平成26年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


平成26年9月 和歌山県議会定例会会議録

第4号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○副議長(尾崎太郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に基づき、一般質問に入らせていただきます。
 まず、土砂災害対策と洪水対策についての質問です。
 先月の広島県における大規模な土砂災害には、全国が大きな衝撃を受けました。被災者、御家族、関係者の皆様に、心から哀悼の意とお見舞いを申し上げるものです。
 和歌山県は、3年前の紀伊半島大水害でも大きな洪水と土砂災害を経験し、災害からの復旧、復興とともに防災対策に力を入れてまいりました。今回の土砂災害を教訓に、地方からもさらなる対応を求める要望が上げられ、政府も動き始めている様子です。
 また、一方の洪水対策の分野では、私の地元の有田川で、現在、河川整備計画を策定中です。これに呼応して、私どもは、住民目線で有田川を見詰め直そうと現地調査や学習会を重ね、そして有田川の流れそのものに加えて過去の災害の歴史、地質や地形、洪水対策への地元要望などを学び、交流してまいりました。その中で、河川の洪水対策と土砂災害対策は切っても切れない関係にあると痛感してきたところです。こうした問題意識のもと、以下、順次質問をさせていただきます。
 まず第1点目に、土砂災害警戒区域指定の状況と見通しについて伺います。
 先月の広島での土砂災害報道でも、土砂災害警戒区域の指定がなかなか進んでこなかったこと、こういうことが注目されています。また、調査や指定ができ上がるのにいつまでかかるのだろうかという声も出されています。
 本県においては、この土砂災害警戒区域指定に向けての基礎調査や地域指定の状況はいかがでしょうか。また、今後の進捗見通しはどうなのか。有田郡内での状況とあわせて、県土整備部長よりまず御答弁を願います。
○副議長(尾崎太郎君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山県における土砂災害危険箇所は1万8487カ所であり、平成26年8月末時点で6363カ所の調査が完了いたしました。このうち、土砂災害警戒区域として5636カ所が指定されており、全体の約30.5%となっております。また、特別警戒区域は3054カ所を指定しています。
 有田郡内の状況は、土砂災害危険箇所が1636カ所で、631カ所の調査が完了しています。このうち、土砂災害警戒区域が475カ所指定されており、全体の約29.0%となっております。また、特別警戒区域として430カ所が指定されております。
 土砂災害警戒区域の指定に関する予算は、平成26年度は5億9535万円であり、平成25年度より約76%増加させ、約1200カ所の調査を実施する予定です。そのうち、有田郡内では約170カ所の調査を実施する予定としています。
 今後も、土砂災害危険箇所に対する調査を推進するとともに、警戒区域等の早期指定に努めてまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長の答弁では、県内約1万8500カ所という危険箇所のうち、調査や警戒区域指定が約3割強のところまで来ている等の具体的な数字も示されました。
 いつまでに完了というお答えはありませんでしたが、ことしは予算が前年度比で約8割増ということですから、今後一層スピードアップを図りながら住民の避難計画や情報提供につながるよう、しっかりと対策を進めていただきたいと要望しておきます。
 それでは次に、こうした土砂災害を防止する取り組み、砂防事業の予算についてお伺いをいたします。
 災害防止対策予算の充実は、県民にとって今日的で切実な願いとなっています。私は、今回の質問に当たり、この間の県予算における砂防事業費を当初予算ベースで調べてみました。配付資料の1がそのグラフとなっております。
 左側が、比較的規模の大きい国の補助事業が中心の予算額、そして右側が、この国基準の規模に満たない比較的小規模な工事が中心の県単独事業の予算額のグラフです。国の補助事業のグラフを見ても、県の単独事業のグラフを見ても、この砂防事業の予算というのは、国の三位一体改革で地方交付税が削られて予算ががくんと落ちたそのときから、災害復旧などの変動要因を除きますと抑えられたままとなっていることが見られるというふうに思います。
