平成24年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


平成24年6月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(全文)


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平成24年6月
和歌山県議会定例会会議録
第6号
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議事日程 第6号
 平成24年6月25日(月曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第86号から議案第102号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案等の付託
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会議に付した事件
 第1 議案第86号から議案第102号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案等の付託
 第4 休会決定の件
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出席議員(41人)
 1番 森 礼子
 2番 立谷誠一
 3番 尾崎太郎
 4番 藤山将材
 5番 新島 雄
 6番 山下直也
 7番 門 三佐博
 8番 井出益弘
 9番 濱口太史
10番 鈴木太雄
 11番 服部 一
 13番 山田正彦
 14番 坂本 登
 15番 宇治田栄蔵
 16番 尾崎要二
 17番 山本茂博
 18番 平木哲朗
 19番 前芝雅嗣
 20番 浅井修一郎
 21番 中村裕一
 22番 冨安民浩
 23番 岸本 健
 24番 中 拓哉
 25番 花田健吉
 26番 角田秀樹
 27番 吉井和視
 28番 向井嘉久藏
 29番 谷口和樹
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 大沢広太郎
 35番 谷 洋一
 36番 岩田弘彦
 37番 高田由一
 38番 奥村規子
 39番 山下大輔
 40番 松坂英樹
 41番 長坂隆司
 42番 雑賀光夫
欠席議員(なし)
〔備考〕
12番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       藤本陽司
 国体推進監      若宮茂樹
 危機管理監      半田和雄
 総務部長       米澤朋通
 企画部長       野田寛芳
 環境生活部長     米田和一
 福祉保健部長     山本明史
 商工観光労働部長   大門達生
 農林水産部長     増谷行紀
 県土整備部長     尾花正啓
 会計管理者      雑賀忠仁
 教育委員会委員長   山下郁夫
 教育長        西下博通
 公安委員会委員    溝端莊悟
 警察本部長      山岸直人
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     楠本 隆
 選挙管理委員会委員長 諸木良介
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       宮端 宏
 次長         上坊 晃
 議事課長       堀 達也
 議事課副課長     中谷政紀
 議事課課長補佐兼班長 中井 寛
 議事課主任      中尾祐一
 議事課主査      保田良春
 議事課主査      岸裏真延
 総務課長       谷  巌
 政策調査課長     谷村守彦
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  午前10時1分開議
○議長(山下直也君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第86号から議案第102号まで並びに知事専決処分報告報第1号及び報第2号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 4番藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕(拍手)
○藤山将材君 おはようございます。
 一般質問の初日の20日に37歳になりました。早いもんで、県議会に寄せていただいてから議員生活も10年目に入りました。この間、本当に、お支えをいただいてきた方々に、この場をおかりして改めて感謝であります。
 とはいえ、まだまだ若輩者、今回も若者らしく理想を求めて質問させていただきますので、当局の皆さんにはどうぞよろしくお願いを申し上げます。(「頑張れ」と呼ぶ者あり)はい、努力します。
 今回は、大きく分けて4項目について伺います。
 まず最初は、防災対策として津波から逃げる意識づけについてお尋ねをいたします。
 東日本の大災害によって、改めて私たちは、いかに我々の国土が危うい構造の上に位置しているかを知らされました。3つの大きなプレートが日本の足元でひしめき合い、かつ世界最大の火山脈の上にあり、ミッドウエーから西の海底には、日本列島に並行して古代天皇の名前が付された数多くの海底火山が連なっていて、今回の大災害も、こうした地勢からすれば構造的に必然と言わざるを得ないのでしょうか。
 ということで、日本の自治体では、今、防災対策が急務となっているわけですが、対象が対象だけに、膨大な費用と複雑な対策が必要となります。
 津波は、それまで数々の対策を進めてきたはずのまちを襲い、大きな被害をもたらし、和歌山でも県内に初めて大津波警報が出され、避難指示や勧告の対象となったのは合わせて19万人以上となりましたが、避難率はわずかに3.2%にとどまりました。あの日、走行中の車窓から、今にもあふれんばかりに増水した日方川の河口付近を見て背筋が寒くなりましたが、避難する住民を目にすることはなかったように記憶をしています。
 昨年の震災後にNHKが和歌山県内で行った地震・津波避難に関するアンケートによれば、「重要だと思う津波避難に関する施策は」との問いに、自治体からの回答では、津波防災教育や啓発が約59%で、「水門や防波堤などハード施設の整備」はわずか6%でありました。一方、住民からの回答では、「津波防災教育や啓発」が約15%にとどまったのに対し、「ハード施設の整備に期待する」が30%となっていて、今後の防災に関する自治体と住民の考えには隔たりがあることがわかります。
 また、3.2%という低い避難率から見ても、逃げるという意識が県民に余り浸透していないこともよくわかります。
 さらに、津波から避難しなかった人を対象にしたアンケートでは、大津波警報に関する情報について、8割近い人が誤報でないと認識していながら、津波の高さなど、危険を勝手に小さく見積もってしまう無意識の心理が働いていたこともわかりました。だからこそ、日ごろからの意識づけが大事だと思います。
 内閣府の新しい津波想定が出された3月31日の新聞記事で、「想定が幾らと言われてもピンとこない」、「避難所まで距離はあるが、地区では訓練は行われていない」といった和歌山市の沿岸部に住む住民の声が掲載されていましたが、まだまだ、特に県北部の住民に危機意識が浸透されていないと言わざるを得ません。
 以前、当時の防災・環境問題等対策特別委員会で訪れた串本町で、避難訓練を徹底し、中学生に至るまで役割分担がされている自主防災組織の先進的な取り組みのお話を伺い、危機管理に対する意識の高さに大変驚かされたことを覚えています。
 こうしたことから、県民への意識づけが今後さらに重要と考えますが、県としてどういう取り組みを行っていますか、危機管理監にお尋ねをします。
○議長(山下直也君) ただいまの藤山将材君の質問に対する答弁を求めます。
 危機管理監半田和雄君。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 津波から逃げる意識づけについてでございますけれども、逃げるという行動がなければ、幾ら市町村が避難場所や避難路を整備しても命を守れないことから、県では、これまで市町村とともに、長い揺れの伴う地震に遭えば、たとえ揺れが小さくても迅速に高台に逃げるという広報啓発、意識づけをさまざまな施策を通じて行っているところでございます。
 東日本大震災直後から取り組んできた防災・減災対策の総点検において、避難先に安全レベルを設定し、時間のある限りより安全な避難先を目指す取り組みや家族で避難場所や避難経路を話し合い、避難カードを書く取り組みなども、和歌山県地震・防災対策総点検専門家会議委員の片田敏孝群馬大学大学院教授との意見交換から県として考案し、関係各所から評価もいただきましたが、まずは命を守るため、逃げる意識が行動につながるようにとの願いを形にしたものであります。
 また、東日本大震災の記憶がまだ新しいこともあり、昨年8月から9月に実施をした県民意識調査において、平成19年度調査に比べて「避難する」がほぼ倍増し、約8割になるなど、逃げるという意識について相当浸透しております。
 県として行ってきた「出張!県政おはなし講座」、「出張!減災教室」、「紀の国防災人づくり塾」などの実績についても、平成23年度の延べ受講者数で前年度比約3倍、2万8000人を超えており、意識の高揚のあらわれと考えております。
 しかしながら、年月を経ると記憶が薄れていくことも考えられるため、県としては引き続きさまざまな手法を使って粘り強く取り組んでまいります。
 以上です。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 次に、和歌山─海南間の道路整備の必要性について伺います。
 今、ソフト面での取り組みを伺いましたが、視点をハードに移してみます。
 現在、マリーナシティを経由して和歌川沿いを走る和歌山市道のシーサイドロードが改修工事のために終日通行どめになっており、国道42号がこれまで以上に大変混雑をしています。通勤時間が1.5倍になったであるとか、海南インターチェンジから県庁まで1時間以上かかったという話も聞きます。渋滞を避けようと42号線から黒江駅前を通り、竈山神社方面へと続く三田海南線などに流れ込み、そのルートがまた混雑してしまうといったぐあいです。
 和歌山─海南間の道路整備の必要性については、これまで何度か産業面から質問をさせていただいてまいりました。東北の被災地を訪れたり報道を見るにつけ、今の状況は防災対策としても放置できないと考えます。
 今さら申し上げるまでもなく、県内最大の人口を有し、経済、産業、文化の中心である和歌山市への交通の流れは、大体3つに大別することができると思いますが、1つ目は泉南などの大阪方面からのルート、2つ目は貴志川筋方面からのルート、そして、3つ目は新宮、田辺、日高、有田等の紀南方面からのルートであります。このうち紀南方面、すなわち海南市から南に位置する地域からの交通は、ほぼ海南市内を通過して和歌山市へと入っていくこととなり、いわば海南市はエントランスホールのような役割を果たしていると言えます。
 ところが、この和歌山市と海南市を結ぶ道路がどう考えても脆弱であると言わざるを得ません。
 何度でも申し上げますが、唯一整備されている国道42号も、紀三井寺付近では1日に4万台を超える通行があり、慢性的に渋滞を引き起こしている状態であるにもかかわらず、和歌山市と海南市を結ぶ7本の県道はすべて曲がりくねり、幅が狭く、中には車1台がやっとという広さの道路もあり、和歌山─海南間の県道は、どれ1つまともに機能していないと言っても過言ではありません。
 前回の質問に対して、知事は、事業中の松島本渡線を県道秋月海南線まで延伸し、国体開催までに一連区間が供用できるように整備を進め、これに接続する県道秋月海南線や岩出海南線についても、都市計画道路の供用に合わせて効果を発揮するよう狭隘な部分から整備を進め、幹線道路となる都市計画道路の整備と周辺道路の狭隘区間の整備を組み合わすなどして、段階的、効率的な整備を図っていきたいと答弁されました。
 さらにさかのぼれば、平成18年の同様の質問には、既存ネットの中で優先度を考慮しながら段階的かつ効率的な整備を検討していくとの部長答弁がありました。
 しかるに、松島本渡線については、和田川を超える橋の計画などあるやに聞いていますが、竈山神社から南側の海南方面については一向に計画が進んでおらず、まさに絵にかいたもちになっていませんか。このままでは、災害発生時にも交通が麻痺することは容易に想像できますし、救急搬送もままならないのではないですか。
 X軸の整備がほぼ終わり、川筋ネットワークの整備を進めると知事はおっしゃっていますが、和歌山─海南間についてはボトルネックになったままであります。今、一番急がれる防災対策にも、この道は欠かすことができないと考えますが、そんなにこの路線の優先度は低いのでしょうか。知事の考えをお聞かせください。
○議長(山下直也君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 和歌山─海南間の道路としては、現状では国道42号が唯一の幹線道路であり、慢性的な渋滞が発生し、防災上も好ましい状態ではないというのは議員御指摘のとおりであります。
 このため、議員御指摘の点については、ちょっと後で申し上げますが、抜本的な対策といたしましては、新たな幹線道路となる都市計画道路松島本渡線の整備が必要であります。
 和歌山市秋月地内から和田地内、県道秋月海南線までの一連区間を平成27年の国体開催までに供用できるように、今急いでるところであります。また、その次は、御指摘の海南方面への延伸についても、これに続いて頑張って整備するように努めていきたいと思います。
 その間は、議員御指摘のように、前に答弁したとおっしゃいましたが、この都市計画道路と接続する、あるいは併走する県道秋月海南線や岩出海南線の狭隘区間の整備を進め、当面の円滑な交通の確保にも努めてまいりたいと思います。本来ならば、はるか昔に都市計画道路ができてないといけないんですが、最近、頑張ってできるだけ急いでやっておりますので、今後の努力を一層やっていきたいと思っております。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 先週の大雨の後の水没の関係で、またその東側の県道なんかも大変混雑しておりました。ほんまに、あれを見るにつけても憤りを感じるわけでありますので、ぜひとも早急に整備を進めていっていただきたいというふうに要望しておきます。
 次に行きます。
 3番目に、身元確認のためのDNA登録について、1点要望させていただきます。
 帰らぬ人のよすがを捜し求めて100日──昨年の夏、身元のわからない遺骨を預かる岩手県内の寺院で百カ日法要が営まれている様子をテレビで見ました。百カ日は卒哭忌とも言われ、泣くことをやめ、悲しみに区切りをつける日とされています。悲しいのはいつまでたっても悲しい、でも、悲しみだけでいたら決して亡くなった人が成仏できない、その苦しみや悲しみを大きなばねとして、次の段階に向かっていける何かがなければいけない、それが百カ日の法要でもあります。
 瓦れきの処理が進む一方で、帰らぬ人を捜す遺族にとって、いつまでも引きずれないというものの、遺骨がないまま葬儀をとり行うことには抵抗があるでしょう。
 人の生死をめぐる感覚については、近代のキリスト教では完全に魂と体を分ける心身二元だと聞いたことがありますが、日本、仏教においては心身一体であり、魂と肉体は一元となっているから、生物学的な命はなくなっても肉体には魂がある、だから遺体や遺骨を弔いたいという意識が日本人には強くあるそうであります。
 神戸の大震災では割と早くにほとんどが身元碓認できたそうですが、津波となると遺体の損傷が激しく、そうはいきません。何とか早期に御家族のもとに帰らせてあげる、弔ってあげることができるすべはないものかと、そう思います。
 自民党では、国家ICT戦略として、ICTの観点から、被災地の復旧・復興と被災者への支援を喫緊の課題として取り組むとともに、東日本大震災と福島第1原発事故を教訓とした超広域災害への備えを固め、さらに、新たな復興・防災の仕組みを経済成長への出発点とすべきと、新ICT戦略を昨年策定いたしましたが、その中では、物理的な存在としての個人を認証する仕組みを社会基盤化することを提案しています。
 もちろん、個人のプライバシーの問題もありますので、任意の登録が望ましいとしつつ、遺体の確認にかかる時間を考えると、DNA登録も視野に入れるべきとしています。私も、先ほどからお話ししたとおり、災害発生時の備えとして、DNA登録について検討を進めていくべきだと思っています。
 災害は決して起こってほしくはないことはもちろんでありますが、今後の対応として国への働きかけ等も考えていただければと思います。これは要望でありますので、答弁は結構であります。
 次に、大きな柱の2つ目として、鳥獣害対策として3点について伺ってまいります。
 まず1番目、ジビエの消費拡大についてであります。
 和歌山県でも野生動物による農作物への被害は年々深刻化をしていて、被害額は昨年度約3億3000万円、5年前よりも2割以上ふえております。
 和歌山県でもイノシシやシカによる農作物の食害に悩まされている中、捕獲数は年々ふえ続けていますが、捕獲されたイノシシやシカが食肉として利用されることはわずかで、ハンターが自家消費をしたり、大半が山中に埋設されているのが現状であります。
 県でも、捕獲した鳥獣の有効利用をすべく、4年前から野生動物の肉の処理施設への補助を行い、肉の消費をふやして農作物への被害を減らそうと取り組んでいます。その結果、イノシシやシカの肉を提供する飲食店はふえて4年前の3倍以上に、肉を販売する精肉店も2倍以上にふえているなど、少しずつ効果が出てきていますが、まだまだ十分とは言えません。今後は家庭での消費をふやすことにも力を入れていく必要があると思います。
 また、昨年度は県の委託先であるJTB西日本和歌山支店が、わかやまジビエプロモーション事業の一環として飲食業者らに野生鳥獣の肉の魅力を知ってもらうための研修会を行うなど、捕獲した鳥獣を食資源として利用するための取り組みを進めています。
 地元の海南市でも、下津商工会が「地域食材を活かしたまちづくり」と題して、これまでレストランなどの飲食店で提供されることがほとんどだったジビエ料理を家庭でも味わってもらうことでさらに消費を進めようと、どんぶりやシチューなど家庭でもつくれるメニューの試食会を開くなど、地域からアクションを起こすケースもあり、ジビエ料理をきっかけに鳥獣害への理解も広がればと期待をしております。
