平成27年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


平成27年9月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第119号から議案第147号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。
 久しぶりの質問でありますので、多少緊張しているかと思いますが、よろしくお願いをいたします。
 今議会は、44年ぶりの国体開催も伴い、何かと慌ただしい感じもいたしますので、私の質問も2問に絞っての質問にさせていただきたいと思います。当局の取り組み、考え方をお伺いするものであります。当局の明瞭かつ誠意のある答弁を期待しております。
 今回の第1点目といたしましては、「みなべ・田辺梅システム」世界農業遺産認定登録についてであります。
 世界農業遺産とは何か。以前にもこの場で紹介いたしましたので、今回は簡単におさらいし、まず、認識を共有していきたいと思います。
 世界農業遺産とは、2002年、イタリア・ローマに本部を置く国連食糧農業機関が創設した制度でありまして、世界各国を対象に、地域の伝統を生かした農法や生物多様性、農村文化や景観などが保全される農業システムを評価し、認定し、これをモデルとして持続可能な農業や地域の暮らしを目指そうとするものであります。
 現在、世界では13カ国、31地域が認定をされておられます。日本では5地域が認定をされております。
 手続といたしましては、地域や市町村、県が候補地を選定、これを農林水産省に申請し、書類審査や説明会とともに、農林水産省の編成する専門家委員会による現地調査などの審査を経て、国連食糧農業機関に認定の承認申請が行われます。それをもとに、国連食糧農業機関による審査が始まり、最終的には、国連食糧農業機関・科学委員会による現地調査が行われ、その後に最終決定ということになります。
 現在のみなべ・田辺地域に係る進捗状況は、去る5月21日、国連食糧農業機関の3名の科学委員による現地調査が行われ、あとは認定の決定待ちという段階でございます。なお、今年度は全国から7地域の要望、申請がありましたが、農林水産省からの承認は、和歌山県も含めて3件でございました。
 では、今回、世界農業遺産の候補になっているみなべ・田辺梅システムはどのような内容なのか、簡単に紹介をいたします。
 養分の乏しいれき質の斜面に囲まれたみなべ・田辺地域は、古来より水田農業や林業には好まれない地域でありましたが、400年前、先人はこの不利な立地条件を見事に克服し、山の尾根には雑木林を残し、まきや炭として利用するとともに、斜面に対して水や養分を提供し、あわせて崩落防止という機能を持たせました。余談ながら、その炭は、現在、紀州備長炭として大ブランドとなっております。
 傾斜地には梅を植え、やがて南高梅といった最高級ブランドを育て上げ、今や、その生産量は我が国全体の半分以上を占めるに至っております。営々と築き上げてきたみなべ・田辺の梅林は、一目100万、香り10里とも言われる見事な景観をつくり上げてきました。
 早春、梅の花は、どの花よりも早く花を咲かせます。巣箱の中で今か今かと春を待っていたミツバチは、一斉に梅の花を求めて飛び回ります。早く飛び始めたミツバチは元気がいい。元気なミツバチは元気な子供を産み、元気な子、孫を残します。ミツバチのおかげで受粉が行われ、梅の花は青い実となり、やがて大きな南高梅となり、初夏の農家のはじけるような笑顔へと実りを運んでくれます。
 私は、ここに見事な生物多様性の姿を見ることができました。ミツバチの減少は世界的な危機であり、その保護・保全には、国連食糧農業機関も大きな関心を寄せております。
 地域に根差した資源を大切に利用した人々の努力の積み重ねが梅を中心とする持続的な農業を確立し、現在では、生産、加工、販売、そして観光といった多様な分野が連携することになり、700億円とも言われる梅産業を育て上げ、働く人の約7割が何らかの形で梅の恩恵にあずかっているという裾野の広い就業の場をつくり出し、地域の安定した暮らしに大きく貢献をしております。
 はやりの言葉で言いますと、6次産業化のモデルともいうべきみなべ・田辺の梅システムは、持続可能な農業を目指す世界のモデルともなるものであります。
 これまでの取り組みを振り返ってみたいと思います。
 平成26年5月、みなべ町長、田辺市長を先頭に、地元の皆さんによるみなべ・田辺地域世界農業遺産推進協議会が設立され、運動の母体となりました。何といっても、地元の熱烈な取り組みと努力が、今日の期待を大きく膨らませている原動力であります。その努力には、お礼を言っても言い尽くせるものではありません。
