平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)


平成24年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号

(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問及び質疑を行いたいというふうに思います。
 本日は、4項目について、3つについては一般質問、最後の1項目は質疑というふうな形で行いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず最初に、マスコミ等でも大きく取り上げられておりますいじめの問題についてお聞きをしたいというふうに思います。
 昨年の10月、いじめが原因で自殺をしたとされる大津市立中学校の男子生徒の事件が連日大きく報道されてきました。自死した男子生徒の保護者が、学校や教育委員会に再三にわたり原因究明を求めたにもかかわらず、事実が解明されないため、ことし2月、市といじめをしたとされる同級生3人らに7720万円の損害賠償を求め、大津地裁に提訴をいたしました。その中で、問題点が次々と明らかになってきたというふうな経過であります。
 学校側は、生徒に2回にわたるアンケートを実施していたにもかかわらず、公表しなかったことや、その記述の中にいじめを示唆するものがあったにもかかわらず、市教委が因果関係を認めなかったこと、その後の市教委や学校側の対応が問題であったことが明らかになってきました。
 7月11日には、警察が中学校と大津市役所を家宅捜索するという前代未聞の捜査となりました。また同月には、裁判の中で、加害者とされる同級生3人が刑事告訴され、現在係争中であります。
 大切な息子さんを亡くされ、刑事告訴までされた御両親の無念さは、何をもってもあがなうことはできないと思います。いじめは、どんな形であれ、暴力であり人権侵害であります。被害者側に何ら責任がないことは言うに及ばず、加害者については強い指導や処分が必要なことは言うまでもありません。ましてや、いじめに名をかりた暴力や恐喝や脅迫が人の命を奪ったという事実を、私たち大人はしっかりと受けとめなければなりません。
 しかし、問題は中学校という教育現場で行われたことです。本来、学校とは、人間関係をはぐくみ、仲間をつくる営みがなされるべき場所であります。しかし、学校というある意味保護された空間の中で行われたことにより、複雑な要素を含むものとなっています。被害者も加害者も、指導すべき児童生徒であります。
 インターネットで検索をすると、いじめをしたとされる関係生徒の名前も顔も住所も、保護者の経歴も、親戚のことまで書かれています。個人情報とやかましい日本の中で、すべてがさらけ出され、あることないことが書き込まれ、誹謗中傷と非難の声であふれています。ひどい書き込みを読んでいると、正義を振りかざした暴力に思えて、何ともやりきれない気持ちになってくるのです。
 こうなる前に、もっと早く、もっと初期の段階で手が打てなかったのか、生徒同士の人間関係をもっと知るべきではなかったのか、悔やんでも悔やみ切れない思いであります。
 昨日の新聞にも、川西市の高校生が自死したことを受け、学校の対応に両親は不信を募らせ、「学校は信用できない。真実を知りたい」と話されているようであります。そういった意味では、学校や教育委員会の責任は大変重いと言わざるを得ません。
 また、学校の問題を学校だけに任せてきた私たち大人の責任が問われていると思います。
 そこで、教育長にお聞きします。
 まず、教育委員会として大津市の事件など最近のいじめ問題についてどのような認識を持たれているのか、また和歌山県におけるいじめの現状はどうなっているのか、そして県の取り組みについて、お伺いをしたいと思います。
○議長(山下直也君) ただいまの藤本眞利子君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) まず、いじめに対する認識についてお答えしたいと思います。
 いじめが原因で中学生がみずからとうとい命を絶つということは、理由のいかんを問わず、あってはならないことであり、極めて深刻なことだと受けとめております。
 いじめは、人間の尊厳、また人権にかかわる重大な問題であり、決して許されないことでございます。また、どの子供にも、どの学校でも起こり得るものであることから、学校教育に携わるすべての関係者1人1人が常にこの問題を厳しく受けとめ、いち早くいじめの兆候を把握して、迅速に、かつ適切に対応する必要があります。
 いじめの問題解決に向けては、学校、教育委員会と家庭、地域が連携して、情報を共有しながら全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えております。
