平成25年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(多田純一議員の質疑及び一般質問)


平成25年6月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(多田純一議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

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  午後1時0分再開
○議長(山田正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 こんにちは。
 一般質問に入ります前に、過日、本議会におきまして、先輩・同僚議員の御配慮をいただき、関西広域連合議会議員に御推選をいただきました。もとより微力ではございますけども、しっかり責務を果たしてまいりたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 それでは、通告に従い、一般質問に入らせていただきたいと思います。
 最初に、紀伊風土記の丘・特別史跡岩橋千塚古墳群の整備計画についてお尋ねをしたいと思います。
 御存じの方も多いかと思いますけども、地図を用意させていただきました。この赤い丸が古墳群。先ほども話が出てましたように、たくさんの古墳がある。それを称して千塚古墳ということでございます。上の資料館から始まる黄色い線が、ちょっと薄いですけども、山道となっております。濃淡になっておりますけども、濃い部分が特別史跡の範囲ということでございます。
 5月の25日の土曜日、紀伊風土記の丘・大日山35号墳公開見学会がありましたので、参加をしてまいりました。お天気にも恵まれ、標高141メートルの頂上からは和泉山脈や紀の川周辺の和歌山平野、澄んだ日には、これが紀伊水道や淡路島まで眺望でき、大変すばらしい場所となっております。この古墳群の分布図の詳細図では、左下の大きな古墳がその35号墳でございます。
 数年前、「大王の埴輪・紀氏の埴輪─今城塚と岩橋千塚─」という企画展がありました。大阪府高槻市にある今城塚古墳、ここは継体天皇陵とされ、出土品などからも有力視されております。大和朝廷時代の第26代天皇とみなされております。風土記の丘、岩橋地域を治めた者がその朝廷の軍事部門の有力豪族の1人として活躍し、大国和歌山を治め、生産力を維持するため豊かな森林で船をつくり、紀の川を利用し、海上交通の要衝として紀の川河口のこの地に君臨し、紀伊水道や瀬戸内、太平洋などにも活躍したのじゃないかと想像してしまいます。
 大日山35号墳の公開は、ことしはこの日だけということもあり、学芸員の方の御説明やボランティアの方々の説明に集った見学者の方々が熱心に耳を傾けておられました。
 この大日山35号墳は、長さ約86メートルの県内最大規模の前方後円墳で、岩橋千塚古墳群を代表する古墳となっております。翼を広げた鳥形埴輪、両面人物埴輪、胡ろく形埴輪等、日本で初めての発掘例となります。大型の家形埴輪も見つかり復元されましたが、その大きさは、140センチから150センチはあっただろうと推定されております。日本で最大のものは、継体天皇の真の陵墓と言われる今城塚古墳から発掘された170センチですが、全体を3分割して作成したものは全国に2例しかなく、大王墓と地方首長墓の埴輪から見た関連性について興味深い問題を提起していいます。
 公園内1周約3キロ、徒歩で約80分、ほとんど舗装されていない山道を、大日山35号墳を過ぎ、東に向いて郡長塚古墳、知事塚古墳、将軍塚古墳を見学して、山頂の展望台から眺めを堪能して、初夏の日差しを浴びながら麓へとおりて帰路に着きました。いにしえの遺跡にも触れ、気持ちのよい充実した楽しい1日となりました。
 この紀伊風土記の丘は、昭和43年度から土地の公有化と整備が始まり、黒潮国体開催の年、昭和46年の8月に開園いたしました。ことしで42年が経過します。考古資料、民俗資料を収集・保存し、その活用を図る博物館施設としてだけではなく、総面積65万平米の園内には、万葉集に詠まれている植物を栽培した万葉植物園や花木園など樹木が茂り、四季折々の植物に包まれた史跡公園として年間20万人以上の人が訪れ、広く親しまれております。
 県立図書館の書庫にありました紀伊風土記の丘建設概要を確認しますと、昭和42年に大橋正雄知事が会長、笹野勇県議会議長と宇治田省三和歌山市長が副会長、御寄附をいただいた松下電器産業株式会社・松下幸之助会長ほか総勢30名の建設調査委員会が設置されたことや、テープカットの模様、そして、黒潮国体に合わせて天皇皇后両陛下行幸啓、常陸宮御夫妻のお成り等が記録されておりました。
