平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)


平成25年12月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(全文)


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平成25年12月
和歌山県議会定例会会議録
第2号
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議事日程 第2号
 平成25年12月10日(火曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第136号から議案第162号まで(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第136号から議案第162号まで(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(40人)
 1番 立谷誠一
 2番 濱口太史
 3番 尾崎太郎
 4番 藤山将材
 5番 新島 雄
 6番 山下直也
 7番 門 三佐博
 8番 井出益弘
 9番 鈴木太雄
 10番 岩田弘彦
 11番 服部 一
 12番 山本茂博
 13番 山田正彦
 14番 坂本 登
 15番 宇治田栄蔵
 16番 尾崎要二
 17番 平木哲朗
 18番 岸本 健
 19番 前芝雅嗣
 20番 浅井修一郎
 21番 中村裕一
 22番 冨安民浩
 23番 森 礼子
 24番 中 拓哉
 25番 花田健吉
 26番 角田秀樹
 27番 吉井和視
 28番 向井嘉久藏
 29番 谷口和樹
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 大沢広太郎
 35番 谷 洋一
 37番 高田由一
 38番 奥村規子
 40番 松坂英樹
 41番 長坂隆司
 42番 雑賀光夫
欠席議員(なし)
〔備考〕
 36番 欠員
 39番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       和歌哲也
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      木村雅人
 総務部長       市川靖之
 企画部長       野田寛芳
 環境生活部長     塩崎 望
 福祉保健部長     中川伸児
 商工観光労働部長   藤本陽司
 農林水産部長     増谷行紀
 県土整備部長     石原康弘
 会計管理者      植山 均
 教育委員会委員長   山本 哲
 教育長        西下博通
 公安委員会委員長   片山博臣
 警察本部長      植田秀人
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     保田栄一
 選挙管理委員会委員長 上山義彦
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       宮端 宏
 次長         上坊 晃
 議事課長       堀 達也
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼議事班長
            中井 寛
 議事課主任      中尾祐一
 議事課主査      保田良春
 議事課主査      岸裏真延
 総務課長       谷 巌
 政策調査課長     谷村守彦
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  午前10時0分開議
○議長(山田正彦君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第137号から議案第139号まで、議案第146号、議案第147号及び議案第151号は、いずれも職員に関する条例議案でありますので、地方公務員法第5条第2項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。また、監査委員から現金出納検査実施結果の報告がありました。いずれもお手元に配付しておりますので、御了承願います。
 日程第1、議案第136号から議案第162号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 11番服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕(拍手)
○服部 一君 おはようございます。
 12月定例議会の一般質問のトップバッターをやらしていただきます。
 大変日がたつのが早いもので、ことしもあとわずかとなってまいりました。人間、日がたつのを早く感じるというのは充実した日々を送ってる証拠だと言われますけども、本当でしょうかね。
 今12月定例議会も、開会前に議場演奏会が企画されまして、すばらしい演奏のもとに開会されました。恐らく、この県議会史上、記念に、そして歴史の1ページになることと思います。活気ある充実した議会になるよう期待する1人でございます。
 通告しております件について質問をしますけども、開会冒頭、知事が提案説明の中でも触れられました、26年度の予算編成についての新政策について、まずお聞きしたいと思います。
 政府は、長引くデフレからの早期脱却と経済再生に向け、3本の矢から成る経済政策であるアベノミクスを強力に推進してきております。内閣府が11月に公表した月例経済報告では、実質成長率で4四半期連続プラスとなり、景気は緩やかに回復しつつあるとされ、政策の効果が着実にあらわれてきております。
 しかしながら、地域経済に目を転じますと、多くの経済指標で改善傾向となっているものの、景気回復が十分に実感されるまでには至っていないのではないでしょうか。また、南海トラフの巨大地震や台風被害への対応など、災害対策は依然として重要であり、さらに、少子高齢化や過疎化の問題など、県が抱える課題はさまざまなものがあります。
 さて、このような状況の中、県では来年度の予算編成に向けた新政策と予算編成方針を発表されましたが、来年度はどのような政策に重点に取り組むつもりなのか、現時点での知事の考えをお伺いします。
○議長(山田正彦君) ただいまの服部一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 来年度当初予算編成につきましては、「元気な和歌山」の実現に向けて、「安全と安心の政策」、「未来への投資の政策」の2つを柱に政策体系を構築していくつもりで、今、考えてるところでございます。
 1つ目の柱である県民の皆様が安心して暮らせる社会を構築するための「安全と安心の政策」では、南海トラフ巨大地震等への備えとして、宿泊施設や病院などの大規模建築物の耐震診断や耐震改修を支援するとともに、住宅の耐震改修についても支援対象を非木造住宅に拡大するなど、県民の生命と財産を守るための施策に取り組みます。
 また、「健康長寿日本一わかやま」を目指し、がん検診を本格的に推進していくとともに、県民の健康づくりを草の根的に進めるための健康推進員制度を創設して頑張っていきたいと思っております。
 加えて、元気な高齢者の方々が地域の問題解決の担い手として活躍していただけるような仕組みづくりに取り組むとともに、中長期的な高齢者人口の推移等を踏まえ、健康状態や所得など、それぞれの状況に応じた施策を用意し、和歌山に住んでいれば老後は安心だという見通しが立てられるようにしていきたいものだというふうに考えております。
 2つ目の柱であるさらなる成長への道筋をつけるための「未来への投資の政策」では、施設園芸などの野菜、花卉の産地拡大に取り組むとともに、和歌山に適した農地流動化の仕組みを構築するなど、地域産業の強化に努めたいと思っております。
 また、国体開催を控え、タクシーや旅館などの接客や接遇能力の向上や、和歌山おもてなしトイレ大作戦の取り組みを加速していくなど、観光力の強化に努めます。
 さらに、都市計画について、これは市町村の権限のところが多いものでございますが、県も積極的に参加して見直しを図っていくことや、広域的な周遊観光の振興を図るため、紀の川サイクリングロードなどの整備を進めることなど、魅力的な地域づくりに取り組んでいきたいと思います。
 加えて、紀淡海峡ルートやフリーゲージトレインの早期実現に向けた機運醸成に取り組むとともに、優秀な退職教員が若手教員を指導することにより教育実践力を向上させる、学力の向上を図る、そういう取り組みを行うなど、将来の和歌山を支える社会基盤や人材の育成についても力を注いでいきたいと思います。
 このほか、開催まで残り2年を切った紀の国わかやま国体・紀の国わかやま大会について、全県を挙げて機運を高めるとともに、競技力を強化し、男女総合優勝を目指して頑張っていきたいと思います。
 現在、施策の具体化に向けた検討を進めているところでありまして、また、税収等々の見通しを立てながら予算づけをしていく事務作業も進んでおります。議会を初め県民の皆様からいただいた御意見を踏まえながら、来年の予算を編成してまいる所存でございます。
○議長(山田正彦君) 服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕
○服部 一君 新政策について伺いました。
 知事は、安全と安心、未来への投資の2つを政策の柱に据え、現在、新政策を含む来年度予算の編成中とのことですが、これらの政策がどんな姿で2月議会に予算案として提案されてくるかが楽しみでございます。私としては、これまで議会で取り上げてきた農業振興対策、鳥獣害対策、危険ため池対策、それに過疎対策などの取り組みが加速することを期待しています。
 しかしながら、一方で、本県の財政構造は地方交付税に多くの財源を依存しており、財源確保は非常に重要であります。知事は、県と県民を元気にしようとさまざまな新政策を打ち出し、これまでも実施されてきておりますが、財政運営には苦労されているのではないでしょうか。先ほどからの説明のあった来年度に向けた新政策はどんどんと進めていただいて、和歌山を元気にしてもらいたいのですが、そのために本県の財政の健全性が損なわれることがあっては、元も子もありません。
 そこで、新政策を推進しつつ、県財政の健全性を確保するため、新年度予算においてどのように財政運営をされようとしているか、お聞きいたします。
○議長(山田正彦君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 財政運営についてでございますが、議員御指摘のように、財政の健全性を損なわないようにしながら、先ほど申し上げました新政策を着実に進めなきゃいかんということでございます。
 このため、県では、私が就任してから1年かけてつくりました新行財政改革推進プランというのがございますが、それを24年度に改定いたしまして、現在、そのラインに沿って財政運営をしていこうということでございます。このラインに沿ってる限り、24年から始めまして28年度までなんですけれども、財政の健全性は失われないということになっております。
 そこで、来年度の予算編成についてでございますけれども、既存事業についてはマイナス5%のシーリングを実施しております。これでもってまず抑えて、それで原案を持ってこいというふうに思ってるわけです。来年4月から消費税が8%になることを考えると、昨年度を上回るこれはシーリングになりますけれども、これを機会に、各事業の効果とか緊急性等を各部局も含めて精査をいたしまして、既存事業の見直しや不要不急の事業の選別を徹底的に行ってまいりたいと考えております。
 また、これまで推し進めてきた持続可能な財政構造への転換に向けた取り組みを後退させずに、国の交付金の活用や県税の徴収確保対策の強化など、さまざまな財源の確保策を講じることはもちろん、新たな行政需要に効率的に対応できる組織体制を構築することによりまして、さっき申し上げました新行財政改革推進プランを堅持していきたいと思っております。
 一方、地方交付税については、本県の財政運営に大きな影響を与えております。したがって、これは地方税財源の充実確保とあわせて地方交付税総額の確保──県に入るものは全体の関数ですから──それを国に対して強く働きかけてまいりたいと思います。
 さらに、実は、経済対策などがありまして補正予算ができたときに、場合によっては大変有利な財政運営ができる、あるいはやりたいことがそれを機に要するに財政負担が少ない形でできるということもたくさんあるケースでございます。今回も、国の5.5兆円の経済対策や新年度予算の編成動向等も含めまして、有利な財源を有効に活用した予算編成のために機動的に動いていきたいと思っております。
 このように、来年度の予算編成においても新政策を着実に実行しつつも、御指摘のように、財政構造の健全性を確保しながら財政運営を行ってまいりたいと思っております。
○議長(山田正彦君) 服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕
○服部 一君 予算の提案を楽しみにしております。
 次に、人口問題に関してお聞きしたいと思います。
 資料によりますと、明治9年には和歌山県の人口が全国15位内に入ってたと、こう言われております。その後、時代の流れやら環境の変化によって、平成22年には東京を入れて22の政令都市が大きく発展していると、こういうことであります。1つにはインフラ整備、つまり新幹線の整備であります。整備された都市は発展し、整備されてない都市は低迷をしてるように思います。
 私は、人口がどんどんふえることが活性化にもつながり発展されると思いますが、和歌山県も100万人を切ってきました。将来、97万人を維持・堅持しようという計画で、我々ともに取り組むわけなんですけども、なかなかこの現状からして、人口増というのは大変、私、難しいと思うんです。和歌山県のように農山村の多い過疎化に向いてる地域において底上げをして元気にしていくことが、和歌山県の将来の人口増にもつながっていき、減少を食いとめると、こういう1つの手だてだと思います。
 後ほど知事に通告の件についてお聞きしたいと思うんですが、まず、それに関連して1つお話をしてみたいと思います。
 過日、11月の14日に、門国会議員と門県議のお世話で、太平洋国土軸構想と日韓トンネルの話を聞いてみませんかということで皆さんに働きかけがございました。当日は本県で近畿議員フォーラムが開催されておりまして出席者が少なかったんですけども、東京から早野勝さんという、これは一般財団法人国際ハイウェイ財団の次長をされているようでして、24年間、日韓トンネルの関係について広報担当され、資料も配られる中でビデオも拝見をしました。
 日韓トンネルの構想については、知事さんも情報が早いし勉強されてると思うんですけども、皆さんはあんまり知らないんじゃないかと、このように私、思います。話は大きけりゃ大きいほどおもしろいということもありまして、私、興味本位で出席をしたんですけども、大変有意義な、将来なるほどなというような話を聞かしていただきました。
 簡単に、いただいた資料によって話をしてみたいと思いますけども、これは長崎の壱岐と対馬列島を通って釜山への海底トンネルのルートだそうです。長さは235キロで、10兆円あったら10年間で完成するだろうと、このようにお話がございました。その資金はそしたらどうすんのよということを尋ねますと、「今、韓国と余り仲がええことないんで、七三か四分六で話がついたらなあ」と、こういうことでございました。
 フランスのナポレオンがイギリスとフランスの間のドーバー海峡にトンネルをつくろうということで提案をして、当時は笑われたそうでありますけども、ナポレオンの死後、見事完成をしまして、採算もとれてるし大変もう発展につながってると、こういうことであります。
 それからしますと、この11月の28日に東京で関空・紀淡・四国高速交通インフラ構想のシンポジウムがありまして、仁坂知事はこの1府9県の協議会長を務められたと、こういうことで、さきに聞いた話と関連性があるなということで私も話を聞かしていただきました。
