平成22年9月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(雑賀光夫議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 44番雑賀光夫君。
  〔雑賀光夫君、登壇〕(拍手)
○雑賀光夫君 議長のお許しを得ましたので、早速質問に入らせていただきます。
 11月には県知事選挙が行われます。仁坂知事は引き続き知事職を続けられる意思を表明しておられますし、他に立候補を表明しておられる方もおられます。私ども共産党も、「活気ある住みよい和歌山県をつくる会」の皆さんとともに、候補者擁立を検討しているところでございます。
 そこで、この9月県議会は、知事選挙の争点をできるだけわかりやすくし、県民の皆さんが判断しやすくすることが大事であると考えます。質問通告の初めの4点は、その立場からの質問でございます。
 まず、教育問題から入ります。
 知事選挙で問われるのは、財政権を持っておられる知事が、その立場から教育をどれだけ大事にしているかという問題でございます。教育予算の最大のものは、教職員定数確保、人件費であります。
 和歌山県では、かつて同和教育を進めるために県単独で140人ほど教員を確保し、同和地区35人学級を進めてきました。私は、教育困難な課題が同和以外にもたくさんある、140人の県単独教員定数を残して、すべての学校での少人数学級を進めるべきだと主張したのですが、私の主張は受け入れられず、丸々削られてしまったわけでございます。
 今、教育委員会は中学校35人学級、小学校38人学級など進めていますが、文部科学省が措置した教員をやりくりして実施しているにすぎません。文部科学省の資料では、和歌山県では標準定数の92.3%しか正規教員は入っていない、それを定数外講師で埋め合わせているわけでございます。他府県ではどうなんだろうか。財政力の大きい東京は別としても、例えば鳥取県でも正規教員は97.2%であります。92%と97%、5%の差があるわけでございます。6000人の教員がおれば、300人という大きな差があるわけです。
 知事にお伺いいたします。教育を大事にするというなら、正規教員をふやし、さらに県単独負担で教員を置いて、少人数学級についての県民の期待におこたえになってはいかがでしょうか。
 いま1つ、今年は異常な暑さでありました。県立高校では教室にクーラーが設置されましたけれども、小中学校では普通教室への設置は一部自治体に限られています。多くの学校では保健室、図書室など一部にとどまっています。その一方で、授業時間確保といって、夏休みを短く切り上げる傾向があるわけでございます。学校の暑さの状況をどうつかみ、どういう対応をしておられるのでしょうか、これは教育長への質問でございます。
 さらに、今後もこうした暑さが予想される中、来年度予算では暑さ対策を行うことが求められていると思います。市町村任せでは大変です。子供を暑さから守る施策について、来年度予算でどういうことが考えられているのでしょうか、知事のお考えをお伺いしたいと思います。
 次に、福祉・医療の問題はたくさんありますが、1つだけ。
 私の地元海南市は、今子供の医療費無料化でわいています。お隣の紀美野町で中学校卒業まで子供の医療費は無料になった。海南市は小学校入学前までです。紀美野町でできることがどうして海南市でできないのかと、署名運動が広がっているわけでございます。
 こうした中で、県でもせめて小学校卒業までは医療費無料化のために半額は負担して、さらに国に対してもその施策を迫っていくべきだと思うのですが、知事のお考えをお伺いしたいと思います。
 第2に、ゼネコン奉仕の乱開発行政から、中小地場産業による生活に密着した事業優先に切りかえるという問題です。
 かつて仮谷県政の時代には、対決点は鮮明でした。私たちはあのころの県政を、「海があれば埋めたくなり、山があれば削りたくなる県政」と特徴づけたことがあります。そういうことはできなくなりましたが、それでもかつてのゼネコン奉仕の事業が財政を圧迫しております。
 仁坂知事が態度を問われたのは、大滝ダムの問題でした。大滝ダムの問題で国から追加予算の負担を要求されたとき、和歌山市長も橋本市長も態度を保留しているときに、仁坂知事は「負担します」とすぐに表明をされた。今でも大滝ダムの追加負担というようなことは当然だと考えておられるのでしょうか。
 また、今なおゼネコン奉仕の公共事業が続いているのは、南防波堤建設の問題です。LNG火力が住金埋立地に建設されることに始まった事業ですが、県の負担は総額50億円にも上ります。新たな公共岸壁は必要とされていない、LNG火力建設の見通しがないままに続けられ、これまでで半分進捗いたしました。これからも25億円かけて続けられるのでしょうか。
