平成26年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


平成26年2月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 質問に入る前に、一言お礼を申し上げます。
 先般の大雪被害は全国に及び、本県でも、紀北・紀中地域のビニールハウスなど農業生産施設を中心に、約1億8000万円の被害が発生しました。被災された皆さんにお見舞いを申し上げますと同時に、迅速な対応をしていただいた仁坂知事初め農林水産部の皆さんにお礼を申し上げておきます。
 それでは、通告に従い、一般質問を行います。
 「一年の計は穀を樹うるに如くは莫く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計は人を樹うるに如くは莫し。一樹一穫なる者は穀なり、一樹十穫なる者は木なり、一樹百穫なる者は人なり」──1年の計は穀物を植えるに及ぶものはなく、10年の計は木を植えるに及ぶものはなく、終身の計は人を植えるに及ぶものはない、1を植えて1の収穫があるものは穀物であり、1を植えて10の収穫があるのは木であり、1を植えて100の収穫があるのは人であるという意味であります。先般、ある会合で県病院協会の成川会長がスピーチで言われたことをいただきました。知事もたしかメモをされてたと思いますが。これは有名な管子のフレーズでありますが、現在の和歌山に私は2つのことを示唆していると思いました。
 1つは、県政においても、この終身のような長い視点が必要であるということです。県長期総合計画は、わずか10年後が目標です。100年先を考えて初めて見えてくるものがあるのではないでしょうか。私は、県政においても100年後を目標にした政策が必要と考えますが、知事の御所見を伺います。
 さて、もう1つは、何よりも人に投資をするのが効率がよいということであります。人づくり、教育の大切さを説いています。
 今から100年ほど前、明治、大正のころ、全国の府県では、帝国大学や旧制大学、ナンバースクールなど、旧制高校の誘致合戦が行われていました。当時の本県の取り組みは不明ですが、戦後に至るまで大学や高校はありませんでした。江戸時代は御三家で、明治6年に城下の人口が6万1000人余で全国8位だったこのまちに、なぜ大学や高校ができなかったのか。理由はわかりませんが、それが和歌山の凋落の遠因ではないかと考えております。それゆえに、今後の100年のおくれをとらないためには、ぜひとも大学をつくるべきだと強く訴えたいと思います。
 現在、本県の大学進学率は47.8%。しかし、県外進学率は86.6%で、長らく全国ワースト1位にあります。
 本日は、県内進学率を示す資料2をお配りしております。昭和50年から平成20年までの約30年間の推移を示しています。岩手や新潟、島根、大分、宮崎など、地方でも大きく伸ばしたところが目を引く一方、断トツの低どまりが本県であります。過去100年以上にわたり県民が県外に支払った授業料や仕送りは、莫大な金額になります。しかも、県外へ一度出た人は容易に帰りません。
 自民党から、薬剤師不足解消のため、知事に薬学部設置の提案をしています。四国や九州の私学の定員割れを理由に取り組みが進んでいません。定員割れは、わずかこの10年間に全国の薬学部の入学定員が倍増したことが原因ですが、よく考えてみれば、本来なら本県においてもつくれた可能性を知らぬ間に県外の私学にとられたのも同然だと気がつきました。このような県外進学状況について、知事はどのような御認識でしょうか。
 ところで、大学は教育機関であると同時に、優秀な研究者を糾合し、地域の文化や産業を興す重要な機能を果たしています。山中教授のようなノーベル賞受賞者の多くは大学に在籍しています。世界の先端技術企業が集積するシリコンバレー発展の原動力は、スタンフォード大学を中心とした大学群にあったと言われています。
 現在、関西広域連合では先進医療特区を申請中ですが、本県と滋賀県は、はっきり言って蚊帳の外にあります。やっぱり大学や理化学研究所のような公的研究機関がないとあかんと思いました。
 現代医学では、どんな優秀な医者といえども、機械を使わずに診断や治療はできません。同様に、薬剤を使わずに診断、治療はできません。せっかく立派な医学部を持っているんですから、薬学部や医療系工学部を増設し、大学と県民医療を充実させ、加えて進学率の向上、産業振興に役立てば大変有効だと考えます。先進医療技術や創薬は成長産業であり、安倍政権が提唱する国策でもあります。
