平成24年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


平成24年6月 和歌山県議会定例会会議録

第5号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

  午前10時0分開議
○議長(山下直也君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第86号から議案第102号まで並びに知事専決処分報告報第1号及び報第2号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 41番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 皆さん、おはようございます。
 まず初めに、去る6月6日、御逝去されました三笠宮寛仁親王殿下におかれましては、謹んで哀悼の誠をささげたいと思います。スポーツ振興にも本当に真剣に取り組まれておられました殿下であります。
 また、翌6月7日に御逝去されました故川口文章議員におかれましても、謹んで御冥福をお祈りいたします。故川口議員とは、特に岩出市助役時代、毎年の市政懇談会で御一緒させていただいたときから御指導いただきました。物腰やわらかく、中芝市長を陰にひなたに支えておられるお姿が大変印象的でした。安らかに御永眠いただきたいと思います。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 1つ目に、和歌山下津港の港湾戦略についてであります。
 先週、和歌山下津港本港区を車で走ってまいりました。まず目についたのが鋼管の本船荷役、すなわち本船搭載のクレーンでのばら積みが行われておりました。ガントリークレーンの下方には、いつもより多い目の20フィートコンテナが積まれていました。その東側の公共荷さばき地には岩塩が野積みされており、そしてその北側、輸入木材が、年2回程度ということでありますが、久しぶりに高く積み上げられておりました。港湾内で輸出入貨物の動きがあって荷役しているのを見ますと、正直、ほっとします。港湾は、背後地の景気のバロメーターと言ってもいいでしょう。
 平成23年分の和歌山県貿易概況ですが、県内貿易額が輸出入とも3年ぶりに1兆円を回復、輸出はプラス13.5%、輸入はプラス20.4%です。しかし、コンテナの取扱量からすると、その半分は花王和歌山工場の原料輸入分であり、和歌山県からのコンテナ輸出貨物がいかに少ないかということがわかります。
 さて、世界のコンテナ貨物取り扱い順位ですが、2010年度において1位は上海港で2907万TEU、5位の釜山港で1416万TEU。ちなみに、日本最大のコンテナ貨物取扱量を誇る東京港で420万TEUで第27位、その前後には、2位のシンガポール港、3位の香港港、両港を除いて、今や13位、17位にマレーシアのポートケラン港、タンジュンペラパス港、22位にタイのレムチャバン港、24位にインドネシアのタンジュンプリオク港、25位にインドのムンバイ港、28位にスリランカのコロンボ港、29位にはベトナムのホーチミン港と続いています。ちなみに、和歌山下津港は年間約6000TEUの取り扱い、順位は知りません。
 この勢いづく東南アジアの新興の諸港は、ほとんど日本の政府開発援助(ODA)で整備が進んだ施設であります。日本としては、この諸港との交易を活用しない手はないはずであります。
 そこで質問ですが、1つ目、最近の和歌山下津港における輸出入貨物の取り扱い状況についてお聞かせください。また、近年、活況を呈しているASEAN諸国との和歌山港発着の貨物取り扱いの現況や可能性についてお尋ねいたします。企画部長、お答えください。
○議長(山下直也君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 企画部長野田寛芳君。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 和歌山下津港の港湾戦略についてでございますが、和歌山下津港における輸出入貨物の取り扱いにつきましては、県港湾統計の速報値によりますと、平成23年の輸出は約492万トン、輸入は約1825万トン、総輸出入量は約2317万トンと、2年連続で増加しております。
