平成27年6月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


平成27年6月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので質問に入らせていただきますが、その前に、さきの県会議員選挙では何とか滑り込むことができました。これからも、当局の皆さん、先輩・同僚の議員の皆さんの御指導、よろしくお願い申し上げます。
 この県議選で、私は、住民の声を県政に届ける問題とともに、安倍内閣の暴走にストップをかける、憲法の解釈を変えて自衛隊が海外で武器を使える範囲をどんどん広げていくのは危険だと訴えました。
 あえて自民党とは言わず、安倍内閣と申し上げました。といいますのは、自民党の重鎮であった、元幹事長であった方々、野中広務さん、古賀誠さんといった方々までが、安倍内閣はどこへ行くのか、自民党の中にこの暴走をとめる者はいないのかと嘆いていらっしゃるからであります。選挙での相手候補である自民党県議の皆さんも、立場上は何も言わなくても、安倍内閣が進めていることがまともなことだと思っていらっしゃるとは、私には思えなかったからでございます。
 選挙結果は、定数や候補者の組み合わせがありますから、県内では残念ながら3議席になってしまいましたけれども、全国的には全ての都道府県で議席を得ることになりました。頑張ってまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 さて、質問に入りますが、申し上げましたように、憲法解釈をめぐって日本は大きな曲がり角に来ています。安倍内閣は、国民の命と財産を守るためには日米同盟を強化し、集団的自衛権を認めなくてはならないと言います。私は、イデオロギーがどうであれ、事実に立って、何が国民の命や財産を守ることになるのかということを考えてみたいと思います。
 私は、以前にも憲法九条の会のアピールをめぐって議論したことがございました。軍事力で国民の命や財産を守れるというのなら、原爆や水爆を持っている軍事大国、アメリカやロシアの国民の命や財産が守られているはずではないか。しかし、そういう国々では、外国に侵略して人々を殺し、憎しみを買い、国内で大きなテロが起こって国民の命や財産が失われているではないか。ちょうどアメリカでは同時多発テロが起こり、ロシアでも多くの子供たちが巻き込まれるテロ事件があった直後のことでした。
 その一方で、憲法9条を持つ日本は、自衛隊がありますが、海外に出ていって殺したり殺されたりすることだけはなかった。このことについて、客観的事実としては否定できないと思います。
 この憲法の解釈を根本から変える安保法制、私たちが「戦争法案」と呼んでいるものが国会で審議をされています。今月4日、憲法審査会では、与野党推薦の憲法学者がそろって憲法違反だと断言をされました。さらに、憲法学者らが戦争法案廃案を求める声明への賛同は、220人を超したと報道されています。そんな中でも、安倍内閣は、国会を延長してでもこの法案の可決を図っています。
 戦後日本で憲法9条が果たした役割と、憲法違反という多くの声を無視して法案審議を進める安倍内閣のやり方について、知事のお考えをお伺いしたいと思います。
 以上で、第1問を終わります。
○副議長(藤山将材君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 我が国は、戦後の平和主義をうたった憲法下で、他国と武力衝突を起こさず、他国の紛争に介入せず、途上国に多大の援助を行い、一生懸命誠実に働いて、かつ常に国際経済秩序の維持にも協力をして、国際社会に協力してさまざまな国際貢献活動に積極的に寄与し、平和国家としての現在の高い評価と信頼をかち得るに至っております。
 憲法9条を含む憲法体制のもとで、戦後70年の長きにわたり日本が平和を享受することができたのは、これは軍国主義に陥ってしまったという反省に立って、平和を希求する日本国民の不断の取り組みがあったからだと思います。と同時に、日米安保条約を含めた外交的立ち位置も、紛争の抑止力という意味で大いに効果があったと思っております。このことは、恒久平和を願ってやまない我が国の国民の1人として、世界に誇るべきことであると考えております。
 一方で、時代の変化とともに世界のパワーバランスが大きく変わり、アジア太平洋地域においても国家間の新たな問題や緊張が生じている中、現在、今後の国の安全保障をどうしていくべきかの議論が行われておりますけれども、常に国の将来を考えておくという観点から、それを非難すべき問題と捉えるのはいかがかと思います。
 安全保障関係の法案に係る国会運営については、どう考えても国の所管でございますので、和歌山県の知事として意見を述べるべきことではありませんけれども、どうすれば平和を守り続けることができるのかを、私も含め、国民一人一人がみずからの問題として真剣に考えなければならないと思っております。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 御答弁、ありがとうございました。
