平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号

(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午後1時0分再開
○副議長(浅井修一郎君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、早速、質疑、一般質問をさせていただきます。
 まず、第1の柱はダム問題です。これまでもダムの問題を追っかけてまいりましたが、今議会ではダムの堆砂対策に絞って質問をさせていただきたいと思います。
 流れ込む土砂によってダム湖が埋まってきて、本来の能力が発揮できなくなる、この堆砂問題は、ダムの寿命ともかかわる非常に重要な、そして避けて通れない課題でもあります。私の地元の有田川にある県営二川ダムでも、計画よりかなり速いスピードで堆砂が進んでいると訴えてまいりました。
 昨年の台風12号により、県内の河川と流域は大変な災害に見舞われました。小規模なものまで入れると数え切れないほどのダメージを受けた和歌山の山と川ですが、流出した土砂、河川に堆積した土砂は、次の災害を引き起こす要因となっています。
 河川の堆積土砂の撤去が切実な住民の要望となっているのと同時に、ダムに流入して堆積した土砂にも注意を払うべきだと昨年12月議会でも取り上げましたが、年度末に行われるダム湖の調査に注目したいとの答弁でありました。
 私は、でき上がった調査報告とこれまでの堆砂の推移を整理してみて大変驚きました。それが配付資料の図1のグラフです。二川ダム、広川ダム、椿山ダム、七川ダムと、この4つの県営ダムの堆砂率を折れ線グラフで示したものです。大変長い年月を凝縮したグラフですが、昨年の台風12号被害により、2010年度の調査と比べて、2011年度の調査がぐんと値がはね上がっているのが見てとれると思います。
 ダム堆砂率のもともと高かった有田川の二川ダムは、さらに上がっています。また、最も注目すべきは日高川の椿山ダムであり、約15%も一気に堆砂が進みました。これは、約10年分に相当する量であり、前年と比べても150万立米もの堆砂量増加になると報告をされています。
 次に、図2はダム堆砂のイメージ図、右側にはダム堆砂付近の写真をつけています。イメージ図は、実際の堆砂データではなく、説明のための単純なイメージ図としてごらんください。
 ダムの計画堆砂量というのはゲートより下の部分であり、ここが埋まってしまうまで、計算上、大体100年分の余裕を持つように設計をされています。しかし、現実には、そんなにお行儀よく堆積することにはなりません。一般的には、ダム湖が埋まってくるというと、池に泥がたまるように底のほうからだんだんと上に向かって堆積が進むと考えられがちでしょうが、そうではありません。
 川の水と一緒に運ばれてきた土とか砂とかは、ダム湖の最下流の底の低い部分から順に積もるんではなくて、流速が遅くなったら水の中にまざっていられなくなって、重さで下に沈むわけです。ですから、流速が急に遅くなるのはどこか。それは、洪水による濁流がダム湖に流れ込む、そのダム湖上流端から順番に下へ下へと伸びていく、どんどんどんどんこの堆砂が伸びていくという形になるわけですね。もちろんこの堆砂容量内も堆積土砂が押し流されていくんですけれども、基本的には上流部から堆積が進むというのが特徴なんです。
 堆砂容量内にお行儀よく堆砂が進めば、堆砂量によってダムの寿命の長い短いは左右されるものの、ダムの能力に影響はないわけです。ところが、ダム湖上流部にたまってしまう堆砂は、水を抜いたりためたりする洪水調整能力を食っていくわけで、ダムの命ともいうべきこの洪水調整能力が年々低下すると、こういう結果となります。そして、ダムゲートの操作というのは、ダムへの流入量、そして放流量を計算して、これ、非常にきめ細やかなルールをつくって決めているわけですが、堆砂によりダム容量が小さくなっていくと、もっとたまるはずがどんどんいっぱいになってきたよと、こういうふうにダム操作を狂わせることにもつながる大変重大な問題だと考えております。
 そこで、1点目の質問は、ダムの堆砂状況についての認識です。
 今、データを示しました県営ダムに加えて、県内には発電用ダムもあります。また、和歌山、奈良、三重、3県にまたがる熊野川流域には多くのダムがありますが、これら電力会社が管理するダムにも多くの土砂が流入し、影響が出ていると聞きます。
 県として、和歌山県内のダム並びに熊野川流域のダムの堆砂状況をどう考えているのか、今日の時点に立っての認識をお示しいただきたいと思います。
 第2点目の質問は、防災対策と台風災害という2つの側面からの対策についてです。
 まずは、防災対策です。
 先ほどから指摘したように、ダム堆砂をこのまま放置すれば治水能力は低下する一方です。ダム堆砂を放置するのではなく、治水能力の維持、長寿命化へと県の対応を切りかえる、そういう政策判断が必要な時期に来ているんではないでしょうか。防災対策として、今後、ダム堆砂の進行を抑えるよう、ダム湖上流端でのしゅんせつなどの手だてをすべきだと考えます。
 ダム堆砂を抑えるという点で皆さんに御注目いただきたいのは、先ほどの堆砂率のグラフ、1つだけ堆砂率の伸びが抑制されているダムがあります。このブルーの古座川の七川ダムです。このダムは、洪水被害に悩まされてきた歴史を持つだけに、ダム建設約10年後から毎年県が予算をつけて、十分な量ではありませんが、ダム湖上流端で土砂撤去を続けてきたんです。この努力が、ダム堆砂に歯どめをかけている効果として実際にあらわれています。しかし、県営ダムの中でこれを事業化できているのは七川ダムだけです。ぜひほかのダムでも事業化をすべきではないでしょうか。