 それにかわって、中小企業を支援することこそ求められています。政府は6月18日、中小企業憲章を閣議決定しました。憲章は前文で、中小企業を経済を牽引する力、社会の主役と位置づけ、「中小企業がその力と才能を発揮することが、疲弊する地方経済を活気づけ(中略)日本の新しい未来を切り拓く上で不可欠」と、その役割を重視し、国の総力を挙げて中小企業の可能性を伸ばし、励まし、支え、どんな問題でも中小企業の立場で考えていくとの決意を示しています。中小企業家同友会も、全国商工団体連合会も、中小企業を守る政策への大きなステップとしてこの憲章を歓迎しています。
 政府の実際の政策はこの憲章に反することもあるのですが、今大事なことは、せっかくの中小企業憲章を空文にしないために、その積極的な内容を広く知らせ、閣議決定という政府文書にとどめず、国会決議として国民的宣言文書とすることが大事だと思います。また、地方自治体でもこの憲章に沿った施策を進めることが大変大事であると思います。
 知事は、この憲章をどのように評価しておられるのでしょうか。また、それを空文にしないためには、県で中小企業振興条例など、その精神を確認していくことが大事だと思いますが、知事のお考えはいかがでしょうか。
 さらに、この憲章の精神に沿った施策として今注目を集めていますのがリフォーム助成制度であります。県段階でも、秋田県などで大きな成果を上げていると言われています。ところが和歌山県は、県段階でも市町村でも、この制度は全く導入されていない県になっています。リフォーム助成を検討するお気持ちはありませんか、知事にお伺いいたします。
 第3は、乱脈な同和行政への反省にかかわる問題です。
 仁坂知事が就任されてから、過去の乱脈な同和貸付、高度化資金の焦げつきが問題になりました。その最たるものは、プラスパフーズという豆腐をつくると言っていた会社が、24億円もの貸し付けを受けたまま、1%しか返済せず倒産した問題でした。
 この問題は、審査がたまたま甘かったという問題ではありません。同和行政そのものは、最初は住民の人権を守る積極的な行政でした。ある運動団体の暴力的糾弾を武器に行政を屈服させ、あるいは癒着し、利権団体化していったという全国的な流れを背景にして起こった、ゆがんだ政策融資であります。今後も欠損処理の事案が出てくるものと思われます。既に欠損処理を終わったものを含めて、高度化資金の貸付残高は100億円を超していると思います。
 私は、ゆがんだ同和行政を引き継いでいる問題として、部落解放研究所への裏金補助金の問題、牢番頭文書の出版問題、高校入試の副申書の問題など、いろいろ取り上げてきました。そのときそのときで反省もありました。しかし、旧同和子ども会に法外な補助金が出される問題については、活動が活発な子ども会だからという言いわけがされてきましたが、納得できるものではありません。それでも、私の質問の直後に補助金を減らし適正化を図る担当部の努力は、ほんの少しずつですが進んでいると思います。
 その一方で、運動団体との交渉の議事録を見ますと、その努力の抵抗も大変強いことがよくわかります。今度の知事選挙では、同和利権団体による巻き返しなるのか、ゆがんだ同和行政の残り物に終止符を打つのかが問われると思います。知事のお考えをお聞かせください。
 第4は、平和行政の問題です。
 夏は、平和の問題を考える季節です。8月6日、原爆記念日、広島・秋葉市長は、日本国政府の出番として、非核三原則の法制化と核の傘からの離脱など、被爆国の政府にふさわしい取り組みを求めました。ところが同じ日に菅首相は、広島市内で記者会見をし「核の傘は必要だ」と述べたという、大変情けない話でありました。
 今、私たちは平和への声を大きくしなければなりません。和歌山県議会も平成10年6月議会で、核兵器廃絶平和宣言を採択しています。そして、市町村はさまざまな平和行政を進めています。私たちは毎年、全市町村を歩く平和行進を行いますが、市町村長さん、議会議長さんから連帯のメッセージや協賛金をいただきます。平和マラソンへの補助、広島への平和バス、平和集会への補助、平和のモニュメントなど、さまざまな平和への願いをあらわしている県内の市町村があります。
 府県段階でも、広島県、長崎県は別格としても、例えば、大阪府では大阪国際平和センターに補助金を出して、戦争、平和に関する展示、映画上映、戦跡ウォークなどを実施した、大阪空襲体験者の証言を収録したDVDビデオ「大阪大空襲」を緊急雇用事業で作成したとお聞きしています。
 知事にお伺いいたします。
 第1は、和歌山県としてどういう平和行政施策を進めておられるのでしょうか。
 第2に、平和の問題というと、担当は総務学事に回されるわけです。なぜここなのかよくわからない。それは、県政の中に平和行政が位置づけられていないからです。県政のどこかに平和行政を位置づけるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、風力発電にかかわる健康被害についてお伺いいたします。
