平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号

(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午前10時0分開議
○議長(山下直也君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第107号から議案第143号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 21番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 おはようございます。
 通告に従いまして、一般質問を行ってまいります。どうぞ、御清聴、よろしくお願い申し上げます。
 最初に、観光振興について2点質問をします。
 まず、公衆トイレの美化についてであります。
 議会の質問のテーマというのは、時としてはやりがありますが、この議会は、偶然トイレということについて、昨日も新島議員から質問がありましたが、私も1番にさしていただきたいと思います。
 かつて、四国の阪急と言われた高松琴平電鉄がバブル崩壊で経営破綻した後、香川日産出身の真鍋康彦さんという人が社長に就任し、短期間で再建したそうでありますが、最初に力を入れたのが、利用者からの改善要望が最も多かったトイレのリフォームだったと言われています。
 少し前に「トイレの神様」という歌がはやりました。その一説に次のような歌詞があります。「トイレ掃除だけ苦手な私におばあちゃんがこう言った トレイにはそれはそれはキレイな女神様がいるんやで だから毎日キレイにしたら女神様みたいにべっぴんさんになれるんやで その日から私はトイレをピカピカにし始めた べっぴんさんに絶対なりたくて毎日磨いてた」。
 私も、トイレに女神様がいると思います。自宅のトイレは、私自身が行います。一番汚いとされているところがきれいだと、ほかは大したことがなくても全体のレベルが上がります。逆に、トイレが汚いと、ほかをどんなにきれいにしても帳消しになると思います。
 そういう意味で、観光立県を標榜する本県の公衆トイレは、きれいでなくてはならないと考えます。県では、市町村の公衆トイレ設置に補助金を出し、トイレマップを公表していますが、果たしてきれいなのかどうか。公衆トイレのきれいさがその観光地のレベルをあらわすバロメーターであるとの思いから、公衆トイレを美化する方法として、独自にきれいさ基準を設け、常時基準を達成しているトイレを認定、公表してはどうかと考えます。
 少し内容は違うのですが、イギリスにはイエローブックという個人の庭を調査、登録するガイドブックがあり、イエローブックに何とか掲載されるよう、英国民は競って庭園管理に汗を流すそうです。
 ということで、知事の御所見をお伺いしたいと思います。
 なお、既に和歌山市内のお茶屋さんが、個人的に和歌山市周辺のトイレを調査し、評価・公表されておられます。この際、すばらしいアイデアと行動力に敬意を表しておきます。
 次に、ホテル・旅館業の固定資産税の評価の見直しについて伺います。
 昨年の12号台風からの復旧については、官民挙げての努力により、急ピッチに進んでいると心強く思っております。
 しかし、復興となると、依然、道半ばであると思います。特に、ホテル・旅館については、大勢の従業員を抱え、工場よりはるかに生産性の低い大きい施設を維持していかなくてはならず、全国的にも経営は大変と言われております。
 そんな経営環境の中、耐震化については、6月議会で知事にお尋ねしたところ、力強い御答弁をいただきましたが、ホテル・旅館に係る固定資産税の評価額については、建築後、何年経過してもその評価額が下がらないので困っていると聞いております。ぜひ、その評価の見直しをする必要があるのではないかと考えますが、総務部長の御所見を伺います。
○議長(山下直也君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 観光立県を推進するためには、観光客のおもてなしが大変重要であると認識しておりまして、そのために、毎年策定している観光振興アクションプログラムにおいて、おもてなしを3本柱の1つとして位置づけまして、その中では、公衆トイレの整備、それからホテル・旅館従業員さん、あるいはタクシーの運転手さんの研修、それから観光案内表示の多言語化、こういうものを柱として積極的に取り組んできたところでございます。
 特に公衆トイレについては、最近の例では、熊野古道の十丈王子とか三越峠等に、これはなかなかくみ取りなんかもできないもんですから、水洗でも流すところがない。そこで、バイオ式トイレなどを整備するとともに、紀美野町の生石高原、高野町の女人堂、太地町のくじら浜公園など、市町村の公衆トイレの整備を助成してきたところです。
