平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第152号から議案第186号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 42番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、登壇させていただいて、以下4点について質問させていただきます。
 1つ目に、都市計画道路南港山東線の整備についてであります。
 都市計画道路南港山東線、和歌山市秋葉町地内から塩屋2丁目地内までの延長520メートルが、暫定2車線ではありますが、和歌山市の事業で紀の国わかやま国体前、ことし8月31日に供用されました。私ども近隣住民にとっては、おかげさまで見通しもよくなって、すんなり対向できるようになりました。交通量もふえてきているので、近々の4車線供用が待たれるところであります。
 さらに、水軒口交差点付近から西浜交差点までの約900メートル区間が、仁坂知事と尾花市長の県市協調のもと、平成27年度より和歌山市から和歌山県へ事業が移管されました。昨日、地元説明会に行ってまいりましたが、あと2日間開催されるということで、沿道の地域住民に対する御理解を求める取り組みも始まりました。事業認可に至れば、私が幼少のころ水軒の浜に海水浴に出かけるのに通ったこの道路もようやく拡幅されるということで、長年の夢が実現されそうであることに大きく胸が躍る思いです。
 ましてや、この地域には、雑賀小学校、西浜中学校、和歌山工業高校、星林高校と学校が集中しておりまして、登下校時は徒歩や自転車通学の生徒であふれ返り、交通渋滞の原因にもなっています。絶えず交通事故の危険にさらされている区間であります。今回拡幅されますと、和歌山市の外環状道路に位置づけられた重要幹線路線となり、西側の臨港道路沿いには和歌山下津港湾も中央市場もありますから、大型トラック、コンテナトレーラー、さらには、新日鉄住金さんの鋼材を掲載した大型トレーラーも頻繁に走行することになり、左端を走行する原付2輪車や交通ルールを遵守する自転車等との接触のおそれがないよう、十分側方に余裕のある車道幅が確保されなければなりません。
 また、沿道は、商業施設などが建築可能な第2種住居地域が両側10メートル程度の幅で設定されていますので、道路整備後も現在と同じような中小規模の商店や医院、銀行や郵便局などの金融機関などが建ち並ぶものと予想されます。これらの中小商店などには停車需要があり、路側停車による交通障害や交通公害を発生させないためにも、停車帯の設置が必要かと考えます。加えて、路線バスや宅配便トラック等の一時停車需要もあることからも、せめて1.5メートル幅の停車帯の設置が必要と考えます。
 また、現道は中央分離帯がないので、沿線や数多くのT字型交差点からたくさんの地域住民の方々の一般車両の右折は、センターラインをまたいで現在では自由に行えますが、整備後は中央分離帯が設置されますので、これらの車両の右折対策が死活にかかわる重要な問題となります。
 この南港山東線の沿線の背後地域は、住宅密集地であり、区画整理がなされておらず、これらの右折車を一旦左折させて、最寄りの信号交差点に導く背後の並行道路が十分ではありません。このため、これら車両の右折は、整備後の南港山東線本線の右折車線や右折ポケットを利用したUターンをせざるを得ず、安全、円滑に行うことができる十分な車道幅の確保が必要であり、この観点からも停車帯の設置は極めて重要と考えます。
 銀行や郵便局への行き帰りに信号交差点で切り返し運転しなくても、1回でUターンできる道路幅が確保されなければなりません。交通安全、円滑の点のみならず、沿道の中小商店等の活性化、沿道やその背後地域住民のUターンによる普通乗用車の右折対策にも、停車帯を設けた十分な道路幅を確保いただきたいと思います。
 そこで、質問ですが、西浜交差点から臨港道路までの区間は幅員27メートル、水軒口から塩屋、国体道路までの区間は、暫定2車線区間が完成すれば交差点付近は幅員27メートル、高くなった切り通し付近が幅員25メートル、それ以降は幅員30メートルと伺っておりますが、南港山東線全線の中でも最も交通量が多くなると予想され、今後の産業道路であり、また生活道路でもある水軒口交差点付近から西浜交差点の事業を進める上で、計画総幅員、車道幅員、停車帯幅員、歩道幅員、さらには右折車線など、交通安全、円滑な交通確保の観点から利便性等をどのように確保されるおつもりか、県土整備部長に伺います。
