平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(菅原博之議員の質疑及び一般質問)


平成27年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(菅原博之議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午後1時0分再開
○副議長(藤山将材君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 36番菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕(拍手)
○菅原博之君 菅原博之でございます。議長のお許しをいただいて、立たしていただきます。
 まず、このたびの県議会議員逮捕に至ったことについては、まことに遺憾であり、残念なことであります。県議会は、開会中、閉会中にかかわらず、必要に応じ捜査に全面協力するとともに、真実の全容解明が進むことを希望いたしたいと存じます。
 では、項目の1番に入らせていただきます。
 1つ目は在宅就労の推進についてでありますが、これは現在の在宅就労であるテレワークというものについてであります。
 パソコンなどの情報通信機器を活用して、時間や場所の制約を受けずに柔軟に働くことができる勤務形態のことであります。ITやデザインなどの部門だけにかかわらず、対面で接客が必要な営業部門でさえ、顧客に出向いた後、その結果をすぐにパソコン入力することで現状を瞬時に部門内で共有し、一々会社に戻る時間を他のことに利用できるため、週に2日は出社し、3日は出社不要にするなど、いろいろな利用が進んでおります。企画部門、管理部門、開発部門など、あらゆる部門で対象になる働き方であります。
 また、政府においても、平成25年6月には世界最先端IT国家創造宣言が閣議決定され、その工程表においてテレワーク導入企業数を2012年比3倍、雇用型在宅型テレワーカー数10%以上の政府目標が掲げられたところで、総務省職員自身を対象としたテレワーク制度も導入され、国家公務員テレワークも率先実施されております。
 最近では、東京本社の会社に在籍しながら、新潟県の自宅で第一線の管理職として愛知県の部下や北海道の部下たちとインターネットを利用したチャット機能でいつでも自由に連絡をとり合いながら仕事をこなし、東京の本社に出勤するのは月に一度という、そんな働き方を選ぶ人たちがふえております。
 その背景には、インターネット回線で大容量のデータをやりとりしやすくなったことから、一定の技量を持ちながら一度は仕事を諦めて子育てなどで家庭に入っている方や、インターネットを利用して地方の親元などでの在宅勤務を希望する人たちがふえているということが挙げられます。
 そんな中で、自治体が在宅で働きたいという女性たちと企業を結びつける取り組みを始めている事業がございます。今回は、私が政務調査にお伺いさせていただいた愛媛県松山市の事例を御紹介させていただきます。お手元に資料をお配りさせていただいておりますので、ごらんいただけますと幸いです。
 まず、親子のカラー写真が載った面をごらんください。
 松山市在住の女性に、仕事と家庭の両立を図っていただきやすい働き方を浸透、拡大させるのがこの事業の目的であるということであります。
 その裏面をごらんいただきますと、事業内容が載っておりますが、松山市の指定事業者さんが就業者の募集、管理、業務の開拓、業務に関する情報提供、納品品質の管理を行う。例えば、発注先の企業が無理な要求をしないか、きちんと代金を支払うかや、受注した個人が納期までに完成させられるか、あるいは納品品質が発注企業の要求を満たしたものであるかをチェックし、その間のトラブルにも対処する。そして、さらにスキルアップしたい希望を持つ女性にはセミナーを開催し、さらにレベルの高い仕事もこなせるよう支援や確定申告等の知識もつけさせる。
 一方、もう1枚の資料をごらんいただくと、行政側の松山市は、この事業に発注した企業に対して、納品を完了した後、事業額の1割を発注奨励金として支払う、つまり発注者は通常より1割引でその発注物を手に入れることができる仕組みであります。本年6月から事業の募集が始まり、私が政務調査に行かせていただいた9月時点で既に150社以上から発注があり、また応募の情勢も1回目で定員の200名が埋まり、予算が確保できれば追加募集の準備に入りたいということでございました。
 今、特にIT企業は、人手不足の影響が顕著に出てきていることから、どう人手を確保するかが大きな課題となってきておりますが、働き方を柔軟にしていけば人も集まり、業績も上がるということが企業にも労働者にも理解が進んできたということと、特に子育て中の女性が気持ちよく働き続けることができる環境を用意できれば企業にとっては労働力の確保ができ、地方の自治体としては東京の企業からの税収がふえる、またさらに移住希望者の注目度も上がることになるという狙いで行われている政策であります。
