平成26年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


平成26年9月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、改めまして、こんにちは。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らしていただきたいと思います。
 それでは、大項目の1点目として中国訪問について、まず小項目の1、県産品海外販路拡大及び中国北方2省の調査に係る報告から申し上げます。
 去る8月23日から26日までの4日間の日程で、井出益弘議員を初め、片桐章浩議員、岸本健議員、そして私の計4名が、議員派遣により、中国の遼寧省大連市を皮切りに、黒竜江省ハルビン市、そして遼寧省瀋陽市を訪問してまいりました。
 現在における日中関係は、皆さん御承知のように、端的に申し上げれば、隣国にもかかわらず、冷え込んだ政治や両国の国民感情に距離感が見られるのが実情であります。しかし、その一方で、経済交流や文化及び人的な交流はこれから先もさらに発展が期待できる状況であり、非常に不思議な関係でもあります。これからの我々両国にとっては、むしろそのような政治的に苦しい状況下にあるときだからこそ、さまざまな交流を通じて互いに協力をし、友好関係を深めていくことが、隣国に暮らす者同士、欠いてはならない重要な部分ではないでしょうか。
 今回の訪中においては、そういった意味も込めて、大連市で年に1度開催される日本商品展覧会の幹部や政府観光局関係者、そして各種関係幹部の方々に、本県の農林水産品と高野・熊野の世界遺産を含めた観光地としての魅力をPRするとともに、現地事業者の方々とも友好関係を構築すべく、各都市において意見交換及び調査活動を行ってまいりました。
 また、今後の本県における取り組みへの参考とするため、広大な国土面積を有する中国で行われている林業の実態や農産物の生産状況、それから、新たな海外製品を発掘し、輸入することを通じて自国のマーケット拡大へと結びつける取り組みや観光産業についても調査をしてまいりましたので、その概要をここに御報告申し上げます。
 まず、中国の経済や産業、その他状況について、現地の各自治体で受けた説明の内容を中心に、少し概要を加え、述べたいと思います。
 中国経済は、改革開放の始まった1978年以来、30数年間にわたって高度成長しており、2008年のリーマンショックで世界の多くの先進諸国が深刻な不況に落ち込んだ時期でさえ、その影響からいち早く回復し、世界経済の牽引役となりました。2010年には名目GDPが5兆9000億ドルと、我が国を抜き、アメリカに次いで世界第2位となったわけであります。
 現在、中国の人口は約13億6000万人で我が国の10倍以上であり、石炭、鉄、銅、石油、レアメタルなどの豊かな地下資源に恵まれております。しかしながら、総体的に見れば国民1人当たりの資源量は世界平均を下回り、資源が不足するため、その多くを輸入に頼るほか、新たな資源開発にも力を注いでるとのことであります。
 また、急速な経済成長に支えられて、近年、中国から海外への観光客数も着実に伸びており、誘客に向けた取り組み次第では、日本、特に和歌山を訪れる人々の伸びも期待できる状況にあります。
 このような中、私たちは、まず中国の遼寧省大連市内にある会場で、大連市旅游局局長を含む代表者の方々との意見交換を行いました。また、その夜には、和歌山県に本社があり、北京、上海にも営業拠点を持つ食品事業者の方とともに、大連日本商品展覧会幹部とのレセプションへ参加をいたしました。その場では、互いにプレゼンテーションを行い、さまざまな角度から和歌山県の産品や観光地としての魅力をアピールするとともに、今後はさらに本県と大連市との協力関係や友好関係を深く築いていこうと、かたい握手を交わしました。
 このほかにも、さきに申し上げた日本商品展覧会がこの10月中旬に行われる運びとなっており、その際には、ぜひ中国市場に関心がある日本企業、とりわけ和歌山県のより多くの企業の参加をジェトロを通じてお願いしてほしい旨の協力要請がありました。
 この日本商品展覧会とは、中国最大級の日本の商品を集めた商談会で、大きな宣伝効果も期待できる場であるとのことであります。ただ、ここ3年間は政治の冷え込み等で本県の企業は辞退をされていたとのことですが、ことしはできる限りの地元企業の参加を期待いたしますし、私自身も参加を促してまいりたいと思っているところでもあります。
