平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 まず、沖縄県訪問について御報告申し上げます。
 去る11月25日、自民党県議団福祉議員連盟・向井嘉久藏会長初め議員22名は、沖縄及び南方戦線で戦死された英霊の追悼式に参加するとともに、米海兵隊普天間基地を視察してまいりました。
 戦後68年が経過し、戦争遺児が定年退職をする時代になり、英霊の顕彰をいかに継承するかという課題がある中で、ことしから県主催で行われることになったと伺い、知事や県当局の英断に敬意を表すると同時に、私たちもぜひ参加させていただこうとの思いでありました。遠い異郷の地で戦死された英霊をおしのびし、現代の日本人が結構な暮らしをさせていただいてることに感謝しつつ、心から御冥福をお祈りいたしました。あわせて、世界平和と人類の幸福のため、私たちも努力しなければと決意を新たにした次第であります。
 次に、門博文代議士に御同行いただき、公明党から中拓哉議員も参加され、普天間基地を訪問し、基地司令官ジェームス・フリン大佐並びに海兵隊太平洋基地政務外交部次長のエルドリッジ氏から、海兵隊の任務や基地の状況について説明を受けました。普天間基地ができた当時は周辺には畑が広がっていたことや、地元の宜野湾市とは官民ともに仲よくやっていることなど、報道では伝えられてない事実を知りました。
 また、エルドリッジ氏は12月3日にも来訪され、「トモダチ作戦とその後」というテーマで講演をしていただき、安全保障や防災対策について議論いたしました。特に日米安保やオスプレイの安全性、災害対応について議論をし、やはり日ごろの顔の見える関係が大切だと痛感をいたしました。
 他人が困ってるときに知らんふりをして、今度自分が困ったときに助けてくれとは、私の感覚では言えないというふうに思っております。私は、本年2月定例会でオスプレイの訓練を受け入れるべきとの意見を述べましたが、改めて私の主張に間違いはないと確信した次第であります。これを機会に、安全保障は国の仕事などと思わず、私も大いに研究してまいる覚悟であります。
 それでは、通告に従い、一般質問を行ってまいります。
 まず、防災対策について、質問4点と要望1点を行います。
 その1番は、西川河口水門の設置についてであります。
 本県では、3連動地震の防災対策として、避難に加えて必要なハード対策を講じることにしています。御坊市や美浜町の市街地が広がる日高平野の津波対策としては、日高川の支流で平野に深く切れ込んだ西川の河口に水門を設置することが被害軽減に大変有効であると、和歌山高専の小池先生など、津波防災の専門家が指摘しています。
 先般、御坊商工会議所が設置する津波防災研究会が静岡県の津波水門と命山を視察してきました。それぞれ資料1と2にお示ししております。津波水門は、沼津港口に設置された展望施設を持つ日本最大級の津波水門「びゅうお」で、平成16年、静岡県が国の補助を得て事業費43億円で設置し、地震計で250ガル以上、震度6弱以上の大地震発生時に重量406トン、幅40メートル、高さ9.3メートルの巨大な扉が自動的に閉まる仕組みになっています。
 一行はそのまま上京し、国土強靱化基本法の提案者である二階俊博代議士を訪ね、西川河口水門設置への尽力を要望したと地元紙が報じています。
 同研究会は、それに先立つ本年8月に、私も同席し、仁坂知事に津波対策をお願いした経緯があります。その後、知事は、わざわざ西川河口を視察していただいたと伺っておりますが、西川河口水門の設置について知事の御見解を伺います。
 次に、命山について伺います。
 一行が視察した命山は、本県議会の建設委員会が10月2日に現地視察し、その後、NHK「おはよう日本」でも取り上げられ、現在、全国から視察が相次ぐ状況だと聞いております。命山は、高潮から逃げるための江戸時代の築山を参考に、袋井市が津波から避難する目的で建設した高さ7.2メートル、海抜12メーターの人工の山で、県河川のしゅんせつ土を有効活用して、約6400平米の敷地に天端1300平米、約1300人が避難できる台形の盛り土ピラミッドであります。避難タワーに比べて建設費用が安価な上に、植栽を施せば公園としても使える防災対策に理想的な半永久的施設ではないでしょうか。
