平成25年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


平成25年2月 和歌山県議会定例会会議録

第7号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

○議長(山下直也君) 再開前でありますが、一言申し上げます。
 今も傍聴席に多くの皆さんがお見えでございますが、この後、1時20分ぐらいから2回に分かれて和歌山市立和歌浦小学校の児童の皆さんがこども県庁探検隊として本会議場に傍聴に来られます。未来の和歌山を担う皆さんに県議会に関心を持っていただくいい機会でありますので、引き続き、議員の皆様、県当局の皆様、実のある議論をよろしくお願い申し上げたいと思います。
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  午後1時0分再開
○議長(山下直也君) それでは、休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので質問に入らせていただきますが、その前に、昨日、米軍機オスプレイの低空飛行訓練の問題で中村議員から緊急質問が行われ、知事からてんまつの報告がありました。中身は別として、私たち日本共産党県議団は、欠陥機であるオスプレイの飛行訓練には反対であること、知事も飛行訓練中止を訴えるべきであるという申し入れを昨日させていただいたことをここに報告させていただきます。
 では、通告に従って質問に入らせていただきます。
 第1の柱は教育問題です。
 まず、体罰問題についてお伺いいたします。
 体罰を苦にして自殺した高校生の問題。どうしてこの国では子供が死をもって抗議するまで教育問題がまともに論議されていないんだろうかと、暗たんとした気持ちにもなるわけでございます。
 しかし、和歌山県では、教職員は、そんな事件が起こる前に、体罰は教育ではない、体罰をやめようという論議をしてきました。その中心になったのが、和歌山県国民教育研究所事務局長をなさっていた岩尾靖弘という先生でした。
 私が和教組書記長だった1980年代に、教職員組合を中心にした議論をまとめたものが遺稿集「ロマンを語る」というものに収録されています。1984年8月25日から翌年2月まで、教職員組合の機関紙「和教時報」に連載したものです。それをパンフレットにして皆さんにお配りしています。
 そのころも、学校現場では、体罰なしに荒れた子供を押さえ込めるのか、ある程度の体罰は愛のむちと言えるのではないかなど、いろいろな意見もありました。私も、体罰をしてしまった未熟な教師の時代の経験を振り返りながら、皆さんと議論したものです。私が体罰をしてしまった経験については、2007年9月の県議会本会議の場で申し上げたことがございます。
 さまざまな議論を踏まえながら、岩尾先生は、なぜ体罰など力で押さえ込むやり方が教育とは言えないのかを説得的に書いています。例えば、この30ページを開いてみますと、体罰をしたことによって子供が立ち直る場合もあると。よく経験したことです。そこで教師が陥ってしまう落とし穴というようなことについても書いているわけでございます。
 このパンフレットを配って、皆さんとお話をしたら、年配のある先生が言い出しました。「あのころ、わしのいた中学校で体の大きい体育の先生が子供を殴ろうとしたとき、体の小さい女の先生がその腰に取りついて『体罰はいけない』ととめたことがあったよ」。
 その女の先生の勇気、その女の先生がとめに入れた学校の民主的な空気。体罰否定の職場論議があったからです。それこそが子供が生き生きと育つ学校だと思います。
 ところが、今に至るも、ある程度の体罰は必要だという俗論があります。
 2月2日に御坊市で教育研究大会が開かれました。その集会で知事が挨拶されて、教育委員会が体罰否定の通達を出したことに「少し異議を申し上げます」と御発言になった。教育的情熱の余り体罰をしてしまった先生もいるのではないか、その情熱をそぎはしないかと心配するということのようです。
 少し誤解を生みやすい発言ですが、体罰を容認しているわけではありません。私は、知事がそんな心配しなくてもいいような教育論に立った体罰否定の指導を教育委員会がしなくてはならないと思います。
 そこで、教育長にお伺いいたします。
 第1点、和歌山県内の体罰の実態をどう捉え、体罰についてどういう立場で通達をお出しになったんでしょうか。また、どういう調査をなさっているのでしょうか。まず、この点についてお伺いいたします。