 次に、本県のいじめの現状でございますが、公立学校における平成23年度のいじめの認知件数は97件であり、前年度と比べて113件の減少となりました。いじめの内容は、冷やかしやからかい、悪口、仲間外れなどが主なもので、近年ではパソコンや携帯電話等での誹謗中傷も見られます。
 今回、いじめの認知件数が減少したのは、各学校や保護者や関係機関との連携を密にし、よりきめ細かな指導を行ったことが未然防止につながったものと考えております。今後とも、いじめを見過ごしているケースは本当にないのか、常に危機意識を持って児童生徒の実態把握に努めるよう指導してまいります。
 次に、いじめの問題解決に向けた本県の取り組みでございます。
 各学校において、日ごろから子供たちの小さなサインを見逃すことなく、早期発見、早期対応に努めることが何よりも大切であることから、市町村教育委員会とも連携をしながら、これまでいじめに関する児童生徒へのアンケート調査を実施してきたところでございますけども、今回の事件を受け、さらにその徹底を図っているところでございます。
 また、児童生徒の心のケアを図るために、スクールカウンセラー等を小学校30校、中学校93校、高等学校43校の合計166校に配置するとともに、関係機関、家庭、地域と連携して問題解決を図るために、スクールソーシャルワーカーを10市町に配置しています。
 さらに、インターネットでの誹謗中傷などのネット上のいじめを見逃さないよう、ネットパトロールを実施しているところです。
 県教育委員会といたしましては、引き続きいじめの早期発見、早期対応を徹底するとともに、いじめを許さない学校づくりに向けて努力してまいります。
○議長(山下直也君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 県での取り組みの御答弁をいただきました。
 いじめ件数が97件、前年度と比べて113件減少となっているとのことであるんですが、この数、ほんまに信用してええのかなというのが正直な実感です。
 いじめがあっても気づかないで見過ごす──今、教育長もおっしゃっていただきましたけれども、見過ごしてしまうケースが多いんじゃないかなというふうに思います。そういった意味では、早期発見、早期対応が大切であるという認識は、本当にそのとおりだと思います。
 しかし、今の取り組みで早期発見できるんか、早期対応できるのか、甚だ私としては疑問だなというふうに思うわけです。
 和歌山市内では、中学校で35人学級が実施をされています。これは大変歓迎すべきことなんですが、教員がそれに伴って十分に増員されていないということもあって、学校によっては、2学級に1人配置されていた副担任が3学級に1人というふうに減っている場合があるわけです。そのために、学校の中で何か問題が起こったときに、フリーに動ける教師が大変少なくなって、対応がおくれるという事態が起こっているわけですね。
 そういった中で、今保健室が果たす役割が大変大きくて、不登校児が保健室登校という話はよくありますし、けがとか体の不調を訴える生徒の中で、養護教員がいじめの芽を見つけるということがよくあるわけです。また、学級の中でなじめない生徒が養護教員に相談して、問題解決の糸口を見つけるということもよくあります。
 このように、学校に、教育長はスクールカウンセラーを配置していただいてると言うんですが、学校に週2回程度の勤務をされているスクールカウンセラーよりも、生徒にとっては、身近なところでいつも常に相談できたりとか、いつも逃げ込めるような場所が私は必要だというふうに思うんです。
 また、いじめや問題が起こったときに、学校と教員、保護者の間に入り調整できる第三者機関みたいなんが必要だなと考えます。教育は、保護者と生徒と教師と学校などの信頼関係が大変重要だということは、もうそんな言わなくてもおわかりのことだと思うんですが、その信頼関係を構築されない事態とか、感情的な行き違いで問題解決が困難になった場合なども含めて、調整を任せることのできる機関が必要だなというふうに感じます。
 文部科学省がいじめ対策チームを新設するというふうな新聞発表もありましたが、早期発見とか早期対応のためにも、和歌山県として今後どのような対策を講じていかれるのか、もう1点、お伺いしたいというふうに思います。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 県としての今後の新しい施策についてのお尋ねでございますけども、今後、県教育委員会としましては、かけがえのない1人1人の子供たちの命の重さをしっかりと受けとめて、1人の犠牲者も出さないという強い意思を持って取り組んでまいります。
