平成23年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(尾崎太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 3番尾崎太郎君。
  〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 早いもので、和歌山を震撼させた官製談合事件から5年が過ぎました。仁坂知事は「二度と不正が起こらない仕掛けをつくる」と公言し、入札制度の改革に取り組まれてきました。我々自由民主党県議団も、かんかんがくがくの議論を知事及び当局と重ね、声を荒げることもしばしばであり、私自身も知事と知事室で激しい議論をしたことを思い出します。
 本県経済にとり、公共事業は地場産業と言われるぐらい大きなウエートを占めるものであり、入札制度は業者の盛衰に直接かかわるものであるだけに、単に公平性、透明性、競争性を高めればそれでよいといった性質のものではなく、地域性、業界全体のバランス、地元業者の保護育成といった複雑な連立方程式を解かなければなりません。あちらを立てればこちらが立たず、自民党の中ですら時には意見が対立することもあり、今日なお、さまざまな見解が存在していることも事実であります。
 この5年間はまた、公共事業悪玉論が我が国を覆い、「コンクリートから人へ」などというスローガンがもてはやされ、我が党の大きな支持基盤でもあった建設業界は意気消沈し、我々は政権を失いました。
 民主党政権は、公共事業の仕分けが国政の最重要課題であるかのように振る舞い、一知半解の知識で、精緻に積み重ねた予算を次々に削減していきました。麻生総理がせっかく補正で積んだ防災、耐震化の予算までもが仕分けされてしまいました。未曾有の震災に見舞われた今、彼らの派手なパフォーマンスがむなしく思えてなりません。
 緑滴る我が国の自然は、世界でもまれなる生物の多様性を誇る豊穣で美しいものであり、大陸の荒涼たる風景などを見るとき、我々は何と恵まれた国に生まれたのかと感謝の念を抱かずにはおれません。その一方で、我が国は震災や台風に見舞われることたびたびであり、ヨーロッパなど天災の少ない地域をうらやましく思えるかもしれません。
 日本列島は、地殻40年の歴史の中で、3億年より新しい地層で構成されています。我が国の地層は非常に若いのであり、まだまだ安定するにはほど遠い状態で、小刻みな地震はそれこそ絶え間なく起こり、時には極めて大規模な地震が発生します。
 竹村公太郎氏の「日本文明の謎を解く」によれば、西暦1600年以降だけを見ても、このあたりからは比較的信頼できる史料があるようですが、慶長地震、元禄地震、東日本大震災までは記録に残る最大の地震とされていた宝永地震、八重山地震津波、島原大変肥後迷惑、善光寺地震、南海地震、安政東海地震、江戸地震、濃尾地震、明治三陸地震津波、関東大震災、北丹後地震、昭和三陸地震津波、鳥取地震、東南海地震、三河地震、南海地震、福井地震、そして兵庫県南部地震と、1000名以上の死者を出した地震・津波が歴史的な視点から見ればそれこそ頻発していることがわかります。今回の震災は1000年に1度などと言われましたが、我が国では100年におおよそ1度ないし2度も1万人以上の死者を出す地震・津波が起こっているのです。
 その一方で、地層の若さは土地が柔らかいということであり、豊穣な降雨量と相まって手間さえかければ耕作地としては理想的で、豊かな実りをもたらすものでありました。世界史は農耕民族と遊牧民族の角逐の歴史であると言えなくもありませんが、我が国がこの種の争いを避けることができ、極めて安定した社会を築けたことがこの地層の若さがもらたす豊かさであったことを考えれば、まさに禍福はあざなえる縄のごとし、我が国においては天災と自然の恵みは表裏一体のものであったと言えましょう。
 このような国土を持つ我が国においては、治山治水、災害対策等にかけるべき予算は諸外国に比べて多くなるのは当然であります。我が国の公共事業の対GDP比がヨーロッパ諸国と比べて高いからけしからんとの近年の論調はいただけません。災害対策は、この豊かで美しい列島に住む我々に課せられた宿命であるのです。
 無駄な公共事業がなかったなどと言うつもりはありませんし、費用対効果は検証されてしかるべきでありましょうが、国債は国民の借金であるというデマは払拭されねばなりません。我が国の国債は、そのほとんどが国内で消化されています。わかりやすく言うならば、国民が政府にお金を貸しているのです。国債は政府の借金であり、国民の資産であるのです。よく個人の金融資産は約1400兆で、それが国債の発行の限界だという言説も見られますが、根拠がよくわかりません。そもそも、国債で調達したお金は何らかの形で支出されるのですから、それは国民の所得になるはずです。荒っぽく言えば、国債発行の分だけ国民の金融資産はふえるのです。実際に、統計はこれを裏づけています。だれかの借金はだれかの資産であり、だれかの支出はだれかの所得なのです。
