平成25年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成25年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(山田正彦君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第75号から議案第86号まで、議案第89号から議案第95号まで並びに知事専決処分報告報第1号から報第4号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさしていただきます。
 1番目に、港湾の津波・高潮対策についてであります。
 6月に入って、和歌山市においても震度2から4の地震が群発しました。今後30年以内に南海トラフでの大地震が起こり得る確率も、60から70%となっています。マグニチュード9以上を想定する南海トラフ巨大地震と東海・東南海・南海3連動地震との津波による浸水深のマップを、去る3月28日、公表いただきました。
 中央防災会議は、南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの最終報告において、3連動地震をレベル1、南海トラフ巨大地震をレベル2として、対策を分けて進めることを求めました。海岸堤防の整備は、予算面などで実現が困難なレベル2ではなく、レベル1を基準とするとしています。津波対策の基本となる防波堤などの海岸堤防について、津波が越流することも想定した粘り強いものを整備するよう求めています。すなわち、「減災」、「粘り強さ」がキーワードです。レベル2の津波に対しては、防潮堤などの津波防護施設で津波を防ぐことはできなくても、津波をできるだけ軽減して避難を的確に行えるようにするだけでなく、建物などの被害も軽減する必要があります。甚大な2次災害を防ぎ、早期復旧を可能にすることが肝要でしょう。
 東日本大震災において発生した津波に対し釜石港の湾口防波堤は、大破したとはいえ、津波の高さを約4割低減し、津波の到達時間を6分おくらせるなど、減災効果を発揮したものと考えられています。
 和歌山県下の多くの海岸堤防は昭和36年の第2室戸台風等を教訓に整備されたそうでありますが、今回の最終報告は、東日本大震災の教訓を踏まえたものを求めています。東日本大震災では、津波が防潮堤を越流する際、防潮堤内部の根元部分を洗掘し、土砂が削られ、引き波で防潮堤外側の根元が削られ、津波の第1波、第2波で倒壊する例が目立ったと言います。これからは、防潮堤の基礎部分の強化が求められます。
 和歌山県の長い海岸線のうち、232キロメートルにわたって防潮堤や消波ブロック等高波を防ぐ構造物があるそうですが、今後どのようなスケジュールで、優先順位で防潮堤の整備をしていかれるおつもりでしょうか、県土整備部長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 県では、ことしの3月28日に、南海トラフの巨大地震及び東海・東南海・南海3連動地震による新たな津波浸水想定の公表を行いました。
 これを受けて、海岸堤防の今後の地震・津波対策につきましては、約100年周期で発生する津波を対象にしたシミュレーションを今年度に行い、堤防高を検討します。さらに、南海トラフの巨大地震に対しては、津波が越流した場合においても、被害の拡大を少しでも抑える、粘り強く強靭な構造について検討します。
 また、優先順位につきましては、避難困難地区の解消や避難時間の確保が必要な地区から地元市町と協議し、整備したいと考えております。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 高知県黒潮町は、国内最大の34.4メートルの津波が約8分で来るという想定が出されております。大西町長さんは、とにかく諦めないということで、あくまで犠牲者ゼロを目指して、まさに死に物狂いでソフト・アンド・ハード対策に取り組んでおられます。防潮堤による減災ですが、具体的に対策が急がれます。
 続きまして、一昨年でしたか、9月下旬、数日間にわたって、和歌山市毛見の県立自然博物館北西側にある住宅地の一部に、異常潮位の発生により、大潮時期と重なって床下浸水の被害がありました。これは単発ではなく、過去にもあったそうであります。もともと標高の低い地域ではありますが、予測しがたい異常潮位では排水溝を逆流することも間々あるわけであります。
 このような地域は、県下ほかにもあるのではないでしょうか。浸水被害が繰り返されることのないよう、県の異常潮位による浸水対策についてお尋ねします。県土整備部長、お願いします。
○議長(山田正彦君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 海水による背後地への浸水は、低気圧や台風の高潮による排水溝からの逆流等で発生します。対策としては、排出口にフラップゲート等の逆流防止装置の設置が有効です。県内の海岸堤防等にある排水溝は約950カ所あり、このうち、対策済みが約140カ所で、県で施工したものが約60カ所、他の管理者施工が約80カ所となっております。
