平成26年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


平成26年12月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○副議長(尾崎太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 質問に入ります前に、仁坂知事、3期目の御就任、おめでとうございます。
 開会日の御挨拶にもありましたように、県内のさまざまな現場で切実な声を改めてお聞きになってこられたことだろうと思います。知事におかれましては、県民全体の奉仕者として、県民福祉の向上、県勢の発展に尽力されるよう願うものであります。引き続き、県議会の場で県民生活のための真剣な議論に臨んでいきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、通告に従い、一般質問に入らせていただきます。
 まず最初に、ミカン対策についてお伺いをいたします。
 2014年産のミカンは、極わせのスタートから価格の低迷が続き、11月のわせ最盛期には大幅に値崩れをし、有田産のミカン10キロ箱で市場の価格が1500円前後という厳しい価格形成となっておりまして、ミカン農家からは悲鳴が上がっております。
 先月末には、東京の大田市場に18万ケースもの大量のミカンが滞留していると言います。産地では、この12月に入って、各所で出荷ストップという調整が始まったと言います。市場関係者がここまで荷物が動かないと、こういうふうに言うのは、消費の落ち込みが最大の原因だとされ、そこには消費税8%への増税が大きく影響していると私は考えています。
 また、一方で、天候不順による品質への影響も毎年のように生産者を悩ませています。昨年夏の雨不足からは一転をして、ことしの8月は雨ばかりが続き、ミカンの生育と品質に影響が出ました。玉太りが進んだため、ことしは裏年に当たりますが、生産量は例年より多くなっています。秋には晴れの日が続いたので糖度などは回復したものの、比較的いつまでも暖かかった秋と初冬の気候は、ミカンの購買意欲という点でも、またミカンの保存という点でも、マイナスに働いたようであります。
 有田地方の経済は、このミカンの価格によって大きく左右されます。農家はもちろん、小売りの商売人さん、サービス業、勤め人にも、経済効果が何倍にもなって地元を回る生きたお金です。これまでも、関係者が一丸となって価格形成のために苦労されてきたわけですが、県として、ことしのミカン価格の深刻な低迷状況についてどう考え、どう対応されようとしているのか、御答弁を願います。
 続いて、ジュース等加工品の取り組みについてお伺いをいたします。
 和歌山県のミカン対策の重要なポイントとして、ミカンの生果だけに集中するのではなく、ジュースなどの加工品の裾野を広げ、その魅力を高めていくことが大切だと強調してまいりました。
 この間、JAのジュース工場でもバリエーションや生産量が大幅に拡大されたり、地元有田でも新規に農業法人による加工品生産施設の整備が進むなど、一定規模のものから個人のプライベートブランドまで、積極的な取り組みのニュースも聞くようになりました。これらの流れを一層強化すべきと考えるものですが、取り組みの進行状況はいかがでしょうか。
 3点目は、生産・流通対策の強化についてです。
 昨年9月議会の質問でこの点を取り上げました。加工食品の付加価値を上げて加工用ミカンの買い上げ価格を引き上げる、また一方で、加工用に回す比率を上げることで市場の出荷品質を高めて、また単価と農家収入を上げていく、こうした好循環を生み出していくために、県としても、生産から加工・販売に至る幅広く見通した政策強化をと求めてきたところです。
 これに対し、部長からは、厳選出荷による生果の市場価格の安定化と同時に、加工用果実の確保につながる仕組みづくりを引き続き検討していく旨の答弁がございました。きょうの質問の第1項目め、第2項目めともかかわって、大変大事な意味を持つものとなってきております。
 このほど示された来年度の新政策と予算編成の方針において、県として高品質果実の生産・流通対策の拡充を打ち出されておりますが、どのような方向性で進めていくお考えでしょうか。御答弁を願います。
