平成22年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後2時1分再開
○副議長(山下直也君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 大変長らくお待たせをいたしました。300回記念の議会にふさわしい危機管理能力の問われるアクシデントでありましたが、あらゆる困難に負けずに、早速一般質問に入らせていただきたいと思います。
 今、TPP・環太平洋戦略的経済連携協定への参加問題が政治の熱い焦点となっています。TPPは、関税を原則撤廃し農産物の輸入完全自由化を進めるものであり、日本がこのTPPに参加をすれば、国の試算によると食料自給率は14%にまで低下してしまい、県内農業はもちろん、関連産業など地域経済に深刻な打撃を与えるという重大な問題だと考えます。
 政府は、開国と農業の再生を両立させるというふうに繰り返してはいますが、既にEUやアメリカ並みの経営規模になっている分野のそんな農業でさえ壊滅的打撃を受けることになり、両立は不可能です。今でも日本の農産物の平均関税率は、OECD各国の中でもアメリカに次いで2番目に低く、鎖国どころか十分過ぎるほど開かれていて、日本農業の疲弊と困難の主な原因となっているのです。
 TPPへの参加は、北海道庁の試算でも明らかなように、食料と農業を破壊するだけではなく、地域経済全体を破壊するものです。知事、議会、農業団体、経済界がそろって反対をしています。
 以上、述べたような問題点は、国自身の試算でも、また本定例県議会に提出されている農業団体からの反対請願の意見書案にも、これ以上農林水産物の輸入自由化が進めば安価な外国産の流入、はんらんによる価格破壊が起こり、農業を初め1次産業は壊滅的なダメージを受け、関連産業は衰退し、雇用機会が失われ、地域経済は崩壊をする、こんなふうに書かれています。
 先日12月1日の全国町村長大会でも、我々は政府に対し、TPP反対を明確に表明する、こういうふうに特別決議が採択をされたところです。知事は、このTPP問題をどういうふうに認識をし、また和歌山県経済と産業への影響についてどう考えているのでしょうか。一昨日にプロジェクトチームを立ち上げたと記者会見されましたが、和歌山県への影響額はどう考えていますか。
 そして2点目に、県内農業と地域経済を守るという立場から、和歌山県知事という立場で国に対してTPPには反対だとはっきり意思表示をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 以上、TPP問題2点について知事の答弁を求めます。
 次に、鳥獣被害対策についての質問をさせていただきます。
 県内の鳥獣被害は年々深刻さを増すばかりです。農業生産への被害だけにとどまらず、中山間地で暮らしが成り立たなくなるなど、県民生活と地域全体の課題となっています。
 10日ほど前ですが、有田川町の山間部の三瀬川という集落で、「シカによって畑の白菜を食べられた」、そういうおばあさんの話を聞きました。畑の白菜20数個がみんな食べられてしまったということですが、息子の家にも分けてあげようと楽しみにしていたのに、一夜のうちに全滅ということだったそうです。
 県が発表する被害額というのは、基本的には商品作物への被害であり、こういった自家栽培の畑などへの被害は数値となってあらわれてきません。しかし、これは深刻な問題で、田舎の高齢者世帯は、年金収入は極めて少ないけれども、毎日の食事は野菜などを自給自足やおすそ分けをし合って生活を成り立たせているのです。自家栽培の畑が鳥獣被害によって何もつくれなくなると住み続けられなくなってしまうのです。農業対策予算という位置づけだけではなくて、まさに地域やこの集落の存在にかかわる地域政策の問題として正面から取り組むべき課題であると考えます。
 鳥獣害対策は、農地の防護対策はもちろんのこと、人里近くのエリアで爆発的な個体数増加という事態があって、頭数調整のための捕獲が焦眉の課題となっております。加えて、単純に捕獲だけではなくて、地域住民の共同や生息環境への働きかけも合わせた総合的な取り組みが必要なことは言うまでもありません。
 そこで、鳥獣被害対策の予算がどうなっているのかに注目をしてみますと、近年は有害捕獲数の激増もあり、市町村の鳥獣被害対策予算が実は増加傾向で、市町村の予算は火の車です。調べてみますと、ここ4年間でほぼ倍増している自治体が多いんですね。有田川町も広川町も、お隣の日高川町でも年間約2000万円の予算となっているのが実態です。ところが、県の予算を見てみますと、県単独の鳥獣被害対策予算は年間4000万円程度であって、これでは市町村予算に毛が生えた程度ではないかと。果たすべき役割や予算規模からいっても、極めて不十分ということになっているんではないでしょうか。