 こういう両氏の話を総合して、将来これを本当に皆で力を合わして取り組んでいくということになりますと、早野氏いわく、東京一極集中から和歌山を中心とした関西2局集中の将来展望が開けてくると、こういうことで、私は、この構想を実現に向けていくならば、恐らく和歌山県の発展というのは間違いないだろうと、このように思います。しかし、いつまでかかるのかわかりませんけども、そのころに私はもういないと、こう思います。上の天の川のそばから皆さんの幸せを願うことだろうと、このように思うわけなんです。
 そこで、知事さんも大変リーダーシップをとって、今後、この件について意欲を燃やしてくれて推進をしていただけると思うし、我々もともに活動していかなあかんと、このように思っております。
 この間のシンポジウムを含めて、関空・紀淡・四国高速交通インフラ構想の推進についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
○議長(山田正彦君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私は、かねがね、議員御指摘の趣旨にも通じると思いますけれども、インフラ、特に広域インフラについては、これは命の道とよく言われるんですけど、もう1つはチャンスの道だとずっと主張しております。それで、インフラがうまくいってないところはやっぱり経済活動その他の条件もあんまりよろしくないので、だんだんとチャンスが失われて、残念ながら総体的にはちょっと衰退していくという状況にあると思います。したがって、そのためにはチャンスをふやさなきゃいけないので、インフラについては熱心に推進しなきゃいかんと、こういうことだと思います。
 御指摘の関空・紀淡・四国高速交通インフラというのは、実は3つの案件が、関空の話、紀淡の話、そして四国高速交通インフラの話がそれぞれ独立でありました。
 四国高速というのは四国新幹線の話なんですが、これは基本計画までできておるんですけれども、淡路島からどこを通るかが決まっていない状態で、まだ整備計画まで至っておりません。
 それから、関空の高速鉄道については、新大阪から大阪の都心を通って関空までということなんですが、リニアにするかとか、あるいはそうでなくてもいいかとか、いずれにしても、実は当時の橋下大阪府知事等が提唱されていますけれども、まだ政府のほうで基本計画とかそういうことには全然なってないわけであります。
 また、同時に、関西外環、それから大阪湾環状道路、そういう構想もあるんですが、いずれもこれが紀淡海峡のところでぷっつり切れておりまして、これがつながって、全部今申し上げましたようなのが実は1つのプロジェクトとして構成されれば、これは関西にとって、あるいは日本にとって大変大きな問題になるんじゃないか。なぜならば、西日本は全部山陽線沿いにインフラが通っていて、ここにもしものことがあったら西日本と東日本が全体としてつながらなくなってしまう、こういうこともありますので、これが第二国土軸の大きな思想じゃないかと思います。
 そういう第二国土軸も実現できることになるので、これは合従連衡を図ってみんなで力を合わせてやろうじゃないかと、そういうようなつもりで各県を説きました。
 その結果、本年9月に関係10府県で関空・紀淡・四国高速交通インフラ協議会ができまして、これ、ちょっと景気づけもせないかんということで、みんなにわかっていただくために東京において設立記念シンポジウムを開催したわけで、県議会からも服部議員初め多くの皆様に御参加いただきまして、本当にお礼を申し上げたいと思います。
 このシンポジウムにおきましては、紀淡海峡ルートを初めとする高速交通インフラの整備が西日本地域の発展に必要であって、それがひいては日本全体の国土強靱化や成長戦略につながるということについて、熱い議論が交わされたところであります。
 私からは、過去30年間、この地域の人口や域内総生産の全国シェアが随分低下してるんだと。この要因としては、先ほどのチャンスの道としての高速交通インフラ整備のおくれによって工場立地も進展せず、地域の発展のチャンスが失われた。都市の人口の全国の推移を見ても、この130年間に高速交通網が整備されたところとそうでないところに大きな差が生まれていると。本県を含むこの地域にとってはこれらの高速交通インフラがぜひ必要だということを申し上げるとともに、それは、1つの国土軸に何でも収れんすると、そこで何か異変が起こったときに日本が麻痺してしまうんだから、それを防ぐ国土強靱化の観点からも、日本にとってこの構想が実現されることが必要だというようなことを主張したところでございます。
 実は、本件のプロジェクトはまだ形ができていないものもあります、関空のようにですね。それから、形ができてもどうも休眠状態になっているようなものもあります。したがってなかなか大変だ。それから、国土建設とか公共事業への風当たりも、例えば四全総のときなんかに比べると随分きつくなってると思います。ですから、困難は大いに予想されるんでございますけれども、今申し上げました趣旨は絶対に正しいことだと思いますので、和歌山のためにも、関西のためにも、あるいは日本のためにも、ぜひ推進してまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕
○服部 一君 知事のいろんなお話を聞かしていただきまして、夢が開けてくると思います。できるだけ私も長生きをしてみたいと、このように思っております。
 知事さんは健康で元気で、まめに熱心に県行政に携わってくれてるということについて、私、感謝する1人でございます。この推進協議会の会長、リーダーとして、かなりの間「わしゃ元気な間やるよ」と言うて人に譲らんようにして、ひとつ和歌山のために頑張っていただきたいと、我々も一生懸命ついてまいりたいと思います。
 次に、人口問題の過疎対策についてお聞きしたいと思います。
 過疎対策室が設置されて以来、先ほど言いました過疎地域の活性化に向けて担当課も大変努力をされて、実績が上がってきております。
 この間、「朝日新聞」をちょっと読んでおりますと、「起業、空き家改修、県からの補助金」という記事が小さいけども載っておりました。私、勉強不足だったんですけども、田舎暮らし応援県わかやまのホームページを2007年に開設されてるそうです。その後、10年間で1000世帯の受け入れを目指して遠くからの移住者向けのセミナーを開いてると、こういうことが載っております。移住者の起業補助金、これについても上限100万円、住みついた空き家の改修費の補助、上限40万円と、こういうことだそうです。この現在の状況、そして移住者の起業というのはどういう形で現在あるのかということをひとつお聞きしたい。
 そういう形の中で、過疎対策に向けていろんな課題もあろうと思うんですけども、なかなか過疎が進んでいながら自分たちの地域の課題というのがはっきりわかってない、わかっててもなかなかリーダーシップをとる者が出てこないと、実際、こういう状況であると思うんです。
 そこで、県としてもいろいろと指導しながら過疎地域を活性化に向けることが、一番の底上げをしていく要素であると思います。過疎対策の現状について御答弁いただきたいと思います。
○議長(山田正彦君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 過疎対策の取り組み状況についてでございますが、過疎対策につきましては、集落の再生、活性化や移住者の受け入れ施策が重要であると考えております。
 まず、過疎集落の再生、活性化を目的とした過疎集落支援総合対策事業につきましては、本県が全国に先駆けて事業を開始したもので、現在、10市町、それから12生活圏において取り組みが進んでおります。
 主な内容といたしましては、田辺市中山路生活圏では、大学生を受け入れ、地域住民とともに耕作放棄地を整備するなど、農作業を通した交流の取り組みを始めたところでございます。また、かつらぎ町四郷生活圏では、四郷千両太鼓を活用して地域内外との交流を図り、伝統文化として継承する取り組みを進めてございます。
 さらに、この事業をモデルとして国が全国展開しようと新たに創設した過疎集落等自立再生対策事業においても、本県の事業が優先的に採択され、現在、6町村6生活圏で取り組みが実施されております。
 次に、移住者の受け入れにつきましては、移住希望者を対象に都市部でのセミナーの開催やホームページなど多様な媒体を活用した情報発信などを行っておりまして、平成24年度の移住者数は90世帯156人となっております。
 なお、移住者にとって大きな課題である住まいと仕事の確保につきましては、空き家改修費用の一部を補助する空き家活用事業と、それから新たに事業を手がける移住者を支援する移住者起業補助金、この両方で支援を行っておりますが、いずれの制度も他の都道府県に先駆けて実施しているものでございます。起業支援制度の活用につきましては、例えば紀州材を使った木工製品の製造販売でありますとか、それから県内観光地の映像を制作するなど、現在までに10人の方が活用されておられます。
 過疎対策は本県にとって大変重要な課題でありますので、今後も積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(山田正彦君) 服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕
○服部 一君 補助事業の基準にのっとって取り組んでいくというのが、やりかけても、アイデアも出てまいりますけども、なかなか進めにくいもんだと思うんです。ひとつ、取り組んでいる地域については、知事さん、ちょっとはたへ行ったら寄ってあげたら元気が出ると思います。そういうことで、今後、なお一層の取り組みを期待するところです。
 次に、人口問題についてのわかやま結婚支援事業の進捗状況についてお聞きしたいと思います。
 新しい政策で900万の予算でスタートして、今、執行中であります。私、この政策が提案された時点で、恐らくこれはうまく当たるだろうなと思ったんです。若者に希望を与えるとともに、大変活気が出てくる事業であります。主体は市町村なり、あるいは各種団体の協力を得て婚活イベントを開催すると、こういうことで、県としても、それなりにイベントを興す地域については支援を送ってると、こういうことであります。
 案内のパンフレットなりを見ますと大変な盛況というか、かなり実績が上がってるように思うんです。そこで、現状はどうなってるかということとともに、これ、うまくいきそうであるので、予算編成でちょっとまだゆとりがあったら、これ、もうちょっと積み上げしたったらもっと元気が出てくんの違うかなと、こういう気がするんです。県が直接手を下すんじゃなくて、市町村あるいはそれぞれの団体、企業あたりが力をかしてくれると、こういうことでありますので、そういった方法についても今後取り組まれたらと、このように思います。現在の進捗状況についてお聞かせいただきたいと思います。
○議長(山田正彦君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 本県の少子化の状況は年々進行し、中でも未婚化、晩婚化がその大きな要因となっております。こうした少子化の流れを変えるため、今年度より本格的にわかやま結婚支援事業に取り組み、全県的な結婚サポート体制を推進しております。
 事業の内容は、結婚を希望する独身男女に出会いの機会を提供する婚活イベントを県内各地で今年度中に24回開催することとしております。
 なお、婚活イベントには事前に県への会員登録が必要ですが、現在、会員は1000人を超え、大きな反響をいただいているところです。
 次に、イベントの成果ですが、これまで16回開催し、カップル成立数は76組、成立率は約30%に上っており、結婚に結びつくことを期待しております。
 また、市町村や団体、企業や店舗などに登録いただくわかやま婚活応援隊制度を新設し、県内一円で結婚支援の機運醸成を図っているところです。現在、57団体に登録いただき、出会いを応援するサービスの提供や自主企画の出会いイベントを今年度中に約30回開催いただく予定です。
 今後とも、より多くの方々の協力をいただきながら、出会いから結婚、出産、子育てまでの総合的な支援を行い、少子化対策の充実を図ってまいります。
○議長(山田正彦君) 服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕
○服部 一君 結構でございます。一層のお力添え、よろしくお願いします。
 最後に、和歌山県立博物館施設の機能強化についてお聞きしたいと思います。その中でも、特に紀伊風土記の丘の拡大整備についてお聞きしたいと思います。知事さんは文化や史跡等については大変詳しいようでありますけども、この件については教育長から御答弁いただきたいと思います。
 特に、紀伊風土記の丘については、6月に多田議員が大変勉強して詳しい内容の質問をされまして、それに対して、前向きに取り組むという答弁をされております。
 10月の22日に仁坂知事の定例の記者会見がありまして、和歌山県立博物館施設の機能強化について発表がありました。これは、現在の博物館の機能を一段と強化して、県民を初め多くの人々にもっともっと訪れてもらって、学び楽しむことのできる教育文化の拠点になるようにということの思いであると私は思います。
 御存じのように、本県には博物館が4つあるわけなんですね。近代美術館、博物館、自然博物館、そして県立紀伊風土記の丘であります。この4博物館の年間の予算は、維持管理、運営を入れて計算したら3億余りだと思うんです。維持管理はもとより、問題はこの運営なんです。
 私も、こういったことについては勉強不足で余り訪れないわけなんですけども、それぞれ特別展や企画展を毎年数回ずつ行ってるようであります。しかし、興味があったり勉強する人は訪れるわけなんですけども、関心のない者は余り行きにくいということで、なかなか難しいように思います。恐らく、番外の中でもこの4博物館、全部行った人は少ないと思うんです。
 今後、これを充実していくということでありますけども、特に私、今、資料を──前回、多田議員のときも資料を配付されておりましたけども──配付しておりますけども、これは見た写真より割合ふできやなということで、埴輪はしっかり写ってるんですけども、紀伊風土記の丘の規模拡大と整備について、ひとつ今後どうするかと、こういうことをお聞きしたいと思います。
 写真にもあるように、大きなクスノキが昨年の夏、突如としてあらわれてきたと。流れてきたのか、埋もれてたのが表に出ていったんかということで、大変不思議なことや謎も多いということで、大変注目の高い遺物であります。
 私も、過疎対策の一環にならんかなということで建設省へもらいに行ったんです。ところが、はたへ行きますとかなり大きいし、当時そういった何も計画がなかったように思います。しかし、これを紀伊風土記の丘に持ってきて展示しようという発想をした者は偉いなという気がするんです。あれ、業者が欲しいと思って値をつけたら、恐らく億という値段がつくと思うんです。
 あの根元のシデというこぶこぶというのは、イチョウの木の乳根のように何百年もたたなんだらああいうのはなかなかできないもんだと思うんです。そうしたことから、大変値打ちのあるものを紀伊風土記の丘の──現在、この写真にあるように──入り口に今後展示していこうと、こういうことだと思うんです。2000万余り入れて4つに切ってあそこへ持ってきたということなんですけども、今後、この博物館の中で規模拡大して整備ができたら、恐らく4博物館の──小学校の高学年程度の歴史を学び出した中で──博物館周遊コースになる1つの社会見学の場として教育委員会としてぜひこれを推進していくべきだと、私、このように思います。
 地元の関係者が多くの署名を集めて請願を出してきました。議会でその採択をしてあります。規模拡大するについては私有地が多いということを聞いておりますけども、なかなかこれを公有地にするということを考えますと地元の協力と大変な資金がかかってくるだろうと、要ってくるだろうと、このように思います。
 そういった状況の中で、この拡大と施設の活性化に向けてひとつ──恐らく熱心に取り組むだろうと思うんですけども──どういった形で今後展開していくのか、教育長からお聞かせください。
○議長(山田正彦君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘の紀の川のクスノキの件についてでございますが、紀の川から引き揚げられた古墳時代に生育していたと思われるクスノキの巨木は、紀伊風土記の丘に既に運搬済みで、現在、設置場所の基礎工事に着手しており、この後、現地での巨木の組み立て、防腐処理、上屋工事等を行い、今年度中に一般公開する予定です。
