平成24年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


平成24年12月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


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  午後1時0分再開
○副議長(浅井修一郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、一般質問に入らせていただきます。
 まず、ミカン対策についてお伺いをいたします。
 以下、5つの項目について、順次、農林水産部長にお尋ねをいたします。
 ことしは、ミカンの裏年に当たります。一昔前までは表年は安値で裏年は高値だと言われましたが、この10年ほどのミカンの価格を振り返ってみますと、残念ながら価格は安値安定の傾向が続いています。
 ある農家の方は、「よかったのは10年のうち2年だけ。あとの6年は採算ぎりぎり。2年は採算割れだ」、こんなふうにおっしゃいます。苦労してミカンづくりをしている生産者の期待にかなわず、再生産に見合う価格にはなかなかおぼつかないという厳しい状況です。
 安値が続く背景としては、長引く消費不況、国民生活の厳しさが大きく影響しているのに加え、全国的には極わせの量が大きくなってきていて価格でも足を引っ張るなど、出荷時期や市場の流通量の変化に伴い、価格形成の要因も変わってきていると考えます。
 そこで、まず第1点目の質問です。
 県として、和歌山県産ミカンの販売価格、価格形成の状況をどう考えているか、ことしのミカン生産販売状況とあわせて、農林水産部長より御答弁を願います。
○副議長(浅井修一郎君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) ミカンの価格形成についてでございますが、平成24年産ミカンは裏年に当たり、生産量は対前年比88%の16万トンを見込んでおります。
 価格は、極わせ、わせ、なかてを合わせた12月14日までの平均でキロ当たり196円と、残念ながら再生産価格を下回っている状況です。特に9月、10月出荷の極わせミカンは、ブドウやナシなどのほかの果樹との競合や九州産地の出荷量がふえたことにより、需給バランスが崩れて、キロ当たり170円と昨年同様に安値となっておりますが、県のオリジナルの極わせ品種であるゆら早生は、それよりも20円高いキロ当たり190円で取引されております。
 県では、これまで極わせの不良系統をゆら早生や田口早生に転換するなど、極わせの比率を下げて優良なオリジナル品種への改植を推進しているところでございまして、今後もこれら品種の産地拡大を通じて市場価格の向上を図ってまいる所存でございます。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 答弁をいただきました。
 裏年であることしでさえ再生産価格を下回る状況であるという厳しい報告がされたわけですが、これでは農家が経営の展望を持てません。出荷のおくれとか、その他の果物との競合という結果になったりと、何かしらの要因がことごとく安値の引き金になっているというのもつらい状況です。
 では、どうやってこの状況を好転させていくのか。デフレ不況の克服、国民生活の向上という国政の課題とともに、産地としても、こういう状況を打ち破るべく懸命の努力を続ける必要があると感じています。和歌山県オリジナル品種のお話もありました。こうした数々の打開策を積み重ねて、価格形成につなげていかなければなりません。
 この問題意識から、以下の質問に移らせていただきます。
 2問目の販売促進強化の取り組みについてお伺いいたします。
 去る11月23日から25日にかけて取り組まれた首都圏での和歌山県産農産物のキャンペーンに参加をさせていただきました。これまで、こういったトップセールスなどの取り組みは、県が主催をした年、生産者団体が主催をした年など、いろいろ試行錯誤や工夫を続けてこられたわけですが、今年度からは、県、生産団体が協議会をつくって共同で取り組むようになっています。ことしは、有楽町の駅前広場というよい立地条件でのイベントとなっていました。
 また、午後に開催された果物の機能性食品としての価値に注目したフォーラム、パネルディスカッションにも参加しましたが──いい資料も県のほうでつくったようです──これまで5大栄養素と言われていたものに加えて、果物にはすばらしい機能性食品としての役割があることが専門家の皆さんからも紹介をされました。こういった取り組みを一層広げていくことが、このミカンを初めとする和歌山県産の果実の消費拡大、販売強化に大きな役割を果たすものだと期待をするものです。
