平成23年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


平成23年9月 和歌山県議会定例会会議録

第2号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


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 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 第1の柱は、地震・津波と台風・大雨災害についてであります。
 3.11東日本大災害は、私たちに大きな衝撃を与えました。現地では、苦難の中で復興が始まっています。そのやさき、私たち和歌山県民の足元で起こった台風12号災害。思いもしなかった被害を与え、多くの県民の皆さんが犠牲になり、行方不明の皆さんも多数いらっしゃいます。2つの災害で犠牲になられた皆さん、被災された皆さんにお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。
 まだ災害の危険が続いています。まずは被災者の救援と復旧が第一です。同時に、私たちは、こうした災害から教訓を引き出し、今後に生かさなくてはなりません。
 まず第1は、このたびの台風大雨での河川のはんらんなどの問題です。今月、県議会の対策本部で状況をお聞きした次の日の6日、私たち県議団は被災地に入り、私は那智川に沿って市野々地域に向かいました。流木が打ち上がり、乗用車が壁に張りついているという沿道の状況です。那智の滝に上る道路そのものが流されているのに息をのみました。川上から大きな石が流れてきて、その石が道路を削り取ったのでしょうか。
 そこで質問ですが、このたびの災害でたくさんの犠牲者を出してしまったわけですが、避難指示、避難場所のあり方など、現時点でどういう問題があったとお考えなのでしょうか。知事にお伺いいたします。
 あわせて、農林水産業への莫大な被害が出ていますが、それを含めて被災者支援についての決意をお聞かせいただきたいと思います。
 また、この台風で紀の川市の愛宕池が決壊いたしました。2008年の春には、同じ紀の川筋の松池、桜池が、集中豪雨の中でひびが入ったことがあります。このたびはそれほどひどい雨ではない中での決壊です。松池、桜池についても、ため池の点検との関係で問題を指摘しました。このたびの愛宕池の場合には、第2次点検の対象になっていなかった池の全面決壊です。ため池点検と安全対策について見直す必要があるのではないでしょうか。農林水産部長の見解をお伺いいたします。
 第2は、津波から避難する問題です。
 いつ襲うかもしれない東南海・南海地震津波、東日本大震災は従来考えられていたのとは違った大きな津波が襲うかもしれないことを教えています。海南市の入り口には浮上式津波防災堤防の建設が始まっていますが、それでも逃げなくてはなりません。
 このたび県は、津波からの避難場所を3つのレベルに分けて指定なされました。このことでは賛成ですし、さらに充実する必要があると考えています。
 私は、海南市東浜というところで育ちました。昭和21年12月の南海地震津波のときは、2階建ての家屋の階段、上から3段を残して水につかりました。津波震災地域で育ってきただけに、津波から避難することがどれだけ大変なことかよくわかります。行政は高台に逃げろと言うけれども、寝たきりのお年寄りを連れて避難するのは大変だ、もっと現実的な逃げ方を考えなくてはならないということを申し上げてまいりました。
 今回、県がリードして市町村の避難場所を確定した作業は、高台だけでなく浸水地域内にもレベル1の避難場所を設置するなど、私が申し上げてきたことにこたえていただいたものとして評価するものです。
 同時に、私がもっと現実的な避難方法をと提案したときは、3.11大津波以前のことでした。ですから、私はこれほど大きな津波を考えてはいませんでした。したがって、今回の呼び方で言えばレベル1の避難場所でも十分だ、それ以上高いところに無理に移動しなくてもいいというふうに私は当時考えていたわけです。
 ところが、このたび県がリードした考えは、それとは違っています。レベル1に指定されている小学校の児童でも、避難する時間があるならば、さらに安全な避難場所に逃げてほしいというものです。私は一たん首をかしげたんですが、「釜石の奇跡」と言われたケースをよくよく検討してみると、釜石の中学校は、従来のハザードマップでは浸水が予想されてない場所にありながら津波に襲われ、中学生、小学生はそこから1キロ以上も逃げて助かったわけです。県の防災担当課の説明を聞いてやっと私も納得したわけでございます。
 それでも、東浜のような高齢化が進み、避難場所まで距離がある地域の現実を前にして、立ちすくむということもあります。
 あるいは、その近くの日方保育園というところでは、近くに7階建てのマンションがあるので、そこに逃げさせてもらえるように交渉していると聞きます。それはこのたびの発表には入っていません。
 つまり、避難場所の指定というのは相当のところまで来たと思いますが、行政が指定した避難場所がすべてではなくて、民間のしっかりした建物も含めて、市民がみずからの責任で避難場所を決める、そしてそれを行政が支援するという必要があるんだろうと思います。