 県予算としては、防護さくや防護おりの補助事業額の増額はもちろんのこと、この有害捕獲報償費の補助増額とか狩猟免許者への支援、さらには県からは補助金を出していない国事業の防護さく事業への県の上乗せ補助を検討するなど、ぜひ大幅な増額を新年度予算編成の中で検討していただきたいと提案をするものです。
 また一方、国の予算のほうですけれども、特別措置法に基づく鳥獣被害対策事業予算が、本年、2010年度分は事業仕分けによって28億円から約24億円へと削減をされて、全国的な要望額も一方で急増したために和歌山県分は要望額の半分しか認められませんでした。大変重大な影響を受けました。
 しかし、民主党政権も事態の深刻さと急増する予算要望を無視できずに、来年度は別枠で100億円の対策費を概算要求しておりますが、しかし、これが和歌山県で十分に活用できる内容となっているかどうかは極めて不透明であり、本年度同様の交付金事業のほうは何と半分に減らしてしまうということですから、国に対しても和歌山県としてしっかりと物を申していかなければならないというふうに思っています。
 そこで知事に伺いますが、来年度予算編成に向け、国の事業をフルに活用できるよう働きかけるとともに、県予算も、また取り組みも一気に倍増させるぐらいのそういう思い切った対応が求められているのではないかと思いますが、来年度県予算、取り組みの抜本的強化についてどう考えているか答弁を求めます。
 次に、具体的な問題で2点、農林水産部長にお尋ねをいたします。
 まず第1点目に、有害鳥獣捕獲のための免許の取得、それから更新、そして狩猟登録、この3つの経費への支援の問題です。有害捕獲を必要とされる規模に引き上げようとすれば、捕獲用のおりの設置などを相当数拡大させるとともに、銃器での駆除をお願いしている猟友会の皆さんや、有害捕獲のため、わな免許を取得した農家の皆さんへの支援が求められています。
 今年度から広川町では、毎年毎年必要となっている狩猟登録の費用への補助をスタートさせました。印南町では、新たに猟銃免許を取得する人を対象にして、手続費用や猟銃購入費の一部を補助する制度をスタートさせました。これらはどちらも県内の新しい動きです。また、全国的には長野県で、猟銃者確保事業として許可所得に係る経費の支援が、そして有害鳥獣捕獲者支援事業としてハンター保険や射撃訓練経費をそれぞれ市町村とともに支援する予算が始まっています。これらの県内市町村で始まった努力や全国的な試みをぜひ和歌山県の事業として取り入れていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
 実は、これらの費用は負担が案外大変なんです。銃の免許取得費用は約7万円かかります。そして、毎年行わなければならない狩猟登録にかかる費用は、保険料など含めて銃で4万円、わなで2万数千円です。そして、3年ごとには銃やわな免許の更新を迎えます。毎年の費用に加えて更新費用がかかるので、更新と狩猟登録合わせれば、わな免許では約4万円の出費となります。
 県はこれまで、わなを新規に免許取得するそのときの費用に対しては支援を新たに設けてきたんですけれども、その後、残念ながら銃の免許取得費用への支援も、また銃もわなも免許の更新時の費用への支援も、そして免許とは別に毎年毎年必要となるこの狩猟登録というこの手続費用への支援する制度がまだありません。
 有害捕獲は、猟期を外れた時期に無理をお願いする事業です。また、箱わなにしても、ほっといて入るものでなくて、えさの補給や管理や見回りなど多大な労力がかかります。有害捕獲は、猟友会の皆さんや免許取得者の皆さんの献身的な協力なしには成り立たない事業なのです。困難な中での免許取得者拡大に向けて、また途中で免許をやめてしまわずに継続して有害捕獲に御協力いただけるよう、これらの費用に対する支援拡大がぜひ必要ではないでしょうか。
 次に、野生鳥獣食肉活用について伺います。
 日高川町でスタートした野生鳥獣の食肉加工の取り組みが注目を集めています。有害鳥獣食肉処理加工施設として町内2カ所に開設されたジビエ工房紀州、これには全国からの視察が後を絶たないと聞いております。鳥獣被害対策推進のためにも猟友会や食肉加工・販売・料理関係者との連携を深め、県内各地にこういった取り組みを広めていくべきだと思いますが、今後の展開についてどう考えているか、御答弁を願いたいと思います。