○議長(山下直也君) ただいまの雑賀光夫君に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 体罰の問題にかかわりまして、体罰の実態認識、あるいはその調査に対してどういうふうに取り組んできたかということについてお答えいたします。
 体罰の実態につきましては、大変遺憾なことではございますけれども、悪質な体罰事案として県教育委員会に報告され、懲戒処分を行った事案がこの5年間に3件ございます。
 県教育委員会では、今回の大阪市立高校の事件を受け、本県でこのような痛ましい事件を決して起こさせないという強い思いのもと、事件公表日の翌日の1月9日に、県内全ての公立学校に対し、体罰の禁止について通知いたしました。
 また、体罰の実態を把握し、体罰の禁止を徹底するために、県内全ての公立学校の児童生徒、教員及び保護者を対象にした調査を実施しております。
 現在、各学校では、調査や寄せられた相談をもとに、体罰についての事実確認を行い、その結果を3月8日までに県教育委員会に提出することといたしております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 すぐに体罰否定の通達は出されたようですが、体罰について、愛のむち論というものがある。こうした中で、教育論的にも法律論的にも、なぜ体罰はいけないのかということを明らかにしなければ体罰容認論が復活することになりかねないと思います。
 教育委員会として、教育論も含めた、体罰は許されないという指導文書を出されたことがありますか。また、お配りしたパンフレットを読んでどういう感想をお持ちでしょうか。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 議員御指摘のような性質の指導文書については出していませんけれども、県教育委員会といたしましては、子供に対して、絶えず愛情と情熱を持って指導に当たるとともに、さまざまな指導をした後にきめ細かな手だてを行うことを念頭に置き、子供としっかりと向き合うよう、県立学校長会や市町村教育長会等の機会を捉えて指導しているところであります。
 議員御提示のパンフレットにつきましては、体罰によらず、子供との間に温かい人間的なつながりをつくり上げていく必要があるなど、共感する部分もあると感じております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 体罰を見過ごさない教育現場というものが大切だと思います。
 強い運動部で、指導者がやっていることに口出しができないとか、あるいは生徒指導も体力のある先生に頼っているからその先生の体罰に口を出せないとか、そういう状況も私はたくさん知っています。だから、小柄な女の先生が大きな先生に取りついて体罰をとめたという話を聞くと、私には感動的であるわけです。自由で民主的な学校現場でこそ、体罰をなくすことができると考えます。
 教育長も、学校現場におられたころ、自分自身で体罰をしてしまったり、学校内での体罰があるのを知りながらとめられなかったというようなつらい経験はないのでしょうか。体罰を見逃さない教育現場づくりのために、どういうことが必要だとお考えでしょうか。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 私も、学校現場に勤務しているときには、体罰の場面に遭遇した経験がございます。
 ある高等学校の生徒が、修学旅行を直前に控え、注意していたにもかかわらずバイクに乗り、事故を起こし、亡くなりました。クラス全員でその生徒のお葬式にお参りに行く日、ある生徒が喫煙をしたことがわかりました。そのことで、担任教諭は、その子に涙を流しながら、なぜこの事態を理解できないのかと思い、体罰を加えました。体罰をした教員も、受けた生徒も、また周囲の生徒も、皆、互いに泣いていました。これも体罰には違いないのですが、つらく複雑な思いをする場面でした。
 体罰の問題を解決するためには、子供といかに向き合うかをみずからに厳しく問い返しながら、どこまでも子供に深い愛情と熱い思いを持って指導に当たることが重要であり、教職員がこうした共通理解を持ちながら日々指導に当たることが体罰を見逃さない学校につながると考えております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私は、教師というものは、若いころたくさん失敗しながら成長してきていると思います。