 今後は、排水溝の管理者と協議を行い、対策が必要な箇所について順次対応してまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 まだ未整備のところがかなりあるということなんで、ひとつ優先順位をきちっと見きわめて、よろしくお願いします。
 2点目であります。和歌山県工業技術センターについてであります。
 先月28日午後、和歌山県工業技術センターを見学に行かせていただきました。請川所長、小畑企画総務部長、そして福本食品産業部長より、大変御多忙の中、現況説明、そして施設内を案内いただきました。たくさんの食品加工機器や分析機器類等を拝見し、備品が充実してきたなと実感いたしました。
 ただ、どうしても残念であったのが、食品産業部食品加工室でした。お配りしている写真がそれであります。たくさんの食品加工機器がせっかく配置されているのに、それを活用して試作品を生み出すための実習作業場としてのスペースがほとんどないことでありました。
 秋田、新潟、宮崎、熊本各県、そして北海道の工業技術センターや食品加工研究所をこれまで視察見学してまいりましたが、当地の企業や研究者の皆様が加工機器類で生み出した製品を完成品に仕上げていくための実習作業場のスペースは十分確保されており、新潟県などは、臨場感あふれる湯気も充満する中、作業が進められていました。本県の工業技術センターは、せっかくいろんな汎用性のある食品加工機器類をそろえていただいているのに、このままでは宝の持ち腐れになってしまいかねません。
 和歌山県工業技術センターのホームページには、本県の工技センターのミッションとして、「県内企業の技術支援で産業育成」、そして「和歌山県の経済発展と県民生活への貢献」と、地域産業振興のための使命がうたわれています。
 ですから、利用いただく企業や研究者にも、単に分析だけでなく、試験研究を推し進め、本県の産業振興のために新しいものを生み出すことのできる使い勝手のいい実習作業場は必要であります。この食品産業部食品加工室から、近い将来、和歌山県の爆発的ヒット商品が生まれるかもしれないのです。水も大量に使用するでしょうから、上階にある食品産業部食品加工室を、この際、1階に移しかえて、十分な作業スペースを確保した上で、本県特産の梅、柿、ミカンなどの有用果実資源等を活用した機能性食品開発研究を進めていただきたいと願ってやみません。
 文科省の地域イノベーション戦略支援プログラムも進行する中、今後大きなアウトカム、成果を引き出すため、県工業技術センターの食品産業部食品加工室の移設改築について、知事の意向をお聞かせください。
○議長(山田正彦君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 長坂議員の食品加工業振興に対する情熱には同感するものであります。
 その上で考えてみますと、議員御紹介の他県の事例では、どうも施設の発祥が、技術開発機関ではなくて農業振興機関として始まっているような気がします。当県でも、実は農業試験場等々幾つか試験場があるんですけども、その中でも加工の試験みたいなのも少しはやっています。
 それから、当県では、研究機関としての工業技術センターというのは、研究開発的要素があったらそれをサポートして、それで実際の食品加工とか、あるいは地域おこしのために行っているいろいろな地域ぐるみの食品加工の催しなどありますけれども、そういうものについては補助をしていくということで、それぞれでやっていただき補助をしていくというような考え方で現在政策を成り立たしております。
 私は、どっちがいいかといろいろ考えますと、やっぱり技術開発的要素が少しでもあれば、それは工業技術センターがちゃんと助けなきゃいけないんで、あんまり高踏的にどしっと構えてるだけではいけないというふうには思いますけれども、一方で、全部そこへ集まってくるような形で支援するというのは、それぞれ草の根的にいろんなプロジェクトもできるし、それに加えて、企業はそれぞれ自社開発の、特に商品に近いところの開発をしていくというのは、そんなにオープンの場でやるような話ではないというような気もするんです。
 したがいまして、補助については、例えば農商工連携ファンドとか、あるいは草の根的なそういう食品加工を振興するような助成金もありますし、それから、もう少し企業型になってまいりますとわかやま中小企業元気ファンド等々、たくさんの補助のメニューを用意しています。そういうようなメニューをうまく使っていただきながら、それぞれやっていただいたほうがいいんではないかなあというふうに思います。
