平成20年6月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(長坂隆司議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前10時1分開議
○議長(中村裕一君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第78号から議案第89号まで、並びに知事専決処分報告報第1号から報第8号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 36番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 おはようございます。議長のお許しをいただきました。以下、通告に従いまして一般質問を3点させていただきます。
 まず、1番目に海の森づくりについてであります。
 平成18年6月定例会において、被覆・消波ブロックによるいそ焼け対策、藻場の育成について一般質問させていただきました。平成18年度より県も海の森づくりプロジェクトパイロット事業として、防波堤などの整備を行う際に海藻の育成しやすいブロックなどを設置し、その育成状況を3年間追跡調査することにより藻場育成技術の検証を行うと答弁いただいております。
 今回もブロックを沈めた目良漁港近くの天神崎の自然を大切にする会の方にお世話になりまして、昨年1月の27日、同6月29日、同7月29日、そしてことし5月29日に水中撮影された写真を送付いただきました。(資料を示す)ここに、皆様にお示ししました2年前の4月から5月の写真とともに、4枚ずつピックアップしてお示しさせていただきました。
 拝見しますと、昨年1月末の写真では、一昨年4月から5月に繁茂していた海藻が、冬でも水温が高過ぎるからでしょうか、もっと生育しているはずと予想していたほど伸びておらず、貝やウニの付着がちらほらあるだけでありました。6月になっても、小魚は見られるものの、それも、ハゼ類以外に熱帯魚のような小魚が泳いでいるのが見られましたが、藻場と言えるようなものにはなっておらず、地球温暖化ゆえの海水温の上昇が原因しているのでしょうか。
 ことしになって5月31日撮影されたものによりますと、海藻は確かに多くはありませんが、魚や貝、ウニ、それにイソギンチャク、ナマコなどの生育はかなり進んでおり、黄色く綿のように盛り上がったものや、ケイトウの花のようにこんもり幾つも盛り上がった赤くて先が少し白くなっているものや、緑の同じような形状で先が花のように咲いた、サンゴの一種ではないかと思われるようなものが付着しているのが印象的でありました。
 地元の天神崎の自然を大切にする会の方のお話によれば、黄色いのはサンゴの一種、石灰質の骨格を持たないソフトコーラルの刺胞動物のウミトサカ、赤いのはオオトゲトサカ、緑のものは刺胞動物のウミキノコの仲間。いずれもソフトコーラルだそうです。魚も、ハゼの仲間、カワハギ、キタマクラ、ネンブツダイなどが写っておりました。
 目良漁港にブロックが沈められて3年目を迎えたわけですが、内海だと海水の循環がよくなくて、外海に面したところでないと海藻がよく育たないのか、海藻がついてもすぐウニや魚による食害があって生育できないのかと思ってもみましたが、被覆ブロックを沈める実験は各地で行われているようですが、実験の成果が果たしてあらわれていると言えるのか、もっと時間の経過が必要で、じっくり見守る必要があるのかと思いをめぐらしました。
 藻場は沿岸域における重要な1次生産の場であり、海の生き物の産卵場、魚介類の幼稚仔の生育場であります。アワビ、ウニ、サザエなどは海藻を食べて育ちますし、幼稚仔魚は藻場で身を隠しながら、そこにいる小動物を食べて育ちます。藻場は、陸上で言うと森のようなもので、地球の温暖化の原因となっている二酸化炭素を吸収したり富栄養化の原因物質である燐とか窒素を吸収したりするということで、海洋環境の浄化に役立っています。
 いそ焼けは、一般的には、藻場が衰退し海藻群落がなくなった場所に無節サンゴ藻がついて、ウニなどを除いて生物が見られなくなることであって、いそ焼けの多くは外界に面した海域で発生し、山陰地方を除くほとんどの海岸で起こっているようであります。
 いそ焼けの原因としては、1、水温、栄養素などの海況変動、2、台風、淡水の大量流入などの一時的な環境変化、3、植食動物による摂食、4、サンゴ藻などによる着生阻害、5、過剰な収穫、6、海水汚濁による透明度の悪化、7、埋め立てなどによる土砂の流入、8、工場からの排水、9、生活排水などからの界面活性剤の流入などが考えられ、これらが複合的に作用していると考えられます。
