平成20年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(松坂英樹議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後1時1分再開
○副議長(山田正彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番松坂英樹君。
  〔松坂英樹君、登壇〕(拍手)
○松坂英樹君 通告に従い、早速一般質問に入らせていただきます。
 まず初めに、県内小中学校の耐震化についてお伺いをいたします。
 中国四川省の大地震を節目にして、全国的にも、また県民にとっても、この学校施設の耐震化が地域の大きな関心事となってきています。学校施設は、子供たちの命に直接かかわる施設というだけでなく、地域の防災拠点としての機能を持った施設であることから、県民全体の課題であるのは言うまでもありません。
 6月には、国会において超党派での法改正が実現し、改正地震防災対策特別措置法では、倒壊の危険性が高い校舎の耐震改修や改築の補助がかさ上げされました。5年間で学校施設の耐震化を計画していた教育振興基本計画のスピードを上げて、危険性の高い校舎については3年間で対応を完了させようというのが国挙げての取り組みとなっています。
 さきの議会でも、県内学校施設の耐震化の問題が取り上げられました。教育長答弁によると、県立学校については耐震診断100%、耐震化率は86.7%です。一方、小中学校では耐震診断95.3%ですが、耐震化率は60.9%でした。耐震診断が、子供が利用しない施設や改築計画中のものなどを除くと、抜かりなく耐震診断されているという状況は評価できる点です。
 報告された県内学校施設の耐震化状況を詳しく見てみると、県立学校の耐震化が順調に進んでいる一方で、県内市町村の小中学校の耐震化率は全国平均より低い数値となっているとともに、市町村別の数値と取り組み状況にはかなりのアンバランスがあるんではないかと思っています。順調にこの計画を、対策を進めている市町村となかなか進まない市町村では、この差が開く一方だという状況になってはいないかと思うわけです。このままでは一層差が開きます。わずか数年の間で耐震化を飛躍的に高めようと思えば、進まないところがなぜ進まないのか、どうやってここのところを進めるのかがかぎとなる、こういう思いで今回の質問をさせていただきたいと思います。
 まず、第1の質問の観点は、県内の状況を見ると、市町村の耐震化計画が年度別に具体的に計画されているところが少ないのではないかという点です。5年間で耐震化を進めますと教育振興基本計画でなっていても、来年どこをやって次の年はここまでといって、こういう具体的な計画、年次的な計画がなければ絵にかいたもちとなってしまいます。県内小中学校の耐震化状況と市町村の年次計画について、現状をどう認識しているのか、また、耐震化計画を進める上でどこに問題点があると考えているのか、まずこの点を教育長にお尋ねをいたします。
 次に、耐震性のない危険な施設への対応について質問をさせていただきます。
 私は、今回の質問に当たり、昭和56年以前に建築された学校施設に焦点を当てて調査を行いました。先ほどの耐震化の数字、約60%と申し上げましたが、これは新しい施設も古い施設も一緒にした総合的な耐震化率なんですね。建築基準法が改正された昭和57年以降の建物は、構造上は耐震性が確保されているという考えですから、耐震工事のいわば対象から外れるわけです。昭和57年以降の新しい施設が比較的多い市町村というのは、初めから耐震化率が高いわけで、スタート台が違うんです。要は、昭和56年以前に建築された施設にどう取り組んできたか、そして進んでいないのなら何がネックになっているか、そして、それを進ませようとすれば何が必要か、これを議論することが大事だと考えたわけです。
 議場に配付している資料をごらんいただきながらお聞きいただきたいというふうに思います。(資料を示す)
 県内小中学校全体の施設数は、合計1437棟となっています。このうち耐震強度があるとされている昭和57年度以降の建物542棟を除くと、昭和56年以前のこの施設は、表にありますように895棟ということになります。今回、調査をいたしてみますと、この895棟のうち、耐震化済みのものが333棟でした。この内訳は、診断の結果、十分強度があって耐震化工事の必要がないもの、これが123棟、また、既に耐震化工事が完了したものが210棟です。これに加えまして、子供がこれから先、利用しない施設や改築予定施設等が耐震診断未実施と、こういうふうになっており、県内全体で42棟あります。これも耐震工事から外して考えることができると思います。この結果、耐震化されていない施設、耐震化が必要な施設の合計、これは、ここにありますように520棟ということになります。