 海南市下津と有田川町の間にある長峰山脈には、東西1列に10基の風車が並んでいます。風力発電です。私は風力発電というのは、太陽光発電とともにクリーンエネルギーとして期待しておりました。今も、適切に建設されるならば大いに期待していいと考えています。
 しかし、風力発電による低周波公害が、今全国的にも大きな問題になっています。ことしの3月、下津町の大窪地域の当時の区長さんから、1人の女性が気分が悪くなった、どうも風車と関係があるらしいというお話です。私はその話を聞いて、低周波問題の研究をしておられる元日赤病院の内科部長をなさっていた汐見文隆先生のところに飛び込んだんです。健康被害については、その女性の汐見先生への手紙から紹介したいと思います。
 「昨年10月より風車が稼働し、3カ月後、音が気になり眠れず、2月20日ごろより耳鳴りがし、食欲もなくなりました。昼間に家事をしているときは、耳鳴りはしません。夜寝ているときにツーツーツーと鳴り、耳せんをしても音は消えません。風車がゆっくり回っていても、寝るとツーツー鳴ります。左のほうがよく聞こえます。4月になって、二重サッシを入れた1週間後、主人も胸が圧迫されしんどいと思い、その日からガラスを少し開けて寝ることにしています。私の周りの人は何ともないのが不思議でなりません。私1人で騒いでいるのです。悲しいです。ゆっくり眠りたいです。5月6日より、車で20分離れた親類宅へ夜泊まりに行きます。耳鳴りはしません。2日泊まった後、自宅で寝ると、やっぱり耳鳴りします。その後は外泊しています」、こういうお手紙でございます。
 手紙の内容は低周波被害の特徴をしています。1つ、潜伏期があって耳せんをしても効果がない。ここに骨導音、空気でなくて骨から伝わる音である低周波音の特徴が出ています。二重サッシを入れるとかえって被害が大きくなるのも、低周波音の特徴です。個人差がある、潜伏期がある、そして、現地を離れると耳鳴りはしないが、戻ってくると耳鳴りするというのです。
 私は県環境生活部に、低周波の問題らしいので測定してほしいとお願いしました。環境生活部の環境管理課と和歌山県環境衛生研究センターがすぐに対応してくださいました。風車を設置した会社、ユーラスエナジーも一緒に測定してくれました。風力発電に係る低周波測定というのは、県内では初めてのことだそうでございます。
 今、被害を訴えている女性は、離れたところに家を建てて移り住んでいますが、生計を立てるための農業もできないのです。地域の皆さんは、汐見先生を招いて学習会を開きました。個人差があって、ある人は苦しんでいるのに隣の人は何ともない。低周波の問題というのは、被害を訴える方が「あんたがおかしいん違うか」と言われて孤立して一層苦しむことになることが多いそうですが、そうはならなかったことがせめてもの救いでございます。
 地域の皆さんは風車建設に当たって、風車がつくられている地域に視察に行っています。そこでは低周波公害という話はなかった。風力発電が経済効率を追求すると、風車も大きくなる。小さい風車では問題にならなかった低周波が、大規模化によって問題になったとも考えられます。こうした経過を踏まえて、幾つか質問をします。
 ただ、私も風力発電というものがこんな問題を引き起こすとは思わなかった。行政当局も同じだと思います。新しい問題に直面していることを踏まえて、被害者をどう救済するのか、今後広がるかもしれない被害にどう対処するのかを一緒に考えたいというのが、私の立場でございます。
 第1に、風力発電の状況は県内でどうなっているのでしょうか。今後の建設計画はどうなのかを商工観光労働部長から、第2に、健康被害、騒音被害などの訴えはこれまでになかったのかを環境生活部長にお伺いいたしたいと思います。第3に、こうした新たな健康被害が訴えられたとき、行政がするべきことは、その原因が何かわからなくても、被害を訴えている方のところに飛んでいって状況を正確に把握することでしょう。海南保健所としてどのように状況を把握しておられるのでしょうか。また、海南市と連携して住民の健康調査をしてみてはどうかと思うんですが、いかがでしょうか。福祉保健部長にお伺いいたします。
 第4は、風力発電、風車建設に当たって、環境影響評価の問題です。今回の問題では、風車建設後に低周波の測定が2回行われました。それは、10基の風車が稼働しているとき、停止しているときなどについて測定されています。この測定でも、風車が稼働しているときと停止しているときでは明らかな低周波の差が認められており、風が強いとき、弱いときの差も明らかです。
 しかし、風車は停止しているときでも、風が当たれば風を切るわけです。風車がなかったときと低周波がどう変わったのかを比較することは、今となってはできません。そのことから、風車を建設する前に、その地区の騒音や低周波を測定したデータをとっておくべきだったと思います。また、風力発電の設置やこれに伴う地元の話し合いではこうした点も踏まえて情報を公開していくことが必要だと考えますが、環境影響調査を所管する立場にある環境生活部長はどうお考えでしょうか。
