平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(山下直也議員の質疑及び一般質問)


平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(山下直也議員の質疑及び一般質問)


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正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 34番山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕(拍手)
○山下直也君 おはようございます。
 ただいま議長のお許しをいただきましたので、久しぶりの登壇であります。25回目の質問になると思いますが、今回は結構ボリュームがありまして、かなり時間を要しますが、しばらくの間、御協力をいただきますようによろしくお願い申し上げたいと思います。
 それでは、質問に入ります。
 慌ただしく動くまちの中で美しく輝く和歌山駅前の、さらにはけやき大通りのイルミネーションの光を見ますと、ことしも年の瀬が迫ってきたことを実感する、そういうきょうこのごろであります。ことしの1年を振り返ってみて、本県における一番大きな出来事、うれしかった出来事の1つといえば、やはり第70回国民体育大会「紀の国わかやま国体」、そして第15回全国障害者スポーツ大会「紀の国わかやま大会」の開催であったと思います。
 本県で44年ぶり2回目の開催となった紀の国わかやま国体は、県内各地で熱戦が展開され、本県選手団は、日ごろの練習の成果を存分に発揮し、見事、男女総合優勝を果たし、天皇杯を獲得いたしました。また、本県で初めて開催となった紀の国わかやま大会は、本県から延べ281名の選手が出場し、金メダル56個、銀メダル33個、銅メダル38個という輝かしい成績をおさめられました。
 私自身も、先輩また同僚議員とともに、大会役員の1人として両大会の開会式・閉会式に参加させていただくとともに、水泳、アーチェリー、バレーボール、陸上等の競技を観戦さしていただきました。県民の皆さんが披露された見事な式典前の演技、和歌山県の大選手団が堂々と行進する光景、「和歌山、頑張れ」という大声援に包まれた競技会場、そして秋篠宮殿下から天皇杯を授与される吉田隆起選手の姿、障害者の選手たちが全力を振り絞って自分の限界に挑む姿など、今思い出しても、どれも胸が熱くなる場面ばかりでありました。両大会を通じて、多くの方々と夢や希望、そして感動を分かち合うことができたと思います。
 思い起こせば、本県での両大会の開催に向けて動き出したのは、仁坂知事が就任された直後の平成19年1月の臨時議会における国体招致議決からであります。当時は、財政事情も厳しく、一部には国体の開催を危ぶむ声もあった中で、知事の決断、英断によって本県での開催が決まったわけでありますから、両大会にかける知事の意気込みは並々ならぬものであったと思いますが、今、両大会を振り返って知事はどのような感想を持たれているのか、お伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの山下直也君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 紀の国わかやま国体・紀の国わかやま大会は、好天にも恵まれ、県内各地で連日熱戦が繰り広げられ、大きな感動を残して閉幕いたしました。来賓の方々からすばらしい大会だったとの称賛の声が多数寄せられるなど、参加された方の心に残るすばらしい大会にすることができたと思っております。
 まず、私の所感でございますが、1点目に、「躍動と歓喜、そして絆」のスローガンのごとく、両大会に出場された選手がそれこそ躍動し、国体では悲願の男女総合優勝、大会では史上最多の127個のメダル獲得と、ともに立派な成績を残してくれたことで、これは、全力で戦ってくれた選手はもとより、寝食を忘れて選手強化に取り組んでこられた競技団体の皆さん、あるいは監督、コーチ、さらには選手たちをサポートしてくださったチームドクターとかトレーナーとか、関係者の長年にわたる御努力に敬意を表するとともに、心から感謝を申し上げたいと思っております。
 2点目は、国体を契機に、県内各地の競技施設ができましたし、県内の主要道路が格段に整備されました。おもてなしトイレなどもどんどんできてまいりましたし、そういうことで本県の発展の礎となるインフラが整ったことで、スポーツ振興はもとより、観光振興や企業誘致などの面で今後の発展に寄与すると思っております。
 3点目は、両大会を成功させるために多くの県民の皆様が参加、協力し、みんなで力を合わせたということで、特に天皇皇后両陛下にごらんいただいた国体の総合開会式の式典前演技では、フィールドで演技した方、これもすばらしかったんですが、合唱や楽器演奏でスタンドからも出演していただいて、全体としてすばらしい演技を披露してくれたおかげで、いつまでも心に残る感動的な式典となりました。
 また、たくさんの県民の御参加があったボランティアの皆さんが会場で来場者を温かくお迎えするとともに、花いっぱい運動やクリーンアップ運動、笑顔で声かけ運動など、まちでも温かく接してくれて、まさに県民総参加で心のこもった温かいおもてなしができたことが、和歌山の大会がよかったと言われる要因の1つだと思っております。
 半世紀に1度の国体・大会を大成功に導けたことについて、両大会の選手、各競技の関係者、ボランティアの皆様並びに全ての関係者、県民の皆様に改めて感謝を申し上げたいと思いますし、県議会の議員の方々におかれましても、お支えいただきまして本当にありがとうございました。
 そして、県民の皆様に自信と誇りを持っていただくことができて、和歌山の名を全国にとどろかせることができたということは大変意義があったと考えますので、今後は、これをうまいこと利用して、県民総参加で取り組んだこの盛り上がりをこれからの県勢発展につなげていきたい、そんなふうに思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 次の質問に移ります。
