平成20年2月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(坂本 登議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前10時0分開議
○議長(中村裕一君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議員提出議案第1号、議員提出議案第2号、議案第1号から議案第16号まで、議案第31号から議案第61号まで、及び議案第63号から議案第76号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。
 29番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 皆さん、おはようございます。議長のお許しをいただきましたので、一般質問をさしていただきます。
 私の質問は、ふるさと再生の柱とも言うべき、過疎化する本県においての人材育成をどう進めるかと農業政策の2点について、当局にその考え方をお伺いするものであります。
 まず第1点目は、人材育成についてであります。
 私は、現在、議員の皆さん方の大変な御理解と御協力をいただき、文教常任委員長をさしていただいております。しかも、この常任委員長は前例にない2年続いてのものであり、このように光栄な職責を務めさせていただけるのも、ひとえに議員、とりわけ文教委員の皆さん方の温かい御支援があればこそ、深く感謝を申し上げます。この場をおかりして、厚くお礼を申し上げます。それだけに、文教委員長としての2年間の総括として、御協力、御支援をしていただいた議員の皆さんに、私の責任ある態度を明確にしておきたいと考えるからであります。
 私は、県議会議員になるに当たって考えたことは、議員になったら、ぜひ教育と農業政策に、少しでも県勢発展のために努力をしたいと考えていたからであります。梅農家に育った私は、農業をするんだから余り勉強する必要もないだろうと思い、高校時代には勉強も満足にせずにいました。しかし、そのことが社会人になって学力のなさを恥ずかしく思うとともに、家業の梅栽培・加工や建設業を経営する中で悔しい思いをしたときもありました。
 そのようなことから、子供たちには自分が歩んだ道や経験したことを家庭で話をし、子供たちへの勉強の必要さを何度も繰り返し話してきました。子供たちが学校へ行くようになってからは、私は、少しでも教育のことを知ろう、少しでも学校教育に協力しようと考え、微力ながら高等学校のPTAの会長を引き受け、さらには県高等学校PTA連合会の会長もさせていただき、未来の人づくり、学校教育の振興のために協力してまいりました。
 こうした経緯もあって、県会に身を置くようになっても、いつも文教委員を希望してきたわけであります。2年間の職責をいただいたことにこたえるためにも、一生懸命に取り組む必要を強く感じていました。そのためには、まず地元に足を運び、多くの方に耳を傾けることから実行したのであります。2年間の最後となる今2月議会には、子供たちの学力のこと、先生の資質、スポーツのことなど、それらの教育諸条件について私なりに総括できるよう勉強してまいりました。
 とりわけ、委員の御協力により県内6地方にわたって移動文教委員会を開催し、県教委から見えにくい東牟婁地方、西牟婁地方や、さらには伊都、那賀地方等の教育の現状を知りたいと思い、市町村教育委員会の委員、教育長や学校長などとも、それぞれの地方の教育上の課題や悩みを県教育長と一緒に聞いてまいりました。これは、ある意味では文教行政も地元に根差したものでなければならないと考えていたからでありますし、文教委員の全員もまたそのような考え方に立っていただいたからであります。このように県内6地方で文教委員会が地元の教育関係者と話し合いをしたのは、いまだかつて過去にも例がなかったと思います。
 私は、今置かれた立場、職責から新聞などを見たとき、すぐに教育などに目が移ってしまいます。本県の子供の学力テストは全国で44番目、国体成績は45位などの記事を見たとき、これで本当によいのか、2巡目国体をにらんだとき、もう今から何らかの手を打っておかなければいけないのではないかと思い、焦ってきます。これは、和歌山の子供たちは本当に学力が低いのか、和歌山の高校生の体力は全国的にも劣っているのか、それとも彼らの勉強する機会や経済的なゆとり、指導者や先生の資質に何らかの問題があるのか、教育条件が悪いのか、さらには県教委の指導等に問題がないのかなどの疑問が出てまいります。