 引き続き、3つ目の柱であるミカン対策に移らせていただきます。
 2010年産ミカンは、裏年ということもあり、有田地方での収穫量は前年対比85%程度であり、当初滑り出しの販売価格はまずまずだったものの、収穫量が少ないこともあって、一昨年よりは収入が少ないのではないかと言われております。
 第1点目に、本年の和歌山県産ミカンの生産販売状況や県の取り組みについて答弁を願います。
 2点目に、県オリジナル新品種のアピールと普及について伺います。
 私はこれまでも魅力的な和歌山県オリジナル新品種をと求めてまいりましたが、この間、果樹試験場と農家の協力のもと、味と着色のよい極わせ品種や浮き皮の少ない12月の主力品種など、開発が進められてきました。現在、品種登録出願中の「YN26」という開発ネームの極わせミカンがこのたび農業新聞にも全国的に取り上げられ注目されているところです。
 和歌山県産ミカンのブランド力と注目度アップのためにもどんどんアピールをし、そのことで農家も励ましてほしいと思います。今後のネーミングや商標登録、普及に向けた取り組みはどう進んでいくのか、お尋ねをいたします。
 それから、気候温暖化に対応した栽培技術について伺います。
 昨今の気候温暖化は農作物に大きな影響を与えています。夏の高温や降水量の低下、秋になっても暑さがずっと続くという中で、農産物全般に不作や品質低下、ミカンでも色づきや収穫期のずれ込みなどが言われています。特に、ミカン栽培では収穫前に秋肥えという肥料をまくのですが、気温が下がってもなかなか地温が下がらないために予想以上に養分が木に吸収をされて樹勢が強くなり過ぎて12月の浮き皮が激しくなるなど、今までの延長線上の、経験上の栽培ではいけないという課題が報告されています。県として気候温暖化に対応した栽培技術についてどう考えているのか、お答え願います。
 4点目に、基盤整備についてお尋ねをいたします。
 先日、有田のミカン畑で事業化された乗用型モノレールの説明・試乗会に参加をさせていただきました。急な段々畑が多いミカン畑にとって、運搬用モノレールはなくてはならない存在です。安全対策のために人が乗れるモノレールということで、今年度8路線、約1000メートルの施設が完成したのでお披露目となりました。私も試乗させていただいたのですが、パワーもあって安心して乗れる感じです。事業に取り組んだ農家の方からは「とてもすばらしい。しかし、値段が高いのが難点。また、車体が長いので、段々畑ではコンテナを積むのにも不便。もっと短く簡便に」などの感想が出されていました。もっともな御意見であり、リーズナブルな普及品を期待したいところです。
 有田地方のミカン畑に設置されたモノレールは、既に30~40年たって更新時期を迎えてぐらぐらになっている畑が多く見受けられます。ところが、経済的理由によりなかなか設備投資に踏み切れないでいる実態があります。こうした園地整備の事業を推進することは、後継者対策、高齢者対策、また地域の経済対策としても大事な役割を果たすと考えています。今日的なニーズに合った基盤整備として、運搬用モノレールの機能強化や更新、園地内の作業道の整備というような身近な基盤整備への支援が求められていると思いますが、いかがでしょうか。
 以上、ミカン対策4点については農林水産部長より御答弁を願います。
 4つ目の柱である有田の救急医療体制強化についての質問に移ります。
 私は、「有田は救急医療の谷間だ」、こういう救急患者さんや救急隊員さんの声を紹介しながら、一昨年度の12月議会、昨年度の2月議会で継続的にこの問題を取り上げ、救急患者が和歌山市内の大病院に運ばれざるを得ない状況の改善を求めてまいりました。
 ことし3月に湯浅町が次世代育成支援行動計画、この作成のためにアンケートをとっているんですが、その自由回答欄の中には、夜間の救急医療機関が遠く、大きい病院しかないことが困る、また、休日・夜間、子供が病気のとき診てもらえる施設が近くに欲しいなど、切実な医療に対する有田住民の願いがつづられています。
 この間、県が中心となって地域医療再生計画を立てるとともに、関係機関とともに立ち上げられた湯浅保健所圏域医療体制整備充実委員会として協議を重ね、3次救急医療機関への患者集中の防止、救急告示病院など各2次救急医療機関の診療機能も踏まえながら、病院群輪番制の再構築など、体制整備の努力を重ねてこられました。