 このうちASEAN諸国との平成23年の貨物の取り扱いにつきましては、輸出が約138万トン、輸入が約51万トン、総輸出入量は約189万トンと全体の約8%を占め、前年と比べ重油や石油製品などの輸出が大幅に増加したことから、全体で約29万トンの増加となっております。
 近年、経済成長が著しいASEAN諸国との貿易につきましては、和歌山下津港の振興において重要であると考えておりまして、今後も引き続き、荷主企業や船会社に対し、積極的にポートセールスを行ってまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 例えばタイのレムチャバン港は、港の背後値にバンコク近郊の輸出産業の集積地が控えております。また、スリランカのコロンボ港は、インド洋の国際海上輸送ルートの要衝、ハブ港的要素を持った港であります。本県企業においても、ポテンシャルを追求できる港ではないかと思われます。
 次に、阪神港の国際ハブ港湾機能向上にもつながる和歌山下津港から神戸港へのコンテナの内航フィーダー輸送が平成20年10月に開設されましたが、現況はいかがでしょうか。企画部長、お願いいたします。
○議長(山下直也君) 企画部長。
  〔野田寛芳君、登壇〕
○企画部長(野田寛芳君) 和歌山下津港のコンテナ内航フィーダー輸送の現況につきましてでございますが、平成20年10月に開設後、利用企業数、輸送量とも年々増加しておりまして、平成23年におきましては5社が利用し、輸送量は、20フィートコンテナを1TEUとする単位において1000TEUを超える取扱量となっております。
 現在、国においては、阪神港など国際コンテナ戦略港湾への集荷を促進しているところでありまして、本県におきましても、引き続き背後圏に立地する企業の貨物需要の掘り起こしに努め、和歌山下津港のコンテナ内航フィーダー輸送の活用を推進してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 和歌山北港区の住友金属西防波堤埋立地の関西電力LNG火力発電所建設の促進を、本年4月20日、和歌山県議会、和歌山市議会の両議長が、2月議会で議決した建設促進を求める決議文を関西電力本社へ手渡されました。今後の電力需要、そして大きな雇用創出といった本県への経済効果にも大いに期待を寄せるものであります。
 このLNG発電所建設については、当時の共産党の鶴田至弘議員が、私の知る限りでは平成7年6月、平成8年12月、そして平成9年2月と3回、活断層の近接、そして埋立地であるがゆえの地盤の液状化といった大地震被災時の懸念を訴えた質問をされています。
 平成9年6月議会では、自民党の吉井先輩議員が大地震発生時の発電所の安全性について質問されました。その際、当時の中山次郎総務部長は、「事業者から提出された安全性調査検討書によりますと、耐震性については中央構造線系活断層により現在考えられる最大の高レベル地震動として、紀淡海峡から根来断層、五条谷断層の長さ70キロメートルが活動するマグニチュード約7.9の地震動を想定し、これに十分耐え得る設計となってございます。これは、阪神・淡路大震災のマグニチュード7.2を上回るものでございます。また、事業者はLNGタンクの8分の1のモデルによる振動試験を実施し、安全性を確認してございます。一方、液状化対策につきましても、発電所本体、タンク周辺はもちろんのこと、LNG配管基礎等、防災上必要な箇所は地下水位を低下させる工事などを実施することとなってございます。これらのことから、安全性については十分対応しているものと考えてございます」と答弁されています。
 気になるのは、活断層に近い直下型地震もさることながら、ことし3月末、内閣府で、南海トラフ巨大地震が発生したとき、津波高が和歌山市で7.7メートルと予想されている中、同規模の津波に当該LNG発電所のガスタンクが耐えられるのかという懸念も生まれてまいります。LNGは、比重が大気より重くて地上にとどまり、引火するや一気に火の気が地を走ると言われています。
 改めて、関西電力LNG発電所が計画どおり建設された際の安全性と防災対策について、危機管理監にお尋ねいたします。
○議長(山下直也君) 危機管理監半田和雄君。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 津波高見直しによる関西電力LNG発電所建設の安全性と防災対策についてお答え申し上げます。
 本年3月に内閣府から、最大クラスの地震・津波を想定した震度分布及び津波高が公表されたところでございます。また、国において、東日本大震災における火災などの被害実態に応じたガスタンク等の安全対策について検討し、関係基準の見直しを行っておるというふうに聞いております。