 このような疑問から、子供のスポーツや学力の基礎を培う小学校、中学校の指導に当たっている市町村の教育長や校長の声をじかに聞きたいと思い、文教委員が6地方を回ったわけであります。その折、各地方の教育関係者からは次のような声が出ました。
 義務教育は地元に根差した教育でなければならないと言われながら、本当に地元に根差した、地域と結びついた教育行政をしてくれているのか。この考えに立つなら、何ゆえ県教育委員会は地方教育事務所を廃止し、それぞれの小中学校の人事配置を遠く離れた県教育委員会でしてしまうのか。地方の小中学校や地域の実情をよく知った指導主事や人事主事を教育事務所に配置し、市町村教育委員会と連携を密にして管理職の配置等をしていくことが必要不可欠であると思うが、県教委はこのことを軽視してしまっている。例えば、学校の管理職が3月末近くまで明らかにされず、その人事は市町村の教育長もわからない。そして、配置された校長は、「広域人事」という美名のもとに他の地方から配置される。学校の先生は、どんな校長がいつ来るのか不安の中で待ち、来た校長は、その地方のこと、子供のことなど何ひとつわからず戸惑ってしまっている。ひどいときには、校長も教頭も2人とも他の地方から配置され、新年度当初から本当に学校の機能がしていかないといったことも聞きました。
 また、県教育委員会は余りにも遠く、市町村の教育長や指導主事はすぐには相談ができず問題の処理が後手後手に回り、問題が大きくなってしまう。教育指導においても緊密な連携ができず、その指導力の弱さが問われ、さらに、人事は県教委がするのだからとの考えが現場で広がり、市町村の指導が現場に浸透しない。県教委は現場の声や意見を聞いていない。それがために現場の教師たちはやる気を失ってしまっている。もっと市町村教育委員会にも人事等の内申権を持たせてほしいといった声も聞きました。
 私の耳に聞こえてくる声には、市町村の教育長などは県教委に対してたくさんの意見や不満があるが、これを言ってしまうと、年度末の人事のとき教員の定数配置等で絞ってくるので損をするから言いたくとも言えない。それがため市町村教育委員会は、教育長や各学校長、さらには教師たちは自由な発想や意見が反映されず、学校現場は白けてしまい、やる気を失ってしまっている。そこから果たして、地元に根差した教育、地元に結びついた特色のある教育、子供たちの学力を伸ばすための教育が生まれてくるのだろうか。活気を失った学校現場では、PTA活動も活気を失うのは当然だと思います。
 全国の学力テストでは最上位にあるのは和歌山県と同じような県のように思います。ただ南か北かの違いだけであります。それらの県は、企業も少ない中で何とか優秀な人材を育成していこうとする教育委員会と学校現場との取り組みから出た結果であろうと思います。
 今までは、先生の仕事は楽だという声が一般的でした。しかし最近、国の教育再生会議等での調査では、先生の仕事は大変ハードであるとの結果が出ており、先生の勤務状態が見直されようとしています。これらの先生の勤務を軽減し、雑務をなくし、研修に打ち込むようにすることが大切であります。
 教師の資質の向上のための研修会も大事であり、それを指導する指導主事も大事であります。財政事情が厳しいということで各地方の教育事務所を廃止し、教育委員会の指導主事などの職員の人数を減らすことは、本県の子供たちの学力向上のためには、できるだけ避けるべきであります。
 次に、私が文教委員長1年目の昨年度、前教育長のとき、「和歌山県教育史」の史料編を作成しましたが、これには相当な県の予算を使ったと思います。しかし、この史料編には、平成3年から平成10年までの教育上の大きな出来事が、すっぽりと抜いています。このことについて、元教育長から前教育長に公開質問書を出し、彼はこれに答えず、元教育長から再度第三者すなわち教育関係者やマスコミ等の立ち会いのもとに公開討論をしたいと申し入れがあり、県議会議長と文教委員長あてにもその写しが送られてきて、協力を願いたいとの依頼がありました。
 私は、文教委員長という立場から、この提起を受け、前教育長に話し合うよう勧めましたが、逃げるばかりで、最終3人の教育局長を連れ、元教育長と話し合いをして、どうにか解決の方向を見つけましたが、この教育史料編を私は多くの教育関係者にも読ませ、その意見を聞きましたが、読んだ全員の意見は、余りにもずさんで、教育の歴史が埋没され、曲げられてしまっているとのことでした。