 また、紀伊風土記の丘では、これまでの発掘調査の成果を活用して、来年度には県内最大級の前方後円墳である大日山35号墳の上に復元した家型埴輪や動物埴輪の模型などを設置し、当時の姿を今に再現したいと考えているところでございます。
 今後も、クスノキの巨木を初め県内の出土遺物の収集と展示を行っていくとともに、天王塚古墳など周辺の重要な古墳の保存を図るために、追加指定による特別史跡の範囲拡大を行い、史跡公園である紀伊風土記の丘の一層の魅力向上や活性化に積極的に取り組み、広く県民の皆様に親しまれる施設になるよう努めてまいります。
○議長(山田正彦君) 服部 一君。
  〔服部 一君、登壇〕
○服部 一君 的確な答弁をいただきました。私の一般質問を終わります。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、服部一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 14番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。
 皆さんは、世界農業遺産という言葉は御存じでしょうか。世界遺産という言葉は、本県でも高野・熊野世界遺産や、最近では富士山の世界遺産登録などがあって、皆さんよく御承知のとおり、地域おこしの重要なキーワードになっております。きょうは、この世界遺産と違って世界農業遺産、すなわち世界遺産の「世界」と「遺産」の間に「農業」という言葉が挟まれている世界農業遺産について質問をいたします。
 この制度は、2002年(平成14年)にイタリア・ローマに本部を置く国際連合食糧農業機関、通称FAOにより始まった制度であります。目的は、重要な伝統的農業、生物の多様性、伝統知識、農村文化、農業景観などを全体として認定し、その保全と持続的な活用を図ることにあり、世界の重要な農業システムを後世へと残すための登録制度となっております。
 2013年3月現在の認定数は、海外では20地域、日本では5地域が認定、登録をされています。海外ではアジア、アフリカ、南米などにまたがっていますが、参考までに日本の5地域を紹介しますと、新潟県のトキと共生する佐渡の里山、石川県の能登の里山里海、静岡県の静岡の茶草場、熊本県の阿蘇の草原の維持と持続的農業、そして大分県、クヌギ林とため池がつなぐ国東半島宇佐の農林水産循環の5つの地域が認定、登録を受けております。
 世界遺産の認定、登録を通して期待される効果としましては、国内外における知名度がアップすることにより、観光振興や農業者の誇りともいうべき意識の向上による農業の振興、新たなブランド・農産品の開発などが挙げられると思います。
 私の手元に静岡大学稲垣栄洋教授の静岡の茶草場を紹介するホームページがあります。皆さんと世界農業遺産のイメージを共有し高めるための参考事例として、そのあらましを紹介してみたいと思います。
 静岡県の東部地域は古くからお茶の栽培が盛んで、現在も我が国の一大産地として知られています。その地域にあって、掛川市、菊川市、島田市など5つの市町村に引き継がれ存在する茶草場農法は、おいしいお茶をつくるため、茶園周辺で刈り取ったススキやカヤなどの有機肥料を茶畑に投入する農法で、この草を刈り取る採草地を茶草場と呼んでおります。今回の世界農業遺産への認定、登録は、おいしいよいお茶をつくるため、長年にわたってこの茶草場を守り続けてきた農家の皆さんの努力が認められた成果だと稲垣教授は紹介をしております。
 このように、世界農業遺産の制度は、単にでき上がった1つの農産物が立派であるということだけではなく、その農産物をつくり上げていく過程で、技術や文化、生物との共生や農業景観など相互に作用し合い、高めながら、立派なよい農産物をつくり上げていくというシステムを評価するという、やや小難しい内容になっております。佐渡のトキや阿蘇の畜産などを思い浮かべますと、何となくイメージが湧いてまいります。
 さて、そこで話を南部郷の梅に移したいと思います。
 みなべ町を中心とする南部郷の梅の生産は、既に皆さんがよく承知のとおり、400年の歴史を持ち、我が国の梅生産の半分以上を占め、全国に冠たる一大生産地となっております。加工業まで広げますと約1000億円産業とも言われております。
 寒中に春を告げる花として、昔から人々は、春の訪れを待つ心とともに梅の花便りを待ちわびたものでございます。初春、南部郷の谷、山を白色に染め上げる梅林の風景は、今や関西に春を告げる華やかな歳時記とさえなっております。花真っ盛りの光景は、一目百万本、香り十里と言われ、頭上にはメジロ、ウグイスが鳴き声を競い、ミツバチは花を求めて飛び回り、受粉を助けます。花の下では毛せんが広げられ、花見はもちろんのこと、あちらこちらで絵画や俳句、短歌などの催しを繰り広げられております。
 農業景観がこれほどまでに他の産業、すなわち観光と一体となっている風景は、そうたくさんあるものではありません。私の知る限り、わずかに旧桃山町の桃の例を挙げる程度でしょうか。
 樹園地の多くは急峻な地形にあり、梅の木は山の斜面に植栽されております。先人の苦労は、どうすれば傾斜地の土壌を流されることなく梅の木を大きく育てることができるかという点にあっただろうと思います。出した答えは、梅の木とともに下草を育て土壌の流出を防ぐとともに有機肥料として活用するという、梅と下草との共生に知恵を働かせたことでした。
 健康食品としての梅の効能は今さら申し上げるまでもなく、その殺菌効果については昔から広く人々の愛用するところであり、また、最近では県立医科大学での研究も進み、ピロリ菌の抑制効果や血糖値の上昇を抑制する効果などが解明され、特許も取得するまでになっております。
 毎年2月11日の梅の日には、梅祭りとともに梅供養祭を行います。生活を支え、地域の反映をもたらせてくれる梅への感謝を込めて地域の年中行事となっております。これなども、既に梅が単なる農産物を超えて、地域と一体となった農村文化、梅文化を育み、展開している姿であろうと思います。
 また、6月6日、京都下鴨神社と上賀茂神社でとり行われる梅の奉納祭は、大昔、雨が降らず飢饉に見舞われた人々が雨の恵みを祈願して神様に梅を奉納したところ、大雨が降り、五穀豊穣がもたらされたとのこと。以来、恵みの雨を梅の雨、すなわち梅雨と呼び、神様に感謝することの由来となったとも言われております。
 最近、農林省を初め政府も、農業を成長産業として位置づけ、付加価値の向上、海外展開、6次産業化の方向などを強めようとしています。梅は、南部郷で生産され、加工され、そして販売されています。一部は海外に輸出もされています。この形態を6次産業と言わずして何と言うのでしょうか。
 世界農業遺産への認定、登録という視点に合わせて、梅に関する幾つかの側面を紹介してまいりました。県当局も、世界農業遺産の認定、登録に強い関心を持っているやに聞いております。私も、この際、南部郷の梅が世界農業遺産に認定、登録されることにより、これまで以上に海外での知名度が上がり、世界ブランドとして一層の飛躍、発展が期待できるものと、このことに関して強く関心を持ち取り組んでいるところでありまして、「紀州・梅の香りと長寿の里」として世界農業遺産への認定、登録を提案するものであります。
 登録の実現に向けては、地元自治体が積極的に取り組んでいくことはもちろんのこと、県としても、これまで申し上げてまいりました指摘を参考にしていただき、積極的に取り組み、今後の登録に臨んでいただきたいと思います。知事の決意のほどをお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 世界農業遺産は、議員お話しのとおり、地域の伝統的な農業や土地利用はもちろん、生態系や景観、伝統文化など、農業に附帯する要素も含めて農業システムとして捉え、一体として次世代への継承を目指すものであります。世界農業遺産への登録は、これまでとは違った観点から梅産業を振興するという非常によい御提案だと思います。
 白状いたしますと、私もそれほど過去において注目していなかったのでございまして、不明を恥じておりますが、立派な御指摘をいただきましたからには、全力を挙げて熱心に頑張っていきたいと思っております。
 登録には5つの要件が必要とされておりまして、第1に農業を通じてすばらしい景観が形成されていること、第2に安全な食料の提供が行われているとともに生計の手段として成り立っていること、第3に農業を通じて生物の多様性が認められていること、4番目、農業と関連した多様な文化が認められていること、5番目、工夫した農業生産技術が認められていることであります。
 みなべ、田辺地域を中心とする梅生産は、広大な梅林と周辺環境が織りなす四季折々の景観がすばらしいこと、加工と一体となり地域の基幹産業であること、また、梅に関係した伝統ある祭事が数多くあることなど、登録要件を満たすことができるのではないだろうかというふうに思っております。
 登録には、御指摘のように、地元自治体や生産農家など関係者の熱意と積極的な取り組みが最も重要であるとされておりますけれども、県といたしましては、このような地元の皆さんと一緒になって、登録実現に向けて全力を傾注してまいる所存でございます。
○議長(山田正彦君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 世界農業遺産の登録に関しては、知事から、これまでとは違った観点からの梅産業への振興策であり、県としては必要な対策を行っていくとの答弁がありました。
 私は、これまでも、梅産業の振興発展について、生産レベルでの取り組みを強化、加工品の開発、販売促進のためのブランド化の大切さ、医学分野などでの新しい梅の可能性などについて質問し、取り組んでまいりました。今回はこれまでとは全く別角度からの質問でしたが、私が考える世界農業遺産登録の最大の効果、メリットは、このことを通して梅が世界に紹介されることにあると思っています。
 私は、今回のこの取り組みを国際戦略の一環と捉えています。一般の世界遺産ほど有名ではないでしょうが、世界農業遺産については、興味がある世界中の人々がインターネットを開き、関係の書物でこのことを知ることになるでしょう。梅の健康面での効能が広く世界中に紹介されるならば、きっと興味を持って、食べてみようという人々があらわれることを信じています。
 国挙げて農産物の輸出拡大に取り組んでいます。地元には梅産業への自信と誇り、世界に対しては宣伝効果と販売促進へ、世界農業遺産への登録は大きな効果が期待できます。県と国にはなお一段の取り組みの強化を切望し、注文、要望といたします。
 2点目は、地震・津波対策についてであります。
 去る10月2日から4日まで、私たち文教委員会は宮城県亘理町の視察を行いました。視察の目的は、学校・文化財等の震災復興現況調査でした。説明をしてくださったのは、語り部の飯沼さんと菊池さんです。私たちが和歌山県の県会議員ということもあり、説明は学校、文化財にとどまらず広範囲に及び、親切丁寧な説明を受けました。特に飯沼さんは、和歌山県と南海・東南海地震との関連に特別な関心を持って、さきに政府と中央防災会議が公表した資料を詳細に分析し、和歌山版ともいうべき丁寧な資料までつくってくれておりました。
 被災地の惨状を目の当たりにし、説明を受け、残されたビルの残骸を見るにつけて、改めて地震・津波の災害の大きさとその怖さを再認識しました。同時に、このような地震・津波の恐怖がそう遠くない時期にすぐ近くの海底で牙をむいていると思うと、改めて南海・東南海地震の対策の重要性と緊急性を心に誓ったところであります。
 飯沼さんからは、みずから被災した東北大地震の体験をもとに幾つかの大事な問題点の指摘がありました。紹介します。
 最初に心に響いた言葉は、「津波とは、一瞬にして陸地がしけの海になること。そして我々はそこに放り出される」との言葉でした。もちろん東北の人々も、こんな大地震は初めての経験でした。初めての経験がとっさの判断、とっさの避難を迷わせたこともあるのでしょう。津波が海面に姿を見せ、それが巨大な高い厚い壁となって陸地を襲う。住民の方々は、まさに一瞬の出来事に見えたことでしょう。一瞬にして陸地が海になり、そして多くの方々がそこに放り出されたそうであります。何度も何度もテレビで映像として見てきた津波の恐怖が目の当たりに展開される思いでありました。
 私たちの紀伊半島では、地震発生から津波襲来まで最短で2分とか5分というではありませんか。飯沼さんが言う「一瞬」という言葉が大きな説得力を持って響きました。そのとき我々はどう対応し、どう対策すればいいのか。まず逃げること、てんでんこに逃げること、これが東北の教訓でした。「てんでんこ」とは、もとは「てんでに」ということだろうと思いますが、とにかく自分は自分の責任で逃げろという意味だと思います。
 幸か不幸か、我々のふるさと紀伊半島は山が海にせり出す地形となっています。海のすぐ裏が山です。地震・津波が発生したら裏山に逃げよう、てんでんこに逃げよう、これが津波から身を守る最大の防御策です。迷ってる余裕はありません。ちゅうちょしている余裕もありません。そのためには、裏山に逃げる避難路が整備され、みんながその避難路がどこにあるのかということをよく知っていることが何より大切です。現時点での避難路の整備状況はどうなっているのか、まず関係部長よりお答えをいただきたい。
 私が感じるには、地震・津波対策の緊急度がますます高まっている割には、避難路の整備は余り進んでいるようには思えません。避難路の整備のおくれが、即、県民の命に直結します。最優先されるべき緊急性の極めて高い事業だと思いますが、今後の取り組みをあわせてお答え願いたい。
 飯沼さんは、また、こうも言っていました。「津波に流されることを覚悟して助かる道を探るとすれば、ライフジャケットを着て逃げる以外に方法はない。これ以外に助かる道はない」とも。避難路で高台に逃げ延びた方々は一安心です。しかし、全員がこううまくはいかないと思います。
 ここで、ちょっとショッキングな話をします。皆さんも地震が起こったときの場面を思い浮かべていただきたい。地震が発生し、人々は座り込み、揺れがおさまるのが30秒から1分。老人や足腰の弱い人、幼児の歩行速度は、急いでも1秒で1メートルと言われています。1分で60メートル、5分で300メートルだそうであります。
 避難訓練の際、元気な若い衆は隣近所のお年寄りを助けて逃げるようにと言われています。そのために名簿の提出を求めている自治体もあります。その場合であっても、避難できるスピードは先ほど説明しましたスピードとほとんど同じだそうであります。早く逃げろ、高いところに逃げろ、助け合って逃げろということが盛んに呼びかけられていますが、津波が5分や10分で襲ってくる地域はほとんど逃げることはできない。多くの人々は津波に流されると考えておかなければならないということです。
 紀伊半島に住む我々にとって、予想される大地震と大津波は初めての経験です。各地で避難訓練が行われています。訓練は大切です。しかし、全ての人が訓練どおりにはいかないと思います。いざという場合に焦る、慌てる、パニックになる方も多いでしょう。逃げおくれて津波にさらわれる人々もたくさん予想されます。東北でも、津波にさらわれ、もがきながら沈んでいった方々が多数に上ったそうです。助けを呼びながら目の前で波の下に沈んでいく惨状、思い出すだけでも鳥肌の立つ思いがいたします。
 飯沼さんのライフジャケットの勧めは、このような悲惨な現実の背景となっています。とにかく、ひとまずライフジャケットで波に浮いて助けを待つ。考えたくもありませんが、これが津波から人の命が助かる最も現実的な対応だということを教えられました。
 ファスナーどめのライフジャケットは1個2000円程度、子供用は1000円程度で購入できるそうです。私は、この際、県が津波の被害が想定される地域の県民を対象として全員にライフジャケットを配布してはと提案するものであります。百歩譲って補助金でも結構です。購入できる金額の半額を補助すれば、いざという場合に備えて常備する方も多いと思います。全国では、この趣旨に賛同され、企業や団体からの寄附も相次いでいるとのことです。そして、各地で行われる避難訓練の際にも、このライフジャケットを着用し、実際的な訓練を提案するものであります。
 大型公共事業の事業期間と事業費、それとライフジャケットの配布、どちらが安くて早くて現実的でしょうか。十分検討の価値があると思います。
 参考までに、先ごろテレビで──たしか四国だったと思いますが──津波救命艇の紹介がありました。すばらしいと思いましたが、1艇当たりの収容人数が25名とのことでした。全県下に配備し、全ての県民の命を守るには膨大な経費が必要だと思いました。
