平成26年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


平成26年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○副議長(尾崎太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 まず、学力テストと教育の問題です。
 9月県議会では、全国学力テスト結果を踏まえて、本会議でも文教委員会でも議論がありました。その後、学校現場で起こっていることの一端を聞きながら、私は大変な事態が起こっているという心配をしています。この心配を取り除くためには、個々の問題を取り上げる前に、教育とは何かということに立ち戻って考えなくてはならないと思います。
 教育というのは、言うまでもなく人間を育てる営みです。体を育て、知識を身につけ、情操や道徳を身につける、全面的、総合的なものでなくてはなりません。若い芽を早く大きくなあれと毎日引っ張っていたら、若芽を枯らしてしまったという例え話がありますが、笑っているわけにはいかない、実際にそんなことが社会にも教育界にも決して少なくないんです。
 子供をある面から追い立てたとき、どんなゆがみが生じるのか。最も極端なものが少年犯罪であります。幼児を殺すような少年犯罪の報道を聞いて、私たちは戦慄します。親は、どんな子育てをしていたのか、決して人殺しを育てようとしたわけではない。優秀な子供に育てようと主観的には思っていた場合が少なくないわけです。この場合は極端な場合だと言われるかもしれませんが、それがもっと大規模に行われているのが、管理と競争の教育が広がる中で多くなってくる不登校の問題であり、いじめの問題です。教育現場のプレッシャーから逃げるのが不登校であり、それを他に転嫁して憂さ晴らしをするのがいじめだと言ってもよかろうかと思います。
 同時に、競争の教育の中で人権意識の希薄化という問題もあります。そして、その行き着く先が子供の自殺であります。マスコミも教育行政も、子供が自殺に追い込まれて初めて大騒ぎをする、それでいて、早く大きくなあれと若い芽を引っ張るような愚かなことをしているときには、そのことに気づいていない場合があると思います。
 極めて簡単にスケッチをしましたが、学力テストをめぐって起こっている事態も、この構図の中で考えてみる必要があると思います。教育とは何かということについて、教育長はどうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 教育は、子供たちが人生を豊かに生きるための基礎、基本となる力を育む営みであり、次代を担う人材を育てるという意味で、私は未来へのかけ橋であると考えております。そのため、県教育委員会では、和歌山で育つ全ての子供に、今日の変化の激しい時代を視野に入れながら、個々の子供の抱えるさまざまな課題にもしっかりと向き合いながら、知・徳・体のバランスのとれた教育を丁寧に推進していくことが大切であると考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今、教育長から、バランスのとれた教育を丁寧に推進していくとお答えになりました。早く大きくなあれと引っ張ってはいけないのです。
 そこで、教育行政がゆがみを生んで、是正せざるを得なくなった例を1つ挙げてみたいと思います。
 教育委員会は、来年度から橋本市、御坊市の中高一貫県立中学校の学級数を減らす方針だとお聞きしました。私は、10年前に中高一貫県立校が和歌山市で発足したときも反対しました。その後、橋本市でこの学校がつくられるとき、2005年9月の県議会文教委員会で、和歌山市の県立中学校に入る生徒は60人に1人だが、橋本市の県立中学校は15人に1人だと、地元の中学校への否定的影響が必ずあると指摘しました。よくできる生徒を集めて、いい学校をつくるつもりでも、大きなゆがみを生む。案の定、公立中学校への打撃は極めて大きかった。近くの中学校は、中高一貫校ができる以前の和歌山県学力テストでは、英語の正答率が88%以上あったものが50%になった。別のある中学校で、83%あったものが46%余りになった。
 このころ、文教委員会で各地域を回ったとき、地元の校長さんは、「県立中学校は地元の中学校によい刺激を与えると言われたが、受けたのは打撃です」と言われました。その後、このたび1学級減という方針を県教育委員会も固められました。どういう反省をもって、県立中学校定数を縮小されるのでしょうか。教育長にお伺いします。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 県立中学校のあり方につきましては、これまで、さまざまな立場の委員から成る第9期きのくに教育協議会の報告で出された地域の公立中学校への影響等についての課題や、県議会を初めそれぞれの地域からの御意見を踏まえ、検討してまいりました。
 県立中学校設立の意義は変わるものではありませんが、少子化の急激な進行の中で、公立中学校との共存も考慮して、来年度から古佐田丘中学校、日高高等学校附属中学校の募集定員を削減することといたしました。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 すばらしい学校をつくるつもりが、大きなゆがみを生んだんだと私は思います。