 また、山林に植生する木々の伐採を進めた結果、落ち葉の堆肥でできる腐植酸鉄が少なくなって、有用な藻類の成長に不可欠な鉄分(二価鉄)が減少したことも一因であると言われています。折しも、新日鉄が鉄鋼スラグを活用し、海藻類再生に取り組み、最近繁殖を確認したと6月10日付「日刊工業新聞」にも掲載されておりました。
 埋め立てについては、天神崎の自然を大切にする会の方も、生物群集にとっては死滅以外にない、最悪のごみ投棄だともおっしゃられていました。
 県外の藻場では、海の森づくりとしてさまざまな努力がなされています。壱岐東部漁協では、近年アワビやサザエなどの漁獲量が減少し、2003年度からマコンブ種糸100メートル運動を開始しています。最近になってアワビ及びウニの水揚げ量の増加も確認され、魚類の蝟集効果、魚つき林としての効果が出てきているようであります。
 長崎県大村市漁協では、夏冬の水温の寒暖の差が激しく、閉鎖性が強く、河川の流入により塩分濃度が薄くて、湾奥部では無酸素のヘドロの蓄積が進んでいます。ここでもコンブを養殖し、コンブが貝類の格好のえさになり、稚魚などの生育場としても役立っているようです。
 熊本県の天草市水産研究センターでは魚類養殖が盛んですが、その養殖から出されるえさが原因の過剰な燐や窒素を吸収させるという趣旨で、養殖漁場内にマコンブやワカメの栽培、そしてアワビの試験養殖を始められていますが、夏場、水温が上がるとマコンブが海中に溶け出してしまうのが課題であります。
 また、和歌山県のお向かいさん、徳島県阿南市の大潟漁協では、周辺は室戸阿南国定公園に指定され、古くから阿波の松島と呼ばれた景観地域で、昔繁茂していたアマモ林を呼び戻そうと平成13年から組合事業としてアマモ種まき活動を行い、また水質浄化に着目して2006年よりマコンブ養殖を行い、成功したそうです。しかし、大潟湾は干潟域であり、干潟域におけるマコンブ養殖は前例がなく、持続的な養殖にするため、さらなる養殖方法の検討が必要なようです。
 もう1つは、熊本県水俣市漁協でも、アワビの陸上養殖のえさに使用する海藻として、マコンブの種糸をブイに結びつけ、試験的な育成を行ってきました。マコンブは、海水温が20度以下になる12月から水温が20度を超える5月中旬まで成長を続けるそうです。3月から4月ごろにはマコンブは2メートルから3メートルに成長して、マコンブ周辺にアイナメ、メバルといった魚が数百匹も群れており、海藻の表面にはカイアシ類やヨコエビなどの多数の飼料生物が付着していたそうです。
 漁協では、海藻の重要性を再確認し、藻場として再生に取り組む構想を海藻の森づくりとして位置づけています。コンブだけでなく、ワカメ、ホンダワラ類などの地域にもともと生育している海藻もふやそうと、専門家の話も聞き、海面養殖だけでなく、いそへの海藻の育成の勉強も始めているそうです。
 そこで質問ですが、1つ目、海の森づくりプロジェクトパイロット事業の進捗状況はいかがですか。県土整備部長にお答えいただきます。
 2番目、全国各地で大型海藻コンブ養殖による海の森づくりの取り組みがなされ、成功事例もあるようですが、本県での取り組みについてはいかがでしょうか。農林水産部長、お願いいたします。
 3、コンブに限らずワカメや他の海藻も、ロープを垂らしておくだけで自然と生えてくるようです。ロープが多ければ多いほど、その一帯が海藻の森になるはずであります。そこが小魚、小生物の隠れ家となり、それをねらって大きな魚もやってくるでしょう。藻場を具体的に再生する試みとしてロープによる海藻の森漁礁をつくってみてはいかがでしょうか。現在の本県における海藻栽培の現状、例えば品種、分布、特性、栽培技術、品種改良の現状などとあわせて、農林水産部長、お答えください。
 4、よく湯浅、広川方面から船釣りに出かけますと、1時間ほど沖合に沈船のポイントがあり、好漁場になっています。以前、和歌山市内から海南市にかけて南海和歌山軌道線、通称市電が通っておりまして、昭和46年に廃止されましたが、廃線後、一部の車両は車体を人工漁礁として利用するために海中に沈められたと聞いております。どのような効果があったのか、現在も活用されているのか、その後話題にも上らなくなりましたが、こんな取り組みもおもしろいのではないかと思います。機会があったら調べておいてください。要望にとどめます。
 2番目、食品加工戦略についてであります。
 1番目、本年4月1日より県工業技術センター内のもとの生活産業部食品工学担当が食品開発室となり、ソフト・ハード両面で充実していただきました。ぜひ和歌山県の企業が、研究者が、実りある研究のために食品開発室を活用いただいて本県の産業振興に貢献いただければと願うばかりであります。
