平成25年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


平成25年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

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  午後1時0分再開
○副議長(花田健吉君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 まず、冒頭に、この場をおかりして一言お礼を述べさせていただきたいと思います。
 平成25年5月15日、新宮市に夢のような一報が駆けめぐりました。それは、一般国道42号新宮紀宝道路の新規事業化が決定したとの国土交通省からの発表でした。
 新宮市あけぼのから三重県の紀宝町までの2.4キロメートル、事業費約210億円、つまり地域が念願しておりました熊野川河口大橋の建設がついに現実のものとなったわけです。これもひとえに、知事を初め県当局の皆様、本県選出国会議員を初め県議会の先輩・同僚議員の皆様、そして県民の皆様方の絶大なる御支援、御尽力のたまものと深く感謝するとともに、地域を代表する1人として心から厚く御礼を申し上げます。
 今後とも、紀伊半島一周高速道路の実現に向けて、引き続きのお力添えをよろしくお願い申し上げます。本当にありがとうございました。
 さて、議長のお許しをいただきましたので一般質問をさせていただきたいと思いますが、質問に先立ち、去る平成25年4月24日から28日の日程において、インドネシア共和国の首都ジャカルタを自由民主党県議団の中村裕一議員、藤山将材議員、森礼子議員と私、濱口太史の4名で視察してまいりましたので、報告をさせていただきます。
 今回の視察は、東アジアの経済統合の推進を図るため、政策研究や政策提言を行う国際機関として平成20年に設立された東アジア・ASEAN経済研究センター「ERIA」の活動状況を把握することが主な目的でありました。
 あわせて、日本大使館やジェトロ・ジャカルタ事務所において、インドネシアの経済情勢や今後の動向について調査することにより、人口増加により経済市場が膨らみ、発展目覚ましいインドネシアの活力を我が県と結びつける糸口を探り、どのような経済浮揚策や観光客の取り込み策を講じたらよいのかを見出そうというものでありました。
 ERIAの訪問に際しては、設立の立役者であります、当時、経済産業大臣を務めていた二階俊博衆議院議員を初めとする国会議員団に同行させていただきました。そのほかにも、ブディオノ副大統領への表敬訪問やERIA主催レセプションに参加、シャープ・エレクトロニクス・インドネシア工場を訪ねるなど、大変有意義な視察となりました。
 平成18年4月、当時の二階経済産業大臣が、グローバル戦略、経済成長戦略の一環として東アジア版OECD(経済協力開発機構)の構想を提唱し、その第一歩として政策研究機関の設立が提案されました。その背景には、ASEANと東アジア地域全体のGDPが約15兆ドルと、世界GDPの4分の1を占める高い経済成長を実現した一方で、地域内格差、地域連結性、気候変動、環境問題、食料やエネルギー安全保障を含め、対処すべきさまざまな課題が山積しているところにありました。
 そのような課題に対して、アジア全体の地域政策を調整する役割を担うべく、中核となる国際機関が必要であるとの認識のもと、同年8月に行われた日本とASEAN諸国の経済大臣の会合にて、二階経済産業大臣がERIA構想を提唱、それに対し、東アジア地域の全ての首脳からの賛同を得ることになりました。そして、翌平成19年11月、シンガポールで開催された第3回東アジアサミットにおいて、正式設立の合意に至ったという経緯があります。参加国は、ASEANに加盟している10カ国と中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド、そして日本を含めた6カ国の合わせて16カ国であります。
 さて、ERIAの主な活動はというと、大きく3つが挙げられます。
 1つ目は、政策研究活動であります。経済統合の深化、経済格差の是正、持続的経済発展を主要な3つの柱と位置づけて研究活動を実施しています。その研究分野は、貿易・投資促進、グローバル化、中小企業振興、人材育成、インフラ開発、エネルギーや環境の問題等、実に広い分野に及んでいます。
 2つ目は、政策普及活動であります。地域の共同体意識の醸成、地域内の産学官の幅広い関係者との意見交換の促進、ERIAの研究成果普及を目的としたセミナーやシンポジウムを開催しています。政策研究能力を強化し、地域開発のための知的基盤を確保するために、能力強化や向上のためのプログラムも実施しています。
