平成21年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(尾崎太郎議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前10時1分開議
○議長(冨安民浩君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第132号から議案第151号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 19番尾崎太郎君。
  〔尾崎太郎君、登壇〕(拍手)
○尾崎太郎君 おはようございます。議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 衆議院総選挙が行われました。残念ながら我が党は歴史的大敗北を喫し、野に下りましたが、何ゆえこのような結果となってしまったのか。くるくる変わる総理総裁、ばんそうこう大臣に酔いどれ大臣、漢字の読み違いに世論の読み違い、それこそ理由は幾つとなく挙げることができます。しかし、その根本的な原因は、我が党が保守政党としてのアイデンティティーを喪失したことによるのです。
 1989年にベルリンの壁が崩壊し、1991年12月25日にソ連が解体して冷戦が終結します。世界の構造は、このときをもって一変したのであって、政治、経済、文化、あらゆる分野にわたって再構築が行われることは必至でありました。
 それまで、我が国の政治風土において、保守とは革新、すなわち共産主義、社会主義でないものを包括的に指し、保守とは何かといった積極的なアプローチは行われてきませんでした。国民の支持を得るには、いわばこの消極的保守でさえあれば十分であり、本来の保守主義を標榜する必要性はなかったのです。アメリカから見れば、自民党の存在意義は共産主義、社会主義革命に対する防波堤、国民から見ればいわゆる現実的選択であったのです。
 誤解のないように申し上げれば、このことは自民党の政治が悪かったことを示唆するものではありません。自民党は、細川護熙を首班とする非自民連立政権が発足し、野に下るまでの35年間政権の座にあって、焦土と化した我が国を経済的にも文化的にも世界で最も豊かな国として再生する一助となりました。後に政、官、業の癒着と非難される自民党政治ですが、敗戦後、極めて脆弱となった国力を経済発展に集中し、奇跡の復興を成し遂げたのは、政、官、業の鉄のトライアングルが効率的に機能してきたこともまた事実であります。
 しかし、世界の構造は変わったのです。もはや、だれの目にも共産主義や社会主義が失敗であることは明らかとなりました。市場は万能ではありませんが、市場や私有財産を否定したところに豊かな社会が成立しないことは自明となりました。もはや、消極的保守、共産主義、社会主義でないことは政治の大前提となり、それで差別化することはできません。小選挙区制度となり、いずれ2大政党へと収れんしていくのであれば、自民党の存在意義は積極的保守、本来の保守政治にこそ求められるべきでありました。
 ところが、野党暮らしの悲哀に耐えかね、自民党は政権党であることだけにしかみずからの存在意義を見出せず、あろうことか、社会党の党首を首班とする自社さ連立政権を発足させます。当時の自民党幹部の言いぐさは、「野党になったらだれも陳情に来ないし、役人も説明にも来ない」などという、全く取るに足りないものでありました。今日の自民党の壊滅的大敗は、このとき定まったと言えるでしょう。
 さすがに、村山政権が画策した国会での謝罪決議は、腐ってもタイ、当時の自民党にはまだまだ健全な保守も多く、衆議院では反対派の議員を本会議は開かれないと帰省させておいてから土井衆議院議長が開会のベルを鳴らすといういわばだまし討ちで、議員の過半数を超えずに採決され、参議院ではついに採択に至りませんでした。
 しかし、いわゆる村山談話を許してしまったことは痛恨のきわみであり、以後、村山談話は我が国と我が党を深くむしばむことになります。
 保守政治とは、悠久の歴史がはぐくんだ国民精神、国体に至上の価値を見、これを保守せんとするものであり、同時にまた国民精神に立脚する政治であります。ゆめ国民精神を人為的に改革するなどということを企てるものではありません。国民精神と保守政治は、相互に依存する関係にあると言えます。したがって、国民精神が損なわれてさえいなければ保守政党は必ず力を取り戻すはずであります。