 また、特に背後地域住民の利便性確保のため、普通乗用車がUターンできる道路幅の確保とともに、Uターンが規制されないよう改めて要望させていただきます。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 都市計画道路南港山東線の水軒口交差点付近から西浜交差点までの区間につきましては、今年度から事業化し、道路構造令及び和歌山県が管理する県道の構造の技術的基準を定める条例に基づき、幅員構成や交差点形状などの検討を進めてきたところでございます。
 議員御質問の各種幅員につきましては、この区間の特徴としまして、既存交差道路が多く、右折車線をほぼ連続して確保する必要があること、歩道がないため現道の利用を避けている付近の小中学校や高等学校の生徒が、整備後には当該道路を利用することが見込まれることなどを踏まえて検討をいたしました。
 その結果、安全で円滑な交通処理ができるよう、基本的な道路総幅員を26メートル、4車線で1車線当たりの車道幅員を3メートル、自転車や歩行者の通行空間として、施設帯を含め4.5メートルの自転車歩行者道を両側に設置し、さらに、現在信号が設置されている交差点には幅員2.75メートルの右折車線を確保する計画として、現在、地元関係者等へ説明を行っているところでございます。
 なお、停車帯につきましては、接続する道路が多く停車可能な区域が限定されること、所要の幅を確保するとすれば既都市計画道路幅を超えた用地取得が必要となることから、設置しないこととしております。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 通常、車の軌跡図で半径6メートルが確保されるから大丈夫と捉えられますが、右折車線で目いっぱいハンドルを切ったところからUターンが始まることが原則になっているわけで、車が動いている状態からUターンとなると、どうしてももう少し余裕のある半径が必要になるのではないでしょうか。
 同じ26メートル幅員の都市計画道路西脇山口線の園部─六十谷間でも、反対車線のブロック縁石にタイヤが乗り上げたり、こすっている跡が見られるわけであります。右折Uターンとなると、必ずしも理論と現実は違ってくるということも認識いただきたいと思います。とにかく、たくさんのT字型交差点に依存する地域住民がいらっしゃる地域であるということを御理解いただきたいと思います。
 西浜交差点の特に朝夕の渋滞は、大きなものがあります。水軒口交差点付近から西浜交差点付近の工事の際は、ぜひとも西浜交差点側から行ってほしいと思いますが、県土整備部長、いかがですか。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 南港山東線の西浜交差点付近につきましては、議員御指摘のとおり、慢性的な渋滞が発生しております。また、交通安全を確保する観点からも、地元の御了解が得られるのであれば、西浜交差点側から整備を進めていきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、知事の御英断で南港山東線水軒口交差点付近から西浜区間が県の事業区間となり、いよいよ拡幅されるという、地域住民、近隣住民の悲願が現実化してまいりました。本当に感謝申し上げます。
 ぜひ早期完成を待ち望んでおりますが、今後の当該区間の事業予定と完成目標をどれくらいに置かれているのか、あわせて、同じく県の事業区間として南港山東線の和田─吉礼区間も今後工事が進められ、阪和自動車道の仮称・和歌山南スマートインターチェンジの完成に合わせてリンクされると伺っておりますが、今後の工事予定を知事にお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御指摘のように、都市計画道路南港山東線は、和歌山下津港から市街地を通過いたしまして、阪和自動車道のこれからできる和歌山南スマートインターチェンジにつながる主要幹線道路であります。
 この路線の重要性に鑑みまして、新しい東のほうのスマートインターチェンジにつながる路線をつくろうということと、それから、これは時期的には大分後なんですけども、先ほど御英断というお話がありましたが、県市の役割分担を見直すということにいたそうと思っております。