 ここから、学力テスト結果とその受けとめ方、対策の問題です。
 私は、県教育委員会の対応は、平均点が低かったことにショックを受けて、危機的だなどといって短絡的な学力対策で、教育そのものをゆがめる危険性が大変大きいと心配するものです。プレッシャーを受けるのは、学校現場の先生、特に校長であります。
 海南市のある小学校で、校長がほっとした顔をしておっしゃったそうです。「うちの学校は全国平均より上でよかったなあ」。ベテランの先生が言われました。「でも、うちの学校にだって大変な子供が大勢いるんですよ」。ベテランの先生がおっしゃりたかったのは、平均点でよかった悪かったと考えるのは教育の本質を見落としてしまうおそれがある、一人一人の子供がどうなっているかをしっかりと考える必要があるということでしょう。
 学力テストの結果が大幅にアップした県があります。その1つが沖縄県ですが、8月26日の琉球新報には「小学急上昇に驚きと手応え」という見出しとともに「快挙にも関係者冷静」という大見出しをつけ、「対策で授業おくれ」、「学テ優先、行事は削減」、「教育庁の訪問指導、学校現場に新たなひずみ」という見出しがあります。また、解説記事があって、「背景に『過去問』徹底」という見出しがついています。過去問というのは、全国学力テストの過去の問題でテスト練習をして、その傾向になれさせるということです。夏休み中に県内の算数・数学教育のサークルの先生が沖縄の先生を招いて話を聞く機会があったそうです。「過去問の練習で授業時間が削られる。これでは本当に学力がつくはずがない」と語られたそうです。
 かつて仁坂知事が、学力テストの成績問題について、「私は、テストの成績を上げる方法は知っています。それは、同じようなテストで練習することです。しかし、そんなことは解決にならない」という意味のことを述べられたことがありまして、私は卓見だと心の中で拍手いたしました。そして後に、私の質問の前置きで高く評価したことがあります。
 県教育委員会は、「和歌山県学力向上対策本部から短期計画の報告について」という記者発表文書を出されました。そこにありますチャレンジ確認シートというのは、過去問のことです。学校からは、学力向上推進プラン(短期計画)というものが画一的に報告を求められています。その最初に、全国学力・学習状況調査結果、県学習到達度結果を記入するようになっている。そして、平均より何点低いか自覚せよというわけです。その後に、平成27年度全国学力・学習状況調査に向けた数値目標を記入させるようになっている。チャレンジシート、過去問の練習をするなど、計画を記入して、来年2月段階でどこまでできたかを記入させる。まあ息が詰まりそうな目標、計画、結果達成が学校現場に求められています。こんなことをして、生き生きした創造的な教育活動が行われるとは考えられません。
 私は、教育というのは息の長いものだと思います。もう待ち切れないといって若い芽を引っ張るような学力対策に走ると、大きなひずみを生みます。私は大変心配していますが、教育長はどうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 今回、学力調査が深刻な結果であったことについては、まことに遺憾であると受けとめております。教育学界でも、学力の定義やその学力の評価につきましてはさまざまなものがございます。そういう中で、単に点数を上げればいいのかという点につきましては、それは明らかに間違いであると思います。心豊かにたくましく生きることのできる、真の学力をつけるということを目指すべきであります。そのために、これまで教え方の研修や補充学習等を行ってきたところです。
 このたび作成した学力向上対策の短期計画は、全国学力テストの成績を上げるためだけのものではなくて、真の学力を身につけさせるためのものです。短期計画で示した取り組みが効果を上げているかを把握しながら、学力向上に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 一方で、教員は、テストの結果のみを追い求める必要はありませんが、学力を定着させることに十分重きを置いてない教員がいれば、そうした教員の意識改革をしっかりと図っていく必要があります。教員が、子供に学力をつけることがみずから重要な責務であるということを自覚し、日々の授業を常に見直し、工夫改善に努め、子供たちの学ぶ喜びをしっかりと胸に刻んで、わかる授業、伸びる授業、力のつく授業の実践に努めているかどうかを、市町村協力のもと、県としても徹底して把握させていただき、県、市町村、学校が一体となって学力向上対策を推進してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 教育長、前半で大変いいことをおっしゃったんですが、どうも後ろのほうでは現場の教職員への不信感を持ってるんではないか。どこに学力の定着に十分重きを置いてない教員がいるでしょうか。もちろん、教員に限らず、どの分野でも、どの世界にでも、職務にふさわしくない行動をとる不祥事は起こるでしょう。それを一般的な問題として、徹底して把握していくとはどうなんでしょうか。
 私は、西下教育長ともあろう者が、学力テストのプレッシャーでこんなことを言うところまで追い込まれているのかと唖然といたします。私は、西下教育長は大変立派な教育者だと思っていただけに、また今も思っているんですが、学力テスト体制が教育現場に与える影響に一層危機感を感じるということを申し上げておきたいと思います。