 そういう意味では、避難場所の確保はまだまだ進めなくてはならないと思っています。当局のお考えはいかがでしょうか。
 また、病院などの津波対策も大きな課題になっています。海南市では、津波浸水地域に新しい市民病院の建設が始まっており、市民からは多くの意見が寄せられています。私は、だからといって市民病院の立地場所を変更して高台に移すべきだと断定的に主張するつもりはありません。まちづくりの関係もあるから大変難しいわけです。よく議論して納得できるような対策をとることが大事だと思っています。
 そこで、県の場合は、和歌山医科大学附属病院が海岸近くにあり、対策が必要とされていると思いますが、どのような対策を検討されているのでしょうか。
 以上、第1の柱について、まず御答弁をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○議長(新島 雄君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 今回は、各地で観測記録を更新するほどの豪雨であり、今まで災害発生が予測されていない地域での災害が発生しております。また、夜間に豪雨となり、急速に河川の水位が上昇し、避難が困難であった地域もあったと聞いております。
 県では、市町村に対して、風水害に備え、国のガイドラインに基づく判断基準をあらかじめ整備するように助言するとともに、気象台の発表する気象情報や土砂災害警戒情報、水位情報を活用するように助言してまいりました。
 今回、被災市町をこの間回ってきましたときに複数の首長から、県の情報、すなわち水位情報とか、あるいは雨量情報とか、そういうものが大変役に立ったというふうなお礼がありました。しかし、それも、そのうちの幾つかはその後の大増水によって破壊されておりますし、そこで避難した人も余りの水位上昇に避難先自体が危なかったというような話を被災地でよく聞いたところであります。
 今回のような予想を上回る豪雨については、避難指示等の発令の判断が非常に難しかったと考えておりますが、市町村が適切な避難指示等を行えるよう、これはどこへ行くかということも含めて、国においても発令判断基準の見直しに取り組むと聞いておりますし、我々も雨量に応じてどのぐらいまで来るかというような情報を何とか入手したいなというような気持ちでおりまして、緊急復旧が一段落したら、じっくりこの問題にも専門家の意見を聞きながら取り組んでいきたいと思っております。
 次に、農林水産業関係の被害、これは多分まだふえていくと思いますが、16日現在で133億円であります。被害は県内各地で発生しておりまして、大規模な山腹崩壊や農地流出、養殖施設の破損など、甚大であります。私自身、現地を訪れるたびに被害の大きさを痛感しております。
 この大きさから、先週の火曜日、13日に国のほうに要望に行った際に、例えば官房長官や国交大臣、総務大臣、防災大臣にお会いして、激甚災害の指定とか、あるいは今後の復旧のための補助事業の認定とか、それをスピーディーにやってもらいたいというようなことを申してまいりました。その結果、激甚災害については、きょう閣議決定があったと聞いておりますし、また多くの対策もスピーディーにどんどん進めていけるようになっているところであります。
 被災対策としては、県では、被災直後から職員が現場へ足を踏み入れて被害情報の把握等を行って、迅速な仮復旧や早期の本格的な復旧事業の着手のための準備を進めておりまして、そのための予算の増額を近くお願いしたいと考えております。
 あわせて、農業施設、漁業施設の復旧助成についても予算措置を検討しておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 農業につきましては、農業施設の損壊とか、あるいはJAなどの共同利用地の損害については、公的事業としてそれを行うことができますので、最大限これを行っていきたいと思っております。
 また、それに漏れた部分についても、被災された農林水産業者の経営の安定をいち早く金融面で支えるために、従来の災害時以上に利子負担の軽減や融資枠の大幅な拡充を実施しまして、適用対象も被災した農業施設や農機具等の修繕、購入にも広げてやっていきたいと考えております。
 今後も被災された方の気持ちに立って、状況に応じて必要な対策を速やかにとり、被災された皆様が一日も早くもとの生活に戻ることができるように総力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 農林水産部長増谷行紀君。
  〔増谷行紀君、登壇〕
○農林水産部長(増谷行紀君) 愛宕池では、平成16年度にため池耐震診断、平成17年度に農業用ため池緊急点検を実施しております。
 耐震1次診断では、目視による堤体の調査や地形、下流の状況等を総合的に勘案し、危険度を判定いたしました。緊急点検も同様に、目視による現地調査に立地条件等を加えて総合的に判定を行いました。
 耐震1次診断では、下流に民家が多い等、危険度の多いため池から優先的に2次診断を実施することとしております。愛宕池は、地形や下流に民家が少ないことから、2次診断を行っておりません。
