平成22年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(山下大輔議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 41番山下大輔君。
  〔山下大輔君、登壇〕(拍手)
○山下大輔君 おはようございます。今議会も張り切って質問さしていただきたいと思います。
 県議会に送っていただいてから、私自身の思いはただ1つ、この県議会では内向きな議論に終始することなく、この元気のなくなってきた和歌山を何としても立て直したい、そういう思いでやってまいりました。今議会でも、その思い、ただ1点持って一生懸命質問、提言さしていただきますので、当局には誠意ある御答弁をよろしくお願いいたします。
 本日、一般質問最終日ということで、ここまで先輩・同僚議員からさまざまな視点で貴重な議論が行われてきました。私の質問とかぶる内容が一部ございましたが、重複した部分はできるだけ削りつつ、かつ、私なりの視点で質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議長の許可を得ましたので、通告に従い、順次質問させていただきます。
 今回は当初議会でありますので、希望の持てる質問、提言としたいと考えていますが、しかし、実際には現在の和歌山県を取り巻く環境は非常に厳しいものとなっています。そこでは、単なる楽観主義ではいけないのであって、厳しい現実をしっかりと見詰め、そこから未来を見通す力が必要とされるのだと思います。真摯な姿勢で現実をしっかりと見詰めて、かつ、健全な危機感を持ってこそ、その打開策も見つかるのだと思います。
 そこで、まず新年度予算案について質問させていただきます。
 提出された新年度の当初予算案を見ると、何とか昨年並みの予算が組め、一安心といったところだと思います。しかし、その中身を改めて確認してみると、自治とは名ばかりの大変厳しい状況にあります。新年度の予算組みで特徴的なのは、全体の予算フレームとして、平成21年度の当初予算からは予算規模自体は拡大しています。しかし、その主な要因を見てみると、歳入部分で自主財源となる地方法人特別譲与税を含む県税収入は、平成21年度では976億だったものが、新年度では851億と大きく毀損しており、125億円のマイナスとなっています。そのマイナス分を、地方交付税、臨財債で159億増加したことで、何とか補える状況となり、昨年度を上回る予算組みが可能となっています。
 しかし、これは地域の自立といった観点から見ると、残念ながら和歌山の場合、政府依存がこれまで以上に高まる結果となり、交付税頼みの体質にさらに拍車のかかる構造が浮き彫りとなっています。特に自主財源で、地域の活力のバロメーターとなる法人2税の過去からの推移と、この新年度の状況を改めて確認してみると、本当に危機的な状況が見てとれます。
 このグラフ(資料を示す)、これは、自主財源、県税収入のうちでも特に重要となる法人事業税と法人住民税の法人2税について、平成元年から今までの推移を見ているものです。ピーク時には428億だったものが、ついにこの新年度では115億の水準まで落ち込む状況となっています。地域活力を図る法人2税、そこには全く稼げなくなっている地域の実情が明らかとなっていて、その規模からも法人2税が100億の水準にまで落ち込んでいることは、未来を見通す上でも相当真剣な危機感を持たなければならない状況にあるのだと思います。
 こういった厳しい現実を直視する中では、過去を懐かしみ、縮小均衡の状況にしがみついているのではなく、今こそ未来に向かって和歌山という地域がどう生き残っていけるのかといったことを真剣に議論し、これまでの常識にとらわれず、思い切った手だてを講じることが必要とされているのだと思います。
 そこで、まず知事に、新年度予算を策定するに当たって、特に厳しい状況となっている自主財源の部分に目を向けて、現状の認識をお伺いしたいと思います。
 あわせて、この状況を打開するには何が必要と考えるか、今後の取り組みについて御所見を賜りたいと思います。
 さて、こういった厳しい状況の中、和歌山の未来に責任を負う私ども県議会としても、外部の環境変化に目をそむけることなく、内向きな議論に終始するのはやめ、過去のしがらみから決別し、これまでの行政運営、その常識から少し外れるようなものであっても思い切って発想の転換を図り、チャレンジをしていくことが求められているのだと思います。そこでは、地域として国内のみならず、世界、特にアジアに目を向けた新たな施策の展開に知恵を絞ることが必要となります。
 そこで、私の今回の質問、提言としては、和歌山の再生を願って、まずは地域再生への具体的な取り組みの1つとして、新たな農畜産業を初めとする第1次産業への取り組みについて、質問並びに提案をさせていただきます。そしてもう1つは、即効性は低いですが、地域再生には欠かせない大きな課題となる人づくり、教育の問題について質問をさせていただきたいと思っています。
 言うまでもなく、資源の乏しい我が国では、人材が最高の資産であり、どうやって人を残すのかといったことは、時間のかかるものではありますが、地域再生を考える上でも何にも増して重要なものと考えています。経営においても至言と言われる「人を残す」。医師であり官僚であり政治家でもあった明治の巨星、後藤新平、その構想する計画の大きさは常人にははかりがたく、比類なきもので、満鉄総裁を歴任し、鉄道院総裁として国内の鉄道整備を一手に引き受けた有能な都市計画家であり、関東大震災後には内務大臣兼帝都復興院総裁として東京復興をなし遂げた地域再生のパイオニアです。
 その後藤は、死の床につく前に、よく次のようなことを人に伝えていたといいます。「財をなすは下。されど財なくば事業保ちがたく。事業を残すは中。事業なくば人育ちがたし。人を残すは上なり」──人を残してこそ地域も変わり、国も変わり、歴史も変わる。和歌山県として、今こそどういう人材を育て、地域にどういう人材を残すのか、そのための教育の仕組みについて改めて問いたいと思います。