 アメリカの格付会社ムーディーズが2002年に日本の国債をボツアナ国債と同じ格付にしました。当時も今も我が国は世界最大の経常黒字国にして世界最大の債権国なのですから、どのような論理を駆使すれば日本の信用力をボツアナ並みに落とせるのか、全く理解に苦しみますが、ことしに入り、スタンダード・アンド・プアーズが日本国債の格付を引き下げました。
 与謝野経済財政相は、この引き下げについて、「債務残高が増加している。判断をする根拠が多分あったのだろう」などと語っています。彼は一体どこの国の大臣なのか。もっとも、恥も節操もなく政権に潜り込んだやからなどこんなものかもしれませんが。
 言うまでもなく、格付会社は自己の利益を追求する民間企業であり、公平無私なものであるはずがありません。あるいは知的エリートを自認する者にありがちですが、彼は頭から我が国が欧米よりも劣っていると思い込んでいるのかもしれません。
 国際通貨基金・IMFは、訪日調査を終え、我が国の財政再建策について、「歳出削減の余地が限られる中、段階的な消費増税を中心とした包括的な税制改革によるべきだ」と指摘し、具体的には消費税率を来年度から7%から8%に引き上げる案を示しました。大きなお世話であります。
 橋本総理は、1997年に消費税を3%から5%に引き上げました。当然消費税はふえましたが、法人税と所得税は減り、全体としては税収は減ってしまったのです。自民党はその後の参議院選挙で敗北し、橋本総理は退陣しました。再登板を期して出馬した2001年の自民党総裁選挙では、彼は、「振り返ると、私が内閣総理大臣の職にありましたとき、財政の健全化を急ぐ余りに財政再建のタイミングを早まったことが原因となって経済低迷をもたらしたことは、心からおわびいたします。そして、このしばらくの期間に、私の仲のよかった友人の中にも、自分の経営していた企業が倒れ、姿を見せてくれなくなった友人も出ました。予期しないリストラに遭い、職を失った友人もありました。こうしたことを考えるとき、もっと多くの方々がそういう苦しみをしておられる。本当に心の中に痛みを感じます」と語りました。
 私は、自民党和歌山県連の青年部長としてこの総裁選挙に投票すべく党本部におりましたので、直接この演説を聞きました。恥を忍んで国民のため、みずからの過ちを率直に認めざんげした橋本総理の誠実に報いるためにも、我々はこれを教訓とせねばなりません。橋本総理は死ぬまで、消費税率の引き上げのタイミングを誤ったことを後悔していたと言われています。
 壊滅的な被害をもたらした震災を経てなお、自国の通貨高を抑えるため、中央銀行が通貨市場に介入せざるを得ない奇跡の国。復興のため海外資産を売却し、円にかえる動きがあるにせよ、世界じゅうの人々が円を買っているわけですから、日本の信用の高さがわかろうというものです。
 「信用こそ財産」とはよく言ったもの、円だろうがドルであろうが、もはや金の裏づけなどないのですから、ただの紙切れに1万円の価値を持たせているものは、幻想と言えば幻想、信用と言えば信用と言えるものでしかありません。そして、日本人ほど自国を信用している国民はそうはいません。二千数百年にわたり連綿と続いてきたので、我々にとって日本国は、信用しているというよりもはや所与の条件のようなものですらあります。その上、先人たちのおかげで諸外国からの信用も絶大なものがあります。まして、繰り返しますが、我が国は世界最大の経常黒字国にして世界最大の債権国なのです。いかに民主党政権が無能だとはいえ、極めて優秀な国民がいる日本をギリシャのようにすることはそう簡単にはいきますまい。
 少なくとも自国通貨建てで、しかもそのほとんどを国内で消化している我が国の国債がデフォルトする可能性など、理論的に極めて低いと言わざるを得ません。世界最高の生産力を誇る我が国が、それゆえデフレに苦しんでいる現在、復興需要や防災対策等、有効な使い道、需要は幾らでもあるのですから、積極果敢に建設国債を発行し、迅速に公共事業を実施すべきであります。民需が低迷している今こそ、官需を喚起しなければなりません。民需が旺盛になれば官需を縮小すればよいのです。
 そこで問題となるのは、官需は税金でつくられるものですから、たとえケインズ的な有効需要の創出とはいっても、まさか穴を掘ってまた埋めるといったものでは国民に受け入れられはしません。また、その需要を満たす供給者の選定、すなわち入札は厳正、公平なものでなくては国民の目には利権の創出のように映ってしまいます。
