平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


平成28年2月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(全文)


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平成28年2月
和歌山県議会定例会会議録
第4号
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議事日程 第4号
 平成28年3月4日(金曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、     議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第     73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号     から議案第172号まで(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、     議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第     73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号     から議案第172号まで(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(42人)
 1番 堀 龍雄
 2番 中西峰雄
 3番 森 礼子
 4番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 浅井修一郎
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 秋月史成
 10番 川畑哲哉
 11番 泉 正徳
 12番 濱口太史
 13番 花田健吉
 14番 尾﨑太郎
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 鈴木太雄
 18番 岩田弘彦
 19番 藤山将材
 20番 服部 一
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 中本浩精
 24番 中 拓哉
 25番 山本茂博
 26番 岸本 健
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 40番 松坂英樹
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      和歌哲也
 総務部長       市川靖之
 企画部長       高瀬一郎
 環境生活部長     栗山隆博
 福祉保健部長     幸前裕之
 商工観光労働部長   藤本陽司
 農林水産部長     鎌塚拓夫
 県土整備部長     野尻邦彦
 会計管理者      岩橋良晃
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員長   溝端莊悟
 警察本部長      直江利克
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       江川和明
 次長         上坊 晃
 議事課長       糸川 徹
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼議事班長
            尾﨑善亮
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 議事課副主査     中尾祐一
 総務課長       西原龍也
 政策調査課長     中口 匠
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○議長(前芝雅嗣君) 開議前でありますが、一言申し上げます。
 本日、傍聴席に、和歌山市立雑賀小学校の児童の皆様が、こども県庁探検隊として議場に来ていただいております。未来の和歌山を担う皆さんに県議会に関心を持っていただくいい機会でありますので、議員の皆様、県当局の皆様、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)
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  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第1号から議案第16号まで、議案第32号、議案第33号、議案第35号、議案第40号から議案第62号まで、議案第64号から議案第70号まで、議案第73号から議案第76号まで、議案第78号から議案第82号まで及び議案第84号から議案第172号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 3番森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕(拍手)
○森 礼子君 おはようございます。森礼子です。どうぞよろしくお願いします。
 議長のお許しをいただきましたので、順次、一般質問をさせていただきます。
 まず初めに、運転免許自主返納のための支援策について質問いたします。
 最近、たびたび目を疑う光景に遭遇します。1つは道路を逆走する自動車、1つはどのラインに入っていいのか戸惑い、立ち往生する自動車、そして超低速で走行する車、その多くが高齢者ドライバーによるトラブルと思われます。
 昨年10月29日に、73歳の男性の運転する軽乗用車が宮崎市の中心市街地の歩道を700メートルにわたって暴走し、歩行中の女性2人が死亡、男女4人が重軽傷を負うという痛ましい事故が起こっています。運転していた73歳の男性は、過去に認知症での通院歴があったとの報道がなされています。
 本県においても、平成27年中の65歳以上の高齢運転者による交通事故は1054件発生しており、この事故による死者は19人、負傷者は1310人となっています。また、高齢運転者による交通事故の割合は30%となっており、交通事故数に占める高齢運転者による事故の割合が年々増加しています。
 今、この高齢運転者による交通事故を減らすための取り組みの1つに、運転免許証の自主返納があります。自動車の運転が困難になった方や運転に不安がある方に、御自身の判断で運転免許証を返納していただくことは、交通事故防止の観点からとても重要でありますが、残念なことに現状では、運転免許返納者は、65歳以上の運転免許保有者の約1%だと言われています。
 私の母も、自動車の運転に多少の不安を感じているようですが、まさか自分は大丈夫という自信と、タクシーの利用はもったいないし、バス路線がなく不便ということなどを理由に、通院や買い物には自分で運転をしています。家族としては心配しており、再三運転はしないように忠告をしていますが、本人は体が動くうちは車の運転をやめることはできないという状況です。
 このように、移動手段として自動車を手放せないというのも事実であり、ましてや公共交通機関のない本県の山間地域に暮らす高齢者にとっては、自動車は生活必需品と言えます。
 そこで、運転免許証の自主返納をした高齢者に対しては、公共交通手段の運賃割引を行うなどの生活支援策をあわせて用意することで、自主返納を促進する環境づくりを進めていく必要があるのではないでしょうか。
 例えば、青森県警では、運転免許自主返納の趣旨に賛同してくれた民間企業を通じて、返納者の生活を支援するさまざまなサービスが提供されています。主な支援策は、タクシー料金の割引やバスカードの贈呈、購入商品の無料宅配サービス、宿泊施設や温泉施設の利用料金の割引などとなっています。また、警視庁や大分県警でも、その趣旨に賛同する民間企業によるサポート協議会を立ち上げ、各種特典を用意するなど、運転免許自主返納支援策を講じています。
 本県の平成28年の新政策の4「安全・安心な暮らしを実現する」の良好な治安の確立と交通安全の確保において、日本一安全で快適な交通環境を実現するため、高齢ドライバーへの指導を実施すると掲げられております。日本一安全で快適な交通環境を実現するためには、運転を続ける高齢者への指導を実施するだけではなく、運転が困難になったり運転に不安を抱いている高齢者の方々に自主返納を行っていただくための指導も実施すべきではないでしょうか。
 そこで、本県においても、民間企業の協力を求め、各種支援策を充実することによって高齢者の運転免許自主返納を支援していく必要があるのではないでしょうか。このことについて、県警本部長の御答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの森礼子さんの質問に対する答弁を求めます。
 警察本部長直江利克君。
  〔直江利克君、登壇〕
○警察本部長(直江利克君) 現在、県内の65歳以上の高齢者が運転免許人口に占める割合は、全運転免許人口の約4分の1を占めており、毎年1万人ずつ増加している状況となっております。また、全体の交通事故件数が15%減少する中で、高齢ドライバーに主に原因があり第1当事者となる交通事故件数の減少率は8.9%と低く、事故総数に占める割合は21.4%と年々増加しております。
 特に、ドライバーが第1当事者となる死亡事故のうち、約3割を占める12件が高齢ドライバーによるものとなっております。高齢ドライバーは、身体機能の低下による信号無視や一時不停止等の危険な行動をとるおそれが高くなることから、運転免許更新時に70歳以上の方は高齢者講習を、75歳以上の方にはあわせて認知機能検査を実施し、引き続き安全運転を継続できるように支援するとともに、運転に不安を有する高齢者に対し、自主返納をお願いしているところであります。
 また、昨年から高齢ドライバー宅を直接訪問し、面接してのきめ細かい安全運転アドバイスや、場合によっては自主返納を促しているところであります。
 自主返納制度については、5年前の平成22年に303件であったものが、昨年は2100件と約7倍にまで増加するなど、御理解をいただいている一方で、運転免許がないと買い物や通院等、生活に支障がある実態もございまして、運転に不安を抱いているのに自主返納することにちゅうちょなさっている方々もいらっしゃることは承知しております。
 現在、運行しているコミュニティーバス、民間バスの運賃割引、スーパーマーケットやJAによる移動販売車の運行等が行われているところでありますが、高齢者の方々に安心して自主返納をしていただけるように、引き続き、これらのサービスの充実を関係機関等に働きかけてまいりたいと考えております。
 警察といたしましては、さらに自主返納制度の周知徹底、相談等への適切な対応を行うとともに、自治体や民間企業との連携により、自動車等の運転に不安を有する高齢者の方々が運転免許を返納しやすい環境の整備に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、運転免許自主返納の普及啓発について質問します。
 新政策で掲げる日本一安全で快適な交通環境を実現するためには、警察が民間事業者の協力を得て環境整備に努めるだけでは十分でないと思います。私は、あわせて県が関係機関と協力をして高齢者の運転免許証の自主返納を促進するための普及啓発策を講じていくことが重要であると考えていますが、この点について環境生活部長の御答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 環境生活部長栗山隆博君。
  〔栗山隆博君、登壇〕
○環境生活部長(栗山隆博君) 高齢者の運転免許自主返納に向けた普及啓発という観点で、御質問にお答えをさせていただきます。
 安全で快適な交通環境を実現するため、これまで交通事故をなくする県民運動推進協議会、この活動といたしまして、各自治体や警察を初めとする関係機関、団体と連携をいたしまして、四季折々の交通安全運動を通じて広報・啓発、さまざまな施策を展開してきたところでございます。
 特に、高齢者に対しましては、運転適性検査器の活用、交通安全講座の開催、それから交通安全の各種のボランティアの皆さん方による戸別訪問などを実施していただきまして、自動車の運転に不安を感じている方々に運転免許証の自主返納を促していると、そういう状態でやってまいりました。
 しかしながら、本県、やはり高齢化率が非常に高いこともございまして、今後さらに自主返納を促していく必要があるというふうに考えてございます。それが、高齢者の交通事故防止対策を図る上で非常に重要なことであるということで取り組んでまいりたいと考えてございます。
 今後は、今までの施策に加えまして、現在策定中でございますが、向こう5年間の第10次和歌山県交通安全計画に新しい項目として高齢運転者支援の推進という項目を追加をいたしまして、免許返納後も安心して暮らせる環境づくりというのを推進していくと。それから、各市町村及び関係機関、高齢者の交通安全対策に関する協議会の設立も進めてまいりたいなと、そのように考えてございます。
 加えまして、従来、運転適性検査機器を導入しておりましたけれども、県内の各地区にも導入、増強を進めてまいりまして、高齢者の交通安全講座を充実をしていくと、そういう観点で進めてまいりたいと考えてございます。
 いずれにいたしましても、運転免許証を返納しやすい環境をつくるため、各市町村における返納後の生活支援措置の拡充を働きかけて、より一層、自主返納への啓発を進めてまいりたいと、そのように考えてございます。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、これからの地域公共交通の充実について質問いたします。
 さきに免許の自主返納に関して質問をしました。交通安全のための取り組みではありますが、同時にマイカーという交通手段をなくし、日々の生活の交通手段に困る生活にもなります。特に、地域交通の乏しい地域では、通院や買い物など生活に困ることから、免許返納者にとっては致命傷となります。
 今般、知事や和歌山市長が進めているコンパクトシティー構想には、さまざまな都市機能が集積し、通勤・通学や買い物、観光客など多くの人が訪れるまちとなることを期待しています。しかし、現実は、生活の交通手段の確保に悩む人が多く、コンパクトシティーが完成しても、そこまでの交通手段がないために、訪れることが難しいのではないかと心配します。そのため、コンパクトシティー完成に足並みをそろえて交通手段の確保に取り組むことは、最も優先順位の高いことであると思います。そうすることによって、今不便を感じている県民の悩みも同時に解消する方向に向かい、地域の公共交通の充実につながるのではないでしょうか。また、私はコンパクトシティーの成功は、そこへアクセスするための交通手段が充実することが必須条件だと思います。
 平成27年度版交通白書では、地方の交通について、人口減による利用者減がサービス低下や路線廃止を招き、それがさらなる利用者減につながるという負の連鎖に陥っていると指摘し、地域の課題に対応した交通ネットワークの再構築が必要であると提言しています。特に、今後は急増が予想される75歳以上の高齢者について、運転ができたとしても、視力が弱くなったり反射神経が鈍ったりするため、交通事故防止の観点から高齢ドライバーが運転しなくても便利に暮らせるような環境づくりに向け、公共交通の充実を求めています。
 現在のまちを前提にして、住民の生活の交通手段をどのように確保するかということについては、それぞれの市町村でコミュニティーバスやデマンドタクシーの運行等の工夫がなされていると思いますが、これらの地域公共交通の充実について県としてどのように取り組むのか、知事の御答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 公共交通を取り巻く環境は、人口の減少や過疎化の進展に加え、市街地の拡散などにより近年利用者が著しく減少しており、大変厳しい状況であります。
 公共交通といっても、大体は民間事業者が営業しておりますので、停留所の周りにあんまり人が住んでいなくて、人が拡散して住んでおると、どうしても乗る人が少なくなりますから続けられないということになります。そういたしますと、市町村は市民生活を守ることに責任がありますから、お金を出して存続してもらうということになります。しかし、市町村も財政が大変でございますから、ますます厳しくなると、こういうことであろうかと思います。
