平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)


平成24年2月 和歌山県議会定例会会議録

第3号(藤本眞利子議員の質疑及び一般質問)


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 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)
○藤本眞利子君 昨日は奈良のお水取りも始まりまして、一日一日と春めいてくるきょうこのごろですが、先ほど中村議員もおっしゃったように、しっかりと議論を尽くしていきたいなというふうに思います。
 本日は、分割方式で、4項目について議論をしてまいりたいというふうに思いますので、しばらくの間、御清聴、よろしくお願いいたします。
 まず、教育問題についてお聞きをしたいというふうに思います。
 昨今は、大阪の橋下徹市長の話題が新聞に載らない日はないぐらい、橋下市長率いる維新の会の動向が注目をされています。私的には、マスコミもちょっと取り上げ過ぎと違うかという思いもあります。維新八策など、人気の高い龍馬にあやかってのネーミングはマスコミ受けするなあなどと思う反面、私自身、1人の政治家として、地方の自治等については共感する部分はありますが、特に教育にかかわっては大きな疑念を持っています。
 橋下市長はいろいろ発信されていますが、本日は、政治と教育、学力とは何かといった教育の本質的な部分の見解についてお聞きをしたいと思います。
 まず第1点として、今、教育の本質が大きく変えられようとしている大阪府教育基本条例案、その中でも教育行政基本条例について、知事並びに教育長、教育委員長の見解をお聞きしたいと思います。
 大阪府教育基本条例は、昨年9月、府議会と市議会に議員提案をされました。一たん取り下げられまして、その後、ダブル選挙の当選結果を受け、首長提案として教育基本条例案が再度提示されています。
 知事も教育長も、維新の会が昨年の9月に議員提案した教育基本条例をお読みになったかと思います。第9章から成る条例案は、前文と目的、基本理念を1ページに示し、児童生徒の教育を受ける権利については3行、その後の17ページほどは、すべて教職員の人事や処分に関する条項で埋められています。教育基本条例とは名前をつけるにもおこがましい、職員処分条例というふうな、そんな感じです。
 また、最初の大阪府教育基本条例第1章第1条の目的に、「この条例は、教育基本法、学校教育法、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、その他国の法令が定める教育目標を府において十分に達成するべく、これらの法令を補完することを目的とする」と定めています。法令を補完することが目的であるにもかかわらず、教育基本法、教育地方行政法、教育公務員特例法等々に抵触すると、自由法曹団が9項目に及ぶ問題点を指摘しています。法治国家において法に抵触する、そういった条例は許されないと考えます。
 その後、教育行政基本条例案が最終的な形で提案されていますが、その内容は、教育への知事の関与を大きく認めているものとなっています。教育目標も、知事は府教育委員会と協議をして教育基本計画の案を作成する、教育委員の罷免の部分でも知事が罷免理由を判断するといった内容になっています。
 今さら言うまでもありませんが、戦後の反省から、教育はその時々の政治権力によってゆがめられてはならないとされてきました。それゆえに、教育委員会は知事や市町村からの独立性を保障されてきました。
 大阪府の教育改革は、教育委員会という制度の不備に対応していると言われていますが、私は明らかに方向性が間違っていると考えます。教育とは百年の計と言われています。早急な結果のみを追うのではなく、地道な取り組みこそ評価されるべきものだと考えます。
 文部科学省は、大阪府教育委員会からの問い合わせに応じ、昨年の12月に、知事による教育目標の設定は地方教育行政組織法に抵触すると回答していると聞いています。
 修正された大阪府教育行政基本条例には、教育目標を知事と府教委が協議して教育基本計画を作成するとしています。また、この教育目標実現に責務を果たさない教育委員は罷免できるとの内容も盛り込まれています。
 そこで、まず知事、教育長、教育委員長に、教育の政治的中立性についてどのように考えられているのか、見解をお伺いします。
 あわせて、今回提案された教育行政基本条例案に示されている、知事が教育委員会と協議し目標を定めることや、教育委員の点検及び自己評価の結果に基づいて知事が罷免理由に該当するか判断できる等が盛り込まれています。これでは、知事の定めた教育目標に達成できない教育委員は知事が罷免できる内容となっています。私は、これは地方教育行政法の教育委員の罷免理由に該当しないと同時に、教育の政治的中立性を保障しているものと言えないと考えますが、知事の御見解をお伺いします。
