平成23年6月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(多田純一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 30番多田純一君。
  〔多田純一君、登壇〕(拍手)
○多田純一君 おはようございます。
 改選後、初めての登壇です。改めて、4月10日の県議選におきまして、多くの県民、市民の方々に御支持、御支援賜りましたことを御礼申し上げたいと思います。
 再びこの県政壇上に立たせていただきました。この選挙戦を通じて、さまざまな県政の課題、また、この3月11日の未曾有の大震災を受けて喫緊の課題となりました東南海・南海地震の備えについての御要望や意見等もちょうだいいたしました。御期待におこたえできるように、微力ではございますけども、誠心誠意努力してまいりたいと思います。
 また、改めて、東日本大震災におきましてお亡くなりになりました皆様に哀悼の意をささげるとともに、いまだに生活困窮を余儀なくされておられる皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。
 それでは、議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入ります。
 最初に、東日本大震災を経験して、本県の災害対策についてお伺いをします。
 小学校5年生国語の光村図書出版の教科書には、この4月から「稲むらの火」が64年ぶりに復活し、利用されています。
 ここに、娘から借りてきました教科書を持ってまいりました。少し紹介をしたいと思います。
 「百年後のふるさとを守る 『これは、ただごとではない。』とつぶやきながら、五兵衛は家から出てきた。今の地震は、別にはげしいというほどのものではなかった。しかし、長いゆったりとしたゆれ方と、うなるような地鳴りとは、老いた五兵衛に、今まで経験したことのない不気味なものであった。 五兵衛は、自分の家の庭から、心配げに下の村を見下ろした。村では、豊年を祝う宵祭りのしたくに心を取られて、さっきの地震にはいっこう気がつかないもののようである。 村から海へ移した五兵衛の目は、たちまちそこにすい付けられてしまった。風とは反対に波が沖へ沖へと動いて、みるみる海岸には、広い砂原や黒い岩底が現れてきた。『大変だ。津波がやって来るにちがいない。』と、五兵衛は思った。このままにしておいたら、四百の命が、村もろともひとのみにやられてしまう。もう一刻も猶予はできない。 『よし。』とさけんで、家にかけこんだ五兵衛は、大きなたいまつを持って飛び出してきた。そこには、取り入れるばかりになっているたくさんの稲束が積んである」、こういうふうに書かれておりますし、この後の話は、高台にある庄屋の五兵衛の家に村人を導き、津波から大勢の方が助かったというふうに続いてまいります。
 これが、157年前の1854年に起こった安政南海地震。その後、被害に遭った村人が希望を失い、村を捨てようとする者まであらわれ、村人たちに希望と気力を取り戻してもらえるようにと、私財をなげうち、村人みずからの手で堤防づくりを始めました。
 全長600メートル、高さ4.5メートルという大がかりな防災事業を、4年かけ完成させています。その後、松の木も数1000本植えられ、強固なものができ上がり、堤防完成から88年後の1946年、昭和地震では村の大部分が津波から守られたということで、100年後に大津波が来ても村を守れる堤防をという儀兵衛の願いが実現したことになりました。この儀兵衛が7代目濱口儀兵衛であり、濱口梧陵であります。
 この教科書は、全国で6割以上の採用となっているそうです。著者は、県の地震・防災対策総点検専門会議メンバーの関西大学・河田惠昭教授であり、津波被害を多く経験した和歌山として、この教訓が今改めて見直しをされております。
 この教訓は、津波被害を、高台に逃げて大勢の人が助かったという史実だけではなく、自分たちの村は自分たちで守るという姿勢や、堤防や松林をつくり次の津波被害に備えるという共助の姿勢、そして、私財を投げ出して町の復興や人々の生活再建に命をかけたというその精神性は高く評価され、防災教育の教本として使用されるようになりました。
 昨日、中拓哉議員より報告がありました。6月3日から5日まで、東北の被災地を訪問してまいりました。仙台空港上空から見た海岸線の松林がなぎ倒された光景を見たとき、海岸から数100メートルに住宅街がある私の故郷美浜町の煙樹ケ浜をほうふつさせました。
 岩手県山田町船越地区は串本や勝浦と似ており、和歌山県の650キロのリアス式海岸にはこの被災地と似たところが多く、この広い地域で瓦れきの山となった箇所や地盤が沈下し海水が引かなくなっている状況を見るにつけ、一たん災害に見舞われると、その復旧・復興の道のりの遠さを思わざるを得ません。
