平成27年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


平成27年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(全文)


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平成27年6月
和歌山県議会定例会会議録
第5号
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議事日程 第5号
 平成27年6月22日(月曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第96号から議案第116号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 請願の付託
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会議に付した事件
 第1 議案第96号から議案第116号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 請願の付託
 第5 休会決定の件
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出席議員(42人)
 1番 堀 龍雄
 2番 中西峰雄
 3番 森 礼子
 4番 立谷誠一
 5番 前芝雅嗣
 6番 浅井修一郎
 7番 井出益弘
 8番 宇治田栄蔵
 9番 秋月史成
 10番 川畑哲哉
 11番 泉 正徳
 12番 濱口太史
 13番 花田健吉
 14番 尾﨑太郎
 15番 尾崎要二
 16番 中村裕一
 17番 鈴木太雄
 18番 岩田弘彦
 19番 藤山将材
 20番 服部 一
 21番 冨安民浩
 22番 吉井和視
 23番 中本浩精
 24番 中 拓哉
 25番 山本茂博
 26番 岸本 健
 27番 谷 洋一
 28番 新島 雄
 29番 岩井弘次
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 山下直也
 35番 山田正彦
 36番 菅原博之
 37番 谷口和樹
 38番 奥村規子
 39番 雑賀光夫
 40番 松坂英樹
 41番 坂本 登
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       宮﨑 泉
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      和歌哲也
 総務部長       市川靖之
 企画部長       高瀬一郎
 環境生活部長     栗山隆博
 福祉保健部長     幸前裕之
 商工観光労働部長   藤本陽司
 農林水産部長     鎌塚拓夫
 県土整備部長     石原康弘
 会計管理者      岩橋良晃
 教育長        宮下和己
 公安委員会委員    大桑いく嗣
 警察本部長      下田隆文
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       江川和明
 次長         上坊 晃
 議事課長       糸川 徹
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼議事班長
            尾﨑善亮
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 議事課副主査     中尾祐一
 総務課長       西原龍也
 政策調査課長     中口 匠
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  午前10時0分開議
○議長(前芝雅嗣君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第96号から議案第116号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 14番尾﨑太郎君。
  〔尾﨑太郎君、登壇〕(拍手)
○尾﨑太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 私も、いろいろとありまして、随分、ちょっと深手を負いましたけれども、選挙の洗礼こそ政治家にとってのみそぎであります。心機一転、御支援を賜った皆様方の御期待に沿えるべく、微力を尽くしてまいりたいと思います。
 あの事件については、不可解なことも多く、私も可能な限り法曹関係者や捜査関係者OBの方からいろいろな意見を拝聴し、また、事件の参考となる多くの書籍にも目を通してまいりましたが、いまだ公の場で私見を述べるのは時期尚早ではないかと思います。ただ、国家権力の恐ろしさというものは、身にしみてわかりました。
 社会契約論で有名なホッブズは、国家権力をリバイアサンに例えました。リバイアサンとは旧約聖書のヨブ記に出てくる海の怪獣ですが、国家権力とは何らかのたがをはめておかなければ暴走する可能性のある極めて危ない側面を持ったものです。このたがこそ、近代国家における憲法であります。
 青木英五郎氏の「日本の刑事裁判─冤罪を生む構造─」に、アメリカの連邦最高裁判事の言葉が紹介されています。いわく、「私は、ソ連の手続でアメリカの法律によって裁かれるよりは、むしろアメリカの手続でソ連の法律に従って裁かれるほうを選ぶであろう」。近代国家の強大な政府権力を国民にあだなさぬよう発現せしめるには、手続と運用が何よりも大切です。
 我が国の刑事訴訟法は、まことに立派な手続法でありますが、運用において十全になされているとは言いがたいのではないでしょうか。恐らく、大学で法律を学んだだけで特に法曹関係の仕事にはついていない場合、自分が刑事事件にかかわるようになってしまったら、大学で学んだことはほとんど実際の役には立たないことを思い知るでしょう。
 法学部の学生ならば一度は読むように推薦される本に、川島武宜氏の「日本人の法意識」があります。日本の法典は、明治政府が西洋列強と渡り合い、不平等条約を撤廃せしめるために急ごしらえで整備されたものです。各法典と伝統的な日本人の規範意識とは乖離した面も多くありました。
 江戸時代に切り捨て御免の法があったといって、実際に武士が町人を無礼打ちにする、今日の法概念で言うところの権利があったわけではないですし、実際にそんな例はほとんどありませんでした。もちろん、三くだり半を突きつけて気に入らない嫁を離縁できた亭主もいなかったのです。うちの主人とは名ばかりで、事実上、家を牛耳っているのは奥さんであるのは、今も昔も変わりません。伝統的な社会では、成文化された法以上に慣習や道理といった規範があり、物事の正否は成文法によってというより、それらによって決められていたのです。
 何より、権力者たる武士自身が、そのような目に見えぬおきてでみずからを厳しく律していましたし、ある意味がんじがらめになっていったと言ってもいいでしょう。庶民も権力者も物事の理非を判断できる規範を共有し、社会は極めて安定したものでありました。国際社会と向き合うのでなければ、これでよしであります。
 しかし、我々は、国の独立を守るため、近代国家となって国際社会を形づくっていた西洋列強と渡り合わねばならなくなりました。そして、今は、自由と民主主義の価値を共有する国際社会と協働して、お互いに安全保障を図っていかなければなりません。
 いずれにせよ、近代国家となりますと、その権力はむき出しの権力ですから、惻隠の情というわけにはいきません。個人は政府権力の前では余りにも無力であるのです。ですから、これを憲法、手続、運用でがんじがらめにしておかなければならないのです。
 郵便料金の割引制度を不正利用するため証明書類の作成にかかわったとして、厚生労働省の当時課長であった村木厚子氏を大阪地検特捜部が逮捕した事件がありました。毎週のように、村木さんは東京から事情聴取のために大阪へ呼び出されたそうです。交通費はもちろん自費、子供2人を抱え、本省で仕事をしていた村木さんの心労は察するに余りありますが、350万円ほども借金ができたといいます。
 絶望的な状況でも決して根を上げなかった村木さんの精神力には驚嘆しますし、その後、彼女が厚生労働省の次官に就任なさったのもむべなるかなではありますが、あのような状況下で果たして普通の人は検察の求める証言を拒むことができるのか、甚だ疑問であります。
 国会では安保法制の審議がなされているところですが、6月4日の衆議院憲法審査会で、我が党が推薦した憲法学者の長谷部恭男先生が、集団的自衛権を違憲とする意見を述べておられました。前にも申し上げたことがありますが、長谷部先生は私の大学時代の憲法の先生でした。久しぶりに見る先生は随分頭も白く薄くなっておられましたが、学者として堂々と思うところを述べられたのはさすがでありました。
 ただし、違憲か合憲かを最終的に判断するのは学者ではありません。また、違憲とする学者が多いからといって、その学説が妥当だとは限りません。およそ学問における正しさほど、多数決になじまないものもないでしょう。
 ロッキード事件では、東京地検は贈賄側の副社長コーチャン氏と東京支社長クラッター氏の刑事免責を確約し、最高裁も不起訴を明らかにしました。その上で、両名には、ロサンゼルス連邦地裁で嘱託尋問が行われましたが、その調書を東京地検は証拠能力ありと認めました。そして、何と弁護側からの反対尋問の請求は却下されたのです。
 憲法第37条の第2項「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。」とあります。明らかに、反対尋問を認めないのは憲法違反であります。
 しかし、当時、この裁判が憲法違反であるとの論陣を張った憲法学者がいたでしょうか。私の知る限りでは、英文学者の渡部昇一先生と政治学者の小室直樹先生ぐらいでありました。
 憲法第81条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」としています。言うまでもなく、違憲かどうかの最終的な判断は最高裁が行います。
 ただし、我が国では、具体的な訴訟事件を前提として、その訴訟に必要な限りにおいて憲法審査が行われます。付随的違憲審査制と呼ばれています。
 残念ながら、ロッキード事件の上告審では、田中被告が鬼籍に入ったため公訴棄却となり、審理は打ち切られました。当時のオピニオン誌には、最高裁は嘱託尋問調書の判断をしたくないために、田中被告が亡くなるのを待っているのではないかとの論考が出ていたように思います。
 巨悪を裁くためには憲法をじゅうりんしてもやむを得ないというのが当時の世論、日本人の法意識であったのか。憲法学者まで、そろってこの暗黒裁判に異議を唱えなかったことは、記憶しておかなければなりません。
 ロッキード裁判の1審有罪判決の後、田中角栄氏が議員辞職を拒み控訴をしたことを、「朝日新聞」は「1審の重みを知れ 居座りは司法軽視 逆転無罪あり得ない」との大見出しで報じました。
 憲法第32条「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」、護憲派をもってなる朝日ですら、いや、朝日だからか、この始末です。
 昭和32年、基地拡張に反対するデモ隊の一部が米軍立川基地に立ち入りました。これは日米行政協定に伴う刑事特別法違反に該当する行為でありましたが、被告は、日米安保条約そのものが憲法第9条に違反するので、日米行政協定に伴う刑事特別法そのものが無効であるから無罪だと主張しました。
 昭和34年、東京地裁はこの主張を全面的に認めました。伊達判決と呼ばれています。しかし、国は、高裁には控訴せず、いきなり最高裁に上告しました。超スピードで裁判は進み、何とその年のうちに判決が出ます。判決の要旨は、「憲法の平和主義は無防備、無抵抗ではない。自衛権は国家固有の権利である。集団的自衛権は禁じられていない。憲法9条が禁止する戦力は日本国の軍隊であり、外国の軍隊は対象外である。米軍の駐留は憲法9条の平和主義に合致する。日米安全保障条約のように高度な政治性を持つ条約は、一見して極めて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について法的判断はできない」です。
 私の大学時代のもう1人の憲法の先生であった芦部信善先生は──この先生は、安倍総理がその名を知らないのかとやゆされた日本の憲法学の泰斗ですが──統治行為論を展開しました。統治行為とは、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為であり、裁判所による法律的な判断が理論的には可能であるのに、事柄の性質上、司法審査の対象から除外される行為と定義されています。
 この判決は集団的自衛権を認めるものではないとの意見が国会でも出ていますが、判決理由に、「我が国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことはできることはもとよりであって、憲法9条は、我が国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではないのである」とあります。他国に安全保障を求めることは、すなわち集団で自衛するということでしょう。そうでなければ、日本はただの属国、保護国です。
 ちなみに、個別的自衛権については、我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、我が憲法の平和主義は、決して無防備、無抵抗を定めたものではないと判示されています。
 昭和35年3月31日、参議院予算委員会で林修三法制局長は、
  集団的自衛権という言葉についても、いろいろ内容について、これを含む範囲においてなお必ずしも説が一致しておらないように思います。御承知の通りに、国連憲章では、集団的自衛権を固有の権利として各独立国に認めておるわけです。あるいは平和条約におきましても、日ソ共同宣言におきましても、あるいは今度の安保条約におきましても、日本がいわゆる集団的自衛権を持つことをはっきり書いてあるわけです。そういう意味において国際法上にわが国が集団的、個別的の自衛権を持つことは明らかだと思います。ただ、日本憲法に照らしてみました場合に、いわゆる集団的自衛権という名のもとに理解されることはいろいろあるわけでございますが、その中で一番問題になりますのは、つまり他の外国、自分の国と歴史的あるいは民族的あるいは地理的に密接な関係のある他の外国が武力攻撃を受けた場合に、それを守るために、たとえば外国へまで行ってそれを防衛する、こういうことがいわゆる集団的自衛権の内容として特に強く理解されておる。この点は日本の憲法では、そういうふうに外国まで出て行って外国を守るということは、日本の憲法ではやはり認められていないのじゃないか、かように考えるわけでございます。そういう意味の集団的自衛権、これは日本の憲法上はないのではないか、さように考えるわけでございます。
 集団的自衛権をめぐる混乱は、実は定義の問題なのです。集団的自衛権は、まさに権利でありますから、それをどのように行使するかは適宜判断すればよいのです。米軍に基地を提供することはやるが外国には出ていかない、そういう判断があってもいい、しかし、集団的自衛権を一切持っていないというのは論理的ではないでしょう。
 その後、内閣法制局では、他国に基地提供することは国際法では集団的自衛権の行使になるが、日本国憲法の解釈では、在日米軍はもとからあるのだから集団的自衛権の行使には当たらないとの解釈がなされ、田中角栄内閣の吉國一郎内閣法制局長官は、集団的自衛権は保持するが行使できないとしました。
 ついには、平成26年、参議院憲法審査会で横畠裕介内閣法制局長は、「今日におきまして、自衛権とは、個別的であれ集団的であれ、実力の行使に係る概念であり、その意味で基地の提供は自衛権の行使に当たるものではないと整理されております」と答弁するに至ります。おいおい、日米同盟は軍事同盟ですよと突っ込みを入れたくなります。誰がそんな整理をしたと言うのでしょう。
 日米安全保障条約の前文には、こうあります。「両国が国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次のとおり協定する」。
 小話を1つ。「世界には鹿という動物がいるが、日本にもいますよね」、「いやいや、我が国はいません」、「そんなことはないでしょう。沖縄や厚木、横須賀、三沢にもいるじゃないですか」、「あれは我が国では馬と呼んでいます」、「どう見ても鹿ですが」、「鹿でも呼び方は馬なんですよ」、「何のためにそんなことをするんですか」、「いやあ、深い意味はないんですけどね、鹿の中には凶暴な種類もいると言う人もいるんで、うちにいるのはそんな鹿じゃないんですが、住民が馬と言っておけばとりあえず凶暴なやつではないと安心するんですよ。ですから、我が国には鹿はいません。あれは鹿の姿をした馬なんです」、「お久しぶりです。馬と読んでいる鹿は元気ですか」、「ややこしいので、今はもうカバと呼んでいます」。
 憲法第98条に、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」とあります。確立した国際法規では、基地提供は集団的自衛権の行使、解釈の余地はありません。
 砂川事件の裁判長であった田中耕太郎最高裁判事は、補足意見で「我々は、その解釈について争いが存する憲法9条2項を含めて、国際社会の現状並びに将来の動向を洞察して解釈しなければならない。字句に拘泥しないところの、すなわち立法者が当初持っていた心理的意思ではなく、その合理的意思に基づくところの目的論的解釈方法は、あらゆる法の解釈に共通な原理として一般に認められているところである。そして、このことは、特に憲法の解釈に関して強調されなければならない」と述べ、憲法解釈がどうあるべきかを示しています。
 さらに、自国の防衛を全然考慮しない態度はもちろん、これだけを考えて他の国々の防衛に熱意と関心を持たない態度も、憲法前文に、いわゆる自国のことのみに専念する国家的利己主義であって、真の平和主義に忠実なものとは言えないとしていますが、これぞまさに積極的平和主義そのものではないですか。