 日常管理においてため池の変状を即座に把握することが、ため池の決壊及び2次被害の防止につながることから、これを充実させることが安全確保につながると考えております。このため、ため池点検マニュアルを管理者に配付し、日常管理の充実を市町村を通じて指導していく所存でございます。
 また、愛宕池の決壊については、紀の川市役所が原因を調査中であり、今後の安全対策等の参考にしたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 危機管理監宇恵元昭君。
  〔宇恵元昭君、登壇〕
○危機管理監(宇恵元昭君) 避難場所をより細かく決めていくことへの支援についてお答えを申し上げます。
 東日本大震災から得られた教訓とは、想定を信じ切ってはいけないこと、ハード対策を過信してはいけないことなどがありますが、最も重要なことは、国土を形づくってきた自然と向き合って生きる上では、自然災害ではどんなことも起こり得るということを改めて考えていただき、備えていただくことでございます。
 そこから導き出された考え方として、津波からの避難については、時間が許す限り高台へ逃げることが最も重要との認識のもと、4月から市町村と連携し、避難場所の緊急点検を進めてまいりました。
 見直され、安全レベルを分けた緊急避難先は、地域ごとに一覧で示されるとともに、避難カードに自分で選択して記入し、家族で共有することをお願いしてございます。その後で避難経路を実際に歩いていただき、かかる時間やブロック塀などを確認する家族での避難訓練のような取り組みを行うことや、新たな高台、裏山や避難ビルなどについて、地域の中で検討する取り組みをぜひ進めていただくよう助言しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 福祉保健部長鈴木敏彦君。
  〔鈴木敏彦君、登壇〕
○福祉保健部長(鈴木敏彦君) 医科大学附属病院の津波対策についてですが、現在の津波浸水予測では、県立医科大学附属病院の東側にある中津川があふれ、約1メートル浸水するとの想定になっております。
 東日本大震災では、予測を超える大津波により甚大な被害を受けていることから、現在、想定を超える津波浸水対策も含め、県立医科大学の中に設置している災害対策委員会等で検討しております。
 また、県におきましても、庁内関係課及び県立医科大学でプロジェクトチームをつくり、一体となって検討を進めているところでございます。
 今後、国の想定見直しも考慮し、災害時においても病院機能を維持するよう、防災・減災対策に取り組んでまいります。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。
 災害から引き出す教訓などと言ったんですけども、私自身もまだ教訓を引き出せるような状態でないし、それも一言で言えるようなものではないことはよくわかっています。
 那智川に沿って何回も上がりおりしましたけども、町長さんの御家族がなくなったあの場所で、一体どこに避難したら助かったんだろうか。川があふれる、山が崩れるという状況だからです。そんなことを考えたような次第でございました。
 改めてじっくりとこの教訓を引き出して避難対策などに生かしていただきたいし、また今、知事を先頭にして、県の職員が一丸になってこの津波対策、災害復旧、全力を挙げていただいておりますことに感謝申し上げます。
 今後、河川の予算の問題などもまた検討していく必要もありますが、その問題については、またじっくりと議論をしていきたいというふうに思います。
 そこで次に、津波からの避難の問題です。これは私もいろいろと話を聞いて自分の考えも変わってきたわけですが、「想定外を生き抜く力」という群馬大学大学院の片田教授のビデオも担当課に薦められて見せていただきました。
 中学生が真っ先に高台に逃げたというあの「釜石の奇跡」、そしてあるケースでは、兄弟が津波から逃げおくれたから、今から逃げたらかえって危ないといって屋根裏でお兄ちゃんが弟をかばって生き抜いたという話、いろいろな話がありますけども、そのときの状況に合わせて最善を尽くして生き抜く判断力をつけることが言われています。
 また、防災教育というのは、家族のきずなを強め、地域のつながりを強めるものだということも感じました。
 ぜひともこのビデオを私も地域の皆さんと一緒にでも見ながら、一緒に勉強しながら、避難場所についてもまた考えていきたいと思いますので、行政の担当課のほうでもひとつ御支援をよろしくお願いしたいと思います。
 そこで次に、第2の柱に移ります。
 第2の柱は、原発事故・放射能漏れと脱原発への考えなどをお伺いいたします。
 福島原発事故、放射能汚染はいまだに収束に至らず、不安が広がっています。原発というものは、安全性、廃棄物処理技術が確立されていない未完成の技術です。かつては和歌山県への原発設置計画も持ち上がりましたが、私たち多くの県民は一致してそれに反対し、それを許しませんでした。
 しかし、福島原発が引き起こしたこのたびの事態を前にして、原発の危険性を指摘してきた私自身も改めて原発からの撤退の必要性を痛感したところです。「原発ゼロ」に向かわなくてはならないと思います。
 私たちが「原発ゼロ」という意味は、あすからすべての原発をやめてしまえということではなく、期限を切って原発をゼロにする、その間に自然エネルギー・省エネルギー社会への転換を図ろうとするものです。きのうも東京では「さようなら原発」という大きな集会があったと聞いています。
