを感じたそうです。
 それから、さまざまな種類の樹木からも抽出を行い、同じ種類でも育った場所や環境により香りが違うことや、クロモジというクスノキ科の落葉低木からも香りの強いオイルが抽出できることがわかるなど、研究と発見の日々が続きました。そうしてでき上がったアロマオイルを「熊野の香り」と名づけ、体と心の癒やしアイテムとして売り出すこととなりました。
 新宮市を訪れる観光客から、新宮には、お土産品にする食料品はいろいろあるが、加工品が余り見当たらないという指摘をよく受けますが、熊野の森林をほうふつとさせる香りのお土産というのもなかなか斬新ではないでしょうか。
 成分につきましては、認知症の研究に長年取り組まれている近畿大学理工学部の宮澤三雄教授が行った成分分析の結果によりますと、熊野産の杉、ヒノキから得た成分は、アルツハイマー型認知症治療薬と同等の作用があり、集中力や記憶力アップにも高い効力があると言われています。また、熊野産のクロモジからは、d─カルボンという、美肌作用があり、肌荒れやしみ防止に効果がある成分が他の産地のものよりも非常に多く含まれていることが発見されました。
 人の五感の中で脳に直接作用しているのはにおいや香りを感じる嗅覚だけで、人は、においや香りとともに、その場で体験したことを無意識に記憶すると言います。観光PRイベントでも、噴霧装置を使って木の香りでおもてなしの演出をすると、訪れた人たちに懐かしさや安らぎを与え、熊野を訪れてみたいという気にさせるなど、木の国和歌山県を印象づけるために一役買っています。
 香りを通じて熊野を世界に発信し、和歌山県に足を運んでもらえるきっかけをつくりたいと、2020年東京オリンピックを視野に入れ、会場や選手村ロビーにおいて香りを施し、各部屋には香り分子を含んだアメニティーグッズを置くなど、選手がリラックスして競技に臨めるためのサポートアイテムとしての採用を目指しております。
 また、平成28年度新政策にグリーン・ツーリズムという言葉が掲げられていますが、自分自身で原料の枝葉の収穫から蒸留作業を行うアロマオイル製造体験というのもおもしろいのではないかと思います。女性はもちろん、疲労感が抜けない人たちに神秘的な熊野の森で日常の喧騒をひととき忘れてもらい、森林浴効果などのゆったりとした自然の力で疲れた体と心を癒やす体験は、リピーター獲得にもつながるのではないでしょうか。
 さて、以上、いろいろと申し上げましたが、これら特用林産物の資源利用の促進を図るために県としての支援制度はないのかと調べてみますと、既に「山の恵み」活用事業という制度がありました。特用林産物等山村資源を活用した産業振興と担い手の育成、確保を図るとともに、山村小規模集落を含めた複数の集落での広域的な取り組みを促進し、地域活力の向上を目指すものでありますが、この制度実施による効果とこれまでの利用状況や事例など、農林水産部長にお尋ねをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 「山の恵み」活用事業につきましては、平成21年度から実施し、特用林産物の生産、加工、流通、販売施設の整備などの支援を行い、生産量の維持・拡大、雇用の場の確保など、山村地域の振興に寄与していると考えてございます。
 例えば、紀州備長炭の炭窯の新設により、これまで16名の新規参入があり、またシイタケ生産施設の整備では、龍神地域において15名の地域雇用が創出されるとともに、本年度には高品質なシイタケが評価され、プレミア和歌山審査員特別賞を受賞するという成果があったところでございます。
 事業の利用状況ですが、平成27年度を含む直近3カ年で11市町、59件の実績があり、その内容は、紀州備長炭の炭窯、シイタケ生産施設、センリョウ栽培施設、サカキの集出荷施設、サンショウの加工施設、地域産品の販売施設などの整備でございます。
 特用林産物は、山村地域では貴重な収入源として大変重要と考えており、議員御紹介のアロマなどの樹木由来の精油につきましても、特用林産物に分類されます。採択条件はありますが、生産加工施設等も支援の対象となりますので、大いに活用していただきたいと考えてございます。
 今後とも、市町村や試験研究機関などと連携を図りながら、新たな資源開拓への取り組みも含め、地域資源のさらなる活用を進め、山村地域の活性化に取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、和歌山県土砂災害啓発センターについてでございます。
 この土砂災害啓発センターの設置に至った経緯は、皆さん既に御承知のとおり、平成23年9月に当地域を襲った紀伊半島大水害による大規模土砂災害を受けて今後の防災対策を強化すべく、調査研究に取り組むための拠点が必要であるとの観点から始まったものであります。
 二階総務会長を初め県選出国会議員と我々砂防事業推進議員連盟、また知事を筆頭に県当局並びに市町村が一体となって努力した結果、平成26年4月に国土交通省大規模土砂災害対策技術センターを当地域に誘致することに成功、また、このセンターを核として、国・県・町のほかに大学など研究機関から成る大規模土砂災害対策研究機構が設立され、県内各地で土砂災害の専門家による調査や研究が進められると同時に、本格的な研究拠点づくりへの準備が進められてきたというわけです。
 また、この件に関しましては、自民党県議団砂防事業推進議員連盟の前会長を務められた大沢広太郎元県議が知事に対し、平成27年2月議会において、この災害啓発センターがどのような形で情報発信などに取り組み、地域住民の安心・安全を確保するために寄与するかなどについてただされました。
 あれからちょうど1年が経過しました。建設場所は那智勝浦町の那智山に向かう途中の大門坂駐車場南側隣接地で、平成27年5月の起工式を経て建設に着手された木造2階建ての当センターは、外観を見る限りでは既に完成されており、本年4月に予定どおりオープンを迎える運びとなったことは何事にもかえがたい喜びです。
 この間、大変急を要するこの事業の実現に向けて、国に対し我々も幾度となく要望活動を行ってきたわけですが、実際は大変困難な道のりでありました。しかしながら、仁坂知事の施設は県で建設するという英断と、土地の協力をいただいた寺本那智勝浦町長を初め担当職員の方々の努力が実を結んだものと、それぞれの御尽力に深い敬意と心を込めての感謝を申し上げる次第です。
 また、このセンターの設置が地域にもたらす効果ははかり知れず、地質の特徴を調査研究していただくことでより正確な防災対策を講じるための精度を高めたり、全国各地に土砂災害に備えることの重要性を発信するだけでなく、例えば本格的な土砂災害の研究施設ということで全国から研究や視察研修のために訪れていただける機会がふえること、それによって宿泊が見込めるなど、地元地域への経済効果を地元の一人としても大いに期待を膨らませるものであります。
 つきましては、1年前のやりとりと重複する部分もあろうかと思いますが、オープンを間近に控えた時期でもありますので、この施設がもたらす意義や効果など、改めて知事に御所見をお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県土砂災害啓発センターは、国の大規模土砂災害対策技術センターを誘致するということのために考えた制度でございます。現在、国の機関を地方移転しましょうというような話がありますが、スケールは小さいんですけども、まさにその1つのいい例であったんじゃないか、そんなふうに思っております。
 国の大規模土砂災害対策技術センターということで、土砂災害に関する調査研究の実施をここでやっていただく、国からも研究職の人に来ていただいて、それから和歌山県からも若手を中心にして技術を磨くような人をそこへ派遣して一緒に研究をする、さらに、その研究成果などに関する発信と啓発の拠点は県でやって、これが和歌山県土砂災害啓発センターであり、それから、建物は県で啓発センターの名目で建てると、こういうことでございました。
 この4月中のオープンを予定しておりまして、濱口議員を初め県議会議員の皆様、地元市町村、県選出国会議員の方々など、多くの方々に御尽力いただきまして、本当に感謝しております。
 県としては、実は、国土交通省と、それから和歌山県の施設としてつくっていこうと初めは思ったんですが、そういたしますと、三重大学、和歌山大学、京都大学、北海道大学などの大学が続々と参加したいというふうに申し入れてまいりまして、そこで、実は設計もかなり手直しをして大きなものにしていったという経緯もございます。こういう研究機関から成る大規模土砂災害対策研究機構というのをみんなでつくって、それで国の技術センターが核となって調査研究を進めるということになっております。
 那智勝浦町は、紀伊半島大水害において甚大な被害を受けた地であります。その地に日本を代表する土砂災害の研究者が集結し、最先端の調査研究を行うとともに、過去の災害の経験や教訓、さらには、土砂災害の恐ろしさや発生メカニズムなどを県内外に、研究をして広く発信していくということにこの施設の意義があると思います。
 昨今頻発する大規模災害において、今後同じような悲劇を繰り返さないためにこの施設を広く活用していきたいと考えておりまして、これは、和歌山県だけではなくて、もちろん那智勝浦町だけではなくて、全国にも役立つような、そういう組織になるようにしてまいりたいと、そんなふうに思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 答弁をいただきました。オープンがとても楽しみであります。