 岩波新書に金沢嘉市の「ある小学校長の回想」という有名な本があるんですが、若いころ一生懸命やった、しかし、それはできる子を上の学校に行かせる教育であったということを悔恨を込めて書いています。
 体罰を含めて、自分の未熟なときのことを隠してきれいごとを言っては、教育論議は深まりません。教育長が今お話しになったような話、もちろんそれはいいんですが、恐らく長い教師生活をしていれば、運動部活動や生徒指導でやむにやまれぬ気持ちで体罰をしてしまったという、枠を超えたような、もっと見るにたえないような体罰に胸を痛めたことも実際は恐らくあるんだと思うんですが、ここで語れというのもちょっと酷ですんで、ここまでにしておきたいと思います。
 それで、体罰問題である会合でお話ししましたら、あるお母さんから話が出ました。「体罰でないんやけどね、うちの子が少年サッカーに入ってたころ、合宿へついていった。指導者は、笛を吹いて、暑い中で走らせてばっかりしている。親は、この暑い中で心配やが、口出しもできずにつらかった」というお話をされました。
 私は、かつて運動部活動のあり方を取り上げたとき、教育委員会保体課が中心になってつくった運動部活動指導資料というものを紹介したことがあります。角谷整形の先生なども加わってつくったもので、スポーツ界でも体罰が問題になったこともあって、改めて読み返してみました。
 例えば、高校の強い運動部に入ると、1年生は早く来てグラウンド整備とボール拾いをする。それに耐える根性のある者だけが残ればいいという考え方がある。下級生は、グラウンドの向こうを先輩が通ると「おはようございます」と大声で叫ぶ習慣がある。こういう問題をどう考えるべきかということまで説得的に書いておりました。
 合宿で走らせるというお母さんの話に引きつけて言えば、合宿で走らせても急に体力がつくわけではない、合宿の機会はスキルの向上を図るべきであると書いておりました。なるほどと思いました。
 大変よくできたものだとよく申し上げるんですが、もっとお使いになってはいかがでしょうか。教育長、どうですか。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 運動部活動の指導の改善ということにかかわってお答えします。
 議員御指摘の運動部活動指導資料につきましては、部活動を指導する上で大変役立つものであると考えています。現在、その資料をもとに、新しい指導の観点も加えながら、より効果的な指導ができるよう、新たな指導の手引書を作成しているところであり、その活用を徹底してまいります。
 さらに、部活動の活性化を図るとともに、生徒が安心して自分の目標に向かうため、保護者や地域の方々にも見守ってもらえるような開かれた部の運営を行うよう、各学校を指導してまいります。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 次に、知事にもお伺いいたします。
 初め、御坊で話を聞いたときは、一瞬あれっと思ったんですが、教育的情熱をそぐことにならないのか心配だということを考えられたそうです。
 知事の発言を善意にとれば、私がパンフレットを配って、教育論としても、なぜ体罰がいけないのかを明らかにしなくてはいけない、一片の通達ではだめだと言っていることとも思いは重なり合うかなとも善意では考えるんですが、知事の思いを、お配りしたパンフレットへの感想も含めてお伺いしたいと思います。
○議長(山下直也君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 体罰は、決して許されない行為でございます。
 教育には、教えよう、あるいは子供をよくしようという情熱で子供に向き合うことが必要であると思います。しかし、幾ら情熱があっても、よくしてやろうと思っても、無理やり体罰で子供に言うことを聞かせるということは愚策であると私は思います。やはり、子供たちが心の中で納得し、それから共感するということがないと教育の効果は上がらないと私は思います。
 教育委員会の点につきまして、議員御指摘のあった点については、体罰はいけないということを通達するだけで過ごしていないか、それで事態はよくなるのか、ひょっとしたら「ああ、俺は処分されちゃう」ということで子供に情熱を持って向き合うことから逃げる教師が出てきやしないかというようなことをやっぱり考えとかないといけないんじゃないか、そんなふうに思ったわけです。
 教育委員会は、単に通知文書を出すだけで終わらせずに、体罰に頼らない教育をするにはどうしたらいいかと日ごろから教師に対して指導していくことを大切にしてもらいたいと考えております。