 公共交通のあり方については、したがって、どうしてもまちづくり、あるいは地域づくりとともに考えないといけないというふうに思います。都市の外縁部への拡大を抑制するとともに、都市機能や居住機能を計画的に誘導するコンパクトなまちづくりが大事だというのは、地域公共交通ネットワークを再構築するためにも必要なことであると思います。根本的な環境を放置して対症療法ばかりでは限界があるからであります。
 市町村がこういうなかなか大変な政策を遂行していけるように、県は、コンパクトなまちづくりに取り組む市町村を支援するとともに、市町村ごとに路線バスやコミュニティーバス、あるいは乗り合いタクシーなどをどのように組み合わせるか助言を行うなど、持続可能な地域公共交通ネットワークの再構築に向けた働きかけを行っていきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、和歌山県の子育て支援について質問します。
 初めに、病児・病後児保育について。
 私は、平成22年12月議会での初めての質問以来、ほぼ毎年度、病児・病後児保育について進捗状況の確認とさらなる充実について提言してまいりました。
 私が病児・病後児保育の充実を繰り返し訴えるのは、この施策が子供を持つ母親が最も必要としていて、働きながら子育て環境が守られるための欠かせない施策であるからであり、同時に、子供を安心して産み育てていくことができる社会の実現につながると考えるからです。これは、「少子化をくい止める」という本県の平成28年度の新政策にも沿った取り組みであります。
 今、地方創生の推進や一億総活躍社会の実現を目指す政府の取り組みにおいても病児・病後児保育が盛り込まれており、国の支援策強化という絶好のタイミングを捉え、本県においても病児・病後児保育の充実を図っていただけるよう質問させていただきます。
 現在、病児・病後児保育は、平成28年度の予算案では運営費補助として2836万円が計上され、7圏域11カ所で実施されています。私が初めて質問させていただいた平成22年度の5圏域7カ所からは拡充しましたが、国が病児・病後児保育に関して規制緩和と支援資金の準備をしていることを踏まえると、少し消極的過ぎるのではないでしょうか。
 1月5日の「日経新聞」夕刊の1面に、病児・病後児保育施設の普及を後押しするため、厚生労働省が看護師と保育士の配置にかかわる規制を緩め、施設の新設に係る費用も新たに助成対象とすることを検討していることが報道されました。
 それによると、まず看護師や保育士の配置にかかわる規制を緩める、今のルールは、子供3人当たり保育士1人と、10人当たり看護師1人の配置を義務づけているが、利用する子供がいないときまで看護師や保育士が常駐すると人件費負担が重くなる、今は子供がいないときのルールは明確ではありませんが、看護師や保育士を常駐させなくてよいとする規定を新たにつくる、さらに、病院などに併設される病児・病後児保育の場合は、看護師がすぐに駆けつけられる体制をとっていれば子供を預かっていても看護師の常駐は不要とする、4月をめどに病児保育の運営ルールを定めた自治体向けの実施要綱を見直す、病児保育は採算をとりにくいとされているが、人件費負担が減れば新たに参入する業者もふえると厚労省は見ているとしています。
 また、厚労省は、施設の増設に向けた補助金も拡充する、現在、補助しているのは人件費など運営費の一部のみ、これに加え、4月からは施設の建設費など初期投資の一部も補助して新規参入するハードルを下げる、具体額は2月をめどに決める、また、病児保育には一般の保育所で体調を崩した子供が移ってくることも少なくなく、病児保育側が子供を迎えに行った場合は交通費や付き添いする看護師の人件費も新たに支援する、補助金の財源には企業が年金などと一緒に国に納めている子育て拠出金を充てる、政府は、平成28年度から拠出金の料率を従業員の給料の0.15%から0.20%に引き上げる方針、これによる840億円近い財源増額のうち約27億円を病児保育の普及に充てるとのことであります。
 また、少し古いデータですが、平成20年度に内閣府が行った少子化社会対策に関する子育て女性の意識調査の保育サービスの充実において、待機しなくても入所できる保育所の数の定員をふやすとともに充実を求める声が50%を超えていたのが病児・病後児保育の充実です。しかも、10を超える選択肢の中で、病児・病後児保育の充実のみが前回の平成16年度調査から10ポイント以上充実を求める声が増加しておりました。
 平成20年の時点でこの結果ですので、一億総活躍社会の実現に向けて、新たな第2の矢「夢を紡ぐ子育て支援」として希望出生率1.8を掲げる現政権が、病児・病後児保育の充実を求める子育て中のお母さんや、これから子供を持とうとする働く女性の声の高まりに向き合わざるを得なくなったのは、時代の要請ではないでしょうか。
 これまで述べてきたように、仕事と子育てを両立する環境づくりのためには、病児・病後児保育のさらなる充実は欠かせない施策であると思います。
 そこで、国の支援策の拡充に関して積極的に情報収集を行った上で、市町村にしっかりと周知を行うとともに、約27億円を病児保育充実に充てると報道されている国の予算を本県が少しでも多く獲得する必要があると考えますが、これらの病児・病後児保育のさらなる充実のためにどのように取り組んでいくのか、福祉保健部長の御答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 仕事と子育ての両立を図るためには病児・病後児保育の推進は重要であり、議員御指摘のとおり、国の補助制度も拡充されてきております。
 現在、病児・病後児保育は9市町の11施設で実施されており、広域利用の4町を含め13市町の住民が利用可能となっておりますが、市町村のヒアリングをもとに策定した和歌山県子ども・子育て支援事業支援計画「紀州っ子健やかプラン」において、平成31年度までに23市町、全圏域での実施を目標としているところです。
 県としましては、実施主体である市町村に対し、新たに拡充された施設整備補助などを丁寧に周知するなど、病児・病後児保育の実施について一層積極的に働きかけてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 ありがとうございます。
 せっかく国が病児・病後児保育の強化を図っていただいているので、これをうまく利用して、当県でも私たち利用者が利用しやすいように取り組んでいただけるようによろしくお願いします。
 続いて、待機児童解消対策について質問いたします。
 知事は、新政策の5つの基本目標の1「少子化をくい止める」で、結婚、出産、子育てまでの切れ目のない支援を掲げ、中でも待機児童解消対策に積極的に取り組むこととされています。ニーズの高まっている3歳未満児の保育など、保育、育児環境の整備を促進することは、少子化を食いとめるという目標を達成するために効果的な取り組みであると思います。
 これまで、県庁や市役所の説明では、和歌山市は待機児童は少なく、保育環境は比較的恵まれているとのことでした。しかし、実際に私の耳に届く声は、兄弟をばらばらの園に入れざるを得なかったり、復帰したい時期に保育所のあきがなかったり、自宅、職場のいずれからも遠い園にしかあきがなかったりという場合があり、統計上の数字では読み取れない多くのニーズがたたずんでいました。
 また、最近は待機児童がふえてきているとも聞きます。この点については、知事も現状をよくわかっていただいているようで、先日の和歌山市における知事の行政報告会でも、「最近は待機児童がふえてきているようで、しっかりと対策を講じていかなければならない」とおっしゃられていました。そして、その知事の現状認識が、待機児童解消対策についての当初予算の大幅な拡充につながったものと考えております。
 私が待機児童解消対策において最も大事であると考えることは、子育て中の母親のニーズに敏感であること、そして、保育環境の選択肢を広げることであると思います。待機児童がふえている大きな理由としては、兄弟を同じ保育所に通わせたいから、上の子供が通っている園にあきが出るまで待つというのが1つ、また、出産後、職場復帰するタイミングで保育所の確保が難しいというのがもう1つの理由ではないでしょうか。
 私たち女性は、子供をほったらかして働くことはできません。また、産休の後、職場復帰がおくれればおくれるほど、職場の環境が変わり、自分の居場所がなくなり、居づらい状況になると聞きます。一方、事業所側からも、ブランクの長い職員の復帰は遠慮がちだと伺います。このことだけを考えても、スムーズに職場復帰ができる環境を整えることが大切です。
 私がこれまで働く女性の環境の強化を求めてくる中で、国会保育所開設の取り組みに心を動かされました。平成22年9月、衆議院第2議員会館に東京都認証保育所キッズスクウェア永田町が開設されました。保育時間は、月曜日から土曜日の8時から21時までです。ゼロ歳児から未就学児までが就園可能とされています。国会議員や議員秘書の子供だけでなく、国家公務員や地域の方々の子供も受け入れが可能であるとのことでした。
 このような取り組みが和歌山県でもできないかと思いを募らせてきました。昨年には、都庁内保育園の開設を知り、東京都の担当課にお邪魔をし、きっかけや取り組みについて状況を聞いてきました。都庁内保育所は事業所内保育所で、特徴としては一時預かりも可能である点です。また、「3歳児未満が対象なので園庭などを確保する必要がなく、小さな面積の確保により保育所を開設することができた」と聞いています。また、宮城県でも、県庁に事業所内保育所が設けられており、就学前の乳幼児や地域の子供を受け入れています。
 東京都や宮城県の環境と和歌山県では保育環境が違うかもしれませんが、それぞれの地域のニーズに合わせて地域密着型の保育を展開できれば、これほどすばらしいことはないのではないでしょうか。
 知事は、新政策の待機児童解消対策として、市町村が実施する保育所等の整備を支援することや、介護事業所内保育所の新設整備等を支援することを掲げられておりますが、待機児童解消対策のための選択肢を広げる取り組みの一環として、「隗より始めよ」で県庁内保育所を検討してはいかがでしょうか。
 私は、県が率先して保育環境を整えることは、全ての子育て環境に明るい兆しとなり、子育て中の親にとって和歌山に住んでよかったと実感できる日の到来につながると考えています。
 そこで、県庁内保育所の開設や待機児童解消対策について、知事の御答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 実は、恥を忍んで申し上げますと、議員が今おっしゃられました企業内保育所に助成をして、それをどんどんふやそうという政策は、平成19年度の新政策のかなり大事な目玉だと私は思っておって、見事に失敗をいたしました。
 なぜかというと、実は和歌山県は当時、待機児童がほとんどなかったんです。あるときに民間の保育所の団体の方がお越しになって、それで「私たちの機能に、あるいは私たちの仕事に何か御不満でもおありでしょうか」と言われて、「いやいや、そんなことなくて、待機児童を」と言ったら、「待機児童は和歌山はゼロですよ」といって言われてちょっとトーンダウンをさせたという経緯があります。
 ところが、東京などに比べますと圧倒的にまだ和歌山は恵まれておりますけれども、和歌山市や岩出市などでは、実は本当の意味での待機児童が発生し始めていて、それでここ数年、特に急増しているという事態がございます。これは、幾ら東京なんかに比べても少ないとはいえ、議員御指摘のように、大変よくないことでございますので、これはまずいと。特に、これも御指摘がありましたけども、産休や育休から職場復帰する場合など、3歳未満児保育のニーズが高まっておりまして、人口の多い和歌山市で待機が多く発生してるわけでございます。
 これはまずいもんですから、特に──これは担当は和歌山市になりますが──和歌山市に対して具体的な対策を進めていただくように私どものほうからもお願いをいたしました。和歌山市も大変熱心にこれは考えてくれていまして、それで希望する保育所とのマッチングがうまくいけば、平成28年4月には2園の保育所整備による定数増加とか、あるいは定員の弾力的な運用による入所児童数拡大によって、現在ある待機児童はほぼ解消することは可能だというようなところまで来ております。
 このときに、どこに保育所をつくるか、和歌山市もそうやって考えてくれておりますけれども、保育所は待機児童が多く発生している地域で整備することが必要でございます。県庁の周辺では実は待機児童が多いわけではございませんで、無理やり県庁につくりますと局地的にはむしろ周辺の保育所から子供を奪うということになるわけで、いわゆる民業圧迫にもなりかねません。したがって、全体として必要なことはわかってるんだけど、必要なところにつくることを優先して、それで企業内保育所については、特にニーズが高い介護施設内の企業内保育所には助成をしていこうじゃないか、そんなふうに今考えているところでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 答弁ありがとうございました。
 私は、ニーズというのは統計の数字だけでは読み切れない部分があると思っておりますし、また、今進めているよりコンパクトな町なか居住を構築していくのであれば、今県庁周辺にはニーズが少ないかもしれませんけれども、町なか居住を推進していくという視野を持って考えていただければうれしいと思いますので、要望いたします。
 続いて、学校現場における選挙に関する教育について質問します。
 まず、生徒に対する教育について。
 一昨年から昨年春にかけて、和歌山市長選挙、知事選挙、衆議院選挙、そして統一地方選挙と、選挙に追われた1年でした。開票結果と同時にいつも注目されるのが投票率であります。年々投票率が低下している中、有権者の関心を高める選挙制度や広報については、議論が深まっているところです。高齢者に優しい投票会場や投票制度について改善策を図るのと同時に、選挙権を得る年齢が18歳に引き下げられ、ことしの7月に予定されている参議院選挙で初めて実施される18歳選挙権であります。
 学校現場ではどのような教育がなされるのか、大変関心の高いところであります。現在、学校での選挙に関する学習は、公民の授業で教わる国会の仕組みや衆議院、参議院が何人であるかといったようなことが中心でありますが、7月に初めて1票を投じる生徒に対して、すばらしい選挙教育を与えていただくことに大いに期待しています。
 世界に目を向ければ、投票率の高い国として名高いスウェーデンの選挙教育は、選挙権を得る前から丁寧な教育の積み重ねを行っており、実際の国政選挙に合わせて候補者の政策等を検討した模擬選挙を行っています。この取り組みが果たしている役割は大きく、模擬選挙への参加によって生徒は少なくとも選挙のやり方がわかるので、実際の選挙への敷居を下げ、選挙との距離が縮み、投票率につなげているそうです。やはり、選挙権を得られる前からの教育が大切であることは、言うまでもありません。
 そこで、7月の選挙を目前に控えた今、本県の学校教育現場では選挙に関する教育をどのように行っていくのか、教育長の御答弁をお願いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 高等学校では、これまでも現代社会や政治経済の授業で、全ての高校生が選挙制度や政治参加の大切さ等について学習を深めています。県教育委員会では、今般の公職選挙法の改正を受け、高校生に主権者意識を高めていくための教育を一層充実させる取り組みを進めております。
 昨年12月に、全ての高等学校の担当教員を対象に、国が作成いたしました副教材「私たちが拓く日本の未来」と教員用指導資料について学ぶ研修会を開催し、生徒への指導方法等について指導いたしました。現在、各学校でその副教材を活用し、主体的に社会参画することの必要性や選挙の意味、投票の意義を理解させるなど、主権者教育の取り組みを実施してございます。さらに、県選挙管理委員会と連携いたしまして、模擬選挙や出前授業を通して主権者意識を高める学習を全ての県立高等学校で実施、あるいは予定してございます。
 今後とも、関係機関との連携を強化し、主権者としての大切な役割である選挙について、正しい理解が促進できるよう指導を徹底してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、先生に対する指導について。
 もう1点、選挙の大切さや意義等を教える上で大切なことは、生徒が選挙に関心を高めることと、選挙に対する幅広い考えとその中で選択ができること、そして一人一人の思いが政治に反映できるという希望を持ってもらうことにあります。学校では、先生と生徒の関係は信頼のもとに築かれています。生徒にとって先生の影響は大きく、先生の果たす役割は大変重要であります。だからこそ、ある偏った思想や先生の考えで、真っ白な生徒に偏った色をつけてしまうことがあってはいけません。