 第5は、これまでの測定と被害の訴えの関係をどう見るかの問題です。これからも測定を続けられると思いますが、現時点でどう考えておられるのか、またどういう測定を進めるのか、環境生活部長からお答えください。
 第6に、問題を全面解決する国の指針やデータが十分でない段階でも、暫定的に被害を訴えている方の救済が必要ではないかという問題です。私は、地元の皆さんや同僚の松阪県議や有田川町の議員さんと一緒に、風車にもっと近い有田川町内の集落も訪問して聞き取りを行いました。その地域では、低周波よりも騒音が問題になっておりました。窓を二重サッシにしたり空調をつけるなど、ユーラスエナジー負担での対応も協議されているというようなお話も聞きました。
 健康被害を訴える方への対応について、すぐに企業に指導、命令できなくても、企業と被害者の間を取り持つべきではないか、企業がどういう対応をしているのか情報をつかんで提供することも必要ではないかと思います。いかがでしょうか。
 以上で、私の第1回目の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
○議長(谷 洋一君) ただいまの雑賀光夫君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、教育や福祉を大事にする県政のうちの、子供の医療費無料化年齢引き上げへの県の補助ということについてお答えいたしたいと思います。
 県が実施している乳幼児医療費助成制度では、就学前までの児童を対象に、市町村とともに医療費の自己負担分を助成しておりますけれども、この制度に独自に上乗せをすることによりまして対象年齢等を拡充する自治体もふえていることは認識しております。
 県としても、子育て支援も含め福祉の充実につながる政策は手厚くしていきたいというふうに、そういう思いは強く持っておりますけれども、財政再建の議論の中では、特にこれは和歌山県における事業仕分けと言ってもいいかとも思いますが、整理という案が出て、これを何とか整理しないで済まないかという思いで一生懸命頑張ってやってまいりました。そういう意味では、財政状況を考慮いたしますと、今は制度を維持することが精いっぱいであり、拡充はなかなか難しいというふうに思います。
 なお、国の政策に関しましては、子供が大事だという点については、そういう考え方が前面に出てきております。ただ、子ども手当には大変熱心でありますけれども、そこには大きな財源をたくさん回しておりますけれども、御指摘のようなそういう直接の給付金、そういうものについては少し冷たいという感じがいたします。
 これまでも、全国知事会等の場を通じ、子供の医療費負担の軽減について要望しておりますが、今後も引き続き国に働きかけるとともに、国の動きを十分注意してまいりたいと考えております。
 失礼しました。順番が逆になりましたが、引き続きまして、少人数学級のための県単独負担教員を確保しないかという問題についてお答えしたいと思います。
 正規教員につきましては、できるだけ多くするように毎年努めているところであります。
 次に、少人数学級編制のための県単独負担教員の配置についてでございますけれども、学校教育においては、子供たち1人1人に対するきめ細かな指導が必要だと考えております。そのための手法の1つとして少人数学級編制の推進が国において議論されているところですが、その一方で、多人数の集団の中で子供たちの社会性を育てていくことも大切であると考えております。
 現在、学校教育においては、児童生徒の実態に応じ、きめ細かい指導をするということが大事でありますので、そのために特にそれぞれの子供たちの状況に応じて補習学習等による学力向上対策を行うなど、効果的なきめ細かな対策を実践しているところであります。和歌山の子供たちに真に生きる力をはぐくむためには、教員増による少人数学級編制だけではすべての問題が解決するわけではありませんので、さまざまな方法を効果的に実施することによってきめ細かな指導を実現することが重要であると私は考えております。
 次に、学校の暑さ対策であります。
 子供を暑さから守る施策の1つとして、雑賀議員御指摘の空調設備等を設置し、小中学校の教育環境を充実させることは、市町村の取り組みとして検討していただく課題だと考えております。
 現在、小中学校における空調の設備の設置につきましては国の補助制度がありますので、県の補助制度の創設については、財政状況から考えて大変難しい状況であると考えております。ただ、そうはいっても県といたしましては、こういう国の補助制度などを活用して負担軽減をうまく図れるように、側面から市町村を応援してまいりたいと考えております。
 それから、子供の医療費無料化年齢の引き上げにつきましては、先ほど御説明申し上げました。