 このピンクの欄に、各市町村別に未耐震化棟数と、それからその耐震化率が一欄表となっています。この欄の耐震化率は、言いかえれば耐震改修の進捗率であり、全体の耐震化率とは違った角度で大変参考になる数値です。ただ、お断りしておきますが、老朽校舎を新しく改築して耐震化もクリアしたところはこの数字にはあらわれてこないわけでして、その努力は別にされていることを申し添えておきます。
 さて、問題はこの520棟なんですね。市町村別にもお示ししたこの棟数を1つ1つ耐震化していかなければならないわけです。この中には、特に耐震強度の著しく低い施設があります。構造耐震指標、Is値と呼ばれておりますが、このIs値が0.3未満のものは、大規模地震、つまり震度6強で倒壊する危険性が高いというふうな施設とされています。改正された法律では、この施設に対する対策の緊急性、前倒しを図るために、補強工事をする改修、そして建てかえる改築、ともに国庫補助率がかさ上げされたのです。そして、この危険性の高い施設以外は──これは倒壊の危険性がある建物と呼ばれていますが──耐震性がなくて耐震化が必要とされていることには何ら変わりはありません。
 そこで、教育長にお尋ねをいたします。
 この耐震性が確保されていない県内520棟の施設のうち、耐震化が急がれる施設、Is値が0.3未満の倒壊の危険性が高い施設は何棟あるというふうに認識されているでしょうか。また、残り、Is値が0.3以上あるが耐震基準に満たない倒壊の危険性がある施設は何棟になりますか。また、それぞれにはどういった手だてが考えられているのか、御答弁を願いたいと思います。
 3点目に、耐震診断の問題についてお尋ねをいたします。
 私は、この昭和56年以前の施設への対応を調査してみて、耐震化事業の今後のかぎを握るのは耐震診断の部分だというふうに考えました。耐震診断には1次診断と2次診断がありまして、1次診断は構造的な強度を推しはかる基本的な診断なんですけども、その図面をもとにした比較的簡単なものであるのに対し、2次診断は本格的に校舎をくりぬいて構造物を検査するという違いがあります。2次診断では、文科省の補助制度とともに、国交省が持っている3分の1補助の制度も約半数の市町村で活用をされています。
 ところが、今度は、資料の黄色い欄をごらんいただくとわかるように(資料を示す)、先ほどの520の施設のうち、まだ1次診断しかやっていない施設、この施設が228もあるわけなんですね。そして、市町村別に、特に仕分けて見ていただくと、耐震化の方向性の定まらない自治体は、耐震化の工事はもとより、診断のほうも2次診断が進んでいない、こういう状況があるというふうに見てとれると思います。
 ここで大事な点は、先ほど言った国の新しいかさ上げ補助事業に乗ろうにも、この2次診断の数字がちゃんと出されていないとその補助事業を申請できないんですね。また、危険性が高い施設から順序立てて冷静に計画的に耐震化を図っていこうにも、2次診断の正確な数字なしには私は進まないというふうに思っています。ですから、文字どおり実際に耐震化事業にかかろうとすれば、ことし、来年のうちにこの2次診断をどう飛躍的に具体化するかがかぎではないでしょうか。2次診断を進める上で、県教育委員会として何が必要で、どうしなければならないと考えているのか、教育長の答弁を求めるものです。
 次、4点目に、耐震診断結果の公表の問題で質問をさせていただきます。
 今回、国の改正された地震防災対策特別措置法では、耐震診断の実施と、それから結果公表、この2つが法的にきちんと義務づけをされました。うちの子供の通う学校は本当に大丈夫か、こういう親や地域の不安にできるだけ正確にこたえ、今後の対策を危険度の高いところから合理的に進めていく上で、まず情報を公開し、明らかにする必要があります。また、ここ数年先の市町村事業の中で学校耐震化が相対的重点になり得るかどうかは、危険度情報の共有、透明化による住民の世論や意識にかかっているという点でも大変重要な問題だと考えます。
 県立学校施設の耐震診断結果公表はもちろんですが、市町村が速やかに耐震診断結果を公表するよう、県教育委員会としても指導すべきだと思いますが、この点についても教育長からお考えをお聞きしたいと思います。
 さて、今後、この和歌山県内の耐震化率を上げ、子供の命を守るためには、県内小中学校の設置者である市町村の努力、これはもちろん第一義的に重要です。しかし、耐用年数も見据えながら10年、20年かけて順次進めていくというなら、これは市町村の財政力で可能なんですけれども、短期的に集中して耐震化をやり切ろうと思えば、財政的な困難が伴います。義務教育の学校施設である以上、国の財政措置がどうしても必要だというふうに私は考えます。ところが、これまでの国の耐震化予算のつきぐあいでは、20年以上もかかってしまう、こういうふうに計算されてました。しかし、今回の補助かさ上げと連動しまして、来年度予算に対する文部科学省の概算要求では、耐震化予算が前年度比71.3%増、1801億円が計上されました。