 その点に関しての指導はどのように行うのか、教育長に伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 18歳からの選挙に関する教育を進めるためには、教員が公正かつ中立な立場で指導を行わなければなりませんし、大変重要なことであります。
 国が作成した副教材を活用し、各学校の教員が政治や選挙に関する教育の持つ意義をしっかり捉え、生徒が有権者として公正に判断し、権利を行使することができるよう、今後とも指導の徹底を図ってまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 どうも御答弁ありがとうございました。これで私の一般質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、森 礼子さんの質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 9番秋月史成君。
  〔秋月史成君、登壇〕(拍手)
○秋月史成君 改めまして、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らせていただきます。
 県議会議員となり、はや4回目の議会となりました。前々回の昨年9月定例議会におきまして人生初の一般質問に立たせていただき、今回、2回目の質問となります。まだまだふなれな点も多々あろうかと思いますが、最後までおつき合いいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 まずは、県道白浜久木線改良計画についてお尋ねいたします。
 大正時代、西牟婁郡一帯は県下有数の養蚕地帯へと発展を遂げ、現在の白浜町三舞地域である三舞村において、久木側から庄川に至る街道、現白浜久木線は繭街道と呼ばれ、繭かごを担いだ人たちが盛んに往来した歴史のある道であります。私も、白浜町富田地域に生まれ、祖父と結婚のため旧日置川町に移り住んだ明治生まれの今は亡き祖母から、その時代の様子を子供のころよく聞かされたものでした。
 昭和34年5月、和歌山県東牟婁郡古座川町三尾川を起点に、西牟婁郡白浜町富田に至る道路が県道として認定され、紀南の山村地域を結ぶ主要道路としてその使命を果たしつつ、逐次改良工事が行われ、現在に至っております。
 この道路の通行不能区間について、昭和42年7月に県道改修促進会が発足し、昭和45年2月議会に当時の県道三尾川紀伊富田停車場線、現在の庄川─久木間の改修拡幅について請願を行い、採択されました。このような経緯を踏まえて、昭和51年春に当時の土木部長、県議会建設副委員長・現二階俊博衆議院議員、日置川町長、白浜町長、関係者100名余りが清流日置川側で昼食をとり、昼過ぎに久木を出発し、繭街道の歴史を語りながら歩き、庄川会館に到着したのは夕暮れ迫る時間だったと聞いております。
 当時、この道を歩かれた青年もはや60歳代、働き盛りであった方々も80歳代、90歳代となられております。昭和50年に県議会初当選なされ、一緒に歩かれた二階俊博衆議院議員も、先月2月17日、77歳となられました。今か今かとこの道路の開通を待ち焦がれていた方も、故人になられた方が多数となってしまいました。
 昨年12月12日にお会いした促進協議会の方々からは、「冥途の土産に一度きれいになったあの道を通ってみたい」と、切実な思いを語っておられました。しかし、長きにわたり紆余曲折はありましたが、促進協議会の方々の熱意は決して消えることはなく、懸命に献身的活動を続けてまいりました。
 このような経緯を踏まえる中、一昨年、県当局の御英断により、平成26年8月13日に現地にて事業着工の報告会、11月2日に事業化を祝う会が行われ、平成27年12月には現場で準備工事が発注され、引き続き本体工事も発注され、今、まさに工事が大きく前に一歩進もうとしております。この壇上をおかりいたしまして、御英断を下されました仁坂知事を初め、県当局の皆様、地元関係者の皆様に、そして今は亡き先人の皆様に深く感謝いたしますとともに、その長年の御尽力に敬意を表します。
 この道路が完成することにより、紀南地方有数の河川である富田川、日置川が道路で一直線に結ばれ、また久木側からすさみ町、古座川町へもつながり、利便性の向上、災害時の迂回路確保の面からも期待の持てる道路となり、紀勢自動車道南紀白浜インターチェンジ、日置川インターチェンジを利用した観光客の取り組みについても、非常に期待を持てることとなります。
 また、旧白浜町、日置川町の合併10周年記念式典において、工事の着工を仁坂知事、二階俊博衆議院議員御臨席のもと、地元の皆様と餅まきもし、大変喜んだ次第であります。
 さて、現在の白浜久木線の状況は、県道日置川大塔線から枝分かれする箇所から約4.7キロが交通不可能な区間となっており、その先、庄川までの約3キロも通行困難な状況となっております。平成26年度から、白浜町久木側で地籍調査が完了している区間のうち2.7キロについて事業化がされております。この事業区間の西側、白浜町庄川側については、約2キロの通行不能区間が残ることになっております。つまり、3キロと2キロを足した5キロについて、事業化がされていないことになります。通行不能か通行困難箇所となります。
 現場の工事の状況を考えますと、白浜町久木側の日置川沿いからこの工事現場予定地を見る限り、私も土木技術、土木作業の素人ながら、かなりの難工事であると推測できます。
 道路は、つながってこそ初めてその効果が発揮されるものであります。道路をつなぐために、その残りの通行区間の事業化がぜひ必要ではないでしょうか。現在の工事区間を含め約7.7キロ、通常ならばかなりの歳月を要する工事になると思われますが、早期開通に向け、現在の白浜町久木側からの工事とあわせ、白浜町庄川側からも工事を進めていくことが必要ではないでしょうか。
 現在、地籍調査が進められている庄川側の区間については、平成29年度に地籍調査が完了いたします。現在の2.7キロの改良工事の後に続けて2キロの改良をするのであれば、先ほど述べたとおり工事も大変だと思われますので、久木側からの片側工事では道路がつながるのがいつになるのかわかりません。ぜひ地籍が終える平成29年度から、白浜町庄川側からも事業化ができないものかと思います。
 残された工事延長を考えたときに、両側からの工事着工をすることが必要だと考えますが、県当局の御英断をお願いしたいと、私も、地域住民、また先人の方々も願っていますが、県当局の御所見をお願いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの秋月史成君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 県道白浜久木線につきましては、地元がその整備を長年待ち望んでおられ、また、旧白浜町と旧日置川町が合併して誕生した新しい白浜町が1つの町として一体的に発展するために欠かせない道路だと認識しています。
 県としましては、庄川地区住民からの訴訟問題が解決したのを機に、平成26年度に通行不能区間4.7キロメートルのうち地籍調査が完了した久木側の約2.7キロメートルの区間について事業化し、今年度、用地取得ができた久木橋付近の工事に着手したところでございます。
 今後、この事業中区間の用地取得や工事を精力的に進めるとともに、残る通行不能区間についても、地籍調査が完了し次第、事業に着手できるよう準備を進め、全体としての早期完成に向けて取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 秋月史成君。
  〔秋月史成君、登壇〕
○秋月史成君 大変前向きな御答弁、本当にありがとうございます。
 先人の方々も、促進協議会の方々も、地元住民の方々も、今の県土整備部長の御答弁で大変喜ばれたのではないかと思います。遠く離れた西牟婁郡から喜びの声が議場まで届いているような錯覚さえ起こしてしまいます。今後、一日も早い開通を望むところではあります。県当局といたしましては、今後も格段の御配慮をよろしくお願いいたします。
 次の質問に入ります。
 続きまして、私が昨年9月定例県議会に、県議会最初の質問の際にお聞きいたしました白浜久木線の久木側で接続する県道日置川大塔線について、再度の質問に移らせていただきます。
 9月の定例議会では、野尻県土整備部長より「残る未改良区間につきましては、今後、紀勢自動車道の供用により交通の流れが変化し、当該路線の果たす役割も変化することが予測されるため、狭隘箇所の現状や周辺道路の整備状況などを十分勘案した上で、その整備のあり方について検討してまいります」と、私にとりましても、日置川流域の住民にとりましても、非常に前向きな御答弁をいただいたわけであります。
 その後、危険箇所の整備も小規模ながら県当局の格段の御配慮により事業化が決まり、幾分か前に進んでおります。まことにありがとうございます。
 先般、高速道路の開通後の知事の記者会見の際、知事は「あえて言うなら」と前置きした上で、白浜町の日置川流域やすさみ町の施設などへの影響のおそれを指摘いただきました。仁坂知事も日置川流域の今後の問題を気にかけていただいていると、私も日置川流域の住民も大変うれしく思った次第であります。
 過疎化が急激に進む日置川流域地域住民の方々の懸命の御努力により、民泊・体験型観光のお客様が増加していると聞いております。また、JR西日本様の御厚意により、JR紀伊日置駅に特急電車が臨時停車し、250名ほど大阪からの子供たちが、すばらしい日置川の自然あふれる田舎体験学習をし、帰路についたと聞いております。大変ありがたいことではあります。
 しかし、地元の方々、民泊関係の方々からのお話を聞きますと、日置川インターから上流の日置川大塔線は、大型バスと普通車が対向できない箇所、また路肩が弱く、大型バスの運転手が非常に注意を要する箇所も多くございます。また、以前改修されておりますのり面も老朽化が進み、危険箇所が多く存在いたします。9月の質問のとおりでございます。質問以降も、何度も何度も何度も、私みずから車を走らせ、タイヤをすり減らし、また、靴底をすり減らしながら、細部にわたり実情をさらに一層掌握してまいりました。
 田野井地域を上流に上った箇所からは部分的改修はされているものの、よい状態が非常に少ないと言っても過言ではないと言えます。また、地域住民の方々の怒りに近い切実な願いも聞いてまいりました。紀伊半島災害の際には交通路が寸断され、迂回路は確保されたものの大型バスは通行どめとなり、民泊・体験型観光のお客様は現場で小型車に乗りかえ、お送りしたこともありました。また、大雨の際、殿山ダムの放水量がふえますと、県道が冠水し、通行どめを余儀なくされる箇所も数カ所あります。県道白浜久木線の事業とともに、この事業計画につきましても格段の御配慮をお願いし、白浜久木線が開通の暁には、日置川筋の交通難所の箇所が解消していることを切に願う思いではあります。
 この地域周辺の道路の整備状況を見ますと、上富田町生馬で国道311号線から枝分かれする県道上富田すさみ線は、生馬川に沿って上富田町と旧日置川町の境界を越え、白浜町玉伝まで2車線改良がなされております。この県道上富田すさみ線と紀勢自動車道日置川インター、県道白浜久木線を通じ、紀勢自動車道南紀白浜インターをつなぐ道路が、まさしく県道日置川大塔線であります。この県道日置川大塔線が改良されれば、これらをつなぐ道路網が形成されることになります。上富田町の富田川流域、日置川流域、白浜海岸部をつなぐ連携道路として、地域の周遊観光や災害時の代替交通道路として大いに期待されるものであります。
 平成28年度に、2級河川日置川水系河川整備計画がまとまります。先日の自民党県議団への重点施策説明において、川筋ネットワーク整備は平成29年度に概成すると聞いております。日置川大塔線は、日置川流域住民の生活にはなくてはならない道路です。次の川筋として整備してほしいと切に願うものです。それに向けて、9月の答弁でもあったとおり、高速道路開通があり、交通の流れの変化や白浜久木線の本格的着工を踏まえて、日置川大塔線の整備のあり方について、平成29年度までにどのような検討をしていただけるか、県土整備部長にお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 県道日置川大塔線につきましては、これまで沿道の主な集落から田辺市方面へ直接アクセスする別の路線を重点的に整備してきたことから、未整備区間が多く残っている状況にあります。現在、基本的生活に必要不可欠な道路として、白浜町口ケ谷地内での狭隘区間の拡幅や日置川インターチェンジ周辺での歩道整備などを進めているところでございます。
 現在、県としましては、内陸部骨格道路として川筋ネットワーク道路を重点的に整備しておりますが、これが平成29年度に概成するため、今後、それに続く重点的に整備する路線の検討を行う必要があると考えてございます。
 そのような中、当該路線につきましても、その検討に資する準備として、高速道路供用後の交通状況を把握するとともに、地域の課題などを踏まえて、広域的なネットワークの中での位置づけやその果たす役割などの検討を進めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 秋月史成君。
  〔秋月史成君、登壇〕
○秋月史成君 これもまた大変前向きな御答弁、ありがとうございます。
 日置川流域住民の皆様にとりましても、日置川大塔線の問題は本当に切実な問題であります。今後は、日置川大塔線の問題の一日も早い解決を賜りますよう、引き続き御尽力、切にお願い申し上げます。
 次の質問に移ります。
 政治家となり、はや1年になろうとしております。日々、住民の相談や御要望事を聞かせていただき、政治活動に奔走している毎日ですが、政治家というのは本当に悩み多い職責だと現在痛感しております。
 最近、私の頭を悩ませていますことは、本年6月19日以降に行われる参議院選挙のことであります。国政における我が自由民主党の議席の動向を心配しているのかと思われるかもしれませんが、私が頭を悩ませているのが、参議院選挙から始まる18歳からの選挙権であります。私も、昨年4月に県議会議員選挙で西牟婁郡の皆様に選んでいただいたこともあり、次回の県議会議員選挙で選挙権が2歳低年齢化になったことが自分の選挙にどのような影響を及ぼすか、気にならないと言ったらうそになりますが、私が最も頭を悩ませていますのが、学校教育現場における政治教育、主権者教育であります。
 選挙は、民主政治の基盤をなすものであり、その健全な発展を期するためには、公明で適正な選挙が不可欠となります。選挙は、国民一人一人が政治に参加する重要な機会であります。しかしながら、近年、国政選挙、地方選挙とも、投票率は全般的に低下の傾向を続け、特に若い世代の投票率は他の世代に比べて低く、若者世代の政治参加が重要な課題となっております。
 そんな中、平成27年6月17日に公職選挙法が一部改正する法律が成立し、6月19日に公布されました。法律の改正に伴い、選挙権を有する者の年齢が18歳以上にと2歳引き下げられ、本年6月19日以降に行われる国政選挙の公示日以後に公示・告示される選挙から、すなわち7月の参議院選挙から満18歳以上の者が選挙権を有することになります。
 今回の法律改正により、高等学校に在学する生徒が在学中に満18歳を迎え、選挙権を得ることとなります。生徒の中に満18歳以上の選挙権を有する者と、満18歳未満の選挙権を有さない者とが混在します。参議院選挙前には、教室の中でざっと3分の1が18歳以上の有権者、3分の2は18歳未満で投票できないということになります。生徒の意識が異なる中、どう教えていけばいいのか、教育現場にもかなりの混乱がもたらされる可能性が予測されます。
 教育基本法第14条1項には、「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」とされております。国家、社会の形成者として、国民として資質を養うことを目標とする学校教育において、当然要請される課題でもあります。
 今回、公職選挙法が改正され、学校においては政治的教養を育む教育をより一層推進することが求められていますが、そんな際、教育基本法第14条2項「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」に基づき、学校の政治的中立を確保し、現実の具体的な政治事象、政治課題も取り扱い、生徒が有権者としてみずからの判断で権利を行使できるよう、実践的な教育指導を行うことが望まれることと考えます。
 しかしながら、教育現場に立つ教師も人間です。自由な思想信条を持つことは自由権の1つであり、日本国憲法第19条にも規定のある権利でもあり、その自由な権利を私は決して否定するものではありません。
