平成26年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


平成26年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(全文)


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平成26年12月
和歌山県議会定例会会議録
第3号
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議事日程 第3号
 平成26年12月10日(水曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第150号から議案第193号まで並びに報第3号(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第150号から議案第193号まで並びに報第3号(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(39人)
 1番 濱口太史
 2番 鈴木太雄
 3番 尾崎太郎
 4番 藤山将材
 5番 新島 雄
 6番 山下直也
 7番 門 三佐博
 8番 井出益弘
 9番 中本浩精
 10番 上田良治
 11番 服部 一
 12番 山本茂博
 13番 山田正彦
 14番 坂本 登
 15番 宇治田栄蔵
 16番 尾崎要二
 17番 岸本 健
 18番 森 礼子
 19番 前芝雅嗣
 20番 浅井修一郎
 21番 中村裕一
 22番 冨安民浩
 23番 立谷誠一
 24番 中 拓哉
 25番 花田健吉
 27番 吉井和視
 28番 向井嘉久藏
 29番 谷口和樹
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 大沢広太郎
 35番 谷 洋一
 37番 高田由一
 38番 奥村規子
 40番 松坂英樹
 41番 長坂隆司
 42番 雑賀光夫
欠席議員(1人)
 26番 角田秀樹
〔備考〕
 36番 欠員
 39番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       和歌哲也
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      木村雅人
 総務部長       市川靖之
 企画部長       野田寛芳
 環境生活部長     栗山隆博
 福祉保健部長     中川伸児
 商工観光労働部長   藤本陽司
 農林水産部長     増谷行紀
 県土整備部長     石原康弘
 会計管理者      岩橋良晃
 教育委員会委員    竹山早穂
 教育長        西下博通
 公安委員会委員長   片山博臣
 警察本部長      下田隆文
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       江川和明
 次長         上坊 晃
 議事課長       糸川 徹
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼議事班長
            尾崎善亮
 議事課主任      中尾祐一
 議事課主任      保田良春
 議事課主任      岸裏真延
 総務課長       谷 巌
 政策調査課長     西原龍也
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  午前10時0分開議
○議長(坂本 登君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第154号、議案第186号から議案第192号までは、いずれも職員に関する条例議案でありますので、地方公務員法第5条第2項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。お手元に配付しておりますので、御了承願います。
 日程第1、議案第150号から議案第193号まで、並びに知事専決処分報告報第3号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 29番谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)
○谷口和樹君 皆さん、おはようございます。谷口和樹でございます。2日目一般質問、よろしくお願いいたします。
 まず、冒頭に、仁坂知事、3期目のスタート、心よりお祝いを申し上げます。それとともに、今後ますますの御活躍を御祈念申し上げます。当選から間もなく職場復帰ということですが、くれぐれも健康に御留意いただき、今後の県勢発展に御尽力をいただきたいところでございます。
 大塔地区の街頭演説の人集めを担当させていただいたんですけども、昼間、ちょっと急だったんで100名程度だったんですけども、顔が見れてよかったと集まった皆さん言われていました。特に紀伊半島大水害で被害が大きかった地区ですので、感謝してる人が多くて、本当に生で見れてよかったと皆さん申しておりました。また機会があれば来ていただけましたらありがたいと思っています。
 それでは、質問に入らせていただきます。
 田辺・西牟婁県立高校クラス減を受けての今後のあり方について、1、クラス数と学校数ということで質問をさせていただきます。
 現在、田辺・西牟婁には、県立高校が4校、分校が1校ありますが、今年度の募集定員でここから3クラスが減少いたしました。
 資料1の田辺市の中学校生徒数推移を見ていただきますと、7年後には206人減で、年に30人ペースで生徒数が減少するのが確認できます。ここにあわせて西牟婁の生徒数減も加味されるわけですが、高校進学対象者は、この平成33年前後までに再度3クラス以上減ることが予想をされます。
 資料2は、田辺・西牟婁県立高校のクラス数と定員です。田辺高校8クラス、田辺工業5クラス、神島高校8クラス、熊野高校6クラス、龍神分校1クラス。仮に今回のように中高一貫の田辺高校、龍神分校の減がないとするならば、他の3校のクラス数が減り、田辺工業は4クラス、神島は7クラス、熊野高校は5クラスになります。
 このように、今後も生徒数減少が考えられますが、田辺・西牟婁の県立高校は、同じ学校数のままクラス減を続けるのか、それとも、統合しつつ1校当たりの生徒数、クラス数を維持するのか、教育長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) ただいまの谷口和樹君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘のように、田辺・西牟婁地方の中学校卒業生徒数の減少が見込まれますが、本県では、その他の地域におきましても生徒数の減少が見込まれることなどから、現在、今後の県立高等学校のあり方について検討を始めたところです。検討に当たっては、有識者を初め、地域や学校の関係者等から意見を聞きながら進めることといたしております。
 田辺・西牟婁地方につきましても、適宜、地域や学校の関係者等から十分に御意見を伺いながら、生徒や保護者の期待に応えられる高等学校づくりに努めてまいります。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 検討を始めたところということですので、ぜひよろしくお願いいたします。
 それでは、2つ目の質問に入らせていただきます。
 熊野高校においての今後のクラブ活動存続についてです。
 県立熊野高校では、平成20年の看護科移設以降、看護科の生徒は実習などで多忙なこともあり、団体競技のクラブで部員が確保できなかったり、結果を出すのに苦しんだりと、厳しい状況にありましたが、前年度1クラスふやしていただいた結果、活気が戻り、実績も、ラグビー部が国体に出場できたりと、好影響がありました。ただ、今年度1クラス減ることでもとに戻ることになります。
 そこで、看護科併設である熊野高校の今後のクラブの維持や存続についてどのように考えておられるか、教育長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘のとおり、熊野高等学校は、クラブ加入率も高く、ラグビー部を初め、体育クラブ、文化クラブともに活発に行われており、近年、急速に生徒一人一人が生き生きとした活気あふれた学校となっております。
 クラブ活動は、集団活動を通して自主性や協調性を育むとともに、学校にも大きな活力を与えてくれる大変意義のある教育活動の1つでありますが、そのあり方については、学校の特色や目指す生徒像を踏まえながら学校長が判断するものでございます。
 県教育委員会としましては、地域の期待や生徒の願いに応えるとともに、学校・学科の特性や生徒の実情などを十分勘案し、クラブ活動を含めた教育活動全般について、より一層の充実が図られるよう指導してまいります。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 クラブ活動は学校長判断でございますが、募集定員は校長で決められませんので、今後とも、また考えてよろしくお願いしたいところでございます。
 3番目の質問に入らせていただきます。
 南部高校龍神分校への通学確保について御質問させていただきます。