 私は、これまでも、ミカンの販売強化の取り組みとして、お世話になってきた京阪神市場を大事に、基本にしながらも、加えて首都圏にも果敢に攻めていくことが全国区でのブランド力アップに欠かせないと、このことを議場で初質問以来、訴えてまいりました。
 和歌山県産ミカンの販売強化の取り組み状況はどうか、また首都圏、特に首都東京での和歌山県産ミカンのシェアは上がってきているのか、これらの点について御答弁を願います。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県では、JAグループとも協働して、さまざまな趣向を凝らして首都圏を中心にPR活動を行ってきましたが、今年度につきましては、双方それぞれの強みを発揮しやすいよう、新たに和歌山ブランド向上対策推進会議を立ち上げ、タッグを組んでPRや販路開拓に取り組んでいるところであります。
 質問にございましたように、11月23日から3日間、東京有楽町周辺における首都圏イベントでは、果物の機能性に関する第一人者をお招きしてフォーラムを開催するなど、おいしさだけでなく機能性にもスポットを当てる切り口でPR活動を行いました。
 また、直接消費者に訴えかける和歌山フェアを東京、大阪、名古屋の3大都市の百貨店や大型スーパーで開催し、梅、ミカン、柿を中心にしゅんの食材をPRいたしましたが、フェアにおいては、わかやまポンチづくりや「わかぱん」との撮影会などの消費者参加型イベントも行い、より和歌山県の食材を身近に感じていただける販売促進活動を展開したところでございます。
 こうした取り組みもあって、東京都中央卸売市場での取り扱い実績による和歌山県産ミカンのシェアは、平成19年の21億6000万円、7.9%から、平成23年には27億8000万円、10.5%と2.6ポイント上昇したところでございます。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 販売強化の取り組み、また、首都東京の市場でのシェアが7.9%から10.5%へと、4年間で2.6ポイントアップという答弁でした。割合でいうと3割アップということになると思います。
 この東京都の市場の扱い量、たくさんあるわけですが、その半分を占める首都東京の台所、大田市場、ここでも和歌山県産ミカンの取り扱いが、9年前と昨年との比較では5.7%から9.8%へと1.7倍の伸びを示しているそうです。
 ミカンの生産日本一と言いながら、東京のど真ん中ではわずか5%のシェアでしかなく、探さないと見つからないという程度だったものが、ようやく一角に食い込んできたという状況だと思います。大田市場でも、東京全体でも伸びてきている。この間の県や生産者の努力に敬意を表するとともに、果樹王国和歌山としてもっともっと露出を大きく、注目を集める戦略的な販売促進の強化に一層取り組むよう求めるものです。
 次に、気象変動や自然災害による被害への対応をお尋ねいたします。
 地球温暖化や異常気象の問題などが指摘され続け、雨はなかなか降らないと思えば、降るときには集中豪雨のような雨が降ります。今や平年並みという年はないというぐらいの状況です。
 昨年は、6月の生理落果が物すごく多くて大玉傾向でした。ことしは一転して小玉傾向で、収穫を進める農家からも「何と細かいミカンばっかりやのう」というため息が聞こえてまいります。
 また、収穫最盛期のこの間、三日に上げず雨が降り、収穫が随分ずれ込みました。こうした雨の降り方の変化は、特に気になるところです。ことしは4月から6月にかけて雨がほとんど降らず、「夏のかん水やなくて、何と5月に水やりせんなんとはな」、こんなふうに生産者は大変苦労されました。気温にしても、降水量にしても、篤農家の皆さんでさえ過去の経験が通じないほどの気象変動が顕著になってきています。
 また、先日、収穫直前の11月という季節外れのひょうによる被害が出ました。広川町を初め、有田川町、日高川町、御坊市にかけて1億2000万円ほどの被害が報告をされています。
 私は、最も被害のひどかった広川町の前田地区の畑へ早速伺い、状況をお聞きしましたが、10円玉より小さいぐらいという大きなひょうが強風とともに大量に降ってきたそうです。農産物はもとより、ひょうによって、農業用ハウスや、また駐車場の屋根に穴があいたりする被害、また、雨まじりに大量に降ったために倉庫のといがひょうで詰まってしまってあふれ、屋根から雨漏りして倉庫の中の米が水浸しになったりと、大変な被害であったことをお聞きいたしました。