 そこで質問ですが、福井の原発銀座と言われるところで事故があって、琵琶湖が汚染されるようなことがあれば大変です。関西広域連合の場でも各府県知事の皆さんがいろいろ議論されているようですが、どういう論議をされているのか、仁坂知事は脱原発という問題についてどのようにお考えなのかをお伺いいたします。
 次に、福島原発放射能漏れへの不安が広がっています。特に、子供を持つお母さんたちの心配は深刻です。検査体制は、県民の不安にこたえられるものになっているのでしょうか。流通食品の検査体制は十分だと言えるんでしょうか。
 さらに、和歌山県全体では放射能はそう高くないと思いますが、局地的に放射線量が高いホットスポットはないのかという懸念が聞かれます。どういう対策をなされているんでしょうか。
 以上、御答弁をお願いいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 関西広域連合の議論でありますけれども、東日本大震災を受けまして、府県知事で構成するエネルギー検討会というものを設置いたしまして、関西におけるエネルギーの需給見通し、エネルギー源の多様化、省エネ・節電のあり方等、関西の中長期的なエネルギー政策の考え方を検討しているところでございます。
 私は、2つの視点が大事だと思っております。
 全体として、我々が生きていく、あるいは雇用を守っていくというためには、エネルギーの総量を確保しなきゃいけないということと、もう1つは、太陽光発電など再生可能なエネルギーの導入を積極的に行って、多種多様なエネルギー源のバランスミックスを図っていくことは重要だと、そんなふうに私は思っております。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 県内の環境や流通食品の放射能検査体制についてでございます。
 現在、県では、和歌山市内にある県環境衛生研究センターにおいて、空間放射線量率の測定を1時間ごとに、降下物及び蛇口水の放射線核種分析を毎日実施いたしております。また、空間放射線量率の測定については、6月に県内10カ所でも実施したところです。
 これらの測定結果はホームページでも公表しておりますが、今のところ、福島第1原子力発電所の事故以前の測定数値と変わってはございません。
 なお、空間放射線量率を毎時測定するモニタリングポストにつきましては、今議会に増設する補正予算案をお願いしており、今以上にきめ細かな測定体制を整えてまいりたいと考えております。
 流通食品の検査については、放射能の影響が考えられる都県においては、農水産物の出荷前検査が徹底されていると考えていますが、基準値を超える食品が県内に流通した場合には、直ちに流通から排除できるように検査機能を強化することが必要であるため、9月から各保健所にサーベイメーターを配備し、頻繁にスクリーニング検査を実施できる体制を整備し、また環境衛生研究センターにおいて食品事業者等からの依頼検査に対応できる体制を整備いたしております。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。
 そこで、知事にもう少し聞きたいんですけども、エネルギーを確保するという問題と、それから、そのために太陽光発電などを広げていくということはいいんですが、私はこの原発の事故を受けて衝撃を受けた。私自身は、原発というのは危険なものだということを主張してきて、もちろん和歌山県に持ってくることには反対をしました。しかし、同時に、今から考えれば、原子力の平和利用ということについて、多少のまだ幻想を持っていたんではないかという気持ちがございます。これは多かれ少なかれ、国民の多くの皆さんが、原発ゼロにするという立場の方であっても、減らしていくという立場であっても、やはり原発が、あの事故を受けて大きな衝撃を受けて、それぞれいろいろなことを考えられたと思うんです。
 そこで、仁坂知事はこの前、6月議会では、和歌山県に原発を持ってくるなという高田議員の質問に対しては、今は和歌山県に原発を立地するような条件はないというふうには言われたんですけども、あの事故を受けて、原発ゼロという立場に立たれていないことはよくわかってるんですが、しかし、それ以前と原発についてどういうふうに認識が変わられたのか。ああいうことは初めから私はお見通しだったよということなのか、あるいは衝撃を受けたのか、その辺を。そのことによって自然エネルギーの転換のスピードの問題もやっぱり変わってくると思います。その点ひとつ、知事はどうだったのかをお聞かせいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 大変個人的な私の思いを述べます。
 私は、その昔々、ずっと昔、原子力安全課の、課長じゃありません、係長をやっておりました。科学技術庁におりまして防災対策などを──原子力の防災対策なんですが──やっておりまして、そのときに、その横のほうで安全審査とか安全確保をやってるグループがいますから、そういう人の言うことも聞いてよく勉強してました。
 そのときの知識からすると、今回、大変衝撃を受けました。それは、地震は考えてるんだけど、津波ということについてのやっぱり備えが全然できてなかったなということは、少なくとも確実だろうというふうに思います。
