平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)


平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録

第7号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)


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 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、おはようございます。よろしくお願いいたします。
 さて、この週末には、いまだ傷もいえない中で、3.11、東日本大震災から1年を迎えることになります。
 同じように、私たちの県でも、先日、濱口議員のほうからもお話がありましたけれども、台風、大雨の甚大な被害から、まだまだ再建の途中で苦しんでられる方がいらっしゃいます。県民一丸となって試練を乗り越える途上にあります。この機会に、改めて心からのお見舞いと御冥福をお祈りしたいと思います。
 先輩・同僚議員、知事初め県当局の皆さんもそれぞれ現場に立ち、悲しい気持ちを共有してきているわけですが、とにかくそういった被災地を支え続けるためには、未来に責任を負う政治家として、中途半端ではなく、真剣に前を向き、行動し続けることが求められると思います。
 この議会でも、何としても元気な和歌山を実現させ、和歌山再生から日本も元気にしていくといった強い思いを持って、質問並びに具体的な提言をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 今回は3本柱、3つの項目で一般質問を進めさせていただきたいと思っています。
 1問目は、和歌山を初め日本全体が抱える問題、その問題の本質に迫りつつ解決策の1つとなる具体的な提言として、女性にもっと活躍してもらえる社会環境整備の必要性とその推進についてお尋ねいたします。
 2問目は、和歌山の個性を発揮するための提言として、近自然工法のさらなる推進について。
 そして3つ目は、和歌山県の中小事業者の皆さんのビジネスチャンスの拡大策、アジア、中国へのチャレンジに伴うサポート体制の充実に係る提言。
 これら3つの項目に絞り、分割方式で質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 さて、今、和歌山、日本が置かれている実態、その危機的な状況は、日々のマスメディアなどでも伝えられる状況にありますが、その深刻さ、問題の根深さは相当のものと覚悟する必要があります。そこでは、単に消費税の引き上げ、社会保障制度の手直しといったことで解決されるものではありません。和歌山を初め各地方それぞれの地域、日本社会全体で噴出している問題については、対症療法による対応は既に限界に達しつつあり、もっと本質的な、根本的な対応が必要とされています。
 今の地方、国全体に係る根本問題、その本質とは何かについては、私自身、これまでこの議会においても、さまざまなデータ、専門家の意見なども紹介しつつ議論してきたところですが、その中でも、次の2つの指摘について特に重要なものと考えています。
 1つは、藻谷浩介氏の指摘。彼は、ことしから所属先を変え、日本総合研究所で調査部主席研究員として活躍されておりますが、一昨年、日本政策投資銀行当時に出版した「デフレの正体」において今の日本の病巣を指摘し、各方面で大きな反響を呼びました。
 そこで指摘されているポイントは、今の日本が抱える問題の根本要因は人口構造の変化である、それを読み解くところから地方経済、日本経済が直面する課題が明らかとなる、今の景気の波を打ち消す大きな人口の波が日本全体を洗っていて、日本の再生、地方の再生においては、その根本部分にフォーカスした課題設定と解決策の模索を真剣に始めなくてはならないというものであります。
 もう1つは、イギリスの経済雑誌「エコノミスト」が出した経済分析レポート、タイトルは「The Japan syndrome」。
 少子高齢化の進展は、有効な対策を打てないと一国の経済を短期間に衰退へと導き、未来の希望を摘み取ってしまう。そのことに現在の日本人自身も理解が足りず、もっと真剣に向き合わなくてはいけない。この問題に真正面から取り組まない限り、日本の衰退はどうしようもないと分析されています。
 それぞれに共通して指摘されていることは、人口問題、少子高齢化、労働生産力の減退、世帯別の所得額の減少から消費の低迷などが現在の日本、地方の病巣であり、それらの現象を正面からとらえることなしに未来はないということです。
 そこで、そういった現状認識を持って、その具体的な解決策を提案する最初の質問に入らせていただきます。
 今、我々には、危機的状況に対応していく具体的かつ実効性の極めて高い方策、政策があります。それは、現在の日本社会において眠っている力、潜在的な力である「女子力」を引き出す。女性に頑張ってもらう。まだまだ改善の余地が大きく残されている女性の活動に係る環境整備の徹底した充実といったことが、その答えとなります。
 質問冒頭で指摘した和歌山県を含めた日本の根本問題、それらすべてについて、女性の活躍、男女共同参画社会の実現がかぎとなります。
 まず、人口減少、少子高齢化について、その解決策は、当然のことながら、どうやって子供を産み育てる環境を整え、子供の数をふやし、高齢者の割合を減少させていくのかといったことが課題ですが、まさに女性政策として男女共同参画が示す目標であります。
 また、労働生産人口の減少についても、これまで、労働生産人口が縮小し、社会保障の維持もままならない状況というのは、もう20年以上も前から危機的な認識だけは示しつつも答えを出せていない。国政の無策で、既に現時点から外国人労働者を何百万人単位で受け入れるというようなことは不可能であり、八方ふさがりのように思いますが、しかし、これも解決策はあります。
 それは、現在、潜在化している日本の力を掘り起こす。内閣府の調べでは、女性の潜在的労働力は、30歳代を中心に342万人、全労働人口の約5%ということです。日本の人口の約半分を占めつつ、眠れる活力源として放置され続けてきた女性の活躍によって、新たな光は見えてきます。