 公衆トイレについては、整備の推進とあわせて、これまでも維持管理について、市町村、観光関係者と取り組んできたところでございますけれども、例えば和歌山市の和歌公園とか、あるいは有田川町の馬廻橋近くのトイレなどは、住民の方が美化、清掃に協力してくれておりまして、大変頭が下がるところもございます。
 公衆トイレの美化の重要性にかんがみ、議員御指摘のように、今後さらに美化に力を入れていく必要があると考えておりまして、頑張る所存でございます。
○議長(山下直也君) 総務部長米澤朋通君。
  〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) ホテル・旅館の固定資産税に係る評価ですが、鉄筋コンクリートづくりの場合、50年かけて減価していくこととされてるところでございます。
 議員御質問のホテル・旅館に係る固定資産税の評価の見直しにつきましては、平成24年度税制改正大綱において、実態調査等の結果を踏まえ、家屋類型間の減価状況のバランスも考慮の上、具体的な検討を進め、平成27年度の評価がえで対応することとされており、国において、現在、検討が行われているところであります。
 県としましては、国の検討の状況をフォローし、注視してまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 大きな2番目に、防災対策について、4点質問いたします。
 まず、人工島で津波を軽減できないかということをお聞きします。
 この9月6日から3日間、和歌山高専の小池准教授を中心に、御坊商工会議所や市建設業協同組合の有志で構成する津波防災研究会のメンバー15人で、宮城・岩手両県の被災地を訪問してきました。
 今回は、特養施設長で消防団員でもある芳賀大槌町議や南三陸町のホテル役員、津田東北整備局港湾空港部長などから、命からがら避難した体験談や、今なお復旧途上にある現地の課題を直接お伺いすることができました。
 また、震災後1年半が経過し、19兆円もの巨費を投じながら、被災地は、現地かさ上げ、高台移転にかかわらず、ほとんどの地区でいまだに住宅が再建されていない状況を見るにつけ、改めて早期の復興を願うと同時に、できることなら予算は、被災後の復旧・復興に使うよりも被災前の防災・減災対策にこそ回せないものかと思いました。
 我が県でも、一刻も早く東南海・南海地震に対して全力で防災対策を講じ、命を守ることは当然ですが、住宅やライフライン、インフラ、事業所なども何とか防災・減災対策で守り抜かねばと思いました。
 さて、ギネスに載る釜石湾口の大深水防波堤は、高速議連でも視察したこともありますが、一部壊れたものの、津波の衝撃や浸水を食いとめるのに大いに役立ったと東北整備局から伺いました。改めて、ハード整備の必要性を認識いたしました。
 また、天然の要塞とも言うべき松島は、多島海──海にたくさん島が浮かぶ、そういう意味でありますが──の地形が津波の衝撃から町を守りました。
 9月18日付の「朝日新聞」には、松島を参考に、沿岸部の陸上に瓦れきを埋めた小高い防潮林を点在させる「千年希望の丘」と名づけられた計画が紹介されています。計画を推進する岩沼市長は、その理由に、災害時に海岸沿いの公園にある築山に避難して助かった市民の例を挙げています。
 我が県には瓦れきはありませんが、建設残土ならあります。現在、県では、県発注工事の建設残土を、わざわざお金をかけて処分しています。有田─田辺間の4車線化では、トンネルの掘削土が大量に出てきます。このような建設残土を市街地の前面の海中に投入し、人工島を建設することで津波の衝撃を緩和できないかと考えます。
 以前、私は、アメリカの各地で、航路確保のためしゅんせつをした土砂を港湾区域に積み上げた人工島をたくさん見てきました。私は、人工島建設が津波対策の大変有効な施策であると考えますが、技術者である県土整備部長の御所見を伺います。
 次に、新しい被害想定を受けて、防災対策に取り組む市町村への支援について伺います。
 去る8月29日、内閣府から、南海トラフの巨大地震に関する津波高、浸水域、被害想定が公表されました。津波高、浸水域が10メートルメッシュの詳細なデータが示されるとともに、近畿地方が大きく被災するケースでは、最大で約28万人が、本県でも最大8万人が死亡するという大変衝撃的な内容でした。
 ただし、死亡者数は、早期避難率を高め、呼びかけを行うことで、ケースによっては全国で約12万人、本県で4万人を減ずることができるとしています。そうであるなら、直ちに官民挙げての防災対策をスタートさせようではありませんか。
 しかし、防災対策では、中心的な役割が期待される市町村の現状を見たとき、マンパワーの不足のため、今後の計画づくりにも不安が残ります。国にもぜひ応援を求めたいところですが、果たして県としてどのような支援を行うのか、御所見を伺います。
 3番目に、美浜町にある国立病院機構和歌山病院について伺います。
