平成24年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


平成24年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(濱口太史議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 9番濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕(拍手)
○濱口太史君 質問に先立ち、沖縄においての話をさせていただきたいと思います。
 先日、新宮市の熊野速玉大社が中心となってつくられた会である世界平和の木「梛」顕彰委員会が、「世界平和の祈り『梛』沖縄と熊野をつなぐ平和の木」と銘打ち、沖縄県本土復帰40周年を記念して、平和を祈る心が未来につながるようにという願いを込めた式典を行いました。
 会場は、沖縄県豊見城市にある県立南部農林高等学校の校庭、ナギの木の前につくられた特設ステージでした。沖縄と和歌山県両県からゆかりのある約250名が参列し、平和への祈りがささげられました。そこに私も参加をしてまいりました。
 さて、新宮にある顕彰委員会がなぜ遠く沖縄のこのような場所でこのような式典を開催したのか。これには1つの物語がきっかけとなっております。
 今から40年前、当時64歳の香川県の植木職人であった山地義一さんが、熊野三社の御神木で平和の象徴として知られるナギの木の苗500本を種から育てて、本土復帰の記念として沖縄県下の各学校へ植樹することを思い立ちました。この山地さんの思いを受けて全日本空輸株式会社の協力などで沖縄に運ばれたナギの苗は、2年ほど仮植えをして沖縄の風土にならしてから各校に植樹する予定と、当時は大きく報道されたそうです。
 この美談を父である先代宮司から聞かされていた現宮司は、かねてからこのナギの行方が気になり、ぜひ見てみたいと考え、平成3年ごろから沖縄に渡り、木の調査を始めました。ところが、全くその後の状況がつかめず、長年にわたり何度も沖縄を訪ねては手がかりを探し回ったそうです。
 苦労のかいがあって、ようやく平成22年に沖縄県立北部、中部、南部の各農林高等学校の校庭で発見をすることができたとのことです。いずれの木も、沖縄の強い日差しや風に負けず立派に育っていたことに感激をした宮司が、この美談を世間に知ってもらいたい、ナギの木を大切に育ててくれた感謝の気持ちをあらわし、沖縄の恒久的な平和を願いたいという思いで本土復帰の節目の年にこの式典開催を考え、準備に努めてこられたとのことです。
 新宮のナギの木が、山地さんを初めとする大勢の人たちの御尽力と善意により、遠く離れた沖縄とのきずなを深めるきっかけとなったことは、まさに40年の軌跡としか言いようがありません。
 沖縄は、今もなお戦争の傷跡が色濃く残っておりましたが、そこでお会いした方たちは実に明るく、遠方から駆けつけた私たちに大変親切な対応をしていただきました。
 県議会議員となって1年が経過したタイミングでの沖縄訪問は、命のとうとさ、平和の重要性、人を思いやる気持ちを再認識させていただき、今後の議員活動への指針に大きな影響を与えていただけたものと思います。沖縄の皆様が一日でも早く平和を実感できる日が来ることを願うと同時に、これを機に沖縄と和歌山の交流が深く、長く続くことを期待しています。
 では、議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさせていただきます。
 1つ目の大きな項目、台風12号の復旧・復興についてであります。
 1つ目、熊野川の国直轄区間の拡大について。これは要望であります。
 昨年の紀伊半島大水害から早くも10カ月が経過しました。今週も台風4号の直撃を受けた新宮や那智勝浦地域では、一部地域で避難勧告が発令された中、暴風と、新宮市高田地区では時間雨量は約60ミリ、総雨量で250ミリの豪雨に見舞われました。幸いにして大きな被害はなかったとの報告でしたが、安心するのもつかの間、台風5号による激しい雨に、土砂災害に警戒がなされました。大雨が降ると昨年の水害の恐怖にさいなまれる住民も多く、不安はなかなか払拭できません。
 今議会では、高田議員より県管理河川の土砂撤去や熊野川の利水ダムの治水的な運用についての御質問に対し、知事より国に支援を求めていくとの御答弁がありました。私も、同様に12月と2月議会においてお尋ねをし、知事より前向きな御答弁をいただき、今日を迎えております。