 安保条約などについては、いろいろ国民の中に議論はありますが、しかし、その中でも、この憲法体系のもとで日本の平和は守られてきた、こういうことを言われたと思います。そして、今、情勢がいろいろある中で、国民一人一人が考えなくてはならないということも知事から言われました。
 今、その憲法の解釈をめぐって大きな岐路に立たされているわけでございます。与党が推薦した方を含めて、圧倒的多数の憲法学者が憲法違反と断言をした。そして、自民党の重鎮である元防衛庁長官の山﨑拓氏に続いて、現職の自民党議員も声を上げ始めています。高知県での地方公聴会でも、反対が5人、賛成は県知事1人だったというふうに報道されています。
 そして、世論調査でも、例えば、今、日本テレビの世論調査を見ますと、この法案をこの国会で成立させないほうがいいというのが63%、成立させたほうがいいというのは19%。今、知事が言われた国民一人一人の意思が世論調査にもあらゆる形で反映され始めていると思います。
 こういう中で、私は、知事からも、そういう国民一人一人の意思を踏みにじらないように意見も上げていただきたいと思いますし、県議会でも、皆さんと一致点でそういう声を上げられたらいいなと思います。また、これは、いろいろと請願などをめぐっても議論されることでしょう。
 次に、先日、エルトゥールル号記念集会に参加させていただきました。個人的なことですが、エルトゥールル号の歌の作曲者・打垣内正は私のおじでありまして、その追悼歌が地元の方、子供たちに歌われたのは大変感慨深いことでした。
 このエルトゥールル号救援に串本の先人の皆さんが献身的に働かれたことが日本とトルコの友好の基礎を築き、イラン・イラク戦争のときには、トルコ政府が在留邦人の救出のために特別機を飛ばしてくれた。このことは、既に教科書にも、道徳教材にも取り上げられ、また、いろいろな方が語られました。
 私は、この感動的なエピソードは、今、議論をしている憲法9条に引きつければ、憲法9条の精神に立った平和外交の意味を私たちに示してくれると思います。戦後、憲法以前の話ですが、串本の先人たちは、世界人類が愛し合い、助け合うことこそが自国の安全保障になるということを示してくれた、こういうふうに思います。
 こういう意味からも、エルトゥールル号の事例は語り継がねばならないと思います。学校教育の場でもしっかりと取り上げていただきたい。教育長の見解をお伺いいたします。
○副議長(藤山将材君) 教育長宮下和己君。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) エルトゥールル号の遭難事故の際、本県の先人が人命救助に当たった行為は、私たち県民にとって誇りであり、この出来事がトルコの人々の心に親日感情として生き、後の人道支援につながったものと捉えてございます。本県の児童生徒がこれらの事実について学ぶことは、人としての生き方を考える上で極めて大切だと考えてございます。
 この出来事については、県が独自に作成した道徳教材のほか、国の道徳教育用教材や社会科の教科書にも取り上げられておりますので、今後とも、県内の各学校において、さまざまな学習の場面で活用してまいります。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 御答弁、ありがとうございました。
 それでは、次の問題に入ります。
 もう1つ、日本の将来、安全保障と民主主義に絡んでくる大問題は、沖縄普天間基地移設、辺野古への新基地建設の問題です。
 昨年の沖縄県知事選挙、続く総選挙で、オール沖縄の辺野古新基地建設反対という意思がはっきりしました。ところが、安倍内閣は、沖縄の民意を無視して基地建設を進めています。
 私たち日本共産党県議団は、6月4日、5日と沖縄に行ってまいりました。新基地建設のために海底調査が行われようとしている現場を船で調査しました。キャンプ・シュワブの前に座り込みをしている皆さんにもお会いし、名護共同センターにも立ち寄りました。
 こうした県民の基地建設反対の熱気を感じながら、沖縄県庁では担当課にお会いをしました。辺野古新基地建設問題対策課といって、知事公室に直属して6月に新設された部署でございます。短時間ですが、県としての考えをお聞きしました。ワシントン駐在というものが設置されて、そこにはアメリカ領事館を退職された方を部長クラスの参事監として配置しています。その方がアメリカ国務省のヤング日本部長と面談して、翁長知事のアメリカ訪問の段取りなどもしてきたということでした。沖縄県の腰の据わった構えを感じました。
 もちろん、知事のアメリカ訪問といっても、中央政府を飛び越えて、違った見解を持って地方自治体の長が訪問するわけですから、相手方も「なるほど」とすぐに応じるわけにいかないのは当たり前です。しかし、県民世論をバックにして、それに挑戦しようとするのが沖縄県知事であります。