 この建設概要には、昭和27年に文部省から特別史跡の指定を受けた全国にも類例のない一大古墳群集地域で、我が国の歴史の流れを知る上に極めて貴重な遺跡であること、この貴重な史跡周辺にも開発が及び、祖先が残したこの文化財を保護するため、この地域一帯を県が買い上げ、環境を整備して、永久に後世に伝承する目的のもと、5カ年の歳月と約8億8000万の建設費をかけて史跡公園紀伊風土記の丘を建設したと記されております。
 風土記の丘としては、宮崎県の西都原古墳群、埼玉県・埼玉古墳群に続いて、全国3番目。特別史跡の指定としては、全国に2カ所しかない貴重な文化財となっております。地方拠点史跡等総合整備事業として、本県では、紀の川緑の歴史回廊推進事業の拠点施設の1つとして紀伊風土記の丘再発見に努めておられます。しかし、施設そのものは、耐震工事は施したとはいえ、ほとんど昭和46年のままとなっております。
 この特別史跡紀伊風土記の丘既存施設の整備について、まず最初にお聞きしたいと思います。
 資料館入館者の大半を占める小学生、中学生、高校生の学校教育として、また、和歌山の歴史を学ぶ郷土史教育、古代史など歴史教育の施設整備、来館者が音や映像などを通して学べる設備なども充実させ、歴史のまち和歌山にふさわしい古代歴史ミュージアム館としてリニューアル整備をしてはどうでしょうか。出土品もふえ、その管理、保存、そして展示・調査費などもあわせて検討していくべきと考えます。施設整備計画について、西下教育長にお伺いをいたします。
○議長(山田正彦君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘のとおり、紀伊風土記の丘は、昭和46年8月に開園して以来、42年間が経過しており、附属する資料館も老朽化が進行し、展示スペース及び収蔵スペースも不足しています。今後、資料館のあり方について総合的に検討してまいりたいと思います。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 総合的に取り組んでいただけると、こういうことでございますんで、その資料館と密接に関係のある公園整備について、引き続き質問を続けさせていただきたいと思います。
 紀伊風土記の丘の利用者は、公園内を散策する人が多く、年間20万人を超えるのが現状です。平日でも500人、休日には1000人もの人が訪れております。その中で、資料館の利用者は公園内散策者の10%、約2万人になっております。公園を訪れた人に、古墳群への興味とその魅力を理解していただく工夫が必要と考えます。特に、園路から支線園路への散策者の誘導、歴史的価値の高い文化遺跡に身近で触れることで知的満足感を高め、史跡文化を楽しんでいただくことを紀伊風土記の丘の特色にしていくべきです。
 紀伊風土記の丘にもう1つ貴重な財産がふえました。写真の上のほうにありますクスノキの巨木です。2011年9月の台風12号による紀伊半島水害の直後に、紀の川で古墳時代のクスノキの巨木が見つかり、このたび紀伊風土記の丘資料館の前に展示、保存されることになりました。推定樹齢は約350年、幹周り約12メーター、高さ約7メートル、重さ約40トン。西暦700年前後まで生育していたそうですから、その後1300年間、どのような状態に置かれていたのか。紀の川上流から流されてきたのか、川底に眠っていたのが出現したのか、自然が育んだ歴史的モニュメントとして貴重な史料となります。
 早速、クスノキ効果があらわれました。今月12日、紀伊風土記の丘行きバス鳴神線の廃止届が撤回され、存続が正式に決定されました。公共交通を担当する県企画部や路線バスの活用を促していただいた教育委員会にも、地元を代表してお礼を申し上げたいと思います。
 平成24年10月からバス路線廃止の対象になりました。ことし4月には、和歌山バスが廃止届を国土交通省に提出、岩橋地区や鳴神団地地区及びその連合自治会挙げての利用促進の呼びかけで存続運動になり、周辺住民の方々にも御協力をいただき、利用者が徐々にふえてまいりました。県教育委員会も、紀伊風土記の丘への施設見学を働きかけていただき、貢献していただきました。和歌山バスの担当者は、クスノキがもたらす今後の期待感も話していたそうでございます。公共交通機関、バス路線廃止を食いとめた住民運動は、クスノキ効果とともに大いに賞賛されるものと思われます。
 県民、市民に親しみが深まる古墳公園として工夫を施した紀伊風土記の丘の公園の整備を速やかに進めていく必要があると思われます。公園整備について、そのお考えを教育長にお尋ねいたします。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 紀伊風土記の丘の整備につきましては、近年では平成15年度から毎年、文化庁の国庫補助事業で、古墳の発掘調査と保存事業を計画的に実施するほか、里山としての地形を生かした園路や展望所の整備を初め、来訪者のための説明板や案内板などのガイダンス設備も整備を行っております。
 このほか、昨年、紀の川で発見された古墳時代の生育と推定されるクスノキの巨木を園内で展示できるよう準備を進めております。