 民間企業では、カレーショップのCoCo壱番館さんがイノブタカレーや熊野牛コロッケをメニューに取り入れてくれていましたが、ジビエについても取り入れてくれるかもしれません。日高川町のジビエ工房紀州の「紀州カレー」がレトルトで販売されていますが、おいしいと評判でありますので、売り込みも可能だというふうに思います。
 また、静岡県では県の庁舎内で県産食材を使ったレストランをオープンさせるとのことでありますが、和歌山県においてはジビエを使ってもらってはいかがでしょうか。県の消費拡大についての考え方について、お聞かせをください。
○議長(山下直也君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) ジビエ料理の消費拡大については、県内外のホテルや料理店を対象としたプロモーション活動やジビエウイークの開催を通じて、「わかやまジビエ」の需要開拓と普及を図ってきたところです。その結果、獣肉を扱う店舗は着実に増加しており、料理店で現在63店舗、精肉扱い店で31店舗となりました。
 今年度も、料理コンテストや家庭用レシピの作成など、一般の消費者に「わかやまジビエ」のおいしさや料理法を広くPRしていくとともに、ジビエウイークを開催し、多くの料理店とともに県施設内の飲食店でもジビエ料理の提供を行ってもらえるように働きかけてまいります。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 次に、シシ肉などの品質確保のための等級制の導入についてお伺いをいたします。
 消費拡大を図っていく上で、北海道では東京農業大学と連携をして、ことしの9月からエゾジカ肉に等級制を導入して肉質や価格にばらつきがあるという課題を解消し、消費拡大を目指しているそうです。牛肉を参考にして脂の乗りぐあいや色合いなどにより3段階ほどのランクに分けて、高ランクのものは首都圏に向けて売り込むとの考えですが、和歌山県でもこういった取り組みを参考にして、シシ肉やシカ肉でも取り組んでみてはいかがですか。よろしくお願いします。
○議長(山下直也君) 農林水産部長。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) シシ肉等の等級制については、品質の安定化という観点から重要であると認識しております。しかし、現在のところ、県内では食肉処理施設による解体技術や肉の品質の見方に差異があることから、将来の統一基準づくりを視野に、技術の平準化を図るための講習会の開催や品質安定化に向けた協議を進めてまいります。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 この項の最後に、学校給食でのジビエの使用について教育長に伺います。
 私は、商業捕鯨が禁止されるまで、学校給食で日常的に鯨を食べてきた最後の世代であります。給食で、欠席をした同級生の分の鯨の竜田揚げをめぐって、けんかまでしたことを今でもよく覚えております。ですから、今でも鯨は大好きでありますし、竜田揚げのある居酒屋さんに行ったときには外せないメニューになっております。
 日本ではまだまだなじみの薄いジビエですが、シシ肉についても子供のころから口にしてきましたのでおいしくいただくことができますが、人によっては苦手な方もいらっしゃるようであります。
 日本マクドナルドの創業者である藤田田氏は、「人間の味覚は12歳までに決まる。それまでにマクドナルドはおいしいと植えつけておけば、一生マクドナルドを食べてくれるようになる。だから、おもちゃつきのセットを販売するんだ」と話されていたそうですが、自分自身に置きかえてみても、子供のころに口にしたものはずっと食べているなあと、途中であんまり食べなくなったもんはないなあというふうに思っております。恐らく皆さんもそうだというふうに思いますが。
 そこで、今後、消費の拡大を図っていくためには、学校給食に取り入れて将来の消費者のすそ野を広げるのも1つの考え方だと思います。また、シシ肉やシカ肉を食べることによって鳥獣害や今の里山の現状に対する理解を深めることもできるので、食育の観点からも意義があることだと考えますが、教育長の見解を求めます。
○議長(山下直也君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) ジビエの学校給食への使用については、現在、日高川町において、町の学校給食関係者を対象としてジビエを取り入れた試食会や、月に1度、同町の保育園でジビエを使った給食が取り入れられてはいますが、価格や保護者の理解など解決しなければならない課題もあり、県内の小中学校の給食ではまだ使われてないのが実情です。
 一方、児童生徒が食材を通して地域の自然や産業等への理解を深めたり、食に対する感謝の気持ちをはぐくんだりすることは重要であると認識しております。また、議員御指摘のように、鳥獣害の被害などを学ぶことは大切でありますし、地産地消を推進していくことも必要であることから、給食の実施主体である市町村に試食会の実施などを働きかけてまいります。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 幾ら農作物を荒らすとはいっても、殺してしまうだけでは殺生になってしまいますので、自然の恵みとして食べてやることで、答弁にもありましたように、食に対する感謝の気持ちをはぐくめると思いますので、ぜひ取り入れていただきたいと思います。
 そしてまた、今回のこの質問をさせていただくに当たって、聞くところによりますと、教育長はちょっとジビエ、苦手だというようなお話を伺ったんでありますが、ぜひ、この試食会というようなことが実施されるようなことになれば、やはり食育の観点からも、現場に教育長自身、足を運んでいただいてPRに努めていただきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いをしておきます。
 次に3つ目、県広報へのSNSの活用についてお尋ねをいたします。
 ソーシャルメディアが行政を変えるという認識のもと、県広報へのフェイスブックの導入について質問をいたします。
 議会へのiPadの導入をしている佐賀県議会の取り組みについて以前調べていましたら、ホームページをフェイスブックに移行し、そこからイベントや生活に関する情報を発信するようにしている佐賀県の武雄市の存在を知りました。何でも、市長のフェイスブック好きが高じてのことだったそうですが、フェイスブック・シティ課まで立ち上げて、それまで月に5万件だった閲覧数は60倍の300万件を超えるようになったそうであります。
 現在、フェイスブックの加入者数は、日本では1000万人を突破し、全世界では9億人に上ります。
 従来のホームページでは、住民がみずからアクセスしなければ情報は得られなかったのが、フェイスブックでは、あらかじめ登録しておけば、自治体が発信する情報をリアルで受け取ることが可能で、同時に市民の側からも要望や意見を即座に返すことができます。行政と住民の間で交わされるやりとりはだれでも閲覧が可能なので、すぐに対応しなければ厳しい批判にさらされることになるので頑張ろうという気にもなるし、評価もされますので、職員の方々も鍛えられるのではないでしょうか。
 フェイスブックで行政サービスのあり方は根本から変わるでしょうし、互いに実名でやりとりするのが原則なので、県民は、担当者と直接コンタクトできる利便性もあり、より行政を身近に感じることができると思います。
 また、県民と行政との距離が縮まることで地域の防災にも役立つケースも考えられます。例えば、県道で土砂崩れが起きた際、危険を感じた住民がそれをスマートフォンで写真に撮り、その場でそのまま行政のフェイスブックに投稿することで、どのニュースよりも早く情報をつかむことができ、災害対策面でも有効だと思います。
 ただ、必ずしもフェイスブックを使える人ばかりではないので、広報紙などを用いたこれまでと同様の情報発信も大切でありますし、NPOなどの協力も得ながらパソコン教室などを開いて利用者をふやすことを考えてもいいかもしれません。
 いずれにしても、スマートフォンの普及でフェイスブックなどのソーシャルメディアの利用が今後もふえ続けることは確実でありますので、行政にとっても無視できないツールになっていくものと考えますが、県の考え方をお聞かせください。
○議長(山下直也君) 知事室長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○知事室長(藤本陽司君) インターネットによる情報発信につきましては、さまざまな惰報提供の手段が開発され、発展してきていることに伴い、各種情報提供手段の特徴を考慮しながら県の広報に活用することが重要であると考えております。
 そのため、本県では、まず日々の情報を日記形式で公開できるブログに着目して、昨年5月に和歌山県広報リレーブログを開設し、本県の広報につながるさまざまな話題や県行政の現在進行形の情報を発信しております。
 また、電子メールで定期的に情報を発信するメールマガジンにつきましても、本年5月、登録者の希望に応じて防災や観光、教育といった分類別の記事を配信できるように一新するとともに、知事を初め県職員が職務上交流のあるさまざまな分野の方々に対し、積極的に登録を呼びかけているところでございます。
 近年、国内でも利用者数が急増している議員御指摘のフェイスブックなどソーシャル・ネットワーキング・サービスにつきましても、有力な広報手段の1つになり得ると認識しており、その活用方法を検討してまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 御答弁いただきました。
 先月からですかね、登録者の希望に応じての分類別の記事を配信するようにされたと。登録しても、何でもかんでも届くと、また煩わしさを感じてしまうので。これもうすごくいい取り組みだというふうに思います。
 また、あと、昨年の6月からのブログですかね、職員さんが持ってきていただいたカルビーの新ジャガのニュースの記事ですけども、僕もポテトチップスは主食のように毎日のように食べてるんで、こういう新商品が出ても新商品の棚まで行かないので、こういうので知ることができて本当にええなあというふうに思うわけでありますけれども。
 このフェイスブックに関してですけども、ブログにしても、今されてるメルマガにしても、一方通行になるんですよね。
 それで、武雄市でお話を伺ったときに聞いたんですけども、エピソードの1つとして、例えばフェイスブックでやりとりしてるときにアクセス数がふえたので、市のイベント自体が物すごく宣伝効果が上がったと。ある毎年やってるイベントで、すごく参加者がふえ過ぎまして、バスの対応が全然追いつかなかったと。それで、市民のほうからフェイスブックで市のほうに「どうなってるんだ。バス全然来ないぞ」ということで、フェイスブックに出たんですが、たまたまお休みだった職員さんがそれを見てバス会社に増便を手配したと。そういうすごい臨機応変なやりとりも可能でありますので、またこれから和歌山県も国体を控えてイベントの発信とか、そういう情報発信も含めて、国体でも観光でも県産品のPRでも、いろんなことにこのソーシャルメディアが活用できると思いますので、ぜひともいいところをとらまえて取り入れていっていただきたいということで、要望しておきます。
 最後に、科学に関心を持たせる取り組みについて、教育長に伺います。
 昨今、子供たちの外遊びが少なくなり、体力の低下などが叫ばれると同時に、自然に触れる機会が減少したことで理科に対する生徒や児童の興味や関心が低くなったり授業における理解力が低下したりと、科学に興味を持つ子供が少なくなって、日常生活での基礎的な科学知識を持たない子供が多いと言われております。
 かねてから家庭や教育の現場で科学に触れる機会をふやすことが必要だと考えていましたが、5月の21日に金環日食を観測できる機会がありました。和歌山県では、観測の適地であるということで、観光面で売り込みがされているくらいでありました。私としては、この世紀の天体ショーを通じて子供たちに自然や科学に関心を持たせる絶好の機会であったと思いますが、県内の小中高においてどのような取り組みが行われたのでしょうか。教育長にお尋ねをいたします。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 子供たちの科学への関心を高めるためには、本物に触れさせることによって大きな感動を与えることが大切であると考えています。
 先日の金環日食はこうした意味で絶好の機会でありましたので、県内のほとんどの小中学校では日食グラス等を用いて観測会を実施しました。また、天文台の協力を得て事前の学習会を開いた学校や、共育コミュニティの取り組みを生かして地域の方々と観測会を行った学校もありました。多くの高等学校においても希望者による観測会が開かれ、スーパーサイエンスハイスクール指定校では、気温や照度といった環境データの測定も行うなど、より科学的な観測が行われました。
○議長(山下直也君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 5月の金環日食に続いて、今月初旬には金星の太陽面通過がありました。また、来月には木星食、8月には金星食が観測されるそうで、ことしはさまざまな天体ショーが観測されるそうです。
 まさに天体ショーの当たり年と言われておりますけれども、今後も、こういった天体ショーに限らず、さまざまな機会をとらえて子供たちに科学に関心を持つ機会を与えていっていただいて、いつの日か「ネイチャー」や「サイエンス」などの科学誌に取り上げられるような科学者が育って、行く行くはこの和歌山からノーベル受賞学者が出るような、そういうことを心から祈念申し上げて、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、藤山将材君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、早速、一般質問に入らせていただきます。
 第1の柱として、蘭島を生かした地域づくりということでお尋ねをいたします。
 議場には、蘭島の写真を資料配付させていただいております。まさにこれからの夏、力強い蘭島です。この写真は、あらぎ島景観保全保存会の西林会長さんが撮影されたものです。ここ蘭島で田んぼをつくっておられる方で、地元ならではの作品、カメラ技術もプロ並みです。1年の四季ごとに折々の表情を変える、また1日のうちでも刻々とその表情を変える蘭島をいとおしく見詰めておられる姿が浮かびます。
 この有田川町の蘭島は日本の棚田風景を代表するもので、これまでも社会の教科書の表紙や各種ポスター、著名な書物や写真集などにも紹介をされてまいりました。
 この美しい蘭島ですが、デザイン的にきれいな風景というだけではなく、今、文化的景観としての評価が高まり、地元有田川町が国の重要文化的景観の選定に向けて準備を進めております。
 この文化的景観とは、景観の重要文化財、国宝のようなものでありまして、2005年に改正をされた文化財保護法に新しく位置づけられ、特に重要で保護の措置が講じられているものが重要文化的景観として選定をされる仕組みとなっています。
 去る3月に地元清水で、教育委員会による蘭島に関するフォーラムが開かれ、さまざまな専門家がそれぞれの角度から蘭島について熱く語っていただき、私、大変感動いたしました。その内容を紹介させていただきながら、蘭島の価値、その厚みについて触れてみたいと思います。
 この蘭島を含め清水地域は大変古い歴史があり、鎌倉時代には阿て河荘と呼ばれる荘園でしたが、農民たちが地頭の横暴に耐えかねて領主に差し出した片仮名書きの訴状が貴重な歴史資料として中学校や高校の教科書に掲載をされています。このほかにも、和歌山県内でもこの有田川流域は、文化財の数が抜群に多い地域なんです。
 このように、古くから山間部の耕地面積の少ないところで苦労を重ねてきた住民が新田を広げていったのが棚田となっています。そして、厳しい労働に耐えながら田んぼを守ってきた歴史そのものなんですね。
 この蘭島は、近世、江戸時代初期の地元大庄屋、笠松左太夫の開発によるもので、田んぼの用水は、約3キ口も上流の有田川支流から険しい山の中を切り開いて水路を引いてきています。目の前を流れる有田川の水はずっと低いところを流れていますから、この棚田の高さまで水を引くということは容易なことではなかったわけです。
 この山一帯には城跡があり、古戦場がありと、史跡が数多く存在するとともに、現在の番地表示でも有田川町大字清水の1番地は町なかではなくてこの蘭島から始まっていると、こういうことを見ましても、歴史のあるシンボルとして地元住民の中にしっかりと位置づけられてきたものです。
 この歴史ある棚田、蘭島は、貴重な自然環境にもまた一方で恵まれています。山の中にある豊かな自然というだけではなくて、そこに田んぼという人間の営みがあるからこそ生息できているという貴重なものが見られ、今回、和歌山県のレッドデータブックに新登録されたオオチャバネセセリというチョウも確認されています。そして何よりも、この棚田景観が、ただ造形的に美しい、形がきれいだということではなく、文化的景観としての価値が非常に高いと評価をされてきたんですね。
 一般に有名な棚田風景というと、ずらっと見事な棚田が連続するわけですが、ごらんいただきますように、蘭島というのは流れるような広がりを持つ棚田がある。そして、連なる山々があり、目の前を流れる川がある。そして、民家の並ぶ集落がある。この写真は、空もまたいいですね。ここには、豊かな自然とともに人々の営みがあるんですね。そして、歴史がある。この風景は、ほかではなかなか見られない独特のまとまりがある、インパクトがあると、こういうふうに評価をされています。
 この清水地域の集落には、カヤぶき屋根の民家が今も数多く残っています。このカヤぶき屋根の民家というのは、決して紀伊半島全体に満遍なく分布しているわけではないんですね。有田川、貴志川沿い、そして奈良の野迫川地域など、特徴的に分布をしていて、どうやらカヤぶき屋根が腐らないぐらいの降雨量と冬の寒さが関係しているということでした。こうしたカヤぶき屋根の民家がこの清水地域の至るところで残っていて、それがこの地域の景観のシンボル的存在になっているんです。
 また、この地域は保田紙という和紙の生産が盛んな地域でもあります。戦後に、この清水地域を初め国内ほとんどの和紙の産地がなくなってしまいましたけれども、地域の努力で復活をし、今では、原材料のコウゾを外国産ではなくて地元のものだけを使っているというのはここだけだと言われております。この紙すきや材料のコウゾの木というのも、清水地域の生活の風景の一部を形づくってまいりました。写真に写っている左側の集落も、紙すきをなりわいとする住民によって形成をされた、こんな歴史を持っているわけなんですね。