 同盟国の危機に知らぬ存ぜぬでは国家的利己主義であり、憲法の精神に反します。行政府の一機関である内閣法制局が憲法の解釈を独占していいはずがありません。憲法は国民から政府権力への命令なのですから、解釈は主権者たる国民がするべきです。安倍総理は、集団的自衛権の憲法解釈のあり方を争点に掲げ、解散総選挙に訴えるべきであったのでしょう。
 1000年に一度の災害に備えようとする我が国が、隣国の脅威に備えないのは何たることか。災害への備えは装備だけでは不十分で、組織の動かし方や関連する法律などのソフトの整備が不可欠であるのは言うまでもありません。自衛力も全く同じ。イージス艦やF15をそろえただけで国を守れるわけではありません。
 この際、知事の憲法観をお聞かせいただきたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの尾﨑太郎君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 憲法は、国民の権利や自由を保障するために、国家がやってはいけないこと、あるいはしなければならないことを定めたものでありまして、自由を制限することが多い他の法律とは一線を画する我が国の最高法規であります。
 国家というものは非常な大きな権力を持っておりますから、憲法は国家を律し、原則として個人の権利や自由を不可侵のものとして保障したものであると理解しております。我が国は、こうした立憲主義に基づく民主主義国家であります。
 さきの大戦を経験した我が国は、不幸な歴史への痛切な反省と恒久平和を希求する強い決意から、現在の憲法下で国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3原則を堅持しているわけでございます。この平和主義をうたった憲法のもと、我が国は、これまで他国と武力衝突を起こすことなく、国民はみんな懸命に働き、国際社会にも積極的に協力し、その結果、平和国家としての現在の高い評価と信頼をかち得るに至ったものと認識しております。
 ただし、その中で日米安全保障条約を含めた外交的立ち位置も、平和国家を維持していく上で、紛争の抑止力とその目的の達成のために大いに効果があると思っております。
 司法の判断、特に最高裁判所の判断は、我が国の法治国家としてのあり方から当該案件については絶対的な効力を有するものでございますので、皆が従わないといけません。法制局の見解、学者の見解はそういうことはありませんけれども、十分に傾聴しないといけないと思います。
 しかし、大事なことは、日本人の幸せのために平和を守る、人権を守る、安全を守るということでございますので、未来永劫にある時点の見解が絶対的であるということではないと思います。時代とともに判例も変わることもあるし、法制局の見解もしかりでありましょう。あるいは、憲法や法律も正文化されたものも、正当な手続のもとで変え得るものであろうかと思います。
 国の安全保障に関することに関しましては、私は確たる見識を有しているわけではございませんが、極めて大事な事柄でありますので、常に国の将来を考えておくという観点から議論をしておくことは大切であります。議論もしてはいけないというようなことを言う人もいますが、それは間違いではないかと思っております。私も含め、国民一人一人がみずからの問題として真剣に考えなければならないと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 尾﨑太郎君。
  〔尾﨑太郎君、登壇〕
○尾﨑太郎君 まさに、憲法というのは国民が政府権力を縛るための法律で、我々国民が主体的に憲法を考えるということはすごく大事なことではないかと思うんです。
 今、安保法制のことで国会で審議されておりますけれども、我々も、ただテレビを見て、ああ、あんなこと言うてるな、こんなこと言うてるなと言うだけではなくて、この機会に憲法というものについて一度立ちどまって考えてみるということは、すごく大事なことなんではないかと思っております。
 安保法制についてはそんなに詳しく見識をお持ちではないと知事はおっしゃいましたが、そうでもなくて、よく勉強なさってると思うんです。知事も含めて、我々も一緒に勉強していきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 さて、選挙がありますと、どうしても読書の時間が確保できません。読みたいと思っていた本がたまっていたのですが、ようやくそのうちの1冊を読むことができました。トマ・ピケティの「21世紀の資本」です。昨年から大きな話題となった本ですので、お読みになった方も多いのではないかと思います。700ページに及ぶ大著ですが、この手の本としては異例の売れ行きだそうです。
 「ワーキングプア」という言葉が生まれ、小林多喜二の「蟹工船」がまた読まれ出し、1億総中流と言われた我が国も、国民の間には忍び寄る貧困、格差が大きな関心事となってきました。
 格差の拡大は資本主義の宿命か否か。ピケティの主張は、資本収益率rは常にGDP成長率gを上回るので、格差は拡大し続ける、訂正するには累進性の強い税率が効果的だとするものです。
 ピケティは、これを数学的なモデルで証明しようとはしていません。膨大なデータで実証しようとしているのです。ピケティは言います。「経済学という学問分野は、まだ数学だの、純粋理論的でしばしばきわめてイデオロギー偏向を伴った臆測だのに対するガキっぽい情熱を克服できておらず、そのために歴史研究や他の社会科学との共同作業が犠牲になっている」。これは「21世紀の資本」の初めにある一文ですが、これを読んで、私はこの分厚い本を最後まで読む決心をしました。
 私は、以前から経済学、特に新古典派と呼ばれる人たちの唱える学説に多少違和感を持っておりました。しかし、この学説は近年の経済学の主流であり、世界中の政策立案者の考え方の基礎をなしているのは間違いありません。
 彼らによれば、人間の経済活動は合理的であり、合理的活動の結果として立ちあらわれる市場のパフォーマンスは数学によって記述できる。理論経済学者である彼らによって、経済学は自然科学の装いをまとうことになったのです。あたかも、かつてマルクス経済学が真理だとみなされたのとそっくりではないでしょうか。どちらも類いまれなる知性には違いありませんが、神の見えざる手を数学的に解き明かしたのでも、歴史の運動法則を発見したのでもないのです。
 ハイエクは、「人は、ささやかな身の回りの局所的な関心や知識しかない不完全な存在であるが、その寄せ集めが結果として1つの大きな秩序を生み出す。それは、自生的秩序──スポンテニアスオーダー──である。市場は、限られた知識しかない人々が集まって、よりよい状態を発見していくプロセスである。そこには計画性は一切ない。これは、人間の理性や合理的計算によって生み出されたものではない」と言い、学生時代に明治大学の教授で後に衆議院議員になられた栗本慎一郎先生の影響で知ることになった経済人類学者のカール・ポランニーは、「人類の長い歴史から見れば、あるいは世界の多様な経済構造の中で見れば、市場経済など、いわば歴史的産物であり、近代に入って意図的につくり出された1つの経済様式にすぎない」と述べています。
 数学ができないことのひがみも多分にありますが、私が保守を標榜しているのは、社会は決して理性だけでは捉え切れないものであり、底の浅い合理主義で政策を立案することは、かえって社会を壊すとの信念からです。社会は、それぞれの生理を持つ1つの有機体であり、その振る舞いは個性的なものであると思います。我々は、歴史の英知の中に、瑞穂の国の資本主義を手探りで見つけていかなければならないと思っています。
 経済学者であり思想家でもある佐伯啓思先生の言葉をかりるならば、独自の文化を形成する企業をただ金融市場で証券として評価したり利潤の対象にしたりする投機的資本こそが生産体としての企業の一大敵対者なのです。
 もちろん、私は、市場による競争を否定しているのではありません。それどころか、激しい競争こそがよりよい生産物、よりよいサービスを生み出す原動力だと確信しています。例えば、我が国のコンビニのコーヒーのおいしさはどうでしょう。もしコンビニ業界やどこか1社で寡占されていたら、決して到達できなかった水準でしょう。各社の切磋琢磨があってこそなのです。
 私は、競争になじまないものもあるだろうと言いたいのです。社会的土台、例えば教育、医療、環境等は、過度な市場競争にさらすべきではないと考えるのです。
 「21世紀の資本」を読むまで知らなかったのですが、サイモン・クズネッツという経済学者は、資本主義の初期段階では所得格差は拡大するが、経済成長によって所得格差は縮小していくとする理論を打ち立て、ノーベル経済学賞を受賞しています。現実がこの理論どおりであるならば、まことに結構なことで、資本主義の未来はバラ色であったのですが、世界はそうなっていなかったし、今後もそうなりそうもない、それがピケティの主張です。
 しかし、資本収益率rがGDP成長率gより高いのは、ピケティの言うがごとく論理的必然ではなく歴史的必然だとしても、であれば、格差は拡大すると常に言えるのかどうか。ピケティの資本主義の第1法則――資本分配率αは資本収益率rと資本/所得比βの積――は、法則というより定義です。資本/所得比βが上がるということは、資本が労働投入以上にふえるわけですから、資本の生産性は下がります。すなわち、資本収益率rは下がります。労働と資本と大体の弾力性について、ピケティは1.3から1.6としていますが、この値が常に1を上回ると言えるのかどうか、読解力の不足もあり、私にはわかりませんでした。
 ともあれ、フランス人のグランゼコール出で、わずか22歳で博士号をとった超エリート、0.1%の富裕層へも楽々入れるであろうピケティの世の中を公正・公平なものにしていきたいとの真摯な思いは、全編を通じて感じることができます。また、この本は19世紀の仏英文学の解説も効果的になされており、バルザックを読んでみようという気にもさせてくれます。
 実をいえば、経済学者なんて、どんなことについてもほとんど何も知らないというのが真実なのだと語るこの本は、経済学の新たな可能性を探るものでしょう。未読の方には、ぜひ御一読をお勧めしたいと思います。
 さて、我が国の現時点における格差はどうなのか。世界各国と比べるならば、まだまだ低い格差にとどまっています。日本のトップ10%の保有資産シェアは48.5%で、アメリカやスイスなどの70%台とは随分差があります。意外なことに、福祉国家で有名な北欧3国も、そろって60%台後半です。資産格差については、今のところ優等生であるようです。
 では、所得格差はどうか。残念ながら、我が国の相対的貧困率、これは簡単に言うと真ん中の所得の半分に満たない低所得の人の比率ですが、平成24年で16.1%、既に現在ではアメリカに次いで2番目の高水準にあるそうです。ちょっとびっくりするような数字です。
 そこで、知事にお尋ねします。
 知事は、格差というものをどのように捉えているのか、また、本県における格差の現状はどうか、県の施策に知事の考えはどのように反映しているのか、あわせて答弁願います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 格差問題についての3つの質問に、一括してお答えしたいと思います。
 まず、私は、頑張れば報われるような社会の実現を目指すのがよいと思います。その中で、格差を生じさせないことが大目標で、生じるくらいなら経済社会を発展させてはいけないとか、あるいは経済政策の目標をいきなり格差是正に持っていくというのは、経済の活力を失わせることになるのではないかと私は考えております。
 経済が活況を呈してまいりますと、企業などの業績が上がります。資産価値も上がりますが、その結果、需要が増加して、生産も増加するインセンティブがふえてまいります。生産が増加いたしますと人手不足になりまして、雇用需要がふえます。それをつなぎとめるために、従業員をつなぎとめるためとか新しい従業員を雇うために労賃が上がって、格差も縮まる可能性があります。もっと正確には、貧困が縮小するという可能性があります。
 プロセスのいかんによっては、ただし、そこまでいかないこともあります。したがって、あるプロセスにおいて格差が生じ、貧困層が拡大するなどの問題が発生した場合、貧困に伴うさまざまな弊害を是正するため、例えばもうけた方から還元していただくような社会全体の仕組みが、私は依然として必要だと考えております。
 例えば、昨今、経済的なインセンティブを高めるために累進課税を、極端なことを言えばなくしてしまえと、あるいは是正をかなりすべきだというような議論もございますけれども、私は、ある程度は残しながら、もうけた方から税として徴収し、低所得で困っているような方々を政策的に支援していくことは必要だと考えております。
 県内での格差につきましては、それを明確にあらわす統計はありませんけれども、各種の統計等を調査した範囲では、所得の低い層が若干ふえているような気がします。経済成長がずうっと和歌山はあんまりはかばかしくなかったからだと思いますが、そういう意味では格差がより生じていると言ってもよろしいと思います。
 和歌山県では、県民皆が幸せを増進させることができるように経済発展に資する政策をとっておりますけれども、その中で貧困が緩和されるような工夫と、それに伴う弊害の手当ては十分行っていく所存でございます。
○議長(前芝雅嗣君) 尾﨑太郎君。
  〔尾﨑太郎君、登壇〕
○尾﨑太郎君 感覚的には、だんだんだんだんちょっと格差が広がってきたんじゃないかと思って、国民の間にも不安感が広がっておると思うんです。トリクルダウンとよく言われまして、ぽたぽたぽたと滴が、もうかったら落ちてくるんじゃないかというような経済理論があります。大方どうなんでしょう、今のところ、和歌山県民の中には、アベノミクスの果実がぽたぽたっと落ちてきたというような印象は、正直まだないんではないかと思います。
 和歌山に住んでおりますと、いろんなところで食事したり物を買ったりするわけですけど、そのたびに「どうですか」とお聞きしましたら、「いやいや、全然そんなん、全く何にもよなってないよ」ということをよく言われますね。
 これは、まだ時間がそこまで来てないのか、もうちょっと時間がたってアベノミクスが浸透すれば果実が我々にもめぐってくるのか、それとも根本的にこの政策は誤っているのかどうか。これは、先ほど私も述べた中にもありますけれども、もともと経済学というのは自然科学ではありませんから、ある種のイデオロギー的な側面もないわけではありません。
 ですから、これ、どうなるのかというのは、ある意味で大きな実験みたいなところもあるわけですね。長いことデフレでやってきて余りようならなかったんで、今回このような政策なんですけど、果たしてこれが正しいのかどうか。これはこれからもうちょっと待ってみなければわからないわけでありますけれども、しかし、少なくともマインドというのはちょっと好転してきてるというような統計的な指標もありますから、ぜひこの日本の経済が再び力強さを取り戻して格差が縮小し、国民みんなが少しでも幸せになれるように願っておるところでございます。
 次の質問にまいります。
 いわゆる従軍慰安婦の虚構性については、これまで何度も本会議場で論じてきたところでございます。
 軍が、慰み者にするために、朝鮮半島から年端もいかない少女も含め、8万人とも20万人とも言われる女性を強制連行したなどという話が荒唐無稽であることは、もとより明らかでありましたが、御承知のように、昨年の8月5日、「朝日新聞」が「慰安婦問題を考える」と題し、これまでのみずからの報道に対する検証記事を掲載しました。
 あの大朝日がまさか記事を取り消すとは思っていませんでしたので、まさに感無量であります。何せ最初の報道から32年たっているわけですから。「朝日新聞」のOBの方々でさえ、遅きに失したと述べておられます。
 確かに、米国下院がこの問題で日本は謝罪すべしとする決議を採択し、慰安婦の碑があちこちに建てられ、慰安婦は性奴隷との認識が世界中に広まってしまった今となっては、遅きに失したと言いたくはなります。
 しかし、検証の内容にも不満はたくさんあるにせよ、ともかくも検証記事が出て一連の報道が取り消されたことは、慰安婦問題解決に大きな前進となったことは間違いなく、その意味ではまことに喜ばしいことではあります。
 「朝日新聞」が、済州島で200人の女性を狩り出したなどと、吉田清治氏がみずからの体験を証言したとの記事を掲載したのが1982年でありました。検証記事では、「吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しましたが、証言を裏づける話は得られませんでした」と書いています。
 また、1991年には、「日中戦争や太平洋戦争で、女子挺身隊の名で戦場に送られた朝鮮人慰安婦の実態」なる記事を掲載していますが、これについては、「当時は慰安婦問題に関する研究が進んでおらず、記者が参考にした資料などにも慰安婦と挺身隊の混同が見られたことから、誤用しました」としています。
 「朝日新聞」の記者もしていた本多勝一氏と山本七平氏が、百人斬り論争を繰り広げたことがあります。
 山本氏の「私の中の日本軍」によりますと、野田少尉は大隊副官であり、向井少尉は歩兵砲の小隊長であった、2人は指揮系統も職務も全く違う、日本軍は厳格な縦社会で、直属の上官の命令以外、絶対に聞いてはならない、実戦の最中に向井少尉が砲側を離れ、小隊長の職務を投げ出して野田少尉と私的な百人斬り競争をすることなどあり得ないのだそうです。
 山本氏の主張には、実体験に基づく説得力があります。軍が組織的に慰安婦とするため数万人規模で女性を強制連行するなど、軍関係者には想像すらできないことでしょう。現に、そんなことを証言した元軍人は1人もいないではないですか。当時、帝国陸軍は世界最大級の組織なのです。口を封じるには、あるいは贖罪意識からみんな口を閉ざしていたというには人数が多過ぎます。大体、吉田清治氏自身、元日本軍人と語っていましたが、軍人ではありませんでした。たくさんいた軍関係者に話を聞く、たったそれだけのことで吉田証言の真贋に当たりがついたはずなのです。