 私は、たびたび東日本の被災地を視察する中で、仙台東部道路や名取川堤防の盛り土、松島の地形などから、防災対策には盛り土構造物の適正配置が大変有効だと確信しておりましたので、命山の存在を知り、まさに我が意を得たりと納得すると同時に、300人の犠牲を教訓に命山を建設した先人の知恵に敬服した次第であります。
 命山について、県土整備の観点からの評価を県土整備部長に伺います。
 3番目は、町を津波の破壊から守る対策について要望しておきます。
 現在、津波浸水シミュレーションには、津波浸水範囲、浸水深は表示されていますが、ビルでも破壊する津波や瓦れきの破壊力は考慮されていないので、十分な防災対策が講じられるのかと心配しております。
 今回の質問に当たり、県当局担当の方から津波防災地域づくり法について御説明をいただきました。同法は、津波浸水予想地域を危険度に応じて建築規制を行うとともに、新たな建築物には津波に耐え得る耐浪性を求めています。この法律は災害に強い町を建設する方法として大いに有効であると感じましたが、町全体をつくりかえるにはどうしても時間がかかります。やはり御坊のような1万人以上が暮らすまちでは高台移転は困難で、現地に住み続けなければならず、それに合った防災対策が必要です。
 私は、震災後約1カ月の4月下旬、同僚議員とともに宮城県松島町を訪問しました。町は津波で浸水したものの、天然の要塞とも言える日本三景の島々に守られて、そのころには既にレストランやスナックなどが早くも再開されていました。
 一方、他の三陸海岸の町々は津波に完全に破壊され、瓦れきの山積みでありました。2年半が経過する現在でも、いまだに復興はおろか、復旧もおぼつかない状況にあります。
 このことから、津波防災対策としては、まずシャットアウトするのが一番ですが、万が一津波が水門や防潮堤を越流しても、さらにそれらの施設が破壊されても、次善の策として、浸水はしても町が壊れない対策が必要であると考えます。
 私見ですが、先ほど取り上げた命山は、うまく配置すれば避難所となり、また、津波の衝撃を軽減する松島のような役割を果たしてくれる防災対策であると思います。ぜひそのような新しい対策ができるような制度の充実をお願いしておきます。
 4番目は、防災技術展、防災技術研究大会の開催について伺います。
 実は、地震のメカニズムが解明されてきたのは、ここ数十年と言われています。したがいまして、その対策技術である防災対策も、残念ながら未開の分野と言えます。しかし、東日本大震災以降、復旧・復興が進む中で、全国各地で官民が防災対策を実施し、防災・減災技術は急速に開発されています。視点を変えれば、今後大いに開発、発展が期待される成長産業でもあり、国際貢献ができる立派な産業であります。
 本県は、来るべき南海地震に備えてハード、ソフト、あらゆる分野での防災対策を必要としており、全世界から防災技術を集積し、直ちにその有効性を判定し、実施しなければならない運命にあります。
 そのための手段として防災技術の研究所や大学の立地が有効だと思いますが、まずは本県でも可能な防災技術展覧会や研究大会を開催してはと考えます。情報収集と産業振興の観点からの防災展や研究集会に対する知事の御所見を伺います。
 5番目は、心肺蘇生法について伺います。
 最近、町でよく見かける表示、それはAEDであります。AEDは日本語に訳しても自動体外式除細動器と意味は難解で、心肺停止の人に電気ショックを与え、心臓を動かす機器という程度の認識はありますが、心肺停止の人に出くわしたとき、果たしてちゃんと対応できるのか、私自身、余り自信がありません。
 去る9月定例会中、自民党県議団では、キットを使った心肺蘇生法の訓練を行いました。訓練が初めてという人もいましたが、心肺蘇生法の重要性を認識するとともに、胸骨圧迫には結構腕力が要ることも知り、大いに勉強になりました。
 インターネットのウィキペディアによりますと、心肺蘇生法とは、脳への酸素供給維持のことだと書いてあります。さらに、脳自体は酸素を蓄える能力がないので、呼吸がとまったら4分から6分でもとに戻らなくなり、一刻も早く脳に酸素を送る必要がある。人間の脳は、2分以内に心肺蘇生が開始される場合の救命率は90%、4分では50%、5分では25%程度となります。これをカーラーの救命曲線と言うそうでありますが、資料3にお示しをしております。
 したがって、救急隊到着までの5~6分の間に、現場に居合わせた人──これをバイスタンダー(市民救助者)と呼びますが──この人による心肺蘇生法が行われるかどうかが救命率を大きく左右すると言われています。