 先ほどの薬学部については、法科大学院と同様の定員バブルですが、資料3のとおり、研究者志向の強い国公立大学の薬学部には影響は少ないようです。要はやり方であると思います。
 また、パイロットや航空機整備士、航空機開発技術者については、将来にわたり世界中で不足が予想されており、国土交通省では夏までに養成方針を取りまとめる予定です。航空機関連は、世界の成長産業として期待されており、パイロット養成に関しては、余裕がある白浜空港や旧空港を有する本県は絶好の立地環境にあります。
 和歌山を元気にするためには、県経済を牽引するような医療や航空機など成長産業を創造する必要があります。そのためには、終身の計として、遠回りでも産業振興に役に立つ、時代の先を行く大学をつくることから始めるべきだと考えます。大学設立は子供たちの県内進学率向上にも大いに役立ちます。
 そして、大学設立に当たっては、優秀な私学が来ればありがたいことですが、仮に来なくても、公立であればいいと考えています。県立医大同様に交付税が措置され、授業料を安く抑えることで優秀な学生を集め、結果的に経営も安定させることができます。
 文科省では、公立大学は地域における高等教育機会の提供と知的・文化的拠点の中心的役割を担っており、今後とも地域の社会・経済・文化への貢献が期待されるとして、大学数、学生数とも平成元年の39大学6万人から平成25年度には83大学14万人へと倍増しており、地域から高等教育の拡大を支えていると称賛しています。幸い、文科省は、私学や公立大学は一定水準以上を満たせば今後とも認めるとの方針です。
 皆さん、国際教養大学を御存じでしょうか。昨年夏、有志で視察に行ってきました。全ての授業を英語で行うということで有名でありますが、設立後わずか数年で阪大や一橋大学クラスの偏差値に到達し、就職先もみんな一流企業だと言われています。この大学から学ぶべきことは、秋田県のような地方でも──失礼ながら──少子化の時代であっても、やり方次第ではすばらしい大学ができるということです。そして、県立文系学部ながら授業料など年間約200万円程度の結構な負担をしてでも、草深い秋田に全国から優秀な学生が集まるということです。
 そこで、仁坂知事に大学の効果と大学設立の可能性について御所見を伺います。どうか、終身の計の御答弁を期待する次第であります。
○副議長(花田健吉君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、県政の運営に当たりましては、10年間の計画である長期総合計画のみならず、50年後、100年後の和歌山県の将来を見据えることが必要であると考えております。
 そして、向こうから見たときに、50年後、100年後から見たときに、今、具体的に何をしとかないといけないのかということを考えることが大事だと考えております。それが先ほどの管子さんがおっしゃったようなことにつながるのかなあというふうに思っております。
 そういう観点から、今年度の政策においても、実は大きな柱の2つのうち1つは「未来への投資」の政策ということで、これは分類というか、名前をつけたということなんですが、そういうつもりでつけました。中身として、県民の将来のチャンスを保障するための高速道路ネットワークなどの社会インフラの整備に加えて、道徳教育とか、学力の向上とか、体力の向上とか、郷土学習とか、よき職業人の育成とか、国際人の育成から成る教育6本柱による人材の育成とか、そういう長期的な視点に立った政策をたくさん盛り込んでやっていこうと、こう考えているところでございます。
 次に、大学の県外進学率、そのとおりであります。本県の大学・短大への進学率が比較的高い中で、県外への大学・短大への進学割合が高いというのが現状であります。
 ここで問題は幾つかあるんですけども、1つの問題は、県外大学に進学した学生の4割超が実は和歌山県内での就職を希望しているという調査結果もございます。私は、それぞれ行きたいところに行くというのはしようがない、あるいは問題はないのかもしれませんが、県内に残りたいという人が学ぶ場所や働く場所がなくて県外に出ざるを得ないというのは、断固問題だと考えております。
 そこで、和歌山県に帰りたいと考えてる人が県内企業の情報を知らずにチャンスを失っている可能性もありますので、和歌山にたくさんある世界に通用する企業の情報を直接大学生に提供するため──これ、プライバシーの関係で結構大変なんですけど──UIターンわかやま就職ガイドブックの送付やUターン就職セミナーの開催などに取り組んでいるところでございます。