 体罰はいけないのですよということとともに、どうやって子供たちを高めていくか、体罰などに頼らないで立派な教育をやるにはどうしたらいいか、そういうことを皆で追求しなきゃいけないというふうに思います。
 さらに、それでも事が起こったときには、形式的に、例えば体罰をした教師を処分して終わりということではなくて、何でそんなことが起こったのか、あるいは再発はどうしたら防止できるのか、県教育委員会や市町村教育委員会、それから県当局も、学校と一緒になって総力を挙げて取り組まきゃいけないというふうに思います。
 パンフレットの件ですが、以上のようなことを唱える意見は多数あります。本パンフレットも、そのような種類だと思います。
 しかし、終わりのほうで、一発殴られたほうがすっきりする云々と書いてあるところがありまして、そういうのは、先ほどの私の発言が誤解されかねないような、発言の一部をつまんで報じられることがよくある現在の世相から見ると、危ないなあというふうに思いました。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 こうした問題では、教育論議が職場でも至るところで自由に行われることが大切です。そういう立場から、私も発言の一部をつまんで批判するようなことはやめて、きょうはこの問題をお話ししたわけでございます。
 次の問題へ入りますが、当初予算で県独自の学習到達度調査を行おうとしている問題です。
 県学力調査は、私が県議会に出させてもらった直後から始まりました。当時、高校通学区撤廃に続いて、中高一貫の県立中学校導入とあわせて、この学力調査の問題をめぐって当時の教育長と論戦を闘わせたのを思い出します。
 今、高校通学区撤廃は、これでよかったのかという声が広がり始め、中高一貫の県立中学校についても、特に地方では、周りの公立中学校へのマイナスの影響が指摘されています。
 学力調査は、その後、文部科学省による学力調査が始まり、県の調査は一休みしていたのですが、再開するということでございます。
 まず、県の学力調査については、これまで国の動向を見ながらと表明されてこられたと思うのですが、国の学力調査とはどういう関係にあるのでしょうか。教育長にお伺いします。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 県の学力調査にかかわってお答えします。
 今回計画しております学習到達度調査は、小学校4年、5年、6年生と中学校1年、2年生を対象に、12月の実施を予定しております。
 この調査は、今年度までの全国学力テストにおいて、本県の子供たちの学力が全国平均を下回る状況にあり、この結果を県教育委員会として厳しく受けとめ、その責任をしっかりと果たす意味で実施するものです。
 したがって、この調査は、本県の子供たちの学力を向上させることが目的であり、これにより児童生徒1人1人の学習状況を正確に把握した上で、個々の課題に合わせた指導を行い、その学年で学習する内容を確実に身につけさせたいと考えております。
 変化の激しいこれからの時代を担う和歌山の子供たちに生き抜く力の根幹をなす学力を身につけさせることは県教育委員会としての責務であり、こうした狙いを持った本調査は、学力や学習状況の実態調査を主たる目的とした国の調査とは異なると考えております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 手元に、平成22年の2月に出された「平成23年度及び平成24年度以降──以降というのは来年も含めて以降ですが──の和歌山県学力診断テストの在り方について(報告)」という報告文書があります。委員長は、当時和歌山大学教育学部長だった松浦善満先生であり、この報告書は、3ページにこう書いています。「全国学力・学習状況調査が、本県の目的とする学力調査として十分活用できるのであれば、まずその活用を検討することが必要である」と書いている。つまり、国の学力調査のデータで目的を達せられるならば、新たに費用もかけて、子供への負担もかけて独自の調査をしなくてもいいという立場でこの報告書は出されています。
 教育長にお伺いいたします。政策変更に当たって、この検証委員会に諮られたのかどうか、お答えください。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 県の学力調査再開に当たってお答えします。