 そして、もう1つの側面は、台風12号災害です。この甚大な災害により、一気に、そして膨大な量の堆砂が進みました。これに対する対策は、通常の河川やダムの維持管理の予算枠組みでは追いつかない問題です。熊野川流域のダムで急激な堆砂に見舞われたところでは、電力事業者も、通常の堆砂進行についてはダム管理者として対応したいが、災害によりもたらされた激増分については、国、県に対して支援を求めていきたいとの要望の声を上げていると報道されています。県としても、甚大な災害による急激な堆砂対策については、国に対しても強く働きかけて、特別な手だてを講じることが必要ではないでしょうか。
 今申し上げました防災対策とともに、台風12号災害による堆砂量増大対策を求めるものですが、答弁を願います。
 3点目の質問は、ダム湖そのものより上流部に位置する河川の堆積土砂撤去について伺います。
 ダム湖上流部では、流速の低下による土砂堆積が進む傾向があります。いわゆるバックウオーターと呼ばれるエリアの問題です。ここにたまった土砂は河床を上げ、ダムより上流部でも洪水被害をもたらす要因となります。有田川でいえば、清水橋付近では、湯川川との合流部に当たることもあり、一部の橋脚が半分隠れるほどに土砂がたまっています。これらの土砂は、次の洪水でダム湖に押し流されてダム堆砂となる予備軍です。ダム堆砂を抑制するためにも、ダム湖上流部河川の堆積土砂撤去にどう取り組んでいくのか、お答え願います。
 以上、3点の質問に県土整備部長より御答弁を願います。
○副議長(浅井修一郎君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) ダムの堆砂状況についてでございますが、県営の多目的ダムでは、あらかじめ100年分の計画堆砂容量を確保しており、計画堆砂容量に対する堆砂率は、平成23年度末時点で、二川ダムでは約72%、椿山ダムでは約60%、広川ダムでは約40%、七川ダムは約55%となっております。また、関西電力や電源開発の利水ダムにつきましても、昨年の台風12号等による出水で堆砂量が増加したダムがあると聞いております。
 現在の県営ダムの堆砂状況につきましては、緊急に対策を施さなければならない状態ではないと考えておりますが、毎年の調査結果を踏まえ、対策が必要となれば、その時点で対応していきたいと考えております。
 次に、防災対策と台風12号災害による堆砂量増大対策についてでございますが、ダム堆砂の進行抑制については、長期的なダム運用の観点から今後取り組むべき課題と認識しております。ダムの堆砂の進行抑制の方法や台風12号のような大規模洪水による堆砂への対策について、全国的な事例なども参考にしつつ、国とも相談しながら今後研究してまいりたいと考えております。
 次に、ダム湖上流部河川の堆積土砂撤去についてでございますが、ダム湖上流の河川の堆積土砂を撤去することは、ダム貯水池への土砂の流入量を減少させ、堆砂量の増加を抑制する働きがあるものと考えております。その他の手法としては、貯砂ダムや排砂バイパスなどがありますが、今後のダムの堆砂状況を見ながら、効率的、効果的な方法について研究してまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 部長からは、緊急に対策とまではいっていないという認識だけれども、ダムの堆砂進行を抑制することは研究していきたいという答弁だったと思います。また、ダム上流部の河川堆積土砂の撤去も効果ありとの認識を示されました。直ちに問題はないとでもいうような認識はまだまだ残念ではありますが、ダムの堆砂問題、対策を研究していくとの答弁は、これまでの答弁よりも一歩進んだものとして歓迎するものです。
 国とも相談しながらというお話もありました。国への働きかけということがあるので、知事に、この問題、再質問をしたいというふうに思います。
 この問題は、ダムの抱える隠れた維持管理のコストであって、ダム管理者の頭を悩ませてる全国的な問題ですね。今回は、通常ベースの維持管理の転換を求めると同時に、台風の激甚な災害には特別の対応を、私、質問で求めたわけです。今回、ダム堆砂の急激な増加グラフをごらんになっていかがだったでしょうか。
 国のほうは、通常の維持管理としての堆砂対策も、また台風災害による堆砂対策も、県営ダムの管理だから県でやりなさい、国の補助事業の対象外ですよと言っているんです。堆砂堰堤など新たな構造物をつくるハード物は補助対象だけども、堆砂の土砂撤去は対象外だという理屈なんですね。私は、この理屈をそのままにしておいてはだめだと思うんです。この問題、先ほども申し上げましたように、他県でも、また電力事業者も悩んでる問題ですから、共同歩調で取り組める課題だと思います。
 また、先般、河川の土砂撤去では、今議会の補正予算にあるように、追加で国の事業化をしていただきました。ダムへの堆砂対策もこうした国の災害対策事業の対象にするように、政治的課題、政策的課題として、しっかり知事としても国に迫っていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。知事のお考えをお聞かせください。
○副議長(浅井修一郎君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) ただいまの議論につきましては、本県の問題だけではなくて、実は災害関係で国に例えば助けを求められないのが幾つかあります。