 今回は、特に中高一貫校として開校した県立向陽中学の第1期生が高校を卒業するに当たり、よい機会となりますので、幾つかの視点で、和歌山県の教育理念、その姿勢といったことを含め、お尋ねいたします。
 それではまず、和歌山の再生を願って、地方再生の1つの柱として取り上げられる1次産業、中でも特に農畜産業に係る新たな潮流と和歌山県における取り組みについて、質問並びに提案をさせていただきます。
 今、さまざまな形での新しい農畜産業経営が全国で模索されていますが、その中でも特に注目される農畜産業経営に係る金融環境面での再整備について。
 今、農畜産業から生まれる資金需要に対して、その貸し手の主体も多様化する状況にあります。これまでは、農家にとって農林公庫もしくは農協金融が主体となっていましたが、しかし、それでは農協を経由する出荷や資材調達など、実質的には大きな制約を受けることとなり、なかなか既存の経営形態から脱することができません。新たな境地を切り開くためには、地銀を初め一般金融の新たな貸し手の登場が不可欠であり、今、農畜産業経営においては金融環境面の再整備による経営の自由度を高めることが望まれています。
 そういった中で、今、地銀、第2地銀、また一部のメガバンク等でも政策金融改革の流れと、あわせて農業自体を取り巻く環境変化によって農業分野への取り組みが強化されようとしています。そういった中で、今、地銀、第2地銀、また一部のメガバンク等でも、実際にはしっかりと取り組もうとしている。ただ、全国全体の取り組みの流れを見ると、その取り組み姿勢は地域によって非常に大きな差のあるものとなっています。ここ数年を見て、地銀、第2地銀で農業融資を積極的に取り扱い、また、その残高を増加させているのは、北海道、東北、中部、関東、そして九州といった農業生産が盛んな地域が中心です。今後、1次産業の進展には金融環境面の再整備は欠かせない視点となり、新たな金融環境が整わない地域はますます取り残される状況となり、地域間の格差もさらに大きなものとなることが心配されます。
 そんな中、私たちの和歌山県では、これまでどおり公庫や農協金融に頼る傾向が顕著で、そのことによって結果的にはなかなか新たな農業法人も生まれず、新規参入の促進にもつながらず、大きな障害となっています。
 今回の件で、全国の例を調査してくる中では、地銀などからの融資が実現し、その関係性が深まれば、それは金融環境が整うだけでなく、一般民間企業の経営ノウハウが導入されたり、金融機関を媒体としてシンクタンクの活用や、そこから新たな企業とのコラボレーションによる商品開発などといった新展開も期待されます。農畜産業への融資を積極的に行う銀行では、独自の融資商品の拡充を図り、また農畜産商品への販路拡大を支援しようと銀行自身が持つネットワークを積極的に活用し、バイヤーの紹介や商談会の開催を実施するなど好循環が生まれ、新たな農業経営の道を開く大きな可能性が広がっています。
 そこで、農林水産部長にお尋ねしますが、和歌山県では、これまで重要な産業政策として、工業系、商業系、新規事業者などへのさまざまなファイナンスに係るサービスを充実させてきた実績があり、今後は、地域として大きな期待を寄せる1次産業に対する金融サービスについても同様の積極的な取り組みが期待されますが、県として今後どのように取り組まれていかれようと考えているか。
 また、あわせて、これまでの公庫、農協金融などが中心となっていたものから地銀などによる新たな金融環境が整うことのメリットについてどのように考えておられるのか、あわせて農林水産部長から御答弁をいただきたいと思います。
 次に、シンクタンクの活用から、新たな農畜産業戦略の構築。
 今、1次産業、農畜産業の分野において、さらなる発展が期待される中で、幾つかの有力なシンクタンクからさまざまな実践的提案が行われる状況にあります。農業経営は、一昔前は個人農家でも集落共同体による助け合いの構造も有効に機能し、それぞれの農業経営も何とか維持されてきましたが、今は農家の高齢化も進み、後継者も育たない中では、農業経営を維持するにも限界点に達しつつあります。そんな状況において、今、農業分野を21世紀の成長産業にしていこうとする中で、シンクタンクの役割にも注目が集まっています。
 そもそも日本のシンクタンクへの期待は、これまで裏切られ続けてきた過去があります。しかし今、生半可な調査をし、机上の上でレポートを作成するだけで食べていけるような甘い状況にはない中で、シンクタンクの選別も進む状況にあり、地に足をつけ、シンクタンク本来の情報収集力、分析力、そして具体的な解決策を提示し、それをクライアントとともに一緒に実践し、成果を上げるところが少しずつ出てきています。クライアントとともに汗を流し、事業を成功させ、その利益の一部を受け取る成功報酬制などの仕組みも有効に活用した新たなシンクタンクの姿が散見されます。今、改めてシンクタンクの重要性が再認識されつつあります。
 本来、危機を乗り切るためには専門家の知恵が不可欠であり、欧米、アジアの先進諸国ではシンクタンクをフル活用し、産業の成長に、国家戦略の構築にと貢献している状況がありますが、日本ではその価値を見出し切れず、ある意味では宝の持ち腐れとなっている状況があります。
 しかし、今後は、どの産業においてもグローバル化が進む中で、市場競争は一層厳しさを増すものとなり、それに勝ち抜くためには強力な情報収集力と分析力は欠かせません。日本経済と日本の産業を立て直すために、知恵袋としてのシンクタンクの徹底した活用が今改めて求められています。
 農業を初めとする1次産業を伸ばしていくにも、一般企業と同じくマーケティングや広報戦略、財務面での経営革新に取り組むことが不可欠で、そこでは誠実に対応するシンクタンクの力はフル活用すべきです。実際に、有力なシンクタンクと協業し、幾つもの成功事例が生まれる状況も出てきています。