 今後、LNG火力発電所の建設計画が具体化される場合には、これらを踏まえた地震・津波に対する安全対策を講じたものとなるというふうに考えてございます。
 以上です。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 LNG発電所建設は、確かに和歌山県にとってもかけがえのない電力の確保、そして経済効果が大いに期待できるものであります。それだけに、計画の進捗に合わせて、今後、発電所の安全性と防災についても最大限の調査検討をお願いいたします。
 2点目に、地域イノベーション戦略支援プログラムについてであります。
 去る6月1日、文部科学省は、平成24年度地域イノベーション戦略支援プログラムに応募のあった地域の提案の中から10件の採択決定を発表し、その中に和歌山県の「地域資源を活かした健康産業イノベーション~県民健康力の向上と保健機能製品の世界展開~」をテーマにした事業が入りました。
 和歌山県産業技術基本計画に基づいて、和歌山県の代表的な農産物である各種かんきつ類や梅、柿などについて、成分研究や保健機能解明、加工技術の開発などを産学官金が一体となって実施するものです。産学連携のポテンシャルと地域の農産物を生かした医農連携をキーワードに、健康産業イノベーション及び新産業の創出を図ります。
 事業期間は平成24年度から28年度の5年間、参画機関は公益財団法人わかやま産業振興財団、和歌山大学、和歌山県立医科大学、近畿大学生物理工学部、紀陽銀行、そして和歌山県であります。
 このプログラムは、1、将来の地域構想を担う次世代の研究者を、国内外を問わず、原則当該地域以外から招聘することに対する支援、2、地域で活躍し、地域発の新産業創出や地域活性化に貢献する優秀な人材の育成に資するプログラムの開発及び実行に対する支援、3、大学等の研究機関の持つ研究シーズを共有し、その中から地域の企業が求める技術シーズと合致するものを発掘して事業化へつなげていく役割を担う地域連携コーディネーターの活動に対して必要な支援を行い、コーディネーターによる大学の技術シーズや企業ニーズの情報収集と、それらの整理などの活動による地域の大学等の間で知のネットワークを構築するための支援、4点目に、大学等の研究機関が保有する研究設備・機器を地域の中小企業に開放する機関に対し、機器の操作や利用者の技術相談を受け付けるスタッフを配置し、共用化を促進するための支援の計4つの柱があります。
 平成23年度まで都市エリア産学官連携促進事業で研究を進めてきた本県特産の農産物由来成分を利用し、医農連携による健康産業の創出を目指すものであります。
 そこで質問ですが、1つ目、地域イノベーション戦略支援プログラムにおいては、知のネットワーク構築ということで、研究者、人材育成プログラムの開発者、地域連携コーディネーターやプロジェクトディレクター、それに技術支援スタッフに対する人件費等の支援といった人的支援のバックアップはありますが、このプログラムを活用して、具体的に和歌山県としてどのような研究開発と商品の創出を推進されるおつもりでしょうか。知事にお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本年度、国に採択されました地域イノベーション戦略支援プログラムの核となる事業は、本県で過去に実施されました都市エリア事業の成果を活用いたしまして、梅酢ポリフェノールに期待される抗疲労効果や、あるいは高血圧抑制効果等について、県立医科大医学と近畿大学生物理工学部に招聘する医・農分野の研究者が臨床研究を実施することによりましてその効果を立証し、活用し、健康機能の科学的根拠の裏づけを行い、それでもって、とりわけ県内企業が健康機能食品の開発を目指すものであります。
 参画企業は、そこで得られた効果効能をもとに、梅酢ポリフェノールを活用した一般飲料とか、あるいはトクホ食品、そういうものを開発するとともに、産学官が一体となって、本県の特性である食品産業と化学産業を融合した新たな健康産業の創出と梅関連産業の振興に取り組むというつもりであります。
 御指摘のように、和歌山県新技術創出推進条例をつくっていただきましたが、それの核になる産業技術基本計画では、5つの分野を特に推進すべき分野だということを決めております。その1つがバイオ食品分野であります。