 また、今回訪れた人口約600万人の大連市は、遼寧省の南部に位置し、経済的重要性から省クラスの自主権を持つ副省級市にも指定されており、国内でも有数の港を活用した貿易、工業、観光都市で、観光客を含め、非常に多くの人でにぎわっているまちでもあります。
 さらに、大連賓館や旧大連市役所など、日本統治下で建てられた建物が今なお活用されているばかりか、それらは国家級の文化遺産にも登録され、当時を色濃く残した観光スポットとなっております。そのほか、司馬遼太郎の「坂の上の雲」で書き記された激戦の地でもある203高地など、数え上げれば切りがありません。
 近年においては、改革開放政策の一環として設けられた大連経済技術開発区には日本企業が軒を連ねており、多くの日本人が働いております。そして何より、約4年前の尖閣諸島問題に端を発した中国各地での暴動の際においても、そういった行動は一切行われなかった親日的な都市であり、日本人にとりましては非常になじみやすく、魅力のある観光地だと肌で感じた次第であります。
 次に、訪問先の都合から、遼寧省にある瀋陽を通り過ぎて、一路、黒竜江省ハルビン市に向かったわけでありますが、その際には、いろんな報道とかもありましたので、事故とかもあった関係上、少しどきどきしながら、初めて中国の新幹線に4時間弱、乗車をいたしました。静かで揺れも少なくて、時速も300キロメートル前後と日本の新幹線とほぼ変わらず、思いのほか安心して過ごすことができました。
 ハルビンは、人口約1000万人を超えた黒竜江省の省都で、政治経済の中心であります。まちにはアジア最大の石畳の目抜き通りがあり、中国各都市の通りのお手本となったと言われており、我々もその通りを訪れましたが、夜にはライトアップをされ、観光客を含め、非常に多くの人でにぎわっておりました。このほか、冬季に開催される国際的な氷の祭典は、余りにも有名であります。
 そして、ハルビン市関係幹部の方々との意見交換におきましては、ハルビン市の現況や日本の各都市との交流経過等、そして和歌山の概要や魅力について、双方、熱心に意見を交わしました。
 幹部職員の方々は、高野・熊野世界遺産に魅力を感じるとのことで、「近いうちに必ず和歌山県を訪問いたします」と流暢な日本語で発言を締めくくられ、終始和やかな雰囲気のうちに会を終えることができました。観光立県を標榜する本県として、世界的な観光資源でもある高野・熊野世界遺産の魅力について、少しでも理解を深めていただけたのではないかと感じた次第であります。
 また、翌日には、同省森林工業総局に表敬訪問を兼ねて、同省森林工業総局副局長を初め関係幹部職員と意見交換を行いました。この場では、その大半を森林資源や木材関係について、より踏み込んだ内容の意見や思いを話し合いいたしました。
 人口約3800万人を抱えた黒竜江省における森林産業の現状は、牛乳生産量や石油工業と並び中国一の規模を誇り、これまで国内有数の木材供給地として栄えてきましたが、近年においては、木材生産・加工に必要な原材料確保のための森林伐採が本格的に禁止となり、これからも計画的にその禁止区域が広げられるとのことでありました。そのため生じた約40万人とも言われる森林工業企業の余剰労働者の再就職については、産業構造拡大や野菜など食品生産・加工業への移行対策を図っているものの、抜本的な休職対策に至っていないとのことであります。
 そういった状況の中でも、中国国内全体では、人口増加や所得の向上等による木材需要が着実に伸びており、森林工業総局の年間試算では、木材総生産量の約180万立方メートル中80万を同省で賄っているだけで、残りは隣の省及びロシア、アメリカからの輸入に頼っているというのが実情であります。つまり、黒竜江省の最も大きな課題は、森林関係者の休職対策に加えて、今後、森林の伐採禁止区域の拡大に当たり、加工場は現在あるものの、原材料である原木をどう確保するのかということになります。
 一方、森林資源が豊富な和歌山県においては、近年、林業従事者は減少の一途をたどり、木材についても需要が伸び悩んでいる状況である旨を伝えると、副局長から、「価格と品質が合えば、別荘用として必ず買う用意がある」、そして「和歌山にぜひ視察員を派遣したい」との発言がありました。また、「林業従事者が足りない状況であれば、研修生としてでも派遣をさせたい」との申し出に対し、林業への研修生については現在国で議論されているところで、今は難しいと伝えるにとどまりました。そして、「今後、和歌山県と文化や技術の交流等、双方のよいところを紹介しながら、さまざまな協力を考えたい」という言葉を最後に意見交換会を終了いたしました。木材価格等、クリアしなければならないさまざまな課題はあるものの、本県の高品質な木材が黒竜江省、つまり中国に受け入れられるチャンスはこれから十分にあると感じた次第であります。
