平成23年12月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


平成23年12月 和歌山県議会定例会会議録

第6号(鈴木太雄議員の質疑及び一般質問)


汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているため、会議録正本とは一部表記の異なるものがあります。

正しい表記は「人名等の正しい表記」をご覧ください。

 午前10時0分開議
○議長(新島 雄君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第122号及び議案第130号から議案第158号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 10番鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕(拍手)
○鈴木太雄君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。また、県議会議員に当選をさしていただいて初めての質問でございますので、大変いい意味での緊張をいたしておりますが、しっかり頑張りたいと思います。最後までおつき合いのほど、よろしくお願いをいたします。
 また、通告した1項目と2項目につきましては分割方式で、最後の3項目を一問一答方式で行います。
 それでは、質問を始めます。
 ちょうど3カ月余り前の9月3日から4日にかけて紀中・紀南地方に上陸をした台風12号の記録的な豪雨は、多くのとうとい命を奪い、行方不明者を出し、道路、鉄道並びに電気、水道、通信施設等のライフラインの損害を引き起こしました。加えて、家屋の倒壊や浸水、農林水産業や商工業、観光産業に直接的あるいは間接的に損害を与え、また、世界遺産である熊野古道を初めとする文化財などにも甚大な被害をもたらしました。紀伊半島に住む我々に、改めて水害の恐ろしさを認識させることとなったわけであります。
 しかしながら、我々県民はそんな災害には負けてはいられません。被災された方々のためにも元気を出し、一日も早い復旧・復興をなし遂げ、地域に活力を取り戻さなければならない、そんな強い思いを持って、災害関連の質問を3項目にわたって行います。
 まず、1項目の12号台風による被災道路の復旧、整備と今後の代替道路の確保についてであります。なお、お手元に参考資料を配付いたしております。
 田辺地域周辺における国道311号、国道168号、国道371号及び県道龍神中辺路線、県道田辺龍神線、高野龍神スカイライン等、いずれの路線も、ふだんの生活用道路としてはもちろん、観光産業を大きな柱とする紀南地域にとりまして、観光用道路としても非常に重要な路線であります。さらに、緊急時あるいは災害時におきましても、救援物資や重機等を大型車両により運ぶことのできる唯一と言っても過言ではない主要幹線道路であります。
 その幹線道路が、今回の台風12号による長時間降り続いた大雨により土砂崩れや欠損等が発生し、通行が不能となり、住民生活に非常に大きな支障を来したわけであります。一時的には市道、林道、農道を含め、四方八方で道が通れなくなったため、孤立地域も多く発生をいたしました。もちろん電気や携帯電話など、多くの地域で通じなかった状況であります。
 そういった状況の中、地元自治体では、県道を主として山間部を走る迂回路を利用し、救援活動並びに救援物資の搬送を行ったところでありますが、幅員の狭い箇所が非常に多くあり、一般車両との交差はもとより、物資、搬送用の大型車両は通行できず、災害救援活動がおくれた地域もあったほどであります。
 発災後3カ月余りが過ぎ、ようやくふだんの生活に戻りつつありますが、今もなお主要幹線道路におきましても、片側通行のみならず、雨天時には通行規制をかけている箇所があります。さらに、その迂回路につきましても、幹線道路同様、山間部を走るため、背後に急傾斜地を抱え、また、川筋に沿っている場合も多く、いつ何どき崩土や欠損により遮断されるかもわからない不安な状況でありました。
 そこで、(1)として、主要幹線道路である国道311号、中辺路町の真砂から滝尻間、並びに国道371号、中辺路町の石船付近、県道田辺龍神線、県道龍神中辺路線、高野龍神スカイラインについて、完全復旧に向けた取り組み状況及び今後の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
 特に、国道311号真砂から滝尻間につきましては、現在、緊急道路として活用中でありますが、雨量が10ミリをわずかでも超えると土砂災害の危険があるとして通行どめになるのが現状であり、市民生活に大きな影響を与えております。