 「失敗は伝わらない」、これは失敗学・危険学の創始者・畑村洋太郎氏の言葉です。氏は、福島第1原発事故の調査検証委員会で委員長を務めております。この畑村氏がマスコミのインタビューで語っています。
 「明治29年、38メートルの大津波が押し寄せ、2万人以上の命が犠牲になり、それから37年後の昭和8年にも大津波が発生。3000人以上の犠牲者が出て、三陸海岸では繰り返し起こっています。この海岸の碑に、『高き住居は、児孫に和楽 想へ惨禍の大津浪 此処より下に家を建てるな』。明治29年にも昭和8年にも大津波が起こり、部落は全滅し、生存者はわずか数名しかいなかったとしております。あっちにもこっちにも同じような石碑が立っていますが、この碑の下に家が建ち並んでいます。知識としては危ないということは知っていても、生きている間は津波が来ないとか、時間が過ぎると失敗に関心を払わないで忘れていく。30年単位で消えていく。そして、無関心や傲慢さが出てくる」という内容でございました。
 しかし、教訓を後世の住民が守り、当たり前のように暮らしていた地域もありました。現地に赴くと、何事もなかったかのようなたたずまいが存在をしていました。大船渡市吉浜という440世帯の地域です。吉浜では、海辺の低地に家を建てないことが常識で、親から言い伝えられて守った教訓というよりも常識になっている地域でございます。
 今回でも、10メートル前後の津波が襲来。しかし、ほとんど集落の被害はなかったとのこと。これは、昭和三陸津波の後、当時の柏崎丑太郎村長が、私財に加え、銀行から調達した資金で土地を購入。村が移住先を用意すると、数年間で高台への集団移住が完了。村長の孫によると、おじいさんは「ただ呼びかけるだけでは移住しない住民が必ずいて、また同じことが起きる。村が強引にでも移住させる方法を考えた」と語っていたそうです。ここにも濱口梧陵先生がいました。
 失敗は繰り返さない、そういう過去の教訓を生かした減災を目指し、行政に取り組んでいただきたい、そうお願いする次第でございます。
 行政の責任として、津波による死者をゼロにするという気概を持ち続け、危機への備えを怠らず行い、またその後の対策も講じていく、それが今求められております。
 防災意識の向上、安全な避難場所やその避難路の確保、防波堤の整備や防災林の植樹、そして、できれば津波被害想定区域の高台への移住、防災訓練、地域防災リーダーの育成、情報の提供、防災無線やメールの整備等々、災害後の対策として人命救助、捜査活動、後方支援体制の整備、避難場所での食料・飲料水・医薬品の提供、そして、医療・衛生管理、仮設住宅の確保、瓦れきの撤去など、復旧・復興が数々挙げられます。
 地方自治法及び災害対策基本法では、県の役割を市町村を包括する広域の地方団体として、1、広域にわたるもの、2、統一的な処理を必要とするもの、3、市町村に関する連絡調整に関するものと規定されております。また、災害応急対策として、避難勧告・指示の代行、2、法令に基づく応急措置の実施、3、保健衛生・緊急輸送の確保に関する命令、4、市町村長に対する応急措置実施の指示、5、公安委員会による交通の禁止・制限が具体的に挙げられております。
 災害発生直後の被災者への対応は基礎自治体である市町村が直接当たることが現実には多くなり、職員にその負担が集中します。阪神・淡路大震災では、まち全体が被害を受けましたが、自治体の機能は保全されていて、自治体の首長や職員が、寸断された道路を迂回しながら庁舎にたどり着き、対策本部を設置して、被害の掌握や被災者の対応に当たることができました。
 今回の災害では、自治体の施設が破壊され、首長が亡くなったところや職員も多く亡くなっており、自治体の機能そのものも破壊されており、災害発生からかなりたってからも避難所から食料が足りないとSOSが発信されていました。
 一番身近な基礎自治体の機能が停止・停滞することを視野に入れる必要性も教訓として学んだことになります。国の役割、県の役割、市町村との連携の仕方をもう一度見直す必要があるのではないかと思います。津波の大きさはハザードマップに示されているものより大きくなる可能性はあり、今回の地震、津波を受けて国や県では見直しを迫られております。
 そこで、お伺いします。
 災害時の県の役割について。
 2つ、今後行う災害対策の見直しについて、その視点とは何か。
 昨日、中村議員が紹介された津波新法が制定されました。自民党二階俊博衆議院議員と我が党の広川町出身の西博義衆議院議員や県選出の国会議員が中心になって昨年から取り組み、このたび実を結んだものであります。「稲むらの火」が教科書として64年ぶりに今春から採択されたことを重ね合わせると、不思議な感があります。
 議員立法の筆頭提案者・二階先生から、法律の概要や要綱、特別委員会の意見表明などをいただきました。本県にとってはとても大事な法律だと思います。御苦労いただいた私の高校の大先輩でもある二階先生初め、国会議員の皆様に感謝を申し上げたいと思います。