 元教育長は、天皇・皇后両陛下が全国の公立学校では初めてたちばな養護学校へ訪問したことや、国際理解教育、僻地教育の振興など重要な事項30項目ほどの例を挙げ、これらが教育の歴史から抜いてしまっている。これらの事項は、前教育長及び現在の教育委員が課長、次長当時のものであり、教育委員会のトップがすべてを知っていることである。したがって、これは意図的に抜いたものであり、県民の税金を使って後世の人々に和歌山の教育を完全にねじ曲げて伝えることであり、このことは見逃すことはできないといった内容であります。
 山口教育長は、この教育史のことを知ってますか。私は、文教委員長の責任を果たすため、このことを教育長はどう処理するのか確認をしておきたいと思います。
 なお、美術館の名誉館長についても聞きたいことがありますが、今回は質問を控えます。
 以下4点について伺います。
 国体成績45位はよくできた、国体はよく頑張ったというだけで済ませると思いますか。もちろん国体は成人も入っており、その主力は学校体育、スポーツにかかわると思いますが、7年後の本県開催2巡目国体を考えたとき、どう思いますか。もし国体の成績を上げる必要があると考えるなら、これからどのような方策を考えますか。過去のデータを示し、その対策を伺います。
 文教委員会が6地方を回ったとき、教育長も一緒に出席してくれたことは、私たち委員はその姿勢を高く評価します。これらの会場で出された問題点を聞き流すわけにはまいりません。意見に出された地元に根差した教育、子供の学力を高めるためには、地元を最もよく知った市町村の教育長などと密接に連携し、指導内容、人事等についてどうしていくのか。廃止してしまった教育事務所を復活できませんか。文教委員会の委員は、復活すべきであり、もしそれができなかったなら、教育事務所と同じような仕事をする室などを考え、その声にこたえるべきであると思っています。指導内容の充実、地域、学校をよく知った管理職を適材適所に配置すべく、地教委の意見を十分に聞くための教育事務所にかわる室だけでも置くべきではないかと考えていますが、その決意を具体的に伺います。
 我が国の子供たちの学力は過去世界でも高い水準にあったのが、今やそのレベルは国も慌てるほど低くなり、その低くなった国内にあって44位にある本県の子供の学力をどう見ますか。この子供たちの低い学力をどう高めていくのか、教育長の決意を聞きたい。
 小中学校の教育は、地元に根差した教育、地方の特色を生かした教育を進めながら子供の学力を向上させることは大事と思いますが、そのために、もっと学校現場の声や発想を受けとめ、それを聞けるような方途を探るべきであり、間違っても人事権などで押さえ込んでしまうような教育行政をすべきでないと思いますが、いかがですか。
 「和歌山県教育史」の予算はどれだけですか。教育長は、この教育史を読んで、県民に教育の歴史を正しく伝えると思いますか。抜けている大事な項目を今わかる範囲で具体的に説明していただきたい。教育長は、元教育長から質問書を受け取っていますか。この大きな予算を無駄遣いにしないため、教育長は教育史を今後どうしていきますか、具体的に伺います。
 以上、4点について伺います。
 次に、農業問題について伺います。
 私自身は、梅栽培面積2.5ヘクタールを持つ梅農家であります。それだけに、今回出された和歌山県長期総合計画における農業の位置づけ、方向づけには大変な興味を持ちましたし、農業で生計を立てているいわゆる専業農家、県下で9432戸の人々も同じ思いで受けとめたのではなかったかと推測します。
 この長期総合計画では、和歌山県の農業の特性は、和歌山県は恵まれた自然条件を生かした農林水産業が盛んであり、ミカン、梅などの果樹により果樹王国和歌山を形成、野菜や花卉は自然条件と高度な技術を生かした集約型農業を展開しているとの現状認識に立ち、さらに目指すべき方向は、安全・安心な農産物の安定供給を基本に、輸出も含めた新たな販売の開拓、加工品開発などにより農産物の高い付加価値化を図り、攻めの農業を目指すと述べ、これを受けて、農林水産業の振興は収益性の高い農業を目指す、具体的には担い手農家の年間農業所得を現在の1.5倍に当たる550万円と設定し、そのためにはおいしい和歌山のブランド力アップを図る、そしてさらに、今回力を入れていると思われる海外への輸出拡大によるミカン、柿、桃10億円作戦など意欲にあふれた取り組みが計画されておられます。
 また、新たな加工品づくりや県立医科大学と企業との共同研究など、産官学の連携による機能性食品の開発に取り組むことなどが約束されておられます。これは、さきに地元南部の梅農家が県立医科大学に対し、新たな梅の可能性を研究対象にしてほしいと寄附講座を開設したものを県が公式に取り上げたことであり、仲介の役割を果たした私といたしましても大きな充実感があります。また、寄附をした梅農家も、努力が報われたと大変喜んでおります。この成果を大いに期待するものであります。