 名護共同センターの方が、「基地建設をやめないのなら嘉手納基地包囲の行動をやろうという声が出ている。普天間だけでなく、嘉手納基地も置いておけなくなる」と語っておられましたが、沖縄の基地問題というのはそういう局面まで来ています。
 辺野古への米軍基地建設の可否という問題とともに、中央政府が地方自治体の意思をどう受けとめるのか、地方自治にかかわる問題もございます。こういうことについて仁坂知事はどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御指摘の問題は、3つの要素があると思います。第1は日本の安全保障の問題、第2は普天間基地という劣悪な環境からの地元住民の救済の問題、第3は辺野古にまつわる自然環境問題その他の3つのなかなか難しい問題を同時にかなえる解を見つけることが必要であるというふうに思います。
 今、県知事を代表とする地方の声というお話がありましたが、今の私の分類でいいますと、普天間基地の劣悪な環境からの救済と──2番ですね──3番目の辺野古にまつわる環境というのは、大いに地域問題であります。しかし、日本の安全保障ということは国全体の問題であって、それはどうでもいいと言うのは、沖縄県だけの問題ではなくて、国民としては困ることであります。また、3に反対、すなわち辺野古反対と言うと、普天間の解決が現実の問題として遠のくように私には思われます。
 地方にかかわることは知事が発言し、行動することは、もちろん大事でございます。国全体の問題についても、同時に考慮をし、耳を傾けることも大事かと思います。さらに、地方の問題でも、こちらを立てればあちらを立てられない、あるいは立てることがちょっとだんだん難しくなってくる、そういうことがたくさんあることでございまして、現実にそういうことが往々にして起こることで、よく考えた責任のある行動が地方の方も望まれるなあ、そんなふうに思う次第でございます。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今の知事のお話は、いろいろの要素があって大変難しい問題で、なかなか解決策が見つからないと、こういうことになるだろうと思うんですが、私は、1つの枠の中で考えるから解が見つからないんだろうというふうに思っています。
 鳩山由紀夫氏が首相になったときに、「国外へ、少なくとも県外へ」というふうに公約をした。ところが、うまくいかずに追い詰められて辞職をいたしました。どこで追い詰めたのか。それは、鳩山氏がオバマ大統領に会ったときに「トラスト・ミー」というふうに言った。有名ですね。「私を信じてください」、もうちょっと砕いて言えば、「悪いようにしませんから、私を信じてくださいよ」、こういうふうに鳩山氏はその言葉に込めたんだろうと私は思っています。
 けども、あのとき、鳩山氏は何を言うべきだったか。「私は、沖縄のこの基地を撤去すると言って選挙で国民に選ばれたんだ。だから、オバマさん、この普天間基地は国外へ持って帰ってもらわなくては困りますよ」というふうにあの場所で言わなければならなかった。ところが、「トラスト・ミー」と、鳩山さんは英語が上手なんで、つい言うてしもうたんかしりませんけども、そういうふうに言ってしまったところから鳩山さんの混迷が始まったというふうに私は思っているわけでございます。
 沖縄県民と翁長知事は、それとは違って、「この基地はアメリカへ持っていってくださいよ」、こういうふうに言っている。私は、知事に、ここで、その同じ立場に立てとまでは言わないんですけど、しかし、同じ横並びの沖縄県知事、和歌山県知事というこういう知事なんだから、そこの知事が一生懸命言うてることを頭から潰すようなことは、安倍さん、やめてくださいよというふうなことだけは言えないんかなという気持ちがあって、地方自治という立場でどうなんでしょうというふうにお伺いしてるんですが、いかがでしょう。
○副議長(藤山将材君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 感情的なことを言うてもしようがないわけでございまして、やっぱり物事は、全体の枠組みの中──さっき枠の中で考えると言いましたけど、限定され過ぎた枠の中で考えると難しいわけでございます。
 したがって、これは難しいんですけど、先ほど言いましたように、第1番目の話も、第2番目の話も、第3番目の話もあって、みんな大事な問題なんだけど、それだけ考えてるというと、やっぱりなかなか問題は解決できませんよねえと言うぐらいしか、ちょっと今なかなか言いにくいなあと。それ以上のことを言い得る人がいたら、ひょっとしたら無責任な人かもしれない、そんなふうに思っております。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 まあこの議論はこのくらいにしておきましょう。
 次へ参ります。