 さて、平成19年9月定例会で、食品加工において企画、商工と農林の垣根を越えた取り組みを実践してほしいという私の質問に、知事は、県庁ではヘッドクオーター制をつくって、特定の責任者をヘッドクオーターにして、それで横の連絡をとらせるようにしていると答弁いただきました。地域産業活性化のため、食品加工を重点分野5つのうちの1つととらえていただき、本年5月21日付で食品加工に係るヘッドクオーターを設置いただきました。ヘッドクオーター、すなわち食品加工における特命司令官に農林水産政策局長を任命され、食品加工に係る関係施策について組織横断的に関係課を統括いただくことになりました。従来の縦割りではなく、横断的にスピーディーに重要施策を立案、実行いただけるものとして期待を寄せるものであります。
 そこで質問ですが、この食品加工におけるヘッドクオーター制は、具体的にどういう組織立てで、どんな役割を担い、どんな権限を持ち、どんな目標を掲げ、どのように県庁内各課のみならず県内試験研究機関、大学等高等教育機関、そして企業と連携を図っていかれるのか教えてください。知事にお伺いいたします。
 2番目、文部科学省は、資源の有効活用や教育水準向上を目的として、複数の大学が教員や施設を出し合って授業を行い、各大学連名の学位を授与する共同学部、共同大学院をつくれるよう、大学設置基準を改正する検討を平成19年度より始めています。文部科学省は、複数大学で先端分野の高度な研究を行うことにより、国際競争力の強化につながることを期待しています。平成20年度中に基準を改正し、平成22年度からの新制度スタートを目指すものであります。
 ことし1月9日には、大阪府の関西大学、大阪医科大学、大阪薬科大学の3大学が、21世紀の生命の時代を担う工学、医学、薬学を学際的に学んだ人材、かつハード面のみならずソフト面──教養、心理、倫理面など──も兼ね備えた看護師の育成を目的として、3大学による共同学部を設置することに同意し、それぞれの法人の理事長が協定書に調印いたしました。文部科学省への設置認可申請は平成21年5月を予定しているそうです。
 3大学は、これまでにも学術交流協定を結んで研究面で連携してきていました。教育研究体制としては、共同学部の利点を生かし、学生、教員双方において流動性の高いものとする予定だそうです。大阪医科大学のキャンパスに設置され、1学年定員は約200名規模とのことです。
 ほかにも、兵庫県や東京都などでも共同学部、共同大学院を設置する動きがあるようです。大学としても、少子化に伴う生き残りをかけていますし、人材や施設の共用によるコスト削減などのメリットがあります。
 和歌山県においては、他都道府県にあるような総合大学はありませんが、食品加工分野に関係のある大学、高等教育機関が複数あります。1つの大学に、今後、農学部や生命科学部といった学部を新設することは極めて難しいことですが、公立、私立を問わず各大学間で共同研究の機会も出てきている昨今、和歌山県内の大学、そして県外の近隣の大学にも声をかけて食品加工における共同学部を設置することは、時代の流れ、和歌山県の将来の発展、飛躍のための方向性に合致しているのではないでしょうか。
 和歌山大学教育学部には食品関係の先生もいらっしゃいますし、和歌山県立医科大学でも健康学、健康食品という意味で連携できる先生は数多くいらっしゃいます。そして、近畿大学生物理工学部には農業関係、食品関係の先生方が数多くいらっしゃいます。和歌山信愛女子短期大学にも、生活文化学科に食品関係の先生がおられます。国立和歌山高専にも食品分野の専門家がおられますし、県庁組織内にも農学、食品関係に詳しい技術職員がいらっしゃるわけであります。そういった大学関係者以外の方にも教職員として入っていただいて、食品加工におけるヘッドクオーター制に加えて、産業振興による地域貢献のための食品加工研究の核として、また和歌山県の将来を担う人材の育成のためにも、和歌山県ならではの共同学部をつくる、そんなコーディネートを知事にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 3番目、南海本線紀ノ川橋梁についてであります。
 平成20年2月定例会において一般質問させていただいた後、総務委員会においても松本貞次代表が南海電鉄の姿勢、旧建設省の姿勢、そして県の姿勢を厳しく追及されました。先月、県から南海電鉄、国土交通省和歌山河川国道事務所、そして近畿運輸局に対して問い合わせていただいた内容について県当局より説明をいただきました。その中でポイントを絞って質問いたします。
 まず1つ、平成13年11月から平成14年3月までの間に健全度調査を株式会社BMCの指導のもと実施しています。このBMCという会社は、1993年にJR総研すなわち財団法人鉄道総合技術研究所から独立した橋梁の維持管理の会社で、橋の点検診断実績ではほかの追随を許さない会社だそうです。このとき、上部工、下部工とも問題なし、そして調査結果を受けて約1億1500万円程度の延命補修工事を行っています。