 次に、学力テストについてお伺いです。
 大阪教育基本条例の問題点として、この条例案は、競争強化の理念で貫かれており、競争することで何もかも解決するといった印象を受けるということです。
 学力テストの結果で教員を評価し査定する、学力が低く生徒が集まらないとされる高校は廃止するなど、思いつきの言いたい放題といった印象です。
 学力を保障することは、教育の中では最も重要なことだと思います。しかし、私は、子供たちを点数のみで評価し、競争に追い立てることが学力に結びつくとは到底思えません。
 国が学力テストを始めたのは1956年からですが、当時は抽出で実施、1961年から中学校2~3年生を対象に悉皆調査となりました。しかし、その結果、県別の成績比較やテスト準備が公然と行われるようになり、いわゆる弊害が出始めたため、1966年に打ち切られています。その後、1982年に一部学校で、2007年に全小中学校で全国学力テストが復活して現在に至っています。
 橋下市長、当時知事は、この全国学力テストの結果を受け、大阪府の成績が芳しくないことから、学力テストの成績を上げることこそが教育の最優先課題だと位置づけされました。当時、学力テストの結果が悪いことの責任は教育委員会や教育現場にあるとし、市町村の教育委員会に点数の公表を強要し、さらなる競争を仕向けようとしました。文科省は、過度の競争を招くとして、都道府県教委に対し、市町村、学校別の結果は公表しないよう指示しています。
 それに対して橋下知事は、市町村の教育委員会は甘えている、結果が表に出ないからと述べています。市町村によっては公表に応じないところもあり、なかなか自分の言うことが通らないことに立腹し、教育への政治の関与を強めたのだと私は推測します。私は、橋下市長の言動こそ、まさしく県別成績を競い合う極めて危険な弊害だと考えます。
 きょうの新聞にも、学校別に公表するというふうに記事が載っておりました。
 私は、学力テストを否定するものではありません。学力を数字であらわすことによって教科への理解度が客観的にわかります。また、問題点がより鮮明になるというメリットもあります。
 しかし、学力を高めるためにしなければならないことは、学力テストでわかったことを教育現場で生かせるように条件を整えることだと思います。より少人数で指導できるようにする、教員の研修を充実させる、わからない子にわかるまで指導できる環境づくりだと考えます。そのために首長は手腕を発揮するべきだと考えます。
 また、学力を高める努力は、1年や2年間で結果が出るとは思えません。また、現在よく言われていることは、家庭環境の格差が大きく影響しているというふうにも言われています。
 そこで、教育長にお伺いします。
 教育委員会でも、小学校4年生から中学校3年生を対象に、平成15年度から18年度までは県単独で、19年度から20年度までは全国学力テストをあわせて実施し、21年度からは全国学力テストをまた実施しています。
 まず、何のために全小中学校で学力テストを行うのか、その意味をお伺いします。
 また、学力テストは、あくまで数字であらわれた教科への理解度だと私は認識していますが、学力テストを実施した結果を受け、今後どのように生かしていくのかお伺いします。
 教育長は、子供たちにどういう力をつけさせたいのかについてもお伺いしたいと思います。
 教育問題については、以上です。
○議長(新島 雄君) ただいまの藤本眞利子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 行政機関が政治的中立性を保つというのは当然のことでありまして、御指摘の問題は、政治的中立性という問題ではどうも私はないんじゃないかなあというふうに思うんです。
 政治家から、つまり選挙で選ばれた人から教育を切り離して、教育委員という人に任せないと中立が守れないというのは何だろうなあというふうに思います。
 他の例で言いますと、文部行政は事務次官以下の官僚だけでやれというのはおかしいと同じように、やっぱり行政機関を率いる者は政治的中立性も考えながらさまざまなことをせないかん。
 一方、教育委員会というものについて、私は大変いい制度だと思っています。というのは、見識のある方々がさまざまな意見を闘わせながら教育方針を決定していくというのはいいと思います。
 一方、知事やあるいは議会が教育問題について何ら発言しないというのも、これまた変ということだと思います。私自身は、教育委員会に対して自分の考えを常に述べてまいりましたし、これからも教育委員会とよく協議をしていくつもりでございます。それは、現行の仕組みの中でも、私は十分私の意見あるいは議会の意見、そういうものは反映できると思っているので、そうしているところでございます。