 幸い、長い歴史を誇る我が国が時をかけ熟成した国民精神は、決して油断はできないものの、そうやすやすと壊されるものではありません。問題は、自民党が保守政党たり得るかということであります。保守政党たるには、まずはこの豊かな国民精神をはぐくんだ自国の歴史をでき得る限り肯定的にとらえようと構えることが必要不可欠であり、村山談話を継承したまま真の保守政党たることはできません。
 真の保守政治家である安倍総理は、村山談話を踏襲してしまい、深刻な自己矛盾に陥りました。苦悩煩悶したあげく、彼は健康を損ねたのではないでしょうか。安倍総理は、村山談話を破棄し、靖国へ参拝すべきでありました。2代続けて総理が靖国に参拝することは決定的な意味を持ったはずです。対外的にも靖国参拝を、いささかいこじな小泉総理の蛮行から総理の慣行にすることができたのです。マスコミが騒ごうが、小役人がそれを引っ張ろうが、何ほどのことがある。安倍総理の靖国参拝は国民の大半が支持したはずで、中国は、抗議しても無駄だと知れば、以後、靖国を政治カードとして利用しなくなるでしょう。
 まあ、韓国は騒ぐでしょうが、ほうっておいたらそれでよし。カトリックとプロテスタントが徹底的に戦った30年戦争後、ウェストファリア条約が結ばれますが、これ以降は宗教は問題にしないのが国際社会のコンセンサスです。神社へお参りする程度のことで騒ぎ続ければ、国際社会で白眼視されるのは韓国なのです。
 みずからが守るべき、そしてみずからがよるべき国民精神に絶対の信を置き、堂々参拝すれば、靖国の英霊は安倍政権をお守りくださったに違いありません。
 私は、ことしの8月15日にも、例年どおり靖国に参拝をいたしました。早朝から途切れることのない参拝者の列、夏の日差しは強く、日傘を差す人、参道でもらったパンフレットをかざす人、汗が首筋を流れ落ちる。私の前の家族連れは、神殿の前に来ると父が子供たちに帽子をとるように命じる。2礼2拍手1礼、父に合わせ兄弟は小さな手でかしわ手を打つ。私の横は、恐らくは大学生、今風の若者のファッションに身を包んでいる。背広姿の人もいる。着物姿の御婦人がいる。気負うわけでもなく、皆、ごく自然に参拝をしているのです。
 私は、知人に「機会があればぜひ8月15日に靖国に参拝してはいかがですか」と勧めています。ことしは、私の後援者の1人がお孫さんを連れて参拝されました。陸続たる参拝者の列に彼は心底驚いたそうで、「まさかあれほどとは思わなかった」と述べておられました。
 本年は靖国の境内で、国民集会で田母神元航空幕僚長や金美齢氏がスピーチを行っていましたが、田母神氏の講演は全国どこでも大入り満員。昨日も、ことし2度目の和歌山入りをしていただき、前回同様、立錐の余地のない大盛況でありました。
 マスコミは、「ぞっとする自衛官の暴走」と題し、「こんなゆがんだ考え方の持ち主が事もあろうに自衛隊組織のトップにいたとは驚き、あきれ」などと書いていましたが、ゆがんでいるのは村山談話なのか、田母神論文なのか、あるいは麻生総理の口なのか。麻生総理は、郵政民営化は本当は賛成ではなかったなどと告白するのであれば、村山談話の継承も本心ではないとざんげし、国民に信を問うべきでありました。
 私は、自民党青年局中央常任委員会議長の職にあり、総選挙における惨敗が必至となった情勢にかんがみ、党本部に、総理は8月15日、靖国に行くべきだ、我が党所属の全国会議員を連れていけばなおよしとの提言をいたしました。また、青年局長は麻生派の一員ということもあり、総理にじかに15日の参拝を迫ったそうであります。村山談話を継承し、靖国にも参拝せず、民主党の日の丸切り裂き事件だけを声高に叫んだぐらいで自民党は保守政党であると国民が認めるはずもなかったのです。
 党大会に日の丸を掲げない民主党は、明らかに保守政党ではない。しかし、ならば自民党は保守政党だと胸を張れるのか。数合わせで政権に手が届く程度の負け方では、権力欲に取りつかれた自民党に保守政党としての自覚を促すことは不可能。ならば、我々は、この大敗北を自民党が本来の姿に変えるチャンス、村山談話の呪縛を解く好機に変えなければなりません。世界に誇るべき我が国の国民精神、国体を保守すべく、私は一兵卒としてこれからも微力ながら県議会で発言を続けてまいりたいと存じます。
 さて、横浜市教育委員会が8月4日、18採択地区のうち8地区で「新編新しい歴史教科書」を採択いたしました。この教科書は、教育基本法改正に伴う新学習指導要領に則して編まれたもので、虚心坦懐に審査してもらえば一定数は必ず採択されるべきものであると考えておりましたが、本県でも以前、教科書採択をめぐって田辺市で教育委員らに対する非常識な抗議行動があったことから、文部科学省の言う教育委員らの静ひつな採択環境が維持できるかどうか憂慮しておりました。