 ほんの一端を紹介させていただいたわけですが、この蘭島は、棚田だけではなく、山、川、そして周辺の家並みも含めた日本の農村景観の原風景とも言うべき価値がある、そこに人の心にしみ入る魅力があると思います。
 そこで、教育長にまずお尋ねをいたします。
 この蘭島が国の重要文化的景観に選定をされれば、和歌山県内では初めての選定となり、大変期待もされているわけですが、県として蘭島の文化的景観の価値についてどう考えているのか、まず最初に御答弁を願いたいと思います。
○議長(山下直也君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 蘭島は、議員御指摘のように、有田川町清水地区において、有田川が大きく蛇行した河岸段丘上に、江戸時代初期から開発された扇形の棚田が築かれているものであり、他地域にはない独特の景観を形成しており、山間地域の水田開発として、近世の土木技術や農耕水利の研究上でも大変重要な歴史遺産です。
 また、同地域周辺では、今なおカヤぶきの古民家も残されているなど、中世から近世以来の村落景観が良好に保たれており、人と自然による長い間の営みによってつくられた文化的価値を有するすぐれた景観が形成されています。
 県教育委員会としても、このような蘭島のかけがえのない水田景観は、文化財保護法に基づき大切に保存し、後世に伝えていく必要がある貴重な文化遺産であると考えています。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきました。
 引き続きまして、この同じ清水地域で取り組まれている県の過疎対策事業についても質問をさせていただきます。
 このたび、わかやま版「過疎集落支援総合対策」事業として、蘭島の下流と、そして上流部に当たる西八幡、そして安諦地域において、それぞれ「棚田を活用した元気な集落づくり」、また「畑わさびと保田紙で地域再生への挑戦」と、こういうキャッチフレーズで事業計画が決定をされました。これらの地域での取り組みの特徴と地域おこしの手ごたえを企画部長よりお示しいただきたいと思います。
○議長(山下直也君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 西八幡、安諦地域の過疎集落支援総合対策についてでございますが、平成22年度から全国に先駆けて取り組んでおります過疎集落支援総合対策事業におきまして、有田川町の西八幡生活圏と安諦生活圏におきまして、住民が主体となり、5月に事業計画が策定されております。
 西八幡生活圏では、耕作放棄地となっている棚田を復活させ、菊芋を栽培し、加工品として販売、また食用タニシの養殖も計画されております。安諦生活圏では、地域伝統のワサビずしに使うワサビの葉を畑で生産し、同じく伝統ある保田紙の材料、コウゾの生産にも取り組まれる予定でございます。
 それぞれ地域の特徴を生かした取り組みであり、地域の方々は既に一部の事業に着手されるなど、大変意欲的でございます。県としても、こうした事業を通して過疎地域が元気になればと考えております。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 引き続き、知事に今度はお伺いをいたします。
 こうした蘭島の景観、清水地域の歴史や文化、食や観光などを生かした地域おこしの努力、そして、国の重要文化的景観選定に向けた努力が進められていることと呼応して、来年秋に第19回全国棚田サミットが蘭島を中心としたこの有田川町で開催をされます。また、宿泊棟や体験施設などの整備も今進められているところであります。
 この棚田サミットは、蘭島と和歌山県、また有田川町清水地域を売り出す絶好の機会であります。このチャンスを十分に生かすとともに、これを一過性に終わらせないことが大事だと考えています。
 棚田や地域の食、文化など、この取り組みの地域的な広がりを展望するとともに、単発でない持続的な地域の取り組みとして定着、発展していけるような努力と工夫が求められます。
 これまで地域の中で各分野それぞれに取り組まれていたことを、この蘭島の景観保全の取り組みを太い柱に位置づけて、そして、広がりのある事業として地域の活力を向上させていけたらと期待をしているところです。
 教育や農林水産、企画、観光など、県としても各分野が連携した積極的な支援を求めるものですが、知事のお考えをお示しください。
○議長(山下直也君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 有田川町清水地区の蘭島の景観は国内外に誇り得る重要な地域の資源であり、県内初の重要文化的景観に選定されることになれば清水地域の活性化にとっても大きな起爆剤になるものと期待しておりまして、今後、努力していきたいと考えております。
 また、御指摘にはございませんでしたけれども、ここでは、秋篠宮の悠仁親王の御生誕をお祝いして、紀清の集いという、特に若手の方々の住民の会が毎年無償奉仕をしてキャンドルライトイルミネーションをしておられます。そういう意味では、地元の方々の大変な努力によってこのすばらしい景観を売り出そうと、あるいは伝えようという努力が続いていまして、私も励ますために毎年参加をさせていただいております。
 そういうときに、中山町長が発案されたと思いますけれども、来年11月になってまいりましたけれども、全国棚田サミットを誘致しようという試みがございまして、これがうまくいきまして、全国から多くの方々に清水地域を訪れていただいて、蘭島等の棚田を大切に守りはぐくんできた地域の方々の生活や歴史文化を実感していただけるような、そういうまたとないチャンスができたと考えております。
 県といたしましても、このような機会も生かさないといけませんし、また地域の動きにも積極的に参加しながら、そのほか、部長などが説明いたしましたように、地域資源の活用にも目を向けて持続的な広がりのある立派な地域をつくっていきたい、そんなふうに考えております。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事並びに関係部長、教育長からそれぞれ積極的な御答弁をいただきました。御答弁いただいたように、ぜひこの蘭島を太い軸としながら、一過性にならない、広がりや持続性のある地域づくりを目指して、しっかりとした支援をお願いするものです。
 1点、要望を申し上げます。
 過疎集落支援事業の関係で、今回、このメニューには間に合わなかった課題ですが、地域住民の事業化の要望が実は一番切実だったもの、それは地域住民の交通手段の確保の問題です。過疎地有償運送などを初めさまざまな計画が検討されているようです。ぜひ、各方面の円満な協力のもと、実現に向けて県としても引き続き支援をしていただきますよう、これは要望をさせていただきます。
 引き続き、2つ目の柱の県営ダムの操作改善について、今度は以下3点、県土整備部長に質問をさせていただきます。
 このほど、関西電力との間で発電用利水の洪水対策としての活用が合意され、運用が開始されました。住民向けのリーフレットもダムごとに準備をされています。この操作改善により、関西電力殿山ダムはもとより、県営3ダム、二川、椿山、七川において一定の洪水対策効果が期待されています。
 一方で、昨年の台風豪雨に当てはめたシミュレーションでは、二川ダムや七川ダムでの効果は限定的であると試算もされているようです。今回の運用改善で期待できる洪水対策効果についてお示しください。
 2点目に、今回の操作改善と操作規則、これまでの操作改善との関係についてもお尋ねをいたします。
 二川ダムでは、ダム建設当時のままの、約50年前の設計の操作規則を使い続けております。この操作規則は、平素はできるだけ多くの水をダムにためて発電をし、洪水のときには水を抜いて空き容量を確保し洪水調整を行うという、発電優先とも言うべき多目的ダムの典型的な設計思想のものです。
 私は、これまでもこのダム操作規則を、集中豪雨など近年の雨の降り方に対応して発電優先から治水優先に改善すべきだと提案をしてまいりました。県営ダムの発電施設が関西電力に売却される折には、民間に売却されると発電優先になるのではという地元住民の不安の声を代弁し、これに反対をいたしました。
 県は売却を強行しましたが、この折には一定のダム操作改善とダム水位を低く保つ協定が交わされまして、これは大きな成果であったと考えています。それに加えて今回の操作改善ということで、大洪水が予想されるときには利水容量まで治水のために活用することが合意され、そういう面では大きな改善だと評価をするものです。
 そこで、お尋ねいたしますが、今回のダム操作改善とダム操作規則との関係はどうなっているのでしょうか。そして、旧来の操作規則まで見直したかどうかというところをお聞かせいただきたいと思います。
 また、これまでも県営ダムでは、過去の洪水被害を踏まえた七川ダムでの改善、先ほど紹介しました二川ダムでの操作改善がなされてまいりましたが、こうしたこれまでの操作改善とばらばらにならずに統一的に整備がされたのかどうか、これらの点についてお答え願いたいと思います。
 3点目に、今回のダム操作改善は、いざというときに事前にダム放流で水位を下げて効果を発揮させる仕組みですが、それがうまくいくためには、計画を超えるような大雨を想定外と言わずに見通しを持って予測できるかどうかに実はひとえにかかっている、こう言っても過言ではありません。
 また、計画を超えるような大雨だけでなく、最近はたびたび襲ってくる集中豪雨や台風に対し、平素の安全なダム操作のためにも、降雨予想、洪水予想の信頼性向上は欠かせない課題であります。
 より高度な信頼性の高い予報などの活用と、これを生かした住民への周知をどのように進めていくのか。
 以上3点について、県土整備部長に御答弁を願います。
○議長(山下直也君) 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 1点目の利水容量を活用した操作改善による洪水対策についてでございますが、県から関西電力に働きかけてきた結果、各ダムがいわゆるただし書き操作をせざるを得ないような大規模な洪水が予想される際に、あらかじめ発電のための利水容量部分も最大限水位低下を図り、治水に活用することについて関西電力と合意し、運用を開始しました。
 これにより、ダムで洪水調節可能な時間を延ばし、避難時間を確保するとともに、最大放流量を低減し、下流河川の洪水被害を軽減することが期待されます。昨年の台風12号で試算した場合、ただし書き操作へ移行する時間を、七川ダムでは1時間20分、椿山ダムでは1時間40分おくらせることなどが見込まれます。
 こうした治水効果は、雨の降り方などによって効果がより大きくなることも小さくなることもありますが、県としましては、今回の運用だけでなく、引き続き河道の改修や防災情報の充実など、ハード・ソフト対策をあわせた洪水被害の軽減に取り組んでまいります。
 2点目の今回の操作改善と操作規則、これまでの改善との関係についてでございますが、今回のダムの運用は、各ダムがただし書き操作をせざるを得ないような計画を超える大規模な洪水が予想される場合に適用するものでございます。このため、計画規模の洪水を対象として定めた操作規則の範囲外であり、別途実施要領を策定し、運用しております。また、七川ダム、二川ダムで、台風の接近等によりあらかじめダムの水位を低下させることを定めた過去の運用規程につきましては、今回の実施要領に統合し、整理したところでございます。
 また、操作規則については、各ダムの洪水調節計画に基づき定められており、下流の河川改修の進捗状況等を勘案しながら、必要に応じて見直してまいります。
 3点目の降雨予想や洪水予想の信頼性向上と住民への周知についてでございますが、今回の運用に当たり、事前放流を判断する降雨予測については、気象庁の気象情報や数値予報結果等を用いております。
 利用に当たっては、予測時間帯別に精度が高いものを組み合わせるなど、現在の知見においてできる限り予測精度を高める工夫をしております。今後、運用を実施する中で精度を検証し、ダムの運用改善につなげていくこととしております。
 また、今回の事前放流は、大規模な出水が予想される際に実施するものです。したがって、関係市町等が避難勧告等の準備、発令等の行動を迅速にとれるように、事前放流を実施する際にあらかじめ通知し、その趣旨を確実に伝達することとしております。
 今後とも、関係市町が住民への周知等、的確な対応を図れるよう、必要な連絡を密にしてまいります。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁をいただきました。
 今回のダム操作改善である利水容量の活用は、ダムの治水能力を上げる画期的な一歩だったと評価しています。同時に、これとても限りある能力アップですから、今後ともダムの安全性向上とともに、答弁にありましたように、河川整備全体の課題、そして、より高度な予報体制と住民への情報提供に引き続き努力を続けていただきたいと思います。
 この問題でも1点、要望をさせていただきます。
 気象庁や気象協会から得た最新鋭の予想データを活用するということですが、県のホームページやテレビのデータ放送では、各地の雨量や河川の推移の実測データが今はリアルタイムに見れるようになっています。加えて、土砂災害情報のページでは、県内をメッシュに分けて、数時間先の降雨予想と土砂災害危険度が見られます。ここで、このダムや河川単位の降雨予想を加えて、わかりやすい形でダムや河川についても予想の部分を住民や地元自治体に提供できれば、防災に大変役に立つというふうに思います。
 国に対して気象データをしっかり求めると同時に、住民に対する情報提供についてもぜひ検討されるよう要望をしておきたいと思います。
 では、3つ目の質問の柱に移らせていただきます。
 今議会に上程されました議案第92号津波からの円滑な避難に係る避難路沿いの建築物等の制限に関する条例についてお尋ねをいたします。大変長い名前なので、以下、「避難路沿い建築物条例」と略して質問をさせていただきます。
 昨年6月に条例化された景観支障防止条例は、いわゆる廃屋対策への県民からの要望にこたえるべく提案されたものでありました。私は一般質問で、空き家、廃屋対策の物差しが景観というのはいかがなものか、防災や安全というのが当たり前ではないかと質問をいたしました。また、対策の実効性や権利侵害になりはしないかという点についても議論をさせていただきました。議会各方面から出された意見に基づき、今回の避難路沿い建築物条例案の提案となりました。
 私は、昨年の質問の上に立ち、今回の条例案について2つの点で質問をさせていただきます。
 まず第1点は、条例案による廃屋対策の実効性についてです。
 昨年の景観支障防止条例に加えて、今回の避難路沿い建築物条例、この2つの県条例が県民の要望にこたえた実効あるものとして機能するかどうかが問われているのではないでしょうか。今回の条例案の実効性について、どう考えておられますか。
 そして2点目に、前回も随分強調させていただいたんですが、対象物件に対する支援制度であります。
 今回の条例案でうたわれた建築物所有者の義務や責任を明確化するというのは、私は1つの方策だと考えますが、条例で義務づけるとか命令するというだけではなくて、避難路の確保は公的かつ喫緊の課題であることから、避難路沿いの建築物の耐震化や撤去を促進する支援事業こそが必要ではないかという点について、お答え願いたいと思います。
 以上2点、県土整備部長より答弁顧います。
○議長(山下直也君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 1点目の条例案による廃屋対策の実効性と、2点目の避難路沿い建築物の耐震化・撤去促進事業が必要ではないかという、この2つについてあわせて回答させていただきます。
 本条例は、地震時の津波からの避難路を確保し、人々の命を守る対策の1つとして、避難路沿いの建築物等に一定の制限を設け、勧告や命令等の措置を定めたものでございます。所有者等が命令を履行しない場合で、避難路に及ぼす影響が重大なものには、行政代執行法を適用し、対処することとなります。県といたしましては、今後、市町村と連携し、本条例を効果的に運用することにより、避難路沿いの建築物等の耐震化とともに、議員御指摘の廃屋対策についても、これまで以上に進んでいくものと考えております。
 また、耐震化につきましては、現行の補助制度を活用していくとともに、撤去につきましては、公共の利益に反する場合、景観支障防止条例や建築基準法の規制において厳格に対応してまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御答弁いただいた廃屋対策としての実効性ですが、これ、難しい問題です。昨年の景観支障防止条例とあわせて、なかなか抜けない伝家の宝刀を2本差したというだけにならないように、市町村とともに住民からの具体的な相談にしっかりと乗っていただきたいというふうに思います。
 また、補助制度、支援制度の問題ですが、これ、なかなかすぐにはいい返事が返ってきません。しかし、津波浸水地域をどうするか、避難路をどうするかという問題は、これから、ことしから来年にかけての大きな行政課題となってまいります。しっかりと県庁全体で議論をし、市町村の意見もよく聞いて、今後の事業化、予算化に向けてしっかりと御検討いただけるよう、これは要望にさしていただきます。
 それでは、最後に4番目の柱、県内における軍事訓練計画についての質問に移らせていただきます。
 まずは、県立自然公園煙樹ケ浜での自衛隊軍事訓練計画についてです。
 これまで美浜町にあった陸上自衛隊施設部隊が、突如、第304水際障害中隊に改編をされ、水際地雷敷設訓練の計画が打診されたのは9年前のことでありました。私ども日本共産党県議団は、2003年12月議会で藤井健太郎議員が当時の木村知事に、そして私が2009年6月議会で仁坂知事に対して、県立自然公園での軍事訓練はすべきではないと迫ってまいりました。
 この水際地雷敷設訓練については、3月に漁協の同意が取りつけられたことにより、このほど議会開会中の19日に国に対して訓練に同意をしたということでありますが、このことについて、私は、この県議会の場で強く抗議をするものであります。
 県民の憩いの場である県立自然公園煙樹ケ浜で、どのような訓練がどのような規模で実際に行われようとしているのか、まず危機管理監に説明を求めます。
○議長(山下直也君) 危機管理監半田和雄君。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 水際地雷訓練の全貌についてでございますが、煙樹ケ浜で実施を予定しております水際障害訓練は、海上部分30日間を含む約40日間の訓練をことし7月から来年2月にかけ6回に分けて行い、防災航行訓練は、8月、12月、3月にそれぞれ2日間実施する計画であると聞いております。