 さて、紀の国わかやま国体・紀の国わかやま大会の競技会場となったスポーツ施設が各地で整備されており、今後、これらの施設の有効活用を図り、あわせて本県のスポーツ振興の推進に取り組んでいただけるものと期待申し上げるところであります。
 5年後の2020年には、東京都においてオリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。先月、国は、両大会を推進していくための基本的な方針として、国民総参加による夢と希望を分かち合う大会にしていくことを決めました。私自身、先ほど申し上げましたとおり、紀の国わかやま国体・紀の国わかやま大会において多くの方々と夢や希望、そして感動を分かち合うことができました。スポーツには感動があります。感動は、人を元気にする、地域を元気にする大きな力があると思います。和歌山県も、さまざまな方法で、ぜひ2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会に参加していくべきだと考えます。
 前年には、ラグビーワールドカップ2019が日本各地で開催されます。そして、翌年には、私も大会役員をさしていただいております関西ワールドマスターズゲームズがここ関西で開催されますが、マスターズ陸上発祥の地と言われている和歌山において、いわゆる生涯スポーツという観点から考えてみても、1つでも多くの競技を実施していただきたいと思います。
 これらスポーツの祭典の開催に先立ち、県においても準備を進めておられるようでありますが、その進捗状況について知事にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 紀の国わかやま国体・紀の国わかやま大会のために整備した競技施設の有効活用を図るためにも、また、両大会によって高まった県民のスポーツに対する関心や期待に応えるためにも、ラグビーワールドカップ2019や2020東京オリンピック・パラリンピック競技大会の事前キャンプ誘致は、ぜひ実現させたいと思っております。
 具体的な活動としては、8月に北京世界陸上に出場するため本県で事前キャンプを行ったオーストラリアナショナルチームとは、現在、2020東京オリンピック競技大会の事前キャンプに向けて最終段階の協議をしております。また、10月には、トルコのオリンピック委員会やレスリング協会を訪問いたしまして、事前キャンプにおける本県のすぐれたトレーニング環境をアピールしてまいりました。
 関西ワールドマスターズゲームズに関しましては、2021年の開催までに、和歌山県においては、2017年に全日本マスターズ陸上競技選手権大会、2019年にはねんりんピック──これは全国健康福祉祭というのが正式な名前なんですが、これが本県で開催される予定になっております。これを、いわゆる──いわゆるというか、ホップ・ステップ・ジャンプで例えまして生涯スポーツの大会を盛り上げていきたいと思いますので、多くの県民の皆さんに参加をしていただきたいと思います。
 このマスターズゲームズ系というのは、全部そうではありませんが、比較的、予選の縛りが緩いものでございます。ワールドマスターズゲームズなどは、世界からちょっとお年を召した選手が家族あるいはお孫さんなんかも引き連れて、結構、観光半分で来られるというようなことがよく言われております。そういうことで、こういうものをうまいこと、利用してと言うと言葉に少し行き過ぎがございますが、これを機会に、そういう和歌山県の県勢発展も図っていきたいと思います。
 そのように、ナショナルチーム等のキャンプ地誘致や国際的な競技大会などの開催によって生涯スポーツ愛好の機運を盛り上げて、県内でも、誰もがスポーツを楽しみ、元気で活力ある生活ができるようにしてまいりたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 国体とともに、もう1つ大きな出来事、注目すべき出来事がありました。去る12月5日、ニューヨーク時間12月4日ということでございますが、国連総会第2委員会において、毎年11月5日を世界津波の日とする決議案が採択されました。仁坂知事もすぐに今回の採択を非常に喜ばしく思っている旨のコメントを出されておりますし、この世界津波の日を提唱されました二階俊博自由民主党総務会長も和歌山市内で記者会見を行い、「地球規模で津波からの犠牲を減らすよう取り組みたい」と表明されました。また、安倍総理大臣からも歓迎のメッセージが出されるなど、日本中で大きな話題となりました。
 皆さん御承知のとおり、11月5日という日は、1854年の安政南海地震による津波が本県を襲った際、本県の偉人であります濱口梧陵翁が貴重な稲わらに火をつけて村人を安全な場所に導き命を救ったという「稲むらの火」の故事にちなんだ日であります。我が国では、この11月5日は津波対策の推進に関する法律により津波防災の日として定められており、この趣旨にふさわしい行事を実施するよう努めることとされております。南海トラフ地震への対策を重点的に進めている和歌山県においても、県や市町村で、避難訓練を初めとした防災訓練の実施や有識者を招いた講演会など、各種の行事を実施していると聞いております。
 そこで、今回の国連総会第2委員会において世界津波の日決議案が採択されたことについて、知事の所感をお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 世界津波の日が国連総会第2委員会で採択されましたが、これほど和歌山県にとって名誉なことはないと私は思っております。大変喜んでおります。
 津波の恐ろしさ、それに対する対策の重要性というのは、あのアチェの物すごい被害、それからその後の東日本大震災、それからチリでも同じようなことが起こっておりますが、そういうことを考えますと、世界にとって物すごく大変な重要な問題だというふうに思うわけですが、その津波が、世界津波の日として、毎年11月5日、濱口梧陵さんによる「稲むらの火」と、私財を投じて広村堤防を築堤するということによって村の復旧・復興につなげたということにちなんでつけられたということは、本当にありがたいことだというか、すばらしいことだと思っております。