 日程の最後に、遼寧省の省都で人口800万人以上を抱えた瀋陽市を訪問し、遼寧省及び旅游局幹部職員の方々と意見交換を行いました。
 その中でも、特に高野・熊野世界遺産や県内温泉地に代表される観光について、また、マグロを初めとする水産物や、ミカンや柿、桃など果樹の供給に関すること、さらには中国の方々が日本へ旅行する際の日取りやコース等、意見を交わしてまいりました。中国の方々を本県に呼び込む上で旅行会社が決めるコースがいかに重要か、改めて実感するとともに、これからの可能性についても見出すことができたように思います。
 このほか、世界遺産や観光施設など、時間の都合上、調査することはかないませんでしたが、友好関係は築けたものと感じております。
 いずれにいたしましても、中国経済はまだまだ好調で、海外への旅行者数も着実に伸びており、このような状況の中で中国の方々に本県の魅力を知ってもらうための活動や各省の状況把握を行えたことは、非常に有意義なことでありました。こういった各都市における意見交換会を契機として、1人でも多くの中国の方々に本県を訪れていただくことと、本県で生産されている農産品や加工食品、また木材等の販路拡大に資することを大いに期待するとともに、実現化を図れればと思います。
 そして、今回、特に我が和歌山県は、多くの景勝地を含む豊かな自然環境、それに食を含めて、地域ごとの特色ある多様な文化に恵まれていると改めて実感をいたしましたし、私たちが世界に誇るべき世界遺産は、今まさに登録10周年の節目を迎えております。多くの中国国民が自国の町並みや観光施設を含めた観光地を大きな誇りに思っているのと同様に、我々県民も、心からふるさとを愛し、より郷土に自信を持つことが必要であると認識した次第であります。
 最後に、中国訪問に当たり多大なる御協力を賜った関係各位に深く感謝の意を表し、その概要の御報告とさせていただきます。
 引き続いて、一般質問に入らせていただきます。
 小項目の2として、和歌山県と中国の今後の交流について質問をいたします。
 ただいま御報告の中で申し上げたとおり、我々は、遼寧省3会場、黒竜江省2会場で行った政府関係機関や政府観光関係者、その他民間企業の方々との意見交換会並びにレセプションにおいて、本県の数ある魅力をアピールしてまいりました。和歌山の魅力を売り込むためにはさまざまな手法がありますが、以前、オーストラリア訪問後の報告でも申し上げたとおり、やはり県知事みずからが宣伝マンになって売り込む姿は、売り込み先に好印象と熱意を感じさせるものがあります。
 今後の中国山東省はもちろん、遼寧省大連市や瀋陽市、黒竜江省ハルビン市とのさまざまな交流や、そういった地域に対する知事のトップセールスを含めた思いや今後の取り組みについて、また、本県の木材や検疫の問題で現在輸出が不可能とされている果樹等の輸出について、知事の御見解をお聞きいたします。
 加えて、中国に対するこれまでの県産品の販路拡大に向けた取り組みと、どのような商品がどれぐらい輸出されているのか、また、これまで行ってきた中国の方々への誘客に向けた取り組みと、日本、特に本県への観光客数はどうなっているのか、商工観光労働部長並びに農林水産部長にお聞きいたします。
○副議長(尾崎太郎君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) トップセールスについては、知事就任以来、みずからが現地に出向くことで、相手国のトップクラスの要人や関係業界、あるいはマスコミや専門誌などにインパクトを持って本県の魅力を直接伝える機会として取り組んでまいりました。
 しかし、世の中の動向というか、よそのことなどを見ておりますと、1回だけトップセールスとかトップだけセールスとか、そういうようになってるところがあるなあというふうに思います。大切なことは、トップセールスを一過性に終わらせないように県全体でアプローチを継続することだと思います。そのために、トップセールスで開拓いたしました関係をうまく活用しながら県職員が走り回っておりますが、それだけではなくて、民間事業者の方々も一緒になって県産品の販路拡大、観光客の誘致などを目的に各国を訪問し、包括的かつ継続的な取り組みを今やってるところでございます。
 このように力を入れてまいりたいと思っておりますが、中国の販路拡大でございます。これについても、もちろん同じように力を入れていきたいと考えております。ただ、和歌山の重要な輸出品である果実については、国際法上不合理な検疫で輸出が邪魔されているというところが、中国を筆頭に、ほかにもあります。特に中国が一番すごいかなあという感じがあるんです。そこで、日本国政府に対して、これは交渉事で決まってきますので、中国との植物検疫条件の早期合意を引き続き要望していくということも必要かと思っております。