 和歌山病院では、去る9月13日、耐震化のための建築工事の契約をしたようであります。被害想定がはっきりした今日、せっかく建て直すなら、どうして高台へ移転しなかったのか。計画では、鉄筋3階建てで、屋上へ避難できると想定しているそうですが、患者やスタッフは生き残ることができても、病院としての機能は維持できるのでしょうか。
 日高地方では、災害拠点病院は日高病院がなっていますが、日高病院だけで東南海・南海地震のような巨大災害に対応できるわけではなく、ぜひ和歌山病院にも災害医療の一翼を担ってもらいたいと思います。とりわけ、がん治療に有効な放射線科は、本来、日高病院へ集中させてがん拠点病院にすべきところを、わざわざ和歌山病院に残したところです。
 県として、今回の改築決定にどのように対応するのか、福祉保健部長に伺います。
 4番目に、御坊火力発電所の地震・津波対策について伺います。
 今回の被害想定では、御坊火力発電所を震度7の揺れと10メートル以上の巨大な津波が襲うことが予想されております。火力発電所では、福島原発のような事故は想定されていませんが、津波が石油タンクを破壊し石油が流出することは東日本大震災でも現実に発生しており、気仙沼市では流出した石油で大火災になりました。
 私は、石油が御坊のまちに流れ込んで、津波と火災の二重の災害になるのではと心配しております。また、当面は続く電力不足のことを考えると、御坊火力の被災は、関西の住民生活や企業活動に大きな影響を及ぼすものであります。
 そもそも、発電所の防災対策は電力会社の自己責任でありますが、県として、危険物屋外タンク貯蔵所の地震・津波対策について、どのように指導されているのでしょうか、御答弁願います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御質問のうち、私にというふうに御指定がございました点についてお答え申し上げます。
 まず、市町村への支援というところでございますが、国の南海トラフ巨大地震の想定では、県南部の地域において、地震発生から津波の到達時間が非常に短くて、現状では避難が困難な地域も想定されております。
 県としては、すべての住民が避難をあきらめることなく、できるだけ高い場所に避難することができるよう、避難路や津波避難タワー等の整備については、県パワーアップ補助金や国の緊急防災・減災事業により市町村を支援しているところであります。
 また、緊急防災・減災事業につきましては、国の助成策が制度設計では確保されるはずの公共施設の高台移転というような構想が、実は財源が枯渇してしまって、計画どおりやろうとしてもお金をくれないかもしれない、そういうような事態が現在起こっておりまして、これはけしからん話なので、国に対して十分な財源確保をやるように、現在、強く要望してるところであります。
 さらに、現在、まだ被害を受けていないけれども、被害を受ける可能性のある低地に住んでおられる方々を、避難がきちんとできる、あるいは避難をしなくても済むような高台に移っていただくというような、いわばまちの改造みたいなことをしておかないと、避難が十分できないという地域もあります。
 既に、串本町や、あるいはすさみ町ではいろんな構想を考えておられるようでありますけれども、これは市町村がどうぞと言うだけでは、議員御指摘のように、県としての責任を果たせないと考えておりまして、実はどうすればそういうことができるか、これは大変難しい問題だと思いますが、そういうことを、現在、県を挙げて検討している状況でございます。具体的に市町村を助けていくということにしていきたいと思っております。
 さらに、昨年12月に施行された津波防災地域づくりに関する法律に基づく推進計画、これは作成いたしましょうということで、市町を支援するために、本年6月に国、県、関係市町の連絡会議を設置したところでございますが、そういうことも含めまして、県では、引き続き県民の命を守る防災対策を市町村とともに取り組んでいきたい、こんなふうに思っております。
 それから、その次に、御坊火力発電所の地震・津波対策であります。
 これは、消防法では容量1000キロリットル以上の屋外タンクについて、タンク構造や基礎、地盤についてのタンク基準が設けられておりますけれども、東日本大震災で何が起こったかというと、容量1万キロリットル以上のタンクでは被害が少なくて、小さいタンク、これは防御基準もちょっと緩くなってるわけですけど、そういうところで被害が大きかったということで、これは国において耐震基準について見直しをして、それでやり直そうという動きになっております。
 関西電力御坊発電所には、6万キロリットルタンク4基と3000キロリットルタンク2基が設置されておりまして、現行法の消防基準に従って、もちろん耐震対策は講じられているんですけれども、今言ったような事情でございますので、特に今後、この3000キロリットルのタンクについて、国の基準見直しを踏まえた耐震対策が必要ではないかと思います。企業がおやりになるわけですけれども、我々としても、ちゃんとウオッチしていきたいと思っております。