 市町村の事業化を進めるためには、全国市長会も要望しているように、国レベルでのさらなる補助拡大が必要であり、国に対して強く働きかけるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 また、今回、国の補助かさ上げに含まれなかったIs値0.3から0.7までの施設、これは危険性が高くて緊急性がある施設には含まれなかったもんですけれども、耐震性が確保されていなくて耐震化工事が必ず必要な施設です。3年間、この0.3未満の施設のほうばっかりに目がいってしまっては、教育振興基本計画の残りの2年でこれらを対策できるわけがありません。ここへの計画的な対応、耐震診断の促進策、これも重要になります。そのためには、県独自の補助制度も私は検討する必要があると思います。先進県だった静岡県、それから続いて福井県、そして高知県などの県に続いて、香川、それから徳島でも県独自の支援策を始め、これは広がってきています。
 特に、先月8月に発表された徳島県の例などは、私、大変参考になると考えています。1つ目の特徴は、Is値が0.3から0.7までの施設に注目をし、国が支援できていない分を県と国が一体となって市町村を支援しようと言ってる、そういう制度です。これには道理があります。そして、2つ目の特徴は、市町村の単年度負担を軽減しようという発想だということです。耐震補強費用は、かさ上げ対象外の施設は国補助が2分の1で、残りの2分の1の施設は市町村負担なんですね。その市町村負担の75%は起債が充当できます。平たく言うと、ローンが組めるわけなんです。でも、残りの25%は単年度負担となって、手元の現金、キャッシュが要るわけなんですね。その単年度負担の7割を県の市町村振興資金で無利子貸し付けを徳島はやります。こうすれば、単年度負担は補助かさ上げの事業並みに改善をされます。さらに、その資金の償還が始まる3年後には、償還額の7割を補助して市町村の負担を軽くしてあげましょうという仕組みなんですね。
 それから、高知県の県単制度は、このIs値0.3から0.7の施設に対し、これは改修経費の6分の1を補助します。耐震診断にも補助があります。
 こういった県独自制度というのは、耐震改修が必要な施設の数をたくさん抱えている自治体とか、財政的に困難を抱えている自治体にはとってもいい制度、かゆいところに手が届く制度ではないでしょうか。もちろん、これですべて救われるわけではありませんが、問題の焦点を絞って県が支援する部分をつくったということは、市町村にとって大変励ましになるというふうに思います。
 私は、07年2月議会でも、学校耐震化のための県の補助制度創設を質問いたしましたが、当時は前向きな答弁はありませんでした。今こそ国や市町村とともに、県内小中学校耐震化促進のために、和歌山県としての補助制度に一歩踏み出すべきではないでしょうか。教育長の御答弁、お願いいたします。
 学校耐震化問題の最後に、知事に対しても質問をさせていただきます。
 耐震化事業そのものは教育委員会の仕事であるわけですが、県内市町村の中で耐震化が進まない大きな理由の問題の1つが市町村の財政的理由であるならば、市町村の財政そのものへの支援、県との連携というものが必要ではないかと考えて、あえて知事にもお伺いをするものです。
 市町村にとって、実は学校施設の改築や補強というのは大変頭の痛い問題です。なぜなら、一般的な施設とか道路とかという公共事業と比べて補助率とか起債の充当率が低いために、市町村の持ち出しの部分が大きい、単年度負担が重いという特徴があります。
 例を挙げますと、有田川町の田殿小学校、最近建てかえた学校です。知事も、農免道路の開通式典で、あのときにおいでいただいた学校です。学校本体の事業費が8億円──校舎だけですよ──かかったそうです。しかし、文部科学省の補助対象の基準が低いために、そのうち5億円余りしか補助対象とはならなかった。補助というのは、その補助対象の3分の1ですから、結局国から来たお金は2億円にもならなかったわけなんですね。学校建設には校舎だけでは済みません。旧施設の撤去費用、体育館、プール、グラウンドの拡張、さまざまなことが絡んできます。この間の竣工式の会場となった集会所の施設なんていうのは、もちろん地域との交流施設ですから別会計ということになっています。市町村の持ち出しが本当に大きいんですね。
