平成25年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


平成25年2月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○副議長(浅井修一郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 10番鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、こんにちは。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。最後までおつき合いのほど、よろしくお願いをいたします。
 まず、1項目の未来に向けた水産業の振興についてであります。
 その1点目として、漁業を取り巻く現況について質問をいたします。
 本県における漁業を取り巻く環境は、最も憂慮すべきことに、漁獲量は昭和60年代を境にこの数十年来、減少傾向の一途をたどり続け、近年ではピーク時の半分以下になっているのが実情であり、漁業者の収入減少につながっている最も大きな要因の1つとなっております。
 加えて、漁業の担い手である漁業協同組合の組合員も年々減少し、高齢化の一層の進行を招き、悪循環に歯どめがかからない状況にあります。
 私の地元、田辺市におきましても同様で、主に一本釣りとまき網漁業が盛んで、アジ、サバ、イサキ、カツオ、またイカやシラス等が漁獲され、かつては県内でも有数の漁獲量を誇っていました。しかし、昭和48年の漁獲量1万3000トンをピークに大幅に減少し、近年では最盛期の約半分近くにまで減少してきております。また、それとともに漁業経営及び漁業者の生活も大変厳しい状況にあり、漁業の担い手の減少並びに高齢化については、改めてここで申し上げるまでもありません。
 こうした状況は、本県のみならず、もちろん全国的にも言えることでありますが、このような中で、県にあっては、沿岸漁業の整備拡充を図るため、漁礁設置等に係る水産基盤整備事業を初め、磯根漁場の再生を図る磯根漁場再生事業、また資源管理・回復推進事業や水産資源の維持増大を図る栽培漁業等、多岐にわたる事業展開を図られております。
 また、沿岸自治体においては、漁協と連携を図りながらマダイやイサキ、イセエビ等の各種放流育成事業を行うとともに、海面環境保全事業に取り組まれているところでもあります。
 しかしながら、一言で言えば漁獲量の増大や漁業経営の安定化に資するための抜本的な課題解決には至っておらず、漁業を取り巻く環境は、より一層厳しさを増しているのが実情であると考えます。
 本県の基幹産業の1つである漁業を取り巻く現状をどのように捉えているのか、知事の率直な御所見をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 近年の水産業は、水産資源並びに漁獲量の減少、魚価の低迷、漁業者の高齢化に加え、燃油高騰、消費者の魚離れなど、大変厳しい状況にあると認識しております。
 とりわけ、他の産業も大変なんでございますけれども、例えば競争力になかなか難があるとか価格が伸びないとか、あるいは売れないとか、そういうのはよくあるんですけれども、特に水産業の場合はとれないというのももう1つございまして、これはそういう対策もやっていかないかんというふうに思っているわけであります。
 そこで、これに対して、県としては水産業活性化アクションプログラムを定め、漁業所得の向上を目的に水産業振興策を実施してきております。
 その中身は4点ございまして、1つは経営基盤の強化推進でございますが、県の水産業の基幹となるまき網漁業の再生に向けた経営統合、それから漁業組織の再編強化を図るための漁協合併の推進、養殖業の推進と地域活性化を図るためのマグロ養殖の誘致などを実施してまいりました。
 2点目は流通戦略の構築でありまして、産地市場の拠点化を図る勝浦漁港の水産物荷さばき施設や田辺漁港の製氷貯氷施設整備、水産物の販売力強化や加工品開発を推進するための専門アドバイザーによる漁協に対する指導、水産物の品質の向上を図るためのプレミア和歌山推奨品の認定などを行いました。
 3点目は水産基盤の整備です。沿岸の資源増大のためのイセエビ増殖場やマダイ漁礁の整備、釣り漁業のコスト削減を目的とした浮き漁礁の設置、災害に備えた機能を持った串本漁港の水産物荷さばき施設整備などを実施いたしました。
 4点目は、観光と連携した新たなビジネスの推進でございまして、漁業者による白崎の漁船クルーズの実施、和歌浦漁港でのおっとっと広場の新鮮な水産物の提供などを行っております。