 私、現在大学1年生の娘がおりまして、昨年まで和歌山県内の県立高校に通っておりました。夕食を家族で一緒にとりながら、その日の学校の様子、友人との人間関係、授業中の様子、教師の発言など、さまざまなことをよく話してくれる娘でした。その中には、教育現場における、私の感覚では政治的中立を欠く教師の発言も多数含まれておりました。
 生徒から一段高い位置に立ち、教室で授業するときに教師の立つ壇を「教壇に立つ」という言葉が現在もよく使われております。教師になることを例える言葉に、教えるに鞭と書いて「教鞭をとる」と表現されたりもします。生徒より一段高い位置に立ち、生徒とは教室において1人だけ違った方向を向いている教師は、生徒に比べ絶対的、精神的優位に立つことは、かなり変化は生じたとはいえ、今も昔も変わらないことと思われます。
 そんな生徒と教師の師弟関係にも近い関係の中から、また、社会を十分知らない18歳の生徒にとりましては、教師の発言は大変重いことになることと思われます。教師の発言いかんによっては、投票行動に影響を及ぼすことになる可能性もあります。教室という密室の中で政治的中立が保たれるか否か、心配でなりません。政治的中立とは、人それぞれ千差万別と私は考えます。共通の物差しがなければ、教育現場に立つ教師の皆様も混乱を招くと思われます。
 まずは、県当局の政治的中立とはどのようなものかお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校における政治的中立につきましては、教育基本法第14条2項に「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治活動をしてはならない」と規定されており、それが基本となります。
 これまでも、政治的中立について、各学校に対して教職員の選挙運動の禁止等に関する通知等を行ってきました。
 さらに、今般の公職選挙法の改正を受け、県立学校長会や教頭会において、学校における政治的中立の確保について、重ねて指導を徹底したところでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 秋月史成君。
  〔秋月史成君、登壇〕
○秋月史成君 県当局の政治的中立に対する明確な物差しが現在の御答弁で示されたわけでありますが、教育基本法第14条2項で、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」と以前から明記されております。今まで、教育現場では政治的中立が確立されていると言いがたい事象が多く発生していることは、皆様も承知の事実かと思います。法律上の「学校は」と規定されていますが、学校の構成員である教師は学校の教育活動に従って教育を行うのであり、その学校教育活動の中で教師個人が党派的政治教育を行うことも当然禁止されることと考えます。
 例えば、教師が授業で子供に対し特定政党のイデオロギーに基づく教育を行うことはもちろん、このような教育を校外で行われることも許される行為ではないと考えます。教師自身が自制しても、教師に大きな影響力を持つ外部勢力がそのような教育を実施させようとする場合には、教育の政治的中立の確保は困難になることと思われます。教師に強い影響力を持つ職員団体等を通じ、外部から教唆、扇動しようとする者を排除する必要もあると考えます。
 埼玉県春日部市立中学、教師が政党の機関紙のコピーを配布し、言語道断で非常識と埼玉県上田知事が激怒した事例もあります。
 和歌山市内では、教師が召集令状に見立てた赤紙のコピーを児童に配ったこともあるそうでございます。また、選挙の際には特定の候補者の後援会申込書が職員室で回されたり、表沙汰にはなっていませんが、多く同じような事象が私の耳にも報告されております。また、教室と、ある意味密室で政治的中立を欠く教師の発言も、私みずから娘から聞かされました。私も、義務教育課程で、多く教師の政治的中立を欠く発言をこの耳でじかに聞いた経験も持っております。
 この夏の参議院選挙から高等学校の生徒の一部が投票権を得ることから、罰則規定により以前より増して厳格で迅速な罰則が望まれることかと思いますが、政治的中立が確保できなかった事象や発言がなされたとき、迅速で厳格な対応をなされるのか、政治的中立を欠く事象が学校教育現場で起こった際の罰則等の対応について、県当局にお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) これまでも、先ほど申し上げましたが、教職員における政治的中立は大変大切であり、また指導を徹底してまいりました。
 政治的中立が損なわれるような事態が発生した場合は、該当教員を厳しく指導するなど、速やかな対応が必要であると考えます。また、該当教員の行為が法令等に違反した場合は、処分を含め、厳正に対処してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 秋月史成君。
  〔秋月史成君、登壇〕
○秋月史成君 力強い御答弁でしたが、子供たちの教科書制作会社から和歌山県内の教職員25名に対して1万円から数万円贈った事件、発覚してかなりたちますが、和歌山県教育委員会はいつまで放っておくのかと、県民のお声が私の耳にも入っております。
 まあ、和歌山県教育委員会は、このまま放っておくことは決してないとは思っておりますが、県民目線から見れば迅速で厳正な対応を望んでいるわけであります。今後は選挙権が2歳低年齢化するということもあり、以前に比べ、より一層、迅速に厳正に対応をお願いしたいと思いますし、今後は政治的中立の確保が万全でなくてはなりません。起こってからでは、指導や処罰が幾ら迅速で厳正であろうと、後の祭りになることもあります。
 教師が教えるのは学問だけではないと思います。倫理観や社会のルール、道徳等々、教育公務員の立場をわきまえ行動するように、指導を徹底的に行っていただきたく強く要望いたします。
 次の質問へ移りたいと思います。
 弥生3月、少し春の兆しも見えてまいりましたが、まだまだ肌寒い日々が続いております。常春の国・和歌山ですが、12月から先月の2月までは大変寒い日々を過ごしておりました。寒い日々を送っていますとき、ふっと目を閉じ思い出すのは、南紀支援学校に通う児童生徒のことであります。建物と建物をつなぐあの渡り廊下を、肢体不自由の子供が毛布にくるまれ、学校職員がかじかむ手に息を吹きかけ、車椅子を押して移動する光景を想像するだけで、目頭が熱くなり、万感胸に迫るものがあるのは私1人だけではないと思います。
 昨年9月議会におきまして、南紀支援学校の建てかえ問題について質問させていただき、宮下教育長の御答弁にもありましたとおり、27年度内に一定の方向を取りまとめるために、現在最終の段階に庁内では入り、御尽力いただいていることかと思います。その方向性を今か今かと待ち焦がれている保護者、私自身もその方向性の発表を待ち望んでおります。
 教育長のお示しいただきました期日まであと27日。その方向性は今回の質問ではあえて聞かないことといたしますが、私にとりまして少し気になる事象が現在発生しております。
 先般、知的障害を持つ児童生徒が通うはまゆう支援学校の保護者、南紀支援学校の保護者、それに南紀支援学校の教職員、紀北支援学校の教職員、さくら支援学校の教職員も交えまして意見交換を行いました。その方々の中には、教育長が示される方向性について明るい期待を持ちつつ、今後の方向性について御不安をお抱えの様子でした。当然のことと私も考えております。合格発表を待つ受験生の心境のように思います。
 意見交換終了後、保護者、教職員の方々に詰め寄られ、「県教育委員会は、方向が決まったら私たちの意見や要望は何も聞いてくれないのではないか」と御不安の様子を訴えておりました。私は、昨年の9月議会での宮下教育長の御答弁を信じております。大多数の県民の皆様も、教育長の御答弁を信じていただいていることとは思います。一定の方向を取りまとめた後、学校関係者や保護者、地域の皆様から御意見をいただくとの御答弁でしたが、不安感を募らせ、その不安感がいっぱいになっている現実があります。
 このたびの質問で、あえて聞かせていただきます。一定の方向がまとまった暁には、丁寧に保護者、教職員、地域の皆様の意見を賜り、不安感を払拭する姿勢を持っていただけるのか、また、保護者、教職員、地域住民の最大公約数の皆様に納得していただける施設構想をお示しいただけるのか、県教育長の決意と自信をお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 南紀支援学校の施設整備につきましては重要な課題であると認識しており、一人一人の障害特性に応じた十分な教育が展開できる学校とするため、年度内に県教育委員会としての方向性を決めてまいります。
 この後、速やかに学校関係者や保護者、地域の皆様の不安を取り除くため、丁寧な説明をするとともに、関係の皆様の意見をいただき、関係部局と協議し、具体的な実施計画を早期に策定してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 秋月史成君。
  〔秋月史成君、登壇〕
○秋月史成君 昨年9月議会の御答弁より、若干、ほんの少し前に向いた御答弁であったという印象ですが、保護者や教職員の皆様からの御意見では、先ほどの質問でもありましたように、「私たちの意見を聞いてくれないのではないか。方向が決まったら、あとは説得だけになる」という訴えもあります。また、「本当に新たな学校建設がなされるのか」、「県は新たな学校建設をする気があるのか」、「新たな学校建設なんかしないでしょう」などの意見も寄せられております。
 県民である保護者や教職員の皆様から、県教育委員会に信頼を置いていないのではないかという印象さえ持ってしまいます。しかし、この本会議で直接、宮下教育長の御答弁を聞かせていただいている私は、信じたいと思っております。信じてはおりますが、対応の遅さ、仕事の遅さにいら立ちを隠せません。
 先日も、支援学校関係者のお話では、トイレが故障し、使用不可能となったそうでございます。また、寄宿舎のエレベーター設備も故障し、修理も不可能となっているそうでございます。待ったなしの施設であることは、当局も御認識いただいているわけではあります。
 あと27日で一定の方向が示されることでしょう。丁寧で迅速な、保護者、学校関係者、地域住民の方々の不安と不信感を取り除くために説明が行われることと思います。その後、迅速に施設整備構想計画を取りまとめ、早期施設建設を強く強く要望いたします。
 これで、質問を終わらせていただきます。最後までおつき合いいただきまして、ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、秋月史成君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時30分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(藤山将材君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 皆さん、こんにちは。議長のお許しをいただきましたので、質疑並びに一般質問を行います。
 アベノミクス3年間の成果として、内閣府が示した資料があります。これは、本年1月に行われました平成28年第1回経済財政諮問会議の席上で確認された資料です。GDP・GNI2015年第3・四半期の名目は、GDPは、500兆7000億で2008年4月─6月期以来の500兆円を超え、GNI、すなわち国民総所得は、国民が受け取った所得の総額ですが、実質では2012年10月─12月期と比べて約21兆円増加しており、リーマンショック前の水準を上回っております。物価動向につきましては、15年以上続いたデフレ状況を転換し、脱却に向け着実に前進をしている状況だとしております。
 雇用・賃金におきましては、総雇用者所得は、すなわち我が国の雇用者全体が受け取る賃金の総額ですが、2012年12月に比べて名目で5%、実質で2%以上増加しております。失業者数については、2012年11月時点と比較して53万人減少、正規雇用者数は2012年7月─9月期と比較して2万人増加していますし、地域経済として非常に大事な有効求人倍率は全都道府県で上昇、女性の活躍では、女性の就業者数は、同じく2012年7月─9月期と比べて102万人増、女性の正規雇用者数は約31万人増などとする報告内容です。大きな成果と言えます。しかも、国民、特に地方にとってその実感が伴っていないと言われる中で、少しずつですが、地方にも景気回復の兆しも見え始めてきております。
 47都道府県の2016年度一般会計当初予算案が出そろい、時事通信社の集計によると、32都道府県が15年度を上回る予算規模となっております。特徴的な傾向として、保育料の軽減や地元に就職する大学生向けの奨学金返還支援など、子供や若者に予算を重点配分する傾向や、それぞれの自治体で人口減少対策により力を入れていることがわかります。
 経済的に恵まれないものの、勉学への意識が強い学生を給付金で支援する取り組みとして、和歌山県の施策も紹介をされております。この施策は県単独事業として評価されたものでしょうが、それ以外にも、企業にも支援をいただき、大学生などの給付型奨学金を利用した和歌山県Uターン人材確保や、待機児童解消を目指す保育人材確保のための保育士修学資金貸付制度の創設など、和歌山県で育った人材が戻ってこれるような施策に重点的な予算をつけたことにことしの特徴があると思われます。地方版総合戦略におよそ4分の1の歳出となりました。
 和歌山県は、20年以上、連続人口流出に歯どめがかからない状況が続いております。先日発表されました国勢調査速報値でも、昭和30年以降実施した調査で初めて100万人を割り込み、昨年10月1日現在で96万3850人、しかも、前回の調査と比べ、人口減少数は3万8348人、減少率は3.8%で、ともに過去最大になりました。
 あらゆる施策を講じ、少子化を食いとめ、若者を呼び戻す流れをつくる大事な時期と考えます。どのように少子化を食いとめ、どのように若者を呼び戻すのか、その施策について、知事のお考えをお示しください。
 2点目に、和歌山県立医科大学薬学部新設についてお聞きします。
 これまでも、議会の中で、薬学部設置の目的や薬剤師養成についての将来見通しなど、構想を説明されております。平成28年度当初予算案に1129万円を計上、調査、設計、建設、申請、そして、2021年度4月開学を予定しております。今年度から、構想段階から準備段階に入ったことになります。
 そこで、何点かお聞きをしたいと思います。
 まず、公立大学法人和歌山県立医科大学理事会の議決は得られているのでしょうか。
 次に、開設までの経費と開設後の経常経費については、どのようにお考えか。
 和歌山市立伏虎中学の跡地を利用となっておりますけども、和歌山市も、新市民会館を建設する計画を発表しております。跡地利用については、市が行ったアンケートの中では、大学の場所としてどうかや土地の広さを心配する声があるように思われます。どのような計画をお考えか、お聞かせください。また、今後の開設までのスケジュールについてお答えをください。
 以上、福祉保健部長にお尋ねします。
 薬剤師養成に関して、今後の薬事行政とのかかわりについてお聞きをしたいと思います。
 平成26年、薬事法が改正され、名称が医薬品医療機器法になり、1年に3回も改正されるほど薬事行政が変わってきております。インターネット販売、また販売規制の見直し、医薬品・医療機器等にかかわる安全対策の強化、健康情報拠点としての薬局の今後のあり方など、まだ大きく変わろうとしております。県内薬局や薬剤師の現状と薬事行政とのかかわりについて、国の動向を踏まえ、どのようにお考えか、福祉保健部長にお尋ねをしたいと思います。
 子育て支援についてお伺いします。
 安心して産み育てる環境づくりが必要です。和歌山県では、昨年10月時点で待機児童が前年に比べ1.7倍にふえております。ますますふえる傾向にもあります。新政策で保育所の整備、保育人材の確保、在宅就労支援などを掲げておりますが、まず、保育人材の把握について、県としてどう取り組んでいるのでしょうか。
 また、従来の紀州3人っこ施策をバージョンアップして、第3子以降の幼児教育・保育の無料化にも一層強力に取り組むこととなっています。この施策は、市町村と協力して進めていかなければなりません。どのように進めていこうとしているのでしょうか。あわせて福祉保健部長にお尋ねをします。
 総合就労支援についてお聞きします。
 平成26年6月議会で京都府の取り組み事例を紹介、京都府が中心となり、京都市や労働局が協力し、企業の人材研修や求職者の就労支援、求職者の生活支援などを含めた総合就労支援をしておられました。その後、当局の方が京都へ視察に行かれたとも伺っております。