 それで、次へ参ります。
 それで、何らかの学力テストを行うにしても、まずその結果を時間をかけて分析する。単に平均点だけの比較ではなくて、それぞれの学校で子供の学力格差は大きいのか小さいのか、二こぶラクダのようになっていないのか、子供の暮らし、単親家庭との関係、生活習慣、塾との関係、幼児期の読み聞かせ、さまざまな面から分析してみることです。それは、何よりも各学校でやるべきことですが、その模範として、県教育委員会が和歌山大学の先生の協力を得て分析すればいいと思います。
 ここに、岩波ブックレット「調査報告『学力格差』の実態」というブックレットの本があります。これは、大阪大学の教授らのグループが、1989年、2001年、2013年、ちょうど12年に1回、大阪の14の中学校、25の小学校、計39校を対象にして継続調査したものです。貴重な調査であり、大変参考になるとも考えて紹介しておきたいと思います。
 9月県議会で、私は文教委員会で、教育委員会の幹部だけの対策会議ではなく、教育の専門家が入った検討委員会をつくったらどうかと申し上げ、教育局長はそのことには同意されました。教育長は、私の提案にはどうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学力向上対策本部では、調査結果の詳細な分析を行うとともに、先進県を直接訪問し、学力のみならず、効果を上げているさまざまな取り組みについて学んだことを踏まえ、先般、各学校で取り組むべき短期計画を発表したところです。来年度以降の中長期的なプランにつきましては、対策本部で検討を進め、年度内に市町村教育委員会を通じ、各学校へ伝えていきたいと考えております。
 本県がこれから進める学力向上対策を、より実効性のある、成果の出せるものとするためには、外部の有識者等の意見を参考にしていくことも重要であると考えており、今後、施策を進めていく中で、具体的な方策を検討してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今、教育委員会から報告されるものを見ますと、現在やられているのは文部科学省の調査の紹介だけ。今言いました二こぶラクダ型になっていないのか、あるいは子供の貧困や単親家庭との関係などの分析は見られません。かつて、和歌山県教育委員会が、当時、私たちの教職員組合と大論議をした上で、学習状況調査というものをしたことがあります。ここに、これは教育委員会に出されたもので、平成6年3月発行の学習状況調査報告書というものがあります。これの前に赤い本があって、赤本、青本と私らは言ってるんですが、この中では、それなりにさまざまな面から調査結果を分析して、それには現場の先生も含めて多くの皆さんが参加をして検討したことがあります。こういうものも、経験もあるわけですから、やはりそういうことをまずやることが大事だと思います。
 それで、次へ参りますが、さらに私は、世界的にも画一的学力調査に対する批判が起こっていることを紹介しておきたいと思います。
 PISA調査というものは、OECDが3年ごとに実施する15歳の生徒の学力の調査です。一時、フィンランドが高学力であることが話題になり、昔からの日本の学力テストとは問題の傾向が違うとも言われてきました。そのPISA調査に対しても、弊害を訴える教育学者が公開書簡を発表しました。公開書簡は、かなり長い文なんですが一部だけ紹介しますと、「PISA調査は、教育の計測できる狭い面だけを強調することにより、身体的、道徳的、市民的、芸術的発達といった教育対象から関心が離れてしまう」として、「周期的な国際テストのために、より多く時間が割かれ、教育をゆがめる」と指摘しています。この公開書簡には2800人もの教育関係者が賛同し、それがふえています。
 教育長にお伺いします。PISA調査についての公開書簡について御存じでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) OECDが実施しているPISA調査は、学校教育で身につけた知識や技能等が実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるのかを評価することを目的としたものであり、次代を担う子供たちに必要な能力を国際的にはかるという重要な意味を持った調査であると受けとめています。
 議員御指摘の公開書簡において、本調査がもたらす影響や実施方法についての提言や意見等、さまざまな所見が出されていることは承知いたしております。このため、県としても、PISA調査に関する教育改革国際シンポジウムに職員を派遣するなど、本調査の内容や結果分析を注視しているところでございます。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 この3年に1回のPISA調査に対しても、公開書簡では、次回のサイクルを飛ばすことが提案されています。私たちのやられていることではどうでしょう。全国学力・学習テストが毎年実施される。その上、昨日は県学習到達度調査が行われました。年に2回もの学力テストなどとんでもないことをしていると思います。そのことだけを申し上げて、次へ行きます。