 目的と執行において国民にきちんと説明ができることを条件に、今日の我が国の情勢は今やGDPの4%まで落ち込んだ公共事業を倍増させることを要求しているのです。本県においても東南海・南海地震の発生が懸念される中、県民が必要とするインフラの整備を早急に行うべきであることは論をまちません。入札制度の改革は、この点でも大いに意味のあることでありました。
 さて、本県の入札制度は、知事、関係当局、建設業界、先輩・同僚議員の努力もあり、対外的にも一定の評価を得るものとなっています。しかし、なお検討の余地があると思われる点があります。それは、1億円以上の予定価格の非公表であります。
 この点につきまして、私は当初から公表論者であり、本県の入札制度改革を御指導賜った郷原先生も同意見でありました。積算もできないような業者は淘汰するというのが県の方針であり、筋は通っていますが、それには隠した予定価格が絶対に漏えいしないということが大前提です。漏えいのリスクは県がとるべきで、そのために健全な業者を犠牲にはできないとする知事の意見はそのとおりでありますが、予定価格が漏えいしているとのうわさは絶えません。
 今回、選挙の洗礼を受ける中で多くの県民と接してまいりましたが、「予定価格は漏れている」と複数の業者から言われました。その都度「そんなことはないでしょう」と応じてきましたし、今の県職員にはそのような不届き者はいないと信じたいのですが、予定価格を知り得る立場の職員は複数名はいるわけですし、知事の言う「不正の起こらない仕掛け」は、この点においてはなされているとは言いがたいのではないでしょうか。一に県職員の良心にゆだねられているのですから。
 もちろん、予定価格を漏らすことは競売入札妨害に当たり犯罪でありますが、犯罪になるからやるはずがないといったところで説得力に乏しいでしょう。現実に、予定価格が漏れていると考えても不思議ではない入札結果も散見されます。
 特別重点調査は、設計工事価格の内訳から直接工事費の75%、共通仮設費の70%、現場管理費の70%、一般管理費の30%を算出し、入札内訳書の金額が上記4項目いずれか1つでも下回った場合に対象となり、事実上失格となります。現在では当然のことながら談合は行われていないため、各社とも土木・建築工事では低入札は当たり前となっており、特別重点調査の対象とされないことが落札の大きなポイントとなっています。
 例えば、ある工事で某社は、他の3社がその会社のものより高い価格で入札したにもかかわらず、特別重点調査の対象となり失格したため、落札しています。低い入札価格を提示した会社が特別重点調査の対象となり失格したというのならまだわかりますが、高いところが3社も失格しているのです。某社は予定価格を知らずに積算し、4項目とも恐らくぎりぎりでクリアしたのですから、まさに神わざです。偶然そうなったと言わざるを得ないわけですが、このような事例が何度かあれば、予定価格は漏えいしているとライバル会社が考えたとしても無理はありません。
 実際には、入札を有利に運ぶために予定価格をあの手この手で探ろうとする動きはないとは言えません。あるいはコンサルあたりからでも探ろうとするかもしれません。積算能力を高めることが予定価格を隠す理由であったはずですが、現実には土木・建築の入札は特別重点調査の対象となる価格の探り合いの様相を呈しています。何となれば、本当に水も漏らさぬ積算をしても、4項目のうち1つでも調査価格を下回れば事実上失格になるのですから。つまりは、積算能力がある業者が失格となってしまう可能性もあるのです。
 来月からはランダム係数の幅も広げるようですが、これは落札業者の偏りをなくすためでしょう。落札をより偶然性にかからしめるわけですから、これは積算能力のない業者を淘汰するために予定価格を隠すという方針とは矛盾しているように思われます。
 そうであるのなら、むしろ予定価格を公表し、業者に要らぬ疑念を抱かせないようにしたほうがよほど健全であるように思いますが、いかがでしょうか。せっかくの入札制度改革が、予定価格を隠したために、何か怪しげなもののように思われているのは残念でならないのです。
 さて、県立医科大学についての監査結果が報告されました。一部は5月19日の「読売新聞」やNHKニュースでも広く報道され、県民の知るところとなりました。電気・機械設備運転監視及び保守業務は、毎年4億5000万円を超える価格で特定の業者と12年もの間、随意契約を交わしていました。そもそもこのような巨額な随意契約をすること自体、和歌山県立医科大学契約事務取扱規程違反であり、契約額も他の事業者等と比較検討されていませんでした。つまりは、言い値で契約していたということでしょう。