 このことについて、どんなふうに県としてお考えになりますか。限られた予算内でということでしょうが、県民、市町村からの要望に十分応えられているのでしょうか。この点、県土整備部長より御答弁を願います。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 砂防関係事業予算については、国や県の厳しい財政事情もあり、平成12年度の約90億円をピークに、平成26年度は約43億円と、約52%の減となっております。
 土砂災害防止対策に関しましては、砂防ダムの整備などのハード対策と土砂災害警戒情報の提供など住民の避難行動につなげるソフト対策を総合的に実施していく必要があると考えております。
 今後も、引き続き、県民や市町村からの要望を踏まえて必要な予算を確保し、ハード・ソフト両面から土砂災害防止対策を進めてまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長から御答弁いただきましたように、和歌山県の砂防事業予算は、国補助事業分でもピーク時の約半分、県単独事業分に至っては5分の1のレベルであり、なおかつ低値安定という状況だと言えると思います。地域でお聞きする要望から見れば、これで十分ということではないと思います。山間部や中山間地の多い我が県にとっては、地域や集落を持続させるのに不可欠な身近な災害対策として、しっかりと事業化を図っていただくよう要望をしておきます。
 続きまして、3点目、今度は河川の洪水対策との関係で、この質問に移らせていただきます。
 まず、このたびの有田川の現地調査等を通じまして、河川の洪水対策は森林整備や土砂対策と切っても切れない関係にあるとの思いを強くした幾つかの点について、御紹介をしたいと思います。
 資料2をごらんください。有田川に支流が合流する有田川町糸野地区の地図となっております。有田川の本流は、図の右下からこの左上へと下流方面に向かって流れています。これに対して、図の右の側から支流、これは国道424号線の走る五西月の谷から早月谷川が合流しています。本川に合流する手前で、図の上の方向から支流、これは県道海南金屋線の走る六川の谷から流れ込む玉川が合流しています。有田川本流に目を移していただきますと、合流地点の下流側右岸には大きな砂州が三角形に発達をして、河道を狭くしてせり上げています。河川整備計画素案では、ここを引き堤にして河床掘削をして川幅を広げる計画が検討をされています。
 私たちがこの現地を調査して注目したのは、この早月谷川が真っすぐに有田川に合流せずに一度北側へと逆に大きく曲がって、玉川と合流した後に有田川へと流れる奇妙な形をしているということなんですね。この曲がり方は、単なる蛇行というんではなくて、早月谷川や付近の山腹から、一旦川をせきとめるぐらいの大量の土砂が流入をし、それによって大きく流れを変えた過去の災害の痕跡とも考えられます。
 この早月谷川は、有田川の支流としては最大の流域面積を持つ川であるとともに、流域に多くの地すべり地帯を抱えている支流です。ここにはミカブ破砕帯という九州から関東まで続く大きな破砕帯が3キロメートル幅でずうっと東西に通っています。有田川の洪水対策を考えるとき、本川の流れだけにとどまらず、この支流からの土砂流入に大きな注意を払う必要があると感じました。
 次は、上流部です。資料3は、昭和28年水害における有田川上流部、旧花園村や旧清水町安諦地区での山腹崩壊の状況を記録した図です。山という山、谷という谷で大小さまざまな山腹崩壊が起こったことがよくわかると思います。梅雨の終わりの豪雨による雨水とともに土砂と流木が沢や谷を塞ぎ、土石流となって勢いよく出てくる。下流部では、土砂が河床を上昇させ、流木や流出家屋の木材で橋がせきとめられて水位を上げて堤防が決壊する。こうしたせきとめと一気に始まる流出を繰り返して、いわば雪だるま式に洪水が威力を増していったというふうに思います。豪雨による降水量も大きかったわけですが、地形的要因がその威力を大幅に増幅をさせた大洪水であったというふうに思うわけです。
 また、後ほど詳しく述べますが、二川ダムのダム湖右岸は、ミカブ破砕帯が再び有田川へと接近する地点です。ここで大きな地すべりを起こしてダム湖に突入すれば、大変な災害をもたらす危険があります。
 このように、有田川流域の地形や地質、そして有田川の災害の歴史から見ても、洪水対策を考える上では、川という細い線上の視野で水のことだけ考えるんじゃなくて、土砂流入、土砂災害という土砂のことも視野に入れて、洪水対策の事業計画や住民への情報提供、啓発を進めるべきだと考えます。