 平成16年から平成17年にかけては、財団法人鉄道総合技術研究所に下部工(橋脚)の耐震性能診断を任せていて、東南海・南海連動型の想定地震動に対しての橋脚の安全性が確保できる結果が得られたとしています。この鉄道総研は、1986年、国鉄の鉄道技術研究所などから業務を引き継いで発足した研究機関で、鉄道技術や鉄道労働科学に関する研究開発、調査などを全般的に手がけているようです。
 両社とも最も信頼の置ける会社というならば、そして本当に安全が確証されたというのなら、平成10年7月22日付常務会において全面改築の方針で詳細設計の実施を進めることを可決した後の方針変更の大きな根拠となったのでしょうから、南海電鉄は両法人から出た調査結果を堂々と公表すべきであります。企画部長、いかがですか。
 2番目、南海は会社内で2年ごとに築105年のこの鉄橋を定期検査していると言っていますが、そんなことは鉄道会社として当然のことであります。でも、定期検査も上記のような権威のあると言われる検査機関に行っていただかなければ、常識的には納得はできないものであります。
 県当局が言われるには、南海電鉄は、調査義務はあるが報告義務はないと言われたそうですが、南海電鉄が紀ノ川鉄橋を安全だと言うのなら、人々の生命を預かって安全に走らせるという鉄道会社の使命として検査結果を逐次公表して報告すべきであります。企業として、みずから情報を公にして安全をPRすべきではないでしょうか。断固として定期検査後は検査結果を公表いただきたいと思いますが、いかがですか。企画部長、お答えください。
 3番目、県の南海電鉄からの聞き取り報告によれば、平成16年6月の常務会において、平成12年12月20日付の常務会の報告にある紀ノ川橋梁の改築のスケジュールを変更したということですが、それは、この平成13年から平成14年にかけての株式会社BMCの指導を受けた詳細調査と、その調査を踏まえた補修の実施によって、老朽化による安全性低下の懸念がなくなったので改築スケジュールを変更したのだと言われています。これは余りにも大きな会社の方針転換であります。平成15年になんばパークスの第1期完成、そして第2期に向けたスタートという時期と余りにも近く、ここに南海の鉄道会社としての倫理観、使命感というものを考えますと、どうしても疑いを禁じ得ないのであります。平成12年12月20日の常務会で報告された内容がこの平成16年6月の常務会でどう転換され、改築スケジュールの変更の合意を見たのか、御確認されているのでしょうか。企画部長、お答えください。
 4番目、財務省の減価償却資産の耐用年数等に関する省令によれば、鉄道用の橋梁は鉄筋コンクリートづくりのものが年数50年とされています。国の専門家である国土交通省にあっても鉄道橋梁の安全性基準は必ず持っているはずです。ぜひそれをお示しいただきたい。企画部長、お願いいたします。
 5番目、南海が旧建設省と河川協議の開始を進めることを決定した当時、南海電鉄から近畿地方建設局に問い合わせがあったときに、正式なかけかえ協議ではなく国から補助が出るかといった相談程度の内容だったので、和歌山県には南海から近畿地建へ問い合わせがあったことを報告していない、だから近畿地建から県への鉄橋の改築の話はなかったと県当局は報告いただいておりますが、紀ノ川鉄橋は、使用頻度の高い本格的鉄道橋梁としては今後ますます長寿世界一の記録を更新していくのですから、県は近畿地方整備局との間で紀ノ川鉄橋の安全性について今後も定期的に協議の場を持っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。知事にお伺いいたします。
 6番目、平成17年から平成18年にかけて株式会社BMCがけた連結工の詳細設計を実施しており、平成20年度より平成22年度の間にけた連結工事を実施するとしていますが、実際に時期はいつなのか、そしてどんな内容なのか。企画部長、教えてください。
 以上、大きく3点、第1回目の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの長坂隆司君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) まず、食品加工戦略についてということであります。
 食品加工業、この産業を和歌山で盛んにするということは、これは大変大事なことだというふうに思っておりまして、去る5月に発表いたしました農水産物・加工食品の販売促進に関するアクションプログラム2008においても、農産加工を軸にしたアグリビジネス──ちょっと片仮名で言いましたが──その構築を重点目標に、地域での商品開発への支援とか、あるいは大手食品・飲料メーカーとの連携などの取り組みを進めることにしております。