 昭和25年創立の県立南部高校龍神分校ですが、周辺では生徒数確保で苦労する中、現在の生徒数は、3年生16名、2年生29名、1年生41名と、連携型中高一貫教育、ネイチャースタディなど、その静かで豊かな学習環境が認められるとともに、近年、野球部の活躍などで入学希望者がふえています。生徒たちは、龍神村内の数々のボランティア活動や地域活動に積極的に参画しますので、地域にとってもすばらしい活力になっており、野球部は、昨夏の高校野球初ベスト8進出で多くの人々を熱狂させました。
 このように、地域にも大変明るい話題を振りまいている南部高校龍神分校ですが、当然、山間部の学校ですので、通学手段が少なく、田辺駅6時56分のバスで1時間半ほどかかることもあり、現在は全生徒86名のうち地元21名を除く44名が、寮、下宿で生活しています。
 寮、下宿の最大定員は48名、毎年多数の入学希望の問い合わせ者は、寮の空き状況であぶれたら通えないなどといった理由で諦めている、そういう現状であると聞いています。学校も地域も特色を出し、生徒も頑張っている中、いわゆる不本意な形で入学者減を招いています。
 来年度分の空き予定は、本来の定数ならば7部屋、学習室や倉庫を臨時で使うと4人ほどいけるらしいのですが、それでも学習室や倉庫を使って11人分で、昨年の入寮者25人、一昨年16人を見ても部屋数が足りません。例年以上の空き不足が懸念され、結果、入学希望者を圧迫しそうな状況であります。
 このような中、現在、国道311号沿いからは18名の生徒が来ており、来年度も今の1~2年生13名がおります。入学志望の数も一定してきておりますので、もし国道311号からの資料3のルートで通学バスを実現できれば、富田川沿いから通学が可能になり、寮の空き状況で希望を断念する、この状況を改善できます。
 受験生が寮のあきを気にせず受験できれば、学校にとっても生徒数の維持につながります。同時に、龍神分校の生徒増は、前述で述べましたが、龍神村のさまざまな行事や活動を手伝ったりと、さまざまな地域貢献もしていますので、村を支える力が増します。
 龍神行政局から日高川下流に向けては、かわら号というバスが走ってくれていますが、資料3のルート、中辺路・栗栖川駅から龍神分校の約15分の区間には、公共交通、田辺市の住民バス、スクールバスも区間設定がありません。この区間に、例えばかわら号のように共同運行で通学時間に合わせてバスを運行させることはできないかと考えます。
 南部高校龍神分校への国道311号からの通学の確保について、教育長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 南部高等学校龍神分校を含む県内の4つの分校につきましては、これまでも中山間地域における住民の学習機会を保障する上で大きな役割を果たしてきました。
 近年、特に南部高等学校龍神分校においては、特色ある教育活動を進めてきた結果、他地域から入学を希望する生徒がふえ、さまざまな方法で通学する生徒がいることは承知いたしております。ただ、県教育委員会としましては、今後の県立高等学校のあり方について検討を始めていることや、他校の状況などを総合的に勘案して、現時点においてスクールバスの導入は困難な状況であると考えております。
 なお、議員御指摘の他の方法による通学方法の確保につきましては、今後、関係機関とも連携をしながら研究してまいります。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひ、県立高校に通う生徒のことですので、教育委員会主導で考えていっていただきたいと思っております。
 それでは、次の質問に入ります。
 林業科の設置についてです。
 紀の国和歌山において、林業の振興は言うまでもありませんが、将来的にも、和歌山県の森林資源は、これから資産価値を伴ってピークを迎えます。林業振興は、同時に、荒廃森林を解消し、大規模土砂災害対策にもつながり、ひいては河川を通じて漁業振興にもつながります。県全体でも、将来永続的にこの森林という資源をどう生かすかという点で、必ず優秀な人材が必要であり続けます。
 平成16年までは、県立熊野高校に森林科学科、もとの林業科がありましたが、現在は総合学科に編入され、特に林業技術職を輩出する専門科ではありません。県の林業技術職を含めてですが、将来的な林業人材育成のための林業科の再設置を──もし先ほどの通学確保ができればの話ですが──紀州材の中でも市場の評価の高い龍神材を輩出する龍神分校に設置できれば、地域活性化、そして県内外から人の集まる特色のある学校になると思います。
 場所はさておきまして、林業科の設置について教育長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 林業に関する学科として、県内では、熊野高等学校に森林科学科を設置していましたが、産業構造の変化やニーズの低下により定員割れが続き、平成16年度より総合学科に改編しました。現在、総合学科の系列の1つであるグリーンマスターにおいて農業関連の学習を行うなど、創意工夫を凝らした教育を推進しております。
 県内の児童生徒数がさらに減少していく中、現時点では林業科などの新たな学科を設置することは困難であると考えますが、生徒の多様な希望や興味・関心、適性等を十分に考慮しながら、地元産業を支える人材の育成に努めてまいります。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 将来的な林業技術職の人材枯渇、もう既に確保が難しくなっているのではないでしょうか。また今後、研究といいますか、検討をする機会を設けていただけたらなと思っています。
 それでは、次の質問に入らせていただきます。
 和歌山県の少子化対策についてでございます。
 日本の少子化政策は年齢という観念が薄く、少子化対策としては、社会的にも経済的にも一番効果的なのは、20代前半の出産家庭であると考えます。
 資料4は、よく皆さんも御存じの15歳以上49歳以下の女性の出産数を示す合計特殊出生率の表で、1947年、第1次ベビーブームでは4.54人ですが、現在は1.43人になっており、減少とともに、現在の年齢別人口のアンバランスも見てとれます。
 資料5、これは高齢出産のデータでございます。このデータを見てみると、20歳から35歳の出産が1947年と現在ではほぼ同じ70%前後になっていますが、内容には大きな違いがあり、20歳から24歳までの出産が激減し、その分、30歳から35歳の出産がふえているのが見てとれます。
 特に顕著なのが1980年、ここから急激な出産高齢化のシフトというのが始まっています。年間8000人ずつ減る県人口と少子多高齢のアンバランスな人口構造の早期回復を目指すには、漠然とした年齢層に対して育てる子供の数を1世帯当たりふやす、そういう考え方より、対象年齢を20代前半の出産家庭に絞って、例えば市町村と折半してでも、毎月2万円ずつ、おむつや粉ミルクほか子育て経費、家庭的保育の費用などを領収書と交換で地域振興券で渡すなどして優遇するほうが、少しでも早期の家族形成を促し、少子化の回復になると考えています。
 ちなみに、県のデータによると、2012年の出生数は7423人、仮に資料の数値、20歳から24歳の比率9.9%を当てはめますと、対象人数は734人、小学校に入るまでの6年間で掛ける6、そして年間24万の半分としますと、県の支出は、予想しますと約5億円となります。仮に市町村を私の住んでいる田辺市に当てはめますと、対象は約400人になります。仮にですが、支出を計算しますと約4800万ということになります。
 社会的にも経済的にも一番苦しいときに手が届き、若くして2子、3子につながった場合、人口バランスの安定につながると考えます。万が一、2子につながらなくとも、PTAや地区運営など、コミュニティー運営に参加する年齢が若くなり、40代で子育てが一段落することで、男女とも、会社での生産能力や、当然、独立や起業という経済効果というのも生まれてくると考えます。
 結婚、出産は自由でございます。当然、人によってはよいことばかりではありません。しかしながら、高齢出産のリスクが近づく年代にまで第3子出産優遇を用意することに比べると、20歳前半の出産家庭への支援というのは、より現実的ではないかと思っております。
 今後の和歌山県の少子化対策について、以上のことを踏まえまして、知事にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 少子化対策として子育て世帯の経済的負担の軽減を図る対策としては、国が現在やっております児童手当があるんですけれども、無条件の現金給付ですから、子育て経費以外にもどうも使用されてしまうんじゃないか、そういう意味で、子育てのインセンティブが少ないんじゃないかと、そういう疑念はあると思います。
 議員御提案の領収書と交換で地域振興券により子育て世帯を優遇する政策というのは、子育てに要する経費に必ず使用されるということになりますので、傾聴に値するものと考えております。
 しかしながら、出産は個人の意思にかかわることでございますし、自由な選択が最優先されるべきであると考えます。ある一定の年代のみに子供を産むことを誘導する政策は、どうもちょっと倫理的に問題があるんじゃないか、そんなふうに思う次第です。
 また、子育て世帯への経済的支援については、今申し上げました児童手当の重複支給という問題が出てまいります。試算によりますと、御提案分だけでもかなりのお金が要ります。児童手当をこれにかえてしまうというのは、国の制度でありますので、現状ではですけれども、難しいわけです。
 したがって、県としては、議員御提案の事業については、現状の制度を前提にする場合、どうも実施が難しいなあというふうに思っている次第です。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。領収書と交換で地域振興券、傾聴に値すると言っていただきましてありがとうございます。