 現在、有田川河川整備計画が策定中でありますが、堤防の中の水をあふれないようにコントロールするだけにとどまることなく、土砂の流入に対する対策をしっかりと位置づけて、目的意識的に取り組みを進めるべきではないでしょうか。県土整備部長の御答弁をお願いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 有田川水系河川整備計画につきましては、これまで平成25年7月と11月に有田川を考える会を開催し、関係住民の御意見を伺うとともに、平成26年3月には和歌山県河川整備審議会河川整備計画部会を開催し、素案を公表した上で学識経験者の御意見を伺ったところです。
 本素案の中で、河川の整備の実施に関する事項として、土砂堆積等によって川の流れが阻害されないか点検した結果、治水上問題があると判断した場合には、河床掘削等による流下阻害対策を行い、洪水や高潮時に河川の疎通機能を十分に発揮できるよう河道断面の維持に努める、流域の森林が適正に保全されるよう関係自治体、住民を初めとする多様な主体が行う森林保全に向けた取り組み等と連携を図るなど、位置づけられているところです。
 今後、パブリックコメントを行い、住民の皆様に広く御意見を伺うとともに、関係市・町から御意見を伺うなどの必要なプロセスを経て有田川水系河川整備計画を早期に策定し、計画的な河川整備に努めたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 土砂対策についても位置づけているという答弁でした。
 具体的な改良事業などは下流の築堤区間となりますけれども、土砂対策は上流まで全流域を対象に位置づけられているわけですから、これを機にさらに対策に力を入れるよう要望をしておきます。
 次に4つ目の項目ですが、特に二川ダムサイトの地すべり地帯への対応について、もう少し突っ込んで質問をさせていただきます。
 先ほど、ダムサイト右岸の山腹はミカブ破砕帯が通る大きな地すべり地帯となっているというふうに申し上げました。
 資料4をごらんください。パネルも用意しましたが、資料4は県の土砂災害マップで、二川ダム湖の周辺をパソコンで表示をさせたものです。(パネルを示す)
 図の左下に、ちょっと見えにくいですが、ダム本体があります。そして、この右のほうに、上に向かってこの上流が伸びているわけです。ごらんのように、ダム湖右岸、この斜面は、茶色い縁取りの地すべり防止区域が大きく広がり、そしてこの中には土石流や急傾斜、地すべりの警戒区域、特別警戒区域が各所に点在をしています。もう真っ赤っか、真っ茶っ茶の状態であることがおわかりになるというふうに思います。
 ここで御注意いただきたいのは、こうした危険区域や警戒区域の指定箇所は、そこに民家があって避難計画とか対策事業の必要があるから指定されているわけで、ダムサイトの国道沿いなど人家のないところは、たとえ危険なところであっても指定外ということになっているところもあるわけです。過去に地すべりを起こした土塊、土砂の大きな山のような塊が、足元をダム湖に突っ込んでいることが想像されます。記録的な豪雨や地震により、この地すべりの土塊がダム湖に滑り落ちることとなれば、まさにイタリアのバイオントダムのように、ダム津波によって下流に大きな災害をもたらすことになると思います。
 二川ダムサイトのこの地すべり斜面のように、ダム湖や、そして緊急輸送路、こういったものに重大な被害や影響を与えかねない箇所については、人家のあるなしにかかわらず、今後しっかりと再点検、監視を行っていくべきではないでしょうか。県土整備部長の答弁を求めます。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 二川ダムを初め県管理ダムにおいては、貯水池周辺の崩壊、測量ぐい並びに用地境界ぐい、その他の標示の移動等については、毎週1回、巡視を行い、異常を認めたときには速やかに処置することとしております。
 また、緊急輸送道路を含む県管理道路においては、路面、路肩、のり面及び構造物の状況等を月1回以上の頻度で点検し、異常を発見した場合は速やかに必要な措置を講ずることとしております。
 今後も、ダムや緊急輸送道路を初め、県民生活に必要不可欠な社会資本については、必要な点検やパトロールを実施してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきました。「点検はすることになっております」と言いますが、これまでの延長線上の遠くの車の中から目視による点検をしましたと、こういったことではだめだと思うんですね。また、「異常を発見したら速やかに対策をする」と、こんなふうにおっしゃいましたけども、何か起こってからでないと動けないと、これではだめだというふうに私は申し上げています。
 県土整備部長に再質問をさせていただきます。
 この斜面全体として、従来の延長線上でなくて、目的意識を持った分析、監視をする、そういう視点が必要だというふうに感じないかということです。