 教科書採択の複雑な仕組みにつきましては、これまでも質問をしてきましたので繰り返しませんが、ともかく横浜市では教育委員による真摯な採択が行われたようであり、まことに喜ばしいことであります。「新編新しい歴史教科書」には戦艦大和の写真が掲載されており、私などはその勇姿に見とれてしまいますが、あるいは軍国主義であるとの批判があるかもしれません。
 「WiLL」7月号別冊「歴史通」に、昭和58年8月号の「中央公論」増刊号、「歴史と人物 太平洋戦争──終戦秘話」に塩野義製薬の係長で海軍大尉待遇嘱託であった市橋立彦氏が寄稿した話が紹介されています。昭和20年3月半ばのある日、市橋氏は第2海軍療品廠で、「本日より1週間以内に歯磨き、歯ブラシを各50万人分、美顔クリーム25万人分、メンスバンド15万人分を調達するために○大尉に協力してほしい。理由は言えない、直ちにかかれ。」との命令を受けます。非常な努力の末、何とか調達に成功しますが、4月8日ごろ、大尉から、「市橋君、我々がともに1週間闘ったあの4品目は大和に積んだそうだ。沖縄県民のために残念なことをした。市橋君、本当に御苦労だった。」と聞かされたというのです。
 このような沖縄県民に対する細やかな配慮を軍部がしていたとは私にとっても驚きですが、日本軍は民を虐げるおどろおどろしい組織であると信じている、あるいは信じさせたい方々に耳の痛い話でしょう。
 沖縄は紛れもなく日本であり、それゆえ持てる力を振り絞り、軍は沖縄を守ろうとした。軍は、住民をでき得る限り疎開させようとした。作戦は必ずしも的確ではなかったかもしれない。それでも軍は、大和は、矢折れ刀尽きるまで沖縄を守ろうとした。それは、ひめゆり部隊等とともに後世に語り継いでもよいのではないでしょうか。
 「新編新しい歴史教科書」は、今回の採択でようやく1%のシェアを獲得することができました。祖国に誇りを持てる子供たちが育ってくれるよう願ってやみません。
 さて、本県では、教育基本法に基づき和歌山県教育振興基本計画を策定し、「未来を拓くひたむきな人間力を育む和歌山」を目標として教育行政に取り組んでいるところでございます。
 新教育基本法には、親が子の教育に第一義的責任を有し、生活習慣、自立心、心身の調和を図る規定が新たに設けられ、国及び地方公共団体が家庭教育支援を行うことが明記されています。
 本県の教育振興基本計画によりますと、家庭の教育力向上のため、子育てや家庭教育に関する情報の提供及び学習機会の充実、子育てに関する相談体制や親子や親同士が集える場の充実、地域で支え合う子育て支援体制の確立等の政策を実施することとなっておりますが、児童虐待は犯罪でありますから論外としても、いわゆるネグレクトやモンスターペアレントに、学校でも教育委員会でもなく、親が子の教育に第一義的責任を負っているということを意識づけていくという視点はあるのでしょうか。
 親が我が子の教育に責任を持つなどということは、それこそ法律以前の問題ですが、わざわざそれを法律に明記しなければならない状況にあるとはゆゆしきことであります。
 日本には、しつけという世界に誇る文化があります。いや、あったと言うべきか。「しつけがなっていない」、「親の顔が見たい」などは、かつてよく聞かれた物言いです。子を持つ親ならだれでもそうでしょうが、我が子はそれこそ目の中に入れても痛くないほどかわいいものですが、それでも、いや、それゆえに子供はしつけなければならない存在なのであり、親がその責務を負うのです。しつけは、時に子供にとり不快なものであり、厳しさを伴うものであります。的外れな子供の権利論を振り回すのは、まさに子供のためにこそ、そろそろやめにしなければなりません。
 核家族の増加や地域社会の人間関係の希薄化に伴い、しつけの伝統は失われつつあり、子供のしつけ方がよくわからない親もいることでしょう。教育基本法第10条2項は、地方公共団体は保護者に対する学習機会の提供を義務づけており、これは親に子供のしつけ方を学んでもらおうというものでありましょう。単なる育児相談にとどまらず、親に親としての自覚を促し、きちんとした子育てを習得できる場を提供できる政策が必要とされています。
 前埼玉県教育委員長で明星大学教授の高橋史朗先生が提唱なさっている親学は、親となるための学習を体系的に整備したもので注目に値します。
 また、早寝、早起き、朝御飯はしつけの基本とされるものですが、平成17年、食育基本法が制定され、食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身につけることができるよう、学校においても積極的に食育に取り組むことが求められています。