 それと、出産、結婚はもう当然、個人の自由です。本当にええことばっかりやないと思いますし、そこを選ぶのは個人の自由なんですけど、高齢出産をされる方に第3子の制度が用意されてることも同じことではないかなと──その倫理的なことを考えると──僕は思っています。
 知事のことですので、今後とも人口減少や少子化の回復にさまざまな政策を打っていただけると思いますので、そこら辺は御期待を申し上げて、次の質問に入らせていただきます。
 3番目、殿山ダム水利権と遡上阻害の解消について御質問させていただきます。
 資料6でございます。
 資料6は、日本で初めてのドーム型アーチ式ダムでありまして、今年度、2回目の水利権更新がされました殿山ダムでございます。長年、地域から要望しております天然遡上のための魚道設置がいまだになかなか実現しないまま、現在に至っております。
 建設当時の地域のお話を聞きますと、当時、ダム建設に揺れに揺れていました三川地区に小野知事御自身が来られまして、本当に紛糾してる中で、県が責任を持つので建設をさせてください、このように言われて建設に至ったと。そういうことは、当時の住民の方のお話でもそうですし、大塔村史にも載っているところでございます。だからといって、むちゃな責任を押しつけるわけではございませんけれども、魚道といえば、遡上過程で最低でも高さの10倍の魚道の長さが要るということで、今までの話し合いの経過の中では御説明をいただいたことがあると聞いています。
 今は、資料7にありますような縦型壁面魚道という方法もできています。三川地区の方々と実物を見に行ってきましたけども、全国でまだ1基しかなく、岐阜県揖斐川町の砂防に設置がされています。
 この魚道の上部の流入速度と下部の流出速度が同じということで、実験データでは、アユ、アマゴの遡上率が、この魚道の場合は約90%であったと聞いています。理論上は、流入速度と流出速度が同じなもので、まだまだ高さも上げれるということでございます。従来のコンクリートの魚道に比べ、コスト、設置時間とも大幅に削減できるということでした。
 参考までに新しい高効率の魚道も御紹介いたしましたが、魚道設置による天然遡上への取り組みについて設置者に促していただけないか、知事にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 殿山ダムにつきましては、昭和30年に関西電力と日置川漁業協同組合との間で漁業補償等に係る交渉が行われまして、金銭による補償で解決が図られております。その際に、関西電力は、日置川漁業協同組合の漁業権を尊重するものとし、漁業権に基づく漁猟の不能、あるいは捕獲の減少、その他の漁業権の損失に対して金銭による補償を行う一方、発電所堰堤に魚道等の施設を設置しないことでよいとされたと聞いております。
 また、議員御提案の縦型壁面魚道を殿山ダムのようなドーム型アーチ式ダムに設置するとなると、ダム堤体から空中につり下げる構造になってしまうわけですが、殿山ダムは、ダム下流に常に一定量の放流が行われておりませんので、魚道に関する水量を改めて確保する必要があるというような技術的な問題もあります。
 したがいまして、殿山ダムへの魚道の設置を関電に迫るということは極めて困難であるというふうに思います。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 堰堤からつり下げるのは、当然、危ないと思います。今の魚道というのは複合型でされますので、幾つか方法も考えられるのかなと。つり下げは、当然、想定はしておりませんが。
 あわせて、当時、こういう協定が結ばれまして、今、環境やエネルギー、ほんで河川の遡上に対する認識、価値観が60年たって変わってきています。その当時の協定について考えていくことも可能でもあると思いますし、大事じゃないかと思いますので、今回、協定書を確認できたことというのが、すごく私はありがたかったなと思っています。
 これはこのぐらいにさせてもらいまして、次の質問に移りたいと思います。
 もう1つ、建設当時は、紀南の産業発展への電力不足という事情がありました。今は、もうここでなければならないということはないと思います。次の更新は20年後になっていますが、ふるさとの美しい川を取り戻す、こういうことに向けて、撤去も含めた検討会の設置を始めていくべきではないかと考えます。
 当時を知る住民の数、これは大変減ってきています。今回、20年の更新ですが、次の更新までいきますと、地域の住民の数というのがどのぐらいになっているのかと本当に不安に思います。殿山ダムの今後のあり方について、知事にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) ダムで大事なことは、何といっても安全でございますので、今回の水利権の更新につきましては、私からこのダムの安全性について、過去やったからではなくて、改めて徹底的に確認をすることを指示いたしました。その結果、関西電力からも、もう一度詳細に調査、それから計算、そういうものを出させまして、私どもも、それを徹底的にまたダブルチェックをいたしました。
 その結果、このダムは、南海トラフ巨大地震を含めた地震に対する耐震性を有している、それから、過去最大の洪水に対する安全性も有しているということを確認した上で、先般、平成46年7月末まで20年間の水利権更新を許可したところでございます。
 また、これは利水ダムなんでございますけれども、実は県と関西電力との間で協定を結びまして、それから、洪水が予想される場合に可能な限り水位を下げて治水のために活用するような仕組みとなっております。現に、この協定に基づく発動も何件かなされております。また、そこまで至らなくても、最近の大雨のときに、下流が現にこのダムの滞水効果によって随分助かっているというような結果も出ております。
 したがいまして、有用なものとして大事にしていったらいいんじゃないかというふうに考えております。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 今後、区長会等との意見交換会というんですか、そういうこともあるのかと聞いておりますけれども、ぜひそういう交換の機会はいただけたらなと思っております。当時の建設の状況を知る方々というのが、もうかなり高齢になってきています。皆さんの思いのあるうちに気持ちを受けとめていただけたらなと思っています。その意見交換会の開催、できましたらお願いしたい、このように要望させていただきます。
 それでは、次の質問に入らせていただきます。
 和歌山県林業振興のための山林地籍調査促進について質問させていただきます。
 木材価格の低下、林地価格の低下により、山林経営意欲の低下、山林の荒廃森林化が進んでいます。荒廃森林化を解消するには、意欲ある国内の林業経営者に所有者になってもらい、山林を健常な状態に戻してもらう。林地取引市場を活発にしていくことが和歌山県の林業活性化に続くと考えます。そのためには、やはり売買がしやすいように土地の境目をはっきりし、所有者をはっきりする地籍調査を進めていただかなければなりません。
 資料8を見ていただきますと、木材のメッカ田辺市以南の森林というのは、まだほぼ真っ白なままでございます。これでは、手放せない山主が放置したままになります。海岸部を災害に備えて進めるのと同時に、和歌山県の林業も窮地にありまして、山村の過疎化、水害なども考えて、荒廃森林の解消も含めて喫緊の課題でございます。
 和歌山県林業振興のための今後の山林地籍調査促進について、企画部長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 林業振興のための山林地籍調査の促進についてでございますが、地籍調査は、国土の実態を正確に把握するために行われるもので、土地の流動化の促進による経済活性化などの効果があり、議員御指摘のとおり、林地の境界の明確化による所有権の保全により、林地取引市場の活性化に役立つ事業であると考えております。
 事業実施主体は市町村で、本県における事業の進捗状況につきましては、平成25年度末で全国平均の約51%に満たない34.8%ですが、平成15年度以降、全国最大の事業量を確保し、最近では国全体の関連予算の1割以上を占めております。
 ただ、地籍調査は、道路などの公共事業の円滑な推進や津波浸水などの災害からの早期復旧・復興につながることから、これらを優先的に取り組んでいるところでございます。
 以上のことを踏まえまして、それぞれの地域の実情に応じた優先順位により事業が円滑に進むよう、市町村と協議を行い、地籍調査の早期完成を目指してまいります。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 続きまして、5つ目の質問に入ります。
 紀伊半島大水害、田辺市熊野地区及び中辺路町滝尻地区災害復旧工事進捗状況についてお聞きをいたします。
 100年に1度と言われ、未曽有の被害をもたらした紀伊半島大水害から3年がたちました。改めて、失った同胞に御慰霊を申し上げますとともに、今後、水害で1つの命も落とさないように決意を新たにするところでございます。
 本日は、今なお復旧に時間を要している2カ所についてお聞きします。
 山腹崩壊により土石流が約20メートルの高さまで勢いを増し、3名のとうとい命と集落家屋をのみ込んだ土石流、そして、その後できた日本史上5番目と言われる規模の土砂ダムでありましたが、3年がたちまして、なお周辺は工事による道路封鎖がされています。当初の予定からいくと、来春には復旧工事も終わり、封鎖も解除されると聞いておりましたが、通りがかりに山の上から見ますと、どう考えても間に合わないと感じます。実際のところどうなのか、今後の復旧工事の見通しを県土整備部長にお聞きします。