 4つ目の質問として、農業における食料供給とエネルギー供給の両立についてお尋ねをいたします。
 私は、今年度からミカンの畑の上にソーラーパネルを設置し、農地として高品質なミカンの生産を続けながら発電事業に取り組む農家の方に、畑で実際にお話を伺ってまいりました。
 10アールの畑にパイプで骨組みを立ち上げ、一定の間隔をあけて点々とソーラーパネルを配備しています。合計すると、畑の約3分の1強の面積にパネルが設置された計算になりますが、常に陰になるところがないように非常にうまく配置をされています。
 この畑で栽培されているのはゆら早生という優良な極わせ品種ですが、収穫を終えて、収量や糖度といった品質も例年と全く変わらなかったということですし、そして、それどころか、この品種の弱点でもあった夏の高温障害はこのパネルの設置により克服され、樹冠部でも焼けが起こらずに、より高品質なミカンが収穫されたと聞いております。この畑でのミカンづくりは、これ、平たん地、水田転作園なんですが、園地内にも緩い傾斜をつけて、そして水はけをよくするなど、大変研究熱心に栽培をされていました。
 地元の太陽光パネルの施工業者の方、ここからもあわせてお話を伺いましたが、このパイプの骨組みについては、農家の方が御自身で施工をされたということで、ハウスなど施設栽培で培った農業施設の設置技術とともに、有田のミカン農家の技術力の高さを再認識し、感動いたしました。
 ソーラーパネルの設置費用は金融機関からの融資で、毎月の返済分を優に超える売電収入を上げているそうです。若い農家ですが、自分の子供たちの世代に引き継ぐ、そういう経営基盤をしっかりと考えておられました。私は、彼の農業の将来展望をしっかり見据えたお話に心を打たれた次第です。
 次に紹介するのは、NPO団体と生産者団体が共同した市民参加型の取り組みです。
 生産者団体の施設の屋上へ太陽光パネルを設置するんですが、それに賛同する出資を消費者に募って1口5万円で出資していただくんですけども、その出資していただいた方に5万5000円分の環境保全型農産物を10年間にわたってお届けする、「てんとうむしプロジェクト」という名前ですが、そういうお話、紀の川市でお伺いしました。
 消費者にとってみれば、出資を通じてエネルギーや温暖化問題への貢献、あわせて地域農業の維持に貢献する喜びとともに、出資金相当以上の安心・安全な農産物を受け取ることができるという、こういうお買い得感があります。また一方、生産者にとっては、消費者とこうした取り組みを通じて結びつき、長期間にわたって農産物をお届けするお客さんを得ることができる、そういうメリットと、農業収入に加えて売電収入も期待できるんです。これは大変魅力的なプロジェクトだなあというふうに感じました。
 生産者団体の代表の方が、「売電については先行き不透明な部分もありますが、このプロジェクトは、私たちがこの10年間、環境保全型の農業をこの地域で続けていくんだという決意のあらわれです」と、こんなふうにおっしゃっていたのが印象的でした。
 以上、2つの事例を紹介いたしましたが、まだまだ実験的な取り組みとはいえ、こうした魅力的な動きが現実のものとして広がってきていることに大きな期待を寄せるものであります。
 また、将来的には農業用のかん水事業の電力や水利施設の維持管理コストを売電収入により補うというような仕組みづくりも、農家戸数がだんだん減る中での農業基盤の維持という点で、県としても関係者と一緒に研究することを提案するものです。
 和歌山県農業の未来を考えるとき、狭い耕地面積ではあるものの、温暖な気象条件を生かし、高品質な食料生産と太陽光発電などのエネルギー生産が共存共栄していくことが未来への展望を切り開くことになるというふうに考えます。農地や未利用地、農業施設の屋上への太陽光発電やバイオマス利用など、農山村におけるエネルギー生産の広がりを県としてしっかりと応援していくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 以上4項目の質問について、農林水産部長より答弁を願います。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) ミカン対策4点について、一括してお答え申し上げます。