 本県選出の二階代議士が日本の津波の日、津波防災の日──これは法律によるところの指定なんですが、この法律の制定にもかかわられましたが、これをさらに進めて第3回国連世界防災会議で世界の方に向かって提唱された、そこから始まっているわけでございます。その後、政府・与党一体となって努力をして、今回の採択につながったものと考えております。
 本県も、当然のことながら制定の趣旨に賛同し、例えば私も、トルコで根回しをしたり、来県された海外要人などに対して、これはぜひ頼むということで津波防災の日の意義を説明しておりまして、今回の採択を非常に喜ばしく思っております。
 世界津波の日の制定によりまして濱口梧陵さんの功績が世界中に広まるということは、本県にとってもちろん非常に名誉なことなんですが、一方、観光等にも好影響があるものだというふうに思っております。和歌山の名前が広がりますし、その本拠地広川町の名前とか、あるいは稲むらの火の館の存在とか、そういうものがこれをきっかけにより人々の頭に浮かんでくるようになると確信しておりますし、そのようにしていかないといけないということだと思います。
 国連総会そのものについても近く決議案が採択されるものと確信しておりまして、世界津波の日制定が津波に対する国際社会の意識を高め、津波による犠牲者をなくすものとなることを期待するとともに、今申し上げましたように、世界に向けてそれを発信していく所存でございます。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 ただいま知事から答弁をいただきました。
 私も、きょう、実は、県の方にいただいたこのバッジをつけてまいりました。今回の採択により、「稲むらの火」の故事による本県の偉人の功績が世界中に広まる契機となるとともに、これにより世界中で防災対策が進み、津波による犠牲者を減らしていくものと期待してやみません。
 次に、教育長にお伺いいたします。
 二階総務会長は、「世界津波の日制定の意義を1人でも多くの人に知ってもらい、世界の皆さんと一緒に自然災害に対抗しないといけない」と述べるとともに、小学校から高校まで徹底した津波防災教育を行うべきだとして、文部科学大臣などに関係教育の強化を求める考えを示されました。
 今後、本県の防災教育にどのように取り組んでいかれるのでしょうか。教育長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 本県では、中学生道徳読み物資料集「希望へのかけはし」の中に濱口梧陵翁の逸話を題材にした教材を掲載し、その偉業をこれまでも学習してきてございます。このたびの世界津波の日の制定に関する決議案の委員会採択を受け、この濱口梧陵翁の逸話や、世界津波の日、津波防災の日の意義を全ての児童生徒に改めてしっかりと伝えていくとともに、和歌山から発信していくことが大切であると考えてございます。
 これまでも、小中学生については、「防災教育指導の手引き」を活用した防災学習を実施するとともに、全ての県立学校において高校生防災スクールを実施し、実践的な訓練を行うなど、津波に対する防災教育に取り組んでまいりました。
 来年度以降は、この11月5日に合わせ、学校と地域が連携した避難訓練を実施するなど、防災学習の徹底を図ることにより、まず逃げること、自分の命は自分で守るという意識を持ち、行動することができる子供たちを育て、1人の犠牲者も出さない防災教育をこれからまた改めて推進してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 次の質問に移ります。
 去る11月26日に第3回一億総活躍国民会議が開催され、一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策が取りまとめられました。この国民会議の席上で、安倍総理は、「これまでの3本の矢の政策によって経済の好循環をつくり出してきましたが、アベノミクスの第2ステージにおいては、子育てや社会保障の基盤を強化し、それがさらに経済を強くするという『成長と分配の好循環』を構築していきたい。デフレ脱却が見えてきた今こそ、少子高齢化という構造的な問題の解決に向けて動き出すべきときで、政府としてこの緊急対策を、内閣の総力を挙げ、直ちに実行に移していく」と述べられました。
 緊急対策では、希望出生率1.8の実現、介護離職ゼロという2つの目的達成に直結する対策に重点的に取り組むこととされています。少子高齢化が全国平均より早いペースで進行している本県にとっては、この緊急対策の流れをつかみ、積極的な対策を講じる必要があるのではないでしょうか。緊急対策のうち、結婚、妊娠から子育てに至る各段階の負担、悩み、不安を切れ目なく解消するための支援として、不妊で悩む夫婦の妊娠、出産の希望を実現するため、不妊治療への助成を拡充することについてが特に緊急対策を必要としています。
 子供が欲しくてもなかなかできない、こうした御夫婦の悩みをよく相談されます。不妊に悩み、不妊についての検査や治療を受けている夫婦は増加しております。平成22年の国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によりますと、不妊に悩む夫婦の割合は、平成17年の25.8%から平成22年には31.1%に上昇、不妊検査や治療を受けた割合は13.4%から16.4%に上昇しており、6組に1組の夫婦が受診している状況であります。
 しかし、不妊に係る治療は、保険適用外の治療が多く高額で、治療されている方にとって非常に重い経済的負担となっております。体外受精や顕微授精などの治療を行う場合は保険適用外となるため、1回につき30万円から50万円程度かかります。現行の助成制度では、人工授精などの一般不妊治療が1年度当たり上限3万円、体外受精や顕微授精などの特定不妊治療が1回につき上限15万円の助成を受けることができます。ただし、所得制限があり、夫婦の前年度所得が730万円以上の場合は助成を受けることができません。不妊治療は、治療回数を重ねると高額な費用負担を伴い、不妊に悩む夫婦にとっては大きな経済的負担となっています。そのため、経済的理由により治療を諦めざるを得ないケースもあると聞いております。