 その後も、知事初め、県と地域が一体となっての要望活動の結果、熊野川河口より上流に向かって5キロメートルの範囲は国の直轄区間として、約200億円の予算のもと、5年間で約460万立方メートルの土砂を撤去する河床整備計画が実現したことは大きな前進であります。
 また、上流ダムの運用規定の件につきましても、電源開発株式会社、国、3県で構成されたダム操作に関する技術検討会の中間結果を踏まえ、台風による大規模出水が想定される場合において、出水規模に応じて、池原ダムで1メートルから3メートル、風屋ダムで1メートル水位を事前に低下させ、空き容量を確保するとのことです。知事を初め、県関係者の要望活動のたまものであり、評価と感謝を申し上げます。本年の出水期から暫定運用を開始し、その効果、課題等を踏まえ、引き続き技術検討会において実施内容を検討することとなっております。
 このたびの決定は画期的で、一歩前進したことは事実でありますが、地域からはもっと治水機能を高めてほしいとの声がなおも多く、今後の検討委員会での検証や議論にも、さらに声を強めていただきたいと思います。
 以上のように、大水害からの復旧・復興事業に御尽力をいただいているところではありますが、それらの事業を進めていく上で1つの大きな課題があります。それは、熊野川の管理者がそれぞれの3県に分散しているため、足並みをそろえるために時間がかかり、はかどらない現状があるということです。
 そこで、ことし4月、新宮市の要望活動に私も同行し、知事や近畿地方整備局、県選出の国会議員、国土交通省を訪れ、1級河川である熊野川の国直轄の範囲を、現在の河口から5キロメートルの地点から、さらに約20キロメートル上流の熊野川町宮井付近まで拡大してもらうよう要望いたしました。
 その2日後、知事がじきじきに国土交通省に出向かれた際、その件でも要望を行っていただいたとの報告を受けております。また、25年度の国への要望の中にも加えていただきました。心から感謝を申し上げます。
 国直轄管理を要望する背景には、熊野川の位置関係があります。三重県と和歌山県の県境が川の中心にあるだけではなく、上流へ行けば奈良県にも接しています。河口5キロメートルより上流は、河川法により、昭和45年より和歌山県及び三重県が指定管理を行ってまいりましたが、今回の水害による堆積土砂の撤去作業や河川整備を行うにしても、1つの県だけで行うわけにはいかず、その都度、各県との調整作業が必要となります。箇所によっては、双方の県において被害状況や復旧を優先すべき地域がほかにあるなど、状況の違いで調整が難航するケースもあるようです。このような状態が続き、今後の出水への対応としての堆積土砂の撤去作業がおくれることは、ひいては人災となってしまいます。
 そこで、それぞれの時間的、物理的な問題を解消するため、熊野川に関しては国直轄管理に変更していただくのがベストではないかと考えております。堆積土砂撤去とダム治水の両事業とも、今後も行方は注視する必要がありますが、県当局には、引き続き早期に効果が発揮できるよう、国に対する働きかけへの御協力をお願いする強い要望とさせていただきます。
 このまま、ここで続けさせていただきます。
 次に、国道168号の復旧工事の進捗状況と完了のめどについてお尋ねをいたします。
 土砂崩れや激流で護岸が大きく削り取られた国道168号は、現在も多数の箇所で台風のつめ跡が残されております。台風4号に際しましても通行規制が行われました。
 また、被災から約10カ月経過した現在でも、県、建設業者の懸命な復旧作業に御尽力をいただいているところではありますが、被害の大きさからなかなか以前の状態には戻っておらず、新宮から本宮方面を結ぶ唯一の幹線が全面復旧していないことで、特に緊急搬送を初めとする住民生活や物資の輸送、紀南地域の主要産業である観光業などに大きなダメージを与えていることは否めません。一日も早い本格復旧が望まれます。
 県の復旧・復興アクションプログラムでは、道路や河川の本格的復旧を24年度末までに全体の95%を完成させる目標設定がされています。さきの12月議会においても知事から復旧に向けた心強い御答弁をいただき、現在、新宮建設部管内においても、道路や橋梁、河川、砂防、海岸など、多くの工事が発注され工事が進められていますが、168号における現在の復旧工事の進捗状況と完成のめどについて、県土整備部長にお尋ねをいたします。