 これだけ言いますと、何か県の負担で和歌山市だけ大事にして、それで、何かほかの市町村からすると損をするというふうに聞こえるのではないかというふうに思いますので、ちょっと一言申し上げておきますと、実は、そもそも都市計画道路が和歌山市にございますのは40年前ぐらいに決まった話で、20年前ぐらいに、これは和歌山市なんかが都市計画税を取っているので本来ならば全部やらなきゃいけないんだけど、ちょっと財政力の問題もあるから県市で分担をしましょうということで分けたわけです。
 私が就任以来、県のほうが熱心に一生懸命やりまして、国体までというかけ声もあって、かなりできてきました。ところが、市のほうがなかなかまだいっぱい残っておると、こういう状態でございます。
 市のほうも、こんなに大きな都市計画道路をいっぱいつくるというのはもうやめて、これは我々もそうしたんですけども、大いに縮小しつつ、ほかのところは一生懸命やるので、県のほうはもう1つやってくれませんかと、コンパクトなまちづくりをする一環でやりたいのでお願いしますと、こんなことでございます。
 ほかのまちでも実は同じように考えておりまして、都市計画道路をつくってもらって、それをやっぱり市もちゃんとやってもらうけれども、県のほうも一部お助けしないとなかなかでき上がらないんじゃないか、こういうことで、ほかの市といろいろ相談をさしていただいてるところでございます。
 そんなことを前提にいたしまして、ここはまず肩がわりをしたところ、これは沿道に家屋等が連檐をしている、密集しておるところで、立ち退きなど大いにやっていただかないとなかなかできないわけですので、用地協力をいただくことを前提に、早ければ7年程度で完成させたいと思っております。
 また、和田から吉礼の区間は、これも用地取得をこれからせないかんわけですが、既にしたところは今年度から工事に着手しておりまして、引き続き地元の御協力をいただきながら推進したいと思っておりまして、平成30年度に、和歌山南スマートインターチェンジの供用を国交省の御協力で実現したいと思っておりますので、そのときに受け皿の道がないとどうしようもないから、それに合わせて頑張っていきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2年前まで、南港山東線にさほど遠くない高松交差点を中心に東西の都市計画道路が計画として残っていましたが、パブリックコメント募集の後、廃止されました。その際、和歌山市の担当課と話したときに、「この車線も廃止されるということになると、いよいよ南港山東線の水軒口から西浜区間を早く拡幅してもらわんと困りまっせ。10年以内でできますか」と尋ねたことがありました。そのとき、当時は市の事業区間でしたから、担当課は「それまでにはやらないといけないと思っています」とお答えいただきました。それがこのたび事業が市から県へ移管されたわけですから、それ以内の期間の供用を我々近隣住民は期待しております。
 ぜひ我々も、近隣住民の1人として用地確保のためにできる限りお手伝いしたいと思いますんで、住民合意が得られれば、どうか知事におかれましても、よろしく御推進、お願いいたします。
 2点目に、和歌山大学食農総合研究所(仮称)設置についてであります。
 和歌山大学も、生き残りをかけて、ことし10月、学内に来年4月開学予定で、地方創生に資する新たな地域資源の創造拠点の形成を図るべく、学部横断、文理融合の食農総合研究所(仮称)が設置されることになりました。
 和歌山大学にもともと10人以上の農学博士もいらっしゃって、教育学部には附属農場もあり、理系の要素を加えるため、10月より早速教職員の公募も始まっていて、既に何十人からの応募もあって、選考に入っておられるようです。国との予算折衝も順調のことと伺っております。
 前学長時代から和歌山大学内にアグリバイオ分野の研究拠点を設置いただくよう、民間の立場から呼びかけさせていただくとともに、昨年11月には、和歌山大学産学連携・研究支援センター内に和歌山大学で初めての寄附講座「食品科学寄附研究部門」もスタートしていただいております。
 寄附講座では、梅酢ポリフェノールのうがい液開発、インフルエンザ、風邪予防に関する臨床試験開始、抗菌作用に関する特許対応等、サンショウでは辛み成分の安定化法の開発や塩味増強効果に関する臨床試験など、その他、梅の露茜からの製品具現化や文献データベースの構築等、短時間で実績も急ピッチでつくられていますが、そうした研究を核に地域資源を活用した食と農の総合研究所が本格的に動き出せば、数年後には、梅、柿、ミカン等、本県の日本一の果樹等の資源を活用すべく、農林水産分野の知、学の拠点となるような充実した組織体になることが大きく期待されます。