 共稼ぎ家庭がふえたこともあり、朝食抜きの子供やインスタントラーメンや菓子パンなどで食事を済ます子供たちがふえてきているようです。食べ物により我々はできているのですから、何をどのように食するかということは大問題であり、肉体も精神も発展途上にある青少年にとり、食育は決定的に重要なものであります。
 何でもない運動で骨折してしまう子供、一定時間立っていることもできない子供、無気力感にさいなまれる子供、すぐにキレる子供、落ちつきがない子供たちも日ごろの食生活にその原因がある場合もあると推察されます。まさしく、食を正すことは人を正すことでありましょう。
 社会の食に対する関心が高まる中、食に関する指導の推進に中核的役割を担う栄養教諭制度の創設は時宜を得たものと言えます。
 最近、栄養教諭の方と話す機会がありました。子供たちの栄養管理はもとより、はしの持ち方や食事マナーに至るまで、我が国の伝統的な食文化についての理解を深めていくことにも配慮されているようで、大変感心いたしました。手づくりのテキストにも仕事に対する情熱が感じられ、教諭としての使命感と誇りを持って職務に当たっておられるようであります。
 学校栄養職員は、学校給食法の5条の3に「学校給食の栄養に関する専門的事項をつかさどる」と規定され、栄養教諭は、学校教育法28条8項に「児童生徒の栄養の指導及び管理をつかさどる」と規定されています。栄養教諭は、職務として食に関する指導を明確にされたものであります。
 給食における地場産物の活用等は同僚議員も何度も質問されていますが、これなど、栄養教諭が食に関する指導と給食管理を一体のものとして行うことでより効率的に実施することができます。給食における食材の仕入れについては地域地域で異なっているようですが、栄養教諭が職務としてかかわることでよりよいものになっていくでしょう。また、肥満や偏食、食物アレルギーなどの児童に対する個別指導は、専門的知識に基づいて行われなければならないものであり、栄養教諭の活躍に期待するところ大であります。
 学校栄養職員は、一定の在職経験と都道府県教育委員会が実施する講習等において所定の単位を修得することにより栄養教諭免状を取得できることになっていますが、学校栄養職員が教諭となることで生まれる職責に対する自覚が日々の仕事に非常によい影響をもたらすということは栄養教諭の方々とお会いして感じましたし、食に対する近年の国民的関心の高まりからも、栄養教諭をでき得る限り配置していきたいものであります。
 ところで、麻生総理が「昨年秋に解散しておけばよかった」などと語ったとの報道がありました。総理就任直後の秋葉原での街頭演説での人気は大変なもので、一目生麻生を見ようとする人で駅前は埋め尽くされました。私も総理の前座を務め、「名前も大学も総理と同じです」などと演説をして浮かれていたのがうそのようであります。だれもがこの勢いをかって解散かと思ったのですが、演説会終了後の懇親会で総理が、「とても解散できる状況にない。各国から悲鳴が上がっている」と漏らしたのを覚えています。
 米国のサブプライムローン問題に端を発する金融危機は、まさに100年に一度と形容するにふさわしいものであります。トリプルAを自慢に日本の保険市場を席巻した世界最大の保険会社AIGは、本来倒産してしかるべきところを、その余りの規模ゆえにFRBがなりふり構わぬ融資で生き長らえさせている状態であり、世界の金融を牛耳ってきたアメリカの5大投資銀行、ゴールドマン・サックス、メリルリンチ、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズ、ベア・スターンズはすべて消滅してしまいました。
 1つかじを切り間違えれば世界恐慌は必至であり、各国が保護主義を強め、自由貿易が死ねば、それはいつか来た道、戦争への足音が聞こえてきます。リーマンショック以降の各国首脳がどれほどの緊張を強いられたことか想像にかたくありません。麻生総理の苦悩も、また推して知るべしであります。
 10月26日の秋葉原での演説から18日後の11月14日、ワシントンでの金融サミットにおいて、日本は外貨準備から最大1000億ドルをIMFに拠出することを表明します。
 金融立国として1人当たりのGDP世界第3位、まさに我が世の春を謳歌していたアイスランドは、一瞬にして事実上デフォルトしてしまいました。事実上と申し上げたのは、正確には政府の管理下にある銀行がデフォルトしたからですが、英国などはこわもてで自国の債権保全に動きました。無論、軍を持たない我が国がそんな芸当ができるわけもなく、邦銀等が持つ債権などは紙切れとなったのでありました。