 以上をもちまして、質問を終わらせていただきます。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時48分休憩
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  午後1時0分再開
○副議長(藤山将材君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行います。
 高校入試も近づいてまいりまして、高校を受験する子供たちにとっても悩ましい春がやってまいります。
 今回は、まず奨学金制度についての県の取り組みをお聞きしたいというふうに思います。
 近年、奨学金制度の問題が大きくクローズアップされるようになりました。それは、高校や大学を卒業すると同時に多額の借金を背負って社会生活をスタートさせる方が増加しているということです。新たに社会人になった方に何が起きているのか。どうしてそのようなことになってしまったのでしょう。
 現在、県下の学生・生徒が利用している奨学金制度には、日本学生支援機構と和歌山県が実施している奨学金制度があります。
 日本学生支援機構は、主に大学に進学した学生を対象に奨学金を貸し付けています。2種類の貸し付けがあり、第1種奨学金は無利子、第2種奨学金は有利子となっています。第1種無利子の奨学金は、特にすぐれた学生・生徒で、経済的理由により著しく就学困難な方に貸与を行っています。
 第2種有利子の奨学金は、年3%の利率を上限に、第1種奨学金より緩やかな基準により選考された方に貸与されています。
 お配りしている資料のグラフをごらんいただければと思いますが、経年で見てみると、日本学生支援機構の場合、無利子奨学金の貸与人数は横ばいです。それに比べて、有利子奨学金の貸与人数は増加している実態がわかります。
 1998年では、無利子奨学金貸与人数が39万人、有利子奨学金貸与人数が11万人となっています。2012年では、無利子奨学金貸与人数が38万人、有利子奨学金貸与人数が96万人となっており、無利子奨学金貸与人数はほぼ横ばいでありますが、有利子奨学金貸与人数は9倍も増加しています。
 和歌山県では、第1種奨学金採用候補者数は933人、第2種奨学金採用候補者は1448人となっており、やはり第2種奨学金を借りている方がふえているという傾向であります。奨学金が奨学金という名のもとに有利子で貸し付ける、まさに学生ローンとなっています。
 子供の貧困や奨学金の返済が社会問題となり、新聞やマスコミ等で取り上げられるようになったこともあり、2~3年前からは第1種奨学金の枠をふやし、第2種奨学金枠を小さくする動きが出てきていますが、まだまだその差は歴然としています。
 また、奨学金を利用している学生は、1998年では全大学生のうち23.9%であったのに対し、2012年では大学昼間部で52.5%となっています。約半数の学生が奨学金を利用している状況となっています。
 奨学金を利用する学生が増加している原因として、国公立大学授業料の上昇が挙げられます。大学入学時の費用は、入学金と授業料を合わせると2010年には81万7800円余りで、20年前の52万5000円と比べると30万以上の値上げとなっています。
 学費の値上げと反比例して、学生を支える保護者世帯の年収は、中央値ではありますが、1998年に544万円であったのに対し、2009年では438万と下降しているのです。奨学金を借りなければ進学できない現在教育の実態が浮かび上がります。
 例えば、県内の高校生が高校等奨学金の国公立自宅外区分という区分で奨学金──これ2万3000円なんですが──これを利用したとしますと、年間27万6000円、3年間で82万8000円が卒業時における学生本人の借金となります。その後、大学に行くとして、無利子の第1種奨学金を受けられたとして、国公立自宅外区分で月額5万1000円の奨学金を利用したとすると年間61万2000円、4年間で244万8000円を借りることになります。合計327万6000円、これが卒業時に本人の借金として22歳の肩に背負わされることになります。
 人によってはこの第1種奨学金と第2種奨学金の双方を借りている学生もいるということで、それがどれほど過酷なことか、想像していただきたいと思います。これが今の若い人たちの実態であります。
 このような社会背景があり、卒業後の就職難が追い打ちをかけています。本人が失業や無業、非正規雇用や周辺的正規雇用といった状況に直面しており、返したくても返せない現状であります。卒業したからといって安定した生活を送れる保証もない中、奨学金滞納者は急増しています。
 全国的な動向を申し上げましたが、県では今年度、新たに大学生等進学給付金が創設されました。給付型奨学金の導入については全国的にも早い導入で、画期的な取り組みとして高く評価したいと思います。
 しかし、今回創設された給付型奨学金の総額は2400万円余り。1人当たり60万円で、給付は対象人数が40人と、利用対象者から考えると十分な数字とは言えません。
 また、これまでも実施されてきた和歌山県修学奨励金制度は、高校等奨学金と大学・短大等を対象にした進学助成金、一時金があり、これらは無利子貸与であります。無利子ではありますが、借金であることは変わりませんので、和歌山県では、この無利子の貸与の奨学金は大体816人余りが利用しております。
 そこで、知事にお伺いします。
 教育の機会均等は誰もが保障される権利でありますが、日本の教育制度は誰もが平等に教育を受けられる制度になっていないというのが私の実感であります。
 知事は、今回、給付型奨学金を創設されました。このことは評価しますが、高校や大学の卒業時に多額の借金を抱えてしまう、この今の日本の奨学金制度のあり方について、どのような見解をお持ちでしょうか。所見をお伺いしたいと思います。
 また、和歌山県には県内に大学が少ないということもあり、全国的に見て県外大学への進学は全国一です。このような状況を少しでも緩和する意味でも、修学奨励金については、地元に残る高校生などについて奨学金の免除制度を導入してはいかがでしょうか。
 また、返還の期日についても、修学奨励金が10年、進学助成金、一時金が5年と期日が決められていますが、近年は厳しい生活を余儀なくされている方もふえています。どうしても返済できない方に猶予期間を延長するなど、柔軟な対応をしていただきたいと考えます。
 さらに、その期限を過ぎた場合の10.95%という延滞利息も、廃止するか利率を下げるなどの検討をしていただきたいと考えています。
 以上3点について、教育長に見解をお伺いします。
○副議長(藤山将材君) ただいまの藤本眞利子さんの質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 経済的な理由により、高い志を持ち、また学力も相当ある生徒が進学を断念するということのないように、教育機会を保障することは重要であります。このため、奨学金制度や授業料の減免などの支援策が行われているところではございます。
 しかしながら、奨学金については、貧困家庭の増加や卒業後の就職難等による返還金の滞納が問題となっており、貸与型の奨学金のみならず、給付型の奨学金の充実が必要であると私も考えております。
 このようなことから、県としては、低所得世帯の向学心のある学生に対して、大学進学を支援する独自の給付金制度の創設について今議会に提案しているところでございます。
 また、この中では、地元に残る人もさらに優遇するということにしていきたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 修学奨励金の返還時における負担軽減についてお答え申し上げます。
 免除対象者の拡充につきましては、返還金が次世代への奨学金となることから、現状では困難であると考えてございます。
 次に、返還猶予につきましては、病気や生活保護などの場合は猶予を実施しており、返還者の実情に合った負担軽減に取り組んでいるところでございます。
 次に、延滞利息につきましては、期日どおりの返還者との公平性から、また他の延滞利息と比べて現行の割合が妥当であると考えてございます。
 このような制度のもと、経済的な事情を抱えた方には丁寧な相談を実施し、個々に応じた返還をお願いしているところでございます。
 今後は、奨学金制度の維持を図りつつ、給付金制度を含め、関係部局と連携しながら修学支援の充実に努めるとともに、国への制度拡充を働きかけてまいりたいと考えてございます。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 知事には、日本の奨学金制度についての所見をお伺いしたわけです。
 この日本の高等学校、大学等への公的支出というのはGDPの約0.5%ということで、OECDの平均の約半分以下であります。日本は最下位です。OECDが各国の高等教育の授業料と奨学金を4つのモデルに分けた分析がありまして、その中で日本は、授業料が高額で学生の支援体制が未整備というふうな、とっても悪い分類に属されています。先進諸国が教育に係る費用を無料やとか低額に抑えていることに比べると、日本の教育費は各家庭に大きな負担を強いています。