 3つ目は、政策提言活動であります。東アジアサミット、ASEANサミット及び関連閣僚会合からの要請を受け、地域の経済成長を刺激し、東アジアにおけるパートナーシップを強化するため、政策研究の成果を踏まえた政策提言を行っています。
 二階代議士を初め一行がERIAを訪れると、各国の研究者や職員らの熱烈な歓迎を受けました。その後、西村英俊事務総長の案内により、フロアに並ぶ各国の事務所を回りました。
 それから、一堂に会し、各国の研究者による研究内容と結果、また、どのような場面で提言が取り上げられ、生かされているかなど、詳細や成果について説明報告を受けました。それを受け、日本側を代表して二階代議士から関係者に対し、設立からこれまでの労への感謝と今後の活躍を期待する言葉が述べられました。ブディオノ副大統領との面会の際に、ERIAの活動に対するインドネシアからのさらなる支援の確約があったとの報告がなされ、会場は盛り上がりを見せました。
 本県も、他府県におくれることのなきよう、経済動向を正確に、かついち早く捉えるためにERIAとのかかわりを築き、高く広くアンテナを広げることにより、今後も若年層の増加でさらに巨大なマーケットとしての期待が見込まれるインドネシアを初め東南アジア諸国に対する経済的戦略を講じることが重要だと考え、その取り組みに期待するところであります。
 以上、ERIAの視察報告を終わり、質問に入らせていただきます。
 今議会の一般質問、東南アジアを初め海外戦略を取り上げている質問が多く、重複する部分もあろうかと思いますが、御容赦いただき、おつき合いをよろしくお願い申し上げます。
 それでは、インドネシアに対する本県の経済浮揚策について質問をさせていただきます。
 1つ目、東南アジアにおける県産フルーツの輸出支援についてであります。
 インドネシア日本大使館とジェトロ・ジャカルタ事務所を訪ね、視察国であるインドネシアと首都ジャカルタの概況や経済的な動向について伺いました。
 インドネシアは、東南アジアの南部に位置する約1万8000の島々から成る共和国、国土の総面積は約189万平方キロメートルで日本の約5倍、年中、昼間の温度が30度前後、また、洪水に悩まされるほど雨が多い高温多湿な気候であります。
 総人口は約2億4000万人、中国、インド、アメリカに次いで世界第4位であります。1つの国の人口構成で、子供と老人が少なく、15才から64歳までの生産年齢人口が多い状態を人口ボーナスと言いますが、今後、まだ10年以上、この状況が続き、人口は増加すると推測され、豊富な労働力と消費の需要拡大で高度の経済成長が見込まれます。
 その一方で、生産年齢層が約7割近くを占め、毎年250万人以上の新規労働者の雇用機会を創出しなければならないことや、エネルギーの輸出も恒久的には続かないため、将来的に国の収益減少が懸念されるなどの課題もあります。
 また、税制、通関、労働に関しての場当たり的なルール変更が突然行われることがあり、企業にとっては不透明性、予見可能性が低いため、対応困難な状況に見舞われ、戦略や経済活動に混乱を来すことがあるとのことです。ただし、政府への抗議が行われると改善されるケースも多いようです。
 次に、首都ジャカルタについて述べますと、全国土面積の約7%にすぎないジャワ島に総人口の約6割が集中しており、ジャカルタには960万人が住んでいます。その上、賃金の上昇などにより富裕・中間層が増加、それに伴って自家用車の保有台数がここ2~3年の間に急激に伸びたとのことです。そのため、主要道路は多くの自動車やバイクで早朝から深夜まで慢性的な大渋滞に陥っており、わずかな移動距離にもかかわらず、かなりの時間の無駄を費やす状況となっております。
 実際に我々も、移動のたびに大渋滞にはまりました。目的地が進行方向の右側に位置している際に、右折できる交差点がほとんどないため、何百メートルも先にあるロータリーまで行ってUターンをしなければなりません。そのような道路事情が非効率な交通状況を招いていると考えられます。
 ちなみに、走行している車両の9割以上が日本車で、日本国内より率が高いそうです。その要因は、やはり丈夫で故障が少ない点にあるとのこと。バイクは、中国製が流行した時期もあったようですが、故障が多く、日本製に回帰したとのことです。そのほか、交通機関は、専用車線を走行する連結されたバスが目を引き、また、地下鉄が日本の援助のもと導入される予定であるとのことです。
 インドネシア人の人間性は、優しい、真面目、倫理性が高い、そして親日的とのことです。
