平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 14番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 皆さんは、世界農業遺産という言葉は御存じでしょうか。世界遺産という言葉は、本県でも高野・熊野世界遺産や、最近では富士山の世界遺産登録などがあって、皆さんよく御承知のとおり、地域おこしの重要なキーワードになっております。きょうは、この世界遺産と違って世界農業遺産、すなわち世界遺産の「世界」と「遺産」の間に「農業」という言葉が挟まれている世界農業遺産について質問をいたします。
 この制度は、2002年(平成14年)にイタリア・ローマに本部を置く国際連合食糧農業機関、通称FAOにより始まった制度であります。目的は、重要な伝統的農業、生物の多様性、伝統知識、農村文化、農業景観などを全体として認定し、その保全と持続的な活用を図ることにあり、世界の重要な農業システムを後世へと残すための登録制度となっております。
 2013年3月現在の認定数は、海外では20地域、日本では5地域が認定、登録をされています。海外ではアジア、アフリカ、南米などにまたがっていますが、参考までに日本の5地域を紹介しますと、新潟県のトキと共生する佐渡の里山、石川県の能登の里山里海、静岡県の静岡の茶草場、熊本県の阿蘇の草原の維持と持続的農業、そして大分県、クヌギ林とため池がつなぐ国東半島宇佐の農林水産循環の5つの地域が認定、登録を受けております。
 世界遺産の認定、登録を通して期待される効果としましては、国内外における知名度がアップすることにより、観光振興や農業者の誇りともいうべき意識の向上による農業の振興、新たなブランド・農産品の開発などが挙げられると思います。
 私の手元に静岡大学稲垣栄洋教授の静岡の茶草場を紹介するホームページがあります。皆さんと世界農業遺産のイメージを共有し高めるための参考事例として、そのあらましを紹介してみたいと思います。
 静岡県の東部地域は古くからお茶の栽培が盛んで、現在も我が国の一大産地として知られています。その地域にあって、掛川市、菊川市、島田市など5つの市町村に引き継がれ存在する茶草場農法は、おいしいお茶をつくるため、茶園周辺で刈り取ったススキやカヤなどの有機肥料を茶畑に投入する農法で、この草を刈り取る採草地を茶草場と呼んでおります。今回の世界農業遺産への認定、登録は、おいしいよいお茶をつくるため、長年にわたってこの茶草場を守り続けてきた農家の皆さんの努力が認められた成果だと稲垣教授は紹介をしております。
 このように、世界農業遺産の制度は、単にでき上がった1つの農産物が立派であるということだけではなく、その農産物をつくり上げていく過程で、技術や文化、生物との共生や農業景観など相互に作用し合い、高めながら、立派なよい農産物をつくり上げていくというシステムを評価するという、やや小難しい内容になっております。佐渡のトキや阿蘇の畜産などを思い浮かべますと、何となくイメージが湧いてまいります。
 さて、そこで話を南部郷の梅に移したいと思います。
 みなべ町を中心とする南部郷の梅の生産は、既に皆さんがよく承知のとおり、400年の歴史を持ち、我が国の梅生産の半分以上を占め、全国に冠たる一大生産地となっております。加工業まで広げますと約1000億円産業とも言われております。
 寒中に春を告げる花として、昔から人々は、春の訪れを待つ心とともに梅の花便りを待ちわびたものでございます。初春、南部郷の谷、山を白色に染め上げる梅林の風景は、今や関西に春を告げる華やかな歳時記とさえなっております。花真っ盛りの光景は、一目百万本、香り十里と言われ、頭上にはメジロ、ウグイスが鳴き声を競い、ミツバチは花を求めて飛び回り、受粉を助けます。花の下では毛せんが広げられ、花見はもちろんのこと、あちらこちらで絵画や俳句、短歌などの催しを繰り広げられております。
 農業景観がこれほどまでに他の産業、すなわち観光と一体となっている風景は、そうたくさんあるものではありません。私の知る限り、わずかに旧桃山町の桃の例を挙げる程度でしょうか。
