平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(森 礼子議員の質疑及び一般質問)


平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号

(森 礼子議員の質疑及び一般質問)


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  午前10時0分開議
○議長(山下直也君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第107号から議案第143号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 1番森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕(拍手)
○森 礼子君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。一般質問も本日が最終日ですが、どうぞ御清聴のほど、よろしくお願い申し上げます。
 まず最初に、去る8月27日から30日まで、二階俊博衆議院議員を団長に、門三佐博議員、中村裕一議員、花田健吉議員、野田寛芳企画部長、そして私森礼子は、各界の有識者の方520名を超す方々と中国陝西省西安市を訪問させていただきました。質問に先立ち、その御報告をさせていただきます。
 このたびの中国西安の訪問の意義ですが、今から約1200年前、空海が遣唐使の留学生として仏教を学びに中国(当時の唐)へ渡り、都であった長安(現在の西安)で密教の秘法を授かり、日本に帰国、その後、密教を広めるための根本道場を高野山の地に開いたという歴史を振り返り、改めてその偉業をしのぶとともに、より多くの人に友好の歴史を知っていただくことにあります。
 空海が密教の高僧・恵果に師事し修行を行ったのが、今回、私たちが訪れた青龍寺です。青龍寺は、古都西安市の近郊にある仏教寺院で、長い間、廃寺となっていましたが、今から30年前、日本の弘法大師ゆかりの皆さんの御厚志で再建されました。再建当時は恵果・空海記念堂だけでしたが、現在は長安の栄華をしのばせる立派な伽藍となっています。
 西安、青龍寺と高野山をつないできた歴史を振り返ってみましたが、来る平成27年には、弘法大師・空海が弘仁7年に真言密教の根本道場として高野山をお開きになって以来、1200年目の時を迎えています。
 空海が我が国の宗教、芸術、教育等の分野でなし遂げた数々の偉業、そしてまさに日中の友好交流によって新しい仏教の教えを我が国に伝えたという史実は、本県の高野山を訪れることで、目に触れて、体で感じることができます。このすばらしい、世界に誇ることができる和歌山県の世界遺産をさらに広め、高野山開創1200年という記念の年には、たくさんの方々に和歌山県に足を運んでいただきたいと切に願うとともに、県議会としても、その成功に向け、邁進させていただきます。
 今、日本と中国双方の関係は、降り続く豪雨のような状況でありますが、雨はやがて早いうちにやみ、明るい太陽が顔を出します。やまない雨はありません。近い将来、必ずや日本晴れのような関係が訪れることを願ってやみません。
 それでは、質問に移らせていただきます。
 この中国西安を訪問して私が強く感じたことから質問させていただきますが、今シーズンはやりのトイレの質問からよろしくお願いします。
 西安は、御承知のとおり、長きにわたり歴代の王朝の都が置かれ、近郊には秦始皇帝陵と兵馬俑、そして世界遺産を有する観光都市でもあります。このように世界じゅうから多くの観光客を出迎える都市でありながら、言いにくいことではありますが、トイレ事情が十分でないことが理由で観光地としての評価は低くならざるを得ず、実際、私が出発する前は、トイレが嫌だなあというふうに思っていました。
 ところが、私たちの訪問団のことが現地に伝わると、西安市のある陝西省の省長が先頭に立って現地のトイレを視察し、これではよくない、おもてなしができる状態ではないとの判断で、私たち訪問団が到着するまでにトイレの美化に御努力をされたようです。まさかと思うほど短い間に実現され、この誠意ともてなしに私は感銘をし、こうして西安への訪問は気持ちのよいすばらしい印象でスタートができました。
 現在のようなインターネット社会では、少し大げさかもしれませんが、トイレをきれいにすることで観光地としての評判は世界じゅうに広まっていきます。
 これを和歌山県に置きかえてみれば、国際観光に力を入れている本県として、トイレの整備や美化は早急に取り組むべき分野であり、市町村に対しても積極的に働きかけて実施していくべきではないでしょうか。