 さらに、観光面からいたしましても、国道311号は中辺路町から本宮町まで抜け、国道168号を経由し、新宮、那智勝浦方面へと至る主要な観光ルートになっており、大型観光バスはこの路線が通行どめの場合、2トンまでであれば迂回路になる道路も、幅員の関係上、通行が不可能なため、予定が組めず、紀南地域の観光関連産業にも非常に大きなダメージを与えているところであります。
 紀南地域にとりまして自立のための道であると同時に、まさに命の道であります。一日も早い本格復旧が望まれているところでありますので、より一層の御努力を御傾注いただきますようにお願いをいたします。
 次に、(2)として、国道371号の中辺路町小松原から龍神村殿原間が3カ月余りたった今もなお復旧できず、そのまま通行どめとなっております。この未着手区間の被災道路の復旧についても、県道龍神中辺路線同様に重要路線であり、できるだけ早期に復旧をしていただきたいと思いますが、どのようなお考えであるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 そして、(3)ですが、今回の災害では幹線道路がほぼ同時に寸断されたため、その迂回路として、非常に狭隘な市道や林道等に一般車両並びに緊急車両、救援車両等が集中し、事故や渋滞、混乱を招いたわけであります。その迂回路として活用した市道、林道、狭隘な国道につきましても、この災害により危険な箇所が多くあったため、決して安全な道路ではなくて、むしろそれを承知で通行していたのですが、逆に言えば、そのような道路しか残っていなかったということでもあります。
 そのような状況から、先ほども申し上げましたが、救援活動におくれをとったり自動車等に使う燃料が不足したりと、市民生活にも影響が出たわけであります。さらに、そういった理由から復旧も進みにくかったというのが現状でもありました。
 そこで、今回の災害を教訓にし、主要幹線道路の防災上からの強化を図るということはもちろんのこと、今後の災害による主要幹線道路の寸断に備え、代替道路の確保、いわば第2のルートの確保に向けた取り組みが必要不可欠であります。具体的に代替路あるいは迂回路になり得る路線を挙げれば、旧田辺市から本宮町へと向かう国道311号の代替路としては、県道近露平瀬線、県道下川上牟婁線並びに国道371号であり、同じく旧田辺市から龍神村へと向かう県道田辺龍神線の代替路としては、県道龍神中辺路線や国道424号線などであります。
 また、旧田辺市へと直接連絡することのできる代替路としては、残りわずかなまま整備事業が中止している平瀬上三栖線、中辺路町西谷から旧田辺市の上野の区間並びに県道温川田辺線等であり、平瀬上三栖線につきましては、以前より地元要望の強い路線でありまして、知事もよく御存じの路線ではないでしょうか。それから、特に県道温川田辺線につきましては、現在狭隘な道路でありますが、県道中辺路龍神線と接続されており、龍神地域、中辺路・本宮地域両面からの流入が可能となっており、道路幅員の拡幅を図れば、防災上あるいは生活用道路としても非常に投資効果のある路線であります。いわば、田辺市がハブ的役割を果たすことが可能になる路線の1つであります。
 こういった県道及び県管理道のネックとなっている狭隘な箇所や危険な箇所を緊急時にも大型車両が通行できるよう拡幅改修や待避所を設置するなど改良し、代替路として活用できるようにすべきであると考えますが、代替路の確保について県土整備部長の御見解をお聞きいたします。
○議長(新島 雄君) ただいまの鈴木太雄君の質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長森 勝彦君。
 〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 最初に、被災道路の復旧についてでございますが、幹線道路である国道311号真砂地区の災害につきましては、一日も早い通行可能とすべく10月4日に応急仮設道路を開設しましたが、土石流の危険があるため、降雨や斜面の変動状況により通行規制を行っています。より安全な通行を確保するため、来年6月までに対岸を通る仮設道路を建設する準備を進めております。崩壊斜面の抜本対策には長期間を要するため、道路の本復旧はバイパスルートを考えており、3年から4年での完成を目標として取り組んでいるところです。
 また、国道371号石船地区、田辺龍神線虎ケ峰付近、龍神中辺路線水上地区、高野龍神スカイライン上湯川地区につきましては、応急工事を行い、片側交互通行可能としました。田辺龍神線虎ケ峰付近の本復旧は橋梁によりおおむね3年で、その他の地区はおおむね1年での完成を目標として取り組んでおります。