 渡部昇一先生は、御自身も中学3年生のときに学徒勤労動員を経験されたそうですが、男子の場合、これを動員といい、女子の場合はこれを挺身隊と呼んだのだそうです。サムライジャパンとなでしこジャパンみたいなものです。渡部先生の世代は、御自分が経験しているので、挺身隊と慰安婦を同一視することなどあり得ないのだそうです。
 ですから、こんなよた話は、大朝日が取り上げなければ決して世界中に広がることはなかったと思うのです。韓国の盧泰愚大統領にしてから、1993年の「文藝春秋」3月号で、「日本の言論機関の方が問題を提起し、我が国の国民の反日感情をたきつけて国民を憤激させてしまいました」と語っています。
 日本のクオリティーペーパーといえば、やはり朝日なのです。これは皮肉で言っているのではありません。政府権力を果敢に批判するマスコミでなければ、民主主義は危機にも瀕します。
 私の実体験からも、朝日には良心的で優秀な記者がいることは確かです。現代日本社会には、軍は遠い遠い存在になってしまいました。軍を経験した方も年々少なくなってきています。歴史学者の方々には、でき得る限り当時を知る人の生の声を拾っていただきたい。帝国陸海軍とはどのような存在であったのかを深く知ることは、とても大切なことだと思うのです。
 記事は取り消されました。しかし、世界中へ拡散されてしまった誤解を解き、我々が我が国の名誉を取り戻すことは、まだまだ遠い道のりではあります。しかし、諦めるわけにはいきません。
 日下公人先生は、朝日が記事を取り消すはるか前、東京工業大学で行われた慰安婦問題のシンポジウムで孤軍奮闘し、「日下さんが言うようなのだったら、あの慰安婦たちはうそをしゃべっていることになります」と詰め寄られましたが、「そうです。彼女たちはうそを言ったんです」と平然と返しました。また、「彼女たちの心の傷についてわびなければいけない。女の尊厳の問題だ」との発言に、「違います。男の名誉の問題です」と答えています。しびれるではありませんか。男子とはこうありたいものです。
 ともあれ、全ての中学校の歴史教科書からは既に慰安婦の記述は消えていますが、高校の教科書はさにあらず。朝日の検証記事の後、教科書出版会社の中には自主的に記述の変更を文科省に申し出たところもあるようですが、高校教科書の検定はまだ2年先です。現時点では、幾つかの教科書で「従軍慰安婦」が用語として使われております。これでは、高校生は慰安婦問題の本質を誤解しかねないではないですか。軍による強制連行はなかった、女子挺身隊は慰安婦ではない、この2点がはっきりしているのなら、もはや教科書で慰安婦を語ることにどれほどの教育的価値があると言うのでしょうか。いわゆる広義の強制性については、「朝日新聞」の第三者委員会においても、吉田証言の危うさが明らかとなって、河野談話をてことして論点をすりかえたと指摘されてもやむを得ないとされています。
 かつては、本県にも、俗に赤線と呼ばれる地域がありました。先輩方から、そこで遊んだという話も聞いたことがあります。誰から聞いたかはもちろん言えませんが、慰安婦問題とはその程度の問題であったのです。そして、そんなことは、軍人であった方々には余りにも当然のことでありました。
 平成25年9月議会における私の質問に、当時の西下教育長は、「いわゆる従軍慰安婦問題につきましては、1993年に当時の河野官房長官が出した談話が政府の公式見解となっております。ただ、この問題につきましては、今後とも国内外でさまざまな議論がなされていくと思いますので、その状況を真摯にしっかりと見守ってまいりたいと考えております」と答弁しております。
 朝日の検証記事を受け、高校におけるこの問題の取り扱いはどうあるべきなのか、教育長の見解を問います。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県立高等学校で使用されている日本史と現代社会、政治経済の教科書は合わせて30種類あり、そのうち9種類には、いわゆる従軍慰安婦について記述しているものがございます。
 地理歴史、公民の学習指導要領では、「客観的かつ公正な資料に基づいて、事実の正確な理解に導くようにするとともに、多面的・多角的に考察し公正に判断する能力を育成する」ことや「社会的事象に対する客観的かつ公正なものの見方や考え方を育成するとともに、学び方の習得を図る」ことなどを重視することとしてございます。
 県教育委員会では、こうした学習が適切に行われるよう、学校訪問や教育課程に係る研修会等、機会あるごとに各学校や教科の担当教員を指導しているところでございます。
 議員御指摘のとおり、いわゆる従軍慰安婦は、過去の新聞記事等において新たな事実が確認されてございます。今後、「従軍慰安婦」という用語は、この事実をもとに教科書の改訂や検定基準の変更等も考えられることから、慎重に取り扱わなければならないと認識してございます。
 本県といたしましては、学習指導要領にのっとり、子供たちが主体的に適切な情報を収集し、正しい判断と行動ができる社会人となるための資質を、さまざまな教育活動を通じて身につけさせてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 尾﨑太郎君。
  〔尾﨑太郎君、登壇〕
○尾﨑太郎君 わかったような、わからんかったようなちょっと答弁ですけれども、学習指導要領にのっとって客観的に判断をしていくと。客観的に判断をしていくその判断の中に、一遍、河野談話というものが妥当であったのかどうか、これ、格好の教育の材料になるのではないかと思うんですね。
 単に、政府の偉いさんが言うたから、それはそのまま真実だと思い込むようでは、これぞ正しい判断をみずから主体的にしていくということから大きく外れたことではないのかなと思うんですね。
 ぼちぼち、マスコミとかそういうところで報道される中にも、「いわゆる従軍慰安婦」という言葉の表現から「慰安婦問題」というふうに既に変わってきております。学校現場でも適切に配慮されて、この問題に取り組んでいただけますよう御要望申し上げまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、尾﨑太郎君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 37番谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)
○谷口和樹君 皆さん、こんにちは。37番谷口和樹でございます。任期初議会でございます。微力ですが、和歌山県議会の一員として県民の生活に寄り添う議員で、全力でこれからも頑張ってまいりますので、ぜひとも当局、そして先輩議員の皆様方には御指導、御鞭撻をよろしくお願いいたしまして、4年間よろしくお願いいたします。
 まず、1つ目の質問をさしていただきます。
 県立高等学校の寄宿舎の現状についてということで、1番、和歌山市内の県立高等学校生徒の共同寄宿舎について質問させていただきます。
 先月、担当課にお願いをいたしまして、資料1の田辺・西牟婁の4寄宿舎を視察させていただきました。田辺高校、神島高校男子、南紀高校の生徒が入る若草寮、田辺工業高校、神島校高男子の紀山寮、神島高校女子の湾じゅ寮、熊野高校・正修寮、いずれも昭和40年前後に建築されていますので、築45年から50年がたちます。その後の改修後も20年前後がたって、傷みが目立つようになっています。
 もともと、50年前の寄宿舎には設置以来からの考えもあったと思いますが、本県では、中学生の学校選択の幅を拡大する、高等学校の個性化、多様化を一層推進するために平成15年に県立高校学区制が撤廃されて、県内の県立高等学校にはどこからでも受験できるようになりました。それとともに、寄宿舎のニーズも大きく変化するとともに、新しいニーズも生まれました。そして、その1つが和歌山市内の寄宿舎の必要性であります。
 遠距離通学を理由に進路を変更、特に寄宿舎がないことで変更した受験生の調査、これはぜひしていただかなければならないところだと思いますが、実際のところ、学区制撤廃前は、地域内の他校との違いで、いわゆる地域で1番であった学校が県内にはたくさんありました。しかしながら、撤廃後は、その地域で1番よりも県内でよりよいところへ、将来を真剣に考える子供たちはより高みを目指し志望することは必然で、その受験生のニーズが和歌山市内の高校に偏ってあることは、学区制撤廃後10数年の元学区外からの入学者数を見ていただくとわかると思います。
 選択の幅を広げる、学校の個性化、多様化を目的にした学区制撤廃以降の進学志望の変化から、和歌山市内への進学を希望する通学に時間がかかる地域のこれからの子供たちのために、和歌山市内への共同寄宿舎の設置の必要性について教育長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの谷口和樹君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県立高等学校の寄宿舎につきましては、居住地が山間部にあり、学校への通学に時間がかかったり、公共交通機関が不便で通学困難な生徒への支援、また保護者の経済的負担の軽減などを目的として、紀南地方を中心に設置しています。
 議員御提案の和歌山市の寄宿舎設置につきましては、本県の寄宿舎設置の考え方や、学校施設の防災対策や老朽化対策等、計画的に取り組むべきものがありますので、将来的な研究課題と考えてございます。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひニーズの調査をお願いしたいところでございますけれども、共同寄宿舎ということで、紀南では幾つかの高校で1つで運営してる寄宿舎もございます。ぜひとも今後、検討・研究課題としてよろしくお願いいたします。
 2つ目の質問に入ります。
 田辺・西牟婁地方県立高等学校の寄宿舎のインターネットと空調環境についてお聞きをいたします。
 Wi─Fiやインターネット環境の必要性は既に皆さんも御承知だと思いますが、今や携帯端末、タブレット、パソコンを使わずに仕事をすることがあり得ない人が大半であります。その電子機器も通信環境が整って初めてその能力を最大に使え、働く人たちも仕事をする上で高速通信環境が当然であるように、今や高校生にとっても同じであります。
 通信型、配信型の塾や教材、資料のやりとり、社会に出るときに通信環境や機器を使いこなす能力自体が基礎能力として見られることから、今や高校生の学習環境においてインターネット通信環境の整備は必須と考えます。
 今回は寄宿舎でのインターネット環境の整備についてお聞きするところでございますが、帰宅以降の自宅通学者と寮生との学習環境の格差を埋めるためにも、寄宿舎内のインターネット環境の整備について教育長にお聞きいたします。
 同じように、学校内だけでなく、役所を含めた公共施設を初め、あらゆる民間施設のほとんどで空調が整備されている中、学生寮はミーティングルーム、食堂以外は空調が整っていないところがほとんどです。使う使わないは個人の自由ですが、空調が学習の効果にも影響を及ぼすと言われています。寄宿舎への空調設置について、教育長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) インターネット等の学習環境の整備につきましては、学習形態の変化や教科の調べ学習等により、その必要性は高まるものと考えてございます。その一方で、子供たちがネット依存に陥り、学習時間が減少するなどの生活習慣の乱れやインターネット上のトラブルなど、生徒指導上の大きな課題が見られます。寄宿舎でのインターネット環境の整備は、学習と生活の両面を考慮し、慎重に検討する必要がございます。
 寄宿舎の空調設備につきましては、全ての寄宿舎で食堂などの共有スペース及び厨房に設置してございます。また、生徒の部屋については、空調設備の設置を希望する者が設置できるよう、要望に応じて空調電源設備を順次整備してございます。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 よろしくお願いします。
 3番目の質問に入ります。
 県立神島高等学校寄宿舎の移築について質問さしていただきます。
 せんだって視察させていただいた4寄宿舎の中でも、県立神島高等学校の女子学生寮・湾じゅ寮は海のすぐそばにあり、海抜は約2メートル、波打ち際から距離も約50メートルぐらいでございます。老朽化したこの寮には玄関に救命用具が積まれており、緊急時に備えています。
 しかしながら、県下でも最も波打ち際から近いところにある湾じゅ寮は、築50年、改修後23年を経過し、海抜が低く、海から最も近い上に老朽化が著しいところであります。
 総合的に考え、移築の必要性について教育長にお聞きいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 現在、神島高等学校及び寄宿舎においては、防災教育や避難訓練などを実施し、確実に防災意識を定着させるよう取り組んでおり、津波対策についても、地域住民や関係機関と連携したより実践的な避難訓練を行うなど、1人の犠牲者も出さないよう防災教育を進めてございます。
 県立高等学校の寄宿舎の現状については、県内全域にかかわる課題であるため、将来的には神島高等学校寄宿舎を含め、そのあり方を検討していく必要があると認識してございます。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひよろしくお願いいたします。
 2番目の質問に入ります。
 高齢者に配慮した投票所についてお聞きをいたします。
 投票所となる施設には専ら地区集会場や市町村施設が多いですが、今までの選挙、今回の選挙を通じて、高齢化が進む和歌山県において、投票率の云々ではなくて、投票所での、例えば靴を履いて投票できますとか、投票所への高齢者対策が必要と感じました。靴を履いての投票など、投票所における高齢者対策について、選挙管理委員会委員長にお聞きをいたします。
 あわせて、高齢化が進む和歌山県において、現在もそうですが、今後さらに高齢者に配慮した投票所の場所の再考が必要になってくると考えます。市町村とともに、高齢者に配慮した配置の再考の必要性について、選挙管理委員会委員長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 選挙管理委員会委員長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○選挙管理委員会委員長(上山義彦君) 高齢者に配慮した投票所についてでございますが、選挙人の投票機会を確保することは非常に重要であると認識しているところであり、中でも、今日の高齢化の進展する中で、高齢者の方にとって投票しやすい環境づくりというのは常に配慮しなければならないと考えております。
 議員御指摘のように、靴を履きかえずに土足で出入りできるよう投票所の設備を整えることについては、市町村選挙管理委員会に対して常々周知しているところです。また、高齢者の投票環境向上のため、投票所入り口に段差がある場合のスロープの設置や人的介助での対応、椅子に座って利用できる投票記載台の整備などについても助言しているところでございます。
 投票所の設置については、選挙の都度、市町村選挙管理委員会が定め、告示しなければならない旨が規定されております。この投票所の設置に当たっては、投票所までの距離あるいは地形及び交通の利便等、地域の特性を十分考慮して決定されるよう助言しているところでございます。
 選挙管理委員会といたしましては、急速に進む高齢化に対応すべく、今後とも市町村選挙管理委員会と連携し、投票しやすい環境づくりに一層取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 よろしくお願いいたします。
 3番目の質問に入ります。
 スポーツコミッションとラグビーワールドカップということで、1番、ラグビーワールドカップ2019における海外チーム合宿誘致に向けて、現状での国内滞在予測について質問さしていただきます。
 この秋、イギリスで開催されるラグビーワールドカップですが、2019年の開催に向けて、ことし開催の状況から参加国数や合宿人数、受け入れ候補数、さまざまな受け入れに対しての課題など、どれぐらい調査が進んでおられますか。教育長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) ラグビーワールドカップ2019の概要ですが、参加チーム数は20チームでございます。同大会組織委員会の情報では、各チームの規模はおおよそ60名程度で、通常、初戦の約10日前からキャンプを実施します。
 キャンプ候補地数については、立候補の受付が来年の春以降であるため、承知してございません。
 滞在方式は、拠点を1カ所決め、そこから各試合開催会場へ通う拠点型と、試合開催都市あるいは近隣の都市を移動しながら調整を行う移動型の2つがございます。平成19年のフランス大会までは全てのチームが拠点型でしたが、平成23年のニュージーランド大会と平成27年のイングランド大会では、全てのチームが移動型を選択してございます。なお、イングランド大会での移動型公認キャンプ地の位置的条件は、練習会場から競技会場までの移動時間が50分以内となってございます。
 平成31年の日本大会でも移動型が主流になると予想されており、本県にとって厳しい状況ではございますが、まずは公認キャンプ地として選定されることが重要な第1ステップであると考えてございます。
 公認キャンプ地の要件は平成28年春以降に発表されますが、それまでも可能な限り情報を収集し、関係市町村と連携しながら必要な準備を進めるなど、キャンプ誘致の実現に向け、しっかりと取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひよろしくお願いいたします。
 2つ目の質問です。スポーツコミッションの育成について。
 今後、東京オリンピック、ラグビーワールドカップ2019など、世界的スポーツイベントの日本開催が予定されています。一度、トップクラスの合宿誘致を受け入れられることで、その後のプロ・アマ問わずの合宿誘致にも大きく影響されると考えます。ぜひ、チャンスを物にしていただきたい。そして、世界レベルの合宿受け入れには、地域の受け入れ団体にも大きく頑張っていただけるようにつなげていくことが大切であり、そのためにも、トップアスリートを受け入れられるスキルアップや勉強が必要であります。