 このため、いじめに関する児童生徒へのアンケート調査等で明らかになったいじめについては、県と市町村、それぞれの教育委員会が主体的に学校へのヒアリングを実施し、必要な指導助言など、いじめに対する迅速かつ適切な対応ができるよう万全の支援体制をとってまいります。
 さらに、いじめに対する初期対応や具体的な対処方法等を示した教員向け「いじめ対応マニュアル」を作成していくとともに、子供や保護者等がいじめに関して相談をかけやすい体制づくりや、いじめ防止に向けての啓発活動についても検討してまいります。
 議員御指摘のように、国においてもいじめ対策関連事業が計画されていることから、こうした動きを踏まえて、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員を検討するとともに、外部人材の活用により、子供をいじめから守る支援体制づくりを進めてまいります。
 また、いじめ防止の観点から、教員定数につきましても、国の動向を注視しながら、その確保に努めてまいります。
○議長(山下直也君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 ありがとうございます。
 教育は人を育てる営みでありますので、その根底には、1人1人の人権をやはり尊重する人権教育というのが大変重要だというふうに思います。いじめを許さない社会、そういう人を育てるためにも、人権教育の推進もあわせて要望したいというふうに思います。
 次に、里親制度について質問を行います。
 虐待や保護能力の欠如により保護遺棄され、さまざまな困難を抱えている子供たちの養育についてお伺いします。
 虐待件数が過去最高を記録したとのニュースが流れる中、日本における保護を必要とする子供たちの人数が増加の一途をたどっています。
 その子供たちの処遇がどのようになっているのか、また、その子供の命を守ることの重要さとともに、保護された子供たちにどのような養育が保障されなければならないのか、今回はその点についてお伺いしたいというふうに思います。
 社会的養護という言葉があります。親が育てられない子を、親にかわって社会が責任を持って育てる仕組みのことであります。具体的に言うと、里親制度や児童福祉施設による養育のことであります。
 保護されなければならない子供たちの養育について、厚生労働省は、児童養護施設が3分の1、里親やファミリーホームでの養育を3分の1、グループホームでの養育を3分の1にしていくという方針を打ち出しました。施設中心の制度から、子供の権利を尊重することを基盤とした家庭的環境での養育に変わろうとしています。これは、戦後、施設養護が90%を占めてきた日本の社会的養護の流れを大きく変えていくものとして歓迎するものです。
 しかし、大変残念ながら、なかなか進んでいないのが現状です。
 欧米主要国の里親委託率は、カナダでは63.6%、イギリスでは71.7%、アメリカでは77%、オーストラリアでは93.5%となっており、日本における里親委託率12%という数字は、先進諸国の中においても特異なものとなっています。
 そのような中で、福岡市と大分県が里親の割合を大きく伸ばしています。福岡市では6.9%から24.8%に、大分県では7.4%から22.7%に伸ばしています。福岡市と大分県の取り組みには、学ぶべきものがあります。
 福岡市では、福岡市児童相談所と子どもNPOセンター福岡の協働事業としてファミリーシップふくおかを立ち上げ、里親制度についての市民の意識を変えていくという取り組みを進められました。子供にかかわる各種団体に呼びかけ、実行委員会方式による講演会を開催、その中で子供の現状を訴える、里親体験等々を進める中で、市民が私たちにできることを登録していくなど、市民の力で里親をふやす取り組みが進められてきました。
 また、大分県でも、子供の最善の利益を確保するといった視点で、児童相談所と施設による協働により、一般県民に向け制度説明会を開催する、関係団体などへも積極的に働きかけ予算化を進める、県民に里親体験をしていただく等々、さまざまな努力により里親委託率を伸ばしています。
 国連が、2009年に子どもの代替養育に関するガイドラインを採択しました。その中では、子どもの権利条約の理念に基づき、子供の最善の利益を確保することが優先され、代替養育についてのガイドラインが明示されました。
 福岡市に、子どもの村福岡という施設があります。5軒のホームで構成されており、それぞれのホームにマザーという養母と養母を支えるアシスタントが常駐し、子供たちを普通の家庭のように養育していく営みが行われていました。
 1軒の御家庭では、生後6カ月の乳児と3歳の幼児、小学校2年生の子供が、マザーやアシスタントの女性に見守られながら、伸び伸びと暮らしていました。