 ですから、市町村は、築40年、50年たっている校舎を今さら補強するのか、それともいっそ改築するのか、悩んでおります。もちろん、児童数減少による将来計画もあるでしょう。しかし、この先必ずやってくるであろう大地震に対して、それまで待つわけにはいかないというのが世論の声であり、改正された法の趣旨でもあります。
 市町村教育委員会とともに悩んでいる市町村当局に対しても、十分に要望を聞き、相談に乗る必要があるのではないでしょうか。財政負担軽減のため、市町村振興資金の活用や起債の充当率を上げる制度など、単年度負担を減らすための制度などの財政的援助や支援がどうしても必要じゃないでしょうか。県民の安心・安全の確保という観点から、国、県、市町村、教育委員会など、関係方面が連携して有効な手だてができるよう働きかけるべきだと考えますが、知事のお考えをお示しいただきたいと思います。
 次に、2つ目の柱となる鳥獣被害対策について質問に移らせていただきます。
 今回の質問に際して、地元の被害実態と対策事業の現場を調査に回らせていただきました。有田川町の吉見地区、岩野河地区、湯浅町の山田地区、広川町柳瀬地区などに伺いましたが、極わせミカンの出荷を前に猿の被害で、まだ青いミカンがいっぱい、木の上で、また木の下で食べ散らかされています。赤く色づくころにはどうなることかと頭を抱えておられました。また、畑の中にはイノシシの通り道あり、遊び場あり、あちこちにふんも見られて、お手上げ状態です。シカの被害も広がってるようです。
 踏み荒らされた田んぼも御案内いただきました。この地域では、猿よけのビニールハウスならぬ金網ハウスというのがたくさんあります。金網のおりの中に人間が入って──動物園と逆なんですが──その中で農業をしないと、もう何も作り物できへんという状態です。また、防護さくで対応した地区の被害は減っているものの、今度はそのお隣の地域、下の地域に被害が出てきているという状況でした。
 イノシシやシカについては被害地域の拡大が見られ、猿については駆除が進まないために個体数がふえているという声が出されています。また、住民の方は、直接農産物への被害金額にはあらわれてこないものの、自家消費用の野菜とかをことごとく収穫直前、前の日とか前の前の日とかにやられてしまうと、金銭面というよりも精神面でのショックが大きい、そんなふうに地域の方々はおっしゃってました。つい1月前には、国道480号、有田川町内で、飛び出してきた猿をよけようとした自家用車がガードレールを突き破って有田川に転落、ドクターヘリの出動する大きな交通事故も起こりました。
 この鳥獣被害に対して有効な手だてが打てず、自然環境や生態系のゆがみを放置するならば、いわゆる限界集落を初め、県内のすぐれた自然環境や水資源を保全管理している山間部に耕作放棄地がふえ、暮らしが立ち行かない状況が一層進むことになることから、この農林水産業としてだけでなく、地域政策としても重大な課題だと考えます。
 さて、このような状況の中ですが、鳥獣被害対策については、昨年の12月の国会において鳥獣被害防止特別措置法が可決・成立し、国の予算額も、これまでの1.9億円から28億円へと、10倍以上の位置づけがされました。この特別措置法では、市町村の協議会が実施主体となって、そこが計画、実施する事業に、ハード事業では2分の1の補助、ソフト事業では200万円を上限に10割交付されるという有利な中身になっています。私は、今回の特別措置法が野生動物の生態保護を十分に踏まえながらも、被害対策として積極的に活用される必要があると考えます。
 ところが、この特別措置法に基づく県内市町村の本年度取り組み状況を調べてみると、事業の前提条件となる市町村被害防止計画を持ったところは、わずか3分の1であります。ソフト事業に今年度手を挙げているのも3分の1の自治体、ハード事業に至ってはゼロという実態だというふうに聞いています。
 今回の特別措置法では、こんなふうにうたってるんですね。「被害の現場に最も近く、対策に苦慮している市町村が迅速に防止策に取り組めるようにしたもの」、こういうふれ込みでしたが、実態はそうはなっていません。幾ら始まって間もない法律と事業だとはいえ、もっと積極的に活用されていいはずなのにと考えます。
 そこで、お尋ねしますが、まず県内の鳥獣被害の現状と対策について県の認識を伺います。これまで国事業、県単事業、市町村単独事業と、それぞれに取り組んできたわけですが、被害状況はどう推移しているのか、どういう問題意識を持っているのか、御答弁を願います。
 次に、この鳥獣被害防止特別措置法、これに基づく事業について、もう少しお伺いをいたします。
 まず1つ目には、県内の市町村の取り組み状況、一体どうなっているのか。なぜ先ほど言ったような状況になっているのかをお尋ねします。