 次に、ゼネコン優先の乱開発行政という点で、幾つかの御質問がありました。
 まず、私の県政におきまして、ゼネコン優先の乱開発行政などというものはございません。建設業界を敵視するような、そういう気持ちは全く持っておりませんが、同時に開発とかプロジェクトとか建設工事は、すべてその必要性からでないといけないということは当たり前の話でありまして、そのようにいつも心がけております。
 大滝ダム追加予算の負担については、平成19年6月の議会では、県の財政を考えると支払いたくないけれども、現行の負担制度で本県が追加負担に同意しないと、大滝ダム事業が中断または中止になって洪水に対する流域住民の安全が確保できなくなる、そういう治水の観点から同意せざるを得ないと議会にお諮り申し上げました。
 また、国から2カ所の地すべり対策の追加が必要との説明を受け、県のほうでもその技術的な検証を納得できるまで行ったところであるということも御説明いたしました。その後、国に対しては、何度となくこれ以上事業費の増額がないように、ダムの早期完成とあらゆる段階におけるコスト縮減等を強く働きかけ続けております。
 その結果、本事業は平成24年度の完成に向けて、ただいま順調に進捗してきていると理解しております。平成19年6月議会にお諮りした当時の考えを改めるような情勢の変化は、その後生じておりませんで、流域住民の安全確保のために追加負担に同意せざるを得なかったと御説明した考えは、今でも変わりがありません。
 次に、南防波堤建設の話であります。この防波堤は、関西電力和歌山火力発電所計画における3カ所の係留施設及び現在供用中の水深10メートルの公共岸壁の港内静穏度を確保するためのものでございます。
 現在、実施中の国直轄事業につきましては、関西電力株式会社からの要請を受けて、同社の2分の1の負担のもとに整備が進められております。公共岸壁につきましては、砂利あるいは砂の輸入及び鉄鋼スラグの輸出など、岸壁背後の港湾施設用地とともに有効に利用されております。今後とも、公共岸壁の利用を確実にしていくためにも、南防波堤の整備により静穏度の向上を図ってまいりたいと考えております。
 次に、中小企業憲章の閣議決定の評価と中小企業振興条例でございます。
 中小企業憲章の内容につきましては、経営革新などの新たな事業に取り組む事業者への支援とともに、セーフティーネットを整備し、中小企業の安心を確保するということは基本原則に掲げられております。
 しかしながら、よく考えてみますと中小企業憲章に書かれていることは、すべて中小企業基本法、それから数多くの中小企業振興の実施法、それから中小企業政策、中小企業庁を初めとするような組織、そして県においても、実は我が県の状況から考えて、すべての産業行政は中小企業に向けられているというふうに思っても差し支えはございません。
 すなわち、経営革新、販路開拓、技術開発、政策金融、経営相談など、具体的な政策を現在の法体系及び我が県における政策体系のもとに、具体的にかつ総合的にどんどんやっておるということではないかと私は思います。現に泣いている中小企業、あるいは泣きそうになっている中小企業、あるいはある政策を期待している中小企業に対しては、実は宣言というようなものの重要性よりも、実のある政策をぜひやってくれというのが強いんではないかと私は思っております。
 実は、憲章が採用される一方で、地域の中小企業に対する技術開発の予算が事業仕分けによって大変な危機に──これは国の予算でございますが──瀕していて、それを県は自身の予算で必死になって埋めておるというような状況もあります。我が県においては、中小企業振興こそ我が県の活力を伸ばすものだ、この考え方のもとに具体的な中小企業振興のために一層の力を入れていきたい、そんなふうに考えております。
 次に、リフォーム助成でございますけれども、現在、住宅関連施策として、耐震改修あるいはバリアフリー改修及び省エネ改修などの目的に応じて、国とか県とか市町村などにおいてさまざまな支援制度がございます。
 県といたしましては、このような支援制度をわかりやすく、できるだけ利用しやすいようにという観点から、いろいろ説明、いろいろな制度を1つに取りまとめた冊子を作成するとともに、総合的な相談窓口を設置しております。
 したがって、これらを御活用いただいて、できるだけ議員御指摘のリフォームなどもいい方向に進むといいというふうに考えております。今後も、各種支援制度の有効な活用を図り、それぞれの施策目的の達成に努めてまいりたいと思います。
 次に、同和行政に関する御質問でございます。
 同和対策事業につきましては、平成13年度にすべての事業の見直しを行い、経過措置を除き、平成14年3月末をもって地域や人を特定した特別対策は終了いたしました。しかしながら、同和問題につきましては、教育や産業、就労等において課題が残されており、またなお、私としても許しがたい差別事件が発生している状況でもあります。