 今後、古墳を中心とした史跡公園として、さらに県民の皆様にわかりやすく学んでいただけるよう、事業を進めてまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁をいただきました。
 今度は、その中身というんでしょうか、ソフト面というんでしょうか、発掘された文化財についてお聞きしたいと思います。
 大日山35号墳からは、先ほど申し上げましたように翼を広げた鳥形埴輪や両面人物埴輪、胡ろく形埴輪など、日本で初めてと言われる歴史的な埴輪が出土しております。発掘後、十分な調査も行われてきておりますし、重要文化財としてのその価値が認められると学術的意味合いも変わってまいります。紀伊風土記の丘への関心も全国的に高まることと容易に想像できます。
 文化庁に申請する準備とその見通しについてお聞きしたいと思います。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 大日山35号墳は、長さ約86メートルで、6世紀前半の紀伊国の首長級の古墳と考えられており、その古墳から埴輪や土器など多種多量の遺物が出土しております。その中には、議員御指摘のとおり、両面に顔を持つ人物埴輪や飛翔する鳥形埴輪など、国内でも大変貴重な遺物が含まれています。
 これらの出土遺物は保存状態もよく、当時の祭礼の様子を示す考古資料としてほかには類のない文化的価値を有するものであり、今後、県においては重要文化財として指定されるように積極的に取り組んでまいります。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 ぜひその気持ちで進めていただいて、できれば紀の国わかやま国体開催までに何とか形ができるように期待をしていきたいと思っております。
 そして、4点目でございますけども、先ほど詳細図を見ていただきましたらわかりますように、この岩橋千塚古墳の岩橋というのはこの地の地名ですけども、岩橋を中心として私の住んでいる鳴神や日前宮のある秋月、そして井辺、和佐、岡崎ほか10地区にも及ぶ史跡の宝庫となっております。昭和58年から測量を開始し、平成19年からは地上3Dレーザーで測量調査も行い、平成23年5月、航空ヘリによるレーザー測量解析を行い、その測量図も完成していると伺っております。
 岩橋千塚古墳群は、5世紀から7世紀にかけて築造され、現在、前方後円墳が約30基、そのほか、円墳や方墳を含めると800基を超える規模となっております。分布図で言いますと、この濃い部分だけが特別史跡として認められ、この濃い部分だけで約430基が園内に確認をされております。園外には、例えば大日山25号墳の一部が残っていますし、天王塚古墳も大変重要な史跡として存在することも確認をされています。
 中でも今の天王塚古墳は、分布詳細図で言いますと右端の位置になります。特別史跡から東に約500メートル離れたところに存在し、墳丘86メートル、天井部まで高さが5.9メートル。横穴式石室は岩橋式と呼ばれ、日本で2番目に高い石室の前方後円墳とされております。
 明治40年、東京帝国大学人類学教室の大野雲外氏の調査報告にも記載され、その後、明治44年、イギリス人・N・Gマンローが岩橋千塚古墳群の石室を海外に紹介したことでも知られております。昭和39年には、関西大学考古学研究室による発掘調査が行われた際、天王塚古墳がいっとき一般公開される機会もあったようです。多くの方が見学したものの、石室が封鎖され、約50年間、今日に至っても日の目を見ない状況となっております。広く県内外の方にも公開されるよう取り組むべきではありませんか。
 同古墳の保護及び周辺地域を含む特別史跡の拡充について、その方針をお示しください。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 特別史跡の拡充についてお答えします。
 岩橋千塚古墳群では、平成7年度から11年度にかけて周辺の指定地外の古墳の分布調査と発掘調査を実施し、特別史跡内の古墳と遜色のない貴重な古墳が多数存在していることが判明しております。このうち、天王塚古墳については、昭和40年ごろの学術調査によって、大日山35号墳と比肩する首長級の墓であることがわかっています。
 このような周辺に存在する貴重な古墳についても、今後、できるだけ国の文化財として保護されるよう、県としても積極的に働きかけてまいりたいと考えています。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 私、本当に地元にいながら、改めてこの紀伊風土記の丘をいろいろ自分なりに勉強させていただきました。本当にすばらしい文化財が近くにあったということに驚きと、そしてこれをもっと全国に広めるべきだと、こんなふうに思った次第でございます。