 そういう意味で、人間のいろんな知恵というのはやっぱり謙虚でなきゃいかんというふうに思いまして、これは大変なことだから、みんなでまた知恵を集めて、少なくとも同じ過ちを二度と繰り返してはいかんというふうに、今思っているところでございます。
○議長(新島 雄君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 知事も衝撃を受けられたという話を聞いて安心いたしました。やはりその点では私たちは、私自身も原発反対の立場だったけども、それでも衝撃を受けて認識を深めたわけですから。
 そして、一層自然エネルギーへの転換を急がなくてはならない、そして期限を切って原発ゼロにしなきゃならないという立場に立っているわけでございます。もちろん、その点では知事とは少しスタンスは違うと思うんですが、しかし、衝撃を受けたとしたら、やはりこれまでの延長線上で自然エネルギーを開発していったらいいんではない。やはり原発は、私は一日も早くなくしていきたいと思いますし、それなりのふさわしい体制をとって自然エネルギーを開発しなければならないというふうに思います。それは次の質問になるわけでございます。
 それから、もう1つ、放射能検査体制について答弁をいただきました。これについては、検査ポイントや検査機器をふやしていただいたことは大変ありがたいことでございます。それでも、県としてすべての地点を測定することはできないと思います。
 そこで、私ども、安物でございますが、放射能測定器を買いました。10万円でして、ウクライナ製でございます。県でふやした分は80万円するそうで。ですから、これ、相談があったらはかるんですが、しかし、素人が安物の機械ではかって、あそこが高いぞ、ここが高いぞと言うて回るのでは、かえって県民の不安をあおることになって、そういうことを私たちはしたくない、はかるけれども。ですから、むしろ高いところがあったら、県の担当課にお話しして、どうも私とこの安もんの機械ではかったら高いようなんだ、もう少しあんたとこのええ機械ではかってくれへんかと言うて、県民に安心してもらえるようにしていきたいというふうに思っています。
 それで、県としてもこういうものを使いたいという県民の方があったら、それは限界があるでということは言いながらでも、機械も貸し出すようなことも検討されてはどうかというふうなことも思います。これは要望にしておきたいと思います。
 以上で、この項目は終わります。
 そしたら、次いったらええな。どうもなれないので。
 第3の柱は、自然エネルギー開発の可能性とその追求という問題でお伺いいたしたいと思います。
 自然エネルギーといえば太陽光発電が言われ、バイオマス、風力、水力、潮力、地熱など、いろいろ研究中のものも含めてあります。さきの県議会では、企業からメガソーラー発電の提案があること、また民家も含めて太陽光発電をもっと推進したらええんではないかという議論もされました。私は、そういうものも積極的な提案だと思っています。
 ただ、自然エネルギーといえば太陽光発電というのもどうかなという思いもあるわけです。なぜかといえば、太陽光発電というのは必ずしも効率がいいわけではないからです。
 身近な話でいいますが、私の家では、昔つけた太陽熱の温水器が屋根についていて、春過ぎから天気のよい日はほとんどおふろのお湯を沸かす必要がありません。太陽熱というのは、電気に変換せずに熱として利用するのが一番効率がいいわけです。極端な話、太陽光発電でできた電気でオール電化といっておふろのお湯を沸かすとすれば、これほど無駄なことはないと思います。
 この県議会場には昼間でも電灯がついています。昔から日本の家屋には天窓というものをあけていました。先日、私は、下津の金鳥蚊取り線香の工場にお邪魔したんですが、天井に蛍光灯よりもっと明るいライトがついている。これ何ですかと聞いたら、実は太陽光を取り込んでいるんです。近代的天窓でありました。
 もちろん電気は必要ですから、これまでの火力発電も含めて、太陽光発電や水力、風力、地熱、潮力発電など必要です。ただ、太陽光発電というのは、一定の平面に当たった光の一部分だけが電気に変換する。今後の変換効率の向上には期待したいんですが、現時点では効率はそれほどよくありません。
 ところで、水力というものはどういうものか。水力というものは、太陽の熱で水が蒸発して雲になり、雨が降ります。山に降った雨が谷間に集まってきて川になります。太陽熱が生み出したエネルギーが自然の営みによって凝縮されたものを人間が水力発電として利用する。だから太陽光発電よりも効率がいいという場合があります。風力もバイオマスも、太陽光エネルギーの凝縮したものを利用すると言ってもいいでしょう。
 こういうことも踏まえながら、お伺いいたします。
 第1は、メガソーラー発電であります。
 孫社長の提案については、太陽光発電の可能性を提唱した点では積極的な提案だと受けとめました。しかし、6月県議会の報告では疑問を感じたのも事実です。
 関西広域連合に孫社長がおいでになって提案された。関西広域連合というところは、個別企業の経営者がやってきて提案できるところなんでしょうか。孫社長はどういう経過があっておいでになり、関西広域連合はそれを受け入れたのでしょうか。特定企業の利権のようなものになってはいけないと思うんですが、いかがでしょうか。知事にお伺いいたします。