 木材については、コンテナによる試験輸出の中で明らかになった原木の確保を初め、価格、輸送方法などの課題はあるが、実現に向けて研究を進めていきたいと思っております。
 今後も、中国を含む海外諸国の情報収集を行うとともに、県の強みを磨き、みずからが先頭になって、和歌山県にとって大きな経済交流が期待できる地域に対し、この辺をよく研究して、戦略的に民間事業者とともに取り組んでまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) まず、工業製品などの県産品につきましては、わかやま産品販路開拓アクションプログラム2014に基づき、販路開拓を全国や海外へと進めております。
 中国での取り組みとしましては、ことし10年目を迎える山東省ビジネスミッションを9月末に5社の参加のもと実施するとともに、昨年MOUを締結した香港では、4月に開催された香港ハウスウェア・フェアに集団出展で6社が、個別出展で1社が参加しました。これらの取り組みなどを通じ、中国市場への販路開拓を行っております。
 輸出・供給の実績ですが、平成25年の財務省貿易統計によりますと、県内の港湾での輸出実績としては、化学製品で約340億円、機械類で約90億円を初め、多くの実績があるほか、現地に進出し、機械製造業や日用品製造業など生産・販売を行う企業も多くございます。
 次に、中国からの誘客については、富裕層の多い北京市、上海市、広東省及び本県と関係の深い山東省、遼寧省をターゲットに、温泉、世界遺産、自然景観及び食をテーマとして旅行会社及びメディアに対してプロモーションを実施するとともに、中国語のパンフレット、ガイドブック及びホームページを作成することで近年増加している個人旅行客への対応を充実させてまいりました。
 具体的には、昨年度の6月と9月には広東省を訪問し、現地旅行会社に対してセールスコールなどのプロモーションを実施してまいりました。また、北京市、上海市及び広東省等の現地旅行会社、雑誌社、テレビ会社等のメディアを招請し、本県の魅力をPRいたしました。
 このように、ターゲットとする地域や訴求する観光素材を明確にしたプロモーションを展開してきた結果、平成25年の本県における中国からの宿泊者数は9714人を記録し、対前年比45.9%増加となってございます。
○副議長(尾崎太郎君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 農林水産物の輸出状況についてお答え申し上げます。
 農林水産省の統計によると、2013年には、日本から中国本土へ508億円の農林水産物が輸出されています。県別の集計ではなく、本県の数値は把握できておりませんが、県内企業からは、中国本土へは日本酒、ジュース、調味料などの輸出実績があるとお聞きしております。
 また、木材については、財務省貿易統計によると、昨年、本県からは丸太187立方メートルが中国本土へ輸出された実績がございます。
○副議長(尾崎太郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 ただいまお答えをいただきましたが、それでは、これからの県産品の販路拡大について、そして中国からの誘客者数を伸ばすためにどのようなお考えを持たれているのか、商工観光労働部長並びに農林水産部長に、再度、御見解をお聞きいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 商工観光労働部長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) まず、工業製品の販路拡大への今後の取り組みですが、県としましては、今後も市場拡大が続く中国において、香港を基点として、そこで開催される展示会への集団出展や個別出展支援、商談会の開催などを通じ、県内企業の中国本土への販路拡大に取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、中国からの誘客数を伸ばすためには、今後、さらに日本政府観光局、近隣府県、県内観光事業者と協力し、メディアの招請や現地旅行会社へのセールスコールを行います。また、団体旅行客に加え、今後、個人旅行客、いわゆるFITの取り込みを期待できる大都市においては、現地の個人旅行取扱旅行会社に加え、メディアに対してもPR活動を行ってまいります。