 特に、和歌山県における中小企業振興の核として技術開発をてこにしていこうというふうに思っておりまして、議会にもお願いして先駆的産業技術研究開発支援補助金などなどいただいておりますけれども、特に国の研究開発助成金は少し規模が大きいもんですから、そういう我々の努力の大きな援軍になるなというふうに考えておりますので、これをしっかり利用して、研究の推進と、それから産業の振興を図ってまいりたい、そんなふうに思っております。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 待ちに待った具体的な医農連携、それによって臨床研究、ヒト介入試験が本格化するということで、具体的な健康機能食品の商品化の道筋も見えてきたものと期待しております。
 次に、2点目ですが、優秀な人材が確保できても、すぐれた製品のアウトプットを実現するために、既存の大学等の持つ研究設備・機器以外にも設備や機器類が必要になる場合が出てくると思いますが、それに対する県の支援についてはどうお考えですか。商工観光労働部長にお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 地域イノベーション戦略支援プログラムにおける研究設備・機器に対する県の支援についてですが、本プログラムにおいて招聘する研究者が梅酢ポリフェノールの健康機能を調査研究するために必要な設備・機器については、本事業において整備いたします。
 また、本事業の補助対象とならない設備・機器の整備については、工業技術センターにおいて加工食品の開発に必要な設備・機器の整備を検討するとともに、参画企業には、先駆的産業技術研究開発支援事業補助金などの競争的資金の活用を促すことにより支援してまいります。
 以上です。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 国の競争的資金は、文部科学省だけでなく、経済産業省や農林水産省と、各省にあります。和歌山県の特産物や地域資源を生かして産業振興、雇用拡大につなげることが何よりの地域力向上の近道であると思いますので、先手先手を打つべく、さらなる国の競争的資金獲得にも、財団や各研究機関とともに今後とも御尽力いただきますようお願いいたします。
 次に、3番目、豪雨災害についてであります。
 6月19日の台風4号、そしてきのうから降り続いた大雨で、各地で通行どめや冠水、そして浸水も見られています。河川の増水、土砂崩れ、これ、今なお心配であります。私の地元和歌山市内でも、私の知り得る限りで岡崎のあの交通センターのあたり、三田、そして山東、安原地区など、冠水、浸水があった模様であります。謹んでお見舞いを申し上げます。
 さて、私ども改新クラブ5名の議員は、去る3月28日から30日までの3日間、田辺市、新宮市、那智勝浦町、そして串本町へ、昨年9月初めの台風12号による紀伊半島大水害の復旧状況の視察に行ってまいりました。途方に暮れるような大災害の中、国、県、地元市町、それぞれの懸命の復旧への御労苦、御尽力には深甚なる敬意を表したいと思いますし、地域によっては、完全復旧には通常数10年はかかるんじゃないかと、そんな惨状を改めてかいま見た次第であります。
 また、去る6月7日、8日の両日、インテックス大阪で第6回「地域防災防犯展」が行われておりましたが、7日に私も行ってまいりました。ことしも大にぎわい。各企業だけでなく、一般の人々の関心の高さも感じました。関西学院大学特認准教授・松田曜子先生等の講演なども幾つか聞かせていただきました。
 最近頻発する豪雨災害や台風の大型化ですが、気象変動、地球温暖化、ヒートアイランド等々、原因はありましょうが、1時間降水量50ミリ以上の降水の年間発生回数ですが、昭和53年から62年だと平均206回、昭和63年から平成9年で平均233回、平成10年から19年だと平均318回であります。また、1時間降水量100ミリ以上の降水の年間発生回数は、昭和53年から62年で平均1.9回、昭和63年から平成9年で平均2.5回、平成10年から19年で平均4.8回となっております。年々、豪雨は明らかにふえています。
 雨の強さでいいますと、1時間50ミリ以上降るときは傘は全く役に立たなくなり、視界が悪くなりますから車の運転は危険。災害の発生状況は、50ミリから80ミリ未満で地下室や地下街に雨水が流れ込む場合があり、マンホールから水が噴出、土石流が起こりやすくなります。80ミリ以上で雨による大規模な災害の発生するおそれが強く、厳重な警戒が必要となります。降水量の変動幅は、近年大きくなっています。すなわち、大雨時はより多く、渇水時はより少なくなっています。