 日本は世界最大の債権国、世界じゅうにお金を貸しているのですから、金融危機が連鎖し各国がデフォルトすれば、世界で最も深刻なダメージをこうむるのは我が国、危機に瀕している国を支援することは、国際的な道義のみならず、国益にもかなった行為なのです。
 とはいえ、破綻のふちにある国に直接融資をするというのでは余りにリスクが大き過ぎます。IMFに資金を拠出し、IMFがそれらの国に融資すれば、いざというときには我が国の資金はIMFが保証しますし、何よりIMFには融資をする国にさまざまな改善計画を強制することができるため、融資返済の可能性は日本が直接融資した場合とは比べ物になりません。もちろん、日本はIMFから利息も受け取ることができるのです。
 橋本総理がかつて「米国債を売る誘惑に駆られることがある」と発言してニューヨークダウがたちまち下落したことはよく知られていますが、外貨準備はそのほとんどが米国債の形で運用されており、これを大量に売ることはドルの暴落を招き、ドルの暴落は世界経済のさらなる崩落を招くことになり、事実上、できることではありません。IMFへの資金の拠出は、この売るに売れない米国債で行われ、IMFはこれを担保に現金を調達し、支援を実施するのです。どうでしょう、一石二鳥にも三鳥にもなる見事なスキームではありませんか。
 そして、ことしの2月13日、ローマでのG7で中川財務金融担当大臣はIMFへの融資に正式に調印をいたしました。IMF専務理事のストロス・カーン氏は、これを「人類史上最大の融資である」と我が国の国際貢献に賛辞を惜しみませんでした。浮かれ過ぎて酔っぱらってしまったのが玉にきずですが、電光石火の早わざでこれだけのスキームを立案・実行した麻生総理、中川財務金融担当大臣は、再評価されるときが必ず来るはずであります。
 平成21年度補正予算も評価されるべきものであると考えます。プライマリーバランスの達成も結構ですが、民間の設備投資や消費の回復がしばらくは見込めず、有効需要が決定的に不足している状況下では、国債を発行し、政府が需要を創出することは理にかなった行為であると言えます。
 我が国の長期金利は世界最低で極めて安定しており、これは国債の消化に何の問題もないことを示しています。かつて、アメリカの格付会社が我が国の国債をボツワナ並みと評価したことがありましたが、この格付会社の評価が投資適格であるとした債権が今回の金融危機であっさりと崩落したことを思えば、格付なるもののいかがわしさがわかろうというものであります。ちなみに、ムーディーズは、国債の増発による補正予算が成立する直前、日本国債の格付を一段階引き上げています。
 我が国の国債は国内でその大半が消化されており、現在のところ、全く問題はありません。無論、国民の理解を得る意味でも、いわゆる箱物行政はいただけませんが、今回の補正予算には、国際公約であるCO2の排出抑制にもつながる太陽光発電等の環境関連の支出や、増田悦佐氏が説くところの世界に比類のない効率的社会をつくり上げている鉄道網を有する我が国がさらなる高みを目指すリニア新幹線関連の支出など、これからの日本の基幹産業になるであろう分野に対する投資がメジロ押しであります。
 民主党政権下での補正予算の見直しは必至の情勢でありますが、いたずらに政府支出を削ることは、例えば公務員の人件費を削減することも──いささか国民感情とは異なるかもしれませんが──事景気に関する限りマイナスに作用するのです。
 日本は世界第2位の経済大国であり、世界経済にとり極めて大きな存在であり、我が国の景気は世界に大きな影響を与えることを考えれば、麻生総理が「まずは景気だ」と叫び続けたことは、自民党にはともかく、状況を考えれば決して間違いであったとは言えないのです。
 そこで、知事にお尋ねをいたします。
 第1点、現在の経済情勢をどのようにとらえているか。
 第2点、民間の需要が低迷する中で官需の果たす役割は、本県のような地域は特に大きいと考えるがどうか。
 第3点、知事の考える経済活性化策があればお聞かせをいただきたい。
 次に、教育長にお尋ねをいたします。
 第1点、和歌山県教育振興基本計画における家庭の教育力とは具体的にどのようなものを指すのか。
 第2点、かつて我が国の家庭で広く行われていたしつけについてどのように考えるか。
 第3点、親学というものを知っているか。知っているならば、どのような感想を持っているか。