 このことから、県では、和歌山県人権尊重の社会づくり条例及び和歌山県人権施策基本方針に基づきまして、すべての人の人権が尊重される平和で明るい社会の創造を目指して、関係機関と連携、協働しながら推進してまいりたいと考えております。
 次に、平和行政の取り組みであります。
 恒久平和は国民の願いであるとともに、人類全体の願いでもあります。本県では、昭和34年9月議会において平和宣言がなされておりまして、その精神に基づいてこれまで県行政を進めてきたところであります。私といたしましても、日ごろの県政を進める上で、絶えず平和で安全な暮らしができることを念頭に置いて取り組んでいるところであります。
 平和ということに関しましては、さまざまな施策や組織に関連するものがあります。県行政全体として、それぞれの関係部署が連携して、問題意識を持ちながら取り組んでいくことが重要であると考えております。
○議長(谷 洋一君) 商工観光労働部長岡本賢司君。
  〔岡本賢司君、登壇〕
○商工観光労働部長(岡本賢司君) 県内での風力発電の現状と今後の計画についてお答えいたします。
 県内における風力発電施設の設置基数は、平成21年度末時点で総数53基、設備容量は6万3350キロワットです。また、県で把握しております事業者が計画を公表している風力発電施設の設置基数は総数100基、設備容量は21万2490キロワットです。
 次に、体調不良を訴えられている方々と企業との間を取り持つということにつきましては、既に関係部局で低周波音測定などを行っているところであり、今後も連携を密にした対応を続けてまいります。
 なお、企業が地域住民との信頼関係を損なわない形で事業を円滑に進められるよう、また地域住民の方々も安心した生活を迎えられるように、県としても新エネルギー促進策を今後とも検討してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(谷 洋一君) 環境生活部長保田栄一君。
  〔保田栄一君、登壇〕
○環境生活部長(保田栄一君) 風力発電に関する御質問のうち、3点についてお答えを申し上げます。
 まず、県内での風力発電によるこれまでの被害の訴えについてでございますが、今回の下津町大窪地区が初めての事例です。
 なお、有田川町において、風力発電に関する騒音の苦情があると町のほうから聞いております。
 次に、風力発電建設に伴うアセスメントに関する質問ですが、現在、NEDOの補助金を利用する一定規模以上の風力発電施設の設置に当たっては、工事着手の前にNEDOのマニュアルによる自主的な環境影響評価を行う必要があります。
 御質問の風力発電施設についても、事業者によりこの環境影響評価が実施されているところですが、低周波音に関しては客観的な指標が存在しておらず、またその影響範囲等についても明確でないのが実情です。
 このため、国におきましては、風力発電施設を環境影響評価法の対象とする方向で法令改正の準備を進めるとともに、今年度から平成25年度にかけて、風力発電施設から発生する低周波音の実態把握及び基準を定めるための調査を実施することになりました。
 県といたしましても、風力発電施設の設置に係る事前調査の実施区域及び地点の選定には十分な検討が必要であると考えており、地域の住民の皆様方に対して、できるだけの情報提供に努める一方、国による実態調査や法改正の状況を注視しながら、風力発電施設事業者に対し必要な助言・指導を行ってまいります。
 次に、健康被害と測定結果の関係をどう見るかについてですが、これまで地元選出の議員の方からの要請もございまして、既に気象条件の異なる4月23日及び7月8日の計2回、低周波音の測定を実施し、海南市とともに住民の方々に対し説明を行ってきたところです。
 低周波音と健康被害との因果関係については、いまだ一般的な基準がなく、国において苦情が発生しやすいとされる参照値が示されているところです。今回の測定結果につきましてはこれを下回っていることから、今回の健康被害は低周波音によるものとは現時点では断定できないものと考えております。
 今後の測定については、風車の近傍と苦情を訴えておられるお宅の屋内と屋外の計3カ所で、風の強い11月以降に第3回目の測定を行うこととしております。
 なお、低周波音による被害には個人差もあり、国に対してできるだけ早期に低周波音の基準値を設定するよう要望しているところであります。
 以上でございます。
○議長(谷 洋一君) 福祉保健部長西上邦雄君。
  〔西上邦雄君、登壇〕
○福祉保健部長(西上邦雄君) 風力発電に伴う下津での健康被害の訴えをどう把握しているかについてでございますが、海南保健所では地元の大窪地区をお訪ねをいたしまして、区長さんからは全体の状況を、また訴えておられます御本人からは病院を受診しておられることや、睡眠は6時間程度とれていることなどの状況をお聞きしております。
