平成26年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成26年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


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 質疑及び一般質問を続行いたします。
 41番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 1つ目に、人口社会減についてであります。
 5月12日月曜日付「朝日新聞」の「豊かな静岡に異変。人口社会減ワースト2。経済指標悪化」という記事に目がとまりました。静岡県といえば、ミカンやお茶など農産物生産も多い県ですが、首都圏にも近く、いろんな工場が集まり、工業生産の出荷額が都道府県ランキングで第3位であります。
 ところが、2013年の人口社会減、すなわち地域の外へ住民が引っ越していくことのほうがよその地域から入ってくるよりも多い転出超過のことですが、これが北海道8154人に次いで第2位の6892人になっています。年代別では、20代、10代を中心に50代までの働き盛りの世代が減少しています。もともと進学で都会へ出て行く若者は多く、ここ10年でも若い世代を中心に1000人から3000人程度の社会減はあったのですが、ここ数年、社会減はペースを上げて、ついに全国ワースト2位になりました。
 静岡県は、2012年の製造品(工業製品)出荷額15兆4852億円で、愛知県、神奈川県に次いで全国3位であります。自動車や二輪車の輸送機械が出荷額の約3割、電気機械が約1割、製紙が5%といったところが主な産業であります。しかしながら、2007年のピークを境に回復できていません。リーマンショック、そして、1ドル80円を超えた超円高に伴う製造現場の海外移転という製造業に対する逆風の影響をもろに受けたのであります。
 しかし、衰退の兆候はリーマンの前からあったといいます。それを放置した結果、数年で急激に経済が悪化したと静岡銀行系シンクタンクの主席研究員は指摘しています。
 2007年のピーク前から、電気関連も当時の液晶や携帯電話向けの工場や部品工場が少なく、時代の変化に乗りおくれたといいます。さらに、2011年の東日本大震災が起こったことで、臨海の津波危険地域を企業が敬遠するようになりました。工場が撤退すると雇用も必然的に減少、静岡県の有効求人倍率は、2009年から全国平均を下回るようになったそうです。
 静岡県と和歌山県では、交通インフラや工場立地等においては比べるべくもないありさまではありますが、同じく大都会をお隣に有する観光地であり、農林水産業においても類似点が多々ある県であります。リーマンショック、円高のような国際的な経済状況や時代のニーズの変化の影響は、本県の企業においても例外ではありません。いつ工場の閉鎖あるいは県外、海外移転もあるやもしれません。実際、雑賀崎金属工業団地に進出した東京製綱も5月末に撤退しました。
 本県も、ようやく来年の紀の国わかやま国体を呼び水に、高速道路網や市内の都市計画道路も整備されてまいりました。しかし、海岸沿いは、静岡県同様、津波の危険性が小さくありません。為替の高低にも輸出企業は大いに左右されます。
 和歌山県内の高校生の県外進学率は全国1位、若者の流出は目立っています。静岡県の県庁職員の中にも、「人口が減っているという認識がなかった。正直びっくりしている」と、そういう声が多く聞かれたといいます。本県も、危機感を持って、人口社会減を最小限に抑え、プラスに持っていく施策が必要であります。和歌山県の特性を生かした本県ならではの産業の振興と創出等で、働き盛りの人間が本県で働ける雇用環境を充実させていかなければなりませんし、そして、企業を引きとどめるための税の優遇措置も必要でしょう。
 そこで質問ですが、1点目、本県の直近の人口動態について、企画部長にお伺いいたします。
○議長(坂本 登君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 直近の県の人口でございますが、和歌山県人口調査の結果による本年4月1日現在の県の人口は97万4368人であり、この1年間では8142人の減少で、そのうち自然減が5719人、社会減が2423人となっております。
 近年の傾向といたしましては、社会減は落ちついており、2000人台で推移しておりますが、自然減は拡大傾向が続いており、年間の減少数は毎年300人程度増加している状況でございます。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、和歌山県で子供を安心して産んでいける状況を生み出して人口自然増になるためには、まず、人口社会減をプラスに転じていくことから始めないといけません。本県の人口の社会減を食いとめる施策について、知事の所見を伺います。