 続きまして、もう1つの問題は──問題というよりも特徴は、大学自体が若者の集積の場所である、地域との交流という点でも大変好影響があるという、そういう問題でございます。したがって、私は、大学は絶対につくりたいと、そういうふうに思っております。もっと言うと、つくっておかなければならなかったというふうに思っております。
 もっと言いますと、実は学生が減って、大学はみんな経営が大変です。大学をつくるブームというのがあったんですけれども、今、その中の幾つかの大学が大変な苦労をしています。その後あったのは、外国大学の分校というのがありました。これも大分チャンスがあったんですが、和歌山県は残念ながら全てのチャンスを放棄して時代は過ぎてしまいました。今チャンスがあるかというと、まだあると思っております。今あり得るのは専門職業人の育成校だけだなあというふうに思うわけでございます。
 そういう意味で、これまで県立医科大学の定員増とか、あるいは保健看護学部の博士課程とか、和歌山大学の観光学部の設置とか、日高看護専門学校とか、努力をしてまいったわけですが、今のような考え方で、まだまだ可能性があるんじゃないかと思って、いつもウの目タカの目でございます。
 具体的に言いますと、うまくいっとらんのですが、看護大学に可能性があると思っております。和歌山県立医大に看護学部がありますから、これはもう私立しかないんですが、大分そういう意向のある民間の方々に働きかけを本当にやりました。しかし、研修病院の手当てなどの問題があってうまくいっておらんというのが現状です。
 県立医科大学の薬学部の設置とか、あるいはパイロットや航空機整備士等を養成するための県立大学の設立というようなお話が、現在ありました。私は、可能性は追求していくべきだというふうに思っております。
 ただ、いろいろ勉強はしておるんですが、初期投資にお金がかかるということは事実であります。交付税措置は運営に係るところだけですので、そういう財政支援はありませんから、これをどう考えるかという問題があります。それから、運営に係る交付税はいただけるんですけども、実際に要するお金などをとてもくれません。和歌山県立医大もベースとして県から毎年40億円余をつぎ込んでるということから、それは明らかではないかと思います。それから、その分、学生に応分の負担を求め得るかというと、これは程度の問題ではないかというふうに考えます。
 ということをいろいろ真面目に考えないといけませんが、何でも「反対」とか「難しい」とか言ってると、それこそ50年後に笑われる可能性もありますので、今後も可能性については真摯に、かつ幅広く研究していきたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 おべんちゃらを言うわけじゃありませんけども、仁坂知事は、県政推進に真面目にこつこつ頑張っていただいてると思います。私は個人的に及第点を差し上げたいと思いますが、ぜひ満点を目指して頑張っていただきたいと思います。そのためには、私は、県民がわくわくするような、夢のある──これは夢で終わったらあかんわけですけども──そういう大きな政策も掲げてやっていただきたいというふうに御期待を申し上げておきます。
 大学自体は、私が申し上げた航空機関連、それから医療関係というのは、もう大きな成長産業だと思いますし、日本の国もそういうところで生きていかないとだめだと思います。その大きな流れに和歌山も乗っかればいいんじゃないかなと思っております。
 次の質問に移ります。2番目は、高速道路についてであります。
 去る2月25日、一般国道42号すさみ串本道路を平成26年度の新規事業化の候補として新規事業採択時評価の手続を進めることが国土交通省から発表されました。紀伊半島一周高速道路の実現に向け大きな前進であり、二階俊博代議士初め県関係与党国会議員の御尽力と知事や関係者の熱心な要望活動、国交省の御理解のおかげであります。この際、県議会の議員連盟を代表してお礼申し上げておきます。
 先日、テレビで、関西人1000人が行きたい温泉ベスト10という番組がありました。残念ながら那智勝浦温泉は入ってませんでした。やはり京阪神から遠いと損だなあと思いました。一刻も早い紀伊半島一周を目指して、どうか切れ目のない事業継続を期待しますが、今後、県としてどのように取り組んでいくのか、知事の御所見を伺います。
 また、今回のすさみ─串本間は田辺─すさみ間に続く路線ですが、平成27年には京奈和自動車道路や第二阪和道路なども開通することから、平成27年は本県の道路整備の節目の年になります。果たして、その後の道路整備をどうしていくのか。ぜひそのあり方についてもあわせて御答弁願います。