 当県の在宅就労、テレワークの推進についていかがお考えでしょうか。商工観光労働部長にお尋ねいたします。
○副議長(藤山将材君) ただいまの菅原博之君の質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 労働力の確保のためには、企業と働く者それぞれのニーズに応じた多様で柔軟な働き方と、よりよい職場環境づくりが重要であると認識しております。
 多様な働き方の1つであるテレワークについては、厚生労働省がテレワーク用通信機器の導入や社会保険労務士による導入のためのコンサルティングなどに対する支援制度を設けており、県としましては、企業に対してリーフレット等を使って周知を行っております。また、女性の就労については、希望する女性が安定した収入を得られる仕事につけるよう、保育所の整備や長時間労働の抑制、育児・介護休業制度の整備など、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいるところです。
 議員御提案の松山市の取り組みについては、行政が民間事業者と連携して、在宅で働きたいという女性にパソコンを使ってできる仕事を提供する仕組みであり、この事業を施策の参考にするかについては、今年度から始められたものなので、利用者の状況や得られる収入、仕事の内容を見きわめていくことが必要であると考えております。
 しかしながら、こうした取り組みは、民間事業者同士の競争原理に委ねることによりさまざまな展開が期待されますし、行政が公費を使って特定の業者に委託することについても、民業圧迫などの観点から課題があるのではないかと思われます。
○副議長(藤山将材君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。どういう形になろうと、ひとつ前向きに御検討いただければありがたいと思っております。
 また、これを実施するとすれば、主体は基礎自治体であろうと考えておりますが、まず県が基礎自治体に対して推進役を果たされることと、この政策の次の段階の検討をぜひ要望させていただきたいと思っております。
 それは、県がさらに県全体で、例えばこの事業管理をすればA市とB市で提携する事業者が異なる場合も連携がとれ、またこの枠組みに中小企業を入れることも可能だと思うからであります。個人と中小企業をマッチングさせることによって、より大都会の企業からの大きな受注をふやし、税収アップにつなげることが可能になるからであります。
 実は、松山市でも、今の1件当たりの事業規模を拡大して税収アップにつなげたいという課題、問題意識を持っていて、私から、それならこの枠組みに中小企業も入れて事業組合をつくってはどうかと提案いたしました。担当の方は、ぜひそのアイデアをいただきたい、うちでもそれを検討させていただきたいというお話でしたので、これはより広域で県が検討されたほうが効果も上がるのではないかと思います。ぜひ御検討いただきたいと要望いたします。
 また、人口85万2300人の佐賀県では、佐賀県と鳥栖市、パソナテックの3者によるコンソーシアムが総務省のふるさとテレワーク推進のための地域実証事業に採択され、テレワークによる新たな働き方の普及や大都市圏企業の地方移転の促進や、県外からの転入者に対する生活直結サービスの提供などを行うという発表が7月7日にございました。このこともぜひ積極果敢に研究していただき、移住者アップ、若年労働力減少の歯どめの一助にしていただきますよう要望させていただきます。
 さて、次に先端技術活用農業の推進についてお尋ねいたします。
 先ごろ、環太平洋経済連携協定が大筋合意に至り、貿易の一層の自由化時代がやってこようとしております。
 我が県としても、農家経営を強化し、攻めの農業に転換することが急務、大変重要でございますが、今回の質問は、将来の農業を担う若い世代の方に農業の将来像の一端を知っていただくということで、現在の先進技術が農業にどう生かされようとしているのか、その技術の可能性を含めてお知らせいただければと考えておりますので、農林水産部長、どうぞよろしくお願いいたします。
○副議長(藤山将材君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 議員御指摘のとおり、TPPへの対応として本県農業の競争力を強化することは不可欠であると考えており、中でもICT(情報通信技術)等を活用した先端技術の導入に向けた取り組みが重要であると認識しております。
 このため、県試験研究機関では、企業や大学と共同で先端技術の実用化に向けた研究開発を実施しているところです。