 未曽有の災害に対し、全ての公共がこれをカバーするという発想は無理があります。自分の身は自分で守る、個人ができることをはっきりさせ、その心構えを持ってもらうよう導くことも、また立派な行政の役割だろうと思う次第であります。知事の御所見を伺いたい。
○議長(山田正彦君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 津波から避難する時間的な余裕がない地域にとっては、ライフジャケットは津波等から命を守るために有効であると、実は私、考えまして、ライフジャケットについて、ある程度整備しようじゃないかということを提案いたしました。いろいろ議論のときは──県庁の中でよく議論をしますので、その際は、津波のときの犠牲者は損傷も激しくて、ライフジャケットがあっても意味がないんじゃないかとか、あるいは財政負担も大変ですからいろいろ異論もあったんですが、溺死をするリスクは絶対に減るはずだからということで、それを押し切って、現在、政策を進めているところでございます。
 具体的には、これは津波だけじゃなくて水害のときも含めて、救助活動を行う消防団員の安全を確保するためにはライフジャケットが必要だということで、これは全県的に市町村に対して補助をするということで進めております。
 また、津波のときは、被害の予想される地域のうちに時間的余裕のないところがあります。具体的には、日高郡以南の津波浸水区域内に存在する学校と、それから社会福祉施設の方々にはやっぱりライフジャケットを常に配備して持っといてもらおうということで、県立学校などは自分でやるんですが、そのほかのところについては補助金の制度でこれを進めているところでございます。
 さらに、御指摘のように自分の力で安全な場所へ避難することができる住民にあっては、津波の到達時間等も考慮して、必要であればみずから備えていただきたいと私は思っております。ただ、個々の家庭のことは基本的には自助の問題かなあと、また、財政でどこまで見るかというようなこともありましたので、住民の家庭の配布助成までは考えておりませんのですが、御指摘もありましたので、考えなきゃいかんということは改めて思っております。
 自分の身は自分で守るという主体的な防災の取り組みの推進は非常に重要でありまして、その中で特にいい議論をいただきましたので、ライフジャケットの重要性は県民の皆さんにさらに訴えていきたいというふうに思っております。
 同時に、揺れたら逃げる意識の徹底とか津波避難訓練などを繰り返すことによりまして、県民の皆様の命を守るために迅速な避難につなげていきたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 危機管理監木村雅人君。
  〔木村雅人君、登壇〕
○危機管理監(木村雅人君) 津波から命を守るための避難路の整備及び避難場所の確保は、最重要施策と位置づけ、懸命に取り組んでおります。
 避難路の整備については、東日本大震災以前はそれほど進んではおりませんでしたが、平成23年度以降、わかやま防災力パワーアップ補助金を大幅に拡充し、整備を行う市町村を強力に支援しております。それにより急ピッチで整備が進んだ結果、整備した避難路の数は平成23年度から今年度までで400カ所を超える見込みとなっており、引き続き、最優先の施策として市町村とともに全力で取り組んでまいります。
 また、先日成立しました南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法で新たな補助制度がつくられましたので、これもあわせて活用し、避難路等の整備を強力に進めてまいります。
○議長(山田正彦君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 次に、地震・津波発生時の避難路の整備とライフジャケットの配備についてであります。
 私が申し上げたかった趣旨は、災害がいつ起こるかもしれない。いつ起こるかもしれない災害に対し、県行政として何が必要か、何をしておかなければならないのかということです。避難路の整備の重要性は今さら申し上げるまでもなく、国も県も重点的な整備を急いでるとのこと、よく理解できますし、それはそれとしてしっかりやってほしいと要望いたします。
 フィリピン・タクロバンでの高潮による大災害の記憶はまだ生々しいものでありますが、はるかに大きな津波の被害が予想される南海トラフ大地震が発生したら、我々のふるさと和歌山はどうなるのでしょうか。海岸沿いに点在する県民の生命、暮らしはどうなるのでしょう。考えただけでも身の毛もよだつ思いがありますが、せめて命だけでも助かるようにと願わずにはいられません。
 私は、今回、現に東北で地震・津波の大災害に遭遇し、その貴重な体験を全国に訴え続けている飯沼さんという被災者の説明を聞いて、県民の命を守る最も簡単で予算的にも比較的負担の少ないライフジャケットの整備、配布について、これは一考に値すると考え提案しましたが、知事からは、全員への配布は考えてないとの答弁でした。
 そこで、重ねて知事に伺います。
 知事は何を根拠に県民に対するライフジャケットの配布はできないと言っておられるのか、いま一度お答え願いたい。
 私は、今ここに2通りのライフジャケットを持っています。1つは、現在、県が配布しているライフジャケットです。そしてもう1つが、国交省が認可し小型船舶などに備えつけられている、我々がふだん目にするライフジャケットです。この2つを比較してみますと、まず最初に、この2つのうちどちらが速く体につけることができるかという点です。私が、今、この2つを装着してみます。皆さんもよく見ててください。
 これが、国交省が認定してる、小型船舶の船に常に着用されてるライフジャケットです。(現物を示す)地震が起こった。これを着るとすれば、すぐにこれをとって、走りながらすぐにこれを着れるんですよ。そして、もうここでこれを上げただけでいけるということなんです。
 それと、県が今配られているライフジャケットはこれなんですよ。(現物を示す)それで私、これ、県の担当が「先生、これ座布団になるんですよ」て言わはるんですよ。「おまえ、座布団て何な」という話をして、皆さん、命を守ってくれるこのライフジャケットを常に座布団、お尻の下にひいておく。私は古い考えの人間かもしらんねんけども、これを聞いてからちょっと何なということを考えた。
 それで、私、また1回、県がしてるライフジャケットてどんなもんかなあと思ってちょっと取り寄せたんです、学校で。
○議長(山田正彦君) 坂本議員、そのマイクの前で言ったほうが。
○坂本 登君 はい。まあまあ、そしたらもうこれを着用してみますわ。
 これをとる、そしてこれ(「あけ口もわからへんよってにな」と呼ぶ者あり)そうよ、これ、あける口もわからんねん。それで、こうなるんよ。それで、ぱっとこうとる。それで──ちょっと手伝うて。これ1人で着れんのよ。(「そらあかんわ」と呼ぶ者あり)そうそう。こうして、それでこうかぶるのよ。そして、ここをこうする。1人でできん。ここをこうくくんねん。それで、これからこう走る。そしたら、これがこう引っ張るさかい股痛いんや。ここでこんなんしたら、これが邪魔になるんよ。こんなん、ここへしたらこんなんあんのよ。これが邪魔になる。ここ、走るときこうなんのよ。
 いや、ほんまに知事さん、あれ1回着てみてください。僕、3回練習して今の状態です。それで、あれは1人でなかなかできんから、誰かちょっと手伝うたらんとできんのよ。そんなん物すごく──今の僕が持ってた小型船舶のやつだったら、もう30秒かからんと、ずっと逃げもって着ながらできる。しかし、今のは手伝うてもらいながら時間がかかるさかいにちょっとあれと。
 そして、命を助けてもらう一番大事なものをお尻の下へひいていつも踏んどくというのもいかがなもんかなあと。私、先ほども言うたけども、ちょっと考えが古いんかもわからんねけども、ひとつそういうことなんです。
 県の方のライフジャケットは約2分かかります。一方、簡単なライフジャケットのほうは10秒もかかりません。走りながらファスナーを引き上げるだけで装着できます。
 地震発生から本県海岸に到着する津波の時間は、最短で4分とも言われています。突然地震が発生し、大津波が押し寄せてくるという中で、4分や5分という時間は住民にとっては本当にあっと言う間の時間であります。避難行動からすればほとんど一瞬の時間であります。高齢者にとって避難時間は1分でも1秒でも欲しいところであり、加えて、若い方々には、高齢者や身体の不自由な方々を連れて逃げるようにと言われ、共助の大切さを奨励しているところであり、そうなれば余計、避難時間が制約されます。そのときの1分、2分はどれだけ貴重な時間か、あるいは生死を分ける1分、2分になるかもしれません。県民の立場に立った現実的で温かい発想、施策を強く求めるものであります。
 もう1点は価格であります。県のほうのライフジャケットは4500円から5000円程度だそうです。簡単な普及型のライフジャケットは、飯沼さんによれば1950円か、もしくは大量発注の場合はもっと安くなるということです。ざっと3分の1程度の値段です。同じ予算額であれば、3倍のライフジャケットを県民に配布することができます。
 備えは、早過ぎることはありません。やり過ぎることもありません。大型公共事業による本格的な津波対策はもちろん必要ですし、その実施に何ら異議を唱えるものではありませんが、その一方で、今やることに迅速果敢に手を打っていくことも同じように重要な施策であると考えます。ライフジャケット1つとってみても、価格が3倍もする使い勝手の余りいいとは言えないライフジャケットを何年にもわたって配備するよりも、今、きょう起こるかもしれない地震・津波に現実的に備えることの大切さを強調したいと思います。
 できないという知事の答弁について、その根拠を説明願いたい。どの程度の対象人数、どの程度の予算措置を想定されているのか、現在のライフジャケットを選定した経過もあわせて答弁願いたい。
○議長(山田正彦君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、現在、配布助成までは考えていないんですがというふうに申し上げましたが、坂本議員からそういう追加質問があるのではないかというふうにちょっと思いまして、先ほど実は理由も申し上げました。個々のやっぱり家庭のことというのは、基本的には自助の問題じゃないかなというふうに思いました。
 それから、かなり大きな地域の住民の数がありますので、それを県費でどこまでやるんですかなあというようなことについていろいろ考えた結果、そのときはネガティブでありました。現在、そういうことでやっておりませんが、先ほども言いましたように、御指摘もありましたので、これは県議会で御指摘があったことを考えもしないというのはいけませんので、また改めて考えてみたいと思います。
 と同時に、その中で、きょうはいい議論でありまして、私も実はライフジャケット派なもんですから、ぜひ、少なくとも家庭の皆さんにもこれはいいことだということを議員の御指摘も踏まえて大いに言わなきゃいかんなと。最低それだけはやらなきゃいけないというふうには思っております。
 同時に、いろいろなライフジャケットがあります。私も坂本議員に劣らずぐらいちょっと古いタイプの人間でございますので、お尻で踏みつけるというのはちょっとどうかなという感じは正直言っていたします。
 だけど、あの型のライフジャケットのええところは、実は収納スペースが要らないということなんですね。例えば学校のケースを考えますと、学校の教室の中にライフジャケットを近くに収納しておかないといけません。あるいは壁にかけとくか、そういうことだと思います。それがお尻の下にあったら、自分のものはわかってますから、ぱっとつけられるといういいところもあるかなあということでございます。
 ただ、県が配布というふうにおっしゃいましたけれども、入札をして、それで県立学校なんかでそれを入れてるとこが多いと思いますけれども、必ずしもこのライフジャケットを県としては必ずやりなさいと言ったわけではございません。特に、助成をして入れていただいてるところなんかは、それぞれの助成主体がどういうものがいいか、例えばあの型のものは面倒だとか、それから収納スペースはちゃんとあるからいいんだとか、それからこのつけ方のほうが楽だとかいろいろ考えられて、値段も含めてそれぞれが御判断されたと思います。
 ただ、きょうこういう御質問があるよといって聞きまして、先ほど知事室で実験をいたしました。まず、お尻の下のものは椅子の上に置いて、用意ドンでやったら1分ぐらいでできました。
 それで、もう1つのほうは県庁の知事室の戸棚の中に、下のほうに戸棚がありますから、そこの中に入れておいて、用意ドンと言ったらぱっととりに行って、それでつけました。やっぱり1分ぐらいかかりました。ただ、そのときは坂本議員が今お見せになったカチャッとやるやつじゃなくて、ひも型でございました。だからもうちょっとかかったんじゃないかというふうに思います。
 いずれにしても、それぞれいいところ、悪いところ、値段の問題もそれぞれありますので、私どもとしてこれがいいというふうに決めつけるのはおかしいんで、それぞれのところで御判断いただいたらいいんじゃないかなというふうに考えております。
○議長(山田正彦君) 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 知事の説明を聞きました。もとより県も予算措置を伴うことであり、総合的、計画的な観点から取り組まなければならないことも理解しております。
 私も、さきの視察の際にも教えてもらったことや資料を見ての質問でした。今後は、知事の答弁もよく検討しながら、私も私なりにもう一度この問題を深く考えてみたいと思います。
 今回はこれで終わります。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終了いたします。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時35分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(花田健吉君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 皆さん、こんにちは。
 議長から御指名いただきましたので、早速、一般質問に入りたいと思います。
 ことしの第68回国民体育大会、第13回全国障害者スポーツ大会は、東京で開催されました。県会議員にならしていただいて何度か応援にも行かしていただきましたけども、ことしは、東京武道館で行われました剣道成年男子の部の応援に行ってまいりました。全国からの有力者が集まる、本当に緊張感あふれる、そういう内容でございました。その中で和歌山県は5位入賞ということを果たし、全国トップレベルの実力を果たしたことに、大変な誇りと安堵感に浸って帰ってまいりました。ことしの男女総合の結果は、皆さん御存じのとおり、点数こそ目標に及びませんでしたけども、18位目標を達成いたしました。関係各位の御苦労に感謝申し上げたいと存じます。
 そして、いよいよ再来年の紀の国わかやま国体での総合優勝が視野に入ってまいりました。あと655日ということでございます。昭和46年の黒潮国体で、和歌山県のスポーツは大きく変わりました。国体強化策は、和歌山県に人材を集め、育て、その後、スポーツ王国和歌山を築いてまいりました。紀の国わかやま国体・紀の国わかやま大会は、再びスポーツ王国を築く大きなチャンス到来でございます。
 国体開催の基本方針として、「スポーツを通じて『和歌山を元気にする』ことを目指し、県民に夢と感動を与え、交流の輪を広げるとともに、生きがいのある社会の形成に繋げるなど、本県にふさわしい大会として開催する」、また、「大会の開催に当たっては、簡素・効率化を図り、新しい時代に適応しながらも、和歌山の魅力を最大限に活かしたいつまでも心に残るまごころのこもった大会を目指す」、そして「この大会の開催を契機に、スポーツに対する県民の認識や意欲を更に高揚させるとともに、単に一過性ではなく、活力に満ちたふるさとづくりや心豊かでたくましい人づくりなどの地域おこしを推進することにより、『スポーツ王国・和歌山』を復活させる」となっています。