 ましてや、大学進学時の支出は、最初から大学進学を断念する生徒を生み出し、子供たちの夢を諦めさせる要因となっています。この点についても知事は十分理解されていると思います。
 今回、県で実施している貸与型の修学奨励金、進学助成金の返済について、猶予項目を設置してほしい、返済期限の緩和や延滞利息の低減などを提言いたしました。まあ、現時点は難しいとの教育長の答弁でありました。
 日本学生支援機構でも、以前は教員になったら免除があったり──公務員になったら免除があったりとか──したんですが、もうこれは廃止になっています。
 この問題は、未来を担う将来を託す若い人材を確保するためにも本当に重要なので、奨学金制度のあり方について、国を巻き込んだ議論を、この日本学生支援機構に対しても、和歌山からしっかりと発信して見直しをしていただきたい、また給付型の奨学金についてもしっかりと創設していただきたいというふうなことを発信していただきたいというふうに、強く要望いたします。
 次の質問に入ります。
 次に、県民の方からも御相談をいただいている、県庁前交差点の一角にかつてあった扇の芝の整備と周辺の景観の整備についてお伺いします。
 「紀伊国名所図会」によると、和歌山城の南西隅にある土地、その形状と芝生を植えていることから「扇の芝」と呼ばれていました。この扇の芝には、隣接して南北約350メートルの細長い馬場があったそうです。武士が馬に乗りながら弓を射る、流鏑馬の練習が行われていたと言われています。その馬場に沿って東側には少し根が上がった松並木があり、木陰で武士たちの武技を見物する老若男女の姿があったと記されています。
 扇の芝からは、高石垣越しに連立式天守閣が間近に見えたそうです。現在、その高石垣は全く見えない状態になっています。お堀を挟んだ市役所側から見る高石垣は、手入れもされ、大変美しい姿を私たちに見せてくれています。
 しかし、民家が隣接している扇の芝側は、高石垣の間から樹木が茂り、草に覆われ、このまま放置すれば高石垣自体が壊れてしまうのではないかと感じる状態です。
 扇の芝の景観をめぐっては、これまでも市民の方からも指摘がされてまいりました。扇の芝において、和歌山公園の敷地の一部である高石垣から1.5メートルの範囲は、公園敷地内でもあるにもかかわらず、都市公園法に定められていない民家や商店、駐車場が高石垣の際まであり、和歌山市は許可を与えて使用料を徴収してきました。このことは、2008年11月24日付の「読売新聞」や同月26日付の「産経新聞」に記事が掲載されています。
 写真を少し資料としてお出しをしています。石垣に隣接というんですか、もう寄りかかったような状態が見えると思います。このような状態を、平成21年度に行われた和歌山市の包括外部監査報告書によると、和歌山城管理事務所の所管の分で、「民家や店舗が和歌山城、和歌山公園の土地の一部を違法占拠している。都市公園法に違反しているため、早急に適切な処理をする必要がある」と指摘されています。
 このような指摘から10年余りが経過したところで、ようやく和歌山市も重い腰を上げ、史跡和歌山城整備計画の見直しを図ることとなりました。市では、平成28年度に見直し計画の策定に取りかかり、その中で扇の芝の史跡指定に向けた準備を進めていくこととしています。
 県都和歌山市の顔でもある和歌山城の、その中でも、県庁に最も近い扇の芝付近の景観は、観光立県を目指す県としても放置できない問題だと考えます。
 天守閣の南西側は、和歌山城の景観を最もよく見せるビューポイントです。しかし、その手前の国道にかかる陸橋や扇の芝向かいの建物群も老朽化が目立ちます。扇の芝を史跡に指定するといった動きと同時に、その周辺の景観整備が欠かせないものと考えます。
 そこで、知事にお伺いします。
 先ほどからお話をしているように、私は扇の芝は価値の高い場所であると考えますが、その価値については、どのように捉えられていますか。
 さらに、知事もよくごらんになっていると思いますが、扇の芝の一画は、民家や事務所、シャッターで閉鎖状態の店舗などが密集し、風格のある和歌山城天守閣など、周辺景観を台なしにしています。
 扇の芝史跡整備事業の主体はあくまでも和歌山市でありますが、知事は都市計画においても市とともに協調していく方向を示されています。扇の芝史跡追加指定に伴い、その周辺を含めた景観整備についての所見をお伺いします。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 藤本議員御指摘のように、扇の芝は、昔から武士の空間でありながら町人にも開放されており、城外にあっても和歌山城と一体となった歴史的に希少な場所でありまして、史跡として追加指定を目指すのにふさわしい場所だと思っております。
 こうした中、和歌山市がこの扇の芝地区を含む和歌山城周辺を景観重点地区として指定しているところでありますが、ようやくその具体化を目指そうという動きが出てまいりましたことは大変いいことだと思います。今後、扇の芝の史跡整備に向けて取り組みを進めていくと聞いておりまして、評価しているところでございます。
 また、その向かい側の地区についても、空き地や老朽化した建築物等が点在し、和歌山城との一体景観として必ずしも好ましくない状況にあると認識しております。
 また、現に扇の芝で商売をしている人とか、あるいは住んでおられる人にも、そこを史跡として整備しようといたしますと移ってもらわないといけませんが、そうすると同じような条件の代替地も必要でございます。
 扇の芝とその向かい側の地区との一体整備は、史跡和歌山城の価値をさらに高めるとともに、魅力あるまちづくりのためにも必要と思っております。
 こうしたことから、市の扇の芝の史跡整備にあわせ、その周辺一体のまちづくりについて、県としても主体的に取り組み、市と一緒になって再開発も含めた整備手法の検討等を行っているところでありまして、その実現に向けて和歌山市に協力してまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 県としても最大限協力して取り組んでいきますということですので、大変前向きで、うれしい答弁だと思います。
 でも、市としても、扇の芝を史跡指定に追加する段取りからと思います。そのためには住んでる方々に同意をいただかなければなりませんので、あんまりゆっくりしていたんではいつになるかわかりませんので、ともに協力していただきまして、もうあらゆる方面からアプローチしていただいて、少しでも早く進められるようによろしくお願いいたします。
 次の質問に入ります。
 3問目は、障害者差別解消法の取り組み状況についてお聞きしたいと思います。
 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律、いわゆる障害者差別解消法が2013年6月19日に成立し、この2016年4月から施行される運びとなっています。
 この法律は、「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」と明記し、行政機関等及び事業者に対し、障害を理由とした差別を解消するための措置を行うように定めたものであります。
 障害者基本法第4条には、差別する行為を禁止し、社会的障壁を取り除くための合理的配慮をしないと差別になると規定していましたが、今回の法律ではもう一歩踏み込んで、「具体的に実現しなければならない」と定められました。
 これまでの障害者差別とは、目が見えない、聞こえない、歩けない、その人たちが持っている特性から生じると多く考えられてきましたが、そういった個人の特性のため働けない、また、さまざまな活動に参加できない社会の仕組みこそが差別であるとしています。
 障害者差別解消法第7条には、行政機関等では、「性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的配慮をしなければならない」と明記されています。画期的な法律ではありますが、この法律が円滑に実施され、どのような場面でも対応できるようにするためには、まだまだ高いハードルがあると感じています。
 障害者差別解消法の内容を円滑に実施するためには、障害者の日常及び社会生活をカバーする幅広い分野にわたる取り組みが必要と考えます。社会的障壁を除去するためにどのような対策を考えているのか、県の取り組み状況について福祉保健部長にお伺いします。
 次に、お伺いします。
 ここ近年、何らかの障害を持った児童生徒は増加傾向にあります。和歌山県立特別支援学校の児童生徒数は、平成17年度に1051人でありましたが、平成27年度には1407人と400人余り増加しています。また、小中学校の特別支援学級在籍児童数は、小学校において平成17年度に658人であったものが、平成27年度には1110人、中学校においては257人から474人と、倍近い増加であります。児童生徒の数が減少しているにもかかわらず障害を持つ児童生徒の数が増加している状況の中で、学校での対応が問われていると思います。
 児童生徒がどのような障害を持っていたとしても、全ての子供たちが特性に応じた教育を受けることができる学校にしていかなければなりません。しかし、残念ながら、毎日通う学校は、他の公共建築物の中でも最もバリアフリー化がおくれています。エレベーター設置やトイレの問題など、指摘されて久しいにもかかわらず、なかなか改善されずに今に至っています。
 そこで、教育長にお伺いします。