 先日、NHKの「クローズアップ現代」で、シンクタンクとして具体的な提言をし、農畜産業経営の新たな価値を見出されている事例が放送されていました。そこでは、日本総研の創発戦略センターの執行役員で首席研究員の井熊均さんと、その部下となる創発戦略センター副主任研究員で農業クラスターマネジャーの三輪泰史さんが出演されていました。今、農業を初め1次産業の現状は依然として厳しく簡単に解決することのできない根の深い問題も多いですが、しかし、そういう状況下で、できるところから改善していこうとする日本総研の新たな試みに注目が集まっています。農業再生について井熊氏は、「厳しい今の時代にこそシンクタンクの存在意義がある。農業など、本当の社会問題に対する提言がシンクタンクに求められている」として、農業ミドルマン構想といったものを提唱し、実践されています。
 その番組を見て大変感銘を受け、私自身、井熊氏とお会いしたいと、東京千代田区の日本総研本社をお訪ねし、貴重な時間を割いていただき、お話を伺ってきました。日本総研では、提唱している次世代農業コンソーシアムのコンセプトを実証するために、鹿児島県垂水市、宮崎県日南市、大分県九住町などの市町村と連携し、数々の実績を積み上げています。
 その考え方はシンプルで、従来まで生産者に消費者の声が届くことは余りなく、市場のニーズをとらえることができていなかった。また、生産者も自分たちの農畜産物の価値を理解する消費者をつかみ切れていない。そのような問題点を解決するために、日本総研では、農業ミドルマンと呼ばれる生産者と消費者の仲介者を置くことを提言し、新たな農業経営の開拓を始めています。
 そこでは、農畜産業の商品を開発するだけでなく、これからの農畜産業には出口戦略として販売と流通を強化することが必要だと、流通システムの構築まで手がけ、消費の実態に合った生産、ロスの少ない流通、商圏に対応した販売体制を鎖のようにつなぐ仕組み、新たな仕組みとしてサプライチェーンマネジメントを提唱、構築されています。
 そういった中で、和歌山県でも、小規模経営が多い農畜産業については、時代に置いていかれないように、今こそ攻めの農業が求められています。そもそも農業を初めとする1次産業には、今後、特にアジアが世界の経済センターとなる中で、やり方次第では大きな可能性があり、熱い視線が送られています。
 しかし、そのためには、県としてもそれぞれの農家の自己努力に期待を寄せるだけではなく、積極的に外部からの有力なシンクタンクを呼び込み、和歌山の農畜産業経営者との接点をつくり、新たな農畜産業経営の成功モデル、和歌山モデルを構築することが急務と考えますが、これも農林水産部長から御所見を賜りたいと思います。
 続きまして、農畜産業経営の新たな潮流、中国、アジアにおける取り組みについて。
 この1月29日に行われた鳩山首相の施政方針演説において、今後の成長フロンティアとしてアジアを位置づけ、次のように演説されていました。「今後の世界経済における我が国の活動の場として、さらに切り開いていくべきフロンティアはアジアです。アジア諸国と日本の知識や経験を共有し、ともに成長することを目指します。アジアを単なる製品の輸出先ととらえるのではなく、環境を守り、安全を担保しつつ、高度な技術やサービスをパッケージにした新たなシステムを共有し、地域全体で反映を分かち合います」。これは、まさしく今後の農畜産業経営においても的を射た指摘になっていると思います。
 今、アジア自由貿易圏構想が現実のものとなりつつあります。そのポテンシャルは想像を絶するもので、アジア自由貿易圏構想、ASEANを軸とした16カ国の08年度のGDPは世界の約23%に当たり、人口では32億4000万と世界の約5割、半分にも相当する規模となり、世界で例を見ない壮大な市場が今生まれようとしています。日本も、この巨大な自由貿易圏を目の前にして、新たな戦略づくりが急がれるものとなっています。
 今、自由貿易の大波が日本をのみ込もうとする中で、特に国際化におくれている日本の1次産業についても、国内にだけ目を向け、日本国内の生産拠点に縛られるのではなくて、アジアの市場でどう戦うかを真剣に考えるべきときに来ていて、それは、工業製品と同じく、農畜産業に関しても日本の持っている技術、ノウハウを生かして、海外の生産拠点を確保していくことも1つの重要な選択肢となります。
 これまで、我が国の農畜産業におけるアジアとの関係性としては、それは工業製品と同じく、最初は安い人件費を目当てに生産場所を求めるものでした。中国などを初めとしたアジアの各地で安くつくられた食品を日本に逆輸入する形がとられ、そこでは、冷凍ギョーザ問題など、安全面でさまざまな課題も提起されることとなりました。次の段階には、逆にアジア、中国自体を市場としてとらえ、日本から安全・安心、高品質をうたい文句に販路の拡大を図る取り組みが進められています。ここまでが第2フェーズであり、そこから先の対応が今模索される状況となっています。
 次の第3ステージには、さきに鳩山首相が指摘されているように、日本の生産技術、ノウハウなどを強みとして現地化を進め、アジアに進出、アジア向けの商いを考え、収益を生むシステムを新たに構築することが重要な視点となります。
 今、日本が生み出す生産方式、いわゆる日式、日式管理から生産された商品は、中国でも大変な人気となっています。さきにお話しした日本総研も、日本の野菜農家と協力して、野菜工場を中国に持っていき、拠点を設け、日式ブランドを構築する取り組みを進めています。政府も、昨年末に決めた新成長戦略で、食を戦略的資源として、その生産・販売に対して大きな期待を寄せています。
 しかし、日本の政府にも、また地方自治体にも、本気で農業を育てて世界に羽ばたかせる青写真はいまだ描けていません。そこでは、高級な果物や野菜ばかりを売り物と考える戦略だけでなく、新たな取り組みが望まれています。
