平成23年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


県議会の活動

平成23年6月
和歌山県議会定例会会議録
第5号
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議事日程 第5号
 平成23年6月24日(金曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第74号から議案第91号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 請願の付託
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会議に付した事件
 第1 議案第74号から議案第91号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 請願の付託
 第5 休会決定の件
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出席議員(42人)
 1番 森 礼子
 2番 立谷誠一
 3番 尾崎太郎
 4番 藤山将材
 5番 新島 雄
 6番 山下直也
 7番 門 三佐博
 8番 井出益弘
 9番 濱口太史
 10番 鈴木太雄
 11番 服部 一
 12番 川口文章
 13番 山田正彦
 14番 坂本 登
 15番 宇治田栄蔵
 16番 尾崎要二
 17番 山本茂博
 18番 平木哲朗
 19番 前芝雅嗣
 20番 浅井修一郎
 21番 中村裕一
 22番 冨安民浩
 23番 岸本 健
 24番 中 拓哉
 25番 花田健吉
 26番 角田秀樹
 27番 吉井和視
 28番 向井嘉久藏
 29番 谷口和樹
 30番 多田純一
 31番 片桐章浩
 32番 藤本眞利子
 33番 浦口高典
 34番 大沢広太郎
 35番 谷 洋一
 36番 岩田弘彦
 37番 高田由一
 38番 奥村規子
 39番 山下大輔
 40番 松坂英樹
 41番 長坂隆司
 42番 雑賀光夫
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
 知事         仁坂吉伸
 副知事        下 宏
 知事室長       野田寛芳
 国体推進監      中村正次
 危機管理監      宇恵元昭
 総務部長       米澤朋通
 企画部長       柏原康文
 環境生活部長     保田栄一
 福祉保健部長     鈴木敏彦
 商工観光労働部長   大門達生
 農林水産部長     増谷行紀
 県土整備部長     森 勝彦
 会計管理者      米山重明
 教育委員会委員    山下郁夫
 教育長        西下博通
 公安委員会委員    片山博臣
 警察本部長      山岸直人
 人事委員会委員長   守屋駿二
 代表監査委員     楠本 隆
 選挙管理委員会委員長 諸木良介
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       森田実美
 次長         佐本 明
 議事課長       堀 達也
 議事課副課長     吉田政弘
 議事班長       中井 寛
 議事課主任      中尾祐一
 議事課主査      保田良春
 議事課主査      中村安隆
 総務課長       上坊 晃
 調査課長       谷村守彦
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  午前10時0分開議
○議長(新島 雄君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第74号から議案第91号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 38番奥村規子君。
  〔奥村規子君、登壇〕(拍手)
○奥村規子君 おはようございます。4日目で最初の質問をさせていただきます。
 議長のお許しを得ましたので、通告に従って一般質問に入らせていただきます。
 今回は、4点にわたって質問をいたします。
 まず最初に、産業廃棄物最終処分場の問題についてお伺いをいたします。
 最終処分場には、管理型、遮断型、安定型の3つの種類がございます。安定型最終処分場は、そのまま埋立処分しても環境保全上支障のないとされる廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・陶磁器くず、瓦れきを埋立処分するもので、遮水シートを設ける必要がなく、素掘りの穴に埋め立てるものです。廃プラスチック類や金属くず、建材廃材などに含まれている有害物質や安定5品目に紛れて持ち込まれる有害物質が雨水や地下水中に溶け込み、地下水汚染や土壌汚染などの環境汚染をもたらすおそれがあります。
 有害物質等を処分する管理型処分場については、遮水シート等の破損や汚水施設の不備などから地下水汚染をもたらすおそれがあります。また、有害物質を外部から完全に遮断するとされる遮断型処分場も、地盤が軟弱な土地や活断層があるような場所に設置された施設の場合には、周囲の囲みや堰堤、コンクリート層などの破損等により有害な廃棄物が地下や公共用水域に流出するおそれがあります。
 このように、最終処分場はいずれも決して安全な施設とは言えないのが実情です。全国各地で産廃の施設が周辺の環境を汚染している問題や処理施設建設の是非をめぐって業者、行政、住民の間で紛争が絶えません。
 県は、これまで、12カ所の安定型処分場を許可してきました。そのうち10カ所は紀の川市につくられています。さきに述べたように、さまざまな環境汚染を引き起こさないため、許可する際の審査、適正処理への監視での県の責任が厳しく問われるところです。この点で、今回、不法投棄によって処分場設置許可を取り消した紀ノ川産業の問題について、それがどうだったのか、お聞きしたいと思います。
 現状は、皆さんのお手元に配付させていただいています。それは、2枚目には地図をつけさせていただいていますが、粉河寺の北のほうに位置をしています。少し小高いところから撮らせていただいています。写真のように野ざらしの状態で、周辺には悪臭が感じられました。いっときは非常に悪臭が強かった、きつかったということもお聞きいたしております。そういった現状を踏まえて、知事にお尋ねをいたします。
 産業廃棄物処理についての県の基本的な考え方、具体的には第2次和歌山県廃棄物処理計画の成果と問題点についてどのように認識されているのか、今つくられつつある平成23年度からの計画について、それらを踏まえてどのように生かしていくのか、基本的見解をお聞きいたします。
 さらに、産廃処分場計画について周辺の住民の同意をどう考えるか。御坊市からは、また和歌山市の住民の方から、紀ノ川産業のことでは、また周辺の住民の方から不安の声を聞いていますが、知事としてはどのように受けとめておられるのか、お尋ねいたします。
 次に、3点にわたって環境生活部長にお聞きいたします。
 写真の、取り消し処分を受けた紀ノ川産業の処分場、野ざらしの状態で、皆さんにごらんいただいている写真のように大変。和歌山県は観光を振興していく、そういった中で農免道路にすぐ間際に接したところとなっています。そういった中で、今回、紀ノ川産業の取り消し処分に至った問題と県の監督責任をどのようにとらえているか、申請許認可での問題、許可品目以外の混入物防止策、維持管理の実施状況などどうであったか、お答えしていただきたいと思います。
 次に、紀ノ川産業に対する今後の対応についてお聞きいたします。県が業者などに対し告訴した裁判の現状はどうなっているのでしょうか。埋立地の処理など、どのように考えているのか、また、取り消し処分の2月以来、廃プラなど野ざらし状態の対策に県はどのようにめどを立てられるのか、お聞きいたします。
 3つ目は、和歌山市に県内最大の最終処分場、紀の川以北の滝畑、上黒谷地域に建設計画の報道がありました。そのような計画はありますか。住民不安にこたえる点からどのように把握し、和歌山市との連携をどのように進められるのか。
 以上、3点にわたって環境生活部長、お答えいただきたいと思います。
 2点目は、介護保険法改定についてお尋ねをいたします。
 先日、極めて短時間の国会審議で介護保険法改定案が成立いたしました。法改定は、要支援と認定された軽度者への介護サービス切り下げを打ち出しています。介護予防・日常生活支援総合事業を創設し、市町村の判断で要支援者のうちの一定部分をこの総合事業に移すことを可能にしています。
 総合事業にはサービスの質を担保する基準がなく、専門職以外に担わせて費用を低く抑えられる仕組みになっているのではないでしょうか。国は、将来、軽度な方を介護保険から完全に外す方向を検討しているように思います。総合事業はその第一歩と考えられます。
 また、介護保険を重度者向けに重点化することで、医療から介護へ、入院から在宅への流れを進めるものです。長期療養患者が入る介護療養病床の廃止については、廃止期限を2017年度末まで6年延長するものの、病床を維持するのではなく、報酬を減らして廃止を進める方向です。
 在宅での重度者の受け皿として法案に盛り込まれたのが、巡回型訪問介護・看護です。これを高齢者住宅とセットで整備すれば、特養ホームの待機者解消も図れるとしています。しかし、今でも介護、看護の人材不足で現場は困っています。新設される巡回型訪問介護・看護が成り立つか、疑問に思うところです。
 特別養護老人ホームには、低所得者向けに食費と居住費の軽減がありますが、高齢者住宅には家賃補助もなく、低所得者は入れません。これでは、病院から押し出されて特養待ちで入れない高齢者の在宅生活の安心は保障されません。私は、法案は国にとって安上がりな医療・介護の提供体制をつくるものとなっていると思います。
 そこで、お聞きをいたします。
 県として、来年からの介護保険法改定をどのように受けとめておられるのか、また、介護予防・日常生活支援総合事業の創設による利用者や事業者への影響をどのように考えているのか、また、介護・看護の人材の不足している中で人材確保の取り組みについて、福祉保健部長にお尋ねをいたします。
 3点目は、高過ぎる国保料(税)の滞納者への対応の問題についてです。国民健康保険料(税)が高過ぎる問題です。
 保険料(税)の滞納世帯は、全国で436万人、県内では2010年6月1日時点で3万261世帯、加入世帯の16.8%となっています。国民健康保険では、失業者、年金生活者など低所得者の加入者の割合がふえてきています。それらの人を含めて国民全員に法的に医療を保障するのが国保制度です。もともと国が財政責任を果たさなければ成り立たない制度ですが、国は国保への国庫負担割合を減らして保険料を高騰させ、今は支払い能力を超える高さになっているのではないでしょうか。
 しかし、国は、国庫負担をもとに戻すことをせず、2005年の通達では収納率向上に向けて滞納者の保険証取り上げ、財産調査の実施、預貯金・給料・生命保険の差し押さえなどを例示して、市町村に保険料(税)滞納への制裁へ徴収対策のみ強化の号令をかけました。この後、全国的に滞納への差し押さえが広がりますが、和歌山県内の市町村で実際差し押さえがふえてきたのは、2006年、地方税回収機構設立が契機となっています。
 和歌山は、全国的に先駆けて地方税回収機構をつくり、国保料(税)の滞納も対象に含めました。住民の医療保障に何ら責任を持たず、徴税だけを機械的に行う回収機構に市町村職員が派遣されて、回収機構で差し押さえ、財産調査、公売等の滞納処分の業務を繰り返し行い、そのことで住民の生活を全く無視した滞納処分のノウハウを習得するわけです。市町村で担当しているときは、滞納者の督促をしても払えないと分納などの相談に乗り、また生活そのものの支援を考える仕事をしていた職員が、このノウハウを習得し、その後、自治体に戻ってからそのノウハウを自治体に持ち込む、自治体でも当然のように差し押さえしていく、こういう仕組みになっています。
 例えば、橋本市では、国保税の滞納世帯に対し2009年度、212世帯が差し押さえられました。中には、パート代金として1カ月分の7万円が振り込まれると預金として全額差し押さえられた、障害のある人が生活苦で親戚に頼み込んで振り込んでもらった5万円も預金ということで差し押さえられた、振り込まれた給料の全額18万円が差し押さえられたというケースもあります。給料のうち生計費は差し押さえが禁止されていますが、振り込みされた場合は預金とみなして差し押さえる、そういう脱法的なことがやられています。
 岩出市では、2008年度は2件、21万円、09年度、27件、280万円、10年度、141件、3800万円と、差し押さえ件数・金額とも急増しています。和歌山市では、2009年度、159世帯を差し押さえしました。財産調査したのは570世帯、うち350世帯が3カ月短期保険証の世帯で、苦労しながら分納している人々をねらい撃ちした調査でした。老後のために民間保険で積み立てている個人年金を差し押さえようとし、この人からの抗議で差し押さえを撤回しています。海南市は、2008年度、預貯金差し押さえは439件に上っています。住民税などの滞納も、生活実態を見ないで強権的に差し押さえることは問題です。
 さらに、国保料(税)は税以上に低所得者に重い負担となっており、余計に深刻な問題となっています。税金は、生計費は非課税となりますが、国保料はそうではありません。和歌山市の2010年度国保料率で見ますと、年金収入180万円、夫婦2人暮らしの方、所得税、住民税は非課税ですが、国保料は2割減免で11万1930円です。3人世帯で所得が100万円ですと、税は非課税ですが、国保料は2割減免で22万3830円です。こうした国保料は、支払い能力を超えるものではないでしょうか。それが払えないで滞納したとき、機械的に差し押さえし滞納処分することは、国税徴収法にもありますが、生活に困窮する場合は差し押さえてはならないとする規定にももとるものではないでしょうか。
 県は、昨年、年末につくった国保広域化等支援方針では、収納対策について機構が実施している3カ月の短期スタッフ職員制度、併任派遣制度やコンサルティング制度を活用し、各市町村担当職員の徴収技術の向上を図るとしています。これは、市町村に回収機構のやり方を広げて、こうした機械的な滞納処分をさらに一層進める方針ではありませんか。
 こうしたことから、福祉保健部長にお尋ねいたします。3点についてお聞きいたします。
 1つは、国保広域化等支援方針は、さきに述べた収納対策を進めるとともに徴収率目標を定め、市町村の一般会計からの法定外繰り入れをやめること、国保会計赤字の解消年度を明確にすることなどを決めています。この広域化等支援方針について、どうお考えでしょうか。
 2つ目は、地方税回収機構のやり方を市町村に広げるやり方はやめるべきではないでしょうか。この間、市町村でふえてきている生活を脅かすような差し押さえを中止するよう指導すべきではないでしょうか。
 3つ目は、住民の生活実態をよく聞き、親身に対応する収納活動に転換すべきではないかと思います。
 以上、福祉保健部長、お答えいただきたいと思います。
 最後に4点目は、要援護者の避難についてお尋ねいたします。
 未曾有の大災害となった東日本大震災と東電福島原発の重大事故から3カ月半近くたちました。被災された皆さんに、本当に心から深い哀悼とお見舞いを申し上げます。被災された皆さんにとって、迫り来る大津波の恐怖や言い尽くせない深い心の傷など、言葉にさえ出せない状況がまだまだ続いています。県民の皆さんも心を痛められていることと思います。私自身、大きな、大層なことはできませんが、被災地に少しでも心を寄せながら、私たちのまち、我がまちの防災と福祉のまちづくりを皆さんと御一緒に一歩一歩実現していくために頑張ってまいりたいと思います。
 さきの、松坂県議や高田県議が被災地に物資など届けボランティア活動に参加する、そういった質問の中でもお話がありましたが、一緒に私も参加をさせてもらいました。片道20時間、往復2500キロ、行き先は岩手県大船渡市と陸前高田市でした。まちごと流された光景は、目の前にあってもなかなか受けとめられませんでした。その反対に、向こうに見える海の静けさが、余計にあの大震災を信じられなくさせていました。
 しかし、1日だけですが、社協のボランティアセンターを通して大船渡市北小学校の避難所のお世話係を担当させていただき、地元の方々のお話を伺う中で、大津波の恐怖が伝わってきました。その中で、「とにかく逃げることが大事」と言われた言葉がとても印象的でした。その皆さんのさまざまな思いを荷台に積み込んで、和歌山に戻ってまいりました。
 そこで、まず、2010年度6月議会でも質問させていただきましたが、避難体制の問題について取り上げさせていただきたいと思います。
 県の地域防災計画震災対策の策定計画は、東海・東南海・南海地震同時発生、2つ目は中央構造線による地震、3つ目は田辺市内陸直下の地震を想定しているものです。この想定についても見直しの検討が進められていますが、要援護者の避難の課題は県全体で取り組まなければならないと、今回の東日本へ行かしていただいて痛感をしてまいりました。
 そこで、この課題を進めていくためにも、まず知事にお尋ねいたします。
 障害がある方が、災害時だけでなく日常の暮らしの中で絶えずお世話になったときや手を煩わすような場面で、済みませんという気持ちを持ったり、「済みません」という言葉が口についています。障害があっても普通に暮らせる社会のあり方、そして福祉が行き届いていること、それが災害に強いまちづくりになるのではないでしょうか、知事のお考えをお聞かせください。
 次に、福祉保健部長に2点お尋ねいたします。
 災害に際して、どのような障害があっても、だれもが必要な情報を得ることが必要です。東日本の大震災時に当県においても避難指示、避難勧告が出されましたが、そうした情報の伝達手段はどうなっているのでしょうか。
 3つ目には、震災時に迅速、的確な対応を図るための体制整備については、市町村の要援護者の把握状況や避難支援プランの策定状況が、一層進めていかなければならないと思います。その点についてお聞かせください。
 以上、第1回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(新島 雄君) ただいまの奥村規子君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、第2次和歌山県廃棄物処理計画の成果と問題点及び次期計画の課題と対策についてお答え申し上げます。
 平成19年3月に、第2次廃棄物処理計画を策定いたしました。廃棄物の排出量の抑制と再生利用率の向上及び最終処分量の減量化について、平成22年度の数値目標を掲げた取り組みを推進し、また、県内における廃棄物処理施設の確保、不法投棄対策等の推進、災害廃棄物処理体制の構築等に取り組んでまいりました。