 このようなさまざまな対応を図り、一定の成果はあるものの、まだまだ難問山積、不十分なところがいっぱいあると思っておりまして、このような状況を何とかしていかないかんというふうには思っております。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 あえて、知事に漁業を取り巻く現況について認識をお伺いいたしました。
 魚がとれれば、ある程度の課題というか、経営面のほうでありますけれども、そういった部分もほぼなくなるんですが、そういう格好で私は考えているんですが、答弁をいただきました。
 続いて、2点目に移ります。
 漁業担い手対策について質問をいたします。
 全国的に漁業を取り巻く環境は、先ほども申し上げましたように、一層厳しさを増している中で、漁業就業者はこの10年間で約2割も減少し約20万人にまで落ち込むと同時に、そのうちの約4割が65歳以上で占められております。漁業担い手対策は、とりもなおさず喫緊の重要課題の1つであります。
 そういった現状にあって、国においては、漁業への新規就業並びに後継者の育成を促進するため、就業準備講習や漁業就業相談会の開催、漁業現場での長期研修等を支援するための担い手確保対策事業を行っております。この事業の趣旨は、将来にわたり水産物の安定供給を担う経営体を育成するとともに、漁業従事者の減少、高齢化が進む中にあって、新規就業希望者が円滑に漁業に就業できるよう漁業現場での長期実地研修等を推進するもので、本県においても、漁協が主体となって当該制度を活用し、ある一定の就業者対策を図ってきたところであります。
 一方、高知県等他県におきましては、この国の制度を活用するとともに、より充実を図る観点から、県独自の制度として、新たに漁業に就業していただく方々に対し、生活支援や技術習得支援拡充のための事業展開を行っています。つまり、国における担い手確保対策事業は船主に対し講習料として補助されるものであり、先ほど申し上げました高知県等他県の漁業就業支援事業は、一定の制約はあるものの、新規就業者に対して直接的な生活支援を図る制度であります。より担い手確保に踏み込んだ内容ではないかと感じるわけでもあります。
 こうした他県の取り組みを担い手の確保という観点からどのようにお考えか。また、これとは別に、本県において就業者向けの支援制度のあり方についてどのようにお考えか。あわせて農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 議員お話しのとおり、高知県等では自営の漁業を希望する人に対して研修期間中の生活費の支給を行っているとお聞きしております。漁業者の減少や高齢化の進行など漁業の厳しい現状におきましては、このような支援策は、より踏み込んだ担い手対策の1つとして検討に値するものと考えられます。
 本県では、かつて同様な研修生への助成を実施しておりましたが、国が研修指導者に対して手厚い支援制度を創設したため、現在は国の制度を活用しております。また、国では、就業に向けて漁業学校等で学ぶ研修生に対し、来年度から資金の給付が行われる計画と聞いておりますので、国の動向も注視しながら、県として自営の漁業を希望する方への支援について検討してまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきました。
 そもそも、新規就業者にとってみれば、漁師という職業に向いているのかどうか、例えば一本釣りがいいのか、また、まき網なのかといったいわゆる操業種別の向き不向きさえわからない中で、まず漁師になることを決め、なおかつ操業種別をも選択した後でしか、国における今言いました担い手確保対策事業は活用できません。そのため、非常に大きな不安とさまざまな意味での負担が伴います。
 そこで、漁師という職に興味を持たれている方がまずは気軽に体験できるメニュー、つまりお試し期間があれば、その不安は大きく解消され、より活用しやすくなると考えますが、この点について農林水産部長はどのようにお考えか、御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 御提案の就業希望者への短期の漁業体験研修につきましては、就業希望者をふやし、漁業種別の向き不向きを判断するのに有効であると考え、かつて県で実施しておりました。現在は、漁業者が自主的に実施しているところでございます。
 県といたしましては、新規就業者の受け入れを希望する経営体や漁協の自主的な取り組みを注視するとともに、漁業体験の拡大を呼びかけてまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 漁業を振興している市町村や各漁協の声もしっかり聞きながら取り組みを進めていただきたいと、このようにお願いをいたしたいと思います。
 次に、3点目として、水産物の高付加価値化について質問をいたします。