 このように、成長著しく、巨大マーケット市場となったインドネシアに対し、他の東南アジア諸国と同様、経済活動のターゲット国の1つとして捉えていくべきだと考えますが、和歌山県の何をどのように売り込むかというポイントを定めることが重要だと思います。
 まず1つ目は、フルーツについて考えてみます。
 そこで、農林水産部長にお尋ねします。これまでに、県産フルーツを東南アジア諸国へ売り込むために、調査研究や販路開拓を目的とした事業に取り組んでこられたと思いますが、県産フルーツの輸出支援事業の具体的な事業内容や効果など、概略を御説明ください。
○副議長(花田健吉君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 近年発展が著しい東南アジア諸国は、和歌山県産フルーツの輸出先としても重要な地域であると認識しており、台湾、香港、シンガポール等の百貨店での和歌山フェア、量販店での販促活動、見本市への出展、バイヤーの招聘など、販路開拓活動に取り組んでまいりました。また、本年度は、新たにタイ王国でトップセールスを実施し、県産フルーツの販路拡大を図ったところでございます。
 こうした取り組みにより、桃、柿、ミカンなど県産果実の輸出額は、平成24年度で約1億2000万円となっておりますが、今後は販売量の拡大を目指して、現地量販店での店頭販促などを重点的に行ってまいりたいと考えております。
 議員お話しのように、東南アジア地域は県産フルーツの輸出戦略の重要な地域ですので、今後も県内生産者の取り組みを積極的に支援してまいります。
○副議長(花田健吉君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいまの答弁を踏まえて、インドネシアへの県産フルーツの市場拡大についてお伺いしたいと思います。
 我が和歌山県は、フルーツ王国とも呼ばれ、多種にわたるフルーツの産地であります。滞在中に食したインドネシアのフルーツは、新鮮なものは多かったのですが、余り甘みを感じませんでした。もちろん、味覚に違いはあるのかもしれませんが、甘みの多い和歌山県産のフルーツなら、恐らくインドネシアでも受け入れられ、需要が見込めるのではないかと思います。
 ちなみに、ショッピングモールの食品売り場では、米国産のイチゴが1パック約3000円で売られていました。高価な米国産イチゴでも結構売れているという現状からすれば、和歌山県産フルーツなら、コスト面で少々高価になったとしても十分販路が開けるのではないでしょうか。
 ただ、道路整備の遅延、車両の急増等により深刻化する交通渋滞がスムーズな物流を妨げる構造的な課題ではありますが、人口ボーナス、経済的な発展を考慮すれば、インドネシアの市場マーケットはやはり魅力的と言えます。
 そこで、知事にお尋ねをします。
 先ほどの農林水産部長の答弁では、シンガポール、台湾、香港などを中心に農水産物の輸出促進を支援してきたとのことでしたが、これから大きな市場マーケットとして見込まれるインドネシアに対しては、どのような印象をお持ちでしょうか。あわせて、インドネシアへの県産フルーツの市場拡大について、知事の考えをお聞かせください。
○副議長(花田健吉君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) インドネシアは、近年、御指摘のように成長が著しく、また親日的な国であるわけでございますので、そういう点でも有望だと思います。
 約2億4000万人の人口を抱えておりまして、経済発展に伴いまして、当然のことながら富裕層の増加も見込まれるなど、県産フルーツや加工食品の有望な市場として重要であると認識しております。その割には、これまでの取り組みは他国と比べて出おくれていたことは、正直に申し上げないといけないと思います。
 そこで、今後、インドネシア国内での果実の需給状況や消費者の嗜好等について情報収集を行って、これに基づいて積極的に売り込みを図ってまいりたい、そういうふうに思っております。
○副議長(花田健吉君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 続きまして、観光地としての本県の売り込みについて考えてみます。
 JTBジャカルタ営業所で話を伺ったところ、インドネシア人の中流・富裕層と分類される総人口40%、9600万人のうち上位20%、約2000万人が海外旅行への願望を持っていると言われ、その中でも日本に対する憧れは強いとのことです。