 幾つか具体例を挙げますと、かんきつ農家がこれまで勘や経験に頼ってきた農作業を経験のない者でも容易に管理できるように、園地での生育データや環境データ、生産活動履歴を一括管理し、園地ごとのきめ細やかな生産活動を支援するためのシステムの研究開発に取り組んできました。
 また、果樹園での作業軽労化を図るため、農業用アシストスーツの研究開発に和歌山大学とともに取り組み、コンパクトで軽量な装置が完成し、来年度には販売される予定であると聞いております。
 花では、夜間に光を照らし、開花を促進する電照栽培において電気のコストが課題となっていましたが、光源に開花促進に適した波長を持つ農業用LED電球を利用することで、消費電力を10分の1に節約しながら高品質の花を生産する技術を開発したところです。
 こうした事例以外にも、国などの研究機関では、衛星データを活用し、生育を監視するシステムや高精度のGPSを活用した農作業機器の開発なども研究されており、県ではこうした先端技術について情報を集め、本県の生産現場に活用できるのか調査を行っております。
 今後も、ICTの活用等、先端技術の導入、展開を推進し、農産物の高品質化と省力化、低コスト化を図り、本県農業の競争力強化に取り組んでまいる所存でございます。
○副議長(藤山将材君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 今後の研究進展の状況も見て、大学の研究機関の拡充や企業の研究部門の誘致など、技術開発が和歌山県の農産物に適合した方向に優先的に向かうような働きかけも、どうかよろしくお願い申し上げます。
 さて、次に農産物輸出の推進についてでありますが、日本の果物は外国で大変高評価であります。特にアジアの国では、柿や桃などはプレゼント用に大変喜ばれております。ただ、値段が高いので、そう簡単に手が出ないというのが現実でございます。
 先ほど御説明いただいた先端技術などから、コストダウンにつながり、さらに例えばロボットなどがひとりでに農作業を行うような時代が来ればと願っているのですが、とりあえずは本県の職員の皆さんの御努力もいただいて、農産物の輸出推進を進めることが重要でございます。本日は、その取り組みについて、再度、農林水産部長よりお知らせください。
○副議長(藤山将材君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 先般のTPP交渉合意を受けて、海外からの農産物輸入増大も予想され、県内産地では農業経営の将来に向けた懸念や不安の声も聞かれます。今後は、生産性の向上や高品質化などへの対応はもとより、これを好機と捉えた県産品の海外への積極的な販路開拓が今まで以上に重要になってくると考えております。
 和歌山県では、これまで高品質で安心・安全な果実を輸出するため、和歌山県農水産物・加工食品の販売促進戦略を策定し、アジア諸国を中心に、JA等県内事業者とともに積極的に販売促進に取り組んでまいりました。
 桃については、台湾の高級量販店で店頭での販売促進活動を実施し、ギフト需要にマッチした果実としての評価が定着し、また香港においては、店頭のみならず、ネット通販へも販路を開拓し、人気商品となっています。
 ミカンについては、いち早くシンガポールの現地高級百貨店などに売り込みを行い、平成20年から毎年、和歌山フェアを開催し、定番商品となっています。
 柿については、甘さとさくさくとした食感が広く受け入れられ、タイや香港で人気が高まっており、今後、現地での店頭販売促進を強化すれば、さらなる輸出拡大が期待できる状況にまで来ております。
 さらに、海外への輸出が難しいと思われていた梅についても、香港の高級量販店での梅酒、梅ジュースつくり体験が人気を得て、青梅の輸出が実現するなど、さらなる事業の拡大に向けた産地の意欲的な取り組みが始まってございます。
 今後は、TPP加盟国もターゲットに見据え、海外市場開拓が一層促進されるよう、セミナーの開催やさまざまな方面との商談機会の創出等、県内事業者への支援をさらに強化してまいります。
○副議長(藤山将材君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 まず、何といっても輸送費の低減が大きな課題であると思っておりますので、船便でも鮮度が落ちにくい輸送技術のさらなる研究とともに、輸送費の削減につながる努力もお願いしたいと考えております。
 さて、次に行政改革についてお尋ねしたいと思います。
 本年6月、県から和歌山県長期人口ビジョンが発表されました。その内容は、少子高齢化と人口流出によって、本県の人口は何も対策を講じなければ2040年に70万人、2060年に50万人まで減少するが、適切に対策を講じたとしても、今からでは2060年に70万人で減少をとめるのがぎりぎりであるという予測であります。約3割の人口が減っていくわけであります。当然、人口が減れば税収も減少するわけでありますから、行政組織の適正な縮小をどうするのかという問題になってまいります。