 働きたいと希望する皆さんのニーズに応じたきめ細かな総合支援が、これからもっと求められていると思います。若手の人材、これまでのキャリアを生かして再就職を目指す中核人材、熟練人材、留学生、そして、子育て中の女性やひとり親家庭の一人一人の実情に応じて、就業に伴う保育に関する相談や情報提供は、保育と就活が同時に支援できる一体型が必要ですし、ワンストップ型の総合就労支援の拠点づくりについて、改めてお聞きしたいと思います。
 また、安定した雇用を創出するとして、5年間で4000人の雇用の場を確保と目標を掲げておられます。その中で、女性の雇用をどのように考えておられるのか。また、和歌山版政労使会議として開催している和歌山働き方改革会議での共通の認識として女性の雇用の創出がテーマになっているのか、これについてもお伺いをしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県では、これまでも、出会い、結婚から妊娠、出産、子育てまで切れ目のない支援を行ってきた結果、平成17年に1.32であった合計特殊出生率が平成26年には近畿でトップの1.55まで上昇いたしましたが、これをさらに人口が均衡する水準2.07に引き上げる必要があり、少子化対策を新政策の1番目の柱としたところでございます。
 まず、少子化対策については、これまでの施策を総点検して徹底的に議論を行いましたが、親世代や子供、それぞれの立場から、何に新たに取り組むべきかという課題を抽出いたしまして、効果的な施策を平成28年度新政策に盛り込んだ所存でございます。
 親世代への支援といたしましては、出産、子育てに係る経済的負担を、これが問題だということで、軽減するために、高額な不妊治療を受ける夫婦への助成や、3人以上の子供を育てる世帯の保育料等の無料化を大幅に拡充することにいたしました。また、保育所等の整備支援、保育士確保のための修学資金や再就職準備金の貸し付けなどにより、増加傾向にある待機児童を解消し、多子化の流れを後押ししたいと思っております。
 子供への支援といたしましては、子供の健やかな成長を促すため、帰宅しても1人で過ごさざるを得ない子供たちの居場所をつくる民間団体あるいは市町村を支援するなど、社会で子供を育む環境づくりに積極的に取り組んでいく所存であります。さらに、進学意欲や学力が高いにもかかわらず、経済的な理由で大学進学を諦めざるを得ない子供を助ける給付金制度を創設したいと思っております。
 次に、本県に若者を呼び戻すためには、働く場の確保が最重要であり、企業誘致に全力を注ぎ、安定した雇用を確保することが大事だと思います。その上で、和歌山の暮らしやすさの魅力と県内企業情報の発信強化や、本県の製造業やIT産業を支える優秀な人材を確保するための奨学金返還助成を行う所存であります。また、高校生を対象に、県内企業の理解を深める長期就業体験の実施などにより、将来の和歌山を担う若者の県内就職を積極的に促進してまいりたいと思います。
 新政策を中心にさまざまな施策に全力で取り組み、安心して子供を産み育てることができ、若者が希望する仕事につきながらはつらつと暮らせる和歌山にしていきたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 和歌山県立医科大学薬学部新設についてお答えします。
 まず、第1点目の理事会の議決についてですが、公立大学法人和歌山県立医科大学では、平成26年12月の理事会で薬学部設置の前向きな検討を決定して以来、1年以上にわたり、学内説明会、教授会、理事会等で薬学部の設置に関する検討が行われております。
 その後、本年1月に開催された同大学の審議機関である教育研究審議会及び経営審議会の審議を経て、2月に開催された理事会において薬学部の設置が議決されたと報告を受けております。
 次に、2点目の開設までの経費と開設後の経費についてですが、薬学部の新設を検討する上で、初期投資や運営経費については、将来の県財政への影響を勘案し、慎重に検討を行ってきたところです。
 初期投資については、薬学部を設置している他大学の施設面積や建設費を参考として試算したところ、校舎等の建設費で約150億円、設備・備品及び図書等の整備費として約20億円、その他の費用で約6億円と見込んでおります。
 開設後の運営経費については、学生納付金のほか、外部資金等を充当した上で、不足する経費は県から運営費交付金を交付することとなります。
 なお、公立大学の運営に要する経費については学生数に応じて地方交付税措置されることとなっており、他大学の調査結果等から、定員が充足すれば交付税措置額の範囲内の運営交付金で学部の運営は可能と考えております。
 次に、3点目の和歌山市立伏虎中学校の跡地利用についてですが、和歌山市の伏虎中学校跡地活用基本構想において、伏虎中学校跡地の北側部分7000平方メートル程度が薬学部を誘致する敷地として示されていることから、同敷地を活用して、公立大学法人和歌山県立医科大学と協議しながら、薬学部の教育、研究に必要な施設整備を進めてまいります。
 なお、和歌山市が実施した伏虎中学校跡地への薬学部立地に関するアンケート結果では、否定的な意見が36.0%となっているものの、反面、「大変よいと思う」など肯定的な意見も40.6%あり、否定的な意見を超えています。
 伏虎中学校周辺には和歌山城公園もあり、交通利便性も高く、学生就学環境は大変よいと考えています。
 次に、4点目の開学までのスケジュールについてですが、ハード面では、平成28年度に地質調査を実施するとともに、基本設計及び実施設計に着手、平成29年度に和歌山市が既存校舎を撤去し、平成30年度には建物の建設に着手する予定です。
 一方、ソフト面では、薬学部の教員確保を段階的に進め、教育内容の検討など、平成32年3月の設置認可申請に必要な準備を滞りなく行い、平成33年4月開学を目指します。
 続きまして、今後の薬事行政についてお答えします。
 県内の薬剤師数は、平成26年度に実施した調査によると2163人で、人口10万人当たりでは222.8人と全国平均を若干下回っており、また、男女ともに、薬剤師の平均年齢が全国一高い状況となっています。さらに、紀南地方では、人口10万人当たりの薬剤師数が少なく、地域偏在が見られます。
 議員御指摘のとおり、薬局や薬剤師を取り巻く環境は大きく変化してきており、このような中、まちの薬局を、服薬情報の一元的管理や在宅医療等、24時間対応が可能となる患者本位のかかりつけ薬局としていくため、平成27年10月、国において患者のための薬局ビジョンが策定されたところです。その中で、かかりつけ薬局としての機能に加えて、地域住民の健康増進を支える健康サポート薬局の制度が平成28年度から始まることとされており、住民に身近な薬局が地域包括ケアの一翼を担うことが期待されています。
 今後、薬局や薬剤師に求められる業務内容や役割はますます拡大が見込まれ、県といたしましても、かかりつけ薬局の機能強化や薬剤師の人材養成に資する各種施策に取り組んでまいります。
 次に、子育て支援についてお答えします。
 保育士人材の確保は待機児童の解消を図る上で重要度を増しており、県では平成26年度から保育士人材確保事業を開始し、和歌山県社会福祉協議会にコーディネーターを配置の上、在宅保育士の掘り起こしなど、保育士人材確保対策を行っております。
 保育士人材の把握については、約5000人に対してアンケートを実施し、将来、保育所で働きたい意思があると回答した潜在保育士など約400人に対し、求人情報や復職支援研修などの情報提供を継続して行っております。来年度からは、新たにハローワークの求職者情報の閲覧が可能となり、保育所の求人情報を直接求職者に提供することで効果的にマッチングを行うことができるものと期待しております。
 紀州3人っこ施策のバージョンアップにつきましては、多子世帯の経済的負担を軽減するため、従来、保育所の3歳未満児を対象に実施してきた第3子以降の保育料無料化を、親の所得や兄、姉の年齢に関係なく、また保育所や幼稚園にかかわらず、就学前まで大幅に拡充し、安心して3人以上産み育てられる環境を整えることで少子化を食いとめようとするものです。
 市町村に対しては、円滑な施策推進を目指し、施策の内容や県の考え方について説明を重ねてきた結果、ほとんどの市町村で来年度から実施できることとなっております。今後も働きかけを続け、県下全域、どこに住んでいても施策が利用できるよう取り組んでまいります。
○副議長(藤山将材君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 総合就労支援についてお答えします。
 昨年11月にジョブカフェわかやまとハローワークは、和歌山市本町通りに移転し、移住希望者への暮らしと仕事を総合的に支援する体制を整備しました。それにあわせて、これまで主に若年者に対して行ってきた就労支援を高齢者を含む全ての求職者に拡大し、年齢を問わず、より多くの方に対して支援を行っているところです。さらに、女性専用窓口や子供が遊ぶスペースの設置、保育・子育て情報の提供など、支援内容も充実したところです。
 今後も引き続き、利用者のニーズに合わせて総合的な就労支援を充実してまいります。
 また、女性の雇用につきましては、和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略において、女性の就業率を68.5%から75%に引き上げる目標を掲げ、企業の経営者の意識改革を促す出前講座や就業規則の見直し等に助言・指導する専門家派遣など、働くことを希望する女性が個性と能力を十分発揮して活躍できる職場環境づくりに取り組んでおります。
 なお、和歌山労働局が和歌山版政労使会議として2月に開催した和歌山働き方改革会議におきましても、女性の活躍促進に向けた職場環境づくりや企業への働きかけ方などについて議論を行ったところです。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 それぞれ御答弁いただきました。
 特に薬学部の新設について要望したいと思うんですけども、先日、和歌山市が発表したお城の前の伏虎中学のイメージがいろいろ話題になっておりますけども、今御答弁いただきましたように、校舎などの建設費で約150億円、設備や備品などの整備費で約20億円、その他費用で約6億円、既存の公立薬科大学における学生1人当たりの経常費予算は250万ということですんで、これはわかりませんけども、大体600人で完成年次には15億から20億ぐらいの運営経費がかかるのかなあと、こんなふうに個人的には考えてるんですけども。
 敷地の問題ですね。伏虎中学の跡地は、約1万3000平米あるというふうに和歌山市のほうで発表しております。それで、その中に市の新市民会館の建設をするということで、6000から7000平米が必要とされております。
 薬学部の定員、6年制で600人ということで、これも、文科省が決めた1つの設置基準の中に、1人大体10平米ということですんで、600人とすると6000平米が必要になってくると思うんです。これに薬草園とか附属の研究所用地などということも別途必要になってくると思いますんで、先ほど申し上げましたように、構想段階からいよいよ準備段階に入ってくるに当たり、それぞれ市民のアンケートに基づいた、いろんな懸念材料もあるようでございますんで、しっかりその県民の声にお答えをしていくということが大事じゃないかと思いますので、特に知事にはその件をお願い申し上げたいと思います。
 じゃ、大きな2つ目に入りたいと思います。
 ふるさと納税についてお聞きしたいと思います。
 「ふるさとに対する納税者の貢献とか、かかわりの深い地域への応援を真摯に生かすとともに、地域間の税収格差を是正する仕組みとして、私は有益であると考えております」、これは、平成19年6月議会での私の質問に対する知事の答弁です。ふるさと納税について、制度がスタートする前の知事の御見解です。
 ふるさと納税は、平成20年からスタートしました。当時、導入に積極的だった菅官房長官は、こう語っておられます。「秋田出身の私は、地方分権のためにふるさと意識を高めたいという思いが強かった。高校卒業まで自治体が負担する公費が1人当たり約1600万円、自分の好きな土地に還元するのはおかしくないと、そういう発想で始めたら、官僚は、税の根幹を揺るがすと反対しました。しかし、私は動揺しなかった」と。
 今や、ふるさと納税は大人気です。昨年度上半期実績集計では約228万件、前年同期で約3.7倍、金額では約453億円、前年同期で約3.9倍、始まった平成20年度が5万4000件、約81億3000万円ですから、非常に驚くべき伸び率になっております。なぜかというと、それは2000円で日本全国の絶品の特産品を楽しめるからです。住民税の控除額が2倍になり、もらえる特典もふえ、納税効果も上がります。
 ふるさと納税は、個人住民税の寄附金税制が拡充されたもので、地方自治体に対する寄附金のうち2000円を超える部分について、個人住民税所得割のおおむね2割を上限とする金額が所得税と合わせて控除される。2015年4月よりふるさと納税ワンストップ特例制度が創設され、ふるさと納税がさらに注目を浴びるようになってきました。
 しかし、ふるさと納税はメリットばかりではありません。デメリットもあります。寄附を受けるだけでなく、納税を受け取る立場からすると、市民・県民税を控除されるというデメリットも一方でついて回ります。それゆえに、大都市からは反対や慎重意見が多数出てるようです。
 また、都道府県は、ふるさととしての愛着が持たれにくく、寄附が集まりにくい可能性があるとも言われております。行政サービスを受ける住民が税を負担するという受益者負担の原則を唱える方もいらっしゃいます。自治体の税務が煩雑になる、特に収入にならない分の業務負担があり、根本的な地域活性化や地方間格差を是正するための対策になっていない、税収の少ない地域が受けている地方交付税を合わせると人口当たりでは現状でも都市部の税収と大差がないなどと、反対する側の意見も出てるようです。
 ふるさと納税の活用についてどのように考えていらっしゃるのか、総務部長にお尋ねをします。
○副議長(藤山将材君) 総務部長市川靖之君。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) ふるさと納税は、地方と都会の税収格差を少しでも是正し、自分を育んでくれたふるさとへの感謝や恩返しへの気持ちを具体化させるもので、県にとっても、元気なふるさと和歌山実現のために役立てることができる有意義な制度であると考えております。
 県では、この制度を活用するため、ふるさと和歌山応援寄附制度を創設し、これまで、県にゆかりのある方々への直接訪問や県人会などへの働きかけのほか、ふるさと納税専用ホームページを利用した広報などにも積極的に取り組んでいるところでございます。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 お答えいただきました。
 ここ数年、和歌山県は非常に注目を集めてるところでございます。昨年は特に国体もあり、県内、県外からの応援もあったと思われますけども、和歌山県、そして県内市町村のふるさと納税の今年度の見込みについて、また県内の取り組みの特色について、総務部長にお尋ねをしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 県では、ふるさと和歌山を応援したいという寄附者の思いや共感が今まで以上に得られるように、平成27年度から、新たにがん対策の充実など4つの活用予定事業を加えるとともに、これまでの県議会における御提案などを踏まえまして、より県産品を知ってもらえるよう、プレミア和歌山のうち35品目の中から寄附者が選択した2品をお礼の品としてお送りすることといたしました。
 ふるさと和歌山応援寄附金の受け入れ状況は、このような見直しなどの効果もあり、平成28年2月末現在で1442件、2967万円と、昨年同時期と比較して、件数で約7.5倍、金額で約1.4倍の増加となっております。こうした受け入れ状況を踏まえ、平成27年度においては3480万円の収入を見込み、2月補正予算で所要の増額をしたところでございます。
 次に、県内市町村への寄附金の状況につきましては、平成27年度上半期の実績は、約2万4000件、約4億1000万円であり、昨年同時期と比較して、件数で約2倍、金額で約3倍となっております。