 収穫前で色づき始めていたミカンは、穴があいたり、こすれて傷が入ったりと大打撃で、伺った畑はほぼ全滅状態でした。先日、その畑に再度調査に出かけましたが、農家の方は、「収穫しててぼに入れられるミカンはほとんどない。大方、はさみで落として畑へ捨てやんなん」と嘆いておられました。ひょうに当たったすぐにはわからないそういう傷も、後から影響が出てきたり水腐りになったりと、ひょうが降った畑のミカンは収穫後に選別にも大変苦労しているそうです。
 このひょう被害を受けた農産物への被害については農業共済での対応しかないという話なんですが、その農業共済も加入している畑の割合は大変低く、また加入していても給付金は翌年からの掛け金に充てているところも多いなど、「共済も実際は当てにならんのよ」と、こういう声をお聞きしていました。
 ただでさえ低価格に悩むミカン農家ですが、こうした温暖化や降雨量など気象変動への対応、また自然災害による被害対策を県としてどう考えているのか、御答弁願います。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 気象変動や自然災害に強い産地づくりを推進するため、県では、これまで防霜ファンや防風ネットなどの施設整備を初め、マルチ、点滴かん水の導入に対し支援をしてきたところであります。
 災害への備えとして農家の減収を補てんする農業共済制度がありますが、加入率が低いので、今後、より一層の加入推進に努めてまいる所存でございます。
 また、災害の発生時には共済金が迅速に支払われるようこれまでも働きかけは行ってまいりましたが、今後も農業共済組合に対し働きかけるとともに、被害が広範囲かつ甚大な場合は既存の融資制度に工夫を凝らすなど、農家の経営安定のための支援を行ってまいる所存でございます。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 答弁をいただきましたが、この問題、今後のミカンづくり、県内果樹農家にとってもかぎとなる問題だと考えています。1年1作しかない作物が被害を受けると、本当に経済的ダメージは大きいんですね。共済制度はもっと入りやすく、おかげになるものとなるよう改善を求めるものです。そして、災害時の支援策を市町村や生産者団体などとも力を合わせて、ますます、一層検討していただく要望をしておきたいと思います。
 4点目の質問に移ります。ミカンの高品質化、厳選出荷の取り組みについてです。
 和歌山県産ミカンのブランド力アップと価格形成、高単価をかち取るには、高品質化、厳選出荷の取り組みは欠かせないものです。他県でもこの点ではさまざまな工夫や努力がされているようですが、和歌山県としてどのように取り組み、今後取り組んでいこうとしているのか、御答弁を願います。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) ミカン農家の所得向上には、高品質生産や厳選出荷が必要不可欠であると考えております。
 高品質化対策として、優良なオリジナル品種への改植を初め、マルチ栽培や点滴かん水装置の導入に支援してきたところで、引き続き今後も推進してまいる所存でございます。
 また、厳選出荷につきましては、味を重視する消費者ニーズに対応するため、光センサー選果機の導入を支援し、現在では系統出荷量の91%にまで普及しております。全国果実生産出荷安定協議会が定める時期別糖度の目標である9月9度以上、10月10度以上、11月以降11度以上の基準に基づく出荷の徹底をJAに指導しているところでございます。
 今後、こうした高品質化、厳選出荷の取り組みに加え、JAとの連携を密にし、適地での栽培や優良品種への転換をさらに促進させてまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 先ほど、ひょうの被害の話もしました。また、暖冬のときには果実の傷みが出たり、気象条件や病害虫など、こういったさまざまな要因を乗り越えて、消費者の皆さんから、やっぱり和歌山のミカンはおいしいと、すばらしいと言ってもらえるものをお届けすることが大切です。
 厳選出荷については、愛媛県などは選別の強化に取り組んだ歴史も長いと聞いております。畑でいいミカンをつくるのはもちろん、選別や出荷体制などについても広く生産者の皆さんと十分に相談をして、その支援を強めていただくよう強く要望をさせていただきます。
 ミカン対策の最後に、新品種の普及状況と今後の展望、課題について質問いたします。
 この間、ミカン生産農家の皆さんと県果樹試験場が力を合わせて、和歌山らしい魅力的な新品種の開発に取り組んでこられました。その幾つかが成果となり、次々と芽を出そうとしているのを大変うれしく思います。
 出荷が集中し、価格が低下する時期を避け、どかすかなくコンスタントに魅力的なミカンが出荷できる産地づくりが大切です。