 あわせて、国道311号中辺路町滝尻地内の山腹崩壊現場は、この時期、観光バスや車の往来もピークを迎えていますが、ふだんは、夜間や雨天の通行、ロングの車とのすれ違いにも苦労しながら工事の完了を待っています。地元にとっては、ここの工事は復興の目安でもありますので、一日も早い完成をお願いしつつ、今後の完成の見通しを県土整備部長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 平成23年の紀伊半島大水害により、田辺市熊野地区では、幅約450メートル、長さ650メートルの深層崩壊が発生し、410万立方メートルに上る崩壊土砂が河道を閉塞、約110万立方メートルの天然ダムが形成されました。
 この災害に対し、まず国土交通省は、緊急対策として、天然ダムの崩壊を防止するため、湛水池の排水や埋め戻しなどを実施、次に安全を確保するための本格的な対策工事として、砂防堰堤の設置や河道閉塞部への排水路の整備などに着手しました。
 現在は、排水路の整備は完成し、砂防堰堤工事が進められております。砂防堰堤工事は、本年8月の台風11号による豪雨の影響を受けましたが、平成28年度末の工事完成を予定しております。
 また、田辺市中辺路町滝尻地区の門谷でも、約12万立方メートルの大量の土砂が流出し、国道311号を寸断、富田川を埋塞する等、大きな被害が発生しました。
 この災害に対し、まず、寸断された国道311号の通行を一日でも早く確保するため、崩壊土砂上に緊急的に道路を通すこととし、約1カ月後の平成23年10月に通行可能としました。また、仮橋2橋の設置等を行い、平成24年10月には、雨量等の規制を受けずに通行を可能としたところです。
 本格復旧としては、バイパス計画を策定し、現在、下部工6基を完成、残る橋梁2橋の上部工及び取りつけ工事を施工しており、今年度末の供用を予定しております。
 また、富田川を埋塞させた約9万立方メートルの土砂撤去につきましては、平成26年3月に完了するとともに、門谷の土砂流出対策として平成26年11月に砂防堰堤が完成し、現在、渓流保全工等の整備を実施しているところです。さらに、上流部の斜面対策を含めた全体計画を策定しているところであり、崩壊地の安定を図るため、一日も早く対策を完成させるべく、引き続き工事を進めてまいります。
○議長(坂本 登君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、最後の質問です。
 県道市鹿野鮎川線赤木工区の開通見通しについて。
 平成17年から始まった県道市鹿野鮎川線赤木工区ですが、今後の開通の見通しについて、県土整備部長にお聞きをいたします。
○議長(坂本 登君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 県道市鹿野鮎川線は、田辺市合川から国道311号に通じる地域住民の生活上必要な道路であり、平成11年に延長約1300メートルの新深谷トンネルが完成し、その前後の区間も、これまで順次、整備を進めてきております。
 御質問の赤木工区は、田辺市鮎川の国道311号から深谷の集落までの間で延長約500メートルの未改良区間があり、平成17年度から橋梁整備や道路改良等の事業を行っております。
 今後、残る橋梁1橋の上部工や現道との交差点部の工事を進め、来年度中の完成を目指してまいります。
○議長(坂本 登君) 以上で、谷口和樹君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 9番中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕(拍手)
○中本浩精君 皆さん、おはようございます。中本浩精です。よろしくお願い申し上げます。(発言する者あり)ありがとうございます。
 仁坂知事、御当選、まことにおめでとうございます。「あたたかい改革」で和歌山県政をぐいぐい引っ張っていただきますように、よろしくお願い申し上げます。
 さて、皆さん、ことしももう少しとなりました。12月に入り、寒さが厳しさを増しております。皆様方におかれましては、お体を十分御自愛いただきまして、最後まで頑張っていただきたいと思います。私も精いっぱい頑張らさしていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問に入らせていただきます。
 1項目め、ICTを活用した地域医療体制についてお尋ねいたします。
 現在、日本は、世界の中で豊かで平和な国となっています。しかし、グローバル競争が激しさを増し、一段と地域間格差や経済格差が拡大するなど、我が国には、政治経済に多くの課題が山積しています。将来に向け、大きな時代の転換期を迎えていると私は思います。
 また、少子高齢化や医療の高度化が進む中で、世界に誇ってきた国民皆保険制度にも、財政面での厳しさが増しております。中でも、超高齢社会を目前に控え、連日のように社会保障のあり方についての記事が新聞をにぎわせておりますが、特に最近、2025年問題がクローズアップされております。
 2025年とはどういう時代かと申しますと、皆様も御承知のとおり、高度経済成長を支えた団塊の世代が75歳以上となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となる時代です。高齢化社会が進むと、ますます医療と介護を必要とする人がふえますが、今のままの医療体制で果たして県民の命を守っていけるのか。2025年を見据えて、限られた医療・介護資源を有効に活用し、必要なサービスを確保していくため、さまざまな取り組みを早急に実施することが不可欠だと私は思います。
 そのための有効な手段の1つとして、さまざまな医療分野におけるICTの活用があります。ICT化により、事務処理向上や労働時間短縮などの効果が期待され、医療費の削減にも寄与すると考えられます。
 そこで、本県の地域医療におけるICTの活用状況について、福祉保健部長にお尋ねいたします。よろしくお願いいたします。
○議長(坂本 登君) ただいまの中本浩精君の質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 本県の地域医療におけるICTの活用状況としましては、県地域医療支援センターや県内医療機関に遠隔医療設備を整備し、遠隔外来や遠隔画像診断の実施など、地域の病院、診療所への支援を行うことにより、地域医療の充実を図っております。
 また、和歌山県立医科大学附属病院が中心となり、主に紀南地域の病院が参加して、きのくに医療連携システム青洲リンクを平成25年度より運用しております。その内容は、災害に備え、参加医療機関を受診された患者の診療情報の保全を行うとともに、平時においては、患者の投薬、検査などの診療情報を受診する医療機関で共有し、円滑な医療連携を図るシステムとなっております。
 県では、参加医療機関の拡大や医療画像連携の追加など、システムの機能強化を支援しているところです。
○議長(坂本 登君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 ありがとうございました。
 続きまして、小項目2つ目の今後のICTの活用についてお尋ねいたします。
 私のほうから、ICTを活用した取り組みの1つとして、既に10年以上も前から行っている事例を御紹介させていただきます。
 私の住んでいる伊都地方の医師会が行っているゆめ病院です。
 高齢者は、複数の病気にかかっていることが多く、幾つかの病院で治療しています。複数の病院に通っていると、同じ検査を別の病院で受けたり、同じ薬をもらったりして、患者にとって時間とお金が大きな負担となります。
 そこで、地域の医師の方々が病院の間で患者の情報をネットワークで共有し、協力して治療すれば、より効果的に患者の健康を守ることができます。また、患者の健康記録にも利用できます。そういうことを目的として、10年以上も前の平成14年からゆめ病院の取り組みが始まりました。
 この取り組みは、お手元に資料を配付させていただいておりますが、来年度から用いられる小学校5年生の社会の教科書にも取り上げられ、また、初代ゆめ病院院長の小西紀彦先生は、今年度、日本医師会最高優功賞を受賞されました。
 さらに、この取り組みは、単に患者の負担を軽減するのみではなく、医療の重複を避けるという観点から、今後、2025年に向けて1.5倍にも増加すると言われる医療費の削減にも大きな効果があるのではないでしょうか。また、医師同士や病院間だけのネットワークにとどまらず、介護者や他職種との連携を図ることにより、今後必要とされる在宅医療の現場で情報共有のツールとして大いに役立つのではないでしょうか。
 このようなゆめ病院の取り組みを、行政主導のもと全県的に展開してはどうでしょうか。今後の医療介護分野におけるICTの活用の考え方について、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) ゆめ病院の医療ネットワークは、議員御指摘のとおり、10年以上も前から伊都医師会の方々で始められており、今日の重複投薬や検査の課題を先取りしたもので、県内各地域において、ゆめ病院の事例なども参考にしながら、地域の実情に応じた医療連携や在宅医療のあり方が検討されているところです。