 県が今まで県下の公設試で研究してきた大きな実績と成果をさらに具体的に商品化に生かすべく、今後、和歌山大学に設置される食農総合研究所(仮称)や食品産業企業と連携をさらに深めていただきたいと思います。
 他地域の大学の農学系学部設置と連動するかのように、折しも、地元の和歌山大学では食農総合研究所が来年スタッフを増強してスタートするわけであります。
 国も、オランダのフードバレーを参考に、世界市場を見据えた日本の食と農の産業競争力強化を行って、世界有数の農産物輸出国への展開を目指して、まず日本版フードバレー調査推進事業を実施しようとしています。和歌山大学の当該研究所も食と農というからには、当然、機能性、栄養あるいは食の安全・安心という研究テーマも入ってくるはずです。和歌山県においても、第2次産業技術基本計画において、重点分野の1つ、バイオ・食品分野において、生果重視から脱却して食品加工技術を生かした6次産業化の推進をうたっておられます。
 この際、知事におかれましても、今後の大学内の最終調整がつけば──当然つくと思いますが、この研究所が数年後、和歌山県の農林水産業の特徴と農山漁村の地域資源を生かして、本県に日本一の果樹資源をさらに活用した産学官が集積するフルーツバレーを構築しての飛躍的な産業振興、そして、地域貢献のための知、学の拠点として結実できますよう、県からの格段の御理解、御協力をいただきますよう、現時点で切に御要望申し上げます。
 3点目に、神話教育についてであります。
 安保法案をめぐる一連のてんまつを見ていて不安に感じたのは、特に若い世代の方々が日本という自分の国のことをどう思っているんだろうかということでした。外国に行って自国のことを聞かれて、日本のよさを伝えることが日本人は今なかなかできていないのではという意見もよく聞かれます。
 私が幼少のころは、童話の絵本とともに日本の神話の絵本が身近にありましたし、アマテラスオオミカミやスサノオノミコト、ヤマタノオロチが登場するテレビアニメを再放送でも何度となく見ることができました。イザナギノミコトとイザナミノミコトが日本列島をつくったことや、スサノオノミコトが乱暴ろうぜきをはかったためにアマテラスオオミカミが天の岩戸を閉じてしまって、スサノオノミコトが反省してヤマタノオロチを退治して、お姫様と結婚して、後に大黒様と言われるオオクニヌシノミコトが産まれたことなど、わくわくしながら──今でもわくわくしますね──絵本を読み、アニメを放映するテレビにかじりついたことを覚えています。
 他の国々の神話のように、子供たち、それも幼少のころから自分たちの住む国や自然、社会の成り立ちを学ぶ。そして、文字もなかったころに、人々の長年の言い伝えから編さんされた「古事記」や「日本書紀」の中にある神話から学ぶ。それは、たとえフィクションがあっても、子供たちが神話の物語を読むことによって自分の国の建国の成り立ちを知って、自分の住む郷土や国が好きになって、これから大人になって自分の国のために頑張ろうという気持ちにおのずとなるものだと思います。
 さらに、聖徳太子の十七条の憲法にある「和をもってとうとしとなす」、この精神は、まさに神話の中のアマテラスオオミカミの使者とオオクニヌシノミコトとの話し合いによって国を譲ったという、日本人は争いでなく平和のうちに解決を行う民族であるということを世に示したものではないでしょうか。
 ですから、平成23年4月から使用されている小学校1・2年の国語の教科書に神話が復活したことは、大変大きな意義があると思います。国の成り立ちやその時代の人の考えを知る手がかりになって、正義や勧善懲悪がそれとなくわかるように書かれている神話は、いじめ、虐待、あるいはインターネットによる情報の氾濫など、昨今深刻な社会問題の中で生きている子供たちにとって、必ずや新鮮な印象を与えてくれるものだと思います。
 自国の伝統文化を大切にしようという気持ちがおのずと子供たちの心に生まれてくるものです。それは、他国の文化を理解し、とうとぶということにもつながります。また、日のもとにある国という日本という国名のいわれも認識することも必要かと思います。
 いずれの教科書にも、優しい心で困っている者を助ける因幡の白ウサギか、正義と勇気を伝えてくれるヤマタノオロチの話が掲載されていて、ほっとしました。さらに、イザナギとイザナミ、天の岩戸、海幸彦と山幸彦、それにヤマトタケルの話なんかも積極的に掲載いただきたいなと思います。