 さらに、空調フィルターの点検、取りかえ業務などは、当初の予定から取りかえ実績が減少すれば他の点検業務の増加で相殺されております。これは業務内容の変更であり、書面での決裁が必要であるにもかかわらず、なぜか一切なされていません。
 私は、以前から、医大の入札はおかしいとの意見を、特に医大で仕事をしている業者の方に伺っていましたし、予算委員会での医大の入札に関する同僚議員の質問もあって、独自に調査してきました。業務内容が変更されても契約額がいつも変わらないのは、そもそも医大と業者側に暗黙の了解、ある一定の額の仕事を出すというようなものがあるのではないかとの疑念を持ち、医大に直近5年間の仕様書を見せてもらいましたが、果たして、内容は随分異なっても、契約金額はなぜか4億5000万円以上となっています。
 運転監視業務だけで、単なる監視ですが、2億円を超える予算がついていたことに驚いた私は、その中身を尋ねたところ、施設管理課長は「人件費です」と答えました。さきに述べたように、予算は特定業者の言い値であったのですから、この特定業者は一体何人でこの監視業務に当たっているのか内訳書を見せてもらいますと、29名になっています。
 一般に役務の提供では、従事者数をごまかして利益を上げることは発覚しにくいだけに、比較的よく行われる不正であると言われています。施設管理課は、実際に業務に従事している者をチェックする体制をとるべきでありますが、管理日誌には勤務した人数の記載はあるものの、肝心の氏名の記載はありません。
 同課は、人命にかかわる病院施設での業務のため同業者で対応を続ける必要があったなどと随意契約の理由を述べていますが、人命にかかわるというのならば、医大の心臓部であるエネルギーセンターの監視業務で、実際に従事している者がどこのだれだか知る必要はないというようなことには絶対にならないはずです。医大で清掃業務を請け負っている地元業者には、同課は従事者の氏名を明記させた日報を提出させているのですから、実に奇妙なことであります。
 12年にわたる随意契約、仕様書どおりの仕事をせずとも必ず一定の請負金額になるシステム、言い値の契約額、甘いチェック体制、これらを県民はどう見るでしょう。本県の医務課長によれば、仕様書には書かれていないこともこの業者にはやらせていると医大は言っているようですが、多分随意契約の言いわけとして言っているのでしょうが、そうであれば随分親密な関係にあると言えるのではないでしょうか。
 私は、この監視業務にはとても29名も要らないだろうと思いましたので、施設管理課長にただしたところ、彼は、「それは登録しているだけの人数です」とあっさり認めました。余りにもあっさり認めたので、感心したくらいです。本業務は今年度からは入札されていますが、応募してきた業者からの「本業務は何人で行っているのか」との質問に「常勤で29名である」と答えているので、私は「実際は登録しているだけなら常勤29名と回答するのはおかしいではないか。新規参入業者の積算は高目になるだろうから、この入札は中止すべきだ」と主張したので、よく覚えています。
 さらに、何とか入札を執行しようとする脇田事務局長に、「どうしてもこの入札を執行したいのであれば、せめて今からでも口頭ででも参加予定者にその旨伝えてはどうか」とまで進言したのですから、施設管理課長が「登録だけです」と言ったのは、紛れもない事実なのです。それが今になって、彼はだんまりを決め込む始末です。
 このややこしい入札を小濱副理事長や脇田事務局長は何とか強行しようとしましたが、私が仕様書のさまざまな不備を指摘したので、それらはいずれも特定業者に有利に働く点であると思われましたが、この入札は取りやめになりました。これらの点につきましては、やや専門的でありますので機会を見て委員会でやりたいと思います。
 入札の結果は、医大のホームページによりますと、随意契約により2割ほど安く、MIDファシリティマネジメントが落札しています。実は、この業者が長年独占的に受注してきた業務はほかにもあり、それは清潔区域環境管理業務と呼ばれているものです。「呼ばれている」と申し上げたのは、管理業務とはいうものの中身は清掃業務にほかならないからです。
 この業務については、毎回指名競争で入札が行われてきましたが、指名される業者は毎回3社だけであり、なぜかそのうちの1社は毎回必ず辞退するのです。辞退するような業者を毎回指名するというのも、またしても奇妙でありますが、落札者は毎回必ずMIDファシリティマネジメントなのです。