 いざ災害が起こってしまえば、それに対する措置は、砂防のセクションも道路のセクションも森林のセクションも、それぞれ調整しながら事業を動かせる、そういうルールができてます。大変有能です。しかし、災害が起こる前に目をつけて、そして対策が必要かどうか考えるというのは、実はこの県という組織は縦割りというか、それぞれが専門的過ぎて、どうにも不得手なんですね。
 先ほども触れましたが、ほぼこの斜面全体が気をつけるべき地域ですけども、あそこが危ない、ここが危ないというところはピンポイントでしか実際歩いての調査をされてないわけですから、この大きな山のような土の塊を見るというところにはまだ目がいってないわけですね。
 豪雨災害や南海トラフ地震、こうした大規模災害への備えもあるでしょう。今後注目すべき地形的ポイント、ダムの現場や市町村住民がどこに気をつけるべきかをやっぱり探ってほしいと思うんですね。
 この土砂災害マップの状況を見て、これまで以上のことを検討する必要性を感じませんか。再度答弁をお願いします。
○副議長(尾崎太郎君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 議員から御指摘もありましたように、笹子トンネルの崩落事故以降、我が国の社会資本の老朽化問題は非常に喫緊の課題になっております。これまでは、今御指摘のありましたように、物事、事件とか事故が起きてから対策をするという事後保全の考え方でしたが、これからは予防保全という考え方を取り入れて社会資本の管理をしていかなければならないと、このように考えております。
 しかしながら、橋梁とかトンネルのように、人工物はこういった予防保全の考え方が大分でき上がってきましたが、のり面とか今おっしゃったような山塊とかという自然物に対しては、なかなかこれまでの知見も蓄積もまだまだ不十分なところもあり、国でもこれから長寿命化に関する施策を講じていくと、こういった状況になっていると考えております。
 和歌山県におきましても、こうした動向も踏まえ、また、こういった危険箇所も多くありますので、県土整備部技術職員も一緒に研究をして対策が講じれるよう努めてまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 今後、やっぱり研究していく課題だという御答弁だったと思います。私は、積極的に受けとめました。
 私が今回提案をさせていただいたような問題点、こういう問題点を行政と地域の住民が一緒になって問題意識を持って当たると、日ごろの防災意識やそういうものを高めていくということになれば、本当にすばらしい成果が発揮できるというふうに思うんですね。
 住民の皆さんに、気づいた小さな異常でも知らせてもらうというようなことを、地域と連携を密にしてすれば、住民からの通報というのは本当に頼りだと思います。これは、高性能な地元密着型のアンテナであり、センサーだというふうに思うんですね。私は、研究者も入ってもらってぜひ調査をするよう検討を要望したいというふうに思います。
 そしてまた、きょうは二川ダムサイトを取り上げましたけれども、県内の県営ダム、発電事業者のダム、それぞれに課題があると思います。ぜひこの機会に、県としての対応を検討されるよう要望をさせていただきます。
 それでは、これまでの議論を踏まえまして、5つ目の質問に移るわけです。
 去る7月に那智勝浦町で開催をされた「大規模土砂災害対策研究機構」設立シンポジウムでは、土砂災害のメカニズムや防災対策研究の一端が紹介をされ、私も興味深く聞かせてもらいました。
 航空機からのレーザー測定によって山の地形データをとれば、樹木に左右されずにより正確な地形をはかることができ、地すべり地形の発見や崩壊危険箇所のモニタリングに活用できるというようなことも報告されていました。先ほどから議論になった地すべり地帯の判読とか指定とかいうのは、現在、県がやっているのは航空写真判定しかやっていないわけで、地形データで見れば抜けていたところも見えてくるはずです。
 今後、さらに新しい視点や知見、データなども生かして、土砂災害の危険箇所についても、新たな危険箇所の発見、指定をすることや、適切な住民避難、災害防止のために要注意、要監視箇所というのを分析し、対策を検討していくことが求められると私は感じています。
 国と共同設置したこの研究機構とも連携と共同を深め、集中豪雨など今日的な気象条件や、最新のデータや知見を踏まえた監視、情報提供、防災対策などを和歌山県として先駆的に進めていくべきではないでしょうか。知事の御答弁をお願いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 大規模土砂災害対策研究機構は、紀伊半島大水害を教訓といたしまして、大規模な土砂災害をいかに避けるのかといった大きな課題を解決するために、国土交通省が中心となって設立したものでございます。