 本県では平成15年度から県学力診断テストを実施してきましたが、これと同様の目的を持った全国学力テストが始まったことから、これらの2つのテストのあり方等を検討するため、議員御指摘の検証委員会を設置したところです。
 今回新たに実施する学習到達度調査は、先ほど申し上げました目的で行うものであることから、検証委員会を改めて設けることはしておりません。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今度の県の学力到達度調査は、かつての県の学力調査とも国の学力調査とも性格や目的が違うと言われたいようですが、子供の学力を向上させる調査と、学力や学習状況の実態を把握するための調査と、そんなものが区別できるはずがありません。言葉のごまかしであることを申し上げておきたいと思います。
 22年に報告を出した検証委員会は、学力診断テストという特定のテストでなく、もっと広い意味での学力調査の検証を課題としていました。しかも、今度、国の学力調査は、従来の30%抽出じゃなくて悉皆調査で行われるということとお聞きしました。それならなおさら、県独自の調査は必要ないというのがこの検証委員会の立場じゃないでしょうか。
 検証委員会は確かに1年任期のものですが、報告では24年度以降のことについて報告し、さらに引き続き検証したいというふうに委員会が言っています。そういうものを全く無視してやるというのは、いかにも失礼ではないかと思います。
 さらに、6年生の場合は国と県のテストが重なります。学校現場の意見を聞いて、よく検討されるように要望しておきたいと思います。
 それでは、次へ行かしてもらいます。
 体罰、いじめ、学力の問題、たくさんの問題がある中で、大変大事な問題は、何といっても教育委員会がなすべき最大のことは人的配置だろうと思います。
 朝からも、藤本議員からもお話がありましたが、35人学級のための予算措置がなされない、現場に混乱が起こるのではないか、大変心配しています。定数内講師の問題もあります。また、文教委員会でも議論したいと思いますが、教育行政が力を入れるべき最大の課題は、何といっても教職員定数の確保であることを申し上げて、次に行きたいと思います。
 それでは次に、大きな柱で、風力発電低周波問題について、私からも申し上げたいと思います。
 私は、2010年の9月県議会以来、何度か風力発電に伴う低周波被害について取り上げてまいりました。最初は、海南市下津町の大窪という地域での被害の訴えでした。その後、由良町での被害の訴えを聞き、昨年2月の県議会で取り上げました。その後、何度か由良町にも出向き、住民の皆さんとお話しする中で被害の深刻さを実感いたしました。
 低周波被害というのは個人差がありますから、感じる人と感じない人がいます。私などは、なかなか感じられません。
 下津町大窪では、被害を訴える方が少数です。下津町で、私が取り上げたことをきっかけに、何度か低周波の測定をしていただきました。ところが、由良町へ行ってみると、至るところで被害の訴えを聞くわけです。
 そこで、質問いたします。
 第1点は、下津町大窪で少数の被害があり、由良町畑地区では被害の訴えが多発しているわけですが、それぞれの地域については、いつからどれだけの大きさの風車が稼働し始めたのでしょうか。商工観光労働部長からお答えください。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 海南市下津町大窪地域、由良町畑地域のそれぞれの地域での風力発電の稼働についてですが、海南市下津町大窪地域では、株式会社ユーラスエナジー有田川が平成21年10月から有田川ウインドファームとして1300キロワットの風車10基で稼働し、由良町畑地域では、株式会社広川明神山風力発電所が平成20年10月から広川明神山風力発電所として1000キロワットの風車16基で、また、由良風力開発株式会社が平成23年9月から由良風力発電所として2000キロワットの風車5基で、それぞれ稼働しております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 では、健康被害の訴えがいつから出始めたのか、お伺いいたします。
 下津町大窪、由良町畑地区、健康被害はいつから何件ありますか。また、県内の他の地域で風車にかかわる被害の報告はありますか。福祉保健部長からお答えください。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長山本明史君。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 風力発電に係る健康相談については、保健所が実施するクリニックなどで対応しております。