 例えば、堤防があって、堤防が壊れて川が荒れたと、これは堤防を直すお金が対象になるんですが、実は堤防のないところがあります。自然に例えば岩場なんかで川が堤防の役目をしてたんだけど、そこがぼかんと壊れて、それでえらいことになったというようなところは、実は災害復旧の対象にならないんですね。そういうこともありますので、この土砂の流れによる、ある意味では悪影響というのが、災害の問題だから国が面倒見て助けてくれというのは、ちょっと難しかろうとは思います。
 ただ、先ほどの話も絶対に正しいことかどうかというのはまた別の話なんで、大きな視野に立っていろいろ議論をしていかないといけない問題かなというふうに思うんです。ただ、そのときに、困ったら何でも国に助けてくれというのは、やっぱり我が地方自治の観点からすれば、これもまた少しやり過ぎは問題ということもございますので、その辺、全体を見ながら考えていかなきゃいかんと。問題意識としては我々も十分前から持っておりますので、この問題を長く放置することはできないということは申し上げられると思います。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 ぜひ部長答弁、そして知事答弁を踏まえて、しっかりと今後とも研究、働きかけを行っていただきたいと思います。
 それでは、次の教育問題のほうに移らせていただきます。
 教育問題で、以下3点、お尋ねをいたします。
 先日、海南高校下津分校と南紀高校周参見分校の募集停止の発表がされましたが、私は大変残念なことだと考えています。県教委の再編計画では、入学者数が2年連続で定員の2割を下回った場合に募集停止をするという基準を示してきて、今回その適用がされたわけです。
 私たち共産党県議団は、この両校関係者を初め、定時制・通信制教育にかかわる関係者の皆様に、現状や御意見、御要望を伺ってきました。
 海南高校下津分校は、分校存続の危機となった20数年前、当時社会問題となってきた登校拒否、不登校の子供たちに対する取り組みを始められました。当時、全日制高校では、中学校でほとんど出席をしてない子供はなかなかとってもらえませんでした。そんな中で、少人数での条件を生かし、教職員が1人1人の生徒としっかり向き合い、また父母の会などを組織し、父母と教職員がしっかりと手をつないで不登校問題などに取り組む先進的な役割を果たされたと考えております。
 また、南紀高校周参見分校は、再編計画での存亡の危機に際して、地元自治体、地域やOBの皆さんが地域の学校として見守り、協力を惜しまずに大事にしてきた歴史があります。また、近年は、不登校を経験してきた生徒がほとんどを占める中で、じっくりと教師との対人関係をつくり、生徒が見違えるような成長を遂げておられるとお聞きいたしました。
 このように、不登校や発達障害、対人関係などさまざまな課題を抱えた子供たちなど、少人数の中でこそ学び直しのできる生徒もいるんです。こうした課題を持つ生徒たちがよりどころとした学習の場を、これからどう保障していくのでしょうか。また、この2校がこれまで果たしてきた役割と歴史について、県教委としてどう認識しておられるのか、御答弁を願いたいと思います。
 次に、県内定時制・通信制高校の現状と課題について伺います。
 募集停止が発表された2校に限らず、県内の定時制・通信制高校はどういう現状でしょうか。
 きのくに青雲高校には、平成4年に設置された昼間定時制のクラスが2クラスあるんですが、募集定員70名に対して約1.5倍の受験者があるというふうに聞いております。また、きのくに青雲高校──陵雲高校ですね──の通信制課程では1400人を超える学生数があるということを初めて知って、私も認識を新たにいたしました。そして、どちらも中学校から直接入学する生徒がふえているということを説明いただいて、学習や対人関係の助走として、緩やかなステップとして定時制・通信制高校を選択、希望する生徒もふえてきてると考えています。
 県教委として、定時制・通信制高校の現状と今日的な課題をどう考えているのか、御答弁いただきたいと思います。
 そして、3点目の質問として、定時制・通信制教育の充実について伺います。
 私は、定時制・通信制課程に学ぶ子供たちが、さまざまな課題や経済的な困難を抱えながら懸命に学校生活を送っていると思います。父母や地域、関係者からは、こうした定時制・通信制教育の条件整備を求めるさまざまな要望が出されているとお聞きしてます。
 受験者数が多い、先ほど紹介いたしました昼間定時制、これの設置や募集拡大を求める声があります。また、通信制高校でのスクーリングがあるわけですが、年度の当初は70名、80名とかで体育の授業をしたり、教室でも立ち見が出ると、こういう状況だそうですが、こうした学習環境の改善を求める声があります。こういった声にぜひこたえて、教育条件の充実を進めていただきたいと求めるものです。
 県教委としては、この定時制・通信制教育の充実をどう図っていこうとしておられるのか、以上3点について、教育長から答弁を願いたいと思います。
○副議長(浅井修一郎君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 教育問題にかかわって、3点についてお答えしたいと思います。
 海南高等学校下津分校と南紀高等学校周参見分校は、地域や卒業生に支えられた定時制課程として、中学校時に不登校であった生徒や他の高等学校から転入学してきた生徒等に対し、少人数できめ細かな対応を行うなど学び直しのできる教育の場として成果を上げてきたと認識しております。今後は、これらの教育実践を本校定時制課程に生かしていくよう努めるとともに、一層充実した教育活動の展開に取り組んでまいります。