 社会的障壁を除去し、バリアフリー化を進める観点から、学校の取り組み状況と障害者差別解消法の趣旨が保護者や教職員に理解しやすい啓発も重要だと考えますが、この取り組み状況についてもお聞かせください。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 県では、紀の国障害者プラン2014において障害を理由とする差別の禁止を基本原則の1つとしており、障害の有無によって分け隔てることなく相互に人格と個性を尊重し、支え合う共生社会の実現を目指し、総合的な障害者施策を進めているところです。また、和歌山県福祉のまちづくり条例に基づき、公共施設や公共交通機関のバリアフリー化を進めることにより、誰もが住みやすいまちづくりに取り組んでおります。
 本年4月から障害者差別解消法が施行され、行政機関はもとより、民間事業者や全ての県民がそれぞれの立場で障害や障害のある方について一層理解を深める必要があると考えております。
 そのため、県では、県が事業や事務を実施するに当たり障害のある方の社会参加を促進できるよう、具体的な配慮事例やそれぞれの障害特性に応じた配慮事項を盛り込んだ職員対応要領を策定したところであり、今後、研修等を通じて職員に周知徹底を図ってまいります。
 また、障害のある方の社会参加を促進するためには市町村や民間事業者における取り組みも重要であり、各省庁が策定した事業分野ごとの指針に基づき、適切な対応が図れるよう、所管する各部局から周知してまいります。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 社会的障壁の除去に向けた合理的な配慮の提供については、具体的な場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであるとされています。
 県教育委員会では、障害のある子供たちがその特性に応じた十分な教育が受けられるよう、一人一人の教育的ニーズの把握と、保護者や子供本人の意向等を十分確認しながら、必要とされる合理的な配慮の内容を慎重に検討し、その提供に努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、学校のバリアフリーの取り組み状況についてですが、障害のある児童生徒が小・中・高等学校に入学を希望している場合は、先ほど述べました考え方に基づき、これまでも障害の状態を事前に把握し、それに応じて、例えばスロープ、階段昇降機やエレベーター等の整備に努めてございます。また、施設設備が整うまで、障害の状態に応じてホームルーム教室を1階に移したりして対応している場合もございます。
 このような個別の対応以外に、県教育委員会、市町村教育委員会は、エレベーターや段差の解消、障害者トイレの整備など、バリアフリー化に努めてまいりました。
 県教育委員会としましては、これまで以上に学校のバリアフリー化に努めるとともに、市町村教育委員会に対しても、施設整備に係る説明会や整備計画の聴取時など、バリアフリー化を積極的に促してまいります。また、そのための財源の確保については、あらゆる機会を捉え、引き続き国に対して強く働きかけるとともに、市町村教育委員会へは適時適切に情報を提供してまいります。
 次に、教職員と保護者の皆様が本法律の趣旨への理解を深めることは重要であり、そのための学校の役割は大きいものと認識してございます。
 今回の法律の施行に伴い作成している県立学校職員の対応要領は、合理的な配慮の提供に関する基本的な考え方を示すとともに、その留意点や具体例を記載しており、今後、教職員に周知徹底してまいります。また、市町村教育委員会に対しましては、県作成要領を参考として示し、対応要領の策定を強く働きかけてまいります。
 県民や保護者の皆様には、本年度、障害のある子供たちの就学先の決定と合理的配慮の提供との関連性をテーマにした教育広報テレビ番組を制作し、周知啓発を行ったところです。今後も、例年開催している特別支援教育啓発セミナーにおいて、法の趣旨や合理的な配慮の提供に関する内容を取り入れるなど、引き続き周知徹底に努めてまいります。
 県教育委員会では、全ての子供たちの学びがより豊かなものとなるよう、法の趣旨を踏まえた適切な対応に一層努めてまいります。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御意見だけ申し上げたいと思うんですが、障害者の障害を持ってる皆さんにとっては、この社会的障壁というふうな言葉であらわされていますけど、これこそが差別であるということが明確にされたわけですね。障害の特性に違いはあっても、それぞれの特性にかかわる社会的障壁を取り除く作業が、あらゆる場面で求められていくんだというふうに思います。
 社会的障壁を取り除いた社会というのは、高齢者であったり子供であったり、社会的な弱者にとっても住みやすい社会だというふうに思います。
 また、その中でも、先ほども申し上げましたけど、公共建築の中では、学校の施設がやっぱり最もバリアフリー化がおくれているというふうに思うんですね。県も市もですけど、教育委員会はエレベーターや段差の解消とか、それから障害者トイレの整備などバリアフリー化に努めてきたというふうに答弁をいただいたんですが、その数はやっぱり圧倒的に少ないという状況だと思います。
 障害のある児童生徒が入学を希望したからではなくて、どの小学校も、どの中学校も、どの高校でも、障害のある子供たちが安心して通える学校環境がこれからは求められていくと思うんです。しっかりと取り組んでいただけるように要望すると同時に、今後の進捗も見守っていきたいというふうに思います。
 次の質問に移ります。
 最後に、和歌山県人権尊重の社会づくり条例の見直しについてお聞きします。
 昨年の11月の16日、東京におきまして二階代議士が実行委員長となりまして、自民、民主、公明と超党派の国会議員、それから和歌山県からは、仁坂知事を先頭に、関係部局、各市町村の首長さん、市町村議会議員など大勢の皆さんが参加され、人権フォーラムが開催されました。県議会からも大勢の同僚・先輩議員が駆けつけられ、同和問題解決のためのフォーラムが成功裏に終了いたしました。
 東京での人権フォーラムの開催は、和歌山県が同和問題の解決を目指し、率先して開催したことを大きくアピールする機会となり、その意義は大変大きなものがあったと考えます。
 フォーラムでは、「同和問題解決に向けた長年にわたる取組にもかかわらず、一部週刊誌による部落差別を助長する報道や、インターネット上での部落地名総鑑の掲載、不動産会社による土地差別事件など(中略)後を絶たない状況であり、これらを放置することは断じて許されるものではない。このような中、特に(中略)企業・団体等による『部落差別撤廃のための法律』が早期に制定されるよう強く要望する必要がある」という決議が全会一致で採択されました。
 このような動きを見た全国の関係者からは、同和問題の解決に向け、和歌山県が全国を牽引してほしいとの熱い思いが寄せられています。
 差別撤廃に向けた和歌山県の取り組みが全国に波及し、政府を動かす大きな流れになることを願っていますが、その道はなかなか厳しいものがあると言わざるを得ません。
 2016年、ことしの4月1日付で、新たな「部落地名総鑑」が発売されるとの情報がありました。これはインターネット上で出されているわけですが、鳥取ループと名乗るグループがネット上に公開したものです。公開内容は、以下のようなものであります。
 お手元にお配りをいたしました全国部落調査という、こういう表紙の「部落地名総鑑」の原典というふうなことで、復刻というふうなことで出されているんですが、これは表紙だけでありまして、この続きには全国の部落の地名が出されているという驚くべき内容の本であります。
 その中では、「1975年11月に発覚し、翌月12日の部落解放同盟の記者会見によりその存在が全国に発表された『人事極秘 特殊部落地名総鑑』──すなわち『部落地名総鑑』。これはインターネットで書かれている文章です──はどのような物だったのか」。筆者というのは、これを出している人ですね、「筆者は長らくその謎を追求してきましたが、奇しくも部落地名総鑑事件から40年にあたる昨年12月、部落地名総鑑の原典である『全國部落調査』(1936年財團法人中央融和事業協會作成)を発見した」というふうにしています。そして、「電子化に成功しました」として、アマゾンで単行本1000円として予約注文を受け付ける内容となっています。
 そのアマゾンの予約注文は削除されたそうでありますが、先ほど言わしてもらったように、こういった資料、これに全ての地名が載っているというものが、このような形でインターネット上に出ています。
 同和問題を食い物にした悪質な差別でございまして、同和問題関係者だけではなくて、差別を解決しようという多くの方々の思いを踏みにじる悪質な事件だと言えます。しかも、近年では、人を差別して何が悪いんやというふうな、大変憂慮すべき、恥ずべき傾向があらわれているように思います。もうヘイトスピーチなどは、その顕著な事例であると思います。今回のこの事件もそうであります。人権侵害とは何か、差別とは何か、人間として根本的な問いかけをしなければならない事態が発生しています。また、毎年行われる差別報告集会では、後を絶たない部落差別事案が報告されています。