 このように件数や金額が増加している背景としては、各市町村がそれぞれの考えのもと、返礼品の充実、収納環境の整備、ホームページなどによる広報の充実などを図り、より多くの寄附をしていただけるよう努力している成果であると考えております。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 今お話しいただきましたように、昨年、このふるさと納税のメニューの見直しをされております。その中で、「わかやま国体」開催に向けての準備というメニューをやめて、お話がありましたように、がん対策の充実や奨学金返還支援制度の創設などということで、メニューを変えておられます。
 ここに、昨年6月というふうに私は聞いておりますけども、「ふるさと和歌山応援寄附、ふるさと納税のご案内」ということで新しいパンフレットもできて、全国に発信をされているわけでございますけども、特にこの中で気になるのは3番ですね。
 地元企業への就職を促進する奨学金返還支援制度の創設ということで、新しいメニューに、昨年の6月からこのメニューを加えて、このふるさと納税を新しく見直しをしてやってるわけでございますけども、今御紹介したこの奨学金の制度は非常にいいものだと思いますけども、残念ながら今年度の新政策なんですね。寄附として受け取って、この平成28年度からその寄附を使うという、こういうことはわかりますけども、この新政策そのものは、今、議会にかけられてる最中でございます。要するに、この議会で通るか通らないかという問題もあるやに思います。
 その中で、既にそういう制度を創設したいということで書いてらっしゃるんでしょうけども、私は、いささか勇み足ではないでしょうかと、こういうふうに申し上げるところでございます。もしそれが許されるんであれば、和歌山県立医科大学薬学部新設応援寄附というのも考えていけるんじゃないかなあと、こんなふうに思うわけでございます。
 この寄附金のメニュー作成や見直しについてのルールについてお聞きしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 総務部長。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) ふるさと納税の寄附金の活用予定事業につきましては、ふるさと和歌山を応援したいとの思いや共感が得られるような事業を選定するとともに、和歌山の魅力を県外に発信していく絶好の機会でもありますので、和歌山の歴史や自然を生かした事業など、和歌山ならではの事業を選定しております。その選定に当たりましては、他の事業との整合性やその効果などについて、事業担当課を含めた庁内協議を経て決定しており、新年度の寄附の募集を始めるに当たり、適宜、見直しを行っているところでございます。
 また、御指摘いただきました奨学金返還支援制度につきましては、地方公共団体が地元産業界と協力して、将来の地域産業の担い手となる学生の奨学金返還を支援するために要する経費の一部に対し、平成27年度から地方財政措置が講じられることとなりました。このような国の動きや、昨年2月議会において、しっかり取り組むようにと、そういった御提案もいただいたこともあり、本県としても、この制度を速やかに創設したいと検討していたところでございます。
 制度設計に当たりまして地元産業界の求める人材の把握などを行っていたため、支援対象などの具体的な制度案の御提示が今議会となり、御指摘の点も否めないところでございますけれども、大きな方向性としまして、ふるさと和歌山の地域経済を支える人材を県と一緒に支援していただきたいと、そういった思いから活用予定事業の1つとさせていただいたところでございます。
 いただいた寄附金につきましては、基金に積み立て、今後、他の活用事業と同様に、歳出予算として議会にお諮りし、御賛同をいただければ基金から繰り出し、奨学金返還支援として助成していくこととしております。
 今後とも、より多くの方々に和歌山県を応援したいと思ってもらえるよう検討してまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 今、総務部長からお答えいただきました。指摘は否めないということでございますけども、しっかり、議会を軽視なさらずに、今年度、決まってから寄附金を集めるということも必要だったんじゃないかなということを御指摘させていただいて、次の質問に移りたいと思います。
 このふるさと納税について、最後の質問なんですけども、母校愛に応える寄附金メニューということで質問させていただきたいと思います。
 教育委員会関係で寄附金のメニューに上がっているのは、今、学校図書館や図書の充実とか、また、和歌山文化財の保護となっています。私が東京で暮らしていたときに、ふるさとといえば、親兄弟もそうですけども、仲間と過ごした母校もふるさとの一部でした。ふるさと納税の寄附金メニューに母校を取り入れていただけないか、お答えをいただきたいと思います。
 数年前まで、PTA会費流用ということが和歌山県内で行われておりました。必要な経費は教育費として見直すとされましたけども、まだまだ潤沢とは申せません。郷土愛の中に母校愛があり、その思いにどのように応えていただけるのか、教育長にお答えいただきたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校に関するふるさと納税についてでございますが、いただいた寄附相当額を特定の学校に配分する仕組みを考えますと、どうしても、寄附がある学校、ない学校、寄附があっても寄附が多い学校、少ない学校といったケースが予想され、結果として学校間で不公平や格差が生じてしまうと考えられます。
 教育委員会といたしましては、全ての県立学校に責任を負うということから予算配分を行っているところでございますので、学校間の格差が生じることは避けなければならないと考えてございます。
 ふるさと納税を活用した制度を創設することは困難でありますけども、卒業生の方々には、これまでと同様、母校を愛し、さまざまな形で応援していただければと思ってございます。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 現在、ふるさと納税の寄附金メニューに母校を設けてる県は、私が調べた感じでは4県あります。平成28年度から開始する県もあるように聞いております。
 平成21年から取り組んでいる神奈川県や平成27年から始めた福井県などにお聞きしましたけども、確かに対象の学校数のうち寄附を受けた学校数は、全体のおよそ半分ぐらいになっているそうでございます。しかし、これが偏在というふうには思っていないと思われます。ある県では、寄附額の半分だけ指定校で受け入れて、あとは全体の高等学校で活用しているそうです。
 また、今年度スタートするところでは、各学校に、寄附金でこんな学校にしたい、こういう備品を買いたい、こんな伝統的なものを保存したいというテーマ性や特色づくりをはっきり打ち出して工夫させて、県のホームページや各学校のチラシ等に載せてアピールしているそうでございます。そして、学校機能向上のため活用するとしております。
 偏在性の話が出ました。確かに公平、公正、均等にという言葉は大事な面ですけども、各学校の努力、そして、そこにかかわる同窓会やOB、また、学校だけでなく、地域を活性化させたいというそれぞれの思いに応えていくのも大切な判断ではないでしょうか。
 昨年7月、和歌山県立高等学校のあり方について、第2期きのくに教育審議会の報告が出ました。その報告によりますと、中学校卒業生徒数は、平成元年の約1万8000人をピークに減少を続けます。平成17年が約1万1000人、それが平成26年には9700人、平成34年には約8000人となり、現在よりも1700人程度減っていくというふうに見込みを立てております。
 地方別の見込みでは、有田地方の減少率が一番高く、平成26年が755人から34年には577人、23.6%の減としております。地方の中では、一番深刻な減少を予測しております。有田地方には3校ありますが、4割が流出し、2割が流入してるという状況だというふうにお聞きしております。
 生徒が魅力を感じる学校づくり、地域おこし、学校の責任だけでなく、地域として、また学校関係者を、全ての人を後押しするような、そんな思いにぜひお応えいただきたい。ふるさと納税を活用し、母校に貢献したいという思いに応えていただけるようなことを期待したいと思いますけども、教育長に、再度、御答弁をいただきたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 寄附相当額につきましては、学校に配分することについて偏りが生じるということにつきまして、少額であったとしても何年か続きますと、やはり不公平な格差が重なってくるのではないかなというふうに思ってございます。
 確かに、お気持ちはありがたく、それから、議員御指摘のように、私どもの課題は、各学校の特色化、あるいは予算の問題も多々あるということは十分承知しておりますけれども、それにつきましては、私どもも、しっかり、もちろんやっていかなければならないというふうに思ってございます。
 ただ、県として、県学校全体を応援していくということについて、私ども、課題と思っておりますことを施策としてこの中に載せさせていただいて、例えば学校図書館のことも含めてお願いをしているところでございますので、まずその辺のところから応援をいただければなあというふうに思ってございます。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 やはり、もう少し僕は努力したほうがええと思います。制度設計ということをしっかりやれば、その偏在性は緩和できますし、解消もできるんじゃないかなと思います。その偏在性にこだわってたら何もできないと、こんなふうに申し上げたいと思います。
 和歌山県のホームページの中に、ふるさと和歌山応援サイトということで、知事みずから出演し、ふるさと納税について訴えていらっしゃいますね。そのバックに流れる映像が、ふるさと和歌山を想像させるものとなってるんです。最初に和歌山城が出て、で、川──多分、紀の川でしょうけども、ミカン畑、そして2人の女子生徒が古い校舎の廊下を歩くシーンがあるんです。で、漁船が出漁して、最後に老夫婦が笑顔で迎えてくれる、こういうシーンで終わってるんです。
 「ふるさとが、ここにある」と字幕が表示され、知事は呼びかけられております。「和歌山の自然は、今でも美しい。皆さんと同じ心を持った、今、和歌山にいる我々は、頑張って生活をしています」と話し、和歌山は、なかなか財政上つらいところもあります、ふるさと納税を使っていろんなものを守るため、寄附をして応援してほしいと。
 母校を愛し、協力したい、それは自然な真心ではありませんか。制度設計さえしっかりやれば、懸念されることは払拭していくと思います。どうぞ、知事、一度検討してみていただけないでしょうか。これは、要望にさせていただきたいと思います。
 続いて、質問に移ります。
 最後に、脳脊髄液減少症、ブラッドパッチ療法が保険適用ということで質問させていただきたいと思います。
 悲願のブラッドパッチ療法の保険適用が承認され、この4月から実施される運びとなりました。あわせて、16年度から小児の脳脊髄液漏出症の研究も開始される予定となります。
 2月18日、NHK「あさイチ」で、「保険適用“ブラパ”で劇的回復」と題して、和歌山市出身の仮認定「特定非営利活動法人脳脊髄液減少症患者・家族支援協会」・中井宏代表理事が紹介されておりました。御自身も、滑って転倒したことが原因で、激しい頭痛や目まいで3時間ほどしか働けない状況に、どうやって生きていけばよいのかと悩む10年間だったそうでございます。よい医者にめぐり会え、脳脊髄液減少症と診断され、ブラッドパッチ療法で治療してもらうことで劇的に改善。MRIや画像診断だけではわかりにくいため放置されてきたこれまでの患者を救おうと立ち上がったようです。1回で3万円から5万円かかる治療費を、その3分の1に抑えられる保険適用の運動を開始。ことし1月20日、中央社会保険医療協議会で保険適用の承認が決定され、4月からの実施ということになりました。
 ブラッドパッチ療法というのは、交通事故や過激なスポーツによる強い衝撃で脳髄液が漏れ、頭痛や目まい、倦怠感などの症状に見舞われることから、髄液が漏れている脳と脊髄を覆っている硬膜の外側に患者自身の血液を注入し、漏れをとめる治療法です。
 それまでは、低髄液圧症候群からむち打ち症、慢性疲労症候群、鬱病など、さまざまな症状として苦しんでいたものです。誰でもが起こり得る症状で、気がつかないことも多いとされています。目まい、吐き気、だるさ、ひどい物忘れゆえに、怠け者症候群だと思われてきました。
 患者が全国に約30万いるだろうと推定されるのに対し、これを理解し、患者を受け入れてくれる医師、病院がたったの7人だけという現状でございました。そこから、患者自身がメディアや全国ネットによる運動を展開。患者が立ち上がり、積極的に活動し、保険適用実現までこぎつけたすばらしい実例となりました。
 和歌山県議会でも、昨年勇退されました角田秀樹議員が、2004年(平成16年)から一昨年の2014年まで、都合8回、県議会で一般質問として取り上げてこられました。国への意見書として、平成16年9月、平成25年3月、全会一致で可決していただきました。お世話になりました皆様にお礼を申し上げたいと思います。
 この間、その患者の会の代表理事として活躍してきたのが、先ほど御紹介しました和歌山市出身の中井宏代表理事であります。もとは特定非営利活動法人鞭打ち症患者支援協会代表理事として活動していましたが、なかなか無理解の壁を前に打つ手のない状況だったところを、千葉県でいち早く同症の治療推進を求める意見書を全国に先駆けて採択していただき、その後、意見書採択が公明党の推進により全都道府県に広がってまいりました。
 国民、県民に御賛同いただいた署名人数も、2004年12月に全国展開し、10万2051筆、当時の厚労省・西副大臣に提出したのを皮切りに47都道府県で実施し、全国の皆様の御賛同と御協力をいただき、合計135万筆超の署名となりました。この間、地方議会で周知啓発など対策を要請し、各首長らに治療のための施策の推進を求め、啓発を図る勉強会なども各地で活発に開催されてきました。
 2006年には、脳脊髄液減少症患者支援の会子ども支援チームの代表らが文科省に学校現場における対策を求める約2万人の署名と要望書を提出し、全国に対応と学校現場への啓発が進んできたところでございます。
 このような患者さんたちの声が地方から国に届けられ、同症が外傷で発症する可能性やブラッドパッチ療法の有効性が科学的に立証される契機となり、厚労省の研究となりました。2011年には、研究班が画像による診断基準を発表。2012年には、公的医療保険の対象にするか評価する先進医療に承認。これで入院費など保険が適用され、さらに、先進医療で同症を治療する医療機関を対象にした研究班の調査により、ブラッドパッチ療法は9割で有効との報告がなされ、16年1月に先進医療会議が「保険適用が妥当」と結論、厚労省の諮問機関が保険適用承認に至りました。
 かつては医学界であり得ないとされた常識が、患者団体と全国の支援により覆された瞬間となりました。この14年間、先頭に立って闘ってこられた中井宏代表理事に敬意を表します。
 まず最初に、知事にお尋ねをしたいと思います。
 知事にも、この件で大変お世話になったと思います。直接、中井宏代表理事からも陳情を受けていただいたりしてきたわけですけども、保険適用が実現したこのことに対し、どのように受けとめておられるのか、お聞きしたいと思います。
 2点目に、脳脊髄液減少症の医療現場への周知と適正な治療法、ブラッドパッチ療法についての啓発について、正しい病態の把握をお願いするために、和歌山県でも、医師会とも連携し、医師対象の勉強会を県主催で進めるべきであると思います。福祉保健部長にお考えをお尋ねしたいと思います。
 このことは画期的な第一歩と言えますが、まだまだ課題は残っております。先日、脳脊髄液減少症患者支援の会子ども支援チーム代表・鈴木裕子さんと公明党同症対策プロジェクトチーム事務局長・國重徹衆議院議員との対談が「公明新聞」に掲載されました。
 鈴木さんの話によると、中学校に入学したばかりの娘さんが、突然、頭痛や吐き気といった症状に襲われたそうです。幾つもの病院へ行きましたが、ことごとく異常なしの診断。原因不明の状態が5年も続き、「学校に行きたくないだけで、要するに不登校ではないのか」、「親の育て方が悪い」などと言われたそうです。
 吹奏楽部で金管楽器を演奏していたそうで、後でわかったことですが、楽器を強く吹くことで脊髄を囲む膜に穴があき、髄液が漏れ出すということがあるようです。日常生活の中で誰にでも起こり得る病気と言えます。学校現場で該当すると思われる児童がいる場合、現場の先生や養護教諭の理解が大変重要になります。
 学校現場への周知について、教育長にお尋ねをしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 脳脊髄液減少症の治療に有効とされる硬膜外自家血注入療法、いわゆるブラッドパッチ療法がことし4月から保険適用となるということは、患者の方の長年の願いがかなったものと大変喜ばしく思っております。