 今後とも、引き続き海南市や地元の区長さん等と連携をしながら状況把握を行い、健康不安のある方については保健所が実施いたしますクリニックや健康相談等で対応してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(谷 洋一君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 学校の暑さ対策、特に生命にかかわる熱中症対策につきましては、適切に対応するよう指導しているところでございます。
 とりわけ、ことしの夏につきましては、気温35度を超える猛暑日が続きましたので、学校の管理下における熱中症事故は、ほとんどが体育、スポーツ活動によるものであることから、体育祭、運動会等の学校体育行事や部活動を中心に、状況を見て計画の弾力的な変更等も含め、熱中症対策に万全を期するよう指導しているところでございます。
○議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 再質問を許します。
 44番雑賀光夫君。
○雑賀光夫君 御答弁ありがとうございました。要望などを中心にして申し上げたいと思います。
 1番から4番の問題については、来る知事選挙の中でも大いに議論していきたいと思っているんですが、ただ少し感想的に申し上げておきましたら、大滝ダムのような国の大変ずさんな当初の計画、5回も変更になった。
 最初は県の負担は25億円でいいと言われていたんです。それが5回の変更で437億円にふえたわけです。さらに追加負担せよと言われたとき、「これは国の責任じゃないか」となぜ言えなかったんだろうか。これからもそうなのか。
 追加負担は、ことしもお聞きしましたら4億円ということでございます。これだけあれば、子供の医療費の補助金を引き上げること、教員の数をふやすこと、30人学級に近づける、暑さ対策もできるんやと思うわけでございます。
 暑さ対策については、国に対してもしっかりと声を上げていってもらいたいと思います。新たな景気対策もあるかもしれない。その中で電子黒板や大型テレビがあそこに入ってびっくりしたんですけれども、それ以上にクーラーを入れれば、これは町の電気屋さんも大変助かります。ぜひとも、いろんな形で実現をしていきたいと思います。暑さを忘れない間にしっかりと言うていくことが大事だと思います。
 それから中小企業憲章については、国の言い出したことぐらいだったら和歌山でも前からやっているよという自信をお持ちのように伺いました。しかし、町に行ってみると、どこでも仕事がない、何とかならんのかというお話であります。こう嘆いている業者の皆さんがこんな答弁を聞いたら、何と思うだろうか。
 県が考えている中小企業支援の中心は、新たな商品の開発や積極的な海外への販路開拓など進めているやる気のある中小企業支援というのがやはり前に押し出されている。今回の議会で出された知事の説明要旨を見ましても、やはりそのことが中心になって書かれています。
 ところが、中小企業憲章はその基本理念の中で、中小企業の多くは資金や人材などの制約があるために外からの変化に弱く不公平な取引を強いられるなど、数多くの困難にさらされていると書いている。ですから、「経済活力の源泉である中小企業が」云々とあるんですけども、活力のある中小企業を支援するという言い方じゃないわけですね。その点でちょっと県の施策と中小企業憲章にはずれがある、その点を再質問しようと思ったんですが、今の知事の答弁の中で──お答えいただけますか。私は「泣いている中小企業への支援も」というふうな言葉もあったのでいいかなと思うんですが、知事がまだ御説明いただきたいようなんで、では再質問いたしましょうか。
 次に、リフォーム助成の問題です。多くの地域で大きな成果が上がっていると報告されている。今、知事の言い方で「いい方向で取り組みたい」という、何か検討もされるのかと思うんですが、参考に申し上げておきましたら、和歌山県で耐震補強するのに、去年1年間で何件あったんですか、幾らかけたんですかと聞きました。そうすると、61件で5000万円だそうです。それで耐震改修の経済効果というんですか、1億3500万円上がっています。
 私、きのうもらってそれで調べたんですが、岩手県に宮古市という町がある。1件10万円の補助をしている。1795件の申請があった。それで8億3000万円の事業をやられた。和歌山県と比べますと、補助金に対して和歌山県は2.7倍なんです。ところが、岩手の宮古の場合は、補助金に対して4.6倍の効果が上がっている。しかも、それが20万、30万、小さい工事が多いために、町の大工さんや左官屋さんなどが大変助かって、リフォームがブームになっている。こういう計算、私きのうの晩にその計算をして、自分でもびっくりいたしました。こうなると、知事選の論戦でやっつけてやろうというけちな話じゃなくて、知事もいい方向へ取り組みたいとも言われましたんで、一度本気で検討されて、ぜひとも、だれが知事になろうとも実現するようになったらいいなと思っています。