 御答弁は全て前向きですし、本当に取り組んでいただけるということですけども、42年間、あの資料館も含めて老朽化してきてるというお話でございましたけども、今まで放置してきたという部分もございますんで、しっかりその辺をお願いしたいと思います。
 また、知事におきましても、今私が取り上げましたこの問題につきましても十分御存じだと思いますし、しっかり全国に誇れる文化財として生かしていただきたいと、このように思う次第でございます。
 また、できましたらというか、計画ができた段階で、先ほどのバスの問題もございました、やっぱり地元の住民の方々の御協力なしに活性化できるものはあんまりないと思います。そういう意味では、計画ができた段階で結構ですけども、地元にもしっかり説明をしていただいて、いろんな形で御協力いただけるように、郷土の文化財、全国に誇れる文化財として大いに宣伝をしていただきたいと思いますんで、これは要望とさせていただきます。
 引き続いて、教育問題に移りたいと思います。
 和歌山県の教育の現状とその対応についてお伺いをしたいと思います。
 資料を配付さしていただいております。最初にいじめの問題、それから右のほうに不登校の問題、それから暴力行為の問題、高校生の中途退学者の問題、それから大学の進学率、そして最後に、高校生の就職を希望しておきながら3月末時点でまだ未定の方々のリスト、こういうことで図をつくらしていただきました。
 先ほど午前中にいじめの問題、本当に切実に立谷議員が取り上げておりましたけども、このいじめの問題に、大きく不登校の問題や暴力行為、また中途退学者の問題もかかわりがあるんじゃないかというふうに思います。
 特に、この表を見ていただきましたら、これは文部科学省が毎年各県の教育委員会に報告を求めているものでございますけども、平成19年度から23年度の5年を比較してみました。全国と和歌山、それぞれの年度ごとに小学生、中学生、高等学校という形で比較できるようにしてみました。
 不登校の児童生徒数は、平成22年度の小学生と高校生は全国平均を下回ってるんですけども、それ以外、毎年小学生、中学生で1000人を超えている、これが和歌山県のこの5年間の現状だと思います。特に、中学生の比率は3%と、非常に高い比率が続いております。
 高校生の中途退学者も全国平均を上回っております。特に、全日制と比べ、定時制の生徒に中退者がふえているというのも現状だそうです。
 中学生の不登校が目立つ中で、暴力行為も中学生が顕著になっております。昨年の決算委員会でこの点を指摘し、警察本部にも御協力いただき、今年度から学校支援サポーターの増員もお願いしておりますけども、不登校と暴力行為を起こす中学生の数値を見ると関係が非常に深いと言わざるを得ません。
 また、高校生の大学進学率は、ここ数年、下がり続けております。それも、全国平均と比べると、その差が開いてきているのが気になります。あるときは、和歌山県は全国平均に比べても高い時期をずっと維持しておりました。ところが、最近、これの差が逆に開いてきている。その原因の1つに経済的影響が懸念をされております。
 最後に、高校生の就職者。就職希望者のうち卒業時の3月の時点の未定者数は、ことしの数値も出ていますけども、一昨年からふえておりますし、ことしの3月時点では213人、就職希望者の10.1%の高校生が就職が決まっていない、こういう現状になっております。
 「動く!和歌山の教育の創造 10年後の姿-教育立県和歌山をめざして-」にお取り組みいただいて2年目になっております。3つの重点目標、学力の向上、体力の向上、国際人の育成、大事な視点であることは間違いありません。しかし、学校の教育課題をしっかり見詰めないと教育立県とはなり得ない。そんな現状だと指摘いたします。
 現状の認識とその対応について、教育長の御見解をお聞きします。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 本県公立学校の問題行動につきましては、最近5年間の調査結果を見ますと、中学校、高等学校における不登校や暴力行為、中途退学の数は全国平均を上回っており、大変憂慮すべき状況であると認識しています。特に、中学校の暴力行為については高い割合で推移していることから、喫緊の課題と捉えております。
 これらの要因としては、基礎的な学力や基本的生活習慣が身についていないことや、コミュニケーション能力が十分に育っていないため、人間関係において不安や悩みを抱えていることなどが考えられます。
 こうした課題を解決するためには、何よりも子供たちにとってわかりやすい授業、力のつく授業が大切であり、そのための教職員研修や補充学習による個に応じたきめ細かな指導の充実に取り組んでいます。また、道徳教育や体験活動などを通して規範意識を高め、思いやりや自分を大切にする心を育んでいます。
 さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置を拡充するとともに、教育相談体制の強化や警察などの関係機関との連携を図っているところです。