 水際障害訓練の内容は、煙樹ケ浜の陸上部分で模擬水際地雷の敷設機への装てん、水際地雷敷設装置すなわち水陸両用車への積載、その前面水域において水陸両用車による模擬水際地雷を敷設するもので、敷設する海域は、幅約2キロメートル、奥行き約1キロメートルの範囲と聞いております。
 来年度以降の訓練は、他の部隊も参加し、海上部分の60日間を含む約80日間の訓練を実施する計画であると聞いております。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御説明をいただきましたが、確認のため再度質問します。
 当初、9年前に説明をされた訓練内容や、それとか模擬訓練からの変更点はあるのか、あるとすればどういう点なのか、再度答弁顧います。
○議長(山下直也君) 危機管理監。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 当初の計画や模擬訓練からの変更点はあるのかどうかという御質問でございますが、平成15年度末に和歌山駐屯地施設隊から水際障害中隊に組織改編され、そのときの水際障害訓練計画では、ヘリコプターの使用や煙樹ケ浜キャンプ場での野営の計画はありましたが、今回はヘリコプターの使用や野営の計画はないと聞いております。基本的には、平成18年度に実施をいたしました模擬訓練以上の訓練はないものというふうに聞いてございます。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 御説明をいただいたわけですが、当初予定されていたキャンプ場での野営や訓練確認用のヘリコプターの使用がなくなったというのは、県民からの批判の声が一定の制約を加えたものだと私は考えます。しかし、それでもこんな軍事訓練が、基地や演習場の中ではなくて県立自然公園内で行われるというような例は他県にあるのかないのか、この点はいかがですか。
○議長(山下直也君) 危機管理監。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 県立自然公園での軍事訓練実施例についてお答えします。
 自衛隊による水際障害訓練は、今年度から日本全国で美浜町と北海道天塩町の2カ所で行われることとなります。天塩町の訓練場のほうは自然公園内ではございません。
 以上です。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 以上、危機管理監から答弁いただいた点は、いずれも重要なものです。
 まず、計画の変更点ですが、これらはいずれも住民からの不安と批判の声が大きかった問題です。キャンプ場での野営、これは観光面から大きなマイナスだという指摘がありました。また、ヘリコプターの使用ですが、当初は訓練状況確認のためにヘリコプターを使用することがあるという説明でありましたが、北海道の天塩では、水陸両用車だけでなくて、ヘリコプターによる水際地雷敷設訓練が実際に行われているんですね。先々でなし崩し的に訓練拡大とならないか、心配をされていたところです。また、模擬訓練以上のことはしないというのも、これは、この間、町との約束合意事項になっている点だと思っています。これらの点は、住民の世論が一定歯どめをかけたという面があると思います。
 しかし、いずれにせよ、今答弁のありました訓練が実際に始まろうとしています。7月に始まって、8月は、答弁ありましたように、趣旨、中身は違いますが、防災訓練で水陸両用車が訓練をいたします。9月に2回、10月に1回訓練、11月がなくて、12月は防災訓練、1月に1回、2月に1回の訓練、3月は防災訓練と、こういう日程表です。
 来年度は、これに加えて他県からの部隊が来て、別に1カ月ほどのまとまった訓練を、これはこれで行うわけですから、結果としてほぼ毎月のように訓練が行われる。まるで自分の庭のように煙樹ケ浜を使うという状態になるのではないでしょうか。
 そもそも、陸上自衛隊の軍事作戦訓練、実弾や模擬弾を使うような訓練は、基地や演習場の中でやってきたものです。一般の土地で、そこを占用して行う訓練は基本的にないんです。ですから、演習場の外でやっているのが、唯一例外がこの水際地雷訓練なんですね。だから、北海道の天塩は、それに加えて自然公園ではないという御答弁がありました。
 通常、訓練をする演習場の中には、その一部が自然公園にかかっているところもあると聞きますけれども、そこは、一般の住民は入らないところでやってるわけなんですね。今度の訓練は、この和歌山県で、全国に例のない、一般の住民や観光客が自由に出入りできる自然公園を訓練地にしてしまう、全国に今まで例のないことをやろうとしているわけです。この先、実際に煙樹ケ浜で訓練が始まれば、自然公園での軍事訓練に対する批判の世論がより高くなってくるでしょう。
 私は、貴重な自然環境を有し、県民、観光客の憩いの場であり、県立自然公園の中でも特に貴重な第1種県立自然公園である煙樹ケ浜にこのような軍事訓練はなじまないと訴えてまいりました。
 このような計画に県は同意すべきではなかったと私は考えますが、知事の答弁を求めます。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 煙樹ケ浜のすばらしい海岸美は、観光客や住民にとっては憩いの場でありまして、本県にとって重要な観光資源であると認識しております。
 一方、防衛施策は国民にとって大変大事な国の仕事でありまして、地方自治体も協力するのが当たり前だと思います。
 美浜町で水際障害訓練ができなくなった場合を考えますと、美浜町に自衛隊が駐屯する意義がかなり少なくなってまいります。自衛隊がそういうところを求めて県外に移転してしまうおそれもありまして、そうなれば和歌山県の貴重な人口の流出につながってしまうと私は思います。
 また、昨年3月の東日本大震災のときには、全国の自衛隊による大規模な被災地救助活動がなされ、さらに9月の紀伊半島大水害の際には、地元和歌山駐屯地の部隊がいち早く被災地に入り、救援活動を実施しました。地元の自衛隊の存在は、真に心強いものと皆さんが実感したと思います。地元に自衛隊がいてくれるということが貴重なことだと思います。
 一方、水際障害訓練は、住民の生活や漁業、観光等への影響も考えられることから、これまでにも防衛局に対して、地元と十分協議してくださいというようなことをお願いしてまいりました。その結果、水産業とも合意できたし、また時期は、キャンプの時期は避けて行うということになったと聞いております。
 それから、自然公園でございますけれども、自然公園を破壊するようなことがあっては、自然を守るという点で悪影響ができたら、もちろんいかんわけでございますが、自然公園というよりも、私は全国で昆虫採集をやっておりますので、自衛隊の基地が国立公園の中にあるというようなところがあって、そこに立ち入って採集をさせていただいたり楽しましていただいたりすることは、日曜日ですが、ございます。よく目的と整合性を考えてやっていくべきだと考えております。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事から御答弁をいただいたわけですが、私は自衛隊の役割を問うたのではございませんで、訓練の姿勢はすれ違いに終わりました。
 3年前の、地元と同意をして進めていくという、その姿勢の延長線上で自衛隊の計画に県はゴーサインを出してしまったわけですが、そういう理屈での計画合意に強く抗議をするものです。
 しかし、県民、住民の運動はこれからだというふうに私は思っています。毎年毎年、新しい年度の同意を更新していく手続が続くでしょう。「煙樹ケ浜での軍事訓練はやめよ」の世論を広げて声を上げ続けていく、このことを改めて表明をするものです。
 次に、米軍オスプレイの配備による低空飛行訓練についての質問に移ります。
 事故多発の欠陥機というふうに指摘をされております米海兵隊の垂直離着陸機MV22オスプレイの低空飛行訓練計画が明らかになりました。全国の飛行ルートが公表され、その中のオレンジルートは四国から紀伊半島にかけてのルートを使用するものです。
 このオスプレイは、着陸時にはヘリとして、水平飛行時はプロペラ機として飛行する最新鋭機ですが、開発段階から数多くの事故を起こしているばかりか、既に運用段階だというのに、この4月にはモロッコで墜落し4人が死傷、そして6月13日にも米フロリダ州で墜落事故が起きたと報道されています。わずか2カ月の間に2回も墜落事故を起こしている異常な欠陥機です。
 オスプレイは、飛行中にエンジンがとまったときに、機体の降下による空気の流れでプロペラを回して非常着陸するオートローテーション機能、自動回転能力というのがありません。エンジンがとまれば、コントロールできずにそのまま墜落するという代物で、日本の航空法では、このオートローテーション機能のない航空機は飛行自体が禁止をされているんです。それを、アメリカ軍用機だから日米地位協定で適用外だ、飛んで構わないというわけなんですね。
 これまでも、県内の山間部を飛ぶ米軍低空飛行訓練には県民から抗議の声が上がってきました。これをやめるどころか、この危険なオスプレイが危険な低空飛行訓練をする、これは絶対に許すことはできません。沖縄県も県として反対との姿勢です。和歌山県としても、抗議、拒否すべきだと考えます。県はどう対応しようとしているのか、知事の御答弁を願います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) オスプレイ配備に向け、米国が作成した環境審査報告書によりますと、低空飛行訓練のため日本の国内各地に6ルートが設定され、和歌山県が含まれるということが判明いたしました。
 これまでも、米軍機の低空飛行による騒音被害の報告に対しまして、防衛省を通じて米軍に訓練の中止を強く申し入れてまいりました。今回発表されたオスプレイによる低空飛行訓練は、このような問題も当然あります。また、本県の上空を飛ぶ必然性が説明されておりません。したがって、現在の案には私は反対であります。
○議長(山下直也君) 松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 知事から、訓練には反対だという答弁をいただきました。
 この危険きわまりないオスプレイ配備と低空飛行訓練には、国内の関係自治体や議会から反対の声が次々に上がっています。県としても、関係他府県と連携し、国並びに在日米軍に対してきっぱりとした態度で臨んでいただくよう強く要望いたしまして、私の今回の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、松坂英樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時27分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(山下直也君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 31番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 こんにちは。
 一般質問をさしていただきますが、昨日、和歌山県出身、星林高校出身の小久保選手が2000本安打を達成いたしました。きのうの夜は、実は前から計画していた懇親会がありまして、そこに小久保選手のお母さんも一緒に参加していただきまして、会場は本当に祝福の声、それから小久保選手のお母さんの携帯にはたくさんの祝福のメッセージが入り、本当にいい雰囲気で、うれしさ、幸せを共有さしていただける、そういう会になりまして、こういう小さな元気というか──大きな元気ですね──こういうものが和歌山県に広がればいいなと思いましたので、感想として述べさしていただきます。
 では、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさしていただきます。
 最初に、コスモパーク加太活用についての質問でございます。
 和歌山県土地開発公社が所有するコスモパーク加太2.8ヘクタール、この斜面にメガソーラーの建設が始まっております。斜面に設置する工法は非常に珍しく、今まで利用できなかった用地が活用されることは歓迎すべきことだと思います。また、和歌山市が所有するコスモパーク加太用地にも、再生エネルギー事業者からの問い合わせ、現地視察が頻繁に訪れているようです。
 この和歌山市の用地に隣接する県、市、それぞれの土地開発公社が共有する土地については、森林公園周辺に市の単独用地として集約し、ここを森林公園、スポーツ施設、企業用地、こういった総合的な活用を図るため、現在、市と県は協議を行っている段階にあると聞いております。市は、順調に進んだとしても平成25年秋以降になると、計画の見通しを述べているところであります。
 ただ、再生可能エネルギー事業については、御存じのように、固定買い取り制度の初年度、つまり平成24年中に何らかの契約や設備工事を行っておく必要があることから、例えば次年度の計画にずれ込んでしまうということになりますと買い取り単価が減額されるかもしれないと、こういう見込みがありますから、事業者の計画もそれに伴って縮小される、そういうことにもなろうかなというふうに思ってます。
 事実、数社の再生可能エネルギー事業者と話をさしていただきますと、ほかの府県、市と比較して、検討の速度の遅さ、こういったことについて指摘を受けることがあります。県、市がより有利な条件で売買または賃貸借をするためには、原則、本年度中の契約が必要となります。土地の活用に関しての結論が来年の秋以降になれば、進出してくれるにしても、現在と同じようなよい条件が提示されるとは思えない状況がここにあります。
 和歌山市土地開発公社所有のコスモパーク加太の活用を図るに当たって、和歌山県と和歌山市の土地開発公社が共有している用地の活用を検討しているということから、県の協力がぜひとも必要だというふうに思います。
 県としても、県土地開発公社の設立者としてその運営指導を行う必要があり、また調停に代わる決定──これ、以前の決定ですが──これに基づきまして、コスモパーク加太内の県土地開発公社所有地を平成36年1月まで賃貸し、土地の付加価値を高めるため、企業誘致などの利活用を進めるということになっていることから、コスモパーク加太用地の活用を検討している和歌山市からの協力要請についても、ぜひとも前向きに考えてほしいなというふうに思います。
 そこで、知事に質問をさしていただきます。
 県もこの協議の中に入っていると思いますが、和歌山市からの協力要請に関してどう考えているのでしょうか。質問とさしていただきます。
○議長(山下直也君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のように、コスモパークという膨大な地域には所有関係が入り組んでるところがありまして、県の公社と市の公社が共有をしているというところもあります。
 ことしの初めか昨年の終わりか定かではありませんが、市のほうから、この共有地を解消する、それで、県の土地と、それから市の土地を交換したいというようなお話がありました。理由は、共有地では売れないということでありました。
 私どもの担当のほうからは、市のほうは条件のいいところを市がとって残りを県に押しつけておるというような話がありまして、不愉快だというようなことを私に上げてきましたのでありますが、私は、その理由がそもそもとんでもないと。共有ではなぜ利用ができないのか、その意見が一致すれば、共有財産を売ったり、あるいは人に貸したりする例はこの世界では幾らでもある、別に県はクレーマーでも何でもないんだから、ここを利用したいというんならばどんどんすればいいんで、なぜ共有では利用できないのかというような話をしておきました。
 そしたら、たまたまお正月にある業界における懇親会がございまして、私もいるところの前で、民間会社の方が市長さんに「コスモパークの土地を利用さしてください」というふうにおっしゃいました。そしたら市長さんが、「実は県が共有を解消してくれないんで売れないんです」とおっしゃったわけであります。私はむっとしまして、それで「なぜそうなんですか。今のような共有地だって幾らでも利用できるではありませんか。そもそも資本主義と民法に対しての挑戦ですね」というようなことを言っておきましたが、反論はありませんでした。
 しかし、何かおかしいといって、後でもう一回聞いてみました。そしたら、後で、多分真実を言ったんだろうと思いますが、市の担当の方から県の担当にあった話によれば、実は今、市の公社の財務整理、すなわち市の公社を解体して市に集約するという話が進んでおる、どうも共有があるとこれがやりにくいというような話らしいということがようやくわかりました。それならば、別に県は協力してさしあげたらいいんじゃないかと言って、そういうふうに下にも指令を出して、かつ市長さんにも、ちょっと言い争いをいたしましたんで、後で「そういうことだったらいいですよ」という話をしておきました。
 今回、再生可能エネルギー事業者からの問い合わせに対し、和歌山市は、今すぐできない、なぜなら共有地の集約化をして総合的な利活用計画をつくる必要があり、それは順調に進んでも平成25年秋以降になると思われる等と回答したと議員が御指摘になりました。
 私は、それを聞いて「またか」というふうに思いました。売ろう、貸そうと思えば、いつでも売れます。県は、共有があったとしてもいつでも協力をいたします。もちろんその中身いかんによりますから、条件が合わなければだめなんですが、別にそんな利活用計画なんかなくても、それから公社の再編でも、不動産を現金にかえて持っておけば別に整理ができないわけではありません。
 このように、再生可能エネルギーの事業化と共有地の集約化は全く別の問題でありまして、和歌山市が単独または共有で所有する部分については、当然、今すぐにでも和歌山市がどのように活用するか主体的に判断すべき問題であるというふうに思いまして、先ほどの議員に対する和歌山市の説明、あるいは業者に対する説明は大変理解に苦しむところであります。
 多分、市にも本当の考えがあるんじゃないか。これは私の推測でございます。例えば、条件が合わないので嫌だとか、あるいはソーラーは雇用につながらないから、どちらかというと別のにしたいとか、それはもうごもっともであります。有力者に言われたからといって、正しくない別の理由を述べてごまかそうとしたり、あるいは人のせいにしようとするのはいけませんし、自分の責任逃れのためにそういうことを上に上げるのはもっといけませんし、それを妄信するのもよろしくありません。