 これまで11月のわせの時期に市場がだぶついていたのが、今は10月に九州産の極わせが集中してだぶつきが出ています。この極わせの時期には、和歌山のおいしい極わせをアピールする。また、主力であるわせの品種、これに続いて12月の主力となる浮き皮の少ないなかてのミカンを育てる。そして12月末から年明けにかけても、じょうのうの薄い袋ごと食べられる、わせの完熟のようなしっかりとした味の、こういうおいしい和歌山のミカンが出荷できれば、年が明けたら静岡ひとり勝ちというこの昨今の状況も打ち破れます。すぐれた品種のリレー出荷により、こうした展望を開いていくことが期待をされています。
 新品種の普及については、品種の特徴や適地適作、販売戦略をよく踏まえながらも、スピード感のあるアピールや丁寧な普及が大事だと考えますが、新品種の普及状況と今後の展望、課題についてどう考えているのか、御答弁願います。
○副議長(浅井修一郎君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県では、他産地との差別化を図り、農家所得を向上させるため、極わせ、わせ、なかて、おくてのオリジナル品種によるシリーズ出荷に向けた取り組みを展開してまいりました。
 現在、極わせミカンのゆら早生は226ヘクタール、わせミカンの田口早生は148ヘクタールで栽培されております。
 また、ゆら早生から育成されたYN26は今春から苗木の供給が始まり、需要の高まる12月以降の販売が可能ななかて品種のきゅうきは、平成26年からの苗木販売に向けて、現在、鋭意増殖を進めてるところであります。
 おくて品種についても、県果樹試験場で優良系統の選抜をしているところです。
 今後も、県単独事業である果樹産地再生緊急対策事業などによりまして、これら品種への改植の支援を行い、早期の産地化を図ってまいる所存でございます。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 味の決め手の8割は品種だと、こんなふうに言われているそうです。他県に負けない和歌山らしいオリジナル品種のリレー出荷を目指し、お話にあったYN26やきゅうきへの農家の期待、また市場関係者の期待も大変高いようです。
 また、おくて品種の研究についても触れられました。今後一層、県として、研究機関、普及、そして生産者のチームワークが生かされるよう、ミカン対策の強化に努めていただくよう要望するものです。
 おいしい和歌山産のミカンの栽培は、熱心な篤農家と呼ばれる皆さんから兼業農家の皆さんまで、農業をやりたい方はみんな和歌山県の農業の担い手です。こういう厚みのある農業の展望を和歌山県の農業でも、日本農業にも切り開いていく、そんな支援ができるよう県としての役割を果たしていただくよう要望して、ミカン対策の質問を終わります。
 次に、2つ目の柱である河川とダムの防災対策についての質問に移らせていただきます。
 以下3点について、順次、県土整備部長にお伺いいたします。
 このほど県は、河川に堆積した土砂撤去により防災対策効果を上げようと、砂利採取事業の許可範囲の見直しを発表しました。この間、私どもも、堆積が進んで危険な河川の土砂の撤去とともに、採取された砂利を台風災害からの復興と防災対策工事の骨材として活用することを求めてきたことから、この事業が効果を発揮できるよう大いに期待をするところです。
 そこで、今回の見直し内容と方向性を御答弁いただきたいと思います。
 また一方で、この砂利採取の事業に関しては、過去には利権の温床となったり、もうけ優先で過度な採掘が行われたりなどの問題があったために、一部区域を除いて原則禁止の制限措置がとられた歴史があります。
 今回の制限見直しによる事業開始に当たっては、事業者に採取を許可する際には、公明正大な仕組みで、かつ県がしっかりと砂利採取をコントロールできるようなものになるようあわせて求めるものですが、いかがでしょうか。
○副議長(浅井修一郎君) 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 今回の許可方針の見直しは、治水安全度の向上にもつながることを期待し、堆積土砂の効率的な撤去を目的としております。新しい許可方針の運用に当たっては、採取計画等を総合的に評価して採取業者を選定するなど、公平性や透明性の確保に向けた仕組みを検討しております。
 採取方法につきましては、河川構造物等から十分な保安距離を保ち、水面から50センチメートル以上の高さで掘削させるなど、河川の維持管理上の支障が生じないよう規制していきます。あわせて、騒音防止や粉じん対策、汚濁水対策等の公害防止対策も求めるなど、十分な策を講じてまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 答弁をいただきました。