 本県の基幹産業である農林水産業の振興を図る上で、和歌山の豊かで優良な食材を生かした安全・安心な食の供給拠点づくりをさらに推し進めていくことは、所得の向上、労働力の確保、次世代の育成等をもたらす大きな要素であるため、現在、県においては、地域活性化施策の柱として多様な角度から事業展開が図られております。
 例えば、農業分野の施策として、農林水産業を牽引する新技術の開発や新品種の育成を図るための研究予算の措置を初めとし、県オリジナル品種への改植や地域のさまざまな課題に応じた生産対策に係る総合的な支援、さらには和歌山産農産物のブランド向上とイメージアップに向けた取り組み、または首都圏等における和歌山食材の認知度向上を図るための事業展開、並びに新たな販路拡大の促進等が挙げられます。
 林業分野の施策としては、間伐材の森林整備の促進と木材生産量の増大を図るため、森林路網の整備を支援する森林路網整備加速化事業、また、木材関係業者の連携を促進し、新たな販路開拓に取り組む紀州材販路拡大支援事業等が挙げられ、水産業分野の施策に至っては、水産基盤整備事業や磯根漁場再生事業等、既に1点目で申し上げた施策等であります。
 そこで、水産物の高付加価値化についてでありますが、水産物のみで高付加価値化を図るとすれば、加工品の開発やブランド化の推進等が主なものであり、おのずと限界があることから、他業種との連携を含めた新たな取り組みが求められているところであります。
 そういった中で、私の地元においては、国の農商工連携事業を活用し新たに誕生したブランド米である熊野米と地元の紀州いさぎを加工し、マッチングさせ、釜で炊き上げる「イサキ飯」を新商品として売り出すための取り組みが現在進められております。
 これは、地元特産品を加工し、また、それを組み合わせることによって新たな付加価値を見出すという試みの一例であります。今はまだ始まったばかりですが、こうした取り組みを行政が支援することによって、将来的には6次産業化にもつながるものであると考えます。
 そこで、県当局におかれては、より収益性を見出す観点から、特に水産物の高付加価値化に向けた新たな取り組みについてどのようにお考えか、農林水産部長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 水産物の高付加価値化については、低迷する漁業者所得の向上に大きな効果があるものと考えます。
 本県における水産物の高付加価値化に成功した事例としては、カツオを漁獲直後に船上で生け絞めと血抜きを行い、急速に氷水で冷やすことを参加漁業者に徹底することで価格を向上させているすさみケンケン鰹の例などがございます。
 今後、これまで流通に乗らなかった魚種や海藻の販売促進を初め、廃棄していた部位の活用など、さまざまな形での水産物の高付加価値化を促進する取り組みを支援してまいります。
 また、御指摘の水産物と農産物などの組み合わせによる新たな加工品開発などの産物のマッチングや6次産業化への取り組みについても、さらに推進してまいる所存でございます。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 この項の最後に、4点目として漁場整備について質問をいたします。
 まず、我が国の漁獲量は、1980年代後半のピーク時1200万トン台から減少し、2004年以降は600万トン以下にまで落ち込みを見せております。そしてまた、本県の漁獲量につきましても例に漏れず、冒頭にも申し上げましたが、1990年代を境にこの数十年来、減少の一途をたどっております。
 このような背景の中で、国においては漁業資源の回復、増大のために種苗放流や資源管理型漁業が推進されてまいりましたが、これらは特定の魚介類の維持、増大を意図したものであり、海域全体の漁業生産力増大にはつながらないのが実情であります。
 そうした情勢下で、平成13年度に制定された漁港漁場整備法に基づく漁港漁場整備事業の推進に関する基本方針、これに則し、新たな漁場開発として沖合域における漁場開発が積極的に実施され始めました。
 これまでの沖合域における漁場造成は浮き漁礁等が中心でありましたが、近年においては海域肥沃化の研究開発並びにマウンド漁場造成技術や高層型人工魚礁の開発が進んでおり、このような新たな漁場造成手法の考案とともに、ますます沖合域、大水深域への漁場整備が図られるものであると思われます。
 ここでいう海域肥沃化とは、栄養塩類の豊富な海洋深層水により、海洋の生物生産全体を支える植物プランクトンの光合成生産量を増加させ、食物連鎖という自然システムを活用し魚類生産量の増大を図るものであり、生物生産全体の底上げ効果を目的としております。