 このコスモパーク加太を有効に利用することは地域の発展につながる大変重要なことでありまして、共有地の集約化については、今申し上げましたように、市の事情を勘案して既に協議を進めているところでありますが、そのスピードとは関係なく、今後も有効な活用策は考えればいいし、県としても協力してまいりたい、こう考えております。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 このコスモパーク加太の問題については、今の知事の答弁、かなり踏み込んでいただきまして、全く同じような回答を私も実はいただいておりまして、どうでしょう、混乱するというか、少しごちゃごちゃになったのが、今回一般質問するということでかなり解決というか、ほぐされた状態になってるのは事実です。
 最初につくっていた質問の中では、ちょっと生々しいいろいろの、交換の話であるとか債務保証をどうやってとるのかという話もあったんですが、この辺、少し解明できましたので、うまくこの後、協議が進んで、計画は計画で進め、片や今ある課題に関しては早急に進めるような形で協議に応じていただけたらありがたいかなというふうに思います。
 そして、今は市の場合だったんですが、県の所有する用地に関して、平成22年度、13社からの問い合わせ、訪問、現地視察があったというふうに聞いております。平成23年度の企業誘致の状況はどうなっているのでしょうか。また、現時点での企業誘致の見込み、こういったものは立っているのかどうかというのをお伺いしたいと思います。
 一般的に考えますと、円高、燃料費高、国内の消費低迷、こういったことから、基幹産業というか、大手企業が国内で新規立地するという可能性は非常に低いというふうに思うわけなんですが、コスモパーク加太への企業立地の期待の程度についていかがなものか、企画部長の答弁をお願いしたいと思います。
○議長(山下直也君) 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 企業誘致の状況についてでございますが、コスモパーク加太への企業誘致につきましては、雇用の創出など経済波及効果が期待でき、地域と共生し、地域の活性化につながる企業を誘致すべく、商工観光労働部と連携しながら誘致活動を行っているところでございます。
 企業につきましては、大規模用地が確保できること、高台に位置し、地盤が強固で自然災害に強い用地であること、そして自然豊かな用地であること等をPRしております。
 昨年度は、太陽光発電用地や高台移転先としての需要もあり、問い合わせ件数は前年度の約3倍、38件とふえております。本年度も引き続き企業用地としての問い合わせがありますので、進出につながるよう一層働きかけを強めてまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 この用地の難しさというのはほかにもあるんで、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。
 続いて、和歌山県の経済の現状、見通し、それから消費税の影響というものについて質問をさしていただきたいと思います。
 もう既に御存じのように、政府は、平成26年4月から消費税を8%、平成27年10月から10%に引き上げる消費増税法案、これを閣議決定しております。我が国の財政状況、そして少子高齢化に対応した税制と社会保障の仕組みの構築を行うための重要課題ですが、和歌山県にとっては、県民生活への影響、それから中小事業者が多いという特徴があり、消費増税の影響が出てくることも懸念されます。
 例えば、所得が伸びないのに支出がふえること、大手の動向次第ですが、地元小売店は消費税増税分を価格に転嫁しにくいこと、こういった問題が起きようとしておりますし、不安がっている、こういう状況があります。
 前回の増税のとき、すなわち平成9年のときですが、このときは税収がふえていないという実績もありますし、外的要因もかなりあったわけですが、また、消費に与える影響は小さいものとは考えにくく、消費税率引き上げは、統計上では緩やかな回復基調にある我が国経済を再び失速させる可能性もあるような気がします。
 結局、導入の時期が問題だというふうに思ってます。経済が活性化し過ぎたときに冷やすための増税であれば問題は少ないと思いますから、経済成長を図ってから増税する、これが好ましい姿だと思います。好景気で税収がふえ、その時点で税率を上げるとさらに税収がふえて財政再建も進む、こういう循環になろうかと思います。
 ただ、現在、6月14日、欧州債券市場でEUからの支援が決まったスペインの国債が売られて価格が急落しております。価格が急落ということは利回りが上昇しているということなんですが、この債券の危険水域を示す7%ルールというものがありますが、ついにスペインの10年物の国債の利回りは、1999年のユーロ導入以来、初めて7%台になっております。
 この7%の水準、すなわち市場での継続的な資金調達が困難になる、こういう状況にスペインが陥ったことで、欧州債務危機はさらに深まる危険性があるというふうな形で、世界経済は依然として先行き不透明な姿です。2年先には、もちろん各国、自国の支援によって収束させているとは思いますが、こういう欧州危機の中で消費税導入時期が決定されていると、こういう状況があります。
 また、財政再建に関しても、これはもう見方がさまざまなんで、正解というのはなかなか見つけにくいところがありますが、日本の借金と言われる金額ですが、約1000兆円、これはもうだれでも知っているわけであります。それだけで財政破綻を引き起こすかもしれないという不安に駆られていますし、GDP500兆円に対して1000兆円の借金が増税を裏づける数的な根拠の1つになっていることも事実であります。
 ところが、日本は保有資産も非常に多いことで知られております。平成22年3月末時点の政府のバランスシートによりますと、負債は確かに1000兆円となっておりますが、資産が650兆円あります。つまり、国の借金は差額で見ると350兆円、そして資産650兆円のうち400兆円が金融資産ということになっております。見かけよりも少し圧縮できているのかなという気がします。
 このことについて、先月、上京した際に留学生の方たちと財政についての話を交わしたときに、日本人は余りマクロ的な視点で物事をとらえてない一面があるんじゃないのかなと、こういう話がありました。つまり、経済は、経済全般に目を配って考えること、マクロ的な視点が必要で、その見方ができなければ一部の事象を取り上げて経済全体に影響があると勘違いしてしまうという話もあったわけであります。
 ここ数カ月、消費税増税に関して皆さんと意見交換、議会報告さしてもらった中の代表的な意見を幾つか紹介さしていただきますと、まず会社員の方からは、「所得がふえていない状況、しかも将来的にも給料はそうそう上がるような見通しが立たない中で支出が増加する。これはちょっとつらいな」、こういう意見があります。サービス業の方、「高齢者のお客さんが多いので、その方たちの生活のことを考えると、たとえ10%になっても価格に乗せる、これはできないので、私のところはしません」、こういう経営者の方もいらっしゃいました。会社経営者の方、「増税の理由は理解しているけれども、本音で言うと商売がきつくなりますね」、これは和歌山の地元の商売をしている方、こういう意見が出されております。
 所得、給与が下がる一方で、ますますお金を使わなくなっている。所得が上がらない経済が成長することはなく、人々は耐久生活に入ります。このように消費を減らし貯蓄をふやす循環が続く限り、今のデフレからの脱却は不可能ですし、このように所得が上がらない、消費税額を小売価格に反映させられないのでは、生活や商売はますます厳しくなるように思います。
 そこで、知事に質問であります。
 和歌山県は、公共事業による請負契約金額、これ、6カ月連続で増加、消費においては、既存店では5カ月連続で前年を下回っている、こういうふうな状況があります。公共事業はふえてるけど消費は戻っていない、こういう状況です。ただ、新車登録台数、これは7カ月連続で対前年比を上回っているというふうに、いい条件もあります。
 これは、台風12号による公共事業、エコカー減税による新車登録台数の増加が要因だと思いますが、このように、公共投資や補助金があれば経済指標は上向くわけであります。ただし、個人消費が低迷しているのは所得の伸び悩みなどが原因だと思われます。政府や県から何らかの措置があれば県内経済も幾分上向きますが、市場に任せていれば和歌山県経済は厳しい、こういうことかなというふうに思います。
 これ以降の和歌山県経済の現状と見通し、また、消費増税に対する先行きに不安を感じている中小事業者、サービス事業者に対する支援策などの考えがありますでしょうか。知事からお考えを聞かせていただきたいと思います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 我が国の経済は依然として厳しい状況にあるものの、復興需要等を背景として緩やかに回復しつつあるというのが月例経済報告等の政府などの見解であります。
 本県はどうかというと、本県の経済状況は、御指摘のように、実は公共事業が随分出てますから、ことしに入り、台風被害の復興工事が本格化してきた状況下にございまして、また機械工業、化学工業など、一部業種の鉱工業生産指数に改善の動きも見られるというところもあります。しかし、個別に調べていくと好不調がいろいろとありまして、全体としては、県内企業全体の景況は依然として厳しいと私は思っております。
 先行きについては、円高の進展とか、欧州政府債務危機とか、この夏の電力需給の逼迫とか、電力料金が上がりそうだとか、不透明感が強まっておりまして、本県の経済はやっぱり楽観できないと思います。今後の景気動向をよく注視していかなければならないと思います。
 一方、御指摘にありましたマクロ経済でありますけれども、資本収支に若干傾向が変わって、ひょっとしたら国内だけで国債がファイナンスできなくなってるんではないかというようなデータも出てきております。
 そんないろいろ悩ましいことがあるんですが、消費税増税が可決され、スケジュールが示されますと、これは経済学の教えるところによると、税率引き上げ前は駆け込み需要が発生して景気は上向いて、引き上げ後にはその反動がありますから消費の減少が発生するということが予想されます。消費税率の引き上げによるこのような経済の影響に対しては、国は責任を持って経済運営を行うことが必要だと思っております。
 また、中小企業者については、引き上げ後に増税分がきちんと製品やサービスの価格に転嫁できないと経営に影響が出るということですから、国においては、適正な価格転嫁の取り組みが検討されているというふうに聞いておりますけれども、ちゃんとやってもらわないと困る。県としても、その施策の実効性が確保されるように、同じく事業者に対する情報提供などに努めていきたいと思います。
 景気そのものは、国以外はいかんともしづらいんですけれども、県としては、景気のいかんにかかわらず和歌山産業の底上げをしないといかんということは、これは我々の目的でもあります。
 そこで、技術開発とか、売れる商品づくりとか、販売促進など、企業の成長を支援する幅広い事業の実施をいたしまして、厳しい経済環境にある中小企業を少しでも支援してまいりたいと思っております。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 今の経済の状況に関する質問をする前に、関係する県の部門の職員さんと、かなりの時間、議論を交わさしていただきました。皆さんの知識の深さとか、財政の安定を図ろうとしていること、それから消費税増税後に中小企業、サービス業の方々に県としてしっかり対応をしようという姿勢が伝わりまして、言い方はちょっとおかしいかもわかりませんが、楽しい議論ができたというふうに思ってます。
 今回の質問はその一部の議論ということになりましたが、県民生活安定のための対策を幾つか具体的なアイデアも聞かさしていただきましたが、導入後も対策をしっかり講じてくれるんじゃないのかなということを期待しておりますので、よろしくお願いしたいなと思います。
 続いて、災害への備えについてであります。
 中央防災会議におきまして、南海トラフの巨大地震想定、これはマグニチュード9.0として昨年度末に公表されております。県内で津波が高いと想定されている地域は18.3メートル。予想を超える余りの規模の大きさに、県民の皆さんの不安感は増しているように思います。
 想定見直しの結果を公表すべきだったかどうかという意見も実はいただいておるわけなんですが、情報を隠したことによるその想定が現実になった場合のリスクを考えますと、早い時期での公表は適切だったと思いますし、その想定に即した対策を打ち立てる、これが必要なことだというふうに思っておりますから、この公表に基づいて、今、県が対策を立てようとしてくれていること、これはありがたいことだというふうに思います。
 その中で、和歌山県は、全国で初めてかと思いますが、そういう対策も実現させております。それは、県内市町村が指定する避難先、そして新たに分類した種別や区分などを、グーグルマップを使った検索ナビやヤフーの地図を用いて情報提供する、こういうシステムを実現さしていることです。
 避難先検索ナビアプリ、これはiPhoneやスマートフォンを使用し、グーグルが提供する地図とGPS機能からルートの検索を行うアプリとして所有者に提供されるものです。この避難先検索アプリのメリットは、どこにいてもその居場所から近くの避難先を知ることができるようになる。このメリットが1つ。それから、和歌山県を訪れた観光客の皆さんに非常時の避難対策としてこれも有効になる。こういう利点もあります。
 ヤフーのほうです。ヤフーの地図上には、携帯電話やインターネットでの位置情報提供が今まではありませんでした。これが、県が調整を行っていたヤフーとの災害協定の取り組みを通じて情報が提供されるようになっております。この取り組みによって、防災・減災の総点検で見直した避難先情報をヤフーサービス上に掲載し、携帯電話やパソコンからでも情報が閲覧できる、こういう仕組みが仕上がっております。また、災害発生時においては、避難発令情報や被害情報、ライフラインに関する情報などの情報を適時提供できるよう対策を講じる、こういった検討も既に始めているというふうにお伺いしております。
 これらの取り組みは全国に先駆けてのものであり、県民の皆さんにぜひ知ってもらいたい安心対策ですが、この取り組みが成立した経緯について、これからの周知方法について、これは危機管理監に質問をさしていただきます。
○議長(山下直也君) 危機管理監半田和雄君。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 検索ナビアプリ等の活用についてでございますけれども、本県では、避難先を周知するためには地図を用いた方法が最も効果的であるというふうに考え、現地の道路等、事情を知らない方でも現在位置から避難先まで簡単にルート検索ができる避難先検索ナビの導入を検討し、アプリの提供を行ってまいりました。
 同様の機能を提供する企業はありましたが、当初は星印による格付など本県独自の情報を掲載する機能がなかったことから費用負担が生じるほどの改修や開発が必要となり、協力に難色を示されましたが、本県が実施する防災・減災対策の取り組みを粘り強く説明した結果、御賛同いただける2社により無償で開発していただき、本年3月から提供を開始することとなりました。
 日本最大のポータルサイトであるヤフーについては、災害時の迅速な対応を目的に災害協定を締結し、取り組んでいきたいとの申し出を受けました。これに対し、本県からの提案として、当初から考えていた避難所マップの掲載を要望したところ、全国で初めてとなる試みではあるが協力させていただくとの回答を得て、協議を重ね、6月5日からYahoo!地図での避難先の検索サービスが開始されたところであります。これにより、ほとんどのモバイル機能において和歌山県内の避難所先検索が可能となりました。
 これらのサービスがあることを今後とも県民に広く周知するため、さまざまな機会をとらえてお知らせしてまいります。また、観光協会、旅館組合とも連携し、観光客への周知を図っているところであり、交通機関等にも協力をお願いし、検討を重ねているところであります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 続きまして、放送局との連携についての質問に移らせていただきます。
 現在、和歌山県内には、4カ所、コミュニティーFM放送局があります。和歌山市、湯浅町、田辺市、そして白浜町であります。そして、現在、橋本市がコミュニティーFM開局の準備をしていますから、橋本市が加わると和歌山県内のコミュニティーFM局は5カ所ある、こういうことになります。
 コミュニティーFM局は、地域の情報伝達手段としてすぐれていますし、手軽に出演が可能なので地域活性化にもつながります。音楽を志している人、地域の活動家など、幅広い人が参加することで地域に元気を与えてくれるものであります。
 そして、もう1つの注目点は、防災対策として、それから災害発生時の情報伝達手段として非常に効果的だという評価があることです。
 過去、大地震が発生した地域において、コミュニティーFM局の貢献度は高いものがあります。地震発生時には地震速報を流しますし、災害発生時には地域の情報をきめ細かく伝えてくれています。情報の伝達は温かさの伝達でありますから、全国的にコミュニティーFMが防災対策として効果的だという評価が得られているようです。
 県としては、福祉施設などに対しては戸別受信機の設置による緊急警報の伝達を図っていますし、防災ラッパ設置の拡大も図っています。戸別受信を兼ねた防災ラジオについては、一部導入を行っている市や町があります。しかし、地域事情に強いコミュニティーFMと市町との連携は余り図れていないようです。もっとも、白浜町は第三セクターのFM局なので、情報の連携、防災時の対応は大丈夫なわけですが、ほかの市町とコミュニティーFM局との間で防災放送協定、こういったものも未締結になっているままです。
 全国の地方自治体とコミュニティーFM局は、積極的に防災放送協定を締結しているところでありますが、和歌山県内で締結した例がないというのは寂しい状況にあると言えます。南海トラフの巨大地震想定の結果を受けて、可能な限りの防災対策、1人の命を大切にしようとする多様な対策を講じることが必至だと思いますが、大切な情報伝達の手段としてのコミュニティーFM局との防災放送協定ができていないことは問題だというふうに思います。
 近畿には、35のコミュニティーFM局があります。そのうち10局が、所在する市町村と防災放送協定を締結していません。その未締結10局のうち3局が和歌山県に存在していると、こういうことであります。災害に関する情報を最も早く伝達することが必要な和歌山県ですが、初歩的なことがまだなされていないと、こういう状況にあります。
 知事室長に質問をさしていただきます。