○議長(山下直也君) ただいまの濱口太史君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 紀伊半島大水害により、国道168号につきましては、国道42号交差点から奈良県境までにおいて25カ所が被災したため、現在、早期復旧に向け、全力を挙げて取り組んでおります。
 復旧工事の進捗状況ですが、被災した25カ所のうち既に3カ所が完成しており、ことしの秋ごろまでに15カ所を完成させ、片側交互通行規制7カ所を3カ所に減らします。年度内にはさらに4カ所を完成させ、合わせて22カ所が完成することになります。また、通行規制も1カ所にする予定でございます。
 残る3カ所につきましては、大規模工事である高田地区と渇水期施工が必要な南檜杖地区内の2カ所であり、完成までに長期間を要するため、平成25年度中の完成となる見込みでございます。
 なお、ことしの夏ごろには各復旧工事が最盛期を迎え、現状よりも通行規制箇所が一時的にふえることになりますが、地域の皆様方の御理解と御協力をお願いいたします。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいま御答弁をいただきました。県と建設業者の御尽力を改めてお願いし、一日も早い復旧を期待しております。
 次に、そのような国道168号の現状を踏まえ、災害の影響を受けない迂回ルートの強化について質問をさせていただきます。
 昨今の気候変動を見て、予測し得ない雨が降ることを我々も日ごろから心得ておくことが教訓として残されました。そして、季節外れの台風やゲリラ豪雨など、このような気候変動に対応する道路の整備が必要不可欠であります。
 特に、長年にわたり地域高規格道路として整備されてきた国道168号でありますが、台風豪雨による土砂災害や河川のはんらんなどの水害により、一晩でずたずたになってしまったり、土砂崩れの懸念から豪雨時には通行どめになるなど、安全性や確実な走行が担保されているとは言えません。地域の元気や活気を取り戻すためには、いかなるときでも通行ができる強靱な道路が将来的にも必要です。
 昨年の災害で、唯一、トンネル部分は比較的災害が少なかったことから、これ以上山を切るような道路整備は限界があり、今後、トンネルを多く取り入れることの必要性が表面化したのではないでしょうか。
 現在、懸命に国道168号の復旧を進めるとともに、のり面強化やトンネル整備による防災対策の強化が行われていますが、それでも、今後も災害に見舞われるたびに通行どめになることも予想されます。また、高田から佐野を結ぶ道路が市や地域住民の長年の要望事項となっております。
 そうした中、現実的な対応として、国道168号が被災した際にも迂回できるルートを強化する必要があると考えますが、このことについて県土整備部長にお伺いをいたします。
○議長(山下直也君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 国道168号は、紀伊半島大水害による土砂崩れや冠水で長期間にわたり交通機能が麻痺し、孤立集落も発生しました。幹線道路における防災対策強化の必要性を改めて痛感したところでございます。
 この国道168号は、言うまでもなく、紀伊半島を縦貫する幹線道路で、地域高規格道路としてこれまでも重点的に整備を進めてきたところでございます。また、現在も、災害復旧事業に加え、日足道路及び本宮道路における改築事業やのり面強化など、防災対策を集中的に実施しております。
 また、議員御指摘の迂回ルートの強化は、リダンダンシー確保の観点から必要であると考えます。このため、三重県や新宮市とも協力しながら、既存の県道、市道、林道を活用して多重な道路ネットワークの確保に努めてまいります。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 強化に御尽力をいただいている国道168号が以前に比べて格段の進化を遂げていることに対しましては、特に議員になってから和歌山市と新宮市を往復することがふえましたし、そのたびにありがたみと御尽力の効果は強く感じているところです。
 しかしながら、昨年の12号台風に限らず、暴風雨に見舞われるたびに通行が制限されたり、また復旧工事が必要となり、それに伴った費用も発生します。何より、警報が発令されたり増水のために通行の規制がかかると、高田や熊野川町に住む方たち、働いている方たちは身動きがとれませんし、身内や知り合いの方の身を案じて様子を見に行きたくても行けません。まして土砂崩れなどが発生すれば、たちまち孤立してしまうわけです。