 また、世帯別の所得額の減少から消費の低迷といった問題も、女性が活発に働ける環境を整えることで、女性も収入を得て、世帯別の所得額も上がり、消費も上向くことが期待されます。
 また、経済の再生といった視点でも、ことし平成24年2月、政府の男女共同参画局が取りまとめたリポートでは、次のように分析されています。
 少子高齢化による労働力人口の減少が進む中、女性を初めとする多様な人材を活用することは、我が国の経済社会の活性化にとって必要不可欠である。女性がその能力を十分に発揮して経済社会に参画する機会を確保することは、労働供給の量的拡大という観点に加えて、グローバル化や消費者ニーズが多様化する中で、持続的に新たな価値を創造することが期待される。女性の活躍による経済社会の活性化を改めて認識しなければならない。
 単純な計算として、342万人の女性の力が発揮されることによって約7兆円、GDP比では約1.55%の新たな経済成長が望める。女性の活躍促進は、我が国の経済社会を支え、生産性や競争力を高めるとともに、さらには新たな価値創造にも大きく貢献することが期待されるということです。
 女性の労働力参加率の増大は、国民1人当たりの国民総生産を増加させ、すぐれた女性人材の活用は時間当たりの労働生産性を増すこととなり、実際に多くの欧米諸国ではそれを実現してきています。
 ここで認識すべきは、私たちの日本は、女性問題について非常におくれた後進国となってしまっているという実態です。今、女性活用は国家戦略と考えるのが先進国の常識であり、それは民間企業の経営トップにおいても、女性活用は企業戦略であると考えるのが世界標準となっています。
 私も尊敬する女性経営者の1人である内永ゆか子さん、ベルリッツコーポレーション代表取締役会長であり、株式会社ベネッセホールディングスの取締役副社長の内永さんは、昨年9月にサンフランシスコで開催されたAPECの2011年APEC女性と経済サミットに出席したときのことを次のように話されています。
 今回のハイレベル政策対話会合では、改めて女性の活躍が経済発展に欠かせないものであるという認識で一致し、どの国も真剣に取り組んでいることを確信した。特に、今回の実行委員長となったヒラリー・クリントン国務長官が、最終日の会合において、ゴールドマン・サックスの調査に基づいた数字を挙げて、「もし女性の就業・起業を妨げている障害が取り除かれれば、アメリカでは9%、ユーロ圏では13%、日本では何と16%のGDPの上昇が望める」と述べたことが大変印象に残った。日本も、これからもっと積極的に声を上げ、経済活性化における女性の貢献の可能性と、そのための取り組みを推進することの重要性について発信していくべきであると痛感したということです。
 内永さんは、1990年代の後半、日本IBMで働いていた当時、女性活用は企業戦略であるという全世界のIBMの戦略精神に間近で触れ、そこでは、「女性管理職をふやすのは社会貢献や義務などではなく、あくまで企業戦略ということを改めて認識し、そのことを企業のトップが腹の底から理解して明確に打ち出すことの重要性を感じた。それが成長を続ける企業の最低条件」と語っています。
 世界的に持続的な成長を続ける企業の多くは、女性の管理職は当たり前、執行役員、経営者も数限りなくいる、それが世界の現実です。
 日本でも、最近は、女性の力がどれだけ有効なものであるかに気づいた企業では、多くの女性管理職並びに社長が誕生しています。その1人である資生堂の岩田喜美枝さんは、世界の情勢を見て、おもしろい解説をされています。
 先進諸国のうち、女性の労働力率や出生率が日本並みに低い国の代表格はギリシャ、イタリア。女性が働きにくい国は、経済も低迷し、先行きが暗いと見るべきだとしています。
 確かに、ヨーロッパの現実を直視して、ギリシャ、イタリアの国家存亡に直面する危機的な状況と比較して、フランス、ドイツなど女性の社会進出が目覚ましい国との違いは顕著であり、その明暗をはっきりと分けています。
 少子化が進み、人口減少、労働生産人口の極端な落ち込みから社会保障制度の崩壊、世帯別所得額の減少から消費の低迷、経済の衰退といった国家の存亡にかかわる社会問題、それら危機的な問題の根本的な解決策として、女性の活躍、女性の力の掘り起こしが重要な処方せんであることを今まさに改めて認識し、真剣に取り組んでいくことが求められます。
 そこでは、今、女性みずからが権利を主張するのではなく、改めて男性側からこそお願いをして女性に頑張ってもらえる環境をともにつくり上げていくことが、日本、地方のそれぞれの地域において必要な時代だということです。
 そこで質問ですが、女性の頑張れる環境を整えることについて、まずは全般的な認識として、その重要性をどのように考えておられるか、知事の認識をお伺いいたします。
 次に、環境生活部長にお尋ねしますが、県内における男女共同参画の推進状況について、どのように認識されておられるか。
 また、男女共同参画への取り組みは、まさに重要なものですが、しかし、和歌山県内における取り組みを確認してみると、県内の各市町村で男女共同参画の計画策定と条例の制定状況などを見ると惨たんたる状況です。
 お手元の資料を御確認ください。お配りさしていただいていると思いますけれども、これは内閣府の男女共同参画局が、ことし、この1月に公表した資料です。
 都道府県別の男女共同参画の基本計画の策定状況と条例の制定状況について書いておりますが、見るも無残な状況になっていますが、計画の策定状況としては、和歌山県内の30市町村のうち12の市町しか策定されておらず、全国との比較の中で47都道府県中41位。条例の制定状況では、30市町村のうち制定されているのはゼロで、47都道府県中47位。唯一地域内の自治体での条例制定がないという情けない状況になっているのが和歌山県の実態です。
 この改善については、知事のリーダーシップ、県当局の本気度も試されますが、まずこの状況について認識をお尋ねします。
 あわせて、この状況を改善する取り組みとして、今後、具体的にどういった改善策を考えておられるか、環境生活部長にお伺いいたします。