 このように、部落地名総鑑事件のような差別がまかり通り、それを禁止し罰する法律がないのが現状であります。
 和歌山県では、平成14年に和歌山県人権尊重の社会づくり条例を制定しました。
 条例では、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。世界人権宣言にうたわれているこの理念は、人類普遍の原理であり、日本国憲法の精神にかなうものである。 この理念の下に、社会的身分、門地、人種、民族、信条、性別等を理由としたあらゆる人権侵害や不当な差別が行われることなく、すべての人の人権が尊重される社会をつくることは、私たちみんなの願いである」とし、結びに、「ここに、私たちは、自然と人間との共生を目指す和歌山県で、人権尊重の社会づくりを進めるために、不断の努力を傾けることを決意し、この条例を制定する」とあります。
 そこで、お伺いします。
 このような差別事件が後を絶たない状況の中、これまでの条例では、差別をする人を啓発することも誤った考え方を問いただすこともできません。差別されたらされっ放しという状況で、条例が実質何の効果も出せていません。
 条例制定から14年が経過しています。差別を禁止し、差別を許さない実効性のあるものに見直す必要があると考えますが、知事の所見をお伺いします。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 県におきましては、平成14年に制定した人権尊重の社会づくり条例に基づき、人権施策基本方針を策定しております。この基本方針に沿って、県内において発生するさまざまな人権侵害に対して行政が主体的に取り組む必要があるとの認識のもと、国や市町村等と連携し、行為者への啓発や被害者への助言などを行っております。
 しかしながら、御指摘のように、インターネットを利用した差別表現の流布やヘイトスピーチに加え、差別を助長、拡散するおそれのある書物の販売などの行為が散見され、絶対にこれはいけないことだというふうに思います。とりわけ、御指摘の書物の出版につきましては、昨日、打ち合わせのときにそれを教えてもらいまして、怒りに胸が震えまして、「直ちにそんなものは条例で禁止してしまえ」と口走ったんでございますが、少しいさめられました。というのと、それから本日議論がありましたように、私もいろんな前職がございまして、その法制の問題とかいろいろ考えると、ちょっと憲法の議論としては勝てないかなというふうに今思いました。
 ただ、例えば同じような憲法上の問題を抱えている脱法ドラッグの問題については工夫をいたしまして、それで、そんなものは和歌山県では、やらないようにすることを今一生懸命やってるわけでございます。ただ、それも正面からぶち当たったわけではございませんで、うまく悪質な業者さんの意向を利用して、そういうふうにしました。そういうような知恵を今のところ考えておりませんので、本件についてはちょっと条例では無理かなあというふうに現状では思っています。
 また、これは全国的な課題でもございまして、国が責任を持って法律を制定していくべきであると考えます。
 今後とも、県としては、これまでの人権救済の取り組みに一層注力するとともに、県民の人権意識の高揚を図るため、関係機関とともに啓発に取り組んでまいりたいと思います。また、人権侵害に対処するための実効性のある法制度が一日も早く整備されるように、この間の大会のときもそうでございましたように、国に対して引き続き、さまざまな機会を捉えて強く求めていきたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 藤本眞利子さん。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 知事の答弁の中にもありましたけども、私も、これ見るだけでも顔が赤くなるぐらい腹立たしい気持ちになってくるんですが、答弁では県条例では限界があるというふうなこと、それも私もある一定理解はできますし、こんなことがまかり通ってはいけないというような思いでいっぱいですので、一日も早くこういう実効性のある法整備を強く求めていただくとともに、県としてもその取り組みを進めていただきたいというふうに強く要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、藤本眞利子さんの質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 37番谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)
○谷口和樹君 皆さん、こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさしていただきたいと思います。37番谷口和樹でございます。よろしくお願いいたします。
 今、私の住む田辺市では、田辺スポーツパークが整備された後、スポーツ合宿での明るい話題というのが続いています。
 野球では、1月に韓国のキョンヒ大学、大阪ガス、近畿大学、NTT西日本ほか、独立リーグ兵庫ブルーサンダーズが次のドラフト候補を連れてバッテリーキャンプに来ていただいた。このように、今までなかったチームの合宿で、にわかにスポーツ合宿の機運というのが盛り上がっています。
 同時に、これを契機に、真砂市長のトップセールスで梅やミカンなどのプロモーションも積極的に行われています。その経済効果というのは明らかに大きいものでありますが、それ以上に紀南の経済の低迷、これは深刻でございます。特に農業経営の逼迫感、これは深刻なものがあります。
 そんな中で、午前中の先輩議員の質問にもありましたけども、農振除外の厳格化、「実家の近くの農地に家を建てて両親を手伝いに戻りたいが、家を建つのが認められない」、「不安定な農業収入を少しでも安定させたい、そういう思いで、形の悪い農地で太陽光発電をしたいのだが、認められない」などと、そういった声が届いております。すぐ近くにパネルがある、同じように家を建てている、そういう状況があるにもかかわらずです。
 紀南に限っては、完全に農地を守って農家を守らず、こういう状況であると思います。ドーナツ化現象の都市部と若い住民が山間の実家の近くに家を建てるのとは全然違います。太陽光などのほかの収入で、気象が不安定な昨今の経営のリスク、これを分けていくのは当然ではないかと思います。
 そもそも、県内全てのルールの厳格化、ルールが曖昧になっているので引き締めたいというのなら、別にばあんと発表する、そういうことをせずに、組織の中で「自分たちで話し合いでもうちょっとちゃんと、ちょっとずつちゃんとやろか」と話し合って、少しずつ詰めていけばよかったのではないのでしょうか。そうしていれば、市町村でこのような混乱もなかったように思います。
 県の不断の努力は紛れもなく評価するところではございますが、今回は明らかにミスリードだと思います。このことを一言申し上げまして、一般質問に入らしていただきたいと思います。
 1つ目の質問に入らせていただきます。
 田辺・西牟婁県立高校の今後のあり方について。
 (1)第2期きのくに教育審議会報告を受けて、田辺・西牟婁県立高校の学校数とクラス数の方向性についてお聞きをしていきます。
 現在、田辺・西牟婁には県立高校が4校、分校が1校あります。2014年度の募集定員では、ここから3クラスが減少しました。
 資料1の田辺市の中学校生徒数推移を見ていただきますと、5年後には206人減で、年に30人ペースで生徒数が減少するのが確認できます。ここに合わせて西牟婁郡の生徒数減も加味されるわけですが、高校進学対象者は、この平成33年前後までに再度3クラス以上減が予想されます。
 資料2は、本年度、田辺・西牟婁県立高校のクラス数と定員でございます。田辺高校8クラス、田辺工業4クラス、神島高校7クラス、熊野高校5クラス、龍神分校1クラス。
 仮に2014年のように中高一貫の田辺高校、龍神分校の減がないとするならば、他の3校のクラス数が減り、田辺工業は3クラス、神島高校は6クラス、熊野高校は4クラスになることが予測されます。
 一昨年の12月議会で質問させていただいたそのときに、教育審議会での協議を始めるということでしたが、経過と報告書を見せていただく中で、県立高校の存続の方向性が、今まで望ましいクラス数の下限が4クラスであったところが4クラス以下でも残していく、そのように報告がなされていました。
 今後も、入学者が数年に一度3クラス分ずつ減少し、遠くなく1学年3クラスを切ってくる、こういうことが予測される中で、改めて第2期きのくに教育審議会の報告を受けて、半径5キロにある田辺・西牟婁の県立高校4校の今後の方向性を教育長にお聞きいたします。
○副議長(藤山将材君) ただいまの谷口和樹君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 今後の県立高等学校再編整備の方向性につきましては、今、議員のお話がございましたように、きのくに教育審議会の報告を踏まえ、これまで慎重に検討を重ね、このほど県立高等学校再編整備基本方針を取りまとめました。この基本方針につきましては、関係に御説明申し上げ、近々パブリックコメント等を実施し、御意見をいただくとしてございます。
 具体的な再編の実施計画につきましては、この基本方針をもとに今後策定することとしてございます。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 続いて、2つ目に入ります。