 連携は、いずれにしても必要なんで、技術支援がそういうふうに行われてる商品開発の中でも必要であれば遠慮なく工業技術センターに来ていただいたらいいし、それはある程度成功してると思ってます。それだけじゃなくて、技術センターのほうも出かけていくような積極的なやり方によってやっていったらいいんじゃないかなあ、そういうふうに思いますので、とりあえず全部そこへ統合というのはあんまり賛成しないというのを申し上げておきたいと思います。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 工業技術センターもかなり傷んでるところもありますんで、いずれ改築の必要性にも迫られてくるかなということは確かだと思いますし、いろんな地域のセンターを見さしていただく中で、企業のためのインキュベーションルームなんかも結構備えてるわけなんですよね。だから、そういう本当にやる気がある企業がもう1室借りて、それでまたその作業場へ行くというようなパターンが結構多いようでした。
 これから先、ニーズ、シーズというのは必ずやあると思っております。ぜひ御検討はいただきたいなと思うのと、この県工業技術センター食品産業部は、当初、生活産業部食品工学担当3名から食品開発室を創設いただいて、そして、おかげさまで今10名にも増員いただいておるわけであります。本当に、この本県の誇る有用果実資源を何とか活用したいというわけでありますね。そして、その研究開発から産業へと、とにかく発展させていくための本県の中核機関と位置づけられてるわけであります。
 和歌山県の生き残りをかけて心置きなく研究開発に取り組める、そういう食品産業部食品加工室があればいいがなということと、将来的には幾つかの都道府県にあるような食品加工開発研究センターにつなげていけますよう、ひとつ前向きな御検討もお願いしたいなと思います。
 続いて、3点目、本県の東南アジア戦略についてであります。
 ここ10年来、特にASEAN、東南アジア諸国の経済発展は目覚ましいものがあります。昨日、片桐議員よりも御報告があったように、私ども改新クラブ5名も、超高層ビル建設ラッシュ、マハティール元首相のルックイースト、日本に学べ政策で目覚ましい発展を遂げているマレーシアの現況を見てまいりました。
 今や、首都クアラルンプール郊外にあるポートケラン港はコンテナ取扱量世界第10位、マラッカ海峡の要衝にあるタンジュンペラパス港も、世界第2位のシンガポール港のコンテナ貨物の取り扱いを近くで脅かそうとしております。ポートケラン港にあるガントリークレーンだけで数百を有し、フリーゾーンを設けて工業団地が延々と続いております。タイやマレーシアのみならず、最近はインドネシアの躍進、そしてメコン地域のベトナム、カンボジア、ラオス、そしてミャンマーも右肩上がりです。
 県当局も、本県の特産果実、それに加工食品の東南アジア向け販売戦略、例えばフードエキスポ等国際見本市への出展、商談機会の提供、それに高級量販店での販売促進活動等々に御尽力いただいております。
 先月は、9日から13日までブルネイにおいて、ASEAN諸国や日中韓印等で東アジア地域包括的経済連携(RCEP)第1回交渉会合がありましたし、今後、TPP交渉等、広域FTA(自由貿易協定)の進展が予想される中、本県特産品のさらなる販売戦略について農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県では、台湾、香港、シンガポール等の富裕層を対象に百貨店でフェアを開催するなど、さまざまな販売促進活動を実施し、流通ルートの開拓とともに現地の消費動向の把握等に取り組んでまいりました。こうした活動を通じて、今議会において知事からも答弁申し上げましたように、東南アジア諸国は近年の経済発展が著しく、市場として有望であると考えております。
 今後、成果をさらに拡大するため、国の経済連携交渉等の経過も見きわめながら、各国それぞれの地域の事情を踏まえ、本県も乗りおくれることのないように県内事業者へのきめ細かい支援に努めてまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 国際的にも本県産品のブランド力を向上させるような取り組み、これを引き続きお願いいたします。
 続きまして、例えば、現在日本市場で販売されている衣料品の9割以上は、日本で生産されたものではなく、海外で生産されたものだそうです。7~8年前まではそのうちの9割程度が中国製でしたが、生産地の東南アジア、さらに南西アジアへのシフトが近年顕著になっていると聞きます。
 東南アジアは、今後市場としてますます重要になってくると考えます。東南アジアは、総人口約6億人、平均年齢も若く、既に賃金が上昇してきたとはいえ、比較的安価な労働力を持つ生産地というだけでなく、今後、消費地としての成長が大いに見込まれる魅力的な市場と言えます。
 そこで、本県企業の東南アジアへの進出状況と県の販路開拓に対する取り組みについて、商工観光労働部長、お聞かせください。