 そこで、農林水産部長にお尋ねします。
 和歌山県としても、農畜産業に係る技術、ノウハウ、最先端のシステムを持っています。あくまで和歌山での生産を基本としつつも、アジア各地にも現地法人を置き、生産・販売を拡大させていく戦略は非常に有効なものとなります。和歌山本社、中国支社の農業法人には大きな可能性があり、ぜひ県としてもそういった新たなチャレンジを後押しする取り組みを検討していただきたいと思いますが、農畜産業の中国、アジアへの進出について御所見を賜りたいと思います。
 次に、教育問題として、高校実質無償化への対応と、和歌山教育の特徴とも言える中高一貫校への取り組みについて。
 まず、高校実質無償化、公立高等学校授業料の無償化及び高等学校等就学支援金への対応について。
 高校実質無償化は、ことし4月から実施される予定であり、その実行が目前に迫っています。これは国の政策として実施されるものでありますが、その恩恵は、当然、和歌山県の高校生も享受することとなります。生徒や保護者のことを考えれば、混乱なく一刻も早く実施されることが望まれます。そこでは、和歌山県においても、本年4月からの実施に際して、公立高等学校の授業料を無償化し、また私立の生徒の皆さんに対して就学支援金を支給するに当たって、県としても主体的にその制度の具体化を進める必要がありますが、現状における取り組み状況について教育長並びに総務部長から御答弁を願いたいと思います。
 また、今回の高校実質無償化は、県立高校はもちろんのこと、就学支援金が支給される私立高校の生徒にとっても大きな恩恵を受けるものとなり、対象となる3万人を超える高校生、そしてその保護者にとっても大きな関心事となっています。4月から実施される予定ですが、混乱なくスムーズに実施していくためには、県としても現段階でわかっている制度の概要について、できる限り生徒や保護者に広く周知していく必要があると考えますが、教育長並びに総務部長に現在の周知の状況、今後の取り組みについてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
 また、あわせて私学における就学支援金について、国における制度の導入後は、これまで県として行ってきた授業料減免事業はどのようになるのか、現状における対応の見通しについて、これは総務部長から御答弁を願います。
 続いて、中高一貫への取り組み状況についてお尋ねいたします。
 この3月1日、和歌山市のビッグホエールにて、県立向陽高校の卒業式が行われました。式には、向陽中の1期生74人を含む313人の卒業生と、現役生徒合わせて約1300人が参加したということです。6年前にこの県議会でも多くの議論があった中高一貫教育で初めての卒業生を送り出すこととなったわけですが、このタイミングで改めて和歌山県が行っている中高一貫教育のあり方について考えてみたいと思います。
 中高一貫校の設置に際しては、その建学の理念として、「6年間の継続した学校生活を有効に活用し、生徒1人1人の個性や創造性を最大限に伸ばすことを目指します」とされていましたが、卒業生を送り出すこととなった今、その思いは達成されているでしょうか。
 義務教育を通じて高校を卒業するまでの学校の役割としては、私自身もこの県議会で何度も議論してきたことですが、そこでは、学校だけの理屈ではなく、学校はあくまで社会に出る準備の機関であり、子供たちが将来、社会に出る状況を見通してその手助けを行っていく、厳しくしつけることで社会性を身につけさせることも含めて、厳しい実社会に出たときに生きる力、生き抜く力をしっかりと養うことが最低限の役割であり、最大の眼目ともなります。
 特に、中高一貫といった形態をとり、県の教育委員会として、より直接的にみずから掲げる理想の学校像を具現化し、初めて送り出した中高一貫の卒業生ですから、県教委の思いが結実した立派な卒業生を送り出せたことと思います。しかし、その送り出した卒業生並びに父兄の方からのお話を何人かから直接お聞きしてまいりました。その中では、よい話もたくさん聞けましたが、反面、幾つかの疑問に思えることも出てまいりました。また、現在の中高一貫校を志望して受験した子供、その御父兄からもお話を伺う中で、現在の中高一貫校のあり方について、改めて確認しなければいけない点も何点か出てきました。
 そこで、今回は、中高一貫を進める取り組みについて、そのあり方自体をもう一度問い直し、望むべき姿といったものについて共通の理解をさせていただきたいと思います。
 まず、私の基本的な立場としては、中高一貫の取り組みは大変結構なものであり、今後もさらに充実さしてもらいたいと思っています。そのためにも、いま一度、そのあり方を問い直すことが必要と考えています。
 そこで、まず中高一貫校における受験に関して幾つかの質問をさせていただきます。
 なお、以下に述べる各項目については、それぞれ教育長から御答弁をいただきたいと思います。
 現在行われている中高一貫校の受験は、入学者選抜と言われています。その選抜状況について、父兄などの一部から、透明度が極めて低く、情報の開示が余りにも少な過ぎるといった指摘があります。現在の県立高校入試と比較する中で、求める生徒像も明らかになっておらず、選抜選考基準の中身としても、その割合として、調査書、学力検査、そして面接について、それぞれどういった割合で評価されているのかも明示されていません。通常の県立高校では情報の開示は進んでいますが、そもそも適性検査が何点満点になっているのかさえも非公表となっていて、作文の評価などもよくわからず、受験する父兄の方からも不信感を持たれる状況となっています。
 そこで、それら選考基準の内容とその考え方について具体的にお示しいただきたいと思います。
 また、そもそも中高一貫校として掲げた理念が入試に結びついているのかも疑問に思います。建学の理念から意欲と適性を見るとされていますが、求める適性とはどういったものなのか。これも具体的にお示しいただきたいと思います。