 御指摘のように、私も、角田元県会議員と御一緒にいらっしゃった中井宏さんなどからお話をお伺いいたしましたけれども、非常にわかりやすいお話で、なるほどというふうにそのときは思いました。そういうことが一刻も早く保険適用など助成を受けられて、簡単に皆さんが治るようになればいいというふうに思いまして、県からの要望もさせていただくようにしたところでございます。
 ただ、何といっても、この点について運動を起こされた、そして、その運動を助けられた先駆者の方々がやっぱり一番偉いというふうに思いますんで、敬意を表するとともに、感謝を申し上げたいと思っております。
 かくなる上は、県としては、脳脊髄液減少症について、医療関係者の皆さんや、あるいは患者の皆さんに情報発信を行って、安心して適切な治療を受けられるように努めていくべきだと思っております。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 医療現場への周知や啓発についてお答えします。
 県では、平成20年からホームページで脳脊髄液減少症に関する情報発信を行っているところです。今般、硬膜外自家血注入療法いわゆるブラッドパッチ療法が保険適用されることから、この機会を捉え、医療関係者に対して、関係団体と連携して研修会を積極的に開催するなど、脳脊髄液減少症とその治療の啓発に努めてまいります。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 脳脊髄液減少症につきましては、通常の学校生活を送ることに支障が生じても十分な理解が得られない事例があることから、毎年実施する学校保健の担当者を集めた研修会において、養護教諭などに正しい理解が促進されるよう周知を図ってきてございます。
 また、平成24年には、県立学校及び市町村教育委員会に通知を出しまして、同疾患に対する認識を深めるとともに、適切に配慮するよう求めてきてございます。
 今後も、脳脊髄液減少症について教職員の理解を深めるとともに、外傷等の既往歴があり体調不良を訴える児童生徒などについては本疾患を疑うなど、早期発見に努めるよう指導してまいります。
○副議長(藤山将材君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 ありがとうございました。
 これからの取り組みを切にお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきたいと思います。
 御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、多田純一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 まず1つ目に、雇用促進住宅の譲渡・廃止問題への対応について、順次、お伺いをしてまいります。
 雇用促進住宅は、1990年代に、官から民へという政府の構造改革路線のもと、雇用促進事業団が解散、2001年のできるだけ早期に廃止という閣議決定に基づいて、2021年までに譲渡、廃止をするという方向で進められてきました。事業を継承した雇用・能力開発機構は、当時、その廃止方針に沿って定期借家契約者の再契約を中止する案内を出すなどして問題となりました。
 ところが、その後、リーマンショックによる派遣切りで約12万人もの非正規労働者が職を失う事態となり、政府は、解雇による住居喪失者のためにと、既に廃止決定をした雇用促進住宅も活用することとし、また、2011年の東日本大震災による被災者の住宅確保のためにも大いに活用されました。
 こうした経過により、雇用促進住宅の廃止と入居者追い出しの動きはとまっていたわけですが、昨年、「雇用促進住宅の売却等について」という文書とアンケートを配布し、期限どおりの2021年までの廃止へと一気に走り出したのです。
 当初、国と機構は、現に入居者がいることを踏まえ、できる限り現住宅に住み続けられるようにと自治体への譲渡を進めましたが、自治体の多くは、財政難等を理由に譲渡に応じず、民間への売却、それができなければ廃止という方向へ加速をさせたのです。この住宅がなくなったらどこへ行けばいいのかと、入居者からは不安の声が聞こえてきます。
 私が調査に伺った地元湯浅町の雇用促進住宅でも、特に長くお住まいになられている高齢の方々から不安の声が出されました。ある方は、「40年以上住んでいて、ここを追い出されても行くところがない。年金暮らしだが、パートに出て頑張ってる。ここは買い物にも便利なところで、ずっと住み続けたい」とおっしゃいました。ひとり住まいの女性の方からは、「この年で民間で貸してくれるところがないのではと心配」との声、子育て世代のお母さんからも不安の声が出されます。また、昨年入居したばかりという若い方は、「民間に売られるなんて話はよく知らなかった。民間に売られるなら出ていくつもりとアンケートで答えた」など、昨年の通知文書とアンケートにより、それぞれに不安や心配を募らせていると実感してきました。
 また、この湯浅町の住宅は、外階段であることから津波避難ビルとして指定されており、廃止して取り壊されてしまえば、付近住民の避難行動にも影響する問題です。
 そこで、まず第1点目に、県内雇用促進住宅の状況と県内市町村の対応についてお伺いいたします。
 県として、県内雇用促進住宅での状況をどう把握しておられるのか、また譲渡を打診された県内市町村の対応はどうであったのか、商工観光労働部長に答弁を求めます。
○副議長(藤山将材君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 雇用促進住宅は、国の特殊法人であった雇用促進事業団が移転、転職を余儀なくされた人々の住宅確保を目的に昭和30年代から整備を行ったもので、県内には16市町に23住宅が設置され、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に管理が引き継がれております。
 機構にこれまでの経緯を確認したところ、平成13年12月に、雇用促進住宅についてはできるだけ早期に廃止する、平成19年6月には、遅くとも平成33年度までに全ての処理を完了するとの閣議決定がなされております。それに基づき、所在する市町へ機構が譲渡意向の確認を行っております。
 その結果、希望のあった新宮市、かつらぎ町、上富田町の3住宅は平成22年から平成24年にかけて市町に譲渡され、希望のなかった住宅のうち、海南市、田辺市、紀の川市、由良町、串本町にある6住宅は、一般競争入札により平成27年に民間事業者へ売却されております。現在、機構で管理されている11市町14住宅についても、所在市町からは受け入れの希望がなかったと聞いております。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長より、県内に23カ所あった住宅の今の状況を御説明いただきました。
 和歌山県内でも、譲渡の打診を受けた自治体の多くにとっては、国が運営を放棄したことによる降って湧いてきた話だったわけですし、厳しい財政事情等を理由として譲り受けることをちゅうちょした結果だと思います。
 この雇用促進住宅を全国的に見れば、最高時には38万人、今も約10万人が暮らしています。家賃収入により295億円の利益剰余金という黒字を持っていて、5年前にも約400億円を国庫に入れている優良な住宅事業です。現在の県内14住宅には、834戸、約2000人の方々が生活をされています。
 県内の雇用促進住宅では、全て耐震診断と耐震改修が済まされていて、当面の大きな改修費用は必要ない状況となっています。結構古い住宅が多いなど、それぞれ個々の住宅の条件はさまざまですが、雇用促進住宅の建設を地元自治体が誘致してきた経過等から見ても、立地条件などは、利便性もあり、政策的に必要性のあるところに建てられていて、それぞれが十分活用できる条件を持った住宅ではないかというふうに見ています。
 では、次に、23カ所あったうち、既に譲渡されてしまった、売却されてしまった9カ所の雇用促進住宅の現状についてお尋ねします。
 県内でも3市町が譲渡を受けて活用していることが答弁でありましたが、全国的な状況を見ましても、自治体が引き受けて、定住促進住宅として所得制限をなくすなど住居基準を緩和し、活用しやすくしている例が数多く見られます。その一方で、民間譲渡をされた住宅では、入居率の高い人気のある住宅もある一方で、空き家の増加やメンテナンスへの不安が聞こえてくるケースもあると聞いております。
 既に市町村と民間に譲渡された住宅での運営入居状況はどうかという点について、商工観光労働部長より御答弁を願います。
○副議長(藤山将材君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 雇用促進住宅の譲渡を受け入れた新宮市、かつらぎ町、上富田町の住宅は219戸で、入居戸数は、譲渡時の120戸から、現時点では185戸になっていると聞いております。
 また、平成27年に民間事業者に売却された5市町6住宅については、8年間、入居者の家賃を上げないことや他者への転売を禁止するなど、入居者に不利益とならないよう条件が付されておりますが、機構では現在の入居戸数を把握していないと聞いております。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁の中で、県内の自治体が譲渡された3つの住宅は、いずれも定住促進住宅等の公的住宅として公営住宅よりも政策的な運営をしておられて、入居者数もふえているという数字が示されました。
 かつらぎ町では、40歳以下の若い世代に安い家賃設定で入居を促し、入居から3年間は家賃補助もされています。上富田町や新宮市、熊野川町でも、従前より安い家賃設定として定住促進を図っています。住宅購入費用については、10年間の分割オーケーなので、上富田町では毎年の家賃収入でもって支払いを済ませてるようです。
 機構が発行している全国の活用事例集があるんですが、この中にも、こうした多くの魅力的な事例が紹介をされています。このように、市町村に譲渡された住宅は、定住促進対策等それぞれの役割を発揮し、運営も好調だということが言えると思います。
 ところが、一方で、民間に売却された住宅については、部長からは、民間に移ってるので入居状況は把握できてないとの答弁でした。県内6カ所の住宅は、いずれも昨年に売却されていますが、私どもが調査したところでは、新たな入居者はなくて、維持管理を余りしてくれないようだとの心配の声が出されていたり、また、ある住宅では、譲渡を機に退去者が続出し、入居募集をかけているものの、もう丸ごと空き家状態になっているというケースもありました。
 こうした状況を見れば、幾ら一定期間は家賃を上げないという約束がされていても、民間への売却は先々への不安というものが影響していると思うんです。そして、残っている14団地の今後を考える上でも、よくこうした実態から見えてくるものを踏まえて対応を考えなければと思うんです。
 以上のことから、既に譲渡、売却された住宅における自治体での活用事例などを見れば、民間売却直前という困難な条件の中ではあっても、ぜひ自治体による譲渡を再考すべきだと考えるわけです。雇用促進住宅の譲渡に当たっては、国の事業として公的に進められてきたという趣旨と歴史から見ても、また、こういう譲渡後の現状から見ても、自治体への譲渡という形が、入居者にとっても、また、地域、基礎自治体にとっても望ましいというふうに思っています。
 そこで、3点目の質問として、国の交付金などを活用し、公的住宅等に活用できるようにという観点から質問をいたします。
 機構は、期日までに民間への売却、廃止を強引に進めようと前のめりになっていますが、私は、住民の声や現在の状況を踏まえ、いま一度、自治体に対して、住宅の買い上げと住宅としての活用を再考すべきときだと考えるものです。
 機構が紹介している全国的な事例集を見ても、市町村が国の交付金等を活用して住宅の譲渡を受けた例が数多くあります。政府としても、まち・ひと・しごと創生を掲げてさまざまな取り組みや財政支援をしているのであれば、県や市町村としても、その政策に呼応した人口対策、若者定住対策等の今日的な課題として活用を再検討すべきだと考えます。
 県としては雇用促進住宅の譲渡を機構から打診されても引き受けなかったわけですが、その理由は何であったのか。その上で、今日的課題として、県としても総合戦略などに位置づけて住宅として活用することを再検討すべきだと思いますが、いかがでしょうか。また、県内市町村に対して国からの交付金などの支援措置を受けられるようにすることも含め、市町村に活用の検討を働きかけるべきではないでしょうか。
 県土整備部長から御答弁を願います。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から、平成25年6月に雇用促進住宅の取得に関する依頼がありましたが、県営住宅については、本県の人口及び世帯数の減少傾向並びに建物の老朽化の状況を踏まえ、現在の戸数を維持しつつ、現行建物の建てかえ事業に取り組む方針としており、取得の意向がない旨を回答しております。
 その後、平成27年6月に策定した和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略の地域を支える公共インフラの整備の項目に県営住宅の計画的な維持管理・更新を行動指標と定めた際にも、その方針を変更しておりません。
 市町村に対しては、雇用促進住宅を公営住宅として買い取りする場合、国の社会資本整備総合交付金の対象となることから、例えば老朽化した公営住宅の住みかえ用の住宅として活用することなども含めて検討するよう働きかけてまいります。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 県としては、現時点では、住宅政策上、再考する考えはないという答えは残念ですが、引き続き検討を求めてまいりたいと考えます。
 一方で、市町村が譲渡を検討する場合には、財政支援や活用方法など、相談に乗るし、検討を働きかけるという趣旨の答弁をいただきました。
 機構の側の説明では、民間売却は鑑定価格からの競争入札ですけれども、自治体が譲渡を受ける場合は鑑定価格の2分の1まで譲渡価格を下げるという方針ですし、譲渡を受けることを検討する自治体に対しては、新たな現時点での鑑定価格を算出するといいます。以前に打診を受けた約10年前の鑑定価格より随分下がっていると思いますから、政策的位置づけとともにぜひ検討すべきだと思いますので、よろしくお願いいたします。
 この問題での最後に、公営住宅への優先的入居についての質問です。
 万一、自治体への譲渡も民間への売却も、いずれもが不調に終わったときには、住宅を廃止し、解体し、更地にして売却ということが3年後から5年後に計画されています。こうなった場合の対応、住宅からの立ち退きを迫られる退去者にどう手だてをとるのかが大問題となります。
 国交省と厚労省から、それぞれ、雇用促進住宅が廃止された場合の退去者で住宅に困窮する方には、公営住宅や公的住宅に優先的な入居ができるよう配慮を求める通知が出されています。この趣旨を徹底するとともに、有効な手だてがとれるよう、国や市町村と連携、協議を進めるべきではないか、この点についての県土整備部長の答弁を求めます。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 国土交通省からの「雇用促進住宅の廃止に伴う公営住宅への優先入居について」に係る平成18年9月26日付及び平成27年6月10日付の通知については、既に各市町村に対して周知しているところでございます。
 県では、この通知を受け、今後、県内においても雇用促進住宅の廃止の可能性が出てくることが考えられるため、平成28年度から、廃止に伴う退去者について、県営住宅への優先入居の対象となるよう手続を進めているところでございます。あわせて、廃止に伴う退去者の円滑な住みかえが可能となるよう、国や市町村と連携を進めてまいります。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長からは、通知の周知徹底とともに、県営住宅としては既に動き始めているという答弁もいただきました。
 最後に、要望といたしまして、この雇用促進住宅の入居者の一人一人が県民なんだ、市町村の住民なんだと、こういう立場で、市町村とは、住宅部門、福祉部門など、さまざまなチャンネルで連携を深めて対応を協議していただきたいと要望するものです。