 数値目標につきましては、再生利用率と最終処分量は目標を達成していない状況にありまして、廃棄物の排出抑制、再使用、再生利用という3Rの取り組みをより一層推進していく必要があると考えております。
 今後、課題を整理した上で、循環型社会を構築するために必要な施策をまとめ、次期計画を策定してまいりたいと考えております。
 次に、廃棄物処分場であります。
 廃棄物処分場は、適正に排出物を処理・処分するということが原則であります。これは排出事業者が法規制をきちんと守ってもらわんといかんのでありますが、その上で本県では廃棄物最終処分場が不足しているために、県内に最終処分場を確保する必要があると考えております。
 最終処分場の確保に当たっては、県民の生活環境の保全を図り、住民の意見を聞きながら廃棄物処理法にのっとり対応してまいります。
 次に、災害に強いまちは福祉が行き届いたまちであるということについてということであります。
 災害に強いまちは、単にハード面を強化することだけでつくられるものではなくて、地域における住民同士の支え合いや助け合いなど、ソフト面の充実が相まってつくられるものであると考えております。
 地域にはさまざまな課題を抱えた住民が生活しており、だれもが安心して自分らしい生活を送るためには、支援を必要としてる住民を決して見逃さずに適切な支援につなげていくことが求められます。
 このため、県では昨年3月に地域福祉推進計画を改定し、住民、地域で活動する多様な組織、行政が主体的に連携する新しい支え合いの仕組みを地域に構築することにより支え合いのふるさとづくりを推進しており、昨年1月からは地域見守り協力員制度というのをつくりまして、これにも取り組んでおります。こうした取り組みは、平時のみならず災害時にも力を発揮するものと思いますし、逆に、災害時要援護者の避難支援プランの作成を通じて要援護者と避難支援者との関係ができて、日ごろから要援護者の見守りが行われることもあると思います。
 ただし、特に津波の避難には時間の概念が大変でございます。そういう意味で、家族とか近くの人が助ける仕組みをこの際つくっておくということが大事であります。要援護者の避難対策は、防災・減災対策の中でも重要な位置を占めるものであり、地域福祉を推進することにより要援護者の避難対策がより充実したものとなるように、市町村と連携しながらしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 産業廃棄物の関係の紀ノ川産業につきまして、一括してお答えを申し上げます。
 紀ノ川産業に係る産業廃棄物処理施設の設置許可及び処理量の許可につきましては、廃棄物処理法の許可基準に基づき施設及び事業者の能力等を厳格に審査し、許可したところであります。許可後においては、許可品目以外の廃棄物の混入を防ぐための展開検査の徹底や浸透水の水質管理などの指導及び監視を適切に実施してきたところでございます。
 こうした中、事業者が産業廃棄物を不法投棄したことにより、不法投棄の行為者に対して直ちに告発を行い、許可の取り消し処分を行ったところです。
 今後は、産業廃棄物処理法に基づき、不法投棄した廃棄物の撤去及び処分場における廃棄物の飛散防止や悪臭対策など、事業者等に対し必要な措置を命じ、県としても地権者等と協議しながら生活環境の保全に努めてまいります。
 なお、裁判の状況については、現在審理が進んでいるところであります。
 次に、和歌山市に県下最大の最終処分場が計画されていることについてでございますが、和歌山市において産業廃棄物最終処分場の計画があることは承知しております。当処理施設の設置については、廃棄物処理法上、許可権は和歌山市にあります。この計画は県内における産業廃棄物の処理体制の構築に大きく影響するものであると考えられますので、県としても情報収集に努めてまいります。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 福祉保健部長鈴木敏彦君。
  〔鈴木敏彦君、登壇〕
○福祉保健部長(鈴木敏彦君) 何点かの御質問のうち、まず介護保険法の改正についてお答えをいたします。
 改定された新介護保険法をどのように受けとめているかについてでございますが、今回の介護保険法改正の主な内容といたしましては、高齢者が介護が必要な状態になっても可能な限り地域で暮らし続けられる地域包括ケアシステムの実現のため、在宅生活を24時間対応で支える定期巡回・随時対応型訪問介護看護や、訪問看護と小規模多機能型居住介護を同一の事業所で運営できる複合型サービスなどの新たなサービスが設けられております。
 また、市町村の介護保険財政の不足に備えて県に設置されている財政安定化基金の一部を取り崩して保険料軽減に活用可能とするなど、保険料上昇抑制策も盛り込まれているところです。
 今回は制度の大きな改正ではございませんが、地域包括ケアシステム構築に向けた取り組みを進めるため、県といたしましても積極的に対応してまいりたいと考えております。
 次に、介護予防・日常生活支援総合事業の創設による利用者、事業者への影響についてでございますが、当事業は今回の介護保険法改正で新たに創設されたもので、要支援の方を対象として、市町村の判断により、利用者の状態や意向に応じて介護保険の予防給付、または新たな介護予防、日常生活支援の総合サービスを提供します。
 詳細についてはまだ国から示されておりませんが、当事業の実施により利用者に対するサービスが低下したり、小規模な事業所の経営等に影響が出ないように配慮することを市町村に指導、助言をしてまいりたいと考えてございます。
 次に、介護・看護人材の確保の取り組みについてでございますが、これまで新規就業を支援する事業や就職相談会、介護体験教室などを実施するとともに、専門的な研修を充実させることで良質なサービスを提供することはもとより、介護職員が仕事にやりがいを感じ、職場に定着できるよう支援しているところです。
 また、あわせて介護職員の処遇改善のため、平成21年度から国の介護職員処遇改善交付金を活用し、賃金引き上げのための資金を交付しておりますが、今年度限りの措置となっていることから、来年度以降も引き続き実施されるよう国に対して要望しているところです。
 また、看護職員の確保につきましても、第7次看護職員需給見通しの状況を踏まえ、養成力の確保、就業促進、離職防止、資質向上を柱として量及び質の両面にわたる確保対策を進めているところです。
 いずれにいたしましても、県としましては、介護と看護人材の不足が続いていることから、県内事業者や関係団体等と連携しながら、人材の確保により一層取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、高過ぎる国保料滞納者への対応の問題についての御質問のうち、まず市町村国保の広域化についてですが、国民健康保険には、小規模な町村では保険財政が不安定になりやすいこと、また市町村ごとに保険料が大きく異なり被保険者間に不公平があるという問題があります。
 平成22年12月、県では、市町村国保の事業運営の広域化等により保険財政の安定化、保険料の平準化等を推進するために市町村国保広域化等支援方針を策定いたしました。しかし、市町村国保には高齢者や低所得者が多く、財政基盤が脆弱であり、所得と比べて保険料が高いという構造的な問題があります。
 県といたしましては、国の責任でこの問題を解決し、国庫負担による保険財政基盤強化策等の一層の充実を図るよう、他府県と連携しながら引き続き国に働きかけてまいります。
 次に、国保料の滞納処分のやり方についてと収納活動について、一括してお答えいたします。
 保険料の収納確保は、保険制度を維持する上で、また被保険者間の負担の公平を図る観点からも重要な課題となっております。県としましては、滞納者の収入や生活状況等を把握し、必要に応じて保険料の分割納付や減免を行うなど、きめ細かな納付相談を行うよう市町村を指導しています。
 このような取り組みの上で、所得や資産等があるにもかかわらず保険料を納付する誠実な意思が認められない者については、地方税法と国税徴収法の例により、市町村が滞納処分を実施しています。滞納処分については、国保料と住民税、その他の税目で異なる運用が行えるものではなく、市町村が公平、公正に実施しているものと理解していますが、県としましても、国保料に係る差し押さえ等の状況について把握に努めてまいります。
 最後に、要援護者の避難についてですが、要援護者に対して災害時に必要な情報を伝達するための媒体としましては、防災行政無線、ラジオ、テレビを初め、防災わかやまメール配信サービス、ファクス等がありますが、要援護者の体の状態等により対応できる媒体が異なってきます。また、より早く確実に伝達するためには複数の媒体を活用することも必要となりますが、携帯電話等の機器の保有状況、また停電時にも対応可能か等を考慮すれば、最終的には要援護者1人1人の避難支援プランを作成し、だれがどのような流れで、どのような方法で、どういうことに留意して情報伝達を行うのかを定めておくことが最も重要であると考えております。
 次に、災害時に迅速、的確な対応を図るための体制整備につきましては、平成19年の国からの通知に基づき、平成20年6月に和歌山県災害時要援護者支援マニュアルを策定し、市町村において避難行動要支援者の登録及び避難支援プランの作成を進めるよう働きかけてきたところです。その結果、平成21年3月末現在、個別計画の作成に着手していた市町村は13市町にとどまっておりましたが、本年4月1日現在では26市町で作成に着手しております。
 また、このたび県内市町村における要支援者の登録の状況を調べたところ、現在、要支援者の登録者数は約1万8000人で、うち約3割の方について個別計画が作成されております。
 県といたしましては、全市町村において要支援者の登録及び個別計画の作成を早急に進めるとともに、民生委員、児童委員初め地域住民の協力を得ながら、さらなる要支援者の把握を促進するよう引き続き働きかけてまいりたい、このように考えてございます。
 以上です。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ございません」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 再質問を許します。
 38番奥村規子君。
○奥村規子君 答弁をいただきました。要望と再質問をさせていただきます。
 要望については、高過ぎる国保料滞納者への対応の問題で、先ほど福祉保健部長のほうから、実態をまず見ていただく、そういった答弁をいただきました。ぜひ各市町村に、徴収の仕方や、また住民の方のそういった思いも含めて、ぜひ実態調査をしていただきたいと思います。生存権を損なうような差し押さえ、そういったことになっていないか、そのこともあわせてよろしくお願いしたいと思います。
 また、要援護者の避難についての問題です。
 知事も先ほど申されましたが、地域福祉が非常に大事であると。そのことが、私も、援護者の避難についていろんな情報伝達が機械的にできたとしても、本当にお1人1人を災害から救える、そういった体制にどうしていくのか、そのことが非常に大事なことだと思い、質問をさせていただきました。
 そういった中で、今ざっと、障害のある方が手帳を持たれている、また65歳以上の人が何人いらっしゃる、そういった援護が必要な方がどれだけいらっしゃるのか、そのことをお伺いしたら、重複している障害の方もありますが、10万人近くいらっしゃるということもお聞きしています。重複されている方や年齢的にも障害があっても65歳以上、そういった方も含めてでも10万人近い7万人、8万人いらっしゃるのか、そういった全体的な状況もぜひつかんでいただきたいと思います。
 そういう中で、施策としてやはり福祉が行き届いたまちをどう進めていくのかを、ただ単に福祉部門だけでなく、県庁全庁挙げてそういった位置づけの中で進めていただきたいと思います。これは要望です。
 1番目の産業廃棄物最終処分場の問題について、質問を何点かさせていただきたいと思います。
 知事が答えてくださった中で、1つは答弁の中で、産業廃棄物は排出事業者の責任において適正に処理・処分することが原則ということだと思うんですが、「排出事業者」と言われたのかどうか、そこのところをちょっと確認をしたいと思いますが、後ほどよろしくお願いします。
 この答弁の中で、市の計画が──和歌山市の関係ですが──和歌山市の計画については承知をしているという答弁でした。この許可権については和歌山市にあるのは私もわかってるんですが、その計画について、県内における産業廃棄物処理体制の構築に大きく影響するものという答弁でしたので、しっかりとぜひ対応を県としてもやっていただきたいなと思います。
 また、紀ノ川産業の対策については、めどが明確に示されていなかったように、不十分な答弁だったと思います。その点で何点か、再度質問をさせていただきたいと思います。
 紀ノ川産業は、ごらんのように、皆さんのお手元にありますように、野ざらしの状態にあります。先ほどの答弁をお聞きして感じたことですけど、許可時点では、もちろん事業者には欠格者ではない方々のもとで進められたと思います。しかし、先ほどの「今裁判中です」という状況の報告しかありませんでしたが、なぜこのようなことに至るのか、その点で明確に答弁がなかったと思います。その点で再度答弁をよろしくお願いしたいと思います。
 この第2次計画の実行中に起こった問題点は、これからもまた起こり得ることではないかと思います。こういったことをどうやってクリアしていくのか、その点でお聞きしたいと思います。
 また、今の紀ノ川産業の野ざらしの現状は、本当に住民にとっても、観光を進める和歌山県にとっても非常に問題だと思うんです。地域環境にとって深刻な事態だと私は受けとめています。住民生活と環境を守ることが第一の責任だと思いますが、この点について知事はどのように臨んでいかれるのか、再度質問をしたいと思います。
 また、野ざらし状態の解決に向けて、県行政としての対応について2つの点でお伺いいたします。
 1つは、捜査の進展を見守りつつも、事業者らに改善命令を県として求めることは当然だと私も思います。その間、野ざらし状態には何ら手をつけず、放置し続けることになりますが、これで監督責任を果たしていると言えるのでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。
 2つ目は、事業者らが改善命令に従わない場合、その先は県としてどうしていくのか。行政代執行も当然視野に入っていると思いますが、そういった点で責任ある答弁をよろしくお願いいたします。
 以上です。再質問、よろしくお願いします。
○議長(新島 雄君) 再質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員の御質問がだれに対してなされたものかちょっとよくわからなかったので、推測でお答えさせていただきます。
 まず、産業廃棄物は排出事業者が責任、原則というようなところを正確に言えということだったと思うんですが、私が申し上げましたのは、今議員がお口になされたこととちょっと違いまして、申し上げたことをもう1回言いますと、「産業廃棄物は適正に処理・処分することが原則であります。排出事業者が法規制をきちんと守ってもらわないといかんわけであります」というふうに申したわけであります。「その上で」と言って次に続けたわけであります。
 それから、明らかに知事答えなさいと言われたことにつきまして申し上げますと、野ざらし状態というのはよくないのは当然であります。そのために我々は原状回復命令を課したりして、一日も早くこの状況を脱すると、きちんともとに戻す、正しく戻すということが大事だというふうに思います。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 私が先ほど御答弁申し上げた中で、不十分であるじゃないかということ、今ちょっとお話を聞いた中でなんですけれども、一応、紀ノ川産業についての県の責任ということにつきましては、問題が起こればその都度指導し、また行政処分など実際に行ってまいりましたので、それについてはその都度その都度、適切な処理をやってきたものというふうに考えてございます。
 そしてまた、今後なんですけれども、先ほど県の代執行的なお話も出たかと思うんですけれども、それにつきましては現時点ではそういうことを軽々しく考えてはおりません。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「はい」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 再々質問を許します。
 38番奥村規子君。
○奥村規子君 私はやっぱり野ざらし状態を早くどういうふうに覆土していくのか、そのことの問題なんですけれども、その点で何が問題になっているのか、そのことをもっと明らかにしていかなければいけないと思っています。
 そういう中で、この事業所を許可するときに、書類や審査や、いろんなことが適切に行われてる、そうやって許可されてきたわけだと思うんです。その後に、こういった不法投棄。また、この間、適正に指導してきたと言われましたが、この紀ノ川産業に対しては行政指導として今まで8回されてきています。そして改善命令も出されてきたわけですが、こういった中で、県がこのような状況の中でどう監視や指導をしていくのか。そういったことがなかなか県民、私たちに明らかに、安心できる、そういったことになっていないのではないかと、この間、答弁も聞かせていただいてそう思っています。ぜひ今度の、次の23年からの計画についても、その点でお考えをいただきたいと思うんですが。
 この中で、紀ノ川産業の野ざらし状態を、どう県民にとっての安全・安心にしていくのかという点で、本当にまだはっきりとした答弁でなかったと思います。こういった答弁も極めて無責任だなと私は感じています。ああいった中で、ぜひ住民の皆さんもこれから安心できるように今度の第3次計画でどうするのか、ぜひ考えていただきたいと思います。
 これを強く要望いたしまして、私の再々質問を終わらせていただきます。
○議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で奥村規子君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番立谷誠一君。
  〔立谷誠一君、登壇〕(拍手)
○立谷誠一君 おはようございます。
 さきの統一地方選挙で、西牟婁郡選挙区より選出をいただきました立谷です。どうぞよろしくお願いいたします。議員の皆さん方には、今後とも御厚情、御指導賜りますようお願いを申し上げます。
 また、今回、早速この一般質問の壇上へ立たせていただきましたこと、議長、それから先輩の議員の皆さん方、そして関係者の皆さん方に深く感謝と御礼を申し上げたいと思います。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、6月21日より始まった一般質問で登壇されました各議員の皆さん方が述べられておられましたが、去る3月11日に発生をいたしました東日本大地震とそれに伴い発生した巨大津波により、多くの方々の生命と財産が奪われてしまいました。改めて、御冥福と復興の一日も早からんことを祈念を申し上げるところでございます。