 本県では、教育委員会も交えて議論をいたしました。それで、その結果、でき上がりました和歌山県長期総合計画、この中には教育の部分が大きく入っております。これを議会で議決していただきまして我々の10年計画とし、さらに教育委員会がこれを受けて教育振興基本計画を策定して、県民の負託にこたえられる教育を推進しているというところでございます。
 こういった方法で、私も大事な教育を、教育委員会の方も立派ですけれども、任せるだけにしないで、その充実を一層図っていきたいと思います。
 御質問がありましたが、大阪府教育行政基本条例案につきましては、これはまあちょっと私も勉強しまして、まあ確かに法律上のクリアを得ているのかなあというところが、よくわからないところが正直言ってありますけれども、その手の法令審査は、これは大阪府の議会の仕事だと思いますので、私は意見を差し控えたいと思いますが、ただ当県としては、私の気持ちとしては、全く同じものを議会に提案しようという気持ちはございません。
○議長(新島 雄君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) まず、教育の中立性についてどう考えるかという点についてお答えしたいと思います。
 私自身、教育長に就任以来、クリーンで公正・公平な教育行政に努めてまいりました。また、教育の中立性を確保するとともに、教育に対する県民のニーズをしっかり受けとめて、より充実した教育を実現することが極めて重要であるというふうに考えてございます。
 先ほど、知事の答弁にございましたけども、教育委員会としては、常に知事と本当に心を割った真摯な意見を交換する中で、知事の考えも十分に伺いながら、私たちの考えもしっかりとお伝えし、説明し、理解を得ながら取り組みを進めております。
 今後も、意思疎通を図りながら、和歌山県のあすを担う子供たちの育成に向けて全力で取り組んでまいります。(「議会を忘れてるよ、議会も」と呼ぶ者あり)もちろん、議会もございます。
 次に、教育問題にかかわって、学力テストの結果についてでございますけども、3点の御質問についてお答えしたいと思います。
 まず、第1点目の学力・学習状況調査の目的について、児童生徒の学力や学習状況を把握・分析することにより教育施策の成果と課題を検証しながらその改善を図るとともに、学校における児童生徒への指導の充実だとか、あるいは学習状況の改善等、子供の学力向上に役立てることにございます。
 県教育委員会では、これまでの調査結果から、主として活用に関する問題の正答率が低いということを踏まえながら、授業の中で、しっかりと自分の考えを持って相手にきちんと伝えていく、そしてみずからの考えをより深めていく、そういう活動を充実させることによって思考力、判断力、表現力の育成に取り組んでおるところでございます。
 同時に、確かな学力をつけさせるために、丁寧で粘り強く、きめ細かな指導を大切にしておりまして、特に学習の定着しにくい児童生徒を対象とした補充学習の充実を図っているところです。
 次代を担う本県の子供たちには、さまざまな社会の変化に対応できるよう、1人1人がみずから個性を発揮し、困難な場面に立ち向かい、未来を切り開いていく力を身につけさせたいと考えてございます。とりわけ、学力面につきましては、わからない子を取り残さない、伸びる子はさらに伸ばすという方針のもと、わかる喜び、伸びる喜び、結果の出る喜びを実感できる教育をこれからも推進してまいりたいと考えてございます。
○議長(新島 雄君) 教育委員会委員長山下郁夫君。
  〔山下郁夫君、登壇〕
○教育委員会委員長(山下郁夫君) 私たち教育委員は、教育委員として知事から任命されております。また、議会の皆様方から御承認いただいていることに対して、責任と誇りを持って、公平・公正に任務の遂行に当たっておるところでございます。また、今後も、法律、条例等によって与えられた権限に基づき、さらなる教育の振興に向けて取り組む所存でございます。
 各地域において開催している井戸端トークや定期的な学校訪問を通して、県民の皆様方の声をしっかりとお聞きし、信頼にこたえられるよう教育行政を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
○議長(新島 雄君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁ありがとうございました。
 今さら言うまでもないわけですが、この教育の独立性というのは、兵隊さんも民間人も含めて310万人も犠牲になった第二次世界大戦、その上のもとで、その時々の権力者によって都合のいいように変えられてはならないという理念のもとに、今の教育基本法もつくられているというふうに思うわけです。
 教育委員会の独立性とか中立性というのが重要なのは、教育の特殊性にあって、子供をどう育てるかというのは、もう単なる技術ではなくて、価値を含む、そういう部分があるからだというふうに私も思っています。