 各市町とコミュニティーFM局との間で防災放送協定に関する動きはどうなっているのでしょうか。果たして締結できない理由があるのでしょうか。また、県からも早期に防災放送協定を締結することを進めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。よろしくお願いします。
○議長(山下直也君) 知事室長藤本陽司君。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○知事室長(藤本陽司君) 従来、市町村が防災放送協定の相手方としていたのは、県域全体をカバーしている放送局であったと考えております。しかしながら、昨年の東日本大震災では、発生直後から臨時災害放送局が相次いで開局し、また県内でも昨年の台風12号による災害に際して地元FM局がさまざまな情報を発信するなど、その機動性、重要性が十分認識されたところであります。
 そういった背景から、現在、所在市町とFMラジオ局との間で、災害時における放送要請に関する協定締結に向けて協議が具体的に進められているところもあると聞いてございます。
 県といたしましても、大規模災害発生時においてはあらゆる広報手段を使って情報を伝達することが必要不可欠と考えており、コミュニティーFM自身が防災情報の提供に対して高い志を持って対応していただけるのであれば緊急情報の伝達手段として位置づけ、あらかじめその方法、手順等を定めた協定を結んでおくことは有効な手法と考えてございます。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 和歌山市においては、先日の集中豪雨、大雨で和田川沿いがついたときも、地元の放送局、これはコミュニティーFM局だけではなくてAMもそうだったんですが、非常に迅速な情報提供をしていただいてて、情報の伝達という意味では地域に少し安心感を与えるツールになっていたと思いますんで、高い志は十分に持たれてると思いますんで、よろしくお願いしたいというふうに思います。
 それから、現在、コミュニティーFM局の放送は、県内で約23万世帯の県民の皆さんが聞くことが可能です。県内の総世帯数は約40万世帯ですから、約58%の世帯をカバーしていることになりますし、人口で言いますと、100万県民に対して──少し切っておりますが──55万人の方が聞くことができる、こういう状況になっております。
 これらの県内のコミュニティーFM局が連携し、ネットワーク化を図る、例えば協議会を設立する場合、今度は和歌山県と協議会との間で防災放送協定を締結すれば、県として約55%の県民の方々が可聴できるツールを活用できることになります。ここに情報提供を行うことで災害への対応はより迅速になろうかと思います。
 これも、知事室長に質問したいと思います。
 和歌山県とコミュニティーFM協議会──これはまだ設立されておりませんので、仮称とさしていただきますが──との間で防災放送協定を交わすことについてはどう考えますでしょうか。非常時に電波という公共財を活用するためにも防災放送協定を交わしてほしいと思いますが、いかがでしょうか。
○議長(山下直也君) 知事室長。
  〔藤本陽司君、登壇〕
○知事室長(藤本陽司君) 災害時における放送要請協定については、県におきましては、現在、災害対策基本法第57条及び和歌山県地域防災計画に基づきまして、県内全域を放送エリアとするNHK和歌山放送局、株式会社和歌山放送、株式会社テレビ和歌山に民法4社を加えた7社と締結してございます。
 先ほども申し上げましたが、大規模災害発生時におきましては、あらゆる広報手段を使って情報を伝達することが必要不可欠と考えており、県自身も、そうした緊急情報の発信に備えまして、コミュニティーFM各事業者と放送要請協定に向けて協議を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 もう1つ、県下のコミュニティーFM局のある市町で実現させたいのが、J-ALERTシステムであります。これは、全国瞬時警報システム情報を含む緊急情報を、和歌山県下のコミュニティー放送局を使い、即座に県民の皆さんに伝達できる手段のことです。
 もう少し具体的に説明させていただきますと、J-ALERTとは、全国瞬時警報システムなど緊急放送や市町村単位で発令された地震速報、気象情報、津波情報などを、防災行政無線のラッパから住民に、地域に密着した防災情報を伝達する音声告知放送システムのことを言います。
 戸別受信を兼ねた防災ラジオを持っている家庭では、緊急放送が発令されれば自動的に防災ラジオの電源が入ります。ここは問題はありません。ただ、現状は、恐らく大部分の方が防災ラジオを持っていないんじゃないのかなというふうに思います。
 この場合、コミュニティーFM局が各市町村が受信したJ-ALERTシステムを放送した場合、同放送番組を聞いている人は即座に緊急放送が聞けることになります。一般で市販されている、つまり今使っているラジオでも、地元コミュニティー放送を受信していれば緊急放送を聞くことができるのです。これも、情報伝達の手段の多様化という意味では意味があろうかというふうに思います。
 ところで、電波法によると、緊急放送の電波であっても、一たんスタジオで受信させてから送信所に電波を流す、こういうことが求められています。通常、放送局と送信所の間は通信線で結ばれているため、例えば電柱が倒壊したときや通信線が切れた場合は、せっかくの緊急放送が流せなくなると、こういう代物であります。
 ただ、和歌山市内にあるコミュニティーFM放送局は、現在、緊急放送を送信所で直接受信可能なように国と折衝している段階にあります。これが実現できれば、全国でも珍しい防災対策、災害対応の手段となり得るわけです。ただ、これは、市と防災放送協定を締結した後、総務省に送信所設備変更届を提出し、認可を受けた後のことになります。安全のための取り組みが、まず市町村との防災放送協定が締結できていないことから少しとまっているかなと、こういう状況にあります。
 そこで、危機管理監に質問です。
 このJ-ALERTシステムをコミュニティー放送局から放送できる仕組みは、より多くの方々の安全性を高める情報伝達の手段として必要なもんじゃないのかなというふうに思ってます。南紀白浜コミュニティ放送以外でこの仕組みが確立できていないということが少し問題かというふうに思います。
 コミュニティーFM局がJ-ALERTシステム放送をすることに関してどうお考えですか、県として支援できることはありませんでしょうか、お答えいただきたいと思います。
○議長(山下直也君) 危機管理監。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) J-ALERTシステムについてでございますが、市町村からコミュニティーFMにJ-ALERTを接続し、コミュニティーFMでも津波情報、緊急地震速報、弾道ミサイル情報、大規模テロ情報等の緊急情報を放送することは、情報伝達手段を多重化し、1人でも多くの県民に情報を伝達するという観点から効果のあることだと認識しております。
 基本的には市町村と放送事業者との判断によるものでございますが、接続に際し、技術的な相談やJ-ALERTを活用した訓練の相談に応じるなど、県としても随時協力してまいりたいというふうに考えております。
 以上です。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 それでは、最後の項目に移らしていただきます。
 和歌山県地域グリーンニューディール基金、今議会に提案されている案件でございますが、これは、再生可能エネルギーや未利用エネルギーを活用した自立・分散型エネルギーの導入により、災害に強く環境負荷の小さい地域づくり、県土づくりを推進するものであります。地震や台風による大規模な災害に備え、県内で再生可能エネルギーの導入を支援しよう、こういう施策であります。
 主な用途は、公共施設における再生可能エネルギーや蓄電池の導入事業として、防災拠点や災害時に機能を保持すべき公共施設などへの導入を図るもの、これが1つ、また、民間施設における再生可能エネルギー導入促進事業、防災拠点や災害時に機能を保持すべき民間施設に対する再生可能エネルギーなどの導入支援、そして風力・地熱発電事業などへの支援、大型風力発電や地熱発電を──これは余り和歌山ではないかもわかりませんが──計画する民間事業者への事前調査、こういったものの支援に使われる性質のものかなというふうに思います。
 平成23年度に既に基金を設けている東北地方の県におきましては、民間に対しての支援も行っているようです。業種では、医療施設、私立学校、コンビニエンスストア、福祉避難所など、こういったところに再生可能エネルギーを導入する場合は支援対象にしているようです。
 防災の観点から、施設改修、災害時の要支援者対策として、あるいは地球温暖化対策に真摯に取り組んでいる事業者の立場からすると、早くこの支援基準を示してほしいというふうに思います。
 そこで、環境生活部長に質問をさしていただきます。
 この和歌山県地域グリーンニューディール基金は、民間事業者が導入を図る場合も対象に考えているようですが、支援制度のあり方、支援対象などについてお示しください。
○議長(山下直也君) 環境生活部長米田和一君。
  〔米田和一君、登壇〕
○環境生活部長(米田和一君) 再生可能エネルギー等導入推進事業につきましては、避難所や防災拠点において災害時等の非常時に必要なエネルギーを確保するため、再生可能エネルギーや蓄電池等の導入を支援することで災害に強い地域づくりを行うための事業であります。市町村等と協定を結ぶなど、災害時に防災拠点や避難所となる民間施設もその対象となっております。
 具体的には、医療施設、公共交通施設、私立大学、宿泊施設、コンビニエンスストア、福祉施設といった民間施設が太陽光発電と蓄電池、LED街路灯などを設置する場合に、その事業費の3分の1を補助する制度になっております。
 今後、民間施設のニーズを把握いたしまして適切に事業を実施してまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 今の件に関して、この議案、約10億円の基金という話ですが、1施設当たりの事業規模の大きさからすると、全県下に行き渡る規模の予算でもないような気がします。民間施設の防災機能強化の支援までぜひ行き届かしてほしいなあというふうに思います。
 例えば、今もお答えにありましたように、福祉避難所、これを締結している施設、あるいは地域の防災拠点となっている自治会館、こういったところなどを含めて、ぜひ活用が図れるように配慮をお願いさしていただきまして、一般質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 21番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 一般質問は、私で最後となりました。もうしばらくおつき合いいただきたいと思います。
 通告に従いまして質問を行ってまいります。
 まず、電力の安定供給と節電対策について伺います。
 1番目に、安定供給のために何をすべきか。
 目前に横たわる停電という危機に対し政府や電力会社を攻撃するばかりで一向に結論が出ない広域連合委員会や、また、それをあおり計画停電の深刻な影響を伝えないマスコミには任せておけないとの認識で、私たち自民党和歌山県連では、5月21日、関西電力に対して、大飯原発3、4号機の再稼働を促進する要請をしたところであります。
 幸い、その後、広域連合委員会においても、原発廃止を求める橋下市長や影響を心配する京都府、滋賀県両知事が再稼働反対を主張する中で、正論を主張する仁坂知事の御活躍で、とりあえず限定的再稼働ということになり、当面の危機は回避できました。
 しかしながら、依然として電力の安定供給という状況ではなく、国民生活や経済活動の基盤が揺らいでいます。現在、関西電力では、休止していた火力発電所の再稼働を急ピッチで進めていますが、まだ時間もかかる上に、最近は聞かなくなった温暖化や電気料金の高騰という問題があります。ましてや、発電所の建設や自然エネルギーの導入では、当面の危機には間に合いそうもありません。
 電力不足は、ことしの夏だけ越せばよいというものではなく、いつ停電するかわからない後進国並みの電力事情が今後も何年か続きます。
 知事は経済産業省に御勤務された経験もありますが、現在、電力の安定供給のために何をすべきであるとお考えでしょうか、御所見を伺います。
○議長(山下直也君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 電力の安定供給に向けては、安全性を確認した上で、当面は原子力にエネルギー源を頼らざるを得ないと私は思います。
 原子力や火力、水力にも事故のリスクはあります。しかし、原子力をやめ、化石燃料に頼ると、大量の排気ガスが発生いたします。また、化石燃料は、現在のところ日本ではほとんど生産されていませんので、安全保障上の問題があります。いわゆる油断の問題であります。
 量的には余り期待できないけれども、それ自体としては、太陽光や風力、小水力等の自然エネルギーによる供給システムをできるだけ構築していくべきだと思います。また、将来的には、熊野灘沖で埋蔵が確認されているメタンハイドレートなどの新たなエネルギー源の開発にも取り組む必要もあると思います。
 いずれにしても、リスク管理など、すべての要素を含めまして、どういう組み合わせで量的にも価格的にも安定して国民にエネルギーを提供できるかということが重要でありまして、政府はこういうことをきちっと考えて、ぶれないで国民に説明する必要があると思います。
 しかし、現実に起こってることは、現政権だけを考えても、歴代の総理は、鳩山総理は、地球環境問題を考えてだろうと思いますが、原発の大増設を言っておられましたし、事故後は、菅総理は原発を全廃しそうな発言を国際的にもされました。これでは困るのであると私は思います。
 そういうすべてを勘案した上で国も考えるべきですが、県としてもこのような国の政策に──このようなというのは、現に起こってるような国の政策に振り回されるところもありますけれども、そうではいけないんで、秋以降の安定供給についての対応は、情報を十分に収集して慎重に分析した上で、必要な時点で適切に判断し、行動していく必要があると考えております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、15%の節電は可能だったのかということについて伺いたいと思います。
 枝野経済産業大臣が6月15日の記者会見で、大飯原発3、4号機が稼働しても、7月2日から関電管内で始める15%の節電を当面予定どおり進める方針を示しました。大臣は、再稼働には時間がかかり、ふぐあいによる一時停止もあることから、スムーズに発電できる状況にならなければ節電の目標を変えることはできないとしました。ただし、大飯原発が2基とも最大出力に達すると、ピーク時に不足する分とほぼ同じだけの電力を生み出せるので、2基とも順調に稼働した段階で節電目標を15%から5ないし10%程度に引き下げる方針としていました。
 そして、予定どおり、先週の22日、政府は、大飯発電所3号機がスムーズに稼働した場合、節電目標を10%に緩和することを正式に決定いたしました。これに先駆け、県では、夏の節電アクションプランを19日に公表し、県民に節電を要請しました。
 幸い、節電目標は緩和されましたが、昨年は10%の節電要請に対し、家庭で3%、オフィスで5%、製造業で7%だったことや、アクションプランがお願いベースであることを考えると、15%は本当に達成できる目標だったのか、御認識を伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 関西電力大飯発電所3、4号機が稼働せず、家庭、業務、産業の各部門で15%の節電を達成しなきゃいけないということは、これは大変難しいものであると考えております。どう難しいか、これは県民にきちんと説明せないかんもんですから、5月の終わりに県民に真実を発表いたしました。
 議員御指摘のとおり、昨年の夏には、家庭、オフィスには10%以上の節電をお願いしておりましたけれども、実績としては、家庭で3%、オフィスで5%にとどまりました。これは、我々は決してサボっていたとは思っておりませんで、本当に一生懸命やったつもりでございますが、結果的にはこういうことでありました。ただ、関西の中では、和歌山は1%、ポイントが高かったということも事実であります。
 家庭やオフィスで昨年の2倍の節電ができたとしても、15%の節電を達成するためには、これは寄せ合わさないといけませんので、生産部門で27%の節電が必要という計算になりまして、これをやろうとすると産業界や社会生活への影響が大きく、到底達成できるものではなかったと思います。
 このたび大飯原発の再稼働が決定され、この夏の電力需給状況が改善されることになり、危機的な状況が回避されるということとなったと一応考えられます。しかし、御指摘のように、原発のフル稼働までは、準備を始めてから2つとも全出力で動くまでに多大の時間、約6週間の時間を要し、またフル稼働しても、ようやく電力需給バランスが昨年並みという現状であります。
 考えてみますと、古い火力発電所などの設備を総動員して動かしておりますから、発電所が故障するリスクは去年より高いんじゃないかというふうに思います。
 このため、このたび県からお示ししたアクションプランでは、家庭やオフィスについては、家計や経費の節約にもつながることから15%の節電を、産業部門については、業務に支障のない範囲での自主的な節電をお願いしてるところであります。
 これは、あくまでも無理のないようにというお願いでございますので、熱中症などのおそれがありますので、健康に無理のない範囲内で家庭では節電に御協力いただいたらいいと思っておりますし、また私どもは、生産活動をとめるようにというような要請は一切しないつもりでございます。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 3つ目に、計画停電で仕事や生活はどうなるのかということをお聞きしたいと思います。
 10%に緩和されたわけでありますけども、一方、政府は、火力発電所のトラブルなど万が一の事態に備えて、使用率が99%を超えた場合、計画停電を実施することも決定しております。それによりますと、使用率が97%を超えそうな場合、前日の午後6時ごろに需給逼迫警報を発令し、停電の対象地域などを公表します。当日も需給見通しが改善しない場合、携帯電話の緊急速報メールなどで節電を求め、それでも99%を超えそうなら、2時間前に予告して停電を実施するというものです。特に需給が厳しい関電管内は、1日2回になる可能性があるとしました。