 津波は、国民が迅速かつ適切な行動をとることにより人命に対する被害を相当程度軽減できることから、津波に備える必要性に関する国民の理解と関心を深めることが特に重要であるとうたっております。成立までの執念とその御尽力やこの法律の持つ意味などを考えると、大いに県民に訴えていくことが大事ではないでしょうか。
 津波対策推進法制定を機に、11月5日が津波防災の日に決まりました。防災先進県として、防災訓練や啓発活動のイベント等、取り組む必要があると考えますが、知事のお考えをお聞きします。
 また、「稲むらの火」を教訓として、県民にしおり等を配ることで、もう一度濱口梧陵先生に学ぶことも御提案申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。
 以上、3点について仁坂知事にお聞きします。
 市町村における防災対策の現状についてお答えいただきたいと思います。
 先日の3月11日の大津波警報で、避難勧告が出ても実際に避難した人は3.2%だったということがNHK「和歌山の防災~想定外を生きのびるために~」でも報道され、「津波から逃げない人は、危険を感じない無意識の心理が働いていた」という指摘がされていました。
 改めてお聞きしますが、避難勧告や指示など、そのときの策定基準はできているのでしょうか。市町村の津波避難計画の現状はどうなっていますか。行政だけではかけ声だけに終わってしまうために、地域の自主防災組織が災害最前線で大事な役目を果たすものと期待されております。現在の組織整備率はどうなっているのでしょうか。また、地域防災リーダーの役割とは何でしょうか。危機管理監にお尋ねをいたします。
 災害時要援護者支援プランについては、全体計画だけでなく個別計画の進捗状況が気がかりです。東南海地震等を想定して、平成20年ごろから取り組みを行ってきています。福島県いわき市では3年ほど前から取り組み、だれがだれをどの場所に誘導するかまとめたもので、津波がなかった地区ではあったが、とても有効だったと地区の民生委員協議会会長も語っておられました。
 災害時要援護者支援プランの作成は、一番気がかりな点です。その進捗状況を福祉保健部長にお聞きします。
 県での食料、医薬品等の備え、計画の進捗状況についても、これも福祉保健部長にお尋ねをいたしたいと思います。
 情報の提供として、防災無線が聞こえにくいし、他の業務に使っていることがあり、緊張感に欠けるという声があります。きのうも御答弁がありましたので、ぜひ警報時にはサイレン音で警告していることを周知していってください。
 宮古市田老町にも行きました。10メートル、総延長2キロあったという防潮堤も、どこにあったのかわからないほどの状況でした。和歌山では、マグニチュード8.6、高いところでは8.8メートルの津波と想定されております。被災地の防波堤を見ますと、砂を中身にしてコンクリートで包む工法であったりして、強度を保つという点では不安に思いました。
 今回の津波でも、強い水流でえぐられる洗掘と呼ばれる現象や、水没し浮力が働き堤防の上部が海側から押され、てこの原理で容易に転倒、引き波による強い打撃力で壊れた防潮堤もあったと報告されております。津波の第1波、第2波をしのげるような防波堤、防潮堤の守りも、当然必要です。中長期計画で点検、補強ということですので、期待をしております。
 今回、東北の被災地を訪問して、被災後のことも十分視野に入れて災害支援を考えておく必要があります。岩手県の場合は、遠野市に行政の後方支援、そして自衛隊の800人規模の後方支援連帯部隊が、事前の訓練のもと、支援活動に従事されておられました。災害時にはなくてはならない存在になっております。その仕組み、ロジスティクスには大いに参考になりました。和歌山の災害後の後方支援はどのようにお考えでしょうか、危機管理監にお尋ねをいたします。
 防災の最後に、防災教育についてお尋ねいたします。
 震災後、極端な事例がマスコミを通じて報道されております。1つは、災害に遭われた方には申しわけない事例になりますが、避難がなぜおくれたのか。石巻市小学校の事例です。反対に、「釜石の奇跡に学ぶ」とされる津波防災教育3原則を実践した釜石の中学校の取り組み、「想定を信じるな。ベストを尽くせ。率先避難者たれ」──このたび、本県の防災専門家会議の一員に加わっていただいている群馬大学大学院・片田敏孝教授の教えを実践した学校管理下にあった約300人の子供たちが犠牲者ゼロにできたことは、改めて防災教育の重要性を認識させたと言えます。和歌山県の今後の防災教育についてのお考えを教育長にお尋ねをいたします。
 大きな2点目に、和歌山電鐵貴志川線の活性化についてお聞きをしたいと思います。
 平成19年10月、地域公共交通の活性化及び再生に関する法律が施行され、市町村は地域公共交通のプロデューサーとしての役割が求められ、ニーズや問題の精査を行い、利用者の目線に立って公共のあり方を検討し、一体的、総合的な地域公共交通計画の策定において中心的な役割を担うことになっております。県は、各市町村の区域を越えた広域的な見地から、必要な助言、その他支援をすることになっております。