 国道371号小松原地区では、路肩が崩壊し通行どめとなっておりますが、12月中に災害査定を受け、速やかに復旧工事に着手し、おおむね5カ月での完成を目標として取り組んでおります。
 台風12号による道路被災箇所につきましては、復旧・復興アクションプログラムに基づき、平成24年度中に95%の箇所の完成を目指します。
 続きまして、代替路の確保でございますが、被災直後、いち早く集落の孤立状態を解消し、被災地への救助・救援活動を行うためには、そこに至る道路、特に幹線道路の機能をできるだけ早く確保することが重要となります。さらに、今回のように幹線道路自体が大きく被災した場合は、代替ルートが確保できるかどうかが被災後のあらゆる活動に大きく影響します。今回の災害でも、国道311号の田辺市鮎川や真砂での通行どめは、県道、市道を利用して何とか迂回ルートを確保できたことで、比較的早く被災地への通行が可能となり、その後の救助・救援活動に効果を発揮したところです。
 こうしたところから、今後、災害に強い道路ネットワークを確保するためには、高速道路はもとよりX軸ネットワーク道路や川筋ネットワーク道路の整備により幹線道路の防災機能の強化を図るとともに、こうした幹線道路と連絡する県道や市町村道、農林道も含めた代替ルートについて、各道路管理者と連携して議員御指摘の拡幅や待避所設置などを進め、多重的な道路ネットワークの形成に努めてまいります。
○議長(新島 雄君) 鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 (3)の代替路、待避所の確保についてでありますが、今回の災害では、ある意味において一時的な生活圏の崩壊であったわけでありまして、二度とそうならないように十分に御協議をいただきたいと思いますし、また、風水害だけでなく、近い将来発生が予想されている東南海・南海地震に備えた有効的な投資にもなろうかと思いますので、強く要望いたします。
 次に2項目として、洪水対策について質問を行います。
 今回の台風12号は雨台風で、近畿一の面積を有する田辺市においてもかなりの浸水被害が発生をいたしました。ちなみに、田辺市全体の建物被害は1000棟を超しており、特に本宮町においては、全壊が20棟、半壊が219棟、一部損壊が8棟、床上浸水が165棟、床下浸水31棟の計443棟に上ったわけであります。近年では非常に大きな被害であり、地すべりやがけ崩れによる被害もございますが、特に熊野川及びその支流である音無川や大塔川等、はんらんしたことで、本宮町の6地区にも上る広範囲にわたり甚大な水害をもたらしたわけであります。
 災害から3カ月余りを経過し、熊野川の水量は落ちつきを見せておりますが、住民の間からは、熊野川に堆積した土砂を早く取り除いてほしい、大雨が降るとまた浸水すると不安視する声が非常に多く聞こえてまいります。
 その甚大な被害をもたらした12号台風以前より熊野川はたびたびはんらんしておりましたから、その対策として、昭和62年度から平成20年度までの22年間にわたり、旧本宮町時代を含めて田辺市は県から事業承認を受け、河床整備事業を行ってまいりました。
 県は、田辺市や関係機関からの強い要望を受け、翌年度の平成21年度には、河床の掘削のほか、集落を水害から守るための輪中堤防の建設など、総合的な熊野川全体の洪水対策として熊野川圏域河川整備計画を策定し、平成22年度から5カ年にわたって河床を下げるための掘削事業に着手してきたところであります。
 しかしながら、12号台風以後、熊野川の下流から上流にかけて流出土砂が異常堆積をし、河川の通水断面が不足している箇所が非常に多く見受けられ、また、先ほど申し上げました音無川や大塔川などの支流部におきましても状況は同じであり、流出土砂の堆積がひどい箇所になると堤防と全く同じ高さになっているところもございます。つまり、河床の状況が著しく変化をしているわけであります。
 そのような中で、河床掘削による通水断面の確保が望まれておりますが、熊野川圏域河川整備計画の見直しによる河床掘削では非常に年数を要することから、即効性がありません。熊野川並びにその支川の一日も早い洪水対策としての堆積土砂撤去の方法について、さらに、熊野川やその支川につきましては非常に質の高い砂利が採取されますので、河床掘削時の副産物として有効活用するべきだと考えております。実際、田辺市が実施していた河床整備事業において採取された砂利を副産物として取り扱ってきた経過もあり、あわせて県土整備部長のお考えをお聞きいたします。