 一方、津波対策といたしましては、国では、津波によるタンクがどのような影響を受けるか予測できるソフトをつくって公表しておりまして、事業所では、これを活用して検証し、対策を講じることになっておりまして、これについても、寄り添うようにうまく指導していきたいと考えております。
 県としては、そういうことで、企業とよく連絡をとって、また各地の消防本部、これとも連絡、連携して指導していきたいと思っております。
○議長(山下直也君) 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 人工島建設による津波対策についてでございますが、人工島の設置は、通常、大規模な事業となるとともに、自然環境や漁業活動に配慮する必要があるなどの難しい面があります。一般的には、津波対策に活用することが難しいのではないかと考えております。
 各地域の津波対策につきましては、県が行うシミュレーションの結果を踏まえ、津波の流入状況やまちの地形といったことを分析した上で、防波堤、防潮堤、避難ビル、避難路、高台造成など、ハード・ソフトのさまざまな手段をいかに効率的、効果的に組み合わせていくかを関係者が一体となって検討していくことが必要と考えております。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長山本明史君。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 現在、国立病院機構和歌山病院は、診療棟などの改築を計画しているところです。
 津波・防災対策につきましては、まずは国立病院機構本部及び病院が、8月に内閣府から公表されました「南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等及び被害想定」を真摯に受けとめ、適切に取り組んでいるものと考えていますが、県といたしましても、患者の安全を最優先に、また病院機能が維持できるよう病院と協議するとともに、国立病院機構本部や国にも強く働きかけてまいります。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 実は、ことしだけで、東日本の被災地へ4回行かしてもらいました。行くたびに思うことでありますけども、本当にあの被害の大きさを見れば、もっと大勢の人が亡くなってるんじゃないかと思われるぐらい大変な被害状況であります。
 こういう大きな災害から私たちが国民、県民の生命、財産を守っていくためには新しい法律もやっぱり要ると思いますし、事業をやっていくための財源というのも要るというふうに思いますし、新しい防災・減災技術というのも要るんじゃないのかなというふうに思います。
 人工島がいいんじゃないかとか、それから──今申し上げたのは人工島ですけども──もう1つ、私は御坊のまちを考えたときに、小学校の運動場なんかも、30メーターぐらいかさ上げをしたら1万人ぐらいの人が避難できるわけでありますけども、今までそういうものをつくるという発想がなかったわけであります。私は土木技術者ではありませんけども、現地へ行って、まちが跡形もなくなってる、そんな状況を見たら、そんなものもぜひ必要じゃないかなというふうに思っております。
 だれが開発してくれるのか、よくわかりませんけども、とりあえず私たちは、御坊の人でもできるようなことということで、さっきも申し上げましたが、高専の先生を中心にそういう研究を始めていこうということから始めておりますが、ぜひ県のほうでも研究していただきたいというふうにお願いしておきたいし、国にもそういう要望をしていただきたいというふうに思っております。
 続けて、質問を行ってまいります。
 大きな3番目に、高齢者の農作業事故防止について質問します。
 ことし6月、近所の篤農家のおじいさんが、耕運機の操作を誤り、ローターに巻き込まれて亡くなる痛ましい事故がありました。腰は少し曲がっていても、車で夫婦仲よく買い物にも出かけるすごく元気な人でした。最近は、がんなど病気で死ぬ人が多い中で、病気一つしなくても人は死ぬものだと認識させられました。
 新聞では、時々、農作業中の死亡事故が報道されています。特に台風襲来時に人が亡くなるというニュースは、田んぼの様子を見に行った高齢者が多く、急速に進む農家の高齢化を象徴しています。
 そこで、お尋ねします。
 農作業の事故の発生状況はどうなっていますか。また、その対策についても、農林水産部長に御答弁願います。
○議長(山下直也君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 高齢者農作業事故防止に係る2つの御質問にあわせてお答え申し上げます。