 実際に訪日観光客数は、平成24年には10万人を超えています。四季折々に表情を変える日本の海や山などの自然の風景、文化的に認知度が高い場所、価値観の高い有名な場所などで記念撮影をすることが最近のステータスだそうであります。その背景には、学校などで学ぶ日本文化に関心が高いこともありますが、フェイスブックなどへの投稿が目的であるとも心理分析されていました。
 本県には、撮影スポットとなる風光明媚な自然、世界遺産登録された神社仏閣や歴史、文化にあふれた名所が多い点をPRすべきと考えます。
 また、インドネシアの方に限ったことではありませんが、海外の人々が日本を訪れる先は、定番とも言える東京、京都、大阪などの都市部を回るゴールデンルートのほかに、北海道、箱根などの保養目的の観光地も上位にランクされています。癒やしを求め、温泉や日本料理も人気が高いとのことであります。
 しかし、イスラム教を初め宗教上の制約もあり、女性は肌を見せられないため公衆浴場には入りたがらない、食事も豚肉を食べてはいけないなど、タブーとされていることがいろいろとあります。
 そういった制約に対応するため、県内でも既に行われている貸し切り風呂の導入、豚肉を使わないメニューや食器などへの配慮、お祈りをサポートするなど、おもてなし精神を発揮し徹底した対応を行えば快適な観光地として好感度が上がり、注目も集まり、有力な訪問先の選択肢となり得るのではないかと考えます。
 さらに、本県の強みは、関西空港が近いことであります。現在は、日本国内の空港からデンパサール行きが運航されていますが、本年10月からジャカルタと関西空港を結ぶ直行便を週4便就航させるとの計画が発表されました。運航するガルーダ・インドネシア航空のエミルシャ・サタル社長は、日本からインドネシアへ来る人は多いが、逆にインドネシアから日本へ行く人は少ないので、富裕層を中心に訪日観光客を送り込みたいと述べています。
 また、インドネシアではサイクリングが人気のようで、富裕層が多いことに加え、集団で移動することも多いことから、サイクリングツアーによって渡航者数の増加を目指すこともできます。既に山梨県では、富士山を眺めるサイクリングコースを設定し、社長みずからもサイクリングを楽しんだとのことです。幸い、鹿取克章インドネシア大使からは、和歌山県でも実施してくれるならぜひともその企画をあっせんしたいとのお申し出もいただきましたので、私たちも応援したいと思います。
 そこで、知事にお尋ねします。
 今後、ジャカルタから関西空港への直行便就航は、さらに増加が期待されるインドネシア人観光客を本県にも取り込む大きなチャンスであり、和歌山県への観光ルートを定着させる第一歩と考えます。その目的を達成するためには、全国多数の有力観光地に引けをとらないよう、自然や文化的な魅力をアピールすることはもとより、おもてなしや対応は和歌山県が最高に行き届いているというよいイメージを認識していただくため、何らかの対応策、何らかの取り込み策、あるいはPRやセールス活動を講じる価値があると考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
○副議長(花田健吉君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 昨年のインドネシアからの訪日客数は10万1600人と過去最高を記録いたしまして、また、ことし1月から5月までの実績は前年のさらに1.5倍になるなど、インドネシアは、東南アジア市場においてタイと並んで訪日旅行が急増している市場の1つとなっております。経済成長を背景に、今後とも成長が見込まれると思います。何よりも人口が多うございますので。
 県では、東南アジア市場を新しい市場として2年前からプロモーションを積極的に実施したところ、タイ、シンガポールのほか、イスラム圏のマレーシアで実績を上げ始めております。また、昨年、観光関係者を対象にイスラム圏の方へのおもてなしに必要なハラルやお祈りへの対応についての説明会を開催したところ、一部の宿泊施設がそういうものに対応するということで、イスラム圏観光客の受け入れ環境整備に取り組んでいるところであります。
 観光誘致の面でも、実はインドネシアへの取り組みは現在では行っておりませんで、他国へのアプローチと比べて出おくれております。しかし、御指摘のような状況でございますので、インドネシアについても積極的にやりたいと思っておりまして、そのためには、まず現地旅行会社へのセールスから実施していく必要があると思っております。それから、ハラルなどへの対応、あるいはサイクリングなどのプロジェクト、ニーズがいろいろあると思いますが、そういうものへの対応について今後とも観光業者に対して働きかけをして、受け入れ側も準備をしていきたい、そんなふうに思います。