 国土交通省によると、昭和60年から平成11年における全国の堤防の決壊などの回数ですが、大河川で128回に比べて中小河川は94%の1998回も発生しています。特に中小河川では、急勾配で流れが速く、川幅が狭いし、やはり国管理の大河川に比べて整備率が低いため、雨の降り始めから堤防決壊まで事態の進展が非常に早いです。
 平成20年8月末には、岡崎市で1時間146.5ミリの雨を記録しました。平成21年8月9日、兵庫県佐用町では、町営住宅の住民が約200メートル離れた小学校へ避難しようとして川を渡り、用水路を渡ろうとしたときに流されて、多数の死者、行方不明者が出ました。既に浸水が発生しているときの避難は、かえって命の危険にさらされることになるわけであります。
 平成21年11月11日には、和歌山市でも1時間に約120ミリの雨が降り続き、未明に私の住んでいる高松地区においても計約220戸の床上・床下浸水がありました。今回の雨は大丈夫であったようであります。
 ことしは、はや6月に台風が来襲。去る19日には台風4号によって県内は激しい風雨に見舞われ、昨秋の台風12号で被害の出た地域中心に避難準備情報、そして約4000人に避難勧告や避難指示が出され、約390人が実際に避難しました。昨年の教訓を生かして早目に避難された方も目立ったと言います。
 ことしは一体何回豪雨に襲われるのやら。いつも大雨が降ってくると本当に気が気ではありません。中小河川や用水路の多い和歌山県での豪雨による大水害対策も、地震・津波対策と同様、いろんな場合を想定して事前のシミュレーションを考えておきたいものです。
 そこで質問ですが、1つ目、用水路や中小河川は、日ごろ子供たちの遊び場にもなっております。一たび雨が降るとすぐに増水して、水に流されたり、おぼれたりすることがあります。平成23年度からの農林水産省の国営総合農地防災事業における和歌山平野、受益面積3754ヘクタールに及ぶ治水・排水対策の進捗状況を農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 国営総合農地防災事業「和歌山平野地区」は、紀の川中下流域の農業用用排水施設の排水機能を回復させ、県下有数の農業地域における湛水被害の解消を図ることを目的としております。
 農林水産省南近畿土地改良調査管理事務所において、平成23年度に地区調査に着手、現況把握、技術的、経済的妥当性を検討し、事業計画を策定すべく、現在、計画内容の取りまとめを行っております。
 去る3月28日、和歌山県、関係3市、土地改良区で組織する事業推進協議会を設立いたしました。また、国からの意向照会に対して、関係機関に確認の上、5月10日に全体実施設計への移行に同意いたしました。平成25年度に全体実施設計、平成26年度に着工となるよう、6月6日、7日には県から政府提案を、また18日、19日には事業推進協議会から国に対し要望を行ったところでございます。
 けさも事業の対象区域である和歌山市内の和田川流域で広範囲に冠水被害が出ておりますが、関係機関との連携を一層密にし、一日も早い事業の促進に取り組んでまいります。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 和歌山市、岩出市、そして紀の川市と3市域に及ぶ和歌山平野には、特に急勾配で天井川の、まとまった雨量時にはすぐに増水する中小河川が複数ある。そして、連動する六箇井等用水路の水かさに大いに影響を及ぼしております。地域の治水対策のため、ぜひこの国営総合農地防災事業を大いに推進、活用していただきますようお願いいたします。
 次に、2点目でありますが、過去にもはんらんの歴史を持つ県の主な中小河川である七瀬川、住吉川の改修による浸水・排水対策の進みぐあいを、県土整備部長、お示しください。
○議長(山下直也君) 県土整備部長尾花正啓君。
  〔尾花正啓君、登壇〕
○県土整備部長(尾花正啓君) 中小河川、特に浸水被害の多い紀の川の支川につきましては、大幅に予算を増額して改修に取り組んでおります。
 七瀬川では、川幅を広げるとともに川底を掘り下げることにより、洪水を安全に流すことができるよう改修を進めております。現在、紀の川合流点の鴨井樋門から鴨居川合流点までの約1.6キロの区間で重点的に改修を実施しており、この区間の用地につきましては約8割が取得済みであり、国で施工している鴨井樋門の改築とあわせ、順次改修を進める計画としております。