○議長(山田正彦君) 商工観光労働部長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○商工観光労働部長(藤本陽司君) まず、県内企業の東南アジアへの進出状況ですが、昨年度、わかやま産業振興財団が県内企業にアンケート調査を行い、426社から回答を得て作成した和歌山県企業海外展開調査報告書によりますと、家庭用品や機械金属の製造業を中心に、延べ18社が工場や営業拠点を設けています。
 議員御指摘のように、東南アジアは経済発展が目覚ましく、また購買力があり、日本企業のターゲットとなる中間層から富裕層の拡大が見込まれ、生産拠点としてだけでなく、これからの市場として非常に魅力的な地域です。
 そのため東南アジアへの販路開拓は、県内企業が成長するための重要な戦略の1つであると認識しており、昨年度は12月にASEANビジネスセミナー、2月にはジェトロの石毛理事長を講師としてお招きしました「国際ビジネスセミナー~アジア・新興市場開拓とジェトロの役割~」の2回のセミナーを開催し、今年度は、公募による6社の参加を得て7月にベトナムの専門展示会や市場調査等を行うべく、現在準備を進めているところでございます。
 今後も、わかやま産業振興財団、ジェトロ、ABICなど関係機関と連携し、相談窓口の設置、セミナーの開催、専門展示会への出展支援などにより、県内企業が行う東南アジアを含めた海外展開を支援してまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 私も何回か聞かしていただいたんですけど、いいセミナーやっていただいているなと思います。だから、もっともっとたくさんの企業があるはずですんで、来ていただけるようにしていただけたらな、聞かしてあげていただけたらなと思います。
 続きまして、本県の教育について7点質問さしていただきます。
 1つ目に、今、教育は、いじめの問題、体罰の問題、それに体力・学力低下の問題等、さまざまな問題を抱えていると言えます。大津市のいじめ自殺問題等への対応のごたつきから、教育委員会改革についての議論も国でなされています。安倍首相が主導する政府の教育再生実行会議が、教育委員会制度改革の提言をまとめ、首長に教育長の任命・罷免権を与え、教育長に教育の行政の責任と権限を一元化することが柱になっています。
 それ以前に、教師の皆様には現場で自分の担当する生徒たちの教育に責任を持ち、校長は全ての職員が職責を果たせるよう学校の運営責任を果たしていただきたいと思います。そのためには、さらなる教師の資質向上は必要でありましょう。教育者とは、教育の専門家であり、若者の将来を預かる聖職者であると思います。
 教員免許を取得後、公立学校ならば教員採用候補者選考検査を受けて、その後、教員として教鞭をとられるわけですが、その前に教師としての研修、例えば警察や消防のような一定期間の研修、生徒への授業はもちろんのこと、日ごろの生活、進路相談、クラブ活動での指導、そして人としての倫理観、責任感の醸成など、これからの教育を背負って立つ若い教員に対しての新任研修は極めて重要だと思われます。
 いじめや体罰の問題は、学校教育だけの責任ではありません。核家族化、少子化、そして個人情報保護をとかく言われる社会状況の中、人間関係の経験の少ない環境で育ってきた教員も、子供を教える身として大変苦労が多いはずであります。
 教師が聖職者として伸び伸びと子供に対面していくための研修は必要でありましょう。新任教員の研修の必要性について、教育長はどうお考えですか。
○議長(山田正彦君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 子供を取り巻く社会状況が変化し、学校が抱える課題も多様化、複雑化してきております。また、議員御指摘のように、核家族化、少子化などの影響を受けた若手教員も増加しております。
 現在、ベテラン教員の大量退職に伴い、多くの教員を採用していることから、若手教員の研修は極めて重要であると考えてございます。
 学校教育の成否というのは、その担い手である教員の資質、能力に負うところが大きく、本県では、とりわけ新任教員に対し、授業力の向上、児童生徒理解やコミュニケーションスキルの向上を図っています。さらに、生徒指導や教育相談といった研修を実施し、いじめや不登校を初めとした学校が抱える今日的な諸課題に、採用後、即座に対応していける力を高めるよう取り組んでおります。
 また、初任段階の教員を複数年かけて支援することが重要であると考え、本県では、必要となる23日間の校外研修を3年間にわたり継続して実施し、あわせて300時間以上の校内研修を行っております。
 今後も、社会の変化や学校課題の多様化に対応できる教員の育成を図ってまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 新任研修のほう、ひとつどうかよろしくお願いします。