 子どもの村福岡というのは、世界的なNGO、SOS子どもの村が日本で初めて設立した子どもの村です。SOS子どもの村は世界133カ国に設立されており、子供の養育、教育、医療、緊急支援など、幅広い分野で活動しています。すべての子供に愛ある家庭をという目的のもと、特に実の親から保護や教育を受けられない子供たちを、愛情あふれる家庭的環境で養育する活動を続けています。
 現在、東日本大震災で親を亡くした子供たちのために、日本で2つ目の子どもの村が設立に向け準備されているとお聞きしました。
 また、大分では、養父母と6人の子供たちが生活しているファミリーホームを訪問させていただき、さまざまな事情を持っている子供たちを、その子の背景も含め、丸ごと受け入れている養父母の姿に感銘を受けてまいりました。
 このように、社会的養護については、各都道府県によって取り組みの格差があるように思います。
 そこで、福祉保健部長に、和歌山県における里親の現状と登録里親数、里親委託率を増加させるための取り組みはどうなっているのか、また、今後の県の方向性についてお聞きしたいと思います。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長山本明史君。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 和歌山県における里親の現状と登録里親数、里親委託率を増加させるための取り組みについてお答えいたします。
 本県では、平成21年4月に和歌山県子ども虐待防止基本計画を策定し、里親制度の推進に努めております。
 登録里親数につきましては、平成21年度末に52世帯に対しまして、平成23年度末では77世帯となっております。2年間で25世帯増加してございます。また、社会的養護が行われている児童のうち、里親家族で養育されている児童の割合を示す里親委託率につきましては、平成21年度末の8.7%に対し、平成23年度末では9.7%となっており、2年間で1%増加いたしました。
 次に、里親制度の充実に向けて、平成24年度から里親支援機関を設置し、里親委託推進員等を配置することにより、従来にも増して、より細やかな対応を行っているところです。
 特に、登録里親数を増加させるため、広く県民の皆様を対象とした児童養護施設長などの有識者による講演会や、里親制度に関心のある方々を対象とした里親経験者による説明会を開催し、里親制度の普及啓発に取り組んでおります。また、里親委託率を増加させるため、里親と要保護児童のマッチングを初め、里親に対する養育技術の向上のための研修の実施であったり、孤立化防止や負担軽減のための支援に取り組んでおります。
 次に、今後の県の方向性についてお答えいたします。
 議員御指摘のように、日本は欧米主要国と比較として里親委託率が低く、こうした現状を踏まえ、昨年7月に厚生労働省が示した「社会的養護の課題と将来像」では、里親やファミリーホームを増加させ、児童養護施設の小規模化と施設機能の地域分散化を図ることとされております。
 本県におきましても、県民の皆様に御理解をいただく中で登録里親数と里親委託率を増加させることが重要であると考えており、全国の自治体における成功事例も参考にしながら、家庭的な環境に近い里親による養育を一層推進してまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁をいただきました。
 虐待や他の理由から保護遺棄された子供たちの養育についてお伺いしたわけですが、県としては今後県民の皆さんの御理解をいただくということが、登録里親数とか里親委託率を増加させること、重要であるというふうにお答えいただいたわけです。御理解いただくという中でね。
 しかし、里親登録数も77件と本当に少ない現状でありますし、委託率もまだ9.7というふうなことで、2けたに届いていないというふうなことです。
 虐待の問題が大きくこういうふうにクローズアップされている中で、県民の関心もかなり高くなってきていますけど、保護された子供たちがどこでどのように暮らしているのかというのを知らない方が大勢おられるというふうに思います。和歌山県に児童養護施設がどこにあるかも知らないという方が、ほとんどだというふうに思います。
 先ごろ、「隣る人」という映画を鑑賞しました、「隣る人」という映画です。これは、ある児童養護施設で暮らす子供たちの8年間をずっと追ったドキュメントでありまして、子供たちの日常をただ淡々と描いているだけなんですが、その子供の表情とか、それから言葉遣いからも、その子の持つ寂しさとか切なさが伝わってくるような、そんな内容の映画でありました。
 どの子にも、私は幸せになる権利が保障されなければならないというふうに思います。大人には、その責任があるというふうに思います。社会的養護について関係者だけが知っているというのでは、里親への理解も、それから里親委託もなかなか進まないというふうに思いますので、啓発も含めて、先進県の取り組みを参考にして、さらに推進していただくように強く要望したいというふうに思います。