 また、住吉川につきましても、川幅を広げるとともに堤防を築くことで洪水を安全に流すことができるように改修を進めております。現在、紀の川合流点から国道24号までの約1.7キロの区間で重点的に改修を実施しており、この区間の用地につきましては約9割が取得済みであり、下流から約0.6キロは改修が完了しております。
 今後とも、残る用地取得と工事進捗を図り、七瀬川及び住吉川の早期完成を目指してまいります。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 それでは、3点目に行きます。
 平成21年8月の兵庫県佐用町の水害のように、夜間の避難中に用水路の水に流されて大災害に及んでしまうこともあります。付近に中小河川、用水路の多い地域では、適切な避難勧告等が、住民の生命を守るため、大きな役割を担っております。
 昨年の台風12号での教訓を踏まえた県の避難対策の取り組みについて、危機管理監にお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 危機管理監。
  〔半田和雄君、登壇〕
○危機管理監(半田和雄君) 中小河川、用水路の多い地域での避難対策についてでございますが、市町村が発令する避難勧告等は、できるだけ住民の避難行動につながるよう、基本的には、人的被害の発生する可能性が明らかに高くなった段階で発令されるものでございます。市町村においても夜間の避難行動の危険性は広く認知されており、その点にも留意の上、避難勧告等の発令を行っております。
 紀伊半島大水害では避難所の浸水被害が発生したため、専門家の意見を踏まえた上で新たな避難所の見直し基準を策定し、市町村とともに見直しを実施し、去る5月8日に公表いたしました。
 災害対策基本法では、市町村長が1次的に災害に対処する責任を負っておりますが、県としては、内閣府から示された避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドラインを参考に市町村が発令基準を定めるよう助言してきており、さらに、市町村がより適切な発令基準を定めることができるよう、モデルとなる基準の検討を進めているところでございます。
 また、市町村が適切に避難勧告等を発令できるよう、市町村に対し、河川のはんらん危険等情報、水位情報、ダム等放流情報、気象庁から送信されます警報等の発表情報について提供しております。
 さらに、気象予測、降水予測などが市町村の避難勧告等の発令の判断材料として大変重要な情報であることから、国に対しても、さらに正確かつ迅速な予測情報を気象庁として正式に提供するよう、県から提案、要望を行ったところでございます。
 今後とも、市町村が適切な避難勧告等を発令できるよう、県としても市町村とともに積極的に取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 ちなみに、今般の台風4号における避難勧告や避難指示で、対象地区の指定避難所への避難率は、那智勝浦町で13.7%、新宮市で6.8%であったそうです。大事に至らなかったからよかったものの、梅雨どきで、きのう、きょう未明のように、今後、断続的に降り続く雨で地盤が緩んだ状態は続くかもしれませんから、引き続き警戒と、避難勧告が出れば早期の避難が重要でありましょう。避難勧告や避難指示が出ている地域というのは、まさにそのときはてんやわんや状態だと思いますが、台風12号による大水害時の教訓もありましょう。ぜひ県、市町村の連携をさらに密にとって対処いただきたいと思います。
 そして、4点目ですが、大雨時の避難の際、注意すべき点として、土砂災害の場合は、土砂災害の危険地区を横切らないように山を背にして地形が低い方向に向かって避難する、浸水のときは、川に近づかないように地形が高い方向へ避難する、避難の途中で道路が冠水しているときはマンホールや側溝などに足をとられないように気をつけるといったことが考えられます。日常、自分の住まいする周辺地域を特に雨の降っている日に歩いておくとかいった事前のチェックは必要であります。
 土砂災害時、あるいは浸水災害時、また台風12号時のように浸水災害と土砂災害が同時に起こる災害時と、避難の仕方がそれぞれ異なってきます。状況によってきめの細かい対応ができるよう、ふだんからの避難訓練や、具体的で迅速な避難勧告・指示を出していただけるよう、市町村へさらに注意を喚起いただきますよう要望さしていただきます。