 指名選定の理由は、ISO9001の認定を受けていること、高度清潔区域の特殊事情に十分対応でき、公立病院の実績があることであるとされています。しかし、業務の実態は清掃なのです。何かしら特殊な清掃が行われているわけではありません。例えば、滅菌作業のようなものは別途発注されているのです。
 この仕様書を見てみますと、コンサルタント業務、環境管理に対する提供、助言、分析、選定等なるものが含まれています。ほとんど意味不明ですが、何とかしてこの業務をただの清掃とはとられたくない意図が透けて見えます。というのも、この業務に至ってはもはや予算の根拠となる積算すらされた様子がありません。したがって、この予算が適切であるとはとても思えませんが、恐らくは極めて高い予算になっているのでありましょう。そのための言いわけとして、また地元業者の参入を阻むため、コンサルタント業務なるものがつけ足されているのではあるまいか。しょせん、清掃に大した特殊事情などありはせず、他の清掃業務との違いは回数とマスクの着用ぐらいのものなのですから。
 とまれ、県の入札制度改革の基本は談合ができなくなる仕掛けをつくることでありましたが、反対に談合がしやすい仕掛けを考えるとしたら、医大のやり方がベストでありましょう。何しろ参加者が毎回同じで2社しかないのですから。果たして県民は、このような事実を知ってなお、この入札が適当であったと考えるでしょうか。
 以前、私は、医大での注射針混入事件を取り上げ、医大の管理のずさんさ、医大の統治のあり方を予算委員会でただしたことがありました。少しは医大の管理もましになり、質問のかいもあったのではないかと思っておりましたが、全く改善されてはいませんでした。
 例えば、昨年、MIDファシリティマネジメントが管理を請け負っている駐車場に人ぷんと思しきものが放置されていたことがありました。何と同社は、この人ぷんを他の場所の清掃を請け負っている業者に処理させているのです。病院の敷地内で放置された人ぷんは感染性のものである可能性もあり、本来、それなりのマニュアルに沿って処理しなければならないはずです。人命にかかわると医大が大見えを切った業務に、この駐車場管理は含まれているのです。
 人ぷんの処理をさせられた会社は、当然、施設管理課へ抗議に行きましたが、何と同課は「民間のことなので民間で処理してください」と言ったそうであります。普通はMIDファシリティマネジメントに始末書を提出させ、感染予防対策委員会に報告し、再発防止策を講じるべきであります。結局、この件について当該業者は何のおとがめもなし。これは仕様書にはない業務をやってもらっているからなのか、施設管理課の怠慢なのか。
 ちなみに、MIDファシリティマネジメントは、わかやま館をことしの3月までの5年間、指定管理者として管理していました。年間の管理料は、驚くなかれ、1億円です。わかやま館は本年から県の直接管理となっていますが、その理由は行政目的を達成できないためとなっています。年1億円も払って行政目的を達せられないとは、県が悪いのか、MIDファシリティマネジメントが悪いのか。
 話を医大に戻しますが、業務を総理すべき理事長にしてから、個人として返還しなければならない金員を大学に立てかえ払いさせているわけですから、職員の規律が緩むのもむべなるかな。このケースでは、大学のお金は一体どのような手続で支出されているのか。常識的には大学の業務に金銭消費貸借があるとは思えませんが、仮に支出の手続に問題がなかったとしても、大学の学長にして理事長である板倉氏がみずからの返還分を大学に立てかえさせたとなれば、彼の良識を疑わざるを得ません。
 地方独立行政法人法によれば、学長は人格が高潔であることが求められています。これはやはり、県立医大のガバナンスについてもう一度考えてみたほうがよいのではないかと思います。議会というくびきから逃れることは、なるほど楽ではありましょう。我々も選挙がなかったらどれほど楽か。知事も我々がいなければどれほど楽か。しかし、楽は堕落への最短距離なのです。
 県立医大は、予算規模からいっても職員数からいっても小さな町以上のもので、学長を兼務する理事長の権限は絶大です。理事は副理事長を入れて4名しかおらず、いずれも理事長が任命するのですから、だれが理事長に物申せるのでしょうか。もし理事長がよからぬ行いをしたら、知事ですらそういうことはあり得たのですから、これをいさめるシステムはあるのでしょうか。