 6月、県議会みなべ・田辺地域世界農業遺産促進協議会を設立していただきました。超党派でバックアップしていただいた県議会の取り組みは、本当に大きな力と勇気をいただきました。この際、議会の皆様に厚くお礼を申し上げる次第であります。
 また、資料の作成、農林水産省への説明、現地調査への対応、国連食糧農業機関への申請書の作成など、終始一貫して事務局方として熱心に取り組んでいただいた知事初め県当局の努力に対し、改めてお礼を申し上げたいと思います。
 しかしながら、一方で、市場情勢を見てみますと、近年、梅の市場価格は長らく低迷を続けております。私の信条は、「1次産業の隆盛なくして地域の繁栄なし」であります。
 今回の梅に係る世界農業遺産への登録は、梅を中心とした生産システムが世界の農業システムのモデルとなり得るという面での評価であり、このことはまことにありがたいし、すばらしいことであります。
 しかし、私には夢があります。欲があります。今回の世界農業遺産がうまくいけば、国連食糧農業機関によって世界中にみなべ・田辺が紹介され、世界中に梅が紹介されることになります。梅の知名度は一挙に世界中に広がることを意味します。
 最近、私は、外国人が梅を食べないというのはどうやら私たちの一方的な思い込みだったのではないかと反省をしているところであります。5月、国連食糧農業機関の現地調査の際、ゲストスピーカーとして講演されたイラン出身のカゼム・アジア太平洋大学准教授に対し、梅料理を研究されてる岩本さんと婦人部の皆さんが用意してくださった梅料理を食していただいた際、試しに梅干しを勧めてみたところ、おいしいと言って、その場で2個も頬張り、加えて、うめ研究所の視察の際には青梅まで頬張るほどでありました。
 この光景を見て、私は、これはきちんと説明をし、正しい情報を届ければ、外国の方々も梅を食べると確信をした次第でございます。
 そこで、当局に要望ですが、この後、世界農業遺産登録がうまくいき、国連食糧農業機関から世界中に英文での紹介が発信される際、できれば、「梅は健康食品である。梅産業は健康産業である」という1文をどこかに入れてもらえないかということであります。
 英文で何と表現するのか、そこは専門家にお任せしますが、私は、今回の世界農業遺産への認定登録作業は、認定登録で最終ゴールだとは思っておりません。この千載一遇のチャンスを生かして、世界中に梅を紹介すること、世界中に健康食品である梅をPRすることに大きな意義があるものと思っております。このことによって、梅のマーケットは世界中に広がることでしょう。
 最近、テレビなどでは、よく和食や日本食材が外国で人気があるとの報道がなされております。和食も無形文化遺産への認定登録から火がついたものでしょう。梅もこの機会を大いに利用し、世界中の方々に梅のよさを知ってもらう、梅を世界のブランドにする、そして世界中の方々の健康に貢献する、すばらしいことであります。
 私は、この際、地産外商を提案します。外商の「外」は県外の「外」であり、国外の「外」であります。
 梅の持つ整腸作用や疲労回復効果は、1300年の歴史を持っております。私たちは、毎日、テレビや新聞で、衰弱し、体を壊したまま亡くなっていくかわいそうな子供の姿を目にします。梅を通して、私たちはこうした世界の健康に多少なりとも貢献できるかもしれません。世界中に梅が紹介されること、世界の人々の健康に梅が貢献できること、これが私の夢であります。
 もう一踏ん張り、当局にも、関係者の皆さんにも、もう一息応援をしていただいて、何とかこの私の夢をぜひ実現をしていただきたい、切に切にお願いする次第であります。
 梅のマーケットが広がり、梅産業が元気になりますと、梅農家も元気になります。幸い、これまで、みなべ・田辺地域は、梅やミカン、漁業といった1次産業が頑張ってくれたおかげで地域も活性化し、全国的に見ましても活力ある地域として紹介されるほどでございました。
 政府は、地方創生が大看板です。政府が旗を立てることも大切であります。国が地方に頑張れと呼びかけることも大切であります。しかし、本当の地方創生は、やはり地方みずからが地に足をつけ、産業を興し、地域の担い手を育成し、子供を産み育てることではないかと思います。こうした地道な取り組みこそが、地方消滅などといったばかな指摘をはね返し、真に豊かな地方をつくり上げていくことにつながるのではないでしょうか。私は、そう信じております。
 そこで、質問であります。
 県が、今後の世界農業遺産登録のスケジュールや英語での紹介文をどう捉えているのか、また、今回の世界農業遺産というこの事業をどう評価し、どう活用しようとしているのか。前半を部長から、後半を知事から答弁をお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) みなべ・田辺地域の世界農業遺産の認定につきましては、一昨年の12月定例会での坂本議員の御提案がきっかけとなり、取り組むことになったものでございます。