 2点目に、平成12年ごろから、学力低下論争や教員の質の問題がマスメディアによって報道されることが多くなりました。平成19年6月に教育職員免許法が改正され、そして平成21年度より教員免許更新制が導入されましたが、この実効性について教育長にお尋ねします。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 教員免許更新制は、平成18年7月の中央教育審議会答申を受けて、教員として必要な資質、能力を一定水準以上に保てるよう、10年に1度、最新の知識、技能を身につけさせることを目的として、平成21年4月から実施されており、教員にとって有効な研修の機会になっているものと考えております。
 この教員免許更新講習を中心となって開設している和歌山大学と定期的に協議会を持っていることから、今後とも、より実効性のある講習となるよう要請してまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、いじめ対策総合推進ということで、県は今年度、1億6813万8000円、前年比62%増の予算をつけていただいて、いじめ問題の未然防止、早期発見、早期対応のため、スクールカウンセラー(SC)及びスクールソーシャルワーカー(SSW)等の拡充、子供自身の主体的参加によるいじめ問題への取り組み推進や学校サポートチームの設定等による学校への支援体制の充実を図ろうとしていただいています。
 スクールカウンセラーは、子供たちの悩みや苦しみに対応して問題解決を支援するとともに、保護者の不安にも対応します。教員には、子供たちの心の支援法を提案、助言してくれます。臨床心理士の資格をお持ちの方が多いと聞きます。
 また、いじめの加害者あるいは被害者それぞれに、家庭が抱えるさまざまな問題があります。社会福祉の知識、経験をもって家庭環境の改善のために尽くしてくれるのが学校版社会福祉士のスクールソーシャルワーカーだと理解しています。
 現在、本県において、どれくらいの学校で、どれくらいのSCやSSWが御活躍中か、また、どのような効果をもたらしているか。教育長、教えてください。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 今年度、スクールカウンセラーにつきましては、小学校63校、中学校102校、高等学校50校、また新たに特別支援学校8校にも配置し、前年度よりも57校ふやしました。スクールソーシャルワーカーにつきましては、16市町に配置し、前年度より6市町ふやすとともに、新たに県立学校1校にも配置しました。
 スクールカウンセラーは、悩みや課題を抱えた児童生徒や保護者等のカウンセリングを行い、スクールソーシャルワーカーは、学校と関係機関との橋渡し的役割を担い、福祉の面から児童生徒の家庭環境の改善などの支援を行っております。配置校からは、児童生徒の個々の課題がどこにあるかはっきりわかり、より的確な支援を行うことができる、専門的見地から教職員や保護者が助言をもらうことで問題行動の未然防止や早期発見につながるといった報告が寄せられています。
 今回、配置校をふやしたのは、こうした取り組みをできるだけ多くの学校に拡充するために行ったものであり、これまで以上に児童生徒へのきめ細かな指導につながるものと期待をしているところでございます。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 4点目に、学習指導要領の改訂に伴い、英語は平成23年度から小学5~6年生で週1回完全必修となり、今年度から順次、高校英語の授業が英語で行われるようになっていると聞いております。政府の教育再生実行会議によって、小学校英語をさらに拡充して教科化、大学入試にTOEFLなどの外部英語検定試験を活用するという議論が前向きに進められています。
 国際人育成という名のもとに、それはそれで否定するものではありませんが、国際人を育成するには、やはり自分の国の国語力がまず基礎として身についていることが必要条件であります。自分の考えを日本語でしっかり表現でき、日本の歴史、伝統、文化をしっかり理解し、自国を愛していればこそ、英語でそれを他国の人々に語り、初めて日本国、日本人を外国の人に理解、認識してもらえるものであります。
 対話の際、相手の外国人は、案外、相手たる日本人の自国に対する思いというものをしっかり見ていると思います。外国でも通用できる、堂々と働ける国際人を育成するための国語力の強化について、県教委の取り組みを教育長に聞かせていただきます。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘のとおり、国際人を育成するためには、まず自国の歴史、伝統、文化を理解するとともに、国語力を身につけることが非常に重要であると思っております。その国語力を高める活動の大きな柱の1つとして、読書活動に力を入れております。
 県内の公立小中学校では全校一斉読書に取り組んでおり、小学校では88%、中学校では84%が実施しているほか、家庭における読書活動の推進や、平成23年12月から実施している県立図書館による児童用図書のセット貸し出し等により、子供がみずから本に手を伸ばすような工夫をした取り組みを行っております。