 また、この当初議会で、新年度に向けた予算の計上に係る問題について、男女共同参画の事業内容としては、働く女性の相談業務、実際に活躍する女性を和歌山に招き、働く女性のよいモデル提示ともなる講演会などの開催、女性の社会進出についての広報・啓発から社会的認知の向上活動、各企業への働きかけの運動などなど、必要とされる取り組みに対して予算が計上されています。
 男女共同参画関係の予算は、事業名として、男女共同参画行政推進と男女共同参画センター運営費となっております。それぞれ合わせて、本年度、今の平成23年度で6089万6000円であったものに対して、平成24年度、私たちが今議会で審議している新年度の予算としては総計3616万1000円と、約半減する状況です。これは、国からのふるさと雇用の費用がなくなったことが大きく影響しているのですが、しかし、現在の女性問題の最後進地域としてやゆされる和歌山県において、これはないといった厳しい状況です。
 この予算の計上の状況について、環境生活部長はどのように考えておられるか。
 また、今後、どういった取り組みを進めるにせよ、ある程度の予算確保ができないと、それは幾ら知恵を絞っても、実際問題、成果を期待するのは難しい状況です。特に和歌山県は、男女共同参画で後進地域となってしまっていて、他の地域をこれからキャッチアップしなくてはいけないわけですから、このままではいけないと思います。
 今後、さらなる対応も必要になってくると考えますが、環境生活部長から御答弁をお願いいたします。
○議長(新島 雄君) ただいまの山下大輔君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 人口減少、少子高齢化、労働生産人口の減少等、さまざまな問題を解決するためには、女性がその能力を十分に発揮し、活躍をすることが重要であります。女性の参画が進み、女性の活躍する場面が多くなればなるほど、その潜在的な力が発揮される可能性が大きいということを認識しております。
 男女が働くことで世帯の所得を高め、消費につながる可能性があるなど、女性が活躍することは、単なる労働供給の量的拡大だけにとどまらず、新たな価値をも生み出します。
 家庭において、家事や子育て、介護等は主に女性が担っていること、雇用の分野においては、女性に非正規雇用が多い等、女性が働くことを阻害するさまざまな問題、あるいは意識の問題も含めて、そういうことがあるということも認識しております。
 このような問題を解決し、働きたい女性が結婚、出産後も働き、経済活動を初めさまざまな分野に参画できるよう、子育て環境をよくしたり、あるいは雇用環境をよくしたり、あるいは社会活動において応援をしたり、そういうことを整備することが重要だと思っております。
 本県においても、女性の社会参画を進め、経済等さまざまな分野で活躍できるよう、環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 御質問の5項目を一括してお答えさせていただきます。
 まず、県内における男女共同参画の状況についてですが、5年ごとに実施しております県民意識調査によると、男は仕事、女は家庭など、性別によって男女の役割を決めるような固定的性別役割分担に否定的な人の割合は、平成14年度の51.3%から平成22年度は53.9%と徐々に改善されてきております。しかし、平成21年の全国平均55.1%には至っておらず、まだまだ男女共同参画の意識啓発が必要な状況であると認識をしております。
 また、県内市町村の計画及び条例の策定状況については、全国的に見て低い状況であり、早急に推進すべき課題であると認識をしております。
 市町村における計画は、男女共同参画社会基本法第14条第3項により努力義務とされていることや、市町村によっては取り組む優先順位が低いことも影響しているものと考えております。
 県としましては、こうした現状を改善するため、現在、改定作業を行っている第3次和歌山県男女共同参画基本計画において、市町村計画策定率と条例制定市町村数の数値目標を設定し、重点的に取り組んでまいりたいと考えております。
 その目標達成に向けては、市町村の計画策定等に係るアドバイザー派遣や、市町村職員に対する男女共同参画意識の高揚を図るための研修などの支援を引き続き実施するとともに、首長等に対しても計画策定を強く働きかけるなど、より効果的なアプローチを検討してまいります。
 次に、平成24年度男女共同参画行政に係る予算は、ふるさと雇用再生特別基金の終了に伴い厳しい状況ではありますが、民間団体と市町村が連携して企画、運営を行う新しい事業なども盛り込み、知恵を絞りつつ、最善の努力をしてまいります。
 今後は、先ほど申し上げた第3次和歌山県男女共同参画基本計画に沿って効果的な事業を展開していくため、必要な予算の確保に努め、男女共同参画を推進してまいります。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
 女性が活躍できる環境整備、共同参画について、私たちのこの国の子供の年間出生数は、ピーク時には270万人おりました。現在は100万人、3分の1近くになっています。しかも、あと40年後、2050年には49万人まで落ち込むことが予想されていて、それは何とピーク時の5分の1以下です。
 国の宝、金の卵の子供の数が5分の1以下になる、そういう現実が突きつけられていると。私たちの国は、坂の上の雲どころか、坂の下の溝にはまり込もうとしています。今、政治の責任として本気で取り組まないと、これからの時代の人たちに本当に申しわけない。
 本日提言した女性の問題、共同参画は、人口問題、労働力問題など、本当に難しい課題に対して実効性の高い対応策となります。ぜひ、知事を先頭にして一気呵成に取り組んでいただきたい。これは、ほかを切って取り組んでも、世論の応援はその倍ほどついてくる政策だと思いますので、ぜひ知事には強力なリーダーシップを発揮して頑張っていただきたいと思います。これは要望としておきます。
 次に、和歌山らしさの追求、和歌山県全体で取り組む近自然工法の推進について。