 私は、2060年までに3割人口が減るのであれば、県議会定数も、今後4年ごとの選挙のたびごとに1議席ずつ減らせば、ちょうどこの人口減に応じたペースで、2060年付近で3割の定数減が達成できると機会があるたびに提案させていただいているところでありますが、行政組織としては、県面積や、部署によっては人口減にかかわらず仕事の量は変化しないという部署もあるのが事実であります。
 そこで、一部の部署に過重が集中することがないよう、単純な削減ではなく、さきに質問させていただいたテレワークなどIT技術をフルに活用し、相互に連携のとれた負担の偏らない工夫が必要と考えております。
 効率よく連携のとれた組織に縮小移行させることについてどうお考えか、総務部長にお尋ねいたします。
○副議長(藤山将材君) 総務部長市川靖之君。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 県では、これまで、新行財政改革推進プランを通じまして8年間で1170人の人員削減に取り組んでおり、その中で、その時々の行政需要に適切に対処するための組織体制の構築を図ってまいりました。
 このため、毎年度の組織再編に当たっては、新たな行政需要に対応した組織見直しの必要性や一部の部署に業務が集中しないかなどを細かく精査するなど、行政需要を勘案して限られた人員の中で最も効率的な組織編成を行えるよう努めております。
 さらに、部局をまたがる特定課題の解決に向けた臨機応変の対応ができるよう、主担当となる課の担当局長などが責任者となりまして、部局を超えて関係課に指示などをするヘッドクオーター制の活用など、組織の枠を超えた連携促進にも取り組んでいるところでございます。
 また、IT技術を活用して職員の連携促進や業務効率化を図るため、行政パソコンにスケジュール共同管理機能や情報共有機能を付加するなど、こういった環境整備を行うほか、現在、全部局にかかわります総務事務を中心とした情報処理システムを、より業務効率化に資するよう改良に取り組んでいるところでございます。
 この先の本格的な人口減社会を迎えまして、社会経済状況が大きく変わっていく中でも、今後ともIT技術を積極的に活用し、きめ細かな組織体制を構築することで、急速に変わりゆく時代に応じた最適規模で連携のとれた効率的な組織づくりができるよう取り組んでまいります。
○副議長(藤山将材君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。ぜひ知恵を絞って、よい組織の設計をお願いいたします。
 ここで要望させていただきますが、本日、農林水産部の御報告にもあったように、今後、農業に限らず、あらゆる分野でITやロボット、さらには人工知能などの研究も飛躍的に進み、いろいろな利用が進んでまいります。和歌山県の実情に合った普及を研究し、その中には障害者の方も能力を発揮して活躍いただける分野もきっとあるはずです。つまり、これから未知の分野で部門が多岐にわたる事項が出てまいります。
 さきに質問させていただいたテレワーク事業も、なぜ松山市が実現できたのかと申しますと、以前、全国的に行われていたひとり親の就労支援事業に行き着くわけであります。この事業で在宅就労支援が行われていた時期がございました。この在宅就労支援を所管するに当たり、本県も含め全国のほとんどの自治体では福祉部門の所管となった事業ですが、松山市では最初から、やるからには市民の皆さんにしっかりもうけてもらおう、そうすれば税収も上がるということで、産業経済部の地域経済課が所管となってスタートし、その結果、自然の成り行きでこの事業がここまで進展したのだという担当者のお話がございました。
 私は、以前、和歌山市内の職場にいさせていただいた際に、このひとり親の在宅就労支援事業は、福祉部門より産業部門でやったほうがおもしろいのだがといった声を聞いたことがございます。もうどなたがおっしゃった言葉なのか忘れてしまいましたが、本県職員の皆さんは優秀で、政策の勉強も相当されていると感じておりますので、県の中でもそういう気づきがきっとあったのだと思います。
 その結果、やはり福祉部門が適任と判断されたのでしょうが、それでも商工部門にうまく引き継がれるべき課題はあったのだろうと考えるわけでございます。
 このひとり親の在宅就労支援事業も、数年前の初期の段階では苦労の連続であったでありましょう。しかし、その事業の遺産を有効利用し、新政策に結びつける努力も必要です。プロとアマチュアを分ける境は当事者意識を持っているかどうかだという言葉もございます。今後の行政改革で組織が縮小しようとも、ぜひ各部門間で政策連携が一層緊密に行われるよう、他部署の政策も当事者の目で見詰めていただきますようお願いさしていただきたいと思っております。