 まず、ミカンの価格についてですが、本年産極わせミカンは、8月の多雨による品質低下などにより低迷いたしました。その中で、県オリジナル品種であるゆら早生は、極わせミカン全体の平均価格より3割程度高い1キログラム当たり207円と健闘いたしました。その後、わせミカンに切りかわった際に一時的に回復したものの、昨日、12月8日までのミカン全体の平均単価は1キログラム当たり167円と、再生産価格を大きく下回っており、厳しい状況と認識しております。
 県といたしましては、極わせからわせ、なかての優良品種への改植やマルチ栽培などの高品質対策を引き続き実施するとともに、販売対策に取り組んでまいる所存でございます。
 次に、ジュース等加工品の取り組みについてですが、本県では平成21年度から国に先駆けて6次産業化に着手し、県独自の新農林水産業戦略プロジェクト事業により、ミカンについては、ヒット商品となったポン酢やストレートジュース、ゼリーなど、7つの新しい商品が開発されました。
 また、平成25年度からは、国の交付金を活用し、6次産業化サポートセンターを設置して、個別相談会や加工・流通業者との交流会などを開催するとともに、新商品開発や施設整備を支援しているところでございます。
 3番目に、生産・流通対策の強化についてですが、県産ミカンの市場評価を高めるために、JAグループと連携しての厳選出荷、完熟ミカンなど特色のある商品の生産拡大や光センサー選果機の整備などの支援策を来年度の新政策として検討しているところでございます。
 最後に、農業における食料生産とエネルギー生産の両立についてですが、県では従来から農業を重要な基幹産業と位置づけ、優良農地の確保や担い手への農地集積等を推進しているところであり、農村での自然エネルギーの活用に際しては、こうした施策に影響が出ないかということを考慮する必要があります。その上で、議員御提案のように、太陽光発電などのエネルギー生産を農業基盤の維持に役立てることはよいことであると考えます。
 県では、これまで、農業における小水力発電やバイオマスエネルギーの活用の推進に取り組み、事例は少ないものの、生産現場に導入され始めております。
 ただ、議員お話しのミカン畑での太陽光発電につきましては、ミカンは光を多く必要とする農作物であり、発電設備によってある程度光が遮蔽されることから、産地が高品質生産に取り組んでいる中で、高品質で安定した生産が継続できるかどうかという点で検討すべき課題があると考えます。
 今後も、生産、加工、流通、販売、それぞれの段階での施策を通じてミカン農家の経営安定を図るとともに、自然エネルギーを活用した農業・農村の振興に取り組んでまいる所存でございます。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長から、ミカンの価格低迷の対策など、御答弁いただきました。
 これまでも、県や生産者団体、また流通関係者など、各方面の皆さんがそれぞれ力を合わせて、高品質なミカンの生産、販売促進、消費拡大、食育などに取り組んでこられました。その努力の積み重ねで、この数年間、キロ200円以上というのをキープしてきました。こうした御苦労を思うときに、ことしの価格低迷は非常にショックであります。それを何とか方向性を持って対策を強化しなければならないという思いです。
 10キロ箱で1500円といいますと、共選などで約700円の出荷経費が引かれるところもありますから、それを引かれるとキロ80円程度しか手取りがないわけでして、ここから肥料や農薬、人件費などの経費を払うと、もう生活が立ち行きません。再生産価格を大きく下回ってるという現状ですね。そして、ジュース用ミカンに至ってはキロ数円という世界ですから、軽トラックにどんどんいっぱい積んでいって1000円とか2000円とか、そういう世界ですから、これでは良質な加工用果実が集まりませんし、調整機能を果たすこともできません。
 機能性成分を生かした魅力的な新品種の育成など、各分野での取り組みもスピードアップしているわけですから、県としても、価格対策、加工品の育成、また農業の未来を照らすエネルギー生産との共存共栄など、きょうお尋ねしたそれぞれの課題で一層効果的な取り組みを進めていただきたいということを重ねて要望をさせていただきたいと思います。
 続きまして、2つ目の柱に入らせていただきます。
 次に、消費税10%増税について、今度は知事にお伺いをいたします。