 樹園地の多くは急峻な地形にあり、梅の木は山の斜面に植栽されております。先人の苦労は、どうすれば傾斜地の土壌を流されることなく梅の木を大きく育てることができるかという点にあっただろうと思います。出した答えは、梅の木とともに下草を育て土壌の流出を防ぐとともに有機肥料として活用するという、梅と下草との共生に知恵を働かせたことでした。
 健康食品としての梅の効能は今さら申し上げるまでもなく、その殺菌効果については昔から広く人々の愛用するところであり、また、最近では県立医科大学での研究も進み、ピロリ菌の抑制効果や血糖値の上昇を抑制する効果などが解明され、特許も取得するまでになっております。
 毎年2月11日の梅の日には、梅祭りとともに梅供養祭を行います。生活を支え、地域の反映をもたらせてくれる梅への感謝を込めて地域の年中行事となっております。これなども、既に梅が単なる農産物を超えて、地域と一体となった農村文化、梅文化を育み、展開している姿であろうと思います。
 また、6月6日、京都下鴨神社と上賀茂神社でとり行われる梅の奉納祭は、大昔、雨が降らず飢饉に見舞われた人々が雨の恵みを祈願して神様に梅を奉納したところ、大雨が降り、五穀豊穣がもたらされたとのこと。以来、恵みの雨を梅の雨、すなわち梅雨と呼び、神様に感謝することの由来となったとも言われております。
 最近、農林省を初め政府も、農業を成長産業として位置づけ、付加価値の向上、海外展開、6次産業化の方向などを強めようとしています。梅は、南部郷で生産され、加工され、そして販売されています。一部は海外に輸出もされています。この形態を6次産業と言わずして何と言うのでしょうか。
 世界農業遺産への認定、登録という視点に合わせて、梅に関する幾つかの側面を紹介してまいりました。県当局も、世界農業遺産の認定、登録に強い関心を持っているやに聞いております。私も、この際、南部郷の梅が世界農業遺産に認定、登録されることにより、これまで以上に海外での知名度が上がり、世界ブランドとして一層の飛躍、発展が期待できるものと、このことに関して強く関心を持ち取り組んでいるところでありまして、「紀州・梅の香りと長寿の里」として世界農業遺産への認定、登録を提案するものであります。
 登録の実現に向けては、地元自治体が積極的に取り組んでいくことはもちろんのこと、県としても、これまで申し上げてまいりました指摘を参考にしていただき、積極的に取り組み、今後の登録に臨んでいただきたいと思います。知事の決意のほどをお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 世界農業遺産は、議員お話しのとおり、地域の伝統的な農業や土地利用はもちろん、生態系や景観、伝統文化など、農業に附帯する要素も含めて農業システムとして捉え、一体として次世代への継承を目指すものであります。世界農業遺産への登録は、これまでとは違った観点から梅産業を振興するという非常によい御提案だと思います。
 白状いたしますと、私もそれほど過去において注目していなかったのでございまして、不明を恥じておりますが、立派な御指摘をいただきましたからには、全力を挙げて熱心に頑張っていきたいと思っております。
 登録には5つの要件が必要とされておりまして、第1に農業を通じてすばらしい景観が形成されていること、第2に安全な食料の提供が行われているとともに生計の手段として成り立っていること、第3に農業を通じて生物の多様性が認められていること、4番目、農業と関連した多様な文化が認められていること、5番目、工夫した農業生産技術が認められていることであります。
 みなべ、田辺地域を中心とする梅生産は、広大な梅林と周辺環境が織りなす四季折々の景観がすばらしいこと、加工と一体となり地域の基幹産業であること、また、梅に関係した伝統ある祭事が数多くあることなど、登録要件を満たすことができるのではないだろうかというふうに思っております。
 登録には、御指摘のように、地元自治体や生産農家など関係者の熱意と積極的な取り組みが最も重要であるとされておりますけれども、県といたしましては、このような地元の皆さんと一緒になって、登録実現に向けて全力を傾注してまいる所存でございます。
○議長(山田正彦君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 世界農業遺産の登録に関しては、知事から、これまでとは違った観点からの梅産業への振興策であり、県としては必要な対策を行っていくとの答弁がありました。