 それで、教育委員会がまず取り組むべきことは教育条件整備です。私は、これほど学力問題が大変だと言うなら、学力向上のための教職員定数改善を県独自でやってはどうかと思います。文教委員会では、そのことを提案したら、教育長は、定数改善はしたいが県の財政も大変だと言われます。私は、500人もの定数内講師がいる、一般教員よりも14万円も平均賃金が低い、それがすぐ解消できないのなら、財政的にいって300人ぐらい学力向上のための臨時加配ができるではないかと申し上げました。教育長は、この際、思い切って県単独加配教員を要求する気はないのでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) いわゆる定数内講師につきましては、将来の教職員の定数削減等に備えるため、一定数は必要であると考えており、その配置による人件費の削減を目的としたものではございません。しかしながら、議員御指摘の状況を踏まえ、今後もその数を減らすよう努力してまいります。
 また、教職員定数につきましては、文部科学省が概算要求中でもあり、国の動向を注視しながら、1人でも多くの定数確保に努めるとともに、子供たちに行き届いた教育ができるよう、さまざまな工夫をしてまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今の御答弁の中にあった、定数内講師というものは決して人件費削減のためではないということは信用して受けとめたいと思います。しかし、人件費が安上がりで済んでいることは事実です。このことをきょうは知事には横で聞いておいていただいて、教育長が言われるさまざまな工夫に期待をしたいと思います。
 それで、次へ行くんですが、そこでとんでもない問題が聞こえてまいりました。文部科学省もようやく合意した、少人数学級が行き届いた教育のためには必要だという合意をひっくり返して、40人学級に戻すという財務省の意向があるようです。教育長は、どうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘の小学校1年生を40人学級に戻すという財務省の動向については、学年進行で35人学級になることを想定しておりましたので、驚いているところです。
 県としては、今後も国の動向を注視し、子供の実情に応じて個別指導、補充学習を行うなど、指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 教育長も驚いていると言われた。私は、とんでもないと申し上げました。そんなことにならないように、力を合わせていきたいと思います。
 以上で、教育問題については終わって、次へ行かせていただきます。
 次は、保健所が果たす役割です。
 エボラ出血熱感染が世界的に広がり、アメリカではパニック状態さえ起こっています。日本では水際作戦をとっていますが、いつ地域に入り込んでくるかわかりません。また、最近地域で大問題になったのは、鳥インフルエンザの問題でした。昔からあった食中毒の問題、災害対応、環境保護などに加えて、こうした新たな感染症の心配は、保健所の役割をますます大きくしています。地域における保健所の役割をどう踏まえておられるんでしょうか。特に、最近の感染症の対応など、どういう取り組みをなされてるのでしょうか。福祉保健部長から答弁お願いします。
○副議長(尾崎太郎君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 保健所は、地域保健法に基づく必置機関であり、地域保健の専門的、広域的な拠点として位置づけられています。その果たす役割は、健康課題を明確にし、関係機関との連携による課題解決への取り組み、新型インフルエンザなどの感染症や食中毒、そして災害対応などの健康危機管理及び地域での各医療体制の整備等、多岐にわたっています。
 特に、最近世界的に関心が高まっているエボラ出血熱に対する保健所の取り組みについてですが、保健所は、疑い患者への積極的疫学調査や感染症指定医療機関への移送、検体の確保と搬送、消毒やそれらに伴う医療機関への指導等を行い、第一線で感染拡大防止対策を実施します。県民の安全・安心を守るため、平時からその対応力の強化を目的に、本庁や医療機関と合同の訓練などに取り組んでいるところです。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 頑張っていただきたいと思います。
 こうした中で、医師資格を持った保健所長の役割は重要です。医師資格を持った保健所長がいるということは、例えば、食中毒らしい事案が持ち込まれたときどう判断するかというような問題にとどまりません。むしろ、日常の地域の医療保健体制をつくっていく上で、地域の医療機関をまとめていく役割にこそ、医師資格を持った保健所長の役割が発揮されると思います。各医療機関の中心になっているのは医師の方ですから、その中でリーダーシップを発揮するには、やはり医師でないとうまくいきません。
 しかし、病院でも医師不足と言われる中で、保健所長に医師を確保するのも大変苦労されると思います。行政の中での医師の資格を持った方の定年を延長する条例がこのたび提案されているのも、その1つのあらわれでしょう。保健所長に医師を確保するためにどういう努力をされているのでしょうか。その見通しはいかがでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 議員御指摘のように、地域保健の専門的、広域的な拠点である保健所のトップとしての保健所長には、保健、医療、さらには福祉の充実、向上のため、医師の専門性を持ってリーダーシップを発揮することが期待されています。県内には7保健医療圏にそれぞれ県立保健所がありますが、現行では海南保健所長が兼務となっております。