 昨今の豪雨により、見た目ではわかりにくいですが、山の状態は徐々に崩れやすい状態にあると考えられます。先ほどの御答弁にもありましたように、川をえぐられたケースでは復旧にもかなりの時間を要します。このような道では、「命の道」ならぬ「命がけの道」と言われても仕方がありません。
 熊野川町や本宮、高田地区や檜杖地区が自然災害におびえる地域のままでは、活性化や発展に力を入れようと考える以前に人が住まなくなってしまうかもしれません。人口減少、少子高齢化を打破するため、そして他地域からの移住や定住を促進するためには安心・安全な地域にすることが前提であり、そのためには、自然災害に影響を受けない、そして少しでも時間を短縮できる道路は必要不可欠であると考えます。
 決してすべてを県に押しつける課題ではないと思います。国や市とも力を合わせて目的達成のために取り組むべき課題だと考えますので、どうか今後とも建設的な議論をお願いしたいと思いますので、何とぞよろしくお願いいたします。これは要望とさせていただきます。
 続きまして、大きな項目2つ目の高速道路についてお尋ねをします。
 1つ目、近畿自動車道紀勢線の整備計画についてであります。
 近畿自動車道紀勢線の整備は、地域住民にとって国土軸との直結を意味するものであり、大きな期待を抱くものであります。
 そんな中、国の地震対策の見直しによる地震浸水区域の大幅な変更を契機に、ようやくことし4月6日、近畿地方整備局から、県内の未整備区間であるすさみ─太地間、新宮─大泊間の計画段階評価に着手するとの報道がなされました。地域としまして大きな一歩と評価いたしますが、今後の取り組みについて知事のお考えをお伺いします。
○議長(山下直也君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 近畿自動車道紀勢線のミッシングリンクの解消につきましては、これまでもあらゆる機会をとらえて国に強く働きかけてまいりました。平成19年の中期計画で、もうちょっとで事業化ができるところまで持っていっとったんですが、残念ながらいろんな政治的情勢でだめになってしまいました。これはいかんと思っておりましたが、このたびようやく進展があったということであります。
 本年4月、未事業化区間であるすさみ─太地間及び新宮─大泊間について、計画段階評価のための調査に着手する旨の発表が政府からありました。我々の悲願であります紀伊半島一周高速道路の実現に向けて、大きく前進したわけであります。
 言うまでもなく、近畿自動車道紀勢線は、県民の将来のチャンスを保障するものとして、さらには昨年の紀伊半島大水害で痛感したように大規模災害への備えとしても、その整備は喫緊の課題と思います。
 県といたしましては、今はこの計画段階評価のための調査ですから、この計画段階評価を速やかに終了して、ぜひとも来年度に新規事業化してもらうように、県議会の皆様とともに全力で国に働きかけてまいろうと考えております。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁、ありがとうございました。
 続きまして、熊野川河口大橋と市内アクセスについてお尋ねをいたします。
 近畿自動車道紀勢線が整備されるということは、必然的に地域が待ち望んでいた熊野川河口大橋が現実となることを意味します。関連する市町村の首長を初め、議員などの行政と、橋の建設を促進する各会のメンバーらで構成される熊野川河口に橋を架ける会や各協議会を初め、地域の人々は、県境をまたがった現大橋を挟み、慢性的に発生する渋滞の解消、産業振興、地域の活性化、三重県と和歌山県の連携を強化するべく、まさに両県のかけ橋実現に向けて国や県への要望を続けてまいりました。
 平成20年、那智勝浦新宮道路の完成に、新宮市を起点にして田辺や三重県へといよいよ高速道路でつながっていくものと大きな期待が膨らんだやさきの民主党政権誕生。これで苦労も水の泡とあきらめる住民もおりました。しかしながら、震災や津波、台風水害が命の道の重要性を証明する結果となり、ようやく事業化に向けての一歩を踏み出しました。
 河口大橋の実現が現実味を増した今、地域住民が利用しやすい、また、観光客等が立ち寄りやすい道路を求める声も上がっております。
 つきましては、熊野川河口大橋と市内へのアクセスを円滑にするための計画について、県土整備部長にお伺いします。