 しかも医大は、県の所管が総務部であるときは総務部長を副理事長に迎え、福祉保健部に所管が移れば福祉保健部長を副理事長に迎えています。これを天下りと言わず何を天下りと言うのか。ついでに言うなら、板倉氏への大学からの金銭貸借の決裁を恐らくはしたであろう元県総務部長の小濱副理事長は、県信用保証協会の理事長におさまっています。まるで笑い話ですが、これをわたりと言わずして何をわたりと言うのか。医大の副理事長は年収1000万円以上ですし、保証協会の理事長の年収も非公開ですが、恐らくはそのくらいはあるのでしょう。全く結構なものです。
 人は、私も含めて間違いを犯す生き物です。しかし、そのときの責任のとり方にこそ人格があらわれましょう。個人として返還すべき金員を自分が学長を務める大学に立てかえさせるとは、どう考えても県民の理解は得られますまい。この件に関する彼のコメントは、次のようなものです。「研究費の不適正支出の件につきましては、長期にわたり県民の皆様に多大の御心配をおかけしました」。あなた、当事者ですよと、思わず突っ込みたくなるではないですか。それこそ人命にかかわるだけに、今のようなガバナンスでは心もとないと感じるのは私だけでしょうか。いずれ大きな問題になるような気がしてなりません。
 そこで、知事にお尋ねします。
 第1点、医大に対する監査報告を受けてどのような感想を持ったか。第2点、不適正支出された研究費の返還金を大学が立てかえたことについて、医大の設置者として、県民の代表として、知事はどう考えるか。第3点、理事長と学長を分離することについてどう考えるか。
 次に、県土整備部長にお尋ねします。
 1億円以上であっても予定価格は公表すべきであると考えるが、いかがか。
 以上お尋ねして、質問といたします。(拍手)
○議長(新島 雄君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 3点お答えする前に、議員御指摘の中で誤解と称するところが2点ありましたんで申し上げておきますと、議会がいないと楽なんてことは思ったことはございません。
 それから、弱者を淘汰させるために予定価格を非公表にしているというつもりは全くありませんで、あれは最低価格の相当域に業者さんが皆集中してダンピング合戦になるということを防ぐためにだけやっていることでございますので、それを申し上げて御質問に答えたいと思います。
 まず第1の点について、監査報告を受けてどのような感想を持ったかという点について一言で申し上げますと、よく言ってくださいましたと、それはよくわかったから徹底的にやらにゃいかんというふうに思いました。
 もうちょっと詳しく申しますと、御指摘の事項につきましては、医科大学の行った入札制度改革、これはちょっと後で申し上げますが、競争性、透明性の確保を図るために実は平成23年度契約分より──改革はもうちょっと前からやっておるんですが──随意契約から総合評価落札方式による条件つき一般競争入札に改め、実施したところではあります。
 この入札制度なんですけれども、その前に、県の入札制度につきましては、私自身が直接指揮をとりましたので、これはよく理解しておりますが、一般競争入札を全面的に導入して、その前提としての資格審査とか、あるいは県内業者優先の原則とか、そういうバランスに配慮してつくったわけでございます。
 実は医大も、これを議論している平成19年、20年度ぐらいに、それまでの制度を少し改めて一般競争入札を導入しようという流れにあったんですが、ただバランスという点では全く県の制度の趣旨を無視してつくっておられまして、しかもそれを外部から批判をされたときに「県の制度をそのまま導入したんでございます」という説明をなさったもんですから、実は県の制度自体が悪評さくさくになりまして、簡単に言うと県の制度というのは県外業者を優先する制度だというような、全くとんでもない誤解が世の中に流布したという非常に苦い経験があります。
 そこで、ちゃんと指導をして直してくださいと、県の制度と言うんだったら県の制度のまま直してくださいというふうに申し上げたんですが、何度言っても直らないので、もう時間が余りにもたつので、多少越権行為だとは思いましたけれども、直接指導をして現在の制度をつくったということで、現在の制度は県の制度と余り変わらないものになっております。
 その制度の中でも、それからその制度ができる前も、随契というのは今でも許されてるし、前はもちろん許されているわけです。ただ、今の制度で言うと随契というのは、ちゃんと理由があって、みんなが納得できるようなものでないといかん、それをしかも公表してやるんだということになっとるわけでございまして、現実に平成11年度から平成22年度までの12年間という長期にわたり、御指摘のように同一業者と随意契約を継続していたということについては、監査委員からの御指摘のとおり随意契約の理由が私はないと思います。適切ではなかったと考えております。