 そうした中で、食品加工につきましては、ぱっと考えただけでも関係部局がまたがります。加工という意味では商工観光労働部でもあるし、それから、何といっても食品ですから、農林水産部が大変大きな役割を占めると思います。両者の協力、すなわち産業界としては、農業をやっておられる人と、それから加工をやっておられる人、それから販売等々、そういうところが全部連携しないと産業としてもうまくいかないし、それをプロモートするにおいても、「あそこまでは私。あそこは知らん」とかなんか言い出すとうまくいきません。
 したがいまして、県庁は、最近、それを第一義的にといいますか、とりあえず解消するための方策としてヘッドクオーターというのをあちこちでつくっておりますので、これもヘッドクオーターにしようということで、御指摘のように農林水産政策局長が今ヘッドクオーターの任にあります。
 これはそう物すごいもんではありませんで、少なくともこの局長は、「私は知らない」ということは言わないことにする。そのかわり、ほかの部局でもちゃんとその人に報告をして、あるいは報告を求められたときはちゃんとして相談に応じるということにしようじゃないかと、そのぐらいのイメージでございます。
 ヘッドクオーターだけが頑張るというわけではありませんけれども、県庁の組織を挙げてみんなで頑張って、何とか食品加工業をもっと和歌山に根づかせるということをやっていきたい。そのうちの施策の1つが、一番初めに御指摘ありました工業技術センターに食品開発室を置くと。これは何かというと、例えば食品加工業の方々がこういう成分が出てるかどうかちょっと調べてくれとか、そういうことを言ってこられたときに、特にその分野のきちんとしたデータを提供したり支援をしたりすることができるようにするということで、これは主としてハードなんですけれども、それを今年度予算で随分計上させていただいてお認めいただきまして、それを装備していこうと思っております。
 そういうことで、いろんな方策をもとにして、ぜひこの食品加工戦略を頑張ってやっていきたいと思っております。
 次に、食品加工系の共同学部設置ということでございます。
 大学の設置、大学の共同学部等々は、何といっても大学の方々がそれを自分で申請をしたりいろんなことをしないとできません。それはそうでございますけれども、私どもも県の中でどういう研究活動あるいは教育活動が行われていくかということには大変関心があり、協力をしていろんなことをやっていきたいと思っております。
 一度バイオの関係の方々がお越しになって、それでそのうちのある教授が、和歌山大学に農学部をつくってくれというようなお話がありました。私は、これは大学の話なんですけれども、「それは、あなた、間違ってませんか」というふうに申し上げました。なぜならば、まさに各県にある各国立大学等々の農学部は今、生物理工学部とか環境理工学部とかそういうのにどんどん名前を変えて頑張ろうとしてるわけで、まさに和歌山には近畿大学がわざわざつくってくれた生物理工学部というなかなか立派な大学がある。そういうところとどうして組もうとしないんですかというようなことを申し上げた記憶があります。
 そういうようなお考えできょう長坂議員が御質問になったんじゃないかということで、まさにこれからそういう機運が盛り上がってくれば私どもも応援していきたいと思っております。
 現在のところどういうことになっておるかというと、実は和歌山県の大学もなかなか協力してやろうという機運がありまして、そういう意味では立派なんですが、戦略的大学連携支援事業という文部科学省が今公募をしている事業があります。それに和歌山県の全部の大学がそれぞれの共同授業を受講できるようにしようとか、そのためのハードウエアの支援、例えばネット等々のハードウエアの支援なんかをお願いしたいということで今申請をして、我々も応援しているところでございます。
 ただ、その中身が、例えば今おっしゃったような食品加工で共同研究をしてやっていこうというようなところまでまだ行ってないことも事実なんで、この分野だけがすべてだと私は申し上げるつもりはありませんが、こうやってできてきた連携をもとにして、まさに中身の問題としても共同研究などができるようにするというようなことはいい方向であり、大学でそういう機運が盛り上がってきたら私どもとしてはぜひ応援をしていきたいと考えております。
 なお、大学については、個々の、例えば農協とか、それから個々の企業なんかと協力して、今、健康食品等々で随分活躍をしていただいてることも事実でございます。そういう機運がもっともっと盛り上がってくるといいなというふうに考えております。
 続きまして、南海本線紀ノ川橋梁について、特に近畿地方整備局と県との南海鉄橋の安全性についての定期的協議をしなさいということでございます。
 これについては、我々が本件の問題について、近畿整備局は知っとったけれども、どうも県庁は何も知らんかったということについては、あんまり好ましくないと思います。