 スポーツコミッションの育成、スキルアップへの取り組みの必要性について、教育長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) ことし北京で開催される世界陸上競技大会を皮切りに、2017年にはユニバーシアードが台北で、2018年にはパンパシフィック水泳選手権が東京で開催され、2019年ラグビーワールドカップ日本大会、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会と続いてございます。
 本県にとっても、海外ナショナルチームの事前キャンプを誘致する絶好の機会であり、それに向けて市町村や関係団体と連携協力をしていくことが不可欠でございます。そのため、本年3月に市町村の担当者の方々とキャンプ誘致に関する勉強会を開催したところであり、今後も定期的に開催していく予定でございます。また、今年度からキャンプチームサポート事業として、市町村とともにキャンプを行うチームのニーズや目的にマッチしたトレーニング環境を提供しているところです。
 このたび、8月に開催される北京世界陸上に参加するオーストラリア陸上チームが、本県で事前キャンプを実施することになりました。現在、和歌山市、和歌山陸上競技協会と受け入れ準備を進めていますが、こうした取り組みから得られたキャンプサポートのノウハウや情報などは、キャンプ誘致に取り組む市町村や関係団体にさまざまな機会を通じてお伝えしてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひ、東京オリンピック・パラリンピック、そしてラグビーワールドカップ2019に向けて頑張っていただきたいと思います。
 続きまして、4番目の質問に入ります。
 紀の国わかやま国体・わかやま大会での県内産梅干しと関連商品のPRについて質問さしていただきます。
 本年度も、県内産梅の取引では厳しい状況が予測されています。ふだんプロモーションといえば都心部へのPR等ですが、紀の国わかやま国体・わかやま大会に来られた方であれば、非常にコストに対しても、運動選手への機能性に対しても、効果的にプロモーションできる好機であります。
 県産梅干しと関連商品の消費拡大のために、紀の国わかやま国体・わかやま大会での県内産梅干しと関連商品のPRについて、農林水産部長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 農林水産部長鎌塚拓夫君。
  〔鎌塚拓夫君、登壇〕
○農林水産部長(鎌塚拓夫君) 紀の国わかやま国体・わかやま大会には、県内外から多くの来場者が見込まれており、県産農産物を全国にPRする絶好の機会と考えております。
 梅干しは、熱中症予防や疲労回復などの効果が期待できることから、県では両大会の開閉会式、観覧者や出場される全ての選手、役員等に、梅の機能性をPRするチラシとともに、1個ずつ包装した梅干し約10万個を配布することとしております。現在、日高・西牟婁地域の関係市町やJA、梅加工業者等で構成する紀州梅の会に委託して、商品づくりを進めているところです。
 また、開閉会式会場では、県内での飲食や販売促進を図るため、「紀州梅バーガー」や「わかやまポンチ」などの梅関連商品を紹介したパンフレットを観覧者等に配布するとともに、開閉会式会場や県内各地の競技会場では、梅干しや各種関連商品が販売されることとなっています。
 今後も、関係市町や紀州梅の会と連携を図りながら、引き続き本県特産の梅の魅力を発信し、消費拡大に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひ、大スポーツイベント、紀の国わかやま国体・わかやま大会に向けて、せっかく開発されたアスリート用梅干しというのがあります。こちらのせっかく開発したものをぜひ生かせるように御要望さしていただきたいと思います。
 それでは、5つ目の質問に入らしていただきます。
 ビジネストリップや外国人観光客向けの当日チケットの一括管理について質問さしていただきます。
 近畿経済産業局の関西国際空港から関西への入り口拠点、大阪でとったアンケートからの報告書では、関西圏での外国人観光客、ビジネストリップの方のチェックイン後の動向というのは、ホテル内で過ごす、周辺を散策する、これが一番多くて、比較的時間をもてあましてるとの内容であります。
 あわせて、海外に比べ、求められる余暇時間の過ごし方には、1番にライブエンターテインメントというのがあります。
 ライブエンターテインメントというのは、演劇、コンサート、ダンスといった、その瞬間、その場所でしか経験できない生の感動の提供で、在庫や再生産がきかない、そういうエンターテインメントであるということです。
 現在の日本のライブエンターテインメントの入場券販売は、おおむね販売所やネットでは前日までの販売。当日券は、これまで会場でしか販売されず、探せば行けるかもしれないが、なかなか来訪者の手に届きにくい。入手方法に課題がある現状であります。
 これに対して、観光や出張に来て時間が余っている人、関心はあっても予約をしてまでという方々に、空席のまま売れ残るであろう当日入場券を手に入れやすくする仕組みを近畿経済産業局の呼びかけでTTCとして2010年に試験運用をされています。
 目的は、新しい経済効果と観光客への満足度(CS)の向上と都市魅力の向上につなげるということですが、これはニューヨーク・タイムズスクエアの「tkts」、ブロードウエイの当日残席を集約して観光客に当日割引販売する仕組みをモデルにしています。
 全体的に素材不足、非常設公演、言葉の壁など課題がありますが、将来的にTTCのような外国人観光客やビジネストリップの方のチェックイン後の空き時間に、和歌山のコンサートやライブ、演劇の当日入場券の取り扱いの仕組みづくりで都市魅力の向上につなげていけるようにできないか、商工観光労働部長にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 国内外における効果的な観光プロモーション等の成果により、平成26年度の和歌山県内の宿泊者は約518万人と、紀伊半島大水害前の平成22年の水準に回復し、外国人観光客についても過去最高の30万人を記録するなど、近年、日本人、外国人を問わず多くの観光客が和歌山県内を訪れるようになってきています。
 史跡、名所を日中にめぐり、夕方以降はホテル、旅館に滞在するような観光ではなく、夜もまちを散策していただき、御指摘のエンターテインメント体験のほか、ショッピング、あるいは地元ならではの食材、料理を提供する飲食店で食事などを楽しんでもらうことは、観光客には大きな満足感を与えると同時に、地域への経済効果も大いに期待されるところです。
 そのため、まずは旅館、ホテルの窓口、観光案内所、ウエブサイト等を活用することにより、ショッピング、食事に関する情報、及び当日実施されるエンターテインメントを初めとする旬なイベント情報を周知し、夜の和歌山の魅力の発信に取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 よろしくお願いいたします。
 それでは、最後の質問、フィルムコミッションについて質問さしていただきます。
 フィルムコミッションによる地域振興とプロモーションということで質問さしていただきます。
 まず、質問に入る前に、今回、日本・トルコ合作の「海難1890」のクランクアップにお祝いを申し上げるとともに、撮影に至るまで、撮影に当たって御苦労されました地元支援の皆様方、関係者の皆様方に敬意を表したいと思います。あとは公開が待ち遠しいかと思いますが、無事に封切りから日本、そして海外の皆様方により多く見ていただくことを心より御祈念申し上げます。
 2005年に南紀田辺世界遺産フィルムコミッションを仲間と設立いたしました。持っていた地域振興というFCの構想と、県から真砂田辺市長にシネマーケティングという旅と映画で地域おこしというお話がありまして、映画撮影の話があるが受けれるかという市長の言葉がきっかけで若い仲間とつくり上げていったのが、そのフィルムコミッションでございました。
 シネマーケティングの安田真奈監督の「幸せのスイッチ」が2006年、その前に「ストロベリーフィールズ」という作品がありまして、ロケハンや交渉から約2カ月、実行委員会の皆さんとともに寝食をともにびっちりつき合いました。
 「幸せのスイッチ」では、田辺商工会議所青年部、そしてまちの若手の「パナットグループ」さんという電気店のグループさんと合同のフィルムコミッション、タッグを組んで、市民エキストラ、支援企業、団体のおかげで、規模は小さいですけれども、すばらしい作品を完成することができました。手伝った皆で完成を喜び、上映の宣伝、販売まで一緒に走り回り、その地域振興の効果は県にも大きく取り上げていただきました。
 「ストロベリーフィールズ」では、ユニジャパン様の海外事業に乗って、フランス・カンヌ映画祭まで行きました。その2本の映画とフィルムコミッションを経て生まれた人のつながりが、第9回目を迎える田辺・弁慶映画祭の立ち上げにつながりました。
 地域の若者たちが仕事以外の時間を撮影の補助に費やし、何十日も寝食をともにして、トラブルには撮影隊のかわりに必死に頭を下げて、でき上がった後はPRに全国を走り回り、結果、何を得たか。映画を見た人、撮影に携わった人、皆一様に故郷のすばらしさを再認識したと言います。
 当時、地域地域が持っていた歴史や郷土愛など、市町村合併で自分たちのまちはどう表現すればよいか、飾る言葉を見つけかねていたそのときに、飾る言葉と自信とを取り戻させてくれたと考えています。
 すばらしい映画には、地域の価値を魅力に変える力があります。このすばらしい作品の持つ絶大な映画の力を、さらに地域振興に生かしていただきたいと思います。
 今後は、長期撮影で、作品をつくる上で企画から参画できる、市民がいろんな形で参画できる、地域の価値を魅力に変えられる作品をしっかり誘致できるフィルムコミッションに変わらなければならないと考えます。
 ホームページの支援内容を見ていただければわかりますが、前知事時代にできた撮影場所案内所から、仁坂知事のイニシアチブで、10年を節目に他府県市町村のFCに追いつけるようにリニューアルをしていただきたい、このような思いから質問に入らしていただきたいと思います。
 まず、1番目です。
 フィルムコミッションを通じて県内で撮影された映画を使った海外上映支援制度について質問さしていただきます。
 和歌山県内での映画やテレビ、CMなどの撮影支援と撮影誘致を行う、2006年から取り組んでいるフィルムコミッションですが、その撮影された映像を通じて、和歌山県の魅力発信と、さらには見て実際に訪れてもらうことを目指して活動しています。
 その映像発信によるPR効果や撮影による直接経済効果、あわせて、かかわる住民が改めて故郷の魅力を知る地域振興の効果の大きさから、全国的にも飛躍的にフィルムコミッションは普及しました。
 資料2は、ホームページから抜粋しました近隣府県フィルムコミッションの撮影実績です。和歌山県の撮影実績は、近隣自治体のフィルムコミッションの実績から少し差があいています。
 資料2下には新潟県の長岡市の撮影実績があります。同じく2006年設立でございます。やはり少し差があると同時に、年々の成長が見てとれます。本当は、ワンシーンでも1本、1カ月で撮影しても1本でありますから、延べ撮影日数での比較がわかりやすいかと思いますが、今年度から和歌山県の映画撮影助成制度はゼロになりましたが、撮影誘致のインセンティブに、撮影経費助成やPR効果のある上映に対して国内多くの自治体にも支援策がございます。
 今までの努力が実を結び、飛躍的に外国人観光客が増加している我が県においては、県内撮影映画の観光誘客効果の見込める特定の外国での上映は、プロモーションと配給者がお互いにプラスになると考えます。
 観光誘客効果の見込める国での海外上映支援制度の創設について、知事にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) フィルムコミッションに対する谷口議員の情熱に敬意を表したいと思います。
 まず、谷口議員の質問にお答えさしていただく前に、議員提示の資料でございますが、わかやまフィルムコミッションの実績について御説明させていただきます。
 議員提示の実績と異なり、過去5年間の実績は20件を数えております。この差は、ホームページにおいて撮影支援した作品の更新が不十分でありました。早急に修正を行わせているところでございます。ホームページを運用いたしております県観光連盟の会長は、手続上の問題がありまして藤本商工観光労働部長に譲ったんですけれども、私は名誉会長でございますので、大変遺憾でございます。おわび申し上げたいと思います。
 現在、海外での情報発信は、県において海外のテレビ局や雑誌社の制作誘致を主に行っておりまして、これを促進するため、積極的にロケ取材支援を行っております。
 議員御提案の制度の創設については、一般的に映画の上映は制作会社または配給会社によって決められることになりますので、県が特別に上映について支援を行う余地は少ないと考えますけれども、海外で上映された場合の効果が非常に大きいと考えられる映画については個別に検討してまいりたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 メディアでありましたり、撮影相手のところなので、ホームページは大事なところだと思いますけれども、ちょっとこの資料を提出するタイミングがうまいこといかず、後でいただきました。最新の撮影実績は後でちょっといただいたもので、そこでちょっとタイミングが悪かったんですね。
 しかしながら、そういうことで、お互いの御意見が合うところであれば、海外上映の支援制度というのがあれば、インセンティブになるのではないかなと思っています。ぜひ御検討をよろしくお願いいたします。
 2つ目の質問に入ります。
 全国にあるフィルムコミッションの中でも、先進例としてさらなる実績を積み重ねているフィルムコミッションに、資料2下にあります福岡県の北九州フィルムコミッションというのがあります。過去3年の実績は、2011年は17件、2012年は13件、2013年は23件となっています。
 ちなみに、2011年の実績、誘致支援件数17作品ということで、特に注目すべきは、撮影日数の延べ204日、宿泊日数の1万3354泊、市民参加8000人、直接経済効果は3億5000万ということでございます。
 先ほど申しましたけども、支援実績は1シーンでも1本、長期滞在の撮影でも1本ですので、根を張った長期の撮影が多かったということで、それだけ支えられる能力がフィルムコミッションにあったということだと考えられます。
 ここには、カリスマと言われますフィルムコミッション担当課長の日々谷健司さんがおり、もともと北九州市イメージアップ班からスタートした北九州フィルムコミッションは、実績を積み重ねて、今や撮影関係者から「撮影に困ったら北九州に行け」と言われることもあるとのことでございます。
 少しずれましたが、フィルムコミッション先進自治体では、誘致のために映画関連企業の集中する首都圏での活発な活動が功を奏しています。担当も全力で頑張っておられることではありますけれども、10年たって全国の事例と比べると少し結果にコミットしていない、そのように感じることから、都心への取り組みも改善が必要だと考えます。
 あわせて、どこの自治体も撮影誘致に取り組んでいますので、競争のため、年々工夫をしています。県フィルムコミッションには、なお一層の改革と改善をし、実績を残し、和歌山県の都市魅力を向上させるために他県に負けないぐらいの体制を残していただきたい、このように思っています。
 そういう思いから、東京へのフィルムコミッションの専門員の配属について、知事にお聞きをいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 首都圏におけるわかやまフィルムコミッションの活動の中核は、現在は公益社団法人和歌山県観光連盟が担っております。先ほどのホームページの観光連盟でございます。
 県観光連盟は積極的に制作会社との人的ネットワークを構築しておりまして、首都圏での事業所数が200社程度と限られる業界に対して年間延べ100社程度に営業活動を行っておりまして、十分な情報発信をやってくれてると考えております。
 一方、制作会社からの多岐にわたるリクエストに対しては、市町村と連携いたしまして、撮影適地の紹介はもちろんのこと、現地調整、宿泊・エキストラの手配からロケ同行に至るまで、迅速かつワンストップ体制で積極的に対応しております。
 こうした対応を積み重ねる中で、ロケ件数は年間20件程度でありますけれども、業界では和歌山県の評価が高まっておりまして、毎年、制作会社からの問い合わせがふえつつございます。
 今後とも、県観光連盟が、映画やテレビなどの映像制作会社が集中している首都圏においてより一層営業活動を強化してまいりたいと思います。
 御指摘の専門の人を東京に置いておくということでございますが、東京も含めて、観光全体をやっておる者、それから広報をやっておる者、こういう者が一定の人脈を持っております。こういう人脈を持ってる者が、先ほどの観光連盟の活動に対して助力をしながらやっておるわけでございまして、専門家を単独でというよりも、こういう者の全体の総合力で仕事をしたほうがいいんじゃないかなあというふうには思うわけでございますが、明確なミッションを与えて、ちゃんとフィルム会社へのプロモーション活動を熱心にやってくれよというようなことを言っておく必要があるかというふうに考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。
 答弁をいただきましてありがとうございます。質問はこれで終わるんですけども、要望をさしていただきたい。そして、その前に1つだけちょっと御提言というか、耳に入れていただきたいのが1つあります。