○副議長(花田健吉君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 日本大使館やジェトロなどの機関を通じて本県のPRに力を注いでいただきたいと思いますし、今後ともインドネシアに向けた戦略に取り組んでいただきたいと思いますんで、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、大きな項目3番目、新宮港港湾の整備拡充についての質問に移らしていただきたいと思います。
 1つ目、港内の静穏度対策についてであります。
 太平洋、熊野灘を臨む新宮港は、昭和54年の供用開始以来、原木、製紙用チップの輸入、同じく製紙用チップ、砂、砂利、石材、セメントなどの移出・移入を行う地域の物流拠点港湾として発展してきました。
 平成12年、国の特定地域振興重要港湾の指定を受け、また税関が設置されている港として、紀伊半島南部において唯一の外国貿易港であります。第2期工事を経て、平成18年11月から3万トン級の大型船の接岸が可能になり、大型クルーズ客船やチップ運搬船などの入港が年々増加しています。
 平成19年には、世界一の掘削能力を備えた地球深部探査船「ちきゅう」が、新宮市沖で巨大地震発生メカニズムの解明やメタンハイドレートの調査などを実施する際に、燃料や食料及び掘削機材等を「ちきゅう」に搬送、補給するための支援拠点港湾としてその役割を果たしたことは記憶に新しいところです。
 このように、活躍分野の範囲が広がる中、平成16年7月、「紀伊山地の霊場と参詣道」の世界遺産登録を契機に、熊野を目指す観光客を乗せた大型豪華客船がたびたび訪れるようになりました。大型豪華客船が入港することにより、当地域の観光面においても大きな経済効果をもたらし、今後もさらに期待されるところです。
 さて、船舶の安全な入出港や係留を確保するために、港内の静穏度を向上させるために必要なのが防波堤の整備です。
 現在、防波堤については、第1期工事によってできた三輪崎岸壁の沖には、250メートルの基部防波堤と760メートルの北防波堤があります。そして、第2期工事によってできた佐野岸壁の沖には、平成22年度に完成した300メートルの第1外防波堤と、平成27年度完成予定の150メートルの第2外防波堤を合わせて約120億円の予算で現在建設中と、静穏度対策に多大な御努力をいただいているところであります。
 しかしながら、熊野灘特有の大きなうねりが着岸の妨げになることがたびたびあります。実際、特に大型の客船である飛鳥Ⅱは、平成18年11月の初入港以来、昨年10月までに15回寄港しましたが、予定どおり入港できたのはそのうち8回、つまり7回は入港できなかったという残念な結果に終わっています。すなわち、1隻当たり700名から800名の乗船客が熊野三山を初めとする観光地を訪れることなく引き返していくことになります。また、約400名の乗務員に下船して当地域で食事や休憩時間を過ごしてもらうこともできません。
 ちなみに、飛鳥Ⅱが1回入港を取りやめるとなると、チャーターされていた観光バス約15台やタクシー約50台がキャンセル、乗客や乗務員の食事や土産の購買、娯楽費、さらには岸壁使用料なども地域に落ちず、その損失の推計総額は約1500万円と算出されています。経済的メリットをみすみす逃し、まさに肩透かしの状況です。
 そればかりではなく、熊野をわざわざ訪れてくれた観光客に失望感を与え、一度に大勢の観光客を迎え入れることができる大型客船ツアーがこのままでは敬遠され、寄港の機会すら減ってしまうのではないかと懸念しています。
 また、大型チップ船でも同様のケースが発生し、うねりがおさまるまで沖合での停泊を余儀なくされ、運航行程に影響が出るとのことであります。
 港内の静穏度を向上させ、大型船舶の入港確率を高めるため、県としては、今後、どのような対策を考えていただいているのでしょうか。県土整備部長に答弁を求めます。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 新宮港は、紀南地方の地域振興にとって重要な港であると考えております。現在、船舶の安全な入出港や係留を確保するために、港内静穏度を向上させる防波堤の整備を実施中であり、平成27年度の完成を目標に取り組んでおります。
 防波堤が完成すれば所定の港内静穏度は確保されると考えていますが、その効果をよく確認するために、昨年度から港内と港外に波高計を設置して波浪の観測を始めております。