 今、和歌山県再建に向けて、地域として望まれることは、いかにして他の都市にない和歌山の魅力を先鋭化させ、和歌山の個性として磨き上げていくか。和歌山の未来を考えるとき、大都市・大阪のカウンターパートとして、大阪では得られない潤い、いやしの空間の創造、すぐれた自然環境を前面に押し出した新わかやま創造が求められ、それには方向性を明確にした県土づくりが求められます。
 そんな中、昨年の台風12号などの影響により県土に大きなダメージを受けた和歌山で、この3年ぐらいは、その復旧を初めとした多くの公共事業が発生することとなり、そこでは、単に従来工法によりコンクリートを流し込むといった手法だけでなく、できる限り和歌山の自然の環境、景観を保ちつつ、治山、治水、復元を実現させていく取り組み、いわゆる近自然工法、多自然型工法をしっかりと導入していくことが重要です。
 そもそも、近自然工法、また多自然型工法とは、人間の利便性追求型社会から、地球環境や自然生態系に配慮した社会、いわゆる環境保全型社会へと変えていくことを基本的な考えとして生まれたのが近自然工学であり、効率性の追求を図る都市とは違い、地方、特にその自然環境を財産とする和歌山などでは、率先して活用することが望まれる技術です。現在は、国としても、多自然型川づくりやエコロード事業など、さまざまな形で推進されています。
 近自然工法の概念は、そもそもヨーロッパのスイス、ドイツなどでその理念が確立されたと言われており、現在では、スイス、ドイツにおいて、公共工事の施工時には絶対的な条件として考えられております。
 私自身、以前にヨーロッパ、中でもドイツを訪問した際に、町の美しさに感動しました。日本では、町なかで美しい景観に感動することはそうあるものではないですが、ドイツでは美しい並木道や親水型の河原、公園などに自然があふれており、町じゅうのあちこちに心を奪われる美しい風景が創造されています。これは、単に自然があるといったことではなくて、ドイツ国民が努力して環境への取り組みを徹底して進めてくる中でつくり上げてきたものです。
 和歌山県の場合は、そもそも美しい海があり、美しい川があり、美しい山がある。自然に恵まれた地域であり、その地域特性をどのようにして伸ばしていくか。そういった地域資源を十分に活用して、自然と共生した、都会にはない和歌山独自の空間、魅力をしっかりと引き出す県土整備こそが必要とされるのだと考えます。
 今後は、新たな公共事業には多自然型、近自然工法を徹底して導入し、そこから都会との違いを際立たせる魅力ある和歌山づくりを進め、地域の活性化、産業の振興までつなげていくことが望まれます。
 そういった中、私自身、平成17年の6月定例会において、当時はまだ全国でもそんなに事例のなかった近自然工法の取り組みについて初めて提案をさせていただいたところですが、しかし、現状においては、近自然、多自然型工法と言いながらも、そもそもの基本理念を踏まえることなく、従来の公共工事の手法に単に見ばえだけで緑をふやすといった誤った認識の多自然型工事が幾つも見受けられ、その原因としては、事業内容が軽んじられる予算至上主義と行政特有の前例主義があると指摘されるところです。
 和歌山県として、それなりに取り組んできてくれていることは理解しつつも、これまでの反省を生かしつつ、さらなる推進に期待するところです。
 近自然工法を誕生させたと言われる元スイス連邦のクリスチャン・ゲルディ氏は、次のようにその有効性を説明します。「景観は、人々の心情に影響を与え、創造性をはぐくむ印象の源であり、文化のあらわれである」。
 景観が人間に与える影響を考えれば、いやしの効果、生き生きと生命力をよみがえらせる地域力の創造、それは和歌山のリゾートコンセプトにもぴったりとフィットする哲学であり、今後の地域づくりには不可欠な視点だと考えます。
 そこで、県土整備部長にお伺いいたしますが、まず和歌山県として、私自身、平成17年6月定例会で提案してから、近自然工法への取り組みについて、どのように進めてきてくれているか、現状の取り組み状況についてお聞かせください。
 また、近自然工法を取り入れた公共工事によるその成果をどのように考えておられるか、また、和歌山県として、ここまで近自然工法に取り組む中で、その反省点としてどういったことが挙げられるか、御説明いただきたいと思います。
 また、今後について、近自然工法に取り組む見通しについてお聞かせください。
 多自然型、近自然工法による整備は、先進地のドイツなどでは、土木工学の専門家だけではなく、少なくとも生態学、景観工学の専門家が加わることが義務づけられています。ポイントは、この3者が参加しなければプロジェクトとして認められないということです。
 以前にも指摘したことですが、改めての提案として、河川、治山などの公共工事を行う場合に、和歌山モデルとして、土木工学の専門家だけではなく、環境、生態、景観といった専門家を現場にも動員し、参画させるという県独自のルールづくりをぜひ行ってもらいたいと思います。そのような取り組みをルール化しているところは、まだ全国にはありません。ぜひ、こういったところでも和歌山モデルを確立していただきたいと考えますが、これも県土整備部長に御答弁をいただきたいと思います。
 また、この近自然工法を提案してから、県内においても、自然整備、リサイクル資材を複合的に組み合わせながら自然復元を目指す工法を提案するといった県内事業者も出てきています。
 そういった特殊技術を持つ地元事業者については、今後、和歌山県内のみならず、全国、国外にもその技術を広げ、ビジネスチャンスをつかみ、和歌山県の発展にも寄与していただかなければいけないわけですが、まずそのためにも地元の施工実績を積ませる必要があると考えます。今後、自然の生態系を大切に考えた工事を施工する地元事業者の育成といったことについても力を入れていただきたいと思いますが、県のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長森 勝彦君。
  〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) まず、県の近自然工法への取り組みについてでございますが、河川事業において、治水機能の確保は当然のことながら、環境に配慮した工法への取り組みも大変重要と認識しております。