 県の医療介護分野におけるICTの活用については、今後、ゆめ病院を初め、それぞれの地域における在宅医療のデータと青洲リンクのデータとの情報連携を進めることで、より多くの情報保全を行い、災害時においては、保存されたデータを利用した診療の継続、平時には、病院、診療所の連携に加え、これら医療機関と在宅医療や在宅介護の現場との情報共有を推進していけるよう検討してまいります。
○議長(坂本 登君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 ありがとうございます。検討という御答弁をいただきました。本当にありがとうございます。
 私は、元気な和歌山実現に向けて、今後の医療提供体制は、情報の共有が必要不可欠だと思います。2025年の超高齢社会を見据え、最近の医療分野における政策は、入院医療から在宅医療への転換、病診連携から地域包括ケアシステムへ、医師・看護師・薬剤師の連携体制の強化、訪問看護制度、医療・介護の連携の推進等、地域医療ビジョン策定に向け大きく動き出そうとしています。
 時代の転換期にある今こそ、医療の提供は、社会的共通資本の理念に基づき、近江商人の三方よしという言葉がありますが、患者、医療提供者、保険者に喜んでいただけるような政策を全国に先駆けて和歌山県から発信していただけるよう要望いたしまして、1項目めの質問を終わらしていただきます。
 続きまして、2項目めの防災教育についてお尋ねいたします。
 県では、大型台風や集中豪雨による風水害、また、南海トラフを震源とする地震及びそれに伴う津波などの災害に備え、さまざまな対策に取り組んでおり、今後も一層の防災・減災対策を推進していただきたいと思います。
 施設の耐震化、避難タワー、堤防、護岸等の整備など、ハードの充実は不可欠ですが、ハードだけで防災・減災対策が完結するわけではありません。ハード、ソフトの両面で対応して初めて効果的な防災・減災対策が成立するものと考えます。
 そのソフトの根幹をなすのが防災教育です。防災教育により防災意識を高め、災害時のみならず、常日ごろからの備えをすることが必要です。常日ごろの備えということは、一時期学んで終わりではなく、継続的に行わなければなりません。
 通常、大人の庇護にある子供たちも、学校、家庭以外で被災することもあります。小さなお子さんであっても、災害時に自分がどうすべきかを知っておかなければなりません。みずからが主体的に行動できることが重要だと考えます。また、子供たちが防災教育で学んだことを家庭で話すことにより、家庭の防災意識の向上も期待されるのではないでしょうか。
 そこで、教育現場における防災教育の現状について、教育長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) これまで、東日本大震災や紀伊半島大水害の甚大な被害を教訓にして、地震や津波などの災害からお互いに助け合い、自分の命は自分で守ることができる子供たちを育てるため、防災学習や避難訓練等の防災教育に積極的に取り組んでいます。
 小中学校においては、昨年度に改訂した「和歌山県防災教育指導の手引き」を全ての学校に配布し、手引きを活用した防災学習の徹底を図っています。
 また、高等学校においては、自分の命を守ることはもちろんのこと、地域防災の担い手として活躍できるよう、全ての県立学校で高校生防災スクールを実施しています。
 さらに、避難カードを全ての小・中・高等学校等に配布し、各家庭で緊急避難先や避難所などを話し合うことにより、家族全員に逃げ切る意識をしっかりと持たせるとともに、家庭での防災意識の向上にも努めています。
○議長(坂本 登君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 続いて、小項目2、学校教育における防災教育の今後の取り組みについてお尋ねいたします。
 南海トラフを震源とする地震による津波の大きな被害が懸念される沿岸部地域の防災意識は、特に高いのではないでしょうか。東日本大震災で発生した大津波による未曽有の被害が危機感を高めたこともあるでしょう。沿岸部に比べると、それ以外の地域では、幾分、防災意識が低いのではないでしょうか。
 自然災害は、地震、津波だけではありませんし、いつ、どこで起こるかわかりません。何十年、何百年大丈夫だったから今後も安全とは決して言えません。先ほども申し上げたように、防災教育を一時期だけで終えたのでは、防災意識が徐々に薄れてしまいます。どの地域においても、常に高い防災意識を保つための実践的、継続的な取り組みが必要です。防災教育は、防災意識の向上には不可欠であり、文字どおり命の教育です。今後も、より一層の推進をしていただきたいと思います。
 そこで、防災教育の今後の取り組みについて、教育長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 和歌山県は、海や山、川など、豊かな自然に恵まれています。しかしながら、時折、その自然から思いも寄らぬ災害に見舞われることもあります。このような自然の持つ二面性を理解し、ふるさとの自然のすばらしさを大切にするとともに、一たび災害が発生したそのときには、どこの地域に住んでいてもまず逃げること、自分の命は自分で守るという意識を持ち行動することができる子供たちを育てることが重要であると考えています。
 今後は、これまでの防災教育を確実に定着させるよう取り組むとともに、内陸部の学校においても、地域住民や関係機関と連携したより実践的な避難訓練を行うなど、1人の犠牲者も出さない防災教育をより徹底して進めてまいります。
○議長(坂本 登君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 和歌山県では、先進的に防災・減災対策に取り組んでいると認識しておりましたが、今回の答弁でも、工夫を凝らした手法を取り入れられ、防災教育に取り組んでいることをお聞きし、心強く感じました。ありがとうございます。
 ソフト対策である防災教育は、効果がわかりにくい、繰り返しが必要、理解度などが異なるため受け手に応じた対応が必要など、ハード対策と異なる御苦労があると思いますが、県民の命を守るためには必要不可欠です。今後も、創意工夫し、きめ細やかかつ実践的な取り組みを継続的に実施していただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 以上で、2項目めの質問を終わらせていただきます。
 続いて、3項目めのふるさと教育についてお尋ねいたします。
 防災教育が命の教育であれば、ふるさと教育は心の教育と言ってもいいと私は思います。グローバル化や情報化の進展で、これからの子供たちは、国際感覚やICTに対応できる力をつけていくことも必要ではありますが、いつの時代も最も大切なことは人間性であり、この人間性を高めるには、一人一人に心の支えとなるふるさとが必要と考えます。
 私たちのふるさと和歌山県は、温暖な気候と美しい自然に恵まれ、豊かな歴史を持ち、数々の偉人を輩出した誇れるふるさとです。ふるさとを愛し、ふるさとに誇りを持つ子供たちがあすの和歌山の担い手となります。
 そこで、学校教育において、ふるさと教育の狙いをどう考えているのか、教育長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) ふるさと教育は、ふるさと和歌山に愛着と誇りや自信を持ち、心豊かな人間性を育むものです。子供たち一人一人が生涯にわたって生き生きと生きていく上でのよりどころになるものであり、大きな意義があると捉えております。
 このため、学校においてふるさと教育の推進を図り、児童生徒が郷土のすばらしい自然やすぐれた先人、世界に誇れる文化、地域を支える産業等と触れ合う機会を充実させているところです。そこで得た感動体験を通して、すばらしい郷土の歴史や文化等をしっかりと受け継いでいける児童生徒を育てていきたいと考えております。
○議長(坂本 登君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 続きまして、小項目2のふるさと教育の推進状況と今後の取り組みについてお尋ねいたします。
 一人一人が生まれ育ったふるさとは、人間形成に大きな影響があり、学校教育でも地域のことを学ぶふるさと教育を推進することは、非常に大切であると考えます。
 私の生まれ育った橋本市の場合、特産品であれば紀州へら竿やパイル製品、柿、ブドウなどがあります。郷土料理なら柿の葉ずし、偉人なら岡潔、「前畑、頑張れ」の前畑秀子。ちなみに、ことし、前畑さんの生誕100年に合わせて「ガンバレ!のまち橋本市」のキャッチフレーズを掲げています。
 私のまちが一番と、それぞれの市町村で誇れるものがあるでしょう。子供たちにとって、ふるさとの誇りが自分への自信と誇りにもつながると思います。多くの子供たちがふるさとの魅力に気づき、愛着を持てるように、ふるさと教育をより一層充実させていただきたいと思います。
 このような思いを込めまして、学校教育におけるふるさと教育の推進状況と今後の取り組みについて、教育長にお尋ねいたします。
○議長(坂本 登君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 県教育委員会では、児童生徒が郷土について学ぶために、「わかやま発見」や「わかやま何でも帳」、さらに、郷土の民話を英語版にした紙芝居や英語版ふるさと教材「Wakapedia」を作成し、各校において活用しています。
 また、平成21年度より、ふるさとわかやま学習大賞を創設し、すぐれた取り組みを表彰するとともに、広く県民に知っていただくために、作品のホームページ掲載や図書館、駅などへの展示に努めているところです。
 今後とも、市町村教育委員会と連携しながら、全国に誇れる和歌山県内のさまざまな自然や歴史、文化等について学ぶふるさと教育の一層の推進に努めてまいります。