 また、人工湧昇流、マウンド漁場といいますけれども、マウンド漁場とは、皆さんのお手許に資料を配付させていただいております。これに当たるわけなんですが、(資料を示す)これは海域肥沃化の手法の1つでもあり、大規模な人工海底山脈の構築によって湧昇流という海底から表層に向かって上昇する流れを発生させ、栄養塩を含む海洋深層水を太陽光の届く表層近くまで運び、そのことにより植物プランクトンを増殖させ、食物連鎖による新しい漁場を形成させようというものであります。従来の特定魚介類の回復・増大を狙う種苗法流技術を用いた取り組みとはそもそも本質的に異なるものであり、磯焼け対策や藻場造成といった別な側面での効果も期待できるのが特徴であります。
 そういった中で、事例を挙げれば、マウンド漁場造成を行った海域では、先ほども申し上げましたが、植物プランクトンが増殖し、それを飼料とするカタクチイワシ、マアジ、サバ等の増加とともに、付着生物起源による岩礁性生態系が形成されております。要するに増殖効果が確認されているわけであります。
 また、一方、高層魚礁による漁場造成が行われた海域では、設置後の早期からアジ類等の回遊性魚類に大きな効果を発揮しているという状況が確認をされております。
 したがって、マウンド漁場や高層魚礁等が採用されるようになれば、これまで対象でなかった漁業種類まで受益対象とすることが可能となり、資源管理型施策しか打つ手のなかったまき網等を中心にする漁法も対象とすることが可能となるということであります。
 ここで、漁場整備のあり方について、こうした状況を踏まえた上で、より多角的な見地から資源の増殖を図るための手法を積極的に研究すべきと考えますが、農林水産部長の御見解を具体的にお聞かせいただきたいと思います。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 漁獲量の減少は非常に深刻なものであり、その対策としては、資源量の増大と同時に、実現へのハードルは高いのですが、資源保護の観点から、条件が整うのであれば、これまでの資源管理をさらに進めた取り組みである漁獲量の個別割り当て方式(IQ)を考慮すべき時期に来ているのではないかと考えます。
 資源量の増大のため、他県ではマウンド礁などさまざまな試みが行われておりますが、大規模かつ大水深での工事となるため、これらの整備には相当な設置費用が見込まれますが、先行事例におきましては、漁獲量の増大が認められるものの、その費用に対する効果が必ずしも検証されている状況にはないとお聞きしております。また、沖合域では、底引き網漁業、まき網漁業、釣り漁業などとの漁業調整が必要になってきます。
 県といたしましては、漁業者からの要望が強く、効率的な操業につながる表層型浮き漁礁の整備を開始したところですが、御提案のマウンド礁等につきましては、引き続き情報収集に努め、特に効果の面を中心に研究してまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきましたが、やはり漁業の振興を図る上では、資源量の増大こそが何よりも増して抜本的な解決策であると私は考えております。つまり、資源の管理を行う一方で、手法にはこだわりませんが、先ほど申し上げたマウンド魚礁のような資源量の増大に直接つながる漁場整備への取り組みこそが非常に重要であり、また、そのことがひいては未来に向けた水産業の振興につながるものであります。
 先ほどの部長答弁にもありましたが、これら漁場整備が、漁獲量の増大が認められている中で、設置費用の件はあるものの、効果の面を中心としてしっかりと本気で研究をしていただきたいと思います。本県の水産業にとっては待ったなしの状況であります。ぜひ、豊かな紀伊水道の海を取り戻すために御努力をいただきたいと思います。この件は強い要望といたしたいと思います。
 続いて、2項目めの今後の観光戦略についてであります。
 その1点目として、3カ年連続するビッグイベントに対するこれまでの取り組み状況と来年度の計画について質問をいたします。
 本県は、豊かな自然、悠久なる歴史、先人が培ってきた文化、または多彩な食材、温泉等多くの観光資源を有し、限りないポテンシャルを秘めております。こういった観光資源を生かし観光振興につなげるために、平成22年、議員提案にて和歌山県観光立県推進条例が制定をされました。その前文の最後に、「県、市町村、県民、観光事業者及び観光関係団体が一体となって、県民総参加で観光立県の意義に対する理解を深め、その実現に取り組むことを決意」するとあります。
 この背景には、観光産業が観光施設、旅館・ホテルや土産店、飲食店、交通機関など、直接関係する業種だけではなく、より多くの産業に幅広く効果を及ぼす総合的な産業であることから、その振興は県経済への大きな原動力となり、また交流人口の拡大につながることもあるため、県民一体となった取り組みが必要であると考えます。