 そこで質問ですが、1つ目、熊野三山の本宮大社、速玉大社、新宮大社の主祭神は、それぞれスサノオノミコト、イザナギノミコト、イザナミノミコトとされ、神武天皇は熊野のヤタガラスによって大和へ導かれたとされています。小学校児童生徒に対して、日本という国の成り立ちにまつわる神話や和歌山県内が題材の神話をストーリー性を持って示してくれる神話、あるいは故郷にまつわる伝承教育をさらに充実いただくような和歌山県ならではの取り組みを御検討いただきたいと思いますが、教育長、いかがですか。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 小学校での神話や伝承に関する学習につきましては、低学年の国語では、学習指導要領に「昔話や神話・伝承などの本や文章の読み聞かせを聞いたり、発表し合ったりすること」と記されてございます。その中で、因幡の白ウサギなどの神話を題材として学習を行ってございます。また、6年生の社会では、国の成り立ちに関心を持たせるため、神話や伝承を取り扱ってございます。
 子供たちが神話やふるさとにまつわる伝承などについて学ぶことは、伝統と文化を尊重し、我が国と郷土を愛する態度を育むとともに、日本人としての自覚を持たせるために大切であると考えてございます。
 県教育委員会といたしましても、神話や伝承を初め、和歌山、地域のさまざまな教育資料を活用した学習活動は、各学校でも積極的に行い、ふるさとへの愛着を高め、郷土を誇りに思う心や態度を育成してまいりたいと考えてございます。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 今般、質問するに当たって、小学校1・2年の教科書、さらには小学校の社会、中学校の歴史、そして高校の日本史の教科書をそろえて、全部を読み返すことはかないませんでしたが、日本国の成り立ちの部分に焦点を当てて自分なりにチェックさせていただきました。今回は、小中の義務教育期間に絞って質問をさせていただいております。
 まず、小学校でありますが、3・4年の下には、史跡や神社から昔のよさを学ぶ記載が出てきます。ある教科書には、地域の発展に尽くした人々ということで、広村の濱口梧陵の「稲むらの火」が掲載されていました。5年になると、日本固有の領土、すなわち北方領土、竹島、尖閣諸島の記載が出てきます。6年上には日本の歴史が登場して、縄文、弥生時代の国づくりの歩み、そして、村から国の統一で3世紀の卑弥呼の邪馬台国、その後、豪族連合の大王を中心とする大和政権が出てきて、8世紀初めの古事記、日本書紀という歴史本の中で神話が紹介され、ヤマトタケルノミコトの物語が短くも示されています。
 中学校になると、教科書ごとに特徴や違いがあらわれてきます。ちなみに和歌山県は、7つある教科書のうち、東京書籍、日本文教出版、帝国書院のものが採用されており、県立中学校は全て東京書籍であります。採用されているいずれの教科書も中国の書物からの記載が重きをなしていて、自国の神話の記載が薄いと思います。私は、個人的には、大和朝廷の始まりにつながる神話、伝承の物語が一連のストーリーとして紹介されている自由社や育鵬社の教科書が好ましいと思っております。
 神話を学ぶことは、我々の先祖の理想とするものや価値観を知って、そこから自分たちが今の世の中をどう生きていくべきかを考えさせてくれます。もちろんフィクションはあるでしょうが、歴史教育としては神話を無視してはいけない、すなわち歴史を単なる暗記科目にしてはいけないと思います。建国記念日にしても現実に国民の祝日として認められており、2月11日の根拠は、言うまでもなくカムヤマトイワレヒコノミコト、神武天皇が橿原宮で即位した日であります。その神武天皇東征の折、紀の国和歌山県に立ち寄って女性首長の名草戸畔と戦い、戸畔は戦死して遺体が3つに分断されて、3つの神社に埋められたという伝説もあります。神話は、郷土の歴史にも大いにかかわってくるものであります。
 そこで質問ですが、教科書採択は、まず都道府県教育委員会と教科用図書選定審議会との諮問、答申後、市町村教育委員会が採択という手順になりますが、義務教育課程においては、まさに公平を期する意味で、中学校において全部の歴史教科書に生徒が触れる機会があれば、生徒の学習の幅も広がる端緒になると思います。
