平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(全文)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

平成27年12月
和歌山県議会定例会会議録
第5号
────────────────────
議事日程 第5号
 平成27年12月11日(金曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第152号から議案第186号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 請願の付託
────────────────────
会議に付した事件
 第1 議案第152号から議案第186号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 請願の付託
 第5 休会決定の件
────────────────────
出席議員(40人)
 1番 堀 龍雄
 2番 中西峰雄
 3番 森 礼子
 4番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 浅井修一郎
 7番 井出益弘
 9番 秋月史成
 10番 川畑哲哉
 11番 泉 正徳
 12番 濱口太史
 14番 尾﨑太郎
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 鈴木太雄
 18番 岩田弘彦
 19番 藤山将材
 20番 服部 一
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 中本浩精
 24番 中 拓哉
 25番 山本茂博
 26番 岸本 健
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 40番 松坂英樹
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(2人)
 8番 宇治田栄蔵
 13番 花田健吉
────────────────────
説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      和歌哲也
 総務部長       市川靖之
 企画部長       高瀬一郎
 環境生活部長     栗山隆博
 福祉保健部長     幸前裕之
 商工観光労働部長   藤本陽司
 農林水産部長     鎌塚拓夫
 県土整備部長     野尻邦彦
 会計管理者      岩橋良晃
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員    竹田純久
 警察本部長      直江利克
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
────────────────────
職務のため出席した事務局職員
 事務局長       江川和明
 次長         上坊 晃
 議事課長       糸川 徹
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼議事班長
            尾﨑善亮
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 議事課副主査     中尾祐一
 総務課長       西原龍也
 政策調査課長     中口 匠
────────────────────


  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第152号から議案第186号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 16番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 おはようございます。本日は、4点にわたり質問をいたします。
 まず、医大入学地域枠の見直しについて伺いたいと思います。
 平成16年に新医師研修制度が導入されたことにより、医師不足が加速し、地方では公立病院までが閉鎖されるなど、大きな社会問題となりました。その結果、平成20年から全国の医師不足地域の医学部入学定員が増員され、卒業後、一定期間を過疎地で勤務することを条件に入学させる地域枠が設定されました。
 本県県立医科大学でも入学定員が40人増員され、そのうち県内高校から推薦入学する地域医療枠に10人、全国どこからでも応募できる県民医療枠に20人の合計30人の地域枠を設定し、卒業後9年間、医師不足地域の公立病院で勤務することを入学条件にいたしました。そして、昨年春には第1期が卒業し、現在、研修中と聞いていますが、早期に地域医療で活躍されるよう期待しています。
 さて、この制度は、県立医大の医局の持ち駒となる若手医師が増加することで、地域医療の中核をなす公立病院の医師不足を解消し、地域医療を充実させることができる大変有効な政策です。しかし、義務年限は9年間で、それを過ぎれば原則的にどこへ行こうと勝手です。
 そこで、私は、地域枠をもっと厳格に運用し、医師不足地域の子弟を優先的に入学させるべきだと主張してきました。地元出身の学生であれば、9年間だけではなく、その後も残ってくれる可能性が高いと考えるからです。この考えに対して、県当局や県立医大からは、入学試験の平等性や、入学点数が低いと医学教育にはついてこれないとの否定的な回答がありました。
 私は、入試の公平性確保よりも、大阪には医師を派遣しながら、県内では医師不足のため県民が適切な医療が受けられないことのほうが不公平だと思います。そんなことを言ってるのは私だけだと思っていましたが、全国の医学部の地域枠の中身を吟味したところ、三重大学と島根大学の両医学部が、医師不足の地域の子弟に限定して推薦入学させていることを知りました。
 そこで、去る11月17日に三重大学医学部の堀浩樹教授には秋月議員とともに、30日に島根大学医学部の谷口栄作教授には岩田議員とともに面談してまいりました。百聞は一見にしかずと申しますが、短時間ながら率直にお話を伺うことができました。
 両大学とも、医師不足の地域出身で、将来的に地域医療に貢献することを約束した学生を地元の市町村長や病院、高校の推薦で入学させておりますが、6年間の医学教育では、決して学力で劣ることはないということでした。特に島根大学では、平成18年から県内の医師偏在を理由に地域枠を設けていたそうで、地域枠の卒業生が既に医師不足地域で活躍しているとのお話でした。
 また、入学試験の公平性は問題になることはなく、学内はもちろん、文科省もよく理解してくれたそうで、三重大学では地域枠を全学部に導入するほか、和歌山大学教育学部でも来年度入試から紀南枠を設けるそうです。今や、地域枠は医学部以外でも全国的な潮流になりつつあります。
 島根大学の谷口教授から教えていただいた広島大学・松本教授らによるレポート「エビデンスに基づく地域医療教育」によると、医師の僻地就労を促進する因子として、医師自身が僻地出身であること、プライマリーケアに関連する総合性の高い診療科を標榜していること、僻地医師養成プログラム出身であること、卒後早期の僻地診療経験などを挙げています。特に、僻地出身者の医学部入学は世界的に効果が確認されており、WHOも政策ガイドラインにおいて最もエビデンスレベルの高い推奨項目としています。自治医大の卒業生データでも、僻地市町村出身者が義務年限後の僻地で勤務する率は、都市部出身者の2倍であることが確認されています。
 そもそも、本県の医師不足の原因が医師の偏在であることは皆さん御承知ですが、私は、医師偏在の原因は医学部入学者の偏在にあると確信しており、医学部入学者の偏在を正さずして医師不足の解消はないと考えています。それゆえに、地域医療枠を県内高校出身だけに緩めておくことは、かえって偏在を助長することになりかねません。県立医大でも、地域枠の一部に僻地など医師不足地域の子弟を入学させる推薦入学制度が創設できないものでしょうか。
 また、せっかく県立医大の定員が60人から100人にふえても、県内出身者が余り増加していません。入学制度そのものを見直す必要があると考えますが、あわせて知事の御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 答弁を申し上げる前に、中村議員の御質問の中で「地域枠」という言葉が出てきました。地域枠というのは、よその県では地域枠しかないんですが、和歌山県には県民枠というのがあるんです。それで、地域枠については、例えば僻地といってどこどこの町というところの出身者というふうには限っておりませんが、これは県内の方々から選ぶということになっておるんです。
 それで、県民枠は一般的にどこからでも受けていいですよと。その際は、ただし、正確に言うと9年間ですけども、9年間は県内の拠点病院で働いてもらいますよと。そういうことを約束できたら、別枠で入れてさしあげますよと。先ほどの地域枠は、僻地とか、あるいは山間部なんかの診療所なんかに行ってもらいますよと、こういうような制度になっておるんでございます。
 島根とか三重は、県民枠というのはないと思います。これは、私がむちゃくちゃ国とけんかをして無理やりとってきた制度でございますから、ほかの県は、和歌山県もございましたけども、地域枠というのが唯一ある枠なんですね、別枠なんです。
 もう1つ言いますと、後で出てきますけども、三重などは、実はマッチング率が物すごく悪くて、そういう意味では、全体の医師確保が本当にできるのかなというような大学であるということも申し上げておきたいと思います。
 本県の地域医療体制を維持していくためには、地域の拠点病院などが崩壊しないようにしていくということが大切であります。和歌山県立医科大学がこれらの病院に医師を現に結構派遣してくれております。もちろん、全て和医大出身者というわけではありません。
 もともと、和歌山もそうですが、全国的に結構大きな病院のお医者さんは、大学の医局の主任教授などがあそこに行ったらどうだということで、どちらかというと派遣していたというような構造になっていたわけですが、今から10数年前にそれが目に余るというので、医局の解体と研修医の制度ができた結果、そういう制度改正後、各大学が今度は自分の周りに配置するお医者さんが足りなくなってしまいまして、それで、特に遠い地域からの医師の引き揚げをどんどんやり始めた。そこで、地域医療が崩壊し始めたということなんでございます。
 和歌山県ではどうなったかというと、実は和歌山県立医大が足りなくなったところをどんどんと埋めてくれた。特に南條学長は、本来県が考えないといけないこういう医師の不足、これを独力でやってくれていて、私は就任したとき、あるいは就任する直前ですけども、もうびっくりしちゃったというくらいのことでございました。今は、県が責任を持ってそれを一生懸命やろうとしています。
 しかし、なぜそれができたかというと、実は先ほどちょっと申し上げましたけれども、この地方大学の医学部がとっても大変なときに、人が集まらなくなったときに、和歌山県立医大は結構人を集めて、それで和歌山県立医大の周辺に影響力のあるお医者さんを抱えていたわけです。じゃ、なぜそれができたかというと、和歌山県立医大が学生の目にも結構魅力的で、それはすなわち学問的水準が結構高くて、それで、医大に行ったら自分の将来はいいなと、こういうふうに思ったからお見えになってるわけですね。
 ほかでは、先ほど、何度も言いますが、マッチングの成績が物すごい悪いところがいっぱいあるわけでございます。だから、こういうことができなくなりつつあるということです。こういうことを守っていく、つまり学問的なレベルを高く保つには、もちろん教授の人選とかそういうこともありますが、できるだけ優秀な学生を集めないと、こういうことが根っこから崩壊してしまうということもあります。
 したがって、学力の伴わない者を出身のいかんによって多過ぎるぐらい──ある程度はいいと思いますが、余り多くそのような人ばっかり選ぶということは、ちょっと危険ということがあると思います。とはいえ、学生数は多いほうがいいんです。多くの学生が県立医大に残ってくれて、よそからもまた研修医として来てくれて、その人が育っていって、それで、その何割かの確率で和歌山県の中で働いてくれるということを目指したらいいと思いますし、さらに、先ほど言いましたように、国と大げんかをして獲得した県民枠は、初めから県内の地域拠点病院に行ってもらうということを約束をして、そのために初めから県立医大の医局に入って研修医をするということを約束をして、それで──もちろん地域枠の方もそうですが──そういうことでやっていただいているわけでございます。
 28年度から初期臨床研修を終えた地域枠の医師がいよいよ地域の拠点病院などに出ていくところでございますんで、県民枠を創設した、もちろん、同時に地域枠も創設しておりますが、そういうことの成果がより確実になってくるかなあというふうに思っております。
 それから、先ほど40名の医学部定員増により県内出身者の人数が余りふえてないようにとれる御発言がありましたが、実は割合は余りどうも変わってないようなんですけど、母数がふえてるんで、実際には県内出身者の入学の数はふえてるようでございます。
 医大に来られた人は、和歌山で教育を受けて、できるだけ和歌山でつかまえて、ちょっと言葉は悪うございますが、和歌山で影響力を行使して、それで機嫌よく使命感に燃えて和歌山の地域で──この地域というのは、県民枠も一般枠も地域枠も全部なんですが、一般的な意味での地域で活躍してもらうということが大事なんで、そのために今、県がしっかりグリップして取り組もうとしているところでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 知事は、残念ながら私の質問を御理解いただけてなかったようでありまして、県民医療枠も地域医療枠も効果がないというようなことを申し上げてるわけではないんです。医大の持ち駒がふえて、地域に派遣できる若手医師の数がふえるわけですから、それは効果があると私は思っております。
 しかし、さらに効果を上げるために。それから、和歌山県のこの医師不足というのはどこら辺に原因があるか。医師の偏在というふうに言われておりますけども、医師の偏在のもとは、私は医大入学者の偏在にあるというふうに思っております。医者が足りないと言ってるところの地域の子弟を入学させたらいい。これは、私は自分の持論だと、ほかには誰も考えてないのかと思っておりましたら、国内的には島根県とか三重県で国立大学ながらやってたわけであります。
 その地方の大学だけがやってるのかと思ったら、WHOだって僻地の子弟を医者にしたら僻地に勤めてくれる確率が高い。それから、自治医大だってそういうことは証明できてるわけでありますので、さらに、私は効果を上げるために、それから、医師の偏在という和歌山県の医師不足のもとを正すためには、僻地の子供、医師不足の地域を全部入れよというふうに申し上げてるわけではありません。少しでもふやすと効果が上がるということで申し上げてるわけでありまして、もし答弁いただくなら。先ほどともし考え方が変わらないんだったら、もう結構でございますし。(「一応やっていいですか」と呼ぶ者あり)
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 実は、完璧にわかってるつもりでございます。そういうことは、そうだろうというふうに思います。しかし一方で、元も子もなくなっては、もっと悪い結果になるかもしれませんよというふうに申し上げたわけです。
 というのは、今、なぜ医大が人を派遣して、それであっちこっちに医師を供給できるかというと、医大に人がいっぱい集まってくるからなんです。医大にいっぱい人が集まってくるためには、医大のレベルが高くないと集まってきません。
 ですから、余りやり過ぎると、別に全く否定するわけでなくて、現にそういう制度もつくってるわけですが、余り県内の出身者の人にだけこだわると──今以上にたくさんふやすということだと思いますが──そうしますと、ひょっとしたら医大のレベルが下がっちゃうかもしれない。そうなると、医大に来る人のレベルも下がり、そして、医大がそういうところだと思ったら、よそからマッチングで来てくれる、研修医として来てくれる人も少なくなり、それで、結局はあんまり医療水準も高くない医療を提供することになってしまうんじゃないかなと、そういうことがあるので、やっぱり総合的に考えないといけないんじゃないかと。だから、今、県民枠で地域の人をとっておりますから、県民の、県内の人をとっておりますから、和歌山県に関してはそういうことでいいんじゃないかと思います。
 それから、私は、島根県とか三重県の制度が本当はどうなってるか、そんなに詳しくは知りません。だけど、実は、これは県が奨学金を出して県内の大学に、地域枠でございますが、こういう形で養成してくださいといって頼む制度なんです。和歌山県は、それを出して県立医大に、今10人だと思いますけども、県内からとってください、それで奨学金は差し上げましょうという制度をつくってるんですが、和歌山県は県内どこでも地域拠点病院が危ない。紀南だけが危ないというわけじゃなくて、そういう状態です。
 ところが、三重県は、多分、三重県で言う紀州地方と、それから県北とでは随分状況が違うだろうから、想像で大変失礼なんですけども、南のほうでそういうふうに重点的に配分をしたいというふうに思っているとしても、そんなにおかしくはないんじゃないか、そんなふうに思います。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 知事は、推薦入学で入学させたらレベルが低くて、大学自体のレベルが下がってしまうんじゃないかというふうに御心配のようでありますが、島根大学、三重大学もそのような心配はないということを私は行って、先生方に聞いてきましたので、知事もチャンスがあれば研究してみていただきたいと。それは、両大学だけじゃなくて、WHOも僻地の子供を入れることは地域医療に有効だというふうに言っておりますので、ぜひ知事御自身で一遍研究していただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。
 次に移ります。
 今の問題と多少関係あるわけでございますが、現在、県立医大の入学者や卒後の進路、関連病院への派遣など、県民医療の根幹にかかわる情報が公表されていません。医師の移動状況を知らずして、医師不足や専門医の偏在などの課題解決は、いかにして行うのでしょうか。
 医学教育には多額の税金が使われており、公表は当然と考えますが、せめて市町村別入学者でも明らかにできないものかと思いますが、知事のお考えはいかがでしょうか。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 地域枠、それから県民枠の医師の配置につきましては、県内市町村の出身地にかかわらず、県が医師不足地域の状況などを踏まえてしっかりと行っていくということで、必要なところに必要なお医者さんを持っていかなきゃいかんという課題の解消を図ろうとしております。
 実は、私は、公表ということは大好きでございまして、それで、どんどんやったらいいんじゃないかというふうに思います。ただ、そうしたときの後先もこれまた考えておかないといけないということは、何事もそうだと思います。