 第4点、学校教育における食育の重要性をどのように考えているか。
 第5点、栄養教育の役割についてどのような認識を持っているか。また、現在の栄養教諭の数は十分であると考えているか。
 第6点、教育振興基本計画には環境教育の推進が掲げられているが、今回の積極予算を受けて、この機会に太陽光発電を県内各学校にでき得る限り整備すべきだと思うが、どのように取り組んでいるか。
 以上お尋ねして質問といたします。(拍手)
○議長(冨安民浩君) ただいまの尾崎太郎君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 昨年9月のリーマン・ブラザーズの破綻から1年が経過いたしまして、世界経済の現状を概括いたしておりますと、議員御指摘のように、金融危機は最悪期を脱し、打撃を受けた各産業も昨年の10月よりは少し回復しているというような事態にあると思います。
 ただ、そのプロセスで職を失って所得もない方々がたくさんいらっしゃる。それから、失業しなくても残業手当が減った等々で、低下した所得の影響が今度は消費に結びついて、消費の低下によって有効需要が減っていくというようなこともまた懸念される事態にまだまだあると思います。
 それから、これまでと違って、世界経済の回復を、今までの産業がだめになったらこっちの産業で何とかしようというような新しい産業が、世界的規模で言うと余り顕著ではない。また、地域もそれほど顕著ではないということであろうかと思います。そういたしますと、産業界の民間投資もまだまだ回復するに至っていない。そういうことで、回復ということがこれまでの水準に戻るということであるとすれば、まだまだ回復への条件は整っていないというふうに考えざるを得ないと思います。
 国の月例経済報告も──これはちょっと退屈なような表現がいつも多いんでありますが──国の経済対策の効果等により、9月の月例経済報告の基調判断は、持ち直しつつあるものの、雇用については一層の悪化が懸念されると指摘されています。雇用の一段の悪化や所得の減少が消費を冷え込ませ、景気を下押しするおそれもありまして、まだまだ予断を許さない状況にあると考えております。
 このような中、本県経済情勢につきましても例外というわけにはまいりません。どこかの民間の研究機関の月例経済報告と同じような分析によると、一部に持ち直しの兆しも見られるものの生産や消費が低迷しており、厳しい状況が続いているということを書いておりますが、私たちもそのように考えております。
 ただ、全国的に雇用情勢が深刻化しておりますが、我が県においては、雇用の維持を最優先に考えている県内企業の頑張りもあります。そういうこともありまして、本県の有効求人倍率は、数年前とは一転して全国で上位を保っています。しかし、それはあくまでも相対的な問題でありまして、県民が幸せであるか、あるいは県内企業が余裕があるか、そういうこととは全く別でございまして、和歌山県もまだまだ回復までには苦労しながらやっていかないといけないと、そういう事態にあると考えております。
 そこで、県といたしましては、引き続き県内状況の的確な把握に努めるとともに、ことしの10月から県制度融資の金利引き下げといった資金繰り対策も追加しておりますし、一連の「和歌山で働きませんか!」プロジェクト等々と、いろいろと考えて実施してまいりましたが、今後とも実態については熱心に把握をし、それに対して必要な対策が怠っているものはないかということをよくよく考えて対策を続けてまいりたい、そんなふうに考えております。
 次に、官需の果たす役割についてでございます。
 議員御指摘のとおり、民間需要が落ち込んでいる中、特に中小企業が大半を占める本県において、官公需の果たす役割は重要であると考えております。
 こういう急激な落ち込みがありましたときに、財政政策が有効であるということは私もそう思います。財政施策がどれだけ有効かというのは、経済学の常に大きな論争の対象になっておりますけれども、この事態においては絶対に有効であるというふうに思います。そういう意味で、国がたび重なる経済対策をやってくれて、補正予算もかなり奮発した形で、特に地方などにもいただいたということは評価すべきであったというふうに思います。
 ただ、これは赤字国債を出せない県ではなくて、この財政政策、フィスカルポリシーというのは主として国の仕事だというふうに考えております。
 しかしながら、和歌山県においても、このような国の政策の足を引っ張る──例えば交付金をいただいたときに使わないで残しておくとか、そういうことばっかりやっておりますと、その当該県において足を引っ張るということになりますので、足を引っ張らないように我が県の深刻な事態も十分把握して対応してまいった次第であります。