 本機構には、本年4月に設置されました国土交通省の大規模土砂災害対策技術センター、これを核といたしまして、県、那智勝浦町のほかに、地元和歌山大学、三重大学、京都大学、北海道大学などの研究機関が参画をしております。
 県も、これを支援せにゃいかんということで、土砂災害啓発センターというのを建物を伴ってつくりまして、それで啓発をやるとともに、この中にこの技術センターと研究機構に入っていただくというふうにアレンジをしたところでございます。
 県としては、我が国では先駆けとなる国、県、町、研究機関が一体となった研究、技術開発、啓発活動を率先して取り組むことにより、和歌山県の防災対策が一層推進され、また、全国各地で頻発する土砂災害対策にも必ずや役立つものと期待しております。
 また同時に、職員もかなりの数、ここに投入することにしておりまして、直接的な研究成果を上げるということだけではなくて、将来、防災対策などに携わるときに、たくさんの知見を身につけて帰ってきてもらうというようなことも考えておる次第でございます。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事からは、国とも、市町村などとも連携しながら対策を進めていく旨の御答弁をいただきました。
 和歌山県は、中山間地、急峻な地形の多い県です。それがまた豊かな自然環境と人間がうまく折り合いをつけて暮らしてきた、そういう歴史を持つ県であるということが言えると思います。
 県民の身近で切実な要望である土砂災害対策や洪水対策に一層力を入れて取り組まれるよう要望して、次の質問へと移らせていただきます。
 2つ目は、学力テストについてです。
 全国学力テストの結果発表を受け、県教育委員会としてどのような受けとめをし、今後どのような対応をしていくのかということが今議会において多くの議員から質問がされ、教育委員会の答弁がありました。私からも、学力テストについて教育長にお伺いをしたいと思います。
 学力ということで言えば、どの子にも確かな学力をつけたい、他人の痛みのわかる優しい心、そして体も心もたくましく育ってほしい、こういう願いは全ての親の願いであり、教育に携わる関係者の願いでもあります。
 本来の学力対策は、一人一人の子供の実態からスタートをし、わかる喜びを重ねながら、確かで、そして豊かな学力をつけていくものです。学校教育では、わかる授業を何よりも大切にし、助け合い、励まし合って伸びていく仲間づくりも重要となります。そして、教育行政の条件整備としては、対症療法的な指導ではなく、厚みのある学力対策への支援が求められているというふうに思うのです。
 今回の発表でその順位や正答率が注目されている学力テストですが、これは、そもそも学力をつけるための課題を探る状況調査という性格を持ったものです。ところが、このテスト結果に右往左往し、学力テストの点数アップと順位アップという結果を追うことが目標となったり、小手先の取り組みに熱を上げるようなことになれば、本来の学力をつけるという取り組みから考えても、目的と手段がひっくり返って本末転倒だというふうに思います。
 教育行政が果たすべき条件整備という点では、昨日の本会議でも図書館司書の配置の問題が取り上げられました。小さいころから本に本当になれ親しむというのは、大切な力を育てる大事なことだというふうに思っております。
 教育長からは、きのうは、現在5市町で配置が始まったと、大変控え目な御答弁がございましたが、学校図書館担当職員の配置状況を調査した文科省の昨年の資料では、公立小学校への配置全国平均が47.9%であるのに対し、和歌山県は全国ただ1つのゼロ%、そして、中学校の全国平均が47.6%であるのに対し、これも全国ただ1つのゼロ%だったわけですね。今回、5市町合わせて45校での配置が始まったと伺いましたが、計算してみると、和歌山県の配置率としては、小学校で13%、中学校で約10%というレベルですから、全国平均の約5割という水準から見れば、まだまだ大きく立ちおくれてるという状況です。市町村と協力して配置を進めたいと、こういう御答弁でしたが、ぜひこうした面でこそ教育行政としての役割をしっかりと発揮していただきたいと、強く要望をするものであります。
 また一方で、このいわゆる学テ先進県や順位急上昇県などにおけるテスト対策のゆがみというものも指摘、報道されています。これに私は心を痛めています。
 学力テストが行われる4月末に向けて、さまざまなテスト対策が行われているという報告がありました。テストに向けて学校行事のスリム化が方針として出され、3学期にやっていた音楽会を年内に済ませるとか、4月に予定していた家庭訪問を夏休みに後回しにする、こういうこともあったようです。