 なお、「わかやま何でも帳」は、書店でも一般販売しておりますので、県としては、これを広く積極的に広報し、ぜひ多くの県民の方々にお読みいただき、ふるさと和歌山のすばらしさを知っていただくとともに、和歌山に生まれ育ったことに誇りを持っていただくことを願っているところでございます。
○議長(坂本 登君) 中本浩精君。
  〔中本浩精君、登壇〕
○中本浩精君 どうも御答弁、ありがとうございます。
 日本人は、先進国の中で最も自分の国の歴史を知らない民族と言われています。本当の意味での国際人を目指さなければならないと思います。
 先日、学習指導要領改訂について諮問があり、その中には、現在、高校で選択科目となっている日本史の必修化の検討も盛り込まれています。自分の生まれ育った国の歴史を知らない若者が、自分の国に、そして自分に自信と誇りを持てるでしょうか。必修化は、私は非常によいことだと思います。
 英語を話せて、仮に外国の方と話す機会があっても、日本のこと、その歴史、文化と伝統を十分に語れない、こんな悲しいことはないと思います。日本を知る、日本を愛することは、ふるさとを知り、ふるさとを愛することだと思います。その点から考えても、ふるさと教育は、教育の根幹と言ってよいかもしれません。子供たちが日本という国を学び、ふるさとを学び、誇りと自信を持って育っていくことを私は期待しております。
 防災教育、ふるさと教育、そして今回質問とはしませんでしたが、命と心、双方にかかわる道徳教育、これらの命と心の教育は、子供たちの将来にとって欠かせない重要なものです。
 昨年11月に学校教育法施行規則が改正され、土曜日等、従来の休業日であっても、設置者の判断により授業が可能となりました。文部科学省では、この土曜授業のほか、学校が主体となった教育課程以外の学習の機会、いわゆる土曜の課外授業などにより、教育環境の充実に取り組むということです。今後、新たな教育の機会がふえると思われます。ぜひ命の教育、心の教育をこれまで以上に推進していただきますようお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(坂本 登君) 以上で、中本浩精君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時14分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(尾崎太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 まず、学力テストと教育の問題です。
 9月県議会では、全国学力テスト結果を踏まえて、本会議でも文教委員会でも議論がありました。その後、学校現場で起こっていることの一端を聞きながら、私は大変な事態が起こっているという心配をしています。この心配を取り除くためには、個々の問題を取り上げる前に、教育とは何かということに立ち戻って考えなくてはならないと思います。
 教育というのは、言うまでもなく人間を育てる営みです。体を育て、知識を身につけ、情操や道徳を身につける、全面的、総合的なものでなくてはなりません。若い芽を早く大きくなあれと毎日引っ張っていたら、若芽を枯らしてしまったという例え話がありますが、笑っているわけにはいかない、実際にそんなことが社会にも教育界にも決して少なくないんです。
 子供をある面から追い立てたとき、どんなゆがみが生じるのか。最も極端なものが少年犯罪であります。幼児を殺すような少年犯罪の報道を聞いて、私たちは戦慄します。親は、どんな子育てをしていたのか、決して人殺しを育てようとしたわけではない。優秀な子供に育てようと主観的には思っていた場合が少なくないわけです。この場合は極端な場合だと言われるかもしれませんが、それがもっと大規模に行われているのが、管理と競争の教育が広がる中で多くなってくる不登校の問題であり、いじめの問題です。教育現場のプレッシャーから逃げるのが不登校であり、それを他に転嫁して憂さ晴らしをするのがいじめだと言ってもよかろうかと思います。
 同時に、競争の教育の中で人権意識の希薄化という問題もあります。そして、その行き着く先が子供の自殺であります。マスコミも教育行政も、子供が自殺に追い込まれて初めて大騒ぎをする、それでいて、早く大きくなあれと若い芽を引っ張るような愚かなことをしているときには、そのことに気づいていない場合があると思います。
 極めて簡単にスケッチをしましたが、学力テストをめぐって起こっている事態も、この構図の中で考えてみる必要があると思います。教育とは何かということについて、教育長はどうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 教育は、子供たちが人生を豊かに生きるための基礎、基本となる力を育む営みであり、次代を担う人材を育てるという意味で、私は未来へのかけ橋であると考えております。そのため、県教育委員会では、和歌山で育つ全ての子供に、今日の変化の激しい時代を視野に入れながら、個々の子供の抱えるさまざまな課題にもしっかりと向き合いながら、知・徳・体のバランスのとれた教育を丁寧に推進していくことが大切であると考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今、教育長から、バランスのとれた教育を丁寧に推進していくとお答えになりました。早く大きくなあれと引っ張ってはいけないのです。
 そこで、教育行政がゆがみを生んで、是正せざるを得なくなった例を1つ挙げてみたいと思います。
 教育委員会は、来年度から橋本市、御坊市の中高一貫県立中学校の学級数を減らす方針だとお聞きしました。私は、10年前に中高一貫県立校が和歌山市で発足したときも反対しました。その後、橋本市でこの学校がつくられるとき、2005年9月の県議会文教委員会で、和歌山市の県立中学校に入る生徒は60人に1人だが、橋本市の県立中学校は15人に1人だと、地元の中学校への否定的影響が必ずあると指摘しました。よくできる生徒を集めて、いい学校をつくるつもりでも、大きなゆがみを生む。案の定、公立中学校への打撃は極めて大きかった。近くの中学校は、中高一貫校ができる以前の和歌山県学力テストでは、英語の正答率が88%以上あったものが50%になった。別のある中学校で、83%あったものが46%余りになった。
 このころ、文教委員会で各地域を回ったとき、地元の校長さんは、「県立中学校は地元の中学校によい刺激を与えると言われたが、受けたのは打撃です」と言われました。その後、このたび1学級減という方針を県教育委員会も固められました。どういう反省をもって、県立中学校定数を縮小されるのでしょうか。教育長にお伺いします。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 県立中学校のあり方につきましては、これまで、さまざまな立場の委員から成る第9期きのくに教育協議会の報告で出された地域の公立中学校への影響等についての課題や、県議会を初めそれぞれの地域からの御意見を踏まえ、検討してまいりました。
 県立中学校設立の意義は変わるものではありませんが、少子化の急激な進行の中で、公立中学校との共存も考慮して、来年度から古佐田丘中学校、日高高等学校附属中学校の募集定員を削減することといたしました。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 すばらしい学校をつくるつもりが、大きなゆがみを生んだんだと私は思います。
 ここから、学力テスト結果とその受けとめ方、対策の問題です。
 私は、県教育委員会の対応は、平均点が低かったことにショックを受けて、危機的だなどといって短絡的な学力対策で、教育そのものをゆがめる危険性が大変大きいと心配するものです。プレッシャーを受けるのは、学校現場の先生、特に校長であります。
 海南市のある小学校で、校長がほっとした顔をしておっしゃったそうです。「うちの学校は全国平均より上でよかったなあ」。ベテランの先生が言われました。「でも、うちの学校にだって大変な子供が大勢いるんですよ」。ベテランの先生がおっしゃりたかったのは、平均点でよかった悪かったと考えるのは教育の本質を見落としてしまうおそれがある、一人一人の子供がどうなっているかをしっかりと考える必要があるということでしょう。
 学力テストの結果が大幅にアップした県があります。その1つが沖縄県ですが、8月26日の琉球新報には「小学急上昇に驚きと手応え」という見出しとともに「快挙にも関係者冷静」という大見出しをつけ、「対策で授業おくれ」、「学テ優先、行事は削減」、「教育庁の訪問指導、学校現場に新たなひずみ」という見出しがあります。また、解説記事があって、「背景に『過去問』徹底」という見出しがついています。過去問というのは、全国学力テストの過去の問題でテスト練習をして、その傾向になれさせるということです。夏休み中に県内の算数・数学教育のサークルの先生が沖縄の先生を招いて話を聞く機会があったそうです。「過去問の練習で授業時間が削られる。これでは本当に学力がつくはずがない」と語られたそうです。
 かつて仁坂知事が、学力テストの成績問題について、「私は、テストの成績を上げる方法は知っています。それは、同じようなテストで練習することです。しかし、そんなことは解決にならない」という意味のことを述べられたことがありまして、私は卓見だと心の中で拍手いたしました。そして後に、私の質問の前置きで高く評価したことがあります。