 なお、今回のように長時間にわたり積算雨量が1300ミリを超える場合、県が策定した熊野川圏域河川整備計画の計画高水流量毎秒5600立米では流量が不足をいたします。また、年間6万立米の土砂を5カ年で合計30万立米除去する計画でありますが、その対象地域は本宮町の本宮地区のみの計画であり、今回の12号台風を教訓にし、今後に生かすためには、計画高水流量、掘削数量の見直しや掘削対象地域を拡大するなど、熊野川圏域河川整備計画の見直しも同時に必要であると思います。この点についても、県土整備部長のお考えをお聞きいたします。
 次に、(2)として、田辺市内における河川の浸水対策についてでありますが、熊野川のほかに市域に流れ出ている河川につきましても、流出土砂の堆積により浸水や洪水の危険性を感じているところが多くあります。特に今回の災害では、堤防決壊などにより洪水被害がひどかった地域は、秋津、万呂、稲成、古尾地域など左会津川に面している地域が主で、その中でも古尾地域におきましては、会津川の支流に当たる稲成川にも面していることから家屋の被害が多くあり、2年前の7月の豪雨においても浸水被害に遭ったわけであります。
 そのような状況の中、現在、県において会津川下流の右岸側に当たる旧会津橋から切戸橋の600メートル間を洪水対策として堤防の整備を計画的に行っており、また、同時に田辺市におきましても、稲成川から会津川への合流点に浸水対策として強制排出施設の設置に向けた努力をいただいているところであります。
 しかし、古尾地区には比較的高齢者の方が多く、自動車の進入できないような路地がほとんどで、避難するにも大変な地域であります。また、避難所も離れていることから、一日も早い施設の完成を望んでいるわけであります。県におきましては早期の完成を目指して努力をいただいていると思いますが、災害後でありますので、あえて県土整備部長のお考えをお聞きいたします。
 また、今後の田辺市内における河川の浸水対策につきましても、あわせてお聞かせいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長。
 〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 最初に、熊野川の洪水対策についてでございますけども、熊野川及びその支川では台風12号により水位が上昇し、浸水被害が多く発生しました。河床への土砂の堆積が進み、治水上、支障がある箇所については応急対策として撤去を早急に進めてまいります。その際、河川法第20条に基づく河川管理者以外の者の施行する工事等により砂利等の有効活用ができる方法で実施したいと考えております。
 また、熊野川の河川整備計画については、地域の意見を聞くとともに、国の動向を見ながら、必要に応じて見直し等の対応を考えてまいります。
 次に、田辺市内河川の浸水対策についてでございますが、台風12号により被災した河川の復旧を急ぐとともに、堆積土砂の撤去にも努めてまいります。
 古尾地区における左会津川の改修につきましては、旧会津橋から切戸橋までの右岸600メートル区間において堤防整備を実施しております。古尾地区は、平成21年7月の集中豪雨により浸水被害が発生した箇所でもあり、早期完了を目指しておりますが、より一層事業進捗を図ってまいります。
○議長(新島 雄君) 鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 再質問を行います。
 熊野川の洪水対策につきましては、河川法第20条に基づく河川管理者以外の者の施行する工事等により砂利等の有効活用を図っていくとの御答弁をいただきました。私も、基本的に県の考えに賛同するところでありますが、県管理の河川でもあることから、すべて人任せにするのではなく、しっかり県として掘削計画にも参画いただきたいと思います。
 また、熊野川は他県の管理する区間もあることから、三重県を初め各関係機関との協議調整も重要であると考えますが、県が主体的に取り組んでいただけるのか、この2点について、県土整備部長に改めてお考えをお聞きいたします。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長。
 〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 河川法第20条に基づく河川管理者以外の者の施行する工事実施の場合においても、県が具体の実施箇所、掘削可能量等について示してまいります。また、実施に当たっては、県として主体的に三重県や関係機関との調整に努めてまいります。