 スポーツ王国としての条件は、幾つかあると思います。県民の関心が高く、いずれかのスポーツに参加している、スポーツを楽しむ場所が身近に存在する、人材発掘事業を行っている、指導者の育成が行われている、結果として、オリンピアンを継続的に何人も輩出していると私は考えております。
 昨年のロンドンオリンピックは、過去最高のメダル38個を獲得し、さまざまな感動を与えてくれました。日本代表選手団の凱旋パレードには、金メダリスト7人を含む総勢71人のメダリストが参加し、沿道にはおよそ50万人の大観衆が集まり、スポーツの持つ底力を改めて実感した次第です。そして、先日の2020年東京オリンピック決定の9月7日は、日本中が歓喜いたしました。朝までテレビを見ていて、感動した1人です。
 文部科学省は、平成22年にスポーツ立国戦略を策定し、翌年、平成23年6月にはスポーツ振興法を50年ぶりに全面改定しました。そして、スポーツ基本法として施行いたしました。これまではスポーツを教育活動の一環として位置づけておりましたけども、今回施行された同法では、全ての国民がスポーツをする権利と楽しむ権利があることを明確にし、国や自治体はそれを保障する責任を負うということが特徴になっております。
 青少年の自己責任、克己心やフェアプレーの精神を培い、コミュニケーション能力を育成し、スポーツを通じて住民が交流を深めることによる地域住民間の連帯が醸成、高齢化社会に対応した生涯スポーツの増進、社会・経済の活力の創造、我が国の国際的地位の向上など、スポーツの有する多様な役割を明確化し、プロスポーツや障害者スポーツも新たに法律の対象とし、地域スポーツクラブの事業支援や国際競技大会の招致・開催支援に特別の措置を規定するなど、施策が盛り込まれております。
 また、文科省や厚労省に分かれていたスポーツの役割を一元化し、選手やスポーツ団体への支援を強化すべく、新たにスポーツ庁を設置する構想を進めております。
 スポーツツーリズムやスポーツコンベンションの推進、さらにはプロスポーツの支援、観光や産業の振興などにスポーツの持つ多様な役割を総合的に推進していくためには、教育行政中心の教育委員会では対応が難しくなってきていますし、そこには限界が来てると私は思います。
 法律も改正されました。時代のニーズに対応できるように、平成20年4月の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律が施行されております。これにより、教育委員会所管の文化やスポーツ行政について、学校における体育及び文化財の保護、学校教育活動と一体不可分なものを除き、知事部局に移管することが可能となりました。スポーツ基本法が制定され、県の取り組み次第でスポーツがより幅広く浸透し、スポーツを通して真に県民に希望と勇気を与えていくものと考えます。
 学校教育でのスポーツは重要ですが、それとは別に、教育委員会の枠組みを超えて、これからのスポーツの持つ多様な役割を総合的に推進し、スポーツ王国和歌山を目指すために、全庁的な推進体制を構築していく必要があると考えます。知事の御見解をお伺いいたします。
 次に、スポーツコミッションの設立についてお伺いします。
 スポーツコミッションについては、昨年、同僚の谷口和樹議員からも質問がございました。和歌山県にとりまして、観光産業の振興は重要なテーマの1つであります。
 スポーツを観光資源として位置づけるスポーツツーリズム。スポーツは、「観る」スポーツ、「する」スポーツ、そして「支える」スポーツとあります。スポーツ・ツーリズム推進連絡会議では、平成23年にスポーツツーリズム推進基本方針を策定し、スポーツを活用した観光まちづくり、大会・合宿の招致・開催、地域資源を生かした商品開発など、幅広く活用されることを目指しております。
 スポーツツーリズムとは、スポーツ資源・環境とツーリズムの融合です。スポーツコミッションは、市町村や地域総合型スポーツクラブ、宿泊施設など、関係団体とともにスポーツツーリズムを総合的に支援する組織になりますし、スポーツ大会やイベント、合宿の誘致や運営、財政支援を行い、地域振興も担うことになります。昨年には一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構が設立され、スポーツツーリズムと地方のスポーツコミッション創出支援を目的とするなど、スポーツコミッション創設への機運も高まっております。
 日本では、平成23年にさいたま市が日本初のスポーツコミッションを創設し、昨年4月にはスポーツコミッション関西が設立されてきております。和歌山県でも、野球の紀州レンジャーズ、バスケットの和歌山トライアンズなど、プロとして活躍し、注目も集めております。スポーツコミッションの設立で、もっと広がりが期待できるのではないでしょうか。
 そこで、スポーツツーリズムの取り組みとスポーツコミッションの必要性についてどのように認識されているのか、御所見をお伺いいたします。
 次に、2020年東京オリンピック・パラリンピック合宿会場誘致活動についてお尋ねをしたいと思います。
 オリンピックの合宿会場地として、既に誘致活動は進んでいると聞いております。下村東京オリンピック・パラリンピック担当大臣も、地方にも積極的に名乗りを上げてほしいとおっしゃっておられております。
 先日、和歌山市出身のフランス在住の私の友人からメールが届いております。彼は、フランスで日本文化の講師をしています。また、ガイドもやっていて、たびたび日本に帰ってきているようです。2007年、大阪で世界陸上が開催されたとき、フランスのメンバーが合宿地に和歌山を選んでいます。そのときの通訳をした1人です。和歌山での合宿は大変魅力だったようで、翌年の北京オリンピックの合宿地を和歌山でと、そのときに決めておられたようです。先日のワールドマスターズのカイ・ホルム会長も、和歌山のスポーツ施設やすばらしい環境に満足して帰られたように、自信を持って合宿候補地として手を上げるべきと考えます。
 また、合宿地として、施設面だけでなく、一緒に練習できる全国レベルの選手がそろっていることも選定の大きな要素となるはずです。2006年から取り組んでいるゴールデンキッズのメンバーもその対象になるでしょうし、和歌山県は何といっても、昨年、ロンドンオリンピックに11名、パラリンピックに1名が出場しております。
 オリンピック・パラリンピック選手関連施設が全国で進められ、開催前の5年前となる2015年までをめどに整備が進められるようです。県内には、和歌山県立医科大学みらい医療推進センターが国内唯一の障害者スポーツ医科学研究拠点として文科省に認定された最先端の設備と研究体制が整備されており、アスリートがトレーニングするには最適な候補地と言えます。ぜひ合宿会場として誘致活動をしてはどうかと申し上げます。
 以上、3点について仁坂知事の御見解と御所見をお伺いいたします。
○副議長(花田健吉君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) スポーツは、生涯にわたって健全な心と身体を育む上で重要なものでありますけれども、その基盤となる基礎的な力は子供の時期の学校教育の中で培われるものであることから、学校教育の中でのスポーツも大変大事でございます。
 もちろん、スポーツには、人と人、地域と地域の交流を促進し、地域を活性化させるなどの役割もありまして、こうしたスポーツの持つ多様な役割を総合的に推進していくためには、教育委員会だけでスポーツ行政、スポーツに関することを担うのではなくて、議員御指摘のとおり、全庁体制で取り組む必要があると考えております。
 事実、これまでも、スポーツ合宿誘致等については知事部局と教育委員会とで連携を図りながら取り組んでおります。また、施設の建設についても、これは教育委員会と、それから県土整備部などが連携を図りながら取り組んでまいりました。また、適当な役割分担のもとにさまざまな施策を推進していかなきゃいけないと考えております。
 今後とも、知事部局と教育委員会が一体となって、国体を契機としたスポーツ機運のさらなる醸成や、県民がいつでも、どこでも、いつまでもスポーツに親しめる環境づくりを推進していきたいと考えております。
 次に、いわゆるスポーツコミッションの設立の話でございます。
 その前提といたしまして、地域の観光とスポーツが結びついたスポーツツーリズムを展開することは、地域経済に及ぼす波及効果が大変大きいと考えております。例えば、上富田で毎年2月に開催される紀州口熊野マラソンは、今回で19回目を数えますけれども、上富田の方々が一生懸命育ててまいりまして、全国から約6000人のランナーが参加しておりまして、半数以上は県外からの参加である。このため、近隣の白浜町なども含めまして、宿泊、飲食等の波及効果が大変出ております。
 これを受けて、今度は県と地元では、白浜─羽田間の定期便をこの日に限っては大型機にかえてくれないかというような対応をいたしまして、県外のランナーが参加しやすい環境を整え、参加者増加に努めたところであります。
 また、県では、県内の観光施設、スポーツ施設、宿泊施設を網羅したスポーツ王国わかやま合宿ガイド、実はこんなものでございますけれども(資料を示す)、これを観光振興課が中心になってつくりまして、そのホームページもつくっております。これを活用して、本県がスポーツ合宿に適した施設整備や地元受け入れ態勢が整っていることをスポーツ団体とか大学等にPRして、ぜひ使ってください、あるいは来てくださいというように大学等々あるいはその仲介をする旅行会社に働きかけているところであります。その結果、Jリーグのジュビロ磐田などのプロスポーツの合宿も実績を重ねてきております。
 今後は、さらに、本県の誇る特産品の販売、PRなどアフタースポーツの観光メニューを充実することにより、リピーター増加と消費拡大を図っていきたいと思っております。
 その中で、スポーツコミッションは、国内外のスポーツイベントや合宿の誘致、スポーツに関する情報やサービスの提供など、大きな役割を担うものであり、必要性は高いと思います。
 現在、上富田のように、スポーツイベントや合宿の誘致、これに伴う受け入れ態勢の整備に取り組む市町村も出てきておりまして、県はわがまち元気プロジェクトとして支援しているところでありますが、こうした動きを民間団体にも広げていくことが重要であると考えております。したがって、県では、スポーツコミッションの重要性を発信いたしまして、これをそれぞれ元気を出してやってくれるところを束ねて県全体を視野に入れながら、地域の特徴や強みをよく知り、きめ細かいサービスが提供できる市町村や民間団体によるスポーツコミッションの設立に向けて支援していきたいと思います。
 次に、東京オリンピック・パラリンピックの合宿会場誘致でございます。
 議員御指摘のとおり、東京オリンピック・パラリンピックの合宿誘致は、本県のスポーツの振興や地域の活性化にもつながることから、大変よい提案であると思います。
 考えてみますると、2002年のサッカーのワールドカップのときにデンマークチームが和歌山で合宿をしてくれました。また、2007年の世界陸上のときも、フランスチームがやはり紀三井寺競技場を合宿場に選んでくれました。大変よかったと思います。
 本県は、関西空港からのアクセスにもすぐれ、国体に向けて整備した紀三井寺公園陸上競技場や秋葉山公園県民水泳場等の施設も整っておりまして、また、国体で培ったボランティア活動のノウハウもそのとき十分あるというふうに思っておりますから、誘致を実現する条件は整っていると思います。
 今後、合宿誘致実現のためには、対象となる国や競技種目の選定、あるいは競技団体の要望や誘致のための要件等の分析、研究を深める必要があります。答弁の打ち合わせのときにちょっといろいろ議論をしておりましたら、少し受け身だなあという感じもいたしまして、それでは機先を制せられますので、こういうことを事前に十分、分析、研究を深めておきまして、国内や海外からの合宿誘致に積極的に取り組んでまいりたい。
 また、ワールドカップのラグビーもございます。これも、分析だと、会場としてはどうもちょっと難しそうだということではありますけれども、合宿場としては十分使ってもらえる余地があると思いますので、そういうとこも頑張りたいと思いますし、それからワールドマスターズにつきましては、これは本番で和歌山でたくさんやってもらいたいということで、これから努力をしてまいりたいと思います。
○副議長(花田健吉君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。
 もとより、学校教育並びに生涯教育としてのスポーツというのは非常に私も大事だと思っております。その上で、先ほど御紹介さしていただきましたように、いろんな法律の改正、そして他府県での取り組みなんかもいろいろ私なりに勉強さしていただきました。当局で調べていただいた結果、大体16府県ぐらいが、今、知事部局に移していると、こんな状況もございます。だからといって短絡的に知事部局にということではございませんけども、それよりも、スポーツというのを今後どういうふうに捉まえて県行政に生かしていけるのかと、こういうことが非常に大事だと思います。
 先ほどの答弁ではまだまだ私自身は満足できておりませんけども、今後、スポーツの持つ力は多様化して、大きなエネルギーを生む可能性もあると思います。そのときに行政の受け皿も変わっていく必要もあるのかなと、多少そのための時間もかかるのかなと思いますので、きょうはこれぐらいにさしていただいて、次の質問に移らしていただきたいと思います。
 2点目に、関空・紀淡・四国高速交通インフラ整備についてお伺いしたいと思います。
 午前中も服部議員のほうからお話がございました。9月21日にこの期成協議会が設立され、その記念のシンポジウムに参加さしていただきました。インフラの全体像として、関空高速交通アクセス、大阪都心から関空間41キロを超高速鉄道で連絡する。また、四国新幹線として大阪市から九州大分市を結ぶ高速鉄道約480キロの基本計画。そして、関西大環状道路、和歌山、奈良、京都、兵庫県一周約300キロ、大阪湾環状道路、大阪湾沿岸の環状道路との位置づけで、大阪府、兵庫県など10府県が構成府県となっております。仁坂知事が会長に就任されております。
 国土の均衡ある発展は大変重要な考え方だと思っております。「交流軸の上にある都市は栄える」、これは、1995年にお亡くなりになりました歴史学者の宮崎市定氏がよく使われていた言葉でございます。和歌山の発展は、この新しい国土軸を形成できるかどうかに大きくかかわっている、私もそう思います。シンポジウムの講師を務めていただいた藤井聡京都大学の教授がお示しいただいたデータは、この20年間、人口減少に至った和歌山の原因を改めて確認したものでございました。
 現在の第一国土軸に加えて、太平洋新国土軸は、東海から伊勢湾口、紀伊半島、紀淡海峡を経て四国、九州に至る新しい国土軸を形成し、東日本大震災以来、首都圏一極集中に対するリダンダンシー、第一国土軸との相互補完、首都機能の代替機能を高め、災害に強い多重型ネットワークを形成するためにも、大変重要な国土軸という考え方です。
 この構想は、昭和40年、ワイズマン報告で、第二東西道路を中心とする新たな国土幹線交通軸の整備と地域格差の重要性を指摘した提案が原点となっております。その後、伊勢湾口道路、紀淡海峡ルート、豊予海峡ルートの3つの海峡横断プロジェクトの交通軸の構想となりました。
 44年、紀淡海峡ルートにつながる東海南海連絡道路は、近畿圏と中部圏を結ぶ新全国総合開発計画の中で構想として発表され、昭和54年には仮谷県知事が紀淡海峡トンネル構想を発表し、昭和62年、第四次全国総合開発計画、多極分散型国土の形成が提唱されてきております。九州地方の西瀬戸インターブロックの交流圏構想、長期的視点から九州─四国間交通体系を検討する大阪湾環状交通体系として位置づけられております。昭和63年12月には、鉄建公団が四国・九州海底トンネル、10年の工期で建設可能と最終報告を行い、平成元年11月には17府県による第二国土軸シンポジウムを開催、平成2年10月には17府県と8経済団体による第二国土軸構想推進協議会が設立され、同じく5年5月には、第11次道路整備5箇年計画で、紀淡海峡道路を含む大阪湾環状道路、伊勢湾口道路の具体化を図るとなりました。
 また、同6年6月、大阪湾環状紀淡連絡道路推進協議会を設立し、西口勇和歌山県知事が会長に就任されております。四全総の総合的な点検報告において、第二国土軸から太平洋新国土軸構想推進協議会に名称が変更されております。8年8月には、この時点で紀淡海峡を含め、海峡を横断するプロジェクトは全国に6カ所ございました。その後も、新道路整備5箇年計画において構想を進めると記述されたり、第五次四国地方開発促進計画や近畿圏基本整備計画にもこの構想は記述され続けております。その後も、講演会や紀淡海峡交流会議をほぼ毎年開催し、平成20年の国土形成計画において、長期的な視点から取り組みを進めるとされてきております。