 そして、これはそもそも国が住宅廃止を決めて進めてきた問題であり、それによって引き起こる問題、対応を迫られる問題が自治体にかぶさってきてるわけですから、自治体が買い取る際の交付金等による財政支援などを国に対してしっかりと求めていただきたい、このことも重ねて要望をさせていただき、この問題での質問を終わります。
 引き続き、2本目の柱である農地転用をめぐる混乱についての質問に移らせていただきます。
 この農地転用をめぐる混乱については、昨年の12月議会、そして今議会と、多くの議員からも質問がされていますが、私は、この農地転用をめぐり、県民の間や県と市町村の間で混乱が続いていることを大変憂慮しています。いつまでこの混乱が続くのかと悲鳴も上がっています。しっかりとした議論の積み上げの上に立って合意形成のための努力をすべきだという立場で質問をさせていただくものです。
 私ども日本共産党は、これまでも「農地は耕作者のもの」という立場で農地を守ることを主張するとともに、国と自治体の政策としては、必要な農地転用の規制による適切な保全、乱開発・違法転用の防止、遊休農地対策を進めつつも、農地の有効利用は農家経営が成り立ってこそだと、農業で食べていけるようにすることこそが大事だ、日本農業を基幹的生産部門として位置づけ、発展させることを求めてまいりました。
 今回、県が打ち出した農地転用厳格化という方針は、中心市街地活性化と市街地の拡大防止、行政コストの縮減等をそもそもの動機としたものです。農業を守る、農地を守るというところから出発していないというところが、スタート地点の立ち位置の違いとなって問題が始まっていると考えます。
 そこで、まず、農業、農地を守るということは、農地法、農振法でどう議論されてきたのか、その制定の趣旨についてお示しください。また、農地転用の規制が強化された7年前の農地法改正の経過について、そして、その改正に対しては県と市町村はよく協議をしながら県内農業や農村の実態、地形的要因などを考慮して運用に努めてきたと考えていますが、県と市町村の対応はどうであったのか、以上の点について、まず農林水産部長の答弁を求めます。
○副議長(藤山将材君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 農地法は、農業生産の基盤である農地が国民の限られた貴重な資源であることに鑑み、農地を農地以外のものにすることへの規制や農地の利用関係を調整することなどを目的として、昭和27年に制定されました。
 また、農業振興地域の整備に関する法律は、農業振興を図ることが必要な地域について必要な施策を計画的にするための措置を講じて、国土資源の合理的な利用に寄与することを目的として、昭和44年に制定されております。
 両法とも、平成21年に、世界の食料需給が逼迫基調で推移すると見込まれる中、国内の食料自給率の強化が喫緊の課題であるとして、農地の確保を図る観点から改正が行われました。農地法では、第1種農地の集団性基準が20ヘクタールから10ヘクタールへの変更、第3種農地の判断基準の厳格化、農振法においては、農振農用地の除外要件の追加などの規制強化が行われております。
 以上のように農地転用制度が強化されてきた中、県では市町村と連携を密にして農地転用許可事務を行ってきましたが、地域によっては、土地需要の実情に応じた柔軟な運用の結果、郊外部の宅地開発が進んで農地が蚕食されているところも多々見受けられるようになりました。この現状が続くと、経営感覚がすぐれた農家の育成や意欲的な農家への農地の集約といった、本県が進めようとするたくましい農業の実現に支障が出てくると考えられます。
 このようなことを踏まえ、昨年2月に公表した新政策の中に優良農地保全の基本的な考え方を示させていただきました。それに基づき、今年度当初から具体的な取り組み内容の検討を行い、法令の範囲内で運用を厳格化することとし、市町村への説明や知事記者発表により、考え方を周知させていただいたところでございます。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長から御答弁いただきましたが、もともと農地を守るのは身勝手な大規模開発から農地を守ることであって、農家の子供たちが農地を転用して家を建てるようなものを阻止しようとしてるわけじゃありません。県の農地転用の基準を甘くしてたのを基準どおりのもとに戻すだけですという説明をよくしてますが、その変な説明が、県民、市町村との間で混乱を招いてると思います。
 県が言う国の2009年の改正による厳格化への対応は、県と市町村が十分に相談しながら、法の趣旨に沿って具体化、運用してきたわけです。法基準の解釈、運用の部分と、その一部の修正していく部分をごちゃまぜにして、全部ひっくり返すような議論がされているのが問題だと考えています。どうすれば農業の抱える今日的課題に応えられるのか、和歌山の実情に合う運用はどうしていけばいいのか、市町村とともに、さらなる落ちついた議論を求めるものです。
 次に、市町村のまちづくりの計画についてお伺いをいたします。
 県は、この農地転用の問題を説明する際に、市街地拡大防止と中心市街地再開発のために誘導と規制を組み合わせていくんだと言ってきました。農地転用をめぐる疑問や意見に対しては、ゾーニングをしていけば解決すると答弁してこられました。
 言うまでもなく、将来像を持った計画的なまちづくりを住民合意で進めていくことは大変重要です。県としては、広域的なまちづくりのマスタープラン、こういったものを示しながら市町村とともにこれを進めてきたわけですが、市町村における計画策定や地域指定などの経過と状況はいかがでしょうか。
 県土整備部長より御答弁を願います。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 都市計画分野においては、県は、県土全体の発展を見据え、広域的あるいは先導的な視点でまちづくりを展開する役割を、市町村は、基礎自治体として地域の実情に合ったまちづくりを主体的に進める役割をそれぞれ担っております。
 こうした基本的な役割分担のもと、これまで県は、各地域の実情、課題、まちづくりの方向性等について意見を聞きながら、県全体の都市の将来像や実現に向けた基本的な方向性を示した都市計画区域マスタープランを策定してまいりました。また、市町村は、県が策定したマスタープランに即した市町村マスタープランを策定の上、より地域に密着した見地からまちづくりを進めてまいりました。
 都市計画を策定する際には、住民意見の反映はもちろんのこと、県と市町村が協議・調整し、必要な場合には県が技術的な助言を行うなど、市町村が目指すまちづくりが的確に進められるよう努めてきたところでございます。
 現在、県内では23市町が都市計画区域を指定しており、そのうち15市町においてマスタープランを策定しております。また、和歌山市において市街化区域と市街化調整区域を指定しており、和歌山市を含む9市町が用途地域の指定をしているところでございます。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきまして、数字も示されたわけですが、逆に言えば、やれていない市町村が多いという数字でもあります。23の市町が都市計画区域を指定してるということは、あとの7つの市町村は、それを定めていく要件に人口とか市街地の集積とかがはまらないということです。また、いわゆるゾーニング、用途地域の指定は、9市町つまり7市と2町だけということであり、他の21市町村は用途地域の指定はしていないのが現状です。
 ついでに言えば、都市計画税の徴収は7市と4町であり、残り19市町村は徴収しておりませんが、これからどうなるのかという話も別の話として存在します。
 一方で、今は都市計画という面から答弁いただいたわけですが、用途指定のためにこの農振地域指定を外すということになれば、農業支援の施策が入らなくなるということになり、農業を続けていく上で大きな影響が出ます。
 このように、都市整備の視点からの計画、農業振興の視点からの計画、その他防災の計画など、それぞれさまざまな計画をコントロールすることが求められています。ゾーニングすれば、そこは農地転用できる。このことに間違いはないけれども、それだけではいかんという各自治体の課題と経緯、実情をリアルに見る必要があるというふうに考えます。
 そこで、最後に、これまでの質問も踏まえて、知事に質問をさせていただきたいと思います。
 この間、知事は、議会での答弁であったように、市町村に対してよく相談しながら進めたいと、こんなふうに政策への理解を求める説明とゾーニングの提案に回られてます。しかし、昨日の一般質問でも市町村長さんらからの生の声が数多く紹介されておりましたが、私も機会あるごとに、首長さん、議員さん、職員の皆さんから御意見を伺ってまいりましたが、まさに同様の意見が寄せられております。
 知事は、行政報告会の際に、参加者の方から、「農地転用ができなくなったら農村部の私たちの地域に家が建てられなくなって、若い子らのための家が建てられない。結果として、まちから若者が流出することになって困ります」、こういう御意見に対して、「それは、ゾーニングをして転用する地域を指定すれば解決できます」と、そんなふうにあっさりと答えていらっしゃったわけですが、こうした計画策定と地域指定というのは、行政と住民の十分な議論を経て進めるべきものであり、そんな簡単に進むとお考えになってるでしょうか。
 また、中山間地を多く抱える本県の地域環境というのは、農地と住宅が混在しながら利用が進んできたという部分があります。広大な平野部に広がる水田地帯という他県とは、また条件が違うと思うんですね。農家は、自分の家、屋敷は少し条件が悪いところに建ててでも、日当たりのいい、条件のいい土地を畑や田んぼとして大事に引き継いできたわけですね。そうした地域の実態に即して、法の運用において、農業振興と土地利用の折り合いをつけながら行政を進めてきた経過があると思います。
 今の知事の進め方は、農地を守ると言いながらも、地域の実態に合わない都市から見た理論、理屈の押しつけになっているんではないでしょうか。
 以上、市町村と相談しながら進めるとなっているのかという点について、仁坂知事の答弁を求めます。
○副議長(藤山将材君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) ただいまの御質問にお答えいたしますと、まず、簡単に済むはずがありません。市町村も、いろんなことを考えて、住民の意見も聞きながら、都市計画法の権限を行使していかなければなりません。また、これはマスタープランの作成のときも同じでございまして、大変な調整をしてあのマスタープランをつくっていらっしゃるはずでございます。
 ただし、そうだからこそ、そのマスタープランを実施するために、必要があればということなんですが、実行措置もとらなければならないケースもあると思います。それが、都市計画法上のゾーニングであったり、農振農用地の指定であったり、あるいはその解除であったり、具体的な農地の転用の許可であったりするのだと考えております。
 まちを拡大さしたいとか、あるいは津波の代替地を確保したいとか、極めて正しい、そういう要請もあるわけでありまして、そういう個別の事情を抱えている地域の存在は、私も、よく認識しております。そういう意味で、それがふさわしければということなんですが、用途地域を指定した場合は、当該地域内の農地は3種農地というふうにみなされるので、そうすると市町村の判断によって柔軟な農地転用が可能であるというようなことを説明はしています。
 それから、その際、そんなことができるかと、具体的に「そんなん、言うばっかりで」と言われても、無責任だと思われても困るので、マスタープランに沿って、あるいはマスタープランもちょっと古くなってる──津波なんかが入ってない可能性がありますので、最近の言われているニーズに応じて、例えば、こういう形でやればできますよねというようなことを一例としてお示ししたりもしております。ただ、これは、あくまでも市町村がおやりにならなきゃいけないことなんで、必要があればそういう考え方もありますねということを言うとるわけでございます。
 また、同時に、それぞれの権限があって、全部、県の考え方を押しつけられるわけではございません。ただし、県、それから市町村とも、主としてそれぞれの権限に従って、あるいは時には権限がなくても、よかれと思ってお互いの意見を言ったりお願いをしたりするということを否定してしまっては、これは建設的ではないと思います。
 また、いずれの政策でも、つらい人が出てきたり不利益をこうむる人も出てくるし、なかなか大変な地域も出てまいります。ただし、理屈の押しつけとおっしゃるわけですが、理屈の中身が間違ってれば、それはもう論外ですが、間違ってなければ、必ず人々の不利益、あるいは地域の不利益がいずれ出てくるわけでございます。
 で、これをどうするのか、あるいは、そんなことはまあ大したことないんじゃないかというふうな評価をするか、そういうことがやっぱり大事でございまして、別の解を示さないと十分な政治行政ではない。これは国政の場でよく見られて、「それじゃ、対案はあるのか」なんていう話がありますが、それと同じようなことがあるんじゃないかなあということで、これからも市町村とよく話をし、かつ県議会の御意見もよく聞いてやっていきたいと思っております。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事から答弁いただきました。御意見をよく聞いてと言いますが、間違ってなければ必要なんだと、こういう論理の繰り返しであったかというふうに思います。非常に硬直した姿勢だという印象を受けました。
 知事にいろんな意見をさまざまな方がおっしゃると思うんですが、何を言ってもそういう答えを繰り返しているから、総論では理解を得る部分はあっても、知事は、地域の実情をわかってくれない、理屈を押しつけてきて一歩も引く気はない、言うても聞かん、こんなふうに受けとめられているのが実態であり、私は、いまだに県政に混乱が続いていることを重大に受けとめるべきだと思います。
 12月議会以降、知事みずからも説明して、今もお話があったように例も示しながら回っておられるものの、市町村長を初め、県民各方面の方々との双方向での理解は深まってるというふうに思ってますか。相談しながらと言いながら、知恵を出し合うという姿勢になってないんじゃないかと思いますが、再度、知事の答弁を求めます。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) その中には、たくさんのケースがあると思います。かなり多くのケースは、実はもともとだめだったのが、「やっぱりだめか。それは、今回の政策の変更のせいだ」と言って、思い込んでおられるやつがあります。
 それから、どうも仁坂知事は頑固だからというふうなことで、全ての農地転用が全部だめになって、それで一切できなくなるのかというふうに思っておられるところもあります。そういうところは、誤解を解いていけば、いずれわかってくださるのではないかと思います、それは誤解ですから。
 ただ、さっき申し上げましたように、例えば、それでも政策変更によって影響が出る方もいらっしゃるわけです。その影響についてどういうふうに評価をして、それじゃ別の問題はどうでもいいのかというようなことも評価をして、それで全体としてやっぱり議論をしていかないといけないんじゃないかというふうに私は思ってるということを申し上げたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 今回の質問で私も御意見申し上げ、知事も誤解を解くように話し合いをしてるんだという今のお話だったと思いますが、話し合いになっているのかなというふうに私は思っています。
 何度も申し上げますが、県は間違ってないんですよと、あとは市町村がゾーニングしたり、いろいろ起こってくる不都合を考えたりするということになっているという片側通行の話になってるというのを私は非常に心配してます。私は、今回の問題は、知事が自説を押し通そうとする、そのかたくなな姿勢が、自分の論理が正しいんだ、わからんほうが間違っとるんだというような上から目線の姿勢になってると率直に苦言を申し上げなければなりません。
 県議会や市町村、関係者、そしてまた県民の声に対し広く聞く耳を持って、力を合わせて方向性を探っていけるよう知事に強く求めるとともに、今後もこの問題を注視していくことを表明いたしまして、今回の質問を終わります。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は3月7日定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時36分散会

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