○議長(新島 雄君) 鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 何より住民の生命と財産を守るということが非常に重要でありますので、一日も早く住民が安心して暮らせるように、しっかり取り組みを進めていただきたいと、このように思います。よろしくお願いいたします。
 引き続いて、ここから一問一答方式に移ります。
 次に、3項目の台風12号による農地災害について、適用除外項目についてであります。
 (1)として、傾斜角問題の県から国への要望について、限度額の見直し等を含めた要望をしてはどうかということでありますが、今回の台風12号は、紀中・紀南を中心に、本県の基幹産業である農林水産業にも過去最大規模の甚大な被害をもたらしました。去る11月現在の農林水産業全体の被害総額は417億円にも上り、とりわけ農作物や樹木の被害額は、水稲が1億5300万円、梅が5億3800万円、生産施設では6億7700万円、農地、農業用施設においては141億円余りとなり、林業関係にあっては36億6300万円という被害状況であります。
 そのような状況の中、農地災害の適用除外項目について、3点にわたり当局の見解をお聞きいたします。
 知事におかれては、発災後、この傾斜角問題について、国に対し、経済効果が小さい劣悪な農地を補助対象から除外するという法律そのものには反対をしないが、傾斜が20度以上の和歌山の梅農地は最も経済性が高く、これを差別待遇する政令は法律の精神に反するとして、いち早く取り組みをいただいており、梅産地である田辺市選出の議員の1人といたしまして、大変心強く、この場をおかりしてまず感謝を申し上げたい、このように思います。
 また一方、9月定例会では、県議会といたしましても、国に対し災害復旧における農地傾斜角度等に関する意見書を提出し、それと同時に、本県農業を支えている20度を超える農地のほか、国の災害復旧事業とならない復旧事業についても、果樹王国たる本県農業の特性、地域の実情にかんがみ、本県独自の支援を検討されるよう、本県の農地の災害復旧に関する決議をいたしました。
 その後、この件について非常に多くの生産農家の方々から御意見をいただいたところでありますが、それらの意見をまとめますと、傾斜角20度超え農地の問題に積極的に取り組みを続けていただいているのは大変ありがたいが、そもそも20度を撤廃するだけで実効ある対策となるのかと、大変厳しい御意見をいただきました。傾斜が強くなれば一般の平地の工事よりも事業費も高くなると予想されるが、現行の国の災害復旧事業の場合、基準となる面積や面積当たりの限度額に制約がある、我々の思いどおりに20度を超える急傾斜園地に対し災害復旧申請が可能となっても、積算により導き出された補助事業費に対して実際の工事費が大幅に超過することとなる、補助残に加え超過分全体が受益者負担となることから実質的には使いづらい制度のままになると大変心配してると、こういった内容でありました。
 私も総合的に勘案をいたしますと、現在の災害復旧の適用要件である傾斜角20度超えの制限撤廃を求めると同時に、限度額の増額や面積のとり方などについても、あわせて国へ働きかけを行ってはどうかと、このように考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。
○議長(新島 雄君) 知事仁坂吉伸君。
 〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 農業は、国の食料の安定供給に資する極めて重要な産業でありますから、補助金とか、あるいは各種融資制度等を通じて、国策として他の産業に比して振興が図られているところであります。
 もちろん災害のときにも、本来的には、私有財産については基本的にはその回復は例えば優遇融資によるというようなのが原則なんですけれども、農地についてはこの農業の大事さにかんがみて、一定の要件を満たすものについては国費を投入して回復するというふうになっておるわけです。
 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律と、暫定措置なんですけど、結構長く続いております。災害復旧事業に要する費用につき国が補助を行い、もって農林水産業の維持を図り、あわせてその経営の安定に寄与することを目的としているということでございます。
 この法律は、国民共通の国費を使うということからくることだろうと思いますけれども、経済性の乏しいものは対象にしないというふうに法律で決めとるわけであります。これは、大変無理をして復旧させるということは、国民共通の全体の財産である国費という点からちょっと難しいということだろうと思うんですけれども、政令でこの経済性については2つのことを決めています。1つは20度以上の農地についてはだめというふうに決めておるのと、もう1つは限度額を決めてるわけでございます。