 さて、私がこの長期総合計画で一番注目をしたのは、専業農家の所得水準を550万円と設定したことであります。本県の農業形態は、梅やミカン、そして柿などは極めて商品化率の高いものであり、その価格は、需要と供給の関係や自然条件に左右されることを考えますと、農産物を扱う農家の所得目標を設定したことは大変難しく、勇気の要ることであり、これをあえてしたことに敬意を表しますとともに、そんなにうまくいくものかと少し不安にも思います。この不安を、梅の栽培・加工に当たっている私の経験から述べたいと思います。
 かつて15年ほど前までは、梅は大変な好況を見せ、ミカンとともに本県を代表する果樹とまで言われました。私たち南部の里も活気づき、若者も地元に定着し、梅栽培を専業とする者も多く、テレビ、NHKでも、全国に誇る豊かな農村、若者が定着する農村、小学校の生徒がふえる農村と紹介されました。しかしながら、近年、外国産の梅なども入ってくる中で、梅の値段は低迷を続け、もはや梅の栽培・加工だけでは生活は立ち行かなくなり、加えて若者が農村から離れ、後継者のいない梅農家がふえ、過去の南部の姿を消しつつあります。
 現在では、農家の人々は、顔を合わせれば、「後継ぎが欲しい」、「嫁の来手がない」と言うのがあいさつがわりになっています。この梅農家にして、後継者不足と老齢化による問題が出てきています。他のミカン農家、米づくり農家も同じような状態なのではないかと思います。
 念のため、私は農業経営者です。県の目指す農業立県には大変大賛成です。特に、本県のような地理的環境の場合、地域の自然と結びついた農林水産業の振興は欠くことのできない重要な施策であります。
 評論家の金美鈴さんは、講演の中で、「和歌山は何てすばらしいところなんでしょう。食材がこんなに豊富なところに住んでみたい」と言っています。また、去る2月2日、3日の両日、日高郡を舞台に「人生の楽園」「にっぽん菜発見」──「サイ」とは野菜の「菜」です──これがテレビで放映されました。この放映の主たる目的は魚のクエでしたが、本当に和歌山の食材の豊富さを実感する番組でした。
 本県は、農産物、魚介類にも豊富な食材を有する県です。長期総合計画においても、「おいしい和歌山」の売り出しという魅力的な言葉を使いPR、販売戦略を強化することにより収益性の高い農業を実現すると、その戦略を明確に打ち出しています。「おいしい和歌山」とは、すなわち農産物を食材として位置づけ、この食材の付加価値化を高めていく宣言であろうと解釈します。農産物の高い付加価値化は、今後の産地間競争に勝ち抜く要因であるとするのであれば、現在の流通ルートに加え、こうした農産物、水産物などを県固有の食材として総合的にとらえ、文字どおり「おいしい和歌山」としてセットで消費者に提供することであろうと思います。
 私は、こうした取り組みが、生産の単位が小さく、ややもすれば市場競争力において劣ると言われる県内各地の特産物の付加価値化を、この際、連れもて引き上げていく効果が期待できるものと大きな関心を持っております。さらに、和歌山のグルメ資源、観光資源として売り出し、本県の魅力づくりに活用し、願わくば子供を対象にした食育の材料として活用し、郷土の味に誇りを持たしていってはどうかと提案するものであります。
 知事は、企業誘致を大きな看板にしています。私は、これについても大賛成です。企業の誘致政策は、いわば外部からの資本を導入して地域の活性化を図るやり方であり、一方、農産物の高付加価値化は、地域固有の資源を一層魅力的にした活性化であり、これら内と外との両面の政策には大きな期待をしております。
 そこで、知事及び関係部長に伺います。
 農業所得1.5倍作戦は大丈夫ですか。その根拠と今後の展望について伺います。
 現在の農家の平均所得はどれだけですか。農産物の価格は、自然との関係、需給との関係で決まります。そんなに直ちに1.5倍にはふえません。国の食料自給率わずかに40%程度の現状、しかも果樹や梅などは外国産に押され、値段がどんどん下落し、農家の経営は極度に苦しくなり、その影響から農家の若者は農村を離れていく中で、農業はもはや年寄りの仕事になっている現状をどう思いますか。
 専業農家の平均年齢は何歳ですか。過去10年間の専業農家の割合、後継者の割合はどうなっていますか。そして、これから後に、10年後にはどのようになるか伺います。
 販売の開拓と言っていますが、国内はもちろん、外国への輸出先はどのような国を考えていますか。温州ミカンは、梅と同じように確かにブランドとなるかもしれませんが、いろいろな理由から過去にも実現しなかったように聞いていますが、いかがですか。このような問題をどうクリアするのか、お伺いします。