 さらに、日系企業が多く進出し、親日的な都市である大連市などの都市においては、訪日旅行への関心が高いことから、現地旅行会社への団体旅行のパッケージを中心とした旅行商品の造成の働きかけを行い、中国の各地域の実情に応じたPR活動や招請旅行を展開してまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 植物検疫の問題により、ミカン、柿、桃などの本県特産品の果実類が中国本土に輸出できないことに関しては、知事からお答え申し上げましたように、日中間の植物検疫条件の早期合意に向け、引き続き農林水産省に対して強力に働きかけを行ってまいります。
 果実以外の食品につきましては、ジェトロなどを通して中国市場に関する情報を収集し、県内企業に提供してきたところですが、輸出の増加には至っていないのが実情です。そのため、県では、昨年7月、MOUを締結した香港貿易発展局とのつながりを核として、まずは香港の市場開拓に力を注いでいるところです。香港には、中国本土から年間4000万人もの人が訪れ、多数の流通関係者も活動しています。香港を足がかりとして、そこで開催される見本市での商談活動やPR活動に加え、百貨店でのフェア開催や本県へのバイヤー招聘などを通じて、香港及び中国本土への人的ネットワークの構築などに努めてまいりたいと考えております。
 次に、紀州材の中国本土への輸出についてですが、昨年、和歌山下津港から8月と12月にコンテナによる試験輸出が行われました。そうした中で、原木の大量発注への対応、希望取引価格との開き、中国本土への輸出に必要となる薫蒸処理能力の不足などの課題が明らかになりました。
 今後、これらの課題を研究し、継続的な輸出につなげていけるよう、取り組みを進めてまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁いただき、ありがとうございました。
 続いて、大項目の2点目に移ります。
 県下における道徳教育の状況について。
 まず、小項目1として、教育現場における「私たちの道徳」の活用状況についてから質問をいたします。
 本年度から、全国の小中学生向けの道徳教育用教材として「私たちの道徳」という本が配布をされておりますが、去る7月11日に行われた下村文科大臣の記者会見で、「この『私たちの道徳』は、学校だけでなく、家庭や地域においても広く活用いただくことを狙いとしており、これまで2度にわたり教育委員会等に対し通知を発出し、その効果的な活用を呼びかけているところでありますが、これまでのところ、学校によっては、本教材を学校に据え置いて、家庭に持ち帰らないようにしているところがあるなど、十分な活用がまだなされていないという状況がある」との発言がありました。
 この記者会見に先立ち、7月8日付でも、「特に夏休みなどの長期休暇には、本教材を児童生徒一人一人が持ち帰り、家庭や地域でも活用できるように計らうこと」という文科省からの事務連絡が出されておりました。
 また、先ほどの記者会見後である7月下旬には、小中学校における道徳教材の活用状況について実態調査が行われたようであります。
 その後、私のほうでも少しその活用状況について確認をいたしましたところ、「私たちの道徳」を知らないという保護者の方が非常に多くて、このような状況を勘案すると、教育現場においても本当に十分な活用がされているのかと、正直、疑問に感じた次第であります。
 教育委員会で把握されている教育現場における「私たちの道徳」の活用状況を、実態調査の結果も含めてお聞きしたいと思います。
 続いて、小項目2の道徳教育の充実についてでありますが、中学生用の「私たちの道徳」には、204ページに濱口梧陵初代県議会議長のコラムが、また220ページから225ページにわたってエルトゥールル号の物語が、大変感動的に紹介をされております。本県といたしましても、全国に配布をされている教科書に我々の先人たちの話が掲載されていることは、県民全体の誇りであると同時に、後世にも延々と語り継ぎ、県民の範としていかなければと思います。
 このエルトゥールル号の話を学校での授業やホームルームなどで聞いたことがありますかと、先ほどと同じように、今度は生徒たちに質問いたしましたところ、ほぼ全ての生徒から「聞いたことがない」という回答でありました。実際は聞いていても忘れてしまったということはあるかもしれませんが、このことは、学校現場における偉人・先人の教育がいかに薄いかということをあらわしているように思います。例えば、先生が学校で預かっておくのではなくて、時折、国語の宿題も兼ねて「親御さんと一緒にエルトゥールル号の物語を読みましょう」とするだけでも、随分状況は変わるのではないでしょうか。