 次、雇用問題について、特に若年者、女性の雇用についてお聞きします。
 7月5日付で、厚生労働省は生活支援戦略中間まとめというのを発表しました。その中では、抜粋でありますが、基本目標としては、「生活支援戦略は、生活困窮者が経済的困窮と社会的孤立から脱却するとともに、親から子への貧困の連鎖を防止することを促進する」、「国民一人ひとりが『参加と自立』を基本としつつ、社会的に包摂される社会の実現を目指すとともに、各人の多様な能力開発とその向上を図り、活力ある社会経済を構築する」、「生活保護制度については、必要な人には支援するという基本的な考えを維持しつつ、給付の適正化を推進する等により、国民の信頼に応えた制度の確立を目指す」と、こういうふうに示されているわけです。
 生活支援戦略と言いつつ、「必要な人には支援する」といったこの「には」という文言が、どうもねらいは生活保護制度の見直しではないかなと勘ぐりたくなってくるんですが、最近は生活保護受給をめぐって、芸能人の親族に対する扶養が問題とされました。しかし、この問題がクローズアップされたことが原因で、本来保護が必要な方に対して給付されないというような事態にならないように、行政側の適切な対応を望みたいというふうに思います。
 生活支援戦略の抜粋とはいえ、基本目標とされている項目は今さら感が強く、遅過ぎる対策と言わざるを得ません。私は、ここまで国民の状態が困窮してしまった原因は、政府の雇用政策にあったと考えます。
 1996年の橋本内閣により金融ビッグバンが起こり、銀行を中心とした護送船団方式の金融システムにメスが入りました。多くの規制緩和を行った結果、銀行、証券会社、保険会社など、そういうのは垣根が取り払われました。
 その後、小泉構造改革では雇用政策の規制緩和が行われ、派遣労働の自由化が行われました。2004年の小泉・竹中時代には対象業種が原則自由化され、製造業などにも派遣労働が行われるようになりました。これにより、日本型終身雇用の時代は幕を引くことになります。
 そして、右肩上がりの高度成長時代に培われた、学校を卒業して、会社に就職したら結婚して、それなりに安定した生活を送れるといった生活設計は描けなくなりました。近ごろでは、リーマンショックによる不況で大量の派遣切りが行われたことは、まだ記憶に新しいところであります。
 平成19年度、総務省の15歳から34歳までの若年労働者の就業構造基本調査によれば、全国では正規雇用者が65.5%、女性に限ると53.2%となっています。和歌山県においても同様の傾向にあり、正規雇用者が65.7%で、女性に限ると52.6%となっており、平成14年度の70.6、女性が56.3%と比べても大変厳しいものになっています。
 若年労働者の3割が正社員以外であるという背景には、企業、事業所の都合が大きく作用していると思います。企業、事業所の派遣労働者を就業させる大きな理由として、一時的な季節的な業務量の変動に対するためであったりとか、欠員補充の必要な人員を確保するためとしています。派遣労働の業種が自由化されたために、あらゆる産業において派遣労働者が業務量の変動の調整弁としての役割を果たしている実態が浮かび上がってきました。そして、この若年労働者がその一翼を担わされています。
 一方、若年派遣労働者の意識はどうでしょう。将来の働き方としての希望は、常用雇用型の派遣社員として今の派遣先で働き続けたい、派遣社員ではなく正社員として今の派遣先の事業所で働き続けたいという割合が、男女とも7割を超えています。派遣であっても、同じ職場で安定して働きたいという希望が圧倒的に多いわけです。働き続けたいけれど、雇用者の都合でばっさりと切られてしまう若年派遣労働者の姿が浮かび上がってきているわけです。
 パート労働にしても、雇用者の就業させる理由としても、人件費が割安であったりとか、仕事内容が簡単だとか、忙しい時間帯に対処するなどの理由が挙げられています。平成23年6月の厚生労働省調べでは、若年者でパート労働者の割合は──これはパート労働者ですが、男性が13.8%、女性が45.9%となっており、ここにも低賃金で不安定な仕事に従事している姿があります。
 このように、若年層のおよそ3人に1人、女性に限ると2人に1人が派遣やパート等の不安定な働き方をしていると言えます。しかも、パートで働いている男性の25歳から29歳の95%、30歳から34歳で58%、35歳から39歳で54%、40歳から44歳でも55%の方々が配偶者がいないというふうにおっしゃっているわけです。結婚していないということです。女性にしても、25歳から29歳で51.7%、30歳から34歳でも41%が結婚をしていないんです。