 いろいろ聞きますと、県立医大の入学者を市町村別に公表していない理由は、ある市町村での受験者が少数の場合に、例えばあの人は受かったとか落ちたとか、そういう個人情報が特定されるおそれがあるというようなこともあって、それでやっておらんということでした。私は、まあそうかなというふうに思います。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 知事は、それは詭弁だというふうに私は思うんです。大学がそんなことを言ってるんだと思いますけども、私は、この医師不足の根本原因はどこにあるかというと、医師の偏在で、医師の偏在は何かというと、医師不足の地域の子供たちからほとんど医大へ入ってないというふうに思っております。
 だから、どうしても無理な人を入れる必要は私はないと思いますが、だけど、地域医療を志す高い志を持ったような人は入れたら、そんなに遜色のないところの点数の学力の人を入れたら、ちゃんと医者として育っていくということは、これはもう島根、三重だけじゃなくて世界的に言われてることだと言われておりますので、ぜひやっていただきたいと思いますが、その根本、もとの情報として、お医者さんがどこで何をやってるかということが、それから医大へどこがどれだけ入ってるかということがまず公開されないと、いろんな議論が進んでいかないというふうに思います。
 私は、医大に入る入学生の個人情報よりも、医師不足のほうがもっと深刻な事態だというふうに思っておりますので、ぜひ知事の御英断をお願いしたいと思いますが。でも、もうあんまりこれ時間──終わらなくなってもあかんので、要望しておきます。(発言する者あり)じゃ、お願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、中村議員がおっしゃってることが意味がないとか、そういうことは全く思っておりません。
 1つだけ申し上げておきますと、地域枠、これは他県と同じように和歌山県も和歌山県の子弟に関してやっとるんでございます。その上で、もっとふやすことでどういう効果があるかとか、そういうことを議論してるわけでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 少し議論がかみ合ってませんので、もう次に進んでいきます。
 次、卒業後の派遣先の拡大であります。
 視察した三重、島根両県では、地域枠の卒業生の──和歌山県で言えば県民医療枠、地域医療枠両方でございますけども──派遣先は、地域医療に貢献する病院であれば、公立、民間にかかわらず対象になっています。
 しかし、本県では、まず公立病院が優先され、民間病院が後回しになっています。地域医療は、公立病院だけでなく民間病院も大きく貢献していることから、私は、これまでも官民の格差を取り払うよう主張してきましたが、知事はまず、地域医療のとりでである公立病院を充足させてから、余りが出てきたら民間病院にも回すとおっしゃいます。
 私も、それだけを聞いてみてなるほどと思ってしまったのですが、よく考えてみたら、これは詭弁であります。詭弁という言葉はちょっと適当ではないので、改めます。それは、間違ってるというふうに私は思ってます。なぜなら、医師派遣というのは地域枠の学生だけで行うのではなく、一般枠は70人もいて余裕があるのか、大阪府下の関連病院にも派遣してるわけであります。その状況でありながら、なぜ県内では地域枠のたった30人を公立、民間で取り合わなければならないのかというふうに思います。
 そういう意味で、ぜひとも地域枠の卒後派遣先の拡大を改めて要望しますが、知事の御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 詭弁ではなくて事実を申し上げますと、地域に派遣されているお医者さんは、一般枠の中からもこれからも派遣されると思いますし、それから、県民枠も派遣されると思いますし、地域枠も派遣されます。
 違いは、県民枠と地域枠の学生さんは、それぞれ入るときに約束をすることによって入学を認められたという人でありまして、義務はあるんですけれども、一般枠の人は、義務はありません。だから、みずから信じるところに従ってどっかへ行けばいいんですけども、だけど、やっぱりそのときに、例えば医大の先生方の指導とか、そういうことが大変重要になってくるので、できるだけ大学に置いときたい、こういうことなんでございます。
 その上で、地域拠点病院と、それから民間病院ということなんでございますが、これも決して詭弁ではございませんで、事実を申し上げておきますと、まだ実は県民枠も地域枠も世の中に出ておりません。その時点においてどうなってるかというと、実は各地域において必死で守ってる救急体制とか、そういうことについて、2次救急の部分をびしっと引き受けてくれて、それで3次救急にできるだけ負担を多くさせないようにするという役割を担ってくれてるのは、実は現状では地域拠点病院、公立病院なんですね。
 したがって、この公立病院で、例えば、ちょっと名前は挙げませんけれども、実はかなり深刻な医師不足なんかがあって、そういう現状であるから、今のところ地域拠点病院から優先的に人を派遣しましょうと。そこを決して枯らすことがないようにしましょうと、そういうような考え方でおります。
 ただ、これからはどうなるかというと、一般枠ももちろん県内の病院に行ってもらうこともあるでしょうし、それから、県民枠、地域枠は毎年どんどんと出てくるわけですね。ということになりますと、おのずとそんなに地域枠ばっかり行く必要はないんでございますので、民間のほうにも行ってもらうという方がふえてくるんじゃないかなと。現状は、どちらかというと、地域拠点病院で働いているお医者さんが民間病院により有利な条件──それは何も所得だけでなくて、やっぱり忙しさとかそういうこともあります──それで引き抜かれてもっと大変になるというのが実は現状なもんですから、そういう今、状況でおります。
 将来は、もっといろんなところへ回ってもらえるんじゃないか、そんなふうに思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 和歌山県立医科大学は、貧乏な和歌山県が県民の税金でやってる大学であります。国立大学でも地方に医師をというふうにやってるわけですから、さらに地元の人が入れるように、私は地域枠全体を広げてもいいんじゃないかと思いますが、これはまた改めて研究をして議会で質問させていただきたいと思います。
 次に行きます。
 入学前対策というのをやればいいんじゃないかというふうに思うんです。たくさん医学部に和歌山県の子供が入れば、それだけ医師不足も解消するというふうに思います。そういう趣旨で質問いたします。
 国公立大学医学部の偏差値は高く、医学部への受験戦争を突破することは大変難しいことです。しかし、島根県では、県教育委員会が子供たちに医師の職務や地域医療のことを理解させ、医学部の目指す支援を行っています。本県では、医学部は専ら私学頼みの状況ですが、本県教育委員会においても、医師を目指す教育を支援する勉強版ゴールデンキッズのような考えはないのか、教育長の御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 医療を志す人材を育てることは、本県における医師不足の地域をなくす上でも取り組むべき課題であると認識してございます。
 県教育委員会では、長年にわたって校長会、県立医科大学と3者で入試制度のあり方や地元進学者の増加について協議を行っており、推薦入学試験における県内募集枠の設定など取り組みを進めてまいりました。
 今後、さらに県内の高校生が早期から医学部進学や地域医療に対する関心、意欲を高められるよう、1~2年生から県立医科大学オープンキャンパスへの参加を一層進めるとともに、医師による特別講義や医療現場での実習の機会を新たに設けるなど、具体的な方策を検討してまいりたいと考えてございます。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、防災対策について3点伺います。
 まず、ライフラインとしてのガソリンスタンドでございます。
 私は、災害時に備えて、自家用車の燃料計が半分になったら必ず満タンに給油をするように心がけています。皆さんはいかがですか。
 先般、御坊市周辺のガソリンスタンドの経営者と懇談いたしました。過当競争や資金繰りといった厳しい経営事情を伺うとともに、県との災害協定ではガソリンや軽油を供給することとなっているが、発電機が普及していないので、災害時に停電すると手動ポンプでの供給となり、長蛇の列ができるとのお話でした。
 そこで、県内の発電機保有状況を県商工振興課に尋ねたところ、危険物を所管する危機管理・消防課を通じて日高地方の消防本部に問い合わせた結果、御坊市・日高郡のガソリンスタンド51事業所のうち発電機を備えていたのは、災害対応型中核給油所の1事業所を含めて3事業所であることがわかりました。
 県内状況は県や石油組合でも把握していませんが、災害対応型中核給油所が25カ所しかない状況であり、災害直後から必要となる啓開用重機や公共車両はもちろん、一般県民にはスムーズに燃料が供給されないことが予想されます。実際に東日本大震災の際には、ガソリンを求めて長蛇の列ができました。
 災害協定では、ガソリンスタンドは帰宅困難者への水道、トイレ、情報も供給することになっていますが、同様に困難です。
 また、昨今、低燃費車の普及と過当競争からガソリンスタンドの廃業が相次いでおり、過疎地を中心に県民生活に支障を来しています。高速道路がすさみまで開通し、大変便利になりましたが、紀の川サービスエリア以南には、本線上にガソリンスタンドはありません。観光振興の面からも深刻な状況と言えます。
 そこで、ガソリンスタンドを災害時や日常の県民生活に必要なライフラインに位置づけて支援を行うことが必要と考えますが、知事の御所見を伺います。
 また、経産省に災害対応に必要な発電設備など零細なガソリンスタンドでも取り組める補助事業を要望していただきたいと思いますが、あわせて御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) ガソリンスタンドは、県民の日常生活に欠くことのできない施設であるとともに、南海トラフ地震等の大規模災害時においても、災害応急対策に必要な緊急車両や重要施設の業務継続のための燃料を確保するために必要なライフラインであると考えております。現に、和歌山県の業界団体と私ども県は協力協定を結んでおりまして、必要なときには災害対応で協力するよというふうなお約束をいただいております。
 そうした中、かつて、災害時において石油の安定供給を確保するため、災害時の燃料供給拠点となる災害対応型中核給油所が国の補助制度によって整備されてまいりました。しかしながら、現在、その補助制度がなくなっとるわけでございます。
 まさに、御指摘のように、災害対応型中核給油所以外のガソリンスタンドにおいても、あるいはそのときにちょっと申告し損なったような、本来ならば中核給油所になってもおかしくないような給油所、そういうところでも発電設備を整備していただくこと、あるいはそれをしたいという希望は大変強いもんですから、必要性も強いし、希望も強いもんですから、必要があったら、地下タンクの入れかえ工事が条件となっている発電機の設置補助を、小規模事業者が多いため、発電設備単独でも設置できるように補助要件を緩和してくれないかということを、業界団体とともに国に対して働きかけをしていきたいと思います。
 しかも、ガソリンスタンドの経営状況については、ガソリン需要も縮小してるし、そんなに経済も拡張してるわけではありませんので、なかなか大変だということで、業をおやめになる方もいらっしゃいます。その辺は、県の融資制度などのさまざまな支援策を活用して、できるだけ支えていきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 ぜひ支援をしてあげてほしいと思います。私は、融資制度がありますけども、県はやっぱり力持ちですから、別に制度融資以外にも応援できることはいっぱいありますので、ぜひお願いをいたしておきたいと思います。
 次に移ります。
 本年9月、私は、御坊商工会議所の津波防災研究会のメンバーとともに東日本大震災の被災地の復興状況を視察してきました。女川町や陸前高田市では、巨額の国費を投入し、市街地のかさ上げ工事が急ピッチで進められていました。女川町では、かさ上げはほぼ終わり、既に駅舎が復旧し、駅前の商店街が一部開店していました。そのような状況を拝見し、今回で震災後5回目の視察となりますが、初めて復旧が進んでいることを実感しました。
 なお、住宅の再建はまだこれからで、一度大災害が発生すれば復旧・復興は容易でないことを改めて痛感しました。
 さて、地籍調査についてであります。
 4年が経過して、ようやく復興が歩み始めた被災地ですが、実は東日本大震災の津波浸水区域では、地籍調査実施率は90%を超えていました。もし地籍調査が行われていなければ、果たしてどうなっていたか。恐らく復旧・復興はさらに遅くなっていたことは間違いありません。
 一方、本県では、地籍調査進捗率は37.3%、特に和歌山市や紀南地方では17.5%とおくれた状況にあります。果たして我が県では、津波浸水想定区域での地籍調査進捗率はどうなっているのでしょうか。
 現在、高速道路の紀伊半島一周が急速な勢いで進められていますが、それに先駆けて国土調査法の第10条第2項などを用いて地籍調査が実施されています。同様に津波浸水想定区域においても、早期に完成するよう関係市町村に働きかけるべきと考えますが、企画部長の所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 企画部長高瀬一郎君。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) 津波浸水想定区域における地籍調査につきましては、防災・減災対策の総点検として、事業実施主体である関係市町との協議を経て、平成23年9月に津波浸水想定区域における地籍調査5カ年計画を策定し、早期完成に向けて推進してまいりました。
 さらに、平成26年3月までに南海トラフ地震に対応した浸水想定区域の見直しが行われたことに伴い、関係市町と協議を行い、平成26年7月に本計画の対象面積を約2倍に拡大し、取り組んでいるところであります。
 変更後の計画では、津波浸水想定区域における進捗率を平成26年度からの5年間で15.3%伸ばし、平成30年度末には54.1%となる予定で、いずれも県全体の平均を上回ることとなります。これにより、対象20市町のうち8町で津波浸水想定区域の地籍調査は完了し、2市町で進捗率は96%以上となる予定でございます。
 なお、本県の地籍調査事業予算につきましては、平成15年度から13年連続全国トップであり、近年は国全体の関連予算の約1割を占めておりますが、議員御指摘のとおり、津波浸水想定区域における地籍調査は、災害からの早期復旧に不可欠であるというふうに考えておりまして、本計画以上の進捗率を達成できるよう、国にも負担金の確保を強く要望し、進捗率の低い市町に対して一層の推進を働きかけてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 企画部長の答弁を伺ってたら、何か物すごくやってるということのように聞こえたんですけども、残り10市町については全くおくれてしまっているわけでありまして、私は、その50何%で県平均を上回ると言いますが、ほかのところも伸びてきますから、今の県平均を上回るということではないかと思いますが、目指すべきは100%ではないかと思います。地震は待ってくれませんので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 次に行きます。
 徳川幕府は、ペリーが黒船とともにやってきて滅びた、薩長の倒幕運動にやられたと歴史教科書で学びました。しかし、関西大学の河田惠昭教授は、幕府崩壊の本当の理由は安政の東海・南海地震、江戸地震、江戸水害が3年連続発生したことによる財政破綻だとおっしゃいます。もし幕府にBCP、事業継続プランがあれば歴史が変わっていたかもしれません。
 エネループ電池やLEDなどすばらしい技術を持ちながらパナソニックに吸収された三洋電機は、新潟県中越地震による事業中断が経営危機の始まりだったと思います。本県においても、県内市町村企業に対して説明会を開催するなど、事業継続計画を策定するよう啓発を進めていますが、ぜひ和歌山県でもやっていただきたい。今、公開されておりませんし、中身も拝見しましたら、まだまだ改善の余地があると思いますので、ぜひ進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 危機管理監和歌哲也君。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 本県では、大規模災害等による危機事象発生時に県民の生命、身体、財産を保護するため、必要最低限の行政サービスを継続実施することを目的とし、平成25年6月に事業継続計画を策定いたしました。この計画では、各所属の業務を優先業務、縮小業務、休止・中断業務に整理分類した上で、限られた人的・物的資源を活用し、行政サービスを提供していくこととしております。
 議員御指摘のとおり、現在、この計画は公表しておりませんが、透明性の確保の観点から、できるだけ早く県ホームページにより公表してまいりたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 3番目に、ドクターヘリの運航について伺います。
 関西広域連合では、平成23年4月から広域医療の主要事業として、3府県ドクターヘリの連合移管を皮切りにドクターヘリの運航を開始し、平成25年4月から大阪府、徳島県、兵庫県の各ドクターヘリを、さらに本年4月からは京滋ドクターヘリを加え、「いつでも、どこでも安心医療『関西』」の実現に向け、府県域にとらわれない柔軟な運航体制の構築、重複要請時等において複数機のドクターヘリが補完し合う相互応援体制の構築を進めているというふうに言っています。
 また、本県ドクターヘリとも緊密に連携し、合計6機による一体的な運航体制の構築を図ることとしています。まさに、関西の空には抜け穴はないという感じであります。
 しかし、これも連携と言うのでしょうか。何と運航会社は6機全てが学校法人ヒラタ学園で、機種も同一のユーロコプターEC135です。この1社1機種体制は、一見大変便利なようで、実はとんでもないリスクを背負っています。
 例えば、運航委託先が航空機事故等を起こした場合、日本航空や全日空などの大手航空会社以外は運航を停止することが通例であり、監督官庁である航空局からその旨の指導が発せられます。そのため、ドクターヘリの運航を1社独占で行えば、関西広域連合関係のドクターヘリの運航が全て停止してしまいます。
 次に、単独機種による運航については、そのヘリコプターに重大な欠陥があった場合、または運航に差し支えるふぐあいが世界中のどこかで生じた場合、そのヘリコプターは飛行を停止せざるを得ない状況になり、事故同様、関西広域連合関係の全てのドクターヘリが停止してしまいます。さらに、運航委託先が経営破綻した場合も同様であります。
 以上のような危機に対応するため、ドクターヘリの運航は、複数の航空会社、複数の機種で行うべきであり、万が一、飛行停止が生じても、近隣の府県が協力して運航できることが最良の方法であります。この共助こそが関西広域連合の本旨であると思います。また、競争性の確保や航空業の活性化の観点からも、1社独占は大いに問題があります。