 また、県教育委員会では、自分が気に入った本を作文で紹介するコンクール等、児童生徒の創作意欲を高める取り組みも行っています。
 さらに、国語の授業力の向上を図るため、平成22年度から3年間にわたり、中学校の全ての国語科教員を対象にした授業改善の研修を実施した結果、平成24年度の全国学力・学習状況調査において、全国との差が拡大傾向にあった国語の知識を問う問題の平均正答率が2.2ポイント上昇し、全国平均に大きく近づくなど、成果が着実にあらわれてきております。この成果を踏まえ、今年度からは、小学校教員を対象とした研修を実施する等、国語力の向上に向けた取り組みを進めてまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 これから余計外国とちょうちょうはっしの勝負をせんといかん時代になってくるわけでありまして、国語力の強化、よろしくお願いいたします。
 5点目に、子供たちは、居住環境の変化、ゲーム、パソコンの普及等により外遊びが少なくなるとともに、歩数も減少しているようです。
 先日、新聞で、東京都の平成23年の小学生9858人に行った歩数調査が掲載されていましたが、1日平均歩数は1万1382歩、一方、昭和54年に東京学芸大が都内の小学4年を対象に調べたときは、男子が約1万8000歩、女子が約1万5000歩だったそうです。我々働く大人がそれだけ毎日歩けているかというと甚だ疑問ではありますが、男女とも子供の平均歩数は確実に減少しています。
 国立健康・栄養研究所の田中先生は、この減り幅は体力低下に一定の影響があるはずと言っています。最近、転んだとき、うまく手をつけずに顔にけがをする子供がふえ、学校などの現場報告では、前歯の損傷や鼻骨、目の周りの骨折が目立つようになった、すなわち子供が転んだとき身を守れなくなっている、本来持つ運動能力を発達させられなくなっていると、日体大総合研究所の武藤所長は身体活動の不足を指摘しておられます。
 また、運動能力を備えない子供の将来を示唆する研究もあります。山梨大の発育発達学の中村教授は、学生135人を対象に、幼少期の遊び、運動経験と大学入試後の運動、スポーツ実施状況の関連を調べました。すると、運動、スポーツをする学生の87%は、幼少期の1日の遊び時間が3時間以上で、よくやった遊び種目の上位3つは鬼ごっこなど外遊びというグループ、一方、運動、スポーツをしない学生の63%は、1日の遊び時間が室内を含めて30分以下というグループでした。
 体を動かす心地よさの感覚がないまま大人になると、体を動かすこともおっくうになるものです。転んだとき、最低限の受け身もとれないような子供の増加、すなわち体力の低下を大人になって持ち越さないよう、県教委としてのお取り組みを、教育長、聞かせてください。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 子供の体力が低下していることは、大変大きな課題であります。学校現場において、年々、体力の実態を把握する体力調査を実施しない学校がふえ、学校における体力向上の取り組みが弱くなっていたことがその一因と考えられます。
 そのため、平成20年度から体力調査を全ての学校で実施し、その結果に基づいて、教員の指導力向上のための研修や、仲間と一緒に運動するきのくにチャレンジランキング事業など、学校体育の充実及び運動機会の拡充に積極的に取り組んでまいりました。その結果、小学校5年生で初めて全国平均を上回るなど、成果があらわれてきています。
 一方で、運動する子としない子の二極化傾向や中高生女子の運動離れなどの課題が見られますことから、今年度、新たな取り組みとして、小学生にはリズムに乗った動きで敏捷性や瞬発力などを育成するエクササイズを、中高校生には若者に人気のある動きを取り入れたダンスを制作することとしています。
 現在、子供たちが楽しみながら運動できるよう、体操の田中理恵選手など専門家の協力を得て内容を検討中であり、完成後は、県内全ての学校の体育授業で活用されるよう普及に努め、子供たちの体力向上を図ってまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 答弁いただきました。
 私自身、子供のころは、鉄棒とか、砂場での相撲とか、あるいは縄跳びなど、友達と競争しながらよく遊んだものであります。今は、とかく「危ない」だの「汚い」だの、注文やクレームがやたら多いようですが、いま一度、泥んこになりながらでも友達と競いながら上達していく、そんな楽しさと喜びを子供たちにもっと味わわせてあげていただきたいと要望さしていただきます。
 また、紀の国わかやま国体は、まさに子供たちに運動、スポーツのおもしろさを身近で実感させて体力向上を図らせる絶好の端緒であります。