 本年3月、茨城県では議員提案によるAED等の普及促進に関する条例が制定され、AEDの普及や学校などでの心肺蘇生法の習得を奨励しています。
 高齢化の進展や生活習慣病の蔓延、通学途上での交通事故の多発、加えて南海地震など自然災害が常襲する本県では、心肺蘇生法は全ての県民が身につけておくべき常識ではないでしょうか。私は、そのために義務教育での心肺蘇生法の習得が重要と考えますが、教育長の御所見を伺います。
 学習指導要領では、心肺蘇生法に関しては必要性は説きつつも、残念ながらその内容や到達度などは明確ではありません。大切な家族が倒れたとき冷静に対処するためには、果たしてどんな内容をどれだけやれば身につくのか、あわせて教育長に伺います。
○副議長(花田健吉君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県は、東海・東南海・南海地震の3連動地震や南海トラフの巨大地震により甚大な津波被害が想定されておりまして、防災・減災の県土づくりに取り組んでいるところであります。
 また、今般、国会において国土強靱化基本法等が成立し、国は財政上の措置を講ずる等、津波防災対策がさらに促進されるものと期待をしております。
 現在、県では、「津波から『逃げ切る!』支援対策プログラム」の見直しを行っておりまして、西川河口部のような平地部で高台がなくて避難場所までに時間を要する地域では、堤防等のハード対策と住民避難を軸としたソフト対策を両方とも総合的に講じる必要があると考えております。現在、西川河口部では津波シミュレーション等の調査を実施しておりまして、この調査結果に基づく既設護岸のかさ上げをしっかり行っていくことで十分な津波対策を行えるものと現在考えておるわけであります。
 議員御指摘の西川河口部の水門は、西川からの河川水が流下してくるため、それを阻害しないように水門の大型化とか排水ポンプの設置が必要となる課題もあると思っておりますけれども、防災・減災上の利点も勘案して、議員から御指摘があったことでございますので、最善の津波対策を検討していきたいと思っております。
 2番目に、防災技術展とか、あるいは研究大会でございます。
 防災技術を一堂に集めた情報交換の場は、防災対策を進める上で有効なものであります。
 2つ御指摘のありましたうちの防災技術展でございますけれども、これまでも民間事業者が企画をし、毎年どこか大変大きな見本市会場があるようなところで開催されてるところでありまして、新たに来年6月にはグランフロント大阪で大規模な技術展が開催される予定と聞いております。
 このような催し物──技術展ですね。見本市でございますが──企業間の商取引の場としての位置づけが非常に強くて、需要者も厚くて──厚いというのは幅がたくさんいるということですね──そして出展企業が多数集まる大都市圏での開催がどうしても中心になってきます。どうしても、これをこちらに持ってこさせようと思うと相応のコストが要るわけでございます。
 したがって、現状では、県が防災技術展を開催するよりも、大都市で行われる大きな催しに参加して、新技術に関する情報収集や意見交換などを行うことがより現実的かなあと考えております。大事なことですから、少なくとも県は関係者に大いに行かせたいと思っておりますし、これは県だけの問題ではございませんので、市町村にも積極的に参加を促していきたいと考えております。
 一方、研究集会というようなものは、これはそんなにコストもかかりませんし、それから大勢の人を集めて特定の技術を披露してもらえばよろしいわけですから、大いにやったらいいんじゃないかというふうに思っております。
 国や大学、研究機関、そういうものとふだんから連携をして、常に最新の動向を把握し、防災・減災対策に生かしていくことが重要であると考えております。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 命山と呼ばれる盛り土構造の津波避難施設につきましては、東日本大震災を受け、静岡県袋井市などで整備されてきていると聞いております。
 命山の築造につきましては、議員御指摘のように、建設残土の利用によるコスト縮減や公園としての活用が考えられるなどのメリットがある一方、高い波が押し寄せてくる地域におきまして十分な高さが確保できるのか、家屋が密集している市街地において敷地が確保できるのかなどの課題が考えられます。