 現状でも、知事の権限というのは、今、教育委員長がお話しになったように、教育委員さんも教育長さんも知事の任命でその職に当たるわけでありまして、予算の執行権というのも、予算もやっぱり知事の権限の中にあるわけです。知事さんが一言、「よし、和歌山県の教育は1学級20人にするぞ」と、こういうふうに大変少ない(「言うてええんか、それ。言うてええんかいな」と呼ぶ者あり)いやいや──と公約すればです。それは言うていいんです。それを言いますと、予算を伴って確実に実現できる政策になるわけです。そういう意味でも、現行の仕組みの中で知事の意見というのは十分反映できるというわけです。知事のおっしゃるとおりだと思います。
 予算も人事も握る知事の大きな権限がある中で、今回、教育目標とか教育委員の罷免にまで関与を強めるとなると、その影響は私ははかり知れないなというふうな思いを持って、それでこの大阪府の教育行政基本条例を例に出して御質問させていただいたわけです。私は、大変大きな危惧を抱いております。
 御答弁では、知事も教育長、教育委員長とともに、和歌山県の教育のためにさらに御尽力いただけるということですので、もう強く心から要望しておきたいというふうに思います。
 それから、もう1点の学力テストについてでありますが、子供たちに学力をつけさせることは、教育に携わる者にとっては最も大切で、苦労する問題です。授業研究もその一環でありますし、それから御答弁──放課後の補充事業なんかでも、そういうことも何とか学力をつけさせたいという、そういった一環だというふうに思います。少人数の指導でもそうでありますので、もっともっと進めていただきたいというふうに思っているわけです。
 そのためには、子供のやる気を引き出す、そういう意欲あるそういった教師というのが大変重要なことで、子供の気持ちと真剣に対峙して、それから子供の気持ちに寄り添う、そういうことのできる教師を育てていかなければならないというふうに私は思うんです。
 大阪の教育行政基本条例では、校長の権限を大変大きくしておりまして、教師の評価に重きを置いております。しかし、今日のように家庭環境が大変複雑になり、生徒がすごく多様性が進む中で、それを無視したような一面的な教師の評価は大変難しいというふうに思っています。
 校長先生に気に入られるように、それから校長先生や上の顔色ばっかり見るような先生、自分への評価が下がるのを恐れて問題を抱えた子を忌避する先生、そんな先生をつくってほしくないです。そんな教育現場を想像すると、もう何か殺伐とした気持ちになってきます。
 金八先生がロングセラーの人気を維持する理由は、金八先生がいつも生徒とともに悩んだり考えたり行動する、その姿勢に共感が集まるからだと思います。
 教師がやる気を出し、子供たちに奮闘できるよう、教育委員会もしっかり支援していただくよう要望して、教育についての質問を終わります。
 引き続きまして、児童虐待問題についてお伺いします。
 平成24年度の新政策にして、安心の政策として児童虐待防止対策の強化ということで9900万円の予算が計上されておりまして、県の姿勢としても虐待防止に尽力されていることと受けとめています。
 最近のテレビや新聞等のマスコミによっても重篤な事案が報道され、罪もない小さな命をどうして守れなかったのかと、私自身も大人の責任を感じずにはいられません。
 全国的に見ても、20年余りの間に、養護相談は3.5倍、一時保護は1.7倍、虐待相談件数は、何と40倍にもなっています。平成21年度は4万4211件であったものが、22年度は途中集計でもあるにもかかわらず5万5154件にも上っています。
 和歌山県においても、児童虐待相談件数は、平成22年度で640件、平成23年度は途中集計で514件となっており、同様の増加傾向が示されています。
 先日、田辺で行われたフォーラム2012「児童虐待と社会的養護について」の講演会に行ってまいりました。県の関係者の方も大変大勢参加されており、関心の高まりを見ることができました。
 その中で、大阪市児童相談所に長年勤められ、現在は花園大学で教鞭をとられている津崎哲郎氏の講演をお聞きしました。
 児童虐待の背景が、ひとり親の増加、経済的困窮、家庭や親族の養育力の弱体化、発達障害、未熟児等の育てにくい子の養育など、ハンディを抱えた家庭の増加であるといった内容でありました。
 近年の傾向として、ステップファミリー、要するに子育て中の親の再婚、子供を連れての再婚がふえ、ちなみに4組に1組がステップファミリーだということです。警察調べの事件になる虐待のトップが、このステップファミリーによる継父によるものであるということでありました。新聞紙上でも、死亡につながる虐待は継父によるものが圧倒的に多く、緊急介入が必要であるとのことでした。
 虐待から子供たちの命を守るために、子育て支援の体制をつくり上げなければならないと思います。
 そこで、何点か福祉保健部長にお伺いします。
 県は、児童虐待防止に具体的にどのような対策を考えていますか。また、県と保健所、市町村、警察との連携はどのように行われていますか。