 それでは、本題に入らせていただきたいと思います。
 まず1点目ですが、過日国より発表のありました今後25年後の和歌山県人口の予測数値に関してでございます。
 発表によりますと、今後四半世紀で約27万人の減少になるとのことでありました。27万人とは、和歌山県土に置きかえてみますとどんなにすごい数字であるかがよくわかります。何と由良町、日高町、それから御坊市から南の地方、田辺市や新宮市まですべての市町村の全人口に匹敵した数になります。由良町から南の市町村の人々がすべていなくなった数字なのです。直近の県民人口は約99万人ですから減少率は27%で、約3割近いものでございます。この数字を日本国民1億2800万人に掛けてみますと、約3400万人がわずか25年で減少していくことになりますが、さすがに日本全体の減少数としてはそうはならないようでございます。
 しかし、残念ながら、我が県の減少率が際立って大きいのです。その原因として、少子高齢化が進んでいる上に、過疎がとまっていないことにあるのではないかと考えます。では、少子高齢化はとめられないとしても、なぜ他府県への人口の流出がとまらないのか。
 過疎がとまらない原因として考えられることの1つに、県民にとって重要な産業である第1次産業をなりわいとして生活を続ける農林水産業の生活実態は大変厳しく、梅やミカン、ジャバラなどごく一部のかんきつ類を除けば閉塞感に満ちあふれてございます。
 その原因の1つに、近年の鳥獣害被害があります。シカやイノシシ対策として田や畑に2メートル以上の電気さくやネットを張りめぐらし、近年は猿対策としてその上にネットをかぶせるという状況にあります。しかし、地元の人に聞けば、それでも網を破って入ってくると言われています。農林業を営む皆さんに万里の長城のようなどこまでも続くかのようなネットを張らせてまで農林業を守らせている現状は、全く気の毒なほどひどいものであると言わざるを得ません。農家の皆さんの耕作意欲は年々低下し、やる気を奪われてしまったその結果として、耕作放棄地が広がってございます。さらに、高速道路や県道や各市町村道の整備のおくれが企業進出や企業創業の回避につながり、新しい時代の若者の望む仕事ができてこないことなども理由として考えられています。
 ところで、我が国はさきの大戦で多くの戦死者を出すとともに、国土は焦土と化したと言われるほど、工場や家屋敷など、すべてのものを失いました。そして、終戦後、何もない状態から生活がスタートしましたが、戦後の国民の頑張りによる発展は、諸外国からは東洋の奇跡とまで言われ、世界で2番目の経済大国に上り詰めました。
 この東洋の奇跡を引き起こした経済発展の要因の1つに、終戦時7200万人と言われた日本国の人口が戦後の60年余りで5600万人余りも増加いたしました。この人口の膨張が経済発展を押し上げた大きな要因の1つであったと考えられています。
 その人口が、和歌山県では今後わずか25年ほどの間に30%近くも減少するというのです。このことは和歌山県にとって危機的な現象を引き起こすであろうことが予想され、今後、「和歌山県の発展」などという表現はもはや使えなくなる日が来ると考えます。9200億円と膨らんだ公債費残高の返済1つとってみましても、残された70万人が返済しなければならないとすれば、負担率は1.3倍に増加することになります。いずれにしても、年々県の力が低下し、夢や希望が縮小していくと思われます。ますます次の時代にとって県土の魅力が小さくなり、都市への移住を加速させてしまうという悪循環がとまらないであろうことを心配いたします。
 そこで、和歌山県の25年後の姿をどうとらえ、どのように考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
 次に、去る3月11日に発生した東日本大地震で学習しておかなければならないことについてでございます。
 私は、白浜町長時代、防災計画の策定と防災マップの作成を急がせ、進めてまいりました。そして、津波避難困難地域と位置づけられた箇所には防災タワーを建設し、3階以上の建物を所有している施設には緊急時の避難場所としての使用許可のお願いなどを進めるとともに、消防庁舎は空港近くの高台に建設し、田園地帯の平野部には近くの山の上に津波等の災害から住民の命を守るための3000人以上収容可能な避難基地の建設などの提案を進めてまいりましたが、理解者を広めるには大きなエネルギーが要りました。
 その理由の1つとして、近く発生すると言われている南海・東南海地震に対する受けとめ方にやはり大きな幅があったと考えます。例えば津波の高さは、国や県の提示の高さとしては4メートルから5メートルとの予想値でありますので、住民感情としては低いほうの4メートルぐらいを意識してしまっていることにあります。
 その県の方針を踏まえて白浜町内にも津波タワーを設置いたしましたが、去る3月11日の東日本大地震の後発生した巨大津波を見せつけられた後の県民の意識は、大きく変化したと感じます。「怖くて津波避難タワーにはもうよう行かん」と言われるようになりました。
 津波避難地域の防災マップも疑問符がついています。作成されている津波浸水地域よりももっともっと広範囲の地域が水浸しになるのではと県民は考え始め、それを踏まえた施策も求められており、県民の不安解消を進める上からも県の被害想定の見直し作業に早急に着手すべきであると考えますが、県当局のお考えをお伺いいたします。
 次に、災害ボランティアと言われる、災害発生後、被災地の復旧のためボランティアで応援に来てくれる応援団の皆さん方の有効的な活用策について、お考えをお伺いを申し上げます。
 地球上で発生する自然災害の約2割は日本で発生しているというデータがあるほど、日本は災害大国でもございます。地震、津波、火山噴火、台風に伴う大風や大雨による倒木や河川はんらんによる洪水、さらに近年は、前線の発達により局地的に発生する集中豪雨、熱帯夜、竜巻、ひょうなどなど、本当にありとあらゆる災害が発生し続けているのでございます。
 こうした災害は、マスコミの発達した今日、瞬時に全国民が知るところとなり、善意の思いが高じて被災地の一日も早い復興を応援したいとの思いで、ボランティアという自発的な協力者が被災地に殺到をいたします。しかし、殺到したボランティアの皆さん方と被災地の状況はどうかと申し上げれば、必ずしもボランティアの皆さんの意思や気持ちが被災地へ十分伝わっていないのではと考えています。
 首長時代の話ですが、例えばこんな話を地元の首長より聞かされました。「ボランティアなんかもう要らん。邪魔になる」、「マスコミもうるさくてかなわん」、その他、送られてくる救援物資についても厳しい意見をもらいました。しかし、大きな災害に遭遇し、極限状態に押し込められた者しかわからない、遭遇した者だからこそ言えることで、大変勉強になる内容でもございました。
 今回の東日本大震災でも、報道によりますと、例えばゴールデンウイーク前には「ボランティアが一度にたくさん来られても困る」となっていたが、ゴールデンウイークを過ぎるころからは「ボランティアが急に減り、困っている」とのことになりました。あれだけ広範囲で驚愕するほどの被害が発生しており、手伝ってほしい仕事は山のようにあるはずだが、それをうまく取り入れてコントロールする側の能力が下回り、機能不全を起こしていると感じている次第でございます。
 ボランティアのあり方に不足を言うのではなく、平素からすべてのボランティアを使いこなす知力と能力を研究し、用意をしておくべきであると考えます。そして、一日も早い被害の回復につなげることこそが大変重要で、ボランティアの皆さんのマンパワーを災害復旧活動にうまく取り入れることにより被災地域の一日も早い復興へつなげることができると考えますが、県当局のボランティアに対するとらまえ方の現状とお考えをお聞かせください。
 最後に、高齢者福祉についてお尋ねいたします。
 和歌山県の高齢化は、思いのほかハイピッチで進んでおり、特に農林水産業をなりわいとする山間部や漁村では30%から40%を超す状況にあり、ある意味、高齢化の先進地でもございます。今日の我々の県の苦悩は、10年後、20年後、大都市でも顕在化していくことが確実な情勢であり、我が県の取り組みは後に続く都道府県の道しるべともなると考えます。
 長年、社会福祉、高齢者福祉を見続けてきました者の1人として、きょうはぜひ改善策を考えてほしい事柄を、今回2点にのみ絞って見解をお尋ねいたします。
 まず1点目に認知症についてでございますが、認知症を患った方で、早い方は40代後半で発症した方がおられましたが、おおむね70~80歳代以降の年齢になると発症率は高くなってくるようでございます。今回は、その中でも発症初期の対応についてでございます。
 きちんとした行動や考えができるときと、少しおかしいと感じるときが入り混じっている時期でございます。私は、この時期が一番重要で、危険であり心配だと考えています。ある日突然変わったことを言い出したり、つじつまの合わないことをしてみたり、その行動や言動で周囲の者が驚き、不信感を持ったり注意したり、あるいはけんかが始まったりいたします。アドバイスをしようにも、そのタイミングや話し方、話す内容など、本当に難しさを覚えます。警察署へ通い始めたり、役場や銀行の窓口へ行きつじつまの合わないことを言い始めたり、不可解なことが少しずつ広がります。しかし、言っていることだけ聞いていると筋が通っている場合もたくさんございます。日時の経過とともに、確実に周囲の負担はふえていきます。そして、大きなトラブルに発展する場合もございます。そこに目をつけたかのように、悪徳商行為の犠牲になったりしてしまいます。
 こうした初期の場合、社会全体で見守る仕組みが、個人情報の視点であったり、個人の尊厳の問題であったり、プライバシーの壁であったり、家族の問題があったりで、なかなか本当の解決・対応策が難しく、交通事故に遭わないように、火災を起こさないようにと願いながら、本人とそして周りの方々の安全を心配してしまいます。
 こうした軽度の認知機能の低下の時期は、市町村の対応窓口である包括支援センターでも扱いは大変難しく、対応に苦慮しているというのが現状でございます。もっともっと精度の高い優しさで見守ることができる制度や仕組みを考えてほしいと願っていますが、県の認知症対策についてお伺いをいたします。
 2点目に、老人ホームへの入所希望者がなかなかその希望がかなわない現状についてでございます。
 行政課題が多い中、各種の県民福祉の向上のため努力を重ねていただいていますこと、県民の1人としてその努力を評価するところですが、西牟婁地方の高齢者福祉の現状を申し上げますと、特別養護老人ホームへの入所希望者が減少せず、高どまり状態が続いてございます。
 こうした場合、当事者本人はもちろんのこと、当該家族を含め周囲の多くの方々が、一日千秋の思いでただ待ち続けなければなりません。もちろん、介護度が高くなっても、家庭での生活が心身ともに一番落ちつきます。しかし、寝たきりあるいはそれに近い状態が長くなると、家庭でのマンパワーが弱い場合、介護疲れ状態となり、家族ともども倒れてしまわないかと心配をされているところでございます。
 それにしましても、同じ介護保険料を支払っているにもかかわらず、特別養護老人ホームに入所できる方とできない方があるというのが現実です。介護保険法のその目的、趣旨に照らせば、皆ひとしく人としての尊厳を保持する権利があります。超高齢化時代に突入している我が県において、今後の特別養護老人ホームのベッド数に関する方針と、現在の待機者の推移と入所決定に至る仕組みをお聞かせいただきたいと思います。
 最後に、7427──これはきょう現在の行方不明者の数字でございます。捜索活動が続いています。関係者の皆さんに、その御苦労に心より感謝の思いを申し上げ、御家族の皆様が一日も早く発見され、平穏な日々を取り戻されますよう祈念を申し上げまして、第1回目の質問を終わらせていただきます。(拍手)
○議長(新島 雄君) ただいまの立谷誠一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 本県の人口推移についての御質問にお答え申し上げたいと思います。
 平成17年当時の過去の趨勢に基づいた国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、本県の人口は、平成29年に92万8000人、平成47年に73万8000人と大変厳しいものとなっております。和歌山県の人口減は若年層の県外流出が社会減を招き、ひいては高齢化の進展と出生率の低下が起こって自然減を招いた、こういうような結果であるというのは明らかであります。
 将来人口の推計は、過去のこういうトレンドを一定の計算式で延長して計算をするということでございますので、こういうことになっているわけです。少なくともしばらくは高齢化が進んでおりますから、人口は減少し続けると思います。しかし、人口減少の程度は、政策と県民の努力によりまして改善することも可能であるし、またそれがうまくいきませんともっと悪くなるということも考えられます。
 本県では長期総合計画を策定いたしましたが、これに基づきあらゆる施策を講じ、県民の方々も力を合わせて頑張っていただければ、平成29年の人口を国の推計より5万人多い97万5000人にとどめるようにしようじゃないかということで計画をつくっております。
 現状では、社会減対策として企業誘致や産業振興、移住交流の推進などさまざまな施策を展開して働く場所をふやしてきた、そういう結果、年間5000人台であった社会減を2000人台までに改善することができましたが、今後より一層努力を行うということによりまして、できれば社会増に転換し、同時に自然減対策として子育て世代の経済的負担の軽減や子育てと仕事の両立などを通じ子育て環境No.1わかやまを実現することにより自然減を食いとめ、長計の目標達成はおろか、それを上回るように努力していきたい、そんなふうに思っておる次第でございます。
○議長(新島 雄君) 危機管理監宇恵元昭君。
  〔宇恵元昭君、登壇〕
○危機管理監(宇恵元昭君) 防災対策についてのうち、県の被害想定の見直しについてお答え申し上げます。
 現在、国の中央防災会議において東日本大震災を検証し、地震動推定、被害想定のあり方が見直されており、東海・東南海・南海地震3連動の被害想定についても検討されているところであります。
 県では、こうした国による調査の結果を受けて被害想定の見直しを実施することとしており、その作業に少しでも早く着手できるよう、3連動の被害想定を早急に策定するよう国に対して要望をしているところであります。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 災害ボランティアの有効的な活用策につきましてお答えいたします。
 ボランティアの受け入れについては、和歌山県地域防災計画の中で、防災ボランティアや被災地生活支援NPOの募集・登録とともに、御質問の一般ボランティアの活動環境の整備が定められており、県社会福祉協議会に常設の和歌山県災害ボランティアセンターにおいて受け入れ体制を整えることとなっております。
 議員御指摘のように、ボランティアの方々に気持ちよく活動していただくための体制整備に当たっては、多数のボランティアを円滑に受け入れ、その能力を最大限に発揮していただくためのマニュアルの整備や、被災地域の作業内容等をコーディネートする人材の養成が重要であると考えております。
 県社会福祉協議会では、既に「災害救援ボランティアセンター運営設置の手引き」を作成し、被災時におけるボランティアの受け入れ方法、市町村災害ボランティアセンターに対する後方支援などを詳細に定めているところです。
 しかしながら、今回の東日本大震災により総点検が必要なため、ボランティア活動に関するさまざまな課題について検討、整理した上でマニュアルの内容を充実させ、より実践的なものに仕上げていくことが肝要であると考えております。
 また、あわせて県災害ボランティアセンターの研修等を充実することで、コーディネーターとしての人材の養成や確保にも努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 福祉保健部長鈴木敏彦君。
  〔鈴木敏彦君、登壇〕
○福祉保健部長(鈴木敏彦君) 高齢者福祉についてお答えをいたします。
 まず、認知機能の低下した高齢者の権利擁護についてでございますが、認知・痴呆対策については、認知症の方が住みなれた地域の中で尊厳を持って生活が続けられるよう、本人や家族への地域での総合的支援体制の構築に取り組んでいるところです。
 認知症対策においては、特に予防と早期発見が重要であり、これまで県立医科大学との協働による認知症予防教室のプログラム開発、市町村での認知症予防教室の開催、県医師会の協力による認知症の早期発見に向けたかかりつけ医の研修や地域包括支援センターを中心とした相談体制など、医療と介護が連携し、地域での予防と早期発見の仕組みづくりに取り組んできたところですが、議員御指摘のとおり、認知症初期段階において、認知機能は低下しているが日常生活は支障なく保たれているため本人に自覚症状がない段階があり、特にひとり暮らしの高齢者において周囲が対応に苦慮するという状況があります。
 県としましては、こうした判断能力が不十分なことにより日常生活に不安のある高齢者を支援するため、日常生活自立支援事業や成年後見制度の周知・普及を図るとともに、地域の関係者のネットワークによる支援の仕組みについて検討してまいります。
 次に、特別養護老人ホームへの入所待機者についてですが、特別養護老人ホームの整備に当たっては、わかやま長寿プラン2009に基づく計画的な整備を進めるとともに、国の経済対策に基づく介護基盤の緊急整備分を上乗せし、積極的に整備を進めております。平成21年度から23年度までの3年間の整備目標719床に対し、平成22年度末で412床を整備し、進捗率は52.8%となっております。また、今年度は416床を整備する計画ですので、これにより3年間の整備総数は828床となり、計画数を109床上回るペースで整備を進めております。
 次に、特別養護老人ホームの入所を希望する在宅の待機者数は、平成23年3月末現在で2824人であり、前年に比べて51人減少しましたが、ほぼ横ばいの状態で推移しております。介護保険制度の始まった翌年の平成13年には1221人でありましたので、この10年間で待機者数は約2倍に増加しております。
 待機者の解消のための大幅な整備の促進は介護保険料の急激な上昇を招くため、計画的に整備を進めていくことが必要であり、あわせて早期に入所が必要な待機者への配慮も重要であると考えております。
 このため、県では特別養護老人ホームの入所に関する指針を策定し、必要性の高い方から優先的に入所できるように指導してきたところです。具体的には、各施設に入所検討委員会を設置し、要介護度、認知の程度、介護者の有無、在宅サービスの利用率などの基準を総合的に勘案し、入所順位を決定することとしております。