 田辺・西牟婁の地域別教育審議会の必要性についてお聞きをしていきます。
 委員の構成がほぼ紀北で構成されている第2期きのくに教育審議会ですが、議事録を見せていただきました。県内全体を考えて協議をされていましたが、経過から見て、やはり地域性を考慮するために地区別の審議の必要性を感じますので、地域別の教育審議会の開催についてお聞きをしたいと思います。
 単純に生徒数の減少による教育環境の影響もありますが、例えば減っている高校ではマイナー競技や集団競技のクラブの廃部、その方向を検討する、そういった問題も出てきます。
 特に田辺・西牟婁地域は、近い範囲に4校が集まっています。先ほども申し上げましたが、半径5キロの間にその4校というのが集まっています。市内の中心部の3校を産業系の高校と普通科校の2校に再編し、普通学科を熊野高校などに振りかえ、クラス数を確保していき、産業系は近くにある技能学校と併設することで設備と充実を図る、このような方向性、構想というのも考えられるところでありますけれども、クラス数が減り切ってから取り組むより、余力を持ってビジョンを語れる、そういう時期に進めなければ生徒のためにならないと思います。
 このような議論も地域性を共有できるその範囲で検討があってこそ、そういうふうに考えますが、いかがでしょうか。田辺・西牟婁の地域別教育審議会の必要性について、教育長にお伺いいたします。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県立高校の再編につきましては、これまで、県教育委員会主催の保護者や学校関係者、地域の皆様等への説明会に加え、要望に応える形での説明会も開催して丁寧に説明するとともに、幅広く意見を伺いながら進めてきたところです。
 県教育委員会といたしましては、このような手続を踏むことで、県全体のバランスとともに地域性も十分考慮し、再編を進めてまいりますので、各地域別の審議会を設置する必要はないものと考えておりますが、再編内容によっては御意見をいただく場を設けることも必要になると考えてございます。
 今後とも、田辺・西牟婁地方を初め各地方の意見を十分に伺いながら、保護者や学校関係者、地域の皆様などに丁寧に説明し、期待に応えられる学校づくりに努めてまいります。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 半径5キロに4校が集まる中で、1学年7クラスの高校、8クラスの高校、その近くに下限を下回る1学年3クラスの高校が出てくるであろう、こういう地域の事情というのをしっかり御承知をいただきたいと思います。
 せっかく、このスポーツをしたい、そう思って進学していても、人が少ないとなかなか結果が出ない、そういうこともあるとすれば子供たちがかわいそうだ、そのように思います。現場で指導される顧問の先生方も本当に苦労をされておると思いますので、しっかり御承知をいただきたく思います。
 続きまして、次の質問に入ります。
 2番目、和歌山県内大規模マラソン大会等の一括案内についてお聞きをいたします。
 2月7日、日本陸上競技連盟公認大会第21回口熊野マラソンが、ハーフ2330人とフルマラソン2526人の参加で大盛況に開催をされました。公認記録を持つことができる大会であると同時に、富田川のきれいな水と緑、歴史を感じるすばらしいコースで、フルマラソン初挑戦の方やゆっくり楽しみながら走りたい方にうれしい、制限時間が6時間の大会でもあります。
 距離表示を1キロごとに設置し、その間には子供たちが描いた非常に評判のよい応援メッセージがランナーを激励し、バナナ、梅干しなどを用意した給水所でランナーをサポートします。完走者には、紀州特産品の梅ドリンクや紀州産の越冬木熟ポンカンが用意されています。
 その他、携帯電話やインターネットからホームページにアクセスすると選手のゴールタイムがすぐにチェックできるなど、家族や友人にもすぐ記録を見てもらえます。
 このように、実行委員会や上富田町、多くのボランティアの21年の努力の積み重ねの結果、前日の小中学生も含めると5000人を超すランナー、熊野サポーターズリーダーなど1000人近いボランティアといった大マラソン大会に成長しています。
 さらに、ことしはレースに韓国から20名、香港から24名の参加者があり、日本を交え、レース終了後には3国のトークセッションも行われました。
 この香港からの参加の24名、こちらの人たちは、アスリート用梅干しウメパワプラス、この香港への輸出、これがきっかけで口熊野マラソンに出場し、その後約1週間滞在した中で、田辺市上秋津でジャムづくり体験、熊野古道歩きをしながら本宮大社、高野山と訪れました。来年以降、本格的にツアーを組んでいくということで、インバウンドによる経済効果も出始めています。
 また、2月21日、437名が完走した南紀田辺UMEロードマラソンは、2月に咲く梅林の梅の香りが漂う街道を駆け抜けるコースでございます。会場には、飲食・物産展が多数出展されるほか、競技終了後には大餅まき大会も行われ、マラソンと一緒にイベントや紀州田辺梅林の観梅も楽しめる、そういう大会になっています。
 この大会の終了後、司会とランナーのやりとりの中で、ホームページで見て関東から走りに来た、そういう方を初め、非常に遠方から少ない情報で出場料を払って来られた方がたくさんおられました。情報のとり方はさまざまかと思われますが、年に幾つかの大会に参加するマラソン愛好家の方々に直接プロモーションすることで、そういう方々が和歌山県内にあるすばらしいほかの地域のマラソン大会へ循環して参加する、この参加を促せるのではないかと考えます。
 和歌山県内大規模マラソン大会の循環の参加を目指して、県で専用の小冊子などを使って大会からほかの大会へ循環できるように一括案内できないか、商工観光労働部長にお聞きをいたします。
○副議長(藤山将材君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 県内各地で開催をされるマラソン大会の開催スケジュール等につきましては、県観光連盟や県教育委員会のホームページなどで情報提供しています。また、マラソンファンの方に向けた民間の各種ホームページなどでも、随時情報提供されています。
 議員御指摘のとおり、大会に参加されたマラソンファンの中には、こうしたウエブサイトから情報を得て参加される方もあり、大会に参加された際に直接県内の他の大会スケジュールとともに観光情報、名産品等を知っていただくことで、県内周遊や滞在時間の延長に伴う地域の消費拡大につながると考えております。
 つきましては、大会の規模や参加者のニーズを見つつ、一覧形式による情報提供など、主催者や開催地の自治体と協議しながら取り組んでまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひよろしくお願いします。
 3つ目の質問に入ります。
 県道市鹿野鮎川線赤木工区の開通の見通しについてお聞きをいたします。
 2014年12月議会での答弁で27年度中に完成予定といただいておりますが、現状の見通しを県土整備部長にお聞きいたします。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 県道市鹿野鮎川線は、田辺市合川から国道311号に通じる地域住民の生活に欠くことのできない道路であり、これまでも順次整備を進めてきたところでございます。
 御質問の赤木工区は、深谷の集落から国道311号までの間で残っている延長約500メートルの整備を行っているところであり、今月末にはバイパス部の供用を予定しています。
 なお、バイパス部の供用後、鮎川側の現道との交差点部において取り合わせの工事が残りますが、これについても5月中旬には完成する見込みでございます。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
 4番目の質問に入ります。
 景観に配慮したガードレールについてお聞きをいたします。
 国土交通省「景観に配慮した防護柵のガイドライン」によって、和歌山県内の道路にも景観に配慮したガードレールが設置をされています。見通しや見た目ですっきりしていて効果も出ている場所も多く、一定数効果もあると思いますが、通学に当たって類似色の焦げ茶色の制服を採用している校区内では、横断時、焦げ茶色のガードレールとガードレールの合間から出る際に自動車の運転手に非常に見にくい状況が発生します。
 環境配慮も非常に大事な要素ではありますが、歩行者が危険では元も子もありません。環境に配慮した焦げ茶色のガードレールと類似色の制服を使われている区間には、横断歩道の周辺での使用を変更すべきではないかと考えます。県土整備部長の見解をお伺いいたします。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 道路における防護柵につきましては、平成16年3月の国の防護柵設置基準が改定され、それまでは白色が標準とされていた防護柵の色彩を周辺環境と調和した色彩にするよう見直されたことから、県においてもこれに準じ、景観に配慮した施工を行ってきたところでございます。
 具体的には、この基準において、設置箇所周辺の景観に応じて焦げ茶色、薄い灰茶色及び濃い灰色の3色が例示されておりまして、山地部の樹木を基調とした景観に対しては焦げ茶色を採用しております。