 そして、このほど秋に地域医療住民アンケートというのが実施され、有田地方の住民意識や医療需要などを幅広く調査されました。その結果を見せていただくと、和歌山市内の大病院指向の割合よりも地元の救急病院でまず診てもらいたいという割合が多く、その願いが切実であることがはっきり出ていたというふうに思います。
 県として、この住民アンケート結果をどう分析し、今後の体制づくりに生かそうとしているのか。関係機関との協議状況と今後の方向性についての考え方、以上2点について福祉保健部長より答弁を願います。
 最後に、犬の多頭飼育問題を質問させていただきます。
 この間、有田郡内の3町の5カ所において同一人物が合計約80頭もの犬を多頭飼育──多くの数ですね──多頭飼育し、当該地域の付近住民が大変な迷惑をこうむっております。飼い主自身が住んでもいないこれらの場所で非常識な多頭飼育を続けることにより、犬がほえることへの苦痛を初め、さくを越えて犬が逃げ出したりする問題や、飛びかかってきた犬のせいで通行人が転倒したりと、数多くの問題が報告され相談を受けてまいりました。
 有田川町の修理川地区では、地区住民、行政、地権者など関係者の努力により犬が撤去されました。しかし、湯浅町の住宅密集地や広川町の飼育現場では、住民や行政の懸命の努力にもかかわらず、飼い主は多頭飼育をやめる意思もなく、依然として付近住民への耐えがたい被害が続いているのが現状です。無法な犬の多頭飼育問題に対する県としての対応と今後の取り組みについて答弁を願います。
 次に、県と湯浅保健所、地元自治体は、住民からの相談を受け、現場にも常に足を運び、飼い主への指導や対策に努力をされてまいりましたが、しかし一方で、住民は事態がなかなか改善をされないというもどかしさ、そして、これからの先行きへの不安を感じています。現行法に基づく厳しい指導と対策を取り切るとともに、法の限界もあることから、実効性のある有効な法改正や条例の検討をすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 以上、2点について環境生活部長から答弁をお願いして、私の第1問を終わります。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(山下直也君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、TPPの関係でございます。
 環太平洋戦略的経済連携協定・TPPにつきましては、二面あると思います。1つは、一般論ですが、他国より競争上不利に扱われて日本経済が破綻しないかという問題と、もう一方は、参加によって影響を受ける産業をどう守るか、この2つの問題がこの手の問題にはいつも議論になります。こういう問題は、影響を的確に把握した上で、その上でちゃんと対応策を打てるかどうかということを見きわめた上で慎重に対応すべきものと考えております。少なくとも今の国政が農業の競争力強化策を放棄してしまったというように思える上でさらにTPPに入るというのは、常軌を逸してるというふうに私は思います。
 県内の影響につきましては、工業分野では業界や輸出入関係の企業等への聞き取り調査を行っているところでありますが、現時点では輸入関税が残っている幾つかの業界、この業界は農業と同じような問題がございまして、これに対して非常に慎重な考慮が必要であります。
 大部分の他の産業、これについては、むしろ関税がありませんので、したがって、輸入面で打撃を受けるということではなくて、逆にむしろ入らないことによる経済の影響をどう考えるか。例えば、関税で不利に扱われた結果、輸出産業が打撃を受けると、今度は部品とかそういうものに対する発注もがくっと減るというようなことになるとどうなるかというようなことが議論になると思います。一方、農林水産業におきましては、大体については関税も残っております。
 それから、輸出よりもやっぱり輸入のほうが問題というようなのが基本でございますので、TPPに入ることによる影響ということが大問題であります。今後、生産性の向上とか競争力の強化が本当は大切なんでありまして、農業基盤整備などを国に働きかけていくことが必要と考えております。
 このため、産業ごとにどういう影響があって、何が必要かということをきちんと見きわめておかないといけませんので、庁内にプロジェクトチームを立ち上げたところでありまして、この中でそれぞれの産業ごとの影響を分析するとともに、悪影響が出るとすると、それを緩和するために何が必要かということをきちんと分析して、国に対してその対応をしないと困るということをきっちりと要求していくということをしていく所存であります。