 大学等への進学率につきましては、ここ数年、全国平均との差が広がってきております。この背景としては、議員御指摘のように、経済状況の悪化により、就職希望者や資格取得を目指して専門学校へ進学する生徒が増加していることなどが関係しているものと考えられます。大学等への進学を希望する生徒に対しましては、進路希望をかなえるのに十分な学力を伸ばすとともに、目標をしっかり持たせ、それを実現するための粘り強い指導が重要であると考えております。
 また、就職につきましては、依然厳しい状況にあり、各学校では教職員が企業訪問を行うなど、就職先の開拓に力を入れています。県教育委員会においても、知事部局を初め、ハローワークなどの関係機関との連携を強め、生徒のインターンシップや職場見学をさらに推進するとともに、企業と就職希望者をつなぐ合同説明会を実施するなど、雇用拡大に向けたさまざまな対策を講じているところでございます。
 議員から御指摘いただいたことは、「動く!和歌山の教育の創造」の行動計画を進めるに当たって、まず解決しなければならない大切な課題であると認識しております。今後とも、教育立県和歌山を目指して、こうした課題を解決するための取り組みを一層推進してまいります。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 段々の御答弁をいただきました。不登校生徒の3人に1人が高校に行けば中途退学に至っている、高校中退者の約65%が誰にも相談しないで中退を決断しているなど、専門家の方々は分析をされております。
 また、問題が起こりやすいのは、中1ギャップ、小1プロブレムと言われ、新しい環境に適応できないことにより生ずることが多いというのも指摘されているところでございます。ぜひ、こういう重点的な取り組みもお願いをしたいと思います。
 不登校や中途退学の問題は、青少年健全育成にも大いに関係をするところでございます。昨年12月に発足した自公政権では、自民党、公明党の政権合意事項の8項目の1つに、教育の再生、いじめ対策、不登校対策、通学路安全対策等を充実させるというのを柱にしております。不登校の定義として、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により登校しない、あるいは登校したくてもできない状況にあるため、年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的理由によるものを除いた者、こういうふうになっております。社会的損失にもなっております。有効性が示されている認知行動療法を大人だけでなく学校現場にも広く応用すべきと考え、質問をさせていただきます。
 私が認知行動療法を本議会で紹介さしていただいたのは、平成22年12月定例県議会です。それから2年半がたちます。その際、知事が、認知行動療法は、鬱病はもちろん、不安障害やストレス障害など精神疾患に効果のある心理療法であると聞いており、今後この治療法の普及、人材育成など、環境整備を図っていくと答弁をされました。
 翌年8月には、県立こころの医療センターで専門外来を開設し、延べ124回実施。県立医科大学でもこの5月から外来診療で取り組んでいただいております。わずか2年半で大きく実現していただきましたのも、知事並びに県当局の御英断と、感謝を申し上げたいと思います。また、裏返せば、それだけ心の病に対し、県としても喫緊の課題として取り組まざるを得なかったということでもあります。
 不登校対策としては、心理的、情緒的背景により登校しない、あるいは登校したくてもできない状況にある児童生徒の理解を進めることが何より大事なことは、御存じのとおりです。
 暴力行為がふえた理由として、感情のコントロールができないコミュニケーション能力不足が挙げられております。これらのことから、児童生徒一人一人の感情をコントロールできる仕組みが喫緊の課題であると考えます。怒りの感情のコントロール力を高め、適切な自己主張、外部刺激への対策、問題解決手段訓練、ロールプレーなどを取り入れた手法として認知行動療法の導入を検討してはと提案し、質問をさしていただきます。教育長に御答弁をお願いします。
○議長(山田正彦君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) さまざまな心の問題を抱えた子供たちに対しましては、教職員は、日ごろから児童生徒としっかりと向き合い、心に寄り添うことが大切だと考えております。このため、現在、各学校では、児童生徒とのコミュニケーションのとり方や教育相談や健康相談などに関する知識、技能を学ぶとともに、スクールカウンセラー等と連携しながら組織的に支える取り組みを推進しております。
 議員御指摘の認知行動療法の手法につきましては、これまでの県の取り組みを踏まえ、専門家の意見を伺いながら、学校での教育活動に生かせるよう検討してまいります。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。