 1つは、地域振興につながるフィルムコミッションになってほしいなと、こういう強い思いがあるわけなんです。その中で、10年前、2006年につくっていただいたフィルムコミッション、この最初のフィルムコミッションのときにつくった取り決めというのがあるんです。
 自分とこの県はフィルムコミッションに対してこういう支援をしますよ、こういう内容がそのままずうっと残ってるんですけども、内容としたら、やはり他府県の先進例のフィルムコミッションと比べると紹介所的な内容になっています。そこをやはり少し改めていただいて、地域振興につなげていく、長期滞在をやっぱり受けれるフィルムコミッションになっていただきたい。それが地域の魅力の再認識であったり、地域の盛り上がりにつながっていくと思っています。
 そこを少し御提言といいますか、耳に入れていただいて、要望をさしていただきます。
 映画撮影の助成制度、この要望です。
 県の撮影支援制度はことしでなくなりましたが、全国でも撮影誘致のインセンティブ、用意をされています。撮影費用の何割かの直接助成から、宿泊費に限定したり、飲食に助成してるとこは見受けられませんでしたけども、工夫しながら撮影誘致につなげつつも、常識の範囲で撮影を希望する人に用意をしています。
 ぜひこの助成制度の復活というか再創設ですね、お願いいたしたいと思います。
 あわせて、国内のインディーズ映画祭の中でも近年大きな評価を得ています、東京国際映画祭とパートナーシップも結んでいます田辺・弁慶映画祭ですが、県内外から年々映画ファンの来場がふえています。
 人が集まり認められることで、なお一層、都市魅力が高まってきて、地域振興としての効果も高くなっています。そして、それとともに、やはり求められるものも大きくなってきています。
 インディーズ映画祭の国内最高峰、これを目指すことも決してはるかかなたの話ではないようになってきています。ぜひ公募で映画祭助成の制度、この創設をお願い申し上げまして、私の一般質問とさせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で谷口和樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時35分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(前芝雅嗣君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 4番立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕(拍手)
○立谷誠一君 議長の御了解をいただきましたので、一般質問に入らせていただきます。
 今、国会では、安保法制に関する審議が続いており、与野党の攻防が続いています。その論点のポイントは、日本国憲法に違反しているのか、いないのか、いわゆる違憲となるのか、ならないのかが争点となっています。安倍総理がその政治生命をかけてまで問題提起しなければならなかった、その世界政治や軍事事情の詳細な情報のない私たちには、その判断が難しく、テレビや新聞などの報道に悶々とするばかりです。
 一方、与党・自民党が推薦の憲法学者なる方々がそろって違憲と発言したことが、翌日の新聞に大きく報じられていました。国家が果たさなければならない国の使命とは、国民の生命と財産を守り抜くことだと考えます。戦後70年が経過し、国の政策の大きな転換期を迎え、日本国が大きな緊張の中、一般質問に入らせていただきます。
 まず、1点目は、LCCいわゆる格安航空会社の南紀白浜空港への定期便のフライト誘致についてでございます。
 新南紀白浜空港が平成8年に開港して、はや19年が経過いたしました。この間、「あがらの空港」として、その利便性のよさから多くの県民より支援をいただいてまいりました。また、紀南地方に生活する者にとって、世界一の都市・東京と1時間ほどでつながっていることの有益性は、お金の多寡に置きかえられるものではありません。
 唯一残念なことは、1日3便と便数の少ないことと、設定されているその航空料金です。白浜─東京間は片道3万2000円ほどで、往復なら6万4000円余りと、かなりな高額となります。利用された県民の皆さんの口から出る言葉は、「高過ぎる」、「何とかならんのか」、「もっと安かったらな」といった言葉であります。
 しかし、紀南に生活する住民の1人として航空会社の立場になって考えてみれば、採算が合っていないのだろうなあと思い込み、そして、飛んでもらえることがありがたく、高いなあと思いながらも理解と支援をしてまいりました。そして、JAL航空に就航を続けてもらうことが一番重要であると考え、私たち政治に携わる者は、過去、長い年月にわたり、国交省やJALに対して陳情等の活動を重ねてきたのであります。
 一方、数年前より、格安航空会社いわゆるLCCなるものが世界中の脚光を浴びています。当初は、私を含め、懐疑的だったのではないでしょうか。しかし、LCCのその後の躍進は目をみはるものがあり、国内においても、わずか3年ほどの期間で飛躍的な発展と地域経済に与える影響が大変大きいことが、国交省の発表している資料等から読み取ることができます。
 ちなみに、国交省の資料によりますと、LCCは世界各地で急成長しており、東南アジアでは3%から52%に増加、北米や西欧でもシェアが30%以上、日本を含む北東アジアでも10%まで伸びてきてございます。しかし、日本では、国際線、国内線合わせてLCCのシェアは3%となっていました。とはいっても、私を含め大方の国民は、安かろう悪かろうではないか、極端に安いその運賃に不思議を通り越して何か手抜きのからくりがあるのではないかと思い込み、一度事故が発生すれば、1つしかない命、取り返しがつかないと考え、その利用にちゅうちょしてきたところでございます。
 しかし、私たちの平凡で素朴なそうした考えや思いを断たなければならないほどの衝撃を受けることになりました。それは、県議選を控えた去る1月20日、白浜町内の旅館で行われた関西国際空港株式会社・安藤社長の講演でした。さほど広くないホテルのロビーに町民100名余り集められたその会場で、LCCの躍進ぶりの説明を受けたのです。
 安藤社長は大変忙しい方で、1時間ほどの時間設定が終了後、すぐ大阪へ帰っていくという慌ただしい講演でしたが、その内容を聞いて、LCCに対する見方と考え方を根本から変更しなければならないと思ったほど、その内容は強烈でした。目からうろことは、こうしたことを言うのかと思ったほどでございます。
 安藤社長の発言内容は、航空業界にLCC革命が進んでいる、今後、国は観光立国戦略を強化していくだろう、すなわち、それは地方空港の活性化であり、力のある地方の地元産品は息を吹き返す力さえ持つことになる、日本国内では2年前にスタートしたばかりのLCCであるが、発着数は既に9万2000回に上っており、630万人が利用された、さらに、若い層が乗っている──この後なんですが──貧乏な人が乗っているのとは違う、こういうふうに断言をいたしました。そして、関西に近い白浜空港があることはすばらしい等々でございました。
 終了後、質疑になりましたので、私は一番重要な安全についての質問をさせていただきました。それは、「メンテナンス、機体の整備は十分されているのか」でありましたが、安藤社長は「全ての面で何の問題もありません。一般の航空会社と同じレベルの整備をしています」とのことでありました。だったら、なぜそんなに安く飛べるのか。そのからくりは、全ての分野において不要なサービス──例えば機内食などですが──をカットしていることに尽きるのだと言います。
 機体管理に何の問題もなく安全に就航できるのであれば、必然的に利用者は増加するはずであります。その結果は、国土交通政策研究所の発表資料によりますと、LCC利用者は、付随的なサービスがないことを認識した上で、運賃が安く、利用したい時間帯に就航していることをLCC選択の理由としているとあります。さらに、国土交通政策研究所発表の「LCCの参入効果分析に関する調査研究」には、欧州ではLCCの成長が航空需要全体の成長を牽引しており、我が国でも2012年3月から国内線に参入後、継続的に成長とされていて、その経済波及効果も大変大きいと表現されてございます。
 今回の一般質問の原稿づくりをしているさなかにも、「読売新聞」が「海外LCC地方へ続々」といった大きなタイトルで大きく報道されていました。白浜町内でも有志により協議が重ねられてきました。海外からの定期便の就航となると解決しなければならない課題も多いかと考えますが、和歌山県の発展のため前向きな英断をいただきたいが、知事のお考えをお伺いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの立谷誠一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 南紀白浜空港への海外航空会社の就航は、国際観光の推進などによる紀南地域の活性化とあわせて空港の利用促進につながりますので、国際チャーター便を一生懸命誘致しているところでございます。そういうときは、これは限ったわけではないんですが、LCCがどうしても多くなってくるということになると思います。
 同空港は国内線専用空港として運用しておりまして、国際チャーター便が入ってまいりますと検疫とか入管設備などを仮設いたしまして、定期便発着の間に利用するなどして受け入れております。そういうときは、本省とか、あるいは現地事務所のトップにも必要に応じてお願いをして、来てくださいというようなことを言うておりますが、比較的協力をきちんとやっていただいているというふうに思います。
 海外航空会社の就航についてはこういう問題もあるんですけれども、まずは営業活動をして、たくさん飛んでくるようになったら、おのずと今のような問題も解決してくるので、とりあえず、まずは営業活動を一生懸命やらないかんということでございます。観光、広報の一環としてLCCもターゲットに含めて頑張っていきたいと思いますし、また、できれば定期便も就航させてもらえればいいなあというつもりで頑張っていきたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕
○立谷誠一君 ただいま知事から、そういった発言をいただきました。
 私も、このLCCの誘致というか、就航を願うて、ちょっといろいろと調べてみましたけれども、本当にたくさんのハードルがあるということがよくわかってまいりました。ただ、やはり時代の趨勢ということもありますし、時代の流れというのは肌感覚で速やかな対応に取り組んでいける、やっぱりこれも力だと思うんです、能力だと思うんです。そんなことも含めて、これからも次の世代のためにも、地域の発展のために、ぜひ深い御検討をいただきたいと思います。
 また、地元でも実行委員会等をつくりまして、知事当局あるいは知事の、皆さん方がそうした方向で頑張っていただけるということになれば、実行委員会等をつくって機運をつくり、絶大な支援体制をつくっていきたいと、そのように考えているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 引き続きまして、観光産業の現状と課題についてというテーマでお願いをいたします。
 観光産業の現状と課題についての質問に入らせていただきます。
 去る6月5日、東京のホテルで、元ゴールドマンサックス金融部長のデービッド・アトキンソン氏の講演がございました。県会議員の皆さん方もたくさん出席をされておられたと思います。お聞きになられた方もおられると思いますが、その内容を一部紹介させていただき、今展開している観光和歌山を具体的に実践していく上での参考になればと考えた次第でございます。
 まず、デービッド・アトキンソン氏の講演内容は、外国人客を想定した観光地には4つの条件がそろっている必要があるとのことでありました。その条件とは、気候、自然、食、文化であり、そして気候とは、夏は暑く、冬は雪が降るほど寒いといった幅があることが必要であるとのことでした。さらに、日本にはビーチはあるがリゾートはないといった手厳しい問題提起もいただきました。そして、4条件そろっている国は世界で20カ国ぐらいしかない。ちなみに、4条件そろっているフランスに訪れる1年間の観光客数は8000万人以上であり、さらにイギリスの場合は、4条件の中の気候が十分ではないとのことであるが、現在、3500万人が1年間に訪れています。押しなべて4条件そろっているところは5000万人ぐらい来ているという氏の主張であります。この条件に照らし合わせば、日本でも5000万から6000万人の観光客が来てくれているはずである。ここまでのことを発言されておられました。
 したがって、2030年までに8200万人ぐらいは来ていても不思議ではない。また、日本では観光客1人当たり15万円から20万円ぐらいの消費であるが、アメリカでは、中国人は1人当たり60万円ほどの買い物などの消費をしているとのことでもありました。
 次に、外国人の観光客は何をコンテンツやキーワードにするのか。安全はキーワードではなく、旅行が楽しいか、楽しくないかがキーワードであるとのことでありました。さらに、地方の文化財がキーワードとなるが、国の予算は、神社仏閣や古い町並みなど、文化財に補修代を年間75億円ぐらいしか出していない、これは国が文化財を観光資源として重く考えていないからであり、メンテナンスもなければ改修もしてないといったことでありました。
 まず、ここまでのことにつきまして、ただいまの私の発言を聞いていただいて、商工観光労働部長からの御所見をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) ただいま議員からデービッド・アトキンソン氏の講演内容をお聞きしまして、変化に富んだ気候、四季折々の豊かな自然、グルメ、多様な文化など、外国人旅行者の皆様を引きつける4条件の魅力が本県にはあふれていると確信しております。
 昨年は外国人宿泊者数が初めて30万人を突破し、本県の外国人旅行者誘致にとって記念すべき年となりました。本県としましても、例えば台湾や香港の皆様には、和歌山城、桜などの四季の自然、白浜や勝浦などの温泉、フルーツ狩り体験、マグロに代表されるグルメなどを魅力として発信し、日本の歴史や精神文化に強い関心を持つ欧米豪の皆様には、世界遺産高野山・熊野の魅力を発信してまいりました。
 今後も、さまざまな国、地域の皆様の嗜好に合わせて、本県の多様な魅力を明確なキーワードとしてお伝えしていきたいと考えております。
 県といたしましても、外国人旅行者の消費による経済効果に着目し、お得に買い物を楽しみ、より多くの県産品を購入していただけるよう消費税免税店の拡充に努め、本年4月1日には100店舗まで増加してきたところです。今後も、さらに消費税免税店の拡充に取り組んでいくとともに、免税店への観光客誘致にも取り組んでいくこととしております。
 加えて、多言語案内表示の整備やWi─Fi環境の整備、高野・熊野世界遺産エリアでの本県独自の観光ガイド認定制度の活用などを通じて、外国人旅行者の皆様が安心して県内を周遊していただける環境の整備にも引き続き積極的に取り組んでいきたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕
○立谷誠一君 答弁をいただきました。ありがとうございます。
 その答弁いただいた中で、1つ感じたことを聞いていただきたいと思います。
 まず、30万人を突破しということで、記念すべき年となりましたというあたりのくだりのところですが、ちょっと苦言を言わしていただきましたら、1300万人を超えた外国の観光客が日本においでになりました。この御答弁では、宿泊者数ということですので、30万人を、例えば、国内旅行ではありませんので1泊2日で来るということはないと思います。3泊4日か4泊5日と、こうだとしたら、1人がおいでになるとき日本で3日ないし4日泊まって帰っていかれると、一般的なコースがこうだとしましたら、宿泊者数が30万というたら、例えばこれを3で割ったり4で割ったりしたら10万人もないと、こんな数字になってしまえへんかなと思うわけです。そしたら、1300万人という数字のところに3倍や4倍掛けたら5000万人からの人がおったということになって、その中の30万人というたら、私はちょっと、頑張っていただいていることは了としているわけですけれども、もっと頑張ってほしいなと思います。
 やはり比率から言うたら、先ほどの比率が正しかったとしたら、日本国内で5000万人前後の宿泊があった中で30万の宿泊だったと、こういうふうにやっぱり、分析をするとそんなことになってしまわないかと思った次第でございます。
 それから、もう1点です。
 免税店のことなんですが、今、どうやら県内に100店舗までふえたということなんですが、ちょっと心配したことは、そしたら、多分恐らくバスであったりとか何か、宿泊されたら、その場所で免税店の紹介というのは外国人の皆さん方にされるんだろうなと思うわけです。そしたら、100店舗でしたら、100店舗のとこには行ってくれるけれども、そうでない店舗のとこがダメージを受けるんでないかと。
 やっぱり免税店の制度をとるとしたら、観光客の皆さん方が活用のしやすい、あるいはそうした志のある、気持ちの持たれる県内の業者の方、全部入ってほしいなと。でなければ、免税店のところに外国のお客さんの消費が行くけれども、免税店を申請せずにとれなかったところには、その効果というか、そのおこぼれが入ってこない。こんなことにならないように、そのあたりも十分、県当局の皆さん方の御努力で、県内のそういうビジネスをされている方々にも公平にそうしたことの情報を伝えていただいて、もっともっと積極的な免税店としての取り組みを促していただく、公平に、外国からおいでになるお客さんのメリットが、効果が県内隅々の皆さん方に浸透できるように、そうした視点でも一度御検討いただけないかと思う次第でございます。
 それでは、引き続き質問させていただきます。
 さて、私は紀南で生まれ育ちまして、今日においても生活を続けています。観光業の盛衰は、生をうけてから今日まで、この目で見てまいりました。