 県としましては、今後、各地域の総合的な津波対策を進める上で、こうした命山についても、それぞれの地域の地形や市街地の状況、津波の浸水状況等を踏まえる必要があると考えており、公営住宅や民間ビルの避難ビル化などとあわせて、津波避難施設の1つとして市町とともにその整備、活用方法を検討してまいります。
○副議長(花田健吉君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 心肺蘇生法の必要性についてお答えします。
 小・中・高等学校では、命を救い、またけがの悪化を防ぐためにも、さまざまな応急手当ての方法を指導しております。中でも、心肺蘇生法やAEDは命を救うことに直接つながるものであり、その方法を理解し、実践できるようになることは重要であると考えております。
 現在、中学校、高等学校では、保健体育の教科書に心肺蘇生法やAEDに関する詳しい記述があり、保健体育や防災訓練等の学校行事において指導しているところです。
 時間数等については、全ての生徒が社会に出たときに対応できるよう適切に確保しているところですが、今後も、実習を積極的に取り入れる工夫を行うなど、学校での指導を徹底してまいります。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 津波の水門につきまして、実は西川流域というのは、日高平野では最上流部で土生川という川がありますけども、それは直接日高川に流れておりますが、あとの川は全部西川経由で日高川に流れてくることになっております。有名な道成寺の山門前や国道42号周辺のところでも、ちょっとした雨が降れば洪水、水浸しになるわけでございます。
 西川の支流に東裏川という川がございます。そこにはポンプをわざわざつけてあるんです。しかし、1回だけ動かしたときに西川が上流部であふれて家屋が浸水をしたということがあって、それ以来、せっかくポンプがあるが、1回も使われてないんです。その東裏川上流では、もう毎度家がつかるという人たちがいて、ぜひそれを使ってほしいと、こういう要望を県当局に申し上げておりますが、これはなかなか難しくてできません。西川の河口に水門をつくっていただくということは、津波対策だけではなくて、実は洪水対策としても大変有効であるというふうに思いまして、ぜひ実現方をよろしくお願い申し上げたいと思います。
 命山につきまして、部長から答弁をいただきました。より高い波が来たときに逃げられないじゃないかというお話でした。これは、ほかの避難タワー等の人工構造物についても同様のことが言えると思います。
 しかし、私、命山がすごいなと思うところは、別に──袋井市の命山は7メーター、標高12メーターということでありますけども、土地さえあれば、それこそ50メーターぐらいのものをつくっとけば、その津波がだんだん大きくなっても逃げていけるんじゃないかというふうに思うわけであります。
 私とこの家のある近所では、県の公共残土処分場というのがあって、近所の人たちは大変迷惑をしております。やりたいという人たちももちろんいるので、やってるわけですけども、しかし、わざわざお金をかけて残土を捨てるんであれば、土地がないとだめでありますけども、大いに私は有効利用をすべきだと思います。
 御坊の隣の美浜町では、来年度以降、やろうということで、この命山のことを御存じだったのかどうかわかりませんけども、やるという方針で取り組んでおられるところもありますので、ぜひお願いをしていただきたいというふうに思います。
 それから、知事から防災展のお話がありました。
 県では、この展覧会にかかわらず、一方、全国大会とか西日本大会とか、大会を誘致されてるわけですよ。だけど、利便性とかということでいえば、どんな展覧会も、ほとんど東京や大阪でやったほうが便利だと思うんです。しかし、和歌山県のように今まさに災害が起きるかもわからない、それから、例えばすばらしい技術が明らかになったときに直ちに採用される可能性がある、そういうところが私は大阪じゃなくて和歌山だと思うんです。