○議長(坂本 登君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 人口の社会減を食いとめるためには、産業の振興や雇用環境等の充実を図ることが必要でございます。こうしたことから、創業支援や産学による共同研究の支援など、産業を強化するとともに、産業別担当者制度により県内企業の課題を把握し、国、県の支援施策の情報を提供するなど、事業活動環境の向上を図っているところでございます。また、立地奨励金制度の活用や企業用地の造成により積極的に企業誘致を図るなど、新たな雇用の場の創出に取り組んでまいりました。
 さらに、環境がよくなるということが必要でございますので、その観点からも、高速道路や県内道路網の整備など、成長を支える社会インフラの整備にも鋭意取り組んでおります。
 加えて、都市部からの人口の流入を図るため、地域の食材等を活用した起業とか、あるいは1次産業への就業支援などによる移住交流政策を推進しているところでございます。
 それから、人が雇えないがゆえに生産が本当だったら伸びてもいいのに伸びないという面もあることは事実でございますので、進学で県外に出る学生が大変多い本県といたしましては、そういう学生と和歌山企業のマッチングを図る政策、これを一生懸命頑張っているところでございます。
 こうしたさまざまな政策を講じた結果、120社の企業の誘致が実現いたしまして、移住世帯数も都合430世帯となるなどの成果もあらわれております。また、年間の社会減が、平成17年当時約5000人でございましたが、近年では2000人台に改善することができました。それでも、2000人もあるということでございます。
 もっと頑張らないといけない、人口減少対策はまだ不十分だと考えておりまして、働く場所をさらに確保するため、県内産業の活力強化や企業誘致に一層努力するなど、今後とも危機感を持って社会減、自然減の両面から人口減少を食いとめる対策に注力していく所存でございます。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 知事を先頭に県当局のさまざまなお取り組みに敬意を表します。
 印南町でも、2008年から取り組んでいる空き家バンク制度が好調で、人口減少に歯どめをかける有効な対策として引き続き力を入れていくと聞きます。ただ、働き手の県外流出というのは構造的な問題です。まして、企業の生産拠点が一旦国外なんかへ出ていってしまうと、なかなか帰ってきてはくれません。働き盛りの夫婦、家族の流出を食いとめる、すなわち人口の社会減、自然減をプラスに転じるためにも、今後も、一方では6次産業化の取り組み、また、本県の工業技術センター等の公設試等の充実と利用促進、それに大学等の力もかりながら、産業の創出と拡大のために県当局のお知恵と積極的なアクションを要望させていただきます。
 2点目、和歌山県の医療と介護についてであります。
 厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住みなれた地域で自分らしい生活を人生の最後まで続けることができるよう、医療、介護、予防、住まい、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現しようとしています。
 地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域、具体的には中学校区を単位として想定しています。例えば、介護ニーズと医療ニーズをあわせ持つ高齢者を地域で確実に支えていくためには、訪問医療、訪問口腔ケア、訪問介護、訪問リハビリテーション、訪問薬剤師指導などの在宅医療が不可欠であります。
 在宅医療と介護の連携は、具体的には退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、みとり等、さまざまな局面で求められます。特に、今後増加するであろう退院による在宅復帰の際に円滑に適切な在宅サービスにつなげることや、再入院をできる限り防ぎ、在宅生活を継続するために、在宅医療と介護の連携強化が求められています。ですから、今後、在宅医療については、在宅医療連携拠点が地域で医療、福祉の資源を把握、活用しながら、24時間365日対応の在宅医療提供体制を構築していくことが求められます。
 言うは簡単ですが、今後、地域包括ケアシステムの中で、在宅医療連携拠点病院と地域包括支援センターの業務は大変量が多くなりまして、その使命はまさに大きなものでしょう。双方の連携は、かなり密接なものにならざるを得ません。また、取りまとめる市町村の業務量も莫大なものになることが予想されます。