 平成24年度以降の整備につきましても、各市町村と協議しながら、新たに策定を予定しているわかやま長寿プラン2012に基づき、引き続き計画的、積極的に整備を進めてまいります。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 再質問を許します。
 2番立谷誠一君。
○立谷誠一君 後先になるんですが、答弁をいただいたことでちょっとお願いと感想を申し上げさせていただいて、ひとつ提言と要望もございますので、お願いいたします。
 まず、和歌山県の25年後の姿についてですが、これ実はよう考えたら25年後ぐらいに27%も、3割近くも減るって、そこまで──しかし、努力によって、できるだけそういうような数字に近づかないように努力していただくというのは非常に重要なことで、また少子高齢化の時代にさお差していくというようなことなんかもなかなか難しいことで、そうした中で県土を守っていただく、我々の文化的な生活を守ろうとすれば、一定数のこうした県民の人口というのは1つの指標としても重要かなと思うんですが、ちょっと考えておかなきゃならないことは、25年でとまる話じゃなくて、26年、27年、28年って下がり続けていくということに大きな問題があるんではないかと。トータルで、これやっぱり我々県民の本当に総力を挙げて、議員さん方、もちろん行政の皆さん方を含め、本当に人ごと話じゃなくて、これ、大変なこと起こるぞ、このぐらいの気迫と覚悟で、今からでもええから全県民にお願いをして、そうしたよりよい知恵をいただいて県土を守っていただきたい、そんなふうに思います。
 もう2~3カ月前ですが、すさみ町という町がありまして、そこで──ちょうど選挙のさなかでもありましたので、その記事を詳しく読んではいない。斜め読み状態なんですが──どちらかというと山間に近い状態で、海岸べりではありませんでしたが、2000年も前の生活痕の道具が出てきたという報道がありました。何と、2000年前にもうそこに生活が始まってる。2000年後の今日も4600人になんなんとする方々がおられるんですが、これからわずか25年で恐らく3分の1前後になるであろう、そのまた25年先あたりはもうひょっとしたら人おらんかもわからん、そのぐらい急激な減少が起こってる。
 2000年たって重ねてきた、延々と積み上げた生活が、わずか25年あるいは半世紀あたりでその地域がなくなっていくであろうというようなことというのは、大変つらいことでもあり、この間に、本当に地域の皆さん方の生活が文化となり、たくさんのすばらしいものを先人の皆さん方が残していただきました。これが簡単に、わずか25年や50年で消滅していくというのはほんまに耐えられない、そんな思いでもございます。やはりきょうここに御参会の皆さん方のお力を、ぜひこうした問題に対して真剣な取り組みをいただきたいなというふうに思います。
 それから、これは要望なんですが、鳥獣害被害についてもちょっと触れさせていただきたいと思います。
 本当に山間部に生活する──最近は海岸沿いでもそうです。きょうもこの席に立たせていただくまでの間に、先輩の議員の皆さんのお話を聞いてたら、家の横は海なんやて。家の前の海のとこまでシカが来てる。異常事態だというふうに感覚として考えていただきたいと思うんです。30~40年前は少なくとも──ああした農家の皆さん方が田んぼを囲い込んでしまう、そこへ電気さくを入れてる、まだそれだけでだめで、その上へさく、猿が来るからって上にまで囲い込んでる。いつぞやこんなこと、見たことないです。特にここ数年はひどいもので、やはり農家の皆さん方に伸び伸びと生活できる、伸び伸びと農作業をさしてあげられる環境を整えてあげてほしい。
 これは、農家の皆さん方がイノシシやシカ、猿を繁殖したわけではないわけです。何か問題が起こっているからだと思うんです。この問題をいろいろ考え合わせたら、やっぱり国の国策にまで原点が戻っていくようにも思うんです。国策の失敗でこうした事態が起こっていないかと思えてなりません。
 私は、シカやイノシシ、猿を駆逐せえという考え方を持ってるわけではないんです。わずか30~40年前はこんな事態ではなかった。今までどおり伸び伸びと農作業ができる環境に早くしてあげてほしい。やっぱり難儀を解決するのが我々政治の仕事でもあろうかと思うんです。
 そうした皆さん方がすごく真剣に考えておられますので、もう少し──蛇足ですが、農家の皆さんって年に一遍しか給料ないんです。年に1度なんです。少なくとも私も含めてここに出席させてもうた者は、30日に1回ずつ給料をもらえるんです。その1年に一遍の給料をもらえるときに、かっさらわれていくわけですよ。どんだけ苦しい思いを、どんだけ悔しい思いをされているかということをやはり共有させてほしいな、そんなふうに思うところです。
 法律もありますので、なかなか簡単にいくことではないと思うんですが、やっぱりそういう皆さん方の思いを共有させていただいて、我々も頑張ってる、だけど農家の皆さんももう少し辛抱してな、いずれ近い日にこうした農家の皆さん方に無理な過重な負担をかけるようなことから解放させていただく、その方向性で努力をしているんやと、そういう言葉の発信をしてあげればどれほど心が落ちつくか、これからも頑張っていこう、そういう気持ちを持っていただけるかと、そんなふうに思う次第でございます。
 それから、この災害の想定の見直し作業に着手してほしいと言うた事柄で、1~2点、ちょっと私も変わり者のとこありますので、お笑いいただきながらちょっと聞いていただきたいんですが、まず1つお願いというか、提言をさせていただきたいと思います。
 もう5~6年前なんですが、白浜空港からヘリコプターを飛ばしていただきました。私たちが望んだわけではないんですが、そういう段取りをいただきまして、初めてヘリコプターに乗りまして、それは国道42号線を串本あたりまでずっと見たんです。よくわかりました。何がどんなになってるかということが。やはり車走ってると、ついその幅間隔とか、どういう状況の地形であるかわかりにくいんです。
 それで、きょうは1つの提言ですが、きょう御参会の幹部の皆さん方、それからここに御出席をいただいております議員の皆さん方に、ぜひ一度、和歌山県下全域を紀北から南まで、特に今回災害という大きなテーマの中での問題解決をする意味では、やっぱり現場をよく知ってるということが一番重要な近道だと思うんです。見ていただいたらわかると思います。私は、あのときの受けたショックというか、感動を忘れられません。やはりこれは少し費用も要るかわかりませんが、一度御検討いただけたらなと。
 やはり我々は、県民の皆さん方の生命、財産を守るために、何がどういうことになってるんかということを、やっぱり百聞は一見にしかずです。目に見ていただけるとよくわかることがたくさんあると思いますので、一度御検討いただけないかと思います。
 それから、ハード面での堤防のことなんですが、これもひとつ聞いていただきたいと思います。あれがあの津波という水でひっくり返ってしまっている、破壊され続けてる。これだけ日本が土木工学、世界に冠たる土木工学やと言われてたことを信じ続けておりました。たった水の──「たった水の」という言い方がいいかどうかわかりませんが、水の一撃でひっくり返ってしまった。やはりこれは、我々の土木工学は世界一と言われてる中においても、まだまだ自然災害との中で改善していく必要性のある事柄が多いんではないかなと。やはり堤防が、地域の皆さん方の、今回でしたら仙台あるいは東日本の周辺の皆さん方の命を救っている側面もある。あの堤防があったからこの被害でおさまった、そういう側面もありますので、もう堤防なんかしたって意味ないなという話に直結するんではなくて、堤防がひっくり返ってしもうた、これにはやっぱり科学的理由と原因があると思うんです。そうしたこともぜひ検証作業を進めていただきたいなと思います。
 それから、もう1点です。知事のほうからも、今回の災害に際して大勢の職員の皆さん方の派遣をいただいている、大変ありがたい、そういうお話も聞かせていただきました。
 そこで、1つお願いなんです。ぜひ若い職員の皆さん方を中心に派遣をしてほしいな。もう5年、10年で退職される方々よりは、次の時代の方々。次の時代の方々に体で見ておいてもらう。次に来るのは30年、40年です。そのときにやっぱり見聞をした者がおらないというのは、力としては弱いんじゃないかと思います。やはり体で見た方々をこれからも育てて、これからの施策に反映させてもらう、次の世代の皆さん方を育てていくということも1つの視点ではないかと思うところでございます。
 それから、昨日でしたか、教育長の答弁の中で、子供さん方の教育の部分で、大川という小学校でしたか、あの場所も私も見てまいりました。いや、何でこんなところに小学校つくってたんやろかと思いました。それは、旧北上川という川の、しかも河口の近くに建設されてたんです。平素は何ともなかったんだろうと思うんですけど、ここにつくる必要性あったかな。近くに山があるのに。本当にあそこで大勢の皆さんが亡くなりました。
 「とにかく逃げる」ということでありましたけども、この「とにかく逃げる」、その視点で一度和歌山県下で低地にある学校、特に保育園、幼稚園、小学校のレベルの、まだまだ自分の判断と能力、体力で逃げ切れない、そういう学校というのは今回見直しもいただくので、私は最低10メートル以下にそういう学校がつくっておられるというところが一体全体県下にどれだけあるんかな。また、この学校の建てかえの折には、そうした視点を含めて、子供たちがとにかく慌てて逃げなあかんねっていうことだけの教育ではなくて、我々サイドがそうしたことの回避策を考える必要という意味からも、一体どんだけあるんかな。きょうは突然の質問ですので、おわかりになりにくいと思いますので、また後日教えていただければなと思います。
 最後にですけども、あそこの現場に行かせてもうていろいろ話ししたら、もう逃げるのあきらめた人が結構あったわけです。「逃げるのあきらめた。もういいよここで」って。あるとき新聞にも載っていましたけど、若い娘さんとおばあちゃんが逃げてて、走ってるんですよね。だけど、10メートルや20メートル走ってるんじゃないんです。何百メートルと走らなならん。当然、70、80、90のおばあちゃんがそんなに走れるわけないです。「もうここでええ」って言うたらしいです。「もうここでええ」、それが命の分かれ目になりまして、若い娘さんは置いて走っていったんで命助かりましたけど、「もうここでええ」って言って置いてしまったおばあちゃんは亡くなってしまいました。そのことをすごく後悔してるかのような記事を読んで、もう泣いてしまいました。
 ここで1つのお願いなんですが、こういう発想はだめだろうかというのです。本当に逃げられない人、たくさんあります。年いってきましたら足腰、特にひざが悪くて、30メートルやそこら行こらというお話は行くかもわかりませんが、あの山まで300メートル、500メートル全力疾走やでって、そんな話ができることないと思うんです。そうした方々の命を助ける側面で、例えばですけど、津波避難シェルターというのはどうやろかと。もう逃げていくというよりは、あれ、津波が5時間も6時間も水没させてる状態ではないと思うんです。ひょっとしたら数十分、長くても1時間前後、そんなもんかな。そしたら津波の避難シェルターみたいなことが考えられないか。そこにおじいちゃん、おばあちゃん、ここで入ってもらうことによって命を助けられるということにはならないか。放射能から逃げる、核戦争から核シェルターというのはありますけど、何か一遍考えてみてください。これが現実的なものかはさておいて、本当に真剣に考えていたら、真剣にその人の命を助けようと思ったら、そういうことじゃないかと思うんです。
 特に私は、今の高齢者の皆さん方は、何とあの激しかった戦争を、送り出した、あるいは銃後の世話をされた、それで命が助かって帰ってこられた。その方々が我々の今日の文化的、世界的にも2番目と言われるようなこういう立派な国をつくってくれたのは──私はしなかったですわ。私は後をついてきて、卒業したら車を買うてもうたりとか、本当にありがたい時代に育ちました。でも、今の高齢者の皆さん方が今の国家をつくってくれたんですよ。大恩のある方々です。その方々に対して余りにも配慮が少な過ぎるんじゃないかな。
 それは難しい話を今言うたかわかりません。しかし、そのぐらいのこと、我々の世代が考えるだけの、考えるぐらいの責任は持つべきだと思うんです。我々がこうして世界に胸張って、外国へ行ったってどこへ行ったって胸張って生活できる、いろんなことを考えさせていただくことができるのも、今の高齢者の皆さんのおかげです。ぜひこのことも、なっとうしたら守ってあげられるか。そんなとこ走って逃げいという話だけじゃなくて、そこの場所で何として守ってあげられるかという視点でも考えてみていただけたらなと思う次第です。
 それから、先ほどの高齢者福祉の事柄につきましては、すごくありがたい視点の答弁でもありました。ぜひ答弁いただいたことを踏まえて、これからもそういった意味で高齢者の皆さん方に安心してその終えんの日を迎えていただける、そういう視点で取り組みを続けていただけたらと思います。
 これで2質問に対するあれを終わらせていただきます。もうほとんど提言と要望とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
○議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で立谷誠一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時45分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(新島 雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 皆さん、こんにちは。
 お昼1番の質問でありまして、昼食をとった後、眠たくなる方もいらっしゃるかもわかりませんが、眠たくならないような質問を一生懸命やらせてもらいたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 刷新クラブで初めての質問となります。岩田弘彦さんと2人で頑張っているわけですが、お互いに無所属として厳しい選挙を戦い抜いてまいりました。今後は和歌山の未来をしっかりと見詰めて活動してまいりますので、よろしくお願いいたします。
 さて、今、私たちのこの国は、大変な局面を迎えています。歴史家であり経済学者、またこの国に対してさまざまな提言活動を続ける作家の堺屋太一さんは、つい1週間ほど前に新しい本を出されましたが、そこでは今回の震災を「第三の敗戦」と位置づけられています。第1の敗戦は幕末、第2の敗戦は太平洋戦争、そして下り坂20年の末に来たこのたびの大震災が第3の敗戦、ここで大改革ができなければ日本は負け続けると警鐘を鳴らしています。
 私自身も、これだけの規模の災害が今起こったことは、日本にとって単なる偶然ではなく、乗り越えるべき試練として与えられたものだと感じています。苦しいですが、皆で力を合わせ、何としても乗り越えて次の世代、子供たちのためにもよりよい日本、よりよい和歌山をつくっていきたいと思います。この厳しい時代の節目となる大切な年、この春の選挙でたくさんの皆様に応援してもらい、3期目の県議会に送っていただきました。応援していただいた皆様に心から感謝するとともに、この時代に政治家として活動さしていただくその責任の重さをしっかりと受けとめて、覚悟を持って活動していきたいと思っています。
 それでは、通告に従って順次質問させていただきますが、本日、一般質問最終日ということで、ここまで先輩・同僚議員からさまざまな視点で貴重な議論が行われてきました。私の質問とかぶる内容もございましたが、重複した部分はできるだけ削りつつ、かつ私なりの視点で質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 まずは、東日本大震災を受けて和歌山の震災対応について。
 今回の東日本大震災では、多くのとうとい人命が奪われ、巨大地震発生から3カ月を過ぎた現状においても仮設住宅への入居もままならず、多くの人が避難所生活を続ける状況にあります。
 私自身もボランティアとして被災地に入り被害を受けた皆様に寄り添う中で、今回の震災がどれほど悲惨なものかを改めて認識しました。この質問冒頭に当たり、まずは心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 今回の大震災と大津波では、多くの人の未来を一瞬にして奪い去ったその悲劇を直視して、しかしそれは決して他人事ではなく、和歌山もいつ巨大地震に襲われるかもしれない、この教訓を私たちの和歌山でもしっかりと生かしていくために、多くの先輩・同僚議員もそれぞれに被災地へ入られる中、私自身も口先でなくまずは行動ということでボランティアとして実際に現場に立ち、現地の人たちと一緒に汗を流す中で多くのことを学ばせてもらってまいりました。
 私が東北の被災地に入ったのは、ボランティアが足りなくなると心配されていたことしのゴールデンウイーク明けの5月9日から12日までの間です。震災後、作業がおくれ、なかなか復旧しなかったJR大船渡線(ドラゴンレール)が何とか気仙沼まで開通したタイミングで、岩手県一ノ関までは新幹線を使い、一ノ関からローカル線に乗りかえ、気仙沼の現地へ向かいました。
 気仙沼に向かう途中では、多くのボランティアの若者に出会いました。グループもあればひとり単身で被災地に入る若者もたくさんいて、中でも1人で行動している若い女性が多いのに驚きました。必要とし、必要とされる。今、被災地は、おせっかいになることを気にすることなく思い切り他人のために行動できる場所、必要とされる確かな手ごたえを得られる場所であり、多くの心優しい若者が被災地を目指しています。これも日本社会の一面だと感じました。
 さて、被災地での活動では、気仙沼からスタートしたのですが、まず現地に入って最初に感じたことは、悲しいことに大きなダメージを受けたまちは音がなくなります。気仙沼に入ったのは昼過ぎで、その日は夕方、日の暮れる時間まで救援物資を運ぶお手伝いをして被災地を回っていたのですが、そこでは以前、阪神・淡路大震災のときに被災地を回った情景をほうふつとさせるもので、同じ感覚を味わいました。尋常ではない大きな被害を受けたまちは、現在の私たちが生活する日常、喧騒に包まれる社会からは隔絶された、荒涼とした荒野に立つような独特の情景があって、本当に心痛むものです。
 ここから、お手元の資料をごらんいただきながらお聞きいただければと思います。
 資料1という中で、私が訪ねさしていただいた気仙沼、そして陸前高田──地図であらわしていますが、その後、写真でそれぞれの状況をお示ししております。