 県では、平成17年6月以降、南部川等で近自然工法の取り組みを始めるなど、現在、13河川で自然環境に配慮した河川工事を実施しております。
 河川の中期的な整備内容を定める河川整備計画策定の際には、治水、利水、環境など、さまざまな知見を持った学識者等で構成する委員会の意見を聴取し、環境への配慮を盛り込んだ計画づくりを行っております。
 また、個々の工事の実施に当たっては、県から依頼している河川環境アドバイザーの意見をお伺いするなどしながら工事を実施しております。
 次に、成果でございますが、ブロック積みだった河川護岸に、近自然工法を取り入れることで川らしい自然環境や景観が創出され、河川が本来有している生物の良好な生育環境が生み出されるとともに、人にとってもいやしの空間となっています。
 例えば、住吉川では堤防のり面に植生が戻り、動植物の良好な生息生育空間を形成しています。また、川の中に配置した自然石により流れに変化をつけたことで、自然の瀬やふちが形成され、急な流れに弱い小魚の生息が確認されております。
 このような成果も見られることから、さらに近自然工法の取り組みが必要と考えております。
 次に、これまでの反省点ですが、自然環境に配慮した公共事業については、平成2年に国からの通達が出され、平成9年には河川環境の整備と保全が河川法の目的として明確にされました。
 これを受けて、災害復旧を初め、すべての河川事業で環境への配慮を念頭に置いた川づくりを進めております。
 さまざまな工夫を重ねながら、治水機能と環境機能を両立できた事例がある一方、植生が根づかなかったり、河床や水際が単調になってしまっているような事例や、護岸工法として自然の素材を使用するだけで環境に配慮しているとの不十分な事例も見られるなど、改善すべき点もあると考えております。
 次に、今後の取り組みですが、これまでの取り組みの改善すべき点を踏まえ、それぞれの河川の特性に応じ、環境に十分配慮しつつ、洪水を安全に流せるバランスのとれた川づくりを進めていきたいと考えております。
 用地の制約を大きく受ける都市部の河川においても、環境への配慮を工夫し、川づくりを進めていきたいと考えております。
 また、計画策定時にいただいた環境生態系や景観に係る学識者の意見を生かしながら、和歌山独自の取り組みも取り入れつつ、和歌山らしさを持った価値のある川づくりを考えてまいります。
 最後に、県発注工事においては、県内企業の健全な育成と発展を図るため、県内企業で施工可能な工事は県内企業へ発注することを原則としております。平成22年度からは、さらなる品質向上や地域経済の活性化のため、建設業界の競争力強化事業を立ち上げ、資格等の技術力向上への取り組みや新技術開発への取り組みへの支援を始めたところでございます。
 新技術開発の支援としては、環境に配慮した工法など和歌山県の特色や実情に合ったものを募集し、施工実績のない技術には、県が管理する河川などの実験フィールドを提供し、その効果検証費用も支援しております。
 このような取り組みを通じて、県内企業が開発した新技術により、県内外を問わず事業展開できることを期待するものでございます。
 今後とも、議員御提案の環境に配慮した工法を含めた県内企業の育成や新技術開発支援に取り組んでまいります。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
 多自然型、近自然工法について、この取り組みはお金も少しだけかかりますが、しかし、これは県政百年の大計となる取り組みです。未来の和歌山県民に大きな財産を残すものともなりますので、これまでもそれなりに努力はしていただいてますが、今後はさらに力を入れて徹底的に取り組んでいただけるよう再度お願いして、これも要望とさせていただきます。
 次に、最後の質問項目となりますが、アジア・中国市場への戦略、その足がかりとなる和歌山から山東省に進出する企業メリットの創造について。
 先月、2月に発行されたジェトロ中国北アジア課が作成したレポートでは、現在の中国との関係について、次のように分析されています。
 日本が人口減少局面となる中で、国内市場を中心に事業展開してきた中小企業の事業環境は厳しさを増す一方、日本の中小企業は、成長を続ける振興市場開拓を通じて自社ビジネスの拡大を目指す動きが顕在化しており、とりわけ2010年に日本を抜いてGDP規模で米国に次ぐ世界第2位となった中国市場の開拓を目指す企業がふえている。対中貿易では、2012年1月──ことしの1月ですけれども──発表された財務省貿易統計をジェトロがドル建てで換算したところ、2011年の日中貿易は総額3449億1623万ドルで、前年比14.3%増と、過去最高を記録するものとなっている。日中貿易は、堅調な中国経済に支えられた輸出の増大、中国製完成品・部品等に対する日本側の需要拡大を受けた輸入の増加により2年連続で増大。日本の貿易総額に占める中国のシェアは20.6%と、日本経済に対する中国、中国経済に対する日本、相互の互恵関係は一層深まる状況にあるとしています。
 中国といった国に対しては、その振る舞いから、許せないといった中国アレルギーを感じられる方も少なくありません。私自身としても、中国という国の問題は多く感じるところですが、しかし15億の民を抱える中国といった国そのものを一くくりで見るだけでなく、そこにある個人、企業といったものを丁寧に見ていくことが重要です。
 先ごろ、県内企業の技術を中国山東省政府に売り込むためのお手伝いをするために、山東省済南市に行ってまいりました。商談そのものはまずまずで、今後に期待を持たせるものとなったのですが、そのときにお手伝いいただいた和歌山県の中国アドバイザーである陳進躍さんとお話しする中で、改めて現在の中国の現実、その一面を肌で感じることとなりました。
 陳さんは、和歌山県のアドバイザーであるとともに福岡県のアドバイザーも兼ね、その他、大手日本企業のコンサルもされています。おっとりした学者肌で、人柄もよく、日本と中国それぞれに深い見識を持ち、適宜適切なアドバイスをいただける信頼できる方です。お金のためだけでなく、やりがいのある仕事がしたいと、最近は高額な金額を提示されても目先の利益を追うような仕事は断られていて、中国では珍しいタイプの人物だと思います。