 このうち20度超えの農地の完熟梅の栽培、こういうものについては和歌山県にとってドル箱でありますが、平たんな農地でつくるのに比較しても、実はある程度の傾斜地でつくるのは生産性に遜色はなくて、むしろ完熟落下梅の収穫にネットを使ってうまくやるという点では、より生産性が高い方法であると思います。そういう意味で、政令における適用除外は法の趣旨に反するものであって、こんなものはさっさと直してくれということを言っとるわけであります。正当な論拠があると思います。
 しかし、その限度額については、例えば、復旧に要する物価というか復旧費が上がったとか、そういうことをちゃんと証明すると政令を変えられないわけではないと思いますけれども、結構現在の状況では難しいし、場合によっては、この法律の経済性云々と書いてあるのがどうかという議論にまでいって、これは法改正を要する話になるんじゃないかというようなおそれもあります。いずれにしても、大変大きな議論を要するわけで、これを現下、今困っておられる方に対する救済という点では、なかなか間に合わないという感じがいたします。
 対応は現実的にやらなきゃいけない。正義は必ず勝ちます。したがって、ちょっと政府が、中堅役人がやってきて「政令を変えるのは難しい」とか何か言うと「ああそうですか」と言ってすぐそれに納得してしまうような、そういうだらしない対応は絶対いかん。それに適応した対応をやるということは、かえって足を引っ張るということになるということでありますが、一方、今のような実現不可能なことを言うだけ言っておこうというのは、これまたなかなかとるところではないというふうに思います。
○議長(新島 雄君) 鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 御答弁をいただきました。
 私としては、知事、この政令の改正が実現したときに、生産農家の方々に心から喜んでいただける改正であってほしいとの思いであって、実効あるものでなければと考えております。
 仮に、傾斜地における水田と梅畑を比較しましても、水田においては崩壊した箇所だけではなくて水田面積、つまりその上にある水田1枚全体が補助額の積算面積とされておるわけです。一方、梅畑については傾斜角そのものが園地であることから、おおむね崩壊した箇所が補助額の積算面積とされて、同様の被害状況であっても面積のとり方がそれぞれ異なっておるために、おのずと補助対象事業費に差異が生じて補助額に影響を与えているというのが現状だと思います。まさに、先ほど申し上げましたように、傾斜角が強くなればなるほど工事費にも影響を及ぼしますし、それが受益者負担に大きな違いが生まれることと、このようになってございます。
 このようなことから、20度超えの制限撤廃を求めるのと同時に、面積のとり方や限度額の見直し等についても国に要望することが私は必要であるとの認識に立って、この質問を行ったわけであります。今後もより一層のお力添えをいただきますようにお願いいたしたい、このように思います。
 そして、次に移ります。
 (2)の小災害の県費補助の運用について、いわゆる今回の県単独の災害復旧事業についてであります。この案件につきましては、後日所管の委員会で審議されるものでありますが、お許しをいただきたいと思います。
 今回の国庫補助の対象にならない災害に係る県単独の農地、農業用施設の災害復旧事業については、傾斜角度にはかかわらず、また復旧事業費の下限を設けることもなく、40万円以下の農地が対象となります。つまりは、復旧事業費40万円以下の被災農地すべてが対象とされているわけです。
 なお、復旧事業費が40万円以上で傾斜角20度を超えない農地については、国庫補助の対象とされています。
 そうしたことから、復旧事業費が40万円以上で傾斜角20度を超える農地については、県単独事業に加えて、現状の国庫補助事業も対象外の農地になります。要するに、今回の県単独事業と国庫補助事業いずれにも該当しない被災農地が存在するわけです。したがって、現状においては、被災された農家の方々を少しでも救済をするために、県単独事業、小災害でありますが、この事業の柔軟な運用が必要であると考えますが、農林水産部長の御見解をお伺いします。
○議長(新島 雄君) 農林水産部長増谷行紀君。
 〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 県の農業生産基盤復旧支援事業は、台風12号による災害復旧において国庫補助の対象とならない農地、農業用施設の復旧を支援するものでございます。