 同一会社、同一機種の運航について知事はどのようなお考えでしょうか。お考えを伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県のドクターヘリは、平成15年1月に全国に先駆け、導入されました。そういう意味では、和歌山県もなかなかちょっと誇らしい思いがしております。
 関西広域連合管内ではもちろん最初でございまして、和歌山県だけじゃなくて近隣のところにも協力して、奈良県や三重県の重病人をお救いしたことも多々ございます。
 和歌山県は、当初はどの業者にお願いをするかということについては、これは運航と手続は和歌山県立医大にしていただいておりますけれども、当初はプロポーザル方式で運航事業者を決定しておりました。現在は、関西広域連合との一体的な運航体制を構築するためという理由で、同じ運航会社の同一機種による運航となっております。
 議員の運航停止の際にリスクがあるじゃないかという御指摘については、実は聞くところによれば、過去に同一機種の1機が航空機事故を起こした場合でも、その他の同一機種が即座に運航停止になったことはないと聞いておるというふうに聞いておるんですが、しかし、理屈としては、ただいま787が事故を起こしたときとか、ああいう機の構造に問題があるんじゃないかというようなことになったときは、明らかに全部とまるということも論理的な話としてはごもっともだというふうに思っております。
 その運航事業委託については、先ほども申し上げましたように、関西広域連合との一体的な運航のメリットを理由に随意契約をしていると聞いておるんですが、その理由もどうも形式的で、私も、本当にそうかなあということについてはよくわかりません。
 県立医大の調達方式については、随分過去いろいろと問題を起こしたことがございまして、現在では、かなり強引に指導して、県に倣ってやってもらうということにしております。それは、一番根っこのところを言うと、競争入札を原則といたしまして、随契をしてもいいけれども、随契をするときは、ちゃんとその理由がみんなが納得できるようなものであって、それを明らかにしてやるならばそれでもいいんですけどという、そういうことでございます。
 先ほど言いましたように、関西広域連合と本当に同じ機でなきゃいけないのかということについては、どうもよく詰めていかないといけませんので、よく詰めて、必ずしもそうでもない、単に観念的な話ということであれば、本来の原則に戻って、プロポーザル方式による選定にもう一度変えるように県立医大を指導していきたいと思います。
 議員の御指摘でこういうことがわかりましたので、感謝申し上げたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 どうぞよろしくお願いいたします。
 最後に、日高川水系の河川整備計画について伺います。
 河川法では、河川の将来計画は基本整備方針を決め、その方針に従い、具体的な整備計画を策定することにしています。日高川水系の河川整備計画については、昨年5月と本年6月に流域の住民代表から成る考える会が開催され、その後、学者等の意見を聴取し、現在、最終の詰めを行っていると聞いています。
 これまで、日高川では、昭和28年の7.18水害など、歴史的に大きな被害を出してきました。それゆえ流域の住民は、今回の河川整備計画には大変注目していますし、期待もしています。
 そこで、以下の2点について県土整備部長に伺います。
 まず、策定作業はいつ完成するのか。
 次に、計画は、策定後20年間で実施すると聞いていますが、公表されている計画案では多額の予算が必要であり、20年という時間は長いように思いますが、大きな事業を推進するためには20年は決して長いわけではありません。財政事情等で実現できないということにならないよう、早速来年度からの事業化を要望しますが、あわせて県土整備部長の所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 日高川水系河川整備計画については、平成27年度中の策定を目指して検討を進めており、現在、関係住民や学識経験者の御意見を伺った上で作成した整備計画の案について関係市町に御意見を伺っているところであり、今後、国の同意を得て策定となります。
 この整備計画案では、例えば日高川本川においては既往最大洪水である昭和28年洪水、平成23年洪水への対応を基本としますが、整備に多くの費用と期間を要することになるため、既往最大洪水の次に大きい平成15年の洪水に対して住宅地への浸水被害が発生しないよう整備することとしています。
 下流からの整備を原則として、上下流バランスや背後地の状況、浸水被害の状況等を踏まえた上で整備計画を策定後、早急に事業着手し、おおむね20年間で整備が完了できるよう必要な予算を確保するとともに、計画的な河川改修を推進してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 質問はありません。以上で、私の質問を終わります。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 29番岩井弘次君。
  〔岩井弘次君、登壇〕(拍手)
○岩井弘次君 おはようございます。
 議長より発言を許されましたので、通告に従いまして、順次質問をさせていただきますが、その前に、きのう、御近所の御夫人とお会いすることがありまして、その御夫人が、ぜひ仁坂知事さんに伝えておいてくださいというお言葉がありました。
 実は、その御夫婦は、月に1回ぐらいのペースで映画を見に行くそうなんです。今回、私の事務所の前に「海難1890」のポスターを担当課のほうからいただいて、張ってるんですけども、それを見てジストシネマのほうに行って、御夫婦で見てこられたと。非常に感動しました、もう涙なくしては見れない、それを子供さん方にも見せるんやってねというお話がありまして、もうすばらしいお金の使い方や、知事さんにぜひお伝えくださいとありましたので、前段で、しょうもないと言ったら怒られますけども、そういう──しょうもないことないんですね。
 私自身も、まだ試写会に行けてませんので、ぜひきょうまでに見て、きょうは登壇したいと思ったんですけども、なかなか時間がなくて見れないんですけども、必ず見て、また家族と一緒に見に行きたい、このように思ってございます。申しわけございません。
 それでは、本題に入らせていただきます。
 まず初めに、深刻化している人口減少問題について伺います。
 我が国の人口は、戦後一貫して増加してまいりましたが、長期的な少子化を反映して、2010年の約1億2806万人をピークに減少に転じ、日本社会はこれから先、人口が減り続け、約40年後の2048年ごろには1億人を下回るということが予測されています。これは、毎年平均して約70万人の減少が伴う、これまでに経験したことのない激減です。
 本県においても、全国に先んじて少子高齢化が進んでおり、長期人口ビジョンによりますと、1985年の約108万7000人をピークに減少に転じました。1995年には、経済対策に伴う公共投資の増加や阪神・淡路大震災の影響による一時的な転入超過があったものの、その後は減少が続いており、直近2015年4月1日時点の県推計人口は96万6000人で、戦後間もないころの人口と同程度まで減少しているとのことです。
 また、国立社会保障・人口問題研究所、いわゆる社人研の将来推計人口では、2040年における和歌山県の人口は約72万人になるとしています。この推計をもとに、県は2060年には2010年の人口のおおよそ半数に当たる50万人まで激減すると予想しております。
 国において、まち・ひと・しごと創生総合戦略が平成26年12月27日に閣議決定され、地方自治体においても、国が策定した総合戦略等を勘案して地方版総合戦略等を策定し、実行するよう努めることとされ、本県でも和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略が策定されました。
 その中で、地方創生の実現の基本目標には、全国に先んじて少子高齢化が進んでいる和歌山県において、人口構造を大きく変えるには相当の時間が要することから、当面、人口減少は避けられない、こうした状況のもと、本県では、和歌山県長期人口ビジョンを作成し、2060年の県人口を70万人程度とする中長期展望を示しております。そして、その目標に向けて最初の5カ年における具体的な取り組みをまとめ、5つの基本目標を設定し、取り組みを戦略的に推進することとしたとしております。
 その基本目標は、「安定した雇用を創出する」、「和歌山県への新しい『人の流れ』を創造する」、「少子化をくい止める」、「安全・安心な暮らしを実現する」、そして、「時代に合った地域をつくる」の5つが上げられております。人口の減少に歯どめをかける施策として、どれ一つ欠かすことのできない重要課題であります。今回は、それらの中でも「少子化をくい止める」、特に子供を産み育てやすい環境づくりについて何点かお聞きしたいと思います。
 この総合戦略の中で、「人口減少を抑制するには和歌山県で産まれ育つ子どもを増やしていくことも重要である。未婚化・晩婚化が進む中、結婚や子育てを前向きに捉えてもらうよう働きかけるとともに、結婚・妊娠・出産・子育てまで切れ目のない支援を展開するなど、産み育てやすい環境の整備をさらに推進し、超長期的に人口が維持できる水準に近づける」としています。人口減少の原因は、転入者より転出者が多い、そして、産まれる子供より亡くなる方のほうが多いという単純な構図であります。
 和歌山県において、平成26年4月1日から平成27年3月31日まで1年間の国外も含む県外からの転入数は1万3049人で、一方、転出数は1万6270人となっており、結果、3221人の転出超過であり、社会増減は平成8年以降20年連続のマイナスとなり、減少幅も前年に比べて拡大しております。
 転入、転出など社会増減の状況における地域別移動状況については、東京圏、中部、関西などの大都市圏への転出が超過となっており、中でも近隣の関西への転出が圧倒的に多くなっております。
 社人研の都道府県別総人口の増加率及びその予測を見ても、和歌山県は2010年から2015年の5年間でマイナス4.1%、近畿ブロック平均のマイナス1.4%と比べて非常に悲しい数字があらわれております。先々の予想を見ても、常に突出したマイナス数値が予測されております。
 国全体として構造的な少子化が続き、人口が減少することは避けられません。近畿圏内においても、当然、各自治体は対策を講じ、必死の決意で取り組んでいるかと思います。進学や安定した就職に関する対策や住みやすさのアピールなども大変重要です。そして、それらを踏まえた上で、やはり「ふるさとは和歌山」と言える子供を1人でも多くしていくことが大切なのではないかと考えます。
 私も、進学で4年間、東京で生活をいたしましたが、確かにおしゃれですし、便利ですし、何もかもが和歌山よりすぐれているように思います。また、現在の──現在も過去もないんですが──現在の妻とも東京で知り合い、結婚をいたしました。でも、ふるさと和歌山へ何としても帰りたいという思いが強くありました。やはり生まれ育ったまちですから。
 人口減少に歯どめをかけるということに関して、子供を産み育てやすい環境整備として、乳幼児等医療費助成制度の拡充は非常に重要かと考えております。このことは、これまでにも先輩議員により議論されてきましたが、御容赦くださいますようお願いいたします。
 本年9月10日、和歌山市において、公明党として多くの方の御協力をいただき、通院費の無料化を中学校卒業まで引き上げていただきたいと10万1492名の署名を尾花和歌山市長に提出させていただきました。
 和歌山市では、現在、入院については中学校卒業まで、通院については小学校就学前までが助成されています。県下の全ての市町村においても助成制度を設けていますが、それぞれ対象年齢や審査基準等においてばらばらであります。
 県は、現在、この制度に対して小学校就学前まで助成しています。ですから、対象外年齢については、各市町村が負担しているということになります。これまでの県負担の拡充を求める声に対して、病気が重症化しやすい年齢の範囲内で、かつ各市町村の子育て支援に対して特色を生かした施策が重要であるといったお考えかと判断しております。
 確かに、子供を産み育てやすい環境づくりには、さまざまな角度からの支援施策があることは認識しております。先ほども申しましたが、全体的な人口減少、少子化という問題について、近隣の各府県もあらゆる手段を講じて取り組んでおります。何か突出したというか、差別化を図らなくてはならないのではと考えるのです。
 卑近な例で恐縮ですが、私の娘も結婚し、配偶者の勤務先の関係で和歌山市から移り住む際に、そこの子供の医療費が何歳まで無料になっているのかということも決定した大きな理由の1つだったと言っておりました。わかりやすいんです、子育てに優しいまちかどうかを判断するということにおきまして。
 少し角度を変えまして、乳幼児医療助成事業に係る国庫負担が減額される、いわゆる国保のペナルティーの制度があります。そして、平成30年には国保の財政運営が都道府県単位になるわけですから、そういった面も課題となるのかもしれません。
 このことにつきまして、本年2月18日、我が党の山口代表の本会議質問から3月17日の参議院予算委員会における西田実仁議員の質疑により、乳幼児医療助成事業に係る国庫負担が減額される、いわゆる国保のペナルティー制度について、国はやっと検討会を立ち上げて議論を行うこととなったとお聞きしました。昭和59年からずっと続けられたこの制度ですが、公平の観点からやむを得ない制度と言い続けられてきましたが、やっと見直しの作業が開始されるようです。
 今回の動きは、山口代表が地方創生の観点から議論を開始し、地方において人口減少問題に真っ正面から取り組むとして、各自治体に地方版の人口ビジョンや総合戦略の策定を求めていながら、乳幼児医療の助成制度を行えば国庫負担金が減らされるということは理論的に矛盾している、ましてや、地方創生の新たな交付金は子供の数が多い自治体を評価して配分するということまで言っているわけですから、いわゆる股裂きの政策立案となっているのではないかと言及しました。
 これに対し、厚生労働大臣は、少子高齢化が進行する中、子育て支援、地方創生、地域包括ケア等の幅広い観点から検討する場を設け、関係者を交えて議論すると明言したそうでございます。
 我が党においても、社会保障制度調査会の中に子供の医療等検討小委員会を立ち上げて検討を進めていくこととしております。困難な課題ではありますが、平成30年には国保の財政運営が都道府県単位になるわけですから、見直しをするチャンスと捉え、時代に対応した新たな制度になるよう見直しを進めていくことを目指していくとお聞きしました。
 以上のことを踏まえ、本県では乳幼児等医療費助成制度の拡充が必要な施策と考えますが、この点について今後のお考えを福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの岩井弘次君の質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 少子化が進行する中、子育て世帯の経済負担の軽減を図ることは重要な課題であると考えています。
 乳幼児医療費助成制度につきましては、免疫が少ないため病気にかかりやすく、また病気にかかった場合に重症化しやすい乳幼児を対象に、早期に医療機関で受診してもらえるように自己負担分を無料にしたものであり、乳幼児医療費の支給をする市町村に対して補助をしているものであります。
 近年、市町村が対象年齢を拡充していることや少子化対策の中での国の動向については県も承知しているところですが、乳幼児医療費助成制度は、ベースになる部分は県が下支えをし、対象年齢拡大等の上乗せの部分については、市町村がそれぞれの地域の実情に応じ、施策の特色を出すために実施しているものであると考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 岩井弘次君。
  〔岩井弘次君、登壇〕
○岩井弘次君 ただいま乳幼児等の医療費助成についてお答えいただきました。
 非常に大切な施策だと思います。いろいろな状況はあるかと思いますけども、ぜひ平成30年をチャンスと──その部分はあんまり関係ないとおっしゃられると思うんですけども、ぜひ重要課題だと思いますので、和歌山で生まれて育ち、またこのまちに住み続けたいと願う子供や若者たちが多くなるよう、また、それを支えている市町村に対して手厚い下支えとなるような施策を講じていただけるよう、強く要望させていただきます。
 続いて、子育て支援について重要と考えております子育てしやすい職場環境づくりについてお伺いいたします。
 内閣府の共生社会政策担当が行った家族と地域における子育てに関する意識調査報告書によりますと、20歳から49歳までの既婚者の方からの意識調査では、希望する子供の人数を聞いたところ、2人という回答が53.8%で最も多く、次いで3人が26.9%、平均の希望人数は2.2人となっています。
 今さらですが、人口の増減は出生、死亡並びに人口移動によって決定されます。仮に移出入がないとすると、長期的な人口の増減は出生と死亡の水準で決まることになります。そして、ある死亡の水準のもとで人口が長期的にふえも減りもせずに一定となる出生の水準を人口置換水準──置きかえとも読むそうですけども──と言います。
 例えば、現在の我が国における死亡の水準を前提とした場合、合計特殊出生率の人口置換水準は、おおむね2.07となっています。本県の合計特殊出生率は1.55、国の出生率は1.4前後を推移し、約40年間、人口置換水準を下回りながら低下を続けております。まさに、その結果として日本の人口は減少しております。
 さきの意識調査報告書において、今後、子供を持つ場合の条件として一番多かった回答は、「働きながら子育てができる職場環境であること」で、女性が62%、配偶者いわゆる男性で56.4%となっています。その他、「教育に余りお金がかからない」、また「健康上の問題がない」、そして「雇用の安定」など年代によって違いはありますが、このような回答が挙げられております。また、特に女性の回答で多いのが「配偶者の家事・育児への協力が得られること」であります。
 一方、総務省の労働力調査などによりますと、1997年以降、共働き世帯が専業主婦世帯数を上回り、その後、共働き世帯は増加する傾向にあります。しかしながら、2011年の社会生活基本調査によりますと、共働き世帯における女性の1日の育児を含む家事などに従事する時間は4時間53分なのに対して男性は39分で、女性の約8分の1にすぎません。
 何も男性を責めるつもりもありませんし、家庭によってさまざまな事情もあるかと思います。しかし、共働き世帯にとって子供を産み育てることの障害となり得る状況ではないのかと思います。
 県が策定したまち・ひと・しごと創生総合戦略の中においても、子育てしやすい職場環境づくりに係る項目を掲げておりますが、仕事と家庭の両立、いわゆるワーク・ライフ・バランスを進めるためにも、企業において子育てしやすい職場環境づくりを進めることが必要と思います。
 そこで、県ではどのような取り組みをされているのか、商工観光労働部長にお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 子育てしやすい職場環境づくりを進めるためには、経営者の理解と意識改革が重要であると認識しております。そのため、県では、企業のトップや人事労務担当者に対する普及啓発セミナー、経済団体等への出前講座、労働局と連携した企業訪問などを行い、仕事と家庭を両立できるよりよい職場環境づくりに向けた取り組みを働きかけるとともに、育児休業給付金や両立支援に関する助成金等を活用するよう案内を行っております。