 国では、児童養護の道筋として、里親3分の1、グループホーム3分の1、施設3分の1という措置を進めたいということですが、里親の拡充、児童養護施設でのケアの小規模化、小規模住居型児童養育事業のより家庭に近い養育環境の整備についてはなかなか進んでいないのが現状であります。今後、県として社会的養育をどのように進めていくのか、お伺いをしたいというふうに思います。
○議長(新島 雄君) 福祉保健部長鈴木敏彦君。
  〔鈴木敏彦君、登壇〕
○福祉保健部長(鈴木敏彦君) 児童虐待問題についての4点の御質問にお答えをいたします。
 まず、児童虐待問題への対策として、県、市町村、警察等の関係機関が、それぞれの業務に関する機能や地域的な利便性を生かしつつ緊密に連携し、虐待の未然防止と、早期発見、早期対応から家族の再統合、自立に至るまで、切れ目のない支援を行っております。
 具体的には、平成24年度の新政策として、特に虐待の未然防止と再発防止のための親支援に重点的に取り組むこととしており、親の状況に応じて、子育て技術、養育環境、ストレス管理などを学習するためのプログラムを提供してまいります。
 また、児童相談所の機能強化のため、虐待対応課を新設するとともに、7名の児童虐待緊急対応員を配置し、児童の安全確認時の対応のみならず、親に対する養育支援や児童のケアを充実させてまいります。
 次に、県と市町村のネットワークについてですが、児童相談所と市町村は虐待通報の受理機関であり、家庭の養育環境に関する情報を共有しておくことが重要であると考えております。
 常時、意思疎通を図ることはもちろんですが、全市町村に設置した要保護児童対策地域協議会を活用して親子の支援方策を協議するとともに、種々の機会を通して、保育や乳幼児健康診査の実施に伴う児童の状況、妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭の状況などの把握に努めることにより、市町村を初めとした関係機関の強固なネットワークづくりに取り組んでまいります。
 次に、警察との児童虐待対応に関する連携につきましては、児童虐待防止法の規定に基づき、児童の安全確認や一時保護に際し、保護者等から児童や児童相談所調査担当者への加害行為等に対する警察の援助を求めることとされており、必要に応じて警察官の同行をいただいております。
 今後とも、双方が知り得た不適切な養育環境等の情報を交換し、緊急的な事態にも適切に対応できるよう備えてまいります。
 次に、より家庭に近い養育についてですが、まず里親の拡充に当たりましては、民間団体への里親支援機関業務の委託や和歌山県里親会との協働により、深刻な児童虐待の現状と里親の方々による養育経験を題材とした講習会や里親になることを希望される方々への相談会を開催するなど、里親制度の積極的な普及啓発に取り組んでまいります。
 また、児童養護施設でのケアの小規模化につきましては、平成20年度以降、県内8カ所の施設のうち4カ所が小規模化を図っており、小規模住居型児童養育事業につきましても、本年度から運営を開始いたします。
 議員の御指摘のとおり、虐待を受けた児童は家庭的な環境による愛着関係の形成を必要としており、家庭的な養護を推進するため、児童養護施設改築時における指導と、それから小規模住居型児童養育事業に取り組まれる方々への助言を行ってまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 虐待問題についても御答弁いただきまして、虐待の未然防止、早期発見、早期対応から家庭の再統合、自立に至るまでの切れ目のない支援を行っていただいているとのことです。現場の皆さんの御苦労を思うと、頭の下がる思いであります。
 どんなに立派な計画であっても、それを行うのは人でありまして、人の力なくして何事もなし得ないと思います。
 県としても、数年、マンパワーをふやしておられますが、それでも追いつかない状況ではないでしょうか。
 今後は、児童相談所の職員の方だけではなく、虐待問題に精通した専門員の養成が必要だと考えます。県が主体となって専門員の養成を行うといった施策を進めていく、その上で専門員の登録を行っていただいて、マンパワーを補っていってはいかがでしょう。対応する相談員の1人の負担をなるべく小さくし、それぞれの相談者に丁寧な対応ができるような体制をつくっていただけるよう、強く要望します。
 また、親支援のプログラムを充実させるとのことですので、母子手帳を交付した時点からの実施を強く求めたいと思います。
 また、ステップファミリーへの対応も、あわせてよろしくお願いしたいと思います。
 今後親になる方々への啓発も含め、だれもが親支援プログラムを受講できるような取り組みを要望し、虐待問題についての質問を終了いたします。
 次に、3問目といたしまして、東北大震災によって発生した瓦れき処理について質問を行いたいと思います。