 ところで、日本の医療は質が高く、日本のがんの生存率はOECD34カ国中で最も高いです。それでいて、がんの検診率は低く、国の検診プログラムもありません。例えば、乳がんでは、マンモグラフィー検診率はOECDでは60%を超えているのに対して日本はわずか20.4%、しかし、がんの診断後5年生存率は、世界でアメリカに次いで第2位です。脳卒中の死亡率は、脳梗塞入院30日内死亡率がOECD平均は5.2%、日本ではわずか1.8%、脳出血入院30日内死亡率がOECDは19%に対し、日本は9.7%と低くなっています。ただ、心筋梗塞については、入院30日内死亡率はOECD平均5.4%に対して日本は9.7%と高くなっています。
 また、日本は、国民皆保険で医療受診率は世界一、それに対人口1000人当たりのベッド数も世界一、特に精神科病棟は多く、認知症患者の受入先にもなっています。それに、CT、MRI保有台数も世界一であります。乳幼児死亡率も世界で一番低くなっています。日本の看護師数は世界11位で、決して看護師不足が言われるほど少なくありません。地域偏在が大きいということでしょう。一方、日本の医師数は、アメリカに次いで27位ということで、決して多いわけではありません。
 さて、和歌山県は、がん死亡率が平成23年度で2位、要介護認定率も全国2位、ちなみに1位は長崎県です。男女とも高血圧の人が多く、男性は女性に比べて肥満が多く、高脂血症や糖尿病が多くなっています。原因は、塩分は全国比で摂取量が決して高くありませんが、食べ過ぎ、そして、地下鉄等鉄道交通機関が発達していませんから、車を利用せざるを得なくて、歩行距離の短さが大きな原因だと前和歌山県立医科大学学長・板倉徹先生はおっしゃっていました。65歳以上の10%以上の高齢者が認知症、それも脳卒中から認知症になって要介護になっている人が少なくありません。予防こそが医療費削減の決め手と言っても過言ではありません。
 そこで質問ですが、1点目、和歌山県において在宅医療と在宅介護の充実のために、今後の地域包括ケアシステムの構築に向けて、在宅医療連携拠点や地域包括支援センターの整備状況はいかがでしょうか。福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 地域において医療、介護を総合的にサポートする在宅医療連携拠点は、保健医療圏ごとに設置し、現在県内に15拠点あります。同拠点では、在宅医療を担う医師、歯科医師、看護師、薬剤師など多職種間連携体制の構築、24時間365日対応の在宅医療提供体制の構築、住民への普及啓発並びに地域の医療、福祉資源の把握及び活用などの取り組みを行っています。
 また、高齢者福祉の総合的な相談窓口である地域包括支援センターは、県内全ての市町村に設置され、現在39カ所ございます。同センターでは、社会福祉士、主任介護支援専門員、保健師などの専門職を配置し、介護予防プランの作成を初め、総合相談支援業務や虐待防止などの権利擁護業務、さらには包括的・継続的なマネジメントなど、地域包括ケアを支える中核機関として重要な役割を担っています。
 県としましても、同センターの機能強化を図る必要があることから、医療面での相談支援対策として医師等の専門職の派遣や、権利擁護対策として弁護士等による相談窓口の設置、地域ケア会議の運営の円滑化を推進する広域支援員の派遣などを実施しており、今後とも、より一層支援の強化に努めてまいります。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、昨年秋に「歩く人。」の共同著者、大阪工業大学高校、明治大学、そして神戸製鋼、各ラグビー部で大活躍した大西一平氏が来和しましたが、東日本大震災直後からボランティアに現地へ入るうちに、仮設住宅に住む人たちが、震災直後の避難所時代と違って外へ出るのがおっくうになって、閉じこもりぎみの人が多くなって、健康がすぐれなくなっている方がふえている状況を憂慮して、歩く必要性を訴えておられました。
 私も、首都圏で学生時代、そしてサラリーマンをしていたとき、JRや私鉄、地下鉄を何度も乗りかえて早足で歩くことになれておりましたが、歩くことがいかに大事であったかを今さらに痛感しております。
 介護予防のメニューも、60歳を過ぎて体調がおかしくなってからの実践では遅いと思うので、40から50代から気をつけたいものですね。本県の介護予防プログラムの取り組みについて、福祉保健部長、教えてください。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 高齢者の方が自分の力で活動的な生涯を送れるよう介護予防に取り組むことは、非常に重要であると認識しております。このため、平成16年度より、和歌山大学や県立医科大学、県歯科医師会などと連携し、シニアエクササイズや口腔機能向上、栄養改善、認知症予防、ロコモ予防の5つの県独自の介護予防プログラムを開発し、市町村が普及に取り組んでいます。