 私は、これまでも、梅産業の振興発展について、生産レベルでの取り組みを強化、加工品の開発、販売促進のためのブランド化の大切さ、医学分野などでの新しい梅の可能性などについて質問し、取り組んでまいりました。今回はこれまでとは全く別角度からの質問でしたが、私が考える世界農業遺産登録の最大の効果、メリットは、このことを通して梅が世界に紹介されることにあると思っています。
 私は、今回のこの取り組みを国際戦略の一環と捉えています。一般の世界遺産ほど有名ではないでしょうが、世界農業遺産については、興味がある世界中の人々がインターネットを開き、関係の書物でこのことを知ることになるでしょう。梅の健康面での効能が広く世界中に紹介されるならば、きっと興味を持って、食べてみようという人々があらわれることを信じています。
 国挙げて農産物の輸出拡大に取り組んでいます。地元には梅産業への自信と誇り、世界に対しては宣伝効果と販売促進へ、世界農業遺産への登録は大きな効果が期待できます。県と国にはなお一段の取り組みの強化を切望し、注文、要望といたします。
 2点目は、地震・津波対策についてであります。
 去る10月2日から4日まで、私たち文教委員会は宮城県亘理町の視察を行いました。視察の目的は、学校・文化財等の震災復興現況調査でした。説明をしてくださったのは、語り部の飯沼さんと菊池さんです。私たちが和歌山県の県会議員ということもあり、説明は学校、文化財にとどまらず広範囲に及び、親切丁寧な説明を受けました。特に飯沼さんは、和歌山県と南海・東南海地震との関連に特別な関心を持って、さきに政府と中央防災会議が公表した資料を詳細に分析し、和歌山版ともいうべき丁寧な資料までつくってくれておりました。
 被災地の惨状を目の当たりにし、説明を受け、残されたビルの残骸を見るにつけて、改めて地震・津波の災害の大きさとその怖さを再認識しました。同時に、このような地震・津波の恐怖がそう遠くない時期にすぐ近くの海底で牙をむいていると思うと、改めて南海・東南海地震の対策の重要性と緊急性を心に誓ったところであります。
 飯沼さんからは、みずから被災した東北大地震の体験をもとに幾つかの大事な問題点の指摘がありました。紹介します。
 最初に心に響いた言葉は、「津波とは、一瞬にして陸地がしけの海になること。そして我々はそこに放り出される」との言葉でした。もちろん東北の人々も、こんな大地震は初めての経験でした。初めての経験がとっさの判断、とっさの避難を迷わせたこともあるのでしょう。津波が海面に姿を見せ、それが巨大な高い厚い壁となって陸地を襲う。住民の方々は、まさに一瞬の出来事に見えたことでしょう。一瞬にして陸地が海になり、そして多くの方々がそこに放り出されたそうであります。何度も何度もテレビで映像として見てきた津波の恐怖が目の当たりに展開される思いでありました。
 私たちの紀伊半島では、地震発生から津波襲来まで最短で2分とか5分というではありませんか。飯沼さんが言う「一瞬」という言葉が大きな説得力を持って響きました。そのとき我々はどう対応し、どう対策すればいいのか。まず逃げること、てんでんこに逃げること、これが東北の教訓でした。「てんでんこ」とは、もとは「てんでに」ということだろうと思いますが、とにかく自分は自分の責任で逃げろという意味だと思います。
 幸か不幸か、我々のふるさと紀伊半島は山が海にせり出す地形となっています。海のすぐ裏が山です。地震・津波が発生したら裏山に逃げよう、てんでんこに逃げよう、これが津波から身を守る最大の防御策です。迷ってる余裕はありません。ちゅうちょしている余裕もありません。そのためには、裏山に逃げる避難路が整備され、みんながその避難路がどこにあるのかということをよく知っていることが何より大切です。現時点での避難路の整備状況はどうなっているのか、まず関係部長よりお答えをいただきたい。
 私が感じるには、地震・津波対策の緊急度がますます高まっている割には、避難路の整備は余り進んでいるようには思えません。避難路の整備のおくれが、即、県民の命に直結します。最優先されるべき緊急性の極めて高い事業だと思いますが、今後の取り組みをあわせてお答え願いたい。