 今回、議員から、景観に配慮して設置するガードレールの色が学校の生徒の制服の色と類似していることでドライバーからの通学生の視認性が悪いとの指摘がありましたので、そうした箇所につきましては、今後、学校やPTA、警察、地元自治会等の関係者とも改めて協議を行い、必要に応じて防護柵の色彩や形状を部分的に変更するなどにより通学生の安全確保に配慮してまいります。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 よろしくお願いいたします。
 それでは、5つ目の質問に入ります。
 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正について御質問さしていただきます。
 今議会の議案79号にも上がっていますが、クラブやダンス教室などの営業規制を緩和する改正風俗営業法が昨年6月17日に成立いたしました。
 暗い空間で客が踊るクラブの店内の明るさを一定以上にすれば規制を緩和して朝までの営業が可能、ダンス教室とダンスホールの営業は規制対象から外れ、法律からダンスの文言もなくなり、現行では客に飲食を提供しダンスをさせる店を風俗営業としているが、改正法では、ダンスをさせるかどうかではなく、主に店内の照度などによって風俗営業に該当するかを判断するようになっています。
 クラブ店内の定められた場所の明るさを、映画館の上映前後に相当する10ルクス超で、午前0時から6時に酒類を出す店を新たに特定遊興飲食店営業として許可制にし、風俗営業の適用対象から外す。原則24時間の営業を認めるが、条例で営業時間や営業地域を制限できるようになっています。午前0時以降に酒類を出さないクラブは、通常の飲食店として24時間営業を認められるようになっています。
 今回の改正に伴い、日本のクラブシーンを代表するDJやミュージシャンの方々が40人以上集まって、「日本のクラブカルチャーの未来へ向けた声明文」を連名で発表しています。全文読み上げは割愛しますが、日本のクラブカルチャーが大きな一歩を踏み出したことを喜びながらも、過去の事件を踏まえて、今回の法改正を機会に、ダンスフロアの夜明けとともに日本の文化、社会、経済の発展のために尽力したい、そのような声明がなされています。
 紆余曲折の中、このようにクラブカルチャーの夜明けとも呼べる改正が行われたわけですが、和歌山県においては規制エリアを決めていく上で全く違った方向に進んでいると感じています。
 そこで質問に入るわけですが、まず、国が改正緩和したクラブ営業、利用は若い世代が中心であるクラブ、これを田辺市で規制する理由についてお聞きをいたしたいと思います。
 今議会上程の議案79号に当たって、アロチとともに、田辺市、通称・味光路周辺で緩和エリアの指定が検討されましたが、結論からいくと、田辺市味光路周辺において0時以降の飲食を伴う遊興の提供が緩和されない旨とされています。いわゆる、田辺は国で緩和された要件のクラブの運営ができず、施行後は摘発対象となります。
 ここに至った経過において、周辺10町内会長に説明に上がり、大都市のクラブの写真を提示した上でアンケートをとられております。警察の午前0時以降の出動件数や時間帯を参考にされています。県下にパブリックコメントをとられています。結果は1件でした。もうこの時点で若い世代の意見、全く酌み取られていないのではないかと思うところですが、総合的に判断したと聞いています。
 住居混在地域であるが、用途地域が商業地域である田辺市味光路周辺において、特定遊興飲食店営業、0時以降のクラブの営業を緩和しない理由を警察本部長にお聞きいたします。
○副議長(藤山将材君) 警察本部長直江利克君。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) 今回の風営法の一部改正につきましては、ダンス自体に着目した規制が改められ、客にダンスをさせる営業の一部を風俗営業から除外するとともに、特定遊興飲食店営業の制度が新設され、深夜に客と遊興と酒類の提供を伴う飲食をさせる営業を立地規制と許可制のもとで認めることを内容とするものであると承知しております。
 政令による立地規制の基準によりますと、田辺市の通称・味光路につきましては、0.035平方キロメートルという狭い地域に風俗営業店等が約120店舗存在し、風俗営業等密集地域に該当するものの、同地域には約80世帯の一般住宅等も存在していることから規制の基準である住居相当数集合地域に該当し、特定遊興飲食店営業の許可に係る営業所設置許容地域としての要件を満たしていないものとなっております。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 再質問いたします。
 立地規制は、住居相当数集合地域に該当するかどうか。この住居相当数集合地域に件数の基準というのはなく、決めていくというのは警察のほうで決めていくということになります。なかなかそういうわけにもいかないと思いますので、地区の意見を聴取して吸い上げていこうということで、今回、町内会長さん、周辺の方々にアンケートという形で意見聴取をしたとお聞きしています。
 そのときに提示された写真、我々も事前の説明のときにはそのクラブの写真を見せていただいておりますけれども、このアンケートに際して提示した写真というのは適切であったか、このように思うところです。
 なぜ、和歌山の地元のクラブではなく、説明に都会の誇張された写真を使ったのか。何人ぐらい地元のクラブについてお知りおきであったのか、そのこともお聞きしたいと思います。
 参考にした警察の午前0時以降の出動件数に、地元のクラブに出入りした者の出動はほぼなかったはずです。にもかかわらず、全く違う形態のお店のデータで構成されています。それを使ったのが適切であったのか。あったと考えるか。パブリックコメントが1件で全く周知が行き届いていないと、このように考えます。若い世代も含めて県民の意見を集約できたと考えるか。これらを踏まえて総合的判断について警察本部長にお聞きをいたします。
○副議長(藤山将材君) 警察本部長。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) 風俗営業法の改正によって、今後、特定遊興飲食店に移行していくものは、現行法の風俗営業のうち、いわゆる3号営業の許可を受けている営業所に当たるというように承知しておりますが、田辺市の味光路には、いわゆる3号営業の許可を受けた営業所は現在存在しておりませんと承知しております。
 また、地域住民への説明会で使用した写真についてでございますが、特定遊興飲食店営業の営業形態についてはさまざまな形態があるわけですが、一般の方々がイメージしやすいよう、現行の3号営業に該当するいわゆるクラブの営業形態の写真をお示ししたものと承知しております。
 特定の地域が深夜における風俗環境の保全に特に配慮を必要とする地域であるか否かを判断するための資料として地域警察出動件数を用いることは、不適切であったとは考えておりません。
 最後に、パブリックコメントについてですが、和歌山県県民意見募集手続実施要綱第3条におきまして、「県民に義務を課し、又は権利を制限することを内容とする条例の制定又は改廃」の案を策定するときは、この要綱に定める手続を行わなければならない旨規定されているところから、同要綱に定める手続に基づきまして、インターネットを用いてパブリックコメントを実施したものでございます。
 なお、特定遊興飲食店の営業につきましては、一定の要件を満たすホテル内であれば営業可能と県内でもなりますし、ベイエリア等、深夜の人の住居が少ない地域で要件を満たす地域であれば営業所設置許容地域として指定することが可能となっております。
 今後、このような地域で特定遊興飲食店営業を営みたいと事業者から申し出があれば、その地域を特定遊興飲食店営業設置許容地域として指定することについて検討させていただくこととなります。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 再々質問に入ります。
 写真、イメージしやすいようにということであの写真を使われたということですけども、イメージ悪いほうにしかとらないんじゃないかと思います。実際、どう考えても、あのレベルの広さのフロアというのは、なかなか地方の飲食街で確保するのは多分難しい。だから、できるものでもないし、人もなかなかその中で集まるもんではないと思います。
 地元の田辺市では、町内会長さんといえば大体社会的地位があって、皆様から信頼があって、そういう方が大体なられておられます。そんな中で、あのぎゅうぎゅう詰めで踊ってる写真を見て、周辺、特に高齢化も進んでる中で、「どうぞ近くに店を出してください」、そういう話にはならんと思うんですね。
 にもかかわらず、意図はしてないと思いますけども、誇張された写真でアンケートをとって、それで若い人たちが利用するクラブを規制することがどれほど正しいルールの決め方なのか、このように思います。
 先ほどの0時以降の出動数のデータも、議会前の説明のときにお聞きをいたしましたが、よくよく考えると0時以降の出動件数、それはあんまり関係のないデータなんじゃないかなと思います。