 しかしながら、県が実施した観光客動態調査によりますと、観光客数に対する宿泊客の割合が、20年前の平成3年においては24%を占めていましたが、平成23年では16%と3分の2に減少しており、単一的な宿泊事業だけでは経営的に厳しさを増してきています。さらに、団体客が減少し個人客が増加する中で、観光客の個別ニーズを捉えた複合的な対応が今まさに求められております。
 一方、平成16年には、高野山、熊野三山、熊野参詣道等が紀伊山地の霊場と参詣道として世界遺産に登録をされ、また、外国人観光客向けガイドブックの「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」でも高野山と熊野が三つ星評価を受けており、改めて和歌山県の魅力をアピールする機会を得ています。
 そうした中、既存の観光資源に加え、新たな観光資源を発掘し磨き上げ、それらを点ではなく線としてつなげることが非常に重要であります。
 私の地元田辺市にある熊野古道は、全国及び海外からも祈りの道として多くの方々が訪れますが、ウオーカーの拠点となる施設不足が大きな悩みでありました。特に、JR紀伊田辺駅におり立ち熊野本宮大社を目指す行程の中で中辺路は非常に重要な地域であることから、県では、熊野古道の利便性を高めるために、田辺市と連携をし、宿泊施設「霧の郷たかはら」を設置いたしました。その際、既存の宿泊施設や住民の方々からさまざまな御意見があったと伺っておりますが、雲海のかなたに浮かぶ果無山脈の眺望や四季折々でさまざまな表情を見せる雄大な自然の景色に出会えることから、完成後においては順調に宿泊客がふえ、地域全体の利用客増進につながっており、現在、本宮や熊野川への拠点として一層役割が増してきているところであります。
 また、平安・鎌倉時代は、熊野本宮大社参拝を終えた後、新宮、那智を目指して熊野川を船で下ったとされております。県の主導により、この「川の熊野古道」を復活し、川舟運行が開始され、日ごろは見ることのできない熊野川から見た熊野の魅力を再発見することが可能となり、本宮から新宮、那智への新たな観光資源として期待をいたしているところであります。
 そういった中、県の観光振興戦略において、旅の決定権は女性が持っていることが多いため、パワースポットや山ガール等のマーケットの状況やトレンドをいち早くキャッチした女子旅を初めとし、さまざまな企画をするとともに、古事記編さん1300年に合わせて、記紀の旅といった旬を捉えたプロモーションも実施されております。
 また、ターゲットを絞ったセールスも実施をしており、CSR活動に取り組む企業に働きかけを行い、世界遺産熊野古道を道普請する環境保全活動や、年金、修学旅行並びに全国大会等のコンベンション誘致、そしてテレビ・映画の撮影協力を行うフィルムコミッション等、直ちに大規模な誘客につながる活動も実施されているようであります。
 さらに、首都圏、京阪神はもとより、福岡県を含む西日本、四国、東海地方等、それぞれの地域において、JAL、JR等の交通機関や県内各地域と協働し、さまざまなプロモーション活動を実施するとのこともお伺いをしております。
 このように県においては多角的な見地から観光振興に関する取り組みを行われておりますが、今後、平成25年の伊勢神宮式年遷宮、平成26年の世界遺産登録10周年、平成27年の高野山開創1200年、紀の国わかやま国体、紀の国わかやま大会といったビッグイベントを控えており、この機会を決して逃さないようになお一層の工夫を図っていただきたいと考えます。
 もちろん、3カ年連続するビッグイベントに向けた仕込みは既に始まってるとは思いますが、これまでの取り組み状況並びに来年度の計画について、商工観光労働部長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) まず、1点目の3カ年連続するビッグイベントに対するこれまでの取り組み状況についてですが、平成25年度の伊勢神宮式年遷宮への取り組みにつきましては、今年度、全国の神社約2000社に対し知事名の案内状を発送したほか、熊野三山等の紹介で全国の約470社を訪問し、本県来訪を依頼しているところです。既に来訪を決定するなど、よい感触を得ている神社が約180社あり、さらに検討を行っているところもあわせ、手応えを感じております。
 また、神社本庁指定の主要旅行会社に加え、京阪神、西日本、東海の旅行会社にも伊勢と熊野をつなげた旅行商品の造成を依頼する活動を行っております。
 次に、平成26年度の世界遺産登録10周年への取り組みにつきましては、これを契機に多くの観光客を県内に誘致するため、平成26年9月から12月にかけて和歌山デスティネーションキャンペーンをJRグループ6社とタイアップして実施いたします。その周知のため、昨年11月に本県の観光PRポスターを全国JR駅約1200カ所に張り出すとともに、同キャンペーンの実施主体となる推進協議会設立に向けた調整を市町村や観光協会などと行ってまいりました。