 着工の具体的な見通しはないままに、これまで道路特定財源などから68億円の調査費が支出され、国会などで無駄な公共事業との批判が浮上し、海峡横断プロジェクトの調査は、効率的な道路整備のあり方等の議論を踏まえ、今後行わない。夢として検討され候補路線として挙げられてきましたけども、現状から見て着手はとてもできる状態ではないとして、個別プロジェクトに関する調査は今後行わないと明言されました。また、紀淡道路など計画路線に格上げする場合は、国会に判断を委ねる考えも示しております。計画そのものが消えてなくなったわけではございません。凍結状態になっております。
 長々と経過を説明してまいりました。この問題につきましては、紀淡海峡ルート早期実現として、9月、この県議会で門三佐博議員が、また、関西広域連合議会でも尾崎要二議員や、ことしになって山下直也議員など県選出議員だけでなく、大阪府や徳島県の議員も関心と賛同の意を持って発言されております。しかし、大変難しい課題でもあります。
 いみじくも、先週4日の日に、強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靭化基本法が成立いたしました。今の政権において、国土強靭化、防災・減災の考え方を進めていく中で、国家戦略としてこの計画が取り上げてもらえるチャンスの到来と思います。
 そこで、仁坂知事にお尋ねいたします。
 まず1点目に、かつての紀淡海峡ルート構想の凍結を踏まえ、今回の協議会を今度どのように進めていかれるのか。
 2点目に、関西広域連合との協調について。
 3点目に、昭和40年、ワイズマン報告での第二東西道路構想より約50年がたちます。遠大な計画になるかもしれません。今、計画を再度立ち上げ、進めていこうとする仁坂知事としての覚悟についてお聞かせ願いたいと思います。
○副議長(花田健吉君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 関空・紀淡・四国高速交通インフラ整備については、議員御指摘のとおり、これまで国や県、さらに鉄道・運輸機構においてそれぞれのプロジェクトに関して、例えば紀淡海峡ルート構想の実現などに向けて取り組んでまいりました。しかしながら、残念ながら紀淡海峡ルート構想については、平成20年度以降、個別の調査が凍結されて、いまだにあんまり前へ進んでいないということでございます。
 ただ、凍結はされましたけれども、計画が廃止とか、やってはいかんというふうに結論が出たわけではございません。紀淡海峡ルートの実現には、それ自体というだけではなくて、日本にとってこれがいかに必要かということについて、いろいろな力を合わせていく必要があると思います。
 1番目には、いわゆる第二国土軸としての国全体のリダンダンシーの確保、2番目に、西日本の大動脈の代替機能を有する四国新幹線の実現、3番目に、四国新幹線の整備とあわせることで、関西国際空港の機能強化につながる大阪都心と関空を結ぶ高速交通アクセスの早期整備、4番目に、関西大環状道路の実現に資する、あるいは大阪湾環状道路の実現に資するという4つの意義があると考えております。
 東日本大震災の経験や巨大地震の発生が近い将来に予想される中で、大規模災害に備えたリダンダンシーの確保、強靭な国土づくり、国づくりについて議論が高まっている時期に、これまで個々別々に取り組まれてきたものを1つのプロジェクトとして統合するとお互いに力を得て実現に近づけることができるのではないかと考えまして、関係府県の知事さんに働きかけを行い、その結果、本年9月に関空・紀淡・四国高速交通インフラ期成協議会を設立いたしました。
 先月は、設立記念シンポジウムを東京で開催いたしまして、その実現に向けて機運醸成を図ったところでありまして、また、そのプロセスの中で、関西でももう一度やろうというふうに我々の中で合意ができて、今準備を始めたところでございます。
 そういう中で、関西広域連合では、関西大都市圏を充実するために、環状あるいは放射線のネットワークをつくり陸海空の玄関からの関西3時間圏域を実現することとか、あるいは大規模災害等への備えとしてリダンダンシーを確保することなど、広域交通インフラの基本的な考え方、これをみんなで合意したところなんでございます。
 これをもとに広域インフラマップの作成に今、取りかかっておるんですが、鉄道がちょっといろいろ事情がありましてなかなかできないのですが、道路については既にできておりまして、この道路の中では紀淡連絡道路は掲載するようにいたしましたし、それによって、連合の構成府県市が共通認識を持ってみんなで応援しようということになってるわけでございます。鉄道についても、大阪から関空、紀淡海峡を経て四国、九州に至る高速鉄道が今後盛り込まれるように、私としては取り組んでいきたいと思います。
 紀淡海峡ルートの実現には、地域から、これらがいかに必要であるか、またいかに理にかなっているかを言い続けなければいけないと思います。今後、この機を逃がさず、県内はもとより関西においてシンポジウム開催などの情報発信に努めて機運醸成を図るとともに、国に対してはどんどん要望、提言活動を行って、このプロジェクトに対する理解と支援が得られるように積極的に取り組みを進めてまいりたいと思います。
 これら高速交通インフラ整備への機運を再び高めてその実現に至るには、多分、長く険しい道のりがあると思います。しかし、これは、絶対に本県のみならず日本全体のためになるというふうに確信して頑張っていきたいと思います。
○副議長(花田健吉君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。
 本当に国土軸という問題につきましては大変大事だと思いますし、和歌山のこれからの10年、20年、30年、もっと未来も決めていくんじゃないかと思いますんで、ぜひ仁坂知事には頑張っていただきたいと、このように思います。
 続いて、じゃ3番目の質問に移らしていただきます。高速道路情報の充実についてお聞きしたいと思います。
 11月30日午前9時15分ごろ、日高川町小熊の湯浅御坊道路下り線で中型トラックから火が出る車両火災があり、上り線の御坊南─川辺間と下り線の広川─御坊南間が3時間半、一時通行どめとなっておりました。火はおよそ30分後に消しとめられ、いずれも午後1時に解除されております。
 ちょうどこの時間に御坊で所用があり、高速道路を利用して海南からインターチェンジに入ろうとして、御坊南まで通行どめとの情報を知りました。下の道は由良町の付近から数珠つなぎの渋滞となっており、予定の時間を1時間程度おくれて到着となってしまいました。
 予定を済ませ、帰りに御坊インターに行った際、パトカーが規制をしており、通行どめがまだ続いていることがわかりました。その場にいた警察官の方に何時ごろ再開するのか見通しを確認したところ、わからない、情報が入っていないということでございました。後でわかったことですが、それからしばらくして再開した模様でございます。改めて、高速道路における情報の重要性を確認した次第でございます。
 平成23年の台風12号の際は、国道が冠水により分断され、このときは高速が命の道としてそのリダンダンシーを発揮しましたし、その前年の3.11のときは、津波のおそれのため一般車両通行規制がなされました。いずれもその後にわかったことが多く、高速情報が利用者に十分提供されているか疑問でございます。
 まして、今回のように土曜日の行楽時に、しばらく待てば再開するのか、和歌山に行くのを諦めたほうがよいのか、「火災通行どめ」だけでは判断ができません。観光客、利用客のための開通見通しや、山火事なのか、火事に伴うその他危険な状況なのか、甚だ不親切な情報としか言えません。観光振興の面において、命の道として紀南地方への高速道路情報の提供をもっとわかりやすくしたほうがよいのではないでしょうか。
 折しも、この時間帯、県の防災訓練が行われたというふうに聞いております。高速道路利用者への情報提供のあり方について、県土整備部長に御所見を伺います。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 道路交通情報の提供は、安全かつ円滑、快適な道路交通を実現するために大変重要であると考えております。このため、西日本高速道路株式会社では、渋滞状況や災害時または交通事故時の通行どめ区間や原因などについて、道路情報板やハイウェイラジオ、サービスエリアの情報ターミナルなどで情報提供を行っております。また、お客さまセンターでは、事故の状況や作業の状況等についても問い合わせに対して情報提供を行っております。
 県としましては、渋滞の緩和、利便性の向上、観光振興の観点から、今後も、道路情報板の表示の改善や広域情報板の新設など、さらに丁寧でわかりやすい情報提供について、西日本高速道路株式会社を初め関係する機関に働きかけてまいります。
○副議長(花田健吉君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 今の御答弁、今の段階ではいたし方ないかなと思いますけども、もっといろいろ工夫する必要性もあると思いますし、工夫もできると思うんですね。お話にありましたように、道路情報板、まだ文字数が少ないんですね。それを改良していただくとか、せっかくやっぱり和歌山に来ようという、こういう動機を失うことのないように、観光振興の面でもよろしくお願いをしたいと思います。
 最後の感染症対策に移りたいと思います。風しん対策についてお伺いします。
 ことしの風しんは、首都圏や近畿圏を中心に流行が続き、3月末時点で既に昨年を上回り、全数報告疾患となった平成20年以降、最も速いペースでふえ続けてきました。全国では6月時点で累計1万人を超える流行となり、本県においても、昨年の10人から、ことし5月7日時点で38人の届け出がされております。
 免疫を持たない妊婦が風しんに感染することで先天性風しん症候群につながるなど、胎児に重大な影響が危惧されるところから、本年5月に、公明党県議団として仁坂知事に、風しん予防ワクチン接種の対策に関する申し入れを緊急にいたしたところでございます。同時に、自民党県議団からも要望が提出されておりました。知事の英断で県独自の補助事業を実施していただき、県当局の働きかけで、30市町村全ての地域で県と協調することが実現できました。利用者において自己負担することなく予防接種が可能となり、全国的にも画期的な先進事例となっております。
 風しんの流行はまだ続くと予想され、来年度も春先の早い段階から対策を講じる必要があります。県の対応を待って市町村が動くことは十分考えられます。風しん予防の包囲網を築くため、しっかりとワクチン接種を周知し、補助制度を来年度も継続して行う必要があると考えます。ことしにおける風しん感染やワクチン接種の状況と来年度に向けての対策について、福祉保健部長にそのお考えをお尋ねしたいと思います。
○副議長(花田健吉君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 県内のことしの風疹の流行はほぼ終息しており、9月19日以降の発生はなく、患者数は247名となっております。これは、昨年の約25倍の報告数で、20代の女性と20代から40代の男性に多く発生しています。なお、人口100万人当たりでは大阪府、東京都に次いで多くなっております。
 風疹ワクチン接種緊急助成事業による接種状況につきましては、10月末時点での接種者は5701名で他府県と比較すると多くなっていますが、まだ接種されていない人も多数いらっしゃいます。
 議員御指摘のとおり、春先から風疹の流行が繰り返されるおそれがあることから、来年度に向けての対策の必要性は十分感じております。一方、現時点では、対象年齢の全ての人が接種できる予算を確保し、全市町村において個人負担なしでワクチン接種を受けられる体制を整えたところであり、今年度中に速やかに接種していただけるよう、積極的な啓発、広報等に取り組んでまいります。
○副議長(花田健吉君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。
 非常に驚くべき数字だと思います。昨年の25倍でことしは風しんがはやっているということも驚きですけども、大阪、東京に次いで3番目にという、こういうことでございますので、対策を継続的に行う必要があるんじゃないかと思います。
 御答弁いただきましたように、時期的には終息してきておりますので、これから春先にかけてどういう手を打つかということになるんでしょうけども、国は、風しんの免疫を持ってるかどうかを調べる抗体検査は実施しておりますけども、それだけでは根本的な防止には至ってないと思います。これから、今年度の予算もまだ残ってるようでございますんで、ぜひこのワクチン接種を呼びかけていただきたいと思いますけども、早い段階で県の判断をお示しいただければという気持ちで質問さしていただきました。
 その対応で本当に春先からできるのか、あと、今年度みたいに年度の途中で補正予算で補っていくのか、その違いは大きいと思いますので、仁坂知事の判断を期待して、私の質問とさしていただきます。大変ありがとうございました。(拍手)
○副議長(花田健吉君) 以上で、多田純一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 37番高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕(拍手)
○高田由一君 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 質問に入ります前に、先日、国会では、特定秘密保護法が国民の反対や不安を押し切って強行採決されました。特定秘密は、我が国の安全保障にとって著しく支障を与えるおそれがあるなど、広範かつ曖昧な要件で政府が指定し、何が秘密かも秘密です。私たちも、この県議会でオスプレイの訓練の問題などを取り上げましたが、特定秘密とされれば質問することや答弁することもできなくなるのではないでしょうか。議会制民主主義の根本が脅かされます。特定秘密保護法の成立に強い抗議の意志を表明するものであります。
 それでは、質問をさせていただきます。
 最初に、日置川の河川整備の問題について伺います。
 私は、平成23年の9月県議会でもダムの問題を中心に河川の問題を取り上げましたが、来年7月に殿山ダムの水利権が更新時期を迎えるに当たり、流域住民の命と暮らしを守る立場から再度質問をさせていただきます。
 日置川については、現在、2度にわたる河川審議会やパブリックコメントの手続も経て、県管理二級河川日置川水系の河川整備基本方針が策定されようとしています。この中で、治水については、40年に一度の確率で起こる規模の洪水に対して被害が出ないような方針になっています。
 県内の河川では、国管理の紀の川水系が150年に一度の洪水に対応する方針、熊野川水系は100年に一度の洪水に対応することになっています。県管理の河川では、有田川、日高川も100年の一度の洪水に対応することになっています。一方、一昨年大災害が起こった那智川は30年に一度、日置川は先ほど申し上げたように40年に一度の洪水への対応でよしとする案になっております。同じ県管理河川でもなぜ河川整備基本方針の治水の部分でこのような違いがあるのか、その根拠について県土整備部長に伺います。
○副議長(花田健吉君) ただいまの高田由一君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長石原康弘君。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山県における河川整備基本方針の計画規模決定ルールは、平成11年の第2回和歌山県河川審議会においてお示ししておりますが、流域面積や洪水により氾濫した場合に想定される区域内の面積、人口、資産額の指標を基本に、過去に発生した水害の規模等を総合的に勘案し、決定しております。