 高等学校の定時制・通信制課程は、勤労青少年に対する教育の機会均等を保障するため設けられてきた制度であります。しかし、現在では、全日制課程からの転入学・編入学生徒や過去に高校教育を受けることができなかった方、特別な支援を必要とする生徒など、多様な入学動機や学習歴を持った生徒がふえてきており、こうした個々の学習ニーズに対する、きめ細かで、より適切な指導の充実が課題となっております。
 そのため各学校では、学校外における学習等の単位認定や柔軟な教育課程の編成を行うなど、特色ある教育活動を推進するとともに、卒業後も社会で生きていく力を身につけられるような取り組みを行っているところです。
 また、定時制・通信制教育のさらなる充実のため、本年4月に青陵高等学校と陵雲高等学校の統合校として、和歌山市にきのくに青雲高等学校を開校し、かつらぎ町の紀の川高等学校、田辺市の南紀高等学校とあわせて、3校を拠点とする教育体制を整えました。この3校については、定時制課程と通信制課程を持ち、夜間コースに加え昼間コースも開設しており、県内の定時制・通信制教育の核と位置づけております。
 県教育委員会といたしましては、この3つの学校を中心として、近隣の全日制高等学校に併設する定時制課程6校をサポートするとともに、多様なニーズにこたえられるような魅力ある学校づくりを推進してまいります。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 教育長から御答弁をいただきました。
 定時制・通信制教育は、ある意味、現代社会の矛盾の最前線で頑張っておられると思います。そこには、人を育てる、人格形成という教育の本質が問われている営みがあると思います。
 募集停止を発表された2校については、これから先どうしていくのかという中身は、これから相談していかなければならないことも多々あると思います。募集停止はするが、3年間は学校自体が存続ということですが、教員の配置の問題や生徒が留年した場合の対応など、子供の立場に立って、しっかりと学校現場とともに考えていっていただきたい。そして、県内の定時制・通信制教育の充実に一層力を入れていただきますよう、重ねて強く要望しておきたいと思います。
 それでは、最後の柱といたしまして、今議会に上程されました情報公開条例改正案について質問をさせていただきます。この質問については、一問一答方式で答弁をお願いしたいと思います。
 まず、この情報公開条例の改正を議論する前提として、和歌山県の情報公開の状況について認識を伺います。県は、その現状と到達点をどう考えておられるのでしょうか。
 発表された全国情報公開度調査、こういったものの結果などを見ると、和歌山県内の情報公開度はまだまだ低いわけですね。県として、県内市町村を引っ張っていく、牽引していく役割を果たしながら一層の情報公開を前向きに進めるべきであり、現状はそのまだまだ途上だと考えますが、現在の状況をどう考えておられますか、総務部長の答弁を求めます。
○副議長(浅井修一郎君) 総務部長米澤朋通君。
  〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) 本県の情報公開の状況につきましては、平成23年度の開示件数は1万2787件であり、平成14年度と比較して8倍に増加しております。
 また、他府県と比較した場合、一昨年の数値で人口1万人当たりの開示請求件数は97.9件でありまして、これは全国平均の3.2倍になっており、情報公開制度は県民の間に着実に定着してきたものと考えております。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 私のほうは、その情報公開度調査における和歌山県の位置、まだまだ中身の上で低いんじゃないかとも指摘をしたわけですが、情報公開は一定の軌道に乗ってきたという部長の答弁、評価だったというふうに思います。
 私は、その点でもまだまだこれからだと思うんですね。情報開示の数も、2006年の1万6000件をピークに、1万1000、1万、8000、1万、そして1万3000件と、実際はまだまだ伸び悩んでいると、全体の情報開示できる文書数から見ればまだまだ一部だというふうに思っています。もっともっとこの和歌山県のすぐれた情報公開条例の精神が生かされて、行政としての説明責任を発揮していくことが求められていると言わなければなりません。
 それゆえに、今回の改正案が積極的な改正の中身なのか、消極的な改正なのか、これが問われてくると思います。
 そこで、2つ目の質問、条例改正案の背景と目的についてお伺いをしたいと思います。
 今答弁されたような認識のもとで今回の改正案が提案されてるわけですが、閲覧手数料の導入など、今回のこの改正案はどういう背景と目的を持ったものなのでしょうか。そして、この改正によってその目的が本当に達成できるものなのでしょうか、総務部長の答弁を求めます。
○副議長(浅井修一郎君) 総務部長。
  〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) まず、本県の情報開示の請求の現状を見てみますと、知りたい情報がいかなる公文書に含まれているのかわからずに、結果的に迂遠な開示請求が行われておりますケースや、また、閲覧が無料であることを突いた、いわゆる不適正な請求が発生しております。
 今回の制度改正につきましては、こうした無駄に費やしている行政コストを低減させることを目的としておりまして、情報公開相談員を本庁各課室や振興局各部に置くなど、県民が必要とする情報を一層容易かつ迅速に得られるようにするものであります。
 また、条例改正案につきましては、一連の開示作業のうち、ごく一部に係るコストであります閲覧費用を有料化することにしておりますが、この背景には、閲覧が無料であることに起因する不適正な請求により、開示文書の特定や非開示情報の選別など、開示作業に職員が多大な時間を要している実態がございます。こうした職員の人件費等、情報公開の大半の業務に要するコストは、すべて税金で賄われておりますので、閲覧の有料化により不適正な開示請求を抑止できれば、県民負担の低減につながるものであると考えております。