 次に、2点目の来年度の計画についてですが、本番を迎える伊勢神宮式年遷宮への取り組みにつきましては、伊勢神宮に参詣される多くの方を熊野地域や県内各地に誘客するため、1つには、交通手段や宿泊情報などを掲載したガイドブックを全国の神社に送付するとともに、大規模神社や来訪の可能性の高い神社を再訪して本県への来訪を促してまいります。
 2つ目には、一般参詣者に向け、テレビや雑誌などのメディアを介した情報発信を行うとともに、紀勢自動車道等の延伸を踏まえた旅行商品の造成を各旅行会社に働きかけてまいります。
 次に、世界遺産登録10周年を契機に展開する和歌山デスティネーションキャンペーンの取り組みとしては、1つには、翌年の本番の開催時期に合わせ、参詣道スタンプラリーの実施、高野山・熊野三山でのコンサートなどのイベント開催などを盛り込んだプレキャンペーンを実施いたします。
 2つ目には、今秋に開催予定の全国の主要な旅行会社やメディアが集う全国宣伝販売促進会議と現地研修会において、仏像など文化財等の特別公開などの観光素材を提案し、本番に向けた旅行商品の造成を推進してまいります。
 また、平成27年の高野山開創1200年への取り組みにつきましては、和歌山デスティネーションキャンペーンに連動した形で誘客プロモーションを実施するとともに、高野山に来訪される多数の信徒や一般参詣者の方々に高野山だけではなく魅力ある県内のそれぞれの観光地へも訪れていただくために、県内観光地の食、温泉、体験などの魅力、期間中に催される催事の情報、交通手段や道路に関する情報などを提供する準備と、それぞれの地域の受け入れ態勢の充実に取り組んでまいります。
 さらに、平成27年の紀の国わかやま国体、紀の国わかやま大会への取り組みにつきましては、県民1人1人がおもてなし宣言を行える仕組みを検討するとともに、来県予定者への観光情報提供の準備や個人のニーズに応じた旅行商品の造成の働きかけなどに取り組んでまいります。
 このような取り組みを戦略的に展開することで、3カ年連続するビッグイベントを最大限活用して本県の観光振興を図ってまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 続いて、2点目の本県の来訪者の方々に対するおもてなしのより具体的な取り組みについてお聞きをいたします。
 私は、やはり来県された方々に対し、ホスピタリティー、すなわちおもてなしの心が非常に重要であると考えております。お客様が「こんなところはもう二度と行きたくない」と「ぜひもう一度行きたい」とでは雲泥の差であり、それはひとえに、観光事業者はもちろんのこと、県民1人1人の心構えも必要であると考えております。
 しかしながら、宿泊施設をとっても、おもてなしは設備、食事、接遇等多岐に及んでおり、多忙な経営者が全てにおいて対応するには限界があるものと思います。
 既におもてなしに関する取り組みを始められ、一定の評価を得ていると思いますが、紀の国わかやま国体、紀の国わかやま大会などビッグイベントが控える中、本県の来訪者に対するおもてなしの向上にどういった取り組みをされているのか、具体的な例を含め、商工観光労働部長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 和歌山県観光振興実施行動計画の大きな3本柱の1つがおもてなしであり、和歌山県を訪れた方々に快適な時間を過ごしていただくために、観光地でのホスピタリティー向上に努めております。
 具体的には、観光事業者に対しおもてなしやバリアフリーをテーマにした観光セミナーを実施するとともに、宿泊施設の魅力向上のために、料理や内装等、商品力の強化アドバイスを行う各分野に精通したアドバイザーの派遣を行っています。
 また、観光関係者の接遇能力の向上を図るために、旅館事業者等8団体に対して接遇基礎、電話対応、クレーム応対等、段階的なスキルアップを図る接遇コースを設定し実施するとともに、宿泊施設等の経営者を対象に、繁盛旅館の設計を手がけた講師による特別研修や、職場でのおもてなし普及のリーダーのスキルアップを図る養成研修も行っています。さらに、覆面調査で課題を洗い出し、課題に対応するフォローアップ研修を実施し、レベルアップ研修を伴う接遇研修も実施しています。
 外国人観光客に対する受け入れ向上のためには、観光協会等3団体に対してアドバイザー派遣研修を、旅館事業者6団体に対しては現場指導、意見交換を行うとともに、通訳案内士や旅館経営者を招いた研修も実施しています。
 連携事業としては、JRの和歌山駅、紀伊田辺駅、新宮駅と連携して、駅での観光情報提供の充実を図るため、駅員を対象に周辺観光地での現地研修会を実施しています。
 また、和歌山大学観光学部とも連携し、観光カリスマ講座の共同開催による人材の育成や、観光学部学生と宿泊施設が協働して作成した宿泊プランを販売するなどの試みも行っております。