 私は、みなべ・田辺の梅システムは、地域の人々が、地形や地質、長年にわたって育まれた梅の多様な遺伝資源、薪炭林に生息するミツバチなど、限られた資源を有効に活用して、自然と共生をしながら、知恵と工夫により現在の産地を形成するとともに、生物多様性や文化を育んできたもので、まさに世界農業遺産にふさわしいものと考えております。梅産業やみなべ・田辺地域、また、本県の発展のためにも、世界農業遺産に認定されることは大変重要であると考えて頑張ってまいりました。
 さらに、地元の皆さんが、梅システムを次世代に残すべく、また世界にPRすべく、認定に向けた積極的な取り組みを進めてこられたことを私は大変すばらしいことと思っております。県も地元とともに取り組み、認定まであと一歩のところまで来ておりまして、早期に認定されることを期待しております。
 そのため、7月にミラノの食博に行かしていただいたことを──ついでにと言ったらあれでございますが──それを利用いたしまして、国連食糧農業機関、ローマに出向き、代表のダ・シルバ事務局長や関係者に早期の認定を強く要望したところであります。で、事務局長や事務局次長からは、内容的には高く評価していただいたものと認識しております。
 唯一の問題は、認定スケジュールが、FAO(国連食糧農業機関)で決まっていないということでございますが、これも、早く決めてくれというふうに強く頼んでまいりました。
 認定されれば国際的にその価値が認められたことになりまして、国内外での梅の需要拡大や観光の振興にもつながるというふうに思います。まさに千載一遇のチャンスでありますので、地域がこれを積極的に活用することが重要であると思います。
 議員は、御発言のように地産外商を提唱されているということでございますが、1次産業は和歌山県の基幹産業であり、「1次産業の隆盛なくして地域の繁栄はなし」は、全く私も同感であります。
 そのときに、地産地消もベースとして大事でございますけれども、それだけだと需要は少ないわけですから、ぜひ外商で頑張らなきゃいけないということでございます。県としても、私が率先して国内外の市場に梅や梅加工品のすばらしさをPRし、販路を大きく拡大させていきたいと考えております。
 海外につきましては、梅酒は、結構、欧州を中心に浸透しつつあります。梅をちゃんと使ってくれる梅酒じゃないと困るもんですから、本格梅酒というブランドをつくってもらうように、いろいろ企画をいたしまして、その結果、そこが成功いたしましたので、これからは、さらに梅酒の拡販、即、梅の販売促進というふうになる素地ができたと考えております。
 梅干しも、議員御指摘のように、私も、世間で言われてるように、日本人だけが好むというわけではないと思っております。特に健康志向の世の中、特にアメリカなんかは太った人が圧倒的に多いわけで、すしも、そういう観点から米国文化の中に取り入れられてきているわけでございますので、ぜひここに火をつけたいと思っておるんでございますが、残念ながら力及ばずで、まだ手がかりをつかんではおりません。
 継続的に大いに頑張って、世界的に需要がふえて、梅農家の方が喜んでつくっていただけるようにしていきたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 世界農業遺産の認定スケジュールですが、議員お話しのとおり、ことし5月に国連食糧農業機関の外部機関である世界農業遺産科学委員会委員3名による2日間の現地調査が行われ、委員からはおおむね好評価を得てございます。
 認定時期につきましては、先ほど知事から答弁もありましたが、知事が直接、国連食糧農業機関に対して早期認定を要望したところであり、また、これまでも農林水産省を通じて強く要望してまいりました。
 しかしながら、現時点では、認定時期に対する回答はいただけておりません。今後とも、農林水産省、国連大学、本県と同時に申請を行っている宮崎県、岐阜県とも連携を図り、国連食糧農業機関に対し、引き続き働きかけを行ってまいります。
 なお、世界農業遺産登録に際して、国連食糧農業機関が行うシステムの紹介に、「梅は健康にいい。梅は健康産業である」という内容を入れてもらうことは、梅の非常に効果的なPRにつながるものであり、ぜひ国連食糧農業機関にも働きかけてまいりたいと考えています。
○議長(前芝雅嗣君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事並びに当局から答弁をいただきました。
 世界農業遺産に関しては、一段の要望を行いたいと思います。