 また、県内には体外受精や顕微授精の治療を行う施設が、和歌山市に3カ所、橋本市に1カ所と、合計4カ所であります。そのため、県外に治療に行かれている方も多いと聞いており、交通費など治療に係る費用以外の経済的負担の問題も大きいと言えます。
 本県では、不妊治療助成の利用者がふえており、平成22年度では一般不妊治療が392件、特定不妊治療が492件であったものが、平成26年度では一般不妊治療が522件、特定不妊治療が737件と大幅に増加しております。
 不妊治療を受ける女性には、精神的、肉体的に大きな負担がかかりますが、それでも子供が欲しいと願う御夫婦はたくさんおられます。せめて治療費の負担が軽ければ、不妊治療を続けるための後押しになるのではないかと考えます。出産を希望する方に対して不妊治療の精神的、経済的な負担の軽減を図り、その希望をかなえられるよう支援することは、重要な少子化対策として取り組むべき課題であると考えます。
 また、一方、晩婚化が進んでおり、それに伴い子供を産む年齢が高くなっており、平成23年には第1子を産む年齢が30歳を超え、さらに年齢が上がってきております。晩婚化により不妊で悩む人の増加、晩産化による妊娠、出産のリスクが増加しています。女性が高齢になるほど治療の成功率が下がり、妊娠、出産のリスクが上昇することなど、男女ともに妊娠、出産に適した年齢があると聞いております。また、妊娠、出産に関する男女それぞれの体のことについても、正しい知識の普及啓発を若い世代を対象に行うことが重要であると考えております。
 そこで、県として不妊治療についてどのように取り組まれているのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 県においては、不妊に悩む夫婦への精神面での支援対策として、保健所に不妊専門相談窓口を設置し、専門医師による面接相談や保健師等による電話・メール相談を実施しております。また、治療に係る経済面での支援対策として、不妊検査や人工授精などを対象とする一般不妊治療費助成を県単独で実施し、さらに、体外受精や顕微授精を対象とした国制度の特定不妊治療費助成を実施しております。
 しかしながら、議員御指摘のとおり、体外受精や顕微授精については、この特定不妊治療費助成の制度を利用しても個人の自己負担額が大きいことから、子供を切望する夫婦が経済的理由により治療を諦めることがないよう、国に対して不妊治療の医療保険適用と助成限度額の拡充を提案しているところです。
 次に、若い世代に対する妊娠、出産に関する知識の啓発についてですが、若い世代がライフプランの中で妊娠、出産に関する正しい知識を得ることは、人生設計を考える上でも大変重要であります。このため、これまで保健所の出前講座を通じて、高校生に対し、妊娠と年齢の関係、喫煙や過度の飲酒の影響など、妊娠、出産の正しい知識の普及に努めているところですが、今後は、成人式等においても冊子を配布するなど、若い世代に啓発してまいります。
 県としましては、今後も引き続き、子供を産み育てることを切望する夫婦が安心して治療を続けられるよう、経済面、精神面の両面から総合的に支援してまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 次の質問に移ります。
 一億総活躍社会実現のためには、個々人が多様な能力を発揮することが重要であります。女性が働きやすい環境づくりが今後一層進んでいく中、フルタイムで働く女性や共働きの家庭がふえていくことは必然であると考えられます。
 共働き家庭の子育てにおいては、仕事の都合や急病等で一時的に子供を預かってほしい状況になることも多いと思われます。また、保育所のお迎えの時間に間に合わない場合の延長保育や学校の就業時間後も子供を見守ってくれる学童保育、休日も子供を預かってくれる休日保育なども、これからの子育ての大きな支えになることでありましょう。
 これまで、少子化や子育ての問題は、高齢化問題と比較して大きな社会問題として取り扱われてこなかったような気がいたしますが、一億総活躍社会を目指してこれからの少子化問題を考えたとき、子育て支援は今や大きな社会基盤の1つであると言えるのではないでしょうか。子育ては単に若い世代の問題だけではなく、社会全体で子育てを見守る、あるいは支えるべき時代ではないかと考えます。
 今年度からスタートした子ども・子育て新制度では、幼児教育、保育、子育て支援の質、量の拡充を図る費用を社会全体で負担するべく、消費税率の引き上げ分から7000億が確保されたところでもあります。和歌山県では、一億総活躍社会を実現できるような仕事と子育てが両立できる子育て支援が十分整っているのか、課題があるとすれば、せっかくの財源を活用し、今後どのように子育て施設を充実させようとしているのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 誰もが活躍できる社会を目指し、多様な働き方を支えるためには、これまで以上に仕事と子育てを両立できる仕組みの整備が重要です。県では、今年度から始まった子ども・子育て新制度を活用しながら、各市町村が実施主体となり子育て施策の充実に取り組んでいるところでありますが、現状では、全ての市町村が地域のニーズに対応する多種多様な子育て施策を全て実施できているとは言えないのが現状です。
 保育の需要に見合った定員の確保は当然のことながら、多様な就労形態に対応するための延長保育や休日保育を拡充することも重要です。また、放課後の安全な居場所として、希望する小学生全てが放課後児童クラブを利用できる状況にない現状を解消することも必要です。さらに、保護者にかわって保育所等の送迎を行うなど、援助を受けることを希望する方と援助を行うことを希望する方との相互援助活動であるファミリー・サポート・センター事業も、県内全域では実施できていない現状にあります。
 県としましては、和歌山県全体の子育て支援策をより一層充実させ、子育て中の誰もが必要な支援を活用することができるよう、今年度から5カ年の計画として策定した紀州っ子健やかプランにおける目標の早期達成を目指し、さまざまな国の補助メニューを活用しながら、直接の実施主体である市町村に対して、より一層積極的に働きかけを行ってまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 ただいま、部長から答弁をいただきました。