 本県においては、太地町がJRの駅舎の隣のトイレを平成12年に県の補助金を導入して整備し、現在まできれいに維持管理されていることは、太地町を訪れる人たちにとってすばらしいおもてなしであると思います。
 JR和歌山駅、南海和歌山市駅は、県都和歌山市の玄関口です。
 この議場におられるのは男性の方が圧倒的に多く、女性用のトイレのことは余り御存じでないと思います。今風のトイレは、トイレがある部分とドレッサー部分に分かれていて、気持ちよくお化粧直しができるのが特徴です。2つの駅のトイレは、確かに清掃等はよくされておりますが、古い和式トイレで、においも大変気になります。
 現在のニーズには、ほど遠いものがあります。現状のままで、知事の言われるあらゆるおもてなしで観光客に満足していただきたいとの思いは通じにくく、私が西安で感じ取ったのとは反対に、間違いなくよくない印象を与えてしまうと思います。このよくない印象は、和歌山県のトイレは不快だという評判につながります。
 駅のトイレの設備の更新については、鉄道事業者が主体的に取り組むべきものであり、県としては働きかけを行っているとのことですが、国体開催を3年後に控えた今、開催地の玄関となる駅のトイレは当然のこと、和歌山県を訪れてくださる方々がよく利用されると想定される場所から、優先順位を考えながら、最高のおもてなしを提供するために取り組まなければならない時期に来ていると私は思います。
 今月9日、和歌山ビッグホエールで開催決定記念イベントが盛大に行われ、開催に向けての気運が高まりつつある紀の国わかやま国体ですが、この国内最大のスポーツの祭典には、参加する選手を初め競技関係者、スタッフなどが全国から集まり、短い期間中に延べ12万泊を超える宿泊が見込まれています。
 期間中、最高のおもてなしで、訪問される方々が楽しく、また和歌山の食文化に満足していただき、気持ちよく過ごしていただける方法、さらには、お土産店等では購買意欲を最大限に引き出せるような工夫はもちろんのこと、訪れる方々が本県に来られる前から一足伸ばして観光したいと思わせる事前の対策に取り組むべきであると思います。
 これは、本県の観光振興にとってとても大きなチャンスです。競技等に参加される選手やスタッフの皆さんには、国体開催までに多くの関係書類を発送することでしょう。それは同時に、世界に誇れる和歌山県の観光地をPRする絶好の機会であり、周知していただくだけでなく、延泊したい、観光して帰りたいと思っていただける観光啓発に取り組むべきだと思っています。
 また、和歌山県のホスピタリティーを感じていただき、帰ってから周りの方々に「和歌山っていいところよ。今度は旅行で行ってみたいわ」と口コミで伝わるような大会にしていただけるよう、県職員の皆様が一丸となって頑張っていただきたいと思います。
 それでは最初に、企画部長にお伺いします。
 観光地として魅力をアップするために必要不可欠と思われるトイレの整備、とりわけ和歌山市の玄関口である駅のトイレの設備の改修の必要性について、どのようにお考えですか。また、美化を進めるために県としてどのような対策をお考えですか。
 商工観光労働部長に伺います。
 県には観光施設整備補助という制度がありますが、この補助制度において、トイレへの重点配分、増額、特化等を行うべきではないでしょうか。
 最後に、知事に伺います。
 国体開催の機会をとらえられた観光振興策、特に選手、関係者等への観光資源等の周知について、どのようにお考えですか。よろしくお願いします。
○議長(山下直也君) ただいまの森礼子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 紀の国わかやま国体には、全国から選手団、応援団、観客といった多くの方々が来県することが予想されるため、本県の観光をPRする絶好の機会であります。
 議員御指摘のとおり、来県される選手やスタッフの方々を通じて、応援に来られる御家族や関係者の方々に観戦前後の県内観光や次回訪問の動機づけのために、事前に各都道府県の体育協会に観光パンフレットを発送し、選手、スタッフ等に配布を依頼する所存であります。
 観戦に来られた方々のために、旅行会社に対して、宿泊に定期観光バスやレンタカーをセットしてお得な価格設定にする等、県内観光を促進する宿泊プランの造成を働きかけていくとともに、インターネット販売を主とする旅行会社等と連携して効果的な情報発信を行っていきたいと思います。
 次回訪問のための動機づけについては、主要な会場において観光情報を提供するブースを設置するとともに、個々の宿泊施設において、お客様に積極的に県内観光情報を発信できる手法を旅館組合等関係団体と検討してまいりたいと思います。