 今回、正式なビジネスの話が一段落した後、夜の9時過ぎから2人でホテルを出て、ちょうどその日はバレンタインで、にぎわう済南のまちを、スターバックスのコーヒー片手に、いろんな話をしながら約2時間散歩しました。マイナス6度という極寒の中、体は冷え切りましたが、陳さんと時間をかけてゆっくりとお話をさせていただく中で、非常に有意義な時間となり、中国の実像とはといったことについて改めて考えさせられました。
 陳さんの奥さんは、中国の某有名銀行の幹部であり、今は附属の研修センターで所長をされているということです。
 子供さんは、娘さんがお1人いらっしゃって、アメリカのスタンフォード大学を卒業後、同大学院の修士号も取得され、現在は世界銀行で働かれている。日本が大好きで、スタンフォードのプログラムで世界各国への自由研究でも日本を選択し、企業インターンとして約6カ月間、日本での就業体験もある日本びいきのお嬢さんということです。
 この陳さんの娘さんのお話について、いろいろとお聞きしてくる中で、改めて中国の見方について考えさせられました。中国からアメリカ、スタンフォード大学、そして今は世界銀行で活躍している。マスコミでも取り上げられるよくある話のようですが、しかし身近な話として改めて伺うと、そのよくある話こそが非常に重要なものだと気づかされました。
 陳さん御自身は、そもそも優秀な方ではありますが、決して特別の立場を与えられた人ではありません。党の幹部でもなく、中国の中では身一つで生き抜いてきたごく一般の市民です。その娘さんも、特に特権階級としてエリート教育を受けてきたわけではありません。娘さん自身が欧米の有名大学への進学を望み、御両親からは奨学金を受けることを条件として許可され、一生懸命勉強して複数の大学から奨学金つきの合格をかち取った。その中で、返還不要の奨学金5万ドルという一番条件のよかったスタンフォード大学へ進学することにして、卒業後は世界銀行に就職。今は世界各国で多くの友人をつくる中でさまざまなビジネスを応援して、自身もいろいろと挑戦を続けているということです。
 今の日本で、特に内向きになっている現在の私たちの国で、こういった話はなかなか聞く機会は少なくなっています。しかし、中国では、こういった人物がごろごろいるのが現在の中国の一面であり、現実です。
 今、中国を見て、その国自体を決して一くくりで語ることができないと痛感します。国として理解しがたく、日本からは許しがたいことも多いですが、そういった中国という国そのものと、そこにある企業、個人、人間もさまざまであって、よい部分もあれば悪いところもある。それぞれへのアプローチをバランスよく丁寧にしていかないと、ある面では間違った認識を増幅させ、ひいては大きなチャンスを逃すことにもなります。
 現在の中国へのアプローチについては、山東省済南でも、アメリカ、フランス、イギリスなど、それぞれに企業、個人ベースで、したたかにつき合いを深めている現実があります。
 そういった中、今の日本企業、個人の対応については、一部でナイーブ過ぎる反応を感じます。結局は、日本の個人、企業は、まだまだ豊かであり、ある意味ぬるま湯につかっている状態で、チャレンジングスピリットも不足している。
 今の日本、和歌山の企業の皆さんも、ここで未開の地への冒険をちゅうちょしていると、世界の成長センターとなるアジアに立地する日本、しかも国際空港に隣接するという和歌山の大きなアドバンテージをみすみす逃してしまうことになりかねません。
 あくまで国といった単位での物事の見方、とらえ方だけでなく、和歌山県、和歌山市、山東省、済南市、さらには企業、個人といったミクロの単位での丁寧な取り組みが今後は重要であり、その上に、これまで培ってきた努力、過去30年にわたる親善交流、そこで得た人脈、信頼は強力な武器となります。それを今こそ生かす時期であり、アジア・中国進出への足がかりとして、特に山東省での経済活動について、これまで積み上げてきた交流のアドバンテージを、しっかりと活用した取り組み、和歌山県の戦略が期待されるところです。
 そこで、商工観光労働部長に幾つかの質問並びに提言をさせていただきます。
 まず、これまでの山東省との取り組みを踏まえて、特に商工、ビジネスの部分で成果をどのように考えておられるか。
 また、ビジネスマッチングの事業において、これまでの取り組みの反省点についてどのように考えているか。また、その反省点を踏まえて、今後、具体的にどのように改善していこうと考えておられるか。
 中国の成長パワーは、和歌山県としてもぜひとも取り込んでいかなければならない重要なものであり、今後は特に中国を市場と考えて、県として和歌山県の企業にビジネスチャンスをつかんでもらうことを願うわけですが、そのためには、今後、県としてどういったことに力を入れていこうと考えておられるか。
 また、あわせて、和歌山県が姉妹提携を結んでいる山東省、現時点において和歌山県の企業が特に山東省でビジネスを行う場合のメリットについて、どのように考えているか。また、実際に成果の上がっている事例があれば、具体的に示していただきたいと思います。
 私の友人が経営する企業で、県と山東省との友好提携を踏まえて、実際に山東省青島に出店してくれた具体的な事例がありますが、しかし、和歌山県が姉妹提携を結んでいるメリットを特に感じることはないと話します。中国の他の省に独自で出店するのと比較して、特段メリットを感じていないということです。これではいけないのであって、今後、山東省との友好提携の利点を生かす取り組みについて県はどのように考えているか、お示しいただきたいと思います。
 現在の中国におけるビジネス、現実問題として、リスク管理なく中国に飛び込むのは危険も少なくないと思います。そこでは、それなりの戦略が必要で、例えば中国では、日本では考えられないくらい、政治、行政府の権威は絶大です。そこを上手に活用すると、リスクは大幅に軽減されます。