 次に6点目、政府の教育再生実行会議において、いじめ対策の1つとして道徳の教科化の論議が、文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」で始まっています。私は、道徳の教科化は大賛成であります。
 道徳は、現在、教科ではなく、教科書はありません。文科省が、教科書でも副読本でもない補助教材であると平成14年4月に発表しているのが「心のノート」であります。この「心のノート」の作成、配付には、平成9年の神戸連続児童殺傷事件や平成11年の栃木女性教師刺殺事件、光市母子殺害事件などの少年犯罪が相次いで発生し、心の教育の必要性が強調されるようになってきたことが発端となり、国会でも何回かの議論があったようです。
 小学1~2年用、小学3~4年用、小学5~6年用、そして中学生用と計4冊ありますが、週1回、年35回の道徳の授業でどのような使われ方をしているのでしょうか。実際に活用されているのですか。教育長、御答弁お願いいたします。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 「心のノート」は、児童生徒が身につける道徳の内容がわかりやすくあらわされ、命を大切にする心や礼儀などの道徳性について、みずからが考えるきっかけとなる教材として、平成14年度から小中学校において道徳の時間を中心に活用されてきております。
 平成23年度の本県の道徳の時間における「心のノート」の活用状況は、小学校で89.6%、中学校で89.1%であり、学級会活動や家庭学習でも使われております。
 「心のノート」は、夏ごろには全ての小中学校の児童生徒に配付されることになっており、各学校においてさまざまな場面で活用し、道徳教育を一層推進するよう指導してまいります。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 「心のノート」ですが、本当に道徳の時間できちんと生徒たちに輪読させれば、本当にいいものだと思うんですよ。活用をどんどんいただけたらなと思いますね。
 7点目なんですが、「読売新聞」が先月、「教育ルネサンス~道徳の力」という特集記事を掲載して、大変参考になりましたが、各地の学校で道徳の時間にいろんな工夫ある授業をされているようです。偉人の生き方について意見を求めたり、1つのテーマをもとに教室で議論し、仕上げに道徳ノートをつくって自宅で授業内容を家族に話して気づいたことを書き込ませたり、理科や社会の授業で道徳に触れたり、毎回1人の児童をみんなで褒めるほめ言葉のシャワーを行ったり等々、いろんな取り組みがなされているようです。
 私も、個人的には、和歌山県の郷土の偉人を題材に、ふるさとの歴史、文化や伝統、時代背景とともに、偉人の生きざまに触れることによって人の規範意識を持たせることには大いに共感を覚えます。本県の小中学校の道徳の時間においては、どのような授業の工夫がなされているのでしょうか。教育長にお伺いいたします。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 本県の各学校では、道徳性を育むために、これまでも児童生徒が興味、関心を持つような創意工夫ある授業づくりに取り組んできております。
 その創意工夫の1つの例として申し上げますが、昨年度の実践研究発表会で、大島小学校ではエルトゥールル号を取り上げ、海底から遺品を引き揚げる作業に携わった方など関係者から話を聞いたり、慰霊碑周辺の清掃活動を行ったりすることなどにより、地域の先人の思いを受け継ぎ、命の大切さを考える取り組みを行っております。
 また、本県では、今年度、教員に対し、道徳の時間の質を一層向上させるための研修を行い、各学校での道徳教育の中心を担う教員の養成を図っていくこととしております。さらに、本県にゆかりのある先人や偉人などを教材に取り入れた「和歌山県版道徳読み物資料集」を現在作成しているところで、ふるさと和歌山の先人や偉人の生き方などを通して、規範意識や思いやりの心、郷土を愛する心などを育んでまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 18年前にこの本会議で初登壇して、一般質問で道徳教育について質問をさせていただいたときに、たしか教育長さんから、ボランティア活動の中で奉仕の気持ち、人を敬う気持ちを醸成させていきたいと、そういうような答弁をいただいたことがありました。
 おかげさまで、活動としては子供たちの間でも随分根づいてきたと思いますが、その趣旨が本当に行き渡っているのかというと、そうとも言えないと思います。子供たちに道徳の大切さを理解させるために、興味を持たせるためにさらなる創意工夫というものを教育委員会にお願いを申し上げます。
 これで、私の一般質問を終わります。(拍手)
○議長(山田正彦君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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