 また、専用ホームページを作成し、職場環境づくりに積極的な企業の実践例を紹介するとともに、社会保険労務士を派遣して必要な助言を行うなど、企業が実情に応じた取り組みを推進できるよう支援しているところです。
 さらに、啓発強化のために現在作成しているリーフレットも使って、職場環境づくりの取り組みを一層促進してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 岩井弘次君。
  〔岩井弘次君、登壇〕
○岩井弘次君 お答え、ありがとうございます。私も子供2人おりますが、もう成人して旅立っておりますけども、余り私も、家事に対して男性がどうのこうのと言える、そういう子育てに、妻に協力したというあれがないので非常に反省しておるんですけども、社会情勢も変わってきておりますし、ぜひ職場のほうでそういう働きながら仕事がしやすい、特に女性に対して、そういった今御答弁いただいたような部分にぜひ力強く取り組んでいただきますように要望させていただきます。
 それでは、次に、空き家対策についてお伺いいたします。この件につきましても、これまで先輩議員が鋭い考察で議論されておりますので、私なりの角度で質問させていただきます。
 総務省による住宅・土地統計調査におきまして、2013年時点での人が住んでいない住宅は約820万戸、全住宅の13.5%を占め、その戸数は今後さらに増大していくことが予測されます。
 統計では、空き家は4つの種類に分類され、2次的住宅、賃貸用の住宅、売却用住宅、そして、その他の住宅という4種類です。その構成比を見ますと、賃貸用が52%で最も多く、次いでその他の39%で割合が高くなっています。セカンドハウスなどの2次的住宅は5%、売却用は4%にすぎません。
 地域環境の不安定化要因となりやすいのは、その他の空き家です。これらは、利用目的が明確ではなく、放置されている場合も少なくありません。2013年のデータによりますと、腐朽、破損のある住宅の割合は、その他の空き家のうち33%に及んでおります。
 また、国土交通省が2015年10月26日に開いた社会資本整備審議会住宅宅地分科会によりますと、820万戸のうち約320万戸がいわゆるその他の空き家で、過去最高を更新しています。そして、320万戸のうち1981年施行の耐震基準を満たし、屋根のゆがみや柱の傾き、土台の腐食などがなく、簡単な手入れで使用が可能な健全物件は約103万戸、さらに絞り込んだ利便性が高いと言われる最寄りの駅から1キロ圏内にある物件は48万戸となっております。
 現在、このように分類された空き家の利活用とともに、放置されたままの倒壊の危険性がある物件等、いわゆる特定空き家の除却が課題となっています。県においては、平成24年に建築物等の外観の維持保全及び景観支障状態の制限に関する条例、通称・景観支障防止条例を可決、成立しております。この条例は、著しく劣悪な景観により県民の生活環境が阻害されることを防止するため、建築物が廃墟化するなど景観上支障となることを禁止し、そのような廃墟については周辺住民からの要請をもって除却などの措置が可能となることを定めております。
 和歌山市では、独自で空家等の適正管理に関する条例を2013年に制定、施行し、それぞれ観点は違いますが、目的はほぼ同じかと思います。また、活用できる空き家については、平成27年8月にわかやま空き家バンクを開設し、過疎対策やその利活用に資する施策も行われております。
 私も、時折住民の方から、放置され危険な状態の空き家について相談されることがありますが、建物の老朽化がひどく、解体するほかないような場合、その費用負担が解体撤去の大きな妨げの1つになっているように思います。
 そこで、県土整備部長にお伺いしますが、県下市町村において特定空き家等の除却対策の状況はどのようになっておりますか。また、その解体費用の補助制度の普及について、どのように取り組まれておられますか。あわせてお答えください。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 空家等対策の推進に関する特別措置法が本年5月に施行され、市町村は、特定空き家等については、所有者等に対し、除却や修繕等の必要な措置をとるよう助言、指導、勧告、命令することができることとなりました。
 除却対策の状況につきましては、現在までに県内2市町が5戸を特定空き家等として所有者等に除却等を指導しているほか、19市町が279戸に適切な管理を行うよう助言し、そのうち28戸は既に自主的に除却等の措置が講じられているところでございます。
 また、空き家対策を進めていくためには空き家の実態を把握することも重要であり、県内市町村のうち8市町が今年度に国の交付金を活用するなどして調査に取り組んでおり、来年度は新たに11市町村が調査を実施する予定となっています。
 空き家の除却に関しましては、居住環境の整備改善を図るため、空き家を除却する者に補助を行う空き家再生等推進事業の制度があり、昨年度から和歌山市が活用しているところですが、他の市町村でも活用されるよう、各振興局単位で市町村の実務担当者に対する説明会を実施するなど、周知に努めているところでもございます。
 県といたしましては、空き家の除却対策が一層推進されるよう、引き続き市町村とともに取り組みを進めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 岩井弘次君。
  〔岩井弘次君、登壇〕
○岩井弘次君 ありがとうございます。やはり個人財産でもございますし、公金補助等には法的な課題もありますし、また、更地になることによる税制面での負担増というのもあります。しかし、今後ますます増加することが予想されます。地域社会の危険要因になるおそれもあることから、何かしらの対策が必要になってこようかと思います。
 また、空き家の所有者の中には、遠隔地に住んでいるなど、さまざまな事情で維持管理や処分、利活用について悩んでおられる方も多いと思いますので、しっかりと対応していっていただきたいと要望させていただきます。
 それとあと、解体費用なんですけども、最近、銀行によっては空き家解体サポートローンとかといって、低金利でお借りできるということもあると、そういう銀行があるというふうにお聞きしておりますし、また、地元金融機関でもかなり安い目の利用しやすいローンもあるというふうにもお聞きしてもおりますけども、何分住宅ローンのように2%前後といった低い金利ではないので、そういった解体のための、それに特定したそういうローンが今、設定も、そういう金融機関も出てきております。
 そういった部分も踏まえて、また、いろいろと県下の金融機関のほうへも、民間ですから難しい面もあるかと思いますけども、そういったこともまた要望、働きかけしていただけたらなというふうにも思ってございます。よろしくお願いします。
 それでは、最後にクルーズ船の誘致について伺います。
 和歌山市では、個性あふれる観光都市を目指し、昨年秋の和歌山デスティネーションキャンペーンのPR効果が続いていること、また関西国際空港発着便が増加していることなどの機会を捉え、外国人観光客の誘客活動強化など、県や周辺自治体、民間企業と協調して官民一体となった観光施策を推進することとしています。
 また、和歌山市内には、環境省の快水浴場百選に選ばれた片男波海水浴場を初めとする5つの海水浴場があり、サーフィンやヨットなどが楽しめるすばらしい観光資源を有しております。この貴重な観光資源を利用して、マリンスポーツや海岸沿いでのサイクリングなど体験型観光の推進に努め、マリンスポーツ王国を目指すとしています。こういった和歌山市の観光施策が具体的な結果に結びつくよう、県としても和歌山市とよく協調して情報発信や共同事業を実施していただきたいと思います。
 さて、私は、海を生かした観光振興の1つとしてクルーズ船の誘致が効果的ではないかと考えています。船旅は、他の交通手段と違って、時間とお金に余裕を持った方が選択するケースが多いのではないかと思います。そういった方を本県にたくさん誘致することができれば、広域的な観光や地域での消費にもつながるかと思います。
 地域での消費と申しますと、和歌山下津港に近い中央卸売市場について、観光機能を持った施設として再整備を検討していくと和歌山市が発表しております。こうした施設を有効に活用していくためにも、クルーズ船の誘致を積極的に進めていただきたいと考えますが、商工観光労働部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 議員御指摘のとおり、クルーズ船の誘致は、海を生かした本県観光振興の大きな要素の1つと捉まえています。
 まず、国内クルーズ船の誘致でございますが、船会社、旅行会社を訪問し、寄港及び県内オプショナルツアーの造成の働きかけを行っております。こうした活動の結果、ことしは和歌山下津港に日本最大のクルーズ船「飛鳥Ⅱ」が2回寄港し、県と和歌山市で提案したコースをもとに多くのお客様に高野山や和歌山市内などへオプショナルツアーを実施していただきました。
 今年度は、12月現在で、「飛鳥Ⅱ」を含め県内の港湾に国内クルーズ船12隻が寄港し、過去最多約5700人のお客様をお迎えすることができました。ただ、全国的には決して多い回数とは言えず、今後とも旅行会社、客船運航会社に対して積極的かつ継続的な誘致活動を行ってまいります。
 次に、外航クルーズ船の誘致でございますが、国内外で開催される商談会に参加して寄港を働きかけているほか、訪日クルーズの客船運航会社等へのプロモーションの実施、クルーズ観光情報のウエブサイトによる情報発信などを行っております。
 また、受け入れ環境整備として、多言語案内表示やWi-Fi環境、トイレ整備など、快適かつ安心して旅行していただける環境づくりに取り組んでおります。
 来春には、新宮港に国内クルーズ船「にっぽん丸」「飛鳥Ⅱ」、外航クルーズ船「ル・ソレアル」が寄港を予定しております。
 今後とも、県内の港湾に多くの国内外のクルーズ船が寄港し、観光振興や地域経済の活性化に結びつくよう、地元自治体とも連携してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 岩井弘次君。
  〔岩井弘次君、登壇〕
○岩井弘次君 御答弁ありがとうございます。2日ほど前でしたか、新聞に外国クルーズ船で日本に入国した外国人が初めて年間100万人を突破した──博多港でしたか──との報道がされておりました。
 クルーズ船での訪日外国人は、一昨年が17万4000人、昨年は41万6000人、そして、ことしは100万人超えと急増しております。国の計画より5年早くクルーズ船100万人時代が到来したとお聞きしました。
 船旅は、宿泊代の節約という面から、また、旅費が比較的安価で、荷物も多く積んで帰れるといったことからも、ことしの流行語大賞にもなりました爆買いも期待されます。ぜひウオーターフロントの活性化のためにもお取り組みいただきますよう要望させていただきまして、私の一般質問を終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、岩井弘次君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時30分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(前芝雅嗣君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、早速、一般質問に入らせていただきます。
 まず、和歌山県の林業政策についてです。
 私ども日本共産党県議団は、10月に党国会議員団との森林・林業調査を行ったのを初め、この間、林業関係者との懇談や現地調査を重ねてまいりました。これらの調査を通じて感じた課題や出された要望などをもとに、今回の質問をさせていただくものです。
 調査活動の中で、県内6つの森林組合の組合長さんを初め役員さん、民間業者の方々と懇談をさせていただき、現状や課題、御要望を伺いました。その中では、材価の低迷により伐採が進まない困難な中でも、後継者の育成、雇用の継続、木材利用の拡大や低コストで安全な搬出方法の推進など、山間部の地域で森林組合としての責任を果たしていこうとする熱意を強く感じました。
 また、田辺市内の製材業者さんとの懇談では、品質のいい紀州材を育て、生産から製材、販売していることに誇りを持っておられることに強く胸を打たれました。ここでは、傾斜のきつい山で搬出用の架線を張る技術者がいなくなってきたことや、CLTなど集成材は伸びていくだろうけれども、製品利用の歩どまりが悪く、システムとしても複雑であり、いい木をつくらずにこういうやり方や安い木ばっかり追えば和歌山の山は死んでしまうんではないかということ、また、公共事業への木材利用では、分割発注や複数年度発注などの配慮が必要だというお話を伺いました。
 若い林業労働者の皆さんとも、懇談の場を持っていただきました。日高川町旧美山村寒川地区の運動会では、子供の半分がグリーンキーパーで来た人の子供たちで、地域の活力を支える力になっていることが紹介されました。それぞれが林業に従事するようになった動機を語り、「長時間労働の都会から来て、家族と一緒の時間が持ててうれしい」、「自然と向き合い、達成感のある仕事だ」というお話を伺い、私たちもうれしくなりました。
 そして、同時に、もっと地元の若い人が入ってくるような取り組みが必要だということや、森林組合も補助事業頼みではモチベーションが上がらないのではといった意見も出されました。
 搬出間伐の現場へも足を運びました。白浜林道から作業道を20分から30分歩いた現場へ。チェーンソーで伐採しグラップルで出材し、フォワーダーで運搬搬出してる現場です。かなり急な斜面でしたが、まだまだここは緩いほうだということでした。ちょうど前日に林業機器が故障して入れかえたとのことで、メンテナンスの苦労話などもお聞かせいただいたところです。
 町長さんからは、山が伐期を迎えたが、木材単価が安いために経済林として採算が合わずに生産が停滞してること、そして、このまま続けば山仕事の人や木を切る技術、出す技術が途絶えてしまい、需要が出ても出せない状況となってしまう、地方創生の大きな仕事として位置づけて計画をまとめつつあるところだ、国策として国産材の活用に力入れてほしいとの要望をいただきました。
 こうした内容をもとに、以下、順次質問をさせていただきます。
 まず、第1項目めの県内林業の現状と課題について、何点かにわたって農林水産部長にお伺いいたします。
 最初に、木材生産量の推移についてです。
 主要生産県の素材生産量推移を見れば、木材価格の低迷により底を打った15年前から比べると、増加に転じている県が多く見られます。これは、国の林業政策が、民主党政権の時代も含めて、補助金を入れながら年間10万立方メートルを超えるような大規模製材工場をつくり、そこを核にして低価格で安定した品質の木材供給を進めてきたこと、また、高知県のように木質バイオマス利用のボイラーや発電所を積極的に進めて実績も上げている努力のあらわれだと考えます。
 木材の需給についていえば、国際的な木材価格の高騰や円安等により相対的に国産材の競争力が高まったこともあり、木材の自給率は昨年で30%まで回復してきたと言われてます。ただ、これが本格的な自給率回復の兆しかといえば、単純にそう言えるものではないと思います。国産材の自給率を引き上げていくためには、森林所有者に再造林できる価格を保証することや、また、国産材価格の安定のために、全国森林組合連合会や全国素材生産業協同組合連合会などが結成している全国国産材安定供給協議会、こんなものを拡充し、需給調整を含めた価格安定対策に取り組めるようにするなど、政府が責任を持って再造林できる原木価格を保証する取り組みが必要です。
 そこで、まず和歌山県の状況について伺います。
 和歌山県の木材生産は、先ほど述べたような工場の大規模化や大規模バイオマス発電などは導入しないできたわけですが、素材生産量は、この間、微減を続けている状況です。県として、この現状をどう分析しておられるのか、答弁を求めます。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 本県の木材生産量は、昭和42年の74万立方メートルをピークに減少の一途をたどっていましたが、直近10年では、年間17万立方メートル前後で、ほぼ横ばいに推移しております。一方、宮崎県を初めとする木材生産量の多い県では、平成14年から平成17年を境に増加に転じております。
 本県の木材生産量がふえない原因につきましては、本県の林業地域の特徴である急峻な地形に加えて、林道、作業道等の整備がおくれ、出材コストが他県に比べて高くつき、昨今の廉価な木材価格に対応し切れなかったということが大きいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁いただきましたように、急峻な地形が基盤整備のネックになっているという条件があると思います。しかし、この和歌山には、その豊かな自然環境と自然条件に立ち向かい、それを生かす人の営み、努力が積み重ねてこられたというふうに思います。
 2つ目の林業労働者の後継者・技術者養成の質問に移ります。
 この間、原木の値段が少し上向いたときや、合板工場にたくさん原料を出そうというときでも、なかなか山から木が出てこないという状況があったと聞きます。現場の力が広がらなければ山から木が出てこないんですね。林業関係者は、県内の森林組合で始まったグリーンキーパー制度が県の緑の雇用となり、国の取り組みにまで発展し、森林組合の作業班などで活躍していることに喜びと誇りを感じておられます。
 美山森林組合では、20名の専属の作業班のうち16名がIターンで、平均年齢44歳だそうです。今後、Iターン等からも、地元からも、持続的に後継者を育てていくことが求められています。就職説明会や高校への求人に、林業の募集もぜひ必要ではないでしょうか。
 緑の雇用を初めとする、この間の後継者・技術者養成の成果と、そして今後の課題についてお示しください。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) まず、成果についてですが、国の緑の雇用事業等を活用し、平成14年度から平成26年度まで1225名の方が林業に就業され、168名が県内へ定着。その定着率は約14%となっておりますが、平成16年度までの短期雇用を主体とした期間を除く平成17年度以降の定着率は、約52%となっております。また、県内へ定着されている168名の平均年齢は43歳、一方、県内林業就業者全体の平均年齢は47歳であることから、地域の若返りも図られ、初期に採用された緑の雇用者は、現在、作業の中核を担う技術者となっております。
 課題としましては、高齢化による退職者等が増加する中での新規就業者の確保及び若年従業者の技術、技能のスキルアップが喫緊の課題となっております。
 新規就業者確保につきましては、わかやま林業労働力確保支援センター主催による林業就業相談会に加え、今年度は、県内高校生を対象とした林業体験会の開催、わかやま移住・就職フェアへの林業就業相談ブースの出展などを実施しているところであります。
 さらに、新規就業希望者を対象とした川上から川下をトータルにサポートできる人材を育成するための新たな制度を現在検討中であります。