 具体的には、海南保健所で平成22年9月以降、海南市下津町にて体調不良を訴えられている2名の方の健康相談を実施しています。
 また、御坊保健所でも、平成24年3月以降、由良町畑地区の方など3名の方からの騒音、低周波についての健康相談を実施しています。
 その他の地域につきましては、現在のところ、体調不良を訴えている方の報告は受けておりません。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 普通、健康被害を感じても、調子が悪かったらお医者さんに行くわけです。保健所には行きません。ですから、保健所というところは、なかなか待っていても健康被害の実態をつかめるわけではないわけです。
 そこで、私のほうからちょっと、この風車の建設と健康被害の実態を整理して報告いたしますと、下津町大窪でユーラスエナジーの風車が稼働し始めたのが平成21年10月、報告のとおりです。最初に被害を訴えた女性は、翌年1月には耳鳴りを感じるなどして2重サッシを入れましたが、かえって苦しくなり、半年後には転居しています。もう1人の方、和歌山市に転居された方のお話は、藤本議員からもお話がありました。少人数であっても、被害を感じる方は大変な苦しみでございます。
 由良町畑地区の場合は、平成20年10月に広川明神山風力発電所が稼働し始めました。最初に訴えをされたTさんは、その年の11月から胃が重いような異常を感じたと言います。さらに、平成23年9月に2000キロワットの由良風力発電所が稼働いたしました。Tさんの症状は激変しました。その年の11月からヒューンヒューンヒューンの騒音で耳が痛くなる、ズンズンズンズンという振動を畳の下から、天井から感じるようになったと言います。そして、翌年の1月8日に畑地区集会が開かれ、そこで被害の声が複数の方から上がるわけです。
 そして、私が2月県議会で、この由良の話をこの県議会の場でさせていただきました。今、福祉保健部長より3人の方から被害があったというのは、その後の3月でありまして、3月に初めて保健所が問題をキャッチした。これが今お答えになった事態でございます。
 しかし、その前からたくさんのことがあるわけです。しかも、騒音被害、低周波被害を含めて異常を訴えている方が10名から20名近くおられるという、藤本議員が朝から資料の地図をお配りになられたとおりでございます。
 保健所は、地域の隅々まで健康異常をキャッチするネットワークを持っていませんから、私は、キャッチが遅くなったことは責めません。しかし、そういう問題が今明らかになったわけですから、放っておいてはいけない。特に、由良町の畑地区では状況は深刻です。何をしなければならないのかは、追って申し上げます。
 そこで、公害問題の歴史を振り返ってみれば、そこには長い闘いが必要でした。国の基準によって規制するには時間がかかります。それでも、必要なデータを積み重ねなくてはなりません。
 もう1つは、国の基準をまつことなく、住民が協定などを武器に業者を規制することを目指します。そのために、県などの行政は住民の便宜を図らなくてはなりません。
 国の基準がない中で、測定というものも、測定したら直ちに風車をとめられるような数値が得られるかということでなくて、そういうことでなくても測定値を積み重ねなくてはならない。その立場から、測定方法についての質問や提案をいたします。
 まず第1は、由良町の風力発電業者が日本気象協会に委託して行った調査が町民の間に不信感を生んでいるという問題があります。
 日本気象協会というところは、測定機器を持っていて測定の専門家ではありましょうが、低周波の身体への影響を判定するところではないと思います。ところが、住民に配られた測定結果報告には、「身体への影響はありません」という判定のようなコメントがつけられておりました。
 まず、環境生活部長にお伺いしたいのですが、日本気象協会という組織は、測定結果が身体に影響があるかどうかまで判定するような組織なんでしょうか。
○議長(山下直也君) 環境生活部長米田和一君。
  〔米田和一君、登壇〕
○環境生活部長(米田和一君) 日本気象協会というのはいかなる組織かとの御質問にお答えいたします。
 一般財団法人日本気象協会は、気象関係の業務に加えまして、音圧レベルや濃度レベル等、環境に係る計量証明事業の登録を受けまして、全国で測定業務を行っている組織でございます。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 おっしゃるとおりだと思います。