 春休みには課題、宿題をたくさん出して、新学期に入った途端に過去問などのプリント漬け、直前になれば朝の読書時間とか、果ては授業時間内にも過去問を徹底してやらせたところもあるように聞いています。こうした類似問題を反復的に解く過去問対策で身についた学力というのは、本当の学力とは言えません。
 こうした学テ優先のテスト対策に熱を上げることになれば、そのゆがみやひずみは、結局、子供たちに降りかかってくることになると私は考えます。
 教育長は、答弁の中で、学力テストで好結果を出している他県の効果的な方策を学んで具体策の実践を指導していくと議会で表明をされていますが、小手先のテスト対策にならないよう十分に留意するとともに、子供がおろそかになるようなことは厳に慎むべきだと私は考えます。
 全国学力テストの結果発表を受けての対応、並びに過度な反応による学テ対策偏重は慎むべきではないかという点について、2点合わせて教育長より御答弁願います。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 全国学力テストの結果発表を受けての対応等につきまして、お答えをします。
 今回の全国学力・学習状況調査の結果というのを大変厳しく受けとめておりまして、直ちに教育委員会内に学力向上対策本部を立ち上げ、結果分析とこれまでの学力向上対策の検証に取り組み、より効果的な方策について検討を開始したところでございます。
 対策本部では、県内外の学力向上で成果を上げている学校の情報収集を行うとともに、課題のある学校などに指導主事等を派遣し、学校の現状に対し、適切な指導、助言をしてまいりたいと考えております。また、家庭や地域にも働きかけ、土曜学習の取り組みや家庭での学習習慣の確立を図ってまいります。
 全国学力・学習状況調査は、これからの社会をたくましく生き抜く上で必要な学力をはかるもので、基礎的な知識を問うだけでなく、子供たちが実生活において課題を解決する力が身についているかどうかを把握するものでございます。
 子供たちにしっかりとした学力を身につけさせ、子供たちが心豊かに自信を持って生きていく力を育むためにも、県内全ての学校で課題を把握し、指導方法の改善に努め、学力向上対策を講じることは必要なことと考えております。今後とも、県民から信頼を得られるような成果が出せる教育の実現に向けて、市町村教育委員会とこれまで以上に協力して、学力向上に向け積極的に取り組んでまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 教育長から御答弁をいただきました。私が懸念しているようなことには、直接的にはお触れになりませんでしたけれども、教育委員会の考え方をお示しいただいたというふうに思います。
 私は、子供たちと学校、そして家庭が膝を交え、本当の学力って何だろう、こんなふうに話し合えること、そして学習に課題を持つ子供に対してじっくりと教師が向き合える、そんな学校づくりを目指して和歌山県の教育が進んでいくことを願ってやみません。
 日本の教育が学テ依存体質の学力観から卒業していくべきだとの提起もされてます。今後とも、この学力テスト問題は、しっかりとチェックしながら追いかけていきたいというふうに思います。
 次の最後の質問の柱に移らせていただきます。
 コスモパーク加太用地の活用と県民負担についてであります。
 今議会には、コスモパーク加太用地を県消防学校用地として売買する関係議案が提案されています。
 私たちは、これまでもコスモパーク加太の債務返済スキームについては、関西空港土取り事業の失敗のツケを先送りをして最後は県民に回すものだと批判をしてまいりました。
 関西空港建設のための土取り事業では、438億円もの赤字を出して返済不能となりました。これを30年かけて返済するスキームを立て、借地料を毎年払い、オリックスの債権譲渡などを経て、ことし2月議会では、借入金残高は352億円、そのうち根抵当権は95億円、県の債務保証は231億円と報告をされています。
 コスモパーク加太用地の売買としては、特定調停後11年たって初めてのケースとなるわけで、この売買により債務返済スキームがどう進むのかを企画部長にお尋ねします。
 今回の売買価格は、返済スキーム策定時の土地評価と比べていかがですか。また、今回の売買によって借入金返済がどう進み、県の債務保証など後の県民負担の軽減にどう反映されるのか。御答弁を願います。