 また、神話教育について言えば、「古事記」や「日本書紀」あるいは風土記の生徒向けのわかりやすい文章本を学校図書館等に配置してもいいかもしれません。日本の歴史についていろんな角度から中学生が学習できる手だてをつくることについて、教育長にお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 教科書は、教科の主たる教材として位置づけられ、子供たちが学習を進める上で極めて重要な役割を果たしてございます。そのため、採択を初め、日ごろから教科書に興味、関心を持っていただくことは極めて重要であると考えてございます。
 県教育委員会では、教科書採択への関心や教科書、教科学習に対する理解を深めることを目的として、県内の公立図書館や公民館、教育センターなど25カ所に教科書センターを設置し、さまざまな種類の教科書を閲覧できるようにしてございます。
 今後も、保護者や教員、子供たちが常に教科書を広く閲覧できるよう、機会をできる限り設けるよう努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 よろしくお願いします。
 3点目に、和歌山県庁を正面から入って階段を上りますと、昭和13年に庁舎が完成した翌年に飾られた、まさに神話の世界であるアマテラスオオミカミの妹と言われるニウツヒメノミコトのレリーフ、そして、さらに階段を上りますと、神武天皇に霊剣を献上して病からよみがえっていただいたタカクラジノミコトのレリーフがそれぞれ重厚な存在感を持って拝見することができます。
 また、オリンピック、ワールドカップ、それに世界選手権大会等での日本人選手の活躍を見ていると、日本人として誰でも心は躍ります。日本の若い選手も、表彰台で、国旗の前で国歌を歌っています。まして、本年開催されました紀の国わかやま国体・わかやま大会、これでも和歌山県民が和歌山県選手団の活躍、一挙手一投足に目が離せず、一喜一憂しながら熱い声援と拍手を送り続けました。これは、人としての健全な郷土愛からくる気持ちのあらわれであります。
 この気持ちの原点は、日本国の成り立ちにさかのぼることにあると思います。神話教育は、子供に日本人としてのアイデンティティーを認識させるものです。神話こそ道徳教育の原点であります。知事におかれましては、神話教育の必要性についてどのような御所見をお持ちか、お聞かせください。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 神話や伝承は、国の成り立ちや遠い先祖の暮らしぶりなどを伝えるもので、私たちにとって興味深いものであり、日本人としてそれを知っていることは意義のあるものだと思います。
 県内には、熊野地方など神話とゆかりのある場所もあり、神話や伝承を学ぶことは国や郷土を愛する心を育むもので、本県が推進しているふるさと教育にもつながるものと考えております。このようなことから、私は、神話や伝承を学ぶことは子供たちにとってよいことだと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 これからも神話教育のすばらしさというものを折に触れ、訴えさせていただきます。よろしくお願いします。
 4点目、外国にルーツのある子供たちへの日本語教育及び外国人住民に対する医療体制についてであります。
 昨今、外国人住民の日本への定住化も進み、外国人観光客の訪問も飛躍的に増加しています。和歌山県では、平成26年末、69カ国・地域、5934人の在留外国人がいて、平成25年末から若干の上昇傾向が見られます。しかるに、教育現場あるいは医療現場において、日本語がわからなくて、それぞれコミュニケーションがうまくとれていない現状があります。
 公立学校に在籍している外国人児童生徒数は、平成26年現在で7万3289人、そのうち日本語指導が必要な外国人児童生徒数は2万9198人で、本県は15校で16人、日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒数は、本県で14校、17人います。通常は、担任を含め複数の教員及びボランティアが対応しています。ボランティア支援といっても、週に1回1時間程度で不十分、それに子供の日本語能力が極めて低く、母国語で指導対応できる人材に乏しいのが現状です。第一、家庭との連絡が難しく、家庭では母国語ばかり使って日本語がなかなか上達しませんし、いざ高校入試を考えると不安が大きいものがあります。人権問題には当然外国人の人権もあって、日本語指導が必要な子供たちの学ぶ権利は保障されなければなりません。
 大人は、YMCA等外国語学校または県国際交流センターで学べます。問題は子供です。先進的な日本語教育を実践している府県もあるようです。例えば、愛知県知多市立つつじが丘小学校の事例を御紹介したいと思います。