 また、他の事務処理等に関する注意事項等、たくさんございました。これも監査結果を真摯に受けとめて、県なりに原因究明と改善指導を早急に行うようにしておりまして、医大もそれに従ってやってもらわないといかんと思っております。
 今回の監査結果を踏まえて、県といたしましても、本来、監査委員に御指摘いただく前に私どももそれをよく認識して自分たちで先に指導に入っておくべきだったという気もいたしますので、あらゆる業務の再検証を行うなど、ガバナンスの強化に向けた取り組みを強く促すようにしたいと思っております。
 また、こういうことに懲りて、あるいは前から問題意識もありましたので、今年度から理事長、学長との間で直接何でも意見交換をして話し合うというような連絡協議会をつくりまして、結構真摯にいろいろな議論をしているところでございます。その場を通じて必要に応じて助言をしてまいりたいというふうに考えております。
 2番目は、研究費の問題でございます。
 この研究費に関しましては、現実には、例えばポケットに入れるとか何とかというような、そういうレベルではなかったかもしれませんが、いずれにしても不適正経理である、手続に違反しておったということは明らかでありまして、この返還につきましては、平成22年度末までに大学が立てかえて国等に対して返還を完了させました。
 立てかえたことにつきましては、補助金等を活用した研究者個人の研究活動が大学の指導監督のもとで実施されていることや、あるいは今後も片をつけてしまわないと補助金がもらえないというところがございまして、補助金等の支援を受け続けるためには速やかに立てかえて返還を行ってしまわなきゃいかんということで行ったものであると聞いております。今回のそのときの大学の判断は、私はやむを得ないものであったと考えております。
 なお、これもまたちょっと誤解があるかもしれませんが、実はこの立てかえを決めたのは板倉現学長がまだ学長になっておらんときで、南條前学長のときにこういうことでやりたいと思うがどうであるかというふうに私は聞いて、まあしようがないですねというふうに申し上げた経緯があります。それで、意思決定は前のときになされていたということです。
 板倉理事長御自身の返還につきましても、平成22年度中に一括して大学に返済しておりますけれども、大学が一時的ではありますが立てかえたことは、もちろん事実であります。こうした一連の出来事によりまして、県民の方々に不信感を与えたことも事実であると考えております。板倉理事長を初め、大学の方々がこの問題を十分反省し、現在、大学において県民の皆様が安心していただける地域医療の充実や信頼される大学を目指してさまざまな改善策に取り組んでいるところであると理解しておりますし、そうでなきゃいけないわけですから、県としても大学と緊密に連携、協議しながら、必要に応じ適切に助言・指導してまいりたいと思います。
 次に、理事長と学長を分離することについてどう考えるか。
 これは、いろいろ議論のあるところだと思います。理事長・学長一体型、分離型、それぞれにメリット・デメリットがありますが、理事長が学長を兼務する一体型は、教学と経営の円滑かつ一体的な合意形成が可能となる仕組みであって、法人の運営面、大学の教育機能面での整合を図ることができて、理事長のリーダーシップと迅速な意思決定が期待できるという点がメリットだと思います。
 他大学の状況は、国立大学法人におきましては、すべて理事長・学長一体型となっております。医学部を有する8公立大学法人においては、公立大学法人横浜市立大学、2大学を設置する──これは2大学から1つできているという意味ですが──これを設置する京都府公立大学法人以外は理事長・学長一体型となっております。
 議員御指摘のように、35名の処分者に現理事長板倉教授が含まれていたということは大変残念なことであります。これについては、きょう御説明しませんが、私もそういうことの弊害を指摘して大学人の意識を覚せいさせようとしたところもありますが、現在は大学人が一致団結して、板倉理事長のもと、全学を挙げて地域医療の充実等さまざまな改善に取り組んでおりますので、こうしたことから制度としては学長が理事長を兼ねるということが今のところ妥当と考えており、問題が生じないようにむしろその外から設置者たる県がその経営の中身をよく知悉して、必要に応じて指導していくのがよいのではないかと相対的には思っております。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長森 勝彦君。
  〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 予定価格の公表についての御質問にお答えいたします。
 平成20年6月から導入いたしました新公共調達制度におきまして、予定価格はすべて事前公表しておりましたが、最低制限価格の類推がより容易になり、適正な見積もりを阻害して過度の低入札を招く要因になることが懸念されたため、平成20年12月から予定価格1億円以上の工事について事後公表としております。
 議員お話しの予定価格の事前公表については、建設企業の見積もり努力を損なわせる弊害があり、またダンピングを助長するおそれがあることから、好ましくないものと考えております。
 なお、議員からお話しいただいた各点には勉強すべきところもあると考えておりますので、今後検討してまいります。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 再質問を許します。
 3番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 予定価格なんですけど、これ、やっぱり漏れてるとよく言われるんですよ。選挙するとあちこち行きますから、本当に多くの方々と接するんですけど、それぞれの同僚議員の方もそういうことを恐らくお聞きになったのではないかと私は思うんですけど、やっぱり隠してるから漏れてると言われるんですね。
 だから、今部長がおっしゃった、隠すことによるメリットと隠してることによって何か県がうさん臭いと思われるデメリットを考えたら、私は、今はあけても、それほどダンピングやそんなにならんために低入制度もあれば最重点の制度もつくったわけですから、そんなにダンピングにならんと思うんですよ。
 だから、これは引き続き議論のあるところだと思いますけれども、研究をしていっていただきたい。そして、少なくとも、世間から漏れてると思われてるというふうに部長も思っていただきたい。恐らく知事は、選挙をなさったから、そんなことを聞かれた──知事は敷居高いからぽっとみんな言わないかもわかりませんけどね──そういうことをお聞きになったかもわかりませんけど、部長もたまに県民の中へ分け入ってざっくばらんに──余り会議の席ではこんなこと言わないかもわかりませんよ、皆さん。だけど、割り勘で飯食うとったら、「いや、漏れてるで、部長」というところを言われるかもわからない。そういうところにやっぱり県民が日ごろ思っている気持ちというのがあらわれると思うんですよね。行政はそういうのをやっぱり多少酌み取らなければいけないのではないかと思います。
 それから、医大の不適正支出の件については、決裁は前の学長のときに行われた。そうなんでしょうね、知事がおっしゃるんですから。しかし、そうでなるならば、板倉さんは自分の分についてはやっぱり自分で返さなければいけなかったと思いますね。学長に就任することはわかっているわけですから。それぐらいのトップとしての見識というのがあってしかるべきであったのではないかと思うんですね。この点につきましては法律的にどうなのか、もうちょっと僕も勉強したいと思います。
 例えば、県で同じようなことがあって、国から交付金もらえやんから、とりあえず県で職員が不正に空出張やったやつを返しました、後で職員から返してもらいます、そんな話が成り立つとは到底思えないし、厳格な仁坂知事のことですから、そんなこと許すとはとても思えないんですね。そういうことで、わずか数年前に県の一機関であったときは、とてもそんなことは起こり得なかったと思うのが、独法になったがためにいろんな問題が出てきたと。一度立ちどまって、果たしてこの独法が成功だったかどうかという議論もまたしていかなければならないと思います。
 以上、意見を申し述べまして、質問を終わりたいと思います。
○議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 議案第74号から議案第91号までは、お手元に配付しております議案付託表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。6月27日及び28日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、6月27日及び28日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、6月29日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時44分散会

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