 飯沼さんは、また、こうも言っていました。「津波に流されることを覚悟して助かる道を探るとすれば、ライフジャケットを着て逃げる以外に方法はない。これ以外に助かる道はない」とも。避難路で高台に逃げ延びた方々は一安心です。しかし、全員がこううまくはいかないと思います。
 ここで、ちょっとショッキングな話をします。皆さんも地震が起こったときの場面を思い浮かべていただきたい。地震が発生し、人々は座り込み、揺れがおさまるのが30秒から1分。老人や足腰の弱い人、幼児の歩行速度は、急いでも1秒で1メートルと言われています。1分で60メートル、5分で300メートルだそうであります。
 避難訓練の際、元気な若い衆は隣近所のお年寄りを助けて逃げるようにと言われています。そのために名簿の提出を求めている自治体もあります。その場合であっても、避難できるスピードは先ほど説明しましたスピードとほとんど同じだそうであります。早く逃げろ、高いところに逃げろ、助け合って逃げろということが盛んに呼びかけられていますが、津波が5分や10分で襲ってくる地域はほとんど逃げることはできない。多くの人々は津波に流されると考えておかなければならないということです。
 紀伊半島に住む我々にとって、予想される大地震と大津波は初めての経験です。各地で避難訓練が行われています。訓練は大切です。しかし、全ての人が訓練どおりにはいかないと思います。いざという場合に焦る、慌てる、パニックになる方も多いでしょう。逃げおくれて津波にさらわれる人々もたくさん予想されます。東北でも、津波にさらわれ、もがきながら沈んでいった方々が多数に上ったそうです。助けを呼びながら目の前で波の下に沈んでいく惨状、思い出すだけでも鳥肌の立つ思いがいたします。
 飯沼さんのライフジャケットの勧めは、このような悲惨な現実の背景となっています。とにかく、ひとまずライフジャケットで波に浮いて助けを待つ。考えたくもありませんが、これが津波から人の命が助かる最も現実的な対応だということを教えられました。
 ファスナーどめのライフジャケットは1個2000円程度、子供用は1000円程度で購入できるそうです。私は、この際、県が津波の被害が想定される地域の県民を対象として全員にライフジャケットを配布してはと提案するものであります。百歩譲って補助金でも結構です。購入できる金額の半額を補助すれば、いざという場合に備えて常備する方も多いと思います。全国では、この趣旨に賛同され、企業や団体からの寄附も相次いでいるとのことです。そして、各地で行われる避難訓練の際にも、このライフジャケットを着用し、実際的な訓練を提案するものであります。
 大型公共事業の事業期間と事業費、それとライフジャケットの配布、どちらが安くて早くて現実的でしょうか。十分検討の価値があると思います。
 参考までに、先ごろテレビで──たしか四国だったと思いますが──津波救命艇の紹介がありました。すばらしいと思いましたが、1艇当たりの収容人数が25名とのことでした。全県下に配備し、全ての県民の命を守るには膨大な経費が必要だと思いました。
 未曽有の災害に対し、全ての公共がこれをカバーするという発想は無理があります。自分の身は自分で守る、個人ができることをはっきりさせ、その心構えを持ってもらうよう導くことも、また立派な行政の役割だろうと思う次第であります。知事の御所見を伺いたい。
○議長(山田正彦君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 津波から避難する時間的な余裕がない地域にとっては、ライフジャケットは津波等から命を守るために有効であると、実は私、考えまして、ライフジャケットについて、ある程度整備しようじゃないかということを提案いたしました。いろいろ議論のときは──県庁の中でよく議論をしますので、その際は、津波のときの犠牲者は損傷も激しくて、ライフジャケットがあっても意味がないんじゃないかとか、あるいは財政負担も大変ですからいろいろ異論もあったんですが、溺死をするリスクは絶対に減るはずだからということで、それを押し切って、現在、政策を進めているところでございます。
 具体的には、これは津波だけじゃなくて水害のときも含めて、救助活動を行う消防団員の安全を確保するためにはライフジャケットが必要だということで、これは全県的に市町村に対して補助をするということで進めております。