 ことしは、広島・長崎での被爆70年の年でもあります。ことしも、原水爆禁止世界大会を前にして平和行進が行われました。県下30の市町村で行われた平和行進では、市町村長さんや議会議長さんからも激励をいただきながら、全県民的な運動として取り組まれました。県に対しては、5月29日、県原水協、県原爆被災者の会、核戦争防止医師の会などの皆さんが協力の申し入れを行いました。
 和歌山県議会では、平成10年6月県議会で核兵器廃絶平和県宣言を行っています。その宣言は、「和歌山県議会は、人類永遠の平和確立のため、いかなる核兵器も廃絶するよう強く訴え、県民の総意として、ここに核兵器廃絶平和県を宣言する」と結ばれています。この精神を県行政にも生かしていただきたいと思います。
 残念なことに、6月14日、和歌山県原爆被災者の会が解散したことが報道されました。被爆者の高齢化のために原爆の悲劇を語り継ぐことは私たちの世代に託して、会として終結したわけでございます。
 ただ、うれしいのは、一昨年、県への申し入れをしたとき、新しい原爆写真を県で買い入れることをお願いし、そのとき県議会議長は山下直也さんでしたけども、「私からも声をかけましょう」と言っていただき、そして県で購入、そして昨年、県庁内で原爆写真展が行われたことでございます。
 引き続いて核戦争の悲惨さを語り継ぐ取り組みは続けていっていただきたいと思いますが、福祉保健部長、いかがでしょうか。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長幸前裕之君。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 県では、広島、長崎での原爆の惨状を伝える写真パネルを活用し、毎年、ふれあい人権フェスタで原爆写真を展示するとともに、昨年8月には県庁内でも原爆写真展を実施したところです。
 唯一の戦争被爆国として、戦争、原爆の悲惨さについて多くの人に伝えていくことは大切なことであり、今年度も8月に県庁渡り廊下において原爆写真展を開催することとしており、今後も、平和に対する県民の意識がより一層高まるよう取り組んでまいります。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。
 学校の現場でも、戦争や原爆の悲惨さを語り継いでいくことは極めて重要だと思います。県庁内での原爆写真展の取り組みが、市町村での取り組みや学校現場で戦争の悲惨さを語り継ぐ取り組みにもつながっていくことを期待しております。
 続いて、子供の貧困についてお伺いいたします。
 2013年6月、子どもの貧困対策推進法が制定されました。この法案では、政府には、子供の貧困対策を総合的に推進するため子供の貧困対策に関する大綱の制定義務が、都道府県には子供の貧困対策計画策定努力義務が課されています。
 2006年のOECD報告書には、日本の貧困率について次のように指摘されました。日本の貧困率は徐々に上昇しつつある、この数値はOECD諸国に比べて高い、母子世帯の貧困率が突出して高いなどでございます。
 この貧困率というのは、相対的貧困率を言います。アフリカの子供たちが毎日食事ができないというようなものではありません。しかし、相対的貧困というものは、人間に精神的なプレッシャーを与えます。世間一般のような生活ができないために閉じこもってしまう。それが子供の場合にはなおさら深刻です。
 子供の貧困率が、2004年には13.7%だったものが2010年には15.7%とふえていることが指摘されているんです。これは、OECD22カ国の中で8番目の高さだということです。
 子供の貧困は連鎖するという問題があります。学力が低い、高校に行っても中退率が高い、学歴や資格がないから安定した仕事につけないという貧困の悪循環が起こる。こうした問題を解決しなくてはなりません。
 まず、福祉保健部長にお伺いします。
 子供の貧困の和歌山県での実態をどう把握しておられるでしょうか。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 子供の貧困の実態については、国から都道府県別の数値は公表されておりませんので把握しておりませんが、議員の発言にもありました母子家庭の実態につきましては、平成25年度に行った和歌山県母子世帯実態調査の結果、全国に比べると就業の割合は高いものの、パート、アルバイト等の比率が約半数を占め、世帯収入額としても低い状況や大学等への進学希望に関しては低い状況が見られるところです。
 現在、県では、子供の貧困について、庁内関係課と連携し、県内の子供の貧困に係る状況把握に努めているところであり、これまでのひとり親に対する施策なども踏まえ、子供の貧困対策に関する計画を策定してまいります。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。
 日本では、御答弁にあったように、地域ごとに貧困率が公表されていない。これは1つ、国の統計発表上の問題があると思います。それでも担当課として、今、子供の貧困の最も深刻な問題としてOECDが指摘した母子家庭の実態について調査に乗り出したことは評価をしたいと思います。