 この認知行動療法を学校現場にということで、教育委員会の担当者の方にいろいろ説明もさしていただきました。なかなか理解をしていただけない状況がございました。専門学会で学校現場の取り組みや、和歌山県内でも、ある中学校の取り組みなども御紹介をさせていただいたんですけども、やはり初めての取り組みとしてなかなか前に進もうとしない、そんな感じを受けたんですね。
 「動く!和歌山」というんですから動かない和歌山にならないように、これはぜひ前向きに取り組んでいただきたいなあと思うんです。認知行動療法だけではないと思います。いろいろ、心療療法というんでしょうか、あると思いますけども、それも1つということで取り上げていただきたいなあと思います。
 認知行動療法では、前向きな考えは気持ちに影響し、前向きな考えによって気持ちによい影響が出ると、それが今度は行動につながるということを学んでいくと思います。感情と行動をコントロールできる、そういうこともぜひ学んでいって学校現場で活用していただきたいなあと、こういうふうに思いますんで、重ねてお願いを申し上げたいと思います。
 この教育問題の最後に、青少年の問題行動への対応についてということで、仁坂知事にお聞きしたいと思います。
 るる御説明さしていただきましたように、現在の和歌山教育の現場、本当に大変な状況だと思います。不登校問題や高校中途退学者問題、そして中学生などの暴力行為が目立つ中、青少年の育成として、教育委員会だけでなく、福祉保健部や環境生活部など知事部局としても総がかりで取り組む課題とも考えられます。不登校や中退、そのことが引きこもりやニートにも及んでいるとさえ言われております。社会的損失に大きくつながっております。仁坂知事の御見解をお願い申し上げたいと思います。
○議長(山田正彦君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘の、青少年問題は大変重要であるから県全体で総がかりで取り組めという御指摘については、全く同感であります。
 不登校や高校中途退学者などへの対応は、次代を担う青少年の育成という観点からも非常に重要な課題であり、知事部局、教育委員会、警察などの関係機関が、それぞれの役割と責任を果たしながら、相互に協力しながら一体となった取り組みを進めていく必要があると思います。
 そのため、青少年の問題行動に対しては、教育現場での対応はもとより、相談窓口を設置し、就労、福祉、医療など、相談者のニーズに応じた最適な支援機関につなぐとともに、専門家によるカウンセリング、居場所の提供、就職支援など、関係機関が総がかりで問題解決に当たっているし、また一生懸命やらなきゃいかんというふうに思います。
 今後も、知事である私が主導いたしまして、目を光らせながら、関係機関はもとより、市町村や民間事業者など、地域との連携を強化しながらも、効果的な政策に取り組んでまいりたいと思います。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 それでは、3番目の質問に移らしていただきたいと思います。
 難病対策についてということでございます。
 国の難病対策が開始されたのは、昭和47年にさかのぼります。県の指定特定疾患医療費助成は、2年おくれの昭和49年からとなっております。このときの対象疾患は、国が難病指定した24疾患のうち医療費補助対象から外れた14疾患、劇症肝炎や潰瘍性大腸炎、白血病など、県が助成する治療研究事業を開始されました。以来40年、国の医療費補助対象が広がり、県の対象は4疾患のみとなっております。
 現在、国の難病指定は130疾患に広がり、そのうち56疾患が医療費助成対象とされております。県も、最初の県独自指定の考え方を素直に取り入れれば、最初の対象14疾患を外すだけでなく、国の制度を補完する上で対象を見直すこともできたのではないかと考えております。
 毎年、国に対して予算や施策要望を行っていますが、平成20年から続けてこられた難病対策の推進という要望が、ことし外れております。国への予算要望に難病対策を入れた年に難病・感染症対策課、難病対策班と感染症対策班を新設されたわけですが、その課も昨年3月で解消し、健康推進課難病対策班を疾病対策班と変更されております。要するに、「難病」という字が「疾病」という形に変わったわけでございます。
 今後、県としての難病対策をどのようにお考えか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
○議長(山田正彦君) 福祉保健部長中川伸児君。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 県としての難病対策につきましては、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で安心して生活できる社会の実現を目指すことが重要であると考えております。