 私は、県の職員の人たちといろいろお話をする中で、幹部の政策決定をする立場の人も、結構、東日本の震災のところというのはもう何回も行ってるのかと思ったら、1回も行ったことないという人も結構多くあります。日常的な業務が忙しいから我々のようにしょっちゅう視察ということもできないのかもわかりませんけども、多く情報を集めるというためには、研究大会や防災展というのは私は大変有効で、そんな大阪とか東京でやってもらわなくても──別に県がやらなくても私はいいと思いますが。やる方法はあると思っておりますので、私自身も何か汗をかきたいと思ってますが──ぜひ県のほうでも私は取り組んでいただきたい。ほかの全国大会なり展覧会はビッグホエールでいつでもいらっしゃいと、来たら奨励金を出しますという、こんな制度もあるので、ぜひとも知事も考えを改めていただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。
 それから、教育長から、もう今、義務教育を卒業したら心肺蘇生法ができるんだというようなお話がありました。私の認識では、とてもそうなってないんじゃないかというふうに思っておりますので、答弁を聞かしていただく中で、担当の課長からは必ずやるという、そんなお話も聞いておりますので、ぜひ期待を申し上げておきたいと思います。
 続けて質問を行います。
 次に、紀州学について伺います。
 ことしの夏、同志社大学の名物教授と言われた考古学の第一人者、森浩一先生が逝去されました。森先生は、司馬遼太郎や黒岩重吾とも親しく、松本清張のアドバイザーだったとも言われています。中学生のときに発見した須恵器から考古学に興味を持ち、常に現場を歩く姿勢を貫かれ、中央史観にとらわれない発想や、遺物ではなく遺跡を中心に考えることを提唱され、教科書で天皇陵を在地の名前で呼ぶことを実現し、「考古学は地域に勇気を与える」と言って地域学を薦められました。本県には何度も足を運ばれ、南方熊楠賞受賞記念講演では、森史観からの紀州論を論ぜられました。御坊市の岩内1号墳も、有間皇子の墳墓であるとのお墨つきもいただきました。
 その森浩一先生が、昨年11月に最後の講演となった御坊市での有間皇子シンポジウムにおいて、古代からの歴史を連綿と紡いできた和歌山の地域学としての紀州学の設立を提案されました。
 今月4日、和食;日本人の伝統的な食文化がユネスコの無形文化遺産に登録されました。早速マスコミでは、推進した京都の取り組みが多く紹介され、あたかも京料理や京野菜だけが和食のような印象を受けました。しかし、全国各地にはそれぞれの郷土料理があり、四季折々の食材がたくさんあること、これこそが和食のすばらしい特徴だと思います。
 我が県にも、和食の味の原点であるみそやしょうゆ、かつおぶし、ワサビ、すしなどのルーツがあり、熊野詣でや行幸で食された山海の珍味や徳川御三家、紀州の殿様料理は、決して京料理には引けをとらない資源であるというふうに思います。
 来年は、紀伊山地の霊場と参詣道が世界遺産登録されて10周年です。登録のおかげで和歌山の自然や文化は世界レベルであることがわかり、県民も大いに自信を持ちました。しかし、和歌山のもっとすごいところは、世界遺産以外にも世界遺産級のものがたくさんあることです。全国6位の国宝数を誇り、きら星のごとく資源があります。
 最近、幸いにも、県内各地で貴重なそういったふるさとの資源を磨く人がふえてきました。私は、そういった人たちが集まる場所として──といっても物理的な広場ではありませんが──そんなみんながよって立つ地域学としての紀州学が必要ではないかと考えます。地域学としての紀州学についての知事の御所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のように、和歌山県にはまだまだ全国にも県民にも知られていない貴重な歴史、自然、人物などの資源がたくさんございます。行政だけでなくて民間においてもいろいろ勉強しておられる方もたくさんいらっしゃって、それを中村議員は「紀州学」という名前をおつけになって、共通の認識を持ってそれらの資源を活用することが大切であるという御提言だと思っております。私も、大変そのとおりだというふうに思っております。
 本県の資源に磨きをかけ、売り出すためには、まず県民自身が地域のすばらしさに気づいて、ふるさとへの愛着を高めてもらうことが必要であると私は考えておりまして、このため、まず子供たちに、県民の郷土愛を育むことを目的に、本県の歴史とか先人とか産業などを幅広く紹介した「わかやま何でも帳」をつくって配布いたしまして勉強してもらう。さらに、大人の方にも、昔はそういう教育を受けてなかったから、ぜひ勉強してもらいたいというか、知ってもらいたいと思いまして、今、一般書店でも購入できるようにしてるわけでございます。