 このほど、消費税増税を先送り実施すると安倍政権は判断をし、解散総選挙が戦われております。私ども日本共産党県議団は、これまでも、消費税の負担が県民生活に重くのしかかっている現状を示すとともに、増税不況と言える国・県経済の状況からも、消費税10%増税は中止をというふうに求めてまいりました。安倍首相は、1年半の先送りをした後は、景気がどうあろうと10%への増税を絶対に実施するというふうに断言しています。この増税先送り実施の是非が、今、鋭く問われていると考えます。
 私たちは、増税中止を主張すると同時に、それにかわる財源を示しています。負担能力に応じた税負担で20兆円、加えて、大企業の内部留保を活用して国民の所得をふやす、そういう経済改革で10年後には20兆円、合わせて40兆円の財源案も示し、社会保障を充実しながら財政再建を図ることは可能だとして政治の転換を訴えているところです。
 知事は、この間の県議会での消費税問題の質問に対し、社会保障制度の機能を維持するためには消費税を充てることは理解できると答弁をし、10%増税については、景気や財政運営の影響を考える必要があるが、政府が適切に判断するだろうとの考えを示してこられました。
 私たちは、消費税10%増税は、先送り実施ではなく、きっぱりと中止をすべきだと考えますが、9月議会以降、続々と発表されている各種の経済指標、安倍政権の判断、そして知事選挙を通じて感じてこられたであろう県内状況、県民意識について、知事の所見をお伺いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、9月議会において、消費税の再増税についての御質問に対し、次のように申し上げたわけでございます。
 第1に、消費税の再増税を行う場合には景気に悪影響を及ぼさないかどうか、第2で、一方で再増税が行われなかった場合には、国の財政運営に対する信頼が失われ、国債の信任が低下し、ひいては金融市場及び経済に影響を与えないか、また、消費税増税分は福祉、医療、少子化対策等の社会保障の財源に充てられることになっていることから社会保障の維持可能性がどうなるのか、これら全てのことを考慮し、政府において適切に判断されることを期待したいと申し上げたわけです。
 今回、安倍総理におかれましては、景気の状況を見た上で、財政再建や社会保障制度等を総合的に判断の上、消費税の再増税を18カ月延期する決断をされたものと考えておりまして、現状では、私は、この判断は妥当であると思います。
 和歌山県の経済に与える影響でございますけれども、先ほど午前中の議場で申し上げましたとおり、地方に対して大いに利益を上げた大企業が余り製品の価格、あるいはサービスの価格に転嫁をしてくれてない、その問題が地方における賃金の上昇や、あるいは消費の勢いに水をかけているという問題があると申しまして、それには強力な政府ができて、そして財界に対して大いなるメッセージを発して、それで全体としてその利益分が地方に回るようにしてもらわないと困るというふうに申し上げたわけでございますが、これをぜひ新政権には期待をしたいというふうに思っております。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁いただきました。
 知事からは、9月議会までの答弁、そういうものを示されながら、午前中の答弁にもありましたけども、安倍政権の評価や判断の妥当性とか、午前中には軽減税率への考えなども示されましたけども、全体としては、政府・与党の政策を歓迎するお話にとどまったのは残念であります。転嫁の問題にも触れられましたが、僕は、そこは本質じゃないというふうに思うんですね。
 私たちは、消費税8%への引き上げは深刻な事態を招くというふうに指摘しましたが、県民の事態、まさにそのとおりになってるというふうに思っています。消費税は、所得の少ない人に重くのしかかり、消費を直接に冷やす最悪の景気破壊税だというふうに思います。県民の皆さん、県内企業や中小業者の皆さんは、厳しい経済情勢の中でも必死に頑張っておられます。その県民の暮らしに心を寄せ、励ます県政でありたいと思います。今戦われております総選挙でも、大いに論戦を続けていきたいということを申し上げておきたいと思います。
 続いての質問に移ります。
 最後の3番目の柱であります産科医など医師不足対策の質問に移らせていただきます。