 県内どこに住んでいても安心して子育ても仕事も両立ができ、皆が活躍できる和歌山県であってほしい。そうするためには、市町村のばらつきがないよう、しっかり県が指導していっていただきたいということを、福祉保健部長に改めて要望さしていただきたいと思います。
 実は、もう随分前のことになりますが、私自身のことを考えますと、子育てに関しては反省すべきところは大であります。今回の質問をきっかけに、子育て支援策の充実を図るだけでなく、家庭内や会社内などにおける皆の意識改革が非常に大事だということに気づかされました。これからの少子化社会に向けては、社会全体の共通理解として子育てに関する意識改革を図っていかなくてはならないと考えており、そのための努力は今からでも惜しまないというつもりでおりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
 次の質問に移ります。
 先ほどから申し上げている一億総活躍社会とは、「一人ひとりが、個性と多様性を尊重され、家庭で、地域で、また職場において、それぞれの希望がかない、それぞれの能力が発揮でき、それぞれが生きがいを感じることができる社会」と定義されています。それぞれの能力が発揮できることにより、新たな着想によるイノベーションの創出が促され、経済成長等の好循環が生まれます。
 一方で、それぞれの多様な能力を引き出すためには教育の充実を図ることが重要であると考えます。本年8月25日に文部科学省が公表した平成27年度の全国学力・学習状況調査、いわゆる全国学力テストで、和歌山県内の公立小学校の正答率は、小学算数Aを除いて全国平均以下でしたが、昨年度と比較すると全国平均との差が小さくなり、改善傾向が見受けられます。
 県教育委員会では、昨年度の全国学力テスト結果を受けて、昨年、学力向上対策短期計画を発表、学力向上推進プランを作成して取り組んでこられました。また、和歌山県学力向上対策中期計画を策定し、平成27年度及び平成28年度において、県教育委員会、市町村教育委員会及び小中学校が一体となって、学校の構えを整える、質の高い授業づくりを組織的に進める、力のある授業をつくる、学力調査を生かし切る、学びのセーフティーネットを充実する、県教育委員会として責任ある体制を整えると、この6つの視点から学力向上のための取り組みを進めています。
 中期計画では、成果指標を平成29年度の全国学力テストの調査結果とし、小中学校全ての調査で県平均が全国平均を上回ることと、児童生徒質問紙調査において、「授業の内容がよくわかる」、「どちらかといえばよくわかる」と思う生徒の割合を平成26年度調査より3ポイント以上向上させるという2つの目的を挙げられております。
 今年度の学力テストの結果を受け、短期計画及び中期計画での成果、課題及び今後の取り組みについて、教育長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 昨年度の全国学力・学習状況調査の結果を受け、各学校では、子供たちに学習意欲を向上させる取り組みやわかる授業づくり、補充学習の徹底等をこれまで以上に進めてまいりました。その結果、本年度の全国調査では、小学校の全ての調査、中学校の3つの調査で全国平均との差が改善しました。また、「授業の内容がよくわかる」と回答した子供の割合が、小学校の全ての教科、中学校の数学と理科では全国平均を上回りました。
 本年度は、新たな取り組みとして、県外で学力向上の成果を上げている学校に教員を派遣し、研修してきたことを所属校の授業改善に生かすとともに、県内の各地域で研修会を開催し、その成果を県全体に普及しているところでございます。
 また、現在、基礎・基本を確実に身につけさせるために、繰り返し学習をする国語科のドリル教材を作成しており、順次、学校に配布し、授業や補充学習等で活用することとしてございます。
 さらに、学力と相関がある読書の時間が全国平均を下回っているという課題があることから、読書活動の推進や学校図書館を活用した学習活動の充実を図るよう、研修会等を通じて指導しているところでございます。
 今後も、12月8日に実施しました和歌山県学習到達度調査の結果を生かすなど、学力向上対策中期計画に基づき、市町村教育委員会や学校と一体となって、組織的、継続的な取り組みを進めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 次の質問に移ります。
 全国学力テストの正答率が高い要因の1つとして、子供たちの読書活動が挙げられると思います。文部科学省と子どもの読書サポーターズ会議では、どの学校にもある学校図書館の充実というものを提唱しております。ことしの4月、学校図書館法が改正、施行されてから半年が経過いたしました。改正後の法律においては、学校図書館の諸事務に当たる学校司書の配置が努力義務として規定されております。
 去る11月中旬に、私は、岸本議員、中本議員の3人で金沢市立長田町小学校と金沢市立玉川こども図書館を訪問する機会を得、司書の重要性や先進地としての今日までの取り組み、課題を調査し、子供たちの基礎的な知識の習得はもとより、本との出会いを通じて子供の心の成長に資するための学校図書館の重要性と専門職員の必要性を感じたところであります。
 学校司書の配置は、市町村が主体となることを認識はしておりますが、学力向上に資する取り組みとして市町村へのさらなる働きかけが必要ではないかと考えます。学校図書館の積極的な活用と司書の重要性について、教育長にそのお考えをお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校図書館は、子供の豊かな感性や想像力を育むとともに、調べ学習などの自発的な学習活動を行う重要な場であります。また、全国学力・学習状況調査の結果では読書と学力の相関関係が明らかなことから、しっかりとした学力を定着させるためには、学校司書を配置し、学校図書館の機能を充実させることが重要であると考えてございます。
