平成27年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(森 礼子議員の質疑及び一般質問)


平成27年9月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(森 礼子議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 3番森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕(拍手)
○森 礼子君 こんにちは、森礼子です。どうぞよろしくお願いします。
 本日は、6月4日に日本創成会議が提言した高齢者の地方移住にかかわる質問に加え、これと密接に関連する高齢者や障害者など社会的弱者が暮らしやすい和歌山について質問させていただきます。
 初めに、高齢者の地方移住、日本創成会議の提言についてから質問させていただきます。
 民間有識者で構成する日本創成会議は、1都3県の東京圏の高齢者が急増し、2025年には介護施設が13万床不足するとの推計をまとめ、高齢者に地方移住を促すべきだと提言しました。
 そして、地方移住の候補地として、医療、介護ともに受け入れ余力のある全国41地域が例示され、県都和歌山市も含まれました。
 この提言の名称が東京圏高齢化危機回避戦略であることからも、その趣旨は、東京圏の高齢化問題への対処は日本全体の将来像を左右するため、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県で連携して高齢化問題に対応するとともに、東京圏の高齢者の地方移住環境を整備すべきものであるというものです。この提言の反響はとても大きく、全国の地方公共団体の首長から賛否さまざまな意見が表明されています。中には、現代版うば捨て山との批判さえあります。
 しかし、提言の示した我が国の2025年の医療・介護の状況は、批判したり傍観したりしていても解決する問題ではありません。
 今後10年間、高齢化は急速に進展します。特に、75歳以上の後期高齢者の増加が著しいのです。日本全体では、後期高齢者は2015年の1646万人から団塊世代が後期高齢者に達する2025年には2179万人へと533万人増加し、このうち東京圏では397万人が572万人へと175万人増加し、全国の増加数の3分の1を占めると見込まれています。この後期高齢者の増加に伴う医療・介護需要に、東京圏では受け皿の増強が追いつかず、東京圏全体で介護施設の不足が深刻化すると予想されています。
 さらに、東京圏において医療・介護体制を増強しようとすれば、極めて重い財政負担を伴うとともに、人材の確保のため地方から看護師や介護職員を集めることで地方の人材流出がさらに高まり、地方消滅が加速すると指摘されています。
 こういった将来分析を真剣に受けとめ、国と地方公共団体が一体となって、よりよい対策を希求しなければならないのではないでしょうか。
 私は、東京の高齢者を和歌山に押しつけようとするのはおかしいと批判するのではなくて、むしろ反対に、移住するなら和歌山がいいと多くの高齢者が和歌山への移住を希望するように、医療・介護サービスの充実を含め、和歌山の住みやすさをさらに向上させていくべきだと考えています。
 それに、和歌山県の発展のためには、雇用の確保がとても大事です。若い世代の働く場を確保できれば都会へ出なくても和歌山に残れますし、これまで生産性がないとの理由から医療や介護は産業として認められてきませんでしたが、決してお荷物ではなくて、新たな雇用の場として和歌山を支えてくれると考えます。
 本県と姉妹提携を結ぶ米国フロリダ州は、温暖な気候から、全米から退職者が移住することで有名であります。世界一のテーマパーク・ディズニーワールドでは、大勢の高齢者が働いています。まだまだ元気な高齢の方は、私の周りにもたくさんいらっしゃいます。同じように、元気で新しいことに挑戦する意欲を持った高齢者が移住してくれること、これまで培った経験や知恵を生かして、仕事はもちろん、地域社会にさまざまな貢献をしてくれます。このような高齢者のパワーを活用しながら介護予防に力を入れて、できるだけ自立生活を長く送ってくれることにより和歌山の住みやすさはさらに向上すると思います。
 私は、この際、日本創成会議の提言を前向きに受けとめ、和歌山県の将来を見据えた対応策を講ずるべきであると考えております。
 今後、高齢者の地方移住に関する国への政策提言を受けて、国は、高齢者の地方移住を促進するための政策や、高齢者の地方移住を阻害する要因を取り除くための対策を講じてくるものと考えられます。