 ところが、風力発電会社から依頼された気象協会は、風力発電会社の意を酌んで、住民への説得まで買って出たわけでございます。つまり、測定数値だけじゃなくて、健康への問題がないということまでコメントをして住民に配ったわけです。これでは、住民の皆さんの不信は当然です。
 ところで、下津町では、県と業者が共同して、風車をとめたり動かしたりして測定を行っています。先日、3月3日の区民集会には、県の職員においでいただいて、過去8回の測定結果が報告されたと聞いています。
 そして、その下津よりさらに被害が激しい由良町畑地区では、2つの風力発電会社、2000キロワットの5基と1000キロワットの16基がずらっと並んでいます。それなのに県が測定にかかわっていない。由良風力発電所が気象協会に依頼した測定では、広川明神山風力発電所は関係ないですから、自分の風車をとめたり動かしたりして測定に協力するというようなことはしていないわけです。
 地元では、せめて由良町でも、県が加わって下津大窪並みの測定をしてほしいという声があります。ぜひ、この声に応えてほしいと考えますが、環境生活部長、いかがでしょうか。
○議長(山下直也君) 環境生活部長。
  〔米田和一君、登壇〕
○環境生活部長(米田和一君) 由良町での調査につきましては、これまでも由良町、地元区及び事業者との話し合いがなされ、また測定につきましても、現に事業者において実施されている状況でございます。
 なお、本来は当事者である事業者が実施すべきものであると考えておりますけれども、由良町、地元区及び事業者とよく相談した上で、必要な対応について検討してまいります。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 県としても協力することにやぶさかではないということでしょう。しかし、由良町、地元区及び業者で話し合いがされているので頭越しにやるわけにはいかない。県からも地元に話もして、一緒に測定も含めて検討していただけるということをお答えいただいたと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次の提案は、低周波の測定は、体調異常を感じるときと感じないときのそれぞれについて行って、体調異常との因果関係を検出する必要があると思います。
 被害の訴えの多い地区に測定機械を持ち込み、住民の健康異常と低周波の関係を検証できるような測定を行うべきではないかと思うんですが、そうした測定をやっていただけないでしょうか。環境生活部長、お願いします。
○議長(山下直也君) 環境生活部長。
  〔米田和一君、登壇〕
○環境生活部長(米田和一君) 住民の健康異常との関連をつかむ測定をとのことでございますが、被害を訴えている方のお声をよく聞きまして、専門家とも話し合って、最も合理的な方法で実施すべきものと考えております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。
 低周波測定と違った面からの問題解明の方法の1つは、住民の健康調査であります。
 住民から健康異常の訴えがあるのを待っているという受け身じゃなくて、保健所からこの問題に焦点を当てて、一定の低周波被害とおぼしき訴えのある地域では、特に住民からその希望が出された場合には積極的に住民の健康について聞き取り、血圧などの検査をされてはどうかと思います。調査項目は、私は素人ですから、専門家の皆さんが住民の皆さんの声を聞いてやっていただければいいと思うんですが、福祉保健部長、いかがでしょうか。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 由良町では、風力発電に係る健康問題について、町で相談を受ける旨、地域住民に説明されております。保健所としては、引き続きクリニックなどで対応を行うとともに、町が行う健康相談に協力してまいります。
 なお、地元や事業者等が地域住民の方々の健康状況に関する調査などを実施する場合は、関係機関、関係部局と連携のもと、協力してまいります。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 今の時点では、保健所は待ちの姿勢ではだめだと思います。