 次に、鳥獣害被害の問題でありますが、これまで、有害鳥獣捕獲や防護さくの設置支援など、捕獲と防護の両面から取り組んでまいりました。しかし、こうした取り組みにもかかわらず、鳥獣害被害は減少せず、現場で農業に携わっている方々からは、何とかしてほしいという深刻な声、あるいは鳥獣害対策をもっと充実してほしいという声も聞いております。
 県としても、これまで鳥獣保護対策というのが名前からして明らかなように、これまでの法体系は「守る」ということであったんですが、これを180度ひっくり返しまして、個体数調整を行う「とる」に重点を置いた取り組みを強化していく必要があると考え、平成18年からイノシシ、平成20年からシカの猟期の延長を行うとともに、ことしの猟期からシカの1日当たりの捕獲頭数制限を撤廃したところであります。むしろ、減らすという目標も明示して減らしていこうというふうに考えているところであります。
 ところが、昨今、銃の所持規制が厳しくなる中で、後継者難などが発生いたしまして、この鳥獣をとってくださる方がいなくなっていくという重大な局面に我々は遭遇しております。したがいまして、来年度予算につきましても、既にこれまで春からずっと検討してきた中で抜本的に強化を図る所存でありましたが、さらにこの狩猟についてのハンター対策、こういうことをどういうふうにして考えていくかということをさらに追加して、さらに強化した対策を必要としていると考えております。
○副議長(山下直也君) 農林水産部長阪中栄一君。
  〔阪中栄一君、登壇〕
○農林水産部長(阪中栄一君) 鳥獣害対策に関連する2点について一括してお答えいたします。
 狩猟免許の取得や更新、登録にかかわる経費につきましては、県では平成19年度からみずから農地を守る農家を支援するため、わな猟免許の取得に係る講習経費の一部に対し補助を行ってきておりまして、これまで203名の方の活用をいただいております。
 また、平成21年12月に施行された銃刀法の改正により、銃の所持者に対する新たな負担が発生していることは十分認識しております。県では鳥獣による被害が依然として減少しない中、鳥獣害対策についてこれまで以上に捕獲に力を入れていく必要があると考えておりまして、どのような方策がとれるのか、市町村や猟友会の方々の意見を聞きながら検討してまいりたいと考えてございます。
 次に、野生鳥獣の食肉としての利用についてでございますが、本県では、ジビエの処理加工施設の整備を推進するとともに、取り扱い店舗の拡大やホテル、レストランでの利用を促進するなど、流通販売対策に取り組んでおります。イノシシ、シカ肉は地域の貴重な資源として有効に活用することが重要であると考えておりまして、今後も引き続きわかやまジビエとしての活用を図ってまいります。
 次に、ミカン対策の4点につきまして一括してお答えいたします。
 まず、本年産ミカンの生産販売の状況と取り組みについてでございますが、本年は裏年に当たることから、生産量は対前年比約9割に当たります16万5000トンを見込んでおり、12月1日現在の出荷量は2万7000トンとなっております。一方、市場価格につきましては、糖度が高く品質が良好なこともありまして、前年を約4割程度上回る219円となっております。
 販売対策につきましては、JAグループと連携して、東京の品川駅構内において大規模なPR活動を実施したほか、百貨店やスーパーで和歌山フェアを開催するなど、積極的な販売促進活動に努めております。今後とも、需要の高まる年末年始に向けまして、厳選出荷の徹底に加えまして、市場との情報交換を密にしながら品質の高さを前面に出しました販売対策を推進してまいります。
 2点目の県オリジナル新品種のアピールと普及についてであります。
 これまで、本県ミカンのブランド力向上を図るため、極わせ、わせ、なかて、おくての県オリジナル品種によるシリーズ出荷に向けて取り組んでおります。その一環としてゆら早生を親とした極わせ品種YN26を果樹試験場で育成し、昨年、品種登録出願を行いました。
 これまで、JAや果樹育苗組合を通じ、新品種の特性や現地適応性について農家の方々にお伝えをしてきたところでございますが、平成25年に計画している苗木の本格配布までに農家の方々を対象とした現地研修会の開催、また栽培マニュアルの配布などに加え、販売時の名称につきましても検討を進め、産地化に向けての体制整備を図ってまいります。
 3点目の気候温暖化に対応した栽培技術についてでございます。