 先日、新聞報道で、「産科医不足、9県で深刻」というふうな記事が各紙で報道されました。これは、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の報告によるもので、和歌山県などの9つの県が産科医不足が深刻だというんですね。これら9つの県では、お産を扱う産科医が不足し、若手が少ないことから早急な改善も難しいということで、現状と、そして将来についての項目で、いずれも厳しいという判断がされています。若手医師の半数を超える女性医師の勤務環境の改善も課題だとされ、支援の重要性が強調をされています。
 少子化対策が叫ばれる中ですが、安心して子供が産めない和歌山県の状況と、これらの分析を県としてどう受けとめ、どのような対策を考えておられるのでしょうか。
 その中でも、この間、何度か質問させていただきましたように、特に有田地方では、出産を扱う産科医が民間クリニック1カ所だけとなっていて、産科医不足問題は、住民の大きな不安の1つです。遠くの病院での健診、出産を余儀なくされる方、里帰り出産が困難だという方などの声もお聞きいたします。また、民間クリニックのベテラン医師にも相当の負担がかかっていることから、産科医師確保と養成の課題は急務であると考えます。
 有田保健医療圏での産科医不足への対応については、その後、どう進めておられますでしょうか。また、県立医大での定員増による効果が県内にあらわれるのを心待ちにしているわけですが、医師養成と医療現場への着任の見通しはいかがでしょうか。とりわけ、産科医養成の状況はどうなっているのかをあわせて御答弁を願います。
 次に、有田市立病院における医師確保策についてお伺いをいたします。
 県の提案により、県立医大と有田市立病院が連携し、指導的な医師の確保につながる寄附講座を設置することが発表されました。有田市立病院における緊急の課題であった指導的な内科医確保につながることを期待するものですが、その内容と今後の取り組みについてお示しいただきたいと思います。
 最後に、モデル事業として始まった産後ケアについてお伺いをいたします。
 厚生労働省の妊娠・出産包括支援モデル事業として有田市の事業が採択をされて、産後ケアを含む取り組みがこの秋からスタートをいたしました。妊婦を支援する今日的な取り組みとして、大いに期待をしているところです。
 私は、有田市立病院を訪ね、母子保健コーディネーターとして活動を始めた助産師さんからお話を伺ってまいりました。市立病院では、産科医不足により分娩は中止されていますが、妊婦健診は病院の産科で行い、分娩は圏域外の連携病院等で行うセミオープンシステムに取り組みながら、このほど、有田市としてモデル事業をスタートさせました。助産師さんがその専門性を大いに発揮されている元気な姿が印象的でした。利用料金なども、モデル事業に採択されたおかげで、より利用しやすいものとなっていました。
 マスコミからの取材もあり、新聞報道などでも「有田市、産科医不足で新制度」と紹介をされ、地元を離れた出産やその後の育児に不安を抱える母親をサポートする事業として注目をされています。助産師がコーディネーターであることや病院施設が中核となるモデル事業というのは全国的にも珍しくて、健診が行えるなどの専門性や、行政と病院の連携がとりやすいという、ここならではのメリットを大いに発揮していただきたいと期待をしております。
 産後ケアについては、これを一層進めていくよう、9月県議会でも意見書を採択しております。県としても、こうしたモデル事業の経験を生かして、一層妊婦と子育てへの支援、母親への支援が広がるよう積極的に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
 以上3点、あわせて福祉保健部長に答弁を求めます。
○副議長(尾崎太郎君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 産科医など医師不足対策について、一括してお答えいたします。
 産科医師数については、和歌山保健医療圏を除く医療圏では、全国平均を下回る医師不足状況にあります。御指摘のとおり、日本産婦人科医会の報告においても将来の産科医師の不足が見込まれておりますが、県では、従前から、産科、小児科などの特定診療科の医師不足への対応策として修学資金制度を設け、医療提供体制の維持に努めてきたところです。