 また、技術、技能のスキルアップとしては、県において、将来の中核的リーダー養成のために林業技能士育成研修──昨年度まではグリーンワーカー育成研修として実施していた制度ではありますが──昭和56年度以降実施しており、修了者は368名となっております。
 これに加え、平成25年度からは、本県特有の架線集材作業に特化した林業架線作業特別講習も実施しており、修了者は3名で、現在、講習内容の拡充を検討中であります。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁いただきましたこの間の後継者養成の取り組みの中では、林業を志した若い後継者に高性能林業機械のオペレーターとしての技術を習得してもらい、これまでの高コスト構造を転換させる努力をされてまいりました。
 次に、低コスト林業の到達点と課題を伺いたいと思います。
 この間、低コスト林業を目指して高性能林業機械の普及と活用を進めてきましたが、和歌山県内の普及活用状況はどういう到達でしょうか。また、ある森林組合では、メンテナンス費用が導入当初は年間1000万程度であったのが、もう今や年間2000万円にも達していて経営を圧迫している、そういう状況が報告され、今後の支援を求める声が出されていますが、どうお考えでしょうか、答弁願います。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 平成26年度末の高性能林業機械の保有台数は、枝払いや玉切りを行うプロセッサ32台、簡易な架線集材に対応できるスイングヤーダ24台など、総台数が109台となっており、素材生産の生産性や安全性の向上が図られているところです。
 なお、素材生産量を現状より増加するという計画に対しては、耐用年数を過ぎ、修繕経費等がかさむ高性能林業機械の買いかえも国の支援対象となっております。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長、お話にありましたように、低コスト林業を目指して入れ始めた高性能林業機器、やはりもう10年ぐらいたつんですよね。導入への支援やリースの活用など援助してこられたわけですから、今後の経費削減や更新などについてもしっかりとサポートされるよう、要望しておきたいと思います。
 生産現場の苦労話として、どこでも出されたのが鹿害の問題です。伐採後の再造林をしようにも、鹿害の対策には大変な苦労をされてます。ある森林組合の役員さんからは、「1ヘクタール当たり皆伐後の再造林に120万かかり、鹿害対策にプラス120万。ところが、育てて伐採しても利益は80万というんじゃやってられない」、こういう声もお聞きいたしました。
 針葉樹の再造林だけでなく、企業の森などの環境林で行われている広葉樹の再造林でも、同様の悲鳴が上がっています。「せっかく森を育てようと下草刈りのイベントにわざわざ都会から来てくれてるのに、肝心の苗木が食べられてしまっていて、ほとんど残っておらず、ただの広場の草刈りみたいになってる」と、こういうお悩みもお聞きいたしました。
 鹿の捕獲状況や再造林時の鹿害対策強化について、部長の答弁を願います。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 鹿害を減らすためには、当然のことですが、鹿の生息数を減少させることは最重要で、不可欠です。このため、従来の狩猟や有害捕獲に加え、平成23年度から管理捕獲に取り組んでおり、平成26年度のこれらの捕獲総数は1万517頭となっております。
 再造林時の鹿害対策としましては、植林した苗木を守るための獣害防止ネットや獣害防止筒の設置に対して支援を行っているところです。また、植林地においても効果的に鹿を捕獲するため、今年度から林業試験場において獣害防止ネットの周辺を徘回する鹿の行動特性を利用した捕獲技術の開発に取り組んでおり、今後とも関係課室と連携の上、鹿害対策を強化してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 では、木材利用の拡大の分野に移ります。
 これまでも、公共事業への木材利用を積極的に進めるよう、建築分野にとどまらず、土木工事への積極的な活用を提案してまいりました。今年度においては、河川の工事に活用されるとの話も伺いました。どの程度活用が広がっているのか、御答弁願います。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 昨年6月に、県土整備部と農林水産部が連携して、公共土木工事における木材利用推進指針と公共土木工事木材利用マニュアルを策定したところです。
 公共土木工事では、これまでも農林水産部において治山工事で丸太筋工や幕板型枠などを中心に施工しています。また、県土整備部では、のり面の保護対策として丸太伏工の施工や、河川工事では護岸の根固め対策として木工沈床工を本年度計画するなど、木材の利用推進に取り組んでいます。
 今後とも、引き続き県土整備部と連携しながら、公共土木工事での木材の積極的な活用に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御紹介いただいた河川整備の工事に木材を使う設計を大きな川で実際に事業化していただいたのは県内でも初めてではないかというふうに思うんですが、農林水産部と県土整備部が、ぜひ今後とも力を合わせて一層の拡大をしていただくよう、お願いをするものです。
 それでは、2番目の項目のバイオマスエネルギー活用の問題に移らせていただきます。
 木材のバイオマス利用は、熱利用や発電などによりエネルギーの地産地消という好循環を生み出し、地域経済と雇用を支える大きな柱となり得る課題です。全国的には大規模なバイオマス発電所も建設されているようですが、5000キロワット級の発電所では年間10万立方メートルもの木材原料が必要となり、和歌山県では現実的ではありません。
 こうした大規模発電所ではなく、身の丈に合った中小規模発電所であるとか、農業用ハウス、温泉施設等での熱源としての利活用など、エネルギー利用施設を地元に広げることが大切です。木材や木質バイオマス原料を遠くまで運ぶのは、コスト面から見てもメリットはなく、遠距離輸送せずに、できるだけ地元や県内で活用すべきであると考えます。
 こうした木質バイオマスエネルギー活用による地域活性化を目指す協議会が、先日、田辺市でも始まりました。県内各地域での木質バイオマスエネルギー活用支援の今後の方向性について、また木質バイオマス利用のための協議会設置状況と方向性について、考え方をお示しください。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 議員御指摘のとおり、地域の状況に応じた規模の木質バイオマスエネルギー利用施設を設置することは、これまで未利用のまま森林に放置されていた間伐材等の林地残材の利用促進につながり、大変有効であると考えます。
 しかしながら、2000キロワットクラスの発電所においても、4万立方メートル程度の原木確保が必要と言われており、このように、中小規模の発電所を含めたエネルギー利用施設の立地には、一定量の原木を安定的に集荷し、継続して供給していくことが課題となります。
 県としても、これら課題に対応しつつ、地域の各協議会や市町村と連携しながら、引き続き原木増産に向けた取り組みを進めてまいります。
 次に、協議会の設置状況についてでございますが、県内には、木質バイオマスの安定供給や利用推進を目的に、新宮・東牟婁と三重県内の18団体で構成するバイオマス供給協議会と、田辺・西牟婁の製材業者や森林組合10団体で構成する紀州木質バイオマス利用協議会が設立されています。また、有田川町周辺においても、同様の協議会設立に向け準備しているところです。
 これら協議会は、地域木材の安定供給の観点からも重要と考えるところであり、県としましても、各協議会にオブザーバーとして参加するなど積極的に連携し、木質バイオマスの有効利用を初めとする地域の林業、木材産業の振興に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 答弁いただきました。
 県の来年度予算編成方針の中で、バイオマス発電所を建設する企業に対してスタートアップ支援を検討してるということです。和歌山県では、同バイオマス原料となる原木を、部長おっしゃったように、一定量を安定的に出してくるかと。このことが、この供給する部分も鍵になってくるというふうに思いますので、搬出への支援もしっかり検討していただき、材を出すほう、発電するほう、この両面での支援をしっかり進めていただくよう要望をしておきます。
 次に、木材を山から出してくる架線の技術について質問をさせていただきます。
 今回の調査の中では、各地で架線集材の技術継承の課題とともに、技術開発の課題が出されました。架線集材の技術継承のための養成講習や研修にどう取り組もうとしているのか、お示しください。
 また、加えて中堅技術者の養成のためには、研修だけでなく、実際にさまざまな条件の現場を経験していくことが何よりも重要であることは言うまでもありません。架線集材の実践フィールド、実際の事業をふやすためにどう取り組んでいくのかお示しください。
 また、搬出間伐における架線集材の新たな手法として、魚骨状間伐──魚の骨状の間伐──が提唱をされています。傾斜がきつくて作業道開設による搬出間伐が困難なそういう山において、この架線技術により中心線に張ったワイヤーから枝状に集材をしていく、こういう魚骨状間伐という手法は、一般的な列状間伐よりも森林にダメージを与えずに定性間伐に近い効果を期待できるとのことです。こうした効果的な架線集材搬出方法の実用化や油圧式集材機の普及による安全で効率的な架線集材普及を、和歌山県のモデル的な事業として取り組んではいかがでしょうか、答弁を求めます。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 架線集材の技術継承につきましては、平成25年度から林業試験場において林業架線作業特別講習を実施しており、今後、民間林業事業体の協力も得ながら実践フィールドでの実地研修を現在検討中であります。
 技術開発関連につきましては、集材機を利用した架線集材は主伐への導入を主眼として考えており、搬出間伐での利用はコスト面から大変厳しい現状であります。議員御提案の魚骨状間伐でのモデル化は、現状では困難と思われます。
 そのような中、主伐への利用として油圧式集材機の開発を平成25年度から取り組んでおり、今年度も輸送性を向上させた油圧式集材機を開発中であり、完成後は県内での現地講習会、研修会を実施し、油圧式集材機を利用した無線操作による省力化モデルの普及に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきましたが、部長は最初の質問への答弁でも、和歌山の木材生産が進まない要因の1つは、急峻な地形だと言っておられるわけですから、それならば、間伐についても作業道がつけられていない、あるいはつけるのが困難である、そういう山もあるんです。それに対して、どう利用間伐を進めるかというと、やはり架線技術の活用という話だと思うんですね。
 県内の林地の傾斜度ごとのいろんな資料を見せていただいても、かなり、和歌山県内、傾斜のきついところ、作業道からの距離の遠いところ、あるということを今勉強しております。
 そういう中で、やはりコストの問題ですぐにモデル化とはいかなくても、こうした新しい試みが、そのハードルを越えて実用化できるよう持っていってこそ和歌山の林業の展望が出てくるんじゃないでしょうか。ぜひ、そういった研究や現場での積極的なチャレンジ、新型機器の試験導入、こういったものに援助をしていただきたいと要望をしておきます。
 また、油圧集材機の開発については、これ、かなりいい線まで開発が進んでるようです。ただ、これについても、普及にはコストがかかってきます。
 今、新型機をつくるのに3000万円かかると言われていますが、普及させるには、旧型の1000万円ぐらいまで下げる必要があると言われています。こうしたことについても、今後開発が進んだ状況を捉えて、県がしっかりと応援するように要望しておきます。
 また、こうした事業体の努力に応えるためにも、搬出間伐の補助事業単価、これを一律の運用としないよう国にも働きかけていただくということも、あわせて要望しておきたいと思います。
 それでは、この項目の最後に、和歌山型の林業モデルについて知事にお尋ねをいたしたいと思います。
 私は、今回の調査を通じて、これまで国策として進められてきた大規模生産、大規模消費という低コスト競争、自由主義的政策という画一的なモデルだけを当てはめたんでは和歌山の森林と地域経済は守れないという思いを強く持ちました。和歌山県の地形と山に見合った品質のよい素材生産を中心に据えつつ、なおかつ集成材やバイオマス利用の裾野をうんと広げて地域経済を支える林業、効率的で安全な木材生産の技術を開発し労働力確保と山村振興に力を入れ、環境保全、災害防止に貢献する、そんな新しい和歌山モデルとも言うべき林業政策の展望が必要だと感じています。
 県内林業関係者からも評価されている緑の雇用のように、和歌山県が全国的に見ても意欲的な取り組みで全国を牽引できる素地は十分にあると考えます。
 豊かな森林資源と自然条件が宝の持ち腐れとならないよう、今後、和歌山らしい新たな林業モデルの構築を進めるべきではないでしょうか。知事の御答弁をお願いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まさに、議員御提言のとおりであります。というと、それで終わってしまうんですけども。
 本県の林業を活性化させるためには、従来からの無垢材の利用、これはむしろ和歌山の地形や気候を生かして、和歌山県が実は旧の和歌山モデルだったかもしれませんが、誇りにしてきたところなんでございますけども、これに加えて、集成材や木質バイオマス利用へも裾野を広げて木材需要全体の底上げを図って、それで生産された木材を無駄なく活用するということが重要であると、今は思っております。
 この考え方は、私が就任後、すぐに森林・林業アクションプランというのを一番初めにつくったときにまさに取り入れて、集成材の工場なんかにもセールスをかけて、それでちょっと生産をふやすことができたというところもあるんです。ただ、主伐のところが減ってしまって、全体としてはそんなにふえたことにはなっておりません。
 このため、低コスト林業の推進とか森林組合と民間事業体の連携強化、紀州材の販路拡大等に最大限注力してきたところでございます。
 今後、紀州材の増産を図るためには、基盤整備の促進、新たな供給先の開拓、優秀な人材の育成・確保等に重点的に取り組んでいくことが必要であると思います。
 基盤整備の促進につきましては、限られた予算の中で、より効果的、集中的な素材生産支援を実施するためにゾーニングという手法を使って、支援する区域の絞り込みをこれから行っていこうかというような検討をしているところでございます。
 また、新たな供給先の開拓として、従来からの無垢材としての利用に加え、議員御指摘のように、集成材や合板への活用、さらには木質バイオエネルギー利用施設への原木の供給などについて検討を行っているところであります。
 特に、木質バイオエネルギーの利用促進につきましては、本年4月に林業の専門職員を産業技術政策課──これはエネルギーもやるところなんですが──産業技術政策課に配置いたしまして、先進各地の状況を学ばせながら、林業とエネルギーの両面から採算に合うシステムを検討さしているところでございます。
 さらに、優秀な人材の育成・確保として、農業大学校を再編いたしまして、即戦力となる技術者の育成や、あるいは林業架線技術の習熟を中心としたカリキュラムに加え、林業経営のノウハウを学べるカリキュラムについても、さらなる充実を図るべく検討を開始しております。
 こういうような考え方、こういうメニューをそれぞれ頑張って進めて、林業を盛んにしていきたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁いただきました。
 まさに、和歌山県のこの豊かな森、そしてまた人工林は、国策として植林され、公的な力も活用してつくり上げてきた私たち県民の財産です。これをしっかりと活用すること、そして、自然豊かで災害に強い森林を創造していく仕事、これが和歌山県の中山間地の地域経済を支える鍵となると思います。
 県は、総合戦略の中で木材生産を5年後には4割増の23万立方メートルにすることを目標に掲げました。ぜひ関係者の皆さんとも知恵を出し合い、和歌山らしい林業政策を練り上げ、具体的な県事業に反映させる中で、しっかりと和歌山県の林業再生を進められますよう要望させていただきます。
 次に、TPP大筋合意についての質問に移らせていただきます。
 TPP交渉が大筋合意と発表され、県としても県内農林水産業への影響と取り組みを発表されました。県内農林水産業への影響を県としてどのように試算し、どう考えているのでしょうか。
 政府は、TPPによる影響は限定的などとしていますが、とんでもない話だと思うんです。県も、国と同様に考えているのか、それとも影響は大きいと考えているのか、お答えください。
 また、試算の中で、かんきつ類への影響額についてはオレンジ、牛肉自由化が強行されたときの影響を参考にしたとされてますが、当時の県内かんきつ農家、ミカン農家にどのような結果がもたらされたと県は認識していますか。農林水産部長の答弁を願います。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) TPPの大筋合意による県内農林水産業への影響についてでございますが、今後、数年から10数年にかけての関税撤廃等により、かんきつ類や米、畜産などにマイナスの影響が出るのではないかと考えて影響額の試算を行いました。
 本県農業の大きな部分を占めるかんきつ類への影響については、温州ミカンは国においては輸入オレンジと差別化が図られており、影響を限定的と分析しておりますが、県では、何も対策が講じられなければ過去のオレンジ輸入事業化と同様に生産量が約10%減少すると見込んでおります。また、直接競合すると思われる中晩柑は、オレンジの関税率32%程度の価格低下が生じ、その結果、かんきつ類の年間産出額の12.7%、35.7億円が減少すると分析したところです。
 さらに、米や畜産などの影響額を合わせると、農林水産物の年間産出額の4.8%、54.8億円の減少となります。これは、本県農林水産業にとって大きなマイナス影響であると考えております。
 また、オレンジの輸入自由化当時の県内ミカン農家への影響については、輸入枠が撤廃される前の平成2年と現行の関税率となった平成12年で温州ミカンの栽培面積を比較すると、自由化による影響の程度は明らかではありませんが、約10%減少しました。
 一方で、JA扱いによる市場単価は、平成2年と平成12年で、それぞれ中心年として5年間の最高値と最低値を除いた平均単価は、1キログラム当たり174円と167円で、ほぼ同等であります。これは、高品質化等の取り組みにより、価格面では自由化による影響を余り受けなかったものと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長からは、主なかんきつ類、米、畜産の分野などのお話がありました。
 県の資料では、野菜や水産物、林業への影響も計算されているようですが、いずれも一つの試算という域を出ないものだと思います。しかし、その試算の結果から見れば、部長から、国は限定的だと言うけれども、県としては大きなマイナス影響だというお答えだったと思います。