 このように、若い人たちが仕事をして、税金を納めて、家庭を持つといった当たり前のことのできない社会に今の日本が置かれている。こんなことでは、日本の将来はないんじゃないかというふうに思います。
 今、少子化と騒いでいますが、その原因が、規制緩和を推し進め、若年層の働く場を奪ってきた政治や社会の問題が大きいと言わざるを得ません。行政も政治も産業界も、雇用問題にこそ真剣に取り組んでいかなければならないと考えます。
 そこで、まず知事に、このような和歌山県における若年、女性の雇用実態について、どのような認識をお持ちなのかお聞きしたいと思います。
 次に、商工観光労働部長に、特に若年、女性、新規高卒者に対してどのような取り組みを行ってきたのか。また、2008年にも、私、雇用問題について同じような質問をさせていただいておりますので、その後、成果は出ているのか、今後の県の取り組みについてお伺いしたいと思います。
○議長(山下直也君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 全国と同様、本県でも若者や女性の正規雇用の割合が低下するなど雇用形態が多様化する中で、若者や女性の雇用環境は厳しいものと認識しております。もう少し別の言葉で申し上げますと、雇用形態を多様化させましたが、それによって日本の産業の競争力と、それから雇用の総数は下げどまりをしたというか、ある程度食いとめられたという面はあると思います。
 しかし一方、それは非正規雇用がふえるという現象になっていて、それで特に本県でも若者や女性の正規雇用の割合が低下するというような現象が起こっていて、そういう意味で、若者や女性の雇用環境はなかなか大変というふうに認識しているということになります。
 県民の雇用の確保は県政の重要課題であり、和歌山県長期総合計画に雇用の推進を位置づけ、若年者雇用を推進するための施策などに取り組んできたところです。
 ただ、雇え雇えと言ってもなかなか大変なので、したがって、ずっと新産業の創出支援や、あるいは企業誘致などの雇用創出の施策をやってまいりましたけれども、これはさらにこの雇用、あるいは労働契約自体に手を入れようということで、新たに工業高校における物づくり人材の育成とか、あるいは、これは大卒者中心ですけども、県外進学者に対するUターン就職促進施策の拡充など、若年者等の雇用確保のためのさまざまな施策に全力で取り組んでいるところでございます。
 今後とも、若者や女性──特に若者や女性ですね、全体なんですけれども、特に若者や女性の雇用を確保し、働く人のニーズに合った雇用環境が実現するように、これらの政策を推進してまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 若年、女性、新規高卒者の雇用問題の2点についてお答えいたします。
 初めに、県の取り組みとその成果についてですが、まず若年者に対しては、若年者就業支援センター「ジョブカフェわかやま」でのカウンセリングやセミナーなどを中心に就業支援の取り組みを進めるとともに、Uターンフェアの開催など、県外へ進学した大学生等のUターン就職を推進してきたところです。
 女性に対しましては、ワークライフバランス等をテーマにしたセミナーを開催するほか、就職困難な母子家庭の母親に対し、早期就職を目指した職業訓練機会を提供してきました。
 また、新規高卒者については、労働局、教育委員会と連携して、毎年の求人時期に合わせて県内経済界に対して求人拡大を要請し、その上で約3000の県内企業に対して要請を行ったところです。
 さらに、本年度は、今までの施策に加え、職員の直接訪問などにより74大学に県内企業情報を提供する体制を整備するとともに、本県出身の県外の大学生等で来春卒業予定の約2400名に対し、県内企業情報等を個別に届けることとしたところです。
 また、県内5つの工業高校において、ハローワーク等とも連携し、県内90企業以上の協力を得て、熟練技能者の技術指導や生徒、教員の企業現場体験などにより、新たな和歌山版の物づくり人材の育成に取り組んでいるところであり、結果として県内企業への就職促進を期待しております。
 これまでの成果としましては、ジョブカフェわかやま利用者の就職者数は、平成19年度286名に対し、平成23年度は660名と増加しており、最近5カ年で計2000名余りに上り、年々成果が上がってきております。加えて、本県が実施している大学生等の就職意識調査結果では、県内就職を希望する学生は近年ふえており、Uターン就職に係る施策の成果と考えております。
 次に、今後の取り組みについてですが、今申し上げましたそれぞれの施策を、企業の方々などからの意見も踏まえ、効果の検証や手法の見直しを適宜行い、工夫を凝らして、より効果的に実施することで、若者などの雇用促進を図ってまいります。