 この砂利採取による防災対策前進が、絵にかいたもちに終わらないようにすることが大切だと思っています。県内の河川で12号台風による堆積土砂撤去事業の業者を募集しましたが、富田川などで事業化がうまくスタートできた一方で、日高川では応募業者があらわれませんでした。
 砂利採取によって製品化された川砂利が災害からの復興と防災対策工事の骨材として大いに利用されるよう、この川砂利を使ったら有利になるというようなインセンティブを働かせるよう検討を求めるものです。和歌山県は災害からの復興と防災対策を地域経済も含めてしっかり組み立てたと、そんなふうに評価されるよう、この点は強く要望をしておきます。
 次に、昨年の台風12号被害を踏まえたダムの操作改善についてお伺いしたいと思います。
 昨年の台風災害では、県営ダムで一番設計の新しい椿山ダムでさえダム湖が満水になり、洪水調整ができなくなる事態となりました。私自身の認識も、有田川の二川ダムのような発電優先で水をためがちなダムと比べれば、設計の新しい椿山ダムは治水能力も比較的高いと思っていただけに、ダムの設計を超えた超過洪水というものは必ず起きると衝撃を受けた大災害でした。
 歴史的な豪雨だった12号台風災害ですが、この大雨がこの先100年、めったに起こらないというものではありません。この先こうした豪雨がいつ起こってくるかわからないし、その確率が飛躍的に高くなっているのが昨今の気象条件です。深刻な被害が出た日高川流域ですが、今回の災害を契機に、日高川町を初め住民からは、この椿山ダムの操作改善を求める声が出されています。
 この間、県は関西電力との間で発電用利水容量を事前に放流するというダム操作改善に合意し、早速、ことしの出水期から適用されています。しかし、二川ダムや七川ダムと比較すれば、椿山ダムにおいては、この利水容量を活用した能力向上は限定的であるがゆえに、これに加えて操作規則そのものの改善を求めるというものです。
 具体的に言うと、ダムの設計を超える、そんな豪雨が予想されると、こういう場合には、平常時から非常時にシフトするべきだと。あらかじめ計画した放流量までは貯水せずに放流をして貯水容量を温存し、それ以上の洪水を、一番しんどいところをカットするように操作を変更すべきだと、こういう考え方なんですね。そういう提案も県にも伝えられていると思いますが、県はどう考えますか。
 私は、これまでも議場の場でダム操作規定の改善を訴えてまいりました。県は、大雨が予想されたとき、ダム水位をあらかじめ操作規定よりも低くして洪水に備えるという、そういう運用改善を七川ダム、二川ダムでも実施してきました。また、先ほど申し上げた電力会社との合意による利水容量の活用もやりました。しかし、これらは操作規則そのものではなく、例外的な運用の一部として位置づけをしました。
 これらダム水位や放流タイミングの改善は、治水能力を上げるためにはプラスになる積極的なものです。しかし、肝心の操作規則、ダム設計時の雨量の想定、ゲートの操作、これは依然としてそのままなんですよね。どの程度の雨でダムがいっぱいになってしまい、ただし書き操作と言われる非常時の操作になってしまうのか、この肝心のところを見直してはいないんです。
 ダム設計時の洪水パターンは、単純な、あくまでも限定的なシミュレーションです。その雨量や降雨パターンも、近年の気象状況の変化によりさま変わりしているわけです。設計どおりの洪水調整で今日的な気象条件に見合ってるのかどうか、設計時の想定を超える雨量が気象予想されたときの操作のあり方はどうあるべきか、今のままでいいのか、また、単純な1山パターンの雨だけでなく、2山目が来るとわかったときには操作はどうするのか、こういったことをきちんと操作規定として検討し、位置づけていくべきだというのが私の考えです。
 このような観点から、操作規則のあり方、これを根本的に再検討するよう求めるものですが、部長、いかがでしょうか。
○副議長(浅井修一郎君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) ダムの洪水調節方法は、下流の河川改修の進捗状況や背後地の利用状況等を勘案し、確実に効果が発揮されるよう定めています。
 御提案の方法では、大規模洪水が予測されたときには、ダム下流で被害が発生する流量となった場合でも洪水調節されることなく、洪水初期の段階から被害が発生することになります。したがって、避難時間が確保できなくなることや、大規模洪水にならなかった場合に本来ダムで守られるはずの生命、財産を危険にさらすことになるなどの理由により、現状では、御提案の方法を採用し、操作規則に位置づけることはできません。