 また、本県においても、ふるさとの偉人・先人を題材とした独自の道徳教材集を作成し配布しているとお聞きしておりますが、今後、このような教材をどう活用し、道徳教育の充実を図っていくのか、1点目とあわせて教育長の御見解をお聞きいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 教育現場における「私たちの道徳」の活用状況等についてでございますが、文部科学省が作成した「私たちの道徳」は、県内全ての小中学校の児童生徒に配布されており、8月に実施しました活用状況等調査によりますと、小学校においては99.2%、中学校においては98.4%の学校が、道徳の時間を初め、特別活動、総合的な学習の時間、各教科等、さまざまな教育活動で使用していると回答しています。ただし、家庭に持ち帰るよう全ての学級に指導している学校というのは、小学校で78.3%、中学校では68.3%という状況です。
 調査の段階では今年度中の予定も含んでおりますので、現時点ではまだ使用していない学校もあります。議員から御指摘があった、実態として多くの保護者の方々が教材について御存じなかったという事実は、大変重く受けとめております。使用予定のない学校に対しましては、道徳教育の重要性を踏まえて積極的に活用するよう指導し、100%の実施になるよう取り組んでまいります。
 また、「私たちの道徳」は、学校の教育活動はもちろん、家庭や地域等でも活用されることを目的として作成されたものであり、今年度は5月と7月の2回にわたり、家庭に持ち帰って活用するよう、既に通知を出して指導しているところでございます。しかしながら、家庭に持ち帰るよう指導できていない学校があることから、今後、指導を一層強化してまいります。
 次に、道徳教育の充実についてでございますが、ふるさとが生んだ偉大な先人から学ぶことは、ふるさと和歌山に対する愛着を深め、人間としてよりよく生きようとする心を育むことだと考えております。
 県教育委員会では、和歌山にゆかりのあるすばらしい先人の生き方のみならず、近年、社会問題となっているいじめやインターネット等を題材に、相手を大切にし、温かく思いやりの心を持って人に接する態度等を子供たちにしっかりと身につけさせることを目的として、本県独自の道徳教材集、小学生用「心のとびら」、中学生用「希望へのかけはし」を作成しました。
 こうした「私たちの道徳」ともあわせて、学校だけでなく、家庭においても創意工夫を凝らして積極的に活用することで、和歌山県の子供たちに規範意識や豊かな心、ふるさと和歌山に対する愛着や自信と誇りを育み、心優しく、たくましく生き抜く力を身につけさせるよう、市町村教育委員会と協力して道徳教育の一層の充実を図ってまいります。
○副議長(尾崎太郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁いただきました。
 実際、地域や学校で道徳教育についての状況は異なるように私も把握をしておりますが、先ほど答弁にもありましたように、本県が生んだ偉大な先人のことぐらいは、ぜひ生徒たちに学ばしてやっていただきたいと思います。また、その道徳教育を学習意欲の向上にもぜひ結びつけていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。
 続いて、大項目の3点目に移ります。
 観光施設としての田辺扇ヶ浜海水浴場とその周辺の治安対策について質問をいたします。
 田辺扇ヶ浜海水浴場とは、市の玄関口である紀伊田辺駅に近く、年間を通じ、市民の憩いの場であるカッパーク、いわゆる噴水や遊具、そして全国的にもまれであるXスポーツ施設等が隣接された観光拠点であり、田辺市唯一の海水浴場で、にぎわいの創出による中心市街地活性化への一助としても期待をされているところであります。
 昔の美しい海岸の姿を取り戻すべく、平成7年から始まった田辺扇ヶ浜海水浴場とその周辺施設整備は、扇ヶ浜総合整備事業として進められ、平成17年に開設をし、現在は第2期施設整備が実施されています。当初から、第2期施設整備の実施条件であった10万人の誘客を目指して、田辺観光協会を初め各種団体による海の家の運営や、夏休み期間中の毎週末にさまざまなイベントがとり行われてまいりました。
 その結果もあり、平成16年には約1万人だった利用者数も、オープン初年の17年では約4万3000人と4倍以上となり、それ以降も年々増加し続け、イルカふれあい事業であるビーチサイドドルフィンがスタートした平成21年には約11万4000人が訪れ、念願の10万人を突破いたしました。
 ここ数年においては、天候不良などの影響を受け、その利用者数は非常に厳しかったものの、これまでの観光協会を初め各民間団体の利用者の増加に向けた取り組みは、10年目を迎えた現在、しっかりと定着を見せるとともに、海水浴場としても一定の認知を得たのではないかと考えているところであります。