 したがって、9月補正予算におきましても、これまでの国の交付金を活用した切れ目のない景気対策として、安心・安全とか低炭素革命、社会資本整備、産業振興などの7分野で、今後対応が必要となる事業を前倒しで実施することによって有効需要を創出し、県経済の下支えを図ってまいりたいと、こう考えている次第であります。
 次に、県経済の活性化でございます。
 私の考える経済活性化ということでございますが、少しダブるかもしれませんが、先ほど、資金繰りや雇用対策など、不況に耐える県内企業の下支えをするための緊急対策、これがまだ依然として必要だと思っております。それから、このような不況期にあっても、不況後のことを見据えて底力を蓄える、そういう取り組みも重要であると考えております。このため、産学官連携による研究開発や地域資源活用、農商工連携による新商品、新サービスの開発支援などに取り組んでいるところであります。また、新産業分野に挑戦するものづくり中小企業等の支援や県内業者の販路開拓支援、こういう経済活性化に資する施策を9月補正予算にも盛り込ませていただいた次第であります。
 あわせて、今後の産業活動の基礎となる社会資本整備は、これは頑張ろうとする民間企業のハンディキャップの解消とか、あるいは足を引っ張らないようにするというような意味で必要だと思いますので、必要な社会資本の整備を積極的に進め、将来の本県経済の成長につなげていきたいと考えております。
○議長(冨安民浩君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 家庭教育についてお答えいたします。
 近年、少子化の進行や人間関係の希薄化など家庭を取り巻く社会環境の急激な変化に伴って、家庭の教育力が低下してきていると指摘されてございます。
 家庭は教育の原点であり、家庭の教育力は、子供の命を守り育てること、社会人として生きていくための素地を子供に身につけさせることにあると考えております。その具体的な行為であります子供のしつけにつきましては、他人に対する思いやりや社会的なマナー、規範意識等を身につけ、将来、子供が尊敬される大人になるために必要なものでありまして、日本文化のよさを受け継いでいく営みでもあると受けとめてございます。
 議員御指摘の親学につきましては、親学推進協会理事長の講演記録等を拝見いたしましたが、親が親としての役割を果たすために必要な学習を述べておられまして、教育再生会議などで論議が重ねられたものと理解をしております。
 県教育委員会といたしましては、保護者が子供の教育に第一義的責任を有するものと定められた教育基本法の理念を踏まえ、家庭教育の自主性を尊重しつつ、市町村と連携しながら、地域共育コミュニティを生かすなどして、地域ぐるみの子育てや親の学びを支援する取り組みを充実してまいります。
 続いて、学校におきます食育の推進についてお答えいたします。
 このたび改訂されました学習指導要領におきまして、学校における食育の推進が新たに明記されており、学校教育活動全体での取り組みを推進することとなっております。
 本県の教育におきましても、食育の推進は大変重要でありまして、児童生徒が生涯にわたって心身の健康を保持・増進できるよう、正しい食事のとり方や望ましい食習慣を身につけ、食事を通じてみずからの健康管理ができる子供を育成してまいりたいと考えております。
 次に、栄養教諭の役割につきましては、栄養に関する専門性と教育に関する資質をあわせ持つ教員として、学校での組織的な取り組みのかなめとなるものと認識しております。また、食育推進の観点から改正された学校給食法におきましても、学校給食を活用した実践的な指導を行うことと定められるなど、求められる役割と期待は大きいものと考えます。
 本県における栄養教諭の配置状況は、平成19年度に3名、本年度新たに7名を増員し、計10名となっておりまして、各地方において、学校、家庭、地域と連携したさまざまな取り組みを展開しております。今後とも、栄養教諭の資質向上を図るとともに、各地方において、栄養教諭を中心とした食育の推進に積極的に取り組んでまいります。
 次に、学校施設への太陽光発電導入の取り組みについてお答えいたします。
 議員御指摘のとおり、地球温暖化対策は今や全世界共通の懸案事項であり、世界の国々が総力を挙げて取り組むべき重要課題の1つとなっております。