 例えば、現在の介護保険や国民健康保険制度では、移住による高齢者の人口増により、受け入れ自治体の財政負担がふえるという課題があります。こういった受け入れ自治体の財政負担の軽減策を国が検討していかなければならないと思います。現行の介護保険制度には、自宅のある市町村から別の市町村の特別養護老人ホームなどの施設に入所する場合、住民票を移しても入所前の市町村が引き続き保険者として医療や介護の費用を一部負担するという住所地特例制度がありますが、この特例は、移住する時点で介護が必要な高齢者にしか適用されません。したがって、元気なうちに移住しても、移住前の自治体が移住先自治体の医療・介護費用を負担するような住所地特例制度の見直しなど、新しい仕組みが必要です。
 また、移住先自治体における医療・介護人材の確保、育成についても、国の支援が必要であると考えます。
 きのうの「毎日新聞」には、地方への移住促進として、国は要介護者が多い自治体に財政調整交付金を増額する検討に入ったことが報道されていました。
 新しい住所地特例制度など、高齢者の地方移住に関する支援策について、国にどのような政策を求めるものか、日本創成会議の提言に対する感想も交えて、知事の御答弁をお願いします。
○副議長(藤山将材君) ただいまの森礼子さんの質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 日本創成会議の提言に対する感想ですが、和歌山県では、新たに施設を増設する余地もあり、東京圏のお年寄りを受け入れることは可能であり、若い人も含めてたくさんの方が和歌山県に来てくださることは大歓迎であります。
 もっとも、実はこの辺の事情をあらかじめ詳細に県で調査をしておりましたところ、お年寄りは、都会でもなかなかよそへ行きたがらないという傾向があるということがよくわかっております。だから、必要な施設の手当て等をして、そこで住んでいたお年寄りの面倒を見ていく努力を都会の当局は手放してはいかんというふうに思いますし、それを、お年寄りは地方に面倒見てもらったらいいわいというふうに、こう考えてる当局があったら、かなり問題だというふうに思います。
 しかしながら、大部分の人はもとにとどまりたいと思っておるかもしれないが、来てくださるということは、いずれにしても大歓迎ということでございますが、一方、お年寄りに来ていただきますと、その方々の税金が既に労働人口であったときに東京圏の自治体に納められている反面、今後、和歌山県で福祉のお世話になるお年寄りのための費用のための財源が地方に移ってこないと地方の財政が苦しくなるという問題があります。
 したがって、国に、あるいは日本創成会議のような提言をするような人に対して期待したいことは、どこどこに施設やサービスの余力があるとかないとかを調べることではなくて、どうしたら人々が老後になって仮に移住したときに、その費用をちゃんと賄って全体がうまくバランスされるかという、そういう制度を考えることではないかと私は思います。どうも東京圏を中心にした視点で物事を考える人ばっかりで、マスコミもそんなことばかりもてはやされるのは困ったもんじゃというふうに感想を持っております。
 お年寄りの世話に対する費用を調整する制度、議員御指摘のようなものでございますが、現在、政府に対して、和歌山県としてはそういう制度を創設してくださいというようなことを要望しているところであります。今後、この提案が実現するか、政府の動きも注視しながら、引き続き必要があれば意見を述べてまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、和歌山への移住促進策について質問します。
 日本創成会議の提言における移住対象者の中心は元気で活動的なシニア層であると思いますが、地域が持続可能性を保つためには、特定の年代だけが固まるのではなくて、学生や育児世帯など多様な年代の人々が住むことが重要であると考えます。
 県では、これまでも積極的に和歌山への移住促進策を講じてきたと思いますが、今後、移住促進策の充実強化をどのように進めていくのか、企画部長の答弁をお願いいたします。
○副議長(藤山将材君) 企画部長高瀬一郎君。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) 現在、県内では、17の市町村が移住推進に積極的に取り組んでいます。これらの市町村には、地域住民や先輩移住者をメンバーとする受け入れ協議会がありまして、市町村役場では移住相談を一手に引き受けるワンストップパーソンを配置するなど、移住希望者を官民協働でサポートする和歌山モデルの受け入れ体制を整え、他府県に先駆けて移住推進に取り組んできたところでございます。
 今年度は、国の交付金を活用した移住・定住大作戦により、「くらし」、「しごと」、「住まい」の3つの視点から、さまざまな施策を展開しているところでございます。
 「くらし」の支援としましては、40歳未満の若年世代の暮らしをサポートする全国トップクラスの最大250万円の奨励金を初め、現地体験会を多数開催するなど、和歌山暮らしの魅力の発信を強化しているところでございます。また、「しごと」の支援としましては、移住者が起業するための移住者起業補助金のほか、大阪、東京でのフェアや相談会の開催により、転職や就職相談の機会を設けています。さらに、「住まい」においては、空き家の改修助成に加え、県統一版空き家バンクの設置により、支援の充実を図っているところです。