 また、本県の魅力を全国に売り出して県民に誇りを持っていただくために、郷土の偉人顕彰のシンポジウムを、毎年、人を選んで東京で行っております。これらの事業も議員御提案の紀州学の1つの意向に沿うようなもんじゃないかなあというふうに思っております。
 さらに、議員御指摘の紀州学の物知り、名人、達人、そういう方をたたえることも大事だというふうに思いまして、今度の日曜日に森浩一先生をしのぶ会に行かしていただきますけれども、それもそういう一環だと考えております。
 今後も、本県にある貴重な資源を発掘し、磨き上げ、県民と共有しながら、県外にも発信する機会を充実していきたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 文句を言ったりお礼を申し上げたり──今度は日曜日にお忙しいところ、ありがとうございます。
 この紀州学ですけども、この議会では私が申し上げましたが、さっき質問で申し上げたように、提案をしてくれたのは森浩一先生でございます。今度ぜひ御坊へ来ていただいたときには、そういう趣旨で御挨拶をしていただいたらうれしいと思います。
 続いて3番目に、鉄道のゆっくり旅について伺いたいと思います。
 一昨年春、九州新幹線が開通し、新大阪から鹿児島まで最速3時間45分、大阪の隣にある本県新宮までも、やはり3時間45分。遠い和歌山の象徴として、近い将来にはぜひとも克服したい課題であります。
 一方、本日は、片桐議員からも特別列車の質問がありましたが、九州では寝台列車や特別列車でゆっくり回る鉄道の旅が人気を呼んでると聞きます。東日本の被災地でも、先般参りましたが、三陸鉄道が復旧し、震災学習列車やお座敷列車などが運行され、朝ドラの「あまちゃん」効果にもあやかって人気を博しています。
 そこで、本県も、鉄道の高速化、高規格化は最優先としつつも、遠い、屈曲、遅いを逆手にとって、ゆったり回る、しかも豪華列車などといった戦略を追加してはと考えます。来年は、国鉄以来の伝統的キャンペーンが本県の順番となり、全国のJRが和歌山県特集を組んでくださると聞きますが、商工観光労働部長の御所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) 県では、来年の世界遺産登録10周年を契機として、9月14日から3カ月間、JRグループ6社とタイアップした和歌山デスティネーションキャンペーンを実施いたします。これは、JRグループの広報媒体を活用して和歌山を全国に情報発信するとともに、県内各地でさまざまなイベントやおもてなしの企画を実施して多くのお客様に来県いただくものであり、JR西日本においても、情報発信に加え、旅行会社対策や企画切符の販売といったことでキャンペーンを後押ししてくれます。
 その一環として、さまざまな列車の企画も検討されてるとのことでありますが、議員から御提案のありました豪華列車のゆっくり旅については、実現すれば、鉄道ファンに限らず人気の出る企画になると考えております。
 幾つかの駅でしばらく停車して、街歩きや特産品を買ってもらったりするような地域にメリットのある企画を考え、JR西日本に積極的に要望してまいりたいと考えております。また、お客様の反応がよければ、ほかの列車も含め、キャンペーン終了後の定期運行についても要望してまいりたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 4番目は、御坊の工業団地について伺います。
 アベノミクスが功を奏し、我が国経済も本格的に景気回復の道を進んでいます。それに伴い、企業の設備投資も当然増加するものと予測されます。特にアベノミクスの3本目の矢は、民間投資を喚起する成長戦略で、民間企業活力の復活、ビジネス環境の整備など7分野に成長目標を決定し、さきの臨時国会において産業競争力強化法が成立し、投資減税が決定されたところであります。