 私は、今回の質問に当たり、直接この事業を担当する郡内3市町村の担当職員、市町村職員を訪ねて、意見や要望を伺ってきました。そこで出された声というと、これは一言でいうと、国の事業はどうにも使い勝手が悪い、こういうことでした。例えば、国の補助事業ですから、費用対効果を厳密に計算することが要求をされるというんですね。防護さくやおりを設置するにも、例えば、被害地の1反当たりの収量が設置前と設置後でどう変わって、何円収益が上がったのかと。そして、さくの費用を耐用年数で割って出した1年当たりの単価と比べて、その費用対効果が1.0以上でないとだめだ、こう言うんですね。
 一般的な公共事業や土木事業では当たり前なんですけども、この一般的な費用対効果の考え方、これを、試行錯誤もあり、収量や単価など数字にしにくい鳥獣被害対策の事業に機械的に当てはめるのはいかがなものでしょうか。
 また、耐用年数なんかについても結構気になるようです。これまでの対策は、事業費や規模に応じて国の事業、県の事業、市町村事業と使い分けてきましたけども、こういった時代から、これからは市町村が計画的な、面的な整備の計画を持って、それに当てはまるものであれば事業化できると、市町村が使いやすいようになると、そういう市町村の取り組みを国が2分の1財政的に負担して応援する、このことが文字どおりできるようになれば、現地に合わせた創意工夫とか、身の丈に合った事業計画、地域的な連携や協力というものがうんと進むと考えます。
 いずれにしろ、使いにくい事業は幾らあってもだめなので、いかに使いやすくするか、使えるようにどう援助するか、このことが重要になってくると思います。この特別措置法に基づく事業を、県民、市町村が使いやすいよう、活用しやすいよう県の支援を強めるべきではないか、この2点についてお答えを願います。
 最後に、実態調査など、市町村をまたがって広域的に取り組む必要のある事業について伺います。
 先日、県の鳥獣被害対策研修会というのが有田川町で開かれ、私もお話を伺いました。特に印象的だったのが、イノシシにしろ、シカにしろ、猿にしろ、その生態をよくつかんだ対策をすることが大事だというお話でした。
 以前、有田川町岩野河地区の猿の被害対策で、県や町の職員さんらとともに地域の声や要望を聞かせていただきました。猿の被害も個体数もふえている、鉄砲で駆除するのも困難、おりなどで猿を捕獲してほしい、そのためにも猿の生息実態調査をやってほしい、こういった要望が地域から出されました。しかし、その当時は、被害があれば連絡を受けて猟友会に連絡し有害駆除をすると、そういう域を出なかったんですね。県としても、生態調査の必要性を強く感じながらも、その予算があれば、急務である防護さくの設置など、被害対策のほうにその予算を回さざるを得ないという、そういう当時の事情もあったんだというふうに思います。
 猿被害への対策は、むやみな駆除をすると、かえって群れの分割によって被害地域を拡大する、そんなことも先日の研修会で専門家から指摘をされていました。威嚇とか銃による捕獲には限界があり、山田山を中心に有田川町、湯浅町、広川町にまたがって出没するこの猿被害に対応するには、モンキードッグなどを活用した追い払いとか、一定の生息実態調査など、それから、おりなどによる捕獲が必要でないかと考えます。
 今回のこの特別措置法のソフト事業というのは、こういった追い払いとか調査事業も対象となっているわけで、これまでにない対策が可能だというふうに期待をしております。この機会に広域的な調査事業をぜひ検討すべきだと提案をします。
 これらを踏まえてお尋ねするわけですが、こういった市町村をまたがる広域的な被害対策への対応が今後より一層求められると考えますが、いかがお考えか、答弁を願います。市町村や地域協議会とよく相談する機会を設け、市町村をまたがる事業について県として積極的な役割を発揮すべきだと考えますが、いかがでしょうか。これら鳥獣被害対策については、すべて農林水産部長に答弁をお願いいたします。
 以上で、私の第1回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(山田正彦君) ただいまの松坂英樹君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 松坂議員の県内小中学校耐震化についての一連の御質問中、最後の知事に対する質問ということで、そこだけお答えさしていただきます。
 議員御指摘の小中学校施設の耐震対策につきましては、これは大変大事な話だと思っておりまして、学校施設は児童生徒が1日の大半を過ごすところでございます。安心して学べる環境づくりというのは防災対策上極めて重要ということは、そのとおりだと思います。