 それもそのはず、県の試算発表資料に出ているミカン、かんきつ生産農家への影響、この資料を見てみますと、温州ミカン1.5ヘクタール、中晩柑0.5ヘクタール、こういうミカン生産農家の一例をとってみると、温州ミカンの生産量が10%減少し、中晩柑の価格が32%低下すると実際どういうことが起こるか。この農家世帯、家族みんなの合計した所得が、546万2000円から386万9000円にまで落ち込むと、こういう結果なんですね。TPPの影響がイメージしにくかった農家の方も、この数字を見ると、「これは農家にやめよと言うんか」と感想を漏らしておられました。この国の農業の未来に展望が持てなくなるというのが、実は一番影響が大きいと私は感じています。
 過去のオレンジ、牛肉自由化の影響を振り返っても、部長が答弁されたような影響が実際に出ました。国レベルで合計1200億円を超す国内対策をしても、結果として大きなダメージを受けたわけです。有田の山々にも、ハッサクの木を切って畑で燃やす、細い悲しい煙があちこちで立ち上ったのを私は覚えています。
 こうした試算と過去の経過を踏まえて、知事に今度はお尋ねをいたしたいと思います。
 今回の県の試算でも示されたように、大筋合意の中身というのは、この14品目だけにとどまらず、日本の果樹生産にも大きな影響を与えるものとなっています。
 少し詳しく見てみましょう。現在、全国のミカン生産量は90万トン弱に減少していますが、これに対してオレンジの輸入量は12万トンで、温州ミカンに対して8対1の割合に匹敵する量までずっとその量を占めています。
 このオレンジは、TPP参加国からは、アメリカの8万3000トン、オーストラリアからは2万7000トン、合わせて11万トンが輸入されていて、6月から11月には16%の関税、そして、ミカンやかんきつ類とシーズンが重なる12月から5月までの層はその倍の32%を、今、関税をかけているわけですが、これがこの先ゼロになるわけですね。
 食べやすくておいしいミカンは、果物としての値打ちは決して負けるものではないと思っておりますが、しかし、消費の動向には大きく影響するでしょう。店舗の売り場面積の一定部分をこれまで以上に安いオレンジが占めれば、どうしてもそちらに流れて、ミカンの消費がより一層落ち込むことが心配されます。
 また、ジュース原料の関税撤廃も影響はあると思います。
 国産果汁の生産を見てみますと、オレンジ自由化前の1990年は、生果換算で24万トン、ジュースに絞ってたんですが、2013年では6万トンにまで減ってしまってます。それに対して、輸入果汁は当時38万トンだったものが90万トンまでふえてずっと推移してる。ほぼ国産果汁に取ってかわってしまってるんですね。生果換算では、現在の温州ミカンの生産量と丸々同じだけ、90万トンですから、丸々同じぐらいの輸入量となってしまったわけですね。
 国は、国産果汁は高級ですみ分けができていると、部長も言われたようなこういう資料をつくって説明をしていますけれども(資料を示す)、だから、輸入先はほとんどがブラジルで、TPP関係国は少ないから影響はごく少ないかのように言ってますけれども、私は違うと思います。
 現在、オレンジ果汁はブラジルから72%で、TPP参加国からは9%なわけですが、その9%の量といっても、生果換算にすると8万トンに匹敵するわけで、今、国産果汁仕向け、これは5万5000トンですから、1.5倍入ってきてるというわけなんですね。それがTPP関係です。
 ブラジルからのジュースがアメリカ経由で来るんじゃないか、こういう心配も国の説明会でも出されてたようですけども、これだけの量の果汁にかかっていた関税25%がなくなるわけですから、影響が出ないわけがないと思います。この影響が、生果の加工仕向けによる需給調整機能低下や、今日的課題となっています品質のよいジュース原料柑確保、これに影響すれば、行政の支援策は後手に回るばっかりです。
 安倍政権は、大筋合意を大成果のようにアピールをし、影響は限定的だ、大したことはないと、そんな資料、説明、宣伝ばかりしているわけですけれども、早期妥結を目指してアメリカへの譲歩を繰り返し、重要品目の聖域は守るとしたこの公約違反、交渉の情報は、国会、国民に十分な情報提供をし、国民的議論を行うとした国会決議違反であると指摘せざるを得ません。
 この日本政府の譲歩により日本農業への壊滅的影響が心配され、JAからは不安と怒りの声が広がっていると抗議の決議が上がっています。先日発表された農業センサスでは、農業就業者がこの5年で2割減ということが明らかにされていて、TPPどころではないというのが地方と農村の現状ではないでしょうか。
 この先、TPPがさらなる関税撤廃、貿易自由化への道を進み、アメリカと多国籍企業らの利益のために日本と和歌山の農林水産業が犠牲にされる、そんな道を進むことは許せません。日本の農林水産業と国民生活を守るにはTPP交渉からの撤退しかないと私は考えるものです。
 仁坂知事は、県内農林水産業への重大な影響や、県民の怒りや不安をどう受けとめておられるんでしょうか。知事のTPP大筋合意についての所感と対応をお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) TPPは、入ることによって悪影響をこうむる面もありますけれども、国が総合的に考え、入るほうが日本全体にとって利益が大きいと判断した結果だと思っています。
 先ほど、アメリカと多国籍企業の利益のためにTPPを無理やりつくったというようなお話がありましたが、それはちょっと、少しうがった見方ではないかというふうに思います。
 議員お話しのように、入ることによるマイナスの部分というのは、これはあるわけです。それだけを見るのは、しかし若干一面的過ぎて問題がある。なぜならば、逆に入らない場合には、このTPPに限らず、およそFTAというのは、WTO・GATTの無差別、多角的原則に反する。反するというか、例外ですから。したがって、いわばブロック経済で、入っていないと関税等で競争相手より不利に扱われて、その結果、輸出産業などが不利益をこうむって、しぼんで、その結果、雇用も減ってしまうなどということを十分心配しとかないといけないわけです。
 実は、輸出企業の部品をつくっているのは──和歌山にも輸出企業はありますけれども、むしろ和歌山の中小企業なんか考えたら、実はその部品をつくって頑張ってる企業というのはたくさんあるわけでございまして、実は働く者の職場が失われちゃうというような議論もあるわけです。
 また、TPPは、関税の削減、撤廃だけではなくて、幅広い分野で新しいルールが共通化されていくということになっていきます。例えば、TPP各国との貿易、投資が活発化するような方向にそれが働くかもしれないし、これまで海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業が、いわば世界市場が拡大したんだから、そこへ参入するチャンスでもあるというような面もあります。したがって、マイナス面ばっかり言うのは、これはフェアではないというふうに私は思います。
 しかしながら、このようなプラス・マイナスを総合的に判断したのは国でございます。したがって、TPPに入ることにより悪影響が出ると科学的に分析される農林水産業の少なくとも特定の分野については、判断した国の責任において必要な政策を講じるべきだと私は思っております。
 本県農林水産業では、何も対策が講じられなければ、米とか畜産とかかんきつとかで打撃を受けるということが想定されます。米とか畜産は、どちらかというと和歌山県は他県に追随するような感じでいいかなというところもありますので、かんきつについては何といってもリーダー県ですから、自分たちで一生懸命分析をして、それで国に今要求を出しているとこでございます。
 TPPによる外的不利条件をはねのけて我が農家が頑張れるには、生産性の向上とか高品質化をさらに進め、農林水産業の体質強化が必要でありますので、これに対してちゃんと対策をしてくださいという申し入れを行っているところです。また、国の責任とはいえ、県の政策も有効に活用して、かんきつを初め米や畜産などの影響を受けるかもしれない農林漁業者を守っていくというのが我々の仕事だろうというふうに思っております。
 一方、TPPを新たな市場開拓のチャンスと捉えて輸出を目指す農林漁業者、これは特に農業に関してはかなり有望だと思っておりますので、輸出の販路拡大対策等も一層支援して頑張っていきたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきましたが、うがった見方やないかとか、マイナス面だけ見るのはおかしいやないかという御意見をお持ちのようです。
 知事は、これまでもマイナス面、プラス面あってというスタンスでした。私は、プラス・マイナスの電卓をたたくんじゃなくて、マイナスを受けるその中身、本質が、日本の食料生産、中山間地での暮らし、日本の農林水産業を軽んじ、泣かせて平気という政府の姿勢、そこと向いてる方向は一緒だと批判せざるを得ません。
 「日本農業新聞」の農政モニター調査で、回答者の69%が国会決議違反だと答えています。これは、国全体の利益という看板のもと、貿易相手国の都合や経済界の利益を優先させて、農林水産業は泣かされても仕方ないんだという政治が続いていると農家は感じてるんじゃないでしょうか。
 私は、今回の質問を通じて、政府の国民を欺くようなTPP交渉の進め方と、十分な説明もしないまま対策へ駆け込もうとする姿勢を厳しく批判するものです。
 そして、和歌山県としては、国に対して大筋合意の経緯や詳細、影響、今後の課題を国民、県民に明らかにすることを求めつつ、かんきつのリーダー県と言うのなら、それにふさわしく県民の怒りと不安にしっかりと寄り添った対応をするよう要望するものです。
 今回の大筋合意により、舞台は3カ月後以降に予定される加盟12カ国による正式調印と議会承認手続に移ることになります。しかし、アメリカでも議会承認は進まない可能性も高く、カナダも政権交代となりました。日本の国会も、予算審議を終えた来年4月以降の審議となり、国会決議無視という中身からも、参議院選挙を控えた会期内成立は簡単ではないと見られてます。私ども日本共産党県議団は、TPPからの撤退、調印中止を求め、安倍政権の暴走を許さない運動をさらに進めていくことを表明するものです。
 最後の柱として、ミカン対策の質問に移らせていただきます。
 昨夜からけさにかけて台風のような暴風雨が吹き荒れまして、けさの気温は20度を超えるというぬく雨でした。収穫直前のミカンが風でもまれて傷や腐敗の原因となることが心配です。県としても、状況をよくつかみ、目配りをしていただくようお願いをしつつ、果樹王国和歌山県農業の展望を切り開くためにも、しっかりとしたミカン対策を求めて、以下4点、時間の関係で農林水産部長に4点まとめてお尋ねをしたいというふうに思います。
 11月末に、私は東京の大田市場に出かけ、市場の状況などをお伺いしてきました。本年産ミカンは、高品質な仕上がりとなって歓迎され、好スタートを切ったものの、11月の雨の影響を受けた品質低下に全国どこも苦労していると聞きます。本年産ミカンの生産販売状況と販売価格向上の取り組みはいかがでしょうか。
 次に、優良農地の流動化対策は、有田地方をミカン産地として維持発展させる上で非常に重要な問題だと考えています。農業を続けられなくなって、条件のいい畑を荒らしてしまう前に、若い後継者にバトンを引き継ぐ手だてがどうしても必要です。国や県でも取り組みを強化していただいてますが、なかなか目に見えた取り組みとなっていません。それどころか、取り組みに対する批判的な声のほうが多いと感じています。
 有田のミカン農家では、耕作面積5反以下の農家の離農が進んでいるものの、2ヘクタール以上の農家数は少しずつですが、ふえてるんですね。頑張ろうとしている地元後継者を応援し、優良な農地を荒らさずに流動化させ維持できる条件はあると思います。県と市町村、JAなどの一層の取り組みの強化を求めるものですが、いかがでしょうか。
 そして、次に生産支援の拡大ですが、国への政策要望の中で、優良品種への改植や高品質化対策の機材・設備の導入などへの支援を求めています。同品種であっても、老木からの改植やモノレール運搬機の更新、作業道など、現場の声に応えた生産支援拡充を、国待ちとならずに、市町村とともに力を合わせて県としてどんどん進めていくべきではないでしょうか。
 最後に、ミカンのファンをふやそうということです。
 これまでも、有田のミカン産地では、みかんの花街道ウォークや、みかん海道マラソン、モンテ・オウ・コスモスなど、産地に触れていただく魅力的なアイデア、取り組みが各地で広がってきました。有田ミカンや和歌山県産果実の市場価値を高めるには、消費者のニーズをつかんだ収穫や栽培などの農作業体験、果実加工体験、ワーキングホリデー等などによる産地との交流により和歌山県産ミカンのファンをふやすこと、産地の魅力を磨き広げることが必要であると考えます。空き家や遊休施設の活用により、農家レストランや宿泊や交流のための施設の条件も広げることも可能です。
 県としても、こうしたミカンのファンをふやす取り組みに市町村や地元個人・団体とともに一層力を入れるべきと考えますが、いかがでしょうか、答弁を求めます。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) まず、本年産ミカンの生産販売状況と販売価格向上の取り組みについてでございます。
 本年産温州ミカンは表年に当たりますが、5月の高温による生理落果がやや多かったため、生産量は対前年比98%の17万トン程度と予測しております。品質につきましては、9月中旬から10月下旬の少雨により、極わせミカンは平年より糖度が高かったものの、11月は平年に比べて気温が1.7度高く、降水量も約1.6倍と多かったことから、わせや普通ミカンでは糖度は平年並みで、腐敗果や浮き皮果の発生が多くなっております。
 こうした中、12月10日の系統扱いの市場単価は、極わせミカンが対前年比116%の1キログラム当たり185円、わせミカンが対前年比127%の1キログラム当たり219円で取引されており、ミカン全体では、対前年比123%の1キログラム当たり205円となっております。
 産地での価格向上の取り組みにつきましては、本年度から新たに実施しているミカン厳選出荷促進事業の取り組みに加え、マルチ栽培や優良品種への改植を推進しております。また、腐敗果や浮き皮果の流通を防止するため、家庭選別を徹底するとともに、選果場整備の際には腐敗果等を検出する機能を有した最新鋭の選果機への更新を進めております。
 農地流動化の取り組みについてでございます。
 本県は、ミカン等の樹園地を初めとした急傾斜で不整形な農地が多いため、流動化が難しい状況でございます。しかしながら、担い手の高齢化が進展する中、産地を維持発展させるためには意欲ある担い手への農地集積が重要であることから、農地の貸借を進める農地中間管理事業や樹園地の長期活用を支援する和歌山版農地活用総合支援事業等で施策に取り組み、平成26年度は農地中間管理事業で24ヘクタール、和歌山版農地活用総合支援事業で約70ヘクタールの支援を行ったところでございます。
 県としましては、各地域へ設置した農地活用協議会を核に、市町やJA等との連携をより一層強化しながら、農地流動化の取り組みを着実に推進してまいります。
 現場の声に応えた生産支援拡充をについてでございます。
 国庫補助事業において、モノレール運搬機の更新は、大幅な積載量増加による運搬機能の向上が条件となっており、また改植では、優良品種であっても同一品種の改植は支援対象となっておりません。このため、TPP対策として、かんきつ農業の競争力を強化するため、生産性向上や高品質化対策等の新たな制度創設や事業の拡充について、先般、国に対して要望いたしたところでございます。
 一方、県では、果樹産地の競争力を高めるため、本年度より、これまでの事業を拡充し、生産から流通、販売の取り組みを総合的に支援する果樹産地競争力強化総合支援事業を県単独事業で実施しており、この中で、議員お話しの同一品種への改植や作業道の整備について支援してございます。
 今後も、TPP対策の早期実施を国へ強く働きかけるとともに、市町村やJAと連携しながら県単独事業などを効果的に展開し、本県農業の基幹品目である温州ミカンの振興を図ってまいります。
 続きまして、ミカンのファンをふやそうについてでございます。
 議員御指摘のとおり、農産物のファンづくりを進めるためには、品質の向上はもちろんのこと、都市部の消費者に産地を知ってもらうことが重要と考えております。このため、農林水産部では、平成15年度から県単独のアグリビジネス支援事業等により、農家民泊や加工体験施設等の整備に加え、消費者を対象とした産地での交流活動を推進するグリーン・ツーリズムを進めております。また、近年、本県への観光客が増加する中、観光部局とともにより一層の交流を促進するため、現在、農林水産資源を活用した新たな施策を検討しているところです。
 今後も、こうしたさまざまな事業を活用し、市町村や関係団体と連携しながら、和歌山のファンづくりを積極的に進めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 今回、山の問題、TPP、ミカン対策と、農林水産業問題を取り上げさせていただきましたが、和歌山県の基幹産業としてしっかり位置づけをして、新年度予算編成に臨んでいただくよう重ねて要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) この際、松坂君に申し上げます。
 昼休みに通告があって、変更の旨ありましたけれど、やはりこれからは通告どおりにやっていただきますように注意しておきます。
 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 7番井出益弘君。
  〔井出益弘君、登壇〕(拍手)
○井出益弘君 一般質問も最終日の最後の私で終わりですんで、どうか、皆さん、お疲れかと思いますけども、御清聴、よろしくお願いします。
 通告に従って質問さしていただきます。
 1番目に、市町村に譲与されていない法定外公共物の適正な移管についてであります。
 私が以前にも本会議で質問いたしましたが、機能を有する法定外公共物──里道、水路、ため池など──は、地方分権一括法第113条に基づき、平成17年3月に市町村に一括譲与されています。しかしながら、それから10年たった今、和歌山市内には、平成17年に譲与漏れとなった法定外公共物が存在しています。
 例えば、和歌山市内にある寺谷池は、所有が、現在、内務省となったままであります。この話は、過去にも私は、委員会、この議会、本会議で何回か言わしてもらっております。寺谷池については、以前も聞いていただいたんですけども、池の底樋がもう腐って見えないから、深い池にたくさんたまって、大雨が降ったらその下へどんどん流れていくと。池から流れ出していく。その下が南海電鉄の線路敷です。堤防になってます。その堤防と池との間に田んぼが3枚あったけど、今は雨が降ったら、その田んぼがもう池になります。そして、南海電車との──その下に排水路があるんですけども、そこが詰まってる。そして、そのことで地元の自治会とか、いろんな方が市へも行ったり、私のとこへも来たり、いろんなとこへ行くんですけど、水利の関係で、「そこが詰まってるんは水利組合が管理しとるとこや。ですから、それは水利組合へ言うてくれ」と。そして、私も、その話でお会いしました。そしたら、水利組合の人は、「もうそこから下で田んぼはないんや」と。ないから、もうその池は、わしら関係ない。もう別にうちへ言うてきてもうても、水利の利に利用してないから関係ない」と、そういうふうなことで大変困ってる。