 さらには、準備作業をしたにもかかわらず閲覧や写しの交付に来庁しない場合に、開示したものとして手続を終了させるみなし開示制度や、超大量請求の場合、事前に一定額を納めていただいた上で開示準備を進める予納制度を導入することとしておりますが、これらの措置は、不適正な開示請求を抑止する効果が期待されるものの、通常の開示請求には何ら影響を及ぼすものではございません。
 したがいまして、今回の改正につきましては、県民の利便性の向上を図るものの、知る権利を抑制したり損なうものではないと考えております。
 以上でございます。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 条例改正案の背景と目的について御答弁いただいたわけですが、今回の条例改正に向けての和歌山県情報公開制度懇話会、この議事録、私も見せていただきました。これを見てみますと、県当局のほうから、今もお話のあった不適切な開示請求、無料であるということを悪用したような開示請求への対応などを検討してほしい、こういう旨の問題提起が、まずやっぱり県のほうからされてると思うんですね。
 情報開示が進むための今おっしゃられた情報公開相談員、そういったものの配置などはどんどん工夫をして進めていくべきだという問題ですが、この閲覧手数料を無料から有料化するというのが、今回の改正案の中で県として一番の眼目であったし、社会的に今注目されている問題だというふうに思うんですね。
 この県当局からの提案に対して、この懇話会では、1回目、2回目の懇話会でも、委員の方々から、この閲覧手数料の導入については反対や慎重な意見が数多く実は出されております。例えば、閲覧手数料を徴収しているのが東京都と香川県しかない、そのような状況でなぜ徴収するのかという理由を県民にしっかり説明できなければならない、また、知る権利との関係から手数料を徴収することには抵抗がある、こういった意見が出されているわけですね。
 都道府県レベルでは、東京都と香川県だけ。静岡など以前徴収していたところが無料化になってきた流れの中で、2都県に減ってきたのが現状です。国の情報公開法でも、今、手数料を原則無料化とする法改正案が閣議決定されて国会に上程されています。こういう情報開示をもっと積極的に前に進めていこうという時代の流れ、方向性から見れば、この和歌山県がやろうとしていることは逆であり、後ろ向きなんですね。
 手数料有料化でその目的が達成できるのか。私にはそう思えません。次の質問で具体的にただしてみたいと思います。
 3つ目は、その不適正な開示請求対策についてということで質問をいたします。
 背景、目的の中で、本来の目的から外れた開示請求が見受けられるんだと、これが頭痛の種なんだという説明がありました。これは、当初県が「不適正な開示請求」と呼んでいたものです。開示請求したのに受け取りに来なかったり、膨大な量の閲覧を求めながら用意した資料にほとんど目を通さずに帰ったりするケース、こんなことを説明されていますが、これらは情報公開以外の目的で行われているものだと私も思います。いわゆるクレーマー的なものです。
 これに対しては、情報公開に限らず、自治体全体で対応するクレーマー対策であり、昨年度も民法の権利濫用に当たるといってこの開示を拒否していますが、そういう別途の対策をすればよい問題なんです。大体そんな不適正な請求は、年間の1万数千件ある請求のうちどれぐらいになるのか。県の資料によると、昨年度はそういう対応をしたのはたった1件なんですね。
 こうしたクレーマー対策は、手数料を導入すれば解決するという問題ではないと思います。そういう請求者は、手数料を求めたからといってやめませんし、逆に手数料の管理のために職員の仕事をふやすようなもんです。手数料を請求しても不適正な請求問題は解決しないんじゃないですか。それに第一、こうしたごく一部の不適正な問題を理由に、全体の適正な請求者にコスト負担をかけるのは、理由にならないのではないですか、いかがでしょうか。
 いわゆる不適正な開示請求対策についての総務部長の答弁を求めます。
○副議長(浅井修一郎君) 総務部長。
  〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) 本県ではごく一部でございますが、全振興局にわたる閲覧請求や過去数10年分の書類の閲覧請求など、県に害意があると判断せざるを得ないような不適正な開示請求に対しては、議員は昨年1件ということで御指摘ありましたけども、一般法理の権利濫用の禁止を当てはめて非開示決定することとしております。
 これは、もう明らかに害意があるという場合ですので、非開示決定をするというのは、やはり非開示決定ですから一定の慎重さが求められると思いますので、そういう意味で、もう明確に害意があるような場合は非開示決定ということで対応さしていただいておるんですが、そこに至らなくても、閲覧が無料であることによって、害意があるとまでは言えないけども不適正な請求というのはございますので、こういうものに対して、今回の条例案で対応しようとするものでございます。