○副議長(花田健吉君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 2月25日、国土交通省から、一般国道42号すさみ串本道路について、平成26年度新規事業化に向けた評価手続に着手するとの連絡がありました。ちょっとかたい言葉を使いましたけれども、事業化候補としてちゃんと位置づけてあげるから頑張りますというようなことであったわけでございます。
 大変喜んでおりまして、今後は3月中に第三者委員会の審議や国会での予算審議を経た上で事業化が決まるということになりますけれども、今回の決定は大きな前進であると思っておりまして、大変喜んでおります。これまで御尽力いただきました御指摘の国会議員や関係県議会議員、地元の首長を初め多くの皆様のおかげと、心から感謝をしております。
 近畿自動車道紀勢線の紀伊半島一周の実現は、企業立地や観光振興、農林水産業の振興など県民の将来のチャンスを保障するものとして、さらには南海トラフ巨大地震など大規模災害への備えとしても、不可欠かつ急務でございます。今後とも議員の皆様の御協力を得ながら、まずは、すさみ串本道路の事業化を決定していただくとともに一刻も早く完成さしていただくと、引き続き、紀伊半島一周高速道路の早期実現を国や関係機関に働きかけてまいりたいと思っております。
 続きまして、平成27年度以降の高速道路等の整備ということでございます。
 和歌山県の高速道路等の整備については、これは国でもいろいろ配慮していただいて平成27年の国体というところが大変な節目になってることは、議員御指摘のとおりでございます。ここまでに近畿自動車道紀勢線の田辺─すさみ間を完成させようと、京奈和自動車道路全線をやろうと、それから第二阪和国道など事業中区間の供用についてやろうと、こういうことになっとるわけですが、正確に言いますと、国は27年度でございまして、我々は国体までということで強く働きかけているところでございます。
 今度は、平成27年度以降については、有田─南紀田辺間の4車化の話がございます。それから、この間事業化されました新宮紀宝道路を推進すると、それから、来年度事業化が期待される──まあ大丈夫だと思いますが──すさみ串本道路をどんどん進める、それから、残り区間についても早期事業化を図ると、そういうことによって、紀伊半島一周高速道路の実現を第一に進めなければいけないと思います。また、府県間道路や川筋ネットワーク道路の残った区間、これもいまだ27年度を過ぎてもございますので、これを急いで整備を進めていくということをやっていきたいと思っております。
 その次の問題でございますけれども、川筋に次ぐようなプロジェクトは幾つか、まだ決めておりませんが、県内ではあると思います。それに加えて、次に続くプロジェクトとして考えられる京奈和関空連絡道路や、あるいは大阪都心と関空を結ぶ高速交通アクセスと四国新幹線などに資する紀淡海峡ルート等の構想、こういうものの具体化に取り組んでいきたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 3番目に、医科大学について伺います。
 昨年9月、社会保険紀南病院の透析科常勤医3人のうち1名が欠けたという理由で、県立医科大学の腎臓内科学講座は、国保日高病院の唯一の常勤透析専門医を紀南病院へ転勤させ、かわりに日高病院には非常勤の医師を月水金に派遣することにしました。現在は事なきを得ていますが、御坊周辺では日高病院初め4施設で人工透析が行われており、合併症など重篤患者が発生すると総合病院である日高病院で対応する必要があり、その際に専門医がいなければ受け入れができません。
 事態を心配した患者団体が、昨年末、同講座に常勤医師の派遣を1200名以上の署名を添えて嘆願したところ、中紀地方の重篤患者は紀南病院へ、和歌山市北部の重篤患者はりんくう医療センターへ行くように説明があったそうです。
 このような地域医療にかかわる重要な決定が県立医科大学の医局だけの都合で行われたことに憤りを感じます。しかも、和歌山市北部の県民に大阪へ行けとは、聞き捨てなりません。こんなことがまかり通るのであれば、地域医療計画は要りません。
 県立医科大学の医師の派遣は、人工透析事件以来、平成25年から地域医療機関医師適正配置検討委員会において行うことになっており、知事も、困難なときはみずから乗り出して調整すると答弁してくれていましたが、果たして機能しているのでしょうか。
 県民の生命にかかわる地域医療計画が機能するかどうか、その鍵を握る県立医科大学が公立大学法人化され、県議会に出てくる義務がなくなり、約40億円もの予算を計上しながらわかりにくい計画書を提出するだけで、直接質問や説明を受けることができません。