 このような施策を総合的に活用し、今後も都市部からの移住を促進させるため、市町村と一体となって和歌山暮らしを希望する多様な世代の人々を受け入れてまいります。
○副議長(藤山将材君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 ありがとうございます。
 次に、住みたい和歌山の実現について質問します。
 和歌山の移住促進策について質問しましたが、重要なポイントは、和歌山が移住したくなる地域であることです。そして、移住したくなる地域とは、今現在和歌山にお住まいの多くの県民が、和歌山はとても暮らしやすいと実感できる地域になることであります。
 このような視点から、高齢者や障害者など社会的弱者にとって和歌山が少しでも住みよい地域になっていくよう、幾つかの質問をいたします。
 初めに、障害者に優しい県営住宅について。
 私が肢体障害者の集いに参加させていただいたときのことです。その集いに参加されたある障害者の方から、「県営住宅の今の状況を御存じですか」と問いかけられ、その後発せられた言葉の中に、「障害者は田舎に引っ込んどけみたいな感じやな」という言葉に、私は余りにも驚き、返答できませんでした。その方が捉えられている県営住宅の現状は、和歌山市中心部には障害者対応の部屋がなく、あるのは中心から離れたところに少しあるだけで、交通の便利も悪い。また、移動支援事業所もなく、タクシーを利用すると費用が高くつく。つまり、自由に動けないところに追いやられていると感じられておるのです。そして、「なぜ中心部の便利なところに障害者の対応の部屋を設けてくれないのか」と相談を受けました。
 この相談を受けてから少し勉強すると、実は県営住宅はバリアフリー化が進み、またユニバーサルデザインに近づいていることを知りました。同時に、せっかくのこれらの取り組みについて、利用者への情報提供が十分でないこともわかりました。
 そこで、県営住宅のバリアフリー化の現状と、バリアフリー化を進める中で障害者対応についてどのような取り組みを行っているのか、県土整備部長にお伺いします。
 次に、買い物弱者対策について。
 また、高齢者にとって住みよい地域であるために大事なことは、移動手段が確保されていることではないでしょうか。最近、各地で「利用者の減少が原因で路線バスが廃止されて本当に不便になった」という話をよく聞きます。若くても、障害者や高齢者であっても、みずから移動手段を持たない交通弱者にとっては、たちまち買い物や通院など日々の暮らしに支障が生じる切実な問題です。
 政府は、ことしの6月に、高齢者を初めとする交通弱者が運転をしなくても暮らしやすい社会を目指し、LRT(次世代型路面電車)やコミュニティーバスなど、移動手段の確保が必要とする「平成27年版交通政策白書」を閣議決定しました。
 現在、住民の移動手段の確保については、それぞれの市町村でコミュニティーバスやデマンドタクシーの運行等の工夫がなされていますが、地域公共交通の充実は、観光客の利便性向上や地域間交流の活性化にもつながるという効果もあります。その意味では、もう少し広域的な視点で解決策を考える必要があり、県としても果たすべき役割があると思います。
 住民の日常生活を支えるため、ぜひ今後とも県・市町村、力を合わせて、バス事業者に新たなバス路線の検討を求めていただくなど、公共交通空白地域の解消に努めていただきたいとお願いしておきます。
 本日は、買い物に行かなくても来てくれる便利なサービスについて御紹介します。買い物弱者対策は、都市や地方を問わず、今最も求められている政策の1つです。
 県内外に37店舗を出店する地元スーパーのマツゲンさんが、新鮮な食材を移動販売車に積み込み、お買い物に不便な地域に出向くという生鮮移動スーパーという事業を展開しています。平成25年から経産省の支援を得て事業を開始し、現在、橋本市、高野町、かつらぎ町、有田川町、美浜町、日高町の1市5町の過疎地を毎週定期的に巡回し、精肉、鮮魚、青果など、マツゲン自慢の生鮮食品を中心に、手づくり総菜、各種加工食品、日用品など、500品目をそろえているそうです。
 行政ではなく、マツゲンさんのような民間企業の経営努力のおかげで成立する買い物弱者対策は、大変すばらしいと思います。
 買い物弱者は、過疎地域だけの問題ではありません。県都和歌山市においても、バス路線の廃止や商店街の衰退によって、買い物に不便を感じておられる方が多くいます。
 そこで、移動スーパーのような民間事業の営業活動の力をかりて、県内全域に買い物弱者ゼロ作戦を展開していただけないものでしょうか。課題はたくさんあると思いますが、補助金だけでなく、採算だけではなく、うまくバランスのとれた買い物弱者対策ができるのではないでしょうか。買い物弱者ゼロ作戦の展開について、商工観光労働部長の答弁をお願いします。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長野尻邦彦君。