 国においても、御指摘にもありましたが、本年6月の地震防災対策特別措置法の改正によりまして国庫補助率がかさ上げされておりますし、また、安心実現のための緊急総合対策の一環として耐震対策が拡充される見通しであります。かなり大幅な予算措置がされると聞いております。小中学校施設の設置者である市町村が耐震化を実施する場合には、このような国の補助制度を活用して、できるだけ早期に100%の水準に達していただきたいと、こんなふうに思っている次第であります。
 しからば、そういう達する前に何らかの形で県が、例えば肩がわりをするとか、そういうことがいいことかどうかということについてでございますが、2つのことを考えないといけない。1つは、既に今までのルールに従って頑張っておられる市町村という存在も考えておかなきゃいけないし、一方、そういう行政のディシプリンだけで差し迫っている危機というのに対して子供をどう考えるかという議論も、一方では考えないといけないと考えております。
 したがって、県としては、市町村に対して、こういう国の施策をできるだけ利用して早期にやっていこうよというような働きかけをするということは大事であると思いますし、また、それによって、御指摘のような単年度負担の問題が解消されないということであれば、これは実は振興資金というんですが、県の貸付制度を実は拡充して備えております。これは別にこのためだけに使えるわけではございませんが。したがって、こういうものも相談に応じて使っていただくということによって、先ほど先進県と言われたような県と同じような実行的な措置ができるものだと考えております。
 県といたしましては、こういうようなさまざまな方策を利用して、結果として100%、早く子供たちの安全が守れるようなところに持っていきたいと、こんなふうに考えてる次第でございます。
○副議長(山田正彦君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 鳥獣被害対策に関して3点の御質問でございますけれども、一括してお答えをさしていただきたいと思います。
 本県におきます鳥獣被害の現状と対策についてでございますが、近年の農作物被害につきましては、約3億円程度で推移をしてございます。このことにつきましては、農家を初めといたしまして市町村等の取り組みあるいはまた努力等によりまして被害額の上昇を食いとめているという状況じゃないかというふうに考えてございます。
 鳥獣被害につきましては、先ほどお話ございましたように、生産意欲の低下を初めといたしまして、耕作放棄地の増加、また集落の過疎化など、大きな重大な課題であるというふうに認識をいたしてございます。そのため、県といたしましては、本年4月より狩猟、また有害捕獲に関する窓口を農林水産部のほうへ移管をいたしまして農作物被害防止を重点に取り組むとともに、防護さくや捕獲おりの設置への助成、また人材育成といったこれまでの被害防止対策を拡充いたしまして、有害の捕獲と一体化をいたしました農作物鳥獣害対策強化事業を立ち上げまして総合施策として実施をしているところでございます。
 議員のお話のございました鳥獣被害防止特別措置法、いわゆる特措法につきましては、鳥獣被害が全国的な広がりを見せる中で、地域の実情をよく知る市町村が主体となって対策に取り組めるよう、国において議員立法として本年2月に施行されたところでございます。これを受けまして、既に県内の13市町で被害防止計画が策定されてございまして、そのうち10市町が国庫事業を申請いたして、モンキードッグによる猿の追い払い活動、また刈り払いによる山際の緩衝帯の設置、それから広域でイノシシの生息調査などに取り組む市町村もございます。さらに、本年度中には9市町が新たに取り組むこととなってございまして、その結果、被害防止計画を策定する市町は22と7割を超えまして、全国的に見ても高くなるというふうに考えてございます。
 一方、これに伴うハード事業につきましては、特措法の制定が2月ということもございまして、時間的制約の中で実施体制の整備、あるいは計画策定等に時間を要したこともございまして、全国的にも応募件数が少ない現状にあるというふうに聞いてございます。
 今後、県といたしましては、ハード事業の採択要件が従来より大幅に緩和されてございますので、地域の実態に即して事業が実施できますよう、より一層制度の周知徹底と事業のPRを図ってまいりたいと考えてございます。
 いずれにいたしましても、野生鳥獣の行動につきましては広範囲に及ぶということから、市町村あるいはその地域協議会と連携を図りまして、特措法に基づく国庫事業を有効に活用いたしまして、生息実態の把握を初め、追い払いや捕獲などの総合的な対策として取り組んでいきたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(山田正彦君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 県内小中学校の耐震化についてお答えいたします。