 また、学長が就任しても、その抱負や県民医療についての所見を聞くためには一般参考人と同様に本会議で議決しなければならないなどということは、とても民主的とは思えません。しかも、県立医科大学の情報は公開性に乏しく、世の中の流れに逆行をしています。公立大学法人化は本当に県民のためになっているのかと、私はいつも思います。
 公立大学法人化に際し、平成17年6月定例会で、町田亘議員の質問に対し当時の木村知事は、公立大学法人化されても税金が投入され、医師や看護師を養成し、地域医療の中核をなす大学であり、さらに県民のためによくなるように県としてかかわっていくと答えています。また、仁坂知事は、平成24年2月の私の一般質問に対して、中期計画のチェックや日常問題については毎月開催している連絡協議会で指導していくと答えていただきました。
 最近の公立大学では理事長と学長が分離されている傾向というふうに聞いております。果たして、和歌山におきましても分離の必要はないのか。そして、今回のような医局の人事に際しては県当局に相談する制度を設けるというような新たな管理方法が必要だと思いますが、知事の御所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 大学があちこちで独立行政法人化しているんですが、最近、大阪で理事長と学長が別人格になりましたけれども、大体のところは一体であるところが多いようです。これは、いろいろ考えてみますと、大学はやっぱり学問をして学問のレベルを上げなきゃいけない、それを背景に人を集めて、つまり学生を集めて、それで、医科大学ですから、その学生を中心として地域医療に貢献してもらおうと、こういうメカニズムだと思います。
 したがって、学内の人はさておき、別のところから人を入れると。管理はそれでうまい人が行くかもしれませんが、余り管理ばかり意識されると、大学人全体が少しやる気がなくなって、それで例えばいろんな機能が落ちてくるということもちょっと懸念するところなんです。そういうところに大学の自治というのが強調されるゆえんがあるというふうに思います。私は、結論を言うと、今のところ一体がよろしいというふうに思っております。
 しかし、一体ならどうでもいいというわけでは、もちろんございません。大学の自治が拡大解釈されると困るわけであります。大学は、現在いる大学人が唯我独尊に何でもやっていいというものではありません。医大は、特に和歌山県立医大は、学長のものでも教授のものでもありません。県民のものであります。特に地域医療を守ってもらわないといけないという、我々としては悲願にも近いような、そういう大事な役割を持っているわけでございます。そういう意味で、大学のガバナンスというのは、これはいつも問われることだというふうに思います。
 今回、学長選挙、理事長選挙があって、岡村さんが理事長、学長に推挙をされたわけでございます。形の上では理事長に推挙をされて、私が任命をするかどうかということなんですが、その岡村さんとよく話をして、まず3つのことを確認させてもらいました。地域医療をあなたは一生懸命やろうとするか、それから、学内の融和、これはちょっと、ずうっと割合対立が結構あるもんですから、少なくとも特に対立があるように言われるもんですから、これは勝者のほうがちゃんと寛容の気持ちで融和に努めなきゃいけないということで、そういうつもりがあるか、それから、学内のガバナンスをもうちょっと改善しなきゃいけないように思うけれども、それに協力をするかという3つの点について確認をいたしまして、それは前向きにやるというふうに言っておられるので、岡村さんは任命したいと私は思っております。
 特にガバナンスという観点からは、医大の理事長推挙方法がこれでいいのか、それから教授の選考がこれでいいのか──例えば弟子を全く最近集めていないような教授がずうっと長くいるということがあって、これが医師不足に拍車をかけているわけであります──このままこの地位に置いといていいのか、それから、選考過程では論文の多寡とかそういうことばかり議論になってはいないかというようなことを考え、かつ教授会と理事会ってあるんですが、そのチェック・アンド・バランスがこれでいいのかというようなことをやっぱり考えていかないといけないなあというふうに思っております。
 これは大きな制度の問題でございますが、さらに月1回打ち合わせをいたしまして、それで、その時々の問題について今議論をしておりまして、これも続けていきたいと考えております。