  〔野尻邦彦君、登壇〕
○県土整備部長(野尻邦彦君) 県では、県営住宅に入居される障害のある方のため、従来は主要な団地の1階部分に障害者向けの住戸を整備してきました。しかし、近年では建てかえ時にエレベーターを設置し、室内の段差解消や手すりの設置など、全住戸を対象にバリアフリー化を進めており、県営住宅の約25%がバリアフリー化されている状況です。特に、和歌山市内の県営住宅では、もともと建設年度が古かったことから建てかえ事業を先行してきたところであり、約39%がバリアフリー化されています。さらに、和歌山市の中心部に位置する県営住宅で見てみますと、7団地545戸のうち6団地463戸、戸数割合で約85%がバリアフリー化されている状況です。また、障害の状況に応じて追加の手すりや緊急通報装置など、さらなる支援具の設置が必要な方には、申請を行っていただくことにより対応が可能となっています。
 県としましては、引き続き安全で安心して暮らせるよう、県営住宅の建てかえにあわせてバリアフリー化を推進するとともに、こうしたバリアフリー化の状況を御理解いただけるよう情報提供の充実にも努めてまいります。
○副議長(藤山将材君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 買い物弱者問題は、地域特性や個人の状況によって必要な対策が異なっていることから、県といたしましては、過疎地域においては過疎集落支援総合対策事業のメニューの1つとして支援し、要介護認定を受けた要援護者にはホームヘルパーによる買い物サービスの提供などに取り組んでおります。
 また、民間事業者では、店舗まで送迎する買い物バスやネットショッピングなど、さまざまな取り組みがなされていますが、移動スーパーにつきましては、買い物弱者対策に有効な取り組みと認識しております。
 県では、これまで、移動販売に必要な車両購入等への国庫補助事業を積極的に活用するよう民間事業者に発信してきたところであり、今年度においては、経済産業省の中心市街地再生事業である買い物環境整備促進事業の公募に当たり、希望する民間事業者に対し、申請方法の相談や採択に向けた助言を行った結果、複数の民間事業者が採択され、移動販売を実施することができました。
 県といたしましては、今後とも市町村や関係機関と協力しながら買い物弱者対策に取り組んでまいります。
○副議長(藤山将材君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次に、農業と福祉の連携について質問させていただきます。
 初めに、障害者の就農支援について。
 農林水産省のホームページで、「農」と福祉の連携プロジェクトという事業を見つけました。高齢者や障害者のための福祉農園について、拡大、定着が図られるよう、厚生労働省と連携して支援するという事業で、福祉農園の開設・整備や、福祉・農業関係者を対象とした研修会の開催、農業専門家の派遣等について補助が受けられるようです。
 福祉分野においては、農業、園芸活動を通じて得られる心身のリハビリテーション効果や、共同作業による社会参加促進効果を改めて評価されています。また、高齢者の健康づくりや障害者の就労訓練、雇用の場として農作業を取り入れたいと考える福祉施設がふえていることが背景にあるようです。
 農業は高齢者や障害者の心身の健康維持に大変役立つので、私は農業と福祉で手と手を取り合うのはすばらしいことであると考えています。
 障害者の自立支援へ向け、障害者の働く場の拡大や授産施設、就労支援事業所における工賃向上が不可欠ですが、現状では、就労支援事業所における受託作業が中心であり、さらに就労の場を開拓していく必要があると思います。
 農業においては、繁忙期の労働力確保や担い手不足、耕作放棄地対策などの問題があります。農作業の受け皿として障害者が就労することによって、これらの課題を同時に解決できるのではないでしょうか。しかしながら、現状においては、農業関係者と福祉関係者を結びつける機会が少ないのではないでしょうか。
 そこで、本県における両者のマッチングや障害者の就農支援の状況はどのようになっているのでしょうか。今後の取り組みを含め、農林水産部長の答弁をお願いします。
 次に、生活保護受給者の農業を通じた自立支援について質問します。
 先日、テレビで、小島希世子さんという、農業を起業した慶応大学出身の30代の女性社長の特集が目にとまりました。小島さんは20代で起業後、生活保護受給者などの就農支援プログラムというテーマで、横浜ビジネスグランプリのソーシャル部門で最優秀賞を受賞しました。
 小島さんによると、農業の人手不足は年々深刻化していて、特に地元の熊本県では大規模な農家も多く、人手不足が顕著だそうです。その一方で、関東では働きたいのに仕事がない方が多くおられる。この2つの課題を同時に解決できると考えたのが、生活保護受給者の就農プログラムだそうです。