 そこで、風力発電の問題であります。国の基準がはっきりしないので風力発電とは断定できないという言い方がありましたが、確かに断定できないんですが、しかし関係ないとも断定できないわけでして、むしろ基準がはっきりしないことに今大きな問題があります。
 そして問題は、やっぱり健康被害を訴えておられる方がおられるという、このことがすべての出発点です。睡眠は6時間というお話があったんですが、これは恐らく最近の話なんじゃないかと思います。本当に現地で苦しんでるときは、とてもそんな話じゃなかった。現地を離れたら当然、睡眠時間は6時間ありますね。少しこの健康被害のつかみ方も甘いんではないかという感想を私は持ちました。
 そして、この風車の問題では、紀南のほうで、中紀のほうでも、日本野鳥の会の方とも連絡を最近とりました。野鳥の会では、特にタカが、クマタカ──希少種だそうですね──が繁殖している地域で、大変心配だということで県に対しても要望書を出されているそうです。
 人間に対する被害では今度のケースが県に上がってきた初めてだそうですけれども、私がさっき申し上げましたように、有田川町にもある。さらに風車により近い。大賀畑という地域で騒音被害をお聞きしました。二重サッシなどの対策をしていたんですが、このたびは有田川町が聞き取り調査をしてくれたそうです。そうすると「騒音によりテレビやラジオの音を大きくしたことがある」75%、「就寝中に風車騒音で目が覚めたことがある」88%、これは耳に聞こえる騒音です。それとともに「窓ガラスがガタガタ震動したことがある」、「建具やふすまなどカタカタ震動したことがある」、「そのとき圧迫感、震動感、違和感など不快感がある」、これらの質問に対しては88%の方が「ある」とお答えになっています。これは明らかに低周波にかかわる問題やと思います。同じ質問で、田角という地区でもアンケートをとっておられます。
 私は、この有田川町の取り組みは大変大事だと思います。住民がおかしいと言ったら、因果関係がどうだからという理屈より前に、「何がおかしいんですか」と言って飛んでいって、聞いてアンケートとって、この点が大変大事だというふうに思うわけでございます。
 また、県のこの担当のほうに聞いたら、こういう取り組みやってることはよく知らなかったというお話で、実はこの低周波の問題は、きょうは議会の場で初めて問題提起させていただいたんですが、県としてもこれから取り組む問題やと思います。
 ですから、今までの問題でどれが不十分だったとかいうようなことは余り申し上げてはおりません。とにかく、現に苦しんでいる方、県民の方がいらっしゃるのが出発点で、そして、この低周波測定装置なんかも、まだ県では自動測定記録の装置はないわけですね。こういうものも買っていただきたいと思いますし、やはり新しい問題が出てきているわけで、それなりの構えをして、私どももこれから取り組んでいくきょうは第一歩ですので、こういうことで要望しておきたいと思います。
 以上でございます。
 そうしたら、知事のほうから答弁をお願いいたします。
○議長(谷 洋一君) 再質問に対する答弁を求めますが、所定の時間が近づいておりますので、簡潔にお願いいたします。
 知事仁坂吉伸君。
○知事(仁坂吉伸君) 再質問にお答えしたいと思います。
 まず第1番目に、中小企業憲章が国で、地方、和歌山県だけは独自のことをやっている、そういうことを申し上げたわけじゃなくて、国も和歌山県も中小企業対策はきちんとやっておるということでしたねということを申し上げました。
 次に、新たな事業をやる中小企業に対する助成だけじゃなくて、困っている中小企業といいますか、弱い立場にある中小企業に対する対策がないではないかということは全く間違いでありまして、実は、新しい発展を助成していくんだ、それが元気のもとだというのは22年度の新政策で、今までなかったものを追加したということでアピールさせていただいたわけです。セーフティーネットでどれだけ多くの中小企業の方をあの大不況からお救いできたかというようなこととか、あるいは下請中小企業に対する配慮とか、そういう弱い人たちを助ける中小企業政策、いささかたりとも縮小したり、そういうことはしておりませんので、御理解いただきたいと思います。
○議長(谷 洋一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(谷 洋一君) 所定の時間がまいりましたので、以上で雑賀光夫君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時43分休憩
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