 第2に、太陽光発電については、休耕地にまで踏み込まなくても、太陽光パネルをつける場所は和歌山県ではたくさんあるのではないかと思います。その可能性について、当局の御見解をお伺いいたします。
 第3は、太陽光エネルギーを凝縮したものとして申し上げた小水力発電やバイオマスであります。和歌山県での小水力発電やバイオマスの可能性についてどう見ておられるのか、商工観光労働部長にお伺いいたします。
 第4に、太陽光発電については、国・県として、それを促進するための応援をさらに引き上げる必要があると思います。また、太陽光発電以外の太陽熱利用があります。屋上に置く太陽熱給湯器が私は有効だと思っていますが、こういうものへの補助はどうなっているのか。これも応援していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。環境生活部長にお伺いいたします。
 そして、この項目の最後に、風力発電の問題にかかわって申し上げたいと思います。
 私は、この問題では、低周波被害が生じていることを指摘し、県担当課には測定をお願いしました。しかし、国の基準が確立されていない中で被害者の救済には至っていません。被害を訴えておられる方は、離れた場所に住居を移し、そこから山の上のミカン畑に通うという不自由な生活を強いられています。
 風力発電を進める企業はたくさんの計画を持っているわけですが、このままでは地域住民には受け入れられないだろうと思います。低周波被害を出さないようにするためには、専門家による研究や国の規制基準が必要ですが、それとともに、現に被害を訴えて、転居して二重生活しておられる方にも企業が知らんふりというのは、いかにもだと私は思っています。
 県として、企業と被害者の間を取り持って少しでも救済措置を進める必要がある。今後の風力発電の発展のためにもお願いをしたい。これは要望といたします。
 以上、質問した項目への御答弁をお願いいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 自然エネルギー協議会の話でありますが、ソフトバンク側からメガソーラー事業について大阪府に話がありまして、それを受けて橋下知事から関西広域連合として取り組んではどうかという提案がありましたので、5月下旬に開催された関西広域連合委員会終了後、ソフトバンクの孫社長から提案を聞くことになりました。
 その中身は、このあり方を考える協議会と、それからソフトバンクの資金を投じて行うプロジェクトの2つの側面があるわけであります。
 協議会については、和歌山県としては参加を表明しておりましたが、関西広域連合としてまとめて参加するということにその場でなりました。なお、自然エネルギー協議会へ参加する企業については、同協議会事務局のホームページ上で準会員としての法人の募集を9月から行っておりまして、ソフトバンク以外の企業も受け入れることになっております。
 一方、プロジェクトについては、当県としての立場とともに提案をしておりますが、まだ当県を含めて、ほかのところもそうでしょうが、進展はございません。
○議長(新島 雄君) 商工観光労働部長。
  〔大門達生君、登壇〕
○商工観光労働部長(大門達生君) まず、太陽光発電における太陽光パネルの設置場所についてですが、本県にはメガソーラーに適した未利用地が多いことから、これらの未利用地にメガソーラーが設置されれば土地の有効活用につながるものと考えております。
 次に、小水力やバイオマスの可能性についてですが、本県は日射量だけでなく、水量や森林資源などにも恵まれており、バイオマスなどの自然エネルギーの取り組みには適した地域であると考えており、事業実施に当たり、諸制度との適合、景観や環境との調和など、事業者との間で条件が整えば、県としても積極的に推進していきたいと考えております。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 住宅用太陽光発電の導入に対しましては、国の補助制度と余剰電力買取制度とを組み合わせた支援体制が現在とられています。また、県では、単独で上乗せの補助制度を本年度から立ち上げており、県内にはさらなる上乗せ補助を行っている自治体もあります。
 今後の住宅用太陽光発電の普及に向けては、余剰買取制度の拡充や全量買取制度の創設など、より抜本的な支援体制の充実を求めて国に働きかけを行っているところです。
 なお、議員御提言の家庭用太陽熱温水器につきましては、エネルギー変換効率が高いことは認識しておりますが、その活用範囲がお湯に限定されており、価格面も比較的安価であることから、補助制度を創設することは難しいものと考えております。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。
 それでは、次の柱へ行きます。
 といいますのは、本当はこの3の柱の延長線上に4の柱があるんですが、最後に知事にまとめてお答えいただきたかった関係で、質問の技術上、別の項目にしたものです。
 今までの自然エネルギーをめぐるやりとりを踏まえた上で、自然エネルギー開発にかかわって知事にお伺いしたいと思います。
 農業用水を利用した小水力発電は農林水産部で管轄されている。南部町にある島ノ瀬ダムは農林水産省所管で、近畿でも先進的な試みだそうです。