 農作業事故の現状について、本県では、近年、年間平均3件程度の死亡事故が発生し、そのうち65歳以上の高齢者の割合は過去10年間で81%です。また、全国的には、年間平均で400件程度の死亡事故が発生しており、そのうち65歳以上の高齢者の割合は過去の10年間で76%と、いずれも高齢者の比率が高い状況となっております。
 県としては、農繁期の3月ないし5月と9月から10月を重点期間と定め、市町村や農業協同組合と連携のもと、ポスター掲示や各種研修会を通じた安全啓発活動に取り組むとともに、農業機械の安全操作や点検に関する研修を実施しているところです。
 農作業の事故防止対策は重要な課題であり、引き続き市町村や農業協同組合と連携を図り、幅広い機会をとらまえ、実情にかんがみて、事故事例の資料を活用した高齢者向けの研修等の安全啓発活動を推進する所存でございます。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 高齢化する日本農業の振興策には機械化というのが絶対条件でありますけども、農業資材は、省力化も含めて機械化が大変おくれているのが実情であります。ぜひ国や県に機械化の研究をするよう、この際、要望しておきます。
 続きまして、大きな4番目に海洋関連研究所の誘致について質問します。
 私は、平成22年2月定例会で、知事に海洋開発の必要性と取り組みについて伺いました。今回は、その取り組みの手始めとして、海洋関連研究所の誘致を提案したいと思います。
 現在、尖閣列島や竹島など、我が国領土に周辺国から言いがかりをつけられています。その目的は、石油やメタンハイドレートなど、地下資源の獲得だと言われています。
 私たちは、これまで半島性からの脱却に力を入れてきました。しかし、今はむしろ逆に、海洋開発など半島性を生かした振興策も図るべきだと考えます。
 幸い、本県には600数十キロにも及ぶ海岸線があり、排他的経済水域まで含めると広大な海域を有します。海は時として災害を起こしますが、実は宝の海でもあります。
 ただ、現在のところ未開発であり、国内消費100年分と言われるメタンハイドレートや熱水鉱床など、海底の資源、海水や海流の利用など、今後の開発が待たれます。
 知事は、私の質問に対して、極めて重要で、今後、国や大学、研究機関等の動向を注視し、情報収集に努めながら、海を活用した本県の振興策について調査研究を進めるとの御答弁をいただきました。
 以来、私は、果たして県で何ができるのかを考えてきましたが、県には研究者がいるわけではなく、所管も定かでない状況の中、積極・主体的に取り組むのは困難で、みずから取り組むのではなく、研究所や研究者を招聘するところから始めるべきだと気づきました。
 現在、海洋開発に関する研究を行っているところは、独立行政法人海洋研究開発機構や東海大学、佐賀大学など少数で、恐らく今後、設置が進むのではと予測しております。
 残念ながら、和歌山大学には海洋研究者は1人もいないと聞いておりますが、まずできることからという意味で、大学や企業などに海洋関連研究所の誘致、研究者の招聘など、各方面に働きかけてはと考えますが、知事の御所見を伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 現在、さまざまな研究機関によりまして、潮の満ち引きによる潮流や黒潮などの海流のエネルギーを利用する潮力発電や海流発電、波のエネルギーを利用した波力発電等の調査研究が各地で進められております。
 黒潮が沖合を流れる熊野灘、これはもちろんですが、すぐれた港湾施設や造船の実績を持つ日高地域、あるいは潮流の激しい紀淡海峡など、本県はすぐれた研究フィールドとなるポテンシャルを擁していると思っております。
 また、太平洋沖にはメタンハイドレートなど豊富なエネルギー資源が蓄えられておりまして、これらを有効に取り出すことで、次世代エネルギーとしての利用促進が期待されるわけです。
 これについては、国の研究開発が現段階ではちょっと和歌山から離れているということもありまして、もう少し賦存状況なんか調べといたほうがいいかなというようなこともございますので、今、どうしようかといろいろ考えてるところであります。
 現在、このような資源を有効に活用すべく、地元自治体と足並みをそろえまして、国の総合実証実験海域への指定や民間事業体による本県海域での実証実験誘致を働きかけているところでありまして、例えば新宮に「ちきゅう」を誘致してきたなんてのも、その一環なんでございます。