 ちなみに、私の記憶が正しければ、それは中には若い人もおるかもしれませんけれども、警察の御厄介になる、酩酊して迷惑かける、中高年の人が多くないですか。その関連性のないデータでクラブを利用する若い人を規制することが、どれほど正しいルールの決め方なんでしょう。
 最後に、ルールにはのっとっていますけれども、パブリックコメントをインターネットを通じてされた、このように言われておりましたけども、全く集まってない状況で、実は本来、若い世代の人たちの意見を聴取しようとするならば、クラブであったりダンス教室であったり、もともと規制されていたところで意見の聴取、パブリックコメントの周知というのをできたはずだったと思います。
 このように、少しずつボタンをかけ違えた意見やデータのとり方で、偏った年代の意見でこのルールというのを決めていく、これが果たして本当にいいのか、このように思います。意図して規制の方向に誘導したとは思っていません。しかしながら、実際はクラブカルチャーの真っただ中の若い人たちの意見を全く聞くことなく規制する形になっています。
 法改正されて全国的にダンスやクラブカルチャーが市民権を得るのに、自分たちの生まれたとこは若い世代の意見も聞かずにだめだ、こういうことやったら、やっぱり田舎はあかんなあ、こう思うんじゃないでしょうか。
 若い人たちにもいろいろ意見があると思いますから、聞いた結果、そういうのは申し上げませんけれども、でも、若者の意見を聞かずに知らない世代の否定的な意見だけで決めてしまうのはあからさまに不公平です。不公平だと思います。そして、誤った形で知らない年代が決めてしまう、こういう形にしてしまうのも、今回アンケートに答えていただいた町内会長様方を初め、年上の方々にも失礼だと思います。きちんと若い人の意見を聞いて決めましょう、このように言いたいところでございます。
 いろいろお話をさしていただきましたが、議案の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正について、経過の中で確かに若者の意見は反映できているか、これを警察本部長にお聞きしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 警察本部長。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) パブリックコメントにつきましては、先ほど申しましたように、インターネットを活用してるわけでございますけども、当然、インターネットということで対象を限ったものでなく広く行ったわけでございますけども、結論として若者からの意見は寄せられなかったということであります。
 今回の説明会等につきましては、基本的には良好な風俗環境の保全という観点で、地域にお住まいの方々の認識を把握するために行ったものであります。
 味光路につきましては、現行法においても、風俗営業全般の営業時間の制限を午前0時から午前1時まで緩和する指定地域としても要件を満たしていないとされているところでありますので、やっぱり今回、日の出まで営業ができるという特定遊興飲食店営業として指定することは、かなりハードルが高いというように思われます。
 しかし、今回の改正によりまして、午前0時までの営業を行っていただける、いわゆるクラブの中で一定のものにつきましては風俗営業から外れますので、飲食店営業として営業できるということでありますので、味光路においても、そういった面では緩和されるということになると感じております。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 御意見だけは賜りたいと思います。しかしながら、クラブカルチャーというものも少し御理解をいただきたいなと思うところでございます。
 今回決めていく中で、実際はクラブカルチャーの真っただ中にある若い人たちの意見というのを全く聞くことなく規制する形になっている。このように、今思う、考える、認識する、その状況というのは変わらずおります。それだけは申し上げておきたいと思います。
 引き続き、次の質問に入ります。
 6番のレッドブル・クリフダイビング2016についてお聞きをいたします。
 和歌山県白浜町の三段壁で、10月16日、岸壁に設けた最高27メートル、ビル8階相当の台から飛び込み、得点を競うオーストリアの飲料会社レッドブル主催の高飛び込みの世界選手権「レッドブル・クリフダイビング2016」が日本で初めて開かれると報道されています。白浜大会は世界9カ国で開催されるワールドシリーズの一部ということで、昨年のフランス大会では7万5000人の観客が集まったということです。
 会場の三段壁は、高さ約50メートルの岸壁が南北2キロにわたって広がる白浜町の観光名所で、近年は、日本人だけでなく、アジア圏を中心とした外国人観光客でにぎわっています。
 環境省の許可を得て開催が決定していますが、今シーズンは6月4日のアメリカ・テキサス大会から始まり、デンマーク、ポルトガルなどで開催。白浜は8戦目となります。男性12名、女性6名が出場する予定と聞いています。
 高さは、オリンピック種目になっている高飛び込みの2倍以上。踏み切り、空中での姿勢、入水の3項目で採点され、その合計に難易率を掛けて得点を競うと聞いてます。飛び出しから入水までの時間は3秒、速度は最高で時速85キロに達すると聞きます。入水時の衝撃は、10メートルからの飛び込みの約9倍と危険なために、オリンピック選手ら一握りのトップアスリートの参戦が許されています。
 「井澗誠町長は、『白浜には世界的な大会を受け入れるだけの豊かな自然や宿泊施設などがある。この機会に三段壁の悪いイメージを払拭し、白浜を世界的にアピールしたい』と話しています」と報道でなされています。
 これで質問に入らしていただきたいんですけども、(1)県の見解と取り組みについてお聞きします。
 イベント開催に当たっての見解を商工観光労働部長にお聞きいたします。
○副議長(藤山将材君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 白浜町に確認したところ、レッドブル社が主催するクリフダイビング2016の開催については、会場を予定している三段壁や白浜町を世界に発信するチャンスと捉え、本年10月の開催に向け、協力して準備に取り組んでいると伺っています。
 県といたしましても、白浜のすばらしい自然景観が世界の注目を集め、本県の観光振興につながることを期待しています。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 2つ目の項目です。
 開催に当たっての見解を警察本部長にお聞きいたします。
 せっかくの大きな世界大会、しかもアジアで初めての開催だということで、地元への集客効果や世界への周知効果も大きいとなれば連続開催が望まれるのかと思われますが、初めての開催地、ふなれなイベント開催で、特に安全面での失敗があれば来年もというわけにはいかなくなると思います。
 そういう事故や失敗がなく続けていけるように、特に県と県警が協力して安全面での手助けや指導をしてあげていただきたい、いくべきではないかと考えますが、警察本部長の見解をお聞きいたします。
 加えて、イベント後、ハイダイブのまねをする方々や見る方、練習する方、似たような趣旨の大会の開催を希望する方々も出るかと思います。安全対策が必要かと考えますが、警察本部長の見解をお聞きいたします。
○副議長(藤山将材君) 警察本部長。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) 議員から御質問ありました世界大会につきましては、白浜町の三段壁で開催されることを承知しておりますが、現時点におきまして、和歌山県遊泳者等の事故防止に関する条例に基づく届け出がなされておりませんので、主催者には、当該条例に基づく届け出を促すとともに、届け出に基づき、ダイブに伴う選手自身の負傷事案や狭い三段壁上の観客等の雑踏事故のほか、同所周辺での交通渋滞や事故等の発生を防止するための安全対策について必要な指示を行ってまいりたいと考えています。
 特に、主催者及び白浜町、白浜観光協会等の関係機関・団体に対しましては、自主警備員や自主交通整理員等の配備、交通渋滞対策としての駐車場の確保などを要請するとともに、県警察といたしましても、必要な整備体制を整えるとともに、関係機関・団体と緊密に連携しながら安全対策に万全を期してまいりたいと考えております。
 なお、これまでも三段壁におきましては重点パトロールを行っているところでありますが、イベント終了後におきましては、このたびの飛び込み行為を模倣した危険な行為などを防ぐため、重点パトロール等を引き続き実施していくほか、そうした危険な行為等を防止するための安全対策について、白浜町等関係機関・団体にも要請してまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひ何とか成功をさしていただいて、白浜町の観光、これからの未来に向けての起爆剤にぜひとも御協力をいただいて成功させていただきたいなと思います。
 これで質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、谷口和樹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時36分散会

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