 それで、私も、この件では南海電鉄まで2回行きました。そして、県の人にも市の人にも一緒に来てもらって、そして1回目は、「それはもう私どもの責任で詰まっとるんと違う」ということで、「以前からそういう管理はお願いしてる」というようなことでした。ところが、いろんな意見を聞くと、「何を言うとるか。そこは、わしら、昔、田んぼやったところへあんたとこが土手をつくって、線路敷にして電車を走らしたんやから、もともとあんたとこが後から来たんや」と。それで、そんなことも、「あんたとこは関係ないことない」ということです。それで、結局、議論をした中で、「排水路を直すときは、詰まっとるやつを改修するときは応分の負担を南海も持ちます」と。せっかくそこまで来とるのに、それで、私も直るかなあと思うとったら、そのままですよ。それからもう年数がたってきとる。
 このごろ、悲しいかな、私はもう年を大分とってきました。選挙も無事に9回上げてもうたんやけど。ところが、私は、無事に上がってきてここで話をさしてもらうけど、県の幹部の人、その当時、現場を見に行ってもらったりした課長、部長、担当の人はおらん。それで、いろいろ聞くと、「いや、私、ちょっとお聞きしてない」と。ほんで、市へ行っても県へ行っても、やっぱり年月がたつと本当にこんなことになる。
 それで、私は、いつも、県の幹部の人は、定年まで頑張ってとか、配置転換になるまで頑張っとって仕事をせんとかわっていくということを何回かここで言うたことがあるんですけど、本当に私は──私も、いつまでも議員、4年ごとに無事に上げてもうとるけど、本当にもう年齢も体力もやっぱりそうはいかんと思うしね。
 それで、やはり底樋のない池というのはほかにもやっぱりあるんですよ、この寺谷以外にも。そして、所有が和歌山市になってない。ですから、そういうものはやっぱり、私も地元のそういう会合へ行かしてもらったら、結局、「池は昔からあったんや。あんたら、池の下へ知っとって家を建てたんやろ。そんなところへあんたらが建てたんやな。そして、私らのところへ池がどうこうと言うてくるんは筋違いや」と言う。そやけど、これは、やっぱりその人らにしたら、「わしとこの池と違う」と言うわけですよ。このままでおったんでは私はいかんと思うんでね。
 このように、管理者が明確でないことは、管理の支障を来すだけでなく、誰が管理者であるかわからない土地は、地域住民の不安となっています。里道のようなとこへも物を置かれたりもしとるんですよ。だけど、本当に市へ言うていけないんですよ。「うちは引き取ってない」と。ですから、このような譲与漏れの財産についてどのように対応するのか、まず1問目、県土整備部長の答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの井出益弘君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 里道、水路、ため池等の法定外公共物のうち機能があると市町村が判断したものについては、平成17年3月に一括して市町村に譲与されております。しかし、平成17年に譲与されなかった財産であっても法定外公共物としての機能がある財産については、市町村が追加して譲与を受けることができます。
 このように、追加譲与の対象となる財産の存在が明らかになった場合は、一括譲与の趣旨から市町村が管理すべきものですので、追加譲与を受けるよう、県としても市町村に働きかけてまいります。
 今、議員御指摘の寺谷池についてでございますが、これは、やはり和歌山市が適切に管理すべきと考えております。ただ、追加譲与については、いまだ申請がなされていないと聞いているため、引き続き、申請をするように和歌山市に働きかけてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 井出益弘君。
  〔井出益弘君、登壇〕
○井出益弘君 今の部長答弁、そない答弁せんとしようがないかわからんけど、やはりこういうものについて、市とか水利組合とか地元の自治会とか、いろんなところのリーダーシップをどこがとるかというたら、やっぱり県が強く働きかけてもらって、そしてとりあえずは、答弁を求めたら農林水産の答弁にというか、水路の詰まっとるところは、やはりどこと言わんと、どこと決まらんからずっと置いとくんじゃなくて、どこかが直すということをせんと、そして、後からあんたらが池の下へ家を建てたとかというようなこと、そんなけんか腰みたいな話にならんように、これはやっぱり行政で解決していただきたい。
 そしてまた、今、樋の、何か抜けなくて満タンになってあふれ越すような池とか、あるいは、今、あふれたやつが下でまた池になっとると。そこは、私も何回か見に行きました。怖いですよ、本当に。深くたまっとる。そこへ落ち込んでも大変やし。ですから、ぜひこれを早く、どこかで対応してほしいと。
 前、県が、工事するんだったら市町村に半分出すというような、切り込みを入れたりするような工事に半分出すというようなことを言うてくれたことがあったんですけど、それ自身、そしたらその半分はどこが出すんよと。皆、自分のとこ関係ないみたいに言うわけですよ。内務省が半分出すんか、水利組合が出すんかみたいな。ですから、これは、どうしてもそういうような状態のままで長く続くんであれば、県が出したってもらうぐらいの気持ちで、あるいは関係のとこで協議を煮詰めていただいてやっていただける──本来は市でやっていただくべきやと思うんですけどね。それは、一旦、要望して終わります。
 次に、京奈和自動車道の第二阪和国道への延伸に向けた県の取り組みについて質問させていただきます。
 京奈和自動車道の岩出根来インターチェンジまでと第二阪和国道の平井ランプまでが紀の国わかやま国体に合わせて開通するなど、着実に整備が進んできております。その結果、京奈和自動車道は京都、奈良、和歌山、第二阪和国道は大阪、和歌山の間の交通利便性が非常によくなりますが、京奈和自動車道から第二阪和国道へ、また第二阪和国道から京奈和自動車道へ車の大きな流れが起こることは明らかであります。
 この間をつなぐ西脇山口線の改良工事が進んでいるが、非常に交通量の多い道路であり、京奈和自動車道、第二阪和国道の開通により確実に停滞することが予測されているため、私が会長を務める議員連盟においても、国に、役員がもう2回行ってお願いしてまいりましたが、県のほうも動いてくれてると聞いておりますが、京奈和自動車道の第二阪和国道への延伸を要望してきたことが結果まで至っておりません。
 また、県においても、知事が国へ働きかけを行っていただいてるところであり、和歌山市においても、今年度から予算措置を行い、京奈和自動車道延伸を国へ働きかけるための調査を実施するなど、積極的に取り組んでいくと聞いております。
 さらに、京奈和自動車道や第二阪和国道が来年度開通する予定となっていることから、すぐにでも国による調査に着手してもらわなければならない時期に来ていると考えます。
 そこで、当該道路について、来年度から直轄事業に着手するとの確約を、来年度からですけど、今年度中にこの確約をとってほしい。知事に、やはり私らというたら議連の幹部にも失礼かわからんけど、私らは行くんですけども、知事は、やはり国のいろんな人脈なり、あるいは有能で、いろいろ企画して向こうへお願いするについても、私は、大変頭のいい知事やと思っております。日ごろもよく動いてくれてると。だけど、結果を、今年度中にオーケーで、この事業についてのことを何とかもらえるよう、あと知事が必死になってくれたら、これは物になるじゃないかなと思っとるんです。もちろん、我々も一緒にと言うたら、いつでも県も市も一緒に行きたいと。それで、あと、最後は知事やというところへ私は来てると思うんでね。
 やっぱり市は、当該の第二阪和がおりてきて、京奈和へ行くまでの西脇山口線が物すごい、もう今も停滞しとるんですよ。あそこのふじと台へ道ができてから、本当にもうあそこが、私が知ってる中では一番停滞しとる。それで、朝夕、私らもあそこつくったけど、あそこ通らないで堤防のほうへ行ったり、狭い私道のとこ通ったり、民間の道路のとこ通ったりしとる。ですから、やはり事故とか──開通すれば、来年度、大変な交通量になります。トレーラーと大型車も来ますからね。ぜひ早く着手なり事業についての確定がとれるように、これは知事にしっかりお願いして、今年度中にお願いしてほしいということをまず1問目で質問としてさしていただきます。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 一日も早くこの事業をやり、そして完成するということを目指して頑張っていきたいと思います。本年度中に確約がとれれば物すごくうれしいと、とりたいと思っとるわけでございます。
 そのように一生懸命頑張っておりますが、もうちょっと全体として申し上げますと、関西大環状道路を形成する京奈和自動車道と放射状道路である府県間道路を一体的に整備することが関西都市圏を拡大させ、関西経済の活性化を図る上で不可欠であるというふうな観点から、国にもそう言い、県としても重点課題として取り組んでいるところであります。
 こうした中、京奈和自動車道紀北西道路と第二阪和国道が、平成28年度に両方とも全線開通する見通しになってる。京奈和自動車道の第二阪和国道への延伸については、次のプロジェクトとして、これは絶対に最重要課題であると思っております。
 このため、県においても、平成25年6月の政府要望時から事業化の前段となる直轄道路調査の着手の要望を始めておりまして、今年度は、6月の政府要望時に私から国土交通副大臣を初め道路局長や県選出国会議員に対してお願いをし、また直近には、ごく最近ですが、7日に私が国土交通大臣と直接面会いたしまして県の考え方をお伝えして要望するなど、働きかけを行っているところでございます。
 しかしながら、本道路は──別に言いわけをしてるわけではありませんが──京奈和自動車道や近畿自動車道紀勢線のように全国の高規格幹線道路網の一部となっていない道路で、整備を検討する国の計画にいまだ位置づけが全くないものでございます。こういった計画の位置づけからまずやってくれと言って進めてもらわないといけないという難しさがあることも事実であります。(「次、淡路島まで」と呼ぶ者あり)そのとおりであり、さらに、この議場でも申し上げましたように、これができますと、さらに淡路島への展望も開ける、少し前へ進むというようなところだというふうに思っております。
 この問題を県の県土整備部長だった当時から私にも持ちかけ、あるいは本人も熱心に提唱していたのは尾花和歌山市長であります。で、和歌山市としても、非常に熱心に今取り組んでくれておりますので、県と市で力を合わせて広く必要性を訴えるとともに、県議会議員の皆様初め関係者の御協力を得ながら、早期に計画の具体化を図るための調査に着手できるよう、予算編成のタイミングなど効果的な時期に引き続き国に対して強く働きかけてまいりたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 井出益弘君。
  〔井出益弘君、登壇〕
○井出益弘君 ただいまの知事の京奈和自動車道、第二阪和への接続、延伸というのを、確かに私もやってくれてるのは知っとるけども、やってくれてるのは知っとるんですけども、結果が今年度中に出るか出やんかというのが今大きく──今年度中というたら、まただめやったら来年、再来年みたいなことになるんで、私も、知事にこれはぜひプレッシャーというか、無理に肩にかけてあれですけど。私は、これ、成るか成らんかは知事次第やと思うとって、知事がようせなんだらあれやけど。あんまり努力せなんだというか、とことんやらなんだんかなあというぐらいのつもりで我々見ておりますし、知事にまたいい結果を、オーケーと、何とかなったという結果を、年末、年明け、いい結果を待っております。ぜひ、我々もできることがあったらやらしていただきます。
 次に、3番目の農地転用の厳格化と地域の活性化についてであります。
 県は、8月に「守ります、まちと優良農地。」を発表し、郊外部での都市開発の抑制と農地転用の厳格化を打ち出しました。他方、和歌山市では市街化調整区域の開発基準の見直しが進められており、県と連携して郊外への宅地の拡散を防止するとともに、町なか移住と中心市街地を活性化する対策を進めようとしているようであります。
 しかしながら、市街化調整区域では、農地転用の厳格化により、高齢化等で農業を続けることが困難になり、後継者もいないため、そろそろ農地を売って、または農地を誰か借りてくれる人がおったら借りてもらって、ゆっくりしようかというか、老後を過ごそうかと思っていたような方々が、農地は売れなくなる、また借りてももらえなくなる、そして、郊外に工場などを設置しようと思っていた企業が工場等を設置できなくなるといった事態が起きてきております。これは、やはりある程度まとまった用地でないとそういう移転等が進まない、だけど、まとまった用地というとやはり何千坪というような──坪と言うたらあれかな、1500平米とか、3000平米とか、1万平米とか──そういうかなりの平米数になると思うんですけど、だけど、そういうところといったらもう農地しかない。
 そういう大変厳しい状態というか、この厳格化の発表後に計画が大変なことになっとると心配をしておる方がたくさんおりまして、企業の規模拡大や誘致を進めて地域を活性化するために、また農地を持つ皆さんの生活を守るために郊外での開発を進め、農地転用も許可していくということも考えるべきではないかと私は思うのであります。
 そこで、農地転用の厳格化と地域の活性化について、具体的にお伺いします。
 まず、1番目に、農地面積と農業従事者の状況について。
 まず、県全体と和歌山市の農地と農業従事者の状況について、農林水産部長にお伺いします。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 農地と農業従事者の状況についてでございますが、まず農地につきましては、農林水産統計によりますと、県全体では、昭和58年の4万3300ヘクタールから平成26年度の3万4200ヘクタールになり、30年間で21%減少しました。和歌山市では、同じく30年間で4350ヘクタールから2910ヘクタールになり、都市化が他の市町村よりも進んだことにより、県全体の減少率を上回る34%が減少しております。
 次に、農家戸数につきましては、農林業センサスによりますと、県全体では、昭和55年の5万7760戸から平成22年には3万3799戸になり、30年間で41%減少し、和歌山市においては、同じく30年間で7029戸から4093戸になり、減少率は、県全体とほぼ同じ42%となっています。
 しかし、平成22年の総農家数に占める専業農家の割合は、県全体では28%であるのに対し、和歌山市では19%であり、県全体よりも専業農家の割合が低い状況となっています。
○議長(前芝雅嗣君) 井出益弘君。
  〔井出益弘君、登壇〕
○井出益弘君 部長の答弁で、和歌山市内では、30年間では4350ヘクタールから2910ヘクタールになったというふうに今答弁されましたけど、確かに農地が減ったなと。
 だけど、私は、農地が減ったなあという反面、その農地に企業が工場を建てたり、いろんなことをしてる。あるいは、泉南とか、いろんなところへ買い物に行っとったのが、市内でもそういう店ができた。そういうようなところがたくさんあったり、集落の拠点拠点に、結構、その集落の人らが、あるいはそこ以外のところからでもそこへ買い物に行ったり、いろんなことをするような、泉南とかへ行ってしまうんじゃなくて、いい場所ができたんじゃないかなと。それは、和歌山市の場合は、特に市街化が進むことによって、私の子供なんかも、あるいは知り合いの者なんかも、その農地やったところへ建てた企業のところで、今、働かしてもらってる。だから、大阪へ働きに行かんでよかったなあと、企業が農地のところへ建ててくれたんでね。
 だから、私は、農地が減ったからこれ以上減らしたらあかんというようなことじゃなくて、やはり働く場所も考えて、農地も、和歌山市のようなところは、特に農地を守って農地で生活しようという人もおるけど、やっぱり市街化して、そういう仕事に、これからもずっと働けるような場所をつくるというようなことも考えていかなかったら、農地の市街化抑制ばかりでは、僕は、市民・県民の皆さんが大変不安に、あるいは農業の人が不安に思うというのは非常に感じます。それは、今どうこうと議論するんじゃなくて、後で最終的には知事に考えてもらうようなこととか、あるいは議会も含めてみんなで考えていかないかんと思います。
 次に、後継者不足の農地について。
 今回、いろんな相談にお見えになった団体なり個人で、「自分とこの田んぼをもう今も人につくってもうとるんよ。わしとこ、もう年寄って農機具も売ってしもうた」と。あるいは、「隣の人につくってもうとるけど、その人も農地の持ち主やなくてつくってくれとるみたいで、その人に頼んでずうっとやってもうとるんや」と。だけど、その人たちも、やはり「わしの代で、もう子供はサラリーマンになっちゃうんや。わし、もう90を過ぎたんや」と。それで、「もう早く何とかどっかで借りてくれるとこはないかなと思うとったら、ええ道ができたんで、何とかこの道の関係で借りに来てくれとるんや」と。ところが、それがなかなか、「借りに来てくれとるという話がだめになりそうや。道沿いの話はもうチャラになりそうや」と。
 ところが、ほんならと言うて、この間、県の幹部とも話をして、田んぼをつくりたい意欲的なところに貸したら、あるいは買うてもろうたらというような話があって、私も「うーん、まあそれも1つの」と思うたけど、借り賃ですね。本当に貸しても──というのは、実は私も、2反半──尺貫法のあれですけど──田舎に土地を持ってます。だけど、それ、おじさんが去年までつくってくれたけど、もう96歳でもうまあギブアップということで、隣の田んぼの人に、草ぼうぼうに生やしたら困るからつくってもらうと。そしたら、つくってもらうのに袋が3俵、つくり賃みたいにお礼に。だけど、あとはその人がつくった分を売ったらええと思うんですけどね。
 だけど、僕はまだ収入が今あるから。ですけど、もう議員年金制度もなくなったし、本当に将来、その農地ももちろんできないし、そうなると、その借り賃というても、そんなんもっと──専業農家の人で後継者のない人は、借り賃というても本当にちょっと──先ほど後ろで安いというお話が聞こえたんですけど、それでは生活できないわけですよ。たくさんの農地を借りてもうてつくってもろうても。それで、売るというたらぽっきり。そのときだけで収入が入っても、もうそれも安い。ですから、そういう後継者が少なくなってるということを大変私は危惧する、心配するもんです。
 特に和歌山市の農業従事者は、大変減っておる。今後も減少していくものと考えます。しかし、農地転用の厳格化によって、農地を売るとか貸し借りとかということが非常に制約を受けることになってきて、安い値段でやったら買うよとか借りるよとか、そんなことになる危惧というか、もう話がどんどん出とるわけですよ。ですから、農業後継者がなく、耕作するのに大変困ってるような農地をどうすればよいのか、農林水産部長にお伺いしたい。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 後継者のいない農地についてですが、和歌山市では、都市計画法により、市街化区域と市街化調整区域に線引きされており、市街化区域にあっては、届け出だけで農地転用が可能なため、農地以外の利用をされることが多いと思われます。一方、市街化調整区域にあっては、農業振興地域に指定されており、全ての農地が転用できないわけではございませんけども、農地転用にはさまざまな制限がかけられています。