 4点目ですが、小・中学生の留年についてであります。
 橋下徹大阪市長が、学力レベルが目標に達しない小・中学生を留年させることを検討するように大阪市教育委員会に指示しています。朝日新聞アスパラクラブでの全国の会員2458人からの回答によりますと、小・中学生の留年に賛成は17%、条件つき賛成は35%、反対派48%となっています。
 賛成派の意見として、「勉強がわからないままではかわいそう」とか、「成長の速さが違う子供を一律に進級、卒業させるのは無理がある」、条件つき賛成派では、「チームティーチングや補修授業といった環境をまず整えてから」という声があります。反対派では、子供の心の負担やいじめを心配する声が多いようです。
 確かに、日本の学校システムは、たとえ成績が悪くても、そのまま進級や卒業をさせてしまうという問題点があると思います。ヨーロッパでは、個々の習熟度に応じて、科目ごとに臨機応変に、教師と生徒、保護者が学ぶ時間を主体的に選択できるようにすべきというのが趣旨であると尾木直樹法政大学教授も言われております。
 ユニセフによる子供の幸福度調査で2007年に1位になったオランダでは、みずから道を選び、決めていく自律性の育成を大切にしています。科目単位で多くの生徒がみずから留年を選択し、学力を高めるシステムがあります。
 子供の意思というものも十分尊重しなければなりませんが、私は、基本的に義務教育期間中の留年は反対であります。留年せずに済むように指導するのがまず第一に教師の務めであると思いますし、日本では、悲しいかな、もし留年すると落第者と見られて子供心を大きく傷つけるでしょう。いじめが発生することも十分予想され、不登校を助長することにもなりかねないと思います。
 勉強に限らず、子供にはさまざまな得手不得手があるはずであります。そこを大切に育て上げることも必要でしょう。また、それぞれ家庭の事情が子供をそうさせていることもあるでしょう。家庭、保護者の同意も必要であります。
 欧米でも、20年、30年前から留年については問題化されており、近年、留年が減っている傾向になってきています。OECDも、この2月、留年を廃止する提言を出しています。
 そこで、教育長へ4点にわたって質問させていただきますが、1つ目、学力が不足していることによって小・中学生を留年させることについて教育長はまずどうお考えですか。
○議長(山下直也君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 小・中学生のいわゆる留年につきましては、議員御指摘のように、国の内外でさまざまな考え方やシステムがあることは承知いたしておりますが、子供たちや保護者の気持ちなどを踏まえても、学業成績を理由に留年させることは好ましくないと考えてございます。
 県教育委員会としましては、小・中学生を留年させるという考え方を導入するよりも、まず学校はさまざまな創意工夫を凝らして、すべての子供たちにしっかりとした学力をつけ、それぞれの子供の可能性を存分に伸ばすことに全力を尽くすべきであると考えてございます。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、生徒が学ぶことをあきらめたり放棄したりしないよう、また、当該学年の学習内容を身につけさせるためにどんな取り組みをされておられますか。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学力保障のための取り組みについてでございますけども、すべての小・中学校では、子供たちが意欲を持って学習できるように、少人数に分けて指導したり先生が複数で授業を行ったりするなど、指導方法等の工夫、改善に取り組んでおります。
 さらに、授業の中でつまずきの見られる子供1人1人に応じた支援を行ったり、放課後や長期の休みなどを利用してわからないところをわかるまで教えたり、疑問や質問にできるだけ丁寧に答えたりする補充学習を行い、わかる喜び、できる喜び、伸びる喜びを実感できる指導に努めてまいります。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目に、長期の不登校や授業をほとんど受けていないために学校の学びができていない子供には、どのような指導を施しますか。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 学校において学びが十分できていない子供に対する指導についてでございますが、長期の不登校で学校を欠席している子供には、それぞれの実情を踏まえながら、家庭訪問を繰り返し、創意工夫を凝らした課題を与えるなど、子供や保護者の願いにこたえるためにできるだけ丁寧な指導を行っているところでございます。