 このように努力してまいりますが、多分、国体に来られた選手団は競技に夢中であったり、あるいは応援に来られたような方も若干その傾向があると思います。しかし、おもてなしがきちんとできておれば大変好印象を持ってもらえると。たくさんの方が見えるので、この好印象が全国津々浦々に伝われば大変な武器であると思います。逆だと、これまた打撃になります。
 したがって、そういう意味で、国体に向けて、和歌山でもてなすための政策、きょうも御質問、そういう趣旨だったと思いますが、そういう対策を強化したいと思っております。
○議長(山下直也君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 駅のトイレの整備についてでございますが、日ごろから鉄道を利用する県民の方々はもとより、観光客の方にも気持ちよく使っていただくために駅のトイレを整備することは、本県に対するイメージアップの観点からも大変重要であると認識してございます。
 県では、高齢者や障害者を初め、すべての方に安心して鉄道を利用していただくため、交通施設バリアフリー化設備整備推進事業を実施しておりまして、この中で多機能トイレの設置に対し補助を行っております。
 これまでも、鉄道事業者において清掃等維持管理に努めていただいておりますが、今後とも、施設整備も含め、鉄道事業者及び地元市町村と連携し、トイレの美化に積極的に取り組んでまいります。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 観光施設整備補助制度における観光地の公衆トイレへの重点配分等についてですが、県では、かねてより観光地の公衆トイレの整備について観光施設整備補助金により助成しており、平成19年度から5カ年において、市町村からの要望にすべてこたえて20カ所の支援をしてきたところであります。
 特に、平成20年度からは、公衆トイレの整備を重点整備事業として優先的に採択するとともに、平成21年度からは、公衆トイレの洋式化や温水洗浄機能の付加といった小規模改修についても助成対象としてきたところであります。
 国体開催を間近に控える中、観光地の公衆トイレの整備の重要性を踏まえ、今後、市町村からの要望に対し、観光施設整備補助事業において重点配分するなど、さらに積極的に対応してまいります。
○議長(山下直也君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 答弁ありがとうございます。
 トイレの整備や美化については、この議会では新島先生や中村先生も質問されているように、本県のイメージアップを図る上では本当に大切な問題だというふうに私は思っています。
 きょうの御答弁では、現状は、市町村からの要望についてはすべて対応できていて、鉄道事業者等とも連携を図っていくということで本当に安心しましたが、この取り組みの評価というものは、和歌山県を訪れた方々や、もちろん本県県民の皆様が下すものだと思います。現在の評価がどのようなものであるのか、その声を改めて受けとめていただきたいと思っています。
 私は、今後どのようにトイレの整備や美化が進んでいくのかを注視していきたいなと思っています。
 では、次の質問に続けさせていただきます。
 和田川の治水対策について伺います。
 本年6月22日の大雨によって、和歌山市の南東部を流れる和田川流域では大規模な浸水被害が発生し、全国ニュースになったことは皆様の記憶にも新しいことでしょう。
 自由民主党和歌山県連は、この災害を重く受けとめ、6月30日に現地視察を行い、私も一緒に現地の状況をつぶさに見てまいりました。また、その後も数回にわたり現地を見て回り、いろいろな人からお話を伺いました。
 和田川流域では、ここ5年間で、平成20年5月、平成21年11月、平成23年5月、そして今回と、水害が4回も繰り返し起こっています。それも、同じ地域で浸水被害が発生し、地域の住民の方々を長年にわたり悩ませ、心労を蓄積させています。こうした水害の原因は、どこにあるのでしょうか。
 和歌山市の東部地区は、市街化調整区域であり、宅地開発の規制により家屋は建てにくかったのですが、平成17年4月に規制緩和が行われたことにより、現在は宅地開発が盛んに行われています。
 先人の考える「水は高いところから低いところへ流れる」、この自然の水の流れは、今、変化しつつあります。ミニ開発によって、かつて田んぼがあったところに家を建てる。したがって、その場所の土地は高くなり、水の流れに変化が起こっています。
 雨の降り方も変化しています。近年のゲリラ豪雨、集中豪雨は、水が引く時間もなく降り続き、川の水は堤防を越え、時を待たずして決壊となります。