 私も、担当課から取り組みを始めた資料の一端を見せていただきましたけれども、やはりそこにも貧困の連鎖の問題がはっきりと示されています。今、子どもの貧困対策法に基づく取り組みは、和歌山県では始まったばかりでございます。
 また、この質問を準備しているさなかに、千葉・銚子の県営住宅で、強制退去の日に中学生の娘を殺害した母親への判決が大きく報道されました。私も、以前に生活保護の捕捉率という問題を取り上げたことがありますが、問題は大変深刻です。いろいろな面から、これからしっかりと取り組んでいかなくてはならないと思います。
 それでは、子供を預かる学校では、子供の貧困をどういうふうに把握しておられるんでしょうか。教育長からお願いいたします。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 学校では、児童生徒が置かれている生活環境や経済状況、親子関係等、多くの背景が複雑に絡み合い、学力や学校生活等においてさまざまな教育課題が生じています。そのため、学校長と教職員が児童生徒一人一人の情報を共有するとともに、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等の専門家による助言を得ながら、学校内外の多様な角度から働きかけることが大切であります。
 学校からは、関係機関と連携して組織的に取り組むことにより課題解決につなげているとの報告を受けており、今後も、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等を有効に活用しながら支援体制の充実を図ってまいります。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私も、この質問を準備する過程で、スクールソーシャルワーカーの活動の報告の一端を読ませていただきました。貧困といっても、単に金銭的な問題ではない。親が離婚したという問題だけでもない。ある場合には子育てをネグレクトもする。ある場合は児童虐待がある。さまざまな問題があります。また、貧困の中で、昼も夜も働きながら子供を一生懸命育てている母親が大勢いる。こういう実態を本当はここで話をしていただきたいというふうに言うたんですが、これは議会質問で、この場ではこれ以上無理でしょうね。
 そして、こうした実態を学校では担任がキャッチをして、必要な場合には就学援助、生活保護などの制度も活用して対応しなくちゃならないという考え方も示されたと思います。また、困難な事例に対応するためのスクールソーシャルワーカー、さらに増員を図っていただきたいと思いますが、これは要望でございます。
 そして、こういう貧困の問題と、今問題になっている学力テストの結果の問題なんですが、これは、学力と子供の貧困についてはどういう分析をしておられるでしょうか。教育長にお伺いいたします。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 子供の学力につきましては、文部科学省による平成25年度全国学力・学習状況調査のきめ細かい調査の中で、家庭の経済状況を初め、家庭での学習時間や読書習慣など、さまざまな要因と相関があると報告されてございます。
 各学校では、児童生徒一人一人の状況を把握し、わかる授業の実践や補充学習の徹底など、確かな学力の定着に向けた丁寧な取り組みに努めてございます。
 県教育委員会といたしましては、市町村教育委員会と連携し、一層の取り組みの充実を図ってまいります。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私も、文部科学省のアンケート調査結果を統計処理して出したものを見せていただきました。統計処理ですから、関係があるというだけでなかなかぴんとこないんですね。ほとんど学校現場で参考にされていないのではないかと言ったら失礼ですが、そんな気持ちを持ちました。
 和歌山県でかつて県独自の学力調査をやったとき、当時は同和教育との関係での調査をやったのが1979年と1994年という2つの調査があるんですが、そのときは現場の教員も参加をして、保護家庭ではどうか、ひとり親家庭ではどうかなどと、ハンディキャップを持った子供について子供の生活実態と学力の問題を分析したことがあります。その分析を見ながら、学校現場では、うちの学校の、うちのクラスのA君の場合はどうなんだろう、こういう議論に発展をした。
 これは、15年、間があいた調査なんですよ。だから、1つの調査でも、現場の先生も入って非常に綿密な調査をやったんですよ。恐らく教育長は御存じと思いますけど。私は、2つともの調査で、その当時、いろいろ一緒に議論をいたしました。
 今、学力テストで、毎年、国と県のテストが2つもあるんですね。どうしても、そうすると平均点を引き上げることに追われるようなことになるんではないか、こうした一人一人の子供を見据えた議論になりにくいのではないかという心配をいたします。