 中でも、わかやまシニアエクササイズは、平成25年度までに運動教室の終了者が約1万8000人、教室終了後も仲間とともに自主グループをつくり運動している方は216グループ、約5300人に達するなど、県全域に普及しつつあります。
 今年度からは、わかやまシニア元気アップ事業により、こういった各種教室の自主グループ化を一層促進し、介護予防の充実に努めるとともに、紀の国わかやま1万人健康リレーウオークの実施や健康推進員の配置などにより、全世代を対象とした県民総参加の健康づくりに取り組んでまいります。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、日本の認知症高齢者は、2012年時点で65歳以上の15%に当たる推計462万人、認知症予備軍と言われる軽度認知機能障害(MCI)も約400万人いると言われています。
 2012年の厚生労働省の介護保険サービスを利用する認知症の高齢者のデータですが、まず在宅で49%、次に、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設のような中間施設、そして介護型療養病床と続きます。認知症の方の居場所、社会とのかかわり方、それに、認知症の疑いで保護される身元不明高齢者の増加も大きな社会問題となっています。それだけに、認知症予防対策は欠かせません。
 それに、6月18日の「産経新聞」によると、フランスの国立疫学・公衆衛生研究センターとロンドン大学との共同研究で、男性5198例と女性2192例で追跡調査の上、認知機能低下は既に40代後半で始まっていると明らかにされています。
 和歌山県も、認知症患者の増加をできる限り抑制するため、本県が特徴的に行っている認知症予防プログラムについて、福祉保健部長にお伺いいたします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 認知症予防プログラムは、県の介護予防の取り組みの1つとして県立医科大学の協力のもと開発したプログラムであり、平成20年度以降、市町村を通じてその普及に取り組んでいます。
 標準的には2週間に1回、3カ月継続する教室に参加いただきますが、メニューは教室でのグループ活動と個人活動、自宅での活動で構成され、参加者が楽しみながら取り組むことで認知機能を向上させる効果があります。このプログラムの特徴は、医師の講義や認知機能検査結果に基づく個別面談などを通じて、認知症の正しい理解と早期発見、対応につなげていく点にあります。
 高齢化に伴い認知症の方が急増する中で、今後とも引き続き、市町村を通じてプログラムの普及に積極的に取り組んでまいります。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 4点目ですが、今後和歌山県の進むべき医療・介護対策について、知事にお伺いいたします。
○議長(坂本 登君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 現在の医療を取り巻く環境は、急速な少子高齢化や生活習慣病の急増、医療技術の進歩や医療ニーズの多様化により日々刻々と変化しております。高齢者にとって──高齢者だけではありませんけれども──一番幸せなことは、医療・介護サービスをちゃんと受けることなく元気に暮らせるということであります。そのため、健康づくりについては、若いうちからの対応が重要であるため、健康推進員による県民総参加の健康づくり運動を今年度から展開していく予定でございます。
 また、予防、これも必要でございますが、特にこの予防については、がんについての成績があんまりよくありませんが、検診も一生懸命やって、がん検診の受診の促進を図っていきたいと思っております。
 一昨日、医療・介護体制を一体で改革する、いわゆる地域医療介護総合確保推進法が成立いたしました。これまでの全国一律の改革から、地域の実情に応じた改革が推し進められようとしております。ということは、逆に言うと、和歌山県の責任重大ということでございます。
 今後、国の動向は当然見きわめながらも、病床の機能分化・連携、在宅医療・介護サービスの充実、医療従事者等の確保・養成などに取り組むとともに、医療と介護の連携強化を図って、県民の幸せを図っていきたいと思っております。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 これまでは、医療と介護の間で患者に関する情報の共有ができなくて、共通の問題点を認識する場がありませんでした。今後、在宅医療拠点病院・診療所や拠点薬局と介護事業者、そして在宅高齢者が1つの輪の中で地域での完結を目指すと、そうした地域包括ケアシステムの構築に期待したいと思います。