 宅地開発は勢いよく進む一方、浸水対策は停滞しているのではないでしょうか。宅地開発は、地域の人口増加、経済効果等をもたらし、地域活性化には望ましいことであります。しかし、急激な開発は、各種の、特に生活排水の増加、遊水地の減少を招き、浸水の要因の1つとなっています。また、和田川等に設置されている手動巻き上げ方式の取水堰は、それ以前の支柱のものを転用したものが多く、もともと非常にひ弱で、無理な構造になっていて、ごみが詰まり、水がたまって川からあふれ出るという根本的な問題があります。
 このようなさまざまな要因が考えられる中、同じ地域で浸水被害がたびたび発生し、地域住民を長年悩ませています。
 和田川では、これまでも堤防、河床掘削、水路の改修などがなされていますが、依然として浸水被害がなくならないことから、自由民主党和歌山県連として、浸水対策をもっと加速し、一日も早く改修ができるよう、国、県及び和歌山市がお互いに協力して対策を進める必要があることを強く訴えたところ、7月18日に国、県、市による会合が開催され、災害に強い地域づくりに向け、関係者が連携を強化することが確認されたと聞いています。
 この機会を逃すことなく、地域の住民の方々が安心して生活ができるよう、山東地域の根本的な浸水対策について、一日も早く事業に着手していただきたいと考えます。
 そこで、県管理の和田川について、県土整備部長に伺います。
 和田川流域では、永山川や平尾川などの支流、また周辺の用水路などがあふれ、浸水被害が発生していますが、流域の内水被害を軽減するためにも、和田川本川における改修計画はどのようになっているのでしょうか。
 和田川上流部の山東地域に住まわれている方々にとって一日でも早い対策が望まれており、できることから速やかに着手すべきであると考えます。この地域において、早急に県がなすべき治水対策について回答をお願いします。
○議長(山下直也君) 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 1点目の和田川本川の改修計画についてでございますが、和田川流域への浸水被害の対応につきましては、議員御質問のように、内水被害や自然のはんらんによる床上浸水を踏まえ、農業用水管理者等による用排水路等の改修、和歌山市による支川前代川等の改修、県による和田川本川の改修など、国、県、市の連携を強化し、それぞれの事業進捗を図っていくことにしました。
 県管理の和田川本川の改修につきましては、これまで、下流から矢板護岸と川底を掘り下げる工事を実施してきたところでございますが、市による支川改修や内水対策とあわせ、河口から前代川合流部付近までの約5.8キロにおける改修を抜本的に進めるため、床上浸水対策特別緊急事業の採択を国に要望しているところでございます。
 次に、上流部の早急な対策の実施についてでございますが、和田川本川上流部の県の対策としましては、従来より局所改修に取り組んでいるところですが、今後とも下流部の改修と並行して取り組んでまいります。
 特に、治水上、最もネックとなっている山東地域の伊太祁曽神社前の農業用取水堰を含めた区間においては、今回の水害を踏まえ、今年度内に局所改修に着手し、来年度のできるだけ早い時期までの完成を図ってまいります。
○議長(山下直也君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 では、次の質問に移ります。
 次は、市道坂田磯の浦線の早期着工に県として協力ができないかについて質問します。
 磯の浦地区は、道路が狭く、夏場は海水浴客やサーフィンなどで道路が渋滞し、地元に住まわれてる住民の方々は買い物にも行けない、病院にも出かけられないというほどで、苦痛の毎日です。また、小さな子供やお年寄りは、交通事故に遭う危険性も高まり、緊急車両の通行もままならない事態は、住民の方々の命にもかかわる問題です。
 こうした事態を改善するため、県道粉河加太線のコスモパーク加太入り口付近から磯の浦海岸付近までを道路で結ぶ市道坂田磯の浦線の計画が30年も前にできており、和歌山市において用地買収がなされ、80%以上を取得したとのことですが、いまだに工事着工のめども立っていません。
 渋滞対策はもちろんのことですが、先日、南海トラフ付近で巨大地震が発生した場合の被害想定について、国の有識者会議から発表され、この和歌山県では、最悪の場合、8万人が犠牲になるとのセンセーショナルな報道がなされました。8万人ともいえば、本県の人口のおよそ12分の1であり、とてつもなく大きな被害で、想像することすらできないものです。
 想定では、亡くなる方の多くが津波によるものとされており、震源に近い和歌山県の沿岸地域では、とにもかくにも津波が及ばない高台にできるだけ早く避難することが生命を守る上で最も大切であると言われています。