 関西電力も、22日、計画停電の概要を公表しました。対象期間は、お盆を除く7月2日から9月7日の平日午前8時半から午後9時まで、1回の停電時間は2時間程度、管内を6グループと、さらに8分割した48のサブグループを公平に割り振り、前日18時ごろに停電の可能性がある対象サブグループを予告し、停電を実施する場合、2時間前までに実施するサブグループを最終的に公表するとのことであります。
 節電は、昨年来、関西の共通課題ですが、ことしの15%のように、数字がひとり歩きして現実離れしています。これは、昨年の東京電力が実施した計画停電がいかに不便なものか、関西では余り認識されていないことが原因ではないでしょうか。
 計画停電の対象外となるのは、医療機関の一部、鉄道動力線、空港、防災、安全保障、電力関連施設と原発周辺30キロメートル圏内と言われていますが、計画停電で県民生活や事業活動はどうなるのでしょうか。また、そのことを県民に理解してもらうことが節電促進になると思いますが、御所見を伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 全く同感でございまして、計画停電となった場合、もちろん緊急全面停電よりははるかにましでございますけれども、例えば病院において、緊急患者の受け入れや緊急手術に支障を来すおそれがあると思います。
 病院の大きいものについては、無理をして電力供給ルートをいじくって供給をするようにすると言ってますので、地域によってはとまらないところが出てくると思いますが、しかし、診療所と医学用語で呼ばれる小さな病院、これも入院患者がおりますが、こういうところでは自家発電装置等が設置されていないわけでございますんで、そういう施設が多いので、人工呼吸器など患者の生命を維持する医療機器がちゃんと動くかどうかというのが大変心配されるところでございます。
 また、特別養護老人ホームなんていうのがありますが、これも停電中に、例えば入居者の容体が急変したときに対応できなかったり、エアコンの停止で熱中症を引き起こすおそれがあるなど、医療機関等においては人命が危険にさらされるということになると思います。
 日常生活においても、これほどの大変なことのほかに、例えば信号機がつかなくなる、それで交通事故が起こりやすくなる、あるいは水道が、これは多分一部だろうと思いますが、断水したりするというようなおそれもあります。また、停電解消時に、例えば電熱器具などが自動的に動くことによって火災のおそれがあるとか、逆に、それがスイッチを押さないと動かないので、今度は別の問題が発生するとかいうこともあります。マンションやビルというのは大体エレベーターがありますが、これが途中でとまってしまう可能性もあって、2時間かもしれませんが、閉じ込められるおそれがあります。
 製造現場では、これはそのときに機械をとめればいいじゃないかということかもしれないんですが、どうも聞いてみると簡単ではなくて、化学のプラントなどによると、一たんとめると再立ち上げに1週間程度を要するというようなことも言われておりました。こうなると、生産活動が全く停止することになって、雇用が大きな打撃を受けます。また、最悪の場合を想定しますと、製造工程中に停電になるといたしますと、化学反応が起こりまして、ガスが発生して大変危険なことになるというような、そういう危険性も考えられなくはありません。
 このように、緊急停電はもとより、計画停電であったとしても、県民生活や、それから雇用に多大な影響を及ぼすおそれがあると考えられるために、この辺は県民の皆様によくおわかりいただかなきゃいけないし、初めからわかっていただくことによって危険を避けるということもかなりあると思いますので、周知に努めてまいりたいと思います。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 今、知事のお話を伺いながら、特に企業なんかは、停電に備えて自家発を導入するというようなこともこれから本当に必要なのかもわからないというふうに思いました。来年度の予算編成に当たりましては、そういうような支援もぜひお考えいただきたいというふうに思います。
 4番目に移りたいと思いますが、先月、御坊市内で土産物屋を営む友人から、神奈川県では県職員が訪問して省エネとか節電の個別指導をしてくれるそうだけれども、和歌山県ではないのかとの問い合わせがありました。
 県から一般財団法人省エネルギーセンターを紹介していただきましたが、各事業所で節電をしてもらうことは経営力強化にもなることから、この機会に県でも省エネ、節電の指導やアドバイスができる独自の制度を設けるべきではないかと思いますが、御所見を伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 独自の制度というお話でございますが、相手が大変多いもんですから、したがって、とりあえずと申しますか、現在いる県の職員に大いに働いてもらって、それでいろんな呼びかけをしていきたいと思っております。
 和歌山県では、企業、産業向けには、県の産業別担当者制度──これは独自の制度ですが──動いております。日ごろからおつき合いをせよと、こういうことになっとるんでありますが、こういう職員がじかに主要な企業や産業界を訪問いたしまして──産業界って、団体とかですね、そういうところを訪問いたしまして、それで関係者へ呼びかけを行うということを去年もいたしておりましたし、ことしもこれから大いにやらしていただくというふうに思っております。また、ホームページやメールなども活用してやっていきたいと思っております。
 うんと数が多い、かつ小規模な産業になりますと、なかなか1社1社は行けないので、そういうときは商工業団体等を通じた呼びかけもしていかないかんというふうに思います。その呼びかけにおきましては、こういう担当者に事前に節電研修をしておかないといけません。そういう職員がちゃんとした正しい知識を持って直接企業を訪問し、電力需給の見通しの説明を行った上で、具体的な節電パンフレットを示しながら取り組み状況の聴取や節電ポイントを助言することになっております。
 あくまでもオフィス等の企業に関してはオフィス等の節電でありまして、生産活動を犠牲にして電力を使うなというようなことを言ってるわけではありませんので、その点、個別の産業別担当者などにもちゃんと教育をしとかないと、間違ったメッセージが伝わったら困ります。
 事業者からの節電の問い合わせについては、勤務時間中の対応になるけれども、一元的には産業技術政策課で対応して、それで正しいことを申し上げたいというふうに思っております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、被害想定について伺います。
 昨年の東日本大震災を受け、中央防災会議が東南海・南海道地震の想定を見直し、その結果が去る3月31日に公表されました。それは、静岡県の富士川河口断層帯から宮崎県南部沖まで断層がずれることでマグニチュード9の巨大地震が発生し、千葉県から鹿児島県までの広範囲に最大34メートルの巨大津波が押し寄せるという衝撃的な内容でした。
 本県でも、すさみ町で18.3メートル、御坊市で17.4メートル、串本町で16メートル、田辺市で12メートルなど、15市町で10メートルを超える津波が襲来し、最大の揺れを示す震度7の地域が6市14町に及ぶとしています。報道を聞いた御坊市の新町や名屋地区の高齢者からは、「津波からはとても逃げられんので、地震が来たらもう死ぬんよ」というあきらめの声も聞かれました。
 和高専の小池准教授は、御坊駅の北方にある亀山へ避難するべきと提案されましたが、亀山までは2~3キロもあり、とてもお年寄りでなくても困難で、ましてや1万人以上の人々が崩壊した市街地をすり抜けて高台へ避難することは大変困難であります。
 知事は、2月定例会で私の一般質問に対して、避難困難地域では高台移転なども含めハード整備の必要性を認められ、先般の政府提案でも、羽田国土交通大臣を初め各方面へ要望されたと伺っております。
 被災後、復旧・復興に多額の予算が必要なことを考えれば、災害予防に予算を支出することは大変合理的で、まさに政治が決断すべき事項であると考えますが、知事の今後の取り組みについて伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 世の中では津波高が高いということがよく言われますけれども、それだけではなくて、むしろ本県における大変な問題は、大津波が極めて短時間に市街地に到達するということが予想される地域があるということであります。場所によっては、津波から逃げ切ることが容易ではないというような地域もございます。
 これらの地域における予防的な津波防災対策として、あらかじめ高台など安全が確保できる場所を造成して、それで移転を誘導するとともに、移転跡地の有効活用は、これは逃げやすい人とか、そういうふうにうまく使うというような施策の検討を始めてるところでございます。
 これらの施策は中長期的に取り組む必要がありまして、すぐには改造ができません、人が住んでおられますから。しかし、始めないとやっぱり永久にできません。それからまた、多大な費用が必要となってまいります。したがって、今月初めの政府提案では、国の支援について、国土交通大臣を初め関係省庁に提案、要望したところでありまして、議員御指摘のとおりであります。
 今後も、機会のあるごとに国の積極的な取り組みや支援を要望していきますけれども、我々もしっかり知恵を出して、沿岸の市町とも連携しながら施策の具体化を進めてまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 私は、御坊のまちのようなところを想定すると、町なかに小学校があるんですけども、運動場を30メーターぐらいかさ上げすれば本当にすごい避難場所になると思うんです。しかし、そういうようなことを学術的に検証されたことがありませんので、私は、防災を考える上で防災技術の開発というのは大切だというふうに思います。
 ぜひ、今、予算のことについて知事からお答えいただきましたが、技術開発という方面でもお取り組みをいただきたいというふうに要望しておきたいと思います。
 次に移ります。
 県では、今回策定する被害予測について、中央防災会議でも御活躍の河田惠昭先生初め、各界の有力な研究者を集め、県地震・津波被害想定検討委員会を設立し、去る6月6日に第1回目の会議が開催されました。
 会議では、内閣府が示したマグニチュード9クラスと、従来からの県の想定であるマグニチュード8.7クラスの2つの津波想定で浸水予測を検討していくことや、本年度中に浸水予測図と被害想定をまとめることを決定しました。
 また、会議では、中川正春内閣府特命担当大臣も出席し、3月に発表した内閣府の調査については「数字だけがひとり歩きする形になり、反省している」とし、「6月中に、より詳細な地震と津波、浸水域の想定を手元に届けるようにしたい」と述べたことが報道されています。
 防災では最悪の事態を想定して対策をとることが原則とされていますが、2段階で想定する意味についてお伺いします。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 3月31日に内閣府から、南海トラフの巨大地震に関する震度分布・津波高の推計結果が公表されました。これを受けて、県では、平成24年6月3日に和歌山県地震・津波被害想定検討委員会を開催し、新たな地震・津波被害想定の策定に着手したところであります。
 その中で、まず30年で70%の確率があると言われる、発生確率が高いという東海・東南海・南海地震の3連動地震の想定、これは県がずっとやっとるんですが、現在の理論や最新のデータによって精度の高いものにしておくということが大変重要なことであって、これにまず照準を合わせて、ハード・ソフト両面から防災・減災対策について全力で取り組むべきだという意見が出されました。このために、3連動地震の被害想定をもう一度きちっと見直すということが必要であります。
 次に、3月31日に内閣府が公表した南海トラフの巨大地震被害想定は、発生確率等々については余り言及しておりませんで、理論的に起こったとしたらこのぐらいになるかもしれないというのを、変な言い方ですが、最大公倍数的に並べたものであります。
 ただ、そういうことはわかっておりますので、中川大臣がおっしゃるほど、そんなに我々それを批判してるわけではないんですけれども、そういうものでありますので、それを前提にして考えるんだけども、それも発生の可能性がある限り県民の生命を守るという観点からはこれを無視することなく、万全の備えとか全部準備するということはできないにしても、そうなったときの住民避難を柱とした対策を行っておく、用意をしておくということが必要でありまして、そのためにどのぐらいまで来るかというようなことを想定しておくことは必要だというふうに言われましたし、我々もそう思っております。
 こういうふうに対応を2つやっとかないかんということでありますが、国の南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループの座長も務める河田先生を会長とした第1回検討委員会において、このように対応を分けた2つの被害想定を持つことがベストであるというふうに言われたわけでありますが、言われるだけで終わってはいけませんので、今度はそれを具体化していくと。国の詳細な情報ももらわないといけませんが、我々もよく考えて、具体化して用意しておくということをこれから精力的にやっていきたいと思っております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 丁寧な答弁をしていただいてまことに恐縮でございますが、時間を見てたらあんまりなくなってきたので、私もこの質問を短くしたいので、御答弁も簡潔にお願いをいたします。
 地震・津波被害想定にもセカンドオピニオンをということでお聞きします。
 さて、現在、県議会ではがん対策条例の制定に向けて準備中ですけども、最近は、がんなどの生命に係る診断や治療に際してはセカンドオピニオンということを聞くことが普通になってきました。私は、1人の命でもセカンドオピニオンを聞くのであれば、数万、数10万の生命にかかわる地震や津波の診断や治療に相当する被害想定やシミュレーション、それから防災計画においても、セカンドオピニオンを聞く必要があるのではないかと考えます。
 実際に、昨年の東日本大震災や12号台風の共通の課題は「想定外」ということでありました。阪神大震災も予告した人はいないばかりか、高速道路の高架橋は絶対倒壊しないと言われていました。
 現在、県では、地震・津波被害想定検討委員会を設置し、検討を始めました。私はその先生方が決して気に入らないわけではありませんが、ここはセカンドオピニオンを求める必要があると考えますが、知事の御所見を伺います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 私の個人の感覚でございますけども、責任を持つべきは県であって、それで参考にすべきはこの被害想定検討委員会ではないかなというふうに思うんです。したがって、その被害想定検討委員会はできるだけ多くの方に入っていただいて、それでいろんな意見を言ってもらうということではないかと思います。
 ただ、これで全部、ほかの人の意見は聞かないと言うとまずいんでございますので、随所にその結果を発表いたしまして、今度はもう広く世間からもいろんな意見を聴取して、それで我々がそれを検討委員会なんかにもフィードバックして、それでまた議論していただくと、そういうことをぜひやっていきたいと思っております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次、いたします。フェイスブックの活用についてであります。
 12号台風の復旧については、官民挙げて取り組んだおかげで予想以上に達成されつつあります。今後は、一刻も早い復興を期待するものであります。
 私は、そのときの経験を思い起こし、フェイスブックを利用できるのではというふうに提案するものであります。
 昨年の被災直後に、ヤマザキパンからパンをくれるというお話をいただきました。どこへ聞けばいいのかということでございましたので、危機管理局へ問い合わせしましたところ、パンの提供のような民生的なことは福祉保健総務課へ言ってほしいということだったので、福祉保健総務課長にお話をしました。すると、もう直接連絡があったのか、パンの提供の話は既に御存じで、せっかく知らせたのに少し残念に思いました。しかし、そのときはそれで話は終わりました。
 それから何日か経過いたしまして、別件で、被災した新宮市で復旧活動に奔走される濱口議員に電話する機会がありましたので、「パンはもらった?」というふうに聞きますと、「知らない」という返事でした。「それなら、市役所に連絡がいってるかもしれないので市長に聞いてみてほしい」とお願いすると、しばらくして濱口議員から、「やはり市長も知らないと言ってる。直接、福祉保健総務課へ問い合わせてみる」との連絡がありました。後日、濱口議員から、2回パンの提供があり、市民も大変喜んでくれたとのお話を伺いました。
 私は、そのときの状況は、福祉保健総務課に大量の情報が集中し、パンクしてしまったのだろうと想像していましたが、今回の質問を機会に当時の担当者から事情を伺いました。やはり田辺市役所には連絡できたが、新宮市役所は、衛星電話で連絡したが、なかなか情報が伝達できず、時間がかかってしまったとのことでありました。私は、今回の経験を通して、災害時には役所には大量の情報が集中するので、情報を効率よく処理するシステムが必要であると認識しました。
 そこで、フェイスブックの提案となるんですが、フェイスブックの便利な機能の中に、ささやくだけでみんなに伝えてくれるということ以外に、友達の情報も──友達がほかの友達に伝えたことを一々私にお知らせをしてくれるという便利な機能があります。この有効ないろいろある機能については、午前中、藤山議員も広報に使えないかという、そんな提案もありましたが、私も大変便利なツールだというふうに思っております。
 このツールを利用すれば、パンに当てはめると、和歌山県がパンをもらったということを表明したり、田辺市役所にパンをもらったということを伝えると、新宮市役所にも自動的に伝えてくれるという、こんな機能なんです。
 現在、フェイスブックのサービスがそのまま使用できるということではありませんけども、既に佐賀県の武雄市のように市役所のホームページから切りかえるところもあって、フェイスブックのような汎用性のある情報伝達システムを災害時のシステムとして応用することができないか、御所見を危機管理監に伺います。