 また、津波のときは、被害の予想される地域のうちに時間的余裕のないところがあります。具体的には、日高郡以南の津波浸水区域内に存在する学校と、それから社会福祉施設の方々にはやっぱりライフジャケットを常に配備して持っといてもらおうということで、県立学校などは自分でやるんですが、そのほかのところについては補助金の制度でこれを進めているところでございます。
 さらに、御指摘のように自分の力で安全な場所へ避難することができる住民にあっては、津波の到達時間等も考慮して、必要であればみずから備えていただきたいと私は思っております。ただ、個々の家庭のことは基本的には自助の問題かなあと、また、財政でどこまで見るかというようなこともありましたので、住民の家庭の配布助成までは考えておりませんのですが、御指摘もありましたので、考えなきゃいかんということは改めて思っております。
 自分の身は自分で守るという主体的な防災の取り組みの推進は非常に重要でありまして、その中で特にいい議論をいただきましたので、ライフジャケットの重要性は県民の皆さんにさらに訴えていきたいというふうに思っております。
 同時に、揺れたら逃げる意識の徹底とか津波避難訓練などを繰り返すことによりまして、県民の皆様の命を守るために迅速な避難につなげていきたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 危機管理監木村雅人君。
  〔木村雅人君、登壇〕
○危機管理監(木村雅人君) 津波から命を守るための避難路の整備及び避難場所の確保は、最重要施策と位置づけ、懸命に取り組んでおります。
 避難路の整備については、東日本大震災以前はそれほど進んではおりませんでしたが、平成23年度以降、わかやま防災力パワーアップ補助金を大幅に拡充し、整備を行う市町村を強力に支援しております。それにより急ピッチで整備が進んだ結果、整備した避難路の数は平成23年度から今年度までで400カ所を超える見込みとなっており、引き続き、最優先の施策として市町村とともに全力で取り組んでまいります。
 また、先日成立しました南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法で新たな補助制度がつくられましたので、これもあわせて活用し、避難路等の整備を強力に進めてまいります。
○議長(山田正彦君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 次に、地震・津波発生時の避難路の整備とライフジャケットの配備についてであります。
 私が申し上げたかった趣旨は、災害がいつ起こるかもしれない。いつ起こるかもしれない災害に対し、県行政として何が必要か、何をしておかなければならないのかということです。避難路の整備の重要性は今さら申し上げるまでもなく、国も県も重点的な整備を急いでるとのこと、よく理解できますし、それはそれとしてしっかりやってほしいと要望いたします。
 フィリピン・タクロバンでの高潮による大災害の記憶はまだ生々しいものでありますが、はるかに大きな津波の被害が予想される南海トラフ大地震が発生したら、我々のふるさと和歌山はどうなるのでしょうか。海岸沿いに点在する県民の生命、暮らしはどうなるのでしょう。考えただけでも身の毛もよだつ思いがありますが、せめて命だけでも助かるようにと願わずにはいられません。
 私は、今回、現に東北で地震・津波の大災害に遭遇し、その貴重な体験を全国に訴え続けている飯沼さんという被災者の説明を聞いて、県民の命を守る最も簡単で予算的にも比較的負担の少ないライフジャケットの整備、配布について、これは一考に値すると考え提案しましたが、知事からは、全員への配布は考えてないとの答弁でした。
 そこで、重ねて知事に伺います。
 知事は何を根拠に県民に対するライフジャケットの配布はできないと言っておられるのか、いま一度お答え願いたい。
 私は、今ここに2通りのライフジャケットを持っています。1つは、現在、県が配布しているライフジャケットです。そしてもう1つが、国交省が認可し小型船舶などに備えつけられている、我々がふだん目にするライフジャケットです。この2つを比較してみますと、まず最初に、この2つのうちどちらが速く体につけることができるかという点です。私が、今、この2つを装着してみます。皆さんもよく見ててください。