 有田市立病院の産科医の退職に伴う分娩休止に対しては、妊婦健診は最寄りの医療機関で行い、分娩は圏域外の連携病院等で行うセミオープンシステムなど、周産期医療体制の確保に取り組むとともに、引き続き県の青洲医師ネット等を通じて医師募集に努めてまいります。
 また、医師不足の抜本的な解消策として県立医科大学の定員を大幅に増員しておりますが、ようやく初年度の入学生が本年4月から2年間の初期臨床研修についたところです。これら研修医や学生に産科の魅力を伝え、1人でも多くの研修医等が志すよう働きかけてまいります。
 次に、有田市立病院における医師確保策についてでございますが、寄附講座は、有田市立病院内に和歌山県立医科大学のサテライト施設を設置し、公募した教員である指導医等を2名配置し、研修医等を指導するとともに、不足する内科の診療にも従事するもので、県が有田市と和歌山県立医科大学に提案し、この11月に両者で協定が結ばれました。現在、寄附講座による大学での教員募集が始まっており、県としましても、各地の医育大学を初め、多くの医療機関や関係者に情報をお伝えし、意欲ある医師の応募を期待しているところです。
 次に、妊娠・出産包括支援モデル事業につきましては、県としても有田市が採択されるよう国に働きかけたものであり、平成26年10月から取り組んでいただいております。
 この事業は、妊産婦等のニーズに応じ、必要な支援につなぐための母子保健コーディネーターの配置や、妊産婦を孤立化させないために行う産前・産後サポート、また出産直後の母子への心身ケアや育児サポートなどを行うものです。
 妊娠から出産、子育て期までの支援につきましては、市町村が実施主体となり、妊婦健診、妊婦教室や新生児家庭訪問などが行われておりますが、当該事業がさらに県内の市町村に広がっていくよう周知してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 答弁いただきました。
 産科医確保の問題は、非常に深刻で、かつ簡単に解決することが難しい課題だというふうに思っております。
 報道されました数字、もう少し紹介しますと、人口10万人当たりの産科医数というのは、一番多い東京都の11人に対して、和歌山県は7.6人しかありません。人口密度が低く、広大な面積をカバーしなければなりませんから、数字以上に大変です。また、医師1人当たりの年間の分娩数、これも数字データが出てるんですが、最も少ない東京の年間66人と比べて、和歌山県は116人というふうになっています。約2倍という状況です。
 しかし、これを大幅に上回るのが有田地方です。ただ1カ所で頑張っていただいてる民間クリニックの待合室には、今月誕生した赤ちゃんというのが、かわいい赤ちゃんの写真が掲示されています。毎月30人近い赤ちゃんの写真が並ぶんですね。ですから、年間300人を優に超えてると思います。2倍や3倍どころではないんですね。それだけ頑張っていただいても、有田地方の年間の出生数、今、約500人ですから、多くのお母さんが遠く離れた医療施設での出産、健診などを余儀なくされております。
 若手産科医の養成には、時間と条件整備が必要です。100人に定員をふやした県立医大から産科医養成が実を結ぶように、一層の取り組みをお願いいたします。
 最後にもう一度強調いたしますが、この産科医不足問題、出産する施設がないという問題は、絶対にこのまま放置できない問題です。結婚や子育て支援、少子化対策、人口減少社会で出生率を上げる、地域の活性化と、さまざまな角度から、関係者の皆さん、県行政、努力されておりますが、この和歌山県、地元で安心して子供を生むことができないという状況は一日も早く克服すべき課題であり、有田市立病院も、一日も早い分娩再開に向けて現場も頑張っておられます。
 地域保健医療圏の医療体制確保は、県の責務であります。県として一層の取り組みを重ねて要望して、きょうの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(尾崎太郎君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。

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