 今回の改正につきましては、議員発言のいわゆるクレーマー対策を理由に全体の請求者にコスト負担を求めるというものではなくて、先ほどからお答えしておりますように、相対的には県民のコスト負担の低減と利便性の向上をあわせて図られる改正であると考えております。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 クレーマー対策という点に限れば、考えは一致いたしました。県は、そうしたごく一部のむちゃな請求も1つの理由にして、手数料導入というトーンでずっと会議を始めたわけですけれども、それは効果がないということになったんだと思うんです。ということで、閲覧無料を悪用した悪意を持った請求は、手数料導入ということの目的というか、抑止効果というふうなことを先ほどおっしゃいましたけども、直接の目的にならない、手段にならないとすれば、残るはやはりコスト問題というふうになってくると思うんですね。
 そこで最後に、知る権利の保障とコスト問題ということで知事に質問をさせていただきたいと思います。
 県が今回持ち出しているコスト問題というのは、これ、大変筋が悪いんですね。県民にもコスト意識を持ってもらうべきだとか、閲覧についても写しの交付と余り変わらないぐらいの手間とコストがかかっていると、このことを理由に閲覧手数料の導入をしようとされています。
 しかし、県としても相当なコストがかかってるんだから、やたらと請求しないでくれと、こういう姿勢にとられませんか。コスト問題を理由に閲覧手数料を求めるのは、知る権利の保障という点からは逆行ではないでしょうか。
 前回、2001年の条例改正のときに設置されました県の情報公開推進懇話会、こちらからも提言をいただいておりますが、これを改めて読ませていただきました。この提言には、受益者負担として手数料を徴収すべきであるという論があるというふうにしながらも、県民に与えられた権利行使にかかわるものであって、実施機関である県は県民に対しての説明責任があるということから、情報公開制度の実施に伴うコストは民主主義の必要なコストと考えるべきだ、現行条例を変更すべきではない、受益者負担論はなじまないという結論をつけたんだと理解しております。この結論を否定されるんでしょうか。
 また、もう1つ、いわゆるコストということを考えるんであれば、情報開示を求める側も、そしてまた準備し提供する行政側も、もっと利用しやすいシステムにすることが、手間をかけない、コストも時間もかけないということになります。そのために、開示ルールの見直しや検索、開示の技術的な改善も図るべきではないでしょうか。
 部長、さっきおっしゃったように、どこにどんな文書がどれだけの分量であるかと、こういう整理、分類をしっかりして請求者にきっちりと情報提供できることがまず必要です。それができないから、なかなか難しいやりとりがあるんだと思うんですね。
 交付の際も、紙ベースの公文書は紙でないと交付できない、今こういうルールになってますけども、CD-Rに焼けば、何10万円ものコピー代が要るような分量のものが1枚70円の手数料でおさまるわけです。デジタル技術の活用もして、開示また交付のための負担軽減こそやるべきだと思いますね。職員の御苦労や行政コストの問題は、軽減のための努力と工夫こそが求められる問題であっても、料金導入のための理由にするべきではないというふうに考えます。
 県の情報公開条例が掲げる知る権利を保障するため、よりスムーズな情報開示、負担軽減こそ進めていくべきではないでしょうか。知る権利とコスト問題について、知事の御所見を伺います。
○副議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 情報公開制度は、県民の知る権利を尊重し、県が保有する情報を広く公開することによりまして、県が県民に説明する責任を全うするという目的であると理解しております。
 一方、情報公開法あるいは情報公開条例があるからといって、個人情報保護の尊重を初め、さまざまな法益も同様に大事にしなければなりません。
 そういたしますと、私はどちらかというとそういうのは好きですが、何でも見てくれといって、どうぞ御自由にというふうにいたしますと、ある人が明らかにしたくないということも役所の資料の中にはたくさん入っておりますから、そういう問題も勝手に見てくれとは言えないわけであります。
 そうすると、マスキングとか何かいうんですけども、1つ1つの書類を見て、それでここは隠すと、ここは見せちゃいけないけども、残りの趣旨のところは別に構わんというようなことを一々判断して、それ自体が問われるんですけど、そういうことをやっていかないといけないわけであります。そうすると、実はこのマスキングとか1個1個のより分けとか、そういうことに大変な労力が要りまして、貴重な県庁の職員はそういうことをやらないといけないわけです。
 これが仮に、まあとりあえず知る権利だからといって、どばっと物すごく大きな情報量のあるものを請求されたといたします。そうすると、それにこたえるためには、物すごくたくさんの貴重な県庁の職員を使ってマスキングをして、それで資料を用意しないといけないわけであります。そういうことをすると、県庁の職員というのは県民の税金でもって基本的には養われているわけです。県民にとって貴重な資産なわけですね。そうすると、少しそこに問題が生じてはいないかというのがこの問題点なんです。
 そうすると、やっぱりたくさんの不合理な要求をするとコストもかかりますよというインセンティブをその請求者に課して、そして不合理な要求を抑え、正当な要求だけに限ってもらおうというふうに自発的に判断していただくというのが、私たちは一番望ましい姿じゃないかと、そういうふうに思った次第でございます。