 それから、医師派遣についてでございますけれども、現実にどこにどういうような派遣をするかということを、形はともかくといたしまして、和歌山県が知らないでいいというわけでは決してないというふうに思います。そういう意味で、制度化も含めて、もうちょっと検討してもいいかなというふうに思いますが、現実の問題としては、実はよく知っております。知らなかったというか、それはどうかと思ってるのは、大阪へ行けと言った人がいるという話ですが、こういう人はちょっと注意をせないかんということで、これは県の見解とは全く違います。
 本質は、病院に行ってよいとか、あるいは学内に残って、医局にとどまって全体として和医大をサポートするとか、そういう医師の数が足りないというところにあるわけであります。したがって、たくさんいれば任命すればいいんですけれども、任命したくても人がいないという状態であります。
 医大を中心にして、人が足りなくなったときに、何とかしたいと思っていろいろ駆けずり回るわけでございますが、医大が難しかったら、実は他の大学にも手を回して、これは実は、私も含めて県が中心になって必死で人探しをしながら何とかつないでいるというのが現状であります。
 御指摘の腎臓内科についても、これは数が足りません。田辺で1人引退するということで、実は、これは全部は守れないので、拠点化をして人をちょっと集めてということで、日高の方を田辺に持っていったという事態でございます。ただ、日高も大事でございますし、議員御指摘のような事態にはちゃんと備えないといけないので、非常勤の方も駆り集めてまいりまして現在対応してるということでございます。
 以上のように、実際、私だけじゃなくて、大事なことになってくると私とこへ来ますが、日常的にも健康局長を中心にして相談に応じておりまして、申し上げましたように、時には、私も含めてですが、県が走り回ってるというのが実情であります。
 今後とも苦難は続くと思います。しばらくの間はずっと続くと思いますが、地域の目配りをしながら──特定の地域が割を食わないようにという意味でございますが、目配りをしながら頑張っていきたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 いろんな議論をしてみても、医師不足であるということは、なかなかこれを補うことはできません。そのことについての努力は、知事初め県の担当部局長、担当の課長さん、皆さん本当に涙ぐましい御努力をいただいてることを承知しております。
 ただ、今回の日高病院の人事については、まず地元の新聞に報道された。どういう経過があったんかわかりませんけども、それ以降、地元の人でありました野尻局長が走り回ってくれたというふうに聞いております。だけど、本当は大学からあらかじめ県にも相談があってもしかるべきだと思いますし、私は、そういう制度があってもいいんじゃないのかなあというふうに思うんです。
 知事もおっしゃいましたが、貧乏な和歌山県が、県民からお金を集めて、せっかく大学を持ってるんですから、やっぱり知事の思うとおりに動かせるようなことにするためには、私は、県から理事長を派遣するとか、そういうふうにしたほうがいいと思う。都会のように大学がいっぱいあるところは、自由にやってもらってもいいと思うんですが、なけなしのお金でやってますから、よろしく御検討いただきたいというふうに思います。
 次に移ります。避難困難地域での民間ビルの活用について伺います。
 県では、南海トラフ地震の基本的な考え方として、1人の犠牲者も出さないという強い方針を打ち出しました。県防災対策の最高責任者として、知事の大きな決断を評価し、今後の積極的な取り組みを期待するものであります。
 早速、提案されている平成26年度予算においても、住宅の耐震改修支援の充実として、非木造住宅や建てかえを補助対象に追加するとともに、避難重視型補強の要件を撤廃しました。また、大規模建築物の耐震改修促進法の改正に伴い、耐震診断が義務化される大規模建築物のうち、避難所となる施設等の耐震化にも補助を広げ、津波避難困難地域にある県営住宅に屋外階段や手すりを設置する予算3000万円が計上されました。
 いつ発生するかわからない南海トラフ地震の避難対策は、最も優先すべき政策であり、官民問わず、あらゆる手段を活用して対処すべきであると考えます。
 本年度末には、逃げ切るプランが公表され、避難所や避難方法が県民に示されます。速やかな公表と、その精度の検証を期待いたしております。そして、私は、その際は、避難困難地域においては、避難ビルとして有効な建物は公的建物だけではなく民間ビルも活用すべきではないかと考えます。また、その場合に、耐震化や避難階段設置など機能強化に対して、県としても支援はできないのかと考えますが、あわせて危機管理監の所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 危機管理監木村雅人君。