○議長(山下直也君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁をいただきました。
 県の当局、担当部局としても、知事も、雇用対策に御努力いただいているということはよくわかります。しかし、その努力がなかなか数字にやっぱりあらわれてきていないという実態が依然としてあるわけで、この辺のところをもう少し分析していただいて、対策を講じていただきたいというふうに思います。
 今後、非正規雇用の問題にどのように取り組んでいくのかというのが、大きな課題であるというふうに考えます。和歌山市内にある企業では、1800人ぐらいの従業員さんが働いておられるところがあるんですが、そこでの正社員は600人、関連企業から200人いらっしゃってて、残りの1000人というのが準社員とか派遣とかパートというふうなことで占められている実態であります。正社員が半分にも満たないというふうな実態です。
 事業者任せとか企業任せでは、この事態が改善できるとはどうしても私は思えないんです。非正規の処遇を改善しているというふうな企業に対して、県としたら応援したり支援を行うというふうな動機づけみたいなんが必要だと考えるんですが、今後さらに取り組んでいただけるように要望します。
 また、工業高校と地元企業の関係強化を進めているとのことですので、それぞれの情報を蓄積していただいて、求める人材と求めている人材とのマッチングがよりスムーズにできるように要望したいというふうに思います。
 最後に、たくさん上程されております条例案について、質疑を行いたいと思います。
 今議会において、義務づけ、枠づけの見直しと条例制定権の拡大に伴って、条例113号から135号まで23本の条例案件が上程されています。これは、国が進めてきた地方分権改革推進計画、地域主権戦略大綱を踏まえたものです。これまでも、第1次一括法、第2次一括法が成立して、これを受け、来年3月までには自治体は法改正に伴う条例制定を行わなければならないというもので、国が一律に決定して、地方公共団体に義務づけてきた基準、施策等を地方公共団体がみずから決定し実施するように求めるものです。
 そのうち、20条例が社会福祉施設等の人員、設備及び運営等に関する基準を定めるものとなっています。その中で、和歌山県として、国の定めてきた従うべき基準以外の部分で独自に定めた条項が示されました。それは、入所者等の人権を擁護するための人権擁護推進員を配備することや、災害対策を推進するために災害対策推進員を配置すること、そして、国が基準で策定を義務づけていない施設でも、災害の防止に関する計画を策定すること、また安全管理対策推進員を配備することです。
 そこで、福祉保健部長にお伺いしたいんですが、この基準に示されたことによって、今後県としてどのように指導とか支援を行っていくのか、また、今後和歌山県の特色を生かした条項の改正等はどの程度考慮されていくのかも、あわせてお聞きしたいと思います。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 今後の県の指導、支援につきましてお答えいたします。
 社会福祉施設等に関する20の条例につきましては、それぞれが国が定める人員、設備及び運営等の基準に加え、利用者等の人権を尊重し、安全な生活環境をより一層確保するという視点から、人権擁護推進員や災害対策推進員の配置など、本県独自の基準を設けております。
 県といたしましては、今後、各施設に対し、取り組むべき内容について十分周知を図る一方、各施設の要望等をお聞きしながら、推進員を対象とした研修等の実施や、実地調査等における指導、助言により、各施設での取り組みが積極的に推進されるよう支援してまいります。
 次に、県独自の条項の改正等につきましてお答えいたします。
 社会福祉施設等の基準を定めるに当たっては、サービスの質と量を確保しつつ、本県の実情を踏まえた、地域にとって最もふさわしいサービスを提供していくことが重要です。したがいまして、今後、条例制定権が拡大された場合や社会環境等の状況が大きく変われば、市町村や施設、利用者等、関係者の御意見をお聞きしながら所要の検討を行ってまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 以上で、質問を終わります。本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
○議長(山下直也君) 以上で、藤本眞利子君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時38分休憩
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