○副議長(花田健吉君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 第2外防波堤が平成27年度に完成すれば港内静穏度は確保される、そしてその効果を確認するため観測を既に始めているとの答弁でありました。そのとおりの効果が得られることに私も大きな期待を寄せていますが、実はこの防波堤のことに関しまして、地元の港湾関係者や漁業関係者、建設工事業者などの方々の意見が私のところへも多く寄せられています。
 海を現場とする多くの関係者の皆さんが口をそろえておっしゃるのは、現在備えられている4つの防波堤はいずれも南側からの波浪を抑えるためのものである、東側、つまり三輪崎漁港側からもうねりが侵入しており、それを抑える対策が効果的ではないかとの見解です。
 そのような多くの声を受け、先般、新宮市が国や県に対して行った平成26年度予算編成に向けた要望の中にも、東側防波堤の新設を要望する内容が含まれています。
 第2外防波堤整備に全力を挙げていただいているさなか、また波高計を用いて波浪の状況や向きなどの観測が実施されている段階で、結果が出てからでないと何とも言えないとは思いますが、それによって得た観測データを十分分析した上で、万一、東側にも静穏度対策が必要という結論に達したときには新たな防波堤の整備なども御検討いただきますよう、よろしくお願いいたします。これは要望であります。
 続いて、次の問題に移ります。
 巨大地震で予想される液状化への対策についてであります。
 おととしの台風12号大水害で、各所のライフラインや道路が寸断されました。医療センターで行う手術や透析に必要な水が不足した際も海上ルートから大量の水を受け入れたり、大量の瓦れきを運び出すときも大型船で一気に搬出するなど、新宮港が果たした役割は大変大きなものがありました。
 今後、巨大地震が発生した際にも、救援物資や支援者の受け入れなどに期待するところであります。また、政府が検討中で、現段階では課題が多いとの見方もあります病院船も、導入が実現すれば、当然、その入港先となります。
 しかし、地震の影響で岸壁が破壊され、いざというときに着岸できる岸壁が失われているという心配はないのでしょうか。また、埋め立てで整備された港であるため、液状化の懸念もあるのですが、どのような対策が講じられているのかを県土整備部長にお尋ねします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 新宮港は、災害時の救援や救援物資の緊急海上輸送などを支える港湾防災ネットワークの拠点港として、地震時にも壊れにくい延長130メートルに及ぶ耐震強化岸壁を整備しております。さらに、耐震強化岸壁では、基礎地盤や背面土砂を良質土砂に置きかえることにより、背後の埠頭用地を含めて液状化対策を実施しております。
○副議長(花田健吉君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 最後に、災害時の救援活動拠点として活用するための整備についてお尋ねします。
 耐震強化岸壁を整備していただいていることは、大変心強く感じます。これで、災害発生後、海上ルートから多くの救援物資の受け入れが可能となるでしょう。
 ところで、受け入れた救援物資などを一時的に保管しておく場所が必要になると推測されます。広い敷地が少ない地域であるため、復旧支援のために訪れた自衛隊の隊員らのベースキャンプなどに活用されることも考えられます。
 新宮港の背後の保管施設用地部分は、いずれ企業が購入し、倉庫などの施設を建設することになると思われますが、とすると、そのためのエリアは確保されていますか。県土整備部長にお尋ねします。
○副議長(花田健吉君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 新宮港では、計画段階から周辺地域の人口を考慮し、救援物資を保管できる防災緑地の整備を進めており、平成25年度末に完成する予定です。救援物資などは、ここに一時保管することができると考えております。
○副議長(花田健吉君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 新宮港を災害時にも有効な救援活動拠点として、今後とも地域、市町村や港湾管理者、また当局の防災関連部局とも連携を密にしながら、より効果的な活用方法を見出し、可能な限りの対応をいただくよう要望を申し上げ、私の質問を終わります。
 御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(花田健吉君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。

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