  〔木村雅人君、登壇〕
○危機管理監(木村雅人君) 津波から命を守るためには、とにかく逃げ切ることが第一です。避難場所や避難先を確保することは、津波対策として最も重要であると考えております。
 そのため、避難場所や避難先として既存の民間ビルを活用することは、非常に有効であると考えます。民間ビルの所有者が屋上を開放したり、自己資金により外づけの非常階段を整備していただいている例もありまして、このような行動も企業の社会貢献につながっているものと考えます。
 県は、これまでも沿岸市町に対し、できるだけ多くの民間ビルを避難ビルに指定するよう助言を行ってきたところです。沿岸市町には、今後も避難路や避難方法など地域の事情に沿った検討を行い、避難ビルの指定に向け、しっかりと民間ビルの所有者に働きかけるよう助言してまいります。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 知事が、県民だよりとかに、コメントというのか、思いを述べておられるのに、かつて県の職員に「やった気になってたらあかん」というのがあったと思うんですが、これは私はすごく印象的で、この議会で質問をしても、必ず「やってます」という答えをいただくんですが、やるべきこと100あって、1やっててもやってる、99やっててもやっぱりやってる、これは実は同じ「やってる」でも差があるというふうに思います。
 防災対策でいつも思うのは、県は、自分とこの施設ですから、県の建物なり県立学校、それから県営住宅、これをする──もちろん必要なことでありますけども──これで万全ではないと思うんです。避難困難地域に民間の建物しかなかったら、それを耐震化するなり外階段をつける、こういうことが本当の防災対策、県の必要な施策ではないかなというふうに思っておりますので、どうぞよろしく御検討をお願いしたいと思います。
 次の質問に行きます。次は、障害者福祉について伺います。
 数年前、自民党県議団福祉議連で北海道伊達市を訪問しました。障害者が商店街でも雇用され、鮮魚店や青果店などで仕事をしているとのお話を伺いました。作業所や大企業でなくても、志があれば、どこでも障害者の雇用は可能だということを教えていただきました。ぜひとも、この伊達市のように障害者雇用が全国に広がるよう希望します。
 さて、平成25年4月1日から障害者優先調達推進法が施行され、国や地方自治体は障害者就労施設等から物品等を優先的に調達することになりました。現在、県ではどのように取り組んでいるのでしょうか。また、今後の展開についても伺います。
 続いて、県単独医療費助成制度について伺います。
 「出物腫れ物所嫌わず」と言います。皆さん、きれいな話ではありませんけども、大便を我慢できる人がおられるでしょうか。知事はどうですか。
 実は、下半身不随の人たちは排便をコントロールしています。1人ではトイレに行けないので、食事や水分摂取を制限して、わざと便秘の状態にして、1週間に1~2度訪問する看護師により摘便を受けています。摘便とは、肛門から指を入れ便を摘出する医療行為です。
 私は、このお話を聞いて、大変気の毒に思いました。交通事故などで脊髄を損傷し、下半身不随となった障害者は、重度になると就労することも困難で、生活保護や障害年金だけで暮らしています。そして、家族がいない人は、排便をどうしても訪問看護師にお願いしなければなりません。しかし、週1~2回の訪問看護を受けるためには、月3万円程度の自己負担がかかり、それが大きな負担になっています。
 毎日とは言いませんが、もっとすっきり快便できるよう県単独医療費助成制度の充実を求めますが、福祉保健部長の所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 障害者優先調達推進法につきましては、今年度から施行され、県では平成25年度の調達方針を作成して、昨年度の調達実績を上回ることを目標に、障害者就労施設等からの物品や役務の調達の推進に取り組んでおります。
 また、県内各圏域に共同受注窓口を設置することにより、窓口をわかりやすくし、市町村等が地元の障害者就労施設等に発注しやすくする仕組みづくりなどを進めております。
 さらに、平成26年度から関係部局と連携して、総合評価落札方式等において、法定雇用障害者数を超えて障害者を雇用している企業や障害者就労施設等からの物品等の購入が年間一定額以上である企業を評価する項目を新たに追加し、障害者の雇用機会の拡大、就労の促進を図ってまいります。