 県としては、これまでの操作方法に加え、6月から始めた計画の規模を超える洪水が予測されたときに、利水部分も含め、あらかじめ可能な限りダムの貯水位低下を図り、治水機能の向上を図る新運用や早期避難を促す情報伝達等による対応が適切であると考えております。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 住民からのダム操作改善の提案については論外だと、難しいという考えのようです。操作規定本体の見直しそのものについても、必要に応じて見直すという従来の答弁の域を出ていないと感じました。私は、それじゃだめだと思うんですね。
 答弁にありましたように、大きな洪水に焦点を絞れば中小の洪水が起きてしまう、中小の洪水に照準を合わせれば、今度は大洪水を防ぐことができない。あちらを立てればこちらは立たずというジレンマがある。これは、今までの操作規則に対する考え方だと思うんです。
 しかし、このまま立ちどまってしまって思考停止してはいけないんだと思うんですね。大災害の経験をしっかり生かし、気象予測など今日的な知見を生かして、この壁を超えないといけないと思うんです。1本の操作規則で対応できないなら複線化をするとか、知恵を出すべきだと思います。
 この問題では、県庁内部での検討はもちろん大事ですが、ダムの果たすべき役割、あり方をめぐる全国的な問題もあり、かつ流域の特性、ダムの形状など、個別の条件が違う課題でもあります。
 ここはぜひ提案ですが、大学の研究者や国とも連携をとりながら、調査研究のための予算もつけて、しっかり研究されるよう提案をし、要望とさせていただきます。
 この質問の最後に、県管理河川の河川整備計画見直しについてお伺いをいたします。
 日高川の椿山ダムのすぐ下流となる旧美山村地域では、多くの橋や護岸が被災をいたしました。これらの災害は、急峻で曲がりくねった川の形に加え、ダムのただし書き放流によるエネルギーが合わさって引き起こされた災害だと考えています。
 また、中流域の旧中津村地域でも、破堤や越流など大きな被害が続出しました。住民の中からは、ダム建設により安全神話が強調された結果として、ダム建設後はダムの直下や中流域の河川整備が遅々として進んでこなかったという声が上がっています。
 河川の整備計画では、おおむねこの下流部の築堤区間の整備に焦点が当たっています。洪水が起こった際の被害想定からすれば、堤防の強化はもちろん重要でありますが、だからといって中上流部の弱い部分の整備がおろそかになってはいけません。
 今回の台風災害を受けて、那智川では河川整備計画を全面的に見直すこととなりました。この際、県管理河川の河川整備計画を総点検、再検討し、下流の築堤区間だけでなく、中流部やダム直下、ダム上流部も含めて、全体を見通した整備計画となるよう見直すべきではないでしょうか、答弁を求めます。
○副議長(浅井修一郎君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 河川整備計画は、河川の下流から上流までの県管理区間すべてを対象にしております。このうち、現況の流下能力や背後地の利用状況、過去の浸水実績等を考慮し、おおむね20年から30年間で計画的に工事を実施する区間を設定しております。
 既に整備計画を策定している河川については、昨年の台風12号被害に対する改良復旧事業等を踏まえ、必要に応じ計画的に工事を実施する区間の変更等、整備計画の見直しを行ってまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長からは、河川整備計画は、本来、流域全体を見据えたものであると、そして見直しを図っていくという答弁でした。
 河川の予算のボリュームの関係もありますから、そら全部一遍に進まないのは百も承知の上ですが、中流域での河川や堤防改修の要望を県に伝えても、これは河川の堤防ではありませんからというようなことで、なかなかこの事業がされてこなかった、進まなかった現実もあるんです。
 日高川、有田川についても、既に河川整備基本方針ができています。これに基づき、これからどう整備を進めるのかという整備計画を住民の意見も取り入れて策定していくのが新河川法の精神です。12号台風災害を踏まえ、流域住民の意見をしっかりとくみ上げるような十分な議論の場を設けて整備計画を練り上げていくよう要望いたしまして、今回の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
○副議長(浅井修一郎君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。

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