 名鉄名古屋駅から特急で20分ほどという交通の便のよさと海に面した環境が魅力の学校ですが、1973年に開校し、平成26年度は全校児童数387人に対し約14%、54人がブラジル、フィリピン、ボリビアなどから来た外国人の児童です。日本人の児童にとったら、小学生のうちから多言語、異国文化あるいは日本以外にも国が存在することを実体験の中で触れる機会を持つわけですが、外国人児童の多くは、言葉だけでなく日本の文化、習慣にも戸惑います。
 そこで、19年前、つつじが丘小学校は、さくら教室と呼ばれる日本語の支援教室を立ち上げました。体育など日本語の理解を必ずしも必要としない教科は自分のクラスで受け、国語や算数等、日本語が必要な授業に関しては、子供たちをさくら教室に移動させて、言葉から教えるようにしました。7年前には2クラス、6年前には3クラスへふえたさくら教室は、今では2月、3月にかけて、4月に入学してくる新1年生の外国人親子を対象としてプレスクールを実施しています。
 クラスでは、日本語を学び始めた時期がばらばら、習熟度も差があるので、1人の先生が5人の児童に個別対応しています。語学相談員も教育事務所から派遣されていますが、語学指導だけでなく日本の習慣も教えています。2~3年たってもまだまだの児童もいるし、逆に早い子だと1年もしないうちに日常会話ができるようになるとのこと。何かを考えるのに、もとになる言語になる母国語がしっかりしている子は早いと先生は言っています。
 そこで質問ですが、1つ目、県教育委員会におかれましては、外国にルーツのある子供たちへの日本語の学習支援について、推進方針はどのようなものですか。
 2点目に、実際の就学状況、日本語指導状況はどのように把握されていますか。
 3点目、文科省においても、外国人児童生徒の指導に当たる教員や支援員等の配置の推進や人材の育成、養成、確保をうたっておりますが、本県では、日本語指導のための教員、ボランティア等支援員の確保、配置はどのようになっていますか。また、研修はどのように行われていますか。
 4点目に、実際の現場と県、市町村教育委員会、それに関連支援団体との意見交換や連携はどのように行われていますか。
 5点目に、日本語が不得手な外国にルーツのある子供たちが、いざ高校受験をするとなると大変な困難を伴うと予想されますが、漢字にルビを振ったり時間を延長するなど、配慮はなされているのでしょうか。文科省も進路指導の充実をうたっておりますが、本県においては高校入試についてどのような施策がとられていますか。
 6点目に、同様に外国人児童生徒について、暴力行為やいじめ、不登校などの生徒指導との諸問題や発達障害の問題についての実態と対応を聞かせていただきます。
 7点目に、そのような児童生徒や保護者の教育に関する相談体制はどのようになっていますか。
 以上7点を一括して教育長にお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 日本語指導が必要な児童生徒に関する御質問につきまして、一括してお答え申し上げます。
 外国人児童生徒の就学については、国際人権規約等の規定を踏まえ、就学の機会を適切に確保できるよう、各市町村において小中学校に入学を希望する外国人児童生徒を無償で受け入れるなどの措置を講じており、県としても、そ の状況を調査により把握してございます。
 また、高校入試において日本語の理解が十分でない外国人受験者への対応につきましては、まず、中学校長から特別措置願を提出していただくことになってございます。そして、他の受験生との公平性を保ちながら、受験生の能力が十分発揮できるよう、学力検査問題の漢字にルビを振るなど、個々の状況に応じた対応を行ってございます。
 外国人児童生徒が学校生活を送る上では、言語や文化的な背景が違うため、周囲から理解されにくい場合があり、学級や学校で孤立するおそれもございます。それぞれの学校では、このようなことがないよう、人権教育とともに周囲の児童生徒により広い物の考え方や互いを尊重し合う姿勢が育つよう指導してございます。
 また、外国人児童生徒の個々の状況に応じて、外国語ボランティアなどの協力を得ながら、学習支援を行ったり日本語指導を行ったりしてございます。一部の学校には、日本語指導のための教員も配置してございます。