 昨年の東北大震災と津波によって生み出された災害廃棄物は2400万トンにも上り、日本全国で1年間に排出される廃棄物の約半分という膨大な量に上っています。
 そして、今一番大きな問題は、福島第一原子力発電所から100京ベクレル──100京ってわからなくて、よく調べますと、兆の1万倍だそうでありまして──100京ベクレルといった天文学的な放射性物質が環境中に放出されたことにより、露天に放置されていた瓦れきが放射能汚染され、その処理が進まないといった問題です。
 9月議会でも取り上げさせていただきましたが、放置されていた稲わらが放射能汚染され、それをえさにしていた牛肉からセシウムが検出されました。和歌山県内にも、それこそ大量の汚染牛が流通し、牛乳として消費されてしまったものは調べるにも調べることができないということでありました。どんな影響が出てくるのか、だれにもわからないといった状況です。
 放射能汚染された原料を使ったために、福島二本松で基礎に使われたコンクリートに規制値の100ベクレルをはるかに超えるセシウムが検出され、建屋に入居することもできなくなったことなどを考え合わせると、放射能汚染に限って言えば、安易な行為は後に大きな影響を及ぼすというふうに考えます。
 今回の瓦れきの放射能汚染は、福島県だけではなく、東北地方全般に広範囲に及んでいるというふうに見なければならないのではないでしょうか。
 2月の1日から3日にかけて、2つの高速議員連盟の視察で、釜石の奇跡の舞台となった釜石山田道路、仙台東部道路、相馬バイパスと視察し、地震・津波時の高速自動車道の果たした役割を検証してまいりました。バスの窓越しから見る被災した地域も、地震直後の状況から比べると、仮設住宅が建ち並び、少しずつ日常が取り戻される努力が行われているなあというふうな様子がうかがえました。
 しかし、来週の11日で1年が経過しようとしていますが、瓦れきがそこここに積み上げられ、復旧の足かせになっているという現状も見てまいりました。
 一日も早い復旧を願う気持ちは、だれもが同じだと思います。しかし、復旧が進まないからといって、放射能汚染された瓦れきを日本全国の自治体に受け入れろということとは問題が違うと考えます。
 今までは、国は放射性廃棄物を処理するときのクリアランスレベルを定め、それ以下なら一般廃棄物として処理をしてもよいが、それ以上ならば放射性廃棄物として処理しなければならないとされてきました。クリアランスレベルの数値は、1キログラム当たり100ベクレルであります。
 しかし、今回示された数値は、そのクリアランスレベルを適用せず、焼却するときは1キログラム当たり8000ベクレルならオーケーとしたのです。不燃ごみはそのまま埋め立ててもよい、焼却炉もバグフィルターがついていればオーケーという驚くべき方針が示されました。
 それでなくても、放射能汚染されたものを焼却するなど、世界でも類を見ない驚愕の方針であります。放射性物質を焼却したからといってなくなるわけではなく、むしろ微細なちりとして大気中に飛散され、清掃工場周辺を汚染し、焼却灰は濃縮され、保管1つとっても後処理を困難にするやっかいなものであります。このままいけば、日本じゅうが放射能で汚染されるという結果につながります。
 しかも、廃棄物処理法や災害対策法には放射能汚染の焼却についての法律が定められておらず、放射能瓦れきを燃やした後、市町村や住民にどのような影響が出ても、国や東電の責任を追及することができません。それこそ、ふるさとそのものを奪った東電の責任や原発政策を進めてきた国の責任をあいまいにしたまま、処理を地方に押しつける結果となっています。
 県民は、国が安全だ、安全だと言えば言うほど信用できなくなっているのです。安全だと言うのであれば、焼却する前の放射能をきちんと測定する、国の定めたクリアランスレベルを遵守するなど、まず放射性物質の処理に当たっての環境基本法や環境諸法、廃棄物処理法の法令の改正を行うべきだと考えます。その上で、国が主体的に長期的な計画をもって処理を進めるべきだと考えます。
 放射能汚染されたものは、拡散させず、集約し、囲うということだと思います。各自治体で焼却するなど、将来にどんな影響があるのかわからない中で、事を急いで将来に禍根を残してはなりません。
 そこで、知事にお伺いします。
 まず、県として、瓦れき受け入れについての考え方と今後の方針についてお伺いします。
 次に、大阪府の松井知事は、大阪市此花区にある舞洲にある北港処分場を東日本大震災で発生した瓦れきの最終搬入先として検討していることを明らかにしています。
 また、震災瓦れきをめぐっては、関西広域連合が大阪湾沖の廃棄物処分場を搬入先に検討しているとのことです。
 大阪湾は和歌山県にも隣接しており、安全性が確保されない限り、その影響は大変大きく、見過ごすことができないと考えますが、知事はそのことについてどのような意見をお持ちで、どのように対処されようとお考えなのか、お伺いします。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 御質問につきましては、放射能に汚染されていない瓦れきということでお答えしたいと思います。