 浮き皮などの生理障害対策の技術開発に加えまして、高品質安定生産のためのかん水指標作成に取り組んでいるところであり、今後、ホームページを通じまして土壌に応じたかん水時期などに関する情報を農家の方々に提供することとしております。さらに、議員お話しの施肥技術に関する試験研究の実施につきましても検討を行ってまいりたいと考えております。
 最後に、運搬用モノレール更新や作業道など身近な基盤整備への支援についてでございますが、傾斜地の多い本県の産地実態を踏まえ、作業の省力化やコスト削減を図るため、これまで園内道の整備やモノレールの導入を進めてまいりました。今後も、補助事業や低利融資を活用しながら、園地条件に応じたきめ細やかな対応をし、働きやすい園地づくりを進めてまいります。
 以上でございます。
○副議長(山下直也君) 福祉保健部長西上邦雄君。
  〔西上邦雄君、登壇〕
○福祉保健部長(西上邦雄君) 有田地方の救急医療体制強化についてお答え申し上げます。
 有田地域の住民の皆様が救急医療に対して何を求めているのかを把握するため、湯浅保健所におきまして、この9月にアンケート調査を実施いたしました。その結果では、日曜・祝日の救急対応につきましては、約7割の方が、和歌山市等の大病院ではなく、有田地域の医療機関で受診したいと回答されております。県では、このアンケート結果も踏まえまして、有田地域の救急医療体制を強化するため、湯浅保健所が中心となりまして、有田保健医療圏の医療機関、医師会、消防機関、市町等と現在鋭意協議を重ねているところであります。
 その協議の方向性としましては、日曜・祝日の救急患者に対応するため、管内の医療機関等の医師の協力を得まして、拠点病院に入院患者等に対応する救急センターを設置する方向で検討を進めております。今後とも引き続き、持続可能で安心できる有田地域の救急医療体制の構築に向けて取り組んでまいります。
 以上でございます。
○副議長(山下直也君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 犬の多頭飼育問題の2点についてお答え申し上げます。
 県の対応といたしましては、これまで飼い主に再三にわたりまして指導を重ねてまいりましたが、飼い主の対応が不十分なため、現在、動物の愛護及び管理に関する法律に基づく改善勧告を行っているところでございます。
 あわせて、問題となっている飼育場所の周辺住民を初め地元市町など関係者による連絡会を設置して、地域の共通の課題として飼い主との話し合いの場を設ける等、地域一体となって飼い主に対して改善を強く求めております。
 今後の取り組みといたしましては、飼い主が勧告に応じない場合は、法に基づく措置命令等、より厳しい対応を行います。さらに、動物愛護推進員を通じまして譲渡を求める働きも行ってまいります。
 次に、実効性のある法や条例改正につきましては、飼い主の所有権問題等から難しい課題があるところでございますが、全国的な問題となっている多頭飼育の適正化に向け、現在、国の中央環境審議会において動物の愛護及び管理に関する法律の改正の検討がなされておるところです。今後、こうした国の動向も注視してまいりたいというふうに考えております。
 以上でございます。
○副議長(山下直也君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(山下直也君) 再質問を許します。
 42番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 TPPの問題で再質問をさせていただきます。
 知事は、TPP問題によって県内の農林水産分野での影響は大きいと、こういう趣旨の答弁をされました。影響額については、具体的な額には言及されませんでしたけども、農林水産業の総算出額の約1割が見込まれるという答弁でしたから、和歌山県の農林水産業の総算出額は1286億円ですから、100数十億円の影響というふうになろうかと思います。
 しかし、これは国の計算方式の枠内での試算であって、他県のように関連産業や雇用全般への影響は反映されていない数字です。
 私は、和歌山県が農商工連携で地域の産業を元気にしていくという方向を目指しているだけに、影響の全体像をしっかりと把握することが大事ではないかと思います。
 また、国に対してのスタンスですが、どのような要望をしていくのかをこれから検討していくというふうな答弁でしたけれども、影響をさらに分析していくというのは結構ですし、さまざまな対応を求めるというのもいいんですが、基本姿勢はどうなのかと。反対だと──常軌を逸していると言うのなら、これはもうきっぱり反対だと言えばいいと思うんですね。反対だと、はっきり物を言うのか、そうでないのか。とりあえず今は何も言わずにおこうと思っているのか、基本的な姿勢のところを的確に答弁いただきたいと思います。