 県都和歌山市においても、マグニチュード9クラスの巨大地震が南海トラフで発生した場合は、高さ8メートルほどの津波が到達すると予想されています。
 こうした大きな津波が海岸の防潮堤を乗り越え、海抜の低いところにある住宅地や田畑にまで押し寄せてくることになった場合、避難路が十分に確保されておらず、住民が避難しにくい地域というものも存在しています。磯の浦地区は、まさにこうした地区の1つともなっています。
 現在、事業が進んでいない市道坂田磯の浦線は、津波に襲われる可能性のある磯の浦地区の住民にとっての緊急時の避難路としての道としても有効ではないでしょうか。実際、地区の方からは、避難路の少ない私たちの希望の道という切実な願いが込められ、その実現が心待ちにされています。
 用地問題が最大のネックとされているのであれば、用地の収用等、法的な手続を利用するすべもあるのではないでしょうか。ここ2年間は和歌山市との協議が全くないとのことですが、協議がなければ土地収用の手続に必要な事業認定の申請も進まず、状況は停滞したままです。
 和歌山市民は、同時に和歌山県民でもあります。毎日の生活苦と災害時の避難路がないという不安が新たな道路を通すことでなくなるのであれば、これこそが最善の解決方法です。
 そこで、県土整備部長にお伺いします。
 県民の命を預かる県として、この道路の早期着工について協力をすることはできないのでしょうか。
○議長(山下直也君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 市道坂田磯の浦線につきましては、和歌山市が生活道路及び防災道路、また観光振興に寄与する道路として整備に取り組んでおり、用地取得率は、面積ベースで平成14年度までに83%に達していると聞いております。しかしながら、議員御指摘のように、それ以降、進捗がほとんど見られておりません。
 県としましても、防災の観点はもちろん、観光振興にも資する重要な道路であると考えており、これまでも市に対し、県・市連携会議やあらゆる機会を通じ、県で進めている磯の浦活性化事業とあわせ、早期の整備を要請するとともに全面的な協力をしてきておりますが、今後、さらに具体的な課題解決に協力するとともに、早期に用地取得の上、工事に着手し供用を図れるよう、積極的に市を支援してまいります。
○議長(山下直也君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 次は、いじめの防止について質問させていただきます。
 ことし7月以降、報道で大きく取り上げられるようになった大津市の中学校でのいじめが原因と見られる生徒の自殺は、これまで幾度となく繰り返されてきた学校でのいじめの問題をクローズアップさせ、家庭や学校だけでなく、地域社会や警察をも動かす大きな社会問題となっています。
 今、子供を守るために、改めてこの問題を注視し、落ち度のない対応をとっていくことが必要だということを改めて認識しています。
 今議会でも、藤本議員、雑賀議員がこの問題を取り上げられました。さらに、先週の金曜日には、前芝議員の質問に答えて仁坂知事が、「いじめ問題については、教育委員会だけの問題ではなく、県も主体的かつ積極的に取り組むべき」と発言され、「いじめ等の相談を知事あての県政ポストでも受け取る。また教育長あてのメールも新たに設ける」と答弁されました。このことは、いじめ問題に心を痛めている県民にとって、行政が真剣にこの問題に取り組んでくださるという姿勢がわかり、大きな共感を得たものだと思います。
 子供たちにとって、本当は楽しくあるべき学校生活が、いじめがあることによって暗くて重々しいものに変わってしまう。大津市のように、子供が亡くなるというような事件が報道されると、胸が押しつぶされるような悲しみと、どこに向けていいのかわからない憤りを感じています。
 人の尊厳を奪ってしまうようないじめを許してはいけません。ましてや、いじめによって人の命が奪われるようなことは決してあってはいけません。家庭でのしつけや子供との触れ合いの中で、いじめについての認識を子供とともに共有するということは私たち子供を持つ親がしなければならないことですが、教育現場である学校においても、いじめの撲滅に全力を尽くしていただくようお願いしたいと思います。
 さて、前芝議員の質問にもありましたが、本県の公立学校におけるいじめの認知件数は全国的に見ても少ないほうですが、これらの認知件数は都道府県によって大きなばらつきがあります。例えば、最も多かった熊本県では、本県の30倍以上の認知件数が報告されています。