○議長(山下直也君) 県土整備部長。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 熊野川河口大橋を含む近畿自動車道紀勢線新宮─大泊間につきましては、現在、計画段階評価を進めるための調査が実施されており、アンケート調査などを通じて皆様方からいただいた意見を反映する形で、ルートや構造、インターチェンジ位置の検討などが進められることになります。
 議員御指摘の市内からのアクセスにつきましては、これまでも新宮市から、インターチェンジ配置などに配慮し、生活道路としての機能も兼ね備えた道路とするようにと要望いただいているところで、県としましても、こうした市の意見や今回のアンケート結果等も踏まえて、地域の意見が十分反映されるよう国に働きかけてまいります。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 ただいま御答弁をいただきました。引き続きよろしくお願いいたします。
 それでは、次に3つ目の大きな項目、紀乃國之塔について質問させていただきます。
 1つ目、紀乃國之塔と慰霊の取り組みについてであります。
 冒頭お話しをした沖縄滞在中、沖縄県糸満市にある紀乃國之塔を訪れました。有名なひめゆりの塔にほど近いサトウキビ畑の間の道を進んでいくと、他府県の慰霊塔が幾つも隣接する場所があり、紀乃國之塔は一番手前の位置にありました。
 太平洋戦争末期の昭和20年、沖縄諸島に上陸したアメリカ軍を主体とする連合国軍と日本軍との間で行われた沖縄戦、第2次世界大戦における日本国内での最大規模の陸戦であり、また日米最後の大規模戦闘となったわけですが、この戦いで失われた命は、日本側死亡者は一般住民も含めると18万8136人、そのうち県外出身の日本兵戦死者数は6万5908人、そのうちの908人が和歌山県出身と言われています。
 また、沖縄から南西に広がるいわゆる南方諸地域の戦いでも1万8926人もの和歌山県出身者の方々が亡くなられており、これらの戦没者を合わせて慰霊するため、昭和36年、紀乃國之塔が建立されたとのことです。
 沖縄訪問が初めての私は、慰霊塔の存在を知りませんでした。それどころか、これほど多くの和歌山県出身戦没者がおられることさえ知りませんでした。自分たちの今日はこのような戦没者の犠牲のもとに成り立っているにもかかわらず、認識が薄い自分が情けなく思え、心からのおわびの気持ちと感謝の気持ちで慰霊塔に手を合わさせていただきました。
 塔のある敷地内には幾つかの石碑が立てられており、その中には建塔20周年に当たる昭和57年に塔の改修整備を記した石碑もありました。当時の仮谷知事を初め、下川舜三議員や、当時県議会議員であられた二階俊博衆議院議員や大江康弘参議院議員など、当時の県議会の先輩方が刻まれています。また、その中には、門三佐博議員や、平木哲朗議員の父・平木繁実議員や岸本健議員の父・岸本光造議員のお名前もありました。
 私は、この石碑を見たときに、紀乃國之塔と県の現在の関連が気になりました。
 そこで、知事にお尋ねします。
 紀乃國之塔を通じて県民や国民に戦没者への慰霊の心を深く浸透していただくためにはどのような取り組みが必要だとお考えか、お聞かせください。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 紀乃國之塔は、沖縄及びフィリピン、インドネシアなど、南方諸地域での2万人近くに及ぶ本県出身戦没者の慰霊塔であります。紀乃國之塔では、例年11月に県出身戦没者の追悼式が行われております。濱口議員におかれましては、よく行っていただいたと感謝をしております。
 追悼式は、かの地で命を落とされた多くの方々の御冥福をお祈りし、平和をお誓いする大切な機会であると考えます。和歌山市で5月5日に行われます県全体の慰霊祭には、私自身、毎年参加をさしていただいておりますが、こういう気持ちで臨んでおります。
 この戦没者追悼式は、本年度までは和歌山県遺族連合会主催で開催されておりましたが、来年度からは県が主催して行うということにさしていただこうと思っております。
 恒久平和を祈念するため、心を新たにして、これからもこの塔を大事にしてまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 それでは、もう1つお聞きします。
 現在、紀乃國之塔の管理はどのような形で行われていますか。福祉保健部長にお尋ねします。
○議長(山下直也君) 福祉保健部長山本明史君。
  〔山本明史君、登壇〕