 3点目に行きます。介護保険制度についてであります。
 介護保険制度が平成12年に創設されて3年ごとの改定、来年度はまた新しい制度改正が行われます。平成27年度の改革は、医療・介護一体改革に向けた第一歩として、医療から介護へ、施設から在宅への方向を踏まえた改革と言えます。また、平成37年、すなわち団塊の世代が後期高齢者となる2025年を目標年度とした地域包括ケアシステムの完成に向けた第一歩という位置づけでもあります。
 自分でできることは自分で行うことを原則に、公的サービスに頼る前に地域の互助の推進、その上で共助、それでも対応できない場合には公助という考え方により、要支援サービスの本体給付からの除外や利用者負担の変更等が行われる見込みになっています。
 介護業界は、離職率が10%台後半と高く、人手不足が続きます。団塊の世代が75歳以上になる2025年度までに、職員数を今の約150万人から約250万人に100万人ふやす必要があるとの試算もあります。実際問題として、在宅の24時間体制は大変であります。そこで、地域で高齢者を守っていこうということになると、どうしても介護職員の質、量ともに、さらなる充実が必要になってきます。
 また、ことし4月の消費増税に合わせ、事業者の仕入れコストがふえる分を利用者から回収できるよう、政府は介護報酬を0.63%引き上げています。さらに、来年10月に消費税が10%に引き上げられた場合、15年度改定で対応することを分科会で了承しています。そんな中、昨年12月13日、兵庫県議会にて介護職員の処遇改善を求める意見書が可決されました。
 そこで質問ですが、1つ目、介護保険制度利用による特定福祉用具の購入や住宅改修に伴う費用を支払う際、自治体によって、償還払いとしている自治体もあれば受領委任払いを認めている自治体もあります。介護保険においては、利用者が一旦費用の全額を支払い、その後に保険給付分9割の支払いを受ける償還払いを原則としています。
 一方、利用者が特定福祉用具の購入や住宅改修をした際にかかった費用、保険適用分の1割を事業者に支払い、残りの9割を利用者の委任に基づき市町村から直接受領委任払い登録事業者に支払う方法が受領委任払いであります。各府県によってばらつきがあるようですが、福祉用具の購入や住宅改修を今すぐに必要とする方々の一時的な経済的な負担の軽減のために、県下全域において受領委任払い可能に統一してもいいのではないかと考えますが、本県においてはいかがでしょうか。福祉保健部長、お願いいたします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 福祉用具購入費及び住宅改修費に係る支給方法については、利用者がその経費を全額、事業者に支払った上で、保険者に対し介護保険の支給申請を行う償還払いが基本となっているところです。
 そのため、県としては一律受領委任払いの制度とすることはできませんが、県内では16市町が利用者の負担軽減のために行政サービスの一環として受領委任払い可能としているところであり、残りの町村にも同制度の実施を働きかけてまいります。
 なお、現在、国においては、住宅改修について住宅改修事業者の事前登録制度をつくり、利用者は自己負担分のみ事業者に支払えばよい制度が検討されているところです。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目ですが、利用者及び家族から家事援助等ケアプランに記載されていない項目のサービスを強いられることがあります。事業者としては、その都度、ケアプラン以外のことはできないことの説明を行い、理解を求めています。
 しかし、やむにやまれずケアプラン以外のサービスを実施してしまう事業所があるのも事実です。もちろん事業所への指導も必要であるとともに、利用者及び家族に対して、介護保険でできること、できないことを行政としても周知、指導を図ることが必要だと思います。県としての対応はいかがなものでしょうか。福祉保健部長、お答えください。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 県としましては、利用者等に正しく理解していただくために、介護保険のサービスの対象となるもの、ならないものの例示を載せた訪問介護サービスに係る利用パンフレットを作成し、各居宅介護支援事業所等で活用を勧めるとともに、県のホームページにも掲載しているところです。