 一方、さまざまな理由によって学習意欲に欠け、授業に参加しようとしない子供に対しては、興味、関心が持てる授業づくりに全力を挙げるとともに、子供に寄り添いながら、その子供に応じた声かけや励まし、きめ細かな個別指導を行うなど、授業への参加を促すための粘り強い取り組みを進めているところでございます。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 当然のこととして、その子供の家庭の協力と理解があってこそ改善されるものと思いますので、保護者と学校教師とのコミュニケーションも密にしていただきたいと思います。
 4点目ですが、東京都には、小・中学校で不登校等、学校になじめなかったり、高校で中退等を経験したが、自分の夢や目標に向かってもう一度初めからチャレンジしようというチャレンジスクールや、学校は好きだが、これまで自分の能力を十分に発揮できなかった生徒のやる気を育て、頑張りを励まし、社会生活を送る上で必要な基礎的、基本的学力をしっかり身につけようというエンカレッジスクールがあります。
 エンカレッジスクールは、全日制普通科高校の中から東京都教育委員会が指定しています。
 チャレンジスクールは、午前、午後、夜間の3部制で、生徒の生活環境に合わせて選べます。1日に45分間の4時間授業が基準、単位制、無学年制なので、自分の学習進度に合わせて3年間または4年間で卒業でき、1クラス定員は30名となっています。
 片やエンカレッジスクールは、エンカレッジ、まさに励ますとか力づけることを意図したもので、1年次の授業時間は、1時間目から3時間目は英数国などを中心に30分授業、午後は体験学習や選択教科学習で、習熟度別少人数制で、1クラス2人の担任制で、中間・期末テストがなく、日々の努力を評価するということです。現在、5つの都立高校がそれであります。中1レベルからの学び直しをしてくれるということで、学校によっては入試の際の倍率が都立高校の上位に入る高校も出ているということであります。
 これも一方で、世間の先入観や教師のモチベーションの問題、生徒の素行など、いろんな問題を抱えているようでありますが、小・中学生の留年問題とも関連して、東京都のチャレンジスクールやエンカレッジスクールのような本県のお取り組みについて、教育長のお考えをお伺いいたします。
○議長(山下直也君) 教育長。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 本県では、チャレンジスクール、エンカレッジスクールと銘打ってはおりませんけれども、学び直しや基礎学力の定着など、同じような考え方に基づいた定時制課程と通信制課程をあわせ持つ学校を県内3カ所に設置しております。生徒のやる気を引き出し、励ましながら力をつけることが大切であることから、これらの学校では、昼間部を置くとともに、生徒の能力、適性等、個々の実情に対応したシステムを導入しているところでございます。
 また、全日制課程においても、各学校が多様な生徒の状況に応じた学びができるよう、義務教育段階での学習内容の確実な定着を図る学び直しの時間を設定するなど、教育課程編成において工夫した取り組みを進めているところでございます。
○議長(山下直也君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 4点にわたってお答えいただきました。
 小・中学生時すなわち義務教育の期間中は、学力を身につけることはもちろん大事ですが、人間力とか社会力の基礎を培う大事な時期でもあります。まずは家庭での対話、そして学校での教師や友人とのコミュニケーション、それと子供たちから発するさまざまなシグナルへの気づき、こういうことが大切だと思います。
 教育長の御見解をお聞きして留年はないと安心しましたが、不登校生徒や学びを放棄しかけている子供には、どうか教師のほうから進んで声をかけていただくべく、そんな取り組みを要望させていただきまして、私の質問を閉じさせていただきます。(拍手)
○議長(山下直也君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。

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