 また、有田川町が二川ダムを利用した小水力発電を検討中だと河川課からお伺いいたしました。しかし、河川課は、申請があった場合に許可条件を示すのが仕事で、推進する立場にはないと思います。
 谷川を利用した小水力発電は商工観光労働部が管轄されるわけですが、申請があった場合の対応にしかなっていないように思います。バイオマスは農林行政、これは多少応援もしていらっしゃる。太陽光だけは商工観光労働部で推進の方向に向かっている。こういうふうになっていると思います。
 しかし、今、自然エネルギーの開発が急がれる特別な歴史的局面であります。そこで原発についての認識をお聞きしたわけですが、やはり自然エネルギーの開発は今までの延長線でやっていいんではない、急速に進める必要がある、こういう時期です。
 技術開発は主として国の問題でしょうけども、和歌山県でのその可能性を探求する必要があると思います。ですから、商工、農林、河川それぞれでなくて、また申請があれば受け付けるという待ちの姿勢ではなくて、自然エネルギーの開発、和歌山県でのその可能性を探るということが必要だと思うんです。
 私は、先日、小水力発電について取り組んでおられる和歌山大学システム工学部の中島教授にお会いしてきました。また、経済学部の中村教授は、前からバイオマスを提唱しておられる。和歌山高専にも専門家の先生がいらっしゃる。こういう方の知恵を含めるのも含めて、てんでばらばらに、言うてきたら許可するよとかいうんではなくて、和歌山県内で、そういう太陽光エネルギーだけじゃなくて、小水力もバイオマスも含めた自然エネルギーの開発の可能性がどれだけあるのかというのを総合的に検討する、そういう場所をつくられてはどうかと思うんですが、知事の御見解をお伺いいたします。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) ただいま議員は、縦割り行政的にてんでばらばらとおっしゃいましたが、その各部局のボスは私でございまして、そのボスに対して、部局が勝手にやってるかのような言い方をされるのはいささか失礼な感じがいたします。
 ただ、私が全部束ねて自分1人で統括するというのも実は大変で、実は少し前から、この問題なんかが発生する前から、エネルギーは一元的に商工観光労働部で所管をして、それでいろんなところの機能もかりながら、総合調整をしたり、業界とのつき合いをしたり、あるいは企画をしたりしようということになっておりまして、その機能は今、十分果たされています。
 さらに、今おっしゃったような外部の方々の御意見もどんどん取り入れて、これから頑張っていきたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 ありがとうございました。しっかりボスが采配を振っていただいて、待ちの姿勢でなくて、自然エネルギー開発のために、これまでと違った対応をやっていただけるように期待をしております。
 最後に、戦争責任をめぐる知事のメッセージの問題でございます。
 仁坂知事が「県民の友」の8月号の知事メッセージで、「戦争責任」と題して、「当時のすべての国民にその責任があった」と述べていることについて、多くの県民の方から、これはどうなってるんだと憤りの声が上がってきています。知事のところにも届いてると思います。
 知事は、「戦争指導者達と一般の国民の責任は同列同等には論じられない」としつつも、「戦意を高揚させるような新聞が売れ、教育現場では軍国主義が鼓吹され、戦勝記念のパレードが行われ、兵士の出征の際には別離の涙のかわりに万歳が唱えられたことも事実です」と述べています。
 戦前、教育勅語のもとで教育統制が行われ、新聞や出版には検閲が行われ、国民を軍国主義の方向に引きずっていったことをどのように考えておられるんでしょうか。同列ではないというただし書きをつけたとしても、国民の責任だと言うのでしょうか。また、そんな体制の中でも命がけで戦争に反対した人がいたという問題は、知事の視野には全く入っていないようにも見受けられました。
 さらに、「同じ多くの国民が敗戦の後はころりと変わったのです」と述べておられます。侵略戦争と戦争の惨禍への反省から、平和憲法を制定し、平和国家への道を歩もうとした国民を「ころりと変わった」とは、国民を愚弄し、日本国憲法を踏みにじる発言だと言わなくてはなりません。
 もちろん、戦争中には時流に乗りながら戦後はころりと変わったという変わり身の早い要領のよい人間もいたでしょう。しかし、多くの国民を「ころりと変わった」などと言うことは、絶対に許されるものではないというふうに思います。知事の真意をお聞かせいただきたいと思います。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 「県民の友」8月号のメッセージに「戦争責任」についてというタイトルでエッセーを発表いたしました。少なからぬ人から賛意を得ましたが、一方で批判も寄せられました。
 批判は、主として2つございました。1つは、「無謀な戦争」と私は書きました。それに対しては何事かという議論がありました。それは、米国を初めとする国々の謀略によって日本が戦争に追い込まれたんじゃないかというような趣旨でありました。しかし、戦争の正しい戦略はあったのかと。現に敗戦をして日本を滅亡のふちに追いやったではないか。多くの人々の命を失わせたではないか。仮に勝ったとしても、敵味方の多くの命を失わせるのが戦争でありますから、何とか避ける国家戦略はなかったのかというように私は思っております。