 その効果を本県に呼び込むため、塩漬けになっている御坊工業団地(熊野)──私の近所でありますが──この際、景気回復のチャンスに備えていつでも対応できるように工法など設計を見直しておくべきと考えますが、知事の御所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員の御指摘を待つまでもなく、企業誘致は和歌山県の各地で進めたいと思っておりまして、特に御坊地域は、第二工業団地があと1区画を除いて全部売れてしまったという──うまくいきましたんで、次の展開と考えて土地が要るというふうに思ってるわけでございます。
 従来の和歌山県の構想でいえば、日高港地域ということだったんだろうと思うんですが、いろいろな企業の方々との話し合いの中では、やっぱりちょっと津波が怖いというんでしょうか、沿岸部よりも山の手のほうが人気があるというのが今の現状でございます。
 そこで、凍結状態になっていた御指摘の第一工業団地であるところの熊野地区、これについて、ちゃんと整地をして売り出すようにしたらどうだということで実は検討させました。その結果、包み隠さず申し上げますと、急峻な丘陵地帯の造成であるために土砂の工事が多くて、のり面の保護についても十分に施工する必要があり、関連工事を含め、施工には多額の費用が見込まれると。そこで、造成費用と想定される売った場合の収入(売却価格)を踏まえると、事業採算性が大変厳しくて、むしろ、より平たんで安価な他の用地を造成したほうがいいのではないかというのが県庁内の当時の議論でございました。
 そうでございますけれども、これが現状なんですが、既に用地は購入済みでありますし、本当にもっと企業誘致もしたいわけでございますんで、今後の企業立地の動向も見きわめながら、可能性は摘むことなく改めて検討をしていきたい、そういうふうに思っております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 山の造成、土をたくさん動かさないといけないわけでありますけども、たくさん余れば、さっき申し上げた命山をつくれば経費も大いに助かるんではないかというふうに私は思っております。
 続けて、5番目の質問を行います。
 最後は、市町村の行政パソコンについて伺います。
 パソコンのOS、ウインドウズXPが、来年4月9日をもってサポートが終了することになっています。ある意味傑作と言われ、広く普及したため、企業や官公庁にもたくさん導入されており、バージョンアップや買いかえ、リース打ち切りなど、現在、各所で対応策がとられています。先般、米軍普天間基地を訪問した際にも、パワーポイントのパソコンがXPでした。巨大な米軍でさえも残ってるので、特に重要な情報を多く抱えながら財政力の弱い地方自治体にとって、切りかえが大きな問題になっています。
 そこで、果たして県内市町村ではXPパソコンは何台あり、その全てがサポート期限までに対策が完了するのでしょうか。そしてまた、対応が完了しないパソコンがあれば、それはどうするのか、あわせて企画部長に伺います。
○副議長(花田健吉君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) ウインドウズXPのサポート終了対策でございますが、県の調査によりますと、県内30市町村が現在保有するウインドウズXPが搭載されたパソコンの総数、これは4625台ございます。そのうち2533台については、来年4月9日のサポート終了までに廃棄、リース終了、またはOSアップグレードによりなくなりますが、残りの2092台は、サポート終了時点で残存する予定と聞いております。
 残るこの2092台のうち2052台につきましては、総務省が示すインターネットに接続しないという措置、またはサポート終了後、早期の廃棄等によりまして対策を行う予定と聞いてございます。
 残り40台でございますが、現時点で対策未定となっておりますが、県としましては、市町村に協力して個別に対策を検討することにより来年4月9日までに全てのパソコンについて対策を完了したいと、このように考えております。
○副議長(花田健吉君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 以上で終わります。(拍手)
○副議長(花田健吉君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時35分散会

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