 和歌山県一の観光地である白浜温泉の現状は、はっきり申し上げて、昭和30年代、40年代と比べ、昨今は元気や勢いが感じられません。ちなみに、40年代には50数軒はあったと思われる旅館やホテルも今日では20数軒となり、各種企業の寮や保養所も、バブル崩壊前には140軒ほどありましたが、現在は20軒から30軒といったところでしょうか。その中で、ことしも夏のシーズンが終われば、私の知っている範囲でも保養所2軒がその営業を終了する予定でございます。
 観光白浜では、地元で住んでいる町民はもとより、県当局の力強い支援もいただいて今日の日を迎えていますが、観光産業で働く人々の収入は押しなべて低く、近年、福祉産業で働く人々の収入が低いことがたびたび社会問題としてマスコミ等で問題提起されていますが、その福祉産業従事者、いわゆる福祉産業の従業員の皆さん方より低いんです。300万人以上の観光客が訪れてくれているにもかかわらずです。繰り返し言いますが、1年間に来泉されるお客様は3万人でもなければ30万人でもありません。300万人以上のお客さんが押し寄せている町なのにです。
 ちなみに、民間調査機関がネット上で公表している全国の市町村別1人当たり町民所得で見れば、観光立町を標榜している我が町白浜町は230万円台で、県内の市町村別ランキングでは最下位の30番目で、全国1741の市町村別のランキングでいえば1518位です。
 さらに、県内の有力な観光地である那智勝浦町の県内の市町村別ランキングは30番中の28番で、全国ランキングでは1472位です。なお、県内の1番は和歌山市の317万円で、全国ランキングは252位となっています。そして、白浜町の所得230万円を日本一の東京都港区の1266万円と比べれば、約5.5分の1ぐらいで、7位の──この港区が突出しておりますので──7位の中央区の593万円と比べてみても2.5分の1であります。
 しかし、なぜこうした大きな所得の開きになるのでしょうか。以前も問題提起していますが、対策を考える必要を強く感じているところでございます。いずれにしましても、次の世代が夢や希望を持って働き、県土を支えてもらうためには解決していかなければならない視点だと考えますが、御所見をお願いいたします。
○議長(前芝雅嗣君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 観光産業は、宿泊、飲食、土産品、食材、メンテナンスサービス、バス・タクシーなど裾野が広く、雇用の場として地域を担う重要な産業でありながら、総務省発表の「平成26年度市町村税課税状況等の調」によりますと、1人当たりの課税対象所得額は、白浜町が県内30位、那智勝浦町が同28位となっており、観光産業が主たる産業である自治体における所得額は相対的に低いという認識は持っております。また、観光産業を次世代が夢のある職場とするためには、所得の問題が大きいという認識も持っております。
 雇用者における所得額は、事業者の経営状況や職種、雇用者のスキルや経験など、さまざまな要因によって決定されますが、いずれにせよ、観光産業自体が元気でないことには所得額のアップを望むことはできません。
 県といたしましては、地元自治体や関係団体と密接な連携のもと、観光入り込み客数をふやし、地域での周遊、滞在を図り、より多くの消費を促すことが雇用者の所得増加につながるとの考えから、今後とも消費者のニーズに即した的確な施策を展開し、観光産業のさらなる活性化を図ってまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕
○立谷誠一君 御答弁をいただきました。ありがとうございます。
 先ほど所得の話をしましたが、ちなみに最下位は熊本県のある村なんですが、平均所得が193万円で、そこで書いてる表現は、この193万円の生活水準はワーキングプアレベルであると書かれているわけです。193万円の最下位というか、その順番でいえば一番下の村は、そのことに対して生活水準はワーキングプアレベルであると書いているわけです。そして、先ほどの話ですが、白浜町はそれから40万ほど高いわけですけど、でも、どっこいどっこいに近いなと、ちょっとそんなふうにも感じてしまいました。
 これはもう、私も含め、やっぱり県民皆さんが真剣に考えて、よく県の標語になっています、「住んでよい県、訪れて楽しい和歌山県」と、そういうふうに施策をとっていくとすれば、こうした視点も、そうした中で所得の向上に向けてやっぱり県民一丸となって考えていかなきゃならん、取り組んでいかなきゃならん、そんなふうに考える次第でございます。
 それでは、もう1点質問させていただきたいと思います。
 そういった視点でも、今改めて観光ということに対してもう少し掘り下げて考えてみたいと思いますので、観光の定義を教えていただきたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 観光の法的な定義について確認すると、観光基本法の制定に際し法案作成の事務作業をした衆議院法制局では、観光の法的定義を試みたものの困難であると断念し、観光概念は世間で使われているのと同じ意味であるとしたと伝えられております。そこで、社会通念上の観光、すなわち「広辞苑」によりますと、他の土地を視察すること、また風光などを見物することとして使用されていると捉えております。
○議長(前芝雅嗣君) 立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕
○立谷誠一君 ありがとうございました。
 数年前に、観光とはそもそも何なんやろうとちょっと考えるようなことがありまして、私も調べてみた経過があります。どうやら「観光」とは明治に入り使われ始めた言葉のようでして、今ちょっと調べてる資料が少しありますが、これを少し読ましていただきます。
 この資料は、「ツーリズムと観光の定義」ということで、佐竹真一さんという方が書かれているんですけれども、この中に、「日本の観光研究の現状を顧みると、基本的な用語である『観光』の定義には、定量的研究を可能ならしめる形態での定説が存在せず、研究者の間に混乱が見られ、相互の知見の円滑な共有を阻害している。さらにこの状況は、多くの関連分野が存在し共同研究の必要性が高いにもかかわらず、多様な研究者との共同研究を進める上での阻害要因ともなっている」、こんなふうな紹介の文章があります。
 事ほどさように、観光とは奥深く難解で厄介な代物なんではないか、そんなふうに考える次第です。この観光というものに対して、我々、県を挙げて取り組んでいるわけではございますけれども、本当に難解なものに立ち向かってる、それが現状ではないかなと思います。そういった意味で、当局の皆さんを初め県民の皆さん方のこのことに対する御努力というのは私は評価をしていきたいと、こう考えていますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
 最後の質問です。
 日本年金機構のサイバー攻撃から学ぶべきこととして、質問をいたします。
 6月上旬、突然発覚した日本年金機構へのサイバー攻撃により、コンピューターから抜き取られた情報を悪用した事犯が発生しています。今、国会でも大きな議論が展開されているところですが、その議論の中で浮かび上がってきたことは、年金機構の緊張感のないその仕事ぶりです。
 厚生労働省が1年に1度実施している訓練も、その管理下にある年金機構では実施していなかったことが判明していますが、県当局としては、この一連の報道を手にしてどのように捉まえ、感じられたのか、そして、県行政として守らなければならない情報とはどんなものがあるのか、また県内の市町村への指導はどのようにされたのか、知事部局さらに教育委員会部局ではどのような対策を講じられているのか、さらに県警本部ではどのような対策を講じられておられるのか、お伺いをいたします。総務部長、企画部長、教育長、県警本部長から順次御答弁をいただきたいと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 総務部長市川靖之君。
  〔市川靖之君、登壇〕
○総務部長(市川靖之君) 私から、質問がありましたもののうち、県行政として守るべき情報についてお答えいたします。
 公務員には守秘義務が課されておりまして、この守秘義務の対象となるものが、基本的に行政の守るべき情報であるというふうに考えております。
 守秘義務の対象となるものは、一般的に了知されていない事項であって、実質的に保護に値するものとされ、具体的には、今回の日本年金機構のような個人情報のほか、法人の正当な利益を害するおそれがある情報、公共の安全を守る上で保護が必要な情報、適正な意思決定手続を確保するために保護が必要な情報、事務事業の適正な遂行のために保護が必要な情報、こういったものが該当するというふうに考えております。
 これらの情報が記載されたものを含めまして、公文書につきましては、公文書管理規程により紛失、滅失、毀損や漏えいがないよう適正に管理することとしており、また、保存年限が経過したものにつきましては、溶解処分等により確実に廃棄することとしております。
 さらに、今回の日本年金機構のような電磁的記録の漏えいの防止につきましては、後ほど企画部長から詳しく答弁いたしますが、別途情報セキュリティー対策を講じております。
 また、個人情報の保護や公文書の適正管理につきましては、毎年、各機関の公文書管理責任者などを対象に研修を実施するなど、職員の教育、啓発を行っており、引き続き、個人情報等の保護に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 企画部長高瀬一郎君。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) 日本年金機構に関する一連の報道を受け、対岸の火事と捉えることなく、この次は本県に対する攻撃が行われるかもしれないという大変強い危機感を抱きました。このため、県の情報セキュリティー統括責任者である企画部政策統括参事に指示し、各所属に対し、改めて注意喚起を行ったところでございます。
 次に、県で守らなければならない情報についてでありますが、県では、平成15年度に全国に先駆けて、和歌山県情報セキュリティ対策基準規程を定め、この中で、知事部局で使用するネットワーク及び情報システムで取り扱う全ての電磁的記録について、情報を取り扱える者の範囲、改ざんによる影響が出る範囲、業務停止による影響が出る範囲の各区分に応じて、職員が取り扱う情報のセキュリティーレベルを分類し、各レベルに応じた管理方法を定め、情報セキュリティーの確保に努めております。
 次に、県内の市町村への指導についてでございますが、平成14年度に組織された県内市町村で構成する和歌山県自治体セキュリティ対策協議会を利用し、県が主導して全市町村が情報セキュリティーポリシーを策定済みとなっております。また、ふだんから県が情報セキュリティーに関する指導を行うとともに、外部講師を招聘し、市町村の情報システム担当者を集めて情報セキュリティーに関する啓発の場を設ける等、指導を実施しております。
 最後に、サーバー攻撃に対する県の対応状況につきましてお答えいたします。
 サーバー攻撃による情報漏えいを防ぐためには、ウイルス対策システムなどのハード面と、個々の職員への教育や事案が発生した場合の情報共有体制の整備などのソフト面の両面から対策を講じる必要があります。
 まず、ハード対策としましては、ウイルス対策システムやファイアウオールを導入する等の対策を講じておりますが、情報セキュリティー保護の観点から、詳細は差し控えさせていただきます。
 次に、ソフト対策としては、職員が守るべき情報セキュリティーポリシーを定めるとともに、全所属に情報セキュリティー実務担当者を配置し、毎年度、情報セキュリティーに関する研修を行い、職員への教育を徹底しております。また、問題が発生した場合には迅速に情報共有を行えるよう、庁内の連絡体制を整備しております。
 今後とも、情報セキュリティーの維持、向上に取り組んでまいります。
 以上です。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 県教育委員会では、平成16年に和歌山県教育委員会情報セキュリティ対策基準規程を定め、知事部局と同様の情報管理方法により情報セキュリティーの確保に努めてございます。
 大量の個人情報が流出してしまった今回の事案については、あってはならないことであり、教育委員会といたしましても、各職員が常にセキュリティー意識を持って日常の業務に当たるよう指示いたしました。
 県立学校における個人情報につきましては、インターネットからの不正アクセスの対策を講じてございます。また、データ管理を含めたパソコンの適切な利用につきましては、運用マニュアルを作成しており、校長や教頭、事務長等、管理職が出席する会議で注意喚起するとともに、教職員への周知を図ってございます。
 なお、市町村立学校における個人情報の管理の徹底につきましても、市町村教育委員会を通じて指導、助言を行っております。
 今後とも、情報セキュリティーの維持、向上に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 警察本部長下田隆文君。
  〔下田隆文君、登壇〕
○警察本部長(下田隆文君) 県警察では、犯罪捜査、運転免許等に関する大量の個人情報や機密情報を取り扱っており、特に厳格な情報の管理が求められていることから、それらを取り扱う業務で使用する端末は、インターネット等の外部のネットワークとは接続されておりません。
 その上で、県警察といたしましては、情報セキュリティーを確保するため、警察情報セキュリティーポリシーを定め、職員が担当業務以外の情報にアクセスできないよう厳格なアクセス権の徹底、利用状況を分析できる証跡の取得、個人所有の外部記録媒体の利用を技術的に禁止など、情報の組織的管理を徹底しているところでございます。
 さらに、全所属に情報セキュリティー指導員を配置して所属内における各種情報セキュリティーの教養を行うなど、職員の規範意識の徹底を図っております。
 また、日本年金機構の個人情報流出事案の報道を受け、各所属に向け注意喚起を行ったところであります。
 引き続き、県警察といたしましては、情報セキュリティー対策の徹底を図ってまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕
○立谷誠一君 まず、ちょっと感じたことをお聞きいただきたいと思います。
 総務関係であれば、毎年、職員採用時にたくさんの、普通の一般企業でしたら履歴書を提出して、普通、その履歴書的なものは一切返却されないというか、そんな状態をつくっています。それというのは、後、それ預かった、そういう採用しなかった、できなかった応募者の履歴書あるいは履歴書的なものがなぜ返却されんのかなということが純粋に不思議でかなわんのです。
 そうした個人情報は、不必要な――採用された職員の情報は保管されるというのは合理的だと思いますが、そうでない不採用になった応募者の情報というのはやっぱり返してあげたらどうやろかと。不必要に管理することによって、膨大な場所であったりとか管理の時間であったりとか、不必要な仕事がふえるんではないかと思うわけです。そして、また返されたほうは、応募してだめだった人は、例えばそれが県当局だとしたら県当局のそちらに全く、私はどこどこの学校を出て何歳です、どこどこのほうに勤めていましたみたいなことから経歴書を渡してるわけですよね。そのことが気になって仕方ない、そんな人も多いと感じています。
 そういった意味からも、不必要なそういう情報というのは、これから本人のもとに返すことによってより厳格な情報管理、セキュリティー管理がシンプルなそういう形の中で進めることができるんではないかと思うわけです。
 いずれにしましても、そういう情報を当局側が持ち続けることの意義というのがちょっとわからんです。そのことが感想の1つです。
 それから、教育委員会の関係の御答弁の中で思うことですけど、今、完全な管理ができてるというような答弁いただいたんで、それはそれで安心したわけですけれども、この話は、僕は強いて質問させてもらいました。やっぱり県民の大方は、こうした事態を踏まえて、最近はコンピューターから不正アクセスされて情報が出てると、このことに対する不安定な気持ちがすごく県民の中にも蔓延してる、そんなふうにも考えたからです。
 そういった意味で、学校の話ですけど、学校にも、やっぱり子供たちが一番気にしてるんではないかなと思うことの1つに、学校の成績表です。これ、神さんでもせんようなことを我々レッテルつけるわけです。できる子、できない子、この子は何点で、ようできるなとか、そんなふうな情報というかデータというのを保管するわけですよね。こんなことの情報が仮に漏れていくようなことがあるとしたら、もう子供たちが受ける精神的ダメージというのははかり知れないと考えますので、今、完全な管理をしていただいてるということをお聞きして安心はしたわけですけれども、より厳格な管理を引き続きしていただけるようにお願いを申し上げます。
 それから、県警のほうですが、県警のほうでも私は知らなかったことがたくさんありまして、なるほど、そのぐらいのそうした管理体制であって初めて安心しておれるかと思いました。私も保護司活動というのは長くしたことございまして、その保護司活動の基本的な考え方は、罪を償うたら、もうそれは二度と罪を求めることはなく、一般人と同じ生活を許されるということにあるわけですけど、ただ、過去を持った方々は、例えば仮の話ですが、情報が漏れていくようなことになるとすると、すごく大きなダメージを受ける可能性がある。そういった意味で大変心配なところだと思うわけです。
 これにつきましても厳格な管理ができているということで、それはそれですごくありがたいと思うわけですけど、これからもその管理体制、どうしても人がすることですので、これからも厳格な管理に徹していただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
 議長、最後の質問、再質問させていただきます。よろしいでしょうか。
○議長(前芝雅嗣君) 通告してますか。
○立谷誠一君 はい、しております。
○議長(前芝雅嗣君) しておりますか。再質問入ってますか。はい、どうぞ。
○立谷誠一君 答弁いただいた中で、ウイルス対策システムが、ファイアウオール等を導入しているという御答弁ありました。