○福祉保健部長(山本明史君) 紀乃國之塔は、昭和36年2月、当時県議会文教委員であった石井純治議員、中村俊詮議員、平越孝一議員、丸山弘議員、山崎利雄議員の5氏が、沖縄及び南方諸地域で亡くなられた本県出身者が多数に及ぶことに心を痛められ、県に慰霊碑用地66平米を寄附いただいたことを受け、同年11月に建立されたものでございます。
 昭和45年に隣接いたします931平米の土地を購入し、57年には慰霊碑の改修を行いました。また、平成15年10月には塔周辺の通路等を改修し、参拝いただきやすい環境を整備いたしました。
 なお、清掃や献花など、塔の維持管理業務につきましては、財団法人沖縄県平和祈念財団に委託しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 戦争は、国と国との争いに多くの命が失われます。日本でもそのような悲惨な戦争が行われた事実、平和のありがたみや命のとうとさを知る上で、決して風化させてはならないことだと感じます。この紀乃國之塔には、ぜひ県民の皆様も機会があれば訪れていただいて、自分たちだけではなく、子供たちや将来の人たちにもつないでいただきたいと心から願うものであります。
 このまま次の質問に移らしていただきます。
 最後、4番目、紀南地域の観光振興についてであります。
 1つ目、今後の誘客方針について。
 4月23日には、和歌山県観光振興実施行動計画「観光振興アクションプログラム2012」が発表されています。内容を見ますと盛りだくさんな内容となっており、まことに頼もしいものと感じております。
 今後、平成25年の伊勢式年遷宮や平成26年の世界遺産登録10周年、平成27年には紀の国わかやま国体や高野山開創1200年などがメジロ押しとなっており、アクションプログラムにおきましても、これを契機に誘客を促進するための活動や仕掛けづくりへの取り組みが掲載されております。
 その目玉事業として、JRグループとのタイアップによる和歌山ディスティネーションキャンペーンを中心に、本県への誘客対策が行われようとしています。
 こういった具体的な活動が見えつつありますが、観光振興施策において、今後の誘客対策の方針について知事の考えをお聞かせください。
○議長(山下直也君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 観光振興アクションプログラムについてでございますが、ことしは「復旧、復興から挑戦へ」ということを合い言葉に、来年から3年連続いたしますビッグチャンスを最大限に活用できるように万全の準備を行う年と位置づけております。
 ビッグチャンスでございますが、まず平成25年、来年の伊勢式年遷宮からの誘客については、神社関係者の団体参拝旅行を県内に誘導するために、全国の主要神社や旅行会社への訪問を中心に積極的な誘致活動を展開してるところであります。私も、各地の神社に、ぜひ伊勢遷宮の折に和歌山にもお越しくださいというようなお手紙を差し上げました。
 また、一般客対策としては、伊勢と熊野のつながりなどをテーマとした情報発信を、秋以降、大いに実施していきたいと思っております。
 次に、その次の年、平成26年は、世界遺産登録10周年でございます。これを契機に、「和み」をキーワードに本県ならではの特別企画の具体化と観光素材のレベルアップを図るため、特に和歌山ディスティネーションキャンペーン──これはJRに協力をしていただきまして、もう秋が和歌山がディスティネーションになるということになっとるんですが──そういうことをやっていきたいと考えております。
 また、平成27年、その次の国体の年でもありますが、これは国体と並んで高野山開創1200年の年でもございます。高野山に参詣するお客様を周辺地域、和歌山の他の地域にも誘導する仕組みづくりを交通機関などと連携して実施してまいりたいと思っております。
 この間、地域においては、おもてなしの向上や消費拡大につながる滞在時間を延長させる仕組みづくりといった受け地整備を、観光関係団体・事業者が総力を挙げて取り組んでいく必要があると考えております。
 まだまだ現状では問題点がいろいろ指摘されております。例えば、タクシーの運転手さんや旅館の従業員さんが愛想が悪いとか、あるいは観光地で、客が歩いて楽しんでもらって施設に寄っていただくような導線がないとか、表示板がいまいちとか、そういういろんな問題がございますので、県の施策もそういうことを補っていくように努力をしますが、そういうものを活用して、地元も含めて、今後、もっと盛り上がるようにやっていきたいと考えております。