 そもそも私たちの和歌山県は、オレンジの輸入自由化で大変な苦労を経験しております。自由化前は、ミカンは全国で360万トン、400万トンと言われた生産高でしたが、ことしに至っては80万トンにまで下がってしまいました。輸入される濃縮ジュースの価格には到底対抗できずに、ジュース用ミカンの価格は、もはやただ同然となってしまいました。
 表年では、だぶつき感が加速をして、価格の下げがとまらないという状況が固定化し、農家手取り、収入の減少は著しく、もう農業を続けていく意欲をなくしかけている農家が多いんだというふうに思っています。こういう体験を持つ県民に対して、知事の態度は、私はちょっとそっけない態度じゃないかと思うんです。知事は、競争力をつけるのが農業政策のようにおっしゃいますけれども、工業製品と同じように思っている節があると思うんですね。
 いつまでも食料はお金で外国から買えばいいんだという時代ではないと思うんです。和歌山県農業と日本農業全体がまさにがけっ縁であり、県として地産地消の取り組みを進めて食料自給率を上げていこうと言ってるときに食料自給率を下げてどうするんだと、基本的に間違ってると国に対して堂々と物を言ってしかるべきではないでしょうか。
 影響額の全体像と国への対応姿勢、これはTPPの問題で知事の答弁を求めたいと思います。
 それから、鳥獣被害対策。
 知事からは、来年度予算に向けてハンター対策を追加していきたい、また部長からは、有害捕獲の経費支援について免許取得や、それから更新時等について検討していくという前向きの答弁をいただきました。免許取得と、それから更新、この2つは答弁にあったんですが、狩猟登録の経費については直接触れられておりませんでした。その後の免許取得と更新等についての検討というその「等」に含まれているんだろうと思うんですが、いずれにしても新しいことを始めようということなので、もう少し突っ込んで、今度は知事に再質問さしていただきたいと思います。
 有害捕獲に従事していただくためには、事実上狩猟登録というのを、免許だけじゃなくて、狩猟登録というのを毎年していただくことになっています。私が持ってますのは、広川町における狩猟登録申請の費用一覧表というのを見せていただきました。どんな費用がかかっているのかというのを紹介いたしますと、例えば銃の1つのケースでは、狩猟税、これは県税なんですけれども1万6500円、それに県の手数料1800円、そして大日本猟友会、県猟友会の会費などに5800円、猟友会有田支部の会費に6000円、ハンター保険に8000円、猟友会広川分会費に4000円、合計4万2100円というふうになっています。これ、銃ですけれども、わなのケースはどうか。これは、狩猟税──これは何回も言いますが、県税です──8200円、県手数料1800円、大日本猟友会、県猟友会費などに4000円、支部会費6000円、ハンター保険1100円、広川分会費4000円。わなの場合でも合計で2万5100円となるんですね。それにプラスして銃の場合は、これからは毎年の射撃の訓練費、そういった費用もかかってきます。
 私、今紹介しましたように、いろんな種類の費用が合わさってこれだけの個人負担になっているんですが、県税や県手数料または保険料など各種の費用、これらに支援を、工夫できる余地は、私、いっぱいあると思うんです。また、有害捕獲には協力できませんと、純粋に趣味やスポーツで免許を持ち、狩猟登録をすると、そういう方は別に枠外にしていいんですよ。こういう方は別だと。有害捕獲に協力していただいている猟友会や個人の皆さんにいろんな料金を引き下げたり、支援を手厚くして個人の負担はできるだけ軽減する。頑張って免許を取っていただいた方々が、免許取ったはええが、後から後からいろんなお金がかかってえらいよと言うてる。このことに報いることは、私は県民の合意を得られると思うんですね。
 知事に対して細かい具体的な答弁を求めるわけではありませんが、こういう性格を持った維持経費、狩猟登録費用なんだということを受けとめていただいて、ぜひこの有害捕獲の免許の取得や維持にかかわる支援を猟友会など関係機関とよく協議して進めるよう指示をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 それでは、以上2点、質問いたします。