 教育長は、そういうことではなしにやってますというふうに言っておられますから、そのことに期待をしたいと思います。
 そのことだけ申し上げて、次へ参ります。
 次に、子供の貧困に立ち向かうために何をするのかという、いろいろな問題がありますが、その中で、貧困な家庭を支援する就学援助があります。これは、市町村の管轄になっております。
 私は、それの市町村ごとの一覧をじっくり初めて見たんですが、国の基準があって、市町村が学用品や修学旅行費用などの援助金額を決めていく。国の基準そのものが低いと思うんですが、その基準を大幅に割り込む市町村がある。自治体がある。具体的に言えば、小学1年生の学用品費は、国の基準では1万1420円となってるところ、ある市では6860円。私は、何かの間違いかと思いまして、何かの事情があるのかと県の教育委員会の関係課に聞いてみても、「数字は間違っていません。事情はよくわかりません」という、こういうお答えです。市会議員や教職員組合の支部に問い合わせても、事あるごとに要求しているというお話です。
 あるいは、この就学援助を親に周知し、就学援助金をどう渡すかという問題があります。周知にしても市町村でいろいろですし、それから、就学援助金が口座振り込みになっているのは30市町村のうち10の自治体だけだとお聞きをいたしました。
 こういう問題は、市町村の管轄だからと済ますんでなくて、やっぱり県の教育委員会としてもしっかりと状況をつかんで、市町村と意見交換をして改善努力をすべきだというふうに思うんですが、教育長、いかがでしょうか。
○副議長(藤山将材君) 教育長。
  〔宮下和己君、登壇〕
○教育長(宮下和己君) 就学援助に関しては、それぞれの市町村が実情に応じて決定していくものでございますが、県といたしましては、これまでも、制度が円滑に活用できるよう市町村へ助言を行ってきたところでございます。
 議員御指摘の件につきましても、教育の機会均等の確保という制度の趣旨を踏まえ、市町村教育長会議などの機会に、県内市町村の就学援助支給額の状況について情報提供するとともにプライバシーに配慮した支給方法についても助言してまいります。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 よろしくお願いしたいと思います。
 次の問題です。
 次に、子供の貧困と医療の問題です。
 和歌山県教職員組合が実施した歯科治療についての調査結果があります。歯科健診で歯医者さんに行きなさいよと言われて実際に歯科医を受診した児童生徒が、小学校入学後は医療費助成がない地域では35%、中学校まで助成がある地域では50.55%となっておりました。医療費の助成が効果を上げていることは明らかです。
 この問題、よく市町村で進んでいるから県や国でやらなくてもいいだろうというふうに言われることがあるんですが、その考えは、私は間違ってると思います。共通して必要とされているものなら県でやる、さらに国でやるように迫っていく、そして市町村は地域ごとの施策をさらにそれぞれ必要に応じて考えたらいいと、そういうふうに予算が回せるようになればいいと思うわけでございます。
 子供の医療費を中学校卒業まで、差し当たり小学校卒業まででも県として無料化されてはどうかと思いますが、福祉保健部長、いかがでしょうか。
○副議長(藤山将材君) 福祉保健部長。
  〔幸前裕之君、登壇〕
○福祉保健部長(幸前裕之君) 乳幼児医療費助成制度につきましては、乳幼児の健康保持増進及び子育て世帯の経済的負担の軽減を図るため、乳幼児医療費の支給をする市町村に対して補助を実施するもので、就学前の乳幼児を対象としているのは、乳幼児は免疫が少なく、病気にかかりやすく、また病気にかかった場合に重症化しやすいため、早期に医療機関で受診してもらえるよう自己負担分を無料にしたものであります。
 近年、市町村が対象年齢を拡充していることは県も承知しているところですが、乳幼児医療費助成制度は、ベースになる部分は県が下支えをし、対象年齢拡大等の上乗せの部分については、市町村がそれぞれの地域の実情に応じ施策の特色を出すために実施しているものであり、県が統一的に無料化するものではないと考えております。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 これは残念ですが、きょうはこうしておきます。
 最後に、海南市の津波防災堤防についてお聞きいたします。
 海南市の浮上式津波防災堤防の断念にかかわって、予算特別委員会でもお伺いしました。知事からは、計画変更になってさまざまな案が検討されたのだというお話もありましたけれども、十分納得できるものではありません。海南市議会でも、全員協議会で説明を聞いただけで、きょう、あすあたり、またいろいろと議論されるんではないかと思います。
 新しい堤防の案は、450億円かけて沿岸堤防を9メートル程度にかさ上げしたいというもので、私は、770億円もかけて浮上式をやれと言うつもりはありませんし、450億円もかけてやっていただくことも大変ありがたいと思っています。しかし、お金をかけるからには納得できるものをつくっていただきたい。