 翌日10日は、朝からボランティアセンターへ向かいました。気仙沼市では、東新城という市街地から少し離れたところにある市民健康管理センターすこやかという施設内にボランティアセンターが設置されていました。朝早くから多くのボランティアが全国から集まり、その日は400名を超える人が参加され、中には、日本人だけでなく、カナダ、アメリカ、フランスなどの日本在住の外国人の方も応援に駆けつけてくれていました。
 ボランティア活動への参加の流れとしては、まず最初に受付テントでボランティア保険への加入など、必要な書類にサインして登録を済ませます。受け付けが終わるとテント横のスペースに集合し、班分けが行われます。本部スタッフが作業内容を読み上げて、志願者を募ります。主な作業は瓦れきの撤去、泥出し、家財道具の運び出しなどで、それぞれボランティアで集まった人たちが自分に合った作業を見つけて、自主的に手を挙げていきます。作業ごとに人数を割り振り、10人ぐらいずつの班を編成して、作業内容に合わせた道具もその場で支給され、各自スコップや一輪車、泥出し用の布袋などを確保して出発の準備を整えます。準備が整ったグループからそれぞれバスに乗り込み、市内各所に派遣されていきます。
 私が派遣されたのは沿岸部から5キロぐらい入った住宅地で、そこでは約半数の家屋が全壊状況で、流失した家屋も多く、もとあった場所もわからない家も数多くあるといった地域でした。私たちが担当したおうちは、気仙沼で魚の仲買業を営む小野寺さんという方のお宅で、2階建ての1階部分は天井まで津波が押し寄せ、泥に埋まり、庭などもめちゃめちゃに破壊されている状況でした。
 泥出しと一言で言っても、本当に大変な作業で、そもそもまちじゅうが洗濯機でかき回されたような状態で、泥にまみれて魚や動物、ペットの死骸などが散乱し、悪臭も想像を絶するものでした。男手で10人がかり、途中、昼食時には各自持参したおにぎりをほおばり、そのほか、脱水症状にならないように水分補給をするための休憩をとりつつ、みっちり朝9時から午後3時まで作業を続け、それで何とか1軒の家が片づくといった状況でした。こういった作業を被害地域全体で行うことを考えると、本当に大変な労力が必要とされ、相当なマンパワーが今後とも必要だと改めて認識させられました。
 午後3時に作業が終了し、順次迎えの車を待ってボランティアセンターに戻ります。センターに戻った後は、持っていった道具を次の日の作業に使えるように各自きれいに水洗いして返却、最後に報告書を提出して一連の活動は終了となります。
 気仙沼では受け付けからチーム分け、作業内容の説明から現場への送り迎えまで本当に組織化され、すべての作業がスムーズに行われていました。これは和歌山でもお手本とすべきものと思います。いざというときのために貴重な経験の場となりますので、ぜひ和歌山からも、県、市町村の職員の皆さんにはできるだけ多くの方に実際に体験しておいていただきたいと思います。
 翌11日は、手配していたレンタカーに乗り込み、朝早くから気仙沼を離れ、陸路、陸前高田市へ向かいました。ちょうど陸前高田へ向かうまでは──これ、地図にもあるんですけれども──45号線という一部が車の専用道路になってる道路があるんですけれども、それが陸前高田までつながってまして、その専用道路によって陸前高田に向かいました。
 ところどころで海まで見渡せる休憩所があるのですが、そこから眺める風景は、例外なくすべてが悲惨な状況でした。気仙沼、陸前高田などマスコミが取り上げられるまちはテレビなどを通じて多くの人に知らされていますが、それ以外も海に面した入り江という入り江のすべての集落が壊滅しています。まさに唖然とするほかない状況であり、改めてその被害の大きさに驚き、鳥肌が立ちました。
 陸前高田の市街地に入ってからは、皆さんもテレビで何度も見られていると思いますが、やはり大変な状況です。陸前高田市は、まちとしての規模は気仙沼より小さいながら、被害規模自体は気仙沼と同等もしくはそれ以上の状況で、自治体としての中枢機能へのダメージも甚大で、それはボランティアセンターの運営にもあらわれていました。
 陸前高田市災害ボランティアセンターは、陸前高田市横田町というかなり内陸に入った場所に仮事務所が設置されていました。陸前高田の社会福祉協議会は大津波で事務所を失い、職員のうち数名が死亡、行方不明となっているということで、残された職員の皆さんは必死で社協自体の再建を進めつつ、災害ボランティアセンターの運営もこなしているという状況でありました。
 5月11日、陸前高田市で私が参加した日に集まっていたボランティアは約40人、気仙沼市の10分の1という状況でした。これも後ほど提言させていただきますが、それぞれの被災地では今ボランティアの争奪戦が始まっています。情報をしっかりと発信できていないところはボランティアを集められない状況となっていて、陸前高田市などは被害が大き過ぎて行政組織も機能低下しており、本来は大きな被害を受けているからこそたくさんのボランティアが必要なところを、しかし逆に悪循環に陥っていて、被害が大き過ぎたため情報を発信する力も弱く、結果的にボランティアを集められず復興もおくれるという状況にあります。
 陸前高田でのボランティアは、仕組みとしては気仙沼とおよそ同じなのですが、とにかく40人しか集まらない状況ですので、人手が足りない。ボランティアの派遣要請は山のように来ていても、残念ながら十分に対応できる状況にはありませんでした。
 当日、ボランティア登録を済ませると早速名前を呼ばれ、派遣先の概要が書かれた紙と地図を渡されて、何と1人で行ってほしいということでした。手渡された資料を見ると、家屋内の泥出しと家財道具の運び出しで、希望人数として5名から10名のボランティアを派遣してほしいと書かれていました。気仙沼での経験からしても、とても1人でお手伝いに行っても間に合わないと不安に思い、担当の方に伝えると、申しわけないが被災者の方はボランティアの派遣を待っていて、とにかく行ってほしいということでした。私自身、陸前高田は初めてで、当然地の利もない中で、しかし手配したレンタカーに何とかカーナビはついていましたので、それを頼りにとにかく出発しました。
 派遣された先は83歳の金野さんというおじいさんのお宅で、陸前高田市の北部の沿岸地域で、あたり一帯ほとんどの家が流失してしまっている状況の中で、少し高台のところにあった金野さんほか数軒が残っているという状況でした。
 最後のページの写真ですけれども、この手前に見えるのが金野さんのお宅で、その奥、2~3キロあるんですけれども、海岸線まで普通は見えてない状況なんですね。金野さんいわく、「これ、家がいっぱいあったんやけれども、それ全部流されてしもうた」と。それで、その奥にはもう海が見えてるだけというような状況になっているおうちでした。
 到着後、あいさつをして、すぐに使えなくなった家財道具の搬出など作業に取りかかりましたが、いかんせん、1人で運べるものは限られていて、なかなか作業もはかどらず申しわけないと思っていたところに、2人のボランティアが応援に駆けつけてくれて3人で作業を進め、何とかその日に予定していた作業を終わらせることができました。
 同じボランティアでお手伝いさせていただくにも、それぞれの地域で大きな差があることを実感しました。今回、被災地に入って本当に多くのことを学ばせていただいたと思います。
 東日本大震災の復興は、日本の挑戦だと思います。私たちの和歌山では、震災から時間が経過して、ややもするともう過去の出来事のように感じられている人も多いように思いますが、しかし被災地では今も多くの人が戦っています。これから息の長い持久戦となります。今後、和歌山県としてどういった貢献ができるのか、しっかりと腰を据えて考えていく必要があります。
 また、今回の震災で現地に入って実際に活動してみて、あすは我が身というのが現実だと改めて実感しました。東日本大震災をしっかりと我がものとして検証を行い、それを和歌山の防災にどうつなげていくのか、真剣な議論が必要です。和歌山県議会からも多くの先輩・同僚議員が現地に入り、貴重な情報を得ていますので、それを持ち寄り、英知を集めて和歌山の未来に備えることこそが、私たちの使命だと思います。
 そこで、今回は、私自身の体験を通して幾つかの質問並びに提言をさせていただきます。
 まず今回の東日本大震災に係る調査について、和歌山県として現状どういった調査を行ってきているか、また今回の大地震と大津波については多くの想定外があったと言われていますが、これまで和歌山で想定していた東南海・南海の大地震に係る被害予測と照らし合わせ、今後どういった見直しが必要と考えているか、危機管理監にお尋ねいたします。
 また、今回の東日本大震災を受けて、その被害状況の把握から本県のこれまでのハザードマップの見直しをどのように考えているか。4月21日に行われた定例の記者会見で、知事のほうから防災・減災対策の総点検を実施するといったことが発表されていますが、その中身についてお聞かせください。あわせて、新たに和歌山県民の皆さんにハザードマップを提示できる具体的な時期についてもお聞かせ願いたいと思います。
 続いて、災害情報の受発信環境の整備について。
 今回、現地に入って被災された皆さんからいろいろとお話を聞かせてもらう中で、災害時の情報が何にも増して大切なものだと何度も指摘されました。まさに情報こそが生死の分かれ目になる。地震発生直後、津波被害を最小限に抑えるのにも不可欠なものだったということですが、これからの和歌山県における防災で災害時における正確な情報を伝達するための環境整備は最重要課題だと思います。
 そこで、具体的な提案として、災害情報の戸別受信器、特に災害情報ラジオの整備をお願いしたいと思います。
 これは平成16年の12月定例議会で私自身、既に提言させていただいていますが、その整備自体はそれからそんなに進んでおりません。防災行政無線、その情報の受信体制として戸別受信器の整備は何にも増して進めなくてはならない取り組みであります。改めて提言させていただきます。
 今回、防災に係る政策について、もう一度しっかりと勉強し点検しようと幾つかの自治体へ調査に行っているところですが、その1つ、この6月7日、和歌山と同じく3連動の巨大地震への対策が進む静岡県庁を訪問し、防災に係る静岡の取り組みを勉強してまいりました。
 静岡県では、危機管理部の危機政策課の藤田和久さんと、同じく危機管理部防災通信課の稲葉清さんから静岡の取り組みをお話しいただいたのですが、その中で、静岡県総合情報ネットワーク、防災行政無線のシステムについてお話を伺いました。資料はちょっと席のほうに忘れてきたんですけれども、後ほどまた皆さんにも見てもらえればと思いますが、特にそこでは防災情報の活用の方法、中でも戸別受信器の重要性について説明を受け、今、静岡県では、その推進のため、新たに予算として大規模地震対策等総合支援事業費として戸別受信器の整備については補助金を出す制度をつくっているということでした。
 今回提言している戸別受信器は、当然地震災害に限ったものではなく、水害、土砂崩れなどの心配のある地域にも重要な取り組みとなります。防災対策の重要施策として、防災行政無線の戸別受信器の整備・推進を改めて提案しますが、危機管理監から御答弁をいただきたいと思います。
 次に、災害時における県民の避難場所の明確化とその避難先の事前把握について。
 どこにどれだけの人が避難して、何をどれぐらい必要としているか、被災者の把握は災害対応の第一歩となりますが、これには相当の労力が必要となります。今回の東日本大震災のときにも、県民の安否確認に膨大な労力がかけられ、しかしながら被害実態の把握に大変手間取る状況があり、行政対応に対する批判にもつながったと陸前高田の避難所でお聞きしました。できるだけ短い期間に県民の避難実態を把握するためには、事前の備えが重要となります。
 現在、和歌山県では、災害時にどういった避難行動をとるべきか日ごろから考えておいてもらおうと避難カードをつくり、県内全世帯に配布しています。非常によい取り組みだと思いますが、これをもう一工夫して、県民の皆さんの安否確認にも役立てるものとしていただきたいと思います。この避難カードで避難場所とともに県外の親戚など連絡のとれる身寄りなどを書き入れるようにして、それを地元の市町村で把握しておいてもらう、これだけで災害時に行方不明者を確認していく作業に大いに役立ちます。県としてこの避難カードをいざ災害が起こったときに県民の安否確認をするためのツールとしても役立てられるよう工夫していただきたいと思いますが、これも危機管理監から御答弁願います。
 次に、県の事業継続計画、いわゆるBCPの策定状況とその見直しについて。
 私自身、これまでの議会で何度かBCPの策定について具体的な提言を行ってきていますが、今回の大震災を受けて、全国の自治体でも業務の優先順位など特に見直しが必要とされるものが明らかになる中で、その修正に急ぎ着手している状況があります。今回の東日本大震災を受けて、県が策定してきているBCP(事業継続計画)の見直しをどのように考えているか。あわせて、市町村におけるBCPの策定状況と今後の対応についてお聞かせいただきたいと思います。
 続いて、県内の各市町村の災害対応として行政機能のバックアップ、県外の自治体と結ぶ災害時の相互応援協定の締結促進について。
 今回の東日本大震災では、陸前高田市などを初めとして多くの被災した市町村は、行政能力自体が著しく毀損される状況となっています。こういった状況では、さきにも触れたように復興プロセスにも大きな影響が出てきます。被災地にいかに早く行政能力を復活させられるかが非常に大切で、そのためには、みずからの力だけではなく、外部、他の自治体の協力を得られる体制づくりが重要となってきます。
 5月8日、東日本大震災を受けて、その復興をどうやって手助けできるか、大前研一氏の勉強会「一新塾」の呼びかけで、復興を早期に実現するためのパネルディスカッションが東京で行われました。パネラーは歴代の卒塾生が務め、政令市の全国最年少市長である熊谷俊人千葉市長、千葉県の秋山浩保柏市長などともに、私もパネラーとして参加させていただいてきましたが、そこでの議論として、行政機能の復活といったことが大きなテーマとして取り上げられ、自治体間の応援協定をできるだけ遠い地域の自治体と積極的に結び、いざ大きな被害があったときにはスムーズにバックアップする体制を確立するといったことについて議論が重ねられました。
 実際に、千葉市も柏市も市長が先頭となって被災地に入っていますが、改めて行政機能の回復の難しさを痛感したと話されていました。いざというときに備えて、これも日ごろからの準備が大切で、特に日常的に職員交流を促進し、相互の自治体間で親和性を高め、大きな被害があったときにはBCPなどから大量の職員に一気に入ってもらえるプランづくりを進めておくことが重要です。
 現在の県内の各市町村の対応状況を調べてみると、30市町村の中で被害時の応援協定を結べているのは13の市町であり、半数以上は何も対応できていない状況です。しかも、遠方の自治体と協定を結べているところはほとんどありません。これも県から早急に指導して、大きな災害が起きたときに同じく被災する心配のないできるだけ遠隔地で相互応援がしっかりとできる取り組みをぜひ進めていただきたいと思いますが、これも危機管理監から御答弁をお願いします。
 次に、県職員のボランティア参加について。
 今回の大震災は、被災地の実態を知る上で重要な機会となります。県民の生命、財産を守る行政職員として、できるだけ被災地に入り、その実態を見てくることが貴重な体験、行政職員としての財産となります。
 そこでお伺いしますが、現在の和歌山県職員のボランティア参加状況をお教えください。あわせて、特に担当課については、各ボランティアセンターを訪ねてそれぞれのよいところ、課題を調査していくことが重要だと考えますが、そういった取り組みについて環境生活部長からお考えをお聞かせください。
 また、ボランティアの受け入れに関しては社会福祉協議会が主体となっていますが、今回、被災地で社会福祉協議会と地元自治体、また県との関係についてなかなかかみ合っていないところも目につきました。社協との関係がうまくいかないと、ボランティアの受け入れ、ボランティアに活躍してもらうのにも大きな障害となります。また、今回の東日本の被災地では、さきに触れたようにボランティアの争奪戦から、それぞれの地域のボランティアの受け入れ状況にも大きな格差が生まれています。この問題を克服するためには、被災した当該の市町村の対応だけで任せておくのではなく、そこでは県が情報を集約し、まとめて発信していくといった仕組みづくりが不可欠となります。
 そこで、現状における県と社会福祉協議会との連携状況、あわせてボランティアを円滑に受け入れるための取り組みをどのように考えているか。また、県下の市町村の社会福祉協議会と県災害ボランティアセンターとの連携強化に向けた取り組みの考え、最後に県がコーディネーターとしてボランティア情報について情報の集約、発信を行っていく取り組みについて、環境生活部長からお考えをお聞かせください。
 続きまして、真の環境先進県を目指して、新たなエネルギー政策の積極的推進、自然エネルギーへの取り組みについて。
 和歌山県は、これまで、環境先進県となることを事あるごとにうたってきていますが、それを口先だけでなく今こそ実行していくときであり、思い切った取り組みが望まれます。
 このたびの東日本大震災、東京電力福島第1原子力発電所の事故により日本全体のエネルギー政策が根本から見直されるという大きな転機を迎え、日本政府においてもさまざまな局面で厳しい政治的決断が迫られる状況にあります。
 そういった中では、地方政府においても単なる傍観者ではなく、改めてこの機会をとらえて地域におけるエネルギー政策の思い切った決断、他の地方をリードして、できれば地域の浮揚策にも結びつけられるような取り組みが今求められます。
 今回の原発事故を受け、国内では原子力発電に関して先行きの見えない状況が続いています。これから数十年先を見据えて、少なくとも原子力発電の新増設は難しく、原子力発電のシェア拡大は望めない中で、今日の時点で原発を即時廃止するといったことは非現実的だとしても、新たなエネルギー戦略の構築こそが今急がれるものとなっています。
 これから我が国が目指すべきエネルギー政策、そのグランドデザインをどのように描くべきか。そこでは、さまざまな取り組みを組み合わせるベストミックスへの挑戦が必要とされます。今後は、自然エネルギーなどに代表される非化石エネルギーの最大限の導入と化石燃料の高度利用による発電事業といったベストミックスを確保することこそが重要となります。
 そんな中、今注目される再生可能エネルギーは、太陽光や風力、水力などの自然エネルギーをエネルギー源とするために対価なく無尽蔵に資源の利用が可能で、環境性にもすぐれるものとなっています。中でも、特に太陽光発電については住宅や事業所での導入量拡大が見込まれ、さらには産業経済の活性化、地域活性化にも大きく貢献することが期待されるなど、大きなポテンシャルを秘めています。
 自然エネルギー推進の先進大国であるドイツでも、今後の自然エネルギーの活用において、太陽光発電については最も力を入れるべき分野として、中央政府、地方政府ともにその導入促進、利用拡大、技術革新を後押ししています。ドイツの太陽光発電の総発電量は、2005年に日本を追い抜いてから世界でトップを維持し続け、2010年の発電量は1700万キロワットに達しています。ちなみに、福島第1原子力発電所の1号機から4号機までの発電量の総計は281万キロワットです。太陽光発電だけをとっても大きな発電力を誇っています。