 市の農業委員会では、農地の利用の集積、その他効率的な利用の促進に係る業務を行うこととなっています。その中で、そういった後継者のいない農地については、その農地が転用可能な農地かどうかという相談も含めて、利活用の相談、それと、もし転用ができない場合については、貸借や作業委託等のあっせんも行っているところです。
 また、県でも、平成26年度に市町や農業委員会等と連携して、担い手への農地集積を進める農地中間管理機構を設置し、農地を引き続き活用するため、貸借等を強力に推し進めてございます。
 これらにより、和歌山市においては、平成24年から平成26年の3年間に、農地の貸借が500件以上、約100ヘクタールございます。
 今後とも、市町村農業委員会と農地中間管理機構が連携を密にするとともに、引き続き農地の流動化に積極的に取り組んでまいりたいと考えてございます。
○議長(前芝雅嗣君) 井出益弘君。
  〔井出益弘君、登壇〕
○井出益弘君 部長の答弁、そんな答弁しかできやんのかなと思うけど。
 貸し借りとか、そんなんは、そういう、県がいろんなことを考えてくれた制度で、貸しとった土地を返してもらうときに安心して貸せると、返してもらえるというような制度になって、私も、そういうことはいいことやと思うけど、そんな悠長なことを言うておれる百姓の人もおれば、だけど、その人らもやっぱり「将来、あの土地、どうなんのやろうな」と言うてる、貸した人も。自分の先祖代々からの土地、本当に一生懸命、真っ黒けになって体の限り働いてきて農地を守ってきたのを、結局、自分の農地やけども貸して、永久に貸すみたいな。それでもやっぱりそういう農地の人らは、本当は、農地といっても、僕は大変大きな財産やと思う。だけど、財産価値が本当になくなるわけですよ、こんなことをすると。
 ですから、私は、政治としてそんなことをしてよいものか、あるいは何か考えてあげなかったらいかんのやないかなと。百姓の人が、そういう制度をつくって、「これからもうあなたら、後継者がなかったら貸すしかないですよ」と。売るんでも、もう本当に二束三文と、昔の言葉かわからんけど、安い値段で売るしか。そういう道を閉ざしてしまうことになるんでね。
 私は、この規制の厳格化という中でも、この間から──この件は、一旦、次の3番目に入るんですけども──自民党県議団でも、この間から勉強会というのをいろいろやっていただいて、この県が配ってきた「守ります、まちと優良農地。」という、27年の8月11日に記者発表したこの資料ですけど、この資料で、優良農地というか、大雨が降ったら池みたいになるような低水地の田んぼなんかは、直川のあたりなんかもそうやったんですけど、企業が来ない。雨が降ったとき池になってしまう。だけど、そういうような場所がかなりある、和歌山市内にも。
 そして、これを見ると(資料を示す)、第1種農地、第2種農地、第3種農地と、今度、分けるわけですね。10ヘクタール以上が第1種農地、これはもう優良事業の対象となった土地で、10ヘクタール以上の一団の土地というのは、原則、もうずっと農地以外転用不許可ですよ。原則不許可。ということは、まず許可しない。厳格にこれは不許可と。
 そうしたら、この1種農地の10ヘクタール以上というのは、低水地であるものとか、あるいは水路とか里道、あるいは私道のような小さい道とか川、そういうもので今まで区切っとったやつは、一旦、そこで何ヘクタール、道で3いったり水路で3いっとったら別に何ヘクタールという集団の土地と見とったやつが、この話からは、4車線道路の国道のようなとこを、いろんな農機具が通過とか、通り越していったりこっちへ戻ったりとかという、そういうようなことをしにくい4車線道路のようなところ以外は、あるいは大きな川、そんなところ以外は、今まで区切っとったその向こうも、その向こうもと、ずっと一連の土地とみなすと。
 そうしていったら、これに書いとるのは、今まではそうでなかった8ヘクタールと4ヘクタールと、道で分断しとったとか水路で分断しとった、これをもうそれとみなさない。大きな道でないというたら、ほとんどもうみなさないでいくと。4ヘクタールと、道の向こうに8ヘクタールあったのが12ヘクタール。前やったら、8ヘクタールですからせいぜい1種農地とならなかったのが、今度、そんな道は、皆、もうばっと集約的な計算をするということで、10ヘクタール以上とみなしたら第1種農地というて、今度、水路の向こうであったり道の向こうであったやつまで1種農地に入っていくわけですよ。僕は、これはなかなか厳しいなと。
 私も、「そんなことになるって私ら聞いてない」とか、「そんなこと、知事さん、せえへんやろ」とか、そんな意見も聞くわけですよ。なかなか、私も、そこまでせんなんもんかなと。だけど、僕は、そんなこともないよ、知事が計画して上げてきたら、物によってはいけるかわからんよみたいな、いけるとも言わん、いけるかわからんよみたいな。なかなかこの話は、皆、不安を持ってる。
 もともと農業の人らも、市の、あるいは国の方針で、いろいろ農業政策の、あるいは農地法とかの方針でずっと従ってきとるわけですよ。そうして、この場に及んで、農業を守ってきた人が、特に和歌山市が厳格にと。今までは大きな道、4車線がついたら、その端やったら建ててもええよということになっとったようなところが、もう工場しか建てられやんとか、何かいろんな制約を受けたら、永久にというてももう後継者はおらんのに、その田んぼで本当にどないしたらええんやろなという話が出とるわけですよ。
 まず、3番目の農地転用の厳格化に伴う企業誘致や地域活性化の諸問題についてということで挙げてるんですけども、特に和歌山市の郊外部では、流通業や工場等の企業による土地需要があります。そういったところについては、企業の立地により新たに雇用が生まれるなど、地域の活性化にもつながると考えます。農地転用を厳格化し、開発を制限することで、これらの企業の進出を妨げることにならないのか。
 あるいは、進出の企業の内容によっては、いろいろ経済的にも波及効果のあるような企業が来ます。例えば、瞬間冷凍するような機械を備えた倉庫というようなもんで、野菜も果物も魚も瞬間冷凍して真空パックにして、新鮮なものを保存もしとるし、必要なときに出荷できるというような──最近、インターネットでもいろんな配送センターみたいなもんが、巨大な配送センターみたいなもんができて、そこから全国へ発送したり世界へ発送しとるというような、そういうことを、会社の名前は言いませんけど、やっとるわけですよ。私らも買うとるわけですよ。ですから、そういうようなやつが。1つは、今度、岩出でできておるのは、それは僕も応援しとるんですけど、あれ、いいなと思うんやけど。市内にもそういうようなものを、本来、持ってこれるようにせんと、和歌山市でうっかりその話しとったら、だめになったときに責任問題になると。そやから、損害賠償みたいなことになるから、あんまり和歌山市は、県がどのようにということがさっぱりもういっこわかりにくいからということで言われてます。企業から相談がいろいろあったことに対しても、私もようわからん。市もようわからんのです。
 私は、本当に、この間からこの話が、県議会でもこんなにまでみんな取り上げて知事にそういう話を善処してほしいと言っとるが、なかなか、聞こえてくるのは、やっぱり農地の転用抑制、厳格にとか抑制とかというような言葉しか伝わってこないんで。
 それは、やっぱり働くとことか、あるいは農業の人をあとどうするというようなこともセットで提言するべきやと思うんで。やはり厳しい制約のようなことを、不安を与えるだけの発表になってしもうたというのは、あるいは、これからもその不安を与えるのをどんどん推進していくというんでは困ると思うんで。
 僕は、だけど、知事はそんなことを何で言うたんか、何でこんなことになったんかなと。きのうも、随分、県議会へ相談せんとというか、知らなんだのは我々県会議員やというふうなことで、市長とか市町村長なりいろんなところへずっと知事は先に説明とか記者発表とかというようなことがあったということを非常にお怒りになっとった議員も。あるいは我々も怒っとったんですけど。だけど、やはり知事にまず──農業の人らも生きていかなあかんねやから、あるいは市民も、なるべくやったら和歌山市内で就職したいとか、買い物も和歌山市内でしたいとか、そんなことも含めて、1回、もう最終の質問のあれですんで、今までの同僚・先輩議員が言った中の意見なんかも踏まえて、ちょっと一遍、知事に答弁をもらいたい。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御質問がどんどんと何か拡大してるという感じがしまして、一番初めの──結構なんでございますが──企業誘致とか地域活性化の諸問題と矛盾しないかという話から始めたいと思っております。
 郊外部への企業誘致を進めて地域を活性化させるためには農地の転用も必要ではないかという議員の御指摘については、私もそのとおりだと思います。問題は、それをどういう形で提供していくかということだと思っておるんです。
 今般発表した内容は、一般的には、農地の転用等を厳格化して郊外開発を抑制するということなんでございますけれども、例えば、今度できる南インターの周辺なんていうのは便利なとこになるわけですから、そういうところにゾーニングをして、それで、もうこの一帯は流通施設とか工場とかを誘致しようというようなゾーニングをするということは、むしろ望ましいんじゃないかと思ってるんです。それは、和歌山市がそういうことを都市計画上の権限で──我々も協力しますけども──やっていかないといけないというふうに思います。
 そういうときには、今度は、農地転用については県の権限がかなり強いんです。これも両方まじっておりますけども。したがいまして、そういうゾーニングについて、そうだなあと我々も納得すれば、農地の転用とかについても、運用をそのように合わせていくし、それから、インフラ整備などについても協力をしていこうと、こんなふうに思ってるところなんです。
 しかしながら、次に、じゃ、どこでもいいからどんどんどんどん勝手に売っていただいてもいいことにしようよと、農地を潰して、それで、それぞれもう自由自在にいろんなところに工場とか建ててもいいということにしようよと、こういう考え方もあると思うんです。
 ところが、それをやりますと、この問題だけ考えても、実は一団の農地、一団の土地がなかなか出にくいという問題が起こってまいります。ちっちゃい企業の立地の場合は、それでもいいやということになるんですけども、我々で従来から狙ってきたようなかなり大きな企業についていえば、私も、この問題については県で一番熱心に取り組んだ1人だと思いますので、自分の経験として申し上げますと、一団の土地が出せないところには大規模な投資は来ないということなんです。したがって、どこかで既に一団の土地のありそうな、市としてもこの辺はいいなと、こう考えてるところにぽこんと新しくうちが建ってたりすると、あるいは1つの工場が建ってたりすると、次にそこを全体として使いたいというところもなかなか出ないというような問題もありまして、したがって、やっぱりゾーニングという問題はどうしても必要になってくるんじゃないかなあ。
 雇用創出とか、企業立地とか、地域活性化につながる企業の問題を考える上でも、まち全体の中で、これまで御説明したように、一般的には農地の転用というのはそんなに簡単にはできないようにして、かつ計画的に運用するというほうが結果的にはいいんではないかというふうに私は思ってるんです。
 一方で、こうした政策を進めていく中で、議員御指摘のとおり、農業をやめ、農地を売却したいと考えている方々の生活をどうしてくれるんやという問題があって、そこは大変大事な問題であるとともに、今の政策を進めていく上では、どうしてもそういう方々には不快な思いをさせるなあと、生活設計を邪魔するなあというところはあると思っています。で、それをどう考えるかということを(「時間、ちょっとなるべく」と呼ぶ者あり)はい。それをどう考えてるかということもありますんでございますけれども、そういうことも大変だと思いますので、そういう方々に寄り添っておられる、代弁しておられる井出議員の御発言にも私は敬意を持っています。
 ただ、そちらを立ててどんどんやっていくと、今度はそれによって不利益をこうむる人とか、まち全体の財政などが自分の身に降りかかってきて、これは大変だという人がいっぱい出てきて、これはこれでまた、どうしてこんなことをやらしたんだというような議論がまた出てこないとも限らないわけでございます。
 したがって、まあちょっといろいろ悩ましい問題なんですけれども、何といいますか、全体としては厳しくするけれども、事情をいろいろ勘案して、ゾーニングをきちんとやっていくというやり方をやったほうがいいんではないかというふうに思ってるわけでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 井出益弘君。
  〔井出益弘君、登壇〕
○井出益弘君 今、知事の答弁の中で、あっちもこっちも建てたいところへ建てさしたらあかんという、そんなことをしとったらというようなこと、私はそういうことは全然言うてないし、まとまった土地でないとやっぱり企業も来れないし、都市整備、都市計画のマスタープランというようなことも、僕は十分理解して、まちづくりというのもわかってますよ。ですから、そういうことを僕はいっこも言うてないし、考えてもない。
 だけど、こういう規制のような、大変影響を与えるような規制を厳しくやっていくというんやったら、その関係者には何か我慢してもらうか、気分を悪うさすかわからんけどみたいな話では済まんですよ、本当に。
 僕は、この都市計画とか、いろいろ、そういうことから、和歌山市とか、そんなところにも十分検討さして、そしてマスタープランを決めて──用途変更なんかも何年かに1回ですよ、用途を変えるのも。区域のいろんな、ここへ建物はどんなもんを建ててええとか悪いとか、市街化区域とか市街化調整区域を外すとか編入するとかというの、何年かにというか──あれ、何年やったかな、僕も宅建の試験勉強のとき覚えとったんやけど、4年か5年か、そんなんに1回しか来ない。
 今、そやから、こんなことを言うたら、次、そういうときまで待たなんだらゾーニングの話なんかもできないですよ。そういうことを勝手にできない。そういう都市計画の変更とか用途の変更とか、調整区域とか市街化区域の変更とかというのは何年かに1回しかないという、それ、農林水産部長は知ってるんかしらんけど、通告してないからあれやけど。そういうことを僕はもうちょっと、市町村の意向を大切にしてあげて、そして決めるのも、もう今決めるとかいうんじゃなくて、猶予をちょっと、いろんな状況も──今決められるものは決めてもらったらいい、だけど、もうちょっと決めるんを待ってほしいとかね。
 この間までは、12月議会で、和歌山市の場合、市議会に出して、そして、その議案として出したやつも私らも見たけど、「ええっ」というのが、もう最近見て「ええっ」やと。そして、それが3月末までで終わりで、4月1日からはもう厳格にこのとおりですと。それはなかなかね。
 そしたら、今、借りてくれるとか、何かいろんなことを言うとった人らも、もう皆、これ、話を進めたら損害賠償の問題になりますよみたいになってるわけですよ。それで、私は、やっぱりそういうふうなことはもうちょっと──どっちが先かと言うたら、ばあんと規制よりも、規制というても、農地法とかいろんなことでというんやったらあれやけど、そうでもなくて、知事の権限で調整できるものはやはり柔軟な対応、あるいは市街化ということもやっぱり必要やということも考えて対応したってもらわんとあかんと。
 そして、最終的に、僕は、この間からこの議会──けさの午前中の中村裕一議員の質問を聞いてても、何かすり合わせというか、事前に通告しとる意味がちゃんとかみ合うてないなあと。というのは、私も、課長とか、そういう方と通告内容を話して、話の答弁が──答弁というんか、答弁も、知事はこんなことは言わんやろうというようなことを平気で言うわけですよ。平気でというか、逃げの一手というか。ですから、ちょっと要点を──僕、本当に県議会議員や市長が言っている内容が知事との意思疎通に欠けてるのか、全くそれとも話にならないのか、今回の県議会では大変それを強く感じた。
 県の幹部も、知事に不本意な意見かもと思ったら、知事に我々の論点を伝えないことが多くなってるんではないかと危惧します。それは、僕はほんまに危惧する。
 県民の皆さんの代表、代弁者として発言するに当たり、「議会とは両輪のごとく」と言っている知事に異論を提言するときは、特に我々県政与党的な立場の議員にとっては、本当に気を使って発言してますよ、ほんまに。だけど、きのう、浅井修一郎議員の話ね、本当に県民の声を精いっぱい伝えようとして、僕は、勇気というか、ほんまに信念を持った発言やと思って、本当に私ら皆の──だけど、そのときの答弁も、あれは農林水産部長の答弁やったか、もうちょっと、そういう県民の皆さんとか関係の皆さんには、やっぱり、いや、このとおりでええんやと思うとるんじゃないと思うんよ。ないというか、やっぱり申しわけないと、知事も今ちょっと、気分が悪いかわからんけども、ぐらいは言うたけど、そんなこと、あんたら、つけ加えた心のある答弁をしなさいよ。浅井議員に失礼やで、あんな答弁、本当に。この議場でも、議員に対して何と思うてんのかなと思うて、知事の前でそんなん言うたら知事が喜ぶんかなと、そんなもんじゃないと思うよ。よく言ったということにはならんと思うよ。
 ですから、私も、やはり県議会の意見というのも、言いにくいことを言うようなというか、聞きたくないことを言う人こそ信頼できる提言やと思うて、信頼できるいろんな県民の代表やと思うて、そういう心を持って対応してほしいと。
 それで、今後も知事がどのようないろんな取り組みをされるかというのも──和歌山市の農業従事者とか関係者からいろんな嘆願的な声が出てきとる。その一端を我々は言うたんですけど。知事にとってもやっぱりそれは御苦労かしらんけど、十分内容を理解してもらって、そしてまた、担当の幹部ともできるだけいろいろ──本来なら知事は県民の親ですよ。県民は、知事に対して抵抗もできない。親ですよ。選んだ以上は親、選んだ子供たち、県民が知事に対して、こういうような話のときは、やはり助け船的な指導をもって精いっぱいの解決に尽力をしていただくように強くお願いして、要望といたします。
 以上。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、井出益弘君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第152号から議案第186号までは所管の常任委員会に付託いたします。
 次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。12月14日は都合により、15日及び16日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 御異議なしと認めます。よって、12月14日から16日までは休会とすることに決定いたしました。
 次会は、12月17日午後1時より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後3時0分散会

このページの先頭へ