 これ、一体何のことなんかわからないんで、ちょっとこのことについて説明いただけたらと思います。
○議長(前芝雅嗣君) 企画部長。
  〔高瀬一郎君、登壇〕
○企画部長(高瀬一郎君) まず、ウイルス対策システムですけども、コンピューターに勝手に入り込んで悪事を働くプログラムをコンピューターウイルスと言いまして、このウイルスを駆除する役割を果たすのがウイルス対策システムということで、これはソフトウエアであります。また、ファイアウオールというのは、ネットワーク上における情報のやりとりをコントロールするシステムのことであります。
○議長(前芝雅嗣君) 立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕
○立谷誠一君 ありがとうございます。頭悪いんで、何だか余計わからなくなったりと。ありがとうございます。また勉強させていただきます。
 最後にですが、これで一般質問を終わらせていただきたいんですが、今回のセキュリティーに関連するこのウイルスの事件、もうこれ、不思議な事件だなと思うんです。何か言いましたら、コンピューターウイルスなるものを侵入させて、盗んでおきながら、責められてるのは盗まれたほうなんですよ。盗んだ人の攻撃的な、マスコミの論調的なこともあんまり聞かずに、盗まれたほうが徹底的に追及されてる。そんな時代なんかなあと思いながら、そうしたことを踏まえて、より個人情報というか、情報の管理にやっぱり我々自身は心していかなきゃならない。そういう意味で教訓だったんかなと。まあ感想です。そんなことを思いました。
 御清聴いただきましたことを感謝と御礼申し上げまして、終わらせていただきます。(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、立谷誠一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 16番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 一般質問も私が最後となりました。もうしばらくおつき合いをお願いいたします。
 まず最初に、県債1兆円超えの感想と対策について伺います。
 平成25年度の当初予算から、県債が大台の1兆円を超えています。私たちの要望の多くは、予算をとれ、金を使えというものですが、実は1兆円という途方もない大きな金額を聞くと、果たして返せるのかと心配してしまいます。県債1兆円超えについて、知事はどのような感想を持っておられますか。また、その対策についてお考えを伺います。
○議長(前芝雅嗣君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 県債残高は御指摘のとおり、平成27年度当初予算のとおりに県債を発行した場合、年度末残高が1兆円を超える見込みとなっておりますが、このうち、臨時財政対策債など、将来、国からの交付税で措置される分が約6000億円を占めております。臨時財政対策債は、本来ならば地方にくれるべき財源を、国にお金がありませんので、地方で借金をしておけ、後で返してあげるというものであります。こういうものを除くと、いわば県独自の責任で返さなければいけない、そういうことになりますが、それは約4000億円でございまして、これはほぼ横ばいに推移しております。
 先ほどの6000億円の類いのもの、これは国が破綻しなければ我々が何も心配することはないということなんでございますが、国の財政が破綻したら急にこちらの財政も大変なことになるわけでございます。したがいまして、国の財政が破綻しないよう国の財政の健全化が図られることは、本県にとっても重要でございます。
 残りの4000億円のところなんですが、これは横ばいで推移するように努力をしてきたんですけれども、現行の新行財政改革推進プランに基づき、将来の公債費負担に十分配慮しながら、これまで県債を発行してきた結果だと思います。
 今後とも、こういう部分については、同プランに基づき財政運営を行うことにより、県財政の健全性を確保してまいりたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 現在の財政制度では、税収がふえても、逆に交付税が減額されてしまうので、余り税収増が恩恵がないというふうに言われております。しかし、県税収入が増加することは、県財政の健全化に資するとともに、知事の予算編成の幅を広げるものであります。知事は、県立医科大学薬学部の事業化に際し、県費負担について熟考されておられますが、県税収入の増加はそういった判断を容易にするものであると思います。
 かつて神戸市は自治体の優等生と言われましたが、阪神大震災以降は財政が逼迫しております。本県も、来るべき南海地震に対して県財政が持続できるよう体力をつけておかねばなりません。
 今般、県では、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定しました。目標を指し示すことは知事の仕事ですが、私は総合戦略を読んで、目標と具体的な施策、進捗管理目標、行動指針には少し距離があると感じました。「創生」という言葉は新たに生み出すという意味であり、これまでにない期待を感じさせるものであります。この際は、「創生」にふさわしいダイナミックな政策が必要ではないかと思いました。
 例えば、メタンハイドレートの埋蔵量は、我が国の消費量の100年から200年分というふうに言われております。まさに、紀伊半島沿岸がアラブの湾岸になるチャンスです。新宮や勝浦は、ドバイになる可能性があるのです。可能性というより、ぜひそうしなくてはならないと思います。今からそうなるためには何をすべきか、知事の御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) メタンハイドレートの開発につきましては、その前提として、海底地下構造の把握、採掘、貯蔵、輸送などの各工程において多岐にわたる高度な技術が必要でありまして、これは全体は国において取り組むべきものと考えております。
 進め方を具体的に申し上げますと、その存在の有無や賦存量を確認すべく、基礎調査として掘削調査なども必要でございます。そして、賦存可能性がわかりますと、次の段階として詳細な調査が必要になります。同時に、関心を有する企業を集めたコンソーシアムを組織するなど、資源回収の技術開発が必要となります。このようなことを踏まえて事前に賦存可能性を調査することが、本県において採掘等が行われることに有利に働くと考えております。
 そこで、平成24年度から漁業調査船を活用した経済的な方法で賦存状況調査を実施し、それによってメタンハイドレートが存在する可能性が強く示唆されるプルームが複数観測されたところでございます。
 今申し上げましたのは表層型のメタンハイドレートでございますが、地層型のものについては、これは海底地質調査なども結構進んでおりますので、これもまた、紀伊半島だけではございませんが、特に南海トラフの周辺に随分たくさんあるというふうに見込まれております。
 今後、この観測結果を最大限生かしまして、和歌山で採掘や開発が行われるというチャンスをつかむために、ここにあるんだから、それ、やれというようなことを働きかけてまいりたいと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 和歌山はかつて、半島にあるということで、半島だからおくれてるという、そういうことを言ってきましたけども、よく考えてみたら、海という広大な無限の可能性のあるところに面してるわけでありまして、大いに海洋開発に取り組むべきだというふうに思っております。
 今、知事からお答えをいただきましたが、私はそれ以外にも、県税で鉱区税というのがあるというふうに聞いております。海底もしくは地中から出てきたものについて、課税のできる仕組みでありますけども、私はこれ、出てきたものに課税できるのかと思ったら、その面積というんでしょうか、埋蔵されてるところの面積に応じて課税ができる、しかも軽減税率で、あんまり思ったよりも大きな税収にはならないんじゃないかというふうに感じました。今のところ県で課税できるというのはそれしかありませんので、海底から新しく出てきたようなメタンハイドレートのようなものには別途違う課税ができるような、そんな研究も今からやっとく必要があるんじゃないかなというふうに思っておりまして、そういうこともよろしくお願いいたしたいと思います。
 続けて質問をさしていただきます。
 ことし4月、知事とともに私たち議員も、メキシコ、シアトル、バンクーバーの県人会の周年記念式典に参加してまいりました。
 シアトルでは、エド・マレー市長に面会するチャンスをいただきました。私は、市長にシアトル発展の原動力は何かとお尋ねしたところ、一言で言うのは難しいが、何でも受け入れる多様性にあるとのお話でした。
 シアトルで活躍する公認会計士・佐藤淳氏は「地方都市の活性化についてシアトルから学ぶ」というレポートで、シアトルの発展は、ボーイングやコストコなど世界的企業の貢献と並んで、マイクロソフトを中心としたソフトウエア企業の集積、その大企業から独立した新規企業がさらに集積することで、現在も急速に経済成長を遂げていると分析しています。そして、日本の地方でも世界を狙う野心を持つことや、人的支援、ベンチャーキャピタルの強化により地域活性化が可能だと言っています。同時に、ワシントン大学やシアトル大学、ゲーム開発者養成学校などの人材養成機関の貢献も挙げています。
 本県も、シアトルやシリコンバレーのように発展するアメリカの地方を参考にすべきであります。
 話は変わりますが、仁坂知事が就任直後に講演された資料をネットで見つけました。知事は、かつて本県より人口や経済規模が小さかった岩手県や熊本県の産業構造を分析し、この数十年で追い抜かれた原因が自動車産業や家電産業の集積にあったと指摘されています。ぜひとも、自動車や家電のような──これからは多分また違う分野であろうかと思いますが、県経済を牽引するような成長企業、成長産業が和歌山県にも欲しいものであります。
 平成26年12月定例会では、青色LEDの発明により、社員数がわずか200人の中小企業が20年ほどの短期間に8500人の大企業に成長したことを報告いたしました。このような発明、発見が常時起きるような環境を本県でも創出できないものでしょうか。知事の所見と取り組みについて伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、本県産業の活性化のためには、技術開発や創業によるイノベーションが不可欠であると、このため、さまざまな支援策を総動員して、県内企業が常にイノベーションを起こしていける環境整備に努めるべきだと思っております。
 これまでも、本県では、革新的な発想力だけではなくて、現場での地道な改善やひたむきな努力の積み重ねにより新技術を生み出した創業者が数多く生まれてきました。このような立派な起業マインドを持つ人材が県内に数多く育ち、企業が絶え間なく研究開発に邁進することがイノベーションの基礎になってくるものと考えております。
 その環境整備の一環として、県内企業の新技術の創造を促進するために、さまざまな政策的な制度を準備しております。その中核的なところに、先駆的な技術開発とか、もっと小さいもので言うとわかやま元気ファンドとか、いろいろな制度を整備するほか、産学連携の取り組みを支援するために、本年度は特に地方創生先行型の交付金を活用いたしまして、工業技術センターに最先端の機器を集中整備するなどの取り組みを既に行っております。
 その上で、創業を促すべく、さきに策定した地方創生の総合戦略に創業支援を位置づけるとともに、その具体策について和歌山県産業技術戦略会議で議論しているところでございます。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次の質問に移ります。
 去る6月5日、来年夏に日本で開催されるサミットの会場に、三重県伊勢志摩の決定が報道されました。これまでサミットの開催地は都会が多かったため特に意識したことはありませんでしたが、今回は、まことに失礼ながら、三重県と聞いて、それなら和歌山でもできるのではないかと思いました。
 6月7日に開催された新宮─大泊間のくい打ち式では、三重県の代議士が大変誇らしそうに、和歌山にも協力をしてほしいとおっしゃっていました。それを聞いて、高速道路だけではなく、サミットにおいても負けておれないなというふうに思いました。
 幸い、本県には伊勢志摩に劣らない白浜や那智勝浦、高野山といった立派な候補地があります。何とか和歌山県でも開催できないものでしょうか。サミットを目指すことが県内のおもてなしのレベルアップにつながると思いますが、知事の御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まことにそのとおりでありまして、三重県はいいなあというふうに思うところもございます。サミットは、世界でも注目度の高い国際会議でございまして、開催が実現すると、各国首脳を初め大勢の方々が訪れるとともに、その間、観光などがシャットアウトされるんですけども、世界中のメディアに連日報道されますので、知名度が上がります。それは、将来の観光振興や地域経済への波及など、地域の活性化に大きな効果が期待できると思います。
 しかしながら、開催するには――今回も決定に当たって一番重視されたところがセキュリティーなんです。それが特に大事なので、そういう施設がいわば隔離されていないといかんということになりまして、和歌山のように観光施設も民家も一体となっているようなところは結構難しいと思います。隔離されてるところも、想像するに「あそこなら」というようなところもないことはないんですけれども、今度はサミット会場に首脳会議場を初めとした一定規模以上の会議場が20室以上必要であり、かつ、首脳やプレス用、スタッフ用、それぞれの宿舎として約6500室程度の部屋数の確保が要求される。さらに、1万3000平米以上の国際メディアセンターの必置など、どうも物すごくハードルが高いのが現状でございまして、現時点では、本県の開催は、これ自体としては不可能であると思います。
 今後、より一層、観光振興に和歌山県は力を入れていかないといけない。観光立県和歌山としての魅力をさらに高め、民間投資によって施設も充実させて、サミットはそれでもハードルが物すごく高いと思いますが、似たようなのはたくさんあるわけでございますから、そういう機会に大いにチャレンジをしたいと思います。
 また、サミットによって一時的に伊勢の人気が高まったときでも、2013年の伊勢遷宮のときに一生懸命我々が運動したように、そのお客様をこっちに連れてこようというプロモーションも、また同時に考えていかなきゃいけないと思っております。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 ぜひですね。私は、そんなに難しくないんじゃないかというふうに思っております。目指すことが、私は和歌山県の観光だけではなくて、全ての面においてレベルアップができる。それこそ、言ってできないと格好悪いというのはあるかもわかりませんが、知事のような立場の人が指し示す方向性というのはそんなところかなというふうに私は思いまして、どうぞ、やろうというふうに早くなってくれることを期待しております。
 続けて、質問をいたします。
 教育長にお尋ねいたします。
 宮下教育長は、改正法による新制度で初めての教育長に選任されました。新教育長は、県教育行政の責任者としていかに取り組まれるのか、所見を伺います。
 特に、学力テストは小学国語で全国最下位になるなど危機的状況にありますが、学力向上についてもあわせてお答え願います。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 現在、本県教育の喫緊の課題として、いじめ、不登校、学力等の問題がございます。また、道徳教育、体力の向上、ふるさと教育、国際人の育成、就職支援等、さまざまな取り組みを推し進めていく必要がございます。そのような中で、子供たちが安全・安心な学校生活を送り、確かな学力と健やかな体、思いやりの心や感謝の心を育むこと、いわゆる知・徳・体を基盤とした、これからの時代をたくましく生き抜く人間としての総合力を育成することが私の目指すところでございます。
 とりわけ、学力につきましてはその土台となるものであり、これまでの全国学力・学習状況調査で明らかとなった厳しい結果を克服していくことが本県教育の最重要課題であると認識してございます。
 今年度、新たに義務教育課学力向上対策班を設置し、昨年度策定した県学力向上対策中期計画に基づき、市町村教育委員会や各学校と一体となって、課題解決に向けた実効性のある改善策に組織的、継続的に取り組んでいるところでございます。
 県教育委員会といたしましては、子供たちが何事にも粘り強く取り組み、成果を実感し、自信と誇りが持てるよう、学力の向上を初め、教育のさらなる充実に取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 お答えをいただきました。
 私は、学力の向上をするためには、できる子をさらにできるようにという方法もありますが、公教育というのは、できない子をできるようにするというのが一番大切ではないかというふうに思っております。
 小学校の基礎ができないというのは、学校だけではなくて、家庭にも課題があるというふうに聞いております。しかし、家庭に課題があって、そこを求めてもやっぱり限界があるわけでありまして、そこは大変ですけども、学校が担わなければならないんではないかというふうに私は思っておりまして、できない子をできるようにするという、その部分についてはどんなにお考えですか。よろしくお願いします。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 議員御指摘のとおり、私の課題もやはりそこにあると思っています。できない子といいますか、よりわかるようにしていくということが、やはり最低限の基礎的なことでございますので、補充学習という発想はやはりそこにあるかなと思っています。子供たち一人一人の力をしっかりつけていくように小学校段階から取り組みまして、これから一生懸命取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 それは、今までにも、前の教育長のときにもお答えいただいたことがあるんですよ、補習をやると。私、自分の母校へ行ったら、実は補習やってませんでした。御坊市内では違う学校でやっているということでございましたので、そこへ行って聞きましたら、補習ではなくて全員でプリントをやってるということでした。だから、ここで答弁していただいても、現場で皆さんに行動していただくということは、なかなか簡単ではないというふうに思っておりまして、就任されたばかりでございますので、ぜひ効果を上げていただくよう期待を申し上げておきます。