 先ほど聞いておりましたら、クレーマー対策と言われました。だけど、これはクレーマー対策ではありません。なぜならば、だれがクレーマーでだれが正当な要求者だということを、果たして県庁の職員が今の目的を達成するためにかなりの権限を持って判断していいのかというようなことについて、我々は大いに慎重でなきゃいけないと思います。現に起こっている大量の請求は、実は請求してるほうの人からすれば大まじめで、それを争おうということのために情報を集めてるわけです。ただ、どこからどこまでというのが余りにも過大で、だれが見てもちょっと不合理なんじゃないですかというようなことを本当は言わないといけない、そういうことだと思います。
 したがって、こういう不合理を抑えるためには、松坂議員がひょっとしたら推奨したかもしれないようなクレーマー対策として我々に判断権を与えるか、あるいは自発的に料金がかかるぞというインセンティブをつけて判断をしていただくか、どちらかの選択が多分必要だろう。我々は、後者を選びました。なぜならば思想統制はしたくない、そういうことであります。
 一方、わからないから多くのものを要求しておくという方々もいらっしゃいます。それはそれで、あんまり合理的なことではないわけです。
 しからばどうしたらいいかというと、そこで我々が考えたのは、情報公開相談員というのをきちっとつくって、あなたが要求しようとしてるのはこういうことじゃないですかということを御納得いただいて、そしてその上で請求していただければ、相談のところは無料ですから、マスキングのところに不必要な人手をかける必要がない、そういうことになるわけであります。そういうことで、我々はあの制度を考えました。
 先ほど松坂議員が、もっと利用しやすい開示ルールをつくったらいいじゃないか、検索制度をつくったらいいじゃないか、まさにそのとおりでありまして、情報公開相談員を設けて便宜を図ろうというのもそういう趣旨でありますし、開示手続のワンストップ化も同時にやりたいと思ってます。それから、情報開示手続の簡略化、これは他条例との関係で、実はコピーをするときは全部情報公開請求にしなきゃいけないというような不合理があるので、そういう点はきちんとするというようなこともあわせて解決をしようとしてるわけです。
 したがって、我々は、松坂議員がおっしゃったような県民の知る権利を侵したり逆行する、そういうような目的で県の条例を改正するという提案をしてるわけでは全くありません。むしろそれを助けようと、それをというか、知る権利を正当に行使していただくことを助けようというがために、以上のような提案をしているわけであります。
 なお、先ほど電子媒体の話がありましたが、電子媒体でも同じことであります。すなわち、1つ1つの書類のマスキングというのは、電子的にやるか、あるいは書面でやるか、書面でやったものを今度はCD-Rに焼くか、いろいろな形がありますが、どうしても必要になってまいります。だから、電子的にできればただじゃないかというような話は、全く本質の違う議論であります。
 さらに、情報公開度調査で和歌山県がいまいちだと言われましたけれども、だれがやった調査であるか、どのような基準でそういうものを評価してるかということについて、やっぱり議論をしてみる必要があると思います。したがって、私としては、成績が悪いと言われてることについて、全部について文句があるわけではありませんが、誤った基準について誤った評価をされるなどとんでもないと言わざるを得ません。
 一例を挙げます。私は、知事になってから、自分の行動について、例えばだれと食事をしたとか、そういうことも含めて、すべての交際を全部公表しております。ただし、前知事は、知事の交際費を公表しておりました。交際費を公表するということはどういうことかというと、例えば県で公費を使ってだれかに飲食の提供をするとき、交際費ではありません。これは、食糧費という名目で支出されます。そういうことを隠して、そして交際費を公表するというほうが情報公開の制度に資するか、あるいはすべての行動について全部明らかにするほうが資するか、どちらがいいかというと、この調査によると、私のやった改善は全く点が悪くなる結果になるのであります。
 このように、ちゃんと中身を議論していただく良識を持っていただく必要があると思いますが、賢明なる和歌山県議会はきっと理解していただけると、そのように信じております。
○副議長(浅井修一郎君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事は、情報公開度調査が随分気に入らないようで、そこら辺を随分長く御答弁をいただいたんですが、私は、このコスト問題、非常にもう少しやりとりしなきゃいけないなと思ったんです。というのは、知事の答弁聞いてますと、どうにもこの情報公開というのが、本来の県の業務に支障があるから何とかしなきゃいけないんだというようなトーンであったりとか、──適正であるかないかと考えるのは難しいんだというのは、もちろん知事のおっしゃるとおりです。
 和歌山の情報公開条例は、何人たりとも、その目的がいかなるものであっても公開するんだというのを原則にしている非常に積極的な条例だというふうに思っております。ですから、そういう制限をしようとする改正ではなくて、もっともっと情報公開に資する条例にするべきだと私は思っているわけで、知事は、お金を出すか出さないかでその請求が正当かどうかというふうに受け取れるような答弁だったと僕は思うんですよ。正当であると思うんだったらお金出して請求すればいいじゃないかということにつながるようなお話だったと思うので、僕はそれは違うというふうに思うんです。
 それで、一番、県の行政が情報開示するためのマスキングとか、そういう作業が大変で、その分のコストだと言うんですけども、それは、この県の無料の行政サービスを見直す一環なのかというふうな疑問も、実は県の情報公開制度懇話会の委員さんの意見の中でも出されました。まさに、行政の責務とか行政のサービスの基本に実はかかわる問題だと思うんです。