 これが、国交省が認定してる、小型船舶の船に常に着用されてるライフジャケットです。(現物を示す)地震が起こった。これを着るとすれば、すぐにこれをとって、走りながらすぐにこれを着れるんですよ。そして、もうここでこれを上げただけでいけるということなんです。
 それと、県が今配られているライフジャケットはこれなんですよ。(現物を示す)それで私、これ、県の担当が「先生、これ座布団になるんですよ」て言わはるんですよ。「おまえ、座布団て何な」という話をして、皆さん、命を守ってくれるこのライフジャケットを常に座布団、お尻の下にひいておく。私は古い考えの人間かもしらんねんけども、これを聞いてからちょっと何なということを考えた。
 それで、私、また1回、県がしてるライフジャケットてどんなもんかなあと思ってちょっと取り寄せたんです、学校で。
○議長(山田正彦君) 坂本議員、そのマイクの前で言ったほうが。
○坂本 登君 はい。まあまあ、そしたらもうこれを着用してみますわ。
 これをとる、そしてこれ(「あけ口もわからへんよってにな」と呼ぶ者あり)そうよ、これ、あける口もわからんねん。それで、こうなるんよ。それで、ぱっとこうとる。それで──ちょっと手伝うて。これ1人で着れんのよ。(「そらあかんわ」と呼ぶ者あり)そうそう。こうして、それでこうかぶるのよ。そして、ここをこうする。1人でできん。ここをこうくくんねん。それで、これからこう走る。そしたら、これがこう引っ張るさかい股痛いんや。ここでこんなんしたら、これが邪魔になるんよ。こんなん、ここへしたらこんなんあんのよ。これが邪魔になる。ここ、走るときこうなんのよ。
 いや、ほんまに知事さん、あれ1回着てみてください。僕、3回練習して今の状態です。それで、あれは1人でなかなかできんから、誰かちょっと手伝うたらんとできんのよ。そんなん物すごく──今の僕が持ってた小型船舶のやつだったら、もう30秒かからんと、ずっと逃げもって着ながらできる。しかし、今のは手伝うてもらいながら時間がかかるさかいにちょっとあれと。
 そして、命を助けてもらう一番大事なものをお尻の下へひいていつも踏んどくというのもいかがなもんかなあと。私、先ほども言うたけども、ちょっと考えが古いんかもわからんねけども、ひとつそういうことなんです。
 県の方のライフジャケットは約2分かかります。一方、簡単なライフジャケットのほうは10秒もかかりません。走りながらファスナーを引き上げるだけで装着できます。
 地震発生から本県海岸に到着する津波の時間は、最短で4分とも言われています。突然地震が発生し、大津波が押し寄せてくるという中で、4分や5分という時間は住民にとっては本当にあっと言う間の時間であります。避難行動からすればほとんど一瞬の時間であります。高齢者にとって避難時間は1分でも1秒でも欲しいところであり、加えて、若い方々には、高齢者や身体の不自由な方々を連れて逃げるようにと言われ、共助の大切さを奨励しているところであり、そうなれば余計、避難時間が制約されます。そのときの1分、2分はどれだけ貴重な時間か、あるいは生死を分ける1分、2分になるかもしれません。県民の立場に立った現実的で温かい発想、施策を強く求めるものであります。
 もう1点は価格であります。県のほうのライフジャケットは4500円から5000円程度だそうです。簡単な普及型のライフジャケットは、飯沼さんによれば1950円か、もしくは大量発注の場合はもっと安くなるということです。ざっと3分の1程度の値段です。同じ予算額であれば、3倍のライフジャケットを県民に配布することができます。
 備えは、早過ぎることはありません。やり過ぎることもありません。大型公共事業による本格的な津波対策はもちろん必要ですし、その実施に何ら異議を唱えるものではありませんが、その一方で、今やることに迅速果敢に手を打っていくことも同じように重要な施策であると考えます。ライフジャケット1つとってみても、価格が3倍もする使い勝手の余りいいとは言えないライフジャケットを何年にもわたって配備するよりも、今、きょう起こるかもしれない地震・津波に現実的に備えることの大切さを強調したいと思います。
 できないという知事の答弁について、その根拠を説明願いたい。どの程度の対象人数、どの程度の予算措置を想定されているのか、現在のライフジャケットを選定した経過もあわせて答弁願いたい。