 世界の小さな国ではなく、ドイツのような経済大国で既に太陽光と風力を合わせた自然エネルギーの発電量が国全体の10%にも達しており、これは注目に値し、今後の私たちの日本におけるエネルギー政策においてもまさしく手本となる取り組みとなっています。今後さらにドイツでは、新たな技術革新や大量普及により、世界全体の自然エネルギー推進の牽引車となることを目指すとしています。
 こういったさまざまな状況を踏まえて、今、日本においてエネルギー政策については大きな政治的決断のときが近づいています。これからの未来を生きる子供たちにどういった国を受け渡していくのか、そのためにも将来を見据えたエネルギー政策のぶれない方針こそが求められます。
 今回の原発事故を受けて、改めて太陽光発電やコージェネレーションシステムによる自家発電の有効性が見直され、今後日本全体において住宅や事業所などで多極分散、小規模分散型のエネルギー創出の取り組みが進み、大きな流れとして新エネルギーの導入が加速されることは間違いのない現実であり、そこでは地方政府の役割も決して小さなものではありません。自然エネルギーの普及には自治体側の行動も加速されていて、脱原発・太陽光推進を掲げて先ごろ当選した黒岩祐治神奈川県知事は、選挙後、神奈川県全域で自然エネルギー推進の政策を圧倒的なスピードで進めていきたいと抱負を述べ、改めて強い意向を表明しています。
 また、県内の浜岡原発が停止した川勝平太静岡県知事なども、「静岡は太陽に恵まれている。今後は自然エネルギーの導入を一気に進めたい」と、静岡独自の新たなエネルギー構想を提示していくとしています。
 そういった中で、今回、その神奈川県と静岡県を訪問し、それぞれの政策も勉強させていただいてきました。そういったものも踏まえて、幾つかの提言並びに質問をさせていただきます。
 まず、現在、原子力発電に対する不安が増大する中で、日本全体のエネルギー政策の抜本的な見直しも迫られる状況にありますが、これからの見直しについて、元経済産業省出身である仁坂知事はどのように考えておられるか、その所見をお聞かせください。
 また、先日、関西広域連合の会議において、ソフトバンク株式会社の孫正義社長がみずから乗り込み、自然エネルギーの促進策で持論を展開され、またそこでは仁坂知事とも個人的にもお話をされていたようですが、どういった提案をされ、知事はその提案をどのように受けとめているのか、また今後の具体的な取り組みについてどう考えているか、御所見をお聞かせ願いたいと思います。
 また、和歌山県を含む関西広域連合が自然エネルギー協議会に参画するということで、この7月、正式に設立されるというアナウンスがされています。和歌山県も自然エネルギー協議会に参加する意向ということですが、その参加の意義、和歌山県としてのメリットをどのように考えているか。
 また、今、国においても自然エネルギーの導入について積極的な議論が進んでいるところですが、そういった状況を受けて私どもの和歌山県として、地域のブランド化といった観点からも自然エネルギーの活用、太陽光発電事業の積極的推進から、環境先進県への取り組みには非常に重要な取り組みだと考えております。新エネルギー政策推進に関する知事の考え、和歌山を新エネルギー先進地としていく意気込みについて御所見を伺いたいと思います。あわせて、和歌山県として太陽光発電に係る諸条件を検討して地域として推進する有効性をどのように評価するか、お聞かせください。
 最後になります。ブランド構築、環境先進県和歌山のイメージを発信するその端緒となる取り組みとして、太陽光発電普及を加速させる政策、和歌山新エネルギー創造・ソーラー推進プロジェクトについて。
 これ、お手元の資料でお配りしております。図入りで書いていますので、ちょっとまたごらんいただきながらお聞きいただきたいと思うんですが。
 今、国においてエネルギー政策全体が見直される転機にあり、そこでは地方政府においても思い切って今後国が進めるエネルギー政策を先取りして、和歌山としての独自性を出し、新たなエネルギー政策を戦略的に進めることができれば地域にとって大きなチャンス、和歌山の活性化にもつなげられる可能性があるのだと思います。
 仁坂知事も、和歌山県の「環境白書」において、世界に誇れるすばらしい自然を持つふるさと和歌山を次の世代に引き継ぐため行動を加速させなければならないとして、太陽光発電を初めとした自然エネルギーの導入促進を誓ってくれています。今こそ、その本気度が試されるときだと思います。
 そこで、具体的な提案として、お配りしているような提案なんですけれども、和歌山で新エネルギーを創造して、ソーラー発電の事業を一気に全国で先頭を切って進んでいけるようなプロジェクトの提案であります。
 今、新たに家を建てようとしている人のほとんどが、太陽光パネルの設置を検討しているといったアンケートがあります。環境への意識の高まりと、特に現在は原発事故から電力不足などによって、エネルギー、電力に関しての関心は非常に高いものとなっています。そこでは、ちょっとしたきっかけさえあれば太陽光パネルの設置が驚くほど加速され、成果の上がるタイミングだと思います。
 そもそも、余剰電力の買い取り制度ができてその買取価格が40円を超えてからは太陽光パネルを設置するデメリットはほとんどなく、ネックとなっているのは初期投資のコストをどうやって捻出できるかといったことぐらいがハードルとなっている状況です。お手元の資料で月々の支払いのモデルを見てもらうと、通常支払う光熱費に少しプラスした金額で設置できるわけで、県が最初の初期投資のお金を賄ってあげられれば問題がなくなります。
 さらに、太陽光パネルを一気に進めるためのインセンティブ、動機づけとして、できればこの制度をつくり、期限を決めて利用者の金利分を県が負担して金利ゼロとすることができれば、申し込みはさらに加速するものと思います。このスキームでは、そもそも県として基金となるお金を最初に用意するだけでそれが回っていくわけで、このスキームを例えば10年の制度として時限的に実施すれば、最後の10年目でこの制度を利用する方が最終に支払いを終える20年後にはその用意したお金は基金に基本的には戻ってくる仕組みです。最初に期限つきの金利を負担するだけが県の負担となるわけですので、ぜひこのフレームさえつくっていただければ多くの人に利用してもらえる提案だと思います。
 神奈川県でかながわソーラープロジェクトといったものが提案されていて、これは和歌山にも似通ったところがあるんですけれども、実は神奈川の提案と和歌山とは本質的に違い、神奈川とは違って和歌山の案が現実的に実現できる案であります。神奈川のモデルというのもお手元に配らしていただいておりますが、このスキームであれば今国会で準備されている再生可能エネルギー促進法がそもそも成立しないと実現しませんし、その法案も、現在具体的に検討も入っていない。一般世帯の全量買い取りが実現しなくては、この枠組み自体が成り立ちません。その上、民間の資本を出してくれるパートナーを見つけられるかといったところも難しい問題があり、それに比べ今回提案している和歌山モデルは、現状既にある諸施策の中で実現できるものですので、制度自体も極力シンプルな枠組みとしております。
 これが実現すると、全体の180万円の事業費に、全体10年間の、実際のソーラーパネル設置を私自身の試算としては5万個として、ネットでの事業費ベースで約900億の経済波及効果も考えられると期待しております。他の都道府県に先駆けて和歌山県が取り組むことで県内事業者の育成にもつながり、将来的には県外事業の獲得なども視野に入るなど、和歌山の事業者にとって大きなメリットがあります。他の都道府県に先駆け、ぜひ積極的に進めてもらいたいと思いますが、知事の所見をお聞かせいただきたいと思います。
 以上で、私の一般質問1問目を終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(新島 雄君) ただいまの山下大輔君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 日本のエネルギー政策につきましては、東日本大震災を踏まえ、今まさに国レベルで新たな議論の時期にあるものと考えております。
 特に、我が国全体のエネルギー需給の見通しのもとに、従来の原子力と化石燃料に省エネルギーや再生可能エネルギーの導入を促進するなど、今後、国でさまざまな検討が行われた上で日本のエネルギー政策が見直されていくべきものだと思っております。しかし、若干、政府全体がどうなることやらというふうに思っておりますので、少し不透明であります。
 2番目は、孫社長の提案でございます。
 これにつきましては、委員会の席で孫社長から提案があったのは、昨日でございましたか、片桐議員の御質問にお答えしましたように、1つは協議会の設立、もう1つはプロジェクトとしてのメガソーラーの設置推進についてでありました。特に前者のほうが中心でありました。
 そのうち、まず御質問に従いましてプロジェクトにつきましては、本県はもともと日照時間にも恵まれ、メガソーラーに適した用地もありますので、孫社長の提言に賛同し、積極的にかかわってまいりたいと考えております。ただし、地域が取り組むメガソーラー事業については、ソフトバンク側から提示されている条件もあります。その条件は、ほかの民間企業や企業誘致に際して妨げとならないようなリーズナブルなものでなければなりません。そういう点から、本県としても合理的で参入しやすい条件を提示していただければ積極的に事業を推進してまいりたいと考えております。そういう条件を、リーズナブルにしてくれないと困りますよということを私は発言をしておきました。
 それから、その次の協議会のほうの話でございますが、これは自然エネルギーの普及促進を目的に設立を予定している協議会でございまして、本県においても自然エネルギーを普及拡大するさまざまな取り組みを推進しているところですけれども、この協議会に参画することで、自然エネルギーの普及をさらに加速させることが可能となると考えております。
 例えば、メガソーラー事業が成り立つためには、まず国で議論されている全量買い取り制度の確立が不可欠であります。しかも、事業採算がとれるような高い価格での買い取りが必要です。もちろん、その価格が電気料金にはね返ってくるという面もありますが、今の自然エネルギーを大事にしようという流れの中では、それを甘受しつつ賛成するということも必要ではないかと思っております。
 次に、送電線への接続の問題があります。せっかくメガソーラーを設置しても、それを電力会社の送電線に接続できなければ、あるいは接続に当たってさまざまな条件をつけられるようであれば、事業が困難になってまいります。
 3つ目として、農地に設置する際の農地法の制限といったさまざまな規制の緩和も必要になってまいります。こういうことについても検討していただく必要があります。
 このような課題に対して、自然エネルギー協議会に参加した自治体が一致団結して応援することで自然エネルギーの導入を促進してまいりたいと考えております。
 なお、現在30を超える道府県が協議会への参画を表明しており、今後、国への働きかけ等において大きな力になるものと考えております。
 4番目に、本県の新エネルギーの政策推進に係る私の考え、あるいは太陽光発電を地域として推進する有効性についてということでありますが、これについてもるる御説明申し上げておりますように、エネルギーの多様化を進めていくためには、地域に広く存在する自然エネルギーを活用した取り組みを積極的に推進していくべきだと考えております。
 特に本県は、日射量等の諸条件が近畿でも1、2を争う地域でありまして、太陽光発電を推進する地域としての特性は大いにあると考えております。
 次に、議員の提案であります。
 これについては、そのうちの初期負担なしで毎月の支払い額に売電収入や省エネによる経費節減分を充てる太陽光発電普及システムが必要であるという点については、私も同感であります。実は、もっと広く考えると、地球問題への解決に資するような具体的な方法として考えられないか、小宮山さんなんかとも話し合って、かねてより模索を続けているところであります。
 この考えを実現するためには、言えば済むというわけではございませんで、県費を投入すれば済むというわけではございません。10年にわたる長期スパンを見通して、県民の皆さんに利益を与え、かつ破綻を招かない事業スキームを構築しなければならなく、かつそのためには能力のある、事業に当たる民間企業を見つける必要もあります。そういう解決しなきゃならない課題がたくさんありまして、私も勉強を続けているところであります。
 しかしながら、太陽光発電を大量普及させる有効な手段、手法の1つであると思いますので、今後とも検討を続けてまいりたいと思います。
○議長(新島 雄君) 危機管理監宇恵元昭君。
  〔宇恵元昭君、登壇〕
○危機管理監(宇恵元昭君) 東日本大震災を受けて、和歌山の震災対応について6点の御質問にお答えいたします。
 まず、東日本大震災の調査についてですが、県では、関西広域連合の取り組みの中で、発災後すぐの3月14日に大阪府とともに岩手県へ職員を派遣し、その後、4月1日からは岩手県現地事務所を立ち上げ、岩手県庁や関係機関との調整、現地状況調査などを行い、あわせて私を初め関係職員が出張するなど、被災状況の把握、支援ニーズの収集などに努めているところです。
 実際に、人的支援、物的支援、被災者の本県への受け入れなどを行う際には、岩手県庁と緊密な連携を保ちながら、被災自治体や各避難所へも直接赴くなどして十分な調整を図っているところです。こうした際には、把握できた課題、例えば避難行動や避難場所のあり方、市町村行政機能の確保といった課題につきましては、現在実施中の総点検の中に反映しているところであり、避難場所の見直しにつきましては、津波到達時間を考慮し、可能な範囲でより高く、より安全な避難場所へ避難するよう周知するほか、防災行政無線の浸水対策、電源確保等の取り組みを既に進めているところであります。
 次に、東南海・南海地震の被害想定及びハザードマップの見直しにつきましては、実際に被災地に立ち、安全と考えられていた防潮堤が倒壊している状況を目の当たりにして、これからの被害想定のあり方については、今回の東日本大震災による地震・津波被害の十分な分析が必要であると考えているところです。
 国では、東日本大震災の検証を踏まえて、東海・東南海・南海地震3連動の被害想定に着手し、平成24年度にかけて新たな被害想定の調査が行われると聞いております。
 県では、こうした国による調査結果を受けて被害想定を見直すこととしており、各市町村におけるハザードマップ等の作成ができるだけ早期に行えるよう、国に対して早急に策定するよう要望しているところでございます。
 次に、防災情報の戸別受信器の整備推進につきましては、議員御指摘のとおり、災害情報の伝達手段として市町村が設置運用している防災行政無線は、極めて有効かつ重要なものであると考えております。また、戸別受信器や防災ラジオについては、より効果的に災害情報を伝えることができるものとして、県内市町村で約4万4000台が、主に屋外スピーカーの聞こえない地域の世帯や社会福祉施設、防災拠点、避難施設等に設置されております。
 県といたしましても、多様な情報伝達手段の確保について、市町村と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、県民の避難場所の明確化とその事前把握につきましては、現在、防災・減災対策の総点検の中で避難場所の見直しを行っているところであり、また、県民1人1人にその避難場所を自覚していただくよう、市町村から全世帯に避難カードを配布することとしております。その際、あらかじめ地区ごとに作成する避難所、緊急避難先の一覧表の中から住民の方が選択し、記載していただくことを考えております。よって、地区ごとの避難先はおおむね事前把握することができるものと考えております。
 次に、本県のBCP(事業継続計画)の策定状況とその見直しにつきましては、県では災害対策本部応急対応マニュアルを策定し、発災直後の優先業務について定めているところであり、今回の東日本大震災の被害状況を踏まえて、通常業務も含めた業務継続計画の見直しを行うこととしております。また、市町村が行政機能を喪失した場合への対応が極めて重要な課題であると認識しております。
 現在、BCPを策定している市町村はありませんが、今後、国が示している手引などに基づき策定を進めるよう、県としても努めてまいります。
 最後に、県内市町村の災害時の相互応援協定の締結状況につきましては、県内では13の市町が県外市町との相互応援協定を締結しており、主に物資、資機材、車両等の提供や職員の派遣等について定められております。東日本大震災によって行政機能が喪失している市町村の現状を踏まえると、東海・東南海・南海地震の発生に備え、遠隔地の市町村との相互応援協定は、応援元を多く確保しておく観点からも意義のあることと考えております。また、同種の事務、同種の職種による応援活動によって、応急対策、復旧・復興対策が迅速かつ適切に遂行されるものと期待できます。
 県といたしましても、こうした協定の締結がさらに進むよう、さまざまな情報提供や助言などに努めてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) まず、東日本大震災を受けての県職員のボランティア参加状況と現地ボランティアセンターの調査についてでございます。
 被災地支援におけるボランティアの果たす役割は非常に重要であり、今回の震災においてもボランティアの活動が連日報道されています。本県におきましても、被災地支援のため、救助活動や物資集積場の運営、健康医療活動や医療援助等に多数の職員が従事してきたところです。
 県職員のボランティアについては、個人で参加しているボランティアの人数は把握しておりませんが、県と県社会福祉協議会が運行している災害ボランティアバスに県職員が毎回添乗しており、現地でのボランティア活動の実態やボランティアセンターの運営方法等について情報収集を行い、課題等の把握に努めているところです。
 また、ボランティア休暇の取得については、毎年庁内に周知していることに加え、今回の東日本大震災に係るボランティア休暇に関しましては、取得日数の増加を人事委員会に依頼しているところであります。
 次に、県と社会福祉協議会との連携状況についてでございます。
 平成20年10月、和歌山県社会福祉協議会内に常設で和歌山県災害ボランティアセンターを設置し、県災害対策本部と一体的に活動し、災害ボランティア活動に係る情報受発信や市町村災害ボランティアセンターの後方支援等業務を行うこととなっています。
 議員御指摘のとおり、県災害ボランティアセンターと市町村災害ボランティアセンターが連携し、情報共有等を行うことが円滑なボランティア活動に結びつくと認識しているところでございます。