 なお、観光客受け入れのため大変大事であるタクシーの運転手の方々のホスピタリティー向上に向けても取り組んでいくこととしております。
 今後、3年間のビッグイベントに対応し、県民一丸となったおもてなしの向上を図るべく、工夫を重ねた施策の充実を図ってまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 最後に、3点目の観光地の公衆トイレの整備についてお伺いをいたします。
 先ほどの答弁で県がおもてなしについてさまざまな取り組みをしていることは十分理解をいたしましたが、おもてなしの中でも特に観光地のトイレを気持ちよく使っていただけるようにしておくことは、観光地の印象を左右する非常に重要な要素であります。
 さきの平成24年9月議会においても先輩・同僚議員からトイレに関する問題提起をされておりましたが、観光立県を標榜する本県の公衆トイレの中には、実際、におい等気になるところが多くあります。本県を訪れる皆さんが安心して快適に旅行を楽しめるように、おもてなしの精神を持って、誰もが必ず利用する観光地のトイレの整備が必要であります。
 県においては、これからさらにトイレの整備に力を入れていくとのことでありますが、どのような考えのもとでどう整備を進めるのか、商工観光労働部長の御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 観光地の公衆トイレの整備については、県は、観光施設整備補助金により、平成20年度から平成24年度までの5カ年で、市町村からの要望に全て応えて22カ所の支援をしてきたところであります。
 平成27年に開催される紀の国わかやま国体、紀の国わかやま大会には、多くの選手団やその関係者及び観光客が県外から訪れることが想定されております。この機会を逸することなく公衆トイレの整備・美化を推進することは、本県のイメージアップとリピーターの獲得に不可欠であるとの認識のもと、和歌山おもてなしトイレ大作戦を展開することとし、観光地の公衆トイレの整備・美化をその大きな柱と位置づけて取り組んでまいります。
 現在把握している観光地の改修等を要する公衆トイレは約120カ所でありますが、その全てについて、平成25年度から26年度までの2カ年で温水洗浄機能つき洋式便器への取りかえや小便器の自動洗浄化等を促進するとともに、維持管理の向上にも取り組むことで、観光地の公衆トイレの整備・美化に努めてまいります。
 今回の公衆トイレの整備に当たっては、2カ年という短期間で集中的に整備する方針であることから、市町村と強力な連携のもとに取り組んでいくことが肝要であり、このため、県の担当者が各市町村に出向き、市町村の担当者と一緒になって整備方法や維持管理体制について協議しながら、快適な公衆トイレの整備及び整備後の維持管理体制の構築について、市町村とよく連携して積極的に推進してまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきました。
 トイレはトイレでも障害者に配慮したトイレ、その中でも特に人工肛門、人工膀胱を保有されている方への配慮、いわゆるオストメイトへの対応について再質問いたします。
 平成24年3月、多様な利用者に配慮したトイレの整備方策に関する調査研究報告書によると、オストメイトは全国で約18万人おられ、その数も増加傾向にあるとなっております。
 紀の国わかやま国体の後、全国障害者スポーツ大会「紀の国わかやま大会」が開催されることもあり、観光地の公衆トイレの整備に当たってオストメイト対応をさらに考慮する必要があると考えますが、この件について商工観光労働部長はどのようにお考えか、御見解をお伺いいたします。
○副議長(浅井修一郎君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 議員お話しのように、オストメイトに対応した取り組みは大変重要であると認識しております。もちろん、今回の観光地の公衆トイレ整備事業の補助対象となりますので、市町村とよく連携して積極的に取り組んでまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 鈴木太雄君。
  〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 以上で、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(浅井修一郎君) 以上で、鈴木太雄君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時48分散会

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