 県としましては、保健所長の確保のために、青洲医師ネットなどホームページによる募集、国の公衆衛生医師確保推進登録事業への登録、和歌山県立医科大学同窓会員全員への個別文書での勧誘、和歌山県立医科大学を初め他府県医育機関等への働きかけなど、全力を挙げて取り組んでいるところです。全国的にも、約1割の保健所長が兼務となっており、大変厳しい状況ではありますが、引き続き保健所長の確保に努力してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 大変ですが、頑張っていただきたいと思います。
 それでは、最後の質問に入ります。
 津波防災堤防の問題です。
 海南市の浮上式津波防災堤防について、6月県議会でもお聞きしました。昨年12月の技術検討会で問題点が指摘されたという情報をキャッチしておりました。しかし、何の説明もない。今年度予算では浮上式の部分について予算がつかなかったことも踏まえて、どうなっているんですかと説明を求めたわけです。それで、県土整備部長から、想定される地震、津波ではパイプが曲がって浮上しない危険があるという問題が検討されていることが明らかにされ、その質問をきっかけにして、一般新聞でも報道されるようになりました。
 それから、さらに半年たちました。来年度予算編成期にも入ってきてます。ところが、何の説明も行われていません。海南市では、毎年、津波対策協議会が開かれていたのですが、昨年の6月に開かれて以来、開かれていません。その後の検討はどうなっているのか、県土整備部長にお伺いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 御指摘の浮上式防波堤につきましては、6月の県議会で雑賀議員の御質問にお答えしましたように、国土交通省が開催した技術検討委員会において、南海トラフの巨大地震のような最大クラスの津波を起こす地震に対して、地中部の鋼管──これは浮上していく防波堤を海底の中におさめておく鉄の管でございます──これが曲がることにより防波堤が浮上しなくなる可能性があるとの指摘がありました。
 もう少し詳しく説明させていただきますと、現状の鋼管は最大10センチから20センチ変位すると予測されております。最大クラスの津波を起こす地震のような大きな外力が作用した場合、一度変形した地盤がもとに戻らずに鋼管に変位が残る可能性がある、また、地盤の液状化による側方流動によって防波堤の変位が大きくなる可能性があるとの指摘があったものでございます。また、委員会では、これらの指摘を踏まえ、防波堤周辺の地盤改良、鋼管の剛性強化等の追加対策を講じる必要があるとしております。
 いずれにしましても、現在、国土交通省において引き続き当該防波堤の整備方針の変更について検討を行ってると聞いております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 まだ方針が検討中だとしても、説明責任を果たしていないと思います。私が県議会で質問したから一定の説明がされた、しかし、津波対策協議会での説明がない。その一方で、あの堤防には、250億円でできる計画だったが、それよりさらに多くの費用がかかるらしい、もう無理ではないか、もともと無理で無駄な公共事業だったのではないかというようなうわさ、臆測、意見が海南市民の中からは出てきます。正確な情報を正式なルートで海南市民に伝えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 先ほど述べましたように、現在、国土交通省において、技術検討委員会の結果を踏まえて今後の整備方針を検討しているというところでございます。
 国土交通省からは、整備方針の検討結果について、しかるべきときに、沿岸地区の自治会や企業、漁業組合等で構成される和歌山下津港(海南地区)津波対策協議会で説明できるように準備をしていると聞いており、県としましても、適切な説明ができるように協力していきたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 一日も早い説明をお願いしたいと思います。
 そして、技術的な問題があるとしても、ここまでやったものを放り出すことは許されません。関西電力の岸壁が高くなったのは大変結構です。しかし、そこは前からのハザードマップでは、浸水がそう大きくなかった部分です。肝心の中小産業や住宅が密集する海南市中心部はどうなるのか。もちろん、浮上式堤防ができても津波が完全に防げるわけではない、逃げなくてはならないと私たちは言ってきました。しかし、堤防による減災も大変大事なことです。国の責任で納得できる計画を示してもらいたい、これは要望としておきたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○副議長(尾崎太郎君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時40分散会

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