 また、これはそれぞれの県立中高一貫の学校のパンフレットになるんですけれども(資料を示す)、それぞれこの中身を確認してみますと、一貫校のパンフレットに書かれている説明では、「教科テストのような学力検査ではありません」とそれぞれ明確にうたわれていますが、それではそもそも教科テストではない学力検査とは何か、どういった定義を持たれているのか、お示しください。そこには、文部科学省から何らかの指導があるのでしょうか。あわせてお答えいただきたいと思います。
 また、入学選抜のテスト自体も、私自身拝見させてもらいましたが、イラストなどは多用されていますが、実質的には学力検査の問題と変わらないように感じました。あくまで適性検査の域を出ておらず、これは学力検査ではないという何か具体的な説明があればお聞かせ願いたいと思います。
 続けて、今春初めて一貫校の卒業生を送り出す中で、その総括となる幾つかの質問をさせていただきたいと考えております。
 まず1点目として、6年間の一貫教育を行った上での成果といったものについてどのように考えておられるか、お答えください。
 次に、そもそも中高一貫校として子供を預かるに当たっては、建学の理念、目標といったものを掲げられていましたが、その目標達成度はどれぐらいと考えておられるか。
 あわせて、生徒を預かって6年たった今、どういった思いを持たれているか。新入生として迎え入れてからこの6年間を振り返って、難しかった点や非常にうまくいったと思われることなど、率直にその思いをお聞かせ願いたいと思います。
 また、中高一貫教育を評価する場合に、県の教育委員会としてどういった視点、基準で評価しようとされているのか。例えば、進学の状況、生徒からのヒアリング、自己実現ができているのか、個性が伸ばせているのかなど、評価の基準をどこに置こうとされているのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
 また、高校進学段階での状況について、向陽中学校の入学に際しては、理系の環境科学科ということですが、高校への進級段階で他学科への変更、他高校への進学など、どういった状況となっているのか、具体的にお示しください。
 あわせて、ここまでお聞きした内容を含めて、県立中高一貫教育の今後の課題といったことについてどのようにとらえられているのか、お聞かせ願いたいと思います。
 私は、これまでこの中高一貫の取り組みを議論してくる中で、公教育の多様性を確保し、子供の個性を伸ばすものであれば、もっとさまざまな特色を出した一貫教育を検討することが必要で、そこでは工業系、商業系、またスポーツ専攻といったものについても中高一貫を検討すべきと何度か提言させていただいてきています。
 現在ある高等学校の特色を生かして、例えば、和歌山工業を物づくりマイスターの養成校とする中高一貫の実現、また県和商などでは、起業家、アントレプレナーの養成校、また和歌山北高校などはスポーツ強化校となっていますので、その特徴を生かした中高一貫による環境整備など、それぞれに明確な特色を持たせて子供に選択肢を与えていく、そういったことが実現すると、そこでは決して勉強といった一元化された価値基準ではない学校選択が行われ、その中で胸を張り、自信を持ってそれぞれの学校に入学していくことが期待されます。
 公教育による工業、物づくりの専門の中高一貫などは全国にも例のないもので、もし実現すれば和歌山県が新たな中高一貫のあり方を示し、他の先駆けとなって新しい公教育の扉を開くことが期待されます。ぜひ御検討願いたいと思いますが、改めて教育長の御所見をお伺いしたいと思います。
 あくまで、県民の皆様からかけられる県立中高一貫教育への期待は非常に大きいものがあります。そこでは、入学に際しても、私学の単なる受験システムではなく、理想とする人材を育成するための和歌山教育にふさわしい選抜方法でないといけないのだと思います。どういう人材をこの和歌山に残していきたいのか、そういうことを和歌山教育がしっかりと理念として提示し、その中で選抜方法自体も考えていく。
 現在の中高一貫校で預かる子供さんは毎年400名程度ですが、受験するのはその3倍から4倍で、今年度は和歌山県下で1400名もの受験生が挑戦されています。それらが単なる学力選抜の受験競争をしてしまうと受験の低年齢化につながり、その規模も1400名ともなると子供たちの育つ環境にも大きな影響を与え、小学校教育そのものをゆがめてしまう心配があります。そこでは、単なる受験競争に走らせない、子供がどうあるべきかといった県教委の理念に沿った透明性のある、よりよい選抜のあり方も考えていかなくてはなりません。
 そういったことも踏まえて、今後、和歌山教育の1つのシンボルともなる中高一貫への取り組みで、これをさらによりよいものとするために、これまでの6年間の検証、分析、そして改善といったことを進めていかなくてはならないと思いますが、そういった作業をどのように進めようと考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
 また、具体的に、検討委員会のようなものをつくるとすれば、どういったメンバーで、その人選はどのように行おうと考えているのか、あわせてお聞かせください。
 以上で、私の1問目の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(坂本 登君) ただいまの山下大輔君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 議員の数多い質問の中で、私に答弁せよという通告を受けてるものに関しまして御答弁申し上げます。
 新年度予算における自主財源に対する現状認識と、現状を踏まえた今後の取り組みでございます。