 公共交通の活性化については、全国各自治体も苦心されている現状の中、本県における貴志川線の取り組みにつきましては、南海電鉄が廃線を決定する前から注目をされてきた経緯があります。
 和歌山電鐵貴志川線は、2005年、南海電鉄から引き継がれ、はや6年になります。40年以上にわたり運行してきた南海電鉄がこの路線を廃止しようとしていることが、2003年11月に明らかになりました。最も利用者が多いときで年間360万人以上の人たちがいたことを考えると、2002年度には200万人を切り、乗客は減り続ける一方でした。会社の赤字は年間5億円にも上り、残してほしいという要望にもかかわらず、経営上の判断だったようですが、廃線という選択肢になりました。
 貴志川線をなくさないでほしいという署名活動や、NHKの「難問解決!ご近所の底力」という人気番組への出演がきっかけにもなり、存続活動に拍車がかかり、2004年には住民たちの会、貴志川線の未来を“つくる”会として結成されていきました。
 私の地元の小学校では、当時の3年生が総合学習「貴志川線たんけん」として、貴志川線に乗って、和歌山駅から貴志駅までの探検や、貴志川線についてのアンケートやインタビューを通し、最終的には1000人以上もの市民の声を聞くことができたそうです。
 未来を“つくる”会主催の高校での住民集会には約800人の人たちが集まり、存続に向け大きなうねりになっていきました。
 その後、平成16年2月4日、貴志川線存続へ向け、和歌山県、和歌山市、貴志川町がそれぞれ負担分について合意し、県が初期投資分の用地取得分や変電所の修繕費用など、最高4億7000万円を負担。10年間見込まれる運営費赤字分8億2000万円分を上限として、和歌山市が65%、貴志川町が35%を負担。加えて、できる限り沿線住民に協力をお願いしたいとして出資も呼びかける考えを表明し、引き継いでくれる新しい会社を公募することや、10年後の2015年までには行政が一定額の資金を援助し、赤字補てんをしながら存続させることが決まりました。
 当時、和歌山市会議員として、県会議員の森先輩や同僚と、岡山市に本社のある両備グループ岡山電気軌道株式会社・小嶋社長を訪問しました。その際、公共交通機関、特に鉄道にかける思いや鉄道マンとしての使命感を彼らが持っていることが大変印象的でした。
 まずは絶対に鉄道会社が運行を引き継ぐべきだという考え方が根底にあり、これは、そうしなければ鉄道の使命である安全性が保たれないとの思いも伝わってまいりました。そういった安全性だけでなく、その情熱が今日の貴志川線を全国に発信できていると実感しております。その後も、未来を“つくる”会の方々とも話し合いを持つなど、熱い気持ちも確認させていただきました。
 南海電鉄時代は年間利用者が200万人を切り、平成17年には192万人だった数字が、たま駅長人気もあり、平成20年には219万人まで回復しました。その後は、217万人が2年続いている状況となっています。赤字額も、平成21年度では約7600万円と縮小されてきております。現状としては、通勤は少し目減り、通学が若干ふえている、そして、県内外からの利用者は当然ふえているものの、結果的に沿線住民が余りふえていないという状況になっております。
 10年保証の貴志川線、11年目以降は改めて協議となっています。これまでの評価と今後の課題、また11年目以降の姿をどのようにお考えか、知事にお聞きをします。
 環境対策や公共交通機関への意識を変えていくためにも、貴志川線の利便性向上、駅周辺の魅力開発、住民との協働等についてどのようにお考えか、企画部長にお尋ねをいたします。
 最後に、教育の問題でございます。「和歌山の教育を元気に!」。
 西下新教育長、就任おめでとうございます。公立高校の校長や私立の校長を経験され、13年ぶりに教育行政に戻ってこられたわけですが、和歌山の教育を元気にするために、そのキャリアを遺憾なく発揮していただきたいとお願い申し上げます。
 和歌山県教育振興計画が、平成21年3月に策定されています。その中で、目指す教育の姿、目標、施策の基本的方向など、明確に示されております。
 西下教育長は、前教育長が取り組まれた市民性を育てる教育、地域共育コミュニティを踏襲されるとされております。
 ベネッセ教育研究開発センターが高校教員を対象に初めて実施した学習指導基本調査では、公立高校の教員の8割が生徒の義務教育段階の学習内容の未定着に悩んでいるという結果が出ていました。和歌山でも同じ傾向にあると考えます。
 教育の指導観では、自発的な学習意欲や習慣を身につけさせることを重視か、強制してでも学習させるかは迷うところだと思います。私は、前者は公立に見受けられ、後者は私学がそういう環境にあるように思われます。いずれにしても、教師が変われば学校も変わり、学校が変われば子供たちも変わります。西下新教育長に、和歌山県教育行政のトップとしてのその方針をお伺いいたします。