 このため、県教育委員会では、市町村教育委員会に学校司書の配置の促進について指導してきたところでございます。現在、学校司書は9市町に配置されておりますが、全国に比べて少ない状況にあるため、各市町村にボランティアの積極的な活用も働きかけ、現在、26市町において読み聞かせや貸し出しなどを行っています。
 また、市町村の教育委員や管理職の方々の研修会等において学校司書の配置や学校図書館の活用を内容に取り入れ、その効果について周知するとともに、来年1月には、県内に配置されている学校司書を対象に、先進的に取り組んできた学校図書館アドバイザーを招き、研修することとしてございます。
 今後とも、学校司書の配置やボランティアの活用により、学校図書館が子供にとって居心地のよい場所であり、また、学びを支える拠点として効果的に活用されるよう取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 教育長、どうかよろしくお願いいたします。
 では、がん対策の推進についての質問に移ります。
 一億総活躍社会の実現を検討する中で、それぞれが生きがいを感じることができる社会を維持するためには、安心につながる社会保障の整備は重要な検討事項であります。特に、個々人の多様な能力を発揮し続けていくためには、健康寿命の延伸に向けた取り組みを強化していく必要があります。そのためには、本県の死亡原因の第1位であるがんの対策を充実させなければならないと考えます。
 過去、座長を務めさしていただき、超党派にて平成24年12月議会に議員提案さしていただいた和歌山県がん対策推進条例が施行されてから、今月28日で丸3年を迎えます。この条例検討の中で、がん対策について、できることは全て行うという理念のもとで検討作業を行いました。また、条例の第6条では、県議会の役割を、議会活動を通じて、がん対策についての基本的な政策決定を行うとともに、がん患者を初めとする県民の声を施策に反映するよう、執行機関の事務の評価等を行うことと規定されております。
 こうした観点から、昨年の12月議会に引き続き、がん対策の推進について、予防と早期発見、がん医療、緩和ケア、がん登録、先進医療の5点についてお伺いしたいと思います。
 まず、がんの予防・早期発見についてお伺いをいたします。
 和歌山県では、毎年約8000人ががんに罹患し、約3500人ががんで亡くなっております。がんで亡くなる方を減らすには、がんの予防や早期発見が重要であります。条例第12条ではがん予防の推進、第13条ではがんの早期発見の推進を規定しております。
 がんの原因には、運動、食生活や喫煙などの生活習慣などが大きくかかわり、がんの予防のためには、生活習慣の改善やたばこ対策に努めることが重要であります。また、がんを早期に発見し、早期に治療するためには、県民一人一人に積極的に、定期的にがん検診を受けてもらうことが何よりも重要であります。
 県においては、がん検診の個別受診勧奨を実施する市町村に対する支援や、胃がん対策として有効なピロリ菌検査や、肺がん対策としてがん発見率が高い低線量肺がんCT検診について実施していただいているところであります。
 そこで、がんの予防と早期発見について、改めて現在の県の取り組みを福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) がんの予防につきましては、運動や食生活など、生活習慣の改善が重要です。県では、県民が参加する健康づくりに取り組んでおり、紀の国わかやま1万人健康リレーウォークを全市町村で実施するとともに、草の根的な健康づくり活動である健康推進員の養成を、これまで28市町村、来年度は全市町村で実施することとしております。
 また、たばこ対策として、5月31日の世界禁煙デーや各イベント等において、喫煙による健康への影響や受動喫煙防止のための分煙対策などの啓発に取り組むとともに、各保健所で出前講座を28回実施し、約1400名に参加いただいております。
 次に、がんの早期発見でございますが、検診の精度を高めるためのデジタル撮影を備えたがん検診車3台を更新整備しております。また、がん検診の受診率の向上を目指し、検診対象者全員に受診を呼びかける個別通知による受診勧奨を全市町村で実施するとともに、がん検診と健康診断の同時実施や土日開催など、働き盛り世代や主婦層が検診を受けやすい環境づくりについて市町村に働きかけを行い、受診率については、5がん全てにおいて全国平均を上回っている状況であります。
 また、平成25年12月議会において議員から御提案のあったピロリ菌検査と肺がんCT検査についてですが、ピロリ菌検査につきましては14市町に拡大するとともに、低線量肺がんCT検診につきましても、現状では4市町での実施ですが、CT検診を実施できる医療機関の拡充を進めることにより、実施する市町村の拡大を図っているところです。
 今後も、さまざまな施策を展開することにより、がんの予防や早期発見の取り組みを一層進めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 時間が気になってきました。
 要望さしていただきます。
 がんの死亡率減少のためには、がんにかかった方をどれだけ早く見つけることができるかが大切であります。がんの早期発見には、がん検診体制の強化が必要と考えます。検診体制強化における3つのポイントは、国が推奨しております有効な検診を、受診率を向上させ、多くの人に検診精度のよい適切な実施がされることであります。
 条例第13条では、がん検診に係る精密検査体制の確立する施策を実施することを規定しております。
 県では、平成25年度から個別通知による受診勧奨など積極的に取り組まれておりますが、さらなるがん検診体制の強化を図るため、受診率の向上の取り組みとともに、検診機関の技術力を向上していただき、検診の精度を上げる取り組みも重要であり、県として、今後、十分検討していただきますよう要望さしていただきます。
 また、肝がんの多くは、肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎、肝硬変から起こります。条例第24条では、肝炎、肝がん対策の推進について規定をしております。