 東日本大震災で発生しました瓦れきの広域処理については、大変深刻な問題であるということはわかるんですけれども、例えば可燃物は、被災地に焼却能力が少ないから、早く処理するためには焼却能力を貸してくれというような話をするならば私は一理あると思うんですけれども、例えば石とか土とか、そういう土砂など不燃物は、被災地にも埋立処分をするところが多くあるはずでございまして、地形的にも東北地方というのは割合そういうところがありそうな気が、私は幼少のみぎりから旅行をいっぱいしておりますので思うんです。そういうことですから、国が求めてる広域処理というのは一体何なんだろうかと私は常に疑問に思っており、そう申し上げております。
 国は、瓦れきがたまっているから他県も引き受けろというふうにどうも言ってるだけのような気がしまして、それを引き受けない、理解しないのは、何か情けがない、冷たい、そういうところだと。それが、マスコミがそれをまた大いにあおってるような感じがありまして、何となく変だなあというふうに思います。
 本県においては、現実に、じゃあ、どうかというと、焼却能力が大変余力が少ないのです。少しあると思われます和歌山市においても、実は焼却灰はフェニックスに埋めにいってるわけでございますね。これのいい悪いはあると思いますけれども、市町村が所有する最終処分場の受容量も逼迫しておりまして、現に和歌山市に確認しても余り積極的ではありません。そういう観点から、和歌山県では受けられる状況に現実的にないということだと思っております。
 御質問では、関西広域連合の機能について御質問がありましたが、これは、大阪湾沖の廃棄物処分場を搬入先に検討しているということでございますがどうかという御質問でございましたけれども、関西広域連合でやっていることは、震災廃棄物を各府県で仮に受け入れるとしたら、その際の安全性が確保される統一基準というのを国とは独自に決めておこうと、要するに我々として科学的な考え方をまとめておこうというふうに動いておりまして、それは当県も参加して知恵を出していきたいと思っているんです。
 一方、現実の災害廃棄物の受け入れの可否の決定は、最終的には当該自治体で判断してくれということになっておりまして、これは関西広域連合で統一的に決めるというわけではございません。
 大阪湾における北港処分地への最終処分については、大阪府のこうやって決めたより厳しい受け入れ基準をもって大阪府が安全性を確認し、それで大阪府がそこへ入れるということであれば、和歌山県としては、大阪府、大阪市の判断にゆだねたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁をいただきました。
 瓦れき処理というか、放射能で汚染されていないということが前提だというふうなことなんですが、和歌山県としては、受け入れるキャパがないというか条件がないのでということでしたし、それから広域処理が本当に必要かというのは、私もまあその搬入の問題であったりとか、どんなに持ってくるのよみたいな、そんなこともありまして、私も同感であります。
 ただ、御答弁いただいたみたいに、最終処分について、大阪府とか大阪市の判断にゆだねなければ仕方がないというふうなことなんですが、水とか空気とかは、ここからここまで大阪のもんやで、ここからここまでは和歌山やでというわけにいかないわけでして、仮に放射能のそういうふうな汚染がされていた場合に広範囲に拡散されるということについては、和歌山県も同じようにそうなるわけでありまして、特に私のところに子供さんなんかを持っている親御さんからたくさんの意見、不安の声が寄せられておりますので、今回、こういうふうに質問させていただいたわけですが、県としても、特にそういうふうな具体的な動きがあったときは、当該の関西広域連合とか近隣諸県にその情報公開を、説明を求めていただきたいというふうに思うわけです。
 それからまた、受け入れ基準の統一を決めるというふうなことですので、県民が何も知らないままに決定するんではなくて、県民のみんなも参加できるというか、その説明を受けられるような、そういったことをしていただきたいなあというふうに思いまして、その点について要望しておきたいというふうに思います。よろしくお願いします。
 最後に、戸籍謄本、住民票の写し等の不正取得問題についてお伺いしたいと思います。
 自分の知らない間に弁護士や行政書士などから不正に戸籍謄本や住民票の写しが入手されて興信所などに横流しをされる、結婚等の身元調査に使われるといった事件が後を絶たないわけです。
 1976年に戸籍法改正がなされまして、戸籍への差別利用を排除するため公開制限が一部認められる一方、弁護士や司法書士、行政書士などの8業種に限っては、職務上請求が認められるとされてきました。