 2点目に、現在の和歌山県の教育についての評価、そしてそれをどのように改善されるのかをお聞きして、1問目の一般質問とさせていただきます。御清聴、大変にありがとうございました。(拍手)
○議長(新島 雄君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 東日本大地震を経験して、本県の災害対策、特に災害時の県の役割というようなことについてお答え申し上げます。
 災害対策基本法に規定されている県の役割、責務は、市町村が処理する防災に関する事務または業務の実施支援と、その総合調整ということになっております。今回の大震災では、行政機能そのものを失った市町村もありまして、被災県の対応も困難をきわめたと聞いております。
 そういうことにかんがみまして、これはちょっと災害対策基本法の枠組みも少し見直さないといけないんではないか、特に今回のような大規模災害においては、国の責務あるいは県の役割をもう少し前に出すというようなことをやっていかないといけないんではないかということで、何でもかんでも市町村任せではなくて、災害規模に応じた対応主体を明確化していくことを提案している次第でございます。
 県としては、現在、被災県を応援すべくいろいろ人員を派遣したりしてやっておりますが、一方では、そこから将来我々が被害に遭ったときの状況あるいは対応、そういうことを勉強してまいりまして、洗い出された課題について、今度は防災・減災対策の総点検の中で対策を行っていくこととしております。大災害に備えた体制づくりを強化してまいりたいと思います。
 次に、災害対策の見直し、現在行っておりますが、これに対する視点でございます。
 現在、防災・減災対策の総点検をやっておりますが、私自身も経験したところによりますと、例えば避難場所においては、行政のやりやすいように、後々やりやすいようにといいますか、そういう行政の都合によって、避難所に逃げてきなさいというような避難所運営至上主義的な発想がどうもあるような気がします。
 津波の場合は、ちょっと想定が崩れますと、とっても大きな波が来て、下手をすると避難所ごと持っていかれるということも考えられますので、時間的に余裕のあるところはできるだけ高くと、そうでないところはより安全なところへということで、とにかく初めは一番命が助かるところを目指して逃げるということが大事だと思うんです。
 そういう意味で、現在、その緊急避難先をどこにするかということを地域ごとに市町村に考えていただいておりまして、そういう市町村ともよく御連絡を密にして取り組みを行ってまいりたいと思います。避難所の決定は市町村だ、県は知らんというようなことは県民のためには全然なりませんので、県民のためには口を出し、議論をするということでやっていきたいと考えております。
 次に、津波対策推進法制定に関してでございます。
 まさに議員御指摘のように、津波対策の推進に関する法律が県選出の国会議員の御尽力により6月17日に成立しました。これは、過去幾度となく津波により甚大な被害を受けてきた県民一同にとりまして大変大きな一歩であり、待ち望んでいたものだというふうに思います。
 また、安政の南海地震における濱口梧陵の「稲むらの火」の故事が語り継がれている日である11月5日が津波防災の日として定められたことは、和歌山県にとっては大変な意義があると思います。この機会をとらえ、さらに防災力の向上や防災意識を高めるため、あるいは全国に「稲むらの火」や「濱口梧陵」を発信するように、こういうものをキーワードにしたイベントを初め、さまざまな取り組みを検討してまいりたいと考えております。
 次に、貴志川線の運営につきましてでございます。
 これにつきましては、これまで和歌山電鐵の経営努力、地域の方々のひたむきな活動、それから県や市による支援などの一体的な取り組みによりまして、赤字の縮小につなげて、全国にも大変立派な事業だというふうに評価していただいているような状況になっているところでございます。
 しかしながら、問題は完全に解決してるというわけではありませんで、依然として赤字を抱えている状況であり、議員御指摘のように、今後本当に自立をしてもらうというためにはさらにどういうようなことをしていったらいいか、住民のさらなる利用促進あるいは経営改善のための仕掛け、そういうことを考えていくことが必要であると考えております。
 一般に申し上げますと、県としてやらなきゃいけない、あるいは市町村も含めてやらなきゃいけないことが3つあると考えております。
 1つは、コストを下げるというために協力をするということでありまして、これは初めのお約束どおり、県としては変電設備にこれから投資をしてまいりますし、両市も、これからもあと数年間は経営を支えるということを忠実にやっていくべきだと思います。
 第2番目は、特に小嶋さんの大変な経営手腕によって、たまちゃんを中核にどんどんマスコミに発信して観光客を集めてくださっている。そういう観光に対して、観光振興に県も全力を挙げなきゃいけないということだと思っております。