○議長(山田正彦君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、現在、配布助成までは考えていないんですがというふうに申し上げましたが、坂本議員からそういう追加質問があるのではないかというふうにちょっと思いまして、先ほど実は理由も申し上げました。個々のやっぱり家庭のことというのは、基本的には自助の問題じゃないかなというふうに思いました。
 それから、かなり大きな地域の住民の数がありますので、それを県費でどこまでやるんですかなあというようなことについていろいろ考えた結果、そのときはネガティブでありました。現在、そういうことでやっておりませんが、先ほども言いましたように、御指摘もありましたので、これは県議会で御指摘があったことを考えもしないというのはいけませんので、また改めて考えてみたいと思います。
 と同時に、その中で、きょうはいい議論でありまして、私も実はライフジャケット派なもんですから、ぜひ、少なくとも家庭の皆さんにもこれはいいことだということを議員の御指摘も踏まえて大いに言わなきゃいかんなと。最低それだけはやらなきゃいけないというふうには思っております。
 同時に、いろいろなライフジャケットがあります。私も坂本議員に劣らずぐらいちょっと古いタイプの人間でございますので、お尻で踏みつけるというのはちょっとどうかなという感じは正直言っていたします。
 だけど、あの型のライフジャケットのええところは、実は収納スペースが要らないということなんですね。例えば学校のケースを考えますと、学校の教室の中にライフジャケットを近くに収納しておかないといけません。あるいは壁にかけとくか、そういうことだと思います。それがお尻の下にあったら、自分のものはわかってますから、ぱっとつけられるといういいところもあるかなあということでございます。
 ただ、県が配布というふうにおっしゃいましたけれども、入札をして、それで県立学校なんかでそれを入れてるとこが多いと思いますけれども、必ずしもこのライフジャケットを県としては必ずやりなさいと言ったわけではございません。特に、助成をして入れていただいてるところなんかは、それぞれの助成主体がどういうものがいいか、例えばあの型のものは面倒だとか、それから収納スペースはちゃんとあるからいいんだとか、それからこのつけ方のほうが楽だとかいろいろ考えられて、値段も含めてそれぞれが御判断されたと思います。
 ただ、きょうこういう御質問があるよといって聞きまして、先ほど知事室で実験をいたしました。まず、お尻の下のものは椅子の上に置いて、用意ドンでやったら1分ぐらいでできました。
 それで、もう1つのほうは県庁の知事室の戸棚の中に、下のほうに戸棚がありますから、そこの中に入れておいて、用意ドンと言ったらぱっととりに行って、それでつけました。やっぱり1分ぐらいかかりました。ただ、そのときは坂本議員が今お見せになったカチャッとやるやつじゃなくて、ひも型でございました。だからもうちょっとかかったんじゃないかというふうに思います。
 いずれにしても、それぞれいいところ、悪いところ、値段の問題もそれぞれありますので、私どもとしてこれがいいというふうに決めつけるのはおかしいんで、それぞれのところで御判断いただいたらいいんじゃないかなというふうに考えております。
○議長(山田正彦君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事の説明を聞きました。もとより県も予算措置を伴うことであり、総合的、計画的な観点から取り組まなければならないことも理解しております。
 私も、さきの視察の際にも教えてもらったことや資料を見ての質問でした。今後は、知事の答弁もよく検討しながら、私も私なりにもう一度この問題を深く考えてみたいと思います。
 今回はこれで終わります。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終了いたします。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時35分休憩
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