 議員御指摘のとおり、平成22年度当初予算では、一昨年来の景気低迷によりまして自主財源の根幹をなす法人関係税を中心とした県税収入が大幅に減少する見込みであります。このような厳しい社会経済情勢だからこそ、県民の皆様の幸せ、地域や経済の活性化といった本県の発展を常に追い求め、次の時代のための希望の種をまく、積極的な政策を展開することが必要と考えております。
 このため、平成22年度においても、先駆的技術開発や販売促進を切り口とした産業の活性化、本県の恵まれた資源をフル活用いたしました観光振興、あるいは農業振興、成長を支える道路ネットワークの整備などの施策をさらに進め、これまで進めてきた企業誘致やわがまち元気プロジェクト、新農林水産業戦略プロジェクトなどの取り組みとあわせて、県経済の活性化につながる施策を全庁挙げて推進することとしております。
 私は、これらの政策が苦しい中にあっても芽を出し、花を咲かせるようになれば、企業や地域が活性化し、それが県民所得の向上にもつながり、ひいては県財政にも還元されるのではないかというふうに考えて、こういう政策について全力を挙げて取り組むものと考えている次第でございます。
○副議長(坂本 登君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 農畜産業の新たな潮流と和歌山県の取り組みについての4点についてお答えをいたします。
 まず、農業を取り巻く金融環境についてでございますが、本県での農業関係への融資につきましては、運転資金や設備投資などで一部銀行等の利用がございますが、大部分は、お話ございましたように農業協同組合が担っているのが現状でございます。
 しかしながら、近年、牛や豚などを担保といたしました融資が可能な動産譲渡登記制度が始まったことや、農商工連携の取り組みが進みつつあることから、銀行等が農業を有望なビジネスとしてとらえ、全国的に融資が拡大してございます。また、県内におきましても農業分野への融資に関心が高まっているというふうに聞いてございます。
 こうしたことから、国におきましては、来年度から銀行等が農業融資を行う場合には、独立行政法人でございます農林漁業信用基金の保険が適用されるように制度改正が予定をされてございまして、十分な担保を準備できない農家でございましても借り入れが容易となるということでございます。このことは、資金調達方法の多様化に加えまして、銀行等が持ってございます経営ノウハウを活用する機会がふえますし、6次産業化や法人化を考えている農家にとりましても有意義であるというふうに考えてございます。
 県といたしましても、新しい保険制度の周知を図るとともに、農家が銀行等を活用できる環境を積極的に整えてまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、シンクタンクの力を動員した新たな農畜産業経営の和歌山モデル構築についてでございますけれども、本県農業は、御承知のように、担い手の高齢化、耕作放棄地の増加に加えまして、農産物の価格低迷などによりまして大変厳しい状況に置かれてございます。このため、本県といたしましては、地域農業の担い手を育成するために法人化を推進し、企業的経営を行う農家を育成するとともに、広く農業外部にも目を向けまして、農業に関心のある企業の参入も視野に入れて取り組んでございます。
 一方、消費の低迷が続く中ではございますが、県産品の販売促進を全面的に押し出した販売促進戦略アクションプログラムを策定するとともに、本年度から新たに生産、加工、流通、販売に総合的に取り組む生産者を支援する新農林水産業戦略プロジェクトを実施するなど、新たなアグリビジネスの積極的展開に努めてございます。
 議員御提案のように、新たな農業ビジネスを展開するためには、シンクタンクの持つマーケティングなどの専門知識を農業に活用することも大切でございますので、今後、そうしたノウハウをフルに活用しながら、異業種との交流などにもこれまで以上に取り組み、地域農業の活性化につなげていきたいと考えてございます。
 4点目の中国、アジアへの進出についてでございますが、農業分野におきましても、アジア全体を1つの経済圏としてとらえまして、日本の商社や企業が資本や技術力を駆使して海外で農産物を生産から販売まで手がけるなど、農業のグローバル化の動きがあることも承知をしてございます。また、発展途上国における目覚ましい経済発展、あるいは人口増加によりまして、今後、世界的な食料不足ということも懸念されるといった問題もございます。
 こうした中で、国におきましては、国民食料の安定供給という観点から自給率の向上に努めているところでございまして、県といたしましては、食料生産の一翼を担う中で、地域農業、地域特性を生かした本県農業を推し進めていくことも重要であると考えてございます。
 議員お話しのように、グローバル化が進む中で中国やアジアへの進出も選択肢の1つであると考えてございまして、今後、アンテナを高くし、海外情報などの収集に努めながら、県内におきまして新しくチャレンジに意欲を燃やす農業者や法人の方等がございましたら、必要な情報の提供、また関係機関とのコーディネーター役を果たすなど、できる限りの支援を行ってまいりたいというふうに考えてございます。
○副議長(坂本 登君) 総務部長宮地俊明君。
  〔宮地俊明君、登壇〕
○総務部長(宮地俊明君) 私立高校生に対する高等学校等就学支援金制度の県としての取り組み状況につきまして、一括してお答えいたします。
 この就学支援金制度につきましては、生徒が在学する学校を通じまして、県に受給資格認定を申請し、県は資格認定した者に対し、当該学校設置者が代理受給する方法で支援金を支給することとなっております。これら制度内容は、現在国会で審議されております法案及び政令等で定められることとなっております。