 これはアンケートのとり方によるものではないかと言われており、記入した生徒がだれか教師にわからないような方法にすることが実態の把握には必要だと思います。認知件数が少ないということは、もしかしたらいじめがあるのに見逃してしまっているのではないかと心配します。
 心身ともに大きく成長過程にある生徒は、いじめという問題だけでなく、友達関係や勉強、部活動、またそのほかの、先生や親には気づいてあげられない悩みに立ち向かっているのかもしれません。先生や友達、親にも打ち明けることができない生徒が何らかの形でこうした悩みを打ち明けられるきっかけが必要だと思います。
 先日公表された本県のいじめ問題対策では、実態把握のための生徒へのアンケートを早期に実施し、さらにアンケート結果に基づいて教育委員会等が学校から直接ヒアリングを行い、対応方法などについて指導や助言を行っていくとのことです。
 この実態把握の方法として、書いたのがだれか教師にわかってしまうと正直に答えられないという問題をなくすために、例えば県費で生徒1人1人に内容を隠すことのできるシールがついた郵便はがきを配り、専用の私書箱を設けるなどの方法で、はがきが直接教育委員会に届くような匿名性の高い調査を行うことは考えられないでしょうか。
 どんな悩みを打ち明けてもよいのなら、いじめだけでなく、生徒がどんな悩みに苦しんでいるのかがわかる手だてともなりますし、また、低学年ではネグレクトの発見につながるかもしれません。
 メールでの相談ができることは大変便利でありがたいのですが、例えばインターネットや携帯電話のメールを使うことができないような生徒もおります。できるだけ多くの子供たちが相談する機会を平等に設けるという点で、はがきという通信手段を使うのはどうでしょうか。
 先日の藤本議員の話にあったように、学校の保健室が子供の心のよりどころになっていることは、私もその様子を目にしています。親に言えない悩みを、保健室の先生にだったら自分から話しに行くのです。そのような、子供から悩みを打ち明けたいと思えるような方策が必要です。
 今回、メールによる知事や教育長へのいじめ相談窓口設置という行政、教育委員会が一体となったいじめ対策を打ち出されたのですから、実態調査においても、全国に例を見ない和歌山県独自の方法を見出すときであると私は考えます。
 教育長にお伺いします。
 通告の1番目の質問については、金曜日に公表された内容のとおりだと思いますが、改めて伺います。本県でも、いじめを含む正確な実態把握とその解消に向け、県全体で調査を行う予定はありますか。また、それはどのような方法で実施しますか。
 次に、教育委員会に対し、いじめの実態や抱えている悩みを直接訴えることができるよう、はがきを使った実態調査を行うことに関してはどのようにお考えですか。
 最後に、いじめの加害者に対して出席停止を命じる制度を積極的に活用しようとする教育委員会も他府県では出ていますが、いじめの防止に、より実効性を持たせる措置について教育長はどのようにお考えですか。
 教育長にお伺いします。よろしくお願いします。
○議長(山下直也君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学校におけるいじめの防止に係って、3点についてお答えします。
 本県では、すべての学校でいじめの実態を把握するため、平成22年度から各市町村教育委員会とも協力しながら児童生徒に対してアンケート調査を実施しています。
 本年度も、既に5月から順次、各学校が児童生徒の実態に合わせて、時期等を適切に判断しながら実施しているところでございます。
 各学校では、いじめに関するアンケート調査で明らかになったいじめに対して、即座に子供と向き合い、きめ細かく対応することにより、いじめの早期解決に努めています。
 いじめの問題に迅速かつ的確に対応していくためには、子供や保護者が悩みや不安等を持ったときに、いつでも相談できるように体制を整えておくことが重要であると考えます。このため、県教育委員会としましては、既存のいじめ相談電話の活用を子供や保護者に一層周知していくとともに、いじめを含むさまざまな問題に対応するため、知事メール等を活用するとともに教育長メールを新たに開設したところです。
 こうした取り組みを通して、子供や保護者等から寄せられた訴えにしっかりと向き合い、早期発見、早期対応できるよう丁寧に取り組んでまいります。
 はがきの活用という提言をいただきましたが、いじめ問題に対しては、まず学校現場の教職員がしっかりと子供の実態を把握し、信頼関係に基づいて子供と誠実に向き合うことが大切であると考えます。
 はがきの活用につきましては、子供と教職員が日々温かく触れ合い、心を通わせることを大切にするという観点から、慎重に対応したいと思います。