 このために、さまざまな機会をとらまえて、アクションプランの中でも一生懸命やっておりますが、特に、例えば和歌山の「○旅」というプロジェクトがありますが、この中で鉄旅というのがあります。これの重要な要素として、たまちゃんを中心に観光を大いに売り出していくと。そのほかたくさんありますが、頑張っていきたいと思います。
 3番目に、一般客あるいは周辺の住民がもっと利用しやすいようにしないといけないということだと思うわけであります。
 この貴志川線、乗ってまいりますと、どうも駅周辺には昔ながらの田んぼが残っていて、それでずっと離れたところで住宅開発が新たに行われている。したがって、ずっと離れたところに住んでる方は、なかなか乗りにくいというような状況があると思います。駅前のてこ入れもあんまりありませんでした。それではいけませんので、今度は住宅地から駅への動線の改善とか、駐輪場等の整備など、地域の方々が利用しやすいような駅とする、さらには駅周辺の人口増やにぎわいづくりのためのまちづくりを推進する、そういうようなことが必要だと考えております。
 こうした駅周辺の環境整備やまちづくりは市が主体となるものでございますが、県としても連携して進めることで、さらなるこの和歌山電鐵自体の経営の改善に寄与し、貴志川線の存続につなげてまいりたいと考えております。
 貴志駅につきましては駅舎ができまして、これに呼応して県がリードをして駅周辺の再開発をしていこうということで、これは紀の川市が随分と乗ってくれておりまして、具体的に近く話が進んでいくと思っております。
 和歌山市側も随分候補地になるようなところがたくさんあると思いますので、和歌山市ももう少し考えてくれないかなということで思っておりますが、県がいろいろ働きかけをしていく必要があるというふうに考えております。
○議長(新島 雄君) 危機管理監宇恵元昭君。
  〔宇恵元昭君、登壇〕
○危機管理監(宇恵元昭君) 東日本大震災を経験して、本県の災害対策について2点の御質問にお答えいたします。
 まず、地域防災対策の現状につきましては、避難勧告・指示については、災害対策基本法第60条により、災害が発生または発生するおそれがある場合において、人の生命、身体を災害から保護し、その他災害の拡大を防止するため特に必要があると認めるときに市町村長が勧告、指示を行うものであります。
 発令基準については、迅速な発令の実施や住民の避難を準備する観点から事前に策定しておくことが望ましいものであり、水害、土砂災害、高潮災害、津波など、災害の種別に応じた発令基準としているところです。策定していない市町に対して、県としては早急に策定していただくよう指導しているところでございます。
 津波避難計画につきましては、平成15年1月に和歌山県津波避難計画策定指針を作成し、沿岸市町村へ策定するよう指導してまいりました。津波避難計画において定める事項は、避難場所・避難路等の設定、初動体制、津波情報の収集・伝達、避難勧告・避難指示の発令基準、伝達方法等であります。現在、沿岸18市町のうち、14の市町で津波避難計画を策定しております。県としては、策定していない市町に対して早急に策定するよう指導しているところでございます。
 自主防災組織の組織率は、現在77.7%となっております。地域防災リーダーは、自主防災組織の中心的担い手であります。県では、平成17年度から地域防災リーダー育成のため紀の国防災人づくり塾を開講し、現在、622名の修了者となっております。今後も各市町村と連携し、組織率の向上につながるよう活動の支援を行ってまいりたいと考えております。
 次に、災害時の後方支援につきましては、東海・東南海・南海地震等、大規模災害において複数市町村が同時に被災した場合、県単独では対応が困難であり、全国からの支援が不可欠となります。そのため、和歌山市、橋本市、田辺市、新宮市を中心とした4つのゾーンにおいてバランスよく拠点を展開する方針により、広域防災拠点基本計画を平成20年度に策定をしております。
 平成21年度以降は、通信設備や医療資機材、コスモパーク加太防災ヘリポートの整備を行い、広域防災拠点としての機能強化を図るとともに、ヘリポートの運用訓練、新宮市民運動競技場における物資搬送・通信訓練、南紀白浜空港における広域搬送拠点臨時医療施設の展開訓練を実施しております。
 今後、市町村の地域防災拠点や物資集積拠点への配送を想定した運用の確立、応援部隊の活用訓練や救助物資等の受け入れ、仕分け、配送を想定した訓練などにも取り組んでまいります。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 福祉保健部長鈴木敏彦君。
  〔鈴木敏彦君、登壇〕
○福祉保健部長(鈴木敏彦君) 地域防災対策の現状についての御質問のうち、2点の御質問についてお答えいたします。