 そういった中、ことし、新たな誘客に向けた事業として、海開き前に遠泳競技大会が扇ヶ浜において開かれ、全国各地から多数の競技者や見学客が訪れました。大会自体は成功いたしましたが、その一方で、競技の準備中に車上狙いが発生をし、また競技を行った日にも置き引き犯罪が起こりました。海水浴シーズン直前の民間団体が扇ヶ浜海水浴場のPRを兼ねて取り組まれた大会だけに、残念であります。その後の海水浴シーズン中にも、恐喝や傷害、海の家が盗難に遭うなど、犯罪が例年以上に増加をいたしました。いみじくも、海水浴場に隣接した大浜交番が自動車で約5分離れた国道にある明洋交差点脇に移設した後のことでもあります。
 これら扇ヶ浜海水浴場で起こった犯罪は、運悪くしてネットで流され、多くの方が知るところとなりましたし、また、実際に私も、「扇ヶ浜は治安が悪く、行きたくない」という言葉を幾度も耳にいたしました。本当にマイナスイメージが観光施設に及ぼす影響というのは非常に大きいなと実感した次第であります。
 このような状況を受けて、田辺市、田辺警察署や海上保安部、青少年補導センター等の関係機関により、田辺扇ヶ浜海水浴場防犯対策にかかる意見交換会が初めて開催をされ、その結果として、田辺市の管理職を中心に週末の見回りや、田辺警察署においては大浜交番に一定時間人員を配置するなど、各関係機関の御努力により防犯対策が実施をされてまいりました。また、今後、より踏み込んだ取り組みとして、市では防犯カメラの設置等も検討されているとのことであります。
 このように、各関係機関が互いに協力し、防犯対策を講じるのは、この扇ヶ浜が地域住民にとって昔ながらの憩いの場であると同時に、さきにも申し上げた中心市街地の観光拠点として期待を寄せているからにほかなりません。
 先ほど申し上げた大浜交番が交番・駐在所再編成計画によって明洋交差点脇に移築したことは、さまざまな理由から深く理解はするものの、やはり観光施設でもある扇ヶ浜海水浴場とその周辺の犯罪抑止力が薄らいでしまったことは事実でもあります。
 そこで、今後の田辺扇ヶ浜海水浴場とその周辺の治安対策について、せめて夏場の観光シーズンや多くの人でにぎわう期間を中心に、隣接する旧大浜交番への警官の配置や配置時間等の見直しを含めた効果的な対策を行っていただきたいと思いますが、警察本部長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(尾崎太郎君) 警察本部長下田隆文君。
  〔下田隆文君、登壇〕
○警察本部長(下田隆文君) 議員御質問の夏季における田辺市扇ヶ浜海水浴場周辺に対する治安対策につきましては、本年、田辺警察署において、パトカー勤務員による大浜警察官連絡所への積極的な立ち寄りを行うとともに、同連絡所を拠点とした警戒・警ら活動を強化したほか、大浜警察官連絡所へ交番相談員を配置した安全・安心活動の推進、自主防犯団体と合同による夜間パトロールの実施、田辺市の協力を得て、扇ヶ浜に付随する駐車場対策として、深夜帯の使用制限による若者の蝟集予防などの活動を実施しているとの報告を受けております。
 今後の扇ヶ浜海水浴場周辺の治安対策につきましては、夏季の観光客等でにぎわう期間を中心として、田辺警察署によるパトロールの強化、大浜警察官連絡所への警察官の立ち寄り及び交番相談員の配置を実施するとともに、田辺市等関係機関・団体の御協力をいただきながら効果的な諸対策を推進し、住民や観光客の安全・安心の確保に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎太郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきまして、多くは申し上げませんが、私は、この扇ヶ浜海水浴場とその周辺施設が観光施設として立派に育つか育たないかで田辺市の中心市街地の状況は大きく変わるものと深く考えております。住民はもとより、観光客が安全で安心をして余暇を過ごすことができるようにしっかり取り組んでいただきたいと思いますし、要望としたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 以上で、私の一般質問を終了いたします。御清聴ありがとうございます。(拍手)
○副議長(尾崎太郎君) 以上で、鈴木太雄君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時42分散会

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