 この8業種による職務上請求を悪用した戸籍謄本、住民票の写し等などの不正請求が、大きな事件では、昨年の11月に発覚した事件で、1万件にも及ぶ不正取得を行った司法書士と依頼していた探偵会社の代表が逮捕されるという事件が起こっています。
 この職務上請求による不正請求事件が発覚し、大きな社会問題に数年前になったわけですが、2007年には、そのために戸籍法改正案が可決・成立され、戸籍謄本や住民票の写し等の不正取得やそれを利用した悪質な部落差別調査に一定の歯どめをかけられるようになりました。
 それまで、職務上請求することのできる8業種は、請求理由もなく戸籍謄本、住民票の写し等が交付されていたのですが、この改正法では、請求理由の明示と、不正な手段で戸籍謄本や住民票の写しを取得した場合の罰則が5万円以下の過料から30万円以下の罰金に引き上げられることになりました。また、これまで罰することのできなかった不正取得を依頼した興信所、探偵社なども、共犯として罰せられることになりました。
 このように、法の改正によって戸籍謄本、住民票の写し等の不正取得に一定の歯どめはかけられたというふうに認識しています。
 しかも、この8業種の職務上請求書は、各所属業種の団体がナンバリングしたものを使っておりまして、控えも枚数もチェックし、不正請求ができないような形になっているにもかかわらず、今回の事件では職務上請求書が偽造され、不正請求をされたというふうなことです。
 このように、戸籍謄本や住民票の写し等を主な材料にして、結婚や就職の際の差別身元調査で顧客から報酬を得ることが成り立つ背景には、まだまだ社会全体に差別構造があり、それをなくさない限りこういった事件はなくならないのではないかと考えます。
 そこで、総務部長にお伺いをします。
 昨年の11月に、東京都の司法書士兼行政書士から職務上請求書を使って1万件にも及ぶ請求が行われたとのことですので、和歌山県内でも戸籍謄本や住民票の写し等の請求があったのかどうか、実態についてお聞きします。
 また、このような許されない行為を防止するために、どのような施策が行われており、今後の取り組みについてお伺いしたいと思います。
○議長(新島 雄君) 総務部長米澤朋通君。
  〔米澤朋通君、登壇〕
○総務部長(米澤朋通君) 戸籍謄本、住民表の写し等の不正取得は、個人情報の取り扱いに関する国民の信頼を著しく損なうものであり、極めて遺憾であります。
 議員の御質問にもございましたが、昨年11月、東京都の司法書士兼行政書士である者が、戸籍謄本や住民票の写し等を不正に取得したとして逮捕、起訴されたところでございます。
 県は、この事件の被告人が県内市町村に対して行った戸籍謄本、住民票の写し等の請求に関する調査を実施いたしまして、県内で20件の請求があったと承知しております。
 県では、これまでも、戸籍謄本、住民票の写し等の不正取得防止のため、和歌山県行政書士会等に対して、職務上請求書を適正に使用するよう依頼してきたところでございます。
 また、市町村に対しても、職務上請求書に対する審査の徹底を助言し、さらに不正取得の抑止策としまして、本人以外の者に住民票の写し等を交付した事実を知らせる事前登録による本人通知制度を提案いたしまして、現在3町が導入しているところでございます。
 また、不正取得が明らかになった場合の対応についても助言を行ってまいりました。
 県といたしましては、今回の事件に係る今後の裁判の動向に注視するとともに、引き続き戸籍謄本、住民票の写し等の不正取得防止のため、和歌山県行政書士会等に対して職務上請求書の適正な使用を依頼し、また市町村に対して事前登録による本人通知制度の導入などに積極的に取り組むよう働きかけてまいる所存でございます。
○議長(新島 雄君) 藤本眞利子君。
  〔藤本眞利子君、登壇〕
○藤本眞利子君 御答弁ありがとうございました。
 県としては、戸籍謄本、住民票等の不正取得を防止するために、事前登録による本人通知制度というのを進めることによって一定の歯どめをかけたいというふうな意向だということです。
 現在、3町が導入しているということですので、ぜひとも県下の全市町村に積極的に導入されるよう働きかけていただきたいというふうに思います。それとあわせて、県民への事前登録による本人通知制、知らない方がたくさんおられますので、こういったことの啓発も進めていただきたいと要望し、本日の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
○議長(新島 雄君) 以上で、藤本眞利子君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 次会は、3月5日、定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時48分散会

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