 目標は高いほどよいと言いますが、根拠のある数値の上に立ったものでないと、結果は、夢を持たせ、県民や農民をだますことにつながります。「おいしい和歌山」の実現に向けて、知事はどういう政策展開を図ろうとしているのですか。具体的に説明をお願いします。
 以上、2項目について、知事、関係部長、教育長の答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)
○議長(中村裕一君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。
 知事仁坂吉伸君。
  〔仁坂吉伸君、登壇〕
○知事(仁坂吉伸君) 農業所得、農業政策に関する御質問のうち、農業所得についてでございますが、議員御指摘のように、本県の主要農産物であります果実の国内消費の減少や、あるいは輸入農産物の一般的な増加等によりまして、本県でもまた農業所得が減少し、担い手の減少やあるいは高齢化など、農業を取り巻く情勢は厳しい状況にあるというふうに承知しております。
 こうした中で、農業生産法人を設立しインターネット販売等による独自の流通ルートの開拓や、あるいは農産物を活用した加工品づくり、あるいは養液栽培などの施設園芸の導入等により収入の幅を広げるなど、頑張っておられる農家の方々もございます。また、JAの中には、それぞれいろいろな工夫をして組合員の方々の所得を上げるような努力をしておられるところもたくさんあると承知しております。
 農業を魅力ある産業として持続・発展させるために、御指摘のように新長期総合計画においては、10年後に中核的な担い手農家1戸当たりの年間農業所得を、現在は377万円でございますが、そこから勤労者世帯並みの550万円にふやすことを目標にしております。その実現につきましては、議員御指摘のように、そんなに簡単ではないと思います。しかし、農業を再興し、後継者が喜んで農業を継いでいただくというためには、ぜひこの目標を実現しなきゃいけないというふうに思う次第でございます。
 そのためには、私は、特に流通段階での高付加価値化、高く売るということと、それから生産コストを下げるように生産側でも頑張るということが必要であると考えております。このため、多様な流通チャンネルへの販路開拓、あるいは海外の富裕層をターゲットとした本格的輸出の展開を初め、農商工連携による新たな加工品づくりとともに、生産側では遊休農地との一体的整備による省力化、こういうものを推進いたしまして所得の確保に努めてまいりたいと思っております。
 次に「おいしい和歌山」──これは新しい長期総合計画のキャッチフレーズでございますが──これの実現でございます。
 議員御指摘のように、梅、桃、ミカン、柿に代表される果実や、あるいはマグロ、カツオなど黒潮にはぐくまれました海の幸、伝統に培われたみそ、しょうゆなど、本県はまさに食材の宝庫であります。こうした地域資源の高付加価値化を図るため、その機能性に着目した特定保健用食品など新たな分野への取り組みが、ひいては農業の振興につながるものと考えております。
 今回の新長期総合計画においては、産学官の連携による研究開発など、積極的に取り組むこととしております。このためには、県の取り組みのみならず、農家の方々を初め民間の方々の盛り上がり、これも大事であると思います。その意味で、坂本議員初め南部の梅農家の皆様方が県立医科大学の寄附講座実現に御尽力いただきましたことに対しまして、改めて深く敬意を表したいと思っております。
 私は、農水産物や加工食品の販売促進に力を入れ、アクションプログラム2007を策定し、梅を初めとする4大果実のトップセールスを初め、商談会の開催、量販店等との協働によるフェアの開催など、いろいろな手を使いまして大いに販売促進に取り組んできたところでございます。さらに、県を代表するすぐれた県産品を広くアピールするための優良県産品推奨制度を近く立ち上げ、和歌山産のブランド力をさらに高めるとともに、食品加工を核といたしましてアグリビジネスの推進を通じまして、機能性を生かした商品づくりなどにも取り組んでまいりたいと思っております。これらの施策を総合的に推進することによりまして、和歌山産品の付加価値を高め、成果を高め、厳しい産地間競争に勝ち抜き、「おいしい和歌山」の実現を目指して頑張ってまいりたいと考えております。
○議長(中村裕一君) 農林水産部長下林茂文君。
  〔下林茂文君、登壇〕
○農林水産部長(下林茂文君) 農業問題の3点についてお答えをさしていただきたいと思います。