 権限で見たときに、鉄道の安全性を確保するというのは現在は国の仕事ということになってるからそれでいいのかもしれませんが、しかしながら和歌山県としては、和歌山にあるとらの子の私鉄であり、大変大事な県民の足であるわけですから、そういうところの安全がちゃんと確保できてるかどうか、それから安全だけじゃなくて採算はどうか、ダイヤはうまくいってるか、それから例えば鉄道事業以外のそのほかの事業を積極的にやってくださってるかどうか、そういうことについて我々が関心がないということを言っちゃいかんというふうに思うわけです。
 まさに県庁もそういう鉄道事業なんかを見る部署がありますので、そういうところは任務で物を見ると。今後そういうふうに考え方を──形式は少なくとも改めましたが、まさに任務で見ていって、それで安全も考える。そうすると、現在、実は近畿地方整備局と県土整備部は大変な情報交換をほとんど毎日のようにやってるわけですが、そういうときに、こちらから企画部も参加して、それでそういう日常的なルートを通じてその情報交換をしていくと、それで、自分が必要だと思う情報は権限外でも教えていただくように努力する、そういうことを我々としては努力してやっていかないといかんと、そういうふうに思っております。
○議長(中村裕一君) 県土整備部長茅野牧夫君。
  〔茅野牧夫君、登壇〕
○県土整備部長(茅野牧夫君) 海の森プロジェクトパイロット事業の進捗についてのお尋ねでございますけれども、県では平成18年度に、議員配付の資料とは別場所ではございますけれども、由良町の大引漁港、それから田辺市の田辺漁港、白浜町の志原海岸、串本町の下田原漁港の4海岸におきまして、防波堤等の整備を行う際に用いる海藻の育成しやすいブロック等を設置いたしました。また、産学官で藻場育成技術の検証を行う協議会を設立し、この藻場育成効果に関します調査を開始いたしました。
 学識経験者によりますと、藻場育成技術の評価には最低3年程度の育成状況の追跡調査が必要とのことでもございますので、今年度も春、秋の2回、調査を行うこととしており、それらの結果をもとに評価を行う予定にしております。
 当事業を実施することによりまして、防波堤等の整備における効果的な藻場育成のための基礎資料が得られるものと期待しております。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 海の森づくりにつきまして2点お答えをいたしたいと思います。
 まず、第1点の大型海藻コンブ養殖による海の森づくりの取り組みについてでございますが、本県におきましては、コンブの栽培につきましては海水温が20度C以下の冬季ということに限定されるということもございまして、生育期間が短いということ、またそういう中で十分な成長が望めないということもございまして、コンブと同じ褐藻類でございます温暖な海域に適したヒロメにつきまして、平成15年度から水産試験場が串本町の浅海漁場におきまして、養殖業の収益性の向上、また養殖漁場の水質を改善するという目的で魚類との複合試験を実施いたしてございます。
 その結果、食害等幾つかの課題はございますが、ヒロメはお話ございましたように燐とか窒素の吸収性にすぐれておりまして、養殖としての収穫量も期待ができるということから、ことしの9月1日に予定をしてございます5年ごとの漁業権の免許に際しましては、これまでの魚類に加えまして、同一漁場において藻類との複合養殖ができる新しい取り組みを行うこととしてございます。
 今後も、地域特産種のヒロメと魚類の複合養殖を推進いたしまして、海の森づくりに努めてまいりたいと考えてございます。
 もう1点、本県における海藻栽培の現状と海藻の森漁礁についてということでございますが、本県で生産をされております海藻につきましては、主にワカメ、ヒジキ、テングサ等でございまして、平成17年度における生産量は657トン、生産額といたしまして3億7300万となってございまして、その9割が紀南地域を中心に生産をされてございます。
 近年、お話ございましたように、県下各地の浅海域でカジメ類などのアワビ類の重要なえさとなる藻場が衰退をする、いわゆるいそ焼けの現象が見られてございます。こうした中で、藻場の再生を図るために、水産試験場におきまして一般的にカジメ類が生育できる限界と言われてございます水温25度を超える高水温でも生育できる品種の育成を行ってございまして、現在、いそ焼け海域である日高町地先において実用化に向けた実証試験を行ってございます。
 また、今年度は和歌山市など5市町村において自然石や藻場礁の設置を行うとともに、これまで試験段階でございました有用藻類であるヒジキの移植の実用化試験等も行うこととしてございます。