 本県への研究機関の誘致や研究者の招聘などについては、その機関とか組織とか、なかなかつくってくれないという時代に現在あるので、なかなか難しい課題であると考えますけれども、海洋開発への取り組みは、どんな時代であっても和歌山にとっては重要でございまして、議員御提案を含め、それから砂防に関する研究施設なども含めて、さまざまな可能性を積極的に追求してまいりたいと思っております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 最後に、県立医科大学への薬学部設置について質問します。
 医師不足や看護師不足、これはよく聞く話ですが、本県では、実は薬剤師も不足しています。人口10万人当たりの薬剤師数は全国平均より少し下回る程度ですが、薬剤師は和歌山市に集中し、和歌山市以外では極端に少ないという状況にあり、これまた医師、看護師と同様に偏在であります。
 県薬務課では、この状況は、薬学部6年修学の学生が卒業し、潜在資格者の掘り起こしをすれば薬剤師不足は解消すると説明しています。しかし、よく似た説明は、かつて医師不足のときも聞いたし、看護師不足のときも聞かされました。
 私は、この際、和歌山県立医科大学に薬学部を新設するべきであると考えます。薬学部の設置は、薬剤師不足の解消はもとより、地域医療の充実になり、医学部との相性もよく、医科大学の発展につながるものと期待します。さらに、優秀な人材を集めることができれば、創薬──薬をつくるという意味でありますが──など、県経済の発展にも資するものと確信します。
 現在、九州、四国や東北地方にある私学の薬学部では定員割れをしており、文科省は許可しないのではないかという説もあります。かつて、和歌山大学に工学部を設置するのに時間がかかり、学部新設は大変難しい課題と思っておりましたが、本県が主張している間に全国の私学には工学部がたくさん新設されていました。本当に必要なら、努力をすれば、観光学部のように可能ではないでしょうか。
 そもそも、医学部のように全国一律に薬学部を設置する政策もとらずに、求められるままに一部地域に偏在させた文科省の失策を、今、薬剤師不足で困っている本県が、なぜその責めを負わなければならないのかと思います。
 知事の薬剤師不足に対しての認識と薬学部設置の可能性について、御所見を伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御提案あるいは御指摘の点については、私も大変共感をするところがございます。
 県内の薬剤師数については、御指摘のように、地域偏在等による確保が困難な場合があると認識しております。
 県立医科大学へ薬学部が設置できますならば、不足かどうかにかかわらず、県外の薬学部に今現在たくさんの人が進学しているわけですけれども、そういう人を取り戻すことができます。県内に優秀な薬剤師が確保できるきっかけにもなると思いますので、大変よいことであると私は思います。
 しかしながら、医大でもそうでございますけど、医学部でもそうでございますが、ほかの学部でもそうでございますが、大学の運営をするためには、収入に比して、実は支出が物すごく大変なんでございます。したがって、現実的には、国に設置を認めてもらって初めて交付税措置──これは県立大学なんかでは交付税措置などが期待できて、それで運営がかつかつできるようになるということなんでございます。
 そのためには、大学審議会の議を経て、この場合でいうと文部科学省、厚労省、そして財務省、こういうものの賛成が、すなわち政府全体の賛成が必要でございます。医大の定員増をかち取りましたが、これは実はこの間隙を縫って、何とかこのメカニズムをうまく利用してというか、にもかかわらず時代を読んでやってしまったわけでございます。
 現在、全国的な薬学部の状況については、御指摘がありましたように、一部の大学において入学定員割れが生じたりして定数が削減される状況にあります。大学審議会などでは、こういう環境をいつも見ておりますので、卒業生の求人なんかに加えて、こういう学生の過不足、これが大変問題になります。
 したがって、御指摘のように、新設について国に認めてもらうということは、現状では客観的に言って大変困難だと思います。
 しかし、これはいいことには変わりはございませんので、県は、国のオーケーがどうしたらもらえるかということを常に機会をうかがって、工夫を凝らして、目標としては県立医科大学への薬学部設置の好機をうかがってまいりたいと、そんなふうに思っております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 本当に、九州とか四国、東北には、たくさん私学で薬学部があります。そんなところを閉めてもらって、国公立が少ないので、和歌山県立医科大学につくったら優秀な学生は必ず集まるというふうに確信しておりますが、研究をしてくださるということでありますので、大いに期待いたしまして私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。

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