 これらの国内対策に加えまして、外国人客の誘致につきましては、東日本大震災による落ち込みからの回復の兆しが見られるわけですが、さらなる誘致のために、国別の嗜好とか、あるいは旅行熟度というんでしょうか、どういうレベルにあるかというようなこともあわせて効果的なプロモーションを積極的に実施するとともに、外国語の案内表示の多言語化や、あるいはエリアパス、こういうものの利用促進など、個人旅行客向けの環境整備を行うことによりまして外国観光客の一層の増加を目指していきたいと思います。
 このような国内外の取り組みを核に、アクションプログラムの「和歌山を売り出す」、「和歌山へ招く」、「和歌山でもてなす」に盛り込んでいる多彩な事業を効果的に展開することで本県への観光客の新たな流れをつくっていきたいと思っております。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 知事からは心強い意気込みをいただき、今後の観光振興に大いに期待をするところであります。
 さて、次に、伊勢式年遷宮に焦点を当ててお尋ねをします。
 式年遷宮に関連する行事は、平成25年のメーン行事に向けて、もう平成17年からいろいろな行事が始まっているようですが、ただいまの御答弁にもありましたように、知事、また熊野三山の宮司の連名による「伊勢式年遷宮を機に和歌山へもおいでください」という旨の誘客文書が全国の熊野末社に送られ、また主要な熊野神社へはじきじきに観光課の職員らが足を運び、いわゆる営業活動に力を注がれています。
 では、一般の参拝者や団体に対してはどのような誘客施策を展開されているのでしょうか。特に、団体旅行者の誘客には、早い段階での計画的な誘致活動が必要かと思います。伊勢式年遷宮への参拝客誘客施策の方向性について、商工観光労働部長にお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 伊勢式年遷宮への参詣客の熊野三山への誘客施策についてですが、団体参詣を行う神社関係者に対しましては、4月に全国の神社庁並びに社務所を有する神社2000社余りに知事名で案内状を発送し、6月から、熊野三山に御紹介いただいた全国の主要神社並びに神社庁を順次訪問しております。
 また、一般の参詣者、団体に対しましては、ことし秋以降、全国JR主要駅でのポスター展開やプレスツアーを実施するなど、近世、「伊勢に七度、熊野に三度」とうたわれた伊勢とのつながりを強調した露出を高め、認知度向上と旅行動機の喚起を図ってまいります。
 さらに、旅行会社に対しましては、モデルコースの提案や現地研修ツアーを実施し、旅行商品化を図ってまいります。
 以上です。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 続きまして、3つ目、誘客の手ごたえ、目標についてであります。
 伊勢式年遷宮には約1100万人の参詣者があると言われており、その1割でも約100万人の来訪が見込めます。仮に1人1泊1万円の宿泊と仮定しますと、100億円の県内への経済効果が見込まれます。
 1年前の6月議会においても同じ内容で質問をさせていただき、商工観光労働部長より誘客促進への取り組みなどの御答弁をいただいたところですが、その後の活動の成果を踏まえ、熊野地域への誘客について、現時点での目標の設定や見込める効果、さらには手ごたえについて、商工観光労働部長に改めてお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 誘客の手ごたえと目標の設定についてですが、まず神社関係社に対する誘客対策、特に主要神社訪問では、規模の大小はありますが、訪問するとか検討するとかいった回答を得ており、おおむねよい手ごたえを感じております。
 次に、現時点での誘客目標ですが、来年は全国から1100万人を超える人々が伊勢神宮に参詣すると予測されており、県では、このうち約700万人が伊勢周辺に宿泊すると推計し、その5%の35万人以上を本県に誘導し、宿泊していただくことを目標としております。
 なお、過去の伊勢式年遷宮における参詣客の動向を見てみますと、翌年も遷宮年の約9割程度の方が参詣されており、引き続き誘客対策を行うことで30万人以上の宿泊客を取り込み、結果として約165億円以上の直接消費を見込んでおります。