 C型肝炎は、これまで、インターフェロン治療など治療期間も長期にわたり、副作用に苦しむ患者も多数でありましたが、最近では、インターフェロンを使わず、治療効果が96%と高い新薬が登場し、投薬のみで期間も3カ月と短い上、副作用も少なく、働きながら治療できるとともに、医療費助成制度により患者負担も軽減されていると聞いております。
 県では、肝炎ウイルス陽性者発見のため肝炎ウイルス検査を実施されておりますが、今後、肝がん対策として、職場健診においても肝炎ウイルス検査が実施できるなど、受診しやすい体制の構築に取り組まれますよう要望させていただきます。
 がん医療についてお伺いいたします。
 医療の進歩により、がんにかかっても治る時代になってきています。がん医療の充実は、本県においても重視すべき課題であります。
 条例第14条では、県は、がん患者が、居住地域にかかわらず、ひとしくがんの状況に応じた適切かつ質の高い医療を受けることができるようにするための施策を実施することを規定しております。がん検診を受診することにより早期にがんを発見し、がんの状況に応じて手術療法、放射線治療、化学療法などの治療を受けることができるがん診療連携拠点病院などの体制をさらに充実させる必要があると考えます。
 現在、皆様方のお手元に配付をさせていただいていると思いますが、「新たながん診療提供体制の概要」は、先般、がん診療連携拠点病院に関して、質の向上などのため、人員配置要件など制度が強化されたことを示す資料であり、またお時間のあるときに御参照いただきたいと思います。
 また、さらなるがん医療の充実のためには、がん医療の専門的な知識と技能を有する医療従事者の育成と確保、人材育成もしっかり取り組んでいただかなくてはなりません。県のがん医療の推進に対する取り組みについて、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 本県のがん医療体制については、県がん診療連携拠点病院である和歌山県立医科大学附属病院や各地域の中核となる8カ所の地域がん診療連携拠点病院等を中心に質の高いがん医療の提供に取り組んでおり、特に手術療法、放射線療法、化学療法などを効果的に組み合わせた集学的治療とチーム医療体制の整備に努めております。
 がん診療連携拠点病院については、先般、国の指定要件が厳格化されたところですが、県内の全ての拠点病院は要件を満たしており、今年度の指定更新が認められたところです。
 また、和歌山県立医科大学大学院においては、がん医療に携わる専門的な看護師の養成のため、がん看護専門看護師博士課程に学生を受け入れるとともに、がん診療連携拠点病院等においては、国立がん研究センターが開催する指導者養成研修に医師等を派遣しております。
 県としましては、今後も、がん診療連携拠点病院等における人材育成、チーム医療の推進などのがん医療体制の充実に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 次に、緩和ケアについてお伺いをいたします。
 がん患者や家族は、がんと診断されたとき、治療の経過、あるいは再発や転移がわかったときなど、さまざまな場面でつらさやストレスを感じます。また、がんの療養中は、痛みや吐き気、食欲低下、息苦しさ、だるさなどの体の不調、気分の落ち込みや絶望感などの心の問題が患者の日常生活を妨げることがあります。これらの問題は、がんの療養の経過中、程度の差はあっても多くの患者が経験することでありますので、がんを治すこととあわせて、患者のつらさに対して十分な対応をすることが必要となっています。
 条例第16条では、県は、がん告知の段階から行う緩和ケアの充実を図るため、緩和ケアに関する専門的な知識及び技能を有する医療従事者の育成などの施策を実施することを規定しております。患者を「がんの患者さん」と病気の側から捉えるのではなく、その人らしさを大切にし、患者と家族の社会生活を含めて支える緩和ケアの充実について、県の取り組み状況を福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 病気に伴う心と体の痛みを和らげる緩和ケアにつきましては、患者とその家族ががんと診断されたときから、身体的、精神的苦痛などに対して切れ目なく受けられるよう、体制を整備することが重要であります。
 そのため、県においてはがん診療連携拠点病院等を中心に緩和ケア体制の充実に努めているところであり、各がん診療連携拠点病院等においては、緩和ケアに関する専門的な知識や技術を有する医療従事者を育成するため、がん診療に携わる医師等を対象とした緩和ケア研修会を開催するとともに、和歌山県立医科大学附属病院においては、本年4月に緩和ケアセンターが開設されたところです。また、がん診療連携拠点病院等には相談支援センターが設置され、患者やその家族のがんに対する不安や疑問に対応するとともに、心の悩みや体験を語り合う交流の場であるがんサロンが開催されています。
 今後も、がん診療に携わる医療従事者が基本的な緩和ケアを理解し、患者やその家族の立場に立った緩和ケアの充実に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 次に、がん登録についてお伺いをいたします。
 現在、日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなると言われております。そのため、がん対策を効果的に推進するためには、がんにかかる人を減らす対策とがんで死亡する人を減らす対策を総合的に推進する必要がありますが、毎年どのくらいの人が新たにがんと診断されているのか、その数字を正しく知る必要があり、その罹患数を計測する唯一の方法ががん登録制度であります。
 条例第18条では、県は、総合的かつ効果的ながん対策の実現に向け、がん登録の推進を図ると規定しておりますが、このたび、平成28年1月から、がんにかかった方を登録する全国がん登録が開始されます。