 今後とも、機会を捉えて介護保険制度の周知に努めてまいります。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 ずっと連発しますんで、そこへずっといていただいても結構でございます。
 3点目へ行きます。介護職員としての悩みに、利用者本人あるいは家族との間でのさまざまなトラブルでハラスメントにまで至る場合もあります。利用する側のマナーについても、ケアマネジャーや事業者任せにするのではなく、あらかじめ市町村の責任において取り組む必要がありますが、サービスを利用する側のマナーやモラル向上に向けて、県として市町村にどのような指導を行っておられますか。福祉保健部長、お願いします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 介護保険法では、県は、保険者である市町村に対して、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう必要な助言等を行うこととされています。
 県としましては、介護職員と利用者本人あるいは家族との間でのトラブルをできる限り未然に防ぐためにも、市町村に対し、要介護認定の申請時などの機会を捉え、利用者側のマナーやモラル向上に向けた注意喚起を行うよう、従前より研修会等の機会を通じて働きかけているところです。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 利用者のマナーやモラル向上についても、市町村がその都度、事業者サイドに対して、介護サービスを利用するに当たって喚起、啓発する文書ですね、これを配布するように呼びかけているかどうか、一度確認していただけたらと思います。
 4点目へ行きます。介護認定審査は、通常、市町村が主催して行われています。市町村は、認定調査の結果と主治医の医師意見書の内容をコンピューターに入力し、全国一律の基準により介護に係る時間を1次判定基準として算出します。その後、市町村は、1次判定結果が記載されたシートを認定調査票の特記事項と主治医意見書とを合わせたものを介護認定審査会へ提示し、判定を求めます。
 要介護認定の更新申請及び区分変更申請の認定調査に限っては、指定居宅介護支援事業者やケアマネジャーがお宅を訪問してチェックした後、市の認定審査が行われると聞いております。現場からのお話の中で、同じような状況とケアマネが判断していても、1人は要介護度2、もう1人は要支援という場合もあるといいます。
 本人がひとり暮らしだから、自立した生活を送れているから要支援だと判断されたり、家族と住んでいる人は、家族に介護してもらってるぐらいだから、本人の状況が重くて本人1人では何もできないとして要介護度が高くなっている場合もあるといいます。
 判定結果の要介護度レベルによって、介護保険制度の利用限度額は制限されてきます。また、要介護認定更新時に判定結果が軽くなっているケースも少なくなく、今まで必要とされてきた介護サービスが提供されなくなっていることもあります。
 介護認定審査会の委員は、保健、医療、福祉の学識経験者を市町村長が任命し、任期は2年間で再任も可能です。実際に委員に任命されているのは、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、保健師、介護支援専門員、ケアマネジャー、精神保健福祉士、社会福祉士、介護福祉士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの資格を持つ方々がほとんどで、医師会や歯科医師会など、これらの資格の職能団体に推薦を求め、それに基づき任命していることが多いようです。
 介護保険制度発足時には、福祉系資格の職能団体が現在より未発達で、有資格者の人数も少なかったので、医療系の委員が中心となったいきさつがあります。現在でも、福祉系の委員数が限られているところは多くて、合議体数よりも少ないこともあります。
 そこで、ケアマネジャーやヘルパー等、現場をよく知る方々の意見が十分反映されていないのではないかという話も聞こえてまいります。介護認定審査会の公正、公平性が問われるわけですが、県におかれましては、例えば審査会のメンバーの中に居宅支援する側からも必ず1人入ったりとか、介護認定審査会のメンバー編成についてどう考え、指導されているのでしょうか。福祉保健部長、お答えください。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 介護認定審査会の合議体の委員構成については、国の介護認定審査会運営要綱の中で、委員は、保健、医療または福祉に関する学識経験者であり、各分野の均衡に配慮した構成とするよう定められており、市町村等がそれぞれ配慮すべきことであると考えます。