 しかしながら、来日する外国人の方々の多様化に伴い、来日する時期や学年、場所もさまざまな上に、母国語の言語の種類によっては児童生徒や保護者とのコミュニケーションが難しいなどの課題がございます。そのため、研修会や協議会を開催している和歌山県国際交流センターと連携を図るなど、個々のケースの対応に努めてございます。
 今後も引き続き、外国人児童生徒の就学等に関する相談や各学校の状況について、市町村教育委員会とともに対応してまいりたいと思ってございます。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 外国人児童生徒への日本語学習支援推進方針、そういうものを新年度でも策定いただくような御検討をいただけたらなと思います。
 実際の就学状況、日本語指導状況については、県教育委員会としても、ぜひ当該学校に出向いて実態をつぶさに見てきていただきたいと思います。また、外国人児童生徒が入校してくることになって急に慌てふためいた対応にならないように、新年度からでも教員や管理職を対象に研修を実施しておいてもいいのではないかなと思います。
 外国人児童への対応の充実は、居心地のよい学校づくり、ひいてはいじめや不登校などの解決につながると思います。真の国際化のために多文化共生社会の推進、これは重要なものだと思います。以上、要望させていただきます。
 次に、8点目、医療体制についてでありますが、外国人住民にとって、医療現場では日常生活以上に医師や看護師などとのコミュニケーションはとりにくいものであります。特に救急の場合や手術の説明を行うときに、言語の関係で即座に対応できないケースが間々あるでしょう。
 三重県では、9つの公的医療機関等に医療通訳が派遣されています。茨城県救急医療情報システムを検索すると、救急医療情報のコーナーに「Search for a doctor」と外国人向けの検索ができて、地域、診療科を選べますし、大阪府医療機関情報システムのサイトでは、言語を選べるようになっています。
 本県において、現在、ある大きな病院で勉強会が立ち上がっているということですが、和歌山県立医科大学附属病院を初めとして、本県の公的病院においては、外国人で日本語が得意でない患者に、医療従事者はもちろんのこと、事務方もちゃんと対応できているのでしょうか。
 9点目に、また、参考までに、増加している外国人観光客も含めて、外国人に対する医療保険制度はどのようになっておりますか。
 以上2点を一括して福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 外国人患者への対応についてでありますが、県内の公的病院では、英語には医師が対応し、その他言語の外国人患者には、患者が通訳できる知人等と同伴で受診しているのが通例であり、医療機関によっては、翻訳機能ソフトを活用するなどの工夫をしていると聞いてございます。
 また、県では、医療機関の診察状況を県のホームページ上で検索できるわかやま医療情報ネットにおいて英語による表示を行い、県内在住の外国人の言語に対応できる医療機関を検索できるようにしております。
 今後、外国人患者が救急等で医療機関に搬送される場合であってもスムーズに対応できるよう、多言語に対応した救急時情報収集シートの普及など、効果的な取り組みを県内の医療関係機関や在留外国人を支援する団体等とも連携しながら研究してまいります。
 次に、外国人に対する医療保険制度の仕組みについてでありますが、外国人の方で会社などの事業所に勤めている74歳未満の方については、その事業所の健康保険に加入することになります。それ以外の方で3カ月を超えて在留し、住所を有する方については、国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入することになります。
 観光などの目的で3カ月以下の短期滞在となる外国人の方は、日本の医療保険の対象とはなりません。しかし、日本人が外国へ短期旅行中に医療を受け、全額を支払った場合には、帰国後、保険者へ請求することで保険者が負担すべき額が払い戻されるように、短期滞在の外国人の方については、帰国後、それぞれの国の制度で対応することになります。
○議長(前芝雅嗣君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 以上4点、一般質問、これで終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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