 まず、高齢者や障害者など災害時要援護者対策につきましては、市町村において、避難支援の基本的な方針を定める全体計画と、避難時の支援者が身近にいない避難行動要支援者1人1人に対応する個別計画の策定を進めているところであり、本年4月1日現在、全体計画は県内25市町が策定済み、個別計画は26市町で策定中となってございます。
 このたび、県内市町村における要支援者の登録及び個別計画の作成の状況を調べたところ、要支援者の登録者数は約1万8000人であり、うち3割の方について個別計画が作成されているところです。
 県といたしましては、東日本大震災を受け、全市町村において全体計画及び個別計画を早急に策定するとともに、民生委員、児童委員初め地域住民の協力を得ながら、さらなる要支援者の把握及び個別計画の作成を促進するよう引き続き働きかけてまいります。
 次に、食料の備蓄につきましては、地震災害対策のための備蓄基本方針を策定し、東海・東南海・南海地震の被害想定に基づき、発災後3日間の食料を住民、市町村、県でそれぞれ1日分を備蓄することとしており、平成19年度から10年計画で30万食を備蓄することとしています。
 なお、現在の備蓄状況は、今回の震災で被災地に約2万6000食提供をしたため、約9万4000食となっております。
 備蓄に関する今後の方針でございますが、防災・減災対策の総点検で、今回の震災を教訓として備蓄品目や数量等について基本方針の見直し作業を進めているところであり、今後は、見直し後の基本方針に基づき、早急に備蓄を進めてまいります。
 また、市町村の備蓄につきましても、備蓄数量の確保や、より住民に身近な保管場所の検討など、必要な指導を行うとともに、県民の皆様にも家庭での備蓄の重要性について、あらゆる機会を通じて啓発を行い、周知してまいります。
 次に、医薬品の備蓄につきましては、災害対策用医薬品等を確保するため、和歌山県医薬品卸組合と医薬品等の備蓄について協定を締結しております。
 なお、今回の東日本大震災で被災地では交通網の遮断等により医薬品の不足が発生したことを踏まえ、従来の協定に加え、新たに県内8カ所の災害拠点病院に一定数量の医薬品を直接に備蓄することを検討しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(新島 雄君) 企画部長柏原康文君。
  〔柏原康文君、登壇〕
○企画部長(柏原康文君) 貴志川線に関する利便性の向上、駅周辺の魅力開発、住民との協働について、一括してお答えいたします。
 貴志川線が継続されるには安定した収益の確保が不可欠でありますので、沿線住民の利用促進を図るため、先ほど知事がお答えしましたにぎわいのあるまちづくり、駅周辺の利用環境の整備について、関係者とともに一部取り組んできたところでありますが、今後、さらにより多くの駅周辺でも検討を進めてまいりたいと思います。
 また、通勤・通学者などの利用客にとって、より利便性の高いダイヤ編成などについても検討を深めてまいります。
 次に、駅周辺の魅力開発につきましては、沿線の名所などの観光資源を活用し、貴志川線祭り、電車に乗ってジャガイモ掘り、JR和歌山線との共同スタンプラリーなど、さまざまなイベントを展開しているところです。今後とも、こうした取り組みを強化するとともに、新たな利用客の増加につながる観光資源の開発や、その活用などについて努めてまいりたいと考えております。
 また、住民との協働につきましては、貴志川線の未来を“つくる”会、地元商工会なども加わった貴志川線運営委員会が主体となって、今申し上げました多様な事業を実施してまいりました。今後とも、このように地域住民の方々との連携を図りながら、一層の利用促進に取り組んでまいります。
○議長(新島 雄君) 教育長西下博通君。
  〔西下博通君、登壇〕
○教育長(西下博通君) 多田議員から2点御質問をいただきました。
 まず最初に、防災教育についてお答えいたします。
 学校における防災教育につきましては、従来から積極的に取り組んできたところでございますが、今回の東日本大震災を受けまして、何よりも子供の命を守るという観点から、既に年度当初に防災・危機管理体制の再確認、避難訓練の早期実施、避難場所・避難経路の総点検等を行うよう各学校に指導するとともに、学校におかれた実情を一層考慮した具体的かつ個別のマニュアルを8月末をめどに策定するよう、近く通知することといたしてございます。
 また、避難訓練につきましては、県内すべての学校で既に実施されていますが、学校の地理的条件や津波の到達時間の違いなどに応じた柔軟かつ適切な避難訓練が今後も極めて大切であり、同時に、災害時には児童生徒が迅速な行動がとれるよう、防災意識を喚起する授業を発達段階に応じて行うことが極めて重要であると考えてございます。
 このため、御指摘のございました群馬大学・片田教授の考えを取り入れた防災教育につきましては、既に8月に実施予定をしている教員対象の講演会とともに、教材作成等の御助言をいただくなど、アドバイザーとして御協力をいただくことになってございます。