 去る10月8日に、福祉環境委員会の県外視察で国立がん研究センターを訪問し、がん登録について調査されているとお聞きをしておりますが、これまでの取り組みや全国がん登録の制度開始に向けた準備状況、その活用についてどのように考えているか、福祉保健部長にお伺いをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) がん登録につきましては、がんの罹患数や診断情報等を把握することで罹患率や生存率などを算出する仕組みであり、がん対策の推進の基礎資料として、予防対策の充実や医療水準の向上を図るために活用するものであります。
 県では、平成23年度から地域がん登録事業を実施しており、年間8000名を超える方ががんに新たに罹患している状況を把握しております。さらに、平成28年1月1日のがん登録等の推進に関する法律の施行に伴い、県内の全病院等が参加する国レベルでのがん登録が一元的に開始され、より精度の高い情報が把握できることとなります。
 県といたしましては、これまで、医療機関向けの説明会の開催や、県医師会、病院協会、学識経験者等で構成するがん対策推進委員会の中にがん登録運営部会を設置するなど、準備を進めており、引き続きがん登録を推進し、本県のがん医療の向上に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 最後に、がんの先進医療についてお伺いいたします。
 がんの治療法につきましては、日進月歩で技術革新が行われております。最近、テレビにおいて、日本発の免疫療法が紹介されました。免疫チェックポイント阻害剤という、これまでの抗がん剤とは全く違う仕組みの新しい薬であります。
 従来の免疫療法は、免疫細胞を活性化させる、いわゆるアクセルを踏むことを考えていましたが、どんなに活性化させても、免疫細胞には攻撃をとめるブレーキボタンがあり、攻撃を受けたがん細胞は、このボタンを押すのであります。すると、免疫細胞は攻撃をやめてしまい、がん細胞がふえ、がんが進行していくということになります。研究によりブレーキを踏むというメカニズムがわかって、この新しい免疫療法は、ブレーキを外してしまうという、これまでの免疫療法と全く異なる逆転の発想から研究開発され、がん治療を大きく変えると世界中から期待をされているようであります。
 このような免疫療法につきましては第4の治療法として期待されているところでありますが、現在広く行われているがんの標準的治療法は、手術療法、放射線療法や化学療法があります。
 放射線療法につきましては、エックス線の治療機器や、最近、国内でも建設計画が各地で発表されております重粒子線治療や陽子線治療、新たな治療法として昨年の12月議会で取り上げさせていただきましたBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)が挙げられます。
 重粒子線治療につきましては、全国で千葉市や兵庫県、群馬県、佐賀県で行っており、今後、横浜市や大阪市、山形県、沖縄県で計画があると伺っております。近隣では、大阪市で平成29年度に治療を開始する予定で建設が進められております。
 また、陽子線治療につきましては、全国で17カ所が稼働中、計画中であり、近いところでは、大阪や神戸、京都、奈良などに設置予定となっております。
 BNCTにつきましては、昨年12月の議会において導入について提案をさしていただきましたが、現在、国内4カ所で設置計画が進められており、研究の段階で病院等に設置し、研究が進んでおるというふうに感じております。
 私は、本年4月に東京都の国立がん研究センターを視察、放射線治療科の荒井先生、伊丹先生からBNCTシステムについて説明をお聞きしました。また、茨城県のいばらき中性子医療研究センターも視察、筑波大学の熊田先生から、BNCTの現状、そして今後についてお話をお伺いしてまいりました。
 時間がありませんので割愛しますが、このような形で、こういう機械は、どんどんどんどん日進月歩で進んでおります。それぞれが一長一短があるようでございまして、なかなかこれがいいという決定には至っておりません。
 そこで、今日まで知事にいろいろとお伺いをしてきたわけでありますが、今、改めてこのBNCTについて、その後、県の検討状況はいかになっておるかということをお伺いいたしたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)につきましては、新たな放射線治療法として注目をしているところでございまして、施設の導入が進められている南東北BNCT研究センターと国立がん研究センター中央病院に職員を派遣し、設置状況について調査をしております。また、当治療法の最重要テーマの1つとされるホウ素薬剤について研究を行っている大阪府立大学BNCT研究センターにも職員を派遣し、開発状況の調査を行っております。
 しかし、現状では両施設とも医学的な治療実績等の蓄積を行うため機器調整中であるという報告を受けておりまして、これを実現あるいは誘致するというのはちょっとまだ少し早いということで、今後とも調査をしながら、技術革新が目覚ましい領域でございますので、タイミングを失することなく対応していきたいと思っております。
 これまでも、私は、がんの最新治療設備・施設に対してはとりわけ積極的でございまして、ずっと陽子線、重粒子線など、何度も可能性を検討してきました。いずれも採算上の見通しが立たずに、後々県の財政上のお荷物に残すという結果が出てまいりましたんで実現してないんですけれども、申し上げましたとおり、技術がどんどん進んでまいりまして、チャンスはまだあるかもしれません。逃すことなく頑張っていきたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、ありがとうございます。議会も、これからまだまだ勉強を積んでいくと思います。県も、知事を先頭に、どうかこの課題につきましてはよろしくお願い申し上げ、一般質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、山下直也君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時50分休憩
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