 学校施設は、児童生徒の命を預かっている場であるとともに、災害発生時には地域住民の緊急避難場所としての役割をも果たすことから、その安全性の確保は極めて重要なことと考えてございます。
 耐震診断の実施状況は、平成20年4月1日現在、小中学校で実施率95.3%となり、実施済み全棟数520棟のうち、まだ228棟が耐震2次診断を実施しておりません。現時点での診断結果では、Is値0.3未満の倒壊の危険性が高い建物が約100棟、残り420棟が倒壊の危険がある建物と判断されております。
 なお、耐震化率につきましては全国1位の伸び率となりまして、対前年7.7%増の60.9%となってございます。
 学校施設の耐震化につきましては、それぞれの市町村において耐震2次診断や補強工事の予定を定めました耐震化年次計画を策定をし、これに基づいて耐震化を実施しているところでございます。市町村によっては、平成25年度になっても耐震2次診断すら実施できない状況のところもございまして、その原因としては、財政的事情に加えて、小中学校の統廃合等の問題が関係しているところもあると考えられます。
 議員御指摘の耐震2次診断の早期実施は、耐震化年次計画を策定する際に校舎等の耐震性能をより正確に把握する必要があることから大変重要でありますので、積極的に当該市町村に働きかけてまいりたいと考えます。
 耐震診断の結果の公表につきましては、今回の法改正によりまして市町村に義務づけられたところでもあります。県立学校に関しましても公表をしてまいりたいと考えます。
 保護者や地域住民等への情報を提供することによりまして、学校施設の耐震化への関心と理解が高まり、より一層、耐震化が促進されるものと考えております。
 今後、耐震化をさらに加速させるためには、市町村における防災上の最優先課題として位置づけ、危機感を持って取り組んでいただくよう働きかけてまいりたいと考えます。
 国の補助制度につきましては、先ほど御指摘ありましたように、ことし6月に地震防災対策特別措置法が改正され、大規模な地震により倒壊等の危険性が高い公立小中学校施設の耐震化を図る場合、耐震補強では従来の国庫補助率を2分の1から3分の2に、また、改築の場合は3分の1から2分の1とする支援策が講じられまして、従来に比べ大幅に市町村の財政負担が軽減されることになりましたので、これを生かして耐震化を促すとともに、引き続き補助制度の拡充を国に要望してまいりたいと存じます。
 県独自の補助制度の創設につきましては、御紹介のあった事例などを研究させていただきたいと考えますが、限られた予算の中で県立学校の耐震化を完了させるということを最優先の課題として推進しているところでございますので、今のところ大変難しい状況にあることを御理解いただき、計画される市町村におきましては、先ほど知事の御説明にありましたように、さまざまな制度の活用を含め、御検討いただければというふうに考えております。
 以上でございます。
○副議長(山田正彦君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(山田正彦君) 再質問を許します。
 42番松坂英樹君。
○松坂英樹君 御答弁をいただきました。
 まず、小中学校の耐震化の問題で再質問をさせていただきます。
 小中学校の耐震化をするために、これは県としても支援策が必要な段階だというふうに今回質問を求めたことに対して、知事のほうにも答弁を求めたわけですが、国の制度の活用などしてもらおうというスタンスだという答弁がありました。加えて、その市町村振興資金も活用できるから、これ、ぜひやってほしいという答弁もあったように思います。ぜひ知事にも市町村の相談に乗っていただいて総合的な支援をしていただきたいと、これはお願いをしておきたいというふうに思います。
 再質問は、県としての耐震化補助制度を求めるという項目で、教育長にお尋ねをしたいというふうに思います。
 今回の質問に対する答弁で、Is値が0.3未満の施設が約100棟あるということが初めて明らかになりました。県内に約100棟もあるのかという、正面から向き合わなければならない数字なんです。そして同時に、裏返して言えば、残りの400棟は国の補助かさ上げの対象外にされてしまっているということでもあると思うんですね。ここが後回しにされないようにしなければならない。このことを強調したいというふうに思います。
 また、教育長からは、耐震化についてはまず耐震診断が最優先だというその認識、そして、耐震診断結果については公表の義務化ということがはっきりと示されました。今後、だれでも市町村に問い合わせれば回答を得られることになりますが、この学校耐震化の問題は、親や地域のまさに関心の的となっています。地域と学校関係者が力を合わせて子供の命を守る方向で、この数値公表を機に取り組みをうんと進めていただきたいと願うものであります。