 日置川水系河川整備基本方針につきましては現在策定中でありますが、この指標からは、計画規模は年超過確率30分の1となりますが、昭和33年に発生した水害の規模を考慮して40分の1の計画規模で検討しているところです。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 御答弁をいただきましたが、治水方針を定めるためのルールがあるということでございます。事前に資料をいただいたので、議場にもお配りしております。資料1でございます。
 ここで、上の表で書いておる50分の1とか100分の1といいますのは、それぞれ50年に1回、100年に1回の洪水に対応する計画ということです。この上の表でいいますと4つの評価項目があって、流域面積ですとか氾濫区域の面積、人口、資産、こういうものを評価して、①のところにも書いてありますが、この4項目のうち最低の規模を採用するというところになっております。
 日置川で言えば、人口が足りないために40年に一度の洪水への対応でいいということになっておるわけですが、この表で見ますと、日置川は氾濫想定区域内の人口が──ちょっと緑色になっておりますが──877人ということで1000人に満たないから、ここが1つのネックになって、40年に一度の洪水への対応ということでいいとなっているというふうに思います。
 資料の表の真ん中にあるように、877人ですから基準の1000人に123人足りないわけで、1段下のランクの治水方針ということになっておるわけなんですが、住民基本台帳なんかで見ますと、この川筋には少なくとも1500名ぐらいの人口が住んでおられます。なぜここは877人というふうにカウントをされてるんでしょうか。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 氾濫想定区域ですが、洪水時による河川の氾濫により浸水するおそれのある区域を求めたものでございます。その区域の人口につきましては、日置川においては平成12年国勢調査のデータをもとに算定して877人としております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 お答えでは、川筋全体の人口ではなくて氾濫が想定をされる区域の人口が877だということなんですが、では、氾濫が想定されるというその氾濫、これは何年に1回の確率の洪水規模の氾濫を予測してこの877人になっているんでしょうか。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 氾濫想定区域は、洪水時の河川の水位、これは計画高水でございますが、年超過確率40分の1により、その水位よりも地盤の高さが低い沿川の地域等の氾濫区域であります。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 今、御答弁をいただきましたように、40年に1回の洪水でつかるという地域の人口が877人だと。ですから、それが1000人に満たないから40年に一度の計画規模でなってるということですから、これは鶏が先か卵が先かというような話で、決め方がどうもよくわかりません。
 50年から100年に一度の洪水で想定すれば、もっと区域内の人口はふえるはずです。少なくとも、明治の水害では日置川付近で49名が亡くなられ、家屋の流失、倒壊が500戸以上となっていることから、大きな洪水ではその氾濫区域の中にもっと多くの人口が含まれてくることになります。こうしたことも考えに入れて検討をいただきたいと思います。
 それでは、次の質問に移ります。
 被害を受ける住民にとっては、どこに住んでいようが、ほかの地域と同様に守ってもらいたいと思うのは当然です。洪水被害を受けたときの補償が一部しかない今の状況の中で、流域の安全度はここまでしか保障できないというのでは、私は、これではますますこの日置川流域の過疎化に拍車がかかるのではないかと心配をしております。計画規模決定のルールというのをこの際見直して、地域間の格差をなくせとは申しませんが、少なくするという方向で考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 河川整備基本方針の計画規模決定ルールにつきましては、国や他の府県も同様ではございますが、河川の重要度を重視するとともに、既往洪水による被害の実態、経済効果等を総合的に考慮して定めるものとしており、現時点で見直す考えはございません。
 具体的には、県内の河川の計画規模は、先ほど述べましたように、流域の大きさや氾濫した場合に想定される被害の大きさ等によって決定をしております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 見直されないということでございますが、私は、日高川、有田川は100年に1回の規模に対応すると、しかし日置川は40年に1回ということでは、本当に、先ほども申し上げましたが、過疎化が進む地域での住民はつらい思いをされると思います。そういう答弁ですが、ぜひこれは見直していただけるよう重ねて要望をさせていただきます。
 次の質問です。次に、殿山ダムに関して伺います。
 殿山ダムの発電用水利権は、来年7月に30年目の更新時期を迎えます。昭和29年に知事によって許可された水利権は、昭和59年に更新をされ、今回更新されれば2回目となります。30年ごとの更新ですが、今回は期間を20年ということで短くするようです。地元の日置川では、昭和33年の大水害、平成2年の19号台風でダムからの大放流を経験し、裁判にもなりましたし、ダムが水害を増してきたという意見は根強くあります。
 一昨年9月の一般質問でこのダムの問題を取り上げ、ダムの改良や運用の改善を水利権更新時期に関電に求めてはどうかと質問したところ、知事が「水利権という問題を使わなくても理を尽くして議論する」と答弁をいただき、その後、一定の運用改善が図られました。このことについては御努力に感謝をしたいと思います。
 今回取り上げるのは、そもそも論であります。殿山ダムの当時の設計が、現在的な知見から見て妥当なものであったかどうかということであります。これは、今回、先ほども取り上げた日置川の河川整備基本方針を勉強する中で疑問に持ったことです。
 では、質問をいたします。
 県がこのたび策定しようとしている日置川水系の河川整備基本方針では、40年に一度とされる洪水に対応するものになっておりますが、そのとき基準地点となる下流の安宅という地区があります。安宅という地区では毎秒4100トンの流量になるという予想になっております。では、この量が下流で流れているときに殿山ダムの地点ではどれぐらいの流量となる予測をされておりますか。答弁をお願いします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 現在策定中の日置川水系河川整備基本方針(案)では、年超過確率40分の1の洪水時における殿山ダム地点の流量の計算値は毎秒約3400立方メートルとなっております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 今お答えいただいたように、毎秒3400トンの流量ということです。
 それでは、殿山ダムの設計時の設計流量はどれぐらいの量で、それは何年に1回の割合で起こる洪水に対応するものになっているのでしょうか。答弁をお願いします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 殿山ダムの設計洪水流量は、年超過確率100分の1で、毎秒3000立方メートルです。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 答弁をいただきました。
 これについては、資料2のほうの簡単な表にまとめております。答弁がありましたように、昭和29年当時、関電が設計した当時は、ダムの地点では毎秒3000トン流れると、これは100年に一度起こるぐらいの確率だということです。ところが、河川整備基本方針の見直しのために県が改めて流量の予測をした平成22年の時点で、3400トンあそこの地点では流れると、それは40年に1回の確率で起こるということになっているわけです。これは大変大きな矛盾を抱えていると思います。
 このダムの設計というのは、昭和33年、日置川の大水害が起きた年の県議会でも大問題になってきたものです。当時の議事録を見ますと、最初関電が出してきた案では毎秒2000トンぐらいでいいと、ダムを放流する能力は。ところが、これでは少ないということで県が指導して毎秒3000トンに改めて、さらに2割の余裕を乗せて3600トンにしたという経過が載っております。
 ところが、御承知のように、ダムが完成した翌年の昭和33年──1958年ですが──100年に一度と言われた毎秒3000トンの流量を超える毎秒4000トン以上の水が出て、ダムの堰堤を越えるような大洪水が起こったのであります。また、それに近い2700トンもの洪水が平成2年(1990年)、19号台風のときにも起こりました。どちらもダムのゲートを6門全部あけての放流です。
 なぜ、100年に一度と聞いていたはずの毎秒3000トン前後の洪水がたった40年の中で2度も起こるのか、おかしいじゃないかという気持ちは地元ではずっとあったのですが、今回、県が河川整備の方針をつくる際の計算で見れば、あの洪水は40年に一度起こる規模としてはあり得るものだということが明らかになったわけです。
 40年に満たない期間の間に、関電が予測した100年に一度規模以上と、それに近い洪水が2回起きている。これは、ダム設計当時の流量予測がどう見ても誤っております。この際、現在の知見で殿山ダムの計画洪水の流量予測、これを見直すべきではないでしょうか。答弁をお願いいたします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 殿山ダムの設計洪水流量は、昭和4年7月の既往最大水位記録と昭和14年から昭和27年までの水位データ等を用いて、その時点での最新の知見に基づいて算定しているものであります。
 また、関西電力からは、設計洪水流量を超えるある程度の洪水に対して、ダム天端を越流しても堤体の安全性には問題がないという報告を受けております。
 いずれにしましても、県としましては、日置川の洪水対策につきましては、堤防の築堤や殿山ダムの洪水時における事前の水位低下を平成24年6月より運用開始するなど、今後ともハード、ソフト両面から洪水時の被害軽減に努めてまいります。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 関電が設計した流量予測の見直しを求めてはどうですかという質問をしたのですが、御答弁では、するかしないかよくわかりません。部長は、当時の関電の設計流量が今日的に見てこれでいいと思われてるんですか、それともよくないというふうに思われてるんですか。どうでしょうか。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 関西電力から、設計洪水流量を超えるある程度の洪水に対しては、先ほど申しましたように、ダム天端を越流しても堤体の安全性には問題がないという報告を受けております。
 仮に、今後、殿山ダムの改築等がされる場合には、現在の河川管理施設等構造令に適合する施設に改築するよう指導するものと考えておりますが、現時点では見直すことを考えてはおりません。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 答弁をいただきましたが、私は、やはりもう県がきちんと独自で計算したデータを今回持っているんですから、今の知見からすれば、あのダムの流量予測を根本から見直すよう求めてもいいのではないかと思います。その上で、必要ならばダムの改良も含めて検討をさせるべきだと思います。これは、水利権の更新時期でもあるので、しっかり関電と議論されるよう要望をさせていただきます。
 それと、今も御答弁にありましたが、河川管理施設等構造令というのもあります。現在の政令では、ダムの設計については200年に一度の洪水でも安全に流せることを求めております。それに比べて、40年に一度の洪水でさえ天端を越えて流れっ放しになるようでは、ダムはとても怖くて認めるわけにはいきません。
 ここに、前回の水利権──更新当時ですね──昭和59年に当時の日置川町長坂本三郎氏が関電に回答を求めた文書があります。防災目的を加味したダムに改造してほしいという町民の要望に、関電は次のように回答しています。「明治22年に田辺市内で記録した日雨量901.7ミリの雨が万一ダム上流に降った場合、ダム地点の流入量は推定で毎秒約8700トンになり、ダム天端を越流することになりますが、この場合でもダムが決壊する心配は全くありません」と、このような回答でございました。これは今部長が答弁されたことと通じるものがあると思いますが、しかし、仮にダムが大丈夫でも、毎秒8700トンもの洪水が下流を襲ったら、流域では多数の死者が出るでしょう。こんな予測までしておきながらそれに対する備えがされていないことは、私は許されるものではないということを申し上げておきたいと思います。
 次の質問に移ります。洪水ハザードマップについてです。
 関電が設計を見直すかどうかということとは全く無関係に、現実には、40年に一度の洪水やそれ以上の規模の洪水はいつ起こってもおかしくありません。
 そこで、現在、県の浸水想定区域図をもとに白浜町のほうで作成をした日置川の洪水ハザードマップというのがございます。きれいなやつをつくっていただいておりますが、この洪水ハザードマップですが、先ほど議論しました河川整備の基本方針と同じように、40年に一度の洪水で予想をしております。方針が40年に一度だからといって、ハザードマップまで40年に一度の洪水でやるというふうにこだわらなくてもいいと私は思います。
 日置川では100年に一度の洪水も起こるはずです。この際、このハザードマップ、市町村がつくってくれておりますが、この作成のための、県がもとのデータをつくっています浸水想定区域図、これを見直して検討を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 日置川につきましては、県が平成18年7月に水位周知河川に指定するとともに、年超過確率40分の1の降雨による浸水想定区域を公表し、これに基づき、白浜町が平成20年3月に洪水ハザードマップを作成したところです。
 また、公表に際しましては、「支川のはん濫、想定を超える降雨、高潮、内水によるはん濫等を考慮していませんので、この浸水想定区域に指定されていない区域においても浸水が発生する場合や、想定される水深が実際の浸水深と異なる場合があります」と文章で掲載し、注意を促しております。
 加えて、現在、県としましては、紀伊半島大水害を受けて、計画規模を超える洪水に対する浸水想定区域の洪水レベルの考え方やその活用の方策などについて検討を行っているところであり、大規模な洪水に対しても早目に安全な避難が行えるように取り組んでまいります。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 答弁をいただきましたが、ハザードマップについてはそれを超える部分もあるということで、確かに文字で小さく書かれておりますけれども、それではやはり困ったことが起こるということになります。
 といいますのも、洪水ハザードマップという考え方なんですが、和歌山県もお世話になっております群馬大学の片田敏孝先生がこの分野の権威でもあります。片田先生が、この間お借りしたんですが、「消防科学と情報」という専門の雑誌がありますが、この2002年の夏号にハザードマップについて注意点を書いてくれております。
 第1のハザードマップの問題点は、マップを配布しても、それを捨ててしまったりなくしたりしている住民が多いことであるということを述べられてます。
 2つ目の問題点は、「洪水ハザードマップに示される情報が、洪水水害のイメージを固定化してしまうことである」、「洪水ハザードマップは、降雨や堤防の破堤についてシナリオを与えて、洪水氾濫のシミュレーションを行った結果が示されているに過ぎず、洪水氾濫がそのシナリオにとどまる保証は何もない」ということです。
 3つ目の問題点は、洪水ハザードマップの表現能力の問題です。一般的な洪水ハザードマップは、これもそうなんですが(資料を示す)、紙の地図にカラーで予想浸水深というのを色分けして書かれておるんですが、流速――速度ですね――を表示することは難しい。「流速が速い場合、例え浸水深が浅くても水の中を歩いて避難することは危険であるにも関わらず、住民は浅い浸水深に安心する傾向が強い」、このように注意をされています。