 県といたしましては、平成22年4月から制度が円滑に実施できるよう国から情報を収集するとともに、各学校設置者に対しましては、2月下旬に説明会を開催し、現時点での制度概要について周知し、学校における事務体制の準備をお願いしたところでございます。
 今後、詳細が決定次第、学校及び生徒、保護者へ周知を行うなど、制度が円滑に実施できるよう努めてまいります。
 次に、私学に対する県としての授業料減免の取り組みについてお答えいたします。
 私立学校につきましては、就学支援金制度導入後におきましても、なお授業料負担が残ります。県といたしましては、家計急変等により授業料負担が困難となり生徒が修学を断念せざるを得ない事態にならないよう、国の就学支援金に加え、授業料減免補助を実施することといたしております。
 以上でございます。
○副議長(坂本 登君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 教育関係、まず県立高等学校授業料の無償化に関する取り組み状況についてお答えいたします。
 現在、国会で公立高等学校授業料の無償化等に係る法案が審議されているところでございますが、当該法案の成立後、制度の対象外である専攻科を除いて卒業を目的として学ぶすべての生徒について県立高等学校授業料の無償化を円滑に実施できますよう、関係条例の改正案と授業料無償化を織り込んだ当初予算案を今議会に提出させていただいてございます。
 また、授業料を無償化するに当たり、授業料と合わせて納付をいただいておりますPTA会費等の口座振替に係る収納方法などにも影響がございますので、各学校においてPTAと相談しながら対応を進めるなど、4月から混乱を来すことのないよう、各学校と連携をとりながら事務を進めているところでございます。
 また、制度の周知に関しましては、県立高等学校の在校生と保護者へは各学校を通じて行い、また進路選択にもかかわることでございますので、各市町村教育委員会に対しまして情報提供を行うなど、4月からの授業料の無償化実施について万全を期すよう準備を着々と進めているところでございます。
 次に、中高一貫校の取り組みについて、まず県立中学校入学者選考についてお答えいたします。
 県立中学校の入学者選考につきましては、国から示された方針では、学力試験を行わず、学校の個性や特色に応じて多様な方法を適切に組み合わせることが適当とされております。このようなことから、本県では、個人面接や作文、小学校で学んだ基礎的な力に基づき、自然や身近な事柄について考えさせたりまとめさせたりする適性検査を行っております。これらの結果をもとに、各学校の特色や生徒像に照らして、志願者1人1人の意欲や適性等を多面的、総合的な観点から判断し、選考を行っております。これまで適性検査の内容や作文題、解答例につきましては公開しておりますけれども、点数化できない検査等があることや過度の受験競争を懸念する中で、その配点や選考基準等は公表しておりません。
 議員御指摘の公表のあり方につきましては、今後さらに信頼性を高められるよう検討してまいりたいと考えます。
 次に、中高一貫教育の成果と課題等についてでございます。
 今春1期生が高等学校を卒業いたしました県立向陽中学校、高等学校におきましては、6年間一貫した計画的、系統的な学習を展開いたしまして、その中で、生徒は学習への自発性や自分の考えを豊かに表現できる力などを身につけてまいりました。また、環境教育など、個性をはぐくむさまざまな教育活動を通しまして、自分の進路や生き方を考え、その具現化に向け努力する生徒が確実に育っております。
 このような生徒の状況から、開設当初に目指した生徒の育成に関しては、おおむね達成できていると学校長から伺っておりますし、私自身も発表会等での生徒の様子からそのように感じております。
 学校におきましては、6年間を通して教え合い、学び合う集団の中で、スーパーサイエンスハイスクール事業で導入された実験理科やディベート等を通しまして学習意欲が高められ、主体的に取り組む態度が育ってきております。しかしながら、中学校と高等学校をつなぐ授業にはまだ研究の余地がございますし、また発達の段階の違う子供たちの運動部活動については、御要望に十分こたえられていない面もあると考えております。
 中高一貫教育における評価基準につきましては、議員御指摘の進路状況や自己実現などを含め、入学者や保護者の期待にどうこたえているかなど、さまざまな観点から分析し、総合的に評価していかなければならないと考えております。
 高校進学段階の状況についてでございますが、向陽中学校から向陽高等学校への進学は、転居や将来の進路の関係などやむを得ない事情による他校への進路変更は、1期生で2名、3期生で3名の生徒でございました。また、学科変更につきましては、それを認めておりました1期生に限って2名でございました。なお、2期生は全員向陽高等学校に進学をいたしております。
 中高一貫教育に対しては、各方面からも、施設等の課題、市町村立中学校への影響や工業系、商業系、スポーツ系への接続、多様な生徒へのニーズの対応など、中高一貫教育のあり方について、検討課題としてさまざまな御意見、御指摘をいただいております。これを受けまして、中高一貫教育による成果と課題等について検証を進めるため、昨年5月に、多角的な面から御意見をいただけるよう、中高一貫教育に見識のある大学教授や県立中学校設置地域の教育委員会及び公立中学校の代表、県立中学校の管理職等による中高一貫教育協議会を設置いたしました。
 現在、県立中学校を設置した地域の教育委員会や学校関係者等から聞き取り調査を行い、県立中学校の状況把握とあわせて、そのあり方について評価、分析を行っているところでございます。
 今後、地元の中学校の状況や市町村、学校関係者等の御意見、御要望を踏まえ、検証をさらに進め、その結果等をもとに、きのくに教育協議会においてさらに協議を行っていただき、県立高等学校再編整備計画の第2期(後期)実施プログラムの中で、今後の県立中学校のあり方や設置についての方向性を示してまいりたいと考えます。