 次に、雑賀議員のような方がいらっしゃいます。多くの一般国民は無辜で、責任は戦争を指導した一握りの人々にあると、だからそんなこと言われるのは嫌だということであります。それに対して私が申し上げたいのは、責任を一部の人だけのせいにして自分は無辜だったというのなら、また同じ失敗をいつか繰り返す可能性があるのではないか、そんなふうに私は思いました。
 国民1人1人が、あるいは県政で言えば県民1人1人が自分でしっかり勉強して、考えて、おかしいと思ったら、多数意見や、あるいは一見権威のありそうなものに乗せられないで、堂々と非を鳴らすことが大事だというふうに思うわけでございます。
 そういうことを申し上げたかったので、終戦記念日でもあるということもありまして、あのような文章を載せさせていただきました。
○議長(新島 雄君) 雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕
○雑賀光夫君 私たちは、今から戦前のようなああいう状態をつくらないように、再び戦争を繰り返さないように、国民1人1人が頑張らなくてはならない、これは思います。
 しかし、あの戦争前の、知事が、教育現場では軍国主義が鼓吹され、戦勝の記念パレードで云々、あるいは出征の際の万歳、こういうことを言われていた時代というのはどういう時代だったのか、知事は認識されているのでしょうか。認識されていないはずはないと思います。あのときに戦争を反対すれば非国民と言われ、それだけでなくて獄につながれ、そして獄中で亡くなった方も大勢いらっしゃるわけでございます。
 そういうことがありながら、とにかく国民が戦争に反対しなかったじゃないかという言い方というのは、実は戦後すぐの内閣が言い出した一億総ざんげ論という、とにかくみんな悪いんだと、こういう議論があったわけです。それに共通する、戦争指導者の戦争責任をあいまいにするものであり、それは戦前の社会全体を全く無視した議論だと思います。
 そしてこの戦後の問題で、私は、ころりと変わって戦争に反対になったというここの問題については、特にこだわるわけです。
 戦争に協力した教師がどんな苦痛の思いを持って戦後の教育に立ち向かったのか。ここに高知県の教員の竹本源治さんという方の「戦死せる教え児よ」という詩があります。短いもんですから読んでみたいと思います。
 「逝いて還らぬ教え児よ 私の手は血まみれだ! 君を縊つたその綱の 端を私ももつていた しかも人の子の師の名において 鳴呼! 『お互いにだまされていた』の言訳がなんでできよう 慚愧、悔恨、懺悔を重ねても それがなんの償いになろう 逝つた君はもう還らない 今ぞ私は汚濁の手をすすぎ 涙をはらつて君の墓標に誓う 『繰り返さぬぞ絶対に!』」。
 戦争に協力した教師たちは、ころりと変わったんじゃなくて、こういう痛恨の思いを持ちながら、教え子を再び戦場に送らないという決意を持って平和の教育に当たったわけでございます。
 こういうことを申し上げまして、特にそれ以上答弁は求めませんが、質問を終わりたいと……(「議長」と呼ぶ者あり)ああ、いいですか。
○議長(新島 雄君) 知事。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 実は私は、竹本源治さんと同じことを言いたいのであります。「君を縊つたその綱の 端を私ももつていた しかも人の子の師の名において 鳴呼! 『お互いにだまされていた』の言訳がなんでできよう」。その竹本源治さんを評価する雑賀議員が、一部の政治家や軍部にのみ責任があって多くの国民は無辜であったと主張することが竹本さんの悲痛なる反省に反することに、どうして気がつかないのでありましょうか。
 政治や社会風潮には、ムード、流れがあります。これに反すると戦前は社会的制裁を受ける、あるいは、おっしゃったように、肉体的にも弾圧される、そういう時代でありました。今日でも社会的につまはじきにされるというようなことはたくさんあります。しかし、それに国民が無批判に乗れば取り返しがつかないこともまた繰り返されるのではないでしょうか。おかしいと思ったらぜひ言うべきであります。そのために1人1人が自分の目と頭で考えて、よく勉強すべきであろうと思うわけであります。そういうことを言っておるわけであります。
 私は、県民のために一番よいと思うことを県政で必死にやっております。しかし、間違うかもしれない。その中身が少しでもおかしいと思ったら、どんどん問題提起されるべきであります。私は、それによって県政に誤りなきが期されるのだと信じております。それが県民すべてのいわば責任なのだと思うわけであります。
 そういう意味で、雑賀議員の今回の批判は断然間違ってると思いますけれども、しかしそういう問題を提起されて、こういう議論ができるということはいいことだと考えております。
○議長(新島 雄君) 知事に申し上げます。少し答弁が長いようでありますので、簡潔にお願いをいたします。
 以上で、雑賀光夫君の質問が終了いたしました。

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