 そして、企画部さんなんでしょうか、ぜひともそういう政策連携も一層チェックしていただいて、人口減少社会に適応していただきたいと要望させていただきます。
 さて、次に沖縄問題に移らしていただきます。
 我が国が戦後70年、平和が保たれてまいりましたのは、平和憲法の理念のもと、国民が真剣に平和を望んできたことが大きな土台でありますが、対外的には自衛隊と日米安全保障条約による米軍の抑止という恩恵のもとに保たれていたという事実を抜きに語れません。
 そして、忘れてならないことは、70年前の悲惨な戦争で、唯一県土が戦場となり、つらい過去を持ちながら、現在も沖縄に32の米軍施設があり、その土地面積は国内の米軍施設──これは基地だけではありません。米軍が常時使用できる専用施設であります──が全国の74%が沖縄県に集中しております。
 そういう状況であるにもかかわらず、私が今回、政務調査で沖縄県庁にお伺いした際に対応いただいた沖縄県の方がおっしゃったことは、「よく全国の会議で他の自治体の方とお話しすれば、『いや、いいですね。沖縄県さんは基地があって、それで食えるんですから』と言われる。もうばかばかしくて一々反論はしませんけど」というお話であります。実際には、現在、米軍基地関連での経済効果は沖縄県全体の県民所得の5%にすぎない、仮に米軍がいなくなってその土地を有効利用すれば5%以上の経済効果はあり、それより、米軍がいることによって、一々報道されないが、いろいろな問題が月に30件も起こるのですよとおっしゃっておられました。
 また、国からの補助金についても、全国7番、8番目の額をいただいているが、長い米国の統治期間中、インフラ整備がほとんど行われなかった分を今になって他の自治体並みに追いつこうとしていることでいただいている金額が今の順位の結果であるということでございました。
 私は、今回、沖縄県糸満市で行われた和歌山県出身沖縄並びに南方諸地域戦没者追悼式に参列させていただきましたが、その際には沖縄県議会議長さんを初め、沖縄県知事の代理の方も御参列いただき、献花もしていただいておりました。聞けば毎年そうしてくださるとのことで、恐らく他府県主催の慰霊祭にもずっとそうされているのだろうと思います。
 今回の普天間、辺野古問題を別問題としても、沖縄県に対する過度な基地負担に対し、たとえ実質的な基地負担の軽減につながらなくても、せめて沖縄県に寄り添うという視点で何かできることはないのか、知事の御見解をお伺いしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 在日米軍基地は、日米両政府が合意して、日本と極東の平和と安全を確保するため、安全保障上の観点から配備されているものだというふうに考えられます。沖縄における米軍基地も、このような安全保障上、地政学上の観点から配備されているものだと思います。
 現状では、沖縄に基地が集中しておりまして、沖縄県民に多大な負担をおかけして、その負担のもとで日本の安全が何とか保たれているということでございますので、日本国民の1人として、沖縄の方に対して頭の下がる思いでございます。
 しかしながら、安全保障上の要請も余り考えないで、とにかく気の毒だから自分の地域で負担の肩がわりをしてあげるということは──そういうことを言った人も、それがちょっとはやりの時期がありましたんで、はやりの時期にはそういう方が何人か登場したんですが、これはやっぱり単なるスタンドプレーで、それで先ほどのような論理とか必要性を考えると、到底実現しないということだと思います。
 沖縄の米軍基地の移設とか訓練の分散は、日本の安全保障全体にかかわる問題であって、沖縄の負担の問題も考慮しながら国が責任を持って解決していかなきゃならない問題だというふうに思います。
 ただ、頭の下がる思いで感謝を申し上げているということだけは申し上げておきたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。
 次に、和歌山県立医科大学薬学部新設についてお伺いしたいと思います。
 県の若年人口の減少という観点からは歓迎するべきなのでしょうが、薬剤師が将来過剰になるという見方も出ております。結局、県財政の負担となり、将来にわたって禍根を残すことになってはなりません。
 そういう観点から、次の2点についてお尋ねいたします。