 県としましても、各市町村に災害ボランティアセンターの重要性をさらに周知するとともに、現在、県災害ボランティアセンターで行っている災害ボランティアコーディネーター等支援者養成研修事業等の充実を図り、県災害ボランティアセンターと関係機関のネットワーク強化を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 残時間8秒ですが、再質問なさいますか。
  〔「はい」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 8秒以内でお願いいたします。
 39番山下大輔君。
○山下大輔君 2点だけお願いいたします。
 戸別受信器について、再度また御検討いただきたい。
 それと、知事に、最後のソーラープロジェクト。
 これ、今言われた、もう一回ちょっと枠を見てもらいたいんですけれども、県のお金だけじゃなくて地元金融機関の協力も得て対応できることも検討したフレームですんで、一度本当に考えてください。スピードが勝負で、和歌山が本当にここからまた活性化できる起爆剤になると思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上、終了いたします。
○議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で山下大輔君の質問が終了いたしました。ややオーバーしたことをお忘れなく。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 3番尾崎太郎君。
  〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 早いもので、和歌山を震撼させた官製談合事件から5年が過ぎました。仁坂知事は「二度と不正が起こらない仕掛けをつくる」と公言し、入札制度の改革に取り組まれてきました。我々自由民主党県議団も、かんかんがくがくの議論を知事及び当局と重ね、声を荒げることもしばしばであり、私自身も知事と知事室で激しい議論をしたことを思い出します。
 本県経済にとり、公共事業は地場産業と言われるぐらい大きなウエートを占めるものであり、入札制度は業者の盛衰に直接かかわるものであるだけに、単に公平性、透明性、競争性を高めればそれでよいといった性質のものではなく、地域性、業界全体のバランス、地元業者の保護育成といった複雑な連立方程式を解かなければなりません。あちらを立てればこちらが立たず、自民党の中ですら時には意見が対立することもあり、今日なお、さまざまな見解が存在していることも事実であります。
 この5年間はまた、公共事業悪玉論が我が国を覆い、「コンクリートから人へ」などというスローガンがもてはやされ、我が党の大きな支持基盤でもあった建設業界は意気消沈し、我々は政権を失いました。
 民主党政権は、公共事業の仕分けが国政の最重要課題であるかのように振る舞い、一知半解の知識で、精緻に積み重ねた予算を次々に削減していきました。麻生総理がせっかく補正で積んだ防災、耐震化の予算までもが仕分けされてしまいました。未曾有の震災に見舞われた今、彼らの派手なパフォーマンスがむなしく思えてなりません。
 緑滴る我が国の自然は、世界でもまれなる生物の多様性を誇る豊穣で美しいものであり、大陸の荒涼たる風景などを見るとき、我々は何と恵まれた国に生まれたのかと感謝の念を抱かずにはおれません。その一方で、我が国は震災や台風に見舞われることたびたびであり、ヨーロッパなど天災の少ない地域をうらやましく思えるかもしれません。
 日本列島は、地殻40年の歴史の中で、3億年より新しい地層で構成されています。我が国の地層は非常に若いのであり、まだまだ安定するにはほど遠い状態で、小刻みな地震はそれこそ絶え間なく起こり、時には極めて大規模な地震が発生します。
 竹村公太郎氏の「日本文明の謎を解く」によれば、西暦1600年以降だけを見ても、このあたりからは比較的信頼できる史料があるようですが、慶長地震、元禄地震、東日本大震災までは記録に残る最大の地震とされていた宝永地震、八重山地震津波、島原大変肥後迷惑、善光寺地震、南海地震、安政東海地震、江戸地震、濃尾地震、明治三陸地震津波、関東大震災、北丹後地震、昭和三陸地震津波、鳥取地震、東南海地震、三河地震、南海地震、福井地震、そして兵庫県南部地震と、1000名以上の死者を出した地震・津波が歴史的な視点から見ればそれこそ頻発していることがわかります。今回の震災は1000年に1度などと言われましたが、我が国では100年におおよそ1度ないし2度も1万人以上の死者を出す地震・津波が起こっているのです。
 その一方で、地層の若さは土地が柔らかいということであり、豊穣な降雨量と相まって手間さえかければ耕作地としては理想的で、豊かな実りをもたらすものでありました。世界史は農耕民族と遊牧民族の角逐の歴史であると言えなくもありませんが、我が国がこの種の争いを避けることができ、極めて安定した社会を築けたことがこの地層の若さがもらたす豊かさであったことを考えれば、まさに禍福はあざなえる縄のごとし、我が国においては天災と自然の恵みは表裏一体のものであったと言えましょう。
 このような国土を持つ我が国においては、治山治水、災害対策等にかけるべき予算は諸外国に比べて多くなるのは当然であります。我が国の公共事業の対GDP比がヨーロッパ諸国と比べて高いからけしからんとの近年の論調はいただけません。災害対策は、この豊かで美しい列島に住む我々に課せられた宿命であるのです。
 無駄な公共事業がなかったなどと言うつもりはありませんし、費用対効果は検証されてしかるべきでありましょうが、国債は国民の借金であるというデマは払拭されねばなりません。我が国の国債は、そのほとんどが国内で消化されています。わかりやすく言うならば、国民が政府にお金を貸しているのです。国債は政府の借金であり、国民の資産であるのです。よく個人の金融資産は約1400兆で、それが国債の発行の限界だという言説も見られますが、根拠がよくわかりません。そもそも、国債で調達したお金は何らかの形で支出されるのですから、それは国民の所得になるはずです。荒っぽく言えば、国債発行の分だけ国民の金融資産はふえるのです。実際に、統計はこれを裏づけています。だれかの借金はだれかの資産であり、だれかの支出はだれかの所得なのです。
 アメリカの格付会社ムーディーズが2002年に日本の国債をボツアナ国債と同じ格付にしました。当時も今も我が国は世界最大の経常黒字国にして世界最大の債権国なのですから、どのような論理を駆使すれば日本の信用力をボツアナ並みに落とせるのか、全く理解に苦しみますが、ことしに入り、スタンダード・アンド・プアーズが日本国債の格付を引き下げました。
 与謝野経済財政相は、この引き下げについて、「債務残高が増加している。判断をする根拠が多分あったのだろう」などと語っています。彼は一体どこの国の大臣なのか。もっとも、恥も節操もなく政権に潜り込んだやからなどこんなものかもしれませんが。
 言うまでもなく、格付会社は自己の利益を追求する民間企業であり、公平無私なものであるはずがありません。あるいは知的エリートを自認する者にありがちですが、彼は頭から我が国が欧米よりも劣っていると思い込んでいるのかもしれません。
 国際通貨基金・IMFは、訪日調査を終え、我が国の財政再建策について、「歳出削減の余地が限られる中、段階的な消費増税を中心とした包括的な税制改革によるべきだ」と指摘し、具体的には消費税率を来年度から7%から8%に引き上げる案を示しました。大きなお世話であります。
 橋本総理は、1997年に消費税を3%から5%に引き上げました。当然消費税はふえましたが、法人税と所得税は減り、全体としては税収は減ってしまったのです。自民党はその後の参議院選挙で敗北し、橋本総理は退陣しました。再登板を期して出馬した2001年の自民党総裁選挙では、彼は、「振り返ると、私が内閣総理大臣の職にありましたとき、財政の健全化を急ぐ余りに財政再建のタイミングを早まったことが原因となって経済低迷をもたらしたことは、心からおわびいたします。そして、このしばらくの期間に、私の仲のよかった友人の中にも、自分の経営していた企業が倒れ、姿を見せてくれなくなった友人も出ました。予期しないリストラに遭い、職を失った友人もありました。こうしたことを考えるとき、もっと多くの方々がそういう苦しみをしておられる。本当に心の中に痛みを感じます」と語りました。
 私は、自民党和歌山県連の青年部長としてこの総裁選挙に投票すべく党本部におりましたので、直接この演説を聞きました。恥を忍んで国民のため、みずからの過ちを率直に認めざんげした橋本総理の誠実に報いるためにも、我々はこれを教訓とせねばなりません。橋本総理は死ぬまで、消費税率の引き上げのタイミングを誤ったことを後悔していたと言われています。
 壊滅的な被害をもたらした震災を経てなお、自国の通貨高を抑えるため、中央銀行が通貨市場に介入せざるを得ない奇跡の国。復興のため海外資産を売却し、円にかえる動きがあるにせよ、世界じゅうの人々が円を買っているわけですから、日本の信用の高さがわかろうというものです。
 「信用こそ財産」とはよく言ったもの、円だろうがドルであろうが、もはや金の裏づけなどないのですから、ただの紙切れに1万円の価値を持たせているものは、幻想と言えば幻想、信用と言えば信用と言えるものでしかありません。そして、日本人ほど自国を信用している国民はそうはいません。二千数百年にわたり連綿と続いてきたので、我々にとって日本国は、信用しているというよりもはや所与の条件のようなものですらあります。その上、先人たちのおかげで諸外国からの信用も絶大なものがあります。まして、繰り返しますが、我が国は世界最大の経常黒字国にして世界最大の債権国なのです。いかに民主党政権が無能だとはいえ、極めて優秀な国民がいる日本をギリシャのようにすることはそう簡単にはいきますまい。
 少なくとも自国通貨建てで、しかもそのほとんどを国内で消化している我が国の国債がデフォルトする可能性など、理論的に極めて低いと言わざるを得ません。世界最高の生産力を誇る我が国が、それゆえデフレに苦しんでいる現在、復興需要や防災対策等、有効な使い道、需要は幾らでもあるのですから、積極果敢に建設国債を発行し、迅速に公共事業を実施すべきであります。民需が低迷している今こそ、官需を喚起しなければなりません。民需が旺盛になれば官需を縮小すればよいのです。
 そこで問題となるのは、官需は税金でつくられるものですから、たとえケインズ的な有効需要の創出とはいっても、まさか穴を掘ってまた埋めるといったものでは国民に受け入れられはしません。また、その需要を満たす供給者の選定、すなわち入札は厳正、公平なものでなくては国民の目には利権の創出のように映ってしまいます。
 目的と執行において国民にきちんと説明ができることを条件に、今日の我が国の情勢は今やGDPの4%まで落ち込んだ公共事業を倍増させることを要求しているのです。本県においても東南海・南海地震の発生が懸念される中、県民が必要とするインフラの整備を早急に行うべきであることは論をまちません。入札制度の改革は、この点でも大いに意味のあることでありました。
 さて、本県の入札制度は、知事、関係当局、建設業界、先輩・同僚議員の努力もあり、対外的にも一定の評価を得るものとなっています。しかし、なお検討の余地があると思われる点があります。それは、1億円以上の予定価格の非公表であります。
 この点につきまして、私は当初から公表論者であり、本県の入札制度改革を御指導賜った郷原先生も同意見でありました。積算もできないような業者は淘汰するというのが県の方針であり、筋は通っていますが、それには隠した予定価格が絶対に漏えいしないということが大前提です。漏えいのリスクは県がとるべきで、そのために健全な業者を犠牲にはできないとする知事の意見はそのとおりでありますが、予定価格が漏えいしているとのうわさは絶えません。
 今回、選挙の洗礼を受ける中で多くの県民と接してまいりましたが、「予定価格は漏れている」と複数の業者から言われました。その都度「そんなことはないでしょう」と応じてきましたし、今の県職員にはそのような不届き者はいないと信じたいのですが、予定価格を知り得る立場の職員は複数名はいるわけですし、知事の言う「不正の起こらない仕掛け」は、この点においてはなされているとは言いがたいのではないでしょうか。一に県職員の良心にゆだねられているのですから。
 もちろん、予定価格を漏らすことは競売入札妨害に当たり犯罪でありますが、犯罪になるからやるはずがないといったところで説得力に乏しいでしょう。現実に、予定価格が漏れていると考えても不思議ではない入札結果も散見されます。
 特別重点調査は、設計工事価格の内訳から直接工事費の75%、共通仮設費の70%、現場管理費の70%、一般管理費の30%を算出し、入札内訳書の金額が上記4項目いずれか1つでも下回った場合に対象となり、事実上失格となります。現在では当然のことながら談合は行われていないため、各社とも土木・建築工事では低入札は当たり前となっており、特別重点調査の対象とされないことが落札の大きなポイントとなっています。
 例えば、ある工事で某社は、他の3社がその会社のものより高い価格で入札したにもかかわらず、特別重点調査の対象となり失格したため、落札しています。低い入札価格を提示した会社が特別重点調査の対象となり失格したというのならまだわかりますが、高いところが3社も失格しているのです。某社は予定価格を知らずに積算し、4項目とも恐らくぎりぎりでクリアしたのですから、まさに神わざです。偶然そうなったと言わざるを得ないわけですが、このような事例が何度かあれば、予定価格は漏えいしているとライバル会社が考えたとしても無理はありません。
 実際には、入札を有利に運ぶために予定価格をあの手この手で探ろうとする動きはないとは言えません。あるいはコンサルあたりからでも探ろうとするかもしれません。積算能力を高めることが予定価格を隠す理由であったはずですが、現実には土木・建築の入札は特別重点調査の対象となる価格の探り合いの様相を呈しています。何となれば、本当に水も漏らさぬ積算をしても、4項目のうち1つでも調査価格を下回れば事実上失格になるのですから。つまりは、積算能力がある業者が失格となってしまう可能性もあるのです。
 来月からはランダム係数の幅も広げるようですが、これは落札業者の偏りをなくすためでしょう。落札をより偶然性にかからしめるわけですから、これは積算能力のない業者を淘汰するために予定価格を隠すという方針とは矛盾しているように思われます。
 そうであるのなら、むしろ予定価格を公表し、業者に要らぬ疑念を抱かせないようにしたほうがよほど健全であるように思いますが、いかがでしょうか。せっかくの入札制度改革が、予定価格を隠したために、何か怪しげなもののように思われているのは残念でならないのです。
 さて、県立医科大学についての監査結果が報告されました。一部は5月19日の「読売新聞」やNHKニュースでも広く報道され、県民の知るところとなりました。電気・機械設備運転監視及び保守業務は、毎年4億5000万円を超える価格で特定の業者と12年もの間、随意契約を交わしていました。そもそもこのような巨額な随意契約をすること自体、和歌山県立医科大学契約事務取扱規程違反であり、契約額も他の事業者等と比較検討されていませんでした。つまりは、言い値で契約していたということでしょう。
 さらに、空調フィルターの点検、取りかえ業務などは、当初の予定から取りかえ実績が減少すれば他の点検業務の増加で相殺されております。これは業務内容の変更であり、書面での決裁が必要であるにもかかわらず、なぜか一切なされていません。
 私は、以前から、医大の入札はおかしいとの意見を、特に医大で仕事をしている業者の方に伺っていましたし、予算委員会での医大の入札に関する同僚議員の質問もあって、独自に調査してきました。業務内容が変更されても契約額がいつも変わらないのは、そもそも医大と業者側に暗黙の了解、ある一定の額の仕事を出すというようなものがあるのではないかとの疑念を持ち、医大に直近5年間の仕様書を見せてもらいましたが、果たして、内容は随分異なっても、契約金額はなぜか4億5000万円以上となっています。
 運転監視業務だけで、単なる監視ですが、2億円を超える予算がついていたことに驚いた私は、その中身を尋ねたところ、施設管理課長は「人件費です」と答えました。さきに述べたように、予算は特定業者の言い値であったのですから、この特定業者は一体何人でこの監視業務に当たっているのか内訳書を見せてもらいますと、29名になっています。
 一般に役務の提供では、従事者数をごまかして利益を上げることは発覚しにくいだけに、比較的よく行われる不正であると言われています。施設管理課は、実際に業務に従事している者をチェックする体制をとるべきでありますが、管理日誌には勤務した人数の記載はあるものの、肝心の氏名の記載はありません。
 同課は、人命にかかわる病院施設での業務のため同業者で対応を続ける必要があったなどと随意契約の理由を述べていますが、人命にかかわるというのならば、医大の心臓部であるエネルギーセンターの監視業務で、実際に従事している者がどこのだれだか知る必要はないというようなことには絶対にならないはずです。医大で清掃業務を請け負っている地元業者には、同課は従事者の氏名を明記させた日報を提出させているのですから、実に奇妙なことであります。
 12年にわたる随意契約、仕様書どおりの仕事をせずとも必ず一定の請負金額になるシステム、言い値の契約額、甘いチェック体制、これらを県民はどう見るでしょう。本県の医務課長によれば、仕様書には書かれていないこともこの業者にはやらせていると医大は言っているようですが、多分随意契約の言いわけとして言っているのでしょうが、そうであれば随分親密な関係にあると言えるのではないでしょうか。
 私は、この監視業務にはとても29名も要らないだろうと思いましたので、施設管理課長にただしたところ、彼は、「それは登録しているだけの人数です」とあっさり認めました。余りにもあっさり認めたので、感心したくらいです。本業務は今年度からは入札されていますが、応募してきた業者からの「本業務は何人で行っているのか」との質問に「常勤で29名である」と答えているので、私は「実際は登録しているだけなら常勤29名と回答するのはおかしいではないか。新規参入業者の積算は高目になるだろうから、この入札は中止すべきだ」と主張したので、よく覚えています。
 さらに、何とか入札を執行しようとする脇田事務局長に、「どうしてもこの入札を執行したいのであれば、せめて今からでも口頭ででも参加予定者にその旨伝えてはどうか」とまで進言したのですから、施設管理課長が「登録だけです」と言ったのは、紛れもない事実なのです。それが今になって、彼はだんまりを決め込む始末です。
 このややこしい入札を小濱副理事長や脇田事務局長は何とか強行しようとしましたが、私が仕様書のさまざまな不備を指摘したので、それらはいずれも特定業者に有利に働く点であると思われましたが、この入札は取りやめになりました。これらの点につきましては、やや専門的でありますので機会を見て委員会でやりたいと思います。