 4つ目の問題点は「洪水ハザードマップが“洪水安全地図”に変わってしまう場合がある」というようなことを述べられて、洪水ハザードマップの公表のあり方が重要になると言われております。
 今、検討を始めていただいたということで御答弁をいただきました。こうした今申し上げた点に注意して検討を進めていただき、なるべく早く成果を出していただけますよう要望をしておきます。
 次の質問です。これも一昨年の9月議会で質問をした問題です。
 熊野川水系の電源開発のダム群については、県のホームページで、今、リアルタイムで放流の状況がわかるように改善をされました。ところが、殿山ダムについてはいまだにそうなっておりません。実は、殿山ダムにはテレホンサービスという自動の応答の設備がありまして、電話をすると自動音声で今何トン放流していますということが流れるんですけども、私たちは、洪水が起こりそうだと何度もダムのテレホンサービスに電話をして聞いております。大変不便ですし、情報の提供ルートは二重、三重とあったほうが安心です。殿山ダムの放流状況についても県ホームページで確認をできるようにするべきだと思いますが、御答弁をお願いいたします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 河川の水位やダムの放流情報等の提供は、洪水時の住民の避難行動や水防活動等に重要であると考えております。このため、和歌山県では、紀伊半島大水害を踏まえ、平成24年10月から国土交通省の「川の防災情報」で公表されている一級水系である紀の川や熊野川の国土交通省管理のダムや電源会社管理のダムの情報についても、県のホームページで提供しております。
 一方、二級水系である殿山ダムの情報につきましては「川の防災情報」に接続されておらず、ダム管理者である関西電力に県ホームページでのデータの公表の協力を呼びかけておりますが、データ伝送に係るネットワークやシステムの構築が必要であるとのことから実現ができておりません。
 県としましては、今後も引き続き協力を働きかけてまいりたいと思います。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 答弁をいただきました。
 働きかけてはおるけれどもまだだという御答弁だったと思いますが、私は、また、水利権を使うなというふうに言われますけれども、やはり水利権の更新という重要な時期に来ているわけですから、こうした問題についても、ぜひ水利権の更新までにはきちんと実現をして、住民に安全・安心の情報を提供するということをしっかり指導していただきたいというふうに思います。これも要望をしておきます。
 次の質問です。
 次に日置川は、現在、水防法という法律の定める水位周知河川ということになっておりますが、気象庁と共同して水位等の予測を行う洪水予報河川、これは現に日高川や有田川が指定されておりますが、この洪水予報河川に指定できないものかどうかというのを御答弁をお願いします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 現在、河川の流域面積が大きく、洪水による大きな損害が生じる可能性のある有田川、日高川、古座川、熊野川の4河川につきましては、区間を定めて今後の雨量の見通しと河川水位の予測を行う洪水予報河川の指定を行っております。
 日置川につきましては、河川水位が設定された水位に到達したときに水位情報を関係市町等に通知する水位周知河川として指定するとともに、テレビのデータ放送や防災わかやまメールなどで住民の方々へも情報提供を行っているところです。
 議員御指摘の日置川における洪水予報河川指定につきましては、同流域での実績データから予報精度の確保等の技術的検討も必要であるということから、現時点での指定は難しいものと考えております。
 なお、県としましては、流域の雨量や上流の水位情報などの防災情報につきまして、今後も県のホームページや多くのメディア等を活用して提供してまいりたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 現時点では洪水予報河川への指定は難しいということでございますけれども、私は、これはやはり費用と人員も含めて投入をしていただければできるのではないかと考えております。
 といいますのも、ちょっと戻りますが、資料1にもあるように、日置川は流域面積で言えば有田川や日高川と並ぶぐらい、419平方キロですから大変広いわけです。広いわけですから、流域の小さな河川ですと洪水がどれだけ出てくるという予報は大変難しいというのは、これはよくわかるんですが、流域は広いわけですから、それに見合ったシステムとして、私は洪水予報河川というのは十分可能だというふうに考えております。ぜひ今後の検討をお願いしたいというふうに思います。
 4番目の利水と環境への配慮について伺います。
 今回の河川整備基本方針では、日置川の河口から6キロメートルまでの範囲の河川整備は洪水時の流量を確保するため河床の掘削をしていくということになっておりますが、これには地元からも心配の声が上がっております。
 まず、最近特にひどくなっていると言われているのが、水田のための用水の塩分、塩です。河床が下がって、海の潮が田野井地区という河口から4キロメートルの地点まで上がっていると言われていて、既に以前から稲作への影響も出ております。
 また、日置川はアユで有名ですが、河床の掘削はその産卵への影響も指摘をされております。
 さらに、日置川の河口の部分ですが、ヨシ原が一部発達しているところがございます。そこにはシオクグという聞きなれないカヤツリグサの仲間の植物や、県のレッドデータブックにも載っていて絶滅危惧種にも心配をされている、本県では日置川の河口にしかいないというヨドシロヘリハンミョウという昆虫もおります。これらへの影響はないかと心配の声もあります。こうした心配にどうお応えになるのか、答弁をお願いいたします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 日置川におきましては、これまでも河川水辺の国勢調査や河川整備基本方針策定時における調査の中で、動植物の生育・生息実態を把握するなどの環境調査を実施しているところです。
 また、現在策定中の日置川水系河川整備基本方針(案)におきましては、適切な技術的知見に基づき、できるだけ河川環境への影響の回避・低減に努めるとともに、必要に応じ代償措置を講じることとしており、実際の河床掘削等におきましても可能な限り環境の保全に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 これは今後の課題ですから、ぜひ影響のないような研究をしていただきたいというふうに思います。
 次に、潮どめ堰堤設置要望についてです。
 地元の水利組合や区長さんらから、県と町に宛てて潮どめ堰堤の設置要望が上がっております。これらの地区では、稲作への塩害は以前から問題になっておりましたが、水をくみ上げるポンプを上流につけかえたりしてしのいでまいりました。日置川では、これまで、ダムの建設やあるいは砂利採取ということもあり、下流部では河床が低下していると関係者は言っています。河川管理をしている県土整備部で潮どめ堰堤をつくるなど対応していただきたいというのが要望でございますが、この要望についていかがお応えになるでしょうか。お願いいたします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 平成25年7月、本年7月に、日置川区長会から和歌山県及び白浜町に対して潮どめ堰堤の設置要望があったことは承知しております。また、白浜町からは、満潮時にはJR鉄橋付近まで潮が遡上しており、近年の海面上昇と渇水時の河川流量の減少など、悪条件が重なったときに塩害が発生していると聞いております。
 しかしながら、日置川におきましては、平成3年と平成23年の両方の河道の測量データを比較しましても、河床高に大きな変化がないのが現状でございます。したがいまして、潮どめ堰堤を河川管理者で設置することは考えておりません。
 なお、白浜町からは、ポンプ工法による上流地点での取水も1つの選択肢として検討する旨、伺っております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 御答弁では河川管理者として県は設置することは考えていないということなんですが、やはり地元の要望は、これはいろいろな自然現象もあるのかもしれないが、河川の管理の影響で、昔は上がってこなかった潮がどんどん上流まで上がってきているという主張です。
 ぜひそうした要望に応えるためにも次の質問へ行きたいんですが、先ほどの水稲の塩害を心配する声に応えるためにも、いわゆる汽水域と言われる潮が入っていく部分、この塩分濃度が季節や潮回りでどう変化をしているのか、まず、河川整備の前にきちんと調査をしてデータを蓄積していく必要があると思うんですが、この調査についていかがでしょうか。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔石原康弘君、登壇〕
○県土整備部長(石原康弘君) 和歌山県では、日置川を初め県内河川におきまして河川の水質を監視するための測定を行っております。日置川におきましても、平成19年から安宅橋地点で年4回、塩化物イオン等の測定を行っており、データを蓄積しているところです。
 県としましては、この測定値も参考にしつつ、河川工事を行う場合には必要に応じて調査を追加するなどしながら、利水と環境にも配慮してまいりたいと考えております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 調査の追加という御答弁もいただきました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、2番目の住宅新築資金等の滞納分解決へ向けての質問に移ります。
 報道によりますと、9月6日に県市長会が来年度予算に関する要望を知事に提出されたそうであります。その中で、御坊市長さんから、同和対策として実施された住宅新築資金等貸付事業について、制度をつくった国や県に対して滞納整理について強い要請があったようであります。
 この住宅新築資金は、歴史的、社会的理由によって生活環境などの安定向上が阻害されている地域の環境の改善を図るため、住宅の新築や改修または土地の取得について、必要な資金の貸し付けを行う制度であります。国の制度は、国の補助金と市町の起債によって原資をつくり、それを個人に貸し付けております。この制度を使った36府県の大部分は国の制度のみで運用しておりますが、和歌山県、高知県、神奈川県だけが県独自の制度をつくっております。
 中でも、和歌山県は、国の制度、それから県の制度、このどちらをどのように使ってもよいということで運用しておりますから、実際は、借り入れをした個人の中には、家の建物には県の資金、土地を買うのには国の資金というような使い方をされている、まさに家と屋敷で違う制度を使っている例がたくさんございます。
 この和歌山県独自の制度は、当時の民生部同和室が窓口になって、市町村振興資金特別会計の中で市町への原資の貸し付けを行い、市町が個人に貸し付けるという制度になっておりました。国制度も県制度も、あくまでお金の貸し借りは借り入れた個人と市町との間の関係になります。個人が滞納した場合は、市町はいわば肩がわりするような形で、一般会計から持ち出しで国や県に償還をするということになっております。
 滞納の状況は、資料を出していただきましたので資料3をごらんください。左が国制度、右が県制度です。昨年末時点で、国制度で約31億円、県制度で約23億円の滞納があります。償還率で見ると、低い市町では60%台というところもございますが、平均すれば22市町で93%程度となっております。
 こうした状況のもとで、貸付金の償還が最大で25年の長期に及ぶため、その間における市町の事務費負担を軽減し償還事務の適正化を図ることを目的として、国は、償還推進助成事業として平成4年から債権回収や法的措置への補助制度をつくりました。これには県も応分の負担をしております。
 また、その後、平成14年6月県議会で、日本共産党県議団にいた金田眞議員が住宅新築資金等貸付制度について質問。県の市町村振興資金から貸し付けた分の滞納については補助制度がなかったことから県の支援を求めましたところ、平成17年になって滞納処分促進対策補助金として県独自の制度ができております。補助制度の実績は、制度発足当初からの合計で、国の補助制度で約6億円、県の補助制度は約2300万円となっています。
 国の補助制度については、事務経費のほかに、法的措置のための費用に4分の3の補助が出ます。また、債権回収のため強制執行などをした場合には、どうしても滞納した分と強制執行した分の差額が出てまいります。これについても回収不能になった金額の4分の3は国が面倒見ましょうと──国と県ですね。県も入っておりますが、補助をします。事務経費は、対象外になっている県の補助制度でも、回収不能金額の2分の1は県が補助を出してくれるということになっております。
 ただ、県の回収不能になった金額への補助は、いわゆる債権放棄を補助要件としているために実績が伸びていないという意見が市町の中にございます。具体的に言えば、それぞれの市町の議会において、貸し付けを受けた個人名を公にして債権放棄の議案を通さねばならないという、このハードルがあるために使いにくいという御意見が出ているようであります。
 そこで、伺います。
 県のつくっている補助制度の狙いというのは一体何なのか、企画部長に答弁をお願いしたいと思います。
○副議長(花田健吉君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 県補助制度の狙いでございますが、県は、ただいまの議員の御質問の中にもございましたけれども、市町が貸し付けました同和対策住宅新築資金等貸付金の回収に当たりまして、借受人からの滞納が発生しておりますので、この問題を解決するために、弁護士費用などの事務的経費のほか、債権放棄を要件として、未償還額と強制執行等による取立額との差額などを対象とした同和対策住宅新築資金等貸付金滞納処分促進対策補助金を平成17年度に創設いたしました。
 この制度は、市町における滞納債権の回収と回収困難な債権の整理を促進することによりまして、市町の財政負担の軽減を図ることを目的といたしております。
○副議長(花田健吉君) 高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕
○高田由一君 御答弁では、回収困難な債権の整理ということも促進するためにということで、1つ債権放棄も要件に入っているというふうに私は捉えましたけれども、やはり、いずれにしても、国の補助制度と県の補助制度の違いから補助金が利用しにくいんだという、この市町の声があります。ただ、一方で、田辺市さんのように県の補助制度をしっかり活用して大きな実績を上げているというところもあるというのも事実であります。市長会から上がっているさまざまな要望について今後も真摯に対応していただけるよう、この場で要望しておきます。
 2つ目です。これは要望です。
 市町の債権管理への支援なんですが、この資金の滞納は、先ほど申し上げましたが、国や県の制度を合わせて約55億円となっておりますが、そのうち法的な措置などによって国や県の補助金を使えるのは一部です。償還が滞っている方の大半は、経済状況もあって、契約変更もして細々と償還を続けている世帯が多いと伺っております。もちろん、現に家族がそこで生活をしているんですから、金融機関などのように抵当権を執行するというわけにもいかない状況があるのもわかります。
 そんな状況の中、今後も相当長期にわたる債権管理の負担が市や町、担当者にもかかってまいります。こうした市町の負担に対して、私は新たな支援の枠組みが必要な時期が必ずやってくると思っております。今のうちからこの部分をしっかり研究して、もうこれ以上、国や県のつくった制度で市町の負担がふえないように要望して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(花田健吉君) 以上で、高田由一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時36分散会

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