 公立小中学校における出席停止についてですが、いじめへの対応は、単にいじめた子供を出席停止にすればよいというものではなく、いじめを行わない方向に向ける粘り強い指導こそが大切です。しかし、いじめが深刻であって、他の子供の安全や教育を受ける権利が保障されないと判断された場合には、出席停止の措置を講ずることなど、毅然とした厳しい姿勢も必要になると考えます。
○議長(山下直也君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 最後に教育長にお答えいただいた加害者側の出席停止ですが、小中学生に関しては、やっぱり義務教育であるがゆえに慎重に行うべきであるということは理解しているんですが、いじめを受けたほうが、いじめを怖がって不登校になったり転校を余儀なくされているということは、どう考えても理不尽だなというふうに感じております。
 いじめを受けている側の立場に立って考えることが必要じゃないかなというふうに思っておりますので、他府県でこうした事例があるのであれば、本県においても、県立の中学校等において導入の可否について検討していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 続いて、質問に移ります。
 最後の質問です。
 聴力に障害のある子供の補聴器購入費助成制度の創設について伺います。
 子供が言葉を覚え、やがて家族や友達と会話によるコミュニケーションを楽しむようになるのは、言葉を発する前の段階、つまりただ聞くだけのときから始まっています。赤ちゃんのころ、周りの日常生活の会話が自然に耳に届き、だんだんと言葉を習得していきます。
 このことは当たり前のように思えますが、聴覚に何らかの障害を持って生まれた赤ちゃんやその家族にとっては、本当に切実な問題です。特に、言葉を覚える段階で聴力に障害がないかどうかを見つけ、障害があるとわかった場合は少しでも早いタイミングで補聴器を装用し、健常者と同等の聴力を得ることが、周囲とのコミュニケーションをとるため、言葉を覚えるため、とても大切なことであります。
 今、本県では、聴力に障害のある方に対する補助制度として障害者自立支援法に基づく補装具費支給制度があり、障害の程度が重く障害者手帳が交付されている方が補聴器を購入する場合は本人の1割負担で済みますが、障害者手帳が交付されていない軽度や中度の障害を持たれる方に対しては、補聴器購入に係る費用の助成制度はありません。実際、聴覚に中程度以上の障害のある子供の親御さんからも、補聴器を購入する助成が欲しいとの声が聞かれています。
 こうした軽度・中度難聴児補聴器購入等助成制度については、都道府県としては、岡山県や秋田県を初め11の府県で導入されていると聞いております。
 補聴器購入の費用の一部を助成することにより、聴力に障害を持つ子供さんが言葉を習得するタイミングを逃すことなく、その後、教育を受けるに当たり、より健全な環境で学ぶために有効な支援だと思います。
 そこで、福祉保健部長に伺います。
 聴力に障害のある子供たちが、発達の過程において健常者と同様に言葉を習得できる環境を整備するために、早急に軽度・中等度難聴児補聴器購入の助成措置を設けるべきだと思いますが、どのようにお考えですか。御答弁お願いします。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長山本明史君。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 近年、医療の発達に伴い、新生児の聴覚スクリーニングが普及し、軽度から中等度の難聴児が発見されやすくなってきております。また、軽度・中等度難聴児が補聴器を早期に装着・装用することにより、その後の言語発達等のおくれの防止に効果的であると認識してございます。
 県としましては、軽度・中等度難聴児の補聴器購入の際の助成制度の創設について、引き続き国に対し要望を行うとともに、今後、他府県の状況も踏まえ、検討してまいります。
○議長(山下直也君) 森 礼子君。
  〔森 礼子君、登壇〕
○森 礼子君 御答弁ありがとうございました。
 補聴器の早期の装用が効果的だということを御認識いただいておりまして、大変心強く感じております。
 言葉の発達は、子供のそれからの長い人生において本当に大切なことですので、この助成制度の実現に対して御努力いただくことをお願いして、私の一般質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、森礼子君の質問が終了いたしました。

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