 また、和歌山県教育振興基本計画には環境教育の推進が掲げられておりまして、今回、太陽光発電を学校へ導入することは、この基本的方向に沿ったものでございます。
 今年度、経済危機対策におけるスクール・ニューディール構想の3本柱の1つとして、太陽光発電等を初めとしたエコ改修が補助制度化され、公立の幼稚園、小中学校、産業教育施設を有する高等学校及び特別支援学校が補助対象となりました。
 これを受けまして、県立学校につきましては、6月補正予算において、産業教育施設を有する高等学校10校と特別支援学校7校に太陽光発電設備設置が予算化されてございます。小中学校につきましては、各市町村教育委員会に対しまして、7月から9月にかけて太陽光発電設備導入の意義と補助内容について説明を行い、その導入を働きかけてまいりました。その結果、現在13市町、38校において設置の検討をしていただいております。
 県教育委員会といたしましては、今後も引き続き市町村に対しまして太陽光発電設備の導入を積極的に働きかけてまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(冨安民浩君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(冨安民浩君) 再質問を許します。
 19番尾崎太郎君。
○尾崎太郎君 底を打ったという見方もあるんですが、私は、一時的に各国が経済対策をとりましてカンフル剤を注入している状況で、全くこれは予断を許さない状況である、そんなふうに考えております。
 それは大きな世界経済のことでありますから、我々和歌山県がどうこうできる問題ではないかもしれませんが、しかし、我々は和歌山県政に携わる者としてできることはやっぱりやっていかなければいけないわけでありまして、その一環は、こういうふうに民需が落ち込んだときには、できるだけ官需を出して県経済に刺激を与えていく。そして、それに要望させていただきたいのは、その際、できる限り和歌山県の業者に仕事を回していけるようなさらなるよい入札制度をつくっていくという努力をあわせてお願いしたい。
 制度のみならず、いろんな努力目標なんかを最近は掲げていただいて、それが有効に作用しているようにも思います。今後とも、その辺のところを県土整備部長もよくよく勘案をしていただきたいなと、これは要望しておきます。
 それに伴って、今、太陽光発電、県下の県立学校17校、それから市町村で38校導入をしていただきました。
 こういう補正でどんと積んでくれたんですけれども、こういう社会的にも意義があって、なおかつ教育的にも非常に大きな目的を達成できる、そして国民の皆さん方からも支持を得られることが確実な予算については、積極的にこれをとりにいってほしいなと思っておりました。
 私、途中で、「こんな導入どうなってますか」とお聞きしたときに、ある市町村については余りとりにいってないようなところが見受けられまして、「これ何で」というふうに聞きに行ったことがあるんです。そうすると、設計が間に合わんとか、そういう理由でありましたけれども、せっかくそれだけのお金──これ、補助率が非常に高いですから、ほとんど地元負担率がないわけでありまして、こういう予算があれば目を光らしてばっととりに行っていただく。教育委員会も、もっともっと働きかけていただいて、どんどんと和歌山にそういう意味のあるお金についてはとってきていただきたいなと、そのように思います。
 それから、栄養教諭。この意義については教育長もよく把握されていることと思いますが、今御答弁をいただきましたところによると10名配置をしていただいているようであります。
 この10名というのが多いか少ないかということについては、いろんな意見がありまして、全国的な数字を見ますと、必ずしも多いとも言えない。私は、もうちょっとこれをふやしていただいてもいいのではないかと思うんですが、恐らく教育長も内心ではそういうふうに思っておられるのかもしれませんが、これは財政との兼ね合いがございまして、いろいろと御配慮をされているのかもしれません。しかし、財政的事情が許すならば、食育というのは極めて子供たちにとって大切なものでありますから、ぜひこの増員をお考えいただければと思っております。
 以上要望して、質問を終わります。
○議長(冨安民浩君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で尾崎太郎君の質問が終了いたしました。

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