 私は、今回の質問で、昨年に続いて学校耐震化に向けた県単独の補助制度が必要ではないかと提案をさせていただいたわけですが、これについては、教育長からは、限られた予算、それからまず県立学校の耐震化の完了を目指すということで、大変難しいという御答弁だったと思います。食い下がるようで恐縮ですが、この問題、何としても進めていただきたいというふうに思うんですね。
 教育委員会が市町村教育委員会に対して熱心にアドバイスしていることも承知しています。そして、市町村に言うからには、まずみずから県立学校の耐震化も進めて模範を示しているということも評価しているものです。しかし、目を三角にして「頑張れ、頑張れ」と言うだけでは動けないのが市町村の実態です。財政難であえぐ自治体に対し国の財政措置、補助が少ないために、自治体の財政事情によって大きな安全の格差というのが生まれようとしているんです。財政的余裕のある町はできて、余裕のない町はできない。子供の命にこういう安全格差は許されないというふうに思うんです。
 国は、危険校舎1万棟、0.3以下しか視野に入っていない。市町村は目の前の校舎と財政とにらめっこを続けている。この間に入ってさきの520棟という具体的な和歌山の目標に責任を持つのは、私は県教育委員会で、そういうふうに思います。県内のこの取り組みの中に、市町村の学校数であるとか施設の状況であるとか財政状況だとか、いろんな理由によってアンバランスがあるときに市町村の課題とか状況をよく理解しながら手を差し伸べる、私、それが県としての存在価値だというふうに思うんです。
 いま一度、教育長にお尋ねをいたしますが、補助制度は困難だという答弁でありましたが、一遍に耐震補強補助制度創設が困難であるなら、耐震診断の補助からでも例えばスタートできないのでしょうか。また、県立学校の耐震化のほうが100%に近づいてきている中で、これが完了してから、終わってから考えるというんじゃなくて、その進捗や着地点を見据えながら市町村にも少しずつ支援できないか。そういったことも考えておられないんでしょうか。こういったいろんな工夫が教育委員会の中で検討されているんでしょうか。現段階では困難だとおっしゃるその議論の中身、もう少しお示しもいただきながら、率直な御答弁いただけたらというふうに思います。よろしくお願いいたします。
 それから、鳥獣害対策では簡潔に要望だけさせていただきます。
 ソフト事業では、猿を追い払うモンキードッグの事業とか広域的なイノシシの実態調査など創意工夫が生まれているのは、頑張ってくれていると評価をしているんです。その上に立って、何度も申し上げるようですが、使いにくい制度は幾らあってもだめなので、市町村と連携をとりながら県としての支援を強めてしっかりと取り組んでいただけるよう強く要望しておきます。
 以上で、第2問を終わります。
○副議長(山田正彦君) 以上の再質問に対する答弁を求めます。
 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 再質問にお答えしたいと思います。
 議員御指摘の点は重々よく理解ができますし、私としてもいいお答えをしたいのはやまやまでございますけれども、何分にも教育委員会という立場を御理解いただきまして、私ども担当者のほうも、これを何とかしたいということで苦しみ、もがいているのが実情でございますので、私どもとしては引き続きもがき続けたいというふうに考えますので、御理解いただきたいと思います。
○副議長(山田正彦君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(山田正彦君) 再々質問を許します。
 42番松坂英樹君。
○松坂英樹君 教育長から率直な御答弁いただきました。何とかしたいと、もがき続けたいという決意だったと思います。
 私は、今からでも、県教育委員会として繰り返しその検討を続けていただきたいと思います。来年度予算に向けて一歩でも半歩でも進めていただくよう積極的に検討し、財政当局にも予算要求をしていただきたい。そして、教育の現状の予算枠の中にとどまることなく、別枠での予算を求めるぐらいのそういうことが要ると思います。ぜひこの学校耐震化、安全の格差を生まないように強く要望いたしまして、今回の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○副議長(山田正彦君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で松坂英樹君の質問が終わりました。

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