 以上です。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 続きまして、県と地域との役割分担と今後の具体的取り組みについてお伺いをいたします。
 県内への観光客誘客に当たりましては、これまでもそうであったように、当然、地域の観光団体等が主になって取り組むものであります。しかしながら、私見ですが、それぞれの市町村における観光団体は、観光不振にあえぐ中、人件費、活動費など、資金繰りに大変苦戦を強いられている現状があると思われます。
 そこで、県がバックアップし、時にはリードをして地域を動かしていただくことを期待するところでありますが、県と地域の役割分担と今後の具体的取り組みについてどのようにお考えでしょうか。商工観光労働部長にお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 県と地域の役割分担と今後の具体的取り組みについてですが、今後、特に一般の参詣者や団体を誘客するに際して、旅行の動機づけの重要な要素となる滞在のための仕組みづくりや、訪問特典を含めたおもてなしの整備への取り組みが地域において必要と考えております。
 県におきましても、地域に積極的に働きかけを行っているところですが、地域任せにするのではなく、積極的に関与し、効果が見込まれるものについてはさまざまな支援を行ってまいりたいと考えております。
 こうした取り組みの成果につきましては、来年夏ごろ発行を予定しております誘客パンフレットに掲載、配布するとともに、旅行会社やメディアに対して積極的に情報発信を行い、誘客に努めてまいります。
 以上です。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁いただきました。
 それでは、最後、5つ目の国の天然記念物ナギの活用についてであります。
 ナギという木の話はさきにも述べましたが、速玉大社の境内には、国の天然記念物に指定されている推定樹齢1000年のナギの大樹がそびえ立っています。平安末期に平清盛の息子である重盛がお手植えをしたと言われております。ナギとしては日本最大の大きさであります。
 熊野神社及び熊野三山系の神社では御神木とされ、その名称が海のなぎに通じるとして、特に船乗りは海上安全、かつての熊野もうでに訪れた人たちはもうでの旅の安全祈願のお守りとして、また魔よけや平和の象徴とされています。また、特殊な繊維の丈夫な葉が両端を引っ張ってもちぎれにくいということから、縁結びや強いきずなをつくり出す葉として重宝されております。沖縄の本土復帰のかすがいとなったことで世界平和を願う祈りの象徴となったことなど、逸話はたくさん存在します。
 もちろん、速玉大社以外にも、那智大社や本宮大社、青岸渡寺にも、同じように逸話にまつわるいわれのある品々が存在するのではないでしょうか。
 今後のプロモーションのツールとして、パンフレットだけではなく、三山一寺のシンボル的なものをノベルティーとして作成し、パンフレットと一緒に配布するといった取り組みを検討されてはいかがでしょうか。商工観光労働部長に答弁をお願いいたします。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 地域の固有資源、例えば国の天然記念物ナギを生かしたノベルティー作成などの取り組みにつきましては、地域で取り組むおもてなしの整備と考えておりますので、まず地域の観光団体、関係者において御検討いただき、その上で、必要があれば県としても地域と積極的に協議してまいりたいと考えております。
○議長(山下直也君) 濱口太史君。
  〔濱口太史君、登壇〕
○濱口太史君 御答弁をいただきました。
 観光産業は、観光客が来てくれて初めて地域経済につながるものと考えております。昨年の台風被害の後遺症が残る中、一歩一歩復興の兆しが見えてはきておりますが、来るべき式年遷宮とそれに続く世界遺産10周年に向け、今後の事業展開に期待をします。
 また、目標に対してのその後の検証を行っていただき、今後の取り組みに生かしていただきますようお願いを申し上げ、以上で私の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、濱口太史君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時42分休憩
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