 御指摘のように、現在、復旧事業費40万円以上で傾斜20度を超える農地災害については国庫補助の対象外でありますが、経済効果が小さいことを根拠に対象から除外している国の考え方は、特に完熟梅の栽培においては論理的な正当性は全く認められません。こうしたことから、県ではとにかく知事を先頭に、復旧事業費が40万円を上回る傾斜20度超の農地災害について、粘り強く制度の見直しを求めてきたところでございます。
 なお、台風12号による被災農地等への県の支援制度は、県下全体の被災状況を総合的に勘案して制度設計を行ったものでございます。市町村におかれましては、地域の実情に応じて県の支援制度をうまく活用していただくことを期待しております。
○議長(新島 雄君) 鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 復旧事業費が40万円以上で傾斜20度を超える農地災害が、現在、国の災害復旧事業の適用とされているのであればいいんです。現在、政令の見直しを求めている段階であり、言いかえれば見直しがされていない状況下においての、それも今回の台風12号による被害に限定した小災害に対する、せっかくつくっていただいた県単独の支援制度であります、これは。でありますから、この制度の運用面において、40万円という上限に縛られることなく柔軟に対応していただきたいと、私はこのように思っております。期待しておるということで、それはこっち側でもいいように受け取りをさせていただきます。
 つまりは、今回の12号台風によって被災された農家の方々を区分することなく、利用のしやすい県の支援制度でなければならないというのが私の今回の質問の思いなんであります。それを御理解いただきたいと、このように思います。
 それでは、次に移ります。
 (3)の小規模地すべりへの対応についてでありますが、今回の台風12号に伴う豪雨によって、平地の少ない本県では急傾斜農地の山すそに建てられている住宅の全半壊が非常に今回多くて、また、農地の崩壊や地盤の緩み、さらには山がせり出し、畑に亀裂が生じてるケースも多数見受けられます。
 そういった状況下で、農地の所有者あるいはそこで生活されている方々は、大雨が降るたび、いつ発生するかもわからない土砂災害等への不安に悩まされ続けております。
 こうした住民の方々の日常不安を解消するためにも、農地面の整備とあわせて、現行の制度に該当しない、いわゆる小規模な地すべり対策に取り組む必要があるのではないかと、このように考えますが、農林水産部長の御見解をお聞きいたします。
○議長(新島 雄君) 農林水産部長。
 〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 急傾斜園地での小規模地すべりについては、本来、災害復旧事業として対応するものでありますが、傾斜20度を超える農地の場合、現時点では災害復旧事業の対象外となっております。県が行う地すべり対策事業の面積要件は、10ヘクタール以上の農地が受益となること、あるいは5戸以上の民家と5ヘクタール以上の農地が受益となることが必要であります。
 台風12号被害における急傾斜園地の小規模地すべりの対策につきましては、県営地すべり対策事業での対応を検討し、適用が困難な箇所につきましては、被災市町村と協力しながら被害の状況等を把握、調査した上で、交付金事業等での対応を検討してまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 鈴木太雄君。
 〔鈴木太雄君、登壇〕
○鈴木太雄君 答弁いただき、ありがとうございました。
 交付金事業等での対応をしていただけるということで、検討していただけるということでありますが、交付金事業になりますと最大でも55%程度だと思いますんで、少しでも受益者の負担軽減を図るため、県の上乗せ支援もあわせて御検討いただくように要望しておきたい、このように思います。
 最後になりましたが、このたびの台風12号による豪雨災害で犠牲となられた皆様に心から哀悼の意を表しますとともに、被災されたすべての方々にお見舞いを申し上げます。
 また、災害復旧に向け御協力いただきました皆様方に心からの感謝を申し上げ、私の一般質問といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(新島 雄君) 以上で、鈴木太雄君の質問が終了いたしました。

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