 議員からお話のございましたロープを用いた藻場造成につきましては、過去に水産試験場におきましてカジメ類について同様の試験を行ってございます。しかしながら、芳しい結果が得られてなかったということでございますが、今後、他府県の状況等も見ながら、藻場造成という観点からその可能性について検討してまいりたいというふうに考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 企画部長前硲健作君。
  〔前硲健作君、登壇〕
○企画部長(前硲健作君) 南海本線紀ノ川橋梁についての御質問にお答えいたします。
 まず、調査結果の公表に関してでございます。
 1点目の株式会社BMC及び財団法人鉄道総合技術研究所に係る調査結果の公表についてでございますけれども、平成13年から14年のBMC指導による健全度調査につきましては、これは表題でございますけども、「南海本線紀ノ川橋梁における維持管理技術について」という表題で、また16年から17年の財団法人の鉄道総研による耐震性能評価につきましては「旧式橋梁下部工の耐震診断(地盤および材料物性の調査結果)」というのと「旧式橋梁下部工の耐震診断(地震応答解析結果)」、こういう表題で、ともに調査内容をコンパクトにまとめて公表されております。
 このことについては私どもも承知をしておるところでございますけれども、ただ何分にも専門誌への掲載でございますし、高い専門性ということがあってわかりにくい、理解しにくいということもありますので、県民の方によりわかりやすく周知するように検討してほしいと、そういう旨の要請をしているところでございます。
 次に、定期検査結果の公表についてでございますが、南海電鉄では法令に基づく橋梁の定期検査を2年ごとに実施しておりまして、年1回の、ホームページで安全報告書を公表しているところでございます。
 今後、橋梁の定期検査の結果をそれに盛り込むことや、月1回、駅などで配布している広報紙に記載することを検討していると聞いております。
 次に、改築スケジュールの変更についてであります。
 南海電鉄は、供用中の橋梁の安全性確保のため、橋梁の専門家である株式会社BMCから維持管理に係るコンサルティングを受けているとのことであります。その取り組みの一環として、議員のお話にもありましたように、株式会社BMCの指導による詳細調査とその結果を踏まえた補修を実施することにより安全性に関する懸念がなくなったため、改築のスケジュールを平成16年の常務会で変更報告したと南海電気鉄道に確認しております。
 次に、国土交通省における鉄道橋梁の安全性基準についてでございますが、鉄道橋梁の維持管理に関する国の技術基準は、鉄道に関する技術上の基準を定める省令第87条に基づき、国土交通省から「鉄道構造物等維持管理標準の制定について」という通達が確かに出されておりますが、耐用年数等の記載はございません。
 最後に、けた連結工事についてでございます。
 現在、橋げたは橋脚に固定されておりますが、さらにけたとけたを横から鉄板で挟み込み、それをボルトで締めて伸縮可能な状態で連結させるという工事をことし11月ごろから行う予定であると聞いております。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
 36番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁いただきました。
 海の森づくりについては、海の森づくりプロジェクトパイロット事業は県内4海岸で調査を実施されているということですが、県内の海藻類の分布、品種、特性などをはかる上で貴重な調査となると思います。ですから、この藻場の育成状況の追跡調査結果に期待したいと思います。そして、人工造成にしろ、養殖にしろ、海藻の森を再生する努力を続けていただきたい。これは、海をきれいにするとともに、地球温暖化の検証、食に連なる各地の観光振興に必ず貢献するはずだからです。
 次に、食品加工におけるヘッドクオーターについては、ぜひともヘッドクオーターたる農林水産政策局長には、難しいお立場ですが、戦略的に、すなわち勝負に勝つ心意気で毅然とリーダーシップを発揮いただいて、いい物づくりを進めていただきたいと思います。
 大学の共同学部についてでありますが、きょうも「日刊工業新聞」で産業の立場から共同大学・共同大学院制度の記事が掲載されておりました。私も、食品加工を追いかけていく過程で、和歌山県の誇るべき農産物で是が非でも地域貢献できるものを生み出していきたいという強烈な情熱とやる気、そして使命感を持った先生方とたくさん出会うことができました。共同学部づくりも、やはり人次第であります。せんだっての県長期総合計画のフォーラムで知事がおっしゃっておられましたように、そういった先生方をぜひ載せていただいて、共同学部構想を実現に向け取り組んでいただきたいと熱望いたします。