 まず、なぜ薬学部設置なのか、薬学部を選択した理由についてと、薬学部新設に伴う運営費が県財政に与える影響についてを知事にお伺いしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県は、県内の高校から県外への大学等へ進学する学生の割合が全国で最も高い数字となっております。大学に入った後、その方々にもう1回和歌山へ戻ってきていただきたいということで、これは就職のお世話とか和歌山のよさのPRとか、そういうことで今頑張ってるところでございますけれども、一方では、できれば和歌山で大学生活を送ってくれる人をふやせばよろしいということになると思うんです。そういう声はたくさん出ておりますが、随分昔であればかなり可能性があった話だと思いますが、その後、若者の人口が特に減ってまいりまして、一般的に大学の経営難が言われるという時代になっておるときに、公的大学にしても私立大学にしてもなかなか立地が難しい、公的の場合は経営が大変だし、私立の場合はそもそも来てくれないということでございます。
 ただ、専門的な資格を持つことができる学部とか、そういう点についてはまだまだ需要があるということだろうというふうに思っておりまして、そんなことで和歌山県のまち・ひと・しごと創生総合戦略において、県立医科大学による薬学部の新設を位置づけたわけでございます。
 薬学部の新設を選択した理由は、1つには和歌山県立医科大学があって、現在、医学部と、それから保健看護学部があります。そういう意味では、薬学部ができるとさらに立派な総合医科大学になっていくと。お互いに学問的には共通のものがとっても多いもんですから、そういう点でよろしいということと、一定の技術的な知識を身につけたいというような薬学部志望生、そういう方が結構たくさんいるということで選択をした次第でございます。
 本県は、薬剤師の平均年齢が全国で最も高くて、医薬分業も進展の余地があることや、地域偏在の解消、在宅医療の進展など、薬剤師の需要は今後も増加はすると思います。薬学部ができた分だけ、その分だけそっくり増加するかというとそんなことはなくて、多分他県の大学に行ってる人たちがより帰ってくるし、それから公立大学というのは、一般的に薬剤師養成のためにある私立大学とちょっと様相が違いまして、実は他にも公立の薬学部があるんですけども、かなり倍率が高い状態になってるんです。ですから、ひょっとしたら他県にある薬学大学についてはなかなか脅威かもしれないけれども、和歌山県でこの大学をつくって、それで人が来なくなるとか、出た人が困るとか、そんなことは全くないということでございますし、医大の発展のためにも役立つなあというふうに思っておるわけでございます。
 財政の負担の話も申し上げますと、そうはいっても、一般的に言うとこれはそうなんですが、ちゃんと計算をしてみないといけません。初期投資や運営経費が県の財政に与える影響については、かなり慎重に検討を行ってまいりました。
 薬学部を新設した場合は、大学の運営経費には、学生納付金のほか、外部資金等を充当した上で、不足する経費は県から運営費交付金を交付することになる。これは医学部の場合も同じでございます。
 一方、認められた公立大学の運営に要する経費については、地方交付税で措置されることになっていて、基準財政需要の中にカウントをしてくれるということになります。したがって、欠員が生じなければ論理的には県の財政をむちゃくちゃ悪化させるものではないということになるわけでございます。
 先ほど申し上げましたように、県内の高等学校から毎年100人ぐらい県外の薬学部に進学している、公立大学薬学部の一般入学試験の実質試験倍率は4倍を超える、定員を満たしているというようなことから考えると、まず学生は集まるし、それからよそからもかなり来てくれる可能性もあるし、それから先ほど言ったように恒常的に、これ、6年ぐらいかかるんですけども、実際に1年生から6年生までびしっとそろった状態になりますと、そんなに財政負担が大きくなることはないというような試算をいろいろしておりまして、県の負担には耐えられるんじゃないかなというふうに思ってる次第でございます。
○副議長(藤山将材君) 菅原博之君。
  〔菅原博之君、登壇〕
○菅原博之君 ありがとうございます。知事におかれましては、今会期中御多忙の中、寸暇を惜しんで世界農業遺産の認定登録のためイタリアに向かわれ、すぐにまた帰られるという中で、真摯に議会質問に向き合っていただいておりますが、どうか、現地でも県議会、みなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会会長の坂本登議員とともにお力を発揮いただきますようお願い申し上げます。
 これで、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、菅原博之君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時43分散会

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