 県内のほとんどの合議体においては、福祉分野の委員が配置され、均衡に配慮されているものと考えますが、県としましては、市町村の認定審査会担当者研修会等を通じ、引き続き要綱の遵守を求めてまいります。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 実際、介護福祉側の委員が少ないのは事実であります。全く福祉側の委員がいない町もあります。本人の現状を最も把握している側の意見も十分認定審査に反映されますよう、引き続きの御指導をお願いいたします。
 5点目、行きます。また、市町村によって介護認定審査のばらつきがあってはいけないと思いますが、各市町村間での介護認定審査の公正、公平性について、県はどのように把握し指導されているのでしょうか。福祉保健部長、お願いします。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 介護認定の審査に当たっては、公正、公平性の観点から全国一律の基準が用いられているところです。県では、介護認定にかかわる認定調査員、審査会委員、事務局に対して、公正、公平かつ適切な要介護認定を行うための知識、技能の習得及び向上を目的に毎年研修会を実施しているところです。
 また、各市町村の要介護認定状況を分析することにより、市町村間で認定にばらつきが出ないよう指導し、要介護認定の適正化に取り組んでいるところです。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 認定審査会委員の資格バランスには、各市町村で大きな開きがあるのが現実です。地域の特殊性もあろうとは思いますが、より委員のバランスがとれた委員会審査でありますよう、引き続きの御指導をお願いいたします。
 6点目へ行きます。介護職員の給料が安いということで、事業所の中には人材の確保に苦労しているところが少なくありません。それに、例えば隣接する大阪府と和歌山県では、介護報酬の地域加算の差も大きくて、和歌山県に住んでいるが、大阪府の事業所へ介護職員が働きに出るといった現実もあります。他府県への介護職員の流出を防ぐため、本県で介護職場の処遇改善や人材の確保について、県はどのような取り組みを行っていますか。福祉保健部長、お答えください。
○議長(坂本 登君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 介護職員の処遇改善については、平成24年度から介護報酬に処遇改善加算が創設され、賃金の引き上げにつながっていることから、全ての事業所等において活用されるよう積極的に働きかけているところです。
 介護人材の確保としましては、介護分野への新規就業を支援する「働きながら資格をとる」介護雇用プログラムや就職面談会、介護体験事業などを実施しているところです。また、介護技術を初め認知症や医療的ケアなど、専門性を高めるための各種研修を実施し、良質なサービスを提供できる介護職員の養成に取り組んでおり、これにより介護職員のやりがいが高まるとともに、給料アップや定着につながると考えています。
 今後とも、関係団体等と連携しながら、介護現場への人材の参入を促進していくとともに、介護職員のキャリアアップなどの支援に取り組んでまいります。
○議長(坂本 登君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 お答えいただきました。介護報酬は制度の問題ですので、どうしても国の施策の充実が急がれます。例えば、要介護度が改善したことによる介護従事者への評価がありません。改善したら、むしろ事業収入が下がることにもなります。介護職員のモチベーションを向上させるためにも、改善結果が介護報酬上で評価されるべきだと思います。
 また、今年度より介護キャリア段位制度といって、利用者に適切な介護技術を提供できているかどうかを評価する制度が始まっています。これは介護の質の向上や処遇改善にもつながることが期待されますから、制度を導入する事業者への評価もあってしかるべきと思います。
 さらに、平成24年の改定から、一定要件のもと、介護職員等にもたんの吸引などの医療行為が認められました。しかし、この行為自体の介護報酬上の評価はありません。介護専門職の医療行為については、特段の評価があってもいいのではないかと思います。
 ぜひ機会を捉まえて、以上の点を国のほうへも要望いただけますようお願いを申し上げまして、私の一般質問を終わります。(拍手)
○議長(坂本 登君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時23分休憩
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