 今後も、児童生徒の命と安全を守るため、教育活動全体を通じまして計画的かつ継続的に防災教育を積極的に推進してまいる所存でございます。
 次に、「和歌山県の教育を元気に!」ということで、3点ほど御質問いただきました。まとめてお答えをさしていただきます。
 教育長に就任して改めて思いますことは、教育は未来への責任であるということでございます。和歌山の教育の底力を信じて、県内のすべての学校において、お互いに支え合い、励まし合い、磨き合うことが実感できる学校づくりが大切であるというふうに考えてございます。
 そのためには、古いものは思い切る勇気、新しいものには踏み出す勇気、合理的に割り切る勇気という3つの勇気を持って、子供たち、教職員、保護者がそれぞれ自分たちの学校に誇りを持って、また、地域の方々が私たちの地域にはこんなすばらしい学校があるんだという誇りを持つ、この4つの誇りを持たせる学校づくりを進めてまいりたいと考えてございます。
 これまで県教育委員会が取り組んできました市民性を育てる教育や地域共育コミュニティというのは、これからの日本にとっても本当に必要な教育を先取りした先進的なものであると思ってございます。
 一方、全国の調査結果から見た学力や体力については、依然として課題がございます。そのため、学力に関しては、庁内に設置した学力向上プロジェクトチームでの議論を踏まえ、学習につまずきのある児童生徒を取り残さない、伸びる子はさらに伸ばすという方針のもと、学校が責任を持って教え切る体制づくりを指導しているところでございます。体力に関しましては、生きる力の根源でございますから、紀州っ子の体力向上支援委員会を設立し、各学校において体育授業の工夫改善はもとより、部活動など、あらゆる場面を通じて学校体育の一層の充実に取り組んでまいります。
 不登校や高等学校の中途退学に関しましては、チームで取り組む体制づくりが進んできているため、減少傾向にあります。ただ、中学校における暴力行為につきましては、喫緊の課題であると認識いたしてございます。
 今後とも、家庭や関係機関との連携を密にし、よりよい人間関係の構築に努め、心の通い合う学校づくりを進めていきます。
 私は私立の学校に携わる機会がありましたが、私立の学校は建学の精神をもとにした魅力ある学校づくりを進めてございます。公立には、和歌山の持つすばらしい伝統や、これまでに果たしてきた役割、教育成果がしっかりとあります。その両方のよさを踏まえながら、継承すべきものは継承し、改めるべきものは改め、より質の高い教育の実現に努めて、元気な和歌山を目指していきたいと考えてございます。
○議長(新島 雄君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(新島 雄君) 再質問を許します。
 30番多田純一君。
○多田純一君 新教育長には、これからの教育行政、本当に今いろんな熱い思いを聞かせていただきましたし、ぜひそのキャリアを生かして和歌山県の教育力のアップにつなげていただきたいと、期待をさせていただきたいと思います。
 あとは要望なんですけども、特に今回、地域防災対策というのをいろいろ詳しくお聞かせいただきました。一番時間をつくっていただいたんじゃないかと思うんですけども、3月11日以降、危機意識というのは本当に一変しました。そういう点では、このときを逃さず、危機への備えというのは喫緊の課題、これはもういろんな方々からもそういうお考えが述べられておりますけども、特にその中で私が気になったのは、それぞれ今課題があると思うんですけども、災害要援護者、要するに、「私、助けてほしいよ」、こういうふうに申されてる方に対して支援者がまだ3割しか決まってないという、こういう現状ですね。
 私も、和歌山市の中で支援者の1人として登録をしていただいておりますけども、要するに手を挙げてるのに、その助ける方がまだいらっしゃらないというこの現状を、これは今地震が起こったときに、どうなさるのかということなんですよ。1人も被害者を出さないと、こういう意識の中で、こういう方々をどう救っていくのか。
 もちろん、プライバシーの問題等もございますんで、なかなか難しい点もあろうかと思いますけども、最低でも、手を挙げていただいてる方に対してどういうふうに行政が手を差し伸べるか、これを早急に御検討いただきたいと思いますし、それぞれの市町村にそういう形の姿勢で接していただきたい、こういうふうに要望させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。
○議長(新島 雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で多田純一君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時35分休憩
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