 入札の結果は、医大のホームページによりますと、随意契約により2割ほど安く、MIDファシリティマネジメントが落札しています。実は、この業者が長年独占的に受注してきた業務はほかにもあり、それは清潔区域環境管理業務と呼ばれているものです。「呼ばれている」と申し上げたのは、管理業務とはいうものの中身は清掃業務にほかならないからです。
 この業務については、毎回指名競争で入札が行われてきましたが、指名される業者は毎回3社だけであり、なぜかそのうちの1社は毎回必ず辞退するのです。辞退するような業者を毎回指名するというのも、またしても奇妙でありますが、落札者は毎回必ずMIDファシリティマネジメントなのです。
 指名選定の理由は、ISO9001の認定を受けていること、高度清潔区域の特殊事情に十分対応でき、公立病院の実績があることであるとされています。しかし、業務の実態は清掃なのです。何かしら特殊な清掃が行われているわけではありません。例えば、滅菌作業のようなものは別途発注されているのです。
 この仕様書を見てみますと、コンサルタント業務、環境管理に対する提供、助言、分析、選定等なるものが含まれています。ほとんど意味不明ですが、何とかしてこの業務をただの清掃とはとられたくない意図が透けて見えます。というのも、この業務に至ってはもはや予算の根拠となる積算すらされた様子がありません。したがって、この予算が適切であるとはとても思えませんが、恐らくは極めて高い予算になっているのでありましょう。そのための言いわけとして、また地元業者の参入を阻むため、コンサルタント業務なるものがつけ足されているのではあるまいか。しょせん、清掃に大した特殊事情などありはせず、他の清掃業務との違いは回数とマスクの着用ぐらいのものなのですから。
 とまれ、県の入札制度改革の基本は談合ができなくなる仕掛けをつくることでありましたが、反対に談合がしやすい仕掛けを考えるとしたら、医大のやり方がベストでありましょう。何しろ参加者が毎回同じで2社しかないのですから。果たして県民は、このような事実を知ってなお、この入札が適当であったと考えるでしょうか。
 以前、私は、医大での注射針混入事件を取り上げ、医大の管理のずさんさ、医大の統治のあり方を予算委員会でただしたことがありました。少しは医大の管理もましになり、質問のかいもあったのではないかと思っておりましたが、全く改善されてはいませんでした。
 例えば、昨年、MIDファシリティマネジメントが管理を請け負っている駐車場に人ぷんと思しきものが放置されていたことがありました。何と同社は、この人ぷんを他の場所の清掃を請け負っている業者に処理させているのです。病院の敷地内で放置された人ぷんは感染性のものである可能性もあり、本来、それなりのマニュアルに沿って処理しなければならないはずです。人命にかかわると医大が大見えを切った業務に、この駐車場管理は含まれているのです。
 人ぷんの処理をさせられた会社は、当然、施設管理課へ抗議に行きましたが、何と同課は「民間のことなので民間で処理してください」と言ったそうであります。普通はMIDファシリティマネジメントに始末書を提出させ、感染予防対策委員会に報告し、再発防止策を講じるべきであります。結局、この件について当該業者は何のおとがめもなし。これは仕様書にはない業務をやってもらっているからなのか、施設管理課の怠慢なのか。
 ちなみに、MIDファシリティマネジメントは、わかやま館をことしの3月までの5年間、指定管理者として管理していました。年間の管理料は、驚くなかれ、1億円です。わかやま館は本年から県の直接管理となっていますが、その理由は行政目的を達成できないためとなっています。年1億円も払って行政目的を達せられないとは、県が悪いのか、MIDファシリティマネジメントが悪いのか。
 話を医大に戻しますが、業務を総理すべき理事長にしてから、個人として返還しなければならない金員を大学に立てかえ払いさせているわけですから、職員の規律が緩むのもむべなるかな。このケースでは、大学のお金は一体どのような手続で支出されているのか。常識的には大学の業務に金銭消費貸借があるとは思えませんが、仮に支出の手続に問題がなかったとしても、大学の学長にして理事長である板倉氏がみずからの返還分を大学に立てかえさせたとなれば、彼の良識を疑わざるを得ません。
 地方独立行政法人法によれば、学長は人格が高潔であることが求められています。これはやはり、県立医大のガバナンスについてもう一度考えてみたほうがよいのではないかと思います。議会というくびきから逃れることは、なるほど楽ではありましょう。我々も選挙がなかったらどれほど楽か。知事も我々がいなければどれほど楽か。しかし、楽は堕落への最短距離なのです。
 県立医大は、予算規模からいっても職員数からいっても小さな町以上のもので、学長を兼務する理事長の権限は絶大です。理事は副理事長を入れて4名しかおらず、いずれも理事長が任命するのですから、だれが理事長に物申せるのでしょうか。もし理事長がよからぬ行いをしたら、知事ですらそういうことはあり得たのですから、これをいさめるシステムはあるのでしょうか。
 しかも医大は、県の所管が総務部であるときは総務部長を副理事長に迎え、福祉保健部に所管が移れば福祉保健部長を副理事長に迎えています。これを天下りと言わず何を天下りと言うのか。ついでに言うなら、板倉氏への大学からの金銭貸借の決裁を恐らくはしたであろう元県総務部長の小濱副理事長は、県信用保証協会の理事長におさまっています。まるで笑い話ですが、これをわたりと言わずして何をわたりと言うのか。医大の副理事長は年収1000万円以上ですし、保証協会の理事長の年収も非公開ですが、恐らくはそのくらいはあるのでしょう。全く結構なものです。
 人は、私も含めて間違いを犯す生き物です。しかし、そのときの責任のとり方にこそ人格があらわれましょう。個人として返還すべき金員を自分が学長を務める大学に立てかえさせるとは、どう考えても県民の理解は得られますまい。この件に関する彼のコメントは、次のようなものです。「研究費の不適正支出の件につきましては、長期にわたり県民の皆様に多大の御心配をおかけしました」。あなた、当事者ですよと、思わず突っ込みたくなるではないですか。それこそ人命にかかわるだけに、今のようなガバナンスでは心もとないと感じるのは私だけでしょうか。いずれ大きな問題になるような気がしてなりません。
 そこで、知事にお尋ねします。
 第1点、医大に対する監査報告を受けてどのような感想を持ったか。第2点、不適正支出された研究費の返還金を大学が立てかえたことについて、医大の設置者として、県民の代表として、知事はどう考えるか。第3点、理事長と学長を分離することについてどう考えるか。
 次に、県土整備部長にお尋ねします。
 1億円以上であっても予定価格は公表すべきであると考えるが、いかがか。
 以上お尋ねして、質問といたします。(拍手)
○議長(新島 雄君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 3点お答えする前に、議員御指摘の中で誤解と称するところが2点ありましたんで申し上げておきますと、議会がいないと楽なんてことは思ったことはございません。
 それから、弱者を淘汰させるために予定価格を非公表にしているというつもりは全くありませんで、あれは最低価格の相当域に業者さんが皆集中してダンピング合戦になるということを防ぐためにだけやっていることでございますので、それを申し上げて御質問に答えたいと思います。
 まず第1の点について、監査報告を受けてどのような感想を持ったかという点について一言で申し上げますと、よく言ってくださいましたと、それはよくわかったから徹底的にやらにゃいかんというふうに思いました。
 もうちょっと詳しく申しますと、御指摘の事項につきましては、医科大学の行った入札制度改革、これはちょっと後で申し上げますが、競争性、透明性の確保を図るために実は平成23年度契約分より──改革はもうちょっと前からやっておるんですが──随意契約から総合評価落札方式による条件つき一般競争入札に改め、実施したところではあります。
 この入札制度なんですけれども、その前に、県の入札制度につきましては、私自身が直接指揮をとりましたので、これはよく理解しておりますが、一般競争入札を全面的に導入して、その前提としての資格審査とか、あるいは県内業者優先の原則とか、そういうバランスに配慮してつくったわけでございます。
 実は医大も、これを議論している平成19年、20年度ぐらいに、それまでの制度を少し改めて一般競争入札を導入しようという流れにあったんですが、ただバランスという点では全く県の制度の趣旨を無視してつくっておられまして、しかもそれを外部から批判をされたときに「県の制度をそのまま導入したんでございます」という説明をなさったもんですから、実は県の制度自体が悪評さくさくになりまして、簡単に言うと県の制度というのは県外業者を優先する制度だというような、全くとんでもない誤解が世の中に流布したという非常に苦い経験があります。
 そこで、ちゃんと指導をして直してくださいと、県の制度と言うんだったら県の制度のまま直してくださいというふうに申し上げたんですが、何度言っても直らないので、もう時間が余りにもたつので、多少越権行為だとは思いましたけれども、直接指導をして現在の制度をつくったということで、現在の制度は県の制度と余り変わらないものになっております。
 その制度の中でも、それからその制度ができる前も、随契というのは今でも許されてるし、前はもちろん許されているわけです。ただ、今の制度で言うと随契というのは、ちゃんと理由があって、みんなが納得できるようなものでないといかん、それをしかも公表してやるんだということになっとるわけでございまして、現実に平成11年度から平成22年度までの12年間という長期にわたり、御指摘のように同一業者と随意契約を継続していたということについては、監査委員からの御指摘のとおり随意契約の理由が私はないと思います。適切ではなかったと考えております。
 また、他の事務処理等に関する注意事項等、たくさんございました。これも監査結果を真摯に受けとめて、県なりに原因究明と改善指導を早急に行うようにしておりまして、医大もそれに従ってやってもらわないといかんと思っております。
 今回の監査結果を踏まえて、県といたしましても、本来、監査委員に御指摘いただく前に私どももそれをよく認識して自分たちで先に指導に入っておくべきだったという気もいたしますので、あらゆる業務の再検証を行うなど、ガバナンスの強化に向けた取り組みを強く促すようにしたいと思っております。
 また、こういうことに懲りて、あるいは前から問題意識もありましたので、今年度から理事長、学長との間で直接何でも意見交換をして話し合うというような連絡協議会をつくりまして、結構真摯にいろいろな議論をしているところでございます。その場を通じて必要に応じて助言をしてまいりたいというふうに考えております。
 2番目は、研究費の問題でございます。
 この研究費に関しましては、現実には、例えばポケットに入れるとか何とかというような、そういうレベルではなかったかもしれませんが、いずれにしても不適正経理である、手続に違反しておったということは明らかでありまして、この返還につきましては、平成22年度末までに大学が立てかえて国等に対して返還を完了させました。
 立てかえたことにつきましては、補助金等を活用した研究者個人の研究活動が大学の指導監督のもとで実施されていることや、あるいは今後も片をつけてしまわないと補助金がもらえないというところがございまして、補助金等の支援を受け続けるためには速やかに立てかえて返還を行ってしまわなきゃいかんということで行ったものであると聞いております。今回のそのときの大学の判断は、私はやむを得ないものであったと考えております。
 なお、これもまたちょっと誤解があるかもしれませんが、実はこの立てかえを決めたのは板倉現学長がまだ学長になっておらんときで、南條前学長のときにこういうことでやりたいと思うがどうであるかというふうに私は聞いて、まあしようがないですねというふうに申し上げた経緯があります。それで、意思決定は前のときになされていたということです。
 板倉理事長御自身の返還につきましても、平成22年度中に一括して大学に返済しておりますけれども、大学が一時的ではありますが立てかえたことは、もちろん事実であります。こうした一連の出来事によりまして、県民の方々に不信感を与えたことも事実であると考えております。板倉理事長を初め、大学の方々がこの問題を十分反省し、現在、大学において県民の皆様が安心していただける地域医療の充実や信頼される大学を目指してさまざまな改善策に取り組んでいるところであると理解しておりますし、そうでなきゃいけないわけですから、県としても大学と緊密に連携、協議しながら、必要に応じ適切に助言・指導してまいりたいと思います。
 次に、理事長と学長を分離することについてどう考えるか。
 これは、いろいろ議論のあるところだと思います。理事長・学長一体型、分離型、それぞれにメリット・デメリットがありますが、理事長が学長を兼務する一体型は、教学と経営の円滑かつ一体的な合意形成が可能となる仕組みであって、法人の運営面、大学の教育機能面での整合を図ることができて、理事長のリーダーシップと迅速な意思決定が期待できるという点がメリットだと思います。
 他大学の状況は、国立大学法人におきましては、すべて理事長・学長一体型となっております。医学部を有する8公立大学法人においては、公立大学法人横浜市立大学、2大学を設置する──これは2大学から1つできているという意味ですが──これを設置する京都府公立大学法人以外は理事長・学長一体型となっております。
 議員御指摘のように、35名の処分者に現理事長板倉教授が含まれていたということは大変残念なことであります。これについては、きょう御説明しませんが、私もそういうことの弊害を指摘して大学人の意識を覚せいさせようとしたところもありますが、現在は大学人が一致団結して、板倉理事長のもと、全学を挙げて地域医療の充実等さまざまな改善に取り組んでおりますので、こうしたことから制度としては学長が理事長を兼ねるということが今のところ妥当と考えており、問題が生じないようにむしろその外から設置者たる県がその経営の中身をよく知悉して、必要に応じて指導していくのがよいのではないかと相対的には思っております。
○議長(新島 雄君) 県土整備部長森 勝彦君。
  〔森 勝彦君、登壇〕
○県土整備部長(森 勝彦君) 予定価格の公表についての御質問にお答えいたします。
 平成20年6月から導入いたしました新公共調達制度におきまして、予定価格はすべて事前公表しておりましたが、最低制限価格の類推がより容易になり、適正な見積もりを阻害して過度の低入札を招く要因になることが懸念されたため、平成20年12月から予定価格1億円以上の工事について事後公表としております。
 議員お話しの予定価格の事前公表については、建設企業の見積もり努力を損なわせる弊害があり、またダンピングを助長するおそれがあることから、好ましくないものと考えております。
 なお、議員からお話しいただいた各点には勉強すべきところもあると考えておりますので、今後検討してまいります。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 再質問を許します。
 3番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 予定価格なんですけど、これ、やっぱり漏れてるとよく言われるんですよ。選挙するとあちこち行きますから、本当に多くの方々と接するんですけど、それぞれの同僚議員の方もそういうことを恐らくお聞きになったのではないかと私は思うんですけど、やっぱり隠してるから漏れてると言われるんですね。
 だから、今部長がおっしゃった、隠すことによるメリットと隠してることによって何か県がうさん臭いと思われるデメリットを考えたら、私は、今はあけても、それほどダンピングやそんなにならんために低入制度もあれば最重点の制度もつくったわけですから、そんなにダンピングにならんと思うんですよ。
 だから、これは引き続き議論のあるところだと思いますけれども、研究をしていっていただきたい。そして、少なくとも、世間から漏れてると思われてるというふうに部長も思っていただきたい。恐らく知事は、選挙をなさったから、そんなことを聞かれた──知事は敷居高いからぽっとみんな言わないかもわかりませんけどね──そういうことをお聞きになったかもわかりませんけど、部長もたまに県民の中へ分け入ってざっくばらんに──余り会議の席ではこんなこと言わないかもわかりませんよ、皆さん。だけど、割り勘で飯食うとったら、「いや、漏れてるで、部長」というところを言われるかもわからない。そういうところにやっぱり県民が日ごろ思っている気持ちというのがあらわれると思うんですよね。行政はそういうのをやっぱり多少酌み取らなければいけないのではないかと思います。
 それから、医大の不適正支出の件については、決裁は前の学長のときに行われた。そうなんでしょうね、知事がおっしゃるんですから。しかし、そうでなるならば、板倉さんは自分の分についてはやっぱり自分で返さなければいけなかったと思いますね。学長に就任することはわかっているわけですから。それぐらいのトップとしての見識というのがあってしかるべきであったのではないかと思うんですね。この点につきましては法律的にどうなのか、もうちょっと僕も勉強したいと思います。
 例えば、県で同じようなことがあって、国から交付金もらえやんから、とりあえず県で職員が不正に空出張やったやつを返しました、後で職員から返してもらいます、そんな話が成り立つとは到底思えないし、厳格な仁坂知事のことですから、そんなこと許すとはとても思えないんですね。そういうことで、わずか数年前に県の一機関であったときは、とてもそんなことは起こり得なかったと思うのが、独法になったがためにいろんな問題が出てきたと。一度立ちどまって、果たしてこの独法が成功だったかどうかという議論もまたしていかなければならないと思います。
 以上、意見を申し述べまして、質問を終わりたいと思います。
○議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 議案第74号から議案第91号までは、お手元に配付しております議案付託表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。6月27日及び28日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 御異議なしと認めます。よって、6月27日及び28日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、6月29日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時44分散会

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