○副議長(山下直也君) 再質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 松坂議員におかれましては、私が答弁をしていないところも含めて推測をしていただきまして、ありがとうございました。
 私の考えをいろいろと推測されたんですが、それについては異論もありまして、これを一々言っておりますと長くなりますので、「そういうことはないんですけど」というようなことも含めて留保させていただきたいと思います。
 その上で、本質的なところなんですが、現在、農業生産は、国においては米の所得補償を行うために農業の基盤整備という競争力を高めるような政策をお金にすると60%もカットしてしまったんですね。何も対策をとらないどころか、対策を弱めて、その上でTPPに入って荒波にさらすなんていうのは常軌を逸してるということを申し上げたわけです。ということは、現状では、そんなん入るのは反対であるというのは当然であると思います。
 次に、狩猟の問題でございますけれども、私はハンター対策を強化すると申し上げました。それは、まさに議員御指摘のようなこともいろいろ検討してやっていかなきゃいけないということも当然踏まえてるわけでございますので、その点、申し上げたいと思います。
○副議長(山下直也君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(山下直也君) 再々質問を許します。
 42番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕
○松坂英樹君 再質問についての答弁については、知事の考え方をお聞きいたしました。ぜひ和歌山県の知事として、国に対してしっかりとした要望等していっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 最後に2点簡単に、簡潔に要望をつけ加えさせていただきます。
 鳥獣被害対策の防護さくの関係ですけども、先ほど私、第1問の中でも言ったんですが、国の事業にも県費補助を加えてほしいということを提案いたしました。国のハード事業に取り組む自治体、取り組まない自治体、随分アンバランスが実はあるんですね。
 県内で一番事業場の多い広川町でお聞きしました。「なぜ広川町はここまで進んでいるんですか。住民の意識が高いんですか。町行政の熱意がすごいんですか」、こう聞きますと、担当の職員さんは「いいえ。町からも補助をして地元負担を軽くしているからです」と、さらりとお答えになりました。国のハード事業は補助率が約2分の1で、県費補助がないんです。地元負担が2分の1になっています。
 そこで、広川町では町単独予算で33%の補助をつけ、地元負担を12%に抑えているんですね。ですから進むんです。今年度、国の予算が半分に減らされ、ことしできなかった地区は来年度に待ってよと。来年度で事業化するという予定だそうですが、あと5地区ほどから手が挙がっていて、うれしい悲鳴だそうです。
 要望としましては、この市町村負担分には8割の交付税措置がされるんだということをもっと市町村にアピールをして理解してもらって積極的に取り組んでいただくようにすべきだということと、そして、その厳しい市町村財政の中で議会や財政にうんと言ってもらおうと思えば県も補助しているんだという形に踏み込んでいただければ理解を得やすいんですがと。これも道理だというふうに思いました。国と市町村だけに任せずに、県もぜひ予算枠を確保していただきたいと強く要望をしておきます。
 もう1点、基盤整備で運搬用モノレールや園内作業道の整備というような身近なものに力を入れようと提案をいたしました。これまで運搬用モノレールなどは、国のメニューでは、新設はオーケーだけれども、単純更新はだめなんだというような方向だったんですね。でも、今この古い運搬用モノレールを更新するときには機能も上がるし、それから積み込みの位置や路線の延長、そういったものも工夫していくわけですから、機能も上がれば本当に後継者対策になります。何よりも、今、こういった小さな事業というのは地元業者の方の仕事づくりになると。そういう景気対策の点でもぜひ、大型の工事じゃなくて、小さなこういう基盤事業、思い切って大胆に進めていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(山下直也君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終了いたしました。

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