 私は、予算特別委員会では、湾内の奥まった狭い部分を仕切って水門をつくってはどうかという提案をいたしました。その場合、和歌山石油という企業が港を使えるかどうか心配しておりまして、その後、和歌山石油を訪問してお話を聞きました。大きな船は月に1回接岸するが、外側の岸壁に着くから問題はないようです。小さい船は毎日のように接岸するけれども、これも1日1個ぐらいだったら工夫すれば私の案も可能ではないかというふうに思いました。
 浮上式堤防をつくるというときには何度も説明会をやっているわけですから、前の計画がだめになり、さらに200億円の予算を積み上げた工事をする、その前にそのくらいの説明会ができないはずはないというふうに思っています。県土整備部長のお考え、そして今の説明の状況などをお聞かせいただきたいと思います。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山下津港(海南地区)津波対策事業につきましては、従前の計画にあった浮上式防波堤が南海トラフ巨大地震発生時に稼働しないおそれがあること、これらに対する補強等に多くの事業費と時間が必要となることなどから、本年2月に国土交通省より、防護レベルを浮上式防波堤と同様の東海・東南海・南海の3連動地震とするも、浮上式防波堤をやめ、港内護岸をかさ上げする構造へ計画変更するとの発表がありました。
 この計画変更においては、国土交通省では、浮上式防波堤を補強する案、防護レベルを昭和南海地震まで下げて事業費を極力抑制する案、沖合防波堤を建設する案など、さまざまな代替案が検討され、また県としても、市民・県民の安全を守るための技術的な妥当性、海南市や地元企業からの協力、財政負担の可能性等の観点から検討してきました。
 その結果、港内護岸のかさ上げ案が、防護レベルが同等で事業費の増加を極力抑えたものであること、港内の利便性や船舶の安全性等も考慮すると最もよい案であるとの結論を出し、本年2月の和歌山下津港(海南地区)津波対策協議会において説明、公表したものです。
 その後、4月下旬から5月上旬に開催された海南市の市政懇談会において個別地区へ説明の要請を受け、6月上旬より、黒江・船尾地区、日方地区、冷水地区にて、国土交通省、和歌山県、海南市による説明会を行いました。この説明会では、特に事業に反対という意見はなく、堤防の開口部の対策や大雨時の対策等に関する意見が出され、検討していくこととしております。
 今後も、設計が終了したときや工事に着手するときなど、必要な時期には地元に対して説明を行っていくとともに、地元住民等から要望等が出された場合には適切に対応するよう努めてまいります。
 なお、議員御提案の港湾の内部に水門を設置する案につきましては、先般の2月議会の予算特別委員会において御説明しましたように、船の接岸だけではなく、狭い水域で船舶がふくそうし、安全性への影響が大きいことや、水門で津波が反射されるため港内護岸をさらにかさ上げする必要があること、水門の高さ、幅とも大規模になることが予想され、事業費の増大や地震時の確実な作動等、課題が多く、実現は難しいものと考えております。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 丁寧な説明、ありがとうございました。
 さらに突っ込んだいろいろな意見も出るかもわかりません。堤防のかさ上げ工事が始まってからいろいろ意見が出ても、これはもう対応できないと思うので、やはり出るだけの意見はその前に出してもらわなくてはいけないと思います。
 そういう点で、これからも、今の答弁でも言われたと思うんですが、ある程度まとまって説明をしてほしい、要望を出したいということがあれば、国や県が一緒になっておいでいただけるんでしょうか。改めてお伺いします。
○副議長(藤山将材君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 先ほども答弁いたしましたけれども、要請のあった3地区には、これまでも十分説明をしてきており、質問、要望等には可能な対応をしていきたいと考えております。
 繰り返しになりますけれども、今後も、設計が終了したときや工事着手時など、節目節目において地元の方々に対し説明し、適切に対応するよう努めてまいりたいと考えております。
○副議長(藤山将材君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 どうもありがとうございました。
 以上で、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○副議長(藤山将材君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時31分散会

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