 次に、訪問看護を県単独医療費助成制度の対象とすることについてでございますが、これまで、この制度の対象となる範囲や患者負担のあり方などについて見直しの検討を行ってまいりましたが、制度対象者が安心して医療を受けられ、また制度を維持可能なものとする観点から、現行の制度となっております。本制度の対象拡大につきましては、こうした観点も踏まえながら、制度全体の中で総合的に検討してまいります。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 この県単独医療費助成制度の拡大でありますが、数年前に、どなたか忘れましたが、議会でお聞きした答弁とあんまり変わっておりませんが、ぜひ実際に検討していただくことを重ねてお願いを申し上げておきます。
 最後に、九九のできない高校生について伺います。
 数年前、知人が彼氏と別れ、その理由が九九が言えないことだったと聞いて、大変驚きました。以来、その人はどうして九九が言えなかったのか、ずっと疑問に思っていました。ところが、昨年、ある高校の先生から、九九が言えない高校生が多数いることを聞きました。九九が言えないということは、算数はおろか、中学の数学はどのように学習してきたのか、まして高校入試はどうして合格できたのか、不思議に思うというよりも、社会に出て九九が言えないと仕事にも困るのではないかと心配いたします。果たして、九九の言えない高校生とは一体どんな状況にあるのでしょうか。
 また、九九を学習するのは小学校2年生ですが、なぜできなかったのでしょうか。そして、小学2年生でつまずけば、以降の算数、数学の授業が成り立ちません。そのことを考えれば、小学校でも中学校でも九九ができないことが判明した時点で徹底的にやればいいと考えますが、できるようにするためにはどうすればよいのか。
 教育長に、以上の3点について伺います。
○副議長(花田健吉君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学力の向上について3点御質問いただきました。回答いたします。
 議員御指摘のとおり、高等学校への進学率が100%に近い状況にある中、小中学校段階での学習が十分に定着していない生徒がいるという実態もあります。
 そのため、こうした課題を抱える高等学校においては、しっかりとした学力をつけるために、義務教育段階での学習内容を確実に身につけるための基礎的な科目を開設したり、生徒1人1人の課題に即した補充学習を実施するなど、生徒の実態に応じた指導に努めているところでございます。
 次に、小学校2年生で九九を学習するべきだけれども、どのような理由でできないのかという御質問ですが、小学校段階で学習する基礎的な学力が定着してない背景といたしましては、まず、学年が進行する中で、新しい学習内容が次々と加わり、基礎的な内容を繰り返し繰り返し学習する機会を十分に確保できなかったために、一度は身につけていた知識などを忘れてしまうということが挙げられます。また、学習に対して意欲や集中力が不足したり、家庭学習の習慣化が図れなかったりすることなども一因と考えられます。
 3点目に、では、できるようにするためにはどうしたらよいのかという御質問ですが、県教育委員会といたしましては、基礎的、基本的な知識や技能が十分に身についていない児童生徒に対しましては、時間をかけた繰り返し学習が大切であり、個々の児童生徒に合った補充学習を行うことが重要であると捉えております。
 現在、県内全ての小中学校で補充学習を行っておりますが、今後、それぞれのやり方をもう一度見直し、1人1人の児童生徒のつまずきを踏まえた、より効果的なものにしていく必要があると考えております。そのため、各学校が個別指導を徹底するなど、わからないところはわかるまで責任を持って教えるという意識を持って、計画的、組織的にきめ細かく指導してまいります。
 さらに、来年度は、すぐれた教育実践力を持った退職教員を学校に派遣し、授業改善などの取り組みを支援し、教員の指導力の一層の向上を目指しながら子供たちの学力の向上に努めてまいります。
○副議長(花田健吉君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。(拍手)
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時40分散会

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