 県では、これまで、特定疾患治療研究事業による医療費助成のほか、難病患者及びその家族に対する相談事業、居宅生活支援事業など、難病患者やその家族の生活の質の向上に取り組んできたところです。
 また、国に対し特定疾患の拡大など難病対策の充実について働きかけを行ってきたところ、現在、対象疾患の拡大も含めた難病対策の抜本的な見直しが国において検討されております。県といたしましても、地域の難病の実態を踏まえながら、難病対策のなお一層の充実を図ってまいりたいと考えております。
 なお、平成24年4月の組織体制の変更につきましては、県民の健康・疾病対策に一元的に取り組むため、健康づくり推進課と難病・感染症対策課を統合し、さらに子ども未来課の母子保健班を移管し、健康推進課を設置したものでございます。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 御答弁いただきました。また、御説明もいただきましたけども、まず、国の動向というのは動き出してるだけで、まだ決定してるわけではございません。組織編成も、先ほど申し上げましたように「難病」という字を外したわけでございますし、要望ぐらい、やっぱりこれからは県民のそういう難病を抱えた方々の意見なんかも含めて、国に対する要望もきちっと活動として続けていただきたいなあと、こんなふうに思った次第でございます。
 実は、和歌山県にお住まいの方で、VHL病(フォン・ヒッペル・リンドウ病)という患者さんの家族の方の御相談を受けました。この病気は、常染色体優性遺伝性疾患で、脳や脊髄、網膜、腎臓や副腎、そして膵臓などに腫瘍が発症し、どの腫瘍も多発し、再発し、一生かかる可能性のある病気ということになっております。VHL病患者の会ほっとChainによると、国内の患者数は約1000人くらいと言われております。
 私が相談を受けた患者さんは、6歳のときに血圧が異常に上がり、手足が赤くなり、検査の結果、腎臓の近くに腫瘍があることがわかり、VHL病という聞きなれない難病と診断されたそうでございます。その後、小学校6年生、中学3年生と3回発症し、その都度手術を行い、ことし成人を迎える女性です。早期発見、早期治療しか今のところ手だてがないために、3カ月に一度PETやMRI、エコー検診を受け続けなければなりません。
 このVHL病は、難病の指定はされておりますけども、難治性疾患克服研究事業の中に臨床調査研究分野130疾患と研究奨励分野234疾患があり、VHL病は研究奨励分野の中にあります。現在、厚生労働部会医療委員会・難病等に関するプロジェクトチームにおいて、対象疾患について検討中ですけども、情報が開示されていません。そのため、その動向がつかみにくい状態です。難病治療は、その情報が正しく伝わっていない可能性もあり、VHL病で腫瘍だけでなく臓器そのものを摘出された例も少なくないそうです。
 このほかにも、まだ難病指定もされていない希少疾病を抱えた患者さんもおられます。
 県として、今後、難病支援についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
○議長(山田正彦君) 福祉保健部長。
  〔中川伸児君、登壇〕
○福祉保健部長(中川伸児君) 医療費助成の対象となっていない疾患の方々に対しましては、和歌山県難病・子ども保健相談支援センター、各保健所において、日常生活や療養に関する相談、患者の方々の交流会の開催など、社会的に孤立しないよう支援しているところでございます。
 今後、県といたしましては、関係機関と連携し、保健所を中心とした地域での支援ネットワークの構築を図るなど、一層の支援を行ってまいりたいと考えております。
○議長(山田正彦君) 多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕
○多田純一君 最後に、要望を言わしていただきたいと思います。
 今の難病対策ですけども、やはり国の動向というのも大きく左右するんでしょうけども、和歌山県にそういう難病を抱えた患者さんがいらっしゃるのか、こういう病気の方はいらっしゃるのか、そういうデータがまずないんですね。だから、和歌山県として、国の動向を見ながら、その患者さんにどういうふうに手を差し伸べるかということについては難しいと思います。
 だから、少なくとも行政としてほっとけんという部分で体制をしっかり組んでいただきたいと思いますし、そういう情報もしっかり提供していただきたい。これを要望さしていただいて、私の一般質問を終わらせていただきたいと思います。大変にありがとうございました。(拍手)
○議長(山田正彦君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で多田純一君の質問が終了いたしました。

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