 まず、農家離れ等の現状と、それから専業農家の状況についてでございますが、この御質問につきましては一括してお答えをさせていただきたいと思います。
 農林水産省が行っております調査によりますと、本県における兼業農家も含めまして、販売農家の平成17年の平均の農業所得は153万円となってございますが、新長期総合計画に掲げております中核的担い手農家の所得につきましては377万となってございます。
 また、主に農業に従事する方の平均年齢でございますが、10年前の平成7年には59.1歳ということでございましたが、平成17年現在におきまして62.1歳と、3歳の上昇をいたしてございます。
 次に専業農家、いわゆる主業農家の割合についてでございますが、10年前は30%でございましたが、平成17年には26%と、4ポイント減少してございます。
 また、後継者たる30歳未満で主に農業に従事する方の割合につきましては、10年前の1.9%と同率ということでございます。
 こうした趨勢を踏まえまして、統計手法を用いて10年後を予測、推計をいたしますと、今後も専業農家あるいはその後継者の割合が低下をいたしまして高齢化が進むということを見込まれてございます。しかし一方、県のほうで調査をいたしております新規就農者数につきましては、平成14年度に105名ということでございましたが、平成18年には138名と増加をいたしてございます。特に、39歳以下の若い新規就農者につきましては、近畿府県の中でも最も多くなってございます。
 このように、10年先を見通した場合に、担い手の数、あるいはその年齢ともに厳しいものがございますが、今申し上げましたように一部に明るい兆しも見られてございます。
 今後、中核となる農業者を育成・確保していくという視点から、就農特待制度、就農安定資金の創設を初めといたしまして、新しい農業経営にチャレンジする認定農業者の育成、企業的経営を目指す農業法人の設立支援を行うなど、農業の内外からの多様な担い手の育成・確保を図りまして、専業農家等担い手が意欲を持って農業に取り組めるよう支援をしてまいりたいと考えてございます。
 次に4点目といたしまして、海外への農産品の販路開拓についてでございますが、これまでもミカンを中心にカナダ、香港等に向け実施をしてございましたが、円高による経済情勢の変化あるいはその代金決済、また商品の引き渡しの方法等によります商習慣の違いによりまして、本格的な輸出の定着には至らなかったのではないかというふうに考えてございます。
 また、近年、東アジアなどの近隣諸国では、経済発展に伴う富裕層の増加、また日本食への関心の高まりもございまして、こうした絶好の機会をとらえて、昨年より、商社OBで豊かな経験を持ってございます輸出アドバイザーからの支援を受けまして、台湾、香港、マレーシアでの海外フェアや海外バイヤーとの商談会などを実施してきてございます。この中で、現地の関係者の方々から、柿やミカン等について食味、また外観等がすぐれているなどの好評をいただいてございます。
 今後は、こうした経験を生かしまして、引き続きフェアや商談会を実施するとともに、新たに本格的な輸出につなげるための低温輸送システムの整備されているかどうかの状況、また嗜好性に関する市場調査等を行いまして、本県主要果実で10億円の目標達成に向けて努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 教育長山口裕市君。
  〔山口裕市君、登壇〕
○教育長(山口裕市君) 教育関係、まず2巡目国体の取り組みと方策についてお答えをいたします。
 本県の国体での成績は、昭和46年の黒潮国体以降、昭和62年の1巡目国体最後となる沖縄国体で13位と全国上位を保っていたものの、平成13年の宮城国体で29位、ここ数年では40位台と低迷を続けておりまして、昨年の秋田国体では第45位となってございます。
 県といたしましても、7年後の和歌山国体では男女総合優勝を目標に掲げまして、昨年末の国体準備委員会常任委員会で決定いただきました競技力向上対策本部が中心となって、本県の競技水準を組織的、計画的に向上させることとしてございます。
 ジュニア競技者からの発掘・育成につきましては、私自身も講習会等において指導者の意識改革を呼びかけ、7年後の主役となる子供たち全体の体力向上を図りながら、平成18年度からスタートいたしましたゴールデンキッズ発掘プロジェクトと連動して、中学生、高校生の競技力向上に取り組んでまいります。
 また、競技力の向上を図る上で、優秀な指導者の養成・確保が不可欠であると考えますので、県教育委員会といたしましては、きのくにエクセレントコーチ制度を活用し、すぐれた指導力を有する現職及び退職した教職員などにより、より広域な場で指導力を発揮いただくとともに、広く県内外からすぐれた人材を確保し、適正な配置に努めてまいります。