 県教育委員会は、「和歌山県学力向上対策本部から短期計画の報告について」という記者発表文書を出されました。そこにありますチャレンジ確認シートというのは、過去問のことです。学校からは、学力向上推進プラン(短期計画)というものが画一的に報告を求められています。その最初に、全国学力・学習状況調査結果、県学習到達度結果を記入するようになっている。そして、平均より何点低いか自覚せよというわけです。その後に、平成27年度全国学力・学習状況調査に向けた数値目標を記入させるようになっている。チャレンジシート、過去問の練習をするなど、計画を記入して、来年2月段階でどこまでできたかを記入させる。まあ息が詰まりそうな目標、計画、結果達成が学校現場に求められています。こんなことをして、生き生きした創造的な教育活動が行われるとは考えられません。
 私は、教育というのは息の長いものだと思います。もう待ち切れないといって若い芽を引っ張るような学力対策に走ると、大きなひずみを生みます。私は大変心配していますが、教育長はどうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 今回、学力調査が深刻な結果であったことについては、まことに遺憾であると受けとめております。教育学界でも、学力の定義やその学力の評価につきましてはさまざまなものがございます。そういう中で、単に点数を上げればいいのかという点につきましては、それは明らかに間違いであると思います。心豊かにたくましく生きることのできる、真の学力をつけるということを目指すべきであります。そのために、これまで教え方の研修や補充学習等を行ってきたところです。
 このたび作成した学力向上対策の短期計画は、全国学力テストの成績を上げるためだけのものではなくて、真の学力を身につけさせるためのものです。短期計画で示した取り組みが効果を上げているかを把握しながら、学力向上に積極的に取り組んでいきたいと思っております。
 一方で、教員は、テストの結果のみを追い求める必要はありませんが、学力を定着させることに十分重きを置いてない教員がいれば、そうした教員の意識改革をしっかりと図っていく必要があります。教員が、子供に学力をつけることがみずから重要な責務であるということを自覚し、日々の授業を常に見直し、工夫改善に努め、子供たちの学ぶ喜びをしっかりと胸に刻んで、わかる授業、伸びる授業、力のつく授業の実践に努めているかどうかを、市町村協力のもと、県としても徹底して把握させていただき、県、市町村、学校が一体となって学力向上対策を推進してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 教育長、前半で大変いいことをおっしゃったんですが、どうも後ろのほうでは現場の教職員への不信感を持ってるんではないか。どこに学力の定着に十分重きを置いてない教員がいるでしょうか。もちろん、教員に限らず、どの分野でも、どの世界にでも、職務にふさわしくない行動をとる不祥事は起こるでしょう。それを一般的な問題として、徹底して把握していくとはどうなんでしょうか。
 私は、西下教育長ともあろう者が、学力テストのプレッシャーでこんなことを言うところまで追い込まれているのかと唖然といたします。私は、西下教育長は大変立派な教育者だと思っていただけに、また今も思っているんですが、学力テスト体制が教育現場に与える影響に一層危機感を感じるということを申し上げておきたいと思います。
 それで、次へ参ります。
 それで、何らかの学力テストを行うにしても、まずその結果を時間をかけて分析する。単に平均点だけの比較ではなくて、それぞれの学校で子供の学力格差は大きいのか小さいのか、二こぶラクダのようになっていないのか、子供の暮らし、単親家庭との関係、生活習慣、塾との関係、幼児期の読み聞かせ、さまざまな面から分析してみることです。それは、何よりも各学校でやるべきことですが、その模範として、県教育委員会が和歌山大学の先生の協力を得て分析すればいいと思います。
 ここに、岩波ブックレット「調査報告『学力格差』の実態」というブックレットの本があります。これは、大阪大学の教授らのグループが、1989年、2001年、2013年、ちょうど12年に1回、大阪の14の中学校、25の小学校、計39校を対象にして継続調査したものです。貴重な調査であり、大変参考になるとも考えて紹介しておきたいと思います。
 9月県議会で、私は文教委員会で、教育委員会の幹部だけの対策会議ではなく、教育の専門家が入った検討委員会をつくったらどうかと申し上げ、教育局長はそのことには同意されました。教育長は、私の提案にはどうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学力向上対策本部では、調査結果の詳細な分析を行うとともに、先進県を直接訪問し、学力のみならず、効果を上げているさまざまな取り組みについて学んだことを踏まえ、先般、各学校で取り組むべき短期計画を発表したところです。来年度以降の中長期的なプランにつきましては、対策本部で検討を進め、年度内に市町村教育委員会を通じ、各学校へ伝えていきたいと考えております。
 本県がこれから進める学力向上対策を、より実効性のある、成果の出せるものとするためには、外部の有識者等の意見を参考にしていくことも重要であると考えており、今後、施策を進めていく中で、具体的な方策を検討してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今、教育委員会から報告されるものを見ますと、現在やられているのは文部科学省の調査の紹介だけ。今言いました二こぶラクダ型になっていないのか、あるいは子供の貧困や単親家庭との関係などの分析は見られません。かつて、和歌山県教育委員会が、当時、私たちの教職員組合と大論議をした上で、学習状況調査というものをしたことがあります。ここに、これは教育委員会に出されたもので、平成6年3月発行の学習状況調査報告書というものがあります。これの前に赤い本があって、赤本、青本と私らは言ってるんですが、この中では、それなりにさまざまな面から調査結果を分析して、それには現場の先生も含めて多くの皆さんが参加をして検討したことがあります。こういうものも、経験もあるわけですから、やはりそういうことをまずやることが大事だと思います。
 それで、次へ参りますが、さらに私は、世界的にも画一的学力調査に対する批判が起こっていることを紹介しておきたいと思います。
 PISA調査というものは、OECDが3年ごとに実施する15歳の生徒の学力の調査です。一時、フィンランドが高学力であることが話題になり、昔からの日本の学力テストとは問題の傾向が違うとも言われてきました。そのPISA調査に対しても、弊害を訴える教育学者が公開書簡を発表しました。公開書簡は、かなり長い文なんですが一部だけ紹介しますと、「PISA調査は、教育の計測できる狭い面だけを強調することにより、身体的、道徳的、市民的、芸術的発達といった教育対象から関心が離れてしまう」として、「周期的な国際テストのために、より多く時間が割かれ、教育をゆがめる」と指摘しています。この公開書簡には2800人もの教育関係者が賛同し、それがふえています。
 教育長にお伺いします。PISA調査についての公開書簡について御存じでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) OECDが実施しているPISA調査は、学校教育で身につけた知識や技能等が実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるのかを評価することを目的としたものであり、次代を担う子供たちに必要な能力を国際的にはかるという重要な意味を持った調査であると受けとめています。
 議員御指摘の公開書簡において、本調査がもたらす影響や実施方法についての提言や意見等、さまざまな所見が出されていることは承知いたしております。このため、県としても、PISA調査に関する教育改革国際シンポジウムに職員を派遣するなど、本調査の内容や結果分析を注視しているところでございます。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 この3年に1回のPISA調査に対しても、公開書簡では、次回のサイクルを飛ばすことが提案されています。私たちのやられていることではどうでしょう。全国学力・学習テストが毎年実施される。その上、昨日は県学習到達度調査が行われました。年に2回もの学力テストなどとんでもないことをしていると思います。そのことだけを申し上げて、次へ行きます。
 それで、教育委員会がまず取り組むべきことは教育条件整備です。私は、これほど学力問題が大変だと言うなら、学力向上のための教職員定数改善を県独自でやってはどうかと思います。文教委員会では、そのことを提案したら、教育長は、定数改善はしたいが県の財政も大変だと言われます。私は、500人もの定数内講師がいる、一般教員よりも14万円も平均賃金が低い、それがすぐ解消できないのなら、財政的にいって300人ぐらい学力向上のための臨時加配ができるではないかと申し上げました。教育長は、この際、思い切って県単独加配教員を要求する気はないのでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) いわゆる定数内講師につきましては、将来の教職員の定数削減等に備えるため、一定数は必要であると考えており、その配置による人件費の削減を目的としたものではございません。しかしながら、議員御指摘の状況を踏まえ、今後もその数を減らすよう努力してまいります。