 ですから、私は先ほど、いついつ風力発電が稼働して、そしてそれにかかわる被害の訴えはいつの時点でどう変わったのかという話を詳しく話をして、その上で保健所に訴えがあったのはいつだったかという、いかに遅かったかということを申し上げたわけです。それは、現在の保健所の機能からいうとやむを得ないから、決して私はそれを責める気はない。しかし、ここまで被害が明らかになった中では、待ちの姿勢ではだめだというふうに思っています。
 ただ、今のお答えの中でも、地元がそういう健康調査をやる場合には一緒にやるんだという、そういうことが表明されておりますから、ぜひともよろしく、出ていってつかんでくるということを地元と協力してやっていただけるようにお願いしておきたいと思います。
 そして、今度は知事への質問なんですが、今、由良町の畑地区というのは、全国的にも注目される風力発電低周波被害地域になっていると思います。
 私も、この風力発電というものは自然エネルギーとして期待してきたものですし、今後も被害さえなければ期待をするものですが、しかし、これだけ被害があるとなると、原因究明が進められ、その原因を取り除く技術進歩がない限り、新しい風車の建設は控えるべきだし、現行の風車をとめることも必要だというふうに思います。
 今、被害者を救済するために、また、被害を大きくしないために何ができるのか。知事のところへも、地域住民の方から要望が届いていると思います。知事の御見解をお伺いしたいと思います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 電源の確保という観点から、自然エネルギーへの取り組みは大変重要だと認識しております。その中でも、風力発電は、原子力発電はやめるべきだという意見の人からは救世主のように思われておるわけでありますが、ところが、これもまた不都合な事実、あるいはリスクがあるかもしれないというのは議員御指摘の例でも語られてるところであります。
 事業者が環境影響評価法や自然公園法など関係法令を遵守し、地元の理解が得られるよう十分な説明を行った上で事業を実施すべきものであるということは当然でありますが、しかしそれでも、そのようないわゆる不都合な事実があってはいかんということで、風力発電に係る健康相談については地元市町と連携し、保健所において対応してきたところであります。
 風力発電施設からの低周波音、あるいはそのほかのいろいろな音とかそういう点について、私は早期に科学的に客観的な基準を設定することが必要と思っておりますが、多くの知見を集めてこれを行う必要がありますから、これはそうなると国しかできません。そこで、平成23年度と24年度の2カ年にわたり政府提案を行ったところでありまして、検討もかなり進んでるというふうにも理解しております。
 現状では、風力発電に係る課題については、地元区、町と事業者が協議の上で対応すべきものと考えておりますが、県としても、よく調べて、よく考えて、地元自治体等に対しては必要な協力を行っていきたいと考えております。
○議長(山下直也君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 先ほども申し上げましたように、現在、この由良の畑地区というのは、本当に全国的にも注目されるような風力発電の被害の大変な地域になってきていると思うわけです。
 それで、もちろん国しかできないこともあるのはよくわかっています。しかし、県民が現に苦しんでいる。苦しんでる者にとっては、もう一日でも我慢できない、そういう状況に追い込まれています。
 今、地元の由良町の風力発電を考える会から出されている県に対する要望書というのは、すぐに風車をとめてしまえということでなく、とりあえず夜間停止、低速運転の試験実施と、それに合わせた騒音・低周波の測定や健康状態の把握という極めてささいな要求です。ぜひとも誠実にお応えいただきたいと思います。
 そして、風力発電被害について、地元、業者あるいは国の責任だということだけでは、やはり困ると思います。現に県民が苦しんでるわけですから、場合によっては、知事も低周波被害に苦しむ方に直接会って御意見をお聞きするというようなこともやっていただきたいと思います。
 そういうことも含めて、ぜひともこの大変な問題に県として立ち向かっていただけますように要望いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
○議長(山下直也君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で雑賀光夫君の質問が終了いたしました。

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