 続きまして、ふるさと教育について伺います。
 医師不足を解消するためには、県民の子弟が県立医科大学へ入学することが一番の近道だと考えています。せっかく入学定員がふえても、残念ながら学力の面からか、県内の入学数は余りふえていません。私は、これまでも、理科好きな子供には県内の医師不足を理解してもらって医師を目指すよう教育することの必要性を訴えてきました。
 また、県経済の発展には、公務員を目指す人ばかりが帰ってくるのではなく、新しい技術やビジネスプランを持って和歌山で創業しようという意欲のある子供たちを育てる必要があると思います。そのためには大学も必要だと考えますが、今回は、ふるさとで錦を織る子供を育てる教育、すなわち和歌山に生まれ育った子供たちがふるさとを愛し、ふるさとの発展や県民の幸福のために頑張りたいと思える教育はできないものか、教育長の御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 少子高齢化社会が進み、人口減少が避けられない本県においては、ふるさと和歌山に愛着を持って、将来、和歌山で生きることを選択する若者をより多く育てていく必要がございます。
 現在、各学校では、地域の魅力を知り、地域に貢献しようとする心を養うことを目的として、ふるさと教育やキャリア教育、職業教育に力を入れてございます。
 小学校では、自然体験学習や地域の職場見学等の活動を通し、地域への愛着を高めています。また、中学校では、地域での職場体験等を通して地域の価値を再発見し、地域への誇りを持たせる取り組みを行ってございます。高等学校では、地域に根差しながらグローバルに活躍する人から学ぶ取り組みや、生徒が将来、地域で起業することをイメージし、ビジネスプランを具体的に立てるような取り組みを行ってございます。
 今後、このような取り組みをさらに充実し、県内はもとより、どこにいても、ふるさと和歌山を愛し、ふるさとの発展に尽くす人材の育成を進めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、いよいよ国体が近づいてまいりました。ぜひとも、男女総合優勝を期待するものであります。
 私は、今回の国体の準備のために設けられたゴールデンキッズは大変すばらしい制度だと評価いたしております。イチローも、野球をやっていなければ、ただのおじさんになっていたかもしれません。特に、小学生という可能性のあるときにいろいろチャレンジしてみて特性や興味を引き出すというやり方は、ほかの普通の子供たちに対しても、また学力や社会性についても応用できるシステムだと思います。
 健康で豊かな人生を送るためには生涯を通じてスポーツを継続する必要があり、そのためには、複数のスポーツを習得するほうが継続しやすい、そして、そのスポーツとの出会いは小中学校の義務教育ではないかと考えています。
 愛知県にあるゴールデンキッズという民間経営の子供スポーツクラブでは、幼少期に運動する必要性について、俗に運動神経と言う体性神経は脳からの指令を体に伝える神経のことで、この神経系統の発達は12歳でほぼ100%に達するので、5歳から12歳までのゴールデンエージに指導者のもとでさまざまな運動を正しく定期的に継続して行うことが大切だと言っています。
 小中学校の義務教育で、ゴールデンキッズのように幾つかのスポーツにチャレンジして、生涯を通じて楽しめるスポーツを見つけることはできないものでしょうか。御所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 子供たちが生涯にわたって運動に親しむためには、運動への関心、意欲を高めることに基本的な技能を身につけることが大切でございます。
 現在、小学校、中学校の体育科の授業では、体づくり、器械体操、陸上、水泳、球技、ダンスの6つの運動分野をバランスよく指導することとなってございます。子供たちは、例えば球技については、バスケットボールやサッカーを初め、ハンドボールやソフトバレーボール等、さまざまなスポーツと出会い、その特性や魅力に触れる楽しさを経験します。
 また、体育科の授業を充実するためには教員の指導力も重要となることから、学級担任が体育科の授業を担当するケースが多い小学校教員を対象に、実技研修会や授業研究会を積極的に開催し、指導方法等について研修する機会を設けてございます。加えて、本年度から国の事業を活用して、一部小学校の体育科授業に専門家を派遣し、児童の運動能力を伸ばす支援を行うこととしてございます。
 今後とも、子供たちが生涯を通じて楽しめるスポーツと出会い、豊かなスポーツライフを実現できるよう、学校体育の充実に努めてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 質問を続けていきます。
 仁坂知事は、日ごろから南海地震に対して、1人の犠牲も出さないよう防災対策に取り組むと言われています。県民から信託を受けた県の防災責任者として決意を示すとともに、各種防災対策において県や市町村、県民が取り組む目標を示したことは大変意義があります。
 さて、大規模災害では、被災後72時間以内に救出すれば助かる命があると言われています。これを黄金の72時間といって、倒壊した建物等の下敷きになった人の救出に当たっては、経過時間72時間を境に生存率が激減することから、72時間以内に救出すべきとされています。
 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、神戸市消防局によりますと、震災当日に救出された604人のうち生存者は486人で生存率80.5%、2日目は、救出された450人のうち生存者は129人で生存率28.5%、3日目は、救助された408人のうち生存者は89人で生存率21.8%でした。しかし、震災から4日、すなわち72時間でありますが、これを経過すると、生存率は一挙に5.9%に、5日目には5.8%に生存率が激減しました。
 平成26年3月の県議会防災・国土強靱化対策特別委員会で関西大学の河田惠昭先生に御講演をいただいた際に、私は72時間対策の必要について質問いたしました。
 先生がおっしゃるには、東日本大震災では負傷した人のほとんどは津波の犠牲になったので、72時間対策は必要ないとのお答えでした。講演内容が大変すばらしかったことと、防災の大家の河田先生がおっしゃることには間違いないと納得をしておりました。しかし、昨年9月の同特別委員会で、田辺の海上保安部長から、東日本大震災直後に海上保安庁が300数十名を救出した活躍ぶりを伺いました。そして、やはり72時間対策の必要性を改めて痛感した次第であります。
 現在、私たちは南海地震イコール津波被害と思い込んでいますが、過去の教訓では、建物倒壊、火災などにも備えなければなりません。東京都や横浜市など多くの自治体では、地域防災計画に72時間の概念を、考え方を盛り込んでいます。
 本県でも、1人の県民の犠牲も出さないためには72時間対策が必要と考えますが、県の取り組みについて危機管理監に伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 危機管理監和歌哲也君。
  〔和歌哲也君、登壇〕
○危機管理監(和歌哲也君) 議員御指摘のとおり、72時間を過ぎると生存率が著しく低下することから、72時間以内の人命救助は非常に重要と考えております。
 災害対策基本法の規定に基づき作成している県地域防災計画では、災害発生時における応急対策として、警察、自衛隊、海上保安庁などの各関係機関ごとに発災直後に取り組むべき業務を災害応急対策計画として記載しており、県民の生命、財産を守るため、各部門が1分でも1秒でも早く災害対応に着手するという考え方が基本となっております。
 大規模災害発生時には、被災地の状況に応じた活動を集中的、継続的に行う必要があるため、発災直後には県内の人員を最大限動員するとともに、全国からの広域応援部隊を迅速かつ適切に被災地に展開するなど、72時間の重要性を考慮した救助活動に取り組む所存でございます。
 また、本年3月、中央防災会議が、南海トラフ特措法に規定する推進基本計画を受け、南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画を策定し、その中で人命救助のために重要な72時間を考慮した各機関における応援活動のタイムラインイメージが具体的に示されたところです。これら応援を適切に受け入れるため、和歌山県の受援計画の見直しを行ってまいりたいと考えております。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 人の救出活動や災害関連物資の運搬などを行うためには、被災直後の最初にやらなければならないことは、道路から瓦れきを除去することです。これを道路啓開といいますが、どのような計画になっているのでしょうか。また、被災地近くには、道路啓開に必要な重機や、それを操作するオペレーターが必要になります。すなわち、それらが所属する建設会社を被災予想地域に温存していかなければ、いざというときには間に合いません。そういった政策は県にあるのでしょうか。あわせて県土整備部長に伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山県における災害時の道路啓開計画につきましては、高速道路、直轄国道と緊密な連携のもと、緊急輸送道路を中心に優先的に啓開するものとし、災害協定を締結している和歌山県建設業協会会員の地域の建設業者の担当区間を示したものとして策定中であり、現在は、一部担当会社が重複する区間について国土交通省と調整を行っているところです。今後、早急に道路啓開計画を策定してまいります。
 また、道路啓開に当たっては、建築物その他工作物等の崩壊、倒壊及び損壊に伴う道路交通確保のための障害物の除去作業等を円滑に行う必要があることから、重機や資機材の所有、オペレーターの雇用等を行っている建設業者に対し、入札参加資格審査において加点評価を行い、より金額の大きい工事への参加を促進しております。
 災害時に当たっては、地域の建設業は最も頼りになる存在であることから、県内建設業の受注機会の確保を初め、建設業の振興、発展に引き続き取り組んでまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に行きます。
 かつて、浄化槽といえばトイレの汚水のみを浄化する単独浄化槽のことでしたが、時代が進むにつれて、風呂場や台所から排出される生活雑排水が河川や海の水質汚濁の原因となる割合がふえました。そこで、トイレの汚水に加えて生活雑排水も浄化する合併浄化槽が設置されるようになりました。その後、浄化槽法の改正により、平成13年4月1日からは単独浄化槽の製造、販売が禁止され、設置することが不可能になりました。
 しかし、法の不遡及の原則により、平成25年度末時点で全国にはまだ単独浄化槽が437万基残っており、これらを合併浄化槽に変更することは大きな課題になっています。本県においても、今年度から、合併浄化槽に切りかえる場合に単独浄化槽の廃棄処理費の一部を助成する制度が創設されました。ところが、最近の情報では、全国的に都道府県や市町村などが所有する浄化槽に、まだ単独浄化槽が多数残留しているそうであります。果たして、本県や県内市町村の状況はどうなっているのでしょうか。
 また、合併浄化槽行政を所掌する県や市町村は、まず県民に範を示すべきであると考えますが、取り組みについて、あわせて伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山県では、汚水処理人口普及率が全国でも低位にあることから、下水道の整備とあわせて単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を推進しております。合併処理浄化槽への転換に当たっては、これまでも市町村への補助を行うとともに、今年度から、転換に際しての単独処理浄化槽の撤去費用についても補助対象としたところです。
 議員御指摘の県または市町村が所有する公共施設の浄化槽につきましては、環境省調査によりますと、平成26年3月末時点で4639基あり、そのうち単独処理浄化槽は1644基、県所有施設分は187基となっています。
 施設の内訳としては、多いところで公営住宅などの住居等が56基、庁舎等が50基などとなっております。こうした施設において合併処理浄化槽への転換が進まなかった理由としては、改築や建てかえ時の転換をもくろんでいたり、下水道の整備に合わせて接続を検討していたりなどがありますが、今後の見通しについて再度検討した上で、早期の転換を進めてまいりたいと考えております。
 なお、市町村が所有する公共施設にある単独処理浄化槽につきましても、早期に合併処理浄化槽への転換等が図られるよう働きかけてまいります。
○議長(前芝雅嗣君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、日高川河川整備計画について伺います。
 去る6月11日、県が主催し、市町村や住民代表も参加する日高川を考える会が開催され、河川整備計画の素案となるたたき台が示されました。7.18水害、紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、また日高平野の市街化の状況を考慮した日高川水系の課題について抜本計画が示されたものと、大いに評価するものであります。願わくは、一刻も早い事業化をお願い申し上げます。
 しかしながら、疑問点や要望もあります。日高川本流では、上流の改修に対し下流の改修案が示されていない点や、西川水系の東裏川、森後川については西川合流点の水門改修だけではなく、国道42号の冠水や富安地区の浸水対策についても検討が必要ではないかと考えます。また、地震・津波対策については、抽象的な記述のみで終わっているので、ぜひとも早期に具体的な整備内容を策定していただきたいと思いますが、以上3点について県土整備部長の所見を伺います。
○議長(前芝雅嗣君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 日高川水系河川整備計画については、平成27年度中の策定を目指して検討を進めているところであり、これまでに日高川を考える会を平成26年5月と今月11日の都合2回開催し、日高川水系の現状と課題、具体的な整備内容等について関係住民の御意見を伺ったところです。
 この整備計画の策定に当たっては既往最大洪水への対応を基本としますが、整備に多くの費用と期間を要することから、既往最大洪水の次に大きい平成15年の洪水に対して住宅地への浸水被害が発生しないよう、計画期間20年間の中で整備をすることとしています。
 そのため、今般、日高川を考える会に示した具体的な整備内容においては、流下能力が不足している区間のうち、住宅地に隣接している区間より優先的に整備を行うこととしましたが、議員御指摘の日高川下流部、御坊市市街地部は、既に流下能力が確保されているため、整備内容を検討する区間に含まれておりません。
 また、西川流域の浸水対策については、西川の河道掘削により水位を下げるとともに、東裏川、森後川からの排水能力を向上させることで浸水被害の軽減を図ることができるものと考えています。
 整備計画については、今回、日高川を考える会でいただいた御意見や、今ほどの議員からの御指摘等を十分に踏まえた上で、整備内容の修正を行い、学識経験者、関係住民、関係市町の御意見を伺うなどのプロセスを経て策定してまいります。
 なお、地震・津波対策については、現在、「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」に基づき、海岸、河川の堤防整備と既存の施設の強化を優先的、緊急的に実施しているところであり、下流部の水門設置等の対策の実施については、これら整備の進捗状況等を踏まえて検討してまいります。
  〔「再質問はありません」と呼ぶ者あり〕(拍手)
○議長(前芝雅嗣君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 お諮りいたします。お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第108号は行政改革・基本計画等に関する特別委員会に付託いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 次に、お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第96号から議案第107号まで及び議案第109号から議案第116号までは所管の常任委員会に付託いたします。
 次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。6月23日及び24日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(前芝雅嗣君) 御異議なしと認めます。よって、6月23日及び24日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、6月25日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時36分散会

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