 県内企業の山東省への進出で、山東省政府が協力してくれる状況をもっと前面に押し出せるような仕組みをつくれれば、リスク管理が高まります。通常、民間だけで行うと、そこにはリベートなどの話も少なからず耳にしますが、和歌山県との30年にもわたる友好関係を上手に利用してもらうことで、そういったこともなく、山東省政府がバックアップしているというお墨つきのもと、スムーズな企業活動につなげる、そういった体制を整えることが非常に有効な手段となります。
 そこで最後に、具体的な提言として、企業の中国進出に係る和歌山県のサポート体制のさらなる充実として、山東省政府の中に置く和歌山県企業のサポートデスクの設置について提案させていただきます。
 山東省、省政府の中に設置する和歌山県企業への専属のサポートデスク、この話をさきに紹介した私の知人の経営者にも相談したところ、窓口を一本化させ、県内企業をバックアップするための取り組みで、県の職員が常駐してくれるサポートデスクがあれば、本当に助かるということです。それは、今後、和歌山の企業が中国へ進出する大きな追い風になると期待を寄せていました。
 ぜひ、この機会にサポートデスクの設置について真剣に取り組んでもらいたいと思いますが、商工観光労働部長に御答弁をお願いします。
○議長(新島 雄君) 商工観光労働部長大門達生君。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) 山東省における県内企業の活動の活性化に資する取り組みに関する御質問に、一括してお答えいたします。
 山東省との商工分野における経済交流に関しては、平成17年度から毎年、本県企業と山東省企業との商談会を開催してきました。参加企業は、第1回の9社から第7回の昨年は17社と増加傾向にあり、また参加業種も、繊維、家具など製造業種から飲食、福祉などのサービス関連業種へと幅広い業種に広がってきており、数多くのビジネスチャンスを創出してきたものと考えています。
 一方で、これまでの商談会では、具体的な商談に結びつきにくいとの声もあることから、本県企業ニーズと合致した出会いの場となるよう、山東省政府と協議しながら工夫を凝らして商談会を開催するとともに、議員御質問の中にもございましたアドバイザー、すなわち中国人ビジネスコーディネーターや商社OB派遣などの施策をフル活用し、市場としてますます期待できる中国への進出を支援してまいります。
 次に、山東省との提携につきましては、山東省政府の支援を得た上で、新たなビジネスチャンスを創出できる大きなメリットがあり、これまでも山東省のパートナー企業とビジネスを展開するなどの成果が出ております。
 今後とも、多くの企業がビジネス展開できるよう、提携のメリットを生かした取り組みを進めていく必要があると考えております。
 また、議員御提案のサポートデスクに関しては、中国で第2位の経済規模となった山東省との経済交流を活発化させ、企業活動を支援する体制を充実させていくことは重要であると認識してございます。
 これまでも、山東省商務庁との提携により、県内企業の相談に総務庁が協力する体制を構築するとともに、山東省政府へ本県職員を派遣するなどして山東省政府との友好関係の強化に努め、企業活動を支援してまいりました。
 今後は、山東省商務庁との協力体制を基本に、これまでの友好交流の中で培ってきた人脈やジェトロ青島事務所の組織力などをより一層活用しながら、工夫した商談会の実施、中国人ビジネスコーディネーターや商社OB派遣の有効的な活用など、さまざまな施策を効果的、総合的に展開するという形で、さらに県内企業が円滑に活動できるような体制づくりに積極的に取り組んでまいります。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
 中国山東省におけるビジネスチャンスの拡大、和歌山県企業のバックアップということについて、中国へのチャレンジは、47都道府県でしのぎを削っている状況です。和歌山県の規模で行うとすると、その予算額から考えても、そんなに選択肢はなく、中途半端にいろいろやるよりも、思い切った選択と集中が必要だと思います。
 これまで、知事自身も何度もトップセールスを行われる中で、それは直接の人脈と信頼を得ることにつながり、大きな武器となっていると思います。そういった関係をこれまで築けているからこそ、和歌山県であれば今回のサポートデスクも可能となる、取っておきの手だと思います。
 特定の県による地方政府内に設置する県内企業専属のサポートデスクといったものは、調べた限り、どこもありませんでした。しっかりとアピールして、それを活用していくことで、必ず大きな成果がついてくるものと確信します。これは、本当に効果の大きい中国戦略として、和歌山県の未来のために何としても実現させてもらいたいと思います。
 そこで、改めて、このサポートデスクについて、知事から御答弁をいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 通告がなかったもんですから、議長のお許しを得て申し上げます。(「通告はやってる。再質問の通告はしてる。質問項目の上位者への質問は全然問題ない」と呼ぶ者あり)議長の御許可を得ましたので申し上げます。
 サポートデスクについては、議員の問題意識、いろんな情報をとって、それで和歌山企業にそれを伝え、それで和歌山企業のお世話をするということは大変大事なことであります。そのために、じゃあどういうふうにするかというと、自前のものを持つというのが、割合すぐ、だれでも考えるところなんでございます。議員の御提言は、実は自前のものであるようなところがあり、自前のものでないようなところもあるわけです。
 自前のものでないというところは、県の職員が行って、そこに座っていていろんな仕事をすると、こういうところだと思います。
 実は、和歌山県は、山東省に職員を常時1人ずつ派遣しております。これは、中国関係の要員に仕立てようというようなことも長期的に考え、かつリエゾンオフィサーとして連絡もとってもらおうというふうに思ってるわけです。
 私は、現地のことは、現地にいろいろ根の張っている、そういう組織でないとなかなか難しいというふうに思います。したがって、我々は、山東省政府にも動いてもらう、そのためのネットワークはきちんとつくっておく。それから、既にジェトロや領事館があるわけですから、そういうものを全部傘下におさめて思うままに操ると、こういうほうがずっと効率的であろうと思います。