○議長(山下直也君) 危機管理監半田和雄君。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) フェイスブックの活用についてでございますけれども、昨年の紀伊半島大水害や想定される南海トラフ巨大地震などの大災害では、非常に多くの情報を迅速かつ正確に処理し、災害対応に当たる必要がございます。特に県と市町村は、避難者やライフラインの状況等について情報を共有し、できるだけ速やかに災害時要援護者対策や物資の提供等を行うことが大変重要であります。
 災害時に県と市町村は和歌山県総合防災情報システムを利用し、災害情報を共有しますが、東日本大震災の教訓を踏まえ、今年度実施する災害情報収集分析システムにより、災害時にリアルタイムで避難者や避難所の情報並びに救援物資のニーズ及び在庫状況等について情報収集するとともに、情報共有するシステムを構築し、必要な情報についてはインターネットで公表する予定であります。
 災害時の情報収集等については、以上の方法により行う予定であり、現在のところ、フェイスブックの利用については検討してございません。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 私は、すばらしい機能だというふうに思います。かわるものを何かお考えのようでありますから、どんなものができるのか、ぜひ注視をさせていただいていきたいと思います。
 次に、ため池廃止事業について伺います。
 私の地元に後谷池という池があります。江戸時代にできた、もう200年も受け継がれてる池であります。平成に入って70メートルの堰堤も改修する、大変大切な池でありました。
 しかし、最近、この池の役員が、私の父に役員をかわってくれというふうに言ってこられました。父も82歳で、とてもお受けできないのでお断りしましたが、改めて池の周辺を見渡しますと、田んぼには草木が生い茂り、かつての田園風景は原野の状態になっております。わずか10年余りでこのような状態になるとは思いませんでした。県内では約5500もの池があると言われてますから、こんな池はほかにも多くあるんではないかと想像します。
 しかし、この池は実は普通の池ではなくて、この池の真下には近畿自動車道が通っております。現在、県では、高速道路を災害時の緊急避難、復旧・復興の基盤として、命の道として延伸や4車線化を要望してますが、上流のため池の破堤で、思わぬことで道路が通れなくなることもあるわけであります。
 これまで行政は、水利など農業振興のために補助金を出してきましたけども、今後は、管理できなくなった池を廃止したり規模を縮小するなど、農業振興とは言えない、そういう事業にも取り組まなければならない、そんな時代が来たのではないでしょうか。
 今後の対応について、農林水産部長にお聞きします。
○議長(山下直也君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 本県には約5500のため池が存在し、農業用水確保のために活用されております。県では、このうち比較的規模の大きい受益面積2ヘクタール以上の池約1500カ所について、ハザードマップ作成支援の作業を進めているところです。
 議員御指摘のように、近年、農業者の高齢化等で農業の担い手が減少する中で、耕作放棄地の増加等を背景に、ため池管理に支障が生じていることは理解しております。管理者が不在となったため池についての対策は、所有者である市町村等が廃止や余水ばけの切り下げなどの安全管理に努めるべきと考えております。
 県では、ため池決壊等に対する地域の防災安全度向上のため、地域の実情に応じた改修や対策を進めるため池改修加速化計画を策定中でございますが、その中で、ため池の廃止についても1つの手法として検討してまいります。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 どんどんいきます。
 3番目に、教育問題についてであります。
 かつて高度成長期に経済指数が上位だった本県が、現在の低迷から脱却し、再び光り輝くためには、国体の選手強化のように、理系や県内産業で活躍できる職業学科を奨励することが必要ではないかと考えます。
 私は、昨年の2月定例会で高校の学科のあり方について質問したところ、知事は、「社会の求める人材育成や本県の特色を生かした教育を行えるよう、バランスよく設置することが大切だ」とし、学科改編についても、「時代の要請に対応しながら考えていく必要があり、観光や物づくりに従事する人材の育成などは特に重要だ」と答弁されました。
 現在、県教育委員会では、職業学科のあり方について議論を始めたと伺ってますが、教育長に今後の取り組みについて伺います。
○議長(山下直也君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 職業学科を有するすべての高等学校では、平成22年度から、わかやま版「地域産業の担い手育成プロジェクト」として、企業人による実践的指導や長期企業実習などに取り組み、地域の活性化に貢献できる人材育成を図ってきています。
 さらに、本年度からは、工業科を持つ5つの高等学校で、わかやま産業を支える人づくりプロジェクトとして、各学校ごとに協力企業グループ「校友会」を組織し、産業界との結びつきを一層充実させた取り組みを進めています。
 また、昨年度から、和歌山県地方産業教育審議会に対して地域活性化に貢献できる人材の育成方法について諮問を行い、職業学科のこれからのあり方やキャリア教育、職業教育の推進方策について協議をしていただいているところでございます。
 今後、これらの協議の結果を踏まえ、観光や物づくりなど、地域産業に従事する人材の育成も含め、時代の要請に対応しながら、本県の特色を生かした職業学科のあり方や改編について検討してまいります。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、学力テストの反映について伺います。
 かつて企業誘致の研究に福井県へ訪問したとき、同行の花田議員から学力テスト全国1位の教育についても聞こうと提案があり、事前に本県の内容も知っておこうと2人で教育委員会を訪ねました。分析はまだこれから行うとのことでしたが、福井県では1位の理由を懇切丁寧に教えていただきました。
 詳細は花田議員が平成21年12月議会の一般質問で報告されたとおりですが、改めて福井県の特色を挙げてみると、まず福井県は、昭和の学力テスト以来、途切れることなくずっと県独自で継続して行ってきたことが挙げられます。そして、教員労働組合が教育行政に協力的であること、子供たちの生活環境がよいこと、さらに知事の政策として、30億円余の県費を投じて、小学校低学年は教員2人プラスPTAボランティアのチームティーチングを行っているとのことでありました。予算をかけなくてもできる施策もあり、ぜひお手本にしていただきたいと思います。
 さて、学力テストは継続することに最大の効果があると考えますが、本県では学力テストの結果は実際に教育にどのように反映されているのでしょうか、教育長に伺います。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 全国学力・学習状況調査等の結果、本県の児童生徒は、基礎的、基本的な知識、技能はおおむね習得できていますけども、一部には課題の見られる児童生徒もいます。
 本県では、こうした課題を解決するため、日々の授業の工夫、改善を図るとともに、放課後や長期の休み等を利用した補充学習の充実に取り組んでいます。学んだことがしっかり身についていない児童生徒を対象とした補充学習は、現在、ほぼすべての小中学校で実施されており、基本問題に繰り返し取り組ませたり、質問に答えながらわからないところを教えたりするなど、きめ細かな指導が行われています。
 今後も引き続き、全国学力・学習状況調査等の結果を踏まえて、より効果を上げられる授業改善の取り組みや、本県がこれまで進めてきた補充学習の一層の充実を図り、学力の向上に努めてまいります。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、栄養教諭への任用がえについて伺います。
 栄養教諭については、尾崎太郎議員が平成21年9月定例会の一般質問で栄養教諭の役割と配置状況についてただされています。当時の山口教育長が、役割と期待は大きい、今後とも栄養教諭の資質向上を図るとともに栄養教諭を中心とした食育の推進に積極的に取り組むとの答弁をされています。
 私たち県議会も、現在、がん対策条例策定の準備中で、いろんな方からお話を伺いますが、皆さん指摘されることは教育の大切さであります。まず、がんにならないような生活習慣を身につけることが大切で、これは学校教育で行う必要があります。さきに成立した歯科保健条例策定時にも、弗化物洗口など、教育の大切さを痛感しました。
 だれもが一番大切という命、その命を守る健康教育すなわち保健教育は、国民幸福や医療費抑制の観点からも、他の教科と同等に大変重要であります。しかしながら、現状ではそうなっていません。
 そこで、私は、今後の保健教育は体育の教諭だけに任せるのではなく、学校医や学校歯科医師、学校薬剤師のほか、ぜひ栄養教諭にも参画させるべきであると考えています。
 保健教育については改めて伺うこととして、尾﨑議員の質問以後、栄養教諭は20人まで増加したと聞きますが、栄養教諭の任用がえについての今後の取り組みを教育長に伺います。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 栄養教諭は、栄養に関する専門性と教育に関する専門性をあわせ持つ教員として、学校における食育の推進の中核的な役割を担ってございます。本県では、本年度、新たに5名の任用がえを行い、14市町において20名の栄養教諭を配置しているところです。
 今後も、栄養教諭を中心とした食育の推進に積極的に取り組むとともに、各市町村に配置できるよう、栄養教諭への任用がえの促進に努めてまいります。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、観光振興について伺います。
 去る5月22日から6月8日まで、我が国とウズベキスタンの外交関係樹立20周年の写真展、そしてシンポジウムを開催させていただきました。知事初め同僚の議員、職員の皆さんにも御参加をいただきました。和歌山県初め御支援をいただいた皆様に、この場をおかりしてお礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
 さて、その準備の過程で気づいたことがあります。我が国では、大手の旅行社が加入する日本旅行業協会いわゆるJATAに、本県には1000社あるんですけども、1社しか加入してないことがわかりました。しかも、その1社は協力会員でありました。鶏が先か卵が先かという議論はあるわけでありますけども、本県が観光立県でいくとするなら、私は、観光企業の、旅行会社の繁栄なく観光産業の繁栄はないというふうに思っております。
 本県でも、ぜひともこの旅行を企画販売する旅行会社の育成というものにも取り組んでいただきたいと思いますが、商工観光労働部長の御所見を伺います。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 旅行会社の育成についてですが、観光立県実現に向けて着地型観光を推進する上で、旅行会社、特に県内旅行会社には、体験プログラムを含む地域資源を旅行商品化し、お客様に満足いただく、滞在時間を延ばして地域での消費拡大につなげるといった役割を担ってもらう必要があり、そのような観点から県内旅行会社の育成支援は重要であると考えております。
 このため、県では、体験プログラムの現地研修や事業者との商談会の機会を設け、商品化と利用促進に努めておりますが、県内旅行会社の参画をさらにふやしていくために、今後、体験プログラムの充実と商品化の機会の提供など、県内旅行会社による体験プログラムを生かした着地型旅行商品の造成に向けてより積極的に取り組むことで県内旅行業者の育成支援に努めてまいります。
 以上です。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 次に、フリーゲージトレインの導入について伺います。
 昨年の春、鹿児島まで新幹線が通じました。新大阪から3時間45分で結ばれることになりました。同じ和歌山県の我が新宮市まで、やはり3時間45分であります。大阪の隣にあるのに、本当に物理的にも遠い。私は、新宮市へ出かけるたびに、遠いというよりも、同じ和歌山県にありながらまことに申しわけないという気持ちになります。知事は、このことについてどのようにお感じでしょうか。
 鉄道の高速化については、平成7~8年にオーシャンアロー号の導入と線形改良をやりましたが、その後、ありません。和歌山県は、新幹線計画がない数少ない県であります。何とかフリーゲージトレインをというのは、一縷の望みであります。県でも毎年要望してくれておりますけども、私は要望だけというような印象を持っております。ぜひ一歩進めていただくように、知事のお考えをお聞かせください。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 新宮市までの時間距離を短縮することは、本県の地域経済の発展と観光振興を図る上で大変重要でありまして、少しでも時間短縮をしたいという思いを強く持っております。
 フリーゲージトレインにつきましては、九州新幹線長崎ルートでの導入が予定され、また国から北陸新幹線における敦賀までの整備とあわせた導入が関係府県や関西広域連合に対して提案されるなど、近年、技術開発が進展し、実用化に向けていよいよ動き始めております。
 本県の阪和・紀勢本線は国のケーススタディー7路線に選定されているところでありまして、紀勢線、阪和線も忘れないでくれというようなことを実は広域連合でも言うておりまして、かつ、どの方面に向けてもそれを熱心に働きかけて、かつ関係市町村とも連携して、早期導入に向けて取り組みを進めてまいりたいと思います。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 最後に、ホテル等観光産業における地震対策について伺います。
 昨年の12号台風の復旧・復興対策として、県では被災した企業の損害額の10%を支援することとし、各種融資と相まって、悲嘆に暮れる企業経営者を大いに励まし、大いに効果を上げたと伺っております。この補助金は、企業誘致資金を応用した地域企業等事業再開支援事業で、知事の画期的な御判断を評価したいと思います。
 そこで今度は、この事業をホテルなど観光産業の地震対策に拡大できないものか、お尋ねします。
 平成20年の9月にも私はこういう質問をしたわけでありますけども、知事も、ホテルの経営も大変だけども要請をしていくという御答弁をいただいております。
 しかし、ホテルの耐震化が進んでるという実感はありません。観光立県を標榜する本県が、役所や学校の耐震化が進む中、耐震化の進まないホテルに積極的に観光客を内外から誘致することはいかがかと思います。
 観光産業における地震対策について、知事の御所見を改めてお伺いいたしたいと思います。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) ホテルや旅館などの宿泊施設での耐震化につきましては、観光客の安全・安心の確保という観点からも非常に重要であると認識しております。
 県では、建築物の耐震化に関しましては、安全・安心な住まいづくり、まちづくりに向け、和歌山県住宅・建築物耐震化促進計画を策定いたしまして、所有者に対して指導・助言等を行い、耐震化を促進しております。
 また、災害拠点病院等が行う耐震化に係る建てかえや耐震補強工事に対しては、国の医療施設耐震化臨時特例交付金を活用し、耐震化に取り組んでおります。
 昨年の台風12号による紀伊半島大水害の被災事業者に対して実施いたしました御指摘の地域企業等事業再開支援事業については、地域の復旧・復興を早急に実現するための非常時の特別対策でありまして、議員御提案のホテル等観光産業の恒久的な地震対策に拡大することは、直ちには難しいと考えております。
 しかしながら、議員御指摘のとおり、災害に備えて耐震化を促進していくことは大変重要でありまして、ホテル、旅館、病院等、耐震化が必要な建物がいろいろある中で、どのように耐震化を進めていくべきか、実は頭の痛いところでございます。ホテル、旅館もそんなに経営に余裕のある方ばっかりではないんで、むしろ逆の場合が多いんで、なかなか進まないというところがあるわけであります。
 今後、県としては、ホテル、旅館等事業主の要望に応じ担当者が現地に出向き、現状の施策や国の融資制度などの情報提供や個別具体的な相談を行うとともに、ホテル等の耐震化の現状把握に努めた上で、今後どのように耐震化を進めればよいのか、議員の御指摘を踏まえて検討してまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕
○中村裕一君 時間がありませんでしたので意見を述べる時間はございませんが、大いに取り組んでいただくことを期待いたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山下直也君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案等の付託について申し上げます。
 お諮りいたします。お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第96号は行政改革・基本計画等に関する特別委員会に付託いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山下直也君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 次に、お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第86号から議案第95号まで及び議案第97号から議案第102号まで、並びに知事専決処分報告報第1号及び報第2号は所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。6月26日及び27日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(山下直也君) 御異議なしと認めます。よって、6月26日及び27日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、6月28日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時49分散会

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