 また、教職員定数につきましては、文部科学省が概算要求中でもあり、国の動向を注視しながら、1人でも多くの定数確保に努めるとともに、子供たちに行き届いた教育ができるよう、さまざまな工夫をしてまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今の御答弁の中にあった、定数内講師というものは決して人件費削減のためではないということは信用して受けとめたいと思います。しかし、人件費が安上がりで済んでいることは事実です。このことをきょうは知事には横で聞いておいていただいて、教育長が言われるさまざまな工夫に期待をしたいと思います。
 それで、次へ行くんですが、そこでとんでもない問題が聞こえてまいりました。文部科学省もようやく合意した、少人数学級が行き届いた教育のためには必要だという合意をひっくり返して、40人学級に戻すという財務省の意向があるようです。教育長は、どうお考えでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘の小学校1年生を40人学級に戻すという財務省の動向については、学年進行で35人学級になることを想定しておりましたので、驚いているところです。
 県としては、今後も国の動向を注視し、子供の実情に応じて個別指導、補充学習を行うなど、指導の充実に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 教育長も驚いていると言われた。私は、とんでもないと申し上げました。そんなことにならないように、力を合わせていきたいと思います。
 以上で、教育問題については終わって、次へ行かせていただきます。
 次は、保健所が果たす役割です。
 エボラ出血熱感染が世界的に広がり、アメリカではパニック状態さえ起こっています。日本では水際作戦をとっていますが、いつ地域に入り込んでくるかわかりません。また、最近地域で大問題になったのは、鳥インフルエンザの問題でした。昔からあった食中毒の問題、災害対応、環境保護などに加えて、こうした新たな感染症の心配は、保健所の役割をますます大きくしています。地域における保健所の役割をどう踏まえておられるんでしょうか。特に、最近の感染症の対応など、どういう取り組みをなされてるのでしょうか。福祉保健部長から答弁お願いします。
○副議長(尾崎太郎君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 保健所は、地域保健法に基づく必置機関であり、地域保健の専門的、広域的な拠点として位置づけられています。その果たす役割は、健康課題を明確にし、関係機関との連携による課題解決への取り組み、新型インフルエンザなどの感染症や食中毒、そして災害対応などの健康危機管理及び地域での各医療体制の整備等、多岐にわたっています。
 特に、最近世界的に関心が高まっているエボラ出血熱に対する保健所の取り組みについてですが、保健所は、疑い患者への積極的疫学調査や感染症指定医療機関への移送、検体の確保と搬送、消毒やそれらに伴う医療機関への指導等を行い、第一線で感染拡大防止対策を実施します。県民の安全・安心を守るため、平時からその対応力の強化を目的に、本庁や医療機関と合同の訓練などに取り組んでいるところです。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 頑張っていただきたいと思います。
 こうした中で、医師資格を持った保健所長の役割は重要です。医師資格を持った保健所長がいるということは、例えば、食中毒らしい事案が持ち込まれたときどう判断するかというような問題にとどまりません。むしろ、日常の地域の医療保健体制をつくっていく上で、地域の医療機関をまとめていく役割にこそ、医師資格を持った保健所長の役割が発揮されると思います。各医療機関の中心になっているのは医師の方ですから、その中でリーダーシップを発揮するには、やはり医師でないとうまくいきません。
 しかし、病院でも医師不足と言われる中で、保健所長に医師を確保するのも大変苦労されると思います。行政の中での医師の資格を持った方の定年を延長する条例がこのたび提案されているのも、その1つのあらわれでしょう。保健所長に医師を確保するためにどういう努力をされているのでしょうか。その見通しはいかがでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 議員御指摘のように、地域保健の専門的、広域的な拠点である保健所のトップとしての保健所長には、保健、医療、さらには福祉の充実、向上のため、医師の専門性を持ってリーダーシップを発揮することが期待されています。県内には7保健医療圏にそれぞれ県立保健所がありますが、現行では海南保健所長が兼務となっております。
 県としましては、保健所長の確保のために、青洲医師ネットなどホームページによる募集、国の公衆衛生医師確保推進登録事業への登録、和歌山県立医科大学同窓会員全員への個別文書での勧誘、和歌山県立医科大学を初め他府県医育機関等への働きかけなど、全力を挙げて取り組んでいるところです。全国的にも、約1割の保健所長が兼務となっており、大変厳しい状況ではありますが、引き続き保健所長の確保に努力してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 大変ですが、頑張っていただきたいと思います。
 それでは、最後の質問に入ります。
 津波防災堤防の問題です。
 海南市の浮上式津波防災堤防について、6月県議会でもお聞きしました。昨年12月の技術検討会で問題点が指摘されたという情報をキャッチしておりました。しかし、何の説明もない。今年度予算では浮上式の部分について予算がつかなかったことも踏まえて、どうなっているんですかと説明を求めたわけです。それで、県土整備部長から、想定される地震、津波ではパイプが曲がって浮上しない危険があるという問題が検討されていることが明らかにされ、その質問をきっかけにして、一般新聞でも報道されるようになりました。
 それから、さらに半年たちました。来年度予算編成期にも入ってきてます。ところが、何の説明も行われていません。海南市では、毎年、津波対策協議会が開かれていたのですが、昨年の6月に開かれて以来、開かれていません。その後の検討はどうなっているのか、県土整備部長にお伺いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 御指摘の浮上式防波堤につきましては、6月の県議会で雑賀議員の御質問にお答えしましたように、国土交通省が開催した技術検討委員会において、南海トラフの巨大地震のような最大クラスの津波を起こす地震に対して、地中部の鋼管──これは浮上していく防波堤を海底の中におさめておく鉄の管でございます──これが曲がることにより防波堤が浮上しなくなる可能性があるとの指摘がありました。
 もう少し詳しく説明させていただきますと、現状の鋼管は最大10センチから20センチ変位すると予測されております。最大クラスの津波を起こす地震のような大きな外力が作用した場合、一度変形した地盤がもとに戻らずに鋼管に変位が残る可能性がある、また、地盤の液状化による側方流動によって防波堤の変位が大きくなる可能性があるとの指摘があったものでございます。また、委員会では、これらの指摘を踏まえ、防波堤周辺の地盤改良、鋼管の剛性強化等の追加対策を講じる必要があるとしております。
 いずれにしましても、現在、国土交通省において引き続き当該防波堤の整備方針の変更について検討を行ってると聞いております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 まだ方針が検討中だとしても、説明責任を果たしていないと思います。私が県議会で質問したから一定の説明がされた、しかし、津波対策協議会での説明がない。その一方で、あの堤防には、250億円でできる計画だったが、それよりさらに多くの費用がかかるらしい、もう無理ではないか、もともと無理で無駄な公共事業だったのではないかというようなうわさ、臆測、意見が海南市民の中からは出てきます。正確な情報を正式なルートで海南市民に伝えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 先ほど述べましたように、現在、国土交通省において、技術検討委員会の結果を踏まえて今後の整備方針を検討しているというところでございます。
 国土交通省からは、整備方針の検討結果について、しかるべきときに、沿岸地区の自治会や企業、漁業組合等で構成される和歌山下津港(海南地区)津波対策協議会で説明できるように準備をしていると聞いており、県としましても、適切な説明ができるように協力していきたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 一日も早い説明をお願いしたいと思います。
 そして、技術的な問題があるとしても、ここまでやったものを放り出すことは許されません。関西電力の岸壁が高くなったのは大変結構です。しかし、そこは前からのハザードマップでは、浸水がそう大きくなかった部分です。肝心の中小産業や住宅が密集する海南市中心部はどうなるのか。もちろん、浮上式堤防ができても津波が完全に防げるわけではない、逃げなくてはならないと私たちは言ってきました。しかし、堤防による減災も大変大事なことです。国の責任で納得できる計画を示してもらいたい、これは要望としておきたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○副議長(尾崎太郎君) 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時40分散会

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