 中学校における物づくりの専門性を生かした一貫教育は、個性を伸長させると同時に、小学校6年生の時点で工業という特定の分野を選び、6年間を継続するといったことが子供さん自身の負担にならないかという懸念もございます。こうしたことも含めまして、今後もさまざまな観点から検討してまいりたいと考えます。
 以上でございます。
○副議長(坂本 登君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 再質問を許します。
 41番山下大輔君。
○山下大輔君 御答弁いただきました。それぞれに誠意ある御答弁をいただけたと思います。
 本当に和歌山を何とか立て直したいという思いで、私自身、県議会へ送っていただいてからこれまでやってまいりました。その基本としては、やはり弱い立場の人をどんなに守っていけるか。それは子供であり、高齢者であり、和歌山に育つそういう子供たちの将来ということを考えても、本当に希望の持てる地域にしていかないかん。ただ、和歌山の状況としては、最初にもお話ししたように、なかなかやっぱり厳しい状況になってると。仁坂知事を先頭に、本当に県当局も努力していただいてると思いますが、さらに、これまでの常識にとらわれず新たなチャレンジということも今真剣に取り組まないかん時代やと思いますので、ぜひ本日質問した項目も含めて、今後、取り組みを強化していただきたいと思います。
 まず、農畜産業の取り組みについて、先日ちょっと資料が出てまして、日本政策金融公庫が先月2月19日に発表した平成21年の農業景況調査によると、平成21年度の農業景況DI(動向指数)がマイナス17.4となり、前年より大きく低下していると。平成8年の調査開始以来2番目に低い水準となり、ことし平成22年の見通しについても、マイナス12.8と大幅なマイナスの見通しとなっています。こういう状況というのは、国内のデフレ環境が簡単に収束しない見通しの中では、ただでさえ厳しい農業を取り巻く環境はさらに悪化することが見込まれています。国内に目を向けるだけの農畜産業に残念ながら希望は持てないのが現実だと思います。
 そういった中では、今後は世界、アジアに対して新たな形での挑戦が大切な取り組みになると思いますので、本日お答えいただきましたように、ぜひ県としても、ファイナンスの環境整備、シンクタンクの活用、そしてアジア、中国市場への挑戦ということは、これは一貫した質問にさしていただいておりますので、それぞれ真剣な取り組みをお願いしたいと思います。これは要望にしておきます。
 それと教育。中高一貫の取り組みについて、教育長からそれぞれの質問に対して誠意ある御答弁はいただけたと思います。
 ただ1点、どうしても気になる点がございまして、それは、私自身がこれまで中高一貫校で多様性のある中高一貫というのを実現させてもらいたいと。実は、子供の個性を伸ばすとか多様性とかと言葉ではよく言うんですけれども、そういう環境が教育の世界でなかなかつくられていない。子供の個性を本当に伸ばすためには、子供の特徴を伸ばして生き抜く力をしっかりと学校の間につけさせると。そのためには、いろんな視点で子供を伸ばすような取り組みというのが必要やと。その中では、今回指摘しました工業、物づくり、商業、商売人、起業家というものをつくっていくような学校、またスポーツはスポーツが得意で、そういう中高一貫のあり方というようなことをそれぞれ中高一貫の取り組みの中でもしっかりと位置づけられてこそ、和歌山教育として本当に魅力ある環境というのがつくれるんだと思っています。
 そういった点では、残念ながら、今回の答弁では、結局、いろいろおっしゃられましたけれども、検討していくということでございました。やるとはなかなかお答えになりにくいというのは重々承知しておるんですけれども、ただ、検討ということであれば、これまでの答弁の内容の域を出てませんので、もう一度だけ教育長に、その多様な公教育の一貫校をつくっていくということに対しての有効性というものについて、教育長として、すぐつくれるということは別にして、その有効性、重要性というものをどう感じているかということだけ、もう一度お聞きしたいと思います。
 教育長への再質問を1点として、私の再質問を終わらせていただきます。
○副議長(坂本 登君) 再質問に対する答弁を求めます。
 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 御質問につきまして、ストレートにお答えすることになるかどうかとは思うんですけれども、子供たちの多様性にこたえるには2つの道がありまして、1つは、多様な学校をつくってこたえていくという方法と、フィンランドの方式などは学校間は余り差をつけずにそれぞれの学校の中で多様な子供たちの個性に応じていくという2つの方法がございます。そのどちらの方向が本当に子供たちの個性を伸ばしていくことにつながっていくのか。日本の場合は、恐らくそのミックスでやっていると思うんですけれども、その中でどのようなバランスをとっていくことが子供たちにとってより望ましいことかといったことについて、本当に慎重に考えて進めていきたいと思っておりまして、直接お答えになったかどうかというのは心配でございますけれども、私の考えを述べさせていただきます。
○副議長(坂本 登君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 再々質問を許します。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○副議長(坂本 登君) 以上で、山下大輔君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時38分休憩
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