 まず、世界農業遺産の登録に関してですが、このことに関する私と知事との考え方、捉え方は、ほとんど同じであると受けとめました。世界農業遺産への登録は、最終ゴールではなく、梅産業振興への大きな足がかりであるとの認識は、まことにそのとおりであり、ともに海外販路開拓に汗を流したいと思います。
 認定までのスケジュールでありますが、まだ判明してないとの答弁がありますが、関係者と連携を密にして、引き続き頑張っていただきたいと思います。
 なお、登録後の国連食糧農業機関が行う英文での紹介文には、何が何でも「梅は健康食品である。梅は健康産業である」との表示がなされるよう全力で働きかけてほしい、重ねて強く指摘をしておきます。
 このことの持つ意味は、梅産業にとどまらず、今後の本県農業にとっても大変大きな意義を持つものと肝に銘じ、なお一層頑張ってください。強く要望をしておきます。
 それでは、続いて第2点として、すぐれた農業者の育成と和歌山県立農業大学校のあり方についてお伺いをいたします。
 先ほども申し上げましたが、1次産業の発展なくして地域の発展がないというのが私の信条でもあります。1次産業が元気であれば、商業や工業、福祉、教育、全てに私はつながるものと確信をしているからであります。
 グローバル時代を迎え、世界は大変狭くなり、近くなりました。農業も、かつてのように日本国内だけを考え、国内で大消費地だけに目を向けるばかりではやっていけない時代になってきております。情報の質、量、スピード、あるいは流通機構の急速な進歩は、日ごろから梅のビジネスにかかわっている私たちさえ驚き、農業を取り巻く環境が大きく変化してきてることを実感しております。
 世界農業遺産の中でも触れましたが、これからの農業は、一段と視野を広げ、地域にあっては、生産から加工、販売まで、いわゆる6次産業化を推し進め、いかに産地としての付加価値を高めるかといった点が大きな焦点となってまいりますし、マーケットとしては、いやが応でも外国への輸出といった点を視野に入れないとやっていけない時世だと思います。
 もちろん、こうした変化に対しては、競争に打ち勝つ技術の進歩も伴わなければなりませんが、最も大切なことは、農業者みずからが、これまでの生産一辺倒から、経営あるいはビジネスという部門まで視野を広げていくことであります。
 農業に限らず、どんな分野にあっても、いい日ばかりではありません。悪い日ばかりでもありません。悪いときには、歯を食いしばり、何とかその打開策を模索する、いいときは、その追い風をどう膨らませるか、いずれにしても経営者の才覚にかかっています。結局は人です。人をどう育てるかであります。
 県には、かつらぎ町に和歌山県農業大学校があります。昭和38年、農業センターとして開設して以来、半世紀以上の伝統を誇り、これまで多くの卒業生を輩出し、県の農業振興に多大の貢献をしてきました。その功績に対しては大いに敬意を表するところでありますが、先ほど来、私が申し上げてまいりましたように、農業を取り巻く世の中の環境が大きく変化をしております。そして、そのスピードは、私たちや役所の感覚をはるかに上回る速さです。ぼやぼやしていては取り残されてしまいます。
 今回の私の主張は、和歌山県農業大学校における経営面での強化とビジネス部門の積極的導入ということであります。これまでも、農業経営という分野があり、どちらかといえば農業生産に係る経費、コストなどの記載、分析に重点を置かれていたという印象があります。もちろん、この分野も大変重要であり、農業経営には欠かせない分野でありますが、最近は、パソコンやそのためのソフトが比較的に簡単に手に入り、意識の高い農業者は既に積極的に取り組んでおります。
 私の今回の提案は、その分野をさらに充実するとともに、もう一歩進めて、農業施策としてはこれまでやや苦手としてきたマーケティングや販売戦略といった面を強化し、農業者みずからがリスクを覚悟で、より大きいリターン、収入を目指して挑戦できるような若き農業者の育成を目指してはどうかということであります。
 最近は、政府も、農業を成長産業と位置づけ、積極的に海外へ打って出るという姿勢を示しています。また、国内にあっても6次産業化を奨励し、生産者側といいますか、産地側での付加価値の増大を奨励しております。どちらかといえば生産技術に重点を置いた和歌山県農業大学校には、この時代の流れといいますか、時代の要請に十分応え得るであろうかと危惧する次第であります。平成27年度の募集要項を見ますと、やはり生産技術の向上に重点を置いたカリキュラムになっているのではないかと印象を持ちました。