 受益者負担と言うなら、例えば各種の相談窓口ですね。先ほどあった情報の相談でもそうですけども、福祉や医療、また就職相談、企業への経営相談や県が出かけていくアドバイスもあるでしょう。利用する人としない人があるから不公平だ、お金を取ろうということになりますか。ならないと思うんです。この行政サービスが行政としての仕事そのものだからこそ、無料でしているわけです。また、情報公開は、県としての説明責任を果たすという、こういう責務として開示請求にこたえてるわけですから、なおさらだというふうに思うんですね。だから、そういう役務の対価を求めるのとは私は違うと思うんですが、いかがでしょうか。
 それから、もう1つ、県の懇話会の議事録を追ってみますと、閲覧手数料導入にはずっと否定的、第2回目、第3回目ともに否定的、慎重意見が随分出されていたにもかかわらず、やっぱり県の側から、こんなに手間と暇とコストがかかってるんですと、開示請求の中には企業、法人による商業目的だとか営利目的が多いので、手数料を取っても県民の理解が得られますとか、経済的弱者の減免で知る権利の問題もクリアできますというような、こういう、かなり県がプッシュをして、無理して懇話会の議論を押し切ったという印象を私は持っています。それほど多額でないならばと、手数料が高くないならばと納得をいただいたという印象なんですね。
 開示請求自体を請求者の受益、利益だというふうにとらえるのか、それとも行政の透明性を保つためにしっかり見てもらおうと、それが県の利益、県民全体の利益になっていく、そういうふうにとらえるのか、ここの考え方の私は違いだと思うんですね。
 県に手続をして審査をしてもらうという、例えばそういう手数料ですとか、免許申請をして交付してもらう手数料を払うとか、そういう一定の必要な役務に対する利益、受益に対する手数料とか利用料とかというものと、私は根本的に違うのではないかと思いますが、いかがでしょうか、知事の答弁を求めます。
○副議長(浅井修一郎君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 松坂議員の今のお話で、ちょっと誤解が多分あると思いますので、訂正をしておきます。
 私は、情報公開の仕事が県の本来の仕事ではないと一言も言っておりません。まず、これも大事な仕事であって、情報公開相談員というのは、担当の部局の人が、県の職員がきちっとやるべき仕事だと、そういうふうに思ってる次第でございます。
 それから、正当な要求ならお金を出せばよいと、そういうふうに思ってないかというふうに言われましたけれども、そんなこと言うた覚えはありません。というのは、私が申しましたのは、一定の料金を取ることによって、結果として不合理な請求を抑制するということができれば、それにこしたことはないというふうな効果をねらいましたということを申し上げたんです。
 というのは、初めに要求を出された方は、クレーマーでなければ、それが正当な要求と自分で思ってお出しになると思います。しかし、それに対してコストもかかるよということになれば、じゃ、どうしようかとお考えになるでしょう。そのときに、情報公開相談員などの者どもがちゃんとオリエンテーションしてアドバイスすれば、ああ、そうかといって納得されれば、それで結果として不合理な請求が抑制されるんですね。こういう料金がなければ、いや、それでも同じだから出しちゃおうということを言われる可能性もあるということの効果だけなんです。
 そういうことでございますが、あえて申し上げますならば、もうどういうことを言うても私は出すんだというときはお金をお出しになるでしょうけど、大抵の方は、御納得いただければ、費用が少なくなって目的を達成するような形の合理的な要求にうまくされるだろうと、こういうことを期待してるわけでございます。
 それから、利用する人、利用しない人に不公平が生ずるという、私も読ましていただきましたけども、報告書の一文を引いて言われましたが、私はその表現について別にサポートしておりません。情報公開を利用する人と、それから情報公開を利用しない人を比べるのは変だと私も思っております。比べる必要はなくて、利用する人の権利をきちんと保障すればよい。
 ただ、その保障するやり方が、料金を取っても、それが合理的な請求をしていただけるようなほうへうまく導けるだろうということのテクニックとして、そういうことをやってるわけで、一方では、情報公開について、むしろ積極的に進めるような手だてを大いに加えて、そして情報公開の制度をより健全な、かつ堅固なものにするというのが私たちの考えでございます。
○副議長(浅井修一郎君) この際、申し上げます。
 所定の時間まで残りわずかであります。質問及び答弁は簡潔にお願いいたします。
 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事から答弁をいただきました。料金を取ることで、そういう無料だからという数の多い申請を抑制できればということをまたおっしゃいましたけども、それを抑制する一方で、そのことが県民の普通の請求を抑制するということに、手数料を取ることがなりはしないかという議論があるわけです。
 いずれにしても、主張はいろいろ違いますけれども、今回のこの条例提案が、知る権利と、それから行政の説明責任、これについてどうなのか、そしてまた今回の利用料を徴収するということが県民の理解や納得を得られるのかということを議会内外でしっかりと議論していきたいということを申し上げて、質問を終わります。
○副議長(浅井修一郎君) 以上で、松坂英樹君の質問は終了いたしました。(拍手)

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