 今後、育成・強化の主体となる各競技団体の積極的な活動を初め、県や県体育協会などの関係機関が一丸となって、7年後の和歌山国体における男女総合優勝の獲得を目指して総合的な競技力向上対策に取り組んでいく所存でございます。
 次に、教育事務所の機能を再考してはどうかという点についてお答えいたします。
 まず、坂本文教委員長を初め文教委員会の委員の皆様が県内6地方で市町村の教育長や小中学校の校長会の代表から意見を聞く機会を設けていただきましたことに、改めてお礼を申し上げます。
 県教育委員会では、地方教育事務所廃止に際し、本庁各課室の体制を強化するとともに、田辺市にある教育センター学びの丘内に市町村支援の拠点を設け、指導の充実を図ってまいりました。
 しかしながら、今回6地方でお聞きした意見等を踏まえ、来年度に向けましては、これまで以上に地方別の教育長会議や指導主事会を開催し、現場の意見を聞く機会をふやすこととしております。さらに、市町村の協力を得て指導主事が駐在する室を設けるなどし、地方における支援拠点の整備を図り、指導と人事の両面で市町村との密接な連携を進めてまいりたいと考えてございます。
 次に、学力向上と地域連携については、これまで本県では、平成15年度から児童生徒の学習状況を把握するため学力診断テストを実施し、さらに生活と学習に関する意識や実態調査も行うことで子供たちの学力向上を目指した取り組みを進めてまいりました。また、本年度実施されました全国学力・学習状況調査の結果を見ましても、基礎・基本を問う問題ではおおむね満足できる状況にあるものの、記述式問題におきまして、県学力診断テストと同様に無回答が多い状況や、読解力、思考力、表現力に関して課題が見られます。これらの課題を解決することが生きる力につながる確かな学力を育成する上で重要であると考えます。
 今後、新施策としての地域共育コミュニティの創設や学校評価等の充実を図りまして、より一層、地方の声や発想を大切にした施策が実施できるよう努めてまいります。また、今まで以上に指導主事が各市町村への支援を行うとともに、学力を高めるための拠点校を設置し、効果的な学力向上方策を普及してまいります。
 次に、「和歌山県教育史」につきましては、お話のように、元教育長から質問状をいただき、庁内において確認、検討を行ってまいりました。県教育委員会では、平成12年度から教育史の研究者等で構成する県教育史編纂委員会を設けまして、「和歌山県教育史」全3巻の編さんに取り組んでおり、今年度までの8年間に要した事業費は約3770万円となってございます。
 平成18年3月に刊行した史料編の編さんに際しましては、国立・県立の公文書館や図書館やあるいは県内の学校等を史料調査しまして2229点の掲載候補史料を選び、そこからさらに772点を選択して収録をしてございます。
 議員御指摘の質問書に示された内容といたしまして、天皇・皇后両陛下のたちばな養護学校訪問、トルコとの交流や各学校での姉妹校提携を初めとした国際交流、学校と聾学校など校種を超えた学校間連携、PTAの全国大会や近畿大会、全国アウトドアスポーツ大会、全国産業教育フェア、全国学校保健研究大会など多くの全国大会の開催、あるいはPTAの皆様に御苦労いただきました国旗・国歌の問題など30数項目が史料編に収録されておらず、国体につきましても開会式の記事が紹介されているだけでございました。
 県教育委員会といたしましては、この御指摘を真摯に受けとめまして、編纂委員会に相談するとともに、県教育史編纂庁内連絡会議におきまして、史料編に収録されていないすべての指摘項目について再調査と発掘に努めてまいりました。その結果を編纂委員会に報告し、現在編さん中でございます通史編のⅡに加える形で、新たに確認できた史料を活用し、その内容に応じまして、本文や年表、資料として適切に記述し、補足することになってございます。この教育史は、本県で初めての編さんであり、後世に残る記録でありますので、可能な限り重要な事項が網羅されるよう努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。
○議長(中村裕一君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(中村裕一君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。

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