○副議長(尾崎太郎君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 消防学校予定地につきましては、平成15年の調停に代わる決定当時は平米単価1万2900円でございましたが、今回の売却に当たりまして土地の造成を行いました。この結果、今議会上程の売買価格は平米単価1万3000円となっております。
 土地代金の総額は約5億9400万円で、用地造成費等必要経費を差し引いた約4億5800万円のうち、収益弁済として約2億7500万円、根抵当分として約1億8300万円を返済することとなっております。
 この結果、当初の返済スキームよりも早期に返済できることとなり、今後、県民負担の軽減につながるとともに土地開発公社が支払うべき利息も軽減されますので、公社の経営改善にも寄与するものと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきました。
 売買価格は平米単価1万3000円で、返済スキームを策定した価格と大差ないように聞こえましたが、お答えになったように、土地の造成費用を入れて1万3000円と。この造成前の鑑定価格は1万2900円ですから、2割ほど割り引いて考える必要があります。
 いずれにせよ、この11年の間に土地の値打ちは残念ながらさらに下がってきているということは明らかだと思います。また、今回の売買したお金が、収益弁済分と、それから銀行の根抵当分に返済が充てられるということですが、県民の将来負担である債務保証の額までは変わらないということだと思います。
 仮に、今回のこの売買単価で残りの土地が1つ残らず全部売れたと仮定をしても、約100億円の銀行根抵当分程度にしかならず、県の債務負担分は県民へのツケとして払わなくてはならなくなる計算です。大変厳しい状況には変わりないということだと思います。
 こうした状況を受けて、最後に知事に質問をさせていただきます。
 コスモパーク加太用地の今後の方向性についてです。
 コスモパーク加太用地の活用については、現在、どのような引き合いがあり、今後、どのような方向性で利活用を進めていくお考えでしょうか。また、将来の県民負担を軽減するための方法については、返済スキームの見直し等も含め検討する考えはおありかどうか。知事の御答弁をお願いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) コスモパーク加太については、企業誘致用地、公共施設用地、防災対策用地としての利活用に向け取り組んでおります。
 現在、企業誘致用地として加太菜園、メガソーラー発電所が稼働中でございまして、引き合いがあればどんどん行きたいと思います。それから、公共施設用地としては、今後、県消防学校の建設を予定しており、そのための用地取得議案を今議会に上程しているところでございます。また、防災対策用地といたしましては、既にヘリポートを整備しておりまして、県の広域防災拠点、これの第1番目、第1広域防災拠点として、緊急時のヘリの発着とともに災害時の活用のための各種防災訓練等に利活用しているわけでございます。
 コスモパーク加太をどういうふうに扱うかという点については、新行財政改革推進プランに対応を示しております。というよりも、県民に隠すところなく対応を公開しているというところでございます。したがいまして、これに沿って調停に代わる決定の返済スキームについては今後も確実に実行していきながら、大規模用地が確保できること、自然災害に強いこと、京奈和自動車道や第二阪和国道など今後のアクセス面の向上などをアピールいたしまして、より一層企業への働きかけをして早期売却に努力していく所存でございます。
○副議長(尾崎太郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事から御答弁いただきました。
 現在の返済スキームについては、確実に実行しながら土地の早期売却を進めていくという旨の御答弁だったと思います。
 私たちは、この返済スキーム自体が、銀行がほとんど損をかぶることなく押しつけられたものだと批判をしてまいりました。知事は、この決定と返済スキームについて、当時はほかに解はなかったと述べられておりますけれども、約10年経過してこの状況という中、県民の将来負担軽減のため、この返済スキームを見直していくという姿勢を示されなかったことは大変残念であります。
 失敗のツケである将来負担を軽減するために今後とも議会でしっかりとチェックしてまいりたいということを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(尾崎太郎君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時46分散会

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