 私自身の経験を──ジェトロの実は海外要員もやりました。ひとり事務所の難しさというのは、よくわかっております。
 それから、自分自身が突如として外国に行かされて、頑張りましたけれども、現地に溶け込むまで随分時間がかかります。したがって、県の職員を独立してやらせるということは、かえって副作用もあるかもしれませんので、今のところ、ややネガティブでございます。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
 知事がおっしゃるように、当然、各国の駐在員とか外に出せばいいというものではなくて、自前でできることは簡単にできるけれども、金と効果が本当についてきてるかというところは確かに問題あって、今、それを整理されてるというのはよく理解します。
 ただ、今回、私が提案させてもらってんのは、1人で中国でどっか事務所置けじゃなくて、山東省政府の中に置くというのが実はみそなんですね。しかも、我々は30年交流やってきてると。向こうの外事弁公室、和歌山県の窓口になるところというのは、もう人的な交流もずっとして、お互いの人間関係はできてると。その中に、例えば和歌山県の職員を1人置いて、日本企業が何か困ったこととか相談事があるときに、その日本人に対して相談をかけて、それに対して、外事弁公室を初め山東省政府の中でその問題解決に対して全体で協力してもらうと。
 実は、このサポートデスク、1人置くことによって、しかも和歌山県企業に対しての専属のサポートデスクということで、これはもうほかからもどんどん置けというようなことになっても、なかなか置けるもんじゃないですし、今、我々が提案して、しかも30年の交流があるからこそ実は実現できる話であって、先ほどもちょっと申しましたように、知事自身もトップセールスをされてると。そういう意味では、省庁、向こうの共産党書記長なんかとも信頼関係がある中で、今、和歌山がやれば、かなりうまくいくだろうというようなことは、実は私も行って、そういう感触も確認してきております。そういう部分では、ぜひ実現させてもらいたい。
 もう1つ、ジェトロとか領事館とか、いろんなものを巻き込んでという話もありますけれども、実際、これは知事も御経験からわかってると思いますけれども、ジェトロの、今、山東省の青島所長の北条さんともお話しさせてもらう中で、やっぱりジェトロも含めて、外部から中へ入り込むというのは本当に難しいんですね、中国というのは。例えば、民間の三井物産の加藤所長なんかともこの間もちょっとお話ししてくる中で、実際、外部の民間企業が入る、外郭団体が入るというのと、和歌山県が山東省とおつき合いしてくる中で和歌山県が入り込むという入り込み方とは、全然違うわけですわ。
 だから、県の山東省とのおつき合いの中で省政府の中に人間が置けるという、こういう入り込み方というのは普通の機関はできませんので、我々がおつき合いしてきた中の大きなメリットとしてそういうのがあって、しかも山東省自身も、中小の和歌山の事業者とぜひ積極的なおつき合いしたいということを向こうも望んでますんで、こういうときに和歌山のサポートデスクを省内に置いて、しかもその問題解決にも省を挙げて当たっていただくというような形ができれば、これは和歌山県の企業にとっても大きなメリットになりますし、大きな成果というのが得られると思いますので、そういう認識でありますので、ちょっと先ほど、知事の答弁とは認識が違いますので、改めて知事にちょっと御答弁いただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 山東省には、既に若い職員を送っとるわけです。その職員がリエゾンオフィサーといいまして、ちょっと難しい言葉を使いましたが、連絡役を果たせるようにもなっております。
 それは、なぜ置けたかというと、まさに議員お話しのように、30年も長い間、我々がおつき合いしてて、それでそれを預かってあげようと、ほんで仕込んでもらってるわけですが、仕込むだけじゃおもしろくありませんから、我々もそのルートを通じて、山東省政府にいろいろ動いてもらおうというようなことも考えてるわけです。
 そういう意味で、山下議員の言っておられることと実はおんなじなんですが、名前をつけて、例えばちょっと身分の高い初任者みたいな、ちょっと格の上の人を送ることがプラスかというと、どちらかというとマイナスになるんじゃないかと、そういうふうに思って申し上げた次第でございます。
○議長(新島 雄君) 山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕
○山下大輔君 御答弁ありがとうございました。
 もうこれは、あんまりかけ合って──ぜひ和歌山のプラスになるように考えてもらいたいと。
 先日も行ったときに、今、県から送られている担当職員の方とも話ししてまいりました。
 実際、今言ってるそのオフィサーとしての役割が果たせてるかといったら、半日は語学研修で半分はつぶされ──それはもうそれでいいんです、人を育てるという意味でね。ただ、今、言われるように、別にそれは位の高い人間置く必要もなくて、担当者レベルでいいんですよ。フットワークの軽い、やる気のある若い職員を送って、サポートデスクという──外事弁公室、中国人の方が窓口で対応するというようなことも、これは例えば山口県初めいろんなところに全部対応してるんですね。
 そういう部分では、和歌山専属の、しかも日本人である県職員が窓口になって親身にお世話するというサポートデスクの看板をつくって対応するということは、私はおのずから結果は大きく違ってくると思ってます。だから、できれば置いていただきたいと思いますので、最後にこれはもう要望といたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(新島 雄君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時57分休憩
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