 南海本線紀ノ川橋梁についてでありますが、株式会社BMCと鉄道総研による調査結果は確かに論文のような形で公表されているということですが、やはり乗客の生命を預かる公共交通機関の安全性の問題なのですから、もっと一般の利用者を安心させられる、目につきやすい広報であってほしいものですね。
 南海が2年ごとに行っている定期検査も、しかりであります。テレビであっても新聞であってもいいと思うんです。少なくとも会社のホームページ上にでも具体的に掲載いただきたいものであります。とにかく、もっと利用者にわかりやすく親切な形で公表するよう南海に申し入れてください。
 次に、国土交通省における鉄道橋梁の耐用年数等の安全性基準がないというのでしたら、それこそ鉄道総研や株式会社BMCにでも県のほうから確認いただきたいと思います。
 3点目の質問についてでありますが、その御答弁では納得できません。平成16年6月の常務会における当面の全面改築の必要なしとの方針転換の決定というのは、実際の話、事は非常に重大であります。仮にも一部上場している大会社が議論の中身をなぜ隠すのか。常務会の議事録は必ず残っているはずです。県民のとうとい生命を守るべき県としても、このまま「そうですか」とおとなしく引き下がっていてはいけないことであります。ぜひこの平成16年6月の常務会における方針大転換、改築スケジュールの変更に至った議論の中身をさらに追及して確認いただきたいと思います。
 次に、平成12年12月20日の常務会の改築計画の報告書によれば、可能な限りの延命化等を主眼とし、その後、社内関係先並びに河川管理者等と検討、協議を行いましたというくだりがありますが、河川管理者とは、国すなわち国土交通省であります。平成16年6月に改築における方針転換が図られたことも、その時点で当然、河川管理者に南海は報告しているはずであります。そのとき国土交通省はどういう見解を示したのか、県としてぜひ確かめて御報告いただきたい。
 以上の4点の中で今お答えいただける部分があれば御答弁願います。
○議長(中村裕一君) 以上の再質問に対する答弁を求めます。
 企画部長前硲健作君。
  〔前硲健作君、登壇〕
○企画部長(前硲健作君) ただいま再質問の4点についてお答えいたします。
 まず、1点目の鉄道総研による調査や会社の定期検査の調査結果をもっとわかりやすく公表しろと、こういうことを南海に申し入れよということでございますけれども、先ほど答弁申し上げましたように、南海電鉄においてもこれまで、こういった鉄道の安全性に関して一定の公表なり広報というのをされてきております。しかしながら、県民あるいは利用者の安全・安心、そういった信頼にかかわることでございますので、なお一層のわかりやすい広報を工夫してもらうように引き続き要請をしたいと思います。
 2点目、鉄道総研あるいはBMCに鉄道橋梁の耐用年数等の基準を確かめよというお尋ねでございましたけども、一般論として、構造物の耐用年数というのは、その維持管理の方法いかん、あるいは補修のやり方によってそれぞれ個々に判断せざるを得ない、一律には言えないというようなことを私ども聞いておりますけれども、念のため問い合わせてみます。
 3点目の16年6月の常務会における方針決定に至った理由など、議論の中身を追及して確認せよということでございますけれども、私ども一通りのことは聴取いたしまして、公式の回答として受け取ったものを先ほど答弁申し上げたわけでございます。繰り返しになりますけども、県民やあるいは利用者の安全・安心に対する信頼にかかわる事柄でもありますので、本議場での御議論を伝えて、いま一度確認してみたいと思います。
 最後に、改築延期の方針転換を河川管理者である近畿整備局は聞いてたはずだと、そのときの国交省の見解はどうだったんだと、確認しろということでございますけども、一度問い合わせてみます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「ありません」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再々質問を許します。
 36番長坂隆司君。
○長坂隆司君 御答弁ありがとうございました。
 ついせんだっても岩手・宮城内陸地震によって道路が寸断、道路橋の崩落もありました。紀ノ川鉄橋の平成13年から平成14年の健全度調査の概略版、見せていただきましたら、9カ所ほど劣化が気になる記載がありました。東南海・南海大地震も刻一刻と近づいているのであります。県当局も危機感をさらに持っていただきまして、以上の点をそれぞれに強く申し入れを行っていただいて、しかるべき御報告をまたいただきたいと思います。御報告次第で、また次もやらせていただきます。
 以上、要望いたします。
○議長(中村裕一君) ただいまの発言は要望であります。
 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。

このページの先頭へ