 彼女は、「生活保護は、社会にとって必要なセーフティーネットだけれども、その一方で働く喜びを奪ってしまうケースがある悲しい現実です。農業体験を通じて、栽培技術の習得だけでなく、収穫や達成感の喜びを体験しながら自立のきっかけをつかんでもらいたい」と話しています。そして、「多くの受給者が自立し、今後さらに行政や新しい組織を巻き込んで支援メニューや事業の仕組みを発展させていきたい」と抱負を語っていました。
 私は、仕事とは、収入を得る手段だけではなく、仕事をすることによって人間としての自尊心が得られるもので、心身の健康、人間としての成長を与えてくれるものであると考えています。仕事を通じることによって人とのつながりを保つこともできます。特に農業は、土に触れ、汗を流し、畑や田んぼで共同作業を行います。農業は、人と人とを結びつける大きな力を持っていると思います。
 私は、小島さんの次の言葉にすごく共感いたしました。「土に触れ、自然のパワーを全身で浴びると、人は本当に変わるんです。大地は、目に見えない価値であふれています。食べ物の安全性を考える食育の場として、心の癒しの場として、家族や友達とのコミュニケーションの場として、コトモファームが役に立てればと願っています」。
 小島さんの体験農場「コトモファーム」は、神奈川県藤沢市にあるそうです。首都圏と和歌山県では生活保護受給者の状況が異なるかもしれませんが、生活保護受給者の就農プログラムはとても参考になる先進事例だと思いました。
 私がこのプランに魅力を感じたのは、現在農業は70代、80代の高齢者によって支えられています。例えば、50代、60代の生活保護受給者が普通に職を見つけるのが困難であっても、農業就労は和歌山県でも同様の取り組みができると考えました。
 生活保護受給者の農業を通じた自立支援について、福祉保健部長の答弁をお願いします。
○副議長(藤山将材君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 障害者の就農支援についてでございますが、農業の生産現場では、収穫期などの繁忙期の労働力不足を解消するための人員確保は重要な課題であり、県では、農業者の求人情報をホームページを通じ広く情報発信しておりますが、ミカンや梅など傾斜地での収穫作業が多く、現状ではマッチングが困難な状況にあります。
 このような中、県では、さまざまな団体からの就農に関する相談に対応してきたところであり、これまでNPOや社会福祉法人など7団体が水田や畑といった作業条件のよい農地を借り受け、障害者の方々による米や野菜等の生産を行っております。さらに、生産した麦をパンに加工して販売している福祉団体もございます。
 今後も、福祉関係機関との連携により、農地のあっせんの相談があった場合の助言や普及指導員による栽培技術指導など、障害者の就農が円滑に行えるよう支援してまいります。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 生活保護受給者の自立支援の取り組みですが、生活保護受給者の方々が介護施設でボランティア活動をすることにより就労意欲の向上を目指す自立支援プログラムを実施しており、向上が図られた方には就労支援員がハローワークへの同行訪問を行うなどの支援を行い、就労につないでおります。
 議員から御提案のありました農業を通じた取り組みは仕事をする喜びや自信を取り戻すことに大変効果があると考えますので、農業を活用し、訓練を行っている障害者の就労支援施設などにも対象を広げ、今後、農林水産部と連携しながら生活保護受給者の自立支援を図ってまいります。
○副議長(藤山将材君) 森 礼子さん。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 答弁、どうもありがとうございました。
 質問はこれで終わりですが、全国トップクラスの移住・定住大作戦の今後の成果はすごく楽しみでありますし、また、今回、県民の移動手段に関する質問ができなかったんですが、これから移住・定住大作戦を推進していく上でとか、また今困ってる県民への対応をどうするのとか、また改めて聞きたいと思っております。
 それと、県営住宅に関しては、情報提供が十分でないために利用できないと思い込んでいる障害者の方がいたということなので、情報提供の充実をお願いしたいことと同時に、それができていなかったことで寂しい感情を持っておられたことがとても残念に感じましたので、どうぞよろしくお願いします。
 これで、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、森礼子さんの質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時16分散会

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