 全国の農業大学校の取り組みを見てみましても、既に幾つかの県で、時代への対応といいますか、新しい時代の農業者の育成を目指しての取り組みが見られます。奈良県では、平成28年度に奈良県農業大学校を改編し、なら食と農の魅力創造国際大学校を開校し、農業の担い手を育成する学科に加え、6次産業化の担い手となる知識を持った若者を育成すべく、6次産業化研修拠点施設を整備、農の担い手と食の担い手がともに学び、卒業後も幅広くネットワークを築くことにより、新しい農業の可能性と実現に向けて取り組みを強化しようとしております。また、埼玉県や三重県では、農業大学校と他の4年制の大学との連携を図り、学生や教員の交流を促し、農業技術だけでなく、幅広い資質を備えた若き農業者を育成する取り組みも始まっております。
 そこで、私の提案であります。
 1つは、農業大学校の経営面での教育の強化についてであります。
 県農林水産部の職員の中には、大学で農業経営を専攻してきた職員も多くいるものと思います。その職員による経営講座を充実してはどうでしょうか。職員は現に勤めている勤務先と兼任すればいいと思います。あるいは、農林水産部以外の職員を充てることも考えてはどうでしょうか。
 提案2の2点目は、さらに学生の視野を大きく育てるため、外部の大学あるいは企業のしかるべき方々を講師に呼ぶというのはどうでしょうか。今や、外国の事情や企業の海外戦略などをよく知らないと、自分たちが取り組むべき加工の方向も販売戦略もわからないのではないでしょうか。視野を広く持って地産外商、これからは打って出る農業がより可能性を広げるものと考えます。
 そこで、質問です。
 第1点は、県は、現在の農業を取り巻く環境、状況をどう捉え、認識しているのか、今、農業施策として何を優先すべきなのかといった点についてであります。
 私は、主として日高地方の農業をイメージしながら質問をしてまいりましたが、知事からは、国の農業施策や国際情勢も視野に入れた幅広いお考えをお伺いするものであります。
 2点目は、県として、今後あるいは将来にわたってどのような農業者を育成したいのか、そのためには県立農業大学校はどうあるべきかといった点です。知事からお考えを聞かせてください。
 3点目は、私が提案した県職員の派遣や他の大学、企業との連携を強化し、農業大学校の資質向上を図ってはどうかといった点です。農林水産部長の答弁を求めます。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県の農業を取り巻く環境は、農業者の高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増加、国内外の競争の激化など、大変厳しいものとなっております。
 こうした現状を打破し、基幹産業である本県の農業を発展させるには、ビジネスとしての強い農業の推進が必要であります。すなわち、それは、つくる農業から売れる農業、さらにはもうかる農業の推進でありまして、そのためには、高品質の作物栽培や6次産業化の推進による付加価値の創造、農地の集約による経営規模の拡大、販路開拓などに取り組んでいく必要があると思います。
 以上申し上げましたことは、全く坂本議員の御趣旨に沿うものだと思っております。私は、知事就任時に思ったところ──農業政策について、あるいは和歌山の農業について思ったところ──は、和歌山の農業は、商品作物をつくっている割には、農業者の方は、つくることはとてもうまくて熱心なんだけど、JAに出したら終わりというような人が多いなあということで、やっぱり販売のところまで熱心に取り組まないと、あんまりもうからんかもしれないなあというふうに思いまして、それで、販売促進、加工などにかなり熱心に取り組んでまいりました。
 印象としては、初めはそればっかりでありまして、最近は、これはやっぱり品種改良などの技術開発とか、あるいは生産力強化とか、そういうことも大事だといって、それもつけ加えてるところでございます。
 しかしながら、御指摘を受けて、よく考えてみますと、農業大学校に関しては栽培技術にのみ重点を置いてきてしまったなあと、改めて気づいたところでございます。もうかる農業を推進していくためには、それを支える農業技術と経営の知識、両方にたけた、やる気のある農業者の育成が重要であり、農業大学校も、それをサポートするようなものでなければならないと改めて気づきました。
 県としては、今後は、あるいは今後ともと言ってもいいかもしれませんが、農業大学校を本県農業を担う人材育成の中核機関として位置づける、それは変わりはございませんが、栽培技術だけではなくて、もうかる農業を実現する観点から、農業経営をしようとする者に教えなければならないことを広く教えるようにし、関係機関と協力しながら、時代のニーズに対応した、皆さんがこぞって来てもらえるような、そういう大学校づくりを目指していきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 県農業大学校の質的向上についてでございますが、議員御指摘のとおり、グローバル化が急速に進展する中、生産技術だけでなく、マーケティングや販売戦略など、広い視野を持ち、経営感覚にすぐれた農業者を育成することが重要と考えます。
 現在、農業大学校では、教職員による基礎的な農業技術の講義に加え、試験研究機関の研究員による新技術や外部講師による流通の講義などを行っておりますが、先進的なアグリビジネスへの対応は十分とは言えない状況です。
 このため、今後は、海外でのマーケティングなどの専門知識を持った県職員による講義に加え、大学や企業の専門家による先進的な講義を取り入れるなど、カリキュラムの充実を図り、議員が提唱する地産外商を推進できる人材の育成に力を注いでまいりたいと考えてございます。
 また、新たなアグリビジネス部門の設置につきましては、農業大学校の魅力を高めるとともに、時代に適した人材育成にとって重要であるため、前向きに検討してまいりたいと考えてございます。
○議長(前芝雅嗣君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事並びに当局から答弁をいただきました。
 農業大学校のあり方に関しては、再質問を行いたいと思います。
 農業大学校のあり方については、知事から、ビジネスとして強い農業を育成する、そのためには、やる気のある農業者の育成が何より大事であり、農業大学校をそのための中核機関としての充実をしていくとの答弁があり、農林水産部長からは、生産技術だけではなく、マーケティングや販売戦略など、広い視野を持って経営感覚にすぐれた農業者を育成するとの答弁がありました。私も、そのとおりだと思います。
 問題は、では、この目標に向かってどのような取り組みがなされるのか、どのような改善がなされているのかということであります。
 農業を取り巻く厳しい環境は、本県に限らず全国的な問題であり、そのため、よその県では、さまざまな取り組みが具体的に進められております。幸い、和歌山県の農業は、商品価値の高い農産物に支えられて頑張っていますが、やはり一日も早く、産地間競争や国際競争に勝ち抜くための農業へと飛躍、発展する必要があります。そうすれば、繰り返しになりますが、やはり最大の課題は人材育成、確保であります。
 聞くところによりますと、農業大学校の受験生は、定数を大幅に下回り、その受験生も他府県からの応募も多いと聞きますが、さらに、農業を志す学生は半数に満たず、最終的には、農業に従事する学生は年間4~5名程度ではないかとのことであります。何のための農業大学校なのか、誰のための農業大学校なのか、これから家業として農業に従事しようとする後継者にとって本当に必要な知識、経験が身につくところなのか、どうすれば農業大学校にとってやる気のあるすぐれた農業者の育成ができるのか、事態を聞くにつけ、私は、農業大学校の現状や今後の方向について少々疑問を持つものであります。
 農業を取り巻く環境は、今、大きく変わろうとしております。農林水産部や県内の議論にとどまることなく、広く有識者の意見も聞きながら、今後の農業大学校のあり方をいま一度考え直してみてはという時期に来ているのではないでしょうか。知事の所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 先ほどお答え申し上げましたように、農業大学校については、既存の栽培技術の内容の充実には私たちも努めてきましたが、時代のニーズに合った、もっと幅広い農業人材の育成に十分応えてきたかというと、そうではないというふうに気づかされたところでございます。
 社会情勢が急速に変化し、農業者に求められる資質も変化しているため、時代にふさわしいような形で農業大学校を改革すべく、まさにこれから、本日の議論を踏まえて、先ほどお答えしたとおりの改革をしていきたいと考えております。
 そのためには、今後、広い視野を持ち、ビジネス感覚にすぐれた農業者を育成するために、外部の有識者の意見も聞きながら、大学の連携とか、とりわけビジネス部門からの教師とか、そういう方々も来ていただいて、農業大学校を先ほどお答えしたような形に切りかえていくように努力をしていきたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事から答弁をいただきました。
 前向きに取り組んでくださることを期待し、私の一般質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございます。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。

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