平成22年12月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(中村裕一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 32番中村裕一君。
  〔中村裕一君、登壇〕(拍手)
○中村裕一君 まず、さきの知事選挙に際し、県民の大きな支持を得て見事に再選された仁坂知事に対し、心からお祝いを申し上げます。どうか、今後4年間、県勢浮揚のため大いに御活躍されますよう御期待を申し上げます。そして、この際、次の2点について特に御尽力を賜りますようお願いをしておきたいと思います。
 第1は、経済の発展です。
 県民が仁坂知事に期待する点は元気な和歌山を取り戻すことで、なかんずく高度成長期以降、長期低落傾向にある県経済を再生し、もう一度成長させることであります。理想的な親子の住まい環境を表現する言葉に「スープの冷めない距離」というのがあります。これは現在の団塊世代でも約8割から支持されていますが、今の和歌山では、残念ながらかないません。志を抱いて一躍雄飛する人は別にして、地元へ就職したい子供たちの希望をかなえてあげることが県民の最大の願いであり、人口100万人復活への始発点であると考えます。
 第2は、遠い和歌山の解消であります。
 先日、九州新幹線の開通を記念してJR西日本が大阪─鹿児島間の試乗を募集したところ、800人の定員に対し3万人余の応募があったと報道がありました。私が驚いたのはその多さではなく、来春の開通により大阪と鹿児島の間が最速で、何と3時間45分で結ばれるのです。皆さん、3時間45分という時間に聞き覚えはありませんか。実は、新大阪─新宮間が3時間48分であります。時間距離で言えば、和歌山は大阪の隣にあるのに実は鹿児島と同じぐらい遠いところにあるということであります。
 古来より熊野は都から遠くにあるよみの国への入り口で、その畏怖の念が信仰の中心であると言われていますが、我が国も独力で宇宙衛星を飛ばす今日にあっても、依然、和歌山は遠いのであります。
 いよいよ関西広域連合が始まり、「関西は1つ」などと言われますが、関西のみんなも遠い和歌山の解消に協力してくれるような一体感の醸成を望みます。どうか、こういった視点で県民や我が党との公約実現において御努力いただくことをお願い申し上げます。
 以下、通告に従い、順次一般質問を行います。
 最初は、入札制度について伺います。
 知事の逮捕という不祥事を受け、4年前に就任された仁坂知事は、郷原弁護士など当代の専門家を集めて公共調達検討委員会を組織し、建設業界などの意見も聞きながら、半年余りの審議を経て「和歌山県公共調達検討委員会報告書」をまとめました。それを受けて、執行猶予の後、だれもが談合できないといううたい文句で条件つき一般競争入札や総合評価方式などが導入されました。しかし、新制度は導入直後からさまざまな矛盾が発生し、知事は、必要があればいつでも見直すとの姿勢で、これまで2度にわたり改善が図られてきました。
 しかし、多くの利害を調整する合理的な手段として長い間行われてきたものをいきなりやめて、国が考えた制度を地方に持ち込んできてもうまくいきません。とりわけ、総合評価方式は業者評価方式でランクづけをしておきながら、個別の入札で不合理な評価点で落札を決める不公平な制度であります。三ツ星のレストランのシェフに、きのうオムレツを焼いた人はきょうも焼いてもらうが、きのう焼かなかった人は実績がないから能力もないとしてオムレツを焼かせないのは明らかな矛盾であります。
 自民党県議団では、制度導入以来、それぞれの地元でいろいろな御意見を聞いてきましたが、それらを集約して10月初旬に知事に、公平の確保、過当競争排除の観点から8項目にわたり申し入れを行ったところであります。知事も、選挙を通じて県内各地でさまざまな意見を直接聞き、空気を肌で感じられたと思いますが、改めて県議団の申し出について知事の御見解を伺います。
 2番目に、環太平洋パートナーシップ、TPPについて伺います。
 TPPについては、私たち国民からすれば突然飛び出してきたような印象が強く、なぜこんな重要問題を十分な準備もなく、国民の理解を得ることもなく持ち出してきたのか。まさに消費税10%のときと同様に、提案はするけど何も決まらず、いたずらに混乱させるだけのお騒がせではないでしょうか。また、6日から始まった交渉会合にはオブザーバー参加ができず、参加国との2国間の交渉も設定できなかったと報道されています。全く政府の無策ぶりには目を覆うばかりです。
 しかし、参加した場合の影響については大変深刻で、農業など1次産業だけではなく、建設業やサービス業、看護、介護の分野にも関係すると言われています。事態の大きさにこの議会でも各派から質問がありましたが、改めて県内の影響について伺います。また、同時に知事のTPPに対する御認識を伺うものであります。
 3番目は、有田─御坊間の4車線化について伺います。
 9月定例会でも有田─田辺間の4車線化並びに有田─御坊間の都市計画決定に向けての知事のお考えを伺いましたが、11月24日の都市計画決定を受けて、現在は、マージャンでいうところのテンパイの状態にあります。あとは国の出番を待つだけとなりました。
 政権交代後、民主党政権は言いがかりをつけ、御坊─田辺間4車線化のための745億円を取り消し、その理由として、有田─御坊間の4車線化を優先するとの明確な表明が当時の国土交通大臣や民主党の国会議員からありました。しかし、知事選の応援に御坊入りした現国土交通大臣は恐らく週末の渋滞に巻き込まれたものと想像しますが、高速道路のことには一言も触れずに去っていきました。まさかこの期に及んで政府は有田─御坊間の優先は忘れたとは言わないと思いますが、県当局の4車線化への取り組みについて県土整備部長に伺います。
 最後に、企業誘致について伺います。
 企業誘致は経済活性化のためすぐに効果が期待できる重要施策で、仁坂知事は4年間に80社の企業誘致を成功させました。私の地元の御坊工業団地も、造成以来、長い間1社進出しただけでしたが、この数年で立て続けに3社が進出し、残り1区画となりました。この間の知事初め県職員の皆さんの御尽力に感謝を申し上げます。
 さて、世界の先進国や中国がいち早くリーマンショックから立ち直る中、我が国の経済はひとり蚊帳の外で、民主党の政策不況とも相まって展望が開けません。しかし、景気のよしあしにかかわらず企業誘致の可能性は常にあり、気を抜かずに努力しておくことは必要であると思います。
 かつて、バブル崩壊後に製造業が海外へシフトする中で、誘致の対象を情報系企業にも拡大した時期がありましたが、一定の効果はあったものの、景気回復の後は製造業の立地ダッシュに乗りおくれた苦い経験があります。そこで、今後の県の企業立地動向をどのように見ておられるのか伺います。
 次に、御坊工業団地は残り1区画となりましたが、日高港の企業用地は臨海部の立地環境からおのずと限界があり、内陸の御坊工業団地熊野地区の造成が必要であると考えますが、知事の御見解を伺います。
 以上で、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(谷 洋一君) ただいまの中村裕一君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、入札制度についてでございますけれども、去る10月1日に自由民主党県議団から、公平性の確保、過当競争の排除等の観点から入札制度改革の申し入れをいただいたところであります。私もその御趣旨は十分理解できますし、これまでもそういった観点から御要望いただいたことや、入札の実施状況を踏まえ、たびたび大きな見直しを行ってまいりました。
 今回、改めて自由民主党県議団からの申し入れを初め、多くの建設事業者の方々からも御意見をいただきました。また、こういうまじめな御意見に加えて、選挙期間中は、選挙の戦略でありましょうか、あるいは苦境にあるがゆえのうっぷん晴らしが、事実と違うことが声高に語られたことも、また認識しております。
 例えば、県外の企業を利するような制度になっておるとか、あるいは和歌山市の大手が郡部の中小の仕事を奪っているというようなことは制度的に考えられませんで、そういうことについてもいろんなことを言われたことも事実であります。
 ただ、実際に自由民主党の御議論にありますように、例えば実績、これについては反省をしてやめたのでありますけれども、まだ技術者の雇用ということを念頭に置いた制度の中に少しその要素が入っているということも事実でありまして、これをどう評価するかとか、あるいはいつまでも受注できない企業をどう考えるかとか、そういうようなまだまだこれから考えていかなきゃいけない課題がたくさんあると実感しております。
 このため、現在、見直し案として、例えば技術者の工事成績で評価する配点をやめることにしたらどうかとか、あるいはそれを軽減するようなやり方はないかとか、あるいは一定期間工事を受注していない事業者向けの特別枠の設置をつくったらどうかとか、あるいは工事箇所の近くにある事業者は市町村界を越えても同一市町村の事業者として評価することはどうかとか、さまざまな検討を進めているところでございます。
 今後、今回の申し入れの趣旨を十分踏まえ、県としての見直し案を早急に取りまとめまして、まず県議会の方に御相談をし、各地域の事業者等の御意見も幅広くお聞きするようにしたいと考えております。それによって業界の中でもよく議論をしていただいた上で、よりよい制度となるように取り組んでまいりたい、そんなふうに考えております。
 次に、TPPに関する御質問でございます。
 国内産業に非常な影響を与えるこの問題について、国において事前の十分な準備が足りないまま突然出てきたのではないかという御意見については、私も全く同感であります。
 さきの質問でもお答えいたしましたように、この問題には、参加しないことで国際競争上不利になり、日本経済が破綻しないかという問題と、参加することで壊滅的な打撃を受ける産業が出てくるのではないかという2つの側面があると考えております。これらについては、影響を産業ごとに的確に把握し、それぞれの産業ごとにどのような対策が必要であるかということを見きわめていくべきであると考えております。
 県内への影響については、商工業分野では関係業界や企業等への聞き取り調査を行っているところでありますが、関税の障壁が残っている業界あるいは輸出産業の関連企業などもあり、慎重な対応が必要であると思います。
 さらに、もっと重要でありますが、農林水産業については、現政権は生産性の向上や、あるいは競争力の強化のための予算を60%もカットしておきながら、いきなりTPPに入るというようなことを議論し始めたわけで、これは本当に常軌を逸していると感じているところであります。建設業やサービス業、看護や介護の分野への影響についても考えておかないといけません。これは、現時点では予想が極めて難しいので、今後、情報収集に努めてまいりたいと考えております。
 こうしたことから、先日立ち上げました庁内プロジェクトチームで、農林水産業を初め県内の産業にどんな影響があって、どんな対策が必要か十分に検討・分析した上で国に対してきちんとした対応を要求していきたいと考えております。
 次に、企業誘致につきましてでございますが、これは、積極的な誘致活動を展開し、急激な景気後退の中にあってなかなかつらかったんですが、着実な実績を上げているところで、今年度は昨年度を上回るペースで進出が決まっております。厳しい経営環境の中ではありますが、食品加工業等の地域資源活用型産業や新エネルギー関連産業など投資意欲の強い業種もまだまだありますので、情報収集能力を高めて企業動向の把握に努めて、それでチャンスを逸することがないように頑張っていきたいと考えております。
 その上で、これまで同様、私と職員が一丸となって積極的に企業訪問を実施するとともに、インフラなどの環境整備や企業ニーズに合った用地の確保等を図ることにより、あらゆる機会をとらえ、さらに企業誘致に邁進してまいりたいと考えております。
 次に、議員御指摘の御坊工業団地熊野地区につきましては、採算性が実は非常に厳しいところでございます。今後の社会情勢、経済情勢の動向を注視しながら、造成につきましても検討していきたいと考えております。
○議長(谷 洋一君) 県土整備部長原 広之君。
  〔原 広之君、登壇〕
○県土整備部長(原 広之君) 近畿自動車道紀勢線有田─御坊間の4車線化につきましては、平成18年の仁坂知事就任後、直ちにその必要性を国に働きかけ、事業主体や整備手法が未定の中、県が主体となって環境影響評価や都市計画手続を進めてきました。その結果、本年11月に都市計画決定することができました。このことにより県としての事業化に向けた準備は整ったこととなり、今後は国において事業主体や整備手法を決定し、事業化を進めていただくこととなります。
 しかしながら、一方で今後も国の道路予算は依然厳しいことが予想され、加えて高速自動車国道法改正案が廃案になったことや、今後の高速道路整備のあり方についての検討も現時点では明らかでないことなど、今後の高速道路整備の動向は非常に不透明な状況となっております。
 県といたしましては、こうした厳しい状況ではありますが、今後、事業主体、整備手法などを国に早急に決定していただき、事業着手が見合わされたままである御坊─田辺間も含め、可能なところから着手し、県民の悲願である有田─田辺間の4車線化が早期に実現されるよう、引き続き国、関係機関に対して強く働きかけてまいります。
 以上でございます。
○議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 以上で、中村裕一君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 議案第134号及び議案第143号から議案第178号までは、お手元に配付しております議案付託表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 次に日程第4、請願の付託について申し上げます。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の常任委員会に付託いたします。
 なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、御了承願います。
 お諮りいたします。12月14日及び15日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 御異議なしと認めます